IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アスコの特許一覧 ▶ 株式会社ユニテックの特許一覧

特許7221501座標算出装置、タッチパネル、および座標算出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】座標算出装置、タッチパネル、および座標算出方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230207BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/041 522
G06F3/044 120
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021135900
(22)【出願日】2021-08-23
【審査請求日】2021-08-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・公開した場所 三菱電機株式会社 名古屋製作所会議室 公開日 令和2年9月30日 ・公開した場所 三菱電機株式会社 名古屋製作所会議室 公開日 令和3年1月 6日 令和3年1月19日 令和3年1月29日 令和3年3月 2日 令和3年3月 3日 令和3年3月11日 ・販売した場所 株式会社リョーサン 名古屋第一支店 販売日 令和3年1月21日 ・公開した場所 ミカサ商事株式会社会議室 公開日 令和3年2月2日 ・公開した場所 システムギア株式会社 会議室 公開日 令和3年3月17日 ・公開した場所 株式会社テクナート 会議室 公開日 令和3年3月31日 ・公開した場所 三菱電機株式会社 名古屋製作所 公開日 令和3年3月31日 ・公開した場所 株式会社テクナート 会議室 公開日 令和3年6月18日 ・公開した場所 EJENTS(イージェンティエス) 公開日 令和3年6月25日 ・公開した場所 システムギア株式会社 会議室 公開日 令和3年3月27日 ・販売した場所 サンワテクノス株式会社 京都支店営業二課 販売日 令和3年5月18日 ・公開した場所 サンワテクノス株式会社会議室 公開日 令和3年7月12日 令和3年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】512093491
【氏名又は名称】株式会社アスコ
(73)【特許権者】
【識別番号】501160863
【氏名又は名称】株式会社ユニテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 浩
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-074973(JP,A)
【文献】国際公開第2020/045264(WO,A1)
【文献】特開2019-220165(JP,A)
【文献】特開2017-021516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を算出する座標算出装置であって、
受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極間の差分の総和を算出する第1差分算出部と、
前記第1差分算出部が算出した結果から、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第3総和算出部と、
前記第3総和算出部が算出した結果から、前記送信電極が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第1座標を算出する第1座標算出部と、
前記送信電極と前記受信電極とを切り替える切替部と、
前記切替部による切り替え後の受信電極である切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と、前記切替部による切り替え後の送信電極である切替後送信電極それぞれとの間の静電容量の変化量の、隣接する切替後受信電極間の差分の総和を算出する第2差分算出部と、
前記第2差分算出部が算出した結果から、切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と各切替後送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第4総和算出部と、
前記第4総和算出部が算出した結果から、前記切替後送信電極が接続されている方向である切替後送信電極方向におけるタッチ位置を示す第2座標を算出する第2座標算出部と、
前記第1座標および前記第2座標から、前記タッチパネルにおけるタッチ位置の二次元座標を算出する二次元座標算出部と、
前記第1差分算出部が算出した、前記隣接する受信電極間ごとの算出値の平均値である第1平均値を算出する第1平均値算出部と、
前記第2差分算出部が算出した、前記隣接する受信電極間ごとの算出値の平均値である第2平均値を算出する第2平均値算出部と、を備え
前記第3総和算出部は、前記第1差分算出部が算出した結果から、当該第1平均値分、減じた値を用いて、前記静電容量の変化量の総和を算出し、
前記第4総和算出部は、前記第2差分算出部が算出した結果から、当該第2平均値分、減じた値を用いて、前記静電容量の変化量の総和を算出する、座標算出装置。
【請求項2】
相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を算出する座標算出装置であって、
受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極間の差分の総和を算出する第1差分算出部と、
前記第1差分算出部が算出した結果から、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第3総和算出部と、
前記第3総和算出部が算出した結果から、前記送信電極が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第1座標を算出する第1座標算出部と、
前記送信電極と前記受信電極とを切り替える切替部と、
前記切替部による切り替え後の受信電極である切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と、前記切替部による切り替え後の送信電極である切替後送信電極それぞれとの間の静電容量の変化量の、隣接する切替後受信電極間の差分の総和を算出する第2差分算出部と、
前記第2差分算出部が算出した結果から、切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と各切替後送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第4総和算出部と、
前記第4総和算出部が算出した結果から、前記切替後送信電極が接続されている方向である切替後送信電極方向におけるタッチ位置を示す第2座標を算出する第2座標算出部と、
前記第1座標および前記第2座標から、前記タッチパネルにおけるタッチ位置の二次元座標を算出する二次元座標算出部と、を備え
前記第3総和算出部が算出した静電容量の変化量の最小値がマイナスの場合、当該マイナスの値分、加算した値を前記第3総和算出部の算出結果とし、
前記第4総和算出部が算出した静電容量の変化量の最小値がマイナスの場合、当該マイナスの値分、加算した値を前記第4総和算出部の算出結果とする、座標算出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の座標算出装置を含むタッチパネル。
【請求項4】
相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を算出する座標算出方法であって、
受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極間の差分の総和を算出する第1差分算出ステップと、
前記第1差分算出ステップで算出した結果から、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第3総和算出ステップと、
前記第3総和算出ステップで算出した結果から、前記送信電極が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第1座標を算出する第1座標算出ステップと、
前記送信電極と前記受信電極とを切り替える切替ステップと、
前記切替ステップでの切り替の受信電極である切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と、前記切替ステップでの切り替え後の送信電極である切替後送信電極それぞれとの間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極間の差分の総和を算出する第2差分算出ステップと、
前記第2差分算出ステップで算出した結果から、切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と各切替後送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第4総和算出ステップと、
前記第4総和算出ステップで算出した結果から、前記切替後送信電極が接続されている方向である切替後送信電極方向におけるタッチ位置を示す第2座標を算出する第2座標算出ステップと、
前記第1座標および前記第2座標から、前記タッチパネルにおけるタッチ位置の二次元座標を算出する二次元座標算出ステップと、を含み、
さらに、
前記第1差分算出ステップにて算出した、前記隣接する受信電極間ごとの算出値の平均値である第1平均値を算出する第1平均値算出ステップと、
前記第2差分算出ステップが算出した、前記隣接する受信電極間ごとの算出値の平均値である第2平均値を算出する第2平均値算出ステップと、を含み、
前記第3総和算出ステップでは、前記第1差分算出ステップにて算出した結果から、当該第1平均値分、減じた値を用いて、前記静電容量の変化量の総和を算出し、
前記第4総和算出ステップでは、前記第2差分算出ステップにて算出した結果から、当該第2平均値分、減じた値を用いて、前記静電容量の変化量の総和を算出する、座標算出方法。
【請求項5】
相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を算出する座標算出方法であって、
受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極間の差分の総和を算出する第1差分算出ステップと、
前記第1差分算出ステップで算出した結果から、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第3総和算出ステップと、
前記第3総和算出ステップで算出した結果から、前記送信電極が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第1座標を算出する第1座標算出ステップと、
前記送信電極と前記受信電極とを切り替える切替ステップと、
前記切替ステップでの切り替の受信電極である切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と、前記切替ステップでの切り替え後の送信電極である切替後送信電極それぞれとの間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極間の差分の総和を算出する第2差分算出ステップと、
前記第2差分算出ステップで算出した結果から、切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と各切替後送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第4総和算出ステップと、
前記第4総和算出ステップで算出した結果から、前記切替後送信電極が接続されている方向である切替後送信電極方向におけるタッチ位置を示す第2座標を算出する第2座標算出ステップと、
前記第1座標および前記第2座標から、前記タッチパネルにおけるタッチ位置の二次元座標を算出する二次元座標算出ステップと、を含み、
前記第3総和算出ステップにて算出した静電容量の変化量の最小値がマイナスの場合、当該マイナスの値分、加算した値を前記第3総和算出ステップの算出結果とし、
前記第4総和算出ステップにて算出した静電容量の変化量の最小値がマイナスの場合、当該マイナスの値分、加算した値を前記第4総和算出ステップの算出結果とする、座標算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザがタッチした位置を示す座標を算出する座標算出装置、タッチパネルおよび座標算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末やPDAなどの電子機器は、ユーザが操作するための入力手段として、タッチパネルを用いる機器が主流となりつつある。タッチパネルは、例えば、ユーザの指が接触することにより、タッチ位置に応じた信号を出力する入力デバイスである。
【0003】
ところで、タッチパネルは、タッチパネル上に水滴が付着することにより静電容量が変化すると、その水滴をユーザのタッチ位置であると誤検出してしまう。
【0004】
タッチパネルにおけるユーザのタッチ位置の誤検出は時に重大な問題を引き起こす。例えば、タッチパネルを備えるプログラマブル表示器は、FA(factory automation)の分野で発展してきたことから、一般に工場設備などの環境に設置されることが多い。このような環境において、タッチパネルによるユーザのタッチ位置の誤検出は、重大な事故につながりかねない。このため、タッチパネルによるユーザのタッチ位置の誤検出防止対策は重要となる。
【0005】
このような問題を考慮して、特許文献1には、相互容量方式のタッチパネルへの接触が水滴であるか否かを判定する技術が開示されている。
【0006】
また、水を検出すると座標出力を停止する技術も開示されている。この場合、水が検出されなくなると座標出力を再開する。特に、相互容量方式では,水が付着している領域をタッチされた場合、誤った座標出力の抑止が困難となる。そのため、相互容量方式では、水が付着している領域では,水が付着している間は座標出力を行わず、水が検出されなくなると,座標出力を再開する。これにより,水が付着していることに伴う誤った座標出力を防止することができる。
【0007】
また、相互容量方式と比較して、自己容量方式は、水の影響を受けにくい。そこで、水を検出した場合、相互容量方式から自己容量方式へ切り替えて座標の算出を行い、座標出力を行う技術も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4994489号公報(2012年5月18日登録)
【文献】特開2015-191550号公報(2015年11月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、水が付着しているとき、座標出力しない場合、水が無くなるまで座標出力を行えないことになる。水が付着している領域のみ、座標出力しない場合も、当該領域については水が無くなるまで座標出力は行えない。
【0010】
また、水の付着に応じて相互容量方式から自己容量方式に切り替える場合、相互容量方式と自己容量方式との2つの方式にそれぞれに対応した機能を備える必要があり、回路等が複雑になる。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、相互容量方式において、水の付着があっても適切に座標を算出できる座標算出装置等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る座標算出装置は、相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を算出する座標算出装置であって、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第1総和算出部と、前記第1総和算出部が算出した結果から、前記送信電極が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第1座標を算出する第1座標算出部と、前記送信電極と前記受信電極とを切り替える切替部と、前記切替部による切り替え後の受信電極である切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と、前記切替部による切り替え後の送信電極である切替後送信電極それぞれとの間の静電容量の変化量の総和を算出する第2総和算出部と、前記第2総和算出部が算出した結果から、前記切替後送信電極が接続されている方向である切替後送信電極方向におけるタッチ位置を示す第2座標を算出する第2座標算出部と、前記第1座標および前記第2座標から、前記タッチパネルにおけるタッチ位置の二次元座標を算出する二次元座標算出部と、を備えた構成である。
【0013】
前記の構成によれば、第1座標を、受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和から算出する。そして、第1座標を算出したときの受信電極と送信電極とを切り替えて、第2座標を、受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和に基づいて算出する。そして、第1座標と第2座標とを用いて二次元座標を算出する。これにより、付着した水の影響を相殺して座標を算出することができるので、水が付着している場合であっても、正確にタッチ位置を示す座標を算出することができる。
【0014】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る座標算出装置は、相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を算出する座標算出装置であって、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極間の差分の総和を算出する第1差分算出部と、前記第1差分算出部が算出した結果から、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第3総和算出部と、前記第3総和算出部が算出した結果から、前記送信電極が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第1座標を算出する第1座標算出部と、前記送信電極と前記受信電極とを切り替える切替部と、前記切替部による切り替え後の受信電極である切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と、前記切替部による切り替え後の送信電極である切替後送信電極それぞれとの間の静電容量の変化量の、隣接する切替後受信電極間の差分の総和を算出する第2差分算出部と、前記第2差分算出部が算出した結果から、切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と各切替後送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第4総和算出部と、前記第4総和算出部が算出した結果から、前記切替後送信電極が接続されている方向である切替後送信電極方向におけるタッチ位置を示す第2座標を算出する第2座標算出部と、前記第1座標および前記第2座標から、前記タッチパネルにおけるタッチ位置の二次元座標を算出する二次元座標算出部と、を備えた構成である。
【0015】
前記の構成によれば、第1座標を、受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の隣接する受信電極間の差分の総和から算出した静電容量の変化量に基づいて算出する。そして、第1座標を算出したときの受信電極と送信電極とを切り替えて、第2座標を、受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の隣接する受信電極間の差分の総和から算出した静電容量の変化量に基づいて算出する。そして、第1座標と第2座標とを用いて二次元座標を算出する。これにより、付着した水の影響を相殺して座標を算出することができるので、水が付着している場合であっても、正確にタッチ位置を示す座標を算出することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る座標算出装置は、前記第1差分算出部が算出した、前記隣接する受信電極間ごとの算出値の平均値である第1平均値を算出する第1平均値算出部と、前記第2差分算出部が算出した、前記隣接する受信電極間ごとの算出値の平均値である第2平均値を算出する第2平均値算出部と、を備え、前記第3総和算出部は、前記第1差分算出部が算出した結果から、当該第1平均値分、減じた値を用いて、前記静電容量の変化量の総和を算出し、前記第4総和算出部は、前記第2差分算出部が算出した結果から、当該第2平均値分、減じた値を用いて、前記静電容量の変化量の総和を算出するものであってもよい。
【0017】
前記の構成によれば、差分の平均値分、減じて静電容量の変化量を算出するので、差分を計測する機器のバランスが崩れていたとしても、正確に座標を算出することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る座標算出装置は、前記第3総和算出部が算出した静電容量の変化量の最小値がマイナスの場合、当該マイナスの値分、加算した値を前記第3総和算出部の算出結果とし、前記第4総和算出部が算出した静電容量の変化量の最小値がマイナスの場合、当該マイナスの値分、加算した値を前記第4総和算出部の算出結果とするものであってもよい。
【0019】
前記の構成によれば、差分から算出した静電容量の変化量が下振れしている場合であっても、正確に座標を算出することができる。
【0020】
本発明の一態様に係るタッチパネルは、上述した座標算出装置を含む構成であってよい。これにより、上述した効果を奏することができる。
【0021】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る座標算出方法は、相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を算出する座標算出方法であって、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第1総和算出ステップと、前記第1総和算出ステップで算出した結果から、前記送信電極が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第1座標を算出する第1座標算出ステップと、送信電極と受信電極とを切り替える切替ステップと、前記切替ステップにおける切り替え後の受信電極である切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と、前記切替ステップによる切り替え後の送信電極である切替後送信電極それぞれとの間の静電容量の変化量の総和を算出する第2総和算出ステップと、前記第2総和算出ステップで算出した結果から、前記切替後送信電極が接続されている方向である切替後送信電極方向におけるタッチ位置を示す第2座標を算出する第2座標算出ステップと、前記第1座標および前記第2座標から、前記タッチパネルにおけるタッチ位置の二次元座標を算出する二次元座標算出ステップと、を含む。
【0022】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る座標算出方法は、相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を算出する座標算出方法であって、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極間の差分の総和を算出する第1差分算出ステップと、前記第1差分算出ステップで算出した結果から、受信電極に沿って、当該受信電極と各送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第3総和算出ステップと、前記第3総和算出ステップで算出した結果から、前記送信電極が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第1座標を算出する第1座標算出ステップと、前記送信電極と前記受信電極とを切り替える切替ステップと、前記切替ステップでの切り替え後の受信電極である切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と、前記切替ステップでの切り替え後の送信電極である切替後送信電極それぞれとの間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極間の差分の総和を算出する第2差分算出ステップと、前記第2差分算出ステップで算出した結果から、切替後受信電極に沿って、当該切替後受信電極と各切替後送信電極との間の静電容量の変化量の総和を算出する第4総和算出ステップと、前記第4総和算出ステップで算出した結果から、前記切替後送信電極が接続されている方向である切替後送信電極方向におけるタッチ位置を示す第2座標を算出する第2座標算出ステップと、前記第1座標および前記第2座標から、前記タッチパネルにおけるタッチ位置の二次元座標を算出する二次元座標算出ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、相互容量方式において、水の付着があってもタッチされた位置を示す座標を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】タッチ検出を説明するための図であり、送信電極の形状を示す図である。
図2】タッチ検出を説明するための図であり、受信電極の形状を示す図である。
図3】送信電極と受信電極とを重ね合わせた様子を示す図である。
図4】送信電極にパルス電圧を印加したときの様子を示す図である。
図5】タッチパネルに指でタッチした様子を示す図である。
図6】(a)、(b)及び(c)は、タッチパネル上に、水の付着がなく、且つ、タッチがない場合における、上記タッチパネルに含まれる受信電極の電流波形を示す図である。
図7】(a)、(b)及び(c)は、タッチパネル上に、水の付着がなく、且つ、タッチがない場合における、上記タッチパネルに含まれる受信電極の電圧波形を示す図である。
図8】(a)、(b)及び(c)は、上記タッチパネルの上に、水の付着がなく、且つ、タッチがある場合における、上記受信電極の電圧波形を示す図である。
図9】(a)、(b)及び(c)は、上記タッチパネルの上に、水の付着があり、且つ、タッチがない場合における、上記受信電極の電圧波形を示す図である。
図10】(a)及び(b)は、上記受信電極の電圧波形の最大値と上記受信電極の静電容量の変化量との対応関係を示す図である。
図11】(a)及び(b)は、上記タッチパネル上に、水の付着がなく、且つ、タッチがない場合における、上記静電容量の変化量を示す図である。
図12】(a)及び(b)は、上記タッチパネル上に、水の付着がなく、且つ、タッチがある場合における、上記静電容量の変化量を示す図である。
図13】(a)及び(b)は、上記タッチパネル上に、水に付着があり、且つ、タッチがない場合における、上記静電容量の変化量を示す図である。
図14】(a)及び(b)は、上記タッチパネルにおける、指によるゴーストの発生を示す図である。
図15】(a)及び(b)は、上記タッチパネルにおける、指によるゴーストの発生を示す図である。
図16】上記タッチパネルにおける、指によって発生したゴーストの配置を示す図である。
図17】(a)及び(b)は、上記タッチパネル上に、水が斜めに付着した場合における、上記静電容量の変化量を示す図である。
図18】(a)及び(b)は、上記タッチパネル上に、水が斜めに付着した場合における、上記静電容量の変化量を示す図である。
図19】上記タッチパネル上に、水が斜めに付着した場合における、上記静電容量の変化量の配置を示す図である。
図20】上記タッチパネル上に、丸い水が付着した様子を示す図である。
図21】上記タッチパネル上に、丸い水が付着した場合における、上記静電容量の変化量の配置を示す図である。
図22】上記タッチパネル上に、丸い水が付着した場合における、上記静電容量の変化量の配置を示す図である。
図23】上記タッチパネル上に、3つの水が連結して付着した様子を示す図である。
図24】上記タッチパネル上に付着した、連接する3つの水によって生じる静電容量の変化量の配置を示す図である。
図25】上記タッチパネル上に丸い水が付着した様子を示す図である。
図26】上記タッチパネル上に、3つの水が連結して付着した様子を示す図である。
図27】上記タッチパネル上に付着した、連接する3つの水によって生じる静電容量の変化量の配置を示す図である。
図28】上記タッチパネル上に丸い水が付着した様子を示す図である。
図29】上記タッチパネル上に、4つの水が連結して付着した様子を示す図である。
図30】上記タッチパネル上に付着した、連接する4つの水によって生じる静電容量の変化量の配置を示す図である。
図31】上記タッチパネル上に付着した、連接する4つの水によって生じる静電容量の変化量の値の配置を示す図である。
図32】タッチパネル装置の概略構成を示すブロック図である。
図33】水付着の有無の判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
図34】変形例に係るタッチパネル上に、水の付着がなく、且つ、タッチがある場合における、上記タッチパネルに含まれる受信電極の静電容量の変化量及びその測定値を示す図である。
図35】変形例に係る水付着の有無の判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
図36】本発明の実施形態に係る座標算出装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
図37】静電容量の変化量の総和を説明するための図である。
図38】送信電極と受信電極との切り替え後における、静電容量の変化量の総和を説明するための図である。
図39】水が付着し、当該領域を指でタッチした場合における静電容量の変化量を示す図である。
図40】座標算出装置における処理の流れを示すフローチャートである。
図41】本発明の別の実施形態に係る座標算出装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
図42】(a)及び(b)は、差動アンプのバランスが崩れているときの測定値及び静電容量の変化量を示す図である。
図43】(a)、(b)及び(c)は、平均値を用いて測定値を補正する場合の測定値、測定値(補正)、静電容量の変化量を示す図である。
図44】(a)、(b)及び(c)は、静電容量の変化量が下振れしている場合の静電容量の変化量を示す図である。
図45】座標算出装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔タッチを検出する仕組み〕
まず、本発明の実施形態の前提として、相互容量方式によりタッチ検出を行うタッチパネルにおいてタッチされた位置を示す座標を算出する仕組みについて説明する。相互容量方式によるタッチ検出は、送信電極14と受信電極12との間の静電容量を測定し、測定した静電容量が通常の状態よりも減少した場合、タッチがあったと検出する。送信電極14と受信電極12との間の静電容量の測定は、送信電極14に方形波パルス形状の電圧を印加し、静電誘導によって受信電極12に生じる電位を測定することによって行う。
【0026】
図1~3を参照して、相互容量方式の静電容量型タッチパネルの構造について説明する。なお、ここでは、ダイヤモンドパターンと呼ばれる電極構造を例に挙げて説明する。各電極はITO膜を成形することによって作製されている。
【0027】
図1に、送信電極14(T1~T5)の形状を示す。図1では、送信電極14は、四角いパターンが横一列に接続されている例を示す。
【0028】
図2に、受信電極12(R1~R5)の形状を示す。図2では、受信電極12は、四角いパターンが縦一列に接続されている例を示す。
【0029】
図3に、送信電極14と受信電極12とを重ね合わせた様子を示す。ここでは、識別の容易さのため、送信電極14を灰色で示す。送信電極14と受信電極12とは、絶縁層によって絶縁されている。
【0030】
次に図4、5を参照して、タッチを検出する原理について説明する。図4に、送信電極14にパルス電圧を印加したときの様子を示す。図4に示すように、タッチパネル1の基板15に送信電極14および受信電極12が絶縁層を介して重なるように配置されている。送信電極14の一つに方形波パルス状の駆動電圧を印加すると、当該送信電極14と隣接する受信電極12には、送信電極14と受信電極12とが電極の辺が隣接していることにより形成される静電容量結合を介して、電流が流れる。これにより,受信電極12に電荷が誘導され、電位が変化する。また、送信電極14の電極面は、広く空間に面しているので、受信電極12との結合に寄与しない電気力線は空間に放射される。駆動電圧を印加していない送信電極14は、すべて固定電位に接続されている。これにより、駆動電圧が印加されていない送信電極14はすべて、アースに接続された状態となっていることになる。
【0031】
なお、タッチ検出の感度を高めるなどの理由により、隣接する複数の送信電極14に駆動電圧を印加する場合がある。これらの複数の送信電極14を一つの送信電極14とみなすことにより同一の原理が成り立つので、本実施形態では、一つの送信電極14に駆動電圧を印加する構成を説明する。
【0032】
図5に、タッチパネル1に指Fでタッチした様子を示す。指Fでタッチパネル1にタッチすると、受信電極へ流れていた電気力線が指Fに吸い取られることになる。これにより、受信電極12の電位の変化が小さくなる。この電位の変化が少なくなった量を検出することにより、送信電極14と受信電極12との間の静電容量(相互容量)の減少分を計測することができる。
【0033】
〔水付着の検出方法〕
図6を参照して、相互容量方式のタッチパネル1に水の付着がなく、且つ、タッチがない場合における、受信電極12と送信電極14との間の電流波形について説明する。図6の(a)は、タッチパネル1の断面模式図、図6の(b)は、送信電極14に印加される印加電圧を示す図、図6の(c)は、受信電極12と送信電極14との間の電流波形を示す図である。
【0034】
図6の(a)に示すように、タッチパネル1は、フロントカバー11、受信電極12、絶縁層13、送信電極14及び基板15を備える。基板15は、絶縁物からなる基板であり、基板15上に、送信電極14、絶縁層13、受信電極12及びフロントカバー11がこの順で積層されている。なお、タッチパネル1は公知の相互容量方式のタッチパネルであり、ここでは、その構造に関する説明は省略する。
【0035】
タッチパネル1に水の付着がなく、且つ、タッチがない場合、受信電極12と送信電極14との間に、フロントカバー11及び絶縁層13を介した、静電容量C1が形成される。図6の(b)に示す電圧を送信電極14に印加すると、受信電極12と送信電極14との間の電流波形は図6の(c)に示す電流波形となる。
【0036】
次に、図7を参照し、相互容量方式のタッチパネル1に水の付着がなく、且つ、タッチがない場合における、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形について説明する。図7の(a)は、タッチパネル1の断面模式図、図7の(b)は、送信電極14に印加される印加電圧を示す図、図7の(c)は、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形を示す図である。
【0037】
図7の(a)に示すように、タッチパネル1は、フロントカバー11、受信電極12、絶縁層13、送信電極14及び基板15を備える。基板15は、絶縁物からなる基板であり、基板15上に、送信電極14、絶縁層13、受信電極12及びフロントカバー11がこの順で積層されている。なお、タッチパネル1は公知の相互容量方式のタッチパネルであり、ここでは、その構造に関する説明は省略する。
【0038】
タッチパネル1に水の付着がなく、且つ、タッチがない場合、受信電極12と送信電極14との間に、フロントカバー11及び絶縁層13を介した、静電容量C1が形成される。図7の(b)に示す電圧を送信電極14に印加すると、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形は図7の(c)に示す電圧波形となる。
【0039】
次に、図8を参照し、タッチパネル1に水の付着がなく、且つ、指Fのタッチがある場合における、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形について説明する。図8の(a)は、タッチパネル1の断面模式図、図8の(b)は、送信電極14に印加される印加電圧を示す図、図8の(c)は、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形を示す図である。
【0040】
タッチパネル1に水の付着がなく、且つ、タッチがある場合、図7の(a)と同様、受信電極12と送信電極14との間に、フロントカバー11及び絶縁層13を介した、静電容量C1が形成される。
【0041】
さらに、指Fのタッチにより、静電容量C2、C3及びC4が、それぞれ形成される。
【0042】
人体は受信電極12に比べて大きい表面積を持つため、静電容量C4は静電容量C1、C2及びC3よりも大きく、また、静電容量C1、C2及びC3は同程度である。また、人体が接地電位との間に導電性を有している場合もある。
【0043】
指Fのタッチにより、静電容量C3と人体とが直列に接続されるため、図8の(b)に示す電圧を送信電極14に印加すると、指Fを介した、受信電極12から人体へ電流が大きく分流される。このため、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形の最大値は、図7の(c)に示した電圧波形の最大値よりも小さくなる。図8の(b)に、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形を示す。
【0044】
最後に、図9を参照し、タッチパネル1に水Wの付着があり、且つ、タッチがない場合における、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形について説明する。図9の(a)は、タッチパネル1の断面模式図、図9の(b)は、送信電極14に印加される印加電圧を示す図、図9の(c)は、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形を示す図である。
【0045】
タッチパネル1に水Wの付着があり、且つ、タッチがない場合、図7の(a)と同様、受信電極12と送信電極14との間に、フロントカバー11及び絶縁層13を介した、静電容量C1が形成される。さらに、水Wの付着により、静電容量C5及びC6が、それぞれ形成される。
【0046】
ここで、図8の(a)で示した指Fでタッチパネル1をタッチしたときと異なり、水Wは接地電位と電気的に接続されてはいない。このため、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形の最大値は、図7の(c)に示した電圧波形の最大値よりも大きくなる。図9の(b)に、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形を示す。
【0047】
図10の(a)は、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形の最大値の大小を示す図、図10の(b)は、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量を示す図である。
【0048】
図7図9を用いて説明したとおり、受信電極12の電圧波形の最大値は、受信電極12と送信電極14との間の静電容量に比例する値となる。本発明者らは、指のタッチ及び水の付着のない状態からある状態になったときに生じる、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量に着目した。
【0049】
図10の(a)及び(b)に示すように、指によるタッチがなく、且つ、水の付着もない状態における、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形の最大値を基準とし、指のタッチによって減少する、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量をプラスの値として検出する。一方、水の付着によって増加する、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量をマイナスの値として検出する。
【0050】
図11の(a)及び(b)に、タッチパネル1に水の付着がなく、且つ、タッチがない場合における、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形の最大値と、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量と、の関係を示す。
【0051】
図11の(a)において、T1は電圧が印加された送信電極14を、T2は電圧が印加されていない送信電極14を、それぞれ表すものである。図11の(b)に示すように、受信電極12と送信電極14との間の静電容量は、いずれの受信電極12(図中、R1~R12は受信電極12を表すものである。)においても、静電容量の変化は見られない。
【0052】
図12の(a)及び(b)に、タッチパネル1に水の付着がなく、且つ、タッチがある場合における、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形の最大値と、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量と、の関係を示す。
【0053】
図12の(a)において、F1は指がタッチしている範囲を表すものである。図12の(b)に示すように、指のタッチにより、受信電極12(ここでは、R3及びR4)と送信電極14(ここでは、T1)との間の静電容量の変化量がプラスの値として検出される。
【0054】
タッチした指がタッチパネル1に接触する範囲の各辺の長さは1cm程度であれば、受信電極12同士の間隔、及び、送信電極14同士の間隔は、それぞれ、指の接触範囲の各辺の長さの1/2程度であり、概ね5mm程度になる。図12では、指は受信電極12(R3及びR4)の上部をタッチしている。なお、図12では、検出原理を説明するため、送信電極14(T1)のみの上部をタッチしているものとする。
【0055】
図13の(a)及び(b)に、タッチパネル1に水の付着があり、且つ、タッチがない場合における、受信電極12と送信電極14との間の電圧波形の最大値と、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量と、の関係を示す。
【0056】
図13の(a)において、W1は水が付着している範囲を表すものである。図13の(b)に示すように、水の付着により、受信電極12(ここでは、R3及びR4)と送信電極14(ここでは、T1)との間の静電容量の変化量がマイナスの値として検出される。
【0057】
付着した水がタッチパネル1に接触する範囲の各辺の長さは1cm程度であれば、受信電極12同士の間隔、及び、送信電極14同士の間隔は、それぞれ、水の付着範囲の各辺の長さの1/2程度であり、概ね5mm程度になる。図13では、水は受信電極12(R3及びR4)の上部に付着している。なお、図13では、検出原理を説明するため、送信電極14(T1)のみの上部に水が付着しているものとする。
【0058】
図12の(b)及び図13の(b)を比較すればわかるように、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量の絶対値は、タッチパネル1に水の付着がなく、且つ、タッチがある場合よりも、タッチパネル1に水の付着があり、且つ、タッチがない場合のほうが小さくなる。
【0059】
本発明者らは、上述した検出原理の課題を見出し、さらなる鋭意検討を進めた結果、上述の検出原理における課題を解決するための手法を発明するに至った。まず、本発明者らが見出した課題を説明する。
【0060】
図14は、タッチパネル1を2本の指により斜めにタッチした場合における、それら2点を頂点とする隅角位置にゴーストが発生する原理を説明する図である。なお、ゴーストとは、指でタッチしていない位置及び水が付着していない位置に生じた静電容量の変化量を意味するものである。
【0061】
指F2は、送信電極T1に電圧が印加されている間は、電圧が印加されていない送信電極T2と強く静電結合する。指F1と指F2との間に人体(手)を介して電流が流れることにより、指F2が静電結合している受信電極R6及びR7の各々と送信電極T1との間に、受信電極R6及びR7の各々と送信電極T1との交差部分の上に水が付着している場合と同様の電圧波形が生じる。ただし、指F1と指F2との間に人体(手)を介して流れる電流は、人体を介して人体の外へ流れ去る電流に比して小さい。このため、指F1と指F2との間に電流が流れることにより生じる電圧波形は、水が付着している場合に比して小さくなる。
【0062】
その結果、図14の(b)に示すように、受信電極R6及びR7の各々と送信電極T1との間の各静電容量の変化量がマイナスの値として検出される。
【0063】
一方、図15の(a)及び(b)に示すように、指F1は、送信電極T2に電圧が印加されている間は、電圧が印加されていない送信電極T1と強く静電結合する。指F1と指F2との間に人体(手)を介して電流が流れることにより、指F1が静電結合している受信電極R3及びR4の各々と送信電極T2との間に、受信電極R3及びR4の各々と送信電極T2との交差部分の上に水が付着している場合と同様の電圧波形が生じる。ただし、指F1と指F2との間に人体(手)を介して流れる電流は、人体を介して人体の外へ流れ去る電流に比して小さい。このため、指F1と指F2との間に電流が流れることにより生じる電圧波形は、水が付着している場合に比して小さくなる。
【0064】
その結果、図15の(b)に示すように、受信電極R3及びR4の各々と送信電極T2との間の各静電容量の変化量がマイナスの値として検出される。
【0065】
図16は、上述した図14及び図15のゴーストの発生原理に基づき発生したゴーストを説明するための模式図である。図16では、送信電極T1又はT2に電圧を印加したときに、受信電極R3、R4、R6及びR7の各々と送信電極T1との間の静電容量の変化量と、受信電極R3、R4、R6及びR7の各々と送信電極T2との間の静電容量の変化量とが、タッチパネル1上に模式的に示されている。
【0066】
図16に示すように、タッチパネル1を2本の指により斜めにタッチした場合、それら2点を頂点とする長方形の一方の対角としたとき、他方の対角の位置にゴーストが発生することになる。
【0067】
図17の(a)及び(b)は、タッチパネル1を2つの水が斜めに付着した場合における、それら2点を頂点とする隅角位置にゴーストが発生する原理を説明する図である。図17の(b)に示すように、水W1と水W2との間は導線で電気的に接続されており、水W1と水W2との間に導線を介して電流が流れる。なお、導線で電気的に接続されているとは、具体的には、2つの水が細い水の筋で繋がっている状況を想定している。
【0068】
送信電極T1に電圧が印加されたとき、水W1と水W2との間が電気的に接続されていなければ、水W1の付着による、受信電極R3及びR4の各々と送信電極T1との間の各静電容量の変化量は、マイナスの値として検出される筈である。
【0069】
しかし、図17の(a)及び(b)では、水W1と水W2との間を導線で電気的に接続しているため、それらの間を電流が流れることにより、受信電極R3及びR4の各々と送信電極T1との間の各静電容量の変化量はマイナスの値からプラスの値に転じることになる。
【0070】
その結果、受信電極R3及びR4の各々と送信電極T1との間の各静電容量の変化量がプラスの値として検出されることとなる。
【0071】
なお、水W1と水W2との間に導線を介して電流が流れることにより、水W2が静電結合している受信電極R6及びR7の各々と送信電極T1との間に、受信電極R6及びR7の各々と送信電極T1との交差部分の上に水が付着している場合と同様の電圧波形が生じることとなる。その結果、受信電極R6及びR7の各々と送信電極T1との間の各静電容量の変化量がマイナスの値として検出されることとなる。
【0072】
一方、図18の(a)及び(b)に示すように、送信電極T2に電圧が印加されたとき、水W1と水W2との間が電気的に接続されていなければ、水W2の付着による、受信電極R6及びR7の各々と送信電極T2との間の各静電容量の変化量は、マイナスの値として検出される。
【0073】
しかし、図18の(a)及び(b)では、水W1と水W2との間を導線で電気的に接続しているため、それらの間を電流が流れることにより、受信電極R6及びR7の各々と送信電極T2との間の各静電容量の変化量はマイナスの値からプラスの値に転じることになる。
【0074】
その結果、受信電極R6及びR7の各々と送信電極T2との間の各静電容量の変化量がプラスの値として検出されることになる。
【0075】
なお、水W1と水W2との間に導線を介して電流が流れることにより、水W1が静電結合している受信電極R3及びR4の各々と送信電極T2との間に、受信電極R3及びR4の各々と送信電極T2との交差部分の上に水が付着している場合と同様の電圧波形が生じる。その結果、受信電極R3及びR4の各々と送信電極T2との間の各静電容量の変化量がマイナスの値として検出されることとなる。
【0076】
図19は、上述した図17及び図18のゴーストの発生原理に基づき発生したゴーストを説明するための模式図である。図19では、送信電極T1又はT2に電圧を印加したときに、受信電極R3、R4、R6及びR7の各々と送信電極T1との間の静電容量の変化量と、受信電極R3、R4、R6及びR7の各々と送信電極T2との間の静電容量の変化量とが、タッチパネル1上に模式的に示されている。
【0077】
図19に示すように、タッチパネル1に、電気的に接続された2つの水が斜めに付着した場合、それら2点を頂点とする長方形の一方の対角としたとき、他方の対角の位置にゴーストが発生することになる。
【0078】
図16及び図19を比較すればわかるように、2本の指でタッチした場合と、2つの水が付着した場合とで、上述の静電容量の変化量の極性(プラスとマイナス)は同じである。
【0079】
次に、丸い水がタッチパネル1上に付着している場合、上述の2つの水の付着による静電容量の変化量を組み合わせた結果となる。図20は、タッチパネル1に丸い水W3が付着した様子を示す模式図、図21は、水W3の付着による、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量を説明するための模式図である。図21では、送信電極T1→送信電極T2→送信電極T3の順で、電圧が印加されているものとする。
【0080】
図21に示すように、水W3の外周には、水付着による静電容量の変化量(マイナスの値からプラスの値に転じた変化量)及び上述のゴースト発生による静電容量の変化量(マイナスの値の変化量)が現れる。
【0081】
水W3の内部には、水付着による静電容量の変化量(マイナスの値の変化量)が現れる。さらに、水W3の内部には、上述のゴースト発生による静電容量の変化量(マイナスの値の変化量)が現れる。このため、水W3の内部には、それら2つのマイナス値の変化量が重畳され、現れることになる。
【0082】
本発明者らが見出した、上述した検出原理の課題を整理すると、以下の通りとなる。
【0083】
(1)ノイズによる誤検出
図13を用いて説明したように、水の付着による静電容量の変化量は小さい。ノイズにより図13の(b)に示した静電容量の変化量と同レベルの変化量が生じた場合、水付着の誤検出が生じてしまう。
【0084】
(2)マルチタッチによる誤検出
図16を用いて説明したように、タッチパネル1に2本の指で斜めにタッチした場合、ゴースト発生による静電容量の変化量(マイナスの値の変化量)が現れる。このため、検出感度を高くすると、ゴースト発生による静電容量の変化量が大きくなり、その結果、水付着の誤検出が生じてしまう。
【0085】
(3)水付着を指によるタッチと検出する誤検出
図19を用いて説明したように、2つの水が繋がっていた場合、指によるタッチがないにも関わらず指でタッチした場合と同じ極性の静電容量の変化量が検出される。その結果、指によるタッチであると誤検出してしまう。殊に検出感度を高くすると、誤検出は顕著となる。
【0086】
以下、図22図31を用いて、本発明者らが発明した、上述の課題を解決するための手法について説明する。ここでは、図21に示した、タッチパネル1に水W3が付着している場合を例として説明する。
【0087】
図22に示すように、まず、左上の部分(点線で囲った部分)に注目する。そして、図23に示すように、この部分を水W11、水W12及び水W13が連結したものであると考える。
【0088】
図24は、水W11、水W12及び水W13の各々の付着による、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量を説明するための模式図である。図24に示すように、水W11及び水W13の各々の付着による静電容量の変化量1及び3(マイナスの値からプラスの値に転じたもの)、水W11と水W13とが斜めに付着したことにより発生したゴーストによる静電容量の変化量5(マイナスの値)、並びに、水W12の付着による静電容量の変化量(マイナスの値)と水W11と水W13とが斜めに付着したことにより発生したゴーストによる静電容量の変化量(マイナスの値)との和である変化量2(マイナスの値)、が現れる。
【0089】
次に、図25に示すように、左下の部分(点線で囲った部分)に注目する。そして、図26に示すように、この部分を水W13、水W12及び水W14が連結したものであると考えてみる。
【0090】
図27は、水W13、水W12及び水W14の各々の付着による、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量を説明するための模式図である。図27に示すように、水W13及び水W14の各々の付着による静電容量の変化量6及び4(マイナスの値からプラスの値に転じたもの)、水W13と水W14とが斜めに付着したことにより発生したゴーストによる静電容量の変化量8(マイナスの値)、並びに、水W12の付着による静電容量の変化量(マイナスの値)と、水W13と水W14とが斜めに付着したことにより発生したゴーストによる静電容量の変化量(マイナスの値)との和である変化量7(マイナスの値)、が現れる。
【0091】
次に、図28に示すように、図21に示した水W3の左半分(点線で囲った部分)に注目する。そして、図29に示すように、この部分を水W11、水W12、水W13及び水W14が連結したものであると考える。
【0092】
図30は、水W11、水W12、水W13及び水W14の各々の付着による、受信電極12と送信電極14との間の静電容量の変化量を説明するための模式図である。図30に示すように、図24に示した左上の部分における静電容量の変化量と、図27に示した左下の部分における静電容量の変化量と、が重畳された変化量が現れる。このことは、図21に示した水W3の右半分に関しても同様のことが言える。
【0093】
ここで、付着している水が包含する送信電極14の数が増えると、水の外周及び内部の静電容量の変化量は、包含する送信電極14の数が増えた分だけ加算するように増加していく。
【0094】
しかしながら、それら静電容量の変化量の増加は、各受信電極12に沿って観察すると、プラスの値が増加するとともに、マイナスの値も同時に増加していることがわかる。
【0095】
そこで、測定して得られた静電容量の変化量の値を、受信電極12毎に受信電極12上の値の総和を求めると、総和の値は、水が包含する送信電極14の数が増大しても、プラスの値とマイナスの値とが打ち消し合うことで、プラスの大きな値にはならないことになる。
【0096】
図31に、一つのプラスの静電容量の変化量を+1、一つのマイナスの静電容量の変化量を-1とした場合、重複しているところを加算して、その加算結果を示す。
【0097】
受信電極R3に沿って加算すると、静電容量の変化量の総和は、
(-1)+(+2)+(-1)=0
受信電極R4に沿って加算すると、静電容量の変化量の総和は、
(+1)+(-3)+(+1)=-1
となる。
【0098】
水の付着がなく、指のタッチがある場合、図12に示したとおり、プラスの値を示す静電容量の変化量は、プラス側に大きな値となる。また、図14及び図15に示したとおり、複数の指によるタッチで生じるゴーストによるマイナスの値を示す静電容量の変化量は、そのプラス側の大きな値に比して絶対値が小さな値となる。
【0099】
そのため、指のタッチがある場合、受信電極12に沿った静電容量の変化量の総和は、プラス側に大きな値となる。
【0100】
また、水が付着している範囲の中に指のタッチがある場合、指の直下にある受信電極12に沿った静電容量の変化量の総和は、プラス側に大きな値となる。しかし、その周囲の受信電極12に沿った静電容量の変化量の総和は、プラスの大きな値にはならず、指が水に取り囲まれていることがわかる。
【0101】
そこで、水が付着している範囲の中に指のタッチがある場合、指のタッチ位置の算出精度が低くなるため、水が周囲に存在していることを優先し、タッチ位置の算出を取りやめることが好ましい。これにより、誤った座標を出力することが防止できる。
【0102】
(タッチパネル装置の構成)
次に、本実施形態に係るタッチパネル装置の構成について説明する。図32は、本実施形態に係るタッチパネル装置の構成を示すブロック図である。図32に示すように、本実施形態に係るタッチパネル装置は、タッチパネル1と、駆動部4と、測定部5と、検出部6と、制御部7と、を備えている。タッチパネル1は、複数の受信電極12及び複数の送信電極14を含む。
【0103】
本実施形態に係るタッチパネル装置は、例えば、プログラマブル表示器、携帯電話機、スマートフォン、携帯音楽再生機、携帯ゲーム機、TV、PC、デジタルカメラ、デジタルビデオ等のタッチパネル1を搭載する電子機器である。
【0104】
本実施形態に係るタッチパネル装置は、ユーザによる指又は導電性ペン等によるタッチ検出が可能であり、上記タッチにより指定された処理を実行する。本実施形態に係るタッチパネル装置は、上述した検出原理に基づき、タッチパネル1の水付着の有無の検出を行う。
【0105】
なお、本実施形態に係るタッチパネル装置は、通信部、音声入力部、音声出力部等の部材を備えていてもよいが、発明の特徴点とは関係がないため当該部材を図示していない。
【0106】
制御部7は、電圧を印加する送信電極14を駆動部4に指定する。また、制御部7は、送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量の測定を測定部5に指示する。
【0107】
駆動部4は、制御部7からの指示に従い、電圧を印加する送信電極14に方形波パルス状の電圧を印加する。このとき、駆動部4は、その他の送信電極14を固定電位へ接続した状態とする。
【0108】
測定部5は、制御部7からの指示に従い、受信電極12に生じる電位の変化に基づき、当該受信電極12と、そのとき電圧を印加されている送信電極14との間の静電容量の変化量を測定する。なお、測定部5により測定される変化量は、上述のプラス又はマイナスの値となる。
【0109】
制御部7は、電圧を印加した送信電極14の識別情報を検出部6に与える。そして、制御部7は、測定部5により測定される変化量の検出を検出部6に指示する。
【0110】
検出部6は、制御部7からの指示に従い、受信電極12ごとの静電容量の変化量を測定部5から検出する。そして、検出部6は、検出した静電容量の変化量を、制御部7から入力した、送信電極14の識別情報に対応づけて記憶する。
【0111】
制御部7は、すべての送信電極14について、上記処理を行った後、水検出判定の実施を検出部6に指示する。
【0112】
検出部6は、送信電極14の識別情報ごとに対応付けて記憶している、受信電極12ごとの静電容量の変化量に基づき、水付着の有無を判定し、判定結果を外部へ出力する。
【0113】
制御部7は、以上の一連の処理を繰り返す。
【0114】
次に、本実施形態に係る水付着の有無の判定方法の処理手順について説明する。図27は、本実施形態に係る水付着の有無の判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0115】
図27に示すように、まず、測定部5から取得したすべての静電容量の変化量が、符号付きの値で一定の閾値以上である場合(S1にてYes)、水の付着なし(水なし)と判定する(S5)。水の付着による静電容量の変化量は、指のタッチによる静電容量の変化量よりも小さい値となるため(図12図13図14図15図17、及び図18参照)、一定の閾値以上であれば、水の付着なしと判定することが可能となる。
【0116】
ここで、上述の一定の閾値は、マイナスの値であって、指によって生じるゴーストによる静電容量の変化量(マイナスの値)よりも小さな値とすることが好ましい。
【0117】
より好ましくは、上述の一定の閾値は、マイナスの値であって、次の(A)~(C)の条件を満足する値である。
【0118】
(A)指によって生じるゴーストによる静電容量の変化量(マイナスの値)よりも小さな値である。
【0119】
(B)図13に示した水W1によって生じる静電容量の変化量(マイナスの値)よりも大きな値である。
【0120】
(C)図17及び図18に示した水W1及び水W2によって生じるゴーストによる静電容量の変化量(マイナスの値)よりも大きな値である。
【0121】
例えば、タッチパネル1による静電容量の変化量の検出可能範囲が-127~+127であるとする。指のタッチがある、と判定可能な静電容量の変化量を+60程度となるように、タッチパネル1の検出感度を調整する。
【0122】
この場合、2つの指によって生じるゴーストによる静電容量の変化量は、-10程度になる。
【0123】
水によって生じる静電容量の変化量は、-40程度になる。
【0124】
2つの水によって生じるゴーストによる静電容量の変化量は、-40程度になる。
【0125】
接続された2つの水によって生じる静電容量の変化量は、+40程度になる。
【0126】
以上より、一定の閾値は、-12程度の値に設定すれば良い。
【0127】
測定部5から取得したすべての静電容量の変化量が、符号付きの値で一定の閾値以上でない場合(S1にてNo)、測定部5から取得した静電容量の変化量を、受信電極12ごとに、各受信電極12に沿って総和を計算する(S2)。
【0128】
上述のS2で算出した値の中に一定の閾値以上であるものがある場合(S3にてYes)、水の付着なし(水なし)と判定する(S5)。水の付着による、受信電極12に沿った静電容量の変化量の総和は、プラスの大きな値にはならないため(図30及び図31参照)、一定の閾値以上であれば、水の付着なしと判定することが可能となる。
【0129】
最後に、上述のS2で算出した値の中に一定の閾値以上であるものがない場合(S3にてNo)、水の付着あり(水あり)と判定する(S4)
〔変形例〕
本変形例は、差動アンプを用いることにより、タッチパネル1の本来の機能において、指のタッチ位置の検出の精度を向上させる実施形態である。指でタッチしたときの、指の中心に位置する付近では、上述した静電容量の変化量の分布は平坦となり、指の中心の位置を算出するための数値の精度が低下する。これに比して、隣接する受信電極間の、静電容量の変化量の差分を取得する場合、差分の値を充分に増幅してデジタル化することができる。また、指の中心の位置は、差分の値の符号が反転する位置である。このため、差動アンプを用いることにより、高い計算精度でタッチ位置の検出を行うことができる。
【0130】
次に、本発明の変形例に係るタッチパネル装置について説明する。
【0131】
本発明の変形例と上述の実施形態1とが異なる点は、図37の(a)に示すように、互いに隣接する2つの受信電極12同士を差動アンプ100に接続し、各差動アンプ100の測定値を用いる点にある。図37の(a)では、測定値をSで表現し、添え字の値を差動アンプのマイナス側に接続した受信電極の添え字に合わせて表現するものとする。
【0132】
本実施形態では、受信電極12ごとの静電容量の変化量の総和に代えて、受信電極12ごとの測定値の総和を算出する。実施形態1では総和に対する閾値をひとつだけ設定していたが、本実施形態では、となりあう2つの受信電極の静電容量の変化量の差分となる、差動アンプの測定値を用いるため、静電容量の変化量が生じている一連の受信電極の、番号が小さい側と番号が大きい側の両端において、プラスとマイナスの符号が異なる値が算出される。
【0133】
そのため、本実施形態では、プラス側とマイナス側の2つの閾値を設定する。
【0134】
具体的には、図37の(b)及び(c)に示すように、受信電極R1と受信電極R2との静電容量の変化量の差分が測定値S1となり、受信電極R2と受信電極R3との静電容量の変化量の差分が測定値S2となり、受信電極R3と受信電極R4との静電容量の変化量の差分が測定値S3となり、受信電極R4と受信電極R5との静電容量の変化量の差分が測定値S4となり、受信電極R5と受信電極R6との静電容量の変化量の差分が測定値S5となる。測定値S1~測定値S5を、それぞれ、受信電極R1~受信電極R5の各測定値として扱うものとする。
【0135】
測定値S2はプラスの値となり、測定値S4はマイナスの値となる。つまり、
測定値S1+測定値S2=受信電極R2の静電容量の変化量
測定値S2+測定値S3=受信電極R3の静電容量の変化量
となる。
【0136】
次に、本実施形態に係るタッチパネル装置の構成について説明する。
【0137】
制御部7は、電圧を印加する送信電極14を駆動部4に駆動指定し、測定部5に静電容量の変化量の測定を指示する。
【0138】
駆動部4は、制御部7からの指示に従い、電圧を印加する送信電極14に方形波パルス状の電圧を印加する。このとき、その他の送信電極14を固定電位へ接続した状態とする。
【0139】
測定部5は、制御部7からの指示に従い、受信電極12に生じる電位の変化に基づき、当該受信電極12と、そのとき電圧を印加されている送信電極14との間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極12間の差分を符号付きの値で測定する。この測定結果を測定値と呼ぶことにする。測定値は、隣接する受信電極12のうち、受信電極12に番号を昇順で付したとき、番号が小さい側の受信電極12の番号に対応付け、その受信電極12の測定値として扱う。差分は、番号が小さい受信電極12の電位を差動アンプのマイナス側に入力し、番号が大きい受信電極12の電位を同一の差動アンプのプラス側に入力して、当該差動アンプの出力を得ることによって取得する。
【0140】
制御部7は、電圧を印加した送信電極14の識別情報を検出部6に与え、測定部5からの測定結果の検出を指示する。検出部6は、制御部7からの指示に従い、測定部5から測定値を検出し、制御部7から入力した、送信電極14の識別情報に対応づけて記憶する。
【0141】
制御部7は、すべての送信電極14について上記処理を行った後、水検出判定の実施を検出部6に指示する。
【0142】
検出部6は、送信電極14の識別情報に対応付けて記憶している、受信電極12ごとの測定値を用いて、水付着の有無を判定し、判定結果を外部へ出力する。
【0143】
制御部7は、以上の一連の処理を繰り返す。
【0144】
次に、本実施形態に係る水付着の有無の判定方法の処理手順について説明する。図29は、本実施形態に係る水付着の有無の判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0145】
図29に示すように、まず、測定部5から取得した測定値を、送信電極14の識別情報に対応付けたものごとに、番号が小さい受信電極12側から、隣り合う測定値の和を算出し、その各和の値がすべて、符号付きの値で一定の閾値以上である場合(S11にてYes)、水の付着なしと判定する(S16)。
【0146】
ここで、上述の各和の値とは、静電容量の変化量の値である。指によるタッチがあれば、各和の値(静電容量の変化量)はプラスで大きな値になる一方、指によって生じるゴーストによりマイナスで小さな値になる。S16では、各和の値が、プラスで大きな値又はマイナスで小さな値であると認められた場合に、水の付着なしと判定する。そのため、指によって生じるゴーストを含めて排除可能な閾値(静電容量の変化量の値としての閾値)を用いて判定を行う。
【0147】
上述の各和の値がすべて、符号付きの値で一定の閾値以上でない場合(S11にてNo)、測定部5から取得した測定値を、受信電極12ごとに総和を計算する(S12)。
【0148】
上述のS12で算出した値の中で、プラスである第1の閾値を超過するものがない場合(S13にてNo)、水の付着ありと判定する(S14)。
【0149】
上述のS12で算出した値の中で、プラスである第1の閾値を超過するものがある場合(S13にてYes)、上述のS12で算出した値の中で、マイナスである第2の閾値を下回るものがある場合(S15にてYes)、水の付着なしと判定する(S16)。
【0150】
上述のS12で算出した値の中で、第2の閾値を超過するものがある場合(S15にてYes)、水の付着ありと判定する(S14)。
【0151】
ここで、指のタッチの外側(タッチしている領域と、その領域より外側との境界部分)では、測定値はプラスに大きな値又はマイナスに大きな値になる。指のタッチがあるとき、そのプラスに大きな値及びマイナスに大きな値が共に現れることになる。一方、水の外側(水が付着している領域と、その領域より外側との境界部分)では、測定値はプラスの値又はマイナスの値になるものの、通常、その絶対値は小さな値になる。水の付着の状況によって「静電容量の変化量」の分布が急峻になって大きな測定値が得られる場合があっても、絶対値の大きな測定値がプラスとマイナスとで対になって現れることはない。
【0152】
(効果)
(1)ノイズによる誤検出
ノイズによって生じる静電容量の変化量は、プラスとマイナスで均等に生じることはなく、不均衡で生じる。このため、ノイズによって生じる静電容量の変化量の、受信電極12に沿った総和は、プラスの大きな値となり、その結果、水ではない要因があることがわかるため、誤検出を防止することができる。
【0153】
(2)マルチタッチによる誤検出
検出感度を高くして、2つの指によるタッチで生じるゴーストが受信電極12で検出できる程度に大きな値を示したとしても、静電容量の変化量の、受信電極12に沿った総和は、プラス側に大きな値を示す。このため、水の付着によるものではないことがわかるため、誤検出を防止することができる。
【0154】
(3)水を指によるタッチとする誤検出
送信電極に沿った静電容量の変化量のパターンによらず、水の付着によって生じる静電容量の変化量の、受信電極12に沿った総和は、プラスの大きな値にはならない。このため、水の付着によるものであることがわかり、誤検出を防止することができる。
【0155】
以上の説明では、送信電極14に0Vから所定のプラスの電位を持つ方形波パルスを印加し、それによって受信電極12に誘起される電位のプラスの最大値を測定することによって、送信電極14と受信電極12との間の静電容量が測定できることを利用した。
【0156】
しかし、同一の原理に基づいて、与える方形波パルスの極性がマイナスのものを用いてもよく、また、方形波パルスの定常時の電位は0Vに限るものではない。その場合、受信電極12に誘起される電位の極性はマイナスとなる場合でも、指のタッチがある場合とない場合とでの受信電極12に誘起される電位の極性と大きさとを斟酌することによって、以上の説明と全く同じ原理で静電容量の変化量を検出することができる。
【0157】
また、受信電極12に誘起された電位について、その安定した最大値をもって測定値とする必要はなく、受信電極12に誘起される電位の時間変化から静電容量の変化量を決定づけるように測定してもよい。また、送信電極14に印加する駆動電圧は方形波パルスである必要はなく、たとえば、より高い周波数の正弦波であってもよい。その他、送信電極14と受信電極12との間の相互容量、あるいはその変化量が測定できる技術であれば、どのような技術を用いてもよい。
【0158】
〔相互容量方式における座標算出方法〕
上述した方法によれば、相互容量方式のタッチパネル1において水の付着の有無を検出することができる。本願発明者らは、さらに水が付着した状態であっても、タッチされた座標を正確に算出できる方法を見出した。以下、図36~45を参照して説明する。
【0159】
図36は、本実施形態に係る座標算出装置20の要部構成を示す機能ブロック図である。図36に示すように、座標算出装置20は、検出部6および制御部7を含む。そして、検出部6は、第1総和算出部611、第2総和算出部612、第1座標算出部621、第2座標算出部622、及び二次元座標算出部623を含む。また、制御部7は切替部71を含む。
【0160】
第1総和算出部611は、受信電極12毎に、各送信電極14から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量の総和を算出する。具体的に、図37を参照して説明する。図37は、静電容量の変化量の総和を説明するための図である。図37に示す例では、送信電極14としてT1~T8が、受信電極12としてR1~R14が示されている。なお、ここでの送信電極14および受信電極12の個数は一例であり、これに限られるものではない。
【0161】
第1総和算出部611は、まず、受信電極12(R1)について、送信電極14(T1)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、送信電極14(T2)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、送信電極14(T3)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、…、送信電極14(T8)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、というように各送信電極14からの駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量の総和を算出する。これを、受信電極12(R2)、受信電極12(R3)、…というように、全ての受信電極12について行う。
【0162】
第1座標算出部621は、第1総和算出部611が算出した静電容量の変化量の総和に基づいて、タッチ位置の第1座標を算出する。第1座標とは、送信電極14が接続している方向における座標である。
【0163】
第2総和算出部612は、後述する切替部71により送信電極14と受信電極12とが切り替えられた後において、受信電極12毎に、各送信電極14から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量の総和を算出する。具体的に、図38を参照して説明する。図38は、送信電極14と受信電極12との切替後における、静電容量の変化量の総和を説明するための図である。図38に示す例では、切替後送信電極14としてT’1~T’14が、切替後受信電極12としてR’1~R’8が示されている。
【0164】
第2総和算出部612は、まず、受信電極12(R’1)について、送信電極14(T’1)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、送信電極14(T’2)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、送信電極14(T’3)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、…、送信電極14(T’14)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、というように各送信電極14からの駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量の総和を算出する。これを、受信電極12(R’2)、受信電極12(R’3)、…というように、全ての受信電極12について行う。
【0165】
第2座標算出部622は、第2総和算出部612が算出した静電容量の変化量の総和に基づいて、タッチ位置の第2座標を算出する。第2座標とは、切替部71による切り替え後の送信電極14が接続している方向、すなわち第1座標算出部621が算出した座標と直交する方向における座標である。
【0166】
二次元座標算出部623は、第1座標算出部621が算出した第1座標、および第2座標算出部622が算出した第2座標に基づき、タッチパネル1におけるタッチ位置を示す二次元座標を算出する。
【0167】
(水が付着していても座標を算出できる理由)
上記で、図29~31を参照して説明したように、水が付着することによる静電容量の変化量への影響は、送信電極14毎には表れる。しかし、図31を参照して説明したように、全ての送信電極14の総和を算出した場合、水が付着することによる静電容量の変化量は相殺される。
【0168】
よって、第1総和算出部611、および第2総和算出部612が算出した静電容量の変化量の総和は、水が付着することによる静電容量の変化量は相殺された結果を示すものとなる。したがって、第1総和算出部611の算出結果を用いて第1座標算出部621が算出した第1座標、および第2総和算出部612の算出結果を用いて第2座標算出部622が算出した第2座標は、水の付着の影響を相殺した結果、算出された座標となるので、第1座標算出部621および第2座標算出部622の算出結果から二次元座標算出部623が算出した二次元座標は、水が付着の影響を受けていない、正確な座標ということができる。
【0169】
図39に、付着した水の上からタッチした場合の例を示す。図39に示すように、水が付着し、当該領域を指Fでタッチした場合、送信電極14毎の静電容量の変化量は、水の付着の影響を受ける。しかし、全送信電極14の総和を算出すれば、付着した水の影響は相殺されるので、結局、タッチされた正確な座標を算出できることになる。
【0170】
なお、ここでは、付着した水の上からタッチした場合の例を示したが、付着した水とは異なる領域をタッチした場合も同様である。付着している水の影響は、静電容量の変化量の総和を算出することにより相殺されるので、水の影響を受けることなく正確な座標を算出することができる。
【0171】
(処理の流れ)
次に、図40を参照して、座標算出装置20における処理の流れを説明する。図40は、座標算出装置20における処理の流れを示すフローチャートである。
【0172】
図40に示すように、まず、測定部5は、送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量を、送信電極14及び受信電極12毎に測定する(S101)。そして、第1総和算出部611は、受信電極12に沿って、送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量の総和を算出する(S102)。そして、第1座標算出部621は、第1総和算出部611が算出した総和に基づいて、タッチ位置の第1座標を算出する(S103)。
【0173】
次に、切替部71は、送信電極14と受信電極12とを切り替え、これまでの送信電極14を受信電極12に、受信電極12を送信電極14とする(S104)。
【0174】
そして、測定部5は、切り替え後の送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量を、送信電極14および受信電極12毎に測定する(S105)。そして、第2総和算出部612は、受信電極12に沿って、送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量の総和を算出する(S106)。次に、第2座標算出部622は、第2総和算出部612が算出した総和に基づいて、タッチ位置の第2座標を算出する(S107)。最後に、二次元座標算出部623は、第1座標および第2座標に基づいて、タッチパネル1におけるタッチ位置の二次元座標を算出する(S108)。
【0175】
〔相互容量方式における座標算出方法-2〕
次に、図41図45を参照して、上記で図34及び図35を参照して説明した差分を用いて座標を算出する方法について説明する。
【0176】
図41は、本方法に係る座標算出装置20’の要部構成を示す機能ブロック図である。図41に示すように、座標算出装置20’は、検出部6’及び制御部7を含み、検出部6’は、第1差分算出部631、第2差分算出部632、第1平均値算出部641、第2平均値算出部642、第3総和算出部613、第4総和算出部614、第1座標算出部621、第2座標算出部622、及び二次元座標算出部623を含む。なお、第1平均値算出部641及び第2平均値算出部642は必須の構成ではない。
【0177】
第1差分算出部631は、受信電極12に沿って、当該受信電極12と各送信電極14との間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極12間の差分の総和を算出する。
【0178】
第2差分算出部632は、切替部71による送信電極14と受信電極12との切り替え後における受信電極12に沿って、当該受信電極12と各送信電極14との間の静電容量の変化量の、隣接する受信電極12間の差分の総和を算出する。
【0179】
第1平均値算出部641は、第1差分算出部631が算出した、隣接する受信電極12間ごとの算出値の平均値である第1平均値を算出する。
【0180】
第2平均値算出部642は、第2差分算出部632が算出した、隣接する受信電極12間ごとの算出値の平均値である第2平均値を算出する。
【0181】
第3総和算出部613は、第1差分算出部631が算出した結果から、受信電極12に沿って、当該受信電極12と各送信電極14との間の静電容量の変化量の総和を算出する。
【0182】
また、第3総和算出部613は、第1差分算出部631が算出した結果から、当該第1平均値分、減じた値を用いて、静電容量の変化量の総和を算出する。
【0183】
第4総和算出部614は、第2差分算出部632が算出した結果から、受信電極12に沿って、当該受信電極12と各送信電極14との間の静電容量の変化量の総和を算出する。
【0184】
また、第4総和算出部614は、第2差分算出部632が算出した結果から、当該第2平均値分、減じた値を用いて、静電容量の変化量の総和を算出する。
【0185】
第1座標算出部621は、第3総和算出部613が算出した結果から、送信電極14が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第1座標を算出する。
【0186】
第2座標算出部622は、第4総和算出部614が算出した結果から、切り替え後の送信電極14が接続されている方向である送信電極方向におけるタッチ位置を示す第2座標を算出する。
【0187】
〔補正-1〕
本方法で用いる補正について、図34及び図42図44を参照して説明する。差分の測定値が、図34の(c)に示すS1~S11となる場合、受信電極12(R1~R12)の静電容量の変化量は、図34の(b)に示す値となる。すなわち、R1=0、R2=R1+S1、R3=R2+S2、R4=R3+S3、R5=R4+S4、…以下同様、となる。
【0188】
しかし、差動アンプの性能によりバランスが崩れる場合がある。図42を参照して説明する。図42の(a)は、差動アンプのバランスが悪い場合の測定値の例を示す図である。図42の(a)の例は、差動アンプのバランスがプラス側にずれている場合を示す。測定値が図42の(a)のようになった場合、この測定値から算出される静電容量の変化量は図42の(b)のようになる。すなわち、静電容量の変化量が右肩上がりとなり、正確なタッチ位置の座標を算出することができなくなる。図42の(b)の例で言えば、R4とR12との2カ所がタッチ値の座標として現れることになる。
【0189】
そこで、第1平均値算出部641は、図43の(a)に示すように、測定値(第1差分算出部631の算出結果)の平均値である第1平均値を算出する。そして、第3総和算出部613は、図43の(b)に示すように、第1差分算出部631が算出した結果から、当該第1平均値分、減じる補正を行う。そして、補正後の値を用いて静電容量の変化量を算出する(図43の(c))。これにより、差動アンプのバランスのズレを考慮して座標計算を行うことができる。
【0190】
第2平均値算出部642および第4総和算出部614についても同様の処理が行われる。
【0191】
〔補正-2〕
また、第3総和算出部613または第4総和算出部614が算出した静電容量の変化量にマイナスとなる値が出るような場合、最大値が適切な値とならず、タッチ位置の座標を算出できない可能性がある。
【0192】
そこで、第3総和算出部613または第4総和算出部614は、算出した静電容量の変化量の最小値がマイナスの場合、当該マイナスの値分、加算した値を算出結果とする。
【0193】
すなわち、図44の(b)に示すように、算出した静電容量の変化量の最小値がマイナスの場合、図44の(c)に示すように、当該マイナスの値分、加算した値を算出結果とする。これにより、静電容量の変化量の最大値も、マイナイスの値分、増加することになり、タッチ位置の座標を正確に算出することが可能となる。
【0194】
〔処理の流れ〕
次に、図45を参照して、座標算出装置20’における処理の流れを説明する。図45は、座標算出装置20’における処理の流れを示すフローチャートである。なお、図45には、上述した補正に関する処理は含んでいない。
【0195】
図45に示すように、まず、測定部5は、送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量の隣接する受信電極12間の差分を、送信電極14及び受信電極12毎に測定する(S201)。次に、第1差分算出部631は、受信電極12に沿って、送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量の受信電極12間の差分の総和を算出する(S202)。そして、第3総和算出部613は、差分の総和から、受信電極12毎の送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量の総和を算出する(S203)。そして、第1座標算出部621は、第3総和算出部613が算出した総和に基づいて、タッチ位置の第1座標を算出する(S204)。
【0196】
次に、切替部71は、送信電極14と受信電極12とを切り替え、これまでの送信電極14を受信電極12に、受信電極12を送信電極14とする(S205)。
【0197】
次に、測定部5は、切り替え後の送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量の隣接する受信電極12間の差分を、送信電極14および受信電極12毎に測定する(S206)。そして、第2差分算出部632は、受信電極12に沿って、送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量の受信電極12間の差分の総和を算出する(S207)。そして、第4総和算出部614は、差分の総和から、受信電極12毎の送信電極14と受信電極12との間の静電容量の変化量の総和を算出する(S208)。そして、第2座標算出部622は、第4総和算出部614が算出した総和に基づいて、タッチ位置の第2座標を算出する(S209)。最後に、二次元座標算出部623は、第1座標および第2座標に基づいて、タッチパネル1におけるタッチ位置の二次元座標を算出する(S210)。
【0198】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0199】
1 タッチパネル
14、T1~T8、T’1~T’14 送信電極
12、R1~R12、R’1~R’8 受信電極
4 駆動部
5 測定部
6、6’ 検出部
7 制御部
11 フロントカバー
15 基板
20、20’ 座標算出装置20
611 第1総和算出部
612 第2総和算出部
613 第3総和算出部
614 第4総和算出部
621 第1座標算出部
622 第2座標算出部
623 二次元座標算出部
631 第1差分算出部
632 第2差分算出部
641 第1平均値算出部
642 第1平均値算出部
71 切替部
【要約】
【課題】相互容量方式において、水の付着があっても適切に座標を算出する。
【解決手段】座標算出装置(20)は、静電容量の変化量の総和を算出する第1総和算出部(611)と、第1座標を算出する第1座標算出部(621)と、送信電極(14)と受信電極(12)とを切り替える切替部(71)と、切り替え後に、静電容量の変化量の総和を算出する第2総和算出部(612)と、第2座標を算出する第2座標算出部(622)と、前記第1座標および前記第2座標から二次元座標を算出する二次元座標算出部(623)とを備える。
【選択図】図36
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45