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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】コンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/00 20060101AFI20230207BHJP
   F24C 3/00 20060101ALI20230207BHJP
   H01H 3/12 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
F24C15/00 S
F24C3/00 J
H01H3/12 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018195694
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2020063873
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩之
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009217(JP,A)
【文献】特開平08-086444(JP,A)
【文献】特開2016-118337(JP,A)
【文献】特開平03-017435(JP,A)
【文献】特開2018-044709(JP,A)
【文献】特開2004-125336(JP,A)
【文献】特開2017-150724(JP,A)
【文献】米国特許第06627828(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00-15/36
F23K 1/00- 5/22
F23N 1/00- 5/26
H01H 3/00- 7/16
A47J 9/00-47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前進及び後退する被押圧部を備えた燃料供給装置の前側に操作ボタンが配置されるコンロであって、
前記操作ボタンは、
前記被押圧部の前側に配置され、当該コンロの外側に露出する前面を有し、上下方向に沿って延びる第1壁部と、
前記被押圧部の前側において前記第1壁部と前記被押圧部との間に配置され、前記第1壁部と一体的に設けられる第2壁部と、
前記第2壁部に連結されるとともに前記第2壁部の前面から前記第1壁部側へと延びる第3壁部と、
を備え、
前記第2壁部は、前記被押圧部側に突出した構成をなすとともに、前記第1壁部が後方側に変位する動作と連動して前記被押圧部を後方側へ押し込む突出部を有し、
前記突出部は、前記第2壁部の裏面において上下方向に延びるリブ状をなし、
前記第3壁部は、前記第2壁部における前記突出部の前側に連結されるとともに、上下方向に延びる壁状をなし、
前記第1壁部の後面と前記第2壁部の前面との間において前記第3壁部以外の領域に空隙が存在し、
前記第3壁部の前端は、前記第1壁部の後面から離間し、前記第1壁部の後面と前記第3壁部の前端との間に空隙が存在する
コンロ。
【請求項2】
前記第3壁部の厚さが前記突出部の厚さよりも小さい
請求項1に記載のコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前進及び後退する被押圧部を備えた燃料供給装置の前側に操作ボタンが配置されるコンロが知られている。例えば、特許文献1に開示されるコンロは、筐体2内に点火スイッチ431を備えたガス供給装置43が設けられ、筐体2の前部に設けられたフロントパネル50に点火スイッチ431を後退させる点火ボタン13が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-44709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示されるコンロの点火ボタン13には、筐体2内に設けられたガス供給装置43の点火スイッチ431に当接する当接部154が設けられている。当接部154は、コンロの外側に露出する前壁部131の背面から後方に突出する複数枚のリブ154Aによって構成されている。そして、点火ボタン13を押し込み操作すると、当接部154が点火スイッチ431の先端部に当接し、点火ボタン13が後方側に変位する動作と連動して点火スイッチ431が後退する。すると、ガス供給装置43内のガス流路が開放または遮断され、コンロバーナ7が点火または消火されるようになっている。
【0005】
ところで、点火ボタン13には、押し込み操作時に加わる荷重に耐えるために、十分な強度が要求される。しかしながら、点火ボタン13の強度を十分なものとするためにリブ154Aの厚さを大きくした場合、リブ154Aの形成に起因して前壁部131の前面にヒケを生じることが懸念される。このようなヒケが、点火ボタン13におけるコンロの外側に露出する面に表れるとコンロの美観が損なわれる虞があり、問題がある。
【0006】
本発明は上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、操作ボタンの露出面にヒケが表れることを抑制可能なコンロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のコンロは、
前進及び後退する被押圧部を備えた燃料供給装置の前側に操作ボタンが配置されるコンロであって、
前記操作ボタンは、
前記被押圧部の前側に配置され、当該コンロの外側に露出する前面を有する第1壁部と、
前記被押圧部の前側において前記第1壁部と前記被押圧部との間に配置され、前記第1壁部と一体的に設けられる第2壁部と、を備え、
前記第2壁部は、前記被押圧部側に突出した構成をなすとともに、前記第1壁部が後方側に変位する動作と連動して前記被押圧部を後方側へ押し込む突出部を有し、
前記第1壁部の後面と前記第2壁部の前面との間に空隙が存在する。
【発明の効果】
【0008】
上記一態様のコンロでは、操作ボタンの形成時に突出部の形成に起因するヒケが突出部の前側の部位に表れるとしても、第2壁部の前面に表れる懸念はあるが、空隙を介して前側に配置された第1壁部の前面(露出面)には表れにくくなる。よって、突出部に起因するヒケが露出面に表れてコンロの美観が損なわれることを、より確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1のガスコンロを概略的に示す正面図である。
図2図2は、実施例1のガスコンロを概略的に示す分解斜視図である。
図3図3は、点火ボタンが取り付けられた前面パネルを斜め後ろ側から見た斜視図である。
図4図4は、点火ボタンが取り付けられた前面パネルを後ろ側から見た後面図である。
図5図5は、点火ボタンを図1のA-A位置で切断した断面を概略的に示す断面図である。
図6図6(A)は、点火ボタンを図5のB-B位置で切断した断面を概略的に示す断面図である。図6(B)は、図6(A)の状態から点火ボタンを押し込み操作した状態を概略的に示す断面図である。
図7図7(A)は、実施例2のガスコンロにおける点火ボタンを概略的に示す断面図である。図7(B)は、図7(A)の状態から点火ボタンを押し込み操作した状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本発明の望ましい一例を示す。
上記コンロは、第2壁部に連結されるとともに第2壁部の前面から第1壁部側へと延びる第3壁部を備え、第1壁部の後面と第2壁部の前面との間において第3壁部以外の領域に空隙が存在していてもよい。この構成によれば、第3壁部によって第2壁部の前面付近を補強することができる。また、操作ボタンの形成時に第3壁部の形成に起因するヒケが生じる懸念に関しては、第1壁部の後面と第2壁部の前面との間において第3壁部以外の領域に空隙が確保されているため、少なくとも第1壁部の前面(露出面)において空隙の前位置ではヒケの影響が及びにくい。よって、第2壁部付近の強度向上とヒケに起因する美観低下の抑制を両立することができる。
【0011】
第3壁部の前端は、第1壁部の後面から離間していてもよい。このように第3壁部の前端が第1壁部の後面から離間していれば、操作ボタンの形成時に第3壁部の形成に起因するヒケが第1壁部の前面(露出面)に表れることを、より確実に抑制することができる。
【0012】
突出部は、リブ状をなし、第3壁部の厚さが突出部の厚さよりも小さい構成であってもよい。このように第3壁部の厚さが突出部の厚さよりも小さい構成であれば、第3壁部による補強構造を実現しつつ、第3壁部の形成に起因するヒケを、より小さいもの、あるいは生じないものとすることができる。
【0013】
<実施例1>
以下、実施例1について、図面を参照して説明する。
図1図2のように、ガスコンロ1(コンロ)は、ガスバーナ4,5,6、ガスバーナ4,5,6を収容するコンロ本体部1Aなどを有しており、図示しないキャビネットに組み込まれるビルトインコンロとして構成されている。
【0014】
以下の説明では、ガスコンロ1において、板状に構成された天板3の板面方向のうち、短手方向を前後方向とし、前後方向と直交する方向である天板3の長手方向を左右方向とする。更に、前後方向及び左右方向と直交する方向である天板3の板厚方向を上下方向として説明する。図1では、左右方向がガスコンロ1の左右方向であり、上下方向がガスコンロ1の上下方向である。また、図2において、左斜め下方、右斜め上方、右斜め下方、左斜め上方を、それぞれ、ガスコンロ1の前方、後方、右方、左方とする。
【0015】
ガスコンロ1は、システムキッチンのカウンタトップに設けられた開口に落とし込まれて設置されている。図2のように、ガスコンロ1はコンロ本体部1Aによって外殻(ケース体)が構成されており、このコンロ本体部1Aの内部にガスバーナなどの各種部品が収容された構成をなす。コンロ本体部1Aは、箱状の筐体部2と、筐体部2の上端部に固定される天板3と、筐体部2の前部に固定される前面パネル20(フロントパネル)と、前面パネル20の前側に装着される化粧パネル70と、を備える。
【0016】
筐体部2は、公知の金属材料を主体として上方側が開放した箱状に構成されている。左右に一対の側壁部(図2では、一方の側壁部2Cのみを図示)を備えるとともに、これら側壁部の後端部に連結される形で後壁部(図示略)が設けられる。また、筐体部2の前面部(図示略)はフレーム状又は壁状に構成されており、これら前面部、側壁部、後壁部によって筐体部2の内部空間の前後左右を囲む構成をなし、これら前面部、側壁部、後壁部の下部には底壁部(図示略)が連結されている。筐体部2は、これらの壁部によって上部が開口した箱状形態をなしており、筐体部2の上端部には、天板3(トッププレート)が取り付けられている。
【0017】
図1図2のように、天板3は、板状に構成されると共にガスバーナを露出させるための開口部(貫通孔)が複数個形成された構成をなす。天板3は、カウンタトップの上側に配置される。前面パネル20は、コンロ本体部1Aの前面部を構成する板状の壁部であり、例えば、金属材料又は樹脂材料を主体として構成されている。本構成では、前面パネル20は、筐体部2とは別部材として構成され、筐体部2の前端部を覆うように筐体部2に対して固定されているが、前面パネル20と筐体部2とが一体的に構成されていてもよい。
【0018】
図2のように、天板3において右手前(右端寄りかつ前端寄りの位置)にはガスバーナ(右バーナ)4、左手前(左端寄りかつ前端寄りの位置)にはガスバーナ(左バーナ)5、中央奥側にはガスバーナ(奥バーナ)6が夫々設けられている。各ガスバーナ4~6のそれぞれには、点火する為のイグナイタ(図示略)が設けられている。
【0019】
筐体部2の中央付近には、グリル部8が設けられている。グリル部8は、箱状に構成されたグリル庫、グリル庫を開閉するグリル扉8B、ガスバーナとして構成されるとともにグリル庫内に配置されるグリルバーナ(図示略)、グリル扉8Bの後方側においてグリル扉8Bと一体的に設けられる受け皿、受け皿の上に載置される焼き網などを備える。天板3において後端寄りの位置には、グリル庫と連通するグリル排気口9が設けられている。
【0020】
図1のように、筐体部2の前面の右寄りには2つの点火ボタン11、14が、左寄りにはもう2つの点火ボタン12、13が設けられている。点火ボタン11は、ガスバーナ4の点火及び消火を操作するために対応付けられた操作ボタンであり、点火ボタン12は、ガスバーナ5の点火及び消火を操作するために対応付けられた操作ボタンであり、点火ボタン13は、ガスバーナ6の点火及び消火を操作するために対応付けられた操作ボタンである。点火ボタン14は、グリル部8のガスバーナ(グリルバーナ)の点火及び消火を操作するための操作ボタンである。各点火ボタン11~14は、前面パネル20の前面よりも前方へ突出して設けられ、筐体部2の内部に設けられた図示しない制御回路と接続されており、使用者が押し込み操作すると、制御回路による制御により、その操作されたボタンに対応するガスバーナの点火又は消火が行われるようになっている。
【0021】
レバー16A,16B,16C,16Dはそれぞれ、対応するガスバーナ4~6又はグリル部8のグリルバーナにおける火力を調整するための火力調整レバーである。点火ボタン12,13の下側には、ガスコンロ1に電力を供給するための電池を収容する電池ボックス18が設けられている。点火ボタン11,14の下側には、各コンロによる調理の加熱温度、加熱時間等を設定するための操作パネルを前後方向に出退可能に保持する操作ユニット19が設けられている。
【0022】
図3図6を参照して、点火ボタン11について説明する。点火ボタン11~14は互いに同様の構成とされており、以下の説明では点火ボタン11を例にとって説明する。
点火ボタン11は、筐体部2内に配置された燃料供給装置80の前側に位置して、前面パネル20に取り付けられている。
【0023】
燃料供給装置80は、ガスバーナ4に連なるガス流路を有し、ガスバーナ4に供給するガス量を調節する装置である。燃料供給装置80は、点火消火機構81と、図示しないガス量増減機構、火力調節機構等を備えて構成されている。点火消火機構81は、燃料供給装置80の下部に設けられ、点火ボタン11の押し込み操作により、ガスバーナ6の点火消火を行う。点火消火機構81の前端部には、点火ボタン11によって押圧される被押圧部83(点火部、点火スイッチ等とも称される)が設けられている。被押圧部83は、前方に付勢され、プッシュプッシュ機構(図示略)により前進及び後退する構成となっている。被押圧部83は、点火ボタン11の押し込み操作により交互に前方位置と後方位置とに変更される。そして、燃料供給装置80は、被押圧部83の後方位置においてガス流路が開放され、被押圧部83の前方位置においてガス流路が遮断される構成となっている。
【0024】
「コンロ」においては、筐体内における燃料供給装置の位置が予め設定されている場合があり、そのような場合においては被押圧部の位置に応じて点火ボタンの配置や形状が制約され得る。点火ボタンは、コンロにおいて外観を構成するとともに、操作部としての機能上、使用者の目に付きやすい部品であり、コンロの美観保持という観点において、その配置や形状が問題となる部品と言える。特に、実施例1に係るガスコンロ1は、図1に示すように、点火ボタン11~14やグリル扉8Bの取っ手8C等によって、前面の全長にわたって左右方向に延びるライン状のデザインが構成されており、ガスコンロ1の美観保持という観点において、点火ボタン11の配置や形状が特に問題となる。このような事情に鑑みて、実施例1の点火ボタン11は次のような構成となっている。
【0025】
図3及び図4に示すように、点火ボタン11は、各部が一体に射出成形された樹脂成形品である。点火ボタン11は、前面パネル20の開口21から表面側に露出する本体部30と、本体部30から上方に延出して前面パネル20に取り付けられる取付部60と、を有する。前面パネル20には、後面側に点火ボタン11を軸支するための軸支孔23,23が設けられている。取付部60には、軸支孔23、23に軸支される一対の揺動軸61、61が左右に突出する形で設けられている。揺動軸61は、軸心61Aが左右方向となっている。軸心61Aは、揺動軸61の揺動(回動)の中心となる仮想的な中心軸線である。点火ボタン11は、本体部30が押し込み操作されることにより、前面パネル20に対して揺動軸61周りに前後に揺動する構成となっており、揺動時には軸心61A(中心軸線)を中心として揺動(回動)する。
【0026】
図4及び図5に示すように、本体部30は、前面パネル20の開口21より一回り小さい正面視矩形状をなし、全体としては後方に向けて開口した略箱形を有している。本体部30は、本体部30の上側において上下方向に沿って延びる形の前壁部32と、本体部30の下側において上下方向に沿って延びる形の下壁部34と、前壁部32の下端及び下壁部34の上端から前方に張り出した構成をなす張出壁部33と、これらの壁部32,33,34の周囲から後方に向けて立ち上がる周壁部35と、を備えている。
【0027】
前壁部32は、被押圧部83の前側に配置され、当該ガスコンロ1の外側に露出する前面32Aを有する。この前壁部32は、第1壁部の一例である。前壁部32は、前面パネル20に化粧パネル70を装着した状態で、前面20Aが化粧パネル70の前面と面一状をなす。張出壁部33は、点火ボタン11を押し込み操作する際に使用者が手指等を掛けて押圧する部分となっている。また、張出壁部33は、グリル扉8Bの取っ手8Cと化粧パネル70に設けられたパネル側張出部71と同等の張り出し寸法を有するとともに、上面が取っ手8C及びパネル側張出部71の上面と同一面内に位置し、これらと一連の意匠を構成する。
【0028】
点火ボタン11は、前壁部32と対向して、前壁部32の後方に配置される後壁部40を更に備えている。後壁部40は、被押圧部83の前側において前壁部32と被押圧部83との間に配置され、前壁部32と一体的に設けられている。この後壁部40は第2壁部の一例である。具体的には、後壁部40は、前壁部32と略同一形状を有する壁状をなし、前壁部32と平行して配置されている。そして、後壁部40は、上端が周壁部35の上側部分を介して前壁部32の上端と連結され、下端が接続壁部36を介して前壁部32の下端と連結される。周壁部35の上側部分は、前面パネル20の開口21に挿通される部位であり、点火ボタン11を押し込み操作していない状態では、上面が前面パネル20ないし化粧パネル70に覆われて外部に露出しないようになっている。接続壁部36は、前壁部32の下端において張出壁部33が前方に張り出す位置付近から、張出壁部33とは反対側に延びる壁状をなす。なお、後壁部40の左端と右端は前壁部32と連結されておらず、後述する空隙45を形成するための成形型を左右に抜くことができるようになっている(図6参照)。
【0029】
後壁部40は、被押圧部83側に突出した構成をなす突出部41を有する。また、後壁部40の前面40Aには、点火ボタン11を補強するための補強壁部50が設けられている。補強壁部50は、後壁部40に連結されるとともに後壁部40の前面40Aから前壁部32側へと延びる。この補強壁部50は、第3壁部の一例である。
【0030】
突出部41は、後壁部40の裏面40Bにおける被押圧部83と正対する位置から後方に向けて突出する。突出部41は、後壁部40の裏面40Bにおいて上下方向に延びるリブ状をなし、後壁部40の左右に3本のリブが並ぶ形で構成されている。この突出部41は、各リブの突出端面が被押圧部83に当接する当接面41Aを構成する。突出部41は、前壁部32が後方側に変位する動作と連動して被押圧部83を後方側へ押し込むものとされる(図6参照)。点火ボタン11は、突出部41がリブ状に形成されることにより、被押圧部83の位置に応じて突出部41の突出高さを適宜変更し、当接面41Aの位置を設計し易い構成とされる。本実施例1では、突出部41は、上方に向かうにつれて突出高さが高くなり、上端が周壁部35に連結される。
【0031】
補強壁部50は、空隙45の少なくとも一部を左右に仕切るようにして上下方向に延びる壁状をなし、後壁部40における突出部41の前側に連結している。補強壁部50は、上端が周壁部35の上側部分に連結されるとともに下端が接続壁部36に連結される一方、前端50Aが前壁部32に連結されない構成となっている。周壁部35の上側部分は、点火ボタン11の押し込み操作時には、上面が前方に下降する傾斜姿勢となり、前面パネル20の開口21から上面における前側部分が視認される可能性がある。本実施例1では、補強壁部50は周壁部35の前側部分(前壁部32に近い部位)には連結しておらず、補強壁部50の形成に起因して周壁部35にヒケが表れるとしても、そのようなヒケが外部から視認されにくくなっている。つまり、本実施例1では、ガスコンロ1の外側に露出する露出面を有しない部位に連結した補強壁部50により、後壁部40を構造的に補強し、点火ボタン11の強度を高めている。
【0032】
点火ボタン11には、前壁部32の後面32Bと後壁部40の前面40Aとの間に空隙45が存在する。空隙45は、前壁部32の後面32Bと後壁部40の前面40Aとの間において補強壁部50以外の領域45A,45Bに少なくとも存在する。本実施例1では、空隙45は、前壁部32の後面32Bと補強壁部50との間の領域45Cにも存在している。具体的には、空隙45は、前壁部32と、後壁部40と、周壁部35の上側部分と、接続壁部36とにより角筒状に囲まれた空間のうち、補強壁部50が占有する領域以外の領域45A,45B,45Cとされる。このような空隙45は、例えば、前後方向を型開き方向とする一対の成形型により点火ボタン11を射出成形する場合にアンダーカット形状となる。点火ボタンは、成形性の観点から、アンダーカット形状を有しないシンプルな箱型等とされることが一般的であるが、本実施例1では、空隙45を形成することにより、前壁部32を後壁部40における突出部41が接合する部位から離間させる構成を採用している。そして、前壁部32を所定の厚さの平板状に形成して、ガスコンロ1の外側に露出する前壁部32の前面32Aにヒケ等の局所的な成形不良を生じ難い構成が実現されている。
【0033】
続いて、本実施例1の点火ボタン11によるガスバーナ4の点火操作及び消火操作について、図6を参照しつつ説明する。
ガスバーナ4の消火状態のときに使用者が張出壁部33を押圧して点火ボタン11を押し込み操作すると、点火ボタン11が揺動軸61周りに後方に向けて回動する。すると、突出部41の当接面41Aが燃料供給装置80の被押圧部83に当接し、図6(A)に示す前方位置の被押圧部83を後方へ進行させる。後方に進行した被押圧部83は、プッシュプッシュ機構により、図6(B)に示す後方位置に保持され、燃料供給装置80のガス流路が開放される。そして、燃料供給装置80からガスバーナ4にガスが供給され、イグナイタによって点火される。
【0034】
ガスバーナ4が点火された状態において、使用者が張出壁部33等に手指をかけて、点火ボタン11を押し込み操作すると、点火ボタン11が揺動軸61周りに後方に向けて回動する。すると、突出部41の当接面41Aが燃料供給装置80の被押圧部83に当接し、図6(B)に示す後方位置の被押圧部83を更に後方へ進行させる。後方に進行した被押圧部83は、プッシュプッシュ機構により後方位置への保持が解除され、前方に向かう付勢力により図6(A)に示す前方位置に変位して燃料供給装置80のガス流路が遮断される。そして、燃料供給装置80からガスバーナ4にガスが供給されなくなり、ガスバーナ4が消火される。
【0035】
次に、本構成の効果を例示する。
上述したガスコンロ1では、点火ボタン11の形成時に突出部41の形成に起因するヒケが突出部41の前側の部位に表れるとしても、後壁部40の前面40Aに表れる懸念はあるが、空隙45を介して前側に配置された前壁部32の前面32A(露出面)には表れにくくなる。よって、突出部41に起因するヒケが露出面に表れてガスコンロ1の美観が損なわれることを、より確実に抑制することができる。
【0036】
点火ボタン11の露出面におけるヒケの発生は点火ボタン11の歩留まり低下の一因となる。上述したガスコンロ1では、突出部41に起因するヒケが露出面に表れにくい構成とされることにより、点火ボタン11の歩留まり低下を抑制することができる。
【0037】
点火ボタン11は、補強壁部50を備え、前壁部32の後面32Bと後壁部40の前面40Aとの間において補強壁部50以外の領域45A,45Bに空隙45が存在する。このような構成によれば、補強壁部50によって後壁部40の前面40A付近を補強することができる。具体的には、点火ボタン11の押し込み操作時、被押圧部83に当接する突出部41には荷重が掛かるが、補強壁部50により後壁部40の強度を確保することができ、突出部41に過度な荷重が掛かった場合であっても、点火ボタン11が破損する事態を抑制することができる。
また、点火ボタン11の形成時に補強壁部50の形成に起因するヒケが生じる懸念に関しては、前壁部32の後面32Bと後壁部40の前面40Aとの間において補強壁部50以外の領域45A,45Bに空隙45が確保されているため、少なくとも前壁部32の前面32A(露出面)において空隙45の前位置ではヒケの影響が及びにくい。よって、後壁部40付近の強度向上とヒケに起因する美観低下の抑制を両立することができる。
【0038】
補強壁部50の前端50Aは、前壁部32の後面32Bから離間している。このように補強壁部50の前端50Aが前壁部32の後面32Bから離間していれば、点火ボタン11の形成時に補強壁部50の形成に起因するヒケが前壁部32の前面32A(露出面)に表れることを、より確実に抑制することができる。
【0039】
<実施例2>
次に、図7等を参照し、実施例2に係るガスコンロについて説明する。実施例2で示すガスコンロにおいて、点火ボタン211は補強壁部250の構成が実施例1の点火ボタン11と異なるだけであり、それ以外は、実施例1のガスコンロ1と同様である。よって、図7で示す実施例2のガスコンロにおいて実施例1のガスコンロ1と同様の部分については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0040】
補強壁部250は、後壁部40に連結されるとともに後壁部40の前面40Aから前壁部32側へと延びる。この補強壁部250は、第3壁部の一例である。補強壁部250の厚さは突出部41の厚さよりも小さい。詳細には、補強壁部250は、突出部41を構成する各リブよりも肉薄とされ、補強壁部250の形成に起因するヒケを、突出部41の形成に起因するヒケより小さいもの(ヒケを生じない場合を含む)とすることができる程度の厚さ寸法に設計されている。補強壁部250は、空隙45を左右に仕切る壁状をなし、後壁部40における突出部41の前側に連結している。補強壁部250は、上端が周壁部35の上側部分に連結されるとともに下端が接続壁部36に連結され、前端が前壁部32の後面32Bに連結される構成となっている。本実施例2では、前壁部32と後壁部40の双方を補強壁部250により構造的に補強して、点火ボタン211の強度を確保可能となっている。
【0041】
点火ボタン211には、前壁部32の後面32Bと後壁部40の前面40Aとの間に空隙245が存在する。空隙245は、前壁部32の後面32Bと後壁部40の前面40Aとの間において補強壁部50以外の領域45A,45Bに存在する。具体的には、空隙245は、前壁部32と、後壁部40と、周壁部35の上側部分と、接続壁部36とにより角筒状に囲まれた空間のうち、補強壁部250が占有する領域以外の領域45A,45Bとされる。このような空隙245は、例えば、前後方向を型開き方向とする一対の成形型により点火ボタン11を射出成形する場合にアンダーカット形状となる。点火ボタンは、成形性の観点から、アンダーカット形状を有しないシンプルな箱型等とされることが一般的であるが、本実施例2では、空隙245を形成することにより、前壁部32を後壁部40における突出部41が接合する部位から離間させる構成を採用している。そして、補強壁部250が後面32Bに連結する部位を除いて、前壁部32を所定の厚さの平板状に形成して、ガスコンロ1の外側に露出する前壁部32の前面32Aにヒケ等の局所的な成形不良を生じ難い構成が実現されている。
【0042】
このように補強壁部250の厚さが突出部41の厚さよりも小さい構成であれば、補強壁部250による補強構造を実現しつつ、補強壁部250の形成に起因するヒケを、より小さいもの、あるいは生じないものとすることができる。
【0043】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
上述した実施例では、前壁部32が第1壁部に相当する構成を例示したが、第1壁部の構成はこれに限られない。被押圧部83の位置に応じて、下壁部34や張出壁部33等により第1壁部が構成されていてもよく、前壁部32と張出壁部33に跨って第1壁部が構成されていてもよい。
【0045】
上述した実施例では、後壁部40が第2壁部に相当する構成を例示したが、第2壁部の構成はこれに限られない。また、上述した実施例では、後壁部40がそれぞれ周壁部35と接続壁部36を介して前壁部32と連結される構成を例示したが、第2壁部が第1壁部と一体的に設けられる構成はこれに限られない。後壁部40は、例えば、側端部が前壁部32と連結される構成であってもよく、周壁部35と接続壁部36以外の他の部位を介して前壁部32と連結される構成であってもよい。
【0046】
上述した実施例では、突出部41が上下方向に延びるリブ状をなす構成を例示したが、これに限られない。突出部は、突起状をなしていてもよく、また、格子リブ状をなしていてもよい。
【0047】
上述した実施例では、空隙45,245が前壁部32の後面32Bと後壁部40の前面40Aとの間において補強壁部50,250以外の領域に存在する構成を例示したがこれに限られない。例えば、後壁部の強度が確保される場合には、補強壁部を設けず、空隙が前壁部32の後面32Bと後壁部40の前面40Aとの間において全域に存在する構成としてもよい。
【0048】
上述した実施例以外にも、補強壁部の形状、厚さ寸法、後壁部40への連結位置等を適宜設計可能である。例えば、上述した実施例では、補強壁部50,250が空隙を左右に仕切る壁状をなす構成を例示したが、補強壁部は空隙を上下に仕切る壁状をなしていてもよい。
【0049】
上述した実施例のガスコンロ1はビルトインコンロであるが、テーブルコンロ等であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ガスコンロ(コンロ)
11,211…点火ボタン(操作ボタン)
32…前壁部(第1壁部)
32A…前面
32B…後面
40…後壁部(第2壁部)
40A…前面
41…突出部
45,245…空隙
45A,45B…領域
50,250…補強壁部(第3壁部)
50A…前端
80…燃料供給装置
83…被押圧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7