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特許7221531成形金型及びそれを用いるプレス成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】成形金型及びそれを用いるプレス成形方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 24/10 20060101AFI20230207BHJP
   B21D 24/04 20060101ALI20230207BHJP
   B21D 22/21 20060101ALI20230207BHJP
   B21D 22/26 20060101ALI20230207BHJP
   B21D 37/02 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
B21D24/10
B21D24/04 F
B21D22/21
B21D24/04 B
B21D22/26 C
B21D37/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019137771
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021020236
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】519273371
【氏名又は名称】株式会社アイエント
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田茂夫
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/103682(WO,A1)
【文献】特開平07-230762(JP,A)
【文献】特開平06-335733(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047601(WO,A1)
【文献】特開2019-118955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 24/10
B21D 24/04
B21D 22/21
B21D 22/26
B21D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するダイ、凸部を有するパンチ、該凹部の輪郭に一致する形状の貫通口を有し且つ該ダイと該パンチとの間に配される第1部材を備え、該ダイ及び該第1部材の間に配された金属製の板材に対して、該凸部を該貫通口及び該凹部に挿通してプレス成形する成形金型であって、
前記第1部材は、前記貫通口の周縁部に前記凸部よりも低く隆起する隆起部と該周縁部から外方に位置する第1外周部とを有し、
前記隆起部及び前記第1外周部は、それぞれ前記板材との対向面が水平な面を備え、
前記ダイは、前記凹部の周縁部に前記隆起部に嵌合し且つ前記凹部よりも浅く窪んだ凹陥部と該周縁部から外方に位置する第2外周部とを有し、
前記凹陥部及び前記第2外周部は、それぞれ前記板材との対向面が水平な面を備え、
前記成形金型は、前記隆起部及び前記凹陥部から外方に、前記第1部材と前記ダイとの間隔を、前記金属製の板材の厚み以上に調整する第2部材を有しており、
前記隆起部の水平な面と前記第1外周部の水平な面との第1間隔、及び前記凹陥部の水平な面と前記第2外周部の水平な面との第2間隔は、それぞれ、前記板材の厚みよりも大きく、該第1間隔と該第2間隔とが同じ間隔である、成形金型。
【請求項2】
前記金属製の板材を前記ダイと前記第1部材とで挟んだときに、前記第2部材によって該第1部材と該ダイとの間の距離を該金属製の板材の厚み以上に調整しつつ、前記凹陥部と前記隆起部とを嵌合させ該金属製の板材を変形させて該金属製の板材の周縁部に仮屈曲部を形成するようになされており、
前記凸部を前記貫通口及び前記凹部に挿通して前記金属製の板材をプレス成形するときには、先ず前記隆起部に前記仮屈曲部を係合させ、該金属製の板材における該仮屈曲部から外方部分の前記凹部側への移動を防ぎながらプレス成形するようになされており、
その後、前記凹陥部よりも深くプレス成形するときには、前記仮屈曲部を延ばしながら前記隆起部から内方に前記金属製の板材の周縁部を越えさせ、該周縁部を前記凹部内に流入させつつプレス成形するようになされている、請求項1に記載の成形金型。
【請求項3】
凹部を有するダイ、凸部を有するパンチ、該凹部の輪郭に一致する形状の貫通口を有し且つ該ダイと該パンチとの間に配される第1部材を備え、該ダイ及び該第1部材の間に配された金属製の板材に対して、該凸部を該貫通口及び該凹部に挿通してプレス成形する成形金型を用いるプレス成形方法であって、
前記成形金型において、前記第1部材は、前記貫通口の周縁部に前記凸部よりも低く隆起する隆起部と該周縁部から外方に位置する第1外周部とを有し、
前記隆起部及び前記第1外周部は、それぞれ前記板材との対向面が水平な面を備え、
前記ダイは、前記凹部の周縁部に前記隆起部に嵌合し且つ前記凹部よりも浅く窪んだ凹陥部と該周縁部から外方に位置する第2外周部とを有し、
前記凹陥部及び前記第2外周部は、それぞれ前記板材との対向面が水平な面を備え、
前記成形金型は、前記隆起部及び前記凹陥部から外方に、前記第1部材と前記ダイとの間の距離を調整する第2部材を有しており、
前記成形金型において、前記隆起部の水平な面と前記第1外周部の水平な面との第1間隔、及び前記凹陥部の水平な面と前記第2外周部の水平な面との第2間隔は、それぞれ、前記板材の厚みよりも大きく、該第1間隔と該第2間隔とが同じ間隔となっており、
前記プレス成形方法は、金属製の板材を前記ダイと前記第1部材とで挟んだときに、前記第2部材によって該第1部材と該ダイとの間の距離を該金属製の板材の厚み以上に調整しつつ、前記凹陥部と前記隆起部とを嵌合させ該金属製の板材を変形させて該金属製の板材の周縁部に仮屈曲部を形成する工程と、
前記凸部を前記貫通口及び前記凹部に挿通して前記金属製の板材をプレス成形するときには、先ず前記隆起部に前記仮屈曲部を係合させ、該金属製の板材における該仮屈曲部から外方部分の前記凹部側への移動を防ぎながらプレス成形し、
その後、前記凹陥部よりも深くプレス成形するときには、前記仮屈曲部を延ばしながら前記隆起部から内方に前記金属製の板材の周縁部を越えさせ、該周縁部を前記凹部内に流入させつつプレス成形する工程とを備える、プレス成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形金型及びそれを用いるプレス成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費の向上を追求する目的で、自動車の車体の軽量化が近年進められている。その為、車体に従来から使用されていた鋼板に替えて、鋼板よりも軽量なアルミニウム板材が採用されることが多くなってきている。しかし、アルミニウム板材は鋼板よりも成形性が劣る材料であるため、鋼板に使用されていた従来の成形金型を用いて、このアルミニウム板材を成形しようとすると、プレス成形時にアルミニウム板材に割れが発生することがある。特許文献1には、この割れの発生を回避するために、アルミニウム板材の把持力を低くしたプレス型のブランクホルダーが記載されている。
【0003】
また特許文献2には、絞り成形時にダイとブランクホルダーとを嵌合させてアルミニウム板材にビードを形成し、アルミニウム板材における該ビードよりも外方部分はダイとブランクホルダーとで挟持しない絞り成形装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭48-49660号公報
【文献】特開2014-50857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のプレス型のブランクホルダーは、アルミニウム板材の把持力が低い結果、アルミニウム板材に皺が発生してしまう。次に特許文献2に記載の絞り成形装置は、アルミニウム板材をビードにおいてダイとブランクホルダーとで挟持している。その結果、アルミニウム板材におけるビードよりも外側部分を、該ビードよりも内側に流入させることができず、アルミニウム板材に割れが発生してしまう。
【0006】
したがって本発明の課題は、金属製の板材を成形するときに、金属製の板材に割れが発生し難く、金属製の板材に皺が発生し難い成形金型を提供することにある。またそれを用いるプレス成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、凹部を有するダイ、凸部を有するパンチ、該凹部の輪郭に一致する形状の貫通口を有し且つ該ダイと該パンチとの間に配される第1部材を備え、該ダイ及び該第1部材の間に配された金属製の板材に対して、該凸部を該貫通口及び該凹部に挿通してプレス成形する成形金型であって、
前記第1部材は、前記貫通口の周縁部に前記凸部よりも低く隆起する隆起部を有し、
前記ダイは、前記隆起部に嵌合し且つ前記凹部よりも浅く窪んだ凹陥部を該凹部の周縁部に有し、
前記成形金型は、前記隆起部及び前記凹陥部から外方に、前記第1部材と前記ダイとの間隔を、前記金属製の板材の厚み以上に調整する第2部材を有している、成形金型を提供するものである。
【0008】
また本発明は、凹部を有するダイ、凸部を有するパンチ、該凹部の輪郭に一致する形状の貫通口を有し且つ該ダイと該パンチとの間に配される第1部材を備え、
前記第1部材は、前記貫通口の周縁部に前記凸部よりも低く隆起する隆起部を有し、
前記ダイは、前記隆起部に嵌合し且つ前記凹部よりも浅く窪んだ凹陥部を該凹部の周縁部に有し、
前記隆起部及び前記凹陥部から外方に、前記第1部材と前記ダイとの間の距離を調整する第2部材を有する成形金型を用いるプレス成形方法であって、
金属製の板材を前記ダイと前記第1部材とで挟んだときに、前記第2部材によって該第1部材と該ダイとの間の距離を該金属製の板材の厚み以上に調整しつつ、前記凹陥部と前記隆起部とを嵌合させ該金属製の板材を変形させて該金属製の板材の周縁部に仮屈曲部を形成する工程と、
前記凸部を前記貫通口及び前記凹部に挿通して前記金属製の板材をプレス成形するときには、先ず前記隆起部に前記仮屈曲部を係合させ、該金属製の板材における該仮屈曲部から外方部分の前記凹部側への移動を防ぎながらプレス成形し、
その後、前記凹陥部よりも深くプレス成形するときには、前記仮屈曲部を延ばしながら前記隆起部から内方に前記金属製の板材の周縁部を越えさせ、該周縁部を前記凹部内に流入させつつプレス成形する工程とを備える、プレス成形方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属製の板材を成形するときに、金属製の板材に割れが発生し難く、金属製の板材に皺が発生し難い成形金型及びそれを用いるプレス成形方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態である成形金型の構成を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す成形金型を用いてプレス成形し、金属製の板材を変形させて金属製の板材に仮屈曲部を形成する様子を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示す成形金型を用い、第1部材の隆起部に金属製の板材の仮屈曲部を係合させた状態で、金属製の板材をプレス成形する様子を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図1に示す成形金型を用い、金属製の板材の仮屈曲部を引き延ばしながら、金属製の板材をプレス成形する様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には本発明の一実施形態である成形金型1の斜視図が示されている。成形金型1は、金属製の板材10をプレス成形するものである。
【0012】
金属製の板材10としては、アルミニウム板、ステンレス板、マグネシウム板、鉄板等が挙げられ、軽量化の観点から、アルミニウム板、マグネシウム板等の合金板が好ましく用いられ、アルミニウム板が特に好ましく用いられる。アルミニウム板とは、純アルミニウム板のみならず、それに加えてアルミニウムを主成分とする合金板を含むものである。アルミニウム板として、合金板を使用する場合、1000系、2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系及び8000系の合金が好ましく用いられ、コストの観点及び量産性の観点から、4000系及び5000系の合金が特に好ましく用いられる。
【0013】
金属製の板材10の厚みは、均一であることが好ましい。最も薄い位置での板材10の厚みは、0.2mm以上5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上3mm以下であることが更に好ましく、0.7mm以上2mm以下であることが特に好ましい。
【0014】
図1に示すように、成形金型1は、凹部21を有するダイ2、凸部31を有するパンチ3、貫通口41を有する第1部材4、ダイ2と第1部材4との間隔を調整する第2部材5を備えている。成形金型1は、それらに加えて、周知のコンピュータで構成された制御部(不図示)を備えている。
【0015】
ダイ2、パンチ3及び第1部材4は、制御部(不図示)と電気的に接続されている。制御部に入力された移動軌道のデータ、或いは操作者がコントローラーを介して制御部に入力した操作信号に基づき、ダイ2、パンチ3及び第1部材4を移動させることが可能になされている。制御部には、移動データが入力されているか、又は入力可能になされている。制御部への移動データの入力は、USBメモリ等の記録媒体を介して入力可能であってもよいし、インターネットやイントラネット等のネットワークを介して入力可能であってもよい。
【0016】
第1部材4は、金属製のものであり、図1に示すように、ダイ2とパンチ3との間に配されている。第1部材4は、その中央部分に貫通口41を有している。貫通口41は、その輪郭がダイ2の凹部21の輪郭と一致する形状となっている。第1部材4は、貫通口41の周縁部にパンチ3の凸部31よりも低く隆起する隆起部42と、該周縁部から外方に位置する外周部43とを有する。隆起部42は、貫通口41から連続して該貫通口41から外方に形成されている。隆起部42を備えている結果、第1部材4は、貫通口41の周縁部が、外周部43から上方に段状に隆起している。隆起部42及び外周部43は、それぞれ、金属製の板材10との対向面となる上面が水平な面となっていることが好ましい。
【0017】
金属製の板材の中でも、特にアルミニウム板材又はマグネシウム板材に割れが発生し難く、アルミニウム板材又はマグネシウム板材に皺が発生し難い観点から、外周部43の上面と隆起部42の上面との間隔t1は、凸部31の高さt2よりも小さいが、金属製の板材10の厚みt3よりも大きいことが好ましい。間隔t1は最も広い位置での値である。高さt2は最も高い位置での値である。厚みt3は最も薄い位置での値である。
【0018】
高さt2に対する間隔t1の割合は、0.5%以上3%以下であることが好ましく、1%以上2%以下であることが更に好ましい。
厚みt3に対する間隔t1の割合は、300%以上6000%以下であることが好ましく、500%以上2000%以下であることが更に好ましい。
間隔t1は、1mm以上30mm以下であることが好ましく、3mm以上12mm以下であることが更に好ましく、4mm以上6mm以下であることが特に好ましい。
高さt2は、50mm以上1000mm以下であることが好ましく、300mm以上700mm以下であることが更に好ましい。
厚みt3は、0.2mm以上5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上3mm以下であることが更に好ましく、0.7mm以上2mm以下であることが特に好ましい。
【0019】
ダイ2は、金属製のものであり、図1に示すように、中央部分に上方に向かって窪んだ凹部21を備えている。ダイ2は、凹部21の周縁部に隆起部42に嵌合する凹陥部22と、該周縁部から外方に位置する外周部23とを有する。凹陥部22は、凹部21よりも浅く窪んだものである。凹陥部22は、凹部21から連続して該凹部21から外方に形成されている。凹陥部22を備えている結果、ダイ2は、凹部21の周縁部が、外周部23から上方に段状に陥没している。凹陥部22及び外周部23は、それぞれ、金属製の板材10との対向面となる下面が水平な面となっていることが好ましい。
【0020】
金属製の板材の中でも、特にアルミニウム板材又はマグネシウム板材に割れが発生し難く、アルミニウム板材又はマグネシウム板材に皺が発生し難い観点から、外周部23の下面と凹陥部22の下面との間隔t4は、凹部21の窪み高さt5よりも小さいが、金属製の板材10の厚みt3よりも大きいことが好ましい。間隔t4は最も深い位置での値である。高さt5は最も深い位置での値である。凹陥部22の間隔t4は、隆起部42の間隔t1と同じであることが好ましい。
【0021】
高さt5に対する間隔t4の割合は、1%以上20%以下であることが好ましく、1%以上2%以下であることが更に好ましい。
厚みt3に対する間隔t4の割合は、300%以上6000%以下であることが好ましく、500%以上2000%以下であることが更に好ましい。
間隔t4は、1mm以上30mm以下であることが好ましく、3mm以上12mm以下であることが更に好ましい。
高さt5は、15mm以上700mm以下であることが好ましく、75mm以上250mm以下であることが更に好ましい。
【0022】
パンチ3は、金属製のものであり、図1に示すように、中央部分に上方に向かって隆起した凸部31と、凸部31から外方に位置する外周部33とを有する。凸部31は、第1部材4の貫通口41及びダイ2の凹部21に挿通可能となっている。凸部31及び外周部33は、それぞれ、金属製の板材10との対向面となる上面が水平な面となっていることが好ましい。
【0023】
第2部材5は、金属製のものであり、図1に示すように、プレート状に形成されている。第2部材5は、隆起部42及び凹陥部22から外方に配されており、且つ金属製の板材10から外方に配されている。第2部材5は、ダイ2の外周部23と第1部材4の外周部43との間に位置するように外周部23上に配されている。プレート状の第2部材5は、ダイ2と第1部材4との間隔を、金属製の板材10の厚みt3以上に調整するものである。
【0024】
金属製の板材の中でも、特にアルミニウム板材又はマグネシウム板材に割れが発生し難く、アルミニウム板材又はマグネシウム板材に皺が発生し難い観点から、第2部材5によって、ダイ2と上昇させた第1部材4との間隔t6を、金属製の板材10の厚みt3よりも大きく調整することが好ましく、同じに調整することが最も好ましい。また間隔t6を厚みt3よりも大きく調整するときには、厚みt3に対する間隔t6の割合は、100%以上1000%以下であることが好ましく、100%以上200%以下であることが更に好ましい。
間隔t6は、0.2mm以上25mm以下であることが好ましく、0.6mm以上10mm以下であることが更に好ましく、1mm以上3mm以下であることが特に好ましい。間隔t6は最も狭い位置での値である。
【0025】
成形金型1を用いた金属製の板材10のプレス成形方法の好ましい一実施態様を、説明する。先ず、図1に示すように、ダイ2と第1部材4との間に、金属製の板材10を配置する。次に、制御部(不図示)から送られる操作信号に基づき、第1部材4を上方に作動させる。そして、図2に示すように、金属製の板材10をダイ2と第1部材4とで挟んだときに、第2部材5によって第1部材4とダイ2との間の距離である間隔t6を金属製の板材10の厚みt3以上に調整する。それとともに、凹陥部22と隆起部42とを嵌合させ金属製の板材10を塑性変形させて該金属製の板材10の周縁部に仮屈曲部11を形成する工程を行う。
【0026】
次いで、図3に示すように、第2部材5によって第1部材4とダイ2との間隔t6を金属製の板材10の厚みt3以上に調整した状態で、制御部(不図示)から送られる操作信号に基づき、パンチ3を上方に作動させる。そして、凸部31を貫通口41及び凹部21に挿通して金属製の板材10をプレス成形する。このようにプレス成形するときには、先ず隆起部42に仮屈曲部11を係合させ、金属製の板材10における仮屈曲部11から外方部分12の凹部21側への移動を防ぎながらプレス成形する。第1部材4とダイ2との間隔t6が金属製の板材10の厚みt3以上に調整されている結果、金属製の板材10は、第1部材4とダイ2との間で挟持されていない状態となっている。しかし金属製の板材10は、仮屈曲部11によって隆起部42に係合されており、外方部分12の凹部21側への移動を防ぎながらプレス成形できる結果、金属製の板材10に皺が発生し難くなっている。
【0027】
その後、図4に示すように、第2部材5によって第1部材4とダイ2との間隔t6を金属製の板材10の厚みt3以上に調整した状態で、制御部(不図示)から送られる操作信号に基づき、パンチ3を更に上方に作動させる。凸部31を貫通口41及び凹部21に挿通して金属製の板材10をプレス成形するときに、凸部31によって凹陥部22よりも深くプレス成形する。このように深くプレス成形するときには、金属製の板材10の周縁部における仮屈曲部11を引き延ばしながら、第1部材4の隆起部42から内方に該周縁部を越えさせる。そして、ダイ2の凹部21内に金属製の板材10の周縁部を流入させつつプレス成形する工程を行う。凹部21内に金属製の板材10の周縁部を最大限流入させた状態においても、金属製の板材10の周縁部の端縁は、隆起部42と凹陥部22とが嵌合した部分内に位置していることが好ましい。深くプレス成形するときも、金属製の板材10は、第1部材4とダイ2との間で挟持されていない状態となっている。その為、金属製の板材10の周縁部をダイ2の凹部21内に流入させながらプレス成形でき、金属製の板材10に割れが発生し難くなっている。以上のとおり、成形金型1を用いた金属製の板材10のプレス成形方法によれば、金属製の板材10を成形するときに、金属製の板材10に割れが発生し難くなっており、しかも金属製の板材10に皺が発生し難くなっている。
【0028】
金属製の板材10の仮屈曲部11を引き延ばしながら、第1部材4の隆起部42から内方に金属製の板材10の周縁部を越えさせ易くする観点から、隆起部42における金属製の板材10に接触する角α4(図3参照)、言い換えれば、隆起部42に仮屈曲部11が係合する部分の角α4は、面取りされていることが好ましく、鈍角に面取りされていることが更に好ましく、又は角α4に丸みが付いていた方が更に好ましい。角α4が面取りされているとき、角α4は、0°より大きく180°より小さいことが好ましく、120°以上150°以下であることが更に好ましい。角α4に丸みが付いているとき、角α4の丸みを表す曲率半径Rは、0.1mm以上30mm以下であることが好ましく、3mm以上12mm以下であることが更に好ましい。隆起部42の角α4の曲率半径は、ダイ2における凹陥部22と外周部23との境界に位置する角α2(図3参照)の曲率半径以上であることが好ましく、角α2の曲率半径よりも大きいことが更に好ましい。角α2は、言い換えれば、隆起部42と凹陥部22とを嵌合させて金属製の板材10を挟んだ状態において、隆起部42の角α4に対向する、ダイ2の凹陥部22における角である。
【0029】
以上、本発明の成形金型及びそれを用いるプレス成形方法をその好ましい実施形態の成形金型1に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【0030】
例えば上述した本実施形態の成形金型1においては、図1に示すように、ダイ2及び第1部材4は、1つの隆起部42と、該隆起部42に嵌合する1つの凹陥部22とを有している。それに代えて、第1部材4が複数の隆起部42を有し、ダイ2が、これらの隆起部42それぞれに嵌合する複数の凹陥部22を有していてもよい。このようにダイ2及び第1部材4が、複数の隆起部42と複数の凹陥部22を有しているときには、隆起部42による間隔t1は、何れも同じであってもよく、異なっていてもよい。間隔t1が異なっているときには、金属製の板材10の皺を発生し難くする観点からは、ダイ2の凹部21側に向かって、漸次大きくなっていることが好ましい。また金属製の板材10の割れを発生し難くする観点からは、ダイ2の凹部21側に向かって、漸次小さくなっていることが好ましい。
【0031】
また上述した本実施形態の成形金型1においては、図1に示すように、第1部材4の隆起部42は、貫通口41から連続して該貫通口41から外方に形成されている。それに代えて、隆起部42は、貫通口41から間隔を空けた位置に、該貫通口41から外方に形成されていてもよい。同様に、ダイ2の凹陥部22は、凹部21から連続して該凹部21から外方に形成されている。それに代えて、凹陥部22は、凹部21から間隔を空けた位置に、該凹部21から外方に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 成形金型
2 ダイ
21 凹部
22 凹陥部
3 パンチ
31 凸部
4 第1部材
41 貫通口
42 隆起部
5 第2部材
10 金属製の板材
11 仮屈曲部
12 外方部分
図1
図2
図3
図4