(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】遠隔医療支援システム、医療機関コンピュータ、支援機関コンピュータ、医療機関コンピュータによって実行される方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20230207BHJP
【FI】
G16H80/00
(21)【出願番号】P 2019065210
(22)【出願日】2019-03-29
(62)【分割の表示】P 2018121597の分割
【原出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】518229054
【氏名又は名称】株式会社T-ICU
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 智之
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174266(JP,A)
【文献】特開2009-064401(JP,A)
【文献】特開2012-027565(JP,A)
【文献】特開2003-319913(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181148(WO,A2)
【文献】特開平07-087210(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108133758(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者がいる
複数の医療機関
のそれぞれにある少なくとも一つの第1のコンピュータと、前記
複数の医療機関とは物理的に離れた位置にある少なくとも一つの第2のコンピュータとが通信ネットワークを介して接続された遠隔医療支援システムであって、
前記患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサを備え、
前記少なくとも一つの第1のコンピュータは、
前記少なくとも一つのセンサの測定データを受信するデータ受信部と、
受信した測定データに基づいて、前記患者に医療的な対応をすることが必要であるかどうかを判断し、必要であると判断した場合は、前記少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知すると共に、
前記少なくとも一つの第2のコンピュータが前記アラートを受信したことに応答して、当該受信した測定データを前記少なくとも一つの第2のコンピュータに送信する一方、必要であると判断しなかった場合は、前記少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知しないようにコントロールする通知コントロール部と、
を備えた、遠隔医療支援システム。
【請求項2】
前記少なくとも一つのセンサの測定データを表示する生体情報モニタをさらに備えており、
前記通知コントロール部は、前記アラートを通知する場合、前記生体情報モニタの画面が前記少なくとも一つの第2のコンピュータと共有されるように、前記生体情報モニタの画面を前記少なくとも一つの第2のコンピュータに送信する、請求項
1に記載の遠隔医療支援システム。
【請求項3】
前記少なくとも一つの第2のコンピュータは、
遠隔医療支援機関に所属する医師用の端末と、
前記遠隔医療支援機関に所属する看護師用の端末と、の少なくとも一方を含む、請求項1
又は2に記載の遠隔医療支援システム。
【請求項4】
前記通知コントロール部は、前記受信した測定データに基づいて、前記アラートの通知の仕方を二段階に分ける、請求項
3に記載の遠隔医療支援システム。
【請求項5】
前記通信ネットワークを介して前記少なくとも一つの第1のコンピュータ及び前記少なくとも一つの第2のコンピュータと接続され、前記患者に係る電子カルテが登録されるサーバをさらに備え、
前記電子カルテは、前記少なくとも一つの第2のコンピュータからの入力により作成されると共に、前記少なくとも一つの第1のコンピュータからのアクセスにより当該少なくとも一つの第1のコンピュータにおいて閲覧可能に構成されている、請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の遠隔医療支援システム。
【請求項6】
前記電子カルテは、前記少なくとも一つの第2のコンピュータからのデータ書込みが可能な複数の項目を有しており、
前記複数の項目には、前記少なくとも一つの前記第1のコンピュータからのデータ書込みを禁止した項目が含まれている、請求項
5に記載の遠隔医療支援システム。
【請求項7】
前記少なくとも一つの第1のコンピュータは、前記少なくとも一つの第2のコンピュータが前記アラートを受信したことに応答して、前記少なくとも一つの第2のコンピュータとの間でビデオ通話が確立されるように構成される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の遠隔医療支援システム。
【請求項8】
患者がいる医療機関に設けられた医療機関コンピュータであって、
前記患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサからの測定データを受信するデータ受信部と、
受信した測定データに基づいて、前記患者に医療的な対応をすることが必要であるかどうかを判断し、必要であると判断した場合は、前記医療機関とは物理的に離れた位置に
ある少なくとも一つの第2のコンピュータであって
、前記医療機関コンピュータ
を含む複数の医療機関のそれぞれのコンピュータと通信ネットワークを介して接続された少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知すると共に、
前記少なくとも一つの第2のコンピュータが前記アラートを受信したことに応答して、当該受信した測定データを前記少なくとも一つの第2のコンピュータに送信する一方、必要であると判断しなかった場合は、前記少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知しないようにコントロールする通知コントロール部と、
を備えた、医療機関コンピュータ。
【請求項9】
前記通知コントロール部は、前記アラートを通知する場合、前記少なくとも一つのセンサの測定データを表示する生体情報モニタの画面が前記少なくとも一つの第2のコンピュータと共有されるように、前記生体情報モニタの画面を前記少なくとも一つの第2のコンピュータに送信する、請求項
8に記載の医療機関コンピュータ。
【請求項10】
患者がいる医療機関に設けられた医療機関コンピュータによって実行される方法であって、
前記患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサからの測定データを受信するステップと、
受信した測定データに基づいて、前記患者に医療的な対応をすることが必要であるかどうかを判断し、必要であると判断した場合は、前記医療機関とは物理的に離れた位置に
ある少なくとも一つの第2のコンピュータであって
、前記医療機関コンピュータ
を含む複数の医療機関のそれぞれのコンピュータと通信ネットワークを介して接続された少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知すると共に、
前記少なくとも一つの第2のコンピュータが前記アラートを受信したことに応答して、当該受信した測定データを前記少なくとも一つの第2のコンピュータに送信する一方、必要であると判断しなかった場合は、前記少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知しないようにコントロールするステップと、
を含む、医療機関コンピュータによって実行される方法。
【請求項11】
前記アラートを通知する場合、前記少なくとも一つのセンサの測定データを表示する生体情報モニタの画面が前記少なくとも一つの第2のコンピュータと共有されるように、前記生体情報モニタの画面を前記少なくとも一つの第2のコンピュータに送信する、請求項
10に記載の医療機関コンピュータによって実行される方法。
【請求項12】
患者がいる医療機関に設けられた医療機関コンピュータに、
前記患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサからの測定データを受信することと、
受信した測定データに基づいて、前記患者に医療的な対応をすることが必要であるかどうかを判断し、必要であると判断した場合は、前記医療機関とは物理的に離れた位置に
ある少なくとも一つの第2のコンピュータであって
、前記医療機関コンピュータ
含む複数の医療機関のそれぞれのコンピュータと通信ネットワークを介して接続された少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知すると共に、
前記少なくとも一つの第2のコンピュータが前記アラートを受信したことに応答して、当該受信した測定データを前記少なくとも一つの第2のコンピュータに送信する一方、必要であると判断しなかった場合は、前記少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知しないようにコントロールすることと、
を実行させる、プログラム。
【請求項13】
前記アラートを通知する場合、前記少なくとも一つのセンサの測定データを表示する生体情報モニタの画面が前記少なくとも一つの第2のコンピュータと共有されるように、前記生体情報モニタの画面を前記少なくとも一つの第2のコンピュータに送信すること
をさらに前記医療機関コンピュータに実行させる、請求項
12に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔医療支援の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠隔医療支援システムとして、様々なものが提案されている(例えば特許文献1~6参照)。例えば、特許文献1に記載の遠隔医療支援システムでは、テレビ会議装置等を用いて医者がリアルタイムに診療を行うことができるようになっている。
【0003】
また、非特許文献1によれば、専門医が常駐していない病院と提携した外部支援機関(バーチャルケアセンター)において、電子カルテのリアルタイムデータと遠隔医療技術を統合したシステムを用いて、当該病院の集中治療室(ICU)の複数の患者のケアをサポートしている。具体的には、外部支援機関が、患者のバイタルサインデータをリアルアイタイムでモニタリングし、容態が急変し緊急のケアが必要な患者が検知された場合に、現場の病院内の医療関係者に双方向カメラを通じて適切な医療処置を指示できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-248627号公報
【文献】特開2015-90572号公報
【文献】特開2005-326984号公報
【文献】特開2008-310768号公報
【文献】特開2015-215769号公報
【文献】特開2017-070479号公報
【文献】JETROニューヨークだより2017年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような外部支援機関は、専門医が不在又は常駐していない病院に対し、遠隔での集中治療を支援することができるため、医療の地域格差の緩和や、重症患者をより多く救い得る点において、期待されている。しかし、非特許文献1には、その具体的なシステムが開示されていない。このため、例えば、緊急のケアが必要な患者が検知された際に、病院が外部支援機関にどのように連絡するのかが不明である。仮に、病院の関係者が、そのような検知の都度、外部支援機関に電話するとなると、煩雑である上、迅速性に欠けることになる。
【0006】
本発明は、医療機関内の患者に医療的な対応をすることが必要なことが検知された場合に、簡単に且つ即座に遠隔医療支援機関に伝えることができる遠隔医療支援の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る遠隔医療支援システムは、患者がいる医療機関にある少なくとも一つの第1のコンピュータと、専門医が所属する遠隔医療支援機関にある少なくとも一つの第2のコンピュータとが通信ネットワークを介して接続された遠隔医療支援システムであって、患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサを備え、少なくとも一つの第1のコンピュータは、少なくとも一つのセンサの測定データを受信するデータ受信部と、受信した測定データが、患者に医療的な対応をすることが必要なことを示す場合は、少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知する一方、そうではない場合は、少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知しないようにコントロールする通知コントロール部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る医療機関コンピュータは、患者がいる医療機関に設けられた医療機関コンピュータであって、患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサからの測定データを受信するデータ受信部と、受信した測定データが、患者に医療的な対応をすることが必要なことを示す場合は、専門医が所属する遠隔医療支援機関にあって医療機関コンピュータと通信ネットワークを介して接続された少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知する一方、そうではない場合は、少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知しないようにコントロールする通知コントロール部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る、患者がいる医療機関に設けられた医療機関コンピュータによって実行される方法は、患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサからの測定データを受信するステップと、受信した測定データが、患者に医療的な対応をすることが必要なことを示す場合は、専門医が所属する遠隔医療支援機関にあって医療機関コンピュータと通信ネットワークを介して接続された少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知する一方、そうではない場合は、少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知しないようにコントロールするステップと、を含む。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、患者がいる医療機関に設けられた医療機関コンピュータに、
患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサからの測定データを受信することと、
受信した測定データが、患者に医療的な対応をすることが必要なことを示す場合は、専門医が所属する遠隔医療支援機関にあって医療機関コンピュータと通信ネットワークを介して接続された少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知する一方、そうではない場合は、少なくとも一つの第2のコンピュータにアラートを通知しないようにコントロールすることと、
を実行させる。
【0011】
本発明の一態様に係る支援機関コンピュータは、専門医が所属する遠隔医療支援機関に設けられた支援機関コンピュータであって、患者がいる医療機関に設けられ且つ通信ネットワークを介して接続された少なくとも一つの第1のコンピュータとビデオ通話可能な表示部と、少なくとも一つの第1のコンピュータから通知されるアラートを受信する受信部と、を備え、アラートは、患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサからの測定データが、当該患者に医療的な対応をすることが必要なことを示す場合には通知される一方、そうではない場合は通知されない。
【0012】
本発明の一態様に係るプログラムは、専門医が所属する遠隔医療支援機関に設けられた支援機関コンピュータに、
患者がいる医療機関に設けられ且つ通信ネットワークを介して接続された少なくとも一つの第1のコンピュータとビデオ通話することと、
少なくとも一つの第1のコンピュータから通知されるアラートを受信することと、
を実行させるプログラムであって、
アラートは、患者の状態を監視するために当該患者の生体情報を測定する少なくとも一つのセンサからの測定データが、当該患者に医療的な対応をすることが必要なことを示す場合には通知される一方、そうではない場合は通知されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る遠隔医療支援システムの概略図である。
【
図2】
図1の遠隔医療システムの医療機関に設置された医療機関コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の遠隔医療システムの遠隔医療支援機関に設置された支援機関コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の遠隔医療システムにおける処理手順の一例を示すフロー図である。
【
図5A】医療機関コンピュータ及び支援機関コンピュータの画面に表示される電子カルテの一例を示す図である。
【
図5B】医療機関コンピュータ及び支援機関コンピュータの画面に表示される電子カルテの一例を示す図である。
【
図5C】医療機関コンピュータ及び支援機関コンピュータの画面に表示される電子カルテの一例を示す図である。
【
図5D】医療機関コンピュータ及び支援機関コンピュータの画面に表示される電子カルテの一例を示す図である。
【
図5E】医療機関コンピュータ及び支援機関コンピュータの画面に表示される電子カルテの一例を示す図である。
【
図5F】医療機関コンピュータ及び支援機関コンピュータの画面に表示される電子カルテの一例を示す図である。
【
図5G】医療機関コンピュータ及び支援機関コンピュータの画面に表示される電子カルテの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、遠隔医療支援システム100では、患者がいる医療機関にあるコンピュータ(以下、「医療機関コンピュータ」という。)110と、専門医が所属する遠隔医療支援機関にあるコンピュータ(以下、「支援機関コンピュータ」という。)120と、電子カルテ等を保存するサーバ130とが通信ネットワーク140に接続されている。また、遠隔医療支援システム100では、一つの遠隔医療支援機関に対して複数の医療機関を関連付けることができ、各医療機関には、患者の生体情報を測定するセンサ150と、センサ150の測定データを表示する生体情報モニタ160と、が設けられている。
【0016】
「医療機関」とは、患者を診療することが可能な病院、医院、クリックなどをいう。また、「遠隔医療支援機関」とは、医療機関とは物理的に離れた位置にある外部機関であり、専門医のほか、看護師などその他の医療従事者が所属している。「専門医」とは、例えば、日本医学会加盟学会で組織した専門医認定制協議会に規定される医師をいい、一般には、特定の専門分野について高い専門性をもった医療を提供できる医師を意味する。
【0017】
医療機関コンピュータ110(第1のコンピュータ)は、各医療機関に設置されたものであり、一つ又は複数のコンピュータにより構成される。医療機関コンピュータ110は、例えば、通信機能、表示機能及びカメラ機能等を有している。このような医療機関コンピュータ110は、例えば、デスクトップ型、ラップトップ型あるいはタブレット型のコンピュータで構成される。他の実施態様では、PDA、スマートフォン又はモバイル端末で構成されてもよい。医療機関コンピュータ110は、その医療機関の医療従事者(医師、看護師等)によって操作される。本実施形態の医療機関は、一以上の集中治療室(ICU)を有している。医療機関コンピュータ110は、支援機関コンピュータ120と連携して、ICUの患者を24時間体制で管理し、集中治療を施すためのソフトウェア(例えば、ウェブブラウザやアプリケーション)を有している。
【0018】
支援機関コンピュータ120(第2のコンピュータ)は、遠隔医療支援機関に設置されたものであり、一つ又は複数のコンピュータにより構成される。支援機関コンピュータ120は、例えば、通信機能、表示機能及びカメラ機能等を有している。このような支援機関コンピュータ120は、例えば、デスクトップ型、ラップトップ型あるいはタブレット型のコンピュータで構成される。他の実施態様では、PDA、スマートフォン又はモバイル端末で構成されてもよい。支援機関コンピュータ120は、医療機関コンピュータ110と連携して、医療機関内のICUの患者を24時間体制で管理し、集中治療を施すためのソフトウェア(例えば、ウェブブラウザやアプリケーション)を有している。
【0019】
支援機関コンピュータ120は、遠隔医療支援機関に所属する医療従事者によって操作される。例えば、遠隔医療支援機関には、支援機関コンピュータ120として、専門医用の端末120Aと、看護師用の端末120Bとを設けることができる。前者の端末120Aは専門医によって操作されるものであり、後者の端末120Bは看護師によって操作されるものである。例えば、専門医は、自身の端末120Aを通じて、医療機関コンピュータ110と各種通信(音声通話、ビデオ通話、アラートの受信など)を行うことができる。また、看護師は、自身の端末120Bを通じて、医療機関コンピュータ110と各種通信(音声通話、ビデオ通話、アラートの受信など)を行うことができる。さらに、専門医及び看護師は、それぞれ自身の端末120A及び120Bを通じて、相互に通信できるほか、サーバ130にアクセスして電子カルテを作成又は編集することができる。
【0020】
サーバ130は、任意のタイプのコンピュータであり、各種プログラム、モジュール及び/又は命令を実行するCPUや、各種データ及びプログラム等を格納するメモリを有している。サーバ130は、複数の医療機関の複数の患者の電子カルテを記憶している。電子カルテは、医療機関の各患者に係るものであり、例えば、
図5A~Gに示すように、患者の名前、年齢、性別等の情報のほか、病名、入院日、APACHEIIスコアなどの情報、さらには、患者が所属する医療機関の名称などの情報を含んでいる。なお、サーバ130は、上記機能を持つものであれば、特に制限はなく、クラウド・コンピューティングなどであってもよい。通信ネットワーク140は、LAN、WAN、有線あるいは無線のネットワーク、又は、インターネットなどで構成される。
【0021】
センサ150は、患者の状態を監視するためのものであり、一つ又は複数からなる。センサ150が測定する生体情報は、バイタルサインを含むことができる。そのような生体情報は、例えば、血圧、心拍数、呼吸数、心電図、体温及び経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の少なくとも一つを含んでいる。センサ150は、一般に患者に直接取り付けられる。センサ150による測定データは、随時、医療機関コンピュータ110及び生体情報モニタ160に出力される。
【0022】
生体情報モニタ160は、センサ150と有線又は無線で接続されており、センサ150から出力された測定データを画面に表示する。例えば、センサ150によって心電図が測定される場合、その測定された心電図波形が生体情報モニタ160の画面に表示される。生体情報モニタ160は、患者のベッドサイドに設置されるベッドサイドモニタ、ナースステーションなどに設置され各患者のベッドサイドモニタから送信された複数患者の測定情報を一括して表示するセントラルモニタ、患者が移動するときにベッドなどに引っ掛けて移動中も患者の測定情報を表示する移動時用モニタ、など各種のものを利用することができる。なお、生体情報モニタ160は、医療機関コンピュータ110が兼ねることが可能である。すなわち、医療機関コンピュータ110の表示機能が、生体情報モニタ160として機能を有していてもよい。
【0023】
図2は、医療機関コンピュータ110のハードウェア構成を示すブロック図である。医療機関コンピュータ110は、通信インタフェース200、ユーザインタフェース210、演算処理部220、記憶部230及びカメラ240を備えている。通信インタフェース200は、医療機関コンピュータ110を通信ネットワーク140に接続する。カメラ240は、例えば、医療機関コンピュータ110を利用する医師の顔を撮影し、この医師が支援機関コンピュータ120の利用者とビデオ通話するのに利用される。
【0024】
ユーザインタフェース210は、入力部212及び表示部214を有する。入力部212は、医療機関コンピュータ110の利用者からの入力・操作を受け付けるものであり、例えばキーボード、タッチパネル、音声入力装置などによって構成される。表示部214は、例えば液晶などの各種ディスプレイによって構成される。表示部214は、例えば、センサ150の測定データや電子カルテなどのほか、ビデオ通話時の支援機関コンピュータ120の利用者を画面に表示する。なお、表示部214がタッチパネルを構成する場合、表示部214は入力部としても機能する。
【0025】
演算処理部220は、1つ以上のプロセッサからなり、CPUやMPU等によって構成される。演算処理部220は、各種入力に基づいて、記憶部230に記憶されたプログラム、モジュール及び/又は命令を実行することで、種々の機能部を動作させる。このプログラム等は、CD-ROMやUSBメモリなどの記憶媒体からインストールされるか、あるいは通信ネットワーク140を介してダウンロードされインストールされる。演算処理部220は、種々の機能部として、データ受信部222及び通知コントロール部224を有している。データ受信部222は、センサ150の測定データを受信するほか、通信インタフェース200を介して支援機関コンピュータ120から種々の情報を受信する。
【0026】
通知コントロール部224は、データ受信部222が受信した測定データに基づいて、支援機関コンピュータ120に対するアラートの通知をコントロールする(詳細は後述する)。また、通知コントロール部224は、通信インタフェース200を介して支援機関コンピュータ120に種々の情報を送信する。例えば、通知コントロール部224は、データ受信部222が受信した測定データを支援機関コンピュータ120に送信する。また、通知コントロール部224は、生体情報モニタ160の画面が支援機関コンピュータ120と共有されるように、生体情報モニタ160の画面を支援機関コンピュータ120に送信する。
【0027】
記憶部230は、ハードディスクドライブ、SSD、RAMなどの記憶装置によって構成され、演算処理部220における処理の実行に必要な各種プログラムや、各種プログラムの実行に必要なデータ等を記憶する。記憶部230は、不揮発性メモリを含むことができ、不揮発性メモリは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備える。また、記憶部230は、支援機関コンピュータ120と連携して遠隔集中治療を施すためのソフトウェアを記憶する。また、記憶部230は、データ受信部222が受信した測定データを記憶するほか、支援機関コンピュータ120から送信される各種情報を一時的に記憶する。
【0028】
図3は、支援機関コンピュータ120のハードウェア構成を示すブロック図である。支援機関コンピュータ120は、通信インタフェース300、ユーザインタフェース310、演算処理部320、記憶部330及びカメラ340を備えている。通信インタフェース300は、支援機関コンピュータ120を通信ネットワーク140に接続する。カメラ340は、例えば、支援機関コンピュータ120を利用する専門医の顔を撮影し、この専門医が医療機関コンピュータ110の利用者とビデオ通話するのに利用される。
【0029】
ユーザインタフェース310は、入力部312及び表示部314を有する。入力部312は、支援機関コンピュータ120の利用者からの入力・操作を受け付けるものであり、例えばキーボード、タッチパネル、音声入力装置などによって構成される。例えば、入力部312を通じて、専門医は、電子カルテの入力又は編集をすることができる。表示部314は、例えば液晶などの各種ディスプレイによって構成される。表示部314を介してビデオ通話可能であり、表示部314は、例えば、ビデオ通話時の医療機関コンピュータ110の利用者を画面に表示する。また、表示部314は、医療機関側の生体情報モニタ160の画面を共有され、表示する。なお、表示部314がタッチパネルを構成する場合、表示部314は入力部としても機能する。
【0030】
演算処理部320は、1つ以上のプロセッサからなり、CPUやMPU等によって構成される。演算処理部320は、各種入力に基づいて、記憶部330に記憶されたプログラム、モジュール及び/又は命令を実行することで、種々の機能部を動作させる。このプログラム等は、CD-ROMやUSBメモリなどの記憶媒体からインストールされるか、あるいは通信ネットワーク140を介してダウンロードされインストールされる。演算処理部320は、種々の機能部として、受信部322を有している。受信部322は、通信インタフェース300を介して医療機関コンピュータ110から種々の情報を受信する。例えば、受信部322は、医療機関コンピュータ110から通知されるアラートのほか、センサ150の測定データ及び生体情報モニタ160の画面を受信する。
【0031】
記憶部330は、ハードディスクドライブ、SSD、RAMなどの記憶装置によって構成され、演算処理部320における処理の実行に必要な各種プログラムや、各種プログラムの実行に必要なデータ等を記憶する。記憶部330は、不揮発性メモリを含むことができ、不揮発性メモリは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備える。また、記憶部330は、医療機関コンピュータ110と連携して遠隔集中治療を施すためのソフトウェアを記憶する。また、記憶部330は、医療機関コンピュータ110から送信される各種情報を一時的に記憶する。
【0032】
図4は、遠隔医療支援システム100における処理手順の一例を示すフロー図である。まず、医療機関では、ICUの患者の状態がセンサ150によって監視されており、医療機関コンピュータ110は、センサ150の測定データを受信する(ステップS1000)。この測定データは、生体情報モニタ160に表示される(ステップS1001)。次いで、受信した測定データが、患者に医療的な対応をすることが必要なことを示す場合(ステップS1002:Yes)、医療機関コンピュータ110は、支援機関コンピュータ120に対してアラートを通知する(ステップS1003)。一方、そうではない場合、すなわち、受信した測定データが、患者に医療的な対応をしなくてもよいことを示す場合(ステップS1002:No)、医療機関コンピュータ110は、支援機関コンピュータ120に対してアラートを通知しない(ステップS1004)。後者の場合、医療機関コンピュータ110は、測定データを受信し続け、その受信した測定データ自体を一時的に又は長期的に記憶する。
【0033】
ここで、「受信した測定データが、患者に医療的な対応をすることが必要なことを示す場合」とは、受信した測定データが患者の容態として正常の状態から外れた状態を示す場合(すなわち、所定の正常値から外れた場合)をいい、患者の容態が急変し緊急のケアが必要となった場合を含むものである。具体的には、受信した生体情報に関する測定データが、例えば、以下の場合である。
血圧:180mmHg以上又は80mm以下
心拍数:140回/分以上又は50回/分以下
呼吸数:25回/分以上
心電図:心室細動(Vf)の波形又は心室頻拍(VT)の波形
体温:36.0度未満又は38.0度以上
経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2):90%以下
これら具体例の少なくとも一つに該当する場合、医療機関コンピュータ110は、患者に医療的な対応をすることが必要であると判断し、支援機関コンピュータ120に対してアラートを自動的に通知する。このような自動アラート通知により、患者への医療的な対応が必要なことを、医療機関から遠隔医療支援機関(支援機関コンピュータ120側の利用者)に簡単にかつ即座に伝えることができる。
【0034】
「アラート」は、様々な方法で行うことができる。例えば、インスタントメッセージ、ショートメッセージ、電子メール、音声電話、ビデオ電話などで行うことができる。また、アラートは、テキストや音だけでなく、振動などで行ってもよい。
【0035】
アラートは、支援機関コンピュータ120が複数の端末を有する場合、その任意の一つ又は全部の端末に対してなされてもよい。例えば、支援機関コンピュータ120として、専門医用の端末120A及び看護師用の端末120Bがある場合、その一方又は両方にアラートを通知することができる。また、アラートの原因となった内容の程度に応じて、通知の仕方を2段階に分けるようにしてもよい。例えば、受信した測定データが、患者に医療的な対応をすることが必要な第1の範囲にある場合は、看護師用の端末120Bに対してはアラートを通知するが、専門医用の端末120Aに対してはアラートを通知しないようにする。一方で、受信した測定データが、患者に医療的な対応をすることが必要でかつ上記第1の範囲よりも患者の状態が悪いことを示す第2の範囲にある場合は、専門医用の端末120A及び看護師用の端末120Bに対して一斉にアラートを通知するようにする。一例を挙げると、心拍数が140回/分以上160回/分未満の場合(第1の範囲の場合)は看護師用の端末120Bに対してのみアラートを通知し、心拍数が160回/分以上の場合(第2の範囲の場合)は専門医用の端末120A及び看護師用の端末120Bの両方に対してアラートを通知する。
【0036】
医療機関コンピュータ110は、アラートに加えて、受信した測定データを支援機関コンピュータ120に送信してもよい(ステップS1005)。同様に、医療機関コンピュータ110は、アラートに加えて、生体情報モニタ160の画面を支援機関コンピュータ120に送信してもよい(ステップS1006)。これらの送信は、アラートの通知と一緒に行うことができる。他の実施態様では、アラートの通知後に行うこともできる。例えば、支援機関コンピュータ120がアラートを受信したことに応答して、医療機関コンピュータ110は、受信した測定データ及び生体情報モニタ160の画面の少なくとも一方を支援機関コンピュータ120に送信してもよい。
【0037】
支援機関コンピュータ120が測定データを受信すると、それが支援機関コンピュータ120の画面に表示される(ステップS1007)。例えば、血圧が190mmHgであることが支援機関コンピュータ120の画面に表示される。同様に、支援機関コンピュータ120が生体情報モニタ160の画面を受信すると、それが支援機関コンピュータ120の画面に表示される(ステップS1008)。すなわち、遠隔地にある生体情報モニタ160の画面が、支援機関コンピュータ120と共有される。一例を挙げると、患者の心電図波形が支援機関コンピュータ120の画面に表示される。このように、アラートに加えて、受信した測定データや生体情報モニタ160の画面についても送信することで、支援機関コンピュータ120側の専門医が患者の状況をすぐに把握することができる。これにより、患者の状況に応じた適切な医療的な処置や治療方針について、医療機関の医療従事者に対して迅速にアドバイスすることができる。
【0038】
アラートの通知後、医療機関コンピュータ110と支援機関コンピュータ120との間でビデオ通話が確立される(ステップS1009)。このビデオ通話の確立は、例えば、支援機関コンピュータ120がアラートを受信したことに応答することでなされてもよい。これによれば、患者の容態が正常の状態から外れたことが検知されると、それとほぼリアルタイムでビデオ通話ができるようになるので、支援機関コンピュータ120側の専門医が医療機関コンピュータ110側の医療従事者に対してすぐに適切な医療的アドバイスを行うことが可能となる。
【0039】
図5A~Gは、医療機関コンピュータ110及び支援機関コンピュータ120の画面に表示される電子カルテ400の一例を示している。電子カルテ400は、患者ごとに作成されるものであり、サーバ130に登録されている。電子カルテ400は、遠隔医療支援機関の専門医又は看護師によって、支援機関コンピュータ120からの入力により作成又は編集される。また、作成又は編集された電子カルテ400は、医療機関の医療従事者によって、医療機関コンピュータ110からサーバ130にアクセスされることにより、医療機関コンピュータ110において閲覧可能とされている。なお、電子カルテ400は、一般に医療機関において作成される患者のカルテ(電子カルテを含む。)とは別のカルテであり、遠隔医療支援機関側において作成されるものである。
【0040】
電子カルテ400は、
図5Aに示すように、画面上部に患者の年齢や性別等の属性情報410を有している。また、電子カルテ400は、属性情報410の下側に複数のタブ420、430、440、450、460、470、480を有しており、各タブをクリックすることで当該タブに対応する画面に切り替わるようになっている。例えば、「基本情報」のタブ420をクリックすると、
図5Bに示す画面となり、患者の属性情報410に関する「年齢」などの項目のほか、「主病名」や「入院日」などの項目が表示される。また、
図5Aにおいて「薬剤・人工呼吸器」のタブ430をクリックすると、
図5Cに示す画面となり、「ノルアドレナリン」などの項目が表示される。
図5Aにおいて「条件指示」のタブ440をクリックすると、
図5Dに示す画面となり、「血圧」及び「心拍数」などの生体に関する項目とともに、各項目に対する医療的処置の内容を入力する項目が表示される。ここでは、「血圧」に関する項目がチェックされ、「ノルアドレナリン2ml/hr」との医療的処置内容が入力されている。
図5Aにおいて「今日の治療方針」のタブ450をクリックすると、
図5Eに示す画面となり、「検査」や「栄養」などの項目が表示される。
図5Aにおいて「主治医からの要望」のタブ460をクリックすると、
図5Fに示す画面となり、「フリーコメント」の項目が表示される。
図5Aにおいて「申し送り」のタブ470をクリックすると、
図5Gに示す画面となり、「申し送り内容」の項目が表示される。この項目は、主として、遠隔医療支援機関における専門医間の申し送りのために使用される。
【0041】
このように、電子カルテ400には複数のタブ420~480があり、各タブには一つ又は複数の項目が設けられている。この複数の項目のうち、
図5B~5Gに示す各項目は、支援機関コンピュータ120からのデータ書込みが可能であるものの、医療機関コンピュータ110からのデータ書込みは禁止されている。すなわち、医療機関コンピュータ110の利用者は、
図5B~5Gに示す各項目を編集できず、閲覧のみできるようになっている。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、医療機関内の患者に医療的な対応をすることが必要なことが検知された場合に、簡単に且つ即座に遠隔医療支援機関に伝えることができる。
【0043】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。以上の具体例は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、医療機関にいる患者はICUの患者に限られない。
【符号の説明】
【0044】
100…遠隔医療支援システム、110…医療機関コンピュータ(第1のコンピュータ)、120…支援機関コンピュータ(第2のコンピュータ)、120A…専門医用の端末、120B…看護師用の端末、130…サーバ、140…通信ネットワーク、150…センサ、160…生体情報モニタ、200…通信インタフェース、210…ユーザインタフェース、212…入力部、214…表示部、220…演算処理部、222…データ受信部、224…通知コントロール部、230…記憶部、240…カメラ、300…通信インタフェース、310…ユーザインタフェース、312…入力部、314…表示部、320…演算処理部、322…受信部、330…記憶部、340…カメラ、400…電子カルテ、410…属性情報、420~480…タブ