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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】貨幣処理機およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/20 20190101AFI20230207BHJP
   G07D 1/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
G07D11/20
G07D1/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019092848
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020187629
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】中司 康貴
(72)【発明者】
【氏名】東城 直人
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-065416(JP,A)
【文献】特開平01-094496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00-13/00
G07D 1/00- 3/16
G07G 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣の取引操作が行われる上位端末機に接続され、入金口に投入された貨幣を識別および計数しつつ一時貯留部に貯留させると共に、入金計数金額が確定した後の入金収納コマンド信号を前記上位端末機から受信すると、前記一時貯留部から収納部への貨幣の収納処理動作を行う貨幣処理機であって、
前記入金収納コマンド信号を前記上位端末機から受信すると、予め設定された所定待ち時間の期間、前記収納処理動作を保留すると共に次の出金指示に係る出金関連コマンド信号の受信の有無を確認し、当該出金関連コマンド信号の受信があった場合には、当該出金関連コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、当該出金処理動作が終了した後に、前記収納処理動作を実行する入出金制御部を備えたことを特徴とする貨幣処理機。
【請求項2】
前記上位端末機が複数台接続されて、これら上位端末機にシェアされる場合には、取引操作の対象外となる前記上位端末機に対して、前記入出金制御部は前記所定待ち時間の期間、他方占有中のステータスを通知して取引不可とすることを特徴とする請求項1記載の貨幣処理機。
【請求項3】
貨幣の取引操作が行われる上位端末機に接続され、入金口に投入された貨幣を識別および計数しつつ一時貯留部に貯留させると共に、入金計数金額が確定した後の入金収納コマンド信号を前記上位端末機から受信すると、前記一時貯留部から収納部への貨幣の収納処理動作を行う貨幣処理機の制御方法であって、
前記入金収納コマンド信号を前記上位端末機から受信すると、予め設定された所定待ち時間の期間、前記収納処理動作を保留すると共に次の出金指示に係る出金関連コマンド信号の受信の有無を確認し、当該出金関連コマンド信号の受信があった場合には、当該出金関連コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、当該出金処理動作が終了した後に、前記収納処理動作を実行することを特徴とする貨幣処理機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣の入出金処理を行う貨幣処理機およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貨幣処理機においては、釣銭のある取引において顧客を待たせる時間を大幅に短縮できると共に、テラー処理のスムーズな実行を可能にする処理効率のよい現金自動取引装置の発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-19993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の発明によれば、その解決手段として、入出金機に投入された紙幣のうちの入金すべき紙幣を各金庫に収納させるコマンド信号の前に、釣銭を出金させるコマンド信号を入出金機に対して送信するようにコマンド信号のシ-ケンスの順番そのものを変更するという制御面での制約が生じている。
【0005】
ところで、貨幣処理機は、例えば窓口の自動取引機では接続される上位側であるテラー操作卓側のコマンド信号のシーケンスに基づいて、また例えば釣銭機では接続される上位側であるPOS端末側のコマンド信号のシーケンスに基づいて、それぞれ動作制御が行われるように設計されている。そして、当該シーケンスは標準化されたものも多いため、上記特許文献1に示されるように上位側であるテラー操作卓側やPOS端末側のコマンド信号のシーケンスを変更することは現実的には実施困難であるという課題が存在する。さらには、仮に、上位側であるテラー操作卓側やPOS端末側のコマンド信号のシーケンスを変更した場合であっても、結局は、それに整合するように貨幣処理機側の制御シーケンスの変更も伴うことになり、システム全体での開発工数が大きくなってしまうという課題も存在する。
【0006】
したがって、本発明は、上位端末機を含むシステム全体での開発工数を低減することが可能となる貨幣処理機およびその制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る第1の態様は、貨幣の取引操作が行われる上位端末機に接続され、入金口に投入された貨幣を識別および計数しつつ一時貯留部に貯留させると共に、入金計数金額が確定した後の入金収納コマンド信号を前記上位端末機から受信すると、前記一時貯留部から収納部への貨幣の収納処理動作を行う貨幣処理機であって、前記入金収納コマンド信号を前記上位端末機から受信すると、予め設定された所定待ち時間の期間、前記収納処理動作を保留すると共に次の出金指示に係る出金関連コマンド信号の受信の有無を確認し、当該出金関連コマンド信号の受信があった場合には、当該出金関連コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、当該出金処理動作が終了した後に、前記収納処理動作を実行する入出金制御部を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記第1の態様によれば、入出金制御部は、入金収納コマンド信号を上位端末機から受信すると、予め設定された所定待ち時間の期間、収納処理動作を保留すると共に次の出金指示に係る出金関連コマンド信号の受信の有無を確認し、出金関連コマンド信号の受信があった場合には、この出金関連コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、この出金処理動作が終了した後に、収納処理動作を実行する。よって、出金された貨幣を受けとるための顧客の待ち時間を短縮できるようになる。また、上位端末機側のコマンド信号のシーケンスを変更せず、貨幣処理機側の制御シーケンスを変更すれば良いので、上位端末機を含むシステム全体での開発工数を低減することが可能となる。つまり、システム全体での開発工数を大きくすることなく比較的に簡易に、釣銭のある取引において顧客を待たせる時間を短縮できるようになる。
【0009】
本発明に係る第2の態様は、第1の態様において、前記上位端末機が複数台接続されて、これら上位端末機にシェアされる場合には、取引操作の対象外となる前記上位端末機に対して、前記入出金制御部は前記所定待ち時間の期間、他方占有中のステータスを通知して取引不可とすることを特徴とする。
【0010】
上記第2の態様によれば、入出金制御部は、取引操作の対象外となる上位端末機に対して、所定待ち時間の期間、他方占有中のステータスを通知して取引不可とするため、まだ一の上位端末機との取引が完結する前に、他の上位端末機から割り込まれることを防止できる。
【0015】
本発明に係る第の態様は、貨幣の取引操作が行われる上位端末機に接続され、入金口に投入された貨幣を識別および計数しつつ一時貯留部に貯留させると共に、入金計数金額が確定した後の入金収納コマンド信号を前記上位端末機から受信すると、前記一時貯留部から収納部への貨幣の収納処理動作を行う貨幣処理機の制御方法であって、前記入金収納コマンド信号を前記上位端末機から受信すると、予め設定された所定待ち時間の期間、前記収納処理動作を保留すると共に次の出金指示に係る出金関連コマンド信号の受信の有無を確認し、当該出金関連コマンド信号の受信があった場合には、当該出金関連コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、当該出金処理動作が終了した後に、前記収納処理動作を実行することを特徴とする。
【0016】
上記第の態様によれば、入金収納コマンド信号を上位端末機から受信すると、予め設定された所定待ち時間の期間、収納処理動作を保留すると共に次の出金指示に係る出金関連コマンド信号の受信の有無を確認し、出金関連コマンド信号の受信があった場合には、この出金関連コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、この出金処理動作が終了した後に、収納処理動作を実行する。よって、出金された貨幣を受けとるための顧客の待ち時間を短縮できるようになる。また、上位端末機側のコマンド信号のシーケンスを変更せず、貨幣処理機側の制御シーケンスを変更すれば良いので、上位端末機を含むシステム全体での開発工数を低減することが可能となる。つまり、システム全体での開発工数を大きくすることなく比較的に簡易に、釣銭のある取引において顧客を待たせる時間を短縮できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上位端末機を含むシステム全体での開発工数を低減することが可能となる貨幣処理機およびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機を含む現金処理システムを示す正面図である。
図2】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の紙幣処理部を概略的に示すブロック図である。
図3】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の硬貨処理部を概略的に示すブロック図である。
図4】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の端末機制御部の制御内容を示すフローチャートである。
図5】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の端末機制御部の制御内容を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の端末機制御部の制御内容を示すフローチャートである。
図7】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の入出金制御部の通常モードおよび後収納モードの制御内容を示すフローチャートである。
図8】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の入出金制御部の通常モードの制御内容を示すフローチャートである。
図9】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の入出金制御部の通常モードの制御内容を示すフローチャートである。
図10】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の入出金制御部の通常モードの制御内容を示すフローチャートである。
図11】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の入出金制御部の後収納モードの制御内容を示すフローチャートである。
図12】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の入出金制御部の後収納モードの制御内容を示すフローチャートである。
図13】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の入出金制御部の後収納モードの制御内容を示すフローチャートである。
図14】本発明に係る一実施形態の貨幣処理機の入出金制御部の後収納モードの制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る貨幣処理機を図面を参照して以下に説明する。
【0024】
本実施形態の貨幣処理機は、金融機関の窓口に設置されて二名の窓口操作員(テラー)によって使用されるものである。なお、以下の左右は、貨幣処理機等を窓口操作員側から見た左右である。
【0025】
本実施形態の貨幣処理機1は、図1に示すように、左右二名の窓口操作員A,Bで一台が共用されるものであり、左右二名の窓口操作員A,Bに対して設けられた左右二機の上位端末機2A,2Bに通信I/Fを介して接続されている。貨幣処理機1は、上位端末機2A,2Bとで現金処理システム3を構成する。
【0026】
左側の窓口操作員A用の左側の上位端末機2A及び右側の窓口操作員B用の右側の上位端末機2Bは、いずれもパーソナルコンピュータ等からなるもので、いずれも貨幣の取引操作が行われる。左側の上位端末機2Aは、左側の窓口操作員Aに対して設けられた左側のカウンタ4Aの上に設置され、右側の上位端末機2Bは、右側の窓口操作員Bに対して設けられた右側のカウンタ4Bの上に設置される。
【0027】
上位端末機2Aは、対応する窓口操作員Aにより操作入力が行われるキーボード等からなる端末機操作部5Aと、対応する窓口操作員Aに対して表示を行う液晶モニタ等からなる端末機表示部6Aと、端末機操作部5Aからの信号に基づいて、端末機表示部6Aの表示画面等を制御すると共に各種コマンド信号を貨幣処理機1に送信する端末機本体7Aとを有している。端末機本体7Aは、各部を制御する端末機制御部8Aを備えている。
【0028】
上位端末機2Bも、同様に、端末機操作部5Bと、端末機表示部6Bと、端末機制御部8Bを含む端末機本体7Bとを有している。
【0029】
本実施形態の貨幣処理機1は、処理機本体11と、カルトン12とを有している。カルトン12は、処理機本体11とは別体であり、処理機本体11のカルトン配置部14に配置可能であって、カルトン配置部14から引き抜き可能である。カルトン配置部14には、カルトン配置部14に配置されたカルトン12を抜き出し不可にロックするカルトンロック部15が設けられている。
【0030】
処理機本体11には、処理機本体11が左側の窓口操作員A、すなわち上位端末機2Aに占有された状態にあることを点灯することにより表示する占有ランプ16Aが左側に設けられている。また、処理機本体11が右側の窓口操作員B、すなわち上位端末機2Bに占有された状態にあることを点灯することにより表示する占有ランプ16Bが右側に設けられている。また、処理機本体11には、これが上位端末機2Aに占有された状態にあると操作を受け付ける状態となる処理機操作部17Aが左側に、これが上位端末機2Bに占有された状態にあると操作を受け付ける状態となる処理機操作部17Bが右側に、それぞれ設けられている。
【0031】
処理機本体11は、貨幣のうちの紙幣の入出金処理を行う図2に示す紙幣処理部18と、貨幣のうちの硬貨の入出金処理を行う図3に示す硬貨処理部19とを有している。
【0032】
紙幣処理部18は、機外から入金紙幣が投入される紙幣入金口20と、紙幣入金口20に投入され紙幣入金口20から一枚ずつ繰り出された紙幣を識別しつつ計数する紙幣入金識別部21と、紙幣入金識別部21の識別結果に基づいて紙幣を複数の方向に振り分ける紙幣入金振分部22と、紙幣入金識別部21で受け入れ可能と識別されて紙幣入金振分部22で一方に案内された受入紙幣を一時貯留させる紙幣一時貯留部23とを有している。また、紙幣処理部18は、紙幣入金識別部21で受け入れ不可と識別されて紙幣入金振分部22で他方に案内された偽紙幣を含む受入不可紙幣を機外に取り出し可能に排除する紙幣出金口24と、紙幣入金振分部22でさらに他方に案内された再利用不可紙幣を繰り出し不可つまり出金不可に収納する紙幣機内リジェクト部25とを有している。
【0033】
紙幣一時貯留部23は、一時貯留した紙幣を一枚ずつ分離して繰り出すことになり、紙幣処理部18は、紙幣一時貯留部23から繰り出された紙幣を紙幣出金口24と紙幣入金識別部21とに振り分ける紙幣返却振分部31を有している。上記した紙幣入金振分部22は、紙幣一時貯留部23から紙幣返却振分部31を介して紙幣入金識別部21に案内された紙幣を再利用不可紙幣と再利用紙幣とに振り分けて、再利用紙幣をさらに金種別に振り分けることになる。再利用不可紙幣は、真紙幣であるものの損傷および汚れのうちの少なくともいずれか一方が所定レベルを超えているものである。紙幣処理部18は、このように紙幣入金振分部22で振り分けられた再利用紙幣を出金可能に金種別に収納する複数の紙幣収納部32を有している。複数の紙幣収納部32には、それぞれが再利用紙幣を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す紙幣計数繰出部33が設けられている。
【0034】
紙幣処理部18は、金種別の紙幣収納部32から紙幣計数繰出部33で繰り出された紙幣を計数しつつ識別して重送や斜行等の異常搬送等を検出する紙幣出金識別部41と、紙幣出金識別部41で識別後の紙幣をその識別結果に基づいて三方向に振り分ける紙幣出金振分部42と、紙幣出金振分部42で一方に案内された紙幣を収納する紙幣回収金庫43とを有している。紙幣出金振分部42は、紙幣を、紙幣回収金庫43と紙幣出金口24と紙幣機内リジェクト部25とに選択的に案内する。
【0035】
硬貨処理部19は、機外から入金硬貨が投入される硬貨入金口50と、硬貨入金口50に投入され硬貨入金口50から繰り出された硬貨を識別しつつ計数する硬貨入金識別部51と、硬貨入金識別部51の識別結果に基づいて硬貨を二方向に振り分ける硬貨入金振分部52とを有している。また、硬貨処理部19は、硬貨入金識別部51で受け入れ可能と識別されて硬貨入金振分部52で一方に案内された受入硬貨を一時貯留させる硬貨一時貯留部53と、硬貨入金識別部51で受け入れ不可と識別されて硬貨入金振分部52で他方に案内された偽硬貨を含む受入不可硬貨を機外に取り出し可能に排除する硬貨入金リジェクト口54とを有している。
【0036】
硬貨一時貯留部53は、一時貯留した受入硬貨を一枚ずつ分離して繰り出すことになり、硬貨処理部19は、硬貨一時貯留部53から繰り出された受入硬貨を二方向に振り分ける硬貨返却振分部61と、硬貨返却振分部61で一方に案内された受入硬貨を機外に取り出し可能に放出する硬貨放出口62と、硬貨返却振分部61で他方に案内された受入硬貨を識別しつつ計数する硬貨収納識別部63と、を有している。硬貨処理部19は、硬貨収納識別部63の識別結果に基づいて受入硬貨を再利用不可硬貨と再利用硬貨とに振り分けて、再利用硬貨をさらに金種別に振り分ける硬貨金種別振分部64と、硬貨金種別振分部64で一方に案内された再利用不可硬貨を繰り出し不可つまり出金不可に収納する硬貨機内リジェクト部65と、硬貨金種別振分部64で金種別に振り分けられた再利用硬貨を金種別に収納する複数の硬貨収納部66とを有している。硬貨収納部66は再利用硬貨を出金可能に収納する。金種別の硬貨収納部66は、それぞれが、硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す硬貨計数繰出部67を有している。再利用不可硬貨は、真硬貨であるものの損傷および汚れのうちの少なくともいずれか一方が所定レベルを超えているものである。
【0037】
硬貨処理部19は、金種別の硬貨収納部66から硬貨計数繰出部67で繰り出された硬貨を識別しつつ計数する硬貨出金識別部70と、硬貨出金識別部70で識別後の硬貨をその識別結果に基づいて三方向に振り分ける硬貨出金振分部71と、硬貨出金振分部71で一方に案内された硬貨を収納する硬貨回収金庫72とを有している。硬貨出金振分部71は、硬貨を、硬貨回収金庫72と硬貨放出口62と硬貨機内リジェクト部65とに選択的に案内する。
【0038】
図1に示すように、処理機本体11は、その全体を制御する入出金制御部81を有しており、入出金制御部81は、上位端末機2A,2Bの端末機制御部8A,8Bと通信I/Fを介して通信可能に接続されている。
【0039】
図2に示す紙幣処理部18は、例えば、以下の紙幣入金処理動作、紙幣収納処理動作、紙幣返却処理動作および紙幣出金処理動作を行う。
【0040】
「紙幣入金処理動作」
紙幣入金口20に機外から投入された紙幣を紙幣入金口20から一枚ずつ分離して機内へ繰り出し、紙幣入金識別部21で識別および計数する。そして、紙幣入金識別部21で、受け入れ可能と識別された受入紙幣を紙幣入金振分部22で紙幣一時貯留部23に搬送し、紙幣入金識別部21で受け入れ不可と識別された受入不可紙幣を紙幣入金振分部22で紙幣出金口24に搬送する。紙幣出金口24に搬送された受入不可紙幣は機外に取り出し可能となる。よって、貨幣処理機1は、紙幣入金口20に投入された紙幣を識別および計数しつつ紙幣一時貯留部23に貯留させる。
【0041】
「紙幣収納処理動作」
入金計数金額が確定した後の入金収納コマンド信号を上位端末機2A,2Bの対応するものから受信すると、紙幣処理部18は、紙幣一時貯留部23から紙幣を一枚ずつ分離して繰り出し、紙幣返却振分部31で紙幣入金識別部21に搬送し紙幣入金識別部21で識別する。そして、紙幣入金識別部21で再利用可能と識別された再利用紙幣を、紙幣入金振分部22によって金種別の紙幣収納部32のうちの対応する金種のものに案内して収納する。また、紙幣入金識別部21で再利用不可と識別された再利用不可紙幣を、紙幣入金振分部22によって紙幣機内リジェクト部25に案内して収納する。よって、貨幣処理機1は、入金計数金額が確定した後の入金収納コマンド信号を上位端末機2A,2Bの対応するものから受信すると、紙幣一時貯留部23から金種別の紙幣収納部32への紙幣の収納処理動作を行う。
【0042】
「紙幣返却処理動作」
入金計数金額が確定した後の入金キャンセル信号を上位端末機2A,2Bの対応するものから受信すると、紙幣処理部18は、紙幣一時貯留部23から紙幣を一枚ずつ分離して繰り出し、紙幣返却振分部31によって紙幣出金口24に搬送して機外に取り出し可能とする。
【0043】
「紙幣出金処理動作」
出金コマンド信号を上位端末機2A,2Bの対応するものから受信すると、紙幣処理部18は、金種別の紙幣収納部32の対応する金種のものから紙幣計数繰出部33で紙幣を計数しつつ繰り出し、紙幣出金識別部41で識別しつつ計数し、紙幣出金識別部41で正常搬送の再利用可能と識別された再利用紙幣を紙幣出金振分部42で紙幣出金口24に放出して取り出し可能とする。このとき、紙幣出金識別部41で識別できなかったり、紙幣出金識別部41で重送や斜行等の異常搬送と識別されたり、再利用不可と識別された再利用不可紙幣を紙幣出金振分部42で紙幣機内リジェクト部25に収納する。
【0044】
図3に示す硬貨処理部19は、例えば、以下の硬貨入金処理動作、硬貨収納処理動作、硬貨返却処理動作および硬貨出金処理動作を行う。
【0045】
「硬貨入金処理動作」
硬貨入金口50に機外から投入された硬貨を硬貨入金口50から一枚ずつ分離して機内へ繰り出し、硬貨入金識別部51で識別および計数する。そして、硬貨入金識別部51で受け入れ可能と識別された受入硬貨を硬貨入金振分部52で硬貨一時貯留部53に搬送し、硬貨入金識別部51で受け入れ不可と識別された受入不可硬貨を硬貨入金振分部52で硬貨入金リジェクト口54に搬送する。硬貨入金リジェクト口54に搬送された受入不可硬貨は機外に取り出し可能となる。よって、貨幣処理機1は、硬貨入金口50に投入された硬貨を識別および計数しつつ硬貨一時貯留部53に貯留させる。
【0046】
「硬貨収納処理動作」
入金計数金額が確定した後の入金収納コマンド信号を上位端末機2A,2Bの対応するものから受信すると、硬貨処理部19は、硬貨一時貯留部53から硬貨を一枚ずつ分離して繰り出し、硬貨返却振分部61で硬貨収納識別部63に搬送し硬貨収納識別部63で識別する。そして、硬貨収納識別部63で再利用可能と識別された再利用硬貨を、硬貨金種別振分部64によって金種別の硬貨収納部66のうちの対応する金種のものに案内して収納する。また、硬貨収納識別部63で再利用不可と識別された再利用不可硬貨を、硬貨金種別振分部64によって硬貨機内リジェクト部65に案内して収納する。よって、貨幣処理機1は、入金計数金額が確定した後の入金収納コマンド信号を上位端末機2A,2Bの対応するものから受信すると、硬貨一時貯留部53から金種別の硬貨収納部66への硬貨の収納処理動作を行う。
【0047】
「硬貨返却処理動作」
入金計数金額が確定した後の入金キャンセル信号を上位端末機2A,2Bの対応するものから受信すると、硬貨処理部19は、硬貨一時貯留部53から硬貨を一枚ずつ分離して繰り出し、硬貨返却振分部61によって硬貨放出口62に搬送しカルトン12に放出して機外に取り出し可能とする。
【0048】
「硬貨出金処理動作」
出金コマンド信号を上位端末機2A,2Bの対応するものから受信すると、硬貨処理部19は、金種別の硬貨収納部66の対応する金種のものから硬貨計数繰出部67で硬貨を計数しつつ繰り出し、硬貨出金識別部70で識別しつつ計数し、硬貨出金識別部70で再利用可能と識別された再利用硬貨を硬貨出金振分部71で硬貨放出口62に搬送しカルトン12に放出して機外に取り出し可能とする。このとき、硬貨出金識別部70で、識別できなかったり、再利用不可と識別された再利用不可硬貨を硬貨出金振分部71で硬貨機内リジェクト部65に収納する。
【0049】
貨幣処理機1は、保守モードにて、その処理機本体11内に設けられた図示略の仕様設定スイッチを保守員が切り替えることで、「通常モード」および「後収納モード」のいずれか一方を選択可能となっており、「通常モード」が選択設定されると「通常モード」で動作し、「後収納モード」が選択設定されると「後収納モード」で動作する。
【0050】
貨幣処理機1が「通常モード」に設定されている場合と、「後収納モード」に設定されている場合とについて、端末機制御部8A,8Bと入出金制御部81との通信を含む処理の流れの一例を図4図14のフローチャートに沿って説明する。まずは、貨幣処理機1が「通常モード」に設定されている場合におけるコマンド信号のシーケンスと貨幣処理機1の動作について説明する。
【0051】
窓口で入金取引が行われる際、顧客は入金する現金と、その入金金額を記載した入金伝票とをセットで窓口操作員に手渡す。ここでは、具体例として、990円の伝票金額が記載された入金伝票を持った顧客がカウンタ4Aに行き、カウンタ4Aの窓口操作員Aに、この入金伝票と、現金としての千円紙幣1枚とを手渡した場合の、端末機制御部8Aと入出金制御部81との通信等の流れの一例を説明する。
【0052】
端末機制御部8Aは、図4に示すように、窓口操作員Aによって上位端末機2Aの端末機操作部5Aに入金操作が行われると(ステップSa1:YES)、端末機表示部6Aの表示画面を入金画面にする(ステップSa2)。窓口操作員Aは、上位端末機2Aの端末機操作部5Aを操作して、この入金画面上の入金取引金額欄に伝票金額、具体的には990円を入力し図示略の確定釦を押下する。伝票金額が入力され確定釦が押下される(ステップSa3:YES)と、端末機制御部8Aは、入力された伝票金額、具体的には990円を伝票金額データとして確定する(ステップSa4)。
【0053】
この状態で、窓口操作員Aが端末機操作部5Aの図示略の入金釦を押下する。すると、この入金釦の押下を受けて(ステップSa5:YES)、端末機制御部8Aは、貨幣処理機1の入出金制御部81のステータスが「待機中」であるか否かを確認する(ステップSa6)。入出金制御部81のステータスが「待機中」であれば(ステップSa6:YES)、上位端末機2Aで貨幣処理機1を占有するための入金占有コマンド信号を入出金制御部81に出力する(ステップSa7)。入出金制御部81のステータスが「待機中」でなければ、他局の上位端末機2Bが貨幣処理機1を占有している状態等にあるため、ステップSa5に戻る。なお、貨幣処理機1は、入出金制御部81のステータスが「待機中」の場合に限り、端末機操作部5A,5Bによる新たな占有が可能になる。
【0054】
入出金制御部81は、ステータスが「待機中」の状態で、図7に示すように、入金占有コマンド信号が入力されると(ステップSb1:YES)、上位端末機2A,2Bのうち入金占有コマンド信号の出力元である上位端末機2Aに貨幣処理機1の占有権を与え、貨幣処理機1を上位端末機2Aによる占有状態にする(ステップSb2)。それと共に、入出金制御部81は、対応する占有ランプ16Aを点灯させて、貨幣処理機1が上位端末機2Aによる占有状態にあることを表示させ、さらにステータスが「占有中」に状態遷移する(ステップSb2)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「占有中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb3)。
【0055】
図1に示す窓口操作員Aは、貨幣処理機1の自分側の占有ランプ16Aが点灯して占有権を取得したことを確認した後に、現金千円紙幣1枚を貨幣処理機1の紙幣入金口20へセットし、処理機操作部17Aの図示略の計数釦を押下する。図7に示すように、計数釦が押下されると(ステップSb4:YES)、入出金制御部81は、貨幣処理機1での入金処理動作を実行することになる(ステップSb5)。入金処理動作では、図2に示す紙幣処理部18の紙幣入金口20が千円紙幣1枚を繰り出すことになり、この紙幣を、紙幣入金識別部21が千円紙幣1枚であると識別および計数し、紙幣入金振分部22が紙幣一時貯留部23へ貯留させる。そして、図7に示すように、この入金計数された入金データである千円紙幣1枚のデータを、通信I/Fを介して上位端末機2Aの端末機制御部8Aに通知する(ステップSb6)。
【0056】
端末機制御部8Aは、図5に示すように、入金データを受け付けると(ステップSa8:YES)、端末機表示部6Aの入金画面上の入金計数金額欄に、入金データが千円紙幣1枚である旨を表示させる(ステップSa9)。それと共に、入金データの入金金額データである1000円から伝票金額データである990円を減算した演算結果である10円の釣銭額データを端末機表示部6Aの入金画面上の釣銭金額欄に表示させる(ステップSa9)。
【0057】
窓口操作員Aが、この入金画面を目視して間違いがないことを確認した後、取引を成立させるために端末機操作部5Aの図示略の完了キーを押下することになる(ステップSa10:YES)。すると、端末機制御部8Aは、入金金額データを確定すると共に釣銭額データも確定する(ステップSa11)。
【0058】
この後、上位端末機2Aの端末機制御部8Aおよび貨幣処理機1の入出金制御部81は、その後の処理を行うことになる。ここでは、まず、その後の処理における端末機制御部8Aと、「通常モード」の入出金制御部81との間での通信I/Fでのコマンド信号のシーケンスと貨幣処理機1の動作とについて説明する。
【0059】
(1)まず、端末機制御部8Aが入出金制御部81に入金収納コマンド信号を出力する(ステップSa12)。入出金制御部81は、図8に示すように、入金収納コマンド信号が入力されると(ステップSb7:YES)、貨幣処理機1で収納処理動作を開始させることになり、ステータスが「収納中」に状態遷移する(ステップSb8)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「収納中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb9)。収納処理動作では、図2に示す紙幣処理部18の紙幣一時貯留部23が一時貯留していた千円紙幣1枚を繰り出すことになり、この紙幣を、紙幣返却振分部31が紙幣入金識別部21に案内し、紙幣入金識別部21が識別および計数して、紙幣入金振分部22が千円紙幣収納用の紙幣収納部32へ収納させる。
【0060】
(2)図8に示すように、収納処理動作が終了すると(ステップSb10:YES)、入出金制御部81は、ステータスが「収納終了」に状態遷移し(ステップSb11)、ステータスが「収納終了」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb12)。
【0061】
(3)図5に示すように、ステータスが「収納終了」である旨の通知信号を受けると(ステップSa13:YES)、端末機制御部8Aは、入金取引に係る占有権を解除すべく入出金制御部81に占有解除コマンド信号を出力する(ステップSa14)。なお、釣銭額データが0円である場合、すなわち釣銭がない場合、端末機制御部8Aは、ここまでで、今回の入金処理および収納処理に関する入出金制御部81への信号の出力を終了する。
【0062】
入出金制御部81は、図8に示すように、占有解除コマンド信号が入力されると(ステップSb13:YES)、占有解除コマンド信号の出力元である上位端末機2Aに与えた貨幣処理機1の占有権を解除し、占有ランプ16Aを消灯させて、ステータスは「待機中」に状態遷移する(ステップSb14)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb15)。なお、釣銭額データが0円である場合、入出金制御部81は、ここまでで、今回の入金処理および収納処理に関する端末機制御部8Aへの信号の出力を終了する。
【0063】
(4)釣銭額データが0円ではない場合、すなわち釣銭がある場合、端末機制御部8Aは、図6に示すように、入出金制御部81からステータスが「待機中」である旨の通知信号を受けると(ステップSa15:YES)、入出金制御部81で釣銭出金占有が可能であることを認識して、即座に、出金取引に係る占有権を取得すべく入出金制御部81に、出金関連コマンド信号である出金占有コマンド信号を出力する(ステップSa16)。
【0064】
入出金制御部81は、図9に示すように、出金占有コマンド信号が入力されると(ステップSb16:YES)、上位端末機2A,2Bのうち出金占有コマンド信号の出力元である上位端末機2Aに貨幣処理機1の占有権を与え、貨幣処理機1を上位端末機2Aによる占有状態にする(ステップSb17)。それと共に、入出金制御部81は、上位端末機2Aに対応する占有ランプ16Aを点灯させて、貨幣処理機1が上位端末機2Aによる占有状態にあることを表示させると共に、ステータスが「占有中」に状態遷移する(ステップSb17)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「占有中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb18)。
【0065】
(5)端末機制御部8Aは、図6に示すように、このステータスが「占有中」の通知を受けると(ステップSa17:YES)、入出金制御部81で釣銭の出金処理動作が可能であることを認識して、入出金制御部81に、出金関連コマンド信号である出金コマンド信号を出力する(ステップSa18)。出金コマンド信号には、釣銭額データが含まれることになり、ここでは、「釣銭10円硬貨1枚」の情報が含まれる。
【0066】
入出金制御部81は、図9に示すように、出金コマンド信号が入力されると(ステップSb19:YES)、貨幣処理機1での出金処理動作を開始すると共に、ステータスが「出金中」に状態遷移し(ステップSb20)、ステータスが「出金中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb21)。この出金処理動作では、釣銭額データを釣銭枚数を最小にする組み合わせで構成する各貨幣の枚数データを出金することになり、ここでは、図3に示す硬貨収納部66に収納していた10円硬貨1枚を硬貨計数繰出部67で繰り出し、硬貨出金識別部70で識別および計数後、硬貨出金振分部71の案内で硬貨放出口62から放出させる。すると、図1に示すように、カルトン配置部14に配置されてカルトンロック部15でロックされているカルトン12が硬貨を受け入れることになる。
【0067】
(6)入出金制御部81は、図9に示すように、出金コマンド信号に基づく出金処理動作が終了すると(ステップSb22:YES)、ステータスが「出金終了」に状態遷移し(ステップSb23)、ステータスが「出金終了」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb24)。
【0068】
(7)端末機制御部8Aは、図6に示すように、ステータスが「出金終了」である旨の通知信号を受けると(ステップSa19:YES)、釣銭を機外へ放出するために、放出コマンド信号を出力する(ステップSa20:YES)。
【0069】
入出金制御部81は、図10に示すように、放出コマンド信号が入力されると(ステップSb25:YES)、図1に示すカルトンロック部15を駆動しカルトンロックを解除して、カルトン12のカルトン配置部14からの抜き取りを可能にすると共に、ステータスが「放出中」に状態遷移する(ステップSb26)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「放出中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb27)。
【0070】
(8)入出金制御部81は、カルトン12がカルトン配置部14から抜き取られたことを図示略のセンサで検知すると(ステップSb28:YES)、ステータスが「放出終了」に状態遷移し(ステップSb29)、ステータスが「放出終了」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb30)。
【0071】
(9)端末機制御部8Aは、図6に示すように、ステータスが「放出終了」である旨の通知信号を受け付けると(ステップSa21:YES)、釣銭出金取引に係る占有権を解除すべく入出金制御部81に占有解除コマンド信号を出力する(ステップSa22)。なお、釣銭がある場合、端末機制御部8Aは、ここまでで、今回の入金処理、収納処理および釣銭の出金処理に関する入出金制御部81へのコマンド信号の出力を終了する。
【0072】
入出金制御部81は、図10に示すように、占有解除コマンド信号が入力されると(ステップSb31:YES)、占有解除コマンド信号の出力元である上位端末機2Aに与えた貨幣処理機1の占有権を解除し、占有ランプ16Aを消灯させて、ステータスは「待機中」に状態遷移する(ステップSb32)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSb33)。なお、釣銭がある場合、入出金制御部81は、ここまでで、今回の入金処理、収納処理および釣銭の出金処理に関する端末機制御部8Aへの信号の出力を終了する。
【0073】
以上は、貨幣処理機1が「通常モード」に設定されている場合におけるコマンド信号のシーケンスと貨幣処理機1の動作についての説明である。次に、貨幣処理機1が「後収納モード」に設定されている場合におけるコマンド信号のシーケンスと貨幣処理機1の動作について説明する。
【0074】
「後収納モード」の説明においては、取引金額等の取引にかかる条件設定は先に説明した「通常モード」と同じとし、相違する上位端末機2Aの端末機制御部8Aと貨幣処理機1の入出金制御部81との間での通信I/Fでのコマンド信号のシーケンスと貨幣処理機1の動作について説明する。なお、「後収納モード」においても、貨幣の一時貯留までの、端末機制御部8AのステップSa1~Sa12の流れおよび入出金制御部81のステップSb1~Sb6の流れは、「通常モード」と同様である。
【0075】
(1a)端末機制御部8Aが、通常モードと同様、図5に示すように入出金制御部81に入金収納コマンド信号を出力する(ステップSa12)。入出金制御部81は、図11に示すように、入金収納コマンド信号が入力されると(ステップSc1:YES)、貨幣処理機1で収納処理動作を開始させることなく、紙幣一時貯留部23に一時保留されていた千円紙幣1枚の収納処理動作を行わず保留したままとして、ステータスが「収納終了」に状態遷移する(ステップSc2)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「収納終了」である旨の通知信号を、端末機制御部8Aに出力する(ステップSc3)。なお、この場合、即座にステータスを「収納終了」として通知するのではなく、一旦は便宜上「収納中」とし、その後すぐに「収納終了」として、その旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力するようにしても良い。
【0076】
(2a)端末機制御部8Aは、図5に示すように、このステータスが「収納終了」である旨の通知信号を受けると(ステップSa13:YES)、入金取引に係る占有権を解除すべく入出金制御部81に占有解除コマンド信号を出力する(ステップSa14)。入出金制御部81は、図11に示すように、占有解除コマンド信号が入力されると(ステップSc4:YES)、占有解除コマンド信号の出力元である上位端末機2Aに与えた貨幣処理機1の占有権を解除し、占有ランプ16Aを消灯させて、ステータスが「待機中」に状態遷移する(ステップSc5)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を、端末機制御部8Aに出力する(ステップSc6)。
【0077】
入出金制御部81は、ステータスが「待機中」の旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力すると計時を開始し、この計時時間が所定待ち時間の期間内であるか否かを判定し(ステップSc7)、所定待ち時間の期間内である場合には(ステップSc7:YES)、端末機制御部8Aから出金占有コマンド信号を受信したか否かを判定する(ステップSc8)。すなわち、ステップSc6でステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力すると、端末機制御部8Aは、釣銭の出金処理を行う場合、図6に示すように、ステップSa15でこれを受信すると、ステップSa16で出金占有コマンド信号を出力することになるため、これを判定する。なお、この所定待ち時間は、例えば0.1秒や0.3秒や0.5秒や1.0秒というように、端末機制御部8A側のコマンド信号シーケンス速度に適応できるように、予め定められて図示略の記憶部に設定されている。なお、入出金制御部81は、この所定待ち時間の期間内においては、以下の第1,第2特殊処理を行う。
【0078】
<第1特殊処理>
この所定待ち時間の期間内は、入出金制御部81は、端末機制御部8Aから受信した入金収納コマンド信号に対しても、継続して収納処理動作を保留したままとする。
【0079】
<第2特殊処理>
この所定待ち時間の期間内は、他局である貨幣処理機1の相手側(上位端末機2B側)に対しては、ステータスが「待機中」である旨を通知せず、「他方占有中」のステータスを継続したままとし、この所定待ち時間を過ぎると、他局に対してステータスが「待機中」である旨を通知する。
【0080】
第1特殊処理は、端末機制御部8Aで行われる取引処理が入金だけの処理なのか、それとも入金の後に釣銭の出金が行われるのかを判別するために所定待ち時間の期間待つ処理であり、この所定待ち時間内に、端末機制御部8Aによって自局側の釣銭出金処理が行われるか、つまりは、端末機制御部8AがステップSa16で出金占有コマンド信号を出力し、これを受信するか否かを見極める仕組みとなっている。
【0081】
また、第2特殊処理は、端末機制御部8Aの制御によって自局側の釣銭の出金処理が行われる場合において、その前に上位端末機2Bの端末機制御部8Bによって、入金等の取引に係る占有コマンド信号の割り込みを防止する処理である。つまりは、上位端末機2A,2Bの2卓において貨幣処理機1がシェアされる形態では、自局側にて入金取引に続いて行われる釣銭出金取引の前に他局側にて取引が割り込まれるのは好ましくないため、それを防止する目的である。
【0082】
次に、この所定待ち時間の期間内に(ステップSc7:YES)、ステップSa16で端末機制御部8Aから出力された出金占有コマンド信号を受信した場合(ステップSc8:YES)と、受信しなかった場合(ステップSc7:NO)とについて、それぞれ説明する。
【0083】
<出金占有コマンド信号を受信した場合>
(3a)端末機制御部8Aからの出金占有コマンド信号を受信した場合(ステップSc8:YES)、入出金制御部81は、図12に示すように、貨幣処理機1を上位端末機2Aによる占有状態にし、これに対応する占有ランプ16Aを点灯させて、貨幣処理機1が上位端末機2Aによる占有状態にあることを表示させると共に、ステータスが「占有中」に状態遷移する(ステップSc9)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「占有中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc10)。
【0084】
(4a)端末機制御部8Aは、図6に示すように、このステータスが「占有中」の通知を受けると(ステップSa17:YES)、入出金制御部81で釣銭の出金処理動作が可能であることを認識して、入出金制御部81に釣銭額データである釣銭10円硬貨1枚の情報を含む出金コマンド信号を出力する(ステップSa18)。
【0085】
入出金制御部81は、図12に示すように、出金コマンド信号が入力されると(ステップSc11:YES)、貨幣処理機1での出金処理動作を開始すると共に、ステータスが「出金中」に状態遷移し(ステップSc12)、ステータスが「出金中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc13)。この出金処理動作では、図3に示す硬貨収納部66に収納していた10円硬貨1枚を硬貨計数繰出部67で繰り出し、硬貨出金識別部70で識別および計数後、硬貨出金振分部71の案内で硬貨放出口62から放出させる。すると、図1に示すように、カルトン配置部14に配置されてカルトンロック部15でロックされているカルトン12が硬貨を受け入れる。
【0086】
(5a)入出金制御部81は、図12に示すように、出金コマンド信号に基づく出金処理動作が終了すると(ステップSc14:YES)、ステータスが「出金終了」に状態遷移し(ステップSc15)、ステータスが「出金終了」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc16)。
【0087】
(6a)端末機制御部8Aは、図6に示すように、ステータスが「出金終了」である旨の通知信号を受けると(ステップSa19:YES)、釣銭を機外へ放出するために、放出コマンド信号を出力する(ステップSa20)。入出金制御部81は、図13に示すように、放出コマンド信号が入力されると(ステップSc17:YES)、カルトンロック部15を駆動しカルトンロックを解除して、カルトン12のカルトン配置部14からの抜き取りを可能にすると共に、ステータスが「放出中」に状態遷移する(ステップSc18)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「放出中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc19)。
【0088】
(7a)入出金制御部81は、カルトン12がカルトン配置部14から抜き取られたことを図示略のセンサで検知すると(ステップSc20:YES)、ステータスが「放出終了」に状態遷移し(ステップSc21)、ステータスが「放出終了」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc22)。
【0089】
(8a)端末機制御部8Aは、図6に示すように、ステータスが「放出終了」である旨の通知信号を受け付けると(ステップSa21:YES)、釣銭の出金取引に係る占有権を解除すべく入出金制御部81に占有解除コマンド信号を出力する(ステップSa22)。入出金制御部81は、図13に示すように、占有解除コマンド信号が入力されると(ステップSc23:YES)、占有解除コマンド信号の出力元である上位端末機2Aに与えた貨幣処理機1の占有権を解除し、占有ランプ16Aを消灯させて、ステータスが「待機中」に状態遷移する(ステップSc24)。そして、入出金制御部81は、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc25)。
【0090】
(9a)続いて、入出金制御部81は、図14に示すように、保留しておいた「収納処理」を実行する。すなわち、入出金制御部81は、貨幣処理機1で収納処理動作を開始させることになる(ステップSc26)。このとき、入出金制御部81は、ステータスが「ローカル中」に状態遷移することになり(ステップSc26)、ステータスが「ローカル中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc27)。なお、貨幣処理機1は、入出金制御部81のステータスが「ローカル中」の場合、上位端末機2A,2Bのいずれによる占有も不可となる。収納処理動作では、図2に示す紙幣処理部18の紙幣一時貯留部23が一時貯留していた千円紙幣1枚を繰り出すことになり、この紙幣を、紙幣返却振分部31が紙幣入金識別部21に案内し、紙幣入金識別部21が識別および計数して、紙幣入金振分部22が千円紙幣収納用の紙幣収納部32へ収納させる。
【0091】
(10a)図14に示すように、収納処理が終了すると(ステップSc28:YES)、入出金制御部81のステータスは「待機中」に状態遷移し(ステップSc29)、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc30)。
以上で、終了となる。
【0092】
以上により、後収納モードにおいて、入出金制御部81は、入金収納コマンド信号を上位端末機2A,2Bのうちの貨幣処理機1を占有しているものから受信すると、予め設定された所定待ち時間の期間、収納処理動作を保留すると共に次の出金指示に係る出金占有コマンド信号の受信の有無を確認し、出金占有コマンド信号の受信があった場合には、この出金占有コマンド信号の後に受信する出金コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、この出金処理動作が終了した後に、収納処理動作を実行する。
【0093】
また、上位端末機2A,2Bに貨幣処理機1がシェアされることになるが、貨幣処理機1の入出金制御部81は、取引操作の対象外となる上位端末機に対して、所定待ち時間の期間、他方占有中のステータスを通知して取引不可とする。
【0094】
<出金占有コマンド信号を受信しなかった場合>
(3b)所定の待ち時間の期間内に端末機制御部8Aからの出金占有コマンド信号を受信しなかった場合(ステップSc7:NO)、入出金制御部81は、取引が入金のみであったと判断して、保留しておいた「収納処理動作」を実行する。すなわち、入出金制御部81は、貨幣処理機1で収納処理動作を開始させることになり、ステータスが「ローカル中」に状態遷移して(ステップSc26)、ステータスが「ローカル中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc27)。収納処理動作では、図2に示す紙幣処理部18の紙幣一時貯留部23が一時貯留していた千円紙幣1枚を繰り出すことになり、この紙幣を、紙幣返却振分部31が紙幣入金識別部21に案内し、紙幣入金識別部21が識別および計数して、紙幣入金振分部22が千円紙幣収納用の紙幣収納部32へ収納させる。
【0095】
(4b)入出金制御部81は、図14に示すように、収納処理動作が終了すると(ステップSc28:YES)、ステータスが「待機中」に状態遷移し(ステップSc29)、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する(ステップSc30)。
以上で、終了となる。
【0096】
以上が「通常モード」と「後収納モード」との比較説明であるが、図4図6に示すように、端末機制御部8A側のコマンド信号シーケンスは、「通常モード」と「後収納モード」とで同じである。しかしながら、「後収納モード」は入出金制御部81の応答シーケンスと取引動作に「通常モード」との相違がある。より具体的には、「後収納モード」では、釣銭の出金がある場合には収納処理動作を最初の段階から一旦保留して、釣銭の出金処理動作を先に実行するという制御を入出金制御部81で行う。この制御によって、「通常モード」での釣銭の出金取引の占有解除のタイミングよりも、「後収納モード」での釣銭の出金取引の占有解除のタイミングの方が早くなる。つまり、この制御内容によって、釣銭の出金処理の終了を早めて、釣銭のある取引において顧客を待たせる時間を短縮することができる。
【0097】
以上に述べた本実施形態の貨幣処理機1によれば、入出金制御部81は、上位端末機2A,2Bのうちの貨幣処理機1を占有しているものから入金収納コマンド信号を受信すると、予め設定された所定待ち時間の期間、収納処理動作を保留すると共に次の出金指示に係る出金占有コマンド信号の受信の有無を確認し、出金占有コマンド信号があった場合には、これに続いて受信する出金コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、この出金処理動作が終了した後に、収納処理動作を実行する。よって、出金された貨幣を受けとるための顧客の待ち時間を短縮できるようになる。例えば、釣銭の払い出しや両替処理の場合、収納処理動作は後送りして先に貨幣の出金処理動作を実行するので、出金された貨幣を受けとるための顧客の待ち時間を短縮できるようになる。
【0098】
また、上位端末機2A,2B側のコマンド信号のシーケンスを変更せず、貨幣処理機1側の制御シーケンスを変更すれば良いので、上位端末機2A,2Bを含む現金処理システム3の全体での開発工数を低減することが可能となる。つまり、現金処理システム3の全体での開発工数を大きくすることなく比較的に簡易に、釣銭のある取引において顧客を待たせる時間を短縮できるようになる。
【0099】
また、上位端末機2A,2Bに貨幣処理機1がシェアされることになるが、貨幣処理機1の入出金制御部81は、取引操作の対象外となる上位端末機に対して、所定待ち時間の期間、他方占有中のステータスを通知して取引不可とする。このため、上位端末機2A,2Bの一方との取引が完結する前に、他方から割り込まれることを防止できる。すなわち、貨幣処理機1が複数台の上位端末機2A,2Bでシェアされる形態において、入金と釣銭出金との間や、入金と両替出金との間に、つまり、まだ自局の取引が完結する前に、他局から割り込まれることを防止できるようになる。
【0100】
次に、上記した実施形態の「後収納モード」の変形例1について以下に説明する。
【0101】
上記した実施形態の「後収納モード」では、所定待ち時間は、例えば0.1秒や0.3秒や0.5秒や1.0秒というように、端末機制御部8A,8B側のコマンド信号シーケンス速度に適応できるように、予め定められて記憶部に設定されている旨説明した。変形例1では、この所定待ち時間は一部は活用するものの、実施形態とは相違して、収納処理については保留せずに即座に収納処理を実行するようにする。変形例1では、収納処理開始に対し遅れて端末機制御部8Aからの出金占有コマンド信号を受信した場合は、その時点を以て収納処理を一旦中断して、釣銭の出金処理を優先させるように制御する。変形例1において上記実施形態とは相違する上位端末機2Aの端末機制御部8Aと貨幣処理機1の入出金制御部81との間での通信I/Fでのコマンド信号のシーケンスと貨幣処理機1の動作について、以下に説明する。
【0102】
(1a)通常モードと同様に、端末機制御部8Aが入出金制御部81に入金収納コマンド信号を出力する。入出金制御部81は、入金収納コマンド信号が入力されると、紙幣一時貯留部23に一時保留されていた紙幣の収納処理動作を開始させると共に、ステータスが「収納終了」に状態遷移して、ステータスが「収納終了」である旨の通知信号を、端末機制御部8Aに出力する。なお、即座にステータスを「収納終了」として通知するのではなく、一旦は便宜上「収納中」とし、その後すぐに「収納終了」として、その旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力するようにしても良い。
【0103】
(2a)このステータスが「収納終了」である旨の通知信号を受けると、端末機制御部8Aは、入金取引に係る占有権を解除すべく入出金制御部81に占有解除コマンド信号を出力する。占有解除コマンド信号が入力されると、入出金制御部81は、占有解除コマンド信号の出力元である上位端末機2Aに与えた貨幣処理機1の占有権を解除し、占有ランプ16Aを消灯させて、ステータスは「待機中」に状態遷移する。そして、入出金制御部81は、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を、端末機制御部8Aに出力する。
【0104】
入出金制御部81は、ステータスが「待機中」の旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力すると、所定待ち時間の期間内であるか否かを判定し、所定待ち時間の期間内である場合には、端末機制御部8Aから出金占有コマンド信号を受信したか否かを判定する。すなわち、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力すると、端末機制御部8Aは、釣銭の出金処理を行う場合、出金占有コマンド信号を出力することになるため、これを判定する。なお、この所定待ち時間は、例えば0.1秒や0.3秒や0.5秒や1.0秒というように、端末機制御部8A側のコマンド信号シーケンス速度に適応できるように、予め定められて図示略の記憶部に設定されている。なお、入出金制御部81は、この所定待ち時間の期間内においては、以下の特殊処理を行う。
【0105】
<特殊処理>
この所定待ち時間の期間内は、他局側(上位端末機2B側)に対しては「他方占有中」のステータスを継続したままとして「待機中」に状態遷移は行わない。これは、端末機制御部8Aによって自局側(上位端末機2A側)の釣銭の出金処理が行われる場合において、その前に上位端末機2Aの端末機制御部8Aによって、入金等の取引に係る占有コマンド信号の割り込みを防止する目的である。つまりは、上位端末機2A,2Bの2卓において貨幣処理機1がシェアされる形態では、自局側にて入金取引に続いて行われる釣銭出金取引の前に他局側にて取引が割り込まれるのは好ましくないため、それを防止する目的である。
【0106】
この所定待ち時間の期間内に、端末機制御部8Aから出力された出金占有コマンド信号を受信した場合と、受信しなかった場合とを、分けて説明する。
【0107】
<出金占有コマンド信号を受信した場合>
(3a)所定待ち時間の期間内に、端末機制御部8Aからの出金占有コマンド信号を受信した場合、入出金制御部81は、貨幣処理機1を上位端末機2Aによる占有状態にし、これに対応する占有ランプ16Aを点灯させて、貨幣処理機1が上位端末機2Aによる占有状態にあることを表示させると共に、ステータスが「占有中」に状態遷移する。そして、入出金制御部81は、ステータスが「占有中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。そして、さらに、入出金制御部81は、紙幣一時貯留部23から紙幣収納部32への収納処理動作を中断する。
【0108】
(4a)このステータスが「占有中」の通知を受けると、端末機制御部8Aは、入出金制御部81で釣銭の出金処理動作が可能であることを認識して、入出金制御部81に釣銭10円硬貨1枚の情報を含む出金コマンド信号を出力する。入出金制御部81は、出金コマンド信号が入力されると、貨幣処理機1での出金処理動作を開始すると共に、ステータスが「出金中」に状態遷移し、ステータスが「出金中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。この出金処理動作では、貨幣処理機1は、硬貨収納部66に収納されていた10円硬貨1枚を硬貨放出口62からカルトン12に放出させる。
【0109】
(5a)入出金制御部81は、出金コマンド信号に基づく出金処理動作が終了すると、ステータスが「出金終了」に状態遷移し、ステータスが「出金終了」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。
【0110】
(6a)ステータスが「出金終了」である旨の通知信号を受けると、端末機制御部8Aは、釣銭を機外へ放出するために、放出コマンド信号を出力する。放出コマンド信号が入力されると、入出金制御部81は、カルトンロック部15を駆動しカルトンロックを解除して、カルトン12のカルトン配置部14からの抜き取りを可能にすると共に、ステータスが「放出中」に状態遷移する。そして、入出金制御部81は、ステータスが「放出中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。
【0111】
(7a)入出金制御部81は、カルトン12がカルトン配置部14から抜き取られたことを図示略のセンサで検知すると、ステータスが「放出終了」に状態遷移し、ステータスが「放出終了」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。
【0112】
(8a)ステータスが「放出終了」である旨の通知信号を受け付けると、端末機制御部8Aは、釣銭出金取引に係る占有権を解除すべく入出金制御部81に占有解除コマンド信号を出力する。占有解除コマンド信号が入力されると、入出金制御部81は、占有解除コマンド信号の出力元である上位端末機2Aに与えた貨幣処理機1の占有権を解除し、占有ランプ16Aを消灯させて、ステータスが「待機中」に状態遷移する。そして、入出金制御部81は、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。
【0113】
(9a)入出金制御部81は、中断しておいた「収納処理」を実行する。すなわち、入出金制御部81は、貨幣処理機1で収納処理動作を再開させることになり、ステータスが「ローカル中」に状態遷移して、ステータスが「ローカル中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。収納処理動作では、紙幣一時貯留部23に一時保留されていた紙幣を搬送させて、対応する紙幣収納部32へ収納させる。
【0114】
(10a)収納処理が終了すると、入出金制御部81のステータスは「待機中」に状態遷移し、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。
以上で、終了となる。
【0115】
以上により、入出金制御部81は、入金収納コマンド信号を上位端末機2A,2Bのうちの貨幣処理機1を占有しているものから受信すると、収納処理動作を実行すると共に、次の出金指示に係る出金占有コマンド信号の受信の有無を確認し、出金占有コマンド信号の受信があった場合には、収納処理動作を中断し、その後に受信する出金コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、この出金処理動作が終了した後に、収納処理動作を再開して実行する。
【0116】
<出金占有コマンド信号を受信しなかった場合>
(3b)所定待ち時間の期間内に、出金占有コマンド信号を受信しなかった場合、入出金制御部81は、取引が入金のみであったと判断して、「収納処理動作」を継続して実行する。すなわち、入出金制御部81は、貨幣処理機1で収納処理動作を継続させることになり、ステータスが「ローカル中」に状態遷移して、ステータスが「ローカル中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。収納処理動作では、紙幣一時貯留部23に一時保留されていた紙幣を搬送させて、対応する紙幣収納部32へ収納させる。
【0117】
(4b)収納処理動作が終了すると、入出金制御部81のステータスは「待機中」に状態遷移し、ステータスが「待機中」である旨の通知信号を端末機制御部8Aに出力する。
以上で、終了となる。
【0118】
以上に述べた変形例1によれば、入出金制御部81は、上位端末機2A,2Bのうちの貨幣処理機1を占有しているものから入金収納コマンド信号を受信すると、収納処理動作を実行すると共に、次の出金指示に係る出金占有コマンド信号の受信の有無を確認し、出金占有コマンド信号があった場合には、収納処理動作を中断し、その後に受信する出金コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、この出金処理動作が終了した後に、収納処理動作を再開する。よって、出金された貨幣を受けとるための顧客の待ち時間を短縮できるようになる。すなわち、釣銭の払い出しや両替処理の場合、収納処理動作は後送りして先に貨幣の出金処理動作を実行するので、出金された貨幣を受けとるための顧客の待ち時間を短縮できるようになる。
【0119】
また、上位端末機2A,2B側のコマンド信号のシーケンスを変更せず、貨幣処理機1側の制御シーケンスを変更すれば良いので、上位端末機2A,2Bを含む現金処理システム3の全体での開発工数を低減することが可能となる。つまり、現金処理システム3の全体での開発工数を大きくすることなく比較的に簡易に、釣銭のある取引において顧客を待たせる時間を短縮できるようになる。さらに、出金コマンド信号の受信を待機する間に収納処理動作を進めておくことができるため、出金処理動作が終了した後に再開される収納処理動作に要する時間を短くすることができる。
【0120】
次に、「後収納モード」の変形例2について以下に説明する。
【0121】
実施形態の「後収納モード」では、所定待ち時間を要件として使用する形態で説明したが、これを使わずに、端末機制御部8A側で別の対応を行う方法もある。要は、入出金制御部81では、端末機制御部8Aからの入金収納コマンド信号の後に釣銭の出金コマンド信号が出力されるか否か、つまり釣銭の出金処理動作が伴うか、釣銭の出金処理動作が伴わず収納処理動作で終わるかが判別できれば良い。このため、コマンド信号のシ-ケンスまでは変更せず、その旨、端末機制御部8A側で入金収納コマンド信号を使い分ければ良いことになる。
【0122】
一例としては、上位端末機2Aの端末機操作部5Aで完了キーが押下されて、入金金額データが確定すると共に釣銭額データも確定した際に、端末機制御部8Aは入出金制御部81に対して、釣銭の出金処理動作が伴う場合には「釣銭ありの入金収納コマンド信号」を、また釣銭の出金処理動作が伴わない場合には「通常の入金収納コマンド信号」を出力するようにすれば良い。これによって、入出金制御部81は上記したように、「釣銭ありの収納コマンド信号」を受信した際には、その後に釣銭の出金コマンド信号が入力されることが判っているので、所定待ち時間の経過を観ることなく、即座に、収納処理動作を保留としたままとし、その後の釣銭の出金コマンド信号が入力された際に釣銭の出金処理動作を先に実行する。また、逆に、「通常の収納コマンド信号」を受信した際には、その後に釣銭の出金コマンド信号が入力されないことが判っているので、所定待ち時間の経過を観ることなく、即座に、収納処理動作を実行する。むろん、上記した端末機制御部8A側で入金収納コマンド信号を使い分ける際の「釣銭ありの収納コマンド信号」の表現は一例であり、これに替えて、釣銭の後に収納を指示する意味の「後収納コマンド信号」という表現であっても同じである。
【0123】
以上により、入出金制御部81は、上位端末機2A,2Bのうちの貨幣処理機1を占有しているものから釣銭ありの入金収納コマンド信号を受信すると、収納処理動作を保留すると共に、次の出金指示に係る出金占有コマンド信号の受信の有無を確認し、出金占有コマンド信号を受信があった場合には、その後に受信する出金コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、この出金処理動作が終了した後に、収納処理動作を実行する。
【0124】
以上に述べた変形例2によれば、入出金制御部81は、上位端末機2A,2Bのうちの貨幣処理機1を占有しているものから釣銭ありの入金収納コマンド信号を受信すると、収納処理動作を保留すると共に次の出金指示に係る出金占有コマンド信号の受信の有無を確認し、出金占有コマンド信号の受信があった場合には、その後に受信する出金コマンド信号による出金処理動作を優先して実行し、この出金処理動作が終了した後に、収納処理動作を実行する。よって、出金された貨幣を受けとるための顧客の待ち時間を短縮できるようになる。すなわち、釣銭の払い出しや両替処理の場合、収納処理動作は後送りして先に貨幣の出金処理動作を実行するので、出金された貨幣を受けとるための顧客の待ち時間を短縮できるようになる。
【0125】
また、上位端末機2A,2B側のコマンド信号のシーケンスを変更せず、貨幣処理機1側の制御シーケンスを変更すれば良いので、上位端末機2A,2Bを含む現金処理システム3の全体での開発工数を低減することが可能となる。つまり、現金処理システム3の全体での開発工数を大きくすることなく比較的に簡易に、釣銭のある取引において顧客を待たせる時間を短縮できるようになる。
【0126】
以上、実施形態の「後収納モード」およびその変形例1,2について説明したが、いずれもが、釣銭の出金処理動作を優先して収納処理動作を後処理として行うことが特徴である。ここで、「後収納モード」による収納動作中のステータスを「ローカル中」に状態遷移する旨説明したが、これに限らず当該ステータスを「待機中」に状態遷移するようにしても良い。つまり、この場合には、当該ステータスが「待機中」である為、他局の上位端末機での占有権取得の割り込みを許可出来るようになる。上位端末機2A側で入金処理が行われ、その後の釣銭の出金処理が行われて、一旦収納処理動作を保留または中断し、釣銭の出金処理が終わったタイミングで、上位端末機2B側で出金処理が行われた場合には、入出金制御部81の制御方法として、当該上位端末機2B側での占有権取得の割り込みを許可出来ているので出金処理動作を優先して行うようにして、前記した一旦保留または中断した上位端末機2A側の収納処理動作を、さらに一旦保留または中断して後送りするようにしても良い。
【0127】
また、さらには、入金処理によっては、入金した貨幣が紙幣一時貯留部23あるいは硬貨一時貯留部53でフル状態となって、それ以上入金計数できない状態が発生する場合も存在する。その状態において端末機制御部8Aから入金収納コマンド信号を受信した際には、入出金制御部81の制御方法として、紙幣入金口20および硬貨入金口50のうち、フルの一時貯留部に対応するものの貨幣残留情報を貨幣入金口センサで検知して、残留貨幣がない場合には、収納後の追加入金計数がないものとみなして、普通に前記した「後収納モード」を行えば良い。また、逆に残留貨幣がある場合には、収納後の追加入金計数があるものとみなして、今回のフルの一時貯留部のフル分の貨幣を収納する収納処理動作に限っては特殊処理として、前記した「通常モード」の制御を行い、収納処理動作終了後の追加入金計数した状態が一時貯留部をフルとしない状態において、端末機制御部8Aから入金収納コマンド信号を受信した際には、前記した「後収納モード」を行うようにすれば良い。
【0128】
要は、「後収納モード」とは、収納処理動作を出金処理動作に対し後送りにして、入出金制御部81のステータスが「ローカル中」に、バックグラウンドで収納処理動作を行う制御である。このため、「後収納モード」では、出金処理動作前に、入金計数動作が完了、即ち、収納処理動作して入金取引が完了する入金貨幣を確定しておく必要がある。
【0129】
なお、実施形態においては、貨幣処理機1として紙幣一時貯留部23および硬貨一時貯留部53を備えた窓口入出金装置を例にとって説明したが、これに限らず、紙幣一時貯留部および硬貨一時貯留部を備えた出納機であっても良いし、紙幣一時貯留部および硬貨一時貯留部を備えた釣銭機等であっても同様である。要は、紙幣一時貯留部および硬貨一時貯留部の貨幣の収納処理動作を一旦保留または中断する制御を行うことができれば、貨幣処理機全てが適用範囲となる。また、貨幣処理機の形態は、入出金の並行処理が可能なタイプであっても、不可能なタイプであっても不問である。要は、入出金並行処理の制御がサポートされていなく、必ず入金処理の後に釣銭の出金処理となるコマンド信号シーケンスの上位端末機であっても、上述したように、貨幣処理機側のコマンド信号シーケンスを変えて、「後収納モード」が実現できれば良いことになる。
【0130】
また、実施形態として、入金貨幣が千円紙幣1枚であり、釣銭貨幣が10円硬貨1枚の場合を例として説明したが、むろん、これに限らず、入金貨幣及び釣銭貨幣は、紙幣と硬貨、もしくは紙幣のみ、硬貨のみのいずれの組み合わせの場合であっても、制御内容は同様であって適用される。
【0131】
また、実施形態では、窓口入出金装置は2台の上位端末機2A,2Bによってシェアされる2卓接続の運用形態として説明したが、むろん、1台の上位端末機のみで使用される1卓接続の運用形態であっても良い。この場合には、自局の上位端末機での入金処理と釣銭処理の間に、他局の上位端末機での占有権取得の割り込み自体が発生することがなくなるので、実施形態の「後収納モード」における<第2特殊処理>を行う必要がなくなり、また、「後収納モード」の変形例1においても<特殊処理>を行う必要がなくなる。なお、出金指示に係るコマンド信号は、2卓接続の場合は「占有コマンド信号」が普通であるが、1卓接続の場合は、占有の概念無しで、いきなりの「出金計数コマンド信号」であっても良い。
【0132】
さらに、実施形態では、入金処理の後の出金処理を釣銭の出金処理として説明したが、釣銭の出金処理に限らず両替の出金であっても同じことである。一例として、千円紙幣1枚を入金して100円硬貨10枚を出金する正両替処理や、100円硬貨10枚を入金して千円紙幣1枚を出金する逆両替処理であっても、同様に適用されて、出金された貨幣を受けとるために顧客を待たせる時間を短縮できる効果を奏する。
【符号の説明】
【0133】
1 貨幣処理機
2A,2B 上位端末機
20 紙幣入金口
23 紙幣一時貯留部
32 紙幣収納部
50 硬貨入金口
53 硬貨一時貯留部
66 硬貨収納部
81 入出金制御部
図1
図2
図3
図4
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図10
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