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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】法面構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
E02D17/20 104C
E02D17/20 104B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020197086
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085413
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391007747
【氏名又は名称】株式会社興和
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】栗原 章
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-105528(JP,A)
【文献】特開2001-311381(JP,A)
【文献】特開2001-172981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に設けられ、縦部と横部とを含む格子状の法枠と、この法枠の前記縦部と前記横部との交差部に配設される補強部材とを含む法面構造物の施工方法であって、
前記法面に前記法枠を形成する法枠形成工程と、
垂直方向に所定間隔をおいて複数段に設けられる前記横部の段毎に、当該横部に沿うように延びる一本のレール体からなる横レールを敷設する横レール敷設工程と、
削孔装置を前記横レール上を移動させて前記横部の各交差部に設けられた挿通孔を通じて前記法面に順次配設孔を削孔する削孔工程と、
前記挿通孔および前記配設孔に前記補強部材を配設する補強部材配設工程と、
前記横レールから離れた位置に一本のレール体からなる待機レールを設ける待機レール敷設工程と、
前記待機レールと前記削孔装置を有する一の前記横レールとを連結する第一連結工程と、
前記削孔装置を前記一の横レールから前記待機レールに移動させる段移動準備工程と、
前記削孔装置を有する前記待機レールと他の前記横レールとを連結する第二連結工程と、
前記待機レールから前記他の横レールに前記削孔装置を移動させる段移動工程とを含むことを特徴とする法面構造物の施工方法。
【請求項2】
請求項1記載の法面構造物の施工方法において、一の段における前記削孔工程後、他の段における削孔工程前に、前記一の段の横レールを撤去する横レール撤去工程を含むことを特徴とする法面構造物の施工方法。
【請求項3】
請求項2記載の法面構造物の施工方法において、前記横レール撤去工程において、前記横レール上を移動可能な台車を用いて撤去対象物の運搬を行うことを特徴とする法面構造物の施工方法。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記他の横レールは、前記一の横レールの一段下の横レールであることを特徴とする法面構造物の施工方法。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記横レール敷設工程において、前記横レールは当該段の前記横部より垂直方向下方位置に敷設することを特徴とする法面構造物の施工方法。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記横レール敷設工程は、当該段の前記横部より一段下の前記横部上面に当接する第一の支持材と、当該段の前記横部より二段下の前記横部の上面に当接する第二の支持材とで支持する工程を含むことを特徴とする法面構造物の施工方法。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記横レールは前記横部と対向する対向領域に設けられ、この対向領域の外側の前記横部と対向しない非対向領域に、前記待機レールを設けることを特徴とする法面構造物の施工方法。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記削孔装置は、前記横レール上を走行する台車に旋回可能に設けられているものであることを特徴とする法面構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面構造物の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、法面を安定化させるための工法として、法面にモルタル製若しくはコンクリート製の法枠を設けた後、法枠の交差部に補強部材(ロックボルト若しくはグラウンドアンカー)を配設する工法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記工法においては、補強部材を法面に所定の深さまで埋め込むため、削孔装置を用いて法面を削孔する必要がある。
【0004】
削孔装置は削孔深さや現場条件に応じて、手持ち式、クレーン式、据置式など種々のものが使用される。
【0005】
ところで、据置式の削孔装置は、一般的には、単管パイプを用いて組まれた足場上に架設される水平な作業床上に設置されて使用されている。
【0006】
しかしながら、上記足場の構築作業および撤去作業は厄介であり、施工期間も長くなる。また、近年では鳶工(足場作業員)の減少が顕著で作業員の確保が難しくなりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-172981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、据置式の削孔装置を用いる場合でも、足場を用いずに簡単に且つ短期間で削孔作業を行える法面構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
法面1に設けられ、縦部2と横部3とを含む格子状の法枠4と、この法枠4の前記縦部2と前記横部3との交差部5に配設される補強部材6とを含む法面構造物の施工方法であって、
前記法面1に前記法枠4を形成する法枠形成工程と、
垂直方向に所定間隔をおいて複数段に設けられる前記横部3の段毎に、当該横部3に沿うように延びる一本のレール体からなる横レール7を敷設する横レール敷設工程と、
削孔装置8を前記横レール7上を移動させて前記横部3の各交差部5に設けられた挿通孔9を通じて前記法面1に順次配設孔10を削孔する削孔工程と、
前記挿通孔9および前記配設孔10に前記補強部材6を配設する補強部材配設工程と、
前記横レール7から離れた位置に一本のレール体からなる待機レール19を設ける待機レール敷設工程と、
前記待機レール19と前記削孔装置8を有する一の前記横レール7とを連結する第一連結工程と、
前記削孔装置8を前記一の横レール7から前記待機レール19に移動させる段移動準備工程と、
前記削孔装置8を有する前記待機レール19と他の前記横レール7とを連結する第二連結工程と、
前記待機レール19から前記他の横レール7に前記削孔装置8を移動させる段移動工程とを含むことを特徴とする法面構造物の施工方法に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載の法面構造物の施工方法において、一の段における前記削孔工程後、他の段における削孔工程前に、前記一の段の横レール7を撤去する横レール撤去工程を含むことを特徴とする法面構造物の施工方法に係るものである。
【0012】
また、請求項2記載の法面構造物の施工方法において、前記横レール撤去工程において、前記横レール7上を移動可能な台車16を用いて撤去対象物の運搬を行うことを特徴とする法面構造物の施工方法に係るものである。
【0013】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記他の横レール7は、前記一の横レール7の一段下の横レール7であることを特徴とする法面構造物の施工方法に係るものである。
【0014】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記横レール敷設工程において、前記横レール7は当該段の前記横部3より垂直方向下方位置に敷設することを特徴とする法面構造物の施工方法に係るものである。
【0015】
また、請求項1~5いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記横レール敷設工程は、当該段の前記横部3より一段下の前記横部3の上面に当接する第一の支持材11と、当該段の前記横部3より二段下の前記横部3の上面に当接する第二の支持材12とで支持する工程を含むことを特徴とする法面構造物の施工方法に係るものである。
【0016】
また、請求項1~6いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記横レール7は前記横部3と対向する対向領域に設けられ、この対向領域の外側の前記横部3と対向しない非対向領域に、前記待機レール19を設けることを特徴とする法面構造物の施工方法に係るものである。
【0017】
また、請求項1~7いずれか1項に記載の法面構造物の施工方法において、前記削孔装置8は、前記横レール7上を走行する台車16に旋回可能に設けられているものであることを特徴とする法面構造物の施工方法に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のようにするから、据置式の削孔装置を用いる場合でも、足場を用いずに簡単に且つ短期間で削孔作業を行える法面構造物の施工方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施例の概略説明斜視図である。
図2】本実施例の工程概略説明図である。
図3】本実施例の工程概略説明図である。
図4】本実施例の工程概略説明図である。
図5】本実施例の工程概略説明図である。
図6】削孔工程の概略説明図である。
図7】削孔工程の概略説明図である。
図8】補強部材配設工程の概略説明図である。
図9】ローラー体の概略説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
法枠4の交差部5に補強部材6を配設するための配設孔10を設ける際、削孔装置8を横レール7に沿って移動させて、横部3の縦部2との交差部5位置で順次削孔を行う。当該横部3での削孔が終わったら、次の段の横部3に対応する横レール7に段替移動させて同様に削孔を行う。
【0022】
即ち、大掛かりな足場の構築を必要とせず、据置式の削孔装置8を積載可能な簡易な構造の横レール7を各段の横部3毎に敷設し、この削孔装置8を横レール7上で移動させるだけで、削孔作業を簡易且つ円滑に行えることになる。
【0023】
従って、本発明によれば、足場を用いずに、簡単に且つ短期間で削孔作業を行うことが可能となり、作業工数を削減して生産性を向上させることができる。
【実施例
【0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例は、法面1に設けられ、縦部2と横部3とを含む格子状の法枠4と、この法枠4の前記縦部2と前記横部3との交差部5に配設される補強部材6(緊張材)としてのロックボルトとを含む法面構造物の施工方法(所謂ロックボルト工法)である。
【0026】
本実施例は、前記法面1に前記法枠4を形成する法枠形成工程と、垂直方向に所定間隔をおいて複数段に設けられる前記横部3の段毎に、当該横部3に沿うように延びる横レール7を敷設する横レール敷設工程と、削孔装置8を前記横レール7上を移動させて前記横部3の各交差部5に設けられた挿通孔9を通じて前記法面1に順次配設孔10を削孔する削孔工程と、前記挿通孔9および前記配設孔10に前記補強部材6を挿通配設する補強部材配設工程と、前記削孔工程が完了した一の段の横レール7から、前記削孔工程が行われていない他の段の横レール7に前記削孔装置8を段替移動させる段替工程と、一の段における前記削孔工程後、他の段における削孔工程前に、前記一の段の横レール7を撤去する横レール撤去工程とを含む。
【0027】
概略的には、図1図6および図7に図示したような横レール7と横レール7上を移動する削孔装置8とを用いて、図2~5に図示したように、各段の横部3の交差部5において順次削孔作業を行い、削孔した配設孔10に補強部材6を配設することで、法枠4の交差部5に補強部材6を配設した法面構造物を法面1に設けるものである。
【0028】
横レール7は、一本のレール体(モノレール)であり、所定間隔で配設されるレール支持体により支持されている。
【0029】
レール支持体は、横レール7が沿うことになる段(この横レール7上を移動する削孔装置8により削孔が行われる段)の横部3より一段下の横部3の上面に当接する第一の支持材11と、当該段の横部3より二段下の横部3の上面に当接する第二の支持材12と、第一の支持材11と第二の支持材12とを連結する連結杆13と、連結杆13の中央部に立設され横レール7を支持する支持柱14とを有するものである。各レール支持体の支持柱14で横レール7の下部(下面)を所定間隔で支持させることで、横レール7を所定の高さで略水平に敷設することができる。
【0030】
削孔装置8としては、既存の削孔機を採用できる。
【0031】
本実施例では、図6,7に図示したように、削孔部20A(ロータリーパーカッションドリル構造)と、この削孔部20Aを傾斜回動自在に支持する支持部20Bと、この削孔部20Aおよび支持部20Bを操作する図示省略の操作部とで構成されたロータリーパーカッション式削孔機を採用している。
【0032】
削孔部20Aは、スライドベース22と、このスライドベース22の上面に前後方向にスライド自在に設けられ前端部に掘削ロッド体21を保持するロッド保持部23とで構成されている。
【0033】
また、ロッド保持部23で保持された掘削ロッド体21はスライドベース22と平行となるように構成されている。また、ロッド保持部23は、掘削ロッド体21を保持した状態で前後方向へ移動させる機能の他、掘削ロッド体21を軸回転させる機能及び掘削ロッド体21を打撃する機能を備えている。
【0034】
従って、スライドベース22に対してロッド保持部23を前方へスライドさせることで、掘削ロッド体21をスライドベース22と平行状態で法面1に挿入して掘削することができる。
【0035】
なお、掘削ロッド体21は、外管ロッドと該外管ロッドの内側に配される図示省略の内管ロッドとからなり、この外管ロッドおよび内管ロッドはいずれも複数本に分割可能な構造であり、最先端の外管ロッドおよび内管ロッド夫々の先端には掘削刃が設けられている。
【0036】
また、削孔装置8が設けられる台車の四隅近傍位置には、削孔時の姿勢を安定させる(横レール7からの脱落を防止する)ための支持材24,25(単管パイプ)を取り付けるためのクランプ部26(単管クランプ)が設けられている。削孔作業時には、台車16の法面側の2か所のクランプ部26には一段下の横部3の上面と当接する短い支持材24が取付けられ、反対側の2か所のクランプ部26には二段下の横部3の上面と当接する長い支持材25が取付けられる。また、支持部20Bには、削孔時に縦部2を挟持する挟持部27が連結されている。この挟持部27によっても削孔時の削孔装置8の姿勢が安定し横レール7からの脱落が防止される。
【0037】
また、削孔装置8は、横レール7上を走行する台車16に旋回可能に設けられる。削孔装置8を設ける台車16の上面(荷台)には、台車16に対して水平方向に360°旋回可能な旋回台17が設けられており、この旋回台17上に削孔装置8が固定される。
【0038】
従って、例えば、削孔位置までの移動させる際には、削孔装置8の削孔部20Aがレールに沿うようにした状態で移動させ、削孔位置では削孔部20Aの削孔先端が法面側を向くように90°旋回させることができ、削孔位置までの移動時に削孔先端を法枠4に接触させ難い構成となる。
【0039】
以上の横レール7および削孔装置8を用いて行われる各工程について以下具体的に説明する。
【0040】
法枠形成工程は、公知の吹き付け工法により行われる。例えば、法枠施工位置に法枠型枠などを組み立てると共に鉄筋を配し、続いて、法枠型枠内の挿通孔9(配設孔10の形成位置。補強部材6の配設位置)以外の部位にモルタル(若しくはコンクリート)を吹き付け、その後、法枠型枠を外す。これにより、(補強部材6を配設する必要がある)交差部5に表裏に貫通する挿通孔9が形成された法枠4が形成される。
【0041】
法枠形成工程の後、横レール敷設工程を行う。横レール敷設工程は、横レール7としての例えば産業用モノレールを敷設する工程である。
【0042】
横レール敷設工程において、前記横レール7は当該段の前記横部3より垂直方向下方位置に敷設する。即ち、横レール7上を該横レール7に沿って移動する削孔装置8の高さ(支持部20Bの高さ)を考慮して削孔部20Aにより配設孔10を削孔し得るように各段に敷設する横レール7の高さを設定する。
【0043】
横レール敷設工程は、レール支持体を横部3の長手方向に沿って所定間隔をおいて配置し、このレール支持体上に横レール7を載置して支持させることで行う。横レール7は所定の長さで適宜分割されたものを用いる。なお、各横部3の上面は夫々、略水平面となるように形成され、各支持材11,12は安定的に設置される。
【0044】
図2~5に図示したように、前記横レール7は少なくとも前記横部3と対向する対向領域に設けられる。この対向領域の外側の前記横部3と対向しない非対向領域には、待機レール19と、この待機レール19といずれかの横レール7とを連結する連結部15とが設けられる。この待機レール19と連結部15とを設けるのは、段替工程の前であればいつでも良いが、本実施例では、横レール敷設工程と同時期に行う。
【0045】
横レール7を敷設した後、削孔装置8を、削孔作業を行う段の横レール7上に設ける。
【0046】
横レール7上には、削孔装置8を設けた台車16以外にも、エンジンを搭載した牽引車18や荷物台車・乗用台車を設け、牽引車18により各台車16を牽引するようにしても良い。例えば、150kg程度の削孔装置8を用いる場合には、500kg程度の積載能力を有する牽引車を用いる。
【0047】
具体的には、図9に図示したように、牽引車18および各台車16は、横レール7を上下から挟持するローラー体31,32が設けられたローラー支持部35を下部に有している。レール下側のローラー体31には、レール下面に所定間隔で設けられた凹部33に係合する凸部34がその外周に所定間隔で設けられ、このローラー体31,32により滑らずにレール上を移動できるように構成されている。本実施例では、ローラー体31,32は各ローラー支持部35に2つずつ設けられており、下側のローラー体31のうちの1つ(後方側)のローラー体31に凸部34が設けられている。図中、符号37は手すりである。
【0048】
本実施例では、削孔工程の前に、地山の裾部分(法面1の下端部近傍)に設置された待機レール19上に牽引車18と各台車16を設置し、この待機レール19から、牽引車18および削孔装置8を設けた台車16を、待機レール19と最初に削孔作業を行う最上段の横レール7とを連結する連結部15を介して最上段の横レール7まで移動させる。
【0049】
削孔工程は、掘削作業を行う段の横レール7上の削孔装置8を、削孔対象となる(必要な配設孔10が設けられていない)交差部5に対応する位置まで横レール7に沿って水平移動させ、この削孔装置8により挿通孔9を通じて地山の法面1に配設孔10を形成することを、削孔対象となる交差部5がなくなるまで繰り返す工程である。
【0050】
具体的には、削孔対象となる交差部5に対応する位置に配された削孔装置8を操作し、スライドベース22に対してロッド保持部23をスライドさせることで、掘削ロッド体21を交差部5の挿通孔9を介して法面1に挿入して掘削する。詳細には、ロッド保持部23により一の掘削ロッド体21を軸回転させつつ前方へスライド及び打撃することで所定の深さまで掘削し、次に、この一の掘削ロッド体21に他の掘削ロッド体21を連結し、ロッド保持部23により複数連結された掘削ロッド体21を軸回転させつつ前方へスライド及び打撃することで所定の深さまで掘削し、以降、削孔長に応じた本数の掘削ロッド体21を連結しながら同様の作業を繰り返すことで一つの配設孔10が形成される(図7参照)。図中、符号30は当て板である。
【0051】
一の配設孔10を形成した後、順次横レール7に沿って削孔装置8を移動させて次の削孔対象となる交差部5において同様に配設孔10の形成を行う。本実施例では、最も連結部15に近い交差部5から削孔を開始し、隣の交差部5に順次移動して削孔を行い、最後の交差部5での削孔を終えたら、待機レール19に戻るように削孔装置8を移動させる。
【0052】
補強部材配設工程は、挿通孔9および前記配設孔10に補強部材6を挿通配設する工程である。
【0053】
具体的には、図8に図示したように、補強部材6(ロックボルト)を、挿通孔9を挿通させて配設孔10内に挿入すると共に配設孔10にグラウト材36を注入し、配設孔10から突出する補強部材6の基端部に挿通孔9の径より大きい受圧板28を付設し、この受圧板28を交差部5に押し付けるようにナット29で固定することで配設する。
【0054】
補強部材配設工程は、配設孔10を形成した後であれば、いつ行っても良い。本実施例では、配設孔10を形成する都度、順次補強部材を配設する。
【0055】
所定の段において必要な交差部5の法面1への削孔が全て終了したら、削孔装置8を当該段の横レール7から異なる段の横レール7に移動させる段替工程を行う。
【0056】
段替工程は、削孔装置8を一の横レール7から連結部15を介して待機レール19に移動させた後、連結部15の連結先を切り替えて待機レール19からこの連結部15を介して他の横レール7に移動させる工程を含む。
【0057】
具体的には、所定の段における掘削工程終了後の削孔装置8を現在の段の横レール7上を移動させ、連結部15を介して待機レール19に移動させ、連結部15の連結先を一段下の横レール7に連結するように切り換え、削孔装置8を待機レール19から連結先変更後の連結部15を介して一段下の横レール7上に配置させる。
【0058】
本実施例では、図2~5に図示したように、連結部15を、曲線レール38と直線レール39,40とを適宜組み合わせることで、連結先を変更可能に構成している。
【0059】
横レール撤去工程は、一の段における削孔工程後、他の段における削孔工程前に、前記一の段の横レール7を撤去する工程である。即ち、削孔工程を行う段(上から二段目以降)の一段上の横レール7を撤去した状態で、削孔工程が行われるようにする。これにより、削孔部材8の横レール7に沿った水平移動が阻害され難くなる。
【0060】
横レール撤去工程においては、撤去対象となる横レール7上を移動する台車16を用いて撤去対象物の運搬を行う。即ち、削孔工程終了後、牽引車18および各台車16を待機レール19側に移動しつつ、台車16に既に削孔工程に利用した横レール7(およびレール支持体)を順次回収していくことで、横レール7等の回収を効率的に行える。
【0061】
以上の削孔工程、補強部材配設工程、段替工程および横レール撤去工程を、各段について繰り返して必要となる全ての交差部5に補強部材6としてのロックボルトを配設することで、交差部5にロックボルトが配設された法枠4を法面1に設けることができる。
【0062】
例えば、図2~5に図示したように四段の横部3を有する法枠4の上から三段目までの各交差部5にロックボルトを配設する場合には、法枠形成工程および横レール敷設工程後、一番上の段(一段目)の横部3の交差部5への削孔工程を行うと共に、順次補強部材配設工程を行い(図2)、一段目における削孔工程後、横レール撤去工程と共に段替工程を行い(図3)、二段目の横部3の交差部5への削孔工程を行うと共に、順次補強部材配設工程を行い(図4)、二段目における削孔工程後、横レール撤去工程と共に段替工程を行い、同様に三段目の横部3の交差部5への削孔工程・補強部材配設工程を行うことで(図5)、必要な交差部5にロックボルトが配設された法枠4が法面1に設けられる。
【0063】
また、以上のようにしてロックボルトが配設された法枠4の開口部には、適宜植生用基材等の中詰材を設け、緑化や浸食防止を図ることができる。
【0064】
本実施例は上述のようにするから、法枠4の交差部5に補強部材6を配設するための配設孔10を設ける際、削孔装置8を横レール7に沿って移動させて、横部3の縦部2との交差部5位置で順次削孔を行うことができる。
【0065】
即ち、大掛かりな足場の構築を必要とせず、据置式の削孔装置8を積載可能な簡易な構造の横レール7を各段の横部3毎に敷設し、この削孔装置8を横レール7上で移動させるだけで、削孔作業を簡易且つ円滑に行えることになる(削孔装置8の移動を迅速に行うことができる。)。
【0066】
従って、本実施例は、足場を用いずに、簡単に且つ短期間で削孔作業を行うことが可能となり、作業工数および使用材料を大幅に削減して生産性を向上させることが可能な法面構造物の施工方法となる。
【符号の説明】
【0067】
1 法面
2 縦部
3 横部
4 法枠
5 交差部
6 補強部材
7 横レール
8 削孔装置
9 挿通孔
10 配設孔
11 第一の支持材
12 第二の支持材
16 台車
19 待機レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9