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特許7221515蓄熱体、蓄熱体の製造方法、蓄熱槽、及びリジェネレイティブバーナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】蓄熱体、蓄熱体の製造方法、蓄熱槽、及びリジェネレイティブバーナー
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20230207BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20230207BHJP
   F23L 15/02 20060101ALI20230207BHJP
   F23D 14/66 20060101ALI20230207BHJP
   B28B 1/26 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
F28D20/00 A
F28F21/04
F23L15/02
F23D14/66 C
B28B1/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018203844
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020070949
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 化学工学会第83年会 講演要旨集、http://www3.scej.org/meeting/83a/abst/PA143.pdf、平成30年2月27日(掲載日) 〔刊行物等〕 化学工学会第83年会 ポスターセッション、平成30年3月13日(開催日) 〔刊行物等〕 第27回日本エネルギー学会大会 講演要旨集、平成30年8月1日(発行日) 〔刊行物等〕 第27回日本エネルギー学会大会 ポスターセッション、平成30年8月9日(開催日)
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】北 英紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 誠司
(72)【発明者】
【氏名】窪田 光宏
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-174992(JP,A)
【文献】特開平04-041203(JP,A)
【文献】特開2017-032237(JP,A)
【文献】特開2016-050281(JP,A)
【文献】特開2017-032267(JP,A)
【文献】特開昭61-208470(JP,A)
【文献】実開昭60-012084(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
F23L 15/02
F23D 14/66
C09K 5/14
F24H 7/02
B28B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻と、
前記外殻の内部に形成された中空部と、
を備え、
前記外殻は、前記外殻の外側に向けて突出するように形成された突起部を有し、
前記突起部は、前記外殻の外部と前記中空部との間で流体を流通させるための開口を有し、
前記突起部は正多面体の頂点に向けて形成され、
前記開口は前記突起部の先端付近のみに設けられる
ことを特徴とする蓄熱体。
【請求項2】
前記外殻は、セラミックスにより形成され、アンダーカットのない形状を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄熱体。
【請求項3】
前記外殻は、単位体積当たりの伝熱面積が中実球よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱体。
【請求項4】
先端付近のみに開口を有する突起部が正多面体の頂点に向けて突出するように形成された外殻の外形の形状を有する型に、前記外殻を形成するための材料及び分散媒を含む泥漿を鋳込むステップと、
所定の厚さに形成された前記外殻を離型するステップと、
離型した前記外殻を乾燥又は焼結するステップと、
を備えることを特徴とする蓄熱体の製造方法。
【請求項5】
前記型は、前記突起部に形成すべき前記開口の部分に、前記分散媒を透過しない不透過部を有することを特徴とする請求項に記載の蓄熱体の製造方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の蓄熱体、又は請求項又はに記載の製造方法により製造された蓄熱体を内部に複数収容する収容部と、
前記収容部の内部と外部との間で流体を流通させるために前記収容部に設けられた流通口と、
を備えることを特徴とする蓄熱槽。
【請求項7】
燃料を燃焼させるバーナーと、
複数の蓄熱槽と、
を備え、
前記複数の蓄熱槽のうちのいずれかに収容された蓄熱体を前記バーナーからの排気により加熱しつつ、前記バーナーに供給される燃料又は空気を別の蓄熱槽において加熱し、
前記複数の蓄熱槽のうち少なくとも1つは、請求項1からのいずれかに記載の蓄熱体、又は請求項又はに記載の製造方法により製造された蓄熱体を内部に複数収容する
ことを特徴とするリジェネレイティブバーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は交換体に関し、とくに、熱などのエネルギーを交換するための交換体、その交換体の製造方法、その交換体を備える交換槽、及びその交換体を備えるリジェネレイティブバーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題が深刻化している昨今、省エネルギー化を実現するための様々な対策が必要とされている。例えば、電力需要の少ない夜間に発電施設において発電された電力を用いて蓄熱し、その蓄熱分を昼間に利用して昼間の電力消費の削減を図るための蓄熱技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-190658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、工業炉などにおいて発生する膨大な量の熱の多くが利用されずに捨てられている現状に着目し、特許文献1に記載された蓄熱技術を改良して、このような未利用熱の有効活用を可能とする技術が必要であることを課題として認識した。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、熱などの交換効率を向上させるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の交換体は、外殻と、外殻の内部に形成された中空部と、を備え、外殻は、外殻の外側に向けて突出するように形成された突起部を有し、突起部は、外殻の外部と中空部との間で流体を流通させるための開口を有する。
【0007】
本開示の別の態様の交換体の製造方法は、開口を有する突起部が外側に向けて突出するように形成された外殻の外形の形状を有する型に、外殻を形成するための材料及び分散媒を含む泥漿を鋳込むステップと、所定の厚さに形成された外殻を離型するステップと、離型した外殻を乾燥又は焼結するステップと、を備える。
【0008】
本開示の更に別の態様の交換槽は、上記の交換体、又は上記の製造方法により製造された交換体を内部に複数収容する収容部と、収容部の内部と外部との間で流体を流通させるために収容部に設けられた流通口と、を備える。
【0009】
本開示の更に別の態様のリジェネレイティブバーナーは、燃料を燃焼させるバーナーと、複数の蓄熱槽と、を備え、複数の蓄熱槽のうちのいずれかに収容された蓄熱体をバーナーからの排気により加熱しつつ、バーナーに供給される燃料又は空気を別の蓄熱槽において加熱し、複数の蓄熱槽のうち少なくとも1つは、上記の交換体、又は上記の製造方法により製造された交換体を内部に複数収容する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、熱などの交換効率を向上させるための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係るリジェネレイティブバーナーシステムの構成を概略的に示す図である。
図2】実施の形態に係る蓄熱体の例を示す図である。
図3】実施の形態に係る蓄熱体を製造するための型の例を示す図である。
図4】蓄熱体の大きさと伝熱面積の関係を示す図である。
図5】蓄熱体の大きさと重量の関係を示す図である。
図6】蓄熱槽の圧力損失を測定するための実験の構成を示す図である。
図7】蓄熱槽の圧力損失の測定結果を示す図である。
図8】蓄熱槽の一次元伝熱解析の結果を示す図である。
図9】蓄熱槽の一次元伝熱解析の結果を示す図である。
図10図9に示した蓄熱槽における蓄熱量の解析結果を示す図である。
図11】蓄熱体の蓄熱性能を測定するための実験の構成を示す図である。
図12】蓄熱体の蓄熱量の時間変化を示す図である。
図13】蓄熱体の蓄熱率の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示では、熱などのエネルギーの交換効率が高い交換体を開示する。本開示の交換体は、例えば、高温の排ガスから熱を回収して加熱対象の流体を加熱するための蓄熱体として利用することもできるし、有害な排ガスを分解するための分解反応などの化学反応を促進するための触媒の層が表面に形成された触媒体として利用することもできる。本開示の交換体は、熱交換効率や触媒効率を向上させるために、交換対象の流体が接触可能な有効表面積が大きく、交換対象の流体を流通させるときの圧力損失が小さくなるような構造を有する。以下、主に、交換体を蓄熱体として利用する実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、実施の形態に係るリジェネレイティブバーナーシステムの構成を概略的に示す。リジェネレイティブバーナーシステム1は、炉11と、炉11内を加熱するために燃料を燃焼させる1対のリジェネレイティブバーナー10a及び10bとを備える。リジェネレイティブバーナー10a及び10bは、それぞれ、炉11の対向する側面に設けられた燃焼装置12a及び12bと、燃焼装置12a及び12bに供給する気体を調整するための調風装置13a及び13bと、燃焼装置12a及び12bからの排気の熱を回収して、内部に収容された蓄熱体20に蓄熱し、燃焼装置12a及び12bに供給される燃焼用空気を予熱するための蓄熱槽14a及び14bを備える。交換槽の一例である蓄熱槽14は、蓄熱体20を内部に収容する収容部と、収容部の内部と外部との間で流体を流通させるために収容部に設けられた流通口とを備える。リジェネレイティブバーナーシステム1は、更に、燃焼装置12a及び12bからの排気を排出するための排気管に設けられた排気弁15a及び15bと、燃焼用空気を供給するための空気供給管に設けられた空気供給弁16a及び16bと、燃料を供給するための燃料供給管に設けられた燃料供給弁17a及び17bと、これらの弁を制御する図示しない制御装置を備える。
【0014】
図1の上段に示す状態では、排気弁15b、空気供給弁16a、及び燃料供給弁17aが開かれ、排気弁15a、空気供給弁16b、及び燃料供給弁17bが閉じられる。このとき、燃焼用空気が蓄熱槽14aに導入され、蓄熱槽14a内の蓄熱体20により予熱されて、調風装置13aに供給されるとともに、燃料が調風装置13aに供給される。燃料は、調風装置13aにおいて燃焼用空気と混合され、適温に調整された後、燃焼装置12aにより燃焼される。燃焼装置12aからの排気は、炉11の反対側に設置された燃焼装置12b及び調風装置13bを介して蓄熱槽14bに導入され、蓄熱槽14b内の蓄熱体20を加熱して排気管から排出される。
【0015】
図1の下段に示す状態では、排気弁15a、空気供給弁16b、及び燃料供給弁17bが開かれ、排気弁15b、空気供給弁16a、及び燃料供給弁17aが閉じられる。このとき、燃焼用空気が蓄熱槽14bに導入され、燃焼装置12aからの排気により加熱された蓄熱槽14b内の蓄熱体20により予熱されて、調風装置13bに供給されるとともに、燃料が調風装置13bに供給される。燃料は、調風装置13bにおいて燃焼用空気と混合され、適温に調整された後、燃焼装置12bにより燃焼される。燃焼装置12bからの排気は、燃焼装置12a及び調風装置13aを介して蓄熱槽14aに導入され、蓄熱槽14a内の蓄熱体20を加熱して排気管から排出される。
【0016】
本図の例では、水平方向よりも鉛直方向の方が長い蓄熱槽14に蓄熱体20が収容される。高温の排気は、蓄熱槽14の下部の流通口から蓄熱槽14に導入され、蓄熱槽14の上部の流通口から排気管へ排出される。また、低温の燃焼用空気は、蓄熱槽14の上部の流通口から蓄熱槽14に導入され、蓄熱槽14の下部の流通口から燃焼装置12に排出される。これにより、排気及び燃焼用空気を万遍なく効率的に蓄熱槽14内で流通させることができるので、熱交換効率を向上させることができる。別の例では、鉛直方向よりも水平方向の方が長い蓄熱槽14の両端に流通口が設けられてもよい。この場合も、排気は蓄熱槽14の下部から導入されて上部から排出され、燃焼用空気は蓄熱槽14の上部から導入されて下部から排出されるのが好ましい。
【0017】
リジェネレイティブバーナーシステム1の制御装置は、図1の上段に示す状態と下段に示す状態を、数秒から数十秒程度のサイクルで交互に繰り返す。これにより、排気の熱を効率良く回収して燃焼用空気の予熱に利用することができるので、消費エネルギー及び二酸化炭素排出量を低減させることができる。蓄熱槽14は、3以上設けられてもよい。
【0018】
従来、蓄熱槽14に充填する蓄熱体20として、アルミナなどの中実球が使用されていた。しかし、数秒から数十秒程度のサイクルで蓄熱と放熱を繰り返す場合、蓄熱過程において中実球の内部まで十分に加熱される前に放熱過程に移行することになるので、熱交換に寄与するのは外表面付近のみであり、内部は蓄熱にあまり寄与していなかった。したがって、本実施の形態では、蓄熱効率を更に向上させるために、中実の蓄熱体ではなく、中空の蓄熱体を使用する。
【0019】
図2は、実施の形態に係る蓄熱体の例を示す。蓄熱体20は、セラミックスにより形成された外殻21と、外殻21の内部に形成された中空部22とを備える。外殻21は、外殻21の外側に向けて突出するように形成された突起部23を有する。突起部23は、外殻21の外部と中空部22との間で流体を流通させるための開口24を有する。本図に示した蓄熱体20は、正四面体の頂点に向けて4本の突起部23が形成されたテトラポッド(登録商標)状の形状を有している。蓄熱体20は、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体の頂点に向けて形成された突起部を有してもよいし、星型正多面体の形状を有してもよい。また、外殻21の重心付近を中心として点対称となるように突起部が設けられてもよいし、外殻21の重心付近を通る直線を軸として線対称となるように突起部が設けられてもよい。このように、何らかの対称性を有するように突起部23を設けることにより、蓄熱槽14に複数の蓄熱体20を充填したときの空隙の偏りを低減させることができるので、蓄熱効率を向上させることができるとともに、圧力損失を低減させることができる。蓄熱体20は、任意の方向に向けて形成された突起部を有してもよい。
【0020】
本実施の形態の蓄熱体20によれば、蓄熱槽14の重量を軽くすることができる。これにより、蓄熱槽14の下部に収容された蓄熱体20が、蓄熱槽14の上部に収容された蓄熱体20の重みにより押し潰されたり破損したりするのを防ぐことができる。また、例えば、蓄熱槽14に収容された蓄熱体20に熱を蓄えた状態で蓄熱槽14を移動させ、別の場所で熱交換に利用する場合などに、蓄熱槽14の移動を容易にすることができる。また、本実施の形態の蓄熱体20によれば、外殻21の外側の表面だけでなく、内側の表面も熱交換に利用することができるので、中実体よりも伝熱面積を増加させることができ、蓄熱効率及び熱交換効率を向上させることができる。また、本実施の形態の蓄熱体20によれば、蓄熱槽14内における流体の流通に蓄熱体20の内部の中空部22も寄与するので、蓄熱槽14の圧力損失を低減させることができる。
【0021】
さらに、本実施の形態の蓄熱体20によれば、外殻21に突起部23を設けるので、伝熱面積を中空の球又は楕円体よりも更に大きくすることができ、蓄熱効率及び熱交換効率を向上させることができる。また、中空の球又は楕円体よりも押し潰されにくくすることができる。また、本実施の形態の蓄熱体20によれば、外殻21に突起部23を設けるので、蓄熱槽14に複数の蓄熱体20を充填したときに、隣接する蓄熱体20同士の間に適度な間隙を生じさせることができるとともに、空隙の偏りを少なくすることができる。これにより、空気などの流体が蓄熱体20の同士の間隙を流通しやすくすることができるので、蓄熱槽14の圧力損失を低減させることができる。また、蓄熱槽14内で複数の蓄熱体20がランダムに配向して充填されるので、蓄熱体20が中空部22を有していることとも相俟って、蓄熱槽14内に流入した流体を、層流状態ではなく乱流状態になりやすいようにすることができる。これにより、蓄熱槽14内に流入した高温の流体を蓄熱槽14の全体にわたって流通させることができるので、蓄熱槽14内に充填された複数の蓄熱体20に効率良く蓄熱することができる。
【0022】
外殻21を形成するセラミックスは、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、又はそれらの2以上の組合せを含む複合材であってもよい。また、熱輻射による伝熱性を高めるために、外殻21を染料又は顔料などにより黒色に着色してもよい。
【0023】
蓄熱体20の大きさは、例えば、1~100mm、好ましくは、10~50mmであってもよい。蓄熱体20の大きさは、蓄熱体20の高さで表されてもよい。蓄熱体20の大きさを適度に小さくすることにより、蓄熱槽14内の蓄熱体20の充填率を高めることができるので、蓄熱量を増加させることができる。また、蓄熱体20の大きさを適度に大きくすることにより、蓄熱槽14内の蓄熱体20の間隙を大きくすることができるので、蓄熱槽14の内部を流体が流通しやすくすることができ、圧力損失を低減させることができる。
【0024】
蓄熱体20の厚さは、例えば、3~7mm、好ましくは、4~6mmであってもよい。蓄熱体20の厚さを適度に厚くすることにより、蓄熱量を増加させることができる。また、蓄熱体20の厚さを適度に薄くすることにより、蓄熱槽14の内部を流体が流通しやすくすることができ、圧力損失を低減させることができる。
【0025】
突起部23の高さは、例えば、3~50mm、好ましくは、5~25mmであってもよい。突起部23の数は、例えば、1~100本、好ましくは、2~20本であってもよい。突起部23の高さ又は数を適度に大きくすることにより、蓄熱槽14内の蓄熱体20の間隙を大きくすることができるので、蓄熱槽14の内部を流体が流通しやすくすることができ、圧力損失を低減させることができる。また、突起部23の高さ又は数を適度に小さくすることにより、蓄熱槽14内の蓄熱体20の充填率を高めることができるので、蓄熱量を増加させることができる。突起部23の形状は、錐体、柱体、半球、回転体の一部などであってもよい。
【0026】
開口24の大きさは、例えば、1~50mm、好ましくは、1~20mmであってもよい。開口24の数は、例えば、1~100個、好ましくは、2~20個であってもよい。開口24の大きさ又は数を適度に大きくすることにより、蓄熱槽14の内部を流体が流通しやすくすることができるので、圧力損失を低減させることができる。また、開口24の大きさ又は数を適度に小さくすることにより、蓄熱槽14内の蓄熱体20の容積及び伝熱面積を大きくすることができるので、蓄熱量及び蓄熱効率を向上させることができる。開口24の形状は、円、楕円、多角形などであってもよい。開口24は、突起部23の先端付近に設けられてもよいし、側面に設けられてもよい。前者の場合、蓄熱体20の製造を容易にすることができる。後者の場合、開口24が隣接する他の蓄熱体20の外殻21により塞がれるのを低減し、圧力損失を低減させることができる。
【0027】
蓄熱体20の大きさ、厚さ、突起部23の高さ、数、形状、開口24の大きさ、数、形状などは、蓄熱槽14の利用態様において要求される蓄熱量、蓄熱速度、圧力損失などを考慮して設計されてもよい。
【0028】
図3は、実施の形態に係る蓄熱体を製造するための型の例を示す。蓄熱体20は、スリップキャスティング(鋳込み成形)により製造することができる。石膏により形成された石膏型30は、開口を有する突起部が外側に向けて突出するように形成された外殻の外形の形状を有する。具体的には、本図に示した石膏型30は、図2に示した蓄熱体20の下側の3本の突起部23の上面と上側の1本の突起部23の外形の形状を有する上半割型31と、蓄熱体20の下側の3本の突起部23の下面の外形の形状を有する下半割型32とを備える。上半割型31及び下半割型32の賦形面のうち、突起部23に形成すべき開口24の部分には、分散媒を透過しない不透過部が設けられる。分散媒として水を使用する場合、不透過部は、例えば、疎水性の潤滑油やコーティング剤などを賦形面に塗布することにより設けられてもよい。
【0029】
外殻21を形成するためのセラミックス原料を分散媒に分散させた泥漿を上半割型31と下半割型32のキャビティに鋳込んだ後、しばらく静置すると、石膏により形成された上半割型31及び下半割型32から分散媒が吸収され、セラミックス原料がキャビティの賦形面にほぼ均一の厚さで着肉する。このとき、上半割型31及び下半割型32の不透過部からは分散媒が吸収されないので、不透過部にはセラミックス原料が着肉しない。これにより、開口24を有する突起部23が外側に向けて突出するように形成された外殻21が賦形面に形成される。形成された外殻21を上半割型31及び下半割型32から離型し、乾燥又は焼結することにより、蓄熱体20が製造される。
【0030】
上半割型31により形成される外殻21の上部と、下半割型32により形成される外殻21の下部は、それぞれ、アンダーカットや逆テーパーのない形状を有する。これにより、形成された外殻を容易に離型することができるので、製造コストを抑えることができる。
【0031】
図4は、蓄熱体の大きさと伝熱面積の関係を示す。中実球及び中空球の蓄熱体については、球の直径を蓄熱体の大きさとし、本実施の形態の蓄熱体については、高さを蓄熱体の大きさとして計算した。同じ大きさの中実球及び中空球の蓄熱体と本実施の形態の蓄熱体を比較すると、本実施の形態の蓄熱体は中実球の蓄熱体の約2倍、中空球の蓄熱体の約1.5倍の伝熱面積を有している。したがって、本実施の形態の蓄熱体を使用することにより、熱交換効率を向上させることができる。
【0032】
図5は、蓄熱体の大きさと重量の関係を示す。図4と同様に、中実球及び中空球の蓄熱体については、球の直径を蓄熱体の大きさとし、本実施の形態の蓄熱体については、高さを蓄熱体の大きさとして計算した。同じ大きさの中実球及び中空球の蓄熱体と本実施の形態の蓄熱体を比較すると、本実施の形態の蓄熱体の重量は中実球の蓄熱体の重量の約1/3、中空球の蓄熱体の約3/4である。したがって、本実施の形態の蓄熱体を使用することにより、熱交換効率を向上させることができる。また、図1に示したような、水平方向よりも鉛直方向に長い蓄熱槽14に蓄熱体20を充填させる場合であっても、蓄熱槽14の上部に存在する蓄熱体20の重みにより蓄熱槽14の下部に存在する蓄熱体20が押し潰されたり破損したりするのを防ぐことができる。
【0033】
図6は、蓄熱槽の圧力損失を測定するための実験の構成を示す。内径90mmの充填槽に、本実施の形態の蓄熱体を270mmの高さまで124個充填した。このときの充填率は、0.71である。圧縮空気を毎分200Lの流量で充填槽に導入し、差圧計により圧力損失を測定した。
【0034】
図7は、蓄熱槽の圧力損失の測定結果を示す。曲線は、中実球を充填槽に充填した場合の圧力損失をKozeny-Carman式により算出した理論値を示す。単位体積当たりの伝熱面積が等しい場合、本実施の形態の蓄熱体を充填した充填槽における圧力損失は、中実球を充填した充填槽における圧力損失よりも低い。したがって、本実施の形態の蓄熱体は、リジェネレイティブバーナーシステムにおける圧力損失の最適条件において、中実球よりも大きな伝熱面積を確保することができる。これにより、熱交換効率及び蓄熱効率を向上させることができる。
【0035】
図8は、蓄熱槽の一次元伝熱解析の結果を示す。図8(a)に示すように、中実球、穿孔を有する中空球、及び本実施の形態の蓄熱体を充填した横長の蓄熱槽の一端から1200℃の気体を導入したときの気体と蓄熱体との間の熱伝達を解析した。蓄熱体の初期温度は25℃とし、蓄熱槽の壁面への熱損失は無視した。図8(b)に示すように、1200℃の気体を導入してから30秒後のZ=0mmにおける温度を比較すると、本実施の形態の蓄熱体を使用した蓄熱槽の温度は、中実球の蓄熱体を使用した場合の約1.5倍、穿孔を有する中空球の蓄熱体を使用した場合の約1.1倍である。したがって、本実施の形態の蓄熱体を使用することにより、熱交換効率及び蓄熱効率を向上させることができる。
【0036】
図9は、蓄熱槽の一次元伝熱解析の結果を示す。図9(a)に示すように、中実球及び本実施の形態の蓄熱体を充填した縦長の蓄熱槽の下端から1200℃の気体を導入したときの気体と蓄熱体との間の熱伝達を解析した。蓄熱槽の内径は30cm、槽高は60cm、体積は0.042mである。この蓄熱槽に、直径25mmの中実球の蓄熱体を3110個充填したときの充填率は0.6であり、重量は99kgである。この蓄熱槽に、母線長さが34.9mmの本実施の形態の蓄熱体を2586個充填したときの充填率は0.6(固体部分のみでは0.18)、重量は29kgである。ガス流速は10m/sとした。図9(b)に示すように、Z=0cmにおける温度を比較すると、本実施の形態の蓄熱体を使用した蓄熱槽の温度は、中実球の蓄熱体を使用した場合よりも速く温度が上昇する。また、蓄熱槽の出口(Z=60cm)における温度を比較すると、本実施の形態の蓄熱体を使用した蓄熱槽の温度は、中実球の蓄熱体を使用した場合よりも温度が低く、50℃以下に維持される。したがって、本実施の形態の蓄熱体を使用することにより、熱交換効率及び蓄熱効率を向上させることができる。
【0037】
図10は、図9に示した蓄熱槽における蓄熱量の解析結果を示す。1200℃の気体を導入してから40秒後の蓄熱量を比較すると、本実施の形態の蓄熱体を使用した蓄熱槽における顕熱量は、中実球の蓄熱体を使用した場合よりも約9%多い。したがって、本実施の形態の蓄熱体を使用することにより、熱交換効率及び蓄熱効率を向上させることができる。
【0038】
図11は、蓄熱体の蓄熱性能を測定するための実験の構成を示す。蓄熱槽に124個の蓄熱体を充填し、300℃の空気を毎分200Lの流量で2時間導入して、蓄熱槽の空気導入口付近、中央付近、空気排出口付近に設置した複数の熱電対により温度の時間変化を測定し、測定された温度から蓄熱量及び蓄熱率を算出した。
【0039】
図12は、蓄熱体の蓄熱量の時間変化を示す。200秒よりも短い期間では、本実施の形態の蓄熱体の方が中実球の蓄熱体よりも蓄熱量が多い。すなわち、リジェネレイティブバーナーなどにおける蓄熱と放熱のサイクルの一般的な切替時間である数秒~数十秒の時間範囲では、本実施の形態の蓄熱体の方が蓄熱速度が速い。したがって、本実施の形態の蓄熱体を使用することにより、熱交換効率及び蓄熱効率を向上させることができる。
【0040】
図13は、蓄熱体の蓄熱率の時間変化を示す。全ての期間において、本実施の形態の蓄熱体の方が中実球の蓄熱体よりも蓄熱率が高い。したがって、本実施の形態の蓄熱体を使用することにより、熱交換効率及び蓄熱効率を向上させることができる。
【0041】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0042】
実施例においては、リジェネレイティブバーナーの蓄熱槽に本開示の蓄熱体を充填する例について説明したが、本開示の蓄熱体は、軽量であり、安価に製造することが可能であるため、蓄熱槽の規模、要求される蓄熱量、蓄熱速度、蓄熱時間などの大小を問わず、様々な蓄熱槽に利用することができる。
【0043】
実施例においては、交換体を蓄熱体として使用する例について説明したが、前述したように、本実施の形態の交換体は、触媒体として使用することもできる。この場合、交換体の表面に触媒を塗布したり、触媒を含む液体を表面に吹き付けたり、触媒を含むスラリーを交換体の内部に中空部に流し込んだりすることにより、交換体の表面に触媒層を形成し、触媒層が形成された交換体を交換槽の内部に収容する。触媒体が収容された交換槽に反応ガスを送り込むことにより、反応ガスを交換体の表面の触媒層と接触させ、化学反応を促進させることができる。この場合も、本実施の形態の交換体を使用することにより、有効接触面積を大きくしつつ、圧力損失を低くすることができるので、触媒の効率を向上させることができる。
【0044】
外殻の外表面に形成された触媒層は、触媒槽において隣接する他の交換体との接触により摩滅する可能性があるが、中空部の表面に形成された触媒層は、他の交換体との接触による摩滅の可能性がほとんどなく、反応ガスのみと接触して触媒として機能することができるので、長期にわたって触媒体を使用することができる。触媒は、一般に高価であるので、費用対効果を向上させるために、交換体の中空部の表面のみに触媒層を設け、外殻の外表面には触媒層を設けなくてもよい。交換体を触媒として利用する場合は、蓄熱体として利用する場合と異なり、要求される蓄熱量を外殻の厚さにより確保する必要はないので、交換槽に充填される際に押し潰されない程度の強度が確保される厚さを有していればよい。また、多数の細孔を有する多孔性材料により外殻を形成してもよい。これにより、内部の中空部に反応ガスを流通しやすくすることができるので、触媒の効率を向上させることができる。
【0045】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の交換体は、外殻と、外殻の内部に形成された中空部と、を備え、外殻は、外殻の外側に向けて突出するように形成された突起部を有し、突起部は、外殻の外部と中空部との間で流体を流通させるための開口を有する。この態様によると、交換効率の高い交換体を提供することができる。
【0046】
外殻は、セラミックスにより形成され、アンダーカットのない形状を有してもよい。この態様によると、安価で製造が容易な交換体を提供することができる。
【0047】
突起部は、正多面体の頂点に向けて形成されてもよい。この態様によると、製造が容易な交換体を提供することができる。
【0048】
外殻は、単位体積当たりの伝熱面積が中実球よりも大きくてもよい。この態様によると、交換効率の高い交換体を提供することができる。
【0049】
本開示の別の態様の交換体の製造方法は、開口を有する突起部が外側に向けて突出するように形成された外殻の外形の形状を有する型に、外殻を形成するための材料及び分散媒を含む泥漿を鋳込むステップと、所定の厚さに形成された外殻を離型するステップと、離型した外殻を乾燥又は焼結するステップと、を備える。この態様によると、交換効率の高い交換体を容易に製造することができる。
【0050】
型は、突起部に形成すべき開口の部分に、分散媒を透過しない不透過部を有してもよい。この態様によると、開口を有する突起部を備える交換体を容易に製造することができる。
【0051】
本開示の更に別の態様の交換槽は、上記の交換体、又は上記の製造方法により製造された交換体を内部に複数収容する収容部と、収容部の内部と外部との間で流体を流通させるために収容部に設けられた流通口と、を備える。この態様によると、交換効率が高く、圧力損失が低い交換槽を提供することができる。
【0052】
本開示の更に別の態様のリジェネレイティブバーナーは、燃料を燃焼させるバーナーと、複数の蓄熱槽と、を備え、複数の蓄熱槽のうちのいずれかに収容された蓄熱体をバーナーからの排気により加熱しつつ、バーナーに供給される燃料又は空気を別の蓄熱槽において加熱し、複数の蓄熱槽のうち少なくとも1つは、上記の交換体、又は上記の製造方法により製造された交換体を内部に複数収容する。この態様によると、エネルギー消費量及び二酸化炭素排出量を抑えることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 リジェネレイティブバーナーシステム、10 リジェネレイティブバーナー、11 炉、12 燃焼装置、13 調風装置、14 蓄熱槽、15 排気弁、16 空気供給弁、17 燃料供給弁、20 蓄熱体、21 外殻、22 中空部、23 突起部、24 開口、30 石膏型、31 上半割型、32 下半割型。
図1
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図5
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図10
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図13