(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】インナーチューブ
(51)【国際特許分類】
A61B 1/018 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
A61B1/018 514
(21)【出願番号】P 2019521618
(86)(22)【出願日】2017-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2017020336
(87)【国際公開番号】W WO2018220767
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-04-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2017年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業 フレキシブル内視鏡手術ロボット」「未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発/先端医療機器の開発/高い安全性と更なる低侵襲化及び高難度治療を可能にする軟性内視鏡手術システムの研究開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 則仁
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓也
(72)【発明者】
【氏名】日村 義彦
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143142(WO,A1)
【文献】特開2008-253597(JP,A)
【文献】特開2004-008822(JP,A)
【文献】特開2002-011019(JP,A)
【文献】特開平06-329108(JP,A)
【文献】特開平04-341497(JP,A)
【文献】実開平06-063445(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡及び処置具の体腔内への導入を補助する処置具挿入補助具に挿入されるとともに、該内視鏡及び処置具を内部に挿通可能なインナーチューブであって、
該インナーチューブの先端に設けられ、可撓性を有する屈曲可能な屈曲部と、
前記屈曲部の先端部に一端が固定されたワイヤー部材と、
前記ワイヤー部材の他端が固定され、前記インナーチューブの外周を該インナーチューブの軸線方向に沿って摺動可能に取り付けられた摺動部材と、
前記摺動部材を前記インナーチューブの基端側に摺動させて前記屈曲部を屈曲させた状態で保持する保持機構とを備え、
該保持機構は、
前記摺動部材に設けられ、前記軸線方向に交差する方向を回転軸として、回動可能なリング状の掛止部と、
前記インナーチューブの基端部にその先端が前記軸線に直交する面より基端側に向かって延びるように設けられ、基端側に向かって回動された前記掛止部が掛止される突起部とを有し、
該突起部の基端側面が階段状に形成されていることにより、該突起部には、前記掛止部が掛止される被掛止部が所定の間隔で離間させて複数設けられていることを特徴とするインナーチューブ。
【請求項2】
請求項1記載のインナーチューブにおいて、
前記摺動部材の回転軸から前記突起部までの距離より前記掛止部の長さは小であり、
前記掛止部は伸縮可能な弾性材からなることを特徴とするインナーチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡と鉗子やメス等の処置具とを体腔内へ挿入する際に、その挿入を補助する処置具挿入補助具のインナーチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内視鏡と該内視鏡の観察下において使用される鉗子やメス等の処置具とを体腔内へ挿入して治療を行う手技が行われている。
【0003】
この種の手技を行うために、前記内視鏡と前記処置具とを夫々内部に進退自在に挿通可能である複数のインナーチューブと、前記インナーチューブを挿通可能であるアウターチューブとを備える処置具挿入補助具が知られている。
【0004】
この処置具挿入補助具の使用方法は、まず、前記アウターチューブの先端を被処置部に対向させる。次いで、該先端から前記インナーチューブの先端部を突出させる。それから、前記先端部にワイヤーを介して固定されると共に、前記インナーチューブに摺動可能に取り付けられた摺動部材を基端側に牽引することで、前記インナーチューブの先端部を前記アウターチューブの軸線から離れる方向に向けて放射状に屈曲させる。このとき、前記摺動部材の裏面側取り付けられた小さい楔状のスライドストッパーを、摺動部材とインナーチューブとの間に差し込むことで、該屈曲状態は保持される。
【0005】
さらに、内視鏡及び処置具を夫々前進させてインナーチューブから突出させた後、該内視鏡及び該処置具を前記アウターチューブの軸線に近づく方向に屈曲させて被処置部に対向させる。
【0006】
以上により、前記処置具挿入補助具は、十分な作業空間と視野を確保でき、距離感が掴み易くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記インナーチューブを屈曲状態で保持するためには、小さいスライドストッパーを操作しなければならないため、操作性が容易ではないという不都合がある。また、屈曲状態を解除するためには、差し込まれたスライドストッパーを摺動部材とインナーチューブとの間から、爪を引っ掛けて抜く操作を要するため、同様に操作性が容易ではないという不都合がある。
【0009】
上記の点に鑑み、本発明は、操作性が高いインナーチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明のインナーチューブは、内視鏡及び処置具の体腔内への導入を補助する処置具挿入補助具に挿入されるとともに、該内視鏡及び処置具を内部に挿通可能なインナーチューブであって、該インナーチューブの先端に設けられ、可撓性を有する屈曲可能な屈曲部と、前記屈曲部の先端部に一端が固定されたワイヤー部材と、前記ワイヤー部材の他端が固定され、前記インナーチューブの外周を該インナーチューブの軸線方向に沿って摺動可能に取り付けられた摺動部材と、前記摺動部材を前記インナーチューブの基端側に摺動させて前記屈曲部を屈曲させた状態で保持する保持機構とを備え、該保持機構は、前記摺動部材に設けられ、前記軸線方向に交差する方向を回転軸として、回動可能な掛止部と、前記インナーチューブの基端部に設けられ、基端側に向かって回動された前記掛止部が掛止される突起部とを有し、該突起部の基端側面が階段状に形成されていることにより、該突起部には、前記掛止部が掛止される被掛止部が所定の間隔で離間させて複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明のインナーチューブは、屈曲部と摺動部材とがワイヤー部材を介して連結されているため、処置具挿入補助具の先端からインナーチューブを突出させた状態で、摺動部材を基端側に牽引することで、屈曲部を屈曲される。そして、この状態から、摺動部材に設けられた掛止部をインナーチューブの基端部側に向かって回動させて突起部に掛止させることで、屈曲部が屈曲した状態を保持される。
【0012】
従って、本発明のインナーチューブは、掛止部を回転させて突起部に引っ掛ける・外すという操作によって屈曲状態の保持及び解除ができるため、操作性が高い。
また、本発明のインナーチューブによれば、摺動部材を突起部に接するまで基端側に牽引するだけで、屈曲部が適度に屈曲するので、操作性が高い。
さらに、本発明のインナーチューブによれば、掛止部が掛止される各被掛止部の位置によって、摺動部材を基端側に牽引する距離が変化するので、屈曲部を屈曲する量を調整することができる。
【0015】
本発明のインナーチューブにおいて、前記摺動部材の回転軸から前記突起部までの距離より前記掛止部の長さは小であり、前記掛止部は伸縮可能な弾性材からなることを特徴とする。
【0016】
これによれば、掛止部を引っ張って伸ばしながら突起部に引っ掛けるという操作で、屈曲状態が緩むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の処置具挿入補助具を示す説明図。
【
図2】
図1おける処置具挿入補助具のインナーチューブを示す説明図であって、伸展状態を示す斜視図。
【
図3】
図1おける処置具挿入補助具のインナーチューブを示す説明図であって、屈曲状態を示す斜視図。
【
図4】本発明の処置具挿入補助具のインナーチューブの変形例示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る処置具挿入補助具10について説明する。処置具挿入補助具10は、内視鏡並びに鉗子、メス等の処置具(図示せず)の体内への導入を補助するために用いられる。
【0020】
処置具挿入補助具10は、
図1に示すように、主として、インナーチューブ20、アウターチューブ30から構成される。アウターチューブ30の内部に1本又は複数本のインナーチューブ20が挿入される。
【0021】
アウターチューブ30は、可撓性を有する屈曲可能な筒状体であり、内壁面に先端側から基端側にかけて軸方向に延設された複数の案内部(図示せず)を備えている。案内部は、例えば、アウターチューブ30の内壁面に形成された蟻溝であり、内壁面に円周方向に等間隔に形成されている。
【0022】
アウターチューブ30の基端側には、ガイドパイプ32、空気漏れ防止リング33と、バルブシート(図示せず)が取り付けられている。
【0023】
ガイドパイプ32は、アウターチューブ30と空気漏れ防止リング33とを接続する部材であり、ステンレス等の金属や樹脂などの硬質材から形成されている。空気漏れ防止リング33はバルブシートと接着されている。空気漏れ防止リング33は、ガイドパイプ32に対して着脱可能に取り付けられている。バルブシートには、インナーチューブ20が挿通される複数の孔が形成されている。
【0024】
図2に示すように、インナーチューブ20は、可撓性を有する筒状体であり、内視鏡並びに鉗子やメス等の処置具を内部に挿通可能となっている。インナーチューブ20は外周面に親水性加工が施されている。
【0025】
インナーチューブ20は、本実施形態では、外径が同じものが4本取り付けられているが、外径が異なるものを取り付けてもよい。
【0026】
インナーチューブ20は、ポリプロピレン、塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等の軟質材からなる軟質部20aと、軟質部20aより硬質であってABS、ポリカーボネートなどの硬性プラスチックや硬質ゴムなどの硬質材からなる硬質部20bとが軸方向に交互に結合されて構成されている。
【0027】
インナーチューブ20は、外周面の先端から基端に亘って、アウターチューブ30の案内部に係合して摺動可能とする係合部21と、挿入深さを把握するための目盛(図示せず)とを備えている。
【0028】
インナーチューブ20の係合部21は、本実施形態では、インナーチューブ20の外周面に突出する蟻ほぞ状の突起であるが、アウターチューブ30の案内部に対して係合可能であれば任意の形状とすることができる。
【0029】
インナーチューブ20の係合部21は、インナーチューブ20の先端から基端に亘る部分の一部に断続的に設けられている。本実施形態では、先端側と中央部の硬質部20bに夫々設けられている。この2つの係合部21が、アウターチューブ30の案内部に挟み込まれることで、インナーチューブ20はアウターチューブ30に取り付けられる。
【0030】
したがって、インナーチューブ20では、硬質部20bに設けられた係合部21によって、アウターチューブ30に対して確実に取り付けることができる。
【0031】
また、インナーチューブ20は、硬質部20bに挟まれた領域が屈曲可能な軟質部20aで構成されているので、アウターチューブ30を屈曲させたときに、インナーチューブ20が屈曲の妨げとならない。
【0032】
さらに、インナーチューブが係合部21を介して、アウターチューブ30の案内部を摺動可能であるので、アウターチューブ30屈曲させたとき、各インナーチューブ20が夫々摺動しながら追従できるので、この構成からもアウターチューブ30の屈曲を妨げない。
【0033】
インナーチューブ20の先端部には、屈曲可能な首振りパイプ22とノーズカバー23とが取り付けられている。具体的には、先端側の硬質部20bに対して首振りパイプ22の基端が取り付けられ、該首振りパイプ22の先端にノーズカバー23が取り付けられている。
【0034】
首振りパイプ22は、薄肉のリング状部材を多関節状に連結し、任意の一方向にのみ屈曲可能な可撓性を備えたパイプであり、例えばステンレス管の加工品として構成され、伸展状態から一方向にのみ曲がる屈曲機構として構成することができる。また、首振りパイプ22は、可撓性を有する軟質材からなるパイプや、ABSやポリカーボネート等の硬質プラスチック材からなるリングを連結することで、構成することもできる。なお、首振りパイプ22が本発明における屈曲部に相当する。
【0035】
ノーズカバー23は、首振りパイプ22と同様、或いはこれより軟質のプラスチック、例えば塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等からなっている。ノーズカバー23は軟質材からなるので、組織と接触しても組織に損傷を与えることがない。
【0036】
以下では、ノーズカバー23側からインナーチューブ20をその軸線方向に沿って見たときに、首振りパイプ22が屈曲する方向を上方向、屈曲状態から伸展状態に戻る方向を下方向、該上下方向に直交する方向を左右方向と定義して説明する。
【0037】
インナーチューブ20の基端部には、スライドパイプ24、スライドノブ25a,25b、スライドストッパー26及び脱気防止弁27が取り付けられている。スライドパイプ24、スライドノブ25a,25b、スライドストッパー26及び脱気防止弁27は、硬質部20bと同様の硬質材で形成されている。
【0038】
スライドパイプ24は、概略円筒形であって、外周には、レール部24a,24bが、軸線を挟んで上下対称に設けられている。レール部24aは、左右方向にそれぞれ突起しつつ軸線方向に沿って延びる一対の条部によって構成されている。同様に、レール部24bも、左右方向にそれぞれ突起しつつ軸線方向に沿って延びる一対の条部によって構成されている。
【0039】
スライドノブ25a,25bは、概略直方体であって、その底側面は、スライドパイプ24の上側面または底面側に対応するように湾曲されて凹んでいるとともに、スライドパイプ24のレール部24a,24bにそれぞれ対応するように、溝25cが形成されている。なお、スライドノブ25a,25bは本発明の摺動部材に相当する。
【0040】
スライドノブ25aの上側面には、支持部25dが一体成形によって設けられている。支持部25dは、スライドノブ25aの左右方向中央から上方向に延びる板状片である。支持部25dの左右側面には、一対の穴部25eが設けられている。なお、一対の穴部25eは連通した貫通孔であってもよい。
【0041】
支持部25dの先端面は、湾曲することで指が掛けやすい指掛部として形成されており、その基端面は、スライドノブ25aの基端面と面一に形成されている。
【0042】
一対の穴部25eには、ストッパーリング28が取り付けられている。ストッパーリング28は、ステンレス線材、またはゴムなどの弾性部材等からなる。ストッパーリング28は、概略C字形状であって両端部を一対の穴部25eにそれぞれ挿入することで、一対の穴部25eを回転軸として回動可能である。
【0043】
スライドストッパー26は、スライドパイプ24の外周に嵌合可能な概略筒状体である。スライドストッパー26上面側には、上方向に延びる板状の突起部26aが先端から基端側に向かって一体成形によって設けられている。
【0044】
ストッパーリング28の一対の穴部25eから露出している範囲の内周の長さは、前記穴部25eの一方から突起部26aの基端面側を周って穴部25eの他方まで達する距離と同等か、若干長く設計されている。なお、ストッパーリング28は、本発明の掛止部に相当する。
【0045】
脱気防止弁27は、インナーチューブ20から体腔、例えば腹腔から空気漏れが生じることを防ぐものである。
【0046】
さらに、インナーチューブ20の先端側から基端側に渡って、ワイヤー部材29a,29bが取付けられている。また、軟質部20a及び硬質部20bの各周壁には、このワイヤー部材29a,29bを挿通可能な一対の内部通路(図示せず。)が軸線方向に沿って設けられている。該内部通路は、その内部をワイヤー部材29a,29bが摺動できるように、ワイヤー部材29a,29bより若干大径に形成されている。
【0047】
ワイヤー部材29a,29bは、先端部がノーズカバー23に固定され、首振りパイプ22の外側を通過し、先端側の硬質部20b、先端側の軟質部20a、中央部の硬質部20b、後端側の軟質部20aの順に軸方向に沿って挿通され、基端部がスライドノブ25a,25bに固定されている。これにより、スライドノブ25a,25bは、スライドパイプ24のレール部24a,24bに沿って摺動可能に構成されている。
【0048】
インナーチューブ20の操作方法を説明する。
【0049】
まず、インナーチューブ20を空気漏れ防止リング33のバルブシートからアウターチューブ30に挿入し、アウターチューブ30の先端から首振りパイプ22が露出するまで前進させる。
【0050】
このとき、基端側の軟質部20aの一部は、
図1に示すように、アウターチューブ30の基端から露出する。該軟質部20aは屈曲可能であることから、インナーチューブ20の基端側は径方向外側に屈曲させることができ、操作時に内視鏡や鉗子が干渉することを防止できる。
【0051】
次いで、
図3に示すように、スライドノブ25aを基端側に摺動させていくと、ノーズカバー23がワイヤー部材29aを介して基端側に牽引されていく。このとき、首振りパイプ22は、屈曲可能であり、かつ、ワイヤー部材29aがその外側を通過しているため、首振りパイプ22はアウターチューブ30の軸線から遠ざかる方向に屈曲されていく。
【0052】
そして、スライドノブ25a及び支持部25dがスライドストッパー26及び突起部26aに接するまで摺動させると、首振りパイプ22の屈曲状態が完成する。
【0053】
この状態で、ストッパーリング28を跳ね上げて基端側に回転させ、突起部26aに引っ掛ける。このとき、上述の通り、ストッパーリング28の方が突起部26aの基端面までの長さと同等か若干長く若干設計されているので、跳ね上げるだけで、ストッパーリング28を突起部26aに掛止することができる。これにより、首振りパイプ22を屈曲させた状態で、保持することができる。
【0054】
反対に、屈曲状態を解消するときは、ストッパーリング28を持ち上げて先端側に回転させ、突起部26aから外す。そして、スライドノブ25bを基端側に摺動する。これによりノーズカバー23は、ワイヤー部材29bを介して基端側に牽引されるので、首振りパイプ22を屈曲していない伸展状態に回復させることができる。
【0055】
以上説明したとおり、インナーチューブ20は操作が容易であるため、片手で操作することもできる。例えば、一方の手の親指と人差し指で把持し、該親指の爪上にストッパーリング28を乗せた状態で、該親指の腹をスライドノブ25aの上側面及び支持部25dの先端面(指掛部)に乗せて、スライドノブ25aをスライドストッパー26及び突起部26aに接するまで摺動させ、ストッパーリング28を跳ね上げて基端側に回転させて突起部26aに引っ掛けることで、首振りパイプ22を屈曲状態で保持させる。
【0056】
反対に、屈曲状態を解消するときは、ストッパーリング28を人差し指で持ち上げて先端側に回転させ、突起部26aから外し、中指でスライドノブ25bを基端側に摺動させることで、首振りパイプ22を伸展状態に回復させる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、構成や形態は適宜変更可能である。
【0058】
例えば、突起部26aは、ストッパーリング28が掛止可能であれば足りるため、上方向に突起する形状に限られず、先端がインナーチューブ20の軸線に直交する面より基端側に向かって延びていれば足りるため、上方向から基端側に湾曲するフックでもよい。
【0059】
例えば、ストッパーリング28は、スライドノブ25aに対して直接または間接的に取り付けられていれば良いので、支持部25dは板形状でなくてもよく、省略してスライドノブ25aに直接ストッパーリング28を取り付けてもよい。
【0060】
例えば、ストッパーリング28は、コの字状であって左右一方側が開口していてもよい。また、ストッパーリング28は、支持部25dの穴部25eに挿入されることで回動可能となっているが、支持部25dに一対の円柱状の軸部を設けて、ストッパーリング28の一対の先端面に該軸部に対応する挿入孔を設けてもよい。
【0061】
また、本発明の掛止部について本実施形態ではストッパーリング28を例として説明したが、掛止部は、回動する軸部と、突起部に掛止される掛止片と、前記軸部と前記掛止片とを連結する連結部とを有すれば足りるため、スライドノブ25aと、該スライドノブ25aの上面から基端方向に延びる薄板状の連結部と、該連結部の先端縁から該連結部に交わる方向に延びる掛止片とが一体成形されると共に、スライドノブ25aと連結部との連結箇所を薄肉にすることで揺動可能に構成することもできる。
【0062】
また、ストッパーリング28の素材は、軟質のプラスチック、例えば塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等であって伸縮可能にすることもできる。この場合には、さらに、ストッパーリング28の一対の穴部25eから露出している範囲の内周の長さが、前記穴部25eの一方から突起部26aの基端面に沿って穴部25eの他方まで達する距離と同等か、若干短く設計されていることが好ましい。
【0063】
これによれば、ストッパーリング28を引っ張って伸ばしながら突起部26aに掛止させることで、首振りパイプ22を屈曲させた状態から緩むことを防止することができる。
【0064】
また、インナーチューブ20の突起部26aの基端側面は、上方向に向かって直線上に伸びているが、
図4に示すように、例えば、突起部26a’ の基端側面を階段状に形成することができる。これによれば、ストッパーリング28を、突起部26a’の階段状に形成された基端側面のどの箇所に引っかけるかによって、首振りパイプ22の屈曲する量を調整することができる。
【0065】
また、首振りパイプ22の屈曲する量を調整する構成は、
図4の例に限られない。
【0066】
例えば、突起部26aの上面に、突起部26aの基端側面と平行な溝部を複数設けてもよい。これによれば、ストッパーリング28を前記溝部のうち基端寄りに掛けることで、首振りパイプ22の屈曲する量を大きくし、逆に、ストッパーリング28を前記溝部のうち先端寄りに掛けることで、首振りパイプ22の屈曲する量を小さくすることができる。
【0067】
また、例えば、突起部26aの基端側面に、該突起部26aの根本側から先端側に向かって、複数の被掛止部を所定の間隔で離間させて設けてもよい。これによれば、ストッパーリング28を該突起部26aの根本側の被掛止部に対して斜めに被掛止することで、首振りパイプ22の屈曲する量を大きくし、ストッパーリング28を該突起部26aの先端側の被掛止部に対してインナーチューブ20と平行に被掛止することで、首振りパイプ22の屈曲する量を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0068】
10…処置具挿入補助具、20…インナーチューブ、22…屈曲部(首ふりパイプ)、25a…摺動部材(スライドノブ)、26a…突起部、28…掛止部(ストッパーリング)、29a…ワイヤー部材。