(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】車両用リフト装置
(51)【国際特許分類】
B66F 7/28 20060101AFI20230207BHJP
B66F 7/06 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
B66F7/28 M
B66F7/06 C
B66F7/06 E
(21)【出願番号】P 2019084392
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000114695
【氏名又は名称】株式会社ヤスヰ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】堀水 俊英
(72)【発明者】
【氏名】望月 匡
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-080790(JP,U)
【文献】特開2018-203381(JP,A)
【文献】特開2016-130150(JP,A)
【文献】実開平06-073078(JP,U)
【文献】国際公開第99/012839(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/00- 7/28
B60S 9/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整備場の床面に定めた整備作業領域にピットを設けるとともに、該ピットの内部に一対の昇降装置を収納してなり、
各昇降装置が、複数のリンクからなる起伏リンク装置を有し、車両を支持する車両支持台を該起伏リンク装置の上部に搭載して備え、
各昇降装置は、起伏リンク装置及び車両支持台を整備場の床面と同一レベルに設けたピットの開口を介して該ピットの内外に移動可能にし、車両支持台をピットの開口の一部である主開口部に位置付けて該主開口部を塞ぐリフトダウン位置と、車両支持台をピットの上方に位置付けるリフトアップ位置との間で昇降可能にする車両用リフト装置であって、
各昇降装置は、起伏リンク装置の構成リンクに取付けられて該起伏リンク装置の起伏動作に随伴可能にされる各可動ピットカバーを有し、
各昇降装置の可動ピットカバーは、車両支持台がリフトダウン位置の側に位置付けられたときに、該車両支持台によって塞がれないピットの開口の他の一部であるサブ開口部を塞ぎ、車両支持台がリフトダウン位置から上昇する過程で、ピットのサブ開口部を開いて起伏リンク装置を該サブ開口部及び主開口部から該ピットの外に移動可能にする
車両用リフト装置であって、
前記各昇降装置の車両支持台がリフトアップ位置に位置付けられたときに、各昇降装置の可動ピットカバーはピットの開口レベルから離隔するように構成される車両用リフト装置。
【請求項2】
前記各昇降装置の車両支持台が車両整備作業領域に進入してきて停止した車両の下面を持ち上げ可能にする旋回アームを旋回可能に備え、
各昇降装置が車両支持台をリフトダウン位置に位置付けたリフト待機段階と、車両支持台をリフトダウン位置から上昇開始させ、旋回アームをピットの開口より上方レベルで車両の下面に対して旋回可能にするリフト当初段階との間で、可動ピットカバーを起伏リンク装置の起伏動作に随伴させずに、ピットの開口レベルに維持させ、各昇降装置が車両支持台を上記リフト当初段階よりも上昇させる段階で、該可動ピットカバーが起伏リンク装置の起伏動作に対して一定量だけ遅れて随伴するように、該可動ピットカバーが起伏リンク装置の構成リンクに取付けられてなる請求項1に記載の車両用リフト装置。
【請求項3】
前記各昇降装置の可動ピットカバーが、長孔部を介して起伏リンク装置の構成リンクに取付けられ、該長孔部の長孔の範囲において該構成リンクに対して相対移動可能にされる請求項2に記載の車両用リフト装置。
【請求項4】
前記各昇降装置が可動プレートを付帯して有し、
可動プレートは各昇降装置の可動ピットカバーがピットのサブ開口部から上方に離隔したときに、該サブ開口部の少なくとも一部を塞ぐピット閉鎖位置に設定され、該可動ピットカバーがピットのサブ開口部を塞ぐときにピットの内部に収納されるピット内収納位置に設定される請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用リフト装置。
【請求項5】
前記各昇降装置が、
ピットの内部の架台に設けた回転支持部に第1リンクの下端部を枢着支持し、ピットの内部の架台に設けた摺動支持部に第2リンクの下端部を摺動支持し、第1リンクの上端部を第2リンクとともに中間リンクに枢着し、第2リンクの上端部を車両支持台に枢着し、
架台と中間リンクに第1サブリンクの両端部を枢着して、第1リンクと第1サブリンクと架台と中間リンクの4節によって平行四辺形リンク機構を形成し、
車両支持台と中間リンクに第2サブリンクの両端部を枢着して、第2リンクと第2サブリンクと車両支持台と中間リンクの4節によって平行四辺形リンク機構を形成するように構成され、
第2サブリンクに可動ピットカバーが取付けられる請求項1乃至
4のいずれかに記載の車両用リフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用リフト装置として、特許文献1に記載の如く、整備場の床面に定めた整備作業領域にピットを設けるとともに、該ピットの内部に一対の昇降装置を収納してなり、各昇降装置が、複数のリンクからなる起伏リンク装置を有し、車両を支持する車両支持台(例えばリフトテーブル)を該起伏リンク装置の上部に搭載して備えるものがある。
【0003】
特許文献1に記載の車両用リフト装置において、各昇降装置は、起伏リンク装置及び車両支持台を整備場の床面と同一レベルに設けたピットの開口を介して該ピットの内外に移動可能にし、車両支持台をピットの開口に位置付けて該主開口部を塞ぐリフトダウン位置と、車両支持台をピットの上方に位置付けるリフトアップ位置との間で昇降可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用リフト装置における各昇降装置は、起伏リンク装置及び車両支持台をピットの内外に移動可能にするための比較的大開口面積をなすピットの開口を、リフトダウン位置に位置付けた車両支持台によって塞ぐものであるため、車両支持台の平面積が大きくなる。このことは、リフトアップ時に車両を支持する当該車両支持台が、該車両の下面のエンジン、足回り、ミッション、バッテリー等が配置されている整備作業領域を含む一部範囲、もしくはその近接範囲を下方から覆うものになって、整備作業性を損なうおそれがあることを意味する。
【0006】
尚、リフトアップ位置に位置付けられた車両支持台が車両の下面を覆う範囲を小さくして整備作業性を向上したり、或いは車両用リフト装置の軽量化やコンパクト化を実現しようとして、車両支持台の小型化を図るときには、リフトダウン位置に位置付けられた小型作業支持台によってピットの上述した如くに比較的大きな開口部を完全には塞ぎ難くなり、作業者のための歩行面及び車両のための進入路面を完備できないという不都合を生ずる。
【0007】
本発明の課題は、車両用リフト装置において、各昇降装置の車両支持台の小型化を図りながら、起伏リンク装置及び車両支持台をピットの内外に移動可能にする比較的大きなピットの開口を、該車両支持台のリフトダウン時に確実に塞ぐことを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、整備場の床面に定めた整備作業領域にピットを設けるとともに、該ピットの内部に一対の昇降装置を収納してなり、各昇降装置が、複数のリンクからなる起伏リンク装置を有し、車両を支持する車両支持台を該起伏リンク装置の上部に搭載して備え、各昇降装置は、起伏リンク装置及び車両支持台を整備場の床面と同一レベルに設けたピットの開口を介して該ピットの内外に移動可能にし、車両支持台をピットの開口の一部である主開口部に位置付けて該主開口部を塞ぐリフトダウン位置と、車両支持台をピットの上方に位置付けるリフトアップ位置との間で昇降可能にする車両用リフト装置であって、各昇降装置は、起伏リンク装置の構成リンクに取付けられて該起伏リンク装置の起伏動作に随伴可能にされる各可動ピットカバーを有し、各昇降装置の可動ピットカバーは、車両支持台がリフトダウン位置の側に位置付けられたときに、該車両支持台によって塞がれないピットの開口の他の一部であるサブ開口部を塞ぎ、車両支持台がリフトダウン位置から上昇する過程で、ピットのサブ開口部を開いて起伏リンク装置を該サブ開口部及び主開口部から該ピットの外に移動可能にする車両用リフト装置であって、前記各昇降装置の車両支持台がリフトアップ位置に位置付けられたときに、各昇降装置の可動ピットカバーはピットの開口レベルから離隔するように構成されるようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記各昇降装置の車両支持台が車両整備作業領域に進入してきて停止した車両の下面を持ち上げ可能にする旋回アームを旋回可能に備え、各昇降装置が車両支持台をリフトダウン位置に位置付けたリフト待機段階と、車両支持台をリフトダウン位置から上昇開始させ、旋回アームをピットの開口より上方レベルで車両の下面に対して旋回可能にするリフト当初段階との間で、可動ピットカバーを起伏リンク装置の起伏動作に随伴させずに、ピットの開口レベルに維持させ、各昇降装置が車両支持台を上記リフト当初段階よりも上昇させる段階で、該可動ピットカバーが起伏リンク装置の起伏動作に対して一定量だけ遅れて随伴するように、該可動ピットカバーが起伏リンク装置の構成リンクに取付けられてなるようにしたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において更に、前記各昇降装置の可動ピットカバーが、長孔部を介して起伏リンク装置の構成リンクに取付けられ、該長孔部の長孔の範囲において該構成リンクに対して相対移動可能にされるようにしたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに係る発明において更に、前記各昇降装置が可動プレートを付帯して有し、可動プレートは各昇降装置の可動ピットカバーがピットのサブ開口部から上方に離隔したときに、該サブ開口部の少なくとも一部を塞ぐピット閉鎖位置に設定され、該可動ピットカバーがピットのサブ開口部を塞ぐときにピットの内部に収納されるピット内収納位置に設定されるようにしたものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る発明において更に、前記各昇降装置が、ピットの内部の架台に設けた回転支持部に第1リンクの下端部を枢着支持し、ピットの内部の架台に設けた摺動支持部に第2リンクの下端部を摺動支持し、第1リンクの上端部を第2リンクとともに中間リンクに枢着し、第2リンクの上端部を車両支持台に枢着し、架台と中間リンクに第1サブリンクの両端部を枢着して、第1リンクと第1サブリンクと架台と中間リンクの4節によって平行四辺形リンク機構を形成し、車両支持台と中間リンクに第2サブリンクの両端部を枢着して、第2リンクと第2サブリンクと車両支持台と中間リンクの4節によって平行四辺形リンク機構を形成するように構成され、第2サブリンクに可動ピットカバーが取付けられるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1)
(a)各昇降装置は、起伏リンク装置の構成リンクに取付けられて該起伏リンク装置に随伴可能にされる各可動ピットカバーを有し、各可動ピットカバーは、車両支持台がリフトダウン位置の側に位置付けられたときに、該車両支持台によって塞がれないピットの開口の他の一部であるサブ開口部を塞ぐ。従って、リフトアップ位置に位置付けられた車両支持台が車両の下面を覆う範囲を小さくして整備作業性を向上可能にし、或いは車両用リフト装置の軽量化やコンパクト化を実現しようとして、車両支持台の小型化を図りながら、当該車両支持台をリフトダウン位置の側に位置付けたときに、ピットのサブ開口部を塞ぐ可動ピットカバーが、ピットの主開口部を塞ぐ車両支持台とともに、該ピットの主開口部及びサブ開口部を含む該ピットの開口の概ね全部を塞ぎ、作業者のための歩行面を形成するとともに、整備対象車両のための進入路面を形成して該車両を整備作業領域に進入させることができる。
【0015】
また、各車両支持台がリフトダウン位置から上昇する過程では、ピットのサブ開口部を各可動ピットカバーによって開き、起伏リンク装置を該サブ開口部及び主開口部を含む該ピットの比較的大きな開口から該ピットの内外に移動可能にする。
また、各昇降装置の車両支持台がリフトアップ位置に位置付けられたときに、各昇降装置の可動ピットカバーはピットの開口レベルから離隔するように構成される。従って、車両支持台をリフトアップ位置に上昇させた整備作業時に、リフト対象車両の直下に当該可動ピットカバーによって邪魔されない広い整備作業空間を確保できる。
【0016】
(請求項2)
(b)各昇降装置の車両支持台が車両整備作業領域に進入してきて停止した車両の下面を持ち上げ可能にする旋回アームを旋回可能に備え、各昇降装置が車両支持台をリフトダウン位置に位置付けたリフト待機段階と、車両支持台をリフトダウン位置から上昇開始させ、旋回アームをピットの開口より上方レベルで車両の下面に対して旋回可能にするリフト当初段階との間で、可動ピットカバーを起伏リンク装置の起伏動作に随伴させずに、ピットの開口レベルに維持させ、各昇降装置が車両支持台を上記リフト当初段階よりも上昇させる段階で、該可動ピットカバーが起伏リンク装置の起伏動作に対して一定量だけ遅れて随伴するように、該可動ピットカバーが起伏リンク装置の構成リンクに取付けられてなる。これにより、各昇降装置は、上記リフト当初段階で可動ピットカバーをピットの開口レベルに維持し、該可動ピットカバーによって整備対象車両のための上述(a)の進入路面を形成しながら、車両支持台の旋回アームをピットの開口より上方レベルにまで上昇させて当該車両の下面に対する旋回可能レベルに設定できる。このことは、複数台の車両を連続的に整備作業領域に入れてそれらの整備作業を繰り返し実施する度に、車両支持台を前回車両のためのリフトアップ位置からリフト待機段階のリフトダウン位置にまで下降させることなく、上記のスイングアームを旋回可能レベルにまで下降させれば、前回車両を整備作業領域から退出させ、続いて次回車両を当該整備作業領域に進入させることができ、整備作業の生産性を向上できるものになる。
【0017】
(請求項3)
(c)各昇降装置の可動ピットカバーが、長孔部を介して起伏リンク装置の構成リンクに取付けられ、該長孔部の長孔の範囲において該構成リンクに対して相対移動可能にされるものとすることにより、起伏リンク装置の構成リンクに対する可動ピットカバーの相対移動構造を簡易に実現できる。
【0018】
(請求項4)
(d)各昇降装置が可動プレートを付帯して有し、可動プレートは各昇降装置の可動ピットカバーがピットのサブ開口部から上方に離隔したときに、該サブ開口部の少なくとも一部を塞ぐピット閉鎖位置に設定される。これにより、車両支持台がリフトダウン位置から上昇するときに、この起伏リンク装置をピットの外に移動可能にする該ピットのサブ開口部を可動プレートによって塞ぎ、該可動プレートの上に作業者のための作業床面を形成できる。
【0020】
(請求項5)
(e)各昇降装置が、ピットの内部の架台に設けた回転支持部に第1リンクの下端部を枢着支持し、ピットの内部の架台に設けた摺動支持部に第2リンクの下端部を摺動支持し、第1リンクの上端部を第2リンクとともに中間リンクに枢着し、第2リンクの上端部を車両支持台に枢着し、架台と中間リンクに第1サブリンクの両端部を枢着して、第1リンクと第1サブリンクと架台と中間リンクの4節によって平行四辺形リンク機構を形成し、車両支持台と中間リンクに第2サブリンクの両端部を枢着して、第2リンクと第2サブリンクと車両支持台と中間リンクの4節によって平行四辺形リンク機構を形成するように構成されるとき、第2サブリンクに上述(a)の可動ピットカバーを取付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る車両用リフト装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は車両用リフト装置を示す正面図である。
【
図3】
図3は車両用リフト装置を示す側面図である。
【
図4】
図4は車両用リフト装置を示す平面図である。
【
図5】
図5は起伏リンク装置におけるリフト状態の変化を示し、(A)はリフトアップ状態、(B)はリフト中間状態、(C)はリフト当初段階状態を示す正面図である。
【
図6】
図6は
図5に示した起伏リンク装置の構成リンクを示し、(A)はリフトアップ状態、(B)はリフト中間状態、(C)はリフト当初段階状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は起伏リンク装置の構成リンクに取付けた可動ピットカバーを示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【
図9】
図9はピット閉鎖位置に設定された可動プレートを示す正面図である。
【
図10】
図10は中間位置に設定された可動プレートを示す正面図である。
【
図11】
図11はピット内収納位置に設定された可動プレートを示す正面図である。
【
図12】
図12は車両用リフト装置の各昇降装置がリフト待機段階に位置付けられたリフトダウン状態を示す斜視図である。
【
図13】
図13は車両用リフト装置の各昇降装置がリフト当初段階に位置付けられたリフト初期状態を示す斜視図である。
【
図14】
図14は車両用リフト装置の各昇降装置における旋回アームの旋回状態を示す斜視図である。
【
図15】
図15は車両用リフト装置の各昇降装置における起伏リンク装置に随伴した可動ピットカバーを示す斜視図である。
【
図16】
図16は車両用リフト装置の各昇降装置がリフト中間位置に位置付けられたリフト中間状態を示す斜視図である。
【
図17】
図17は車両用リフト装置の各昇降装置がリフトアップ位置に位置付けられたリフトアップ状態を示す斜視図である。
【
図18】
図18は車両用リフト装置における各昇降装置の構成を示し、(A)は車両進入過程を示す模式平面図、(B)はリフトアップ状態を示す模式正面図、(C)はリフト中間状態を示す模式正面図である。
【
図19】
図19は従来例の車両用リフト装置における各昇降装置の構成を示し、(A)は車両進入過程を示す模式平面図、(B)は車両進入停止状態を示す模式平面図、(C)はリフトアップ状態を示す模式正面図である。
【
図20】
図20は車両用リフト装置を示し、(A)は本発明例のリフトアップ状態を示す側面図、(B)は従来例のリフトアップ状態を示す側面図、(C)は従来例のリフト中間状態を示す側面図である。
【
図21】
図21は車両用リフト装置のピットを示し、(A)は本発明例のピットを示す模式平面図、(B)は従来例のピットを示す模式平面図、(C)は他の従来例のピットを示す模式平面図である。
【
図22】
図22は車両用リフト装置の変形例を示す正面図である。
【
図23】
図23は車両用リフト装置の他の変形例を示す正面図である。
【
図24】
図24は起伏リンク装置の変形例を示し、(A)はリフトアップ状態を示す模式図、(B)はリフト中間状態を示す模式図である。
【
図25】
図25は起伏リンク装置の他の変形例を示し、(A)はリフトアップ状態を示す模式図、(B)はリフト中間状態を示す模式図である。
【
図26】
図26は車両用リフト装置の変形例を示し、(A)はリフトアップ状態を示す斜視図、(B)はリフト当初段階状態を示す斜視図、(C)はリフトダウン状態を示す斜視図である。
【
図27】
図27は車両用リフト装置の他の変形例を示し、(A)はリフトアップ状態を示す斜視図、(B)はリフト当初段階状態を示す斜視図、(C)はリフトダウン状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
車両用リフト装置100は、
図1乃至
図4に示す如く、整備場において車両1が進入してきて停止する整備作業領域における、車両1の進入方向X(車両長手方向)(
図1、
図12乃至
図17)に対して直交する左右方向Y(車幅方向)(
図1、
図12乃至
図17)の両側に左右一対の昇降装置20を設けている。
【0023】
本実施形態では、整備場の床面に定めた整備作業領域にピット10(
図2)を凹設し、一対の昇降装置20をピット10の内部に収納している。
【0024】
各昇降装置20は、複数のリンクからなる起伏リンク装置30を有し、車両を支持する車両支持台40(リフトテーブル41及び前後の旋回アーム42、42)を該起伏リンク装置30の上部に搭載して備える。具体的には、各車両支持台40は、起伏リンク装置30の上部に設けられるリフトテーブル41を有し、車両整備作業領域に進入してきて停止した車両1の下面を持ち上げ可能にする前後の旋回アーム42をリフトテーブル41の前後両端部のそれぞれに旋回可能に備えている。
【0025】
各昇降装置20は、昇降アクチュエータ(本実施形態では昇降シリンダ装置)21の作動により、起伏リンク装置30及び車両支持台40を整備場の床面と同一レベルに設けたピット10の開口11を介して該ピット10の内外に移動可能にする。各昇降装置20の起伏リンク装置30は、車両支持台40をピット10の開口11の一部である左右の各主開口部11A(
図1)に位置付けて該主開口部11Aを塞ぐリフトダウン位置と、車両支持台40をピット10の上方に位置付けるリフトアップ位置との間で昇降可能とするように、起伏動作する。
【0026】
ここで、各昇降装置20の起伏リンク装置30は、各リンクの変位が車両1の進入方向Xに対して直交する左右方向Yに沿ってなされる。また、各昇降装置20の起伏リンク装置30は、車両支持台40を水平状態に維持して鉛直方向にのみ昇降させる。
【0027】
各昇降装置20の起伏リンク装置30は、ピット10の内部の架台12において、車両1の進入方向Xに対して直交する左右方向Yに沿う該ピット10の一側寄り(外側寄り)に配置される回転支持部13に枢着支持される第1リンク31と、該ピット10の内部の架台12において、車両1の進入方向Xに対して直交する左右方向に沿う該ピット10の一側(外側)乃至他側(内側)に沿って配置される摺動(転動でも可)支持部14に摺動支持される第2リンク32の少なくとも2つのリンクを有する。
【0028】
本実施形態において、各昇降装置20は、
図5、
図6に示す如く、ピット10の内部の架台12に設けた回転支持部13に第1リンク31の下端部aを枢着支持し、ピット10の内部の架台12に設けた摺動支持部14に第1リンク31の長さL1の2倍の長さ2×L1の第2リンク32の下端部aを摺動支持し、第1リンク31の上端部bを第2リンク32の中点(第2リンク32の長さの中央部)cとともに中間リンク33に枢着し、第2リンク32の上端部bを車両支持台40(リフトテーブル41)に枢着する。また、各昇降装置20は、架台12と中間リンク33に第1リンク31と同一の長さの第1サブリンク31Sの両端部a、bを枢着して、第1リンク31と第1サブリンク31Sと架台12と中間リンク33の4節によって平行四辺形リンク機構20Aを形成する。また、各昇降装置20は、車両支持台40(リフトテーブル41)と中間リンク33に第2リンク32の半分の長さの第2サブリンク32Sの両端部a、bを枢着して、第2リンク32と第2サブリンク32Sと車両支持台40(リフトテーブル41)と中間リンク33の4節によって平行四辺形リンク機構20Bを形成するように構成される。そして、各昇降装置20は、第2サブリンク32Sに後述する可動ピットカバー50を取付けるものとしている。
【0029】
尚、各昇降装置20は、昇降アクチュエータ21を構成する昇降シリンダ装置のシリンダ基端部を架台12に枢着し、該昇降シリンダ装置のピストンロッド先端部を第2リンク32の中間部に枢支するものとしている。
【0030】
また、各昇降装置20にあっては、
図1、
図21に示す如く、起伏リンク装置30を構成する各リンク31、32、31S、32S、33のそれぞれが2つのリンク子(リンク板又はリンク棒)(第1リンク31についてみれば、
図21(A)に示した2つのリンク板31P、31Pの組)をつなぎ材(第1リンク31についてみれば、
図21(A)に示したつなぎ材31R)によってつないだ組立体からなるものとされ、左側の昇降装置20において各リンクを構成する2つのリンク子のそれぞれと、右側の昇降装置20において各リンクを構成する2つのリンク子のそれぞれとが、互い違いとなるように重なり配置される。
【0031】
車両用リフト装置100にあっては、ピット10における車両1の進入方向Xに沿う前後の両側に、整備場の床面と面一をなす前後の各固定ピットカバー15を設けている(各固定ピットカバー15を設ける代わりに、整備場の床面をピット10に対する前後の両側にまで延在させても良い)。これにより、各昇降装置20は、昇降アクチュエータ21の作動により、起伏リンク装置30及び車両支持台40(リフトテーブル41及び旋回アーム42)をピット10における前後の各固定ピットカバー15に挟まれた開口11(左右の各主開口部11A及び中央のサブ開口部11B)を介して該ピット10の内外に移動可能にし、車両支持台40をピット10の上記開口11に位置付けて該開口11を塞いで前後の各固定ピットカバー15と面一をなすリフトダウン位置(
図5(C)、
図6(C))と、車両支持台40をピット10の上方に位置付けるリフトアップ位置(
図5(A)、
図6(A))との間で昇降可能にする。
図5(B)及び
図6(B)は、リフト中間状態を示す。
【0032】
このとき、各昇降装置20が前述した2つの平行四辺形リンク機構20A、20Bを有し、第1リンク31、第1サブリンク31S及び第2サブリンク32Sの各長さをL1とし、第2リンク32の長さを2×L1に設定したことにより、車両支持台40(リフトテーブル41及び旋回アーム42)を前述の如くに水平状態に維持して同一鉛直ラインV(
図6)に沿う鉛直方向にのみ昇降可能にさせるものになる。
【0033】
更に、各昇降装置20は、起伏リンク装置30の構成リンクに取付けられて該起伏リンク装置30の起伏動作に随伴可能にされる各可動ピットカバー50を有する。各昇降装置20の可動ピットカバー50は、各車両支持台40がピットダウン位置の側に位置付けられてピット10の開口11の一部である主開口部11Aを塞ぐときに、該車両支持台40によって塞がれないピット10の開口11の他の一部(左右の各主開口部11Aに挟まれる中央部分)であるサブ開口部11Bの全体を左右2分した各半部ずつを塞ぐ(
図12)。また、各昇降装置20の可動ピットカバー50は、各車両支持台40がリフトダウン位置から上昇する過程で、ピット10のサブ開口部11Bの上記各半部を開いて各起伏リンク30を該サブ開口部11Bの各半部及び主開口部11Aから該ピット10の外に移動し、上方に離隔可能にする。
【0034】
ここで、車両用リフト装置100にあっては、各昇降装置20の車両支持台40がリフトアップ位置に位置付けられたときに、各昇降装置20の可動ピットカバー50は、ピット10の開口レベルから上方に離隔するように構成される。
【0035】
各昇降装置20において、各可動ピットカバー50は、
図7、
図8に示す如く、平板状のカバー板51の前後両側下部に側板52を固定して備え、各昇降装置20の第2サブリンク32Sを構成する2つのリンク板32SP及びそれらのつなぎ材32SRからなる組立体のそれらリンク板32SPに対して概ね平行をなすように上方から相対移動可能に被さる。そして、各可動ピットカバー50は、前後の各リンク板32SPに設けたボス53に植設された左右各1個のガイドボルト54に枢支されるガイドローラ55に、左右の側板52に設けた長孔部52Kをスライド自在に係入される。56はガイドボルト54の頭部54Aとガイドローラ55との間に介装されたガイドワッシャである。側板52の長孔部52Kはカバー板51の板面に概ね直交する方向に延在される。これにより、可動ピットカバー50は、長孔部52Kを介して起伏リンク装置30の第2サブリンク32に取付けられ、該長孔部52Kの長孔の範囲において該第2サブリンク32Sに対して相対移動可能にされる。
【0036】
各可動ピットカバー50が起伏リンク装置30の第2サブリンク32Sに設けたガイドローラ55に上述の長孔部52Kを介して取付けられたことにより、当該可動ピットカバー50は起伏リンク装置30の起伏動作に対して直ちには随伴せずに以下の如くに遅延して随伴動作する。即ち、各昇降装置20が車両支持台40をリフトダウン位置に位置付けたリフト待機段階(
図12)と、車両支持台40をリフトダウン位置から上昇開始させ、旋回アーム42をピット10の開口11より上方レベルで車両1の下面に対して旋回可能にするリフト当初段階(
図13)との間で、可動ピットカバー50を起伏リンク装置30の起伏動作に随伴させずに、ピット10の開口レベルに維持させる。そして、各昇降装置20が車両支持台40を上記リフト当初段階よりも上昇させる段階で、可動ピットカバー50が起伏リンク装置30の起伏動作に対して該長孔部52Kの長孔の範囲内に相当する一定量だけ遅れて随伴するように、可動ピットカバー50は該起伏リンク装置30の第2サブリンク32Sに上記長孔部52Kを介して取付けられる。
【0037】
具体的には、各昇降装置20は、起伏リンク装置30の起伏動作により、車両支持台40及び可動ピットカバー50を以下の如くに作動させる(
図9乃至
図11)。
【0038】
(1)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が起伏リンク装置30をリフトアップ側で起伏し、車両支持台40のリフトテーブル41をリフトダウン位置よりも例えば150mmをこえるリフトアップ位置の側にリフトし、旋回アーム42をピット10の開口11(前後の各固定ピットカバー15の上面レベル)より上記150mmをこえる上方レベルに位置付けるときには、
図9、
図10に示す如く、起伏リンク装置30の第2サブリンク32Sに設けたガイドローラ55に長孔部52Kを介して取付けられている可動ピットカバー50は、当該可動ピットカバー5の自重によって長孔部52Kの長孔上端部をガイドローラ55に預けるようにして該第2サブリンク32Sに支持され、起伏リンク装置30の起伏動作に基づく第2サブリンク32Sの移動に随伴してリフトアップ位置の側にリフトされる。
【0039】
(2)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が起伏リンク装置30を上述(1)より伏臥させ、車両支持台40をリフトダウン位置よりも上記150mmをなすリフト当初段階に位置付けたとき、可動ピットカバー50は、
図11乃至
図14に示す如く、架台12の立上り部に設けてあるボルト等のストッパ12K及び後述する可動プレート60のための昇降ガイド63に設けてあるストッパ63Kに当たり、カバー板51の上面をピット10の開口レベル、換言すれば前後の各固定ピットカバー15の上面と面一をなす床面位置に停留される。これにより、可動ピットカバー50は前後の各固定ピットカバー15とともに、作業者のための歩行面及び整備対象車両のための進入路面を形成する。
【0040】
このとき、起伏リンク装置30は車両支持台40を上述の如くにリフト当初段階に位置付けており、
図13、
図14に示す如く、リフトテーブル41に備えてある旋回アーム42をピット10の開口11よりも上記150mmだけ上方レベルに設定し、この旋回アーム42をリフト対象車両の下面に対して旋回可能にするものとなる。
【0041】
(3)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が起伏リンク装置30を上述(2)より更に伏臥させると、起伏リンク装置30の第2サブリンク32Sに設けたガイドローラ55は上述(2)の床面位置に停留されている可動ピットカバー50の長孔部52K内を下方に移動し、車両支持台40を
図11、
図12に示す如く、リフトダウン位置に位置付けるリフト待機段階に設定するものとなる。このとき、車両支持台40のリフトテーブル41は架台12の立上り部に設けられているボルト等のストッパ12Lに載置されて停留される。
【0042】
各昇降装置20において、昇降アクチュエータ21が起伏リンク装置30を上述(3)のリフトダウン状態から上述(1)のリフトアップ側に向けて起立させるときには、車両支持台40及び可動ピットカバー50は上述(1)乃至(3)と逆手順でリフト待機段階乃至リフト当初段階を経て、リフトアップ位置の側に変位される。
【0043】
各昇降装置20は、可動プレート60を付帯して有する。本実施形態では、左右一対をなす各昇降装置20のそれぞれに対応する各1個の可動プレート60を有するものとしている。但し、各昇降装置20に対して共通をなす1個の可動プレート60を有するものとしても良い。
【0044】
可動プレート60は、各昇降装置20の可動ピットカバー50がピット10のサブ開口部11Bから上方に離隔したときに、該サブ開口部11Bの少なくとも一部(本実施形態では両可動ピットカバー50に対応するサブ開口部11Bの各半部)を塞いで前後の各固定ピットカバー15と面一をなすピット閉鎖位置に位置付けられ、当該サブ開口部11B上に作業床面を形成する。また、可動プレート60は可動ピットカバー50がピット10のサブ開口部11Bを塞ぐときに、ピット10の内部に収納されるピット内収納位置に位置付けられる。
【0045】
可動プレート60は、本実施形態において以下の如くに構成される。
即ち、可動プレート60は、ピット10の内部に設けたXリンク装置70に搭載され、該可動プレート60の昇降フレーム61に固定してある昇降ガイドローラー62が架台12上に立設してある昇降ガイド63にガイドされて上述のピット閉鎖位置(
図9)とピット内収納位置(
図11)との間で昇降する。
【0046】
Xリンク装置70は2つのリンク71、72の中点をピン結合されたX字状をなし、リンク71の下端部を架台12に設けた回転支持部73に枢着され、リンク71の上端部を昇降フレーム61に設けた摺動(転動でも可)支持部74の長孔74Aに摺動支持されるとともに、リンク72の下端部を架台12に設けた摺動(転動でも可)支持部75の長孔75Aに摺動支持され、リンク72の上端部を昇降フレーム61に設けた回転支持部76に吸着される。リンク71とリンク72の各下端部の間に引張ばね77(
図10では省略)を張設するとともに、リンク71とリンク72の各上端部の間に引張ばね78(
図10では省略)を張設し、Xリンク装置70に常時伸長方向へのばね力を付与している。可動プレート60は、Xリンク装置70の伸長方向に作用する引張ばね77、78のばね力により常時上昇方向へ付勢されており、架台12に設けた摺動支持部75における長孔75Aの一端部がXリンク装置70の伸長方向でリンク72の下端部の摺動端を制止する。このリンク72の摺動端を該摺動支持部75のアジャスタ部75Rによって調整することで、Xリンク装置70は上昇端を規制されてピット閉鎖位置に位置付けられる。
【0047】
架台12に設けた枢支部64AにはL字状のロックアーム64が枢支され、ロックアーム64の上端部64Bにはピット閉鎖位置にある可動プレート60の下面に当接するローラー64Bが設けられている。ロックアーム64は、ローラー64Bが枢支部64Aを通る鉛直線よりも一側に僅かに食い込むロック位置と、ローラー64Bが枢支部64Bを通る鉛直線から他側に離隔するロック解除位置との間で揺動可能にされる。
【0048】
ロックアーム64は、架台12との間に張設されている引張ばね65によって常時ロック位置の側への揺動方向に付勢され、架台12に位置調整可能に設けられているストッパボルト65Kによりその揺動限を規制されてロック位置に位置付けられる。このとき、ロックアーム64がロック位置にて可動プレート60の下面をローラー64Bにて支持しつつ突張り、可動プレート60をピット閉鎖位置にて保持する。
【0049】
ロックアーム64は、引張ばね65の付勢力に抗して該ロックアーム64をロック位置とロック解除位置とに切換操作する解除アーム66を付帯して備える。解除アーム66は概ね中間部を可動プレート60に枢支され、両端部のそれぞれにローラー66A、66Bを備える。解除アーム66は、ロックアーム64におけるL字長手方向に沿って、ピット10の左右方向に沿う外方を向くスライド面64Sに常時ローラー66Aを当接させる。他方、起伏リンク装置30の第1リンク31には解除プレート67が設けられている。そして、起伏リンク装置30の伏臥動作とともに下降してくる第1リンク31の解除プレート67が解除アーム66のローラー66Bに当接して該ローラー66Bを押し下げるとき、解除アーム66はロック解除方向に回動してそのローラー66Aをロックアーム64のスライド面64Sに沿って滑らせつつ、該ロックアーム64をロック位置の側からロック解除位置の側へと立ち上げるように変位させ、該ロックアーム64をロック解除位置に位置付ける。ロックアーム64がロック解除位置に位置付けられたとき、可動プレート60は該ロックアーム64による突張り保持状態を喪失してピット閉鎖位置とピット内収納位置との間で昇降できる。即ち、ロックアーム64がロック解除位置にあるとき、起伏リンク装置30の中間リンク33に設けられている押込ローラー68が引張ばね77、78のばね力に抗して可動プレート60の上面を押込むことで、Xリンク装置70を収縮させて、該可動プレート60をピット内収納位置まで押込み可能にする。
【0050】
尚、可動プレート60がピット閉鎖位置からピット内収納位置の側に押込まれるとき、ロック解除位置に位置付けられた立上り状のロックアーム64の上端部及びそのローラー64Bは、可動プレート60に設けてある開閉蓋60K(
図1)を下から押し開き、その開き窓から外方へ突き出るものとされている。
【0051】
また、本実施形態の可動プレート60は、昇降フレーム61の上部におけるピット10の左右方向に沿う中央部寄りに主プレート60Aを取付けられて備えるとともに、主プレート60Aの外側寄り端にヒンジ結合された倣いプレート60Bを備える。ピット閉鎖位置にある可動プレート60は、倣いプレート60Bを主プレート60Aと面一をなす水平面上に位置させる。そして、ピット閉鎖位置とピット内収納位置との間にある可動プレート60は、
図9に示す如く、倣いプレート60Bが備えるローラー60Cを起伏リンク装置30の第1リンク31に設けたカム片60Lに倣わせて揺動させ、伏臥状態に設定される起伏リンク装置30の第1リンク31と中間リンク33との間に該倣いプレート60Bを導入させる。
【0052】
従って、各昇降装置20において、起伏リンク装置30の起伏動作による車両支持台40及び可動ピットカバー50の昇降動作に応じて、可動プレート60を以下の如くにピット閉鎖位置とピット内収納位置との間で昇降する。
【0053】
(1)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が起伏リンク装置30をリフトアップ側で起伏し、起伏リンク装置30の第2サブリンク32Sに随伴する可動ピットカバー50がピット10のサブ開口部11Bから上方に離隔し、起伏リンク装置30の中間リンク33に設けられている押込みローラー68が可動プレート60の上面から離れた上方に位置するときには、
図9に示す如く、該可動プレート60は、引張ばね77、78のばね力によって上昇端に位置付けられているXリンク装置70に搭載されていてピット10のサブ開口部11Bを塞ぎ、前後の各固定ピットカバー15の上面と面一をなす上昇位置に設定される。
【0054】
このとき、可動プレート60は、ロック位置に位置付けられて突張り状態にあるロックアーム64によって下方から支持され、上述のピット閉鎖位置に保持され、前後の各固定ピットカバー15と面一をなす作業床面を形成する。
【0055】
(2)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が起伏リンク装置30を上述(1)より伏臥させ、起伏リンク装置30の第1リンク31に設けられる解除プレート67が解除アーム66を介してロックアーム64をロック解除位置に位置付けると、
図10に示す如く、可動プレート60はロックアーム64による突張り保持状態を喪失してピット閉鎖位置とピット内収納位置との間で昇降可能になる。
【0056】
このとき、起伏リンク装置30の中間リンク33に設けられている押込みローラー68が引張ばね77、78のばね力に抗して可動プレート60の上面を押込むことでXリンク装置70を収縮させ、該可動プレート60をピット内収納位置に向けて押込み可能にする。
【0057】
(3)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が起伏リンク装置30を上述(2)より更に伏臥させ、可動ピットカバー50が前述した如くに前後の各固定ピットカバー15の上面と面一をなす床面位置に位置付けられ、更には、車両支持台40が前述した如くに前後の各固定ピットカバー15の上面と面一をなすリフトダウン位置に位置付けられると、
図11に示す如く、起伏リンク装置30の中間リンク33に設けられている押込みローラー68によってXリンク装置70が収縮端まで収縮され、可動プレート60をピット内収納位置にまで押込み保持する。
【0058】
各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が起伏リンク装置30を上述(3)のリフトダウン状態から上述(1)のリフトアップ側に向けて起立させるときには、可動プレート60は上述(1)乃至(3)と逆手順でピット内収納位置から上昇してピット閉鎖位置に設定される。
【0059】
車両用リフト装置100は、全体的には以下の如くにリフト動作する。
(1)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が、起伏リンク装置30によって車両支持台40をリフトダウン位置(リフト待機段階)に位置付けたとき、
図12に示す如く、車両支持台40はピット10の左右の各主開口部11Aを塞ぐ。
【0060】
同時に、各昇降装置20の可動ピットカバー50は、
図12に示す如く、ピット10の各主開口部11Aに挟まれる中央部分であるサブ開口部11Bの各半部ずつを塞ぐ。
【0061】
これにより、各昇降装置20の車両支持台40及び可動ピットカバー50は、前後の各固定ピットカバー15と面一をなす床面位置に位置付けられ、整備作業領域に、前後の各固定ピットカバー15とともに、整備場の床面と面一をなし、作業者のための歩行面及び整備対象車両のための進入路面を形成するものになる。整備対象車両がその整備作業領域に進入して停止される。
このとき、可動プレート60はピット内収納位置に位置付けられている。
【0062】
(2)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が、起伏リンク装置30によって車両支持台40を上述(1)のリフトダウン位置(リフト段階)より例えば150mmをこえるリフト当初段階に位置付けると、
図13、
図14に示す如く、車両支持台40が旋回アーム42をリフト対象車両の下面に対して旋回可能にし、旋回アーム42が整備対象車両の下面のリフトポイントに位置付けられる。
【0063】
このとき、可動ピットカバー50は前後の各固定ピットカバー15と面一をなす床面位置にとどめられ、上述(1)で形成した作業者のための歩行面及び整備対象車両のための進入路面を維持する。
【0064】
(3)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が、起伏リンク装置30によって車両支持台40を上述(2)のリフト当初段階よりもリフトアップ位置の側に上昇させ、該車両支持台40の旋回アーム42が整備対象車両のリフトポイントを介して当該車両をリフトすると、
図15、
図16に示す如く、可動ピットカバー50は起伏リンク装置30の第2サブリンク32Sの移動に随伴して整備対象車両の下方でリフトアップ位置の側にリフトされ、ピット10の開口レベル(サブ開口部11B)から上方に離隔する。
【0065】
(4)各昇降装置20の昇降アクチュエータ21が、起伏リンク装置30によって車両支持台40を上述(3)より更にリフトアップ位置の側に上昇させると、
図17に示す如く、可動プレート60がピット内収納位置から上昇してピット閉鎖位置に位置付けられる。可動プレート60は、可動ピットカバー50が離隔したピット10におけるサブ開口部11Bの少なくとも一部を塞ぎ、当該サブ開口部11B上に作業床面を形成するものになる。
【0066】
これにより、作業者は前後の各固定ピットカバー15及び上述の各可動プレート60が形成した作業床面上にて、車両支持台40によってリフトアップ位置に位置付けられた整備対象車両をその下方から整備可能にする。
【0067】
各昇降装置20において、昇降アクチュエータ21が起伏リンク装置30を上述(4)のリフトアップ状態から上述(1)のリフトダウン位置(リフト段階)に向けて伏臥するときには、車両支持台40、可動ピットカバー50及び可動プレート60は上述(1)乃至(4)と逆手順でリフトアップ位置からリフト当初段階を経てリフトダウン位置(リフト待機段階)の側に変位される。
【0068】
尚、車両用リフト装置100にあっては、各昇降装置20の車両支持台40が
図2に示す如くのリフトアップ位置に位置付けられたときに、各昇降装置20における可動ピットカバー50のカバー板51が整備作業用の壁面51Pとされ、この壁面51Pに作業指示書等を添付することができる。
【0069】
また、車両用リフト装置100にあっては、各昇降装置20の可動ピットカバー50のカバー板51における整備作業用の壁面51Pの表面に
図22に示す如くの作業台51A、パーツボックス51Bを着脱可能にしても良く、或いは該カバー板51の一部を
図23に示す如くに切欠いて反転可能にし、これを作業台51Cとして用いることもできる。
【0070】
また、各昇降装置20は、
図24又は
図25に示す如く、架台12、第1リンク31、第2リンク32、第1サブリンク31S、第2サブリンク32S、中間リンク33、車両支持台40の7節を有し、それらの7節をなす各リンクの変位が車両1の進入方向に対して直交する左右方向に沿ってなされるとともに、車両支持台40を水平状態に維持して鉛直方向にのみ昇降させ得る起伏リンク装置30を構成するものでも良い。
【0071】
図24及び
図25に示した各昇降装置20の起伏リンク装置30は、架台12に設けた回転支持部13に第1リンク31の下端部aを枢着支持し、架台12に設けた摺動支持部14に第1リンク31の長さL1の2倍の長さ2×L1の第2リンク32の下端部aを摺動支持し、第1リンク31の上端部bを第2リンク32の中点cとともに中間リンク33に枢着し、第2リンク32の上端部bを車両支持台40(リフトテーブル41)に枢着する。また、各昇降装置20は、架台12と中間リンク33に第1リンク31と同一の長さの第1サブリンク31Sの両端部a、bを枢着して、第1リンク31と第1サブリンク31Sと架台12と中間リンク33の4節によって平行四辺形リンク機構20Aを形成する。また、各昇降装置20は、車両支持台40(リフトテーブル41)と中間リンク33に第2リンク32の半分の長さの第2サブリンク32Sの両端部a、bを枢着して、第2リンク32と第2サブリンク32Sと車両支持台40(リフトテーブル41)と中間リンク33の4節によって平行四辺形リンク機構20Bを形成する。このとき、第1サブリンク31Sの上端部と第2サブリンク32Sの下端部bはともに同一点で中間リンク33に枢着される。そして、第1リンク31と第1サブリンク31Sの両下端部aの間隔L2と、第1リンク31の上端部b(又は第2リンク32の中点c)と第1サブリンク31Sの上端部b(又は第2サブリンク32Sの下端部a)との間隔L2と、第2リンク32と第2サブリンク32Sの両上端部bの間隔L2は、同等とされる。
【0072】
これにより、各昇降装置20の起伏リンク装置30は、それらの構成リンクの変位が車両1の進入方向に対して直交する左右方向に沿ってなされるとともに、車両支持台40を水平状態に維持して鉛直方向にのみ昇降させ得るものになる。
図24(A)、
図25(A)はリフトアップ状態、
図24(B)、
図25(B)はリフト中間状態を示す。
【0073】
また、各昇降装置20は、
図26に示す如く、上下2段をなすXリンク装置の組合せからなる昇降装置200に変形することもできる。
【0074】
各昇降装置200の起伏リンク装置201は、架台12に支持される下段側リンク装置210と、下段側リンク装置210の上に搭載されて車両支持台40を支持する上段側Xリンク装置220の組合せからなる。下段側リンク装置210は、X字状にピン結合された2つのリンク211、212を有し、リンク211の下端部を架台12に設けた回転支持部13に枢着支持し、リンク212の下端部を架台12に設けた摺動支持部14に摺動支持する。そして、上段側Xリンク装置220は、X字状にピン結合された2つのリンク221、222を有し、リンク221の下端部をリンク211の上端部に枢着し、リンク222の下端部をリンク212の上端部に枢着し、リンク221の上端部に車両支持台40を枢着支持し、リンク222の上端部に車両支持台40を摺動支持する。
【0075】
尚、可動ピットカバー50が、前記起伏リンク装置30における第2サブリンク32Sに取付けられたと同様にして、上段側Xリンク装置220の各リンク221、222のそれぞれに取付けられる。
【0076】
これにより、各昇降装置200の起伏リンク装置201は、それらの構成リンクの変位が車両1の進入方向Xに対して直交する左右方向Yに沿ってなされるとともに、車両支持台40を水平状態に維持して延長方向にのみ昇降させ得るものになる。
図26(A)はリフトアップ状態、
図26(B)はリフト当初段階、
図26(C)はリフトダウン状態(リフト待機段階)を示す。
【0077】
従って、本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。
(a)各昇降装置20は、起伏リンク装置30の構成リンクである第2サブリンク32Sに取付けられて該起伏リンク装置30に随伴可能にされる各可動ピットカバー50を有し、各可動ピットカバー50は、車両支持台40がリフトダウン位置の側に位置付けられたときに、該車両支持台40によって塞がれないピット10の開口11の他の一部であるサブ開口部11Bを塞ぐ。従って、リフトアップ位置に位置付けられた車両支持台40が車両の下面を覆う範囲を小さくして整備作業性を向上可能にし、或いは車両用リフト装置の軽量化やコンパクト化を実現しようとして、車両支持台40の小型化を図りながら、当該車両支持台40をリフトダウン位置の側に位置付けたときに、ピット10のサブ開口部11Bを塞ぐ可動ピットカバー50が、ピット10の主開口部11Aを塞ぐ車両支持台40とともに、該ピット10の主開口部11A及びサブ開口部11Bを含む該ピット10の開口11の概ね全部を塞ぎ、作業者のための歩行面を形成するとともに、整備対象車両のための進入路面を形成して該車両を整備作業領域に進入させることができる。
【0078】
また、各車両支持台40がリフトダウン位置から上昇する過程では、ピット10のサブ開口部11Bを各可動ピットカバー50によって開き、起伏リンク装置30を該サブ開口部11B及び主開口部11Aを含む該ピット10の比較的大きな開口11から該ピット10の内外に移動可能にする。このとき、各昇降装置20の起伏リンク装置30は、各リンクの変位が車両1の進入方向Xに対して直交する左右方向Yに沿ってなされることを必須とせず、各リンクの変位が車両1の進入方向Xに沿う方向に沿ってなされるものでも良い。
【0079】
即ち、各昇降装置20は、例えば
図27に示す如く、上下2段をなすXリンク装置の組合せからなる昇降装置300に変形することもできる。
【0080】
各昇降装置300の起伏リンク装置301は、架台12に支持される下段側リンク装置310と、下段側リンク装置310の上に搭載されて車両支持台40を支持する上段側Xリンク装置320の組合せからなる。下段側リンク装置310は、X字状にピン結合された2つのリンク311、312を有し、リンク311の下端部を架台12に設けた回転支持部13に枢着支持し、リンク312の下端部を架台12に設けた摺動支持部14に摺動支持する。そして、上段側Xリンク装置320は、X字状にピン結合された2つのリンク321、322を有し、リンク321の下端部をリンク311の上端部に枢着し、リンク322の下端部をリンク312の上端部に枢着し、リンク321の上端部に車両支持台40を枢着支持し、リンク322の上端部に車両支持台40を摺動支持する。
【0081】
尚、可動ピットカバー50が、第1実施形態の起伏リンク装置30における第2サブリンク32Sへの取付けと同様にして、上段側Xリンク装置320の各リンク321、322のそれぞれに取付けられる。
【0082】
これにより、各昇降装置300の起伏リンク装置301は、それらの構成リンクの変位が車両1の進入方向Xに沿ってなされる。
図27(A)はリフトアップ状態、
図27(B)はリフト当初段階、
図27(C)はリフトダウン状態(リフト待機段階)を示す。
【0083】
(b)各昇降装置20の車両支持台40が車両整備作業領域に進入してきて停止した車両の下面を持ち上げ可能にする旋回アーム42を旋回可能に備え、各昇降装置20が車両支持台40をリフトダウン位置に位置付けたリフト待機段階と、車両支持台40をリフトダウン位置から上昇開始させ、旋回アーム42をピット10の開口11より上方レベルで車両の下面に対して旋回可能にするリフト当初段階との間で、可動ピットカバー50を起伏リンク装置30の起伏動作に随伴させずに、ピット10の開口レベルに維持させ、各昇降装置20が車両支持台40を上記リフト当初段階よりも上昇させる段階で、該可動ピットカバー50が起伏リンク装置30の起伏動作に対して一定量だけ遅れて随伴するように、該可動ピットカバー50が起伏リンク装置30の構成リンクに取付けられる。これにより、各昇降装置20は、上記リフト当初段階で可動ピットカバー50をピット10の開口レベルに維持し、該可動ピットカバー50によって整備対象車両のための上述(a)の進入路面を形成しながら、車両支持台40の旋回アーム42をピット10の開口11より上方レベルにまで上昇させて当該車両の下面に対する旋回可能レベルに設定できる。このことは、複数台の車両を連続的に整備作業領域に入れてそれらの整備作業を繰り返し実施する度に、車両支持台40を前回車両のためのリフトアップ位置からリフト待機段階のリフトダウン位置にまで下降させることなく、上記の旋回アーム42を旋回可能レベルにまで下降させれば、前回車両を整備作業領域から退出させ、続いて次回車両を当該整備作業領域に進入させることができ、整備作業の生産性を向上できるものになる。
【0084】
(c)各昇降装置20の可動ピットカバー50が、長孔部52Kを介して起伏リンク装置30の第2サブリンク32Sに取付けられ、該長孔部52Kの長孔の範囲において該第2サブリンク32Sに対して相対移動可能にされるものとすることにより、起伏リンク装置30の第2サブリンク32Sに対する可動ピットカバー50の相対移動構造を簡易に実現できる。
【0085】
(d)各昇降装置20が可動プレート60を付帯して有し、可動プレート60は各昇降装置20の可動ピットカバー50がピット10のサブ開口部11Bから上方に離隔したときに、該サブ開口部11Bの少なくとも一部を塞ぐピット閉鎖位置に設定される。これにより、車両支持台40がリフトダウン位置から上昇するときに、この起伏リンク装置30をピット10の外に移動可能にする該ピット10のサブ開口部11Bを可動プレート60によって塞ぎ、該可動プレート60の上に作業者のための作業床面を形成できる。
【0086】
(e)各昇降装置20の車両支持台40がリフトアップ位置に位置付けられたときに、各昇降装置20の可動ピットカバー50はピット10の開口レベルから離隔するように構成される。従って、車両支持台40をリフトアップ位置に上昇させた整備作業時に、
図2に示す如く、リフト対象車両の直下に当該可動ピットカバー50によって邪魔されない広い整備作業空間W3を確保できる。
【0087】
(f)各昇降装置20が、ピット10の内部の架台12に設けた回転支持部13に第1リンク31の下端部を枢着支持し、ピット10の内部の架台12に設けた摺動支持部14に第2リンク32の下端部を摺動支持し、第1リンク31の上端部を第2リンク32とともに中間リンク33に枢着し、第2リンク32の上端部を車両支持台40に枢着し、架台12と中間リンク33に第1サブリンク31Sの両端部を枢着して、第1リンク31と第1サブリンク31Sと架台12と中間リンク33の4節によって平行四辺形リンク機構20Aを形成し、車両支持台40と中間リンク33に第2サブリンク32Sの両端部を枢着して、第2リンク32と第2サブリンク32Sと車両支持台40と中間リンク33の4節によって平行四辺形リンク機構20Bを形成するように構成されるとき、第2サブリンク32Sに上述(a)の可動ピットカバー50を取付けできる。
【0088】
尚、上述した本発明の実施形態に関し、本発明は更に以下の車両用リフト装置を開示する。
<1>各昇降装置20の起伏リンク装置30は、各リンクの変位が車両1の進入方向に対して直交する左右方向に沿ってなされるとともに、
図5、
図6に示す如く、車両支持台40を水平状態に維持し、
図6に示す同一鉛直ラインVに沿う鉛直方向にのみ昇降させる。これにより、車両支持台40の上に車両1の左右のリフトポイント(又は左右のタイヤ)を左右の相対する方向にて股裂き等することなく安定的に支持しながら、該車両1をリフトすることができる。
【0089】
<2>各昇降装置20の起伏リンク装置30は、各リンクの変位が車両1の進入方向に対して直交する左右方向に沿ってなされる。これにより、各起伏リンク装置30は、
図18(A)乃至(C)に示す如く、整備作業領域においてリフト対象車両1の直下の車幅方向に沿う外側から内側に渡る広い範囲で踏ん張りつつ該車両1をリフトするものになるから、各リンクに作用する曲げ荷重の軽減を図って、各リンクに必要とされる剛性(例えば各リンクを構成するリンク子の板幅等)を低減でき、ひいては当該起伏リンク装置30の全体サイズをコンパクト化できる。このことは整備作業領域における起伏リンク装置30の設置スペースを小型化し、
図3、
図20(A)に示す如く、リフトされた車両1の直下に広い整備作業空間W1、W2を確保してその整備作業性を向上できることを意味する。
【0090】
<3>各昇降装置20の起伏リンク装置30は、各リンクの変位が車両1の進入方向に対して直交する左右方向に沿ってなされる。これにより、各起伏リンク装置30はリフト対象車両1の車両長手方向に沿う前輪側と後輪側に挟まれる概ね中央部の直下にのみ配置されて起伏するものになるから、
図3、
図20(A)に示す如く、車両直下における前輪側と後輪側に広い整備作業空間W1、W2を確保できる。しかも、この整備作業空間W1、W2は車両1のリフト高さHに影響されることなく一定になる。従って、車両1の前輪側と後輪側に位置するエンジン、足回り、ミッション、バッテリー等の整備作業性を向上できる。
【0091】
<4>各昇降装置20の起伏リンク装置30は、各リンクの変位が車両1の進入方向に対して直交する左右方向に沿ってなされる。従って、各起伏リンク装置30は互いに点対称配置されて互いに共通化できるとともに、その車両支持台40は互いに共通化できるから、各昇降装置20の構成部品点数を削減し、その組立工数も削減できる等、車両用リフト装置の生産性を向上できる。
【0092】
また、各昇降装置20は車両進入方向における方向性がなく、車両1を当該車両進入方向に沿う双方向のいずれから進入させても整備作業できる。
【0093】
<5>各昇降装置20の起伏リンク装置30が、ピット10の左右方向に沿う一側寄りの回転支持部13に枢着支持される第1リンク31と、ピット10の左右方向に沿う他側寄りの摺動支持部14に摺動支持される第2リンク32とを有する。従って、各起伏リンク装置30は、整備作業領域においてリフト対象車両1の直下の車幅方向に沿う外側寄りで起伏する第1リンク31と、その内側寄りで起伏する第2リンク32の2つのリンクにより、当該リンク対象車両1の直下の車幅方向に沿う広い範囲で安定的に踏ん張りつつ該車両1をリフトするものになり、前述<2>を安定的に実現できる。
【0094】
<6>各昇降装置20は、車両支持台40がピット10の開口11から上昇したときに、両側の昇降装置20に挟まれる該開口の中央部分に、可動プレート60が塞いだ作業床面を形成できる。作業者は、ピット10における前後に既存の各作業床面と中央の上記可動プレート60が形成する作業床面により形成された広い作業床面上で整備作業できる。
【0095】
<7>各昇降装置20の車両支持台40がリフトアップ位置に位置付けられ、第1と第2のリンク31、32の交差部が前後に既存の各作業床面より上位に配置されるとき、
図1、
図2に示す如く、第1と第2のリンク31、32の交差部より下側の下縁部同士が挟んで、それらの交差部の直下、かつ該作業床面の上側に形成される三角形状のリンク間隙間Rが、それらの前後の各作業床面に臨むものとされる。この三角形状のリンク間隙間Rが縮小変位する当該昇降装置20の下降時に、作業者は下降してくる車両1の下方にいることがなく、当該縮小変位してくるリンク間隙間Rにその足を挟むおそれをないものとすることができる。
【0096】
<8>各昇降装置20の起伏リンク装置30を構成する各リンクが一対をなす2つのリンク子(第1リンク31についてみれば、2つのリンク板31P、31Pの組)の組立体からなり、左側の昇降装置20において各リンクを構成する2つのリンク子のそれぞれと、右側の昇降装置20において各リンクを構成する2つのリンク子のそれぞれとが、
図21(A)に示す如く、互い違いとなるように重なり配置される。従って、整備場において両昇降装置20が占める面積を小さくできる。これにより、整備場の土間工事領域を小さくでき、ピット10の面積も小さくできる。
【0097】
尚、
図19に示した従来例にあっては、整備場の土間工事領域及びピットの面積が
図21(B)又は(C)に示す如くに大きくなる。
【0098】
<9>各昇降装置20が起伏リンク装置30の構成リンクに取付けられて該起伏リンク装置30に随伴可能にされる各可動ピットカバー50を有し、各昇降装置20の可動ピットカバー50は、車両支持台40がリフトダウン位置に位置付けられたときに、ピット10の開口11のうちで該車両支持台40によって塞がれないピット10の開口11の一部を塞ぐ。このとき、可動ピットカバー50は、車両支持台40とともにピット10の開口11の概ね全部を塞ぎ、作業者のための歩行面を形成するとともに整備対象車両1のための進入路面を形成して該車両1を整備作業領域に進入させることができる。
【0099】
また、可動ピットカバー50は車両支持台40がリフトダウン位置から上昇する過程で、ピット10の上記開口の一部から上方に離隔し、車両支持台40をリフトアップ位置に上昇させた整備作業時に、リフト対象車両1の直下に当該可動ピットカバー50によって邪魔されない広い整備作業空間W1、W2を確保するものになる。
【0100】
<10>前記各昇降装置20が、ピット10の内部の架台12に設けた回転支持部13に第1リンク31の下端部を枢着支持し、ピット10の内部の架台12に設けた摺動支持部14に第1リンク31の2倍の長さの第2リンク32の下端部を摺動支持し、第1リンク31の上端部を第2リンク32の中点とともに中間リンク33に枢着し、第2リンク32の上端部を車両支持台40に枢着し、架台12と中間リンク33に第1リンク31と同一の長さの第1サブリンク31Sの両端部を枢着して、第1リンク31と第1サブリンク31Sと架台12と中間リンク33の4節によって平行四辺形リンク機構20Aを形成し、車両支持台40と中間リンク33に第2リンク32の半分の長さの第2サブリンク32Sの両端部を枢着して、第2リンク32と第2サブリンク32Sと車両支持台40と中間リンク33の4節によって平行四辺形リンク機構20Bを形成するように構成されるとき、車両支持台40を前述(a)の如くに水平状態に維持して鉛直方向にのみ昇降させることができる。また、第2サブリンク32Sに上記<9>の可動ピットカバー50を取付けできる。
【0101】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、両用リフト装置において、各昇降装置の車両支持台の小型化を図りながら、起伏リンク装置及び車両支持台をピットの内外に移動可能にする比較的大きなピットの開口を、該車両支持台のリフトダウン時に確実に塞ぐことを可能にすることができる。
【符号の説明】
【0103】
10 ピット
11 開口
11A 主開口部
11B サブ開口部
12 架台
13 回転支持部
14 摺動支持部
20 昇降装置
20A、20B 平行四辺形リンク機構
30 起伏リンク装置
31 第1リンク
31S 第1サブリンク
32 第2リンク
32S 第2サブリンク
33 中間リンク
40 車両支持台
41 リフトテーブル
42 旋回アーム
50 可動ピットカバー
52K 長孔部
60 可動プレート
100 車両用リフト装置