(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】生分解性ポリマーの水性の加水分解安定性分散液
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20230207BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20230207BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20230207BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20230207BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L5/00
C08L29/04 A
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2018545445
(86)(22)【出願日】2017-02-28
(86)【国際出願番号】 US2017019914
(87)【国際公開番号】W WO2017151595
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-13
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515286656
【氏名又は名称】マイケルマン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ヒップス,シニア,ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイ,エドワード・アール
(72)【発明者】
【氏名】マッキニー コリンズ,タリア
(72)【発明者】
【氏名】ホメーレ,ジョン・バーナード
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-511631(JP,A)
【文献】特開2005-089751(JP,A)
【文献】特開2004-099883(JP,A)
【文献】特開2004-285144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を実質的に含まない加水分解不安定性ポリマーの加水分解安定性水性分散液であって、水中の、生分解性ポリマーの粒子、安定剤、粘度を増加させるレオロジー調整剤、及びpH緩衝剤からなり、前記安定剤がポリビニルアルコールからなり、前記
粘度を増加させるレオロジー調整剤が
キサンタンガムを含むバイオポリマー系多糖からなり、前記生分解性ポリマーの粒子が
ポリ乳酸(PLA)を含む生分解性ポリマーからなり、
前記pH緩衝剤が6~8の間のpKa値を有する弱酸と塩基の塩であり、水相と固相の相間に前記安定剤/前記
粘度を増加させるレオロジー調整剤のコアセルベート相が形成され、前記コアセルベートが前記生分解性ポリマーの粒子を被包してシェル又は壁部を形成し、50℃において30日間貯蔵した際に、前記水性分散液中の全固形分のパーセントにおける変化が10%より小さく維持される、前記水性分散液。
【請求項2】
前記生分解性ポリマーが、前記水性分散液の全重量を基準として5重量%~95重量%の量で存在する、請求項
1に記載の水性分散液。
【請求項3】
前記安定剤が、前記水性分散液の全重量を基準として0.1重量%~25重量%の量で存在する、請求項1
又は2に記載の水性分散液。
【請求項4】
前記安定剤が、前記水性分散液の全重量を基準として0.5重量%~15重量%の量で存在する、請求項1~
3のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項5】
前記レオロジー調整剤が、前記水性分散液の全重量を基準として0.01重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~
4のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項6】
前記レオロジー調整剤が、前記水性分散液の全重量を基準として0.1重量%~3重量%の量で存在する、請求項1~
5のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項7】
前記生分解性ポリマーの粒子の前記粒子が25nm~600μmの平均径を有する、請求項1~
6のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項8】
前記pH緩衝剤が、前記水性分散液の全重量を基準として0.01重量%~1重量%の量で存在する、請求項1~
7のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項9】
前記生分解性ポリマーが前記ポリ乳酸(PLA)であり、前記バイオポリマー系多糖が前記キサンタンガムである、請求項1~8のいずれかに記載の水性分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2016年2月29日出願の「生分解性ポリマーの水性の加水分解安定性分散液、及びかかる分散液の製造方法」と題された米国仮特許出願62/301,017(その全部を参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
【0002】
[0002]幾つかの態様は、少なくとも1種類の加水分解不安定性ポリマーの水性分散液、より特には、有機溶媒を実質的に含まない、少なくとも1種類の加水分解不安定性ポリマーの水性分散液に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]水性ポリマー分散液は、接着剤、バインダー、サイズ剤、シーラント、プライマー、インク、塗料、種子又は穀類の被覆系、及び紙被覆のような広範囲の分野における用途が見出されている。かかる分散液はまた、薬物送達に関する医薬産業において、医療用試験キットにおいて、又は化粧品における添加剤としての用途も見出されている。かかる分散液の主要な用途は、紙、板紙包装材、種々のプラスチックフィルム、及び容器の上に薄いバリヤ被覆を形成することである。しかしながら、かかる分散液及び被覆を形成するために通常用いられている合成ポリマーは、通常は石油から作られている。このために、時にはポリマーをリサイクルするのが困難になり、生分解性が必要なゴミ廃棄場において問題になる可能性がある。
【0004】
[0004]これらの問題に対処するために、当該技術においては、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、グリコール酸と乳酸のコポリマー(PLGA)、及びポリカプロラクトンのような生分解性ポリマーに切り替えられている。かかる生分解性ポリマーの被覆を製造する初期の取り組みは、かかるポリマーを溶融し、次にそれらを薄いフィルムに押出すことを含んでいた。しかしながら、これはポリマーを高温で扱うことを必要とし(これによりポリマーの早期分解が引き起こされる可能性がある)、装置及びエネルギー集約型である押出及び延伸技術を用いていた。
【0005】
[0005]その後の取り組みは、生分解性ポリマーを揮発性有機溶媒中に溶解し、溶解した材料を基材上に被覆し、次に溶媒を除去することを含んでいた。これらのその後の取り組みは、かかる揮発性化合物の取扱い及び廃棄における異なる組の問題を生じさせた。これらの問題には、毒性、燃焼性、及び環境汚染が含まれていた。更に、かかるフィルムはまた、被覆中に若干の残留溶媒を残留させる可能性もあり、これは感覚刺激特性に悪影響を与える可能性がある。
【0006】
[0006]より最近になって、揮発性有機溶媒を用いない生分解性ポリマーの水性分散液を形成するプロセスを提供するための取り組みがなされている。DoiらのUS-6,716,911においては、ポリエステル及び水性乳化剤溶液を押出機内で溶融混練することによって水性の生分解性ポリマー分散液を形成することが教示されている。しかしながら、ポリエステルの加水分解を回避するために、分散液のpHを比較的狭い範囲内に制御しなければならない。TanakaらのUS-2015/0005174においては新規なポリ乳酸ポリエステル樹脂が教示されており、これは優れた水分散性を示すので、乳化剤又は有機溶媒の必要なしに水性分散液中に配合することができると述べられている。しかしながら、この分散液は、狭いクラスの規定されたポリマー構造に特異的なものである。WhitehouseのUS-9,085,688においては、加熱した二軸押出機を用いてヒドロキシアルカノエートのポリマー又はコポリマーの水性分散液を製造する方法が教示されている。分散液を形成するために、水及び界面活性剤を高温のポリマー溶融体に加える。しかしながら、ここでもこの分散液は狭いクラスの特定のポリマーに限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US-6,716,911
【文献】US-2015/0005174
【文献】US-9,085,688
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0007]したがって、有機溶媒を実質的に含まず、且つ広いpH範囲にわたって加水分解安定性であるより広範囲にわたる水性分散液を提供するのに有効なプロセスに対する必要性が当該技術において未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0008]一態様によれば、加水分解不安定性ポリマーの加水分解安定性水性分散液が提供される。この分散液は、水中に分散している加水分解不安定性ポリマーの粒子及び安定剤を含む。この分散液は、広いpH範囲にわたって安定であり、一定範囲の粒径を含めることができ、揮発性有機溶媒を実質的に含まない。通常はこの分散液は、約10~約1000mPa・秒の粘度を有し、約10~約60重量%の全固形分含量を有する。種々の態様には約60重量%~約90重量%の全固形分含量を含めることができるが、固形分の全量は分散液を希釈することによって減少させることができると意図される。
【0010】
[0009]種々の態様においては、加水分解不安定性ポリマーは生分解性ポリマーであってよい。「生分解性ポリマー」とは、その所期の目的を果たした後に分解して、ガス(CO2、N2)、水、バイオマス、及び無機塩のような天然副生成物を生成させる特定のタイプのポリマーを意味する。この用語の範囲内には、生分解性ポリマーのコポリマー及びブレンドが含まれる。
【0011】
[0010]「実質的に含まない」とは、分散液が約0.2重量%未満の揮発性有機溶媒を含むことを意味する。「揮発性有機溶媒」とは、周囲温度において化合物の少なくとも一部が蒸発又は昇華して周囲大気の中に混入するような蒸気圧を有し、USEPA試験法24によって測定できる有機化合物を意味する。「加水分解安定性」とは、水中のバイオポリマーの分散液が、そのモノマー物質又は他の分解物質に分解することなくその構造、分子量、コロイド安定性、及び/又は含量を実質的に保持し、周囲環境において50℃までの温度で貯蔵した際に通常は少なくとも8時間、又は1週間乃至6か月までの間の可使時間の間にわたってそのように挙動することを意味する。これとは逆に、「加水分解不安定性」とは、材料(例えばポリマー)又は分散液が、「加水分解安定性」に関して上記に与えた基準を満足しないことを意味する。
【0012】
[0011]幾つかの態様においては、加水分解安定性分散液はレオロジー調整剤を更に含む。レオロジー調整剤は、通常は粘度を増加させることによって分散液の粘度を変化させるように作用する1種類又は複数の化合物である。
【0013】
[0012]したがって、種々の態様の特徴は、有機溶媒を実質的に含まず、且つ加水分解安定性である加水分解不安定性ポリマーの水性分散液、及びかかる分散液を形成する方法を提供することである。種々の態様の他の特徴及び有利性は、以下の詳細な記載及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0013]種々の態様は、揮発性有機化合物を実質的に含まない加水分解不安定性ポリマーの水性分散液を提供する。この分散液は、水中の加水分解不安定性ポリマーの粒子及び安定剤を含む。この分散液は、約3.0~約11.5の広いpH範囲にわたって安定であり、一定範囲の粒径を含んでいてよい。例えば、分散液中の生分解性ポリマーの粒子は、約2.5nm~約600μmの範囲の径を有していてよい。明らかにする目的のために、安定性の1つの特徴は、分散液を周囲条件(約23℃)において1週間以上保持した際に固形分損失が10重量%以下であることである。
【0015】
[0014]一般に、本明細書に記載する水性分散液は、連続的な水相中に分散している粒子を含む。幾つかの態様においては、分散した粒子は「不連続相」と呼ぶ場合がある。本明細書において用いる「分散液」という用語は、懸濁液、コロイド、及びエマルジョンを含む。言い換えれば、不連続相としては、固体粒子、液体、油などを挙げることができる。
【0016】
[0015]一態様においては、分散液は、水性分散液の全重量を基準として約0.5重量%~約95重量%、約50重量%~約90重量%、約20重量%~約75重量%、約20重量%~約60重量%、約21重量%~約50重量%、又は約35重量%~約47重量%の加水分解不安定性ポリマーを含む。分散液には、水性分散液の全重量を基準として約0.1重量%~約25重量%、約0.5重量%~約15重量%、又は約1重量%~約8重量%の安定剤を更に含ませることができる。分散液には、水性分散液の全重量を基準として約0.01重量%~約5.0重量%、約0.1重量%~約3重量%、又は約1重量%~約3重量%のレオロジー調整剤を更に含ませることができる。水性分散液の重量の残りは水であってよい。他の態様においては、分散液には、約0.01重量%~約1重量%、又は約0.1重量%~約0.5重量%の弱酸と弱塩基の塩の対を含むpH緩衝剤を更に含ませることができ、ここで重量%は緩衝剤によって供給される水性分散液中の塩の全濃度を基準とする。分散液中の成分の種々の範囲の量を開示するが、特定の用途に応じて分散液を濃縮又は希釈することによって他の量及び範囲を得ることができると意図される。
【0017】
[0016]種々の態様においては、加水分解不安定性ポリマーは生分解性ポリマーである。生分解性ポリマーは任意の公知のクラスの生分解性ポリマーを含んでいてよく、例えばポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステルポリマー(例えば、脂肪族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステル)、リグニン系プラスチック、デンプン系プラスチック、セルロース系プラスチック、タンパク質系プラスチック、バイオ由来のポリエチレンであってよい。例えば、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリマレート(polymalate)(PMA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド(PEA)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、脂肪族コポリエステル(PBSA)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリグリコール酸、脂肪族ポリアスパラギン酸、ポリ尿素、大豆系ポリマー、ポリ(ポリセベート)(poly(poly sebate))、ポリアクリル酸、並びにこれらの混合物及びコポリマー、例えばポリ乳酸-グリコール酸コポリマー(しかしながらこれに限定されない)からなる群から選択することができる。幾つかの態様においては、生分解性ポリマーは、例として(限定ではない)、PLA、PMA、PHB、PHA、PCL、PEA、PHV、PHH、PBSA、PEF、PPS、ポリグリコール酸、又はPBSのようなポリエステルポリマーである。具体例においては、生分解性ポリマーはPLAである。加水分解不安定性ポリマーは、結晶質、半結晶質、又はアモルファス形態であってよい。
【0018】
[0017]理論によって縛られることは望まないが、分散液の安定剤は、加水分解不安定性ポリマーの粒子を少なくとも部分的に被包して、加水分解を減少させて分散液中におけるかかる粒子の安定性を増大させ、粒子が分散液から凝集して沈降又は浮遊するのを阻止するように作用すると考えられる。幾つかの場合においては、安定剤は、加水分解不安定性ポリマー粒子の表面上に被覆を形成するように作用させることができる。幾つかの場合においては、安定剤は「コロイド安定剤」と呼ぶ場合がある。
【0019】
[0018]一態様においては、安定剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース系多糖、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロース;バイオポリマー系多糖、例えばジェランガム、ラムザンガム、ウェランガム、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、及びアルギン酸ナトリウム;合成炭化水素ポリマー、例えばポリアクリルアミド及びそのコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸及びそのコポリマー、ポリオレフィン性スルホネートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンと無水マレイン酸のコポリマー、ポリメチレンエーテルと無水マレインのコポリマー;並びに、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、ブラシジン酸、ガドレイン酸、バクセン酸、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、エイコサン酸、ミリスチン酸、オクタン酸、ヘキサン酸、ブタン酸、及びこれらのブレンドなどの鹸化脂肪酸;からなる群から選択される。幾つかの態様においては、安定剤として、1種類以上のアクリルコポリマー、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリエーテルカルボキシレートポリマー、非会合型増粘剤及び会合型増粘剤、並びに塩基中和エチレンアクリル酸コポリマーを挙げることができる。1つの特定の態様においては、安定剤としてエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を挙げることができる。
【0020】
[0019]種々の態様においては、安定剤は、更に分散液のためのレオロジー調整剤として作用させることができる。例えば、分散液に、ガム、セルロース、アルギン酸ナトリウム、PVOH、EAAなどを含ませることができ、これらは水性分散液のための安定剤及びレオロジー調整剤の両方として作用させることができる。しかしながら他の態様においては、安定剤として第1の成分を分散液中に含ませることができ、そしてレオロジー調整剤として第2の異なる成分を分散液中に含ませることができる。
【0021】
[0020]理論によって縛られることは望まないが、分散液のレオロジー調整剤は、加水分解不安定性ポリマーの粒子を少なくとも部分的に被包して、加水分解を減少させて分散液中におけるかかる粒子の安定性を増大させるように作用すると考えられる。幾つかの場合においては、レオロジー調整剤は、安定剤及び/又は加水分解不安定性ポリマー粒子の表面上に被覆を形成するように作用させることができる。レオロジー調整剤はまた、分散液の連続相の粘度を増加させることによって加水分解不安定性ポリマー粒子が分散液から分離するのを阻止するように作用させることもできる。
【0022】
[0021]一態様においては、レオロジー調整剤は、無機クレイ、例えばベントナイト、炭酸カルシウム、及びヒュームドシリカ;セルロース系多糖、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びナノ結晶質セルロース;合成炭化水素ポリマー、例えばポリアクリルアミド及びそのコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸及びそのコポリマー、ポリオレフィン性スルホネート及びそのコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンと無水マレイン酸のコポリマー、ポリメチレンエーテルと無水マレインのコポリマー;バイオポリマー系多糖、例えばジェランガム、ラムザンガム、ウェランガム、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、及びアルギン酸ナトリウム;からなる群から選択される。幾つかの態様においては、レオロジー調整剤として、1種類以上のアクリルコポリマー、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリエーテルカルボキシレートポリマー、非会合型増粘剤及び会合型増粘剤、並びに塩基中和エチレンアクリル酸コポリマーを挙げることができる。
【0023】
[0022]幾つかの態様においては、分散液はpH緩衝剤を更に含む。随意的なpH緩衝剤は、加水分解不安定性ポリマー組成物中に存在する残留酸モノマーを封鎖するのに有用である。これはまた、7.0の中性のpH付近のpH安定性を維持するのを助けて、それによって上記に規定した加水分解不安定性を最小にするのにも有用である。理論によって縛られることは望まないが、随意的なpH緩衝剤はまた、塩効果を生成させるために作用させて、水溶性の安定剤及び/又はレオロジー調整剤を加水分解不安定性ポリマー粒子の表面上に析出させて、加水分解不安定性ポリマー粒子の加水分解からの更なる保護を与えるように作用させることもできる。一態様においては、pH緩衝剤は、6~8の間のpKa値を有する弱酸又は塩基の塩或いは他の公知の緩衝剤からなる群から選択される。塩は、有機塩、無機塩、又はこれらの組合せであってよい。
【0024】
[0023]分散液の1つの代表的な態様は、加水分解不安定性ポリマーとしてポリ乳酸の粒子、安定剤としてポリビニルアルコール、及びレオロジー調整剤としてキサンタンガムを含む。
【0025】
[0024]幾つかの態様はまた、安定な水性分散液を形成する方法も提供する。一態様においては、この方法は、加水分解不安定性ポリマー、水、及び安定剤をブレンドして、加水分解不安定性ポリマーの粒子の加水分解安定性水性分散液を形成することによって、加水分解不安定性ポリマーを約25℃~約170℃の間の温度において乳化することを含む。幾つかの態様においては、この方法は加圧下で行うことができるが、この方法は特定の態様に応じて大気圧において行うことができると意図される。加水分解不安定性ポリマーは、水とブレンドして水性分散液を形成する前に、その融点より高い温度に加熱することができる。次に、安定剤の水溶液を分散液中にブレンドする。
【0026】
[0025]或いは、加水分解不安定性ポリマーは微粉化粉末として与えることができ、本方法は加水分解不安定性ポリマーの融点より低い温度で行う。微粉化粉末は、約600μm未満、約100μm未満、約50μm未満、約25μm未満、約10μm未満、又は更には約50nm未満の平均粒径を有していてよい。幾つかの態様においては、微粉化粉末は、100μm未満の径及び約5μm未満の平均粒径を有する粒子を含む。例えば、微粉化粉末は、約25nm~約600μm、約50nm~約500μm、約100nm~約400μmなどの範囲の平均径を有する粒子を含んでいてよい。
【0027】
[0026]任意の好適な混合装置を用いることができる。例えば、ポリマーをその融点より高い温度に加熱する場合には、反応器又は押出機を用いて分散液の成分を混合することができる。或いは、例えば湿式粉砕装置、ローター/ステーター、キャビテーションミキサーを用いる高圧均質化反応器、固体剪断状態粉砕装置、高圧混合反応器、円錐形高圧反応器、フラッシュナノ沈澱容器、超臨界流体沈澱システム(例えば超臨界CO2沈澱)、又は超音波混合容器などの他の混合装置及びプロセスを用いることができる。
【0028】
[0027]レオロジー調整剤を分散液中に含ませる一態様においては、加水分解不安定性ポリマー、水、及び安定剤をブレンドして分散液を形成し、次にレオロジー調整剤を含む水溶液を分散液中にブレンドする。これは反応器又は加熱押出機内で行うことができるが、他の方法が意図される。一態様においては、ポリマー溶融体、水、及び安定剤の分散液を形成し、分散液を冷却する。レオロジー調整剤の水溶液を冷却した分散液中にブレンドする。随意的なpH緩衝剤を分散液に加えてそれを安定化させることもできる。
【0029】
[0028]幾つかの態様においては、約2.5nm~約600μmの範囲の系を有する加水分解不安定性ポリマーの粒子を与えるようにプロセスを実施して混合装置を運転する。
[0029]他の態様においては、加水分解不安定性ポリマーがポリ乳酸である水性の加水分解安定性分散液を形成する方法は、ポリ乳酸、水、ポリビニルアルコール、及びキサンタンガム(例えばCP KeltrolからのKeltrol(登録商標))を、反応器又は加熱押出機内において約25℃~約170℃の温度、加圧下で、ポリ乳酸の粒子の水性分散液を形成するのに十分な時間(約5秒間~約1分間)乳化することを含む。この方法は、まずポリ乳酸ポリマーを水の第1の部分及びポリビニルアルコールとブレンドして第1の混合物を形成することによって行うことができる。次に、第1の混合物を水の第2の部分及びキサンタンガムとブレンドして分散液を形成する。
【0030】
[0030]水性ポリマー分散液のこれらの態様は、接着剤、バインダー、サイズ剤、複合材料、繊維、シーラント、プライマー、インク、オーバープリントワニス、潤滑、塗料、種子又は穀類の被覆系、農業用被覆、編織布被覆、床材ケア被覆、ガラス被覆、パーソナルケア製品、及び紙被覆のような広範囲の用途、分野、及び使用において適用性を有すると意図される。かかる分散液はまた、薬物送達に関する医薬産業、掘削配合物に関する石油及びガス産業、医療用試験キットにおける使用、又は化粧品における添加剤としての使用も見出されている。かかる分散液の主要な用途は、紙、板紙包装材、種々のプラスチックフィルム、及び容器の上に薄いバリヤ被覆を形成することである
[0031]更に、これらの水性分散液は、種々の意図される用途のために転化させて微粉末に戻すことができる。例えば、これらの転化された微粉末は、再分散性粉末系、粉末射出成形用途、又は3D印刷用途において用いることができる。更に、これらの微粉末は、石油及びガス掘削配合物中に乾燥添加剤として含ませることができる。
【実施例】
【0031】
[0032]種々の態様を示すために以下の実施例を与えるが、これらは特許請求の範囲を限定することは意図していない。全ての部及びパーセントは他に示していない限りにおいて重量基準である。
【0032】
[0033]実施例においては、試料の全固形分を求めるために以下の方法を用いた。Sartorius MA150水分分析機(Sartorius AG,ドイツ)を40℃~42℃の間の開始温度にセットした。水分分析機のフード内の保持器上にアルミニウム皿を配置した。ピンセットを用いて、ガラス繊維フィルターを、模様の付いた側を上にしてアルミニウム皿上に配置した。秤の風袋を計量した。次に、周囲温度において1.8g~2.2gの間の試料をフィルター上に配置した。それを、フィルター上で可能な限り迅速に、薄く、且つ均一に拡げた。フードを降下させ、水分分析機を2秒間待機させて重量を較正し、試料の試験を開始した。試料を、標準的乾燥プログラムを用いて3分間かけて110℃に加熱し、終了スタンバイ温度として40℃の温度を設定した。水分分析機によって乾燥重量が報告され、これを全固形分(%)として記録した。
【0033】
実施例1
[0034]脱イオン水、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、界面活性剤、及び消泡剤を用いて、連続水溶液相を形成した。組成を下表1に与える。具体的には、ポリビニルアルコールは、Sekisui Specialty Chemicals America, LLC(Dallas, TX)から入手できるポリビニルアルコールである4.77%のSELVOL(登録商標)PVOH 203として加え、キサンタンガムは、CP Kelco(Atlanta, GA)から入手できるキサンタンガム系多糖である1%のKELTROL(登録商標)として加え、Croda International PLC(英国)から入手できるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートであるTWEEN(登録商標)20を界面活性剤として加えた。
【0034】
[0035]
【0035】
【0036】
[0036]分散液を形成するために、表1に詳述する連続相溶液に微粉化粉末の形態のPLAをゆっくりと加え、ブレンダー内で均一な懸濁液が形成されるまで混合した。次に、緩衝剤を加えてpHを7.0に調節した。組成を下表2に与える。
【0037】
[0037]
【0038】
【0039】
[0038]理論によって縛られないが、緩衝剤を用いて懸濁液を中和することによって、水相と固相の相間にPVOH/多糖のコアセルベート相が形成されると考えられる。更に、下記の実施例2において示されるように50℃における経時変化実験において見られるように、このコアセルベートがPLA粒子を被包してシェル又は壁部を形成し、これが触媒的加水分解が起こる速度の減少を促進することができると考えられる。
【0040】
[0039]加水分解安定性は、全固形分の損失量を測定することによって測定される。理論によって縛られないが、全固形分の損失は、加水分解の結果としてポリマーの連鎖切断が起こるためであると考えられる。周囲温度(23℃)において試料をベンチ上に配置し、50℃のオーブン内に29日間配置した。結果を下表3に報告する。
【0041】
[0040]
【0042】
【0043】
[0041]表3において示されるように、周囲温度又は50℃のいずれにおいても、全固形分(%)における有意な変化はなかった。具体的には、分散液中の固形分のパーセントにおける変化は約10%より小さく維持された。理論によって縛られないが、約10%以上の分散液中の固形分のパーセントにおける変化は、当該産業において固形分含量における有意な変化として一般に認めることができる。
【0044】
[0042]分散液は約30日間にわたって加水分解安定性を維持したので、より長時間の実験を行って、より長い時間にわたって分散液が加水分解安定性を維持するかどうかを求めた。したがって、上記に与えたレシピ及び方法にしたがって3つのバッチを調製し、周囲温度(23℃)のベンチ上に1年間配置した。結果を下表4に報告する。
【0045】
[0043]
【0046】
【0047】
[0044]表4において示されるように、3つのバッチに関して周囲温度において1年間にわたって全固形分(%)における有意な変化はなかった。具体的には、分散液中の固形分のパーセントにおける変化は、約10%より小さく、より特には3.5%より小さく維持された。
【0048】
実施例2
[0045]成分の添加順序を変化させて、PVOH/多糖コアセルベートの形成に対する効果を求めることができる。試料1は、表1及び2に与える組成を用いて上記のように調製した。分散液を形成するために、表1に詳述する連続相溶液に微粉化粉末の形態のPLAをゆっくりと加え、ブレンダー内で均一な懸濁液が形成されるまで混合した。次に、緩衝剤を加えてpHを7.0に調節した。
【0049】
[0046]比較試料Aを調製するために、表1に詳述する連続相溶液をブレンダーに加え、リン酸緩衝剤溶液を連続相溶液に加えて混合した。次に、微粉化粉末の形態のPLAを緩衝連続相溶液中にゆっくりと導入し、均一な懸濁液が形成されるまで良く混合した。比較試料Aの成分の量は、上表2に報告した量と同じであった。
【0050】
[0047]理論によって縛られないが、緩衝剤を用いて連続相溶液を中和することによって、水相と固相の相間にPVOH/多糖のコアセルベート相が形成されると考えられる。更に、コアセルベート粒子は緩衝塩のイオン強度によって安定化されて、溶液から沈澱析出すると考えられる。したがって、PLA粒子を系に導入する前に緩衝剤を加えてコアセルベート粒子を溶液から沈澱析出させることによって、PLA粒子が被包されず、これによって加水分解の高い速度がもたらされると考えられる。
【0051】
[0048]試料1及び比較試料Aの全固形分の損失量を測定することによって加水分解安定性を測定した。周囲温度(23℃)において試料をベンチ上に配置し、50℃のオーブン内に30日間配置した。結果を下表5に報告する。
【0052】
[0049]
【0053】
【0054】
[0050]周囲温度における比較試料Aの全固形分の量における変化は試料1において観察された変化と同等であったが、50℃における全固形分の量における大きな減少(15.5%の全固形分の損失)は、30日後における加水分解のより高い速度を示していた。したがって、連続相溶液に緩衝剤を加えても、PLA粒子は加水分解から保護されないと結論される。
【0055】
実施例3
[0051]試料2は、PLA樹脂の形態のPLAを用いて形成したPLA分散液であった。具体的には、PVOH(Sekisui Specialty ChemicalsからのSELVOL(登録商標)PVOH 203)、及びPLA樹脂を、PLA樹脂の融点よりも高い温度に加熱し、押出機内で混合して共押出した。水を加えて、40重量%のPLA樹脂、55重量%の水、及び5重量%のPVOHを含む濃エマルジョンを形成した。次に、「後添加プロセス(post add process)」でレオロジー調整剤(KELTROL(登録商標)として入手できるキサンタンガム系多糖)を冷却したエマルジョンに加え、次にpH7.00のリン酸緩衝剤溶液(7.15%の緩衝剤塩)を加えた。0.001%~0.2%の少量の消泡剤、及び0.1%~0.3%の殺生物剤を配合物に加えることは通例であるが、随意的である。分散液の最終組成を下表6に与える。
【0056】
[0052]
【0057】
【0058】
[0053]比較試料Bは、PLA樹脂の形態のPLAを用いることによって調製した。具体的には、PVOH(Sekisui Specialty ChemicalsからのSELVOL(登録商標)PVOH 203)、及びPLA樹脂を、PLA樹脂の融点よりも高い温度に加熱し、押出機内で混合して共押出した。水を加えて、40重量%のPLA樹脂、55重量%の水、及び5重量%のPVOHを含む濃エマルジョンを形成した。次に、「後添加プロセス(post add process)」でレオロジー調整剤(KELTROL(登録商標)として入手できるキサンタンガム系多糖)を冷却したエマルジョンに加えた。0.001%~0.2%の少量の消泡剤、及び0.1%~0.3%の殺生物剤を配合物に加えることは通例であるが、随意的である。比較試料Bの分散液の最終組成を下表7に与える。
【0059】
[0054]
【0060】
【0061】
[0055]試料2及び比較試料Bの全固形分の損失量を測定することによって加水分解安定性を測定した。周囲温度(23℃)において試料をベンチ上に配置し、50℃のオーブン内に30日間配置した。結果を下表8に報告する。
【0062】
[0056]
【0063】
【0064】
[0057]周囲温度における比較試料Bの全固形分の量における変化は試料2において観察された変化と同等であったが、50℃における全固形分の量における大きな減少(約36%の全固形分の損失)は、30日後における加水分解のより高い速度を示していた。したがって、PLA樹脂の分散液は微粉化PLA粉末の分散液と同じように作用した。
【0065】
実施例4
[0058]試料3は、PBS樹脂の形態のPBSを用いて形成したPBS分散液であった。具体的には、PVOH(Sekisui Specialty ChemicalsからのSELVOL(登録商標)PVOH 203)、及びPBS樹脂を、PBS樹脂の融点よりも高い温度に加熱し、押出機内で混合して共押出した。水を加えて、40重量%のPBS樹脂、55重量%の水、及び5重量%のPVOHを含む濃エマルジョンを形成した。
【0066】
[0059]PBS分散液を固形分約15%に希釈し、経時変化の実験を行った。試料3の全固形分の損失量を測定することによって加水分解安定性を測定した。周囲温度(23℃)において試料をベンチ上に配置し、50℃のオーブン内に30日間配置した。結果を下表9に報告する。
【0067】
[0060]
【0068】
【0069】
[0061]表9において示されるように、周囲温度又は50℃のいずれにおいても、30日間にわたって全固形分(%)における有意な変化はなかった。具体的には、分散液中の固形分のパーセントにおける変化は約10%より小さく、より特には1%より小さく維持された。したがって、PBS樹脂の分散液は、加水分解安定性に関してPLAの分散液と同じように作用した。
【0070】
[0062]幾つかの態様は以下の付番した条項を参照して記載することができ、好ましい特徴は従属項において示す。
[0063]1.水中の加水分解不安定性ポリマーの粒子及び安定剤を含む、揮発性有機化合物を実質的に含まない加水分解不安定性ポリマーの水性分散液。
【0071】
[0064]2.加水分解不安定性ポリマーが生分解性ポリマーを含む、第1項の水性分散液。
[0065]3.生分解性ポリマーがポリエステルを含む、第1項又は第2項の水性分散液。
【0072】
[0066]4.ポリエステルが、ポリ乳酸(PLA)、ポリマレート(PMA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド(PEA)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、脂肪族コポリエステル(PBSA)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリ(ポリセベート)(PPS)、及びポリグリコール酸からなる群から選択されるポリマーを含む、第3項の水性分散液。
【0073】
[0067]5.ポリエステルがポリ乳酸(PLA)を含む、第3項又は第4項の水性分散液。
[0068]6.加水分解不安定性ポリマーが、水性分散液の全重量を基準として約5重量%~約95重量%の量で存在する、上記の項のいずれかの水性分散液。
【0074】
[0069]7.加水分解不安定性ポリマーが、水性分散液の全重量を基準として約50重量%~約90重量%の量で存在する、上記の項のいずれかの水性分散液。
[0070]8.安定剤が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース系多糖、バイオポリマー系多糖、合成炭化水素ポリマー、鹸化脂肪酸、アクリルコポリマー、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリエーテルカルボキシレートポリマー、及び塩基中和エチレンアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、上記の項のいずれかの水性分散液。
【0075】
[0071]9.安定剤がポリビニルアルコールを含む、上記の項のいずれかの水性分散液。
[0072]10.加水分解不安定性ポリマーがポリ乳酸を含み、安定剤がポリビニルアルコールを含む、上記の項のいずれかの水性分散液。
【0076】
[0073]11.安定剤が、水性分散液の全重量を基準として約0.1重量%~約25重量%の量で存在する、上記の項のいずれかの水性分散液。
[0074]12.安定剤が、水性分散液の全重量を基準として約0.5重量%~約15重量%の量で存在する、上記の項のいずれかの水性分散液。
【0077】
[0075]13.分散液がレオロジー調整剤を更に含む、上記の項のいずれかの水性分散液。
[0076]14.レオロジー調整剤が、無機クレイ、セルロース系多糖、合成炭化水素ポリマー、ポリオレフィン性スルホネート及びそのコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンと無水マレイン酸のコポリマー、ポリメチレンエーテルと無水マレイン酸のコポリマー、バイオポリマー系多糖、アクリルコポリマー、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリエーテルカルボキシレートポリマー、及び塩基中和エチレンアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、第13項の水性分散液。
【0078】
[0077]15.レオロジー調整剤が、水性分散液の全重量を基準として約0.01重量%~約5重量%の量で存在する、第13項又は第14項の水性分散液。
[0078]16.レオロジー調整剤が、水性分散液の全重量を基準として約0.1重量%~約3重量%の量で存在する、第13~第15項のいずれかの水性分散液。
【0079】
[0079]17.レオロジー調整剤がバイオポリマー系多糖を含む、第13~16項のいずれかの水性分散液。
[0080]18.バイオポリマー系多糖がキサンタンガムを含む、第17項の水性分散液。
【0080】
[0081]19.加水分解不安定性ポリマーの粒子が約25nm~約600μmの平均径を有する、上記の項のいずれかの水性分散液。
[0082]20.pH緩衝剤を更に含む、上記の項のいずれかの水性分散液。
【0081】
[0083]21.pH緩衝剤が弱酸と塩基の塩からなる群から選択される、第20項の水性分散液。
[0084]22.pH緩衝剤が、水性分散液の全重量を基準として約0.01重量%~約1重量%の量で存在する、第20項又は第21項の水性分散液。
【0082】
[0085]23.加水分解不安定性ポリマー、水、及び安定剤をブレンドして、加水分解不安定性ポリマーの加水分解安定性水性分散液を形成することによって、加水分解不安定性ポリマーを約25℃~約170℃の間の温度において乳化することを含む、加水分解不安定性ポリマーの加水分解安定性水性分散液を形成する方法。
【0083】
[0086]24.加水分解不安定性ポリマーを、水及び安定剤とブレンドする前にその融点より高い温度に加熱することを更に含む、第23項の方法。
[0087]25.加水分解不安定性ポリマーを微粉化粉末として与える、第23項又は第24項の方法。
【0084】
[0088]26.加水分解安定性水性分散液中にレオロジー調整剤をブレンドすることを更に含む、第23~25項のいずれかの方法。
[0089]27.レオロジー調整剤が、無機クレイ、セルロース系多糖、合成炭化水素ポリマー、ポリオレフィン性スルホネート及びそのコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンと無水マレイン酸のコポリマー、ポリメチレンエーテルと無水マレイン酸のコポリマー、バイオポリマー系多糖、アクリルコポリマー、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリエーテルカルボキシレートポリマー、及び塩基中和エチレンアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、第26項の方法。
【0085】
[0090]28.レオロジー調整剤を、水性分散液の全重量を基準として約0.01重量%~約5重量%の量で存在させる、第26項又は第27項の方法。
[0091]29.レオロジー調整剤を、水性分散液の全重量を基準として約0.1重量%~約3重量%の量で存在させる、第26~28項のいずれかの方法。
【0086】
[0092]30.レオロジー調整剤がバイオポリマー系多糖を含む、第26~29項のいずれかの方法。
[0093]31.バイオポリマー系多糖がキサンタンガムを含む、第30項の方法。
【0087】
[0094]32.加水分解安定性水性分散液中にpH緩衝剤をブレンドすることを更に含む、第23~31項の方法。
[0095]33.pH緩衝剤が、約6~約8の間のpKaを有する弱酸と塩基の塩からなる群から選択される、第32項の方法。
【0088】
[0096]34.加水分解安定性水性分散液中の加水分解不安定性ポリマーの粒子が約25nm~約600μmの平均径を有する、第23~第33項のいずれかの方法。
[0097]35.加水分解不安定性ポリマーが生分解性ポリマーを含む、第23~34項のいずれかの方法。
【0089】
[0098]36.生分解性ポリマーがポリエステルを含む、第35項の方法。
[0099]37.ポリエステルが、ポリ乳酸(PLA)、ポリマレート(PMA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド(PEA)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、脂肪族コポリエステル(PBSA)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリ(ポリセベート)(PPS)、及びポリグリコール酸からなる群から選択されるポリマーを含む、第36項の方法。
【0090】
[00100]38.ポリエステルがポリ乳酸(PLA)を含む、第36項又は第37項の方法。
[00101]39.加水分解不安定性ポリマーを、水性分散液の全重量を基準として約5重量%~約95重量%の量で存在させる、第23~38項のいずれかの方法。
【0091】
[00102]40.加水分解不安定性ポリマーを、水性分散液の全重量を基準として約50重量%~約90重量%の量で存在させる、第23~39項のいずれかの方法。
[00103]41.安定剤が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース系多糖、バイオポリマー系多糖、合成炭化水素ポリマー、鹸化脂肪酸、アクリルコポリマー、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリエーテルカルボキシレートポリマー、及び塩基中和エチレンアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、第23~40項のいずれかの方法。
【0092】
[00104]42.安定剤がポリビニルアルコールを含む、第23~41項のいずれかの方法。
[00105]43.加水分解不安定性ポリマーがポリ乳酸を含み、安定剤がポリビニルアルコールを含む、第23~42項のいずれかの方法。
【0093】
[00106]44.安定剤を、水性分散液の全重量を基準として約0.1重量%~約25重量%の量で存在させる、第23~43項のいずれかの方法。
[00107]45.安定剤を、水性分散液の全重量を基準として約0.5重量%~約15重量%の量で存在させる、第23~44項のいずれかの方法。
【0094】
[00108]「好ましくは」、「一般に」、及び「通常は」などの用語は、本明細書においては特許請求される発明の範囲を限定するか、又は幾つかの特徴が、特許請求されている発明の構造又は機能にとって不可欠、本質的、又は更には重要であることを暗示するようには用いられないことが留意される。むしろ、これらの用語は単に、本発明の特定の態様において用いることができ、又は用いられなくてもよい別の特徴又は更なる特徴を強調することを意図するものである。
【0095】
[00109]本発明を記載及び規定する目的で、「装置」の用語は、本明細書においては、構成要素が他の構成要素と組み合わされているかどうかに関係なく複数の構成要素の組合せ及び個々の構成要素を示すように用いられることが留意される。本発明を記載及び規定する目的で、「実質的に」という用語は、任意の定量的な比較、値、測定、又は他の説明に与えられる可能性がある固有の不確定度を表すように用いられることが留意される。意味が明らかに反していない限りにおいては、本明細書において示される全ての範囲は、示されている範囲内の全ての値及び端点を包含するとみなされる。
【0096】
[00110]本発明を詳細に且つその具体的な態様を参照して記載したが、添付の特許請求の範囲において規定される発明の範囲から逸脱することなく修正及びバリエーションが可能であることは明らかであろう。より具体的には、本発明の幾つかの形態を本明細書において好ましいか又は特に有利なものとして特定しているが、本発明は必ずしもこれらの発明の好ましい形態に限定されないと意図される。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
揮発性有機化合物を実質的に含まない加水分解不安定性ポリマーの水性分散液であって、水中の前記加水分解不安定性ポリマーの粒子及び安定剤を含む、前記水性分散液。
[2]
前記加水分解不安定性ポリマーが生分解性ポリマーを含む、[1]に記載の水性分散液。
[3]
前記生分解性ポリマーがポリエステルを含む、[2]に記載の水性分散液。
[4]
前記ポリエステルが、ポリ乳酸(PLA)、ポリマレート(PMA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド(PEA)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、脂肪族コポリエステル(PBSA)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリ(ポリセベート)(PPS)、及びポリグリコール酸からなる群から選択されるポリマーを含む、[3]に記載の水性分散液。
[5]
前記ポリエステルがポリ乳酸(PLA)を含む、[3]に記載の水性分散液。
[6]
前記加水分解不安定性ポリマーが、前記水性分散液の全重量を基準として約5重量%~約95重量%の量で存在する、[1]~[5]のいずれかに記載の水性分散液。
[7]
前記加水分解不安定性ポリマーが、前記水性分散液の全重量を基準として約50重量%~約90重量%の量で存在する、[1]~[6]のいずれかに記載の水性分散液。
[8]
前記安定剤が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース系多糖、バイオポリマー系多糖、合成炭化水素ポリマー、鹸化脂肪酸、アクリルコポリマー、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリエーテルカルボキシレートポリマー、及び塩基中和エチレンアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、[1]~[7]のいずれかに記載の水性分散液。
[9]
前記安定剤がポリビニルアルコールを含む、[1]~[8]のいずれかに記載の水性分散液。
[10]
前記加水分解不安定性ポリマーがポリ乳酸を含み、前記安定剤がポリビニルアルコールを含む、[1]~[9]のいずれかに記載の水性分散液。
[11]
前記安定剤が、前記水性分散液の全重量を基準として約0.1重量%~約25重量%の量で存在する、[1]~[10]のいずれかに記載の水性分散液。
[12]
前記安定剤が、前記水性分散液の全重量を基準として約0.5重量%~約15重量%の量で存在する、[1]~[11]のいずれかに記載の水性分散液。
[13]
前記分散液がレオロジー調整剤を更に含む、[1]~[12]のいずれかに記載の水性分散液。
[14]
前記レオロジー調整剤が、無機クレイ、セルロース系多糖、合成炭化水素ポリマー、ポリオレフィン性スルホネート及びそのコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンと無水マレイン酸のコポリマー、ポリメチレンエーテルと無水マレイン酸のコポリマー、バイオポリマー系多糖、アクリルコポリマー、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリエーテルカルボキシレートポリマー、及び塩基中和エチレンアクリル酸コポリマーからなる群から選択される、[13]に記載の水性分散液。
[15]
前記レオロジー調整剤が、前記水性分散液の全重量を基準として約0.01重量%~約5重量%の量で存在する、[13]又は[14]に記載の水性分散液。
[16]
前記レオロジー調整剤が、前記水性分散液の全重量を基準として約0.1重量%~約3重量%の量で存在する、[13]又は[14]に記載の水性分散液。
[17]
前記レオロジー調整剤がバイオポリマー系多糖を含む、[13]~[16]のいずれかに記載の水性分散液。
[18]
前記バイオポリマー系多糖がキサンタンガムを含む、[17]に記載の水性分散液。
[19]
前記加水分解不安定性ポリマーの前記粒子が約25nm~約600μmの平均径を有する、[1]~[18]のいずれかに記載の水性分散液。
[20]
pH緩衝剤を更に含む、[1]~[19]のいずれかに記載の水性分散液。
[21]
前記pH緩衝剤が弱酸と塩基の塩からなる群から選択される、[20]に記載の水性分散液。
[22]
前記pH緩衝剤が、前記水性分散液の全重量を基準として約0.01重量%~約1重量%の量で存在する、[20]又は[21]に記載の水性分散液。