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  • 特許-刻印装置及び刻印を有する部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】刻印装置及び刻印を有する部材
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/02 20060101AFI20230207BHJP
   B29C 33/00 20060101ALI20230207BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
B21J5/02 B
B29C33/00
B21D22/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019209645
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021079414
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青木 倫史
(72)【発明者】
【氏名】高木 佳範
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-141366(JP,A)
【文献】特開2001-096334(JP,A)
【文献】実公平7-23063(JP,Y2)
【文献】特公平7-41351(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/02
B29C 33/00
B21J 5/02
B21H 7/00
B41K 3/36
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形凸部と、前記成形凸部により全周を囲まれることによって形成された成形凹部と、を有する刻印部を備え、前記刻印部を部材の表面に押圧することによって前記表面に刻印をする刻印装置であって、
前記成形凸部における前記成形凹部を囲む部分には、当該部分の周方向と交差して延びるとともに当該部分の内周側と外周側とを連通する溝部が設けられており、
前記溝部の底面は、前記成形凹部の底面よりも突出している、
刻印装置。
【請求項2】
前記成形凸部における前記成形凹部を囲む部分には、複数の前記溝部が設けられている、
請求項1に記載の刻印装置。
【請求項3】
表面に刻印を有する部材であって、
前記刻印は、前記刻印を構成する凹部により全周を囲まれることによって形成された凸部を有しており、
前記凹部における前記凸部を囲む部分には、前記凹部の底面から突出するとともに当該部分の周方向と交差して延びて前記凹部の内周面と前記凸部の外周面とを連結する連結部が設けられており、
前記連結部の頂面は、前記凸部の頂面に対して凹んでいる、
刻印を有する部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刻印装置及び刻印を有する部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属やプラスチック等の部材に文字やマークを刻印する刻印装置が開示されている。この刻印装置は、刻印部とプレス部とを備えている。刻印部には、刻印を形成する凸部が設けられている。上記凸部がプレス部によって部材上の被刻印部に押圧されることで、被刻印部の表面に刻印を構成する凹部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-16665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした従来の刻印装置においては、刻印部の摩耗を抑制するなどの目的から、刻印部の表面に潤滑油が供給される。そのため、アラビア数字の「0」や「6」のような閉じた形状を有する文字などを刻印する際には、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、図9に示すように、部材の表面110に刻印部100を押圧する際に、刻印部100の凸部101及び凸部101によって囲まれた底面102と、表面110との間に閉鎖空間Aが形成される。この場合、潤滑油が閉鎖空間Aから排出されなくなるために、表面110のうち凸部101によって囲まれた部分111が当該潤滑油によって押圧されて潰れることとなる。その結果、図10及び図11に示すように、刻印が不明瞭になるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、刻印潰れを抑制できる刻印装置及び刻印を有する部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための刻印装置は、成形凸部と、前記成形凸部により全周を囲まれることによって形成された成形凹部と、を有する刻印部を備え、前記刻印部を部材の表面に押圧することによって前記表面に刻印をする。前記成形凸部における前記成形凹部を囲む部分には、当該部分の周方向と交差して延びるとともに当該部分の内周側と外周側とを連通する溝部が設けられており、前記溝部の底面は、前記成形凹部の底面よりも突出している。
【0007】
同構成によれば、刻印部を部材の表面に押圧することによって同表面に刻印をする際、成形凸部に設けられた溝部によって、成形凸部における成形凹部を囲む部分の内周側と外周側とが連通される。このため、刻印部の表面に存在する潤滑油は、上記溝部を通じて成形凸部の外側へ排出される。これにより、部材の表面のうち成形凹部に対向する部分が潤滑油により押圧されることを抑制できる。したがって、刻印潰れを抑制することができる。
【0008】
上記刻印装置において、前記成形凸部における前記成形凹部を囲む部分には、複数の前記溝部が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、溝部を通じた潤滑油の排出を一層促進することができる。したがって、刻印潰れを一層抑制することができる。
【0009】
上記目的を達成するための刻印を有する部材は、表面に刻印を有する部材であって、前記刻印は、前記刻印を構成する凹部により全周を囲まれることによって形成された凸部を有している。前記凹部における前記凸部を囲む部分には、前記凹部の底面から突出するとともに当該部分の周方向と交差して延びて前記凹部の内周面と前記凸部の外周面とを連結する連結部が設けられている。前記連結部の頂面は、前記凸部の頂面に対して凹んでいる。
【0010】
同構成によれば、上記刻印装置の作用効果と同様な作用効果を奏することができる。
また、上記構成によれば、連結部の頂面は、凸部の頂面に対して凹んでいるため、平面視において連結部が視認されにくい。したがって、連結部を設けることによって刻印の識別性が低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、刻印潰れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】刻印を有する部材の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態の刻印を示す平面図。
図3図2の3-3線に沿った断面図。
図4】同実施形態の刻印装置の刻印部を示す斜視図。
図5】同実施形態の刻印装置の刻印部を示す平面図。
図6図5の6-6線に沿った断面図。
図7】同実施形態の刻印装置について、刻印部の成形凸部を部材の表面に押圧する前の状態を示す断面図。
図8】同実施形態の刻印装置について、刻印部の成形凸部を部材の表面に押圧した状態を示す断面図。
図9】従来の刻印装置について、刻印部の成形凸部を部材の表面に押圧した状態を示す断面図。
図10】従来の刻印装置によって形成された刻印を示す平面図。
図11図10の11-11線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図8を参照して、一実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、アルミニウム等の金属製の部材10の表面11には、アラビア数字の「6」の形状の刻印12が形成されている。刻印12は、刻印12を構成する凹部20と、凹部20により全周を囲まれることによって形成された1つの凸部30とを有している。
【0014】
なお、以降において、平面視において刻印12を「6」と識別できる方向から見たときの右側及び左側を、それぞれ単に「右側」及び「左側」として説明する。
図3に示すように、凹部20は、「6」の形状に沿って延在する底面21及び底面21の端縁から立ち上がる内側面22を有しており、断面すり鉢状である。
【0015】
図1図3に示すように、凸部30は円錐台状であり、円形状の頂面31及び頂面31と凹部20の底面21との間に位置する外周面32を有している。外周面32は、凹部20における凸部30を囲む部分(以下、囲繞部20a)の内周側の内側面22aでもある。囲繞部20aの外周側の内側面22aが、本発明に係る凹部20の内周面である。
【0016】
囲繞部20aには、凹部20の底面21から突出するとともに囲繞部20aの周方向と交差して延びて凹部20の内側面22と凸部30の外周面32とを連結する連結部40が設けられている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態では、連結部40は、凸部30の右側に1つ設けられており、左右方向に延びている。
図3に示すように、連結部40の頂面41は、凸部30の頂面31に対して凹んでいる。
【0018】
次に、刻印12を形成する刻印装置50の構成について説明する。
図4図6に示すように、刻印装置50は、刻印部60を有している。
刻印部60は、凹部20を成形する成形凸部70と、成形凸部70により全周を囲まれることによって形成され、凸部30を成形する成形凹部80とを有している。
【0019】
成形凸部70は、断面円錐台状である。
成形凹部80は、すり鉢状である。
刻印部60は、平面視においてアラビア数字の「6」を反転させた形状であり、1つの成形凹部80を有している。
【0020】
成形凸部70における成形凹部80を囲む部分(以下、囲繞部70a)には、連結部40を成形する溝部90が設けられている。
溝部90は、囲繞部70aの周方向と交差して延びるとともに囲繞部70aの内周側と外周側とを連通する。
【0021】
図6に示すように、溝部90の底面91は、成形凹部80の底面81よりも突出している。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0022】
図7及び図8に示すように、プレス部(図示略)によって刻印部60を部材10の表面11に押圧することによって表面11に刻印をする際、成形凸部70に設けられた溝部90によって、囲繞部70aの内周側と外周側とが連通される。このため、刻印部60の表面に存在する潤滑油Bは、上記溝部90を通じて成形凸部70の外側へ排出される。
【0023】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)囲繞部70aには、囲繞部70aの周方向と交差して延びるとともに囲繞部70aの内周側と外周側とを連通する溝部90が設けられている。溝部90の底面91は、成形凹部80の底面81よりも突出している。
【0024】
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、部材10の表面11のうち成形凹部80に対向する部分が潤滑油により押圧されることを抑制できる。したがって、刻印潰れを抑制することができる。
【0025】
(2)囲繞部20aには、凹部20の底面21から突出するとともに囲繞部20aの周方向と交差して延びて凹部20の内側面22と凸部30の外周面32とを連結する連結部40が設けられている。連結部40の頂面41は、凸部30の頂面31に対して凹んでいる。
【0026】
こうした構成によれば、上記刻印装置50の作用効果と同様な作用効果を奏することができる。
また、上記構成によれば、図2に示すように、連結部40の頂面41は、凸部30の頂面31に対して凹んでいるため、平面視において連結部40が視認されにくい。したがって、連結部40を設けることによって刻印12の識別性が低下することを抑制できる。
【0027】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0028】
・本実施形態では、閉じた形状を有する文字や記号の一例としてアラビア数字の「6」を例示したが、閉じた形状を有する文字や記号はアラビア数字の「6」に限定されない。例えば、「0」、「4」、「9」などのその他のアラビア数字や、「A」、「D」、「P」、「a」、「b」、「e」などの英字、その他の文字や記号に対して本発明を適用してもよい。
【0029】
・本実施形態では、閉じた形状を1つ有するアラビア数字の「6」に対して本発明を適用したが、本発明は閉じた形状の数が1つの文字や記号に限定されない。すなわち、刻印12の囲繞部20a及び刻印部60の囲繞部70aの数は、1つに限定されない。例えば、アラビア数字の「8」や、英字の「B」など閉じた形状を複数有する文字や記号に対して本発明を適用することもできる。この場合、複数の囲繞部70aの各々に溝部90を設けることが好ましい。すなわち、複数の囲繞部20aの各々に連結部40を設けることが好ましい。
【0030】
図5に示すように、溝部90の位置は、囲繞部70aの左側に限定されず、囲繞部70aの右側や下側など適宜変更することができる。
・1つの囲繞部70aに対して、複数の溝部90が設けられていてもよい。例えば、図5に示すように、囲繞部70aの左側に設けられた溝部90に加えて、右側にも溝部90を設けることもできる。
【0031】
こうした構成によれば、溝部90を通じた潤滑油Bの排出を一層促進することができる。したがって、刻印潰れを一層抑制することができる。
・本発明に係る刻印装置50は、金属製の部材10に刻印するものに限定されず、樹脂製の部材に対して適用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10…部材、11…表面、12…刻印、20…凹部、20a…囲繞部、21…底面、22…内側面、22a…内側面、30…凸部、31…頂面、32…外周面、40…連結部、41…頂面、50…刻印装置、60…刻印部、70…成形凸部、70a…囲繞部、80…成形凹部、81…底面、90…溝部、91…底面、100…刻印部、101…凸部、102…底面、110…表面、111…部分、A…閉鎖空間、B…潤滑油。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11