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特許7221545ホスファチジルセリン標的化融合分子およびそれらの使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】ホスファチジルセリン標的化融合分子およびそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20230207BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20230207BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230207BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230207BHJP
   C12N 15/20 20060101ALN20230207BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/52 ZNA
C07K16/28
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/19
C12N15/13
C12N15/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020503808
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018043357
(87)【国際公開番号】W WO2019023156
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】62/536,107
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510144959
【氏名又は名称】ラトガース,ザ ステート ユニバーシティ オブ ニュー ジャージー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】コテンコ,セルゲィ,ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】バージ,レイモンド,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ダブラ,バイラルクマール,ラメシュクマール
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500796(JP,A)
【文献】特表2003-535908(JP,A)
【文献】特表2016-516037(JP,A)
【文献】Huang X. et al.,Inhibition of tumor growth by targeting cytokines to the inside-out phosphatidylserine (PS) on tumor vascular endothelium with 2aG4.,Cancer Research,2007年,vol. 67, no. 9_Supplement,Abstract No. 3539
【文献】Lew E. D. et al.,Differential TAM receptor-ligand-phospholipid interactions delimit differential TAM bioactivities.,eLIFE,2014年,vol. 3, e03385,1-23
【文献】Mol Can Res(2017.06)Vol.15, No.6, pp.753-764
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12M 1/00-3/10
C12Q
G01N
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合分子であって、
インターフェロンまたはその免疫刺激性部分と、
成長停止特異的遺伝子6(GAS6)のN末端γ-カルボキシル化ホスファチジルセリン(PS)結合Glaドメインを含むポリペプチドであって、融合分子を細胞表面のPSに対して標的化し、ならびにインターフェロンまたはその免疫刺激性部分によるインターフェロン受容体活性化を増大および維持することにより、表出されるPS濃度依存的に、PS誘導性の免疫抑制から免疫刺激へ、免疫バランスを能動的に変化させる、前記ポリペプチド
を含む、前記融合分子。
【請求項2】
ポリペプチドが、PSとの結合においてPS結合ドメインのオリゴマー化を促進するドメインをさらに含む、請求項に記載の融合分子。
【請求項3】
表皮増殖因子(EGF)様ドメインをさらに含む、請求項に記載の融合分子。
【請求項4】
ンターフェロンが、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-λ1、インターフェロン-λ2、インターフェロン-λ3、またはそれらの組み合わせもしくは一部から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合分子。
【請求項5】
インターフェロンまたはその免疫刺激性部分と、PSに対して融合分子を標的化するポリペプチドとの間にリンカーをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の融合分子。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の融合分子および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
対象の病変部位に対してインターフェロンまたはその免疫刺激性部分を標的化するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
病変部位が、PSリッチ領域である、および/または、癌、感染または炎症を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
対象の病変部位において、内因性PSリガンドおよび受容体によるPS認識から生じる免疫抑制が阻害されている;および/または
1種以上のインターフェロン特異的な生物学的活性が、病変部位において活性化されている;および/または
インターフェロンまたはその免疫刺激性部分の全身作用が最小化されている、
請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
インターフェロン処置に対して応答性である疾患、障害または症状を処置するための、請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
インターフェロン処置に対して応答性である疾患、障害または症状が、癌、感染または炎症性症状もしくは疾患である、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2017年7月24日に出願された米国仮出願番号62/536,107による優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、サイトカインとホスファチジルセリン(PS)に対して融合タンパク質を標的化するポリペプチドとを含む融合分子、これら融合分子を含む医薬組成物、ならびに、病変部位に対してサイトカインを標的化すること、およびサイトカイン処置に対して応答性である疾患または症状を処置することにおける、これら融合分子の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ホスファチジルセリン(PS)は、アポトーシス細胞、アポトーシスブレブ(bleb)、エクソソーム、ストレス腫瘍細胞および腫瘍血管系の表面において表出される(externalized)陰イオン性リン脂質であるが、腫瘍微小環境においては免疫抑制性の分子である(Birge et al. Cell Death and Differentiation 2016 23:962-978)。低酸素および他の代謝性ストレス、アポトーシス細胞の高いアポトーシス指標、ならびに、腫瘍由来エクソソームの放出による、腫瘍微小環境におけるPSの上方制御は、実質的に全ての固形癌で観察されている(He et al. Clin. Cancer Res. 2009 15: 6871-6880)。上方制御されたPSは、次に、腫瘍細胞上および浸潤性の骨髄由来食細胞上の、過剰発現したTyro3、AxlおよびMer(TAM)受容体と相互作用する。PS/PS受容体の会合は、集合的にPS依存性エフェロサイトーシスおよび、IL-10およびTGF-βなどの免疫抑制性サイトカインの産生を引き起こす。(Huynh et al. J. Clin. Invest. 2002 109:41-50; Rothlin et al. Cell 2007 131: 1124-1136)。
【0004】
腫瘍微小環境に加えて、PSはまた、感染細胞、特にウイルス感染細胞によっても表出される(Soares et al. Nat. Med. 2008 207:763-776; Dowall et al. J. Immunol. Res. 2015 347903)。さらに、様々な種のエンベロープウイルスは、その表面にPSを露出させ、それを用いて、免疫応答を抑制してウイルス抗原に対する寛容を促進させるだけでなく、ウイルスが細胞へ入るためのメカニズムとしてTAM受容体を利用する(Birge et al. Cell Death. Differ. 2016 23:962-978)。成長停止特異的遺伝子6(GAS6)およびタンパク質S(protein S)(Pros1)でオプソニン化されたウイルス粒子は、TAMと相互作用し、エフェロサイトーシスされ、エンドソーム中で脱殻され、細胞質に入ることが示されている。
【0005】
しかしながら、PSは、腫瘍微小環境においておよびエンベロープウイルスの表面で、構成的に上昇しているが、通常の生理学的条件下では、胸腺および脾臓などの細胞のターンオーバー速度が速い組織においてさえも、除去されていない(un-cleared)アポトーシス細胞はほとんど観察されない。それゆえに、PSは、正常組織においては検出されない(Gerber et al. Clin. Cancer Res. 2011 17:6888-6896)。
【0006】
したがって、PS標的化(PS-targeting)は、ストレス応答の一環としてPSが上方制御されている病変を有する部位への、治療剤の局所的送達のための可能な手段として開示されてきた。
【0007】
米国特許第6,211,142号は、内因性源(endogenous source)由来のgas6よりもγカルボキシル化が少ない、機能的に活性なgas6変異体を含む組成物、ならびに、これを含む製品であって、Rse受容体タンパク質チロシンキナーゼの活性化、および、神経細胞およびグリア細胞などのRse受容体を含む細胞の増殖、生存および/または分化の促進のための前記製品を開示している。
【0008】
カナダ特許発明第2909669号明細書は、例えば、AXL、MERまたはTyro3とそのリガンドGAS6との結合の相互作用(binding interaction)の阻害により、AXL、MERまたはTyro3タンパク質活性を阻害する医薬組成物の治療用量を投与することにより、哺乳類動物におけるウイルス感染を処置するための組成物および方法を開示している。また、1種以上のAXL、MERおよび/またはTyro3活性の阻害剤、GAS6活性の阻害剤、あるいはAXL、MERまたはTyro3-GAS6相互作用の阻害剤を投与することにより、哺乳類動物患者におけるホスファチジルセリンを宿す(phosphatidylserine harboring)ウイルス感染を処置、減少または抑制する方法も開示されている。
【0009】
日本国特許第5478285号は、ホスファチジルセリンに結合する複合体を用いた、腫瘍血管系の標的化を開示している。開示されている標的化剤には、腫瘍の血管内皮細胞を死滅させることで、腫瘍血管系における凝固を引き起こす、あるいは、腫瘍の血管系を破壊することにより腫瘍壊死および/または腫瘍退縮を引き起こす、抗ホスファチジルセリン抗体もしくはその抗原結合断片、アネキシン、またはホスファチジルセリン結合断片が含まれる。
【0010】
日本国特許第4743672号はまた、腫瘍の血管内皮細胞を死滅させる、腫瘍血管系における凝固を引き起こす、あるいは、腫瘍の脈管構造を破壊することにより腫瘍壊死およびまたは腫瘍退縮を引き起こす、癌の処置として、抗ホスファチジルセリン抗体を開示している。
【0011】
米国特許第6,312,694号は、腫瘍介入における使用のための、アミノリン脂質が標的とされた、診断および治療抗体-治療剤構造物を開示している。
【0012】
Kimani et al.(Scientific Reports 2017 7:43908)は、AxlのIg-1外部ドメインとGas6のLg-1との境界面におけるAxlの細胞外ドメインを標的とする低分子阻害剤を開示しており、これは、マウス異種移植NOD-SCIDγモデルにおいて、効果的に、Gas6誘導性Axl受容体活性化を遮断し、およびH1299肺癌腫瘍増殖を抑制する。
【0013】
前臨床試験もまた、PSに高親和性で結合するPS標的化抗体を、直接的に、あるいは血清タンパク質であるβ2-糖タンパク質1と複合させて、集団において行われてきた(DeRose et al. Immunotherapy 2011 3:933-944: Huang et al. Cancer Res. 2005 65:4408-4416)。これらの抗体は、腫瘍微小環境における内皮細胞を標的とすること(Ran et al. Cancer Res. 2002 62:6132-6140)、抗腫瘍活性を示すこと(de Freitas Balanco et al. Curr. Biol. 2001 11:1870-1873)、および、複数の前臨床腫瘍モデルにおいて標準的治療の活性を増強させること(Beck et al. Int. J. Cancer 2005 118:2639-2643; He et al. Clin. Cancer Res. 2009 15:6871-6880)、が示された。
【0014】
加えて、PS標的化抗体であるバビツキシマブは、複数の臨床試験において評価されてきた(Chalassani et al. Cancer Med. 2015 4:1051-1059; Digumarti et al. Lung Cancer 2014 86:231-236; and Gerber et al. Clin. Cancer Res. 2011 17:6888-6896)。しかしながら、PS標的化モノクローナル抗体(mAb)という保証を取り巻く高揚にもかかわらず、最新のPeregrine Pharmaceuticalsの第三相SUNRISE臨床試験は、ひどく落胆する結果をもたらし、2016年には新たな患者の募集をとりやめるという結果となった。さらなる研究では、固形腫瘍の処置に、抗PD-L1抗体と組み合わせてこの抗体の治療的有効性を評価し始めている(ワールドワイドウェブのglobenewswireに .com/news-release/2017/06/05/1008110/0/en/Peregrine-Pharmaceuticals-Presents-Preliminary-Correlative-Analysis-of-PD-L1-Expression-from-SUNRISE-Trial-at-ASCO-2017.htmlを付す、2017年6月5日)。
第二世代または次世代の免疫生物学的製剤として、より有効なPS標的化誘導体を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0015】
概要
本発明の側面は、サイトカインと、融合分子をホスファチジルセリン(PS)に対して標的化するポリペプチドとを含む、融合分子に関する。
一つの非限定的な態様において、融合分子のポリペプチドは、本明細書においてTAMリガンドとも称される、Tyro3、AxlおよびMer受容体のPS結合リガンドを含む。
【0016】
一つの非限定的な態様において、融合分子のポリペプチドは、成長停止特異的遺伝子6(growth arrest-specific gene 6)(GAS6)またはタンパク質S(protein S)(Pros1)のPS結合型ドメインを含む。
一つの非限定的な態様において、融合分子のサイトカインは、免疫刺激性サイトカインである。
別の非限定的な態様において、融合分子のサイトカインは、免疫抑制性サイトカインである。
【0017】
本発明の別の側面は、本発明の融合分子を含む医薬組成物に関する。
本発明の別の側面は、本発明の融合分子または本発明の融合分子を含む医薬組成物を投与することにより、対象の病変部位に対してサイトカインを標的化する方法に関する。
【0018】
本発明の別の側面は、本発明の融合分子または本発明の融合分子を含む医薬組成物を投与することにより、対象の病変部位において、内因性PSリガンドおよび受容体によるPS認識から生じる免疫抑制を阻害する方法に関する。
【0019】
本発明の別の側面は、本発明の融合分子または本発明の融合分子を含む医薬組成物を投与することにより、1種以上のサイトカイン特異的な生物学的活性を、病変部位において活性化する方法に関する。
本発明の別の側面は、サイトカインを、本発明の融合分子または本発明の融合分子を含む医薬組成物を介して投与することにより、サイトカインの全身作用を最小化する方法に関する。
【0020】
本発明のさらなる別の側面は、本発明の融合分子または本発明の融合分子を含む医薬組成物を投与することにより、サイトカイン処置に対して応答性である疾患、障害または症状を処置する方法に関する。
一つの非限定的な態様において、本発明により処置される疾患、障害または症状は、癌、感染または炎症性の症状もしくは障害である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の融合分子の種々の非限定的な態様の略図を提供する。特に、組み換えIFN融合分子ならびにPS結合GlaドメインおよびGas6のEGFリピートを含有する組み換えGas6-IFN融合分子の概略図が提供される。Gas6-IFN融合分子は、免疫抑制性シグナルを、宿主の抗腫瘍免疫を活性化させる免疫原性シグナルに方向転換させるように設計されている。リンカー配列および改変物は、本願中に定義されている。
【0022】
図2図2は、III型IFN(IFN-λ)およびI型IFN(IFN-α/β)受容体システムのモデルを描いている。IFN-λおよびI型IFNは、異なるヘテロ二量体受容体複合体(receptor complex)を用いる。IFN-λは、固有のIFN-λR1およびIL-10R2に会合する(engage)のに対し、IFN-αR1およびIFN-αR2は、活性I型IFN受容体複合体を形成する。IFN-αまたはIFN-λ受容体の会合は、受容体関連JAKキナーゼであるJAK1およびTyk2のリン酸化をもたらし、これに、DNA結合タンパク質IRF9と相互作用するSTAT1およびSTAT2のリン酸化が続き、IFN刺激遺伝子因子3(ISGF3)と呼ばれる転写複合体の形成をもたらし、これは、IFN刺激応答配列(IFN-stimulated response element)(ISRE)に結合してIFN刺激遺伝子(ISG)の転写を制御する。
【0023】
図3図3は、PS濃縮(PS-enriched)腫瘍微小環境またはウイルス感染部位における、本発明のGas6-IFN-βおよび/またはIFN-λ2融合分子について、提唱する免疫原性機能の略図を提供する。(そのGlaドメインおよびEGF様ドメインを介して)Gas6は、PSセンサーとして作用し、組織微小環境において表出されるPSの程度に対して応答すると提唱されている。Gas6は、表出されるPSの濃度に応答し、PS依存的に組織へサイトカインを局在化させるであろう。より低い、表出されるPS濃度では、IFN活性は、低い(自然の(native)サイトカイン活性)と予測されるが、(腫瘍微小環境における、もしくはウイルス感染細胞/組織における)より高い濃度では、IFN活性は増幅されると予測され、サイトカイン活性を増大させて、向上した抗腫瘍免疫および抗ウイルス応答を引き起こすであろう。図中の説明は、潜在的な標的細胞種、ならびに予測される表現型の結果を明らかにしている。例えば、腫瘍細胞においては、Gas6-IFNの標的化は、MHCクラスI抗原および共刺激分子(co-stimulatory molecule)の発現増加をもたらし、これは腫瘍抗原の発現/提示増加、血管新生抑制ケモカインの産生増加、免疫細胞の浸潤増加をもたらすと予測される。抗原提示細胞においては、Gas6-IFN融合分子は、MHCクラスIおよびMHCクラスII抗原の発現を増加させるのみならず、樹状細胞の成熟を増大させ、腫瘍抗原の交差提示を増加させると予測される。
【0024】
図4図4は、「第二世代」PS標的化生物学的製剤の原理を描いている。今までに、表出されるPSに結合して本質的にこれをマスクするPS標的化mAbが開発されている。本明細書において開発されたGas6-IFN融合分子は、IFNをPSリッチ(PS-rich)TMEに標的化することにより、免疫寛容原性シグナルを免疫原性シグナルに変換するように設計されている。さらに、Gas6を標的とするIFNは、PDL1を誘導するため、抗PD1/抗PDL1を用いた組み合わせ治療剤としての使用に極めてよく採用される。Gas6-IFN生物学的製剤の特性は、説明に示されている。
【0025】
図5図5(A)および(B)は、Hisタグが付されたGas-IFNタンパク質の作製、発現、および検出を示す。Gas6-IFN融合分子をクローニングし、(より大きな規模の産生のために)HEK293、E0771、およびExpi293細胞で発現させた。トランスフェクションの48時間後に回収されたHEK293T細胞上清における、細胞上清への組み換え融合分子の分泌を、抗His mAbを用いたイムノブロットにより分析し、予想分子量におけるHisタグタンパク質の存在を示す(上のパネル;(A))。抗Gla mAbによるイムノブロット(下のパネル;(B))は、γ-カルボキシル化特異的抗体によりプローブされており、γ-カルボキシル化を示す。述べるように、抗Gla特異的mAbを用いたところ、ビタミンKの存在下で細胞を増殖させた場合、全てのGas6融合分子(最後の4レーン)は、γ-カルボキシル化されている(PS結合の必要条件)。これらの結果は、タンパク質が、本願における特許請求の範囲の必要条件である、PS結合タンパク質として活性であること示している。
【0026】
図6図6は、組み換えIFN-λ2、あるいはGas6(Gla+EGF)-IFN-λ2融合分子をアポトーシス細胞ありもしくはなしで含有するHEK293T細胞上清で30分間処置した、IFN-λR-γR1レポーター細胞株の溶解物のイムノブロットによって、Stat1活性化(Stat1のTyrリン酸化、pStat1)の程度を検出することにより測定された、本発明のGas6-IFN-λ2融合分子の活性を示す。pStat1のイムノブロットは、特に高濃度のPSで、融合分子によるIFN-λ受容体の活性化の、PS結合依存的な増大を示した(1:1000-レポーター細胞/アポトーシス細胞(AC);レーン7および10の比較)。
【0027】
図7図7は、タンパク質の精製および検出用にペプチドを標識するリン酸化タグ(phosphotag)およびCLIPタグを含有するGas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2融合分子の概略図を提供する。Hisタグタンパク質に加えて、(32Pラベル用の)リン酸化タグおよび(蛍光標識タンパク質用の)CLIPタグを、I型およびIII型IFNを含有する融合分子に工学的に付加した。これら後者のタグは、in vivo標識、有用性、および局在化のために導入した。図の左側は、PSへのGla結合領域、EGFリピート、ならびに、TAM受容体に結合するがサイトカイン(単数または複数)により置換されているLGドメインを含む、Gas6のドメイン構造を繰り返し記載している。
【0028】
図8図8は、ワーファリン存在下で調製されたIFN-β-IFN-λ2タンパク質またはGas6-IFN-β-IFN-λ2タンパク質とは対照的に、Gas6-IFN-β-IFN-λ2タンパク質は、PS陽性アポトーシス細胞に結合してこれにより沈降することを示す。Gas6-IFN-β-IFN-λ2タンパク質は、γカルボキシル化に必要なビタミンK(vit K)の存在下、およびγカルボキシル化を阻害するワーファリン(War)の存在下において、HEK293細胞中で産生され、次いで、タンパク質はアポトーシス細胞(AC)と共にインキュベートされて、続いて、遠心(cent)によりアポトーシス細胞を沈降させた。アポトーシス細胞と共沈されたIFN活性の存在は、図6に記載された実験と同様のIFN-λR-γR1レポーター細胞株の溶解物のイムノブロットによって、Stat1活性化(pStat1)の程度を検出することにより測定した。レーン4、7、および10を比較すると、PS陽性アポトーシス細胞とともに共沈した場合には、ビタミンKと調製された、γカルボキシル化Gas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子のみが活性である。
【0029】
図9図9は、HisタグIFN-β-IFN-λ2およびHisタグGas6-IFN-β-IFN-λ2の部分精製および検出を示す。左側のパネルは、抗His mAbによるイムノブロッティングを示し、右側のパネルは、クマシーブルー染色およびタンパク質純度のレベルを示す。
【0030】
図10図10は、本発明のGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子の抗ウイルス活性を示す。IFN-β-IFN-λ2またはGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子を含有するHEK293T細胞上清で、マウス腸上皮細胞(mIEC)を前処置した。前処置の24時間後、細胞を水疱性口炎ウイルス(VSV)で24時間処置し、融合分子の抗ウイルス活性を分析した。細胞の生存能は、MTTアッセイを用いて測定した。
【0031】
図11図11は、IFN-β-IFN-λ2またはGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子の相対的抗ウイルス効力を示す。図10に示される抗ウイルスアッセイの結果を、HEK293上清中におけるIFN-β-IFN-λ2およびGas6-IFN-β-IFN-λ2タンパク質の量当たりに標準化して、それらの相対的抗ウイルス効力(活性/mg)を決定した。イムノブロットとクマシー染色の両方(図9)は、図10に示される抗ウイルスアッセイ用の試料を作製するのに用いられたHEK293細胞の上清において、Gas6-IFN融合分子の量は、IFN融合分子の量(5倍)よりも少ないことを示す。これらのアッセイにおいて、融合分子を含有する上清は、同じ希釈係数から始めて用いたため、より低い濃度のGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子で標準化した場合には、このアッセイでは、Gas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子は、IFN-β-IFN-λ2融合分子よりも、より活性である(5倍)。
【0032】
図12図12は、Gas6-IFN-β-IFN-λ2タンパク質が、マウス腸上皮細胞においてMHCクラスI抗原の発現を誘導する能力を保持しており、その免疫原性活性を裏付けていることを示す。IFN-β-IFN-λ2またはGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子を含有する細胞培養上清でマウス腸上皮細胞を72時間処置し、MHCクラスIタンパク質の発現を、MHC特異的抗体を用いたフローサイトメトリーにより分析した。
【0033】
図13図13は、Gas6-IFN-β-IFN-λ2タンパク質が、マウス腸上皮細胞においてPD-L1の発現を誘導する能力を保持していることを示す。IFN-β-IFN-λ2またはGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子を含有する細胞培養上清でマウス腸上皮細胞を72時間処置し、MHCクラスIタンパク質の発現をPD-L1特異的抗体を用いたフローサイトメトリーにより分析した。
【0034】
図14図14は、Gas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子が単一の実体分子として、別々の実体として共発現させた場合よりも、優れた抗腫瘍活性を有することを示す。マウス乳癌細胞株であるEO771細胞に、空ベクター、またはGas6-IFN-β、Gas6-IFN-λ2もしくはGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子のいずれかをコードする発現ベクターを安定的にトランスフェクションし、同系C57BL/6マウスの乳房脂肪体に移植した。Gas6-IFN-βを構成的に分泌するE0771細胞0.5x10個とGas6-IFN-λ2を構成的に分泌するE0771細胞0.5x10個との各タンパク質の50:50の混合物に対して、モック(mock)(空ベクター)のEO771細胞10個またはGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子を構成的に分泌するE0771細胞10個の注射後の、腫瘍増殖(腫瘍体積)測定の結果を示す。TFは、腫瘍のないマウス(腫瘍フリー(tumor-free)マウス)を示す。
【0035】
図15図15は、図14において概要を述べた実験についての、29日目における各動物の腫瘍体積を示す。
【0036】
図16図16は、IFN-β-IFN-λ2およびGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子の同様の抗腫瘍活性を示す。図14において概要を述べた実験と同様に、モック(空ベクター)のEO771細胞10個またはIFN-β-IFN-λ2もしくはGas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子を構成的に分泌するE0771細胞10個の注射後の、腫瘍増殖(腫瘍体積)測定の結果を示す。TFは、腫瘍のないマウス(腫瘍フリーマウス)を示す。
【0037】
図17図17は、図16において概要を述べた実験についての、29日目における各動物の腫瘍体積を示す。
【0038】
図18図18は、本発明のPS標的化融合分子の利点をまとめている。
【0039】
図19A図19A~19Cは、本発明のGas6-IFN-λ2融合分子のIFN-λ2レポーター活性を示す。図19Aは、トランスフェクションの48時間後に回収されたHEK293T細胞上清中に分泌されたGas6(Gla)-IFN-λ2およびGas6(Gla+EGF)-IFN-λ2融合分子の、予想分子量37および70kdにおける、γカルボキシル化特異的抗体によりプローブされたγカルボキシル化を示すイムノブロットである。
図19BC図19Bおよび19Cは、IFN-λR-γR1レポーター細胞株を、組み換えIFN-λ2または、アポトーシス細胞ありもしくはなしでGas6(Gla)-IFN-λ2(図19B)およびGas6(Gla+EGF)-IFN-λ2(図19C)融合分子を含有するHEK293T細胞上清で、30分間、処置した結果を示す。pStat1イムノブロットは、融合分子によるIFN-λ受容体細胞株の活性化の、ホスファチジルセリン結合依存的な増大を示す。
【0040】
図20AB図20A~20Cは、本発明のGas6-IFN-λ2融合分子のIFN-λ2機能的活性を示す。図20Aにおいては、ヒト網膜色素上皮細胞ARPE19を、組み換えIFN-λ2、またはGas6(Gla)-IFN-λ2およびGas6(Gla+EGF)-IFN-λ2融合分子を含有するHEK293T細胞上清で、前処置した。前処置の12時間後、細胞を水疱性口炎ウイルス(VSV)で24時間処置し、融合分子の抗ウイルス活性を分析した。細胞の生存能は、MTTアッセイを用いて測定した。
図20C図20Aは、融合分子の抗ウイルス活性が組み換えIFN-λ2と等価であることを示す。図20Bおよび20Cは、組み換えIFN-λ2または本発明の融合分子により72時間処置した後のARPE19細胞のフローサイトメトリーにより決定した、免疫原性タンパク質であるカルレティキュリン(図20B)およびMHCクラスIタンパク質(図20C)の発現を示す。
【0041】
図21AB図21Aおよび21Bは、本発明のGas6-IFN-λ2融合分子の抗腫瘍活性を示す。図21Aは、ビタミンK(Vit. K)またはγカルボキシル化阻害剤であるワーファリン(Warf)による処置後に、融合分子を安定発現するマウス乳癌細胞株であるEO771から分泌されたGas6(Gla)-IFN-λ2およびGas6(Gla+EGF)-IFN-λ2融合分子の、γカルボキシル化を示すイムノブロットである。図21Bは、0.1x10個のEO771モックトランスフェクションされた(空ベクター)細胞またはGas6(Gla+EGF)-IFN-λ2融合分子分泌細胞をC57BL/6マウスの乳房脂肪体に注射した後の、腫瘍体積測定の結果を示す。
【0042】
詳細な説明
免疫システムは、腫瘍細胞などの病原性細胞、ウイルスおよび炎症性疾患に関与する炎症細胞を除去する潜在的能力を有する一方で、有効な免疫療法にとっての主要な障壁は、臨床的に有意義な応答を誘発する能力である。そのために、宿主は、有効な免疫応答の進展を限定する、内在性の抑制性メカニズムを克服できなければならない。
【0043】
サイトカインは、様々な免疫機能の強力な制御因子であり、癌、感染ならびに免疫および炎症性疾患を含む広範囲の病変症状を処置するために用いられ得る。多くのサイトカインの全身投与に付随する望ましくない副作用により、サイトカインの局所作用を達成するために病変を有する部位へサイトカインを標的化することは、極めて好ましい。
【0044】
ホスファチジルセリン(PS)の表出は、癌細胞自体の特徴であり、腫瘍微小環境(TME)において制御不全となったPS表出は、広範囲のヒトの癌で観察されており、全ての固形癌の特徴となっている。TMEにおける制御不全PSは、アポトーシス腫瘍細胞、低酸素および栄養欠乏に起因するストレス腫瘍細胞および様々な腫瘍浸潤細胞、ならびに腫瘍部位におけるストレス血管内皮細胞を含む、様々な細胞種において生じ得る。
【0045】
さらに、低酸素によるストレス、ならびに感染および/または炎症性症状による栄養欠乏が進行中の細胞もまた、PSを表出する。さらに、エンベロープウイルスは、その表面にPSを露出する。
【0046】
したがって、サイトカインをPSリッチ領域に標的化することは、腫瘍部位、ウイルス感染部位、および炎症部位にサイトカインを送達する手段としての役割を果たす一方で、その全身作用を最小化する。
【0047】
細胞表面上のPS濃度は、細胞のストレスレベルを反映しているとみられ;PS濃度の変化は、PS結合TAMリガンドであるGas6およびPros1により活性化される、TAM(Tyro3、AxlおよびMer)として集合的に知られている受容体群により感知される。これらのリガンドは、そのN末端Glaドメインを介してPSと相互作用する、架橋分子としての役割を果たし、そのC末端LGドメインを介してTAMに結合し、これを活性化する。TAMの活性化は、厳密にPS依存的であり、PS濃度は、TAM活性化強度のレオスタット(rheostat)として作用する。
【0048】
本発明は、工学的に作製した二機能性(bifunctional)PS標的化サイトカイン融合免疫生物学的製剤、ならびに、サイトカインを腫瘍部位、ウイルス感染部位、および炎症部位に対して標的化することにおけるこれらの使用方法を提供する。PSに結合して受動的に腫瘍および骨髄細胞の同種受容体とのPS相互作用を遮断する、PS標的化mAbとは異なり、本発明の融合分子は、PSリッチである微小環境において、免疫刺激性サイトカインシグナル伝達の強度を、PS濃度に合わせることができるように設計されている。したがって、PSの存在下では、これらPS標的化サイトカイン融合分子は、より強くかつ持続するサイトカイン受容体活性化を誘導し、未修飾サイトカインとの比較において、PS標的化サイトカイン融合分子の増大した生物学的活性をもたらす。
【0049】
さらに、PSまたはPS相互作用リガンドへの直接的結合により引き起こされ得る、PS受容体の活性化は、例えば腫瘍進行の間に、通常、確立され維持される免疫抑制状態をもたらす。
【0050】
本発明のPS標的化サイトカイン融合分子は、サイトカイン特異的活性を介して免疫活性化を提供することにより、ならびに、内因性PSリガンドおよび受容体とのPS結合に競合することにより、その能力を遮断して免疫抑制状態を誘導して、免疫抑制状態に戻して方向転換させると予想される。
【0051】
したがって、本発明の二機能性PS標的化サイトカイン融合分子は、ストレス細胞におけるPSに結合し、表出PS密度が高い領域へ免疫刺激性サイトカインシグナル伝達を局在化させると予想される。そうすることで、本発明の融合分子は、免疫抑制性PS受容体の持続的な会合によって生成される寛容原性シグナルを、PS->サイトカイン受容体軸に由来する免疫原性シグナルに方向転換させると予想される。
【0052】
それゆえに、本発明により、サイトカインまたはその一部と、融合タンパク質をPSに対して標的化するポリペプチドとを含む、融合分子が提供される。開発された本発明の融合分子は、これらが、PS標的化され局在化されたサイトカイン送達を提供すること;これらが、内因性PSリガンドおよび受容体によるPS認識を遮断すること;ならびに、サイトカイン特異的生物学的活性を活性化させることにより、PS誘導性の免疫抑制からPSレベルに合った免疫活性化へ、免疫活性化バランスを能動的に変化させること、という3つの固有の特徴を備えている。したがって、本発明により、これら融合分子を含む医薬組成物、ならびに、対象の病変部位にサイトカインを標的化すること、対象の病変部位における内因性PSリガンドによるPS認識から生じる免疫抑制を阻害すること、病変部位における1種以上のサイトカイン特異的生物学的活性を活性化させること、サイトカインの全身作用を最小化すること、および/または、サイトカイン処置に対して応答性の疾患、障害もしくは症状を処置すること、における融合分子および医薬組成物の使用方法もまた提供される。一つの非限定的態様においては、本発明により標的化されるおよび/または処置される疾患、障害もしくは症状は、癌、感染または炎症性症状もしくは障害である。
【0053】
本発明の目的において、用語「融合タンパク質」および「融合分子」は、交換可能に用いられ、異なる源(source)に由来する部分から作られた、ポリペプチド、タンパク質および/または分子を包含することを意味する。かかる融合分子は、別々のタンパク質またはその一部を元々コードしていた2種以上の遺伝子またはその断片を連結させることにより作製される。これら融合遺伝子またはその一部の翻訳は、元々の各タンパク質に由来する機能的特性を有する、単一または複数のポリペプチドをもたらす。一つの非限定的態様においては、融合分子またはタンパク質は、生物学的研究または治療における使用のために、組み換えDNA技術により人工的に作製される。
【0054】
本発明の目的においては、「その一部」により、全長サイトカインタンパク質よりも長さがより短い断片であって、全長タンパク質に対して機能活性の少なくとも一部を維持しているおよび/または受容体サブユニットの少なくとも1つに対する結合を維持しているものが意味される。
【0055】
当業者に既知の様々な免疫刺激性もしくは免疫抑制性サイトカインまたはその一部は、本発明の融合分子に含まれ得る。一つの非限定的態様において、選択されるサイトカインは、病原性PSリッチ部位において所望の活性を有する。一つの非限定的態様において、サイトカインは、インターフェロン(IFN)またはその一部である。IFNは、多能性サイトカインであり、多面的な抗ウイルス応答および抗腫瘍応答の確立において重要な役割を果たす。本発明の融合分子に含まれ得るサイトカインの例には、インターフェロン-α(IFN-α)、インターフェロン-β(IFN-β)、インターフェロン-λ1(IFN-λ1)、インターフェロン-λ2(IFN-λ2)、インターフェロン-λ3(IFN-λ3)、インターフェロンγ(IFN-γ)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、インターロイキン22(IL-22)、インターロイキン33(IL-33)、アンフィレギュリン(amphiregulin)(AREG)、その組み合わせ、またはその一部が含まれるが、全くこれらに限定されない。IFN-β、IFN-λ1、IFN-λ-2およびIFN-λ3などのいくつかのサイトカインは、融合分子のフォールディング(folding)および精製を改善するために置換可能な不対(unpaired)Cys残基を有する。その対応する受容体に対してより低い親和性を有するサイトカイン変異体はまた、その受容体複合体を介してシグナル伝達能力を減少させるために、融合PS標的化サイトカインタンパク質の作製に用いることができ、融合PS標的化サイトカインにより活性化された場合には、サイトカイン受容体複合体のPSを介したオリゴマー化を介するPS存在下でのそれらの活性化増大を可能にする。
【0056】
本発明の融合分子は、PSに対して融合分子を標的化するポリペプチドをさらに含む。これら融合分子には、PSに対して融合分子を標的化する様々なポリペプチドが含まれ得る。本発明の融合分子に含まれ得るPS標的化ポリペプチドの例には、脳血管新生阻害剤1(BAI1)、アネキシン、特にアネキシンA5およびB12、T細胞免疫グロブリンおよびムチン受容体1、3および4(TIM-1、TIM-3およびTIM-4)、スタビリン1および2、ならびに乳脂肪球-EGF因子8タンパク質(MFGE8)が含まれるが、全くこれらに限定されない。一つの非限定的態様において、融合分子は、Tyro3、Axlおよび/またはMer(TAM)受容体のPS結合リガンドを含むポリペプチドを含む。一つの非限定的態様において、融合分子は、成長停止特異的遺伝子6(GAS6)またはタンパク質S(Pros1)のPS結合型ドメインを含むポリペプチドを含む。一つの非限定的態様において、融合分子は、Gas6またはPros1のN末端Glaドメインを含むポリペプチドを含む。本発明の融合分子に有用なポリペプチドの非限定的な例には:
【0057】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有するマウスGas6のGlaドメイン:
MPPPPGPAAALGTALLLLLLASESSHTVLLRAREAAQFLRPRQRRAYQVFEEAKQGHLERECVEEVCSKEEAREVFENDPETEYFYPRYQE(配列番号1);
【0058】
pro-ドメインを有しシグナルペプチドを有さないマウスGas6のGlaドメイン:
TVLLRAREAAQFLRPRQRRAYQVFEEAKQGHLERECVEEVCSKEEAREVFENDPETEYFYPRYQE(配列番号2);
【0059】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有さないマウスGas6のGlaドメイン:
AYQVFEEAKQGHLERECVEEVCSKEEAREVFENDPETEYFYPRYQE(配列番号3);
【0060】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有するヒトGas6のGlaドメイン:
MAPSLSPGPAALRRAPQLLLLLLAAECALAALLPAREATQFLRPRQRRAFQVFEEAKQGHLERECVEELCSREEAREVFENDPETDYFYPRYLD(配列番号4);
【0061】
pro-ドメインを有しシグナルペプチドを有さないヒトGas6のGlaドメイン:
ALLPAREATQFLRPRQRRAFQVFEEAKQGHLERECVEELCSREEAREVFENDPETDYFYPRYLD(配列番号5);
【0062】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有さないヒトGas6のGlaドメイン:
AFQVFEEAKQGHLERECVEELCSREEAREVFENDPETDYFYPRYLD(配列番号6);
【0063】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有するヒトPros1のGlaドメイン:
MRVLGGRCGALLACLLLVLPVSEANFLSKQQASQVLVRKRRANSLLEETKQGNLERECIEELCNKEEAREVFENDPETDYFYPKYLV(配列番号7);
【0064】
pro-ドメインを有しシグナルペプチドを有さないヒトPros1のGlaドメイン:
NFLSKQQASQVLVRKRRANSLLEETKQGNLERECIEELCNKEEAREVFENDPETDYFYPKYLV(配列番号8);および
【0065】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有さないヒトPros1のGlaドメイン:
ANSLLEETKQGNLERECIEELCNKEEAREVFENDPETDYFYPKYLV(配列番号9)
が含まれる。
【0066】
さらに、いくつかの態様において、PSに対して融合分子を標的化するポリペプチドは、PSとの結合においてPS結合ドメインのオリゴマー化を促進するドメインをさらに含んでもよい。本発明の融合分子に含まれ得る、PSとの結合においてPS結合ドメインのオリゴマー化を促進するドメインの非限定的な例は、Gas6またはPros1の表皮増殖因子(EGF)様ドメインである。非限定的な例には:
【0067】
ヒトGAS6のEGF様ドメイン
CINKYGSPYTKNSGFATCVQNLPDQCTPNPCDRKGTQACQDLMGNFFCLCKAGWGGRLCDKDVNECSQENGGCLQICHNKPGSFHCSCHSGFELSSDGRTCQDIDECADSEACGEARCKNLPGSYSCLCDEGFAYSSQEKACRDVDECLQGRCEQVCVNSPGSYTCHCDGRGGLKLSQDMDTCE(配列番号10);および
【0068】
ヒトPros1のEGF様ドメイン
CLRSFQTGLFTAARQSTNAYPDLRSCVNAIPDQCSPLPCNEDGYMSCKDGKASFTCTCKPGWQGEKCEFDINECKDPSNINGGCSQICDNTPGSYHCSCKNGFVMLSNKKDCKDVDECSLKPSICGTAVCKNIPGDFECECPEGYRYNLKSKSCEDIDECSENMCAQLCVNYPGGYTCYCDGKKGFKLAQDQKSCE(配列番号11)
が含まれる。
【0069】
したがって、一つの非限定的態様において、本発明の融合分子は、GAS6またはPros1の、N末端PS結合型ドメインおよびEGF様オリゴマー化ドメインを含むポリペプチドを含んでもよい。かかる融合分子の非限定的な例には:
【0070】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有するヒトGas6のGlaドメインおよびEGF様ドメイン:
MAPSLSPGPAALRRAPQLLLLLLAAECALAALLPAREATQFLRPRQRRAFQVFEEAKQGHLERECVEELCSREEAREVFENDPETDYFYPRYLDCINKYGSPYTKNSGFATCVQNLPDQCTPNPCDRKGTQACQDLMGNFFCLCKAGWGGRLCDKDVNECSQENGGCLQICHNKPGSFHCSCHSGFELSSDGRTCQDIDECADSEACGEARCKNLPGSYSCLCDEGFAYSSQEKACRDVDECLQGRCEQVCVNSPGSYTCHCDGRGGLKLSQDMDTCE(配列番号12);
【0071】
pro-ドメインを有しシグナルペプチドを有さないヒトGas6のGlaドメインおよびEGF様ドメイン:
ALLPAREATQFLRPRQRRAFQVFEEAKQGHLERECVEELCSREEAREVFENDPETDYFYPRYLDCINKYGSPYTKNSGFATCVQNLPDQCTPNPCDRKGTQACQDLMGNFFCLCKAGWGGRLCDKDVNECSQENGGCLQICHNKPGSFHCSCHSGFELSSDGRTCQDIDECADSEACGEARCKNLPGSYSCLCDEGFAYSSQEKACRDVDECLQGRCEQVCVNSPGSYTCHCDGRGGLKLSQDMDTCE(配列番号13);
【0072】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有さないヒトGas6のGlaドメインおよびEGF様ドメイン:
AFQVFEEAKQGHLERECVEELCSREEAREVFENDPETDYFYPRYLDCINKYGSPYTKNSGFATCVQNLPDQCTPNPCDRKGTQACQDLMGNFFCLCKAGWGGRLCDKDVNECSQENGGCLQICHNKPGSFHCSCHSGFELSSDGRTCQDIDECADSEACGEARCKNLPGSYSCLCDEGFAYSSQEKACRDVDECLQGRCEQVCVNSPGSYTCHCDGRGGLKLSQDMDTCE(配列番号14):
【0073】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有するヒトPros1のGlaドメインおよびEGF様ドメイン:
MRVLGGRCGALLACLLLVLPVSEANFLSKQQASQVLVRKRRANSLLEETKQGNLERECIEELCNKEEAREVFENDPETDYFYPKYLVCLRSFQTGLFTAARQSTNAYPDLRSCVNAIPDQCSPLPCNEDGYMSCKDGKASFTCTCKPGWQGEKCEFDINECKDPSNINGGCSQICDNTPGSYHCSCKNGFVMLSNKKDCKDVDECSLKPSICGTAVCKNIPGDFECECPEGYRYNLKSKSCEDIDECSENMCAQLCVNYPGGYTCYCDGKKGFKLAQDQKSCE(配列番号15):
【0074】
pro-ドメインを有しシグナルペプチドを有さないヒトPros1のGlaドメインおよびEGF様ドメイン:
NFLSKQQASQVLVRKRRANSLLEETKQGNLERECIEELCNKEEAREVFENDPETDYFYPKYLVCLRSFQTGLFTAARQSTNAYPDLRSCVNAIPDQCSPLPCNEDGYMSCKDGKASFTCTCKPGWQGEKCEFDINECKDPSNINGGCSQICDNTPGSYHCSCKNGFVMLSNKKDCKDVDECSLKPSICGTAVCKNIPGDFECECPEGYRYNLKSKSCEDIDECSENMCAQLCVNYPGGYTCYCDGKKGFKLAQDQKSCE(配列番号16);および
【0075】
シグナルペプチドおよびpro-ドメインを有さないヒトPros1のGlaドメインおよびEGF様ドメイン:
ANSLLEETKQGNLERECIEELCNKEEAREVFENDPETDYFYPKYLVCLRSFQTGLFTAARQSTNAYPDLRSCVNAIPDQCSPLPCNEDGYMSCKDGKASFTCTCKPGWQGEKCEFDINECKDPSNINGGCSQICDNTPGSYHCSCKNGFVMLSNKKDCKDVDECSLKPSICGTAVCKNIPGDFECECPEGYRYNLKSKSCEDIDECSENMCAQLCVNYPGGYTCYCDGKKGFKLAQDQKSCE(配列番号17)
が含まれる。
【0076】
本発明のいくつかの非限定的態様においては、融合分子は、I型およびIII型IFNタンパク質またはその一部を含む。発明の融合分子に用いられるI型IFNタンパク質には、IFN-α(アルファ)、IFN-β(ベータ)、IFN-κ(カッパ)、IFN-ε(イプシロン)、およびIFN-ω(オメガ)またはその一部が含まれるが、これらに限定されない。非限定的な例示の成熟したI型IFNタンパク質は:
【0077】
ヒトIFN-α2a:
CKSSCSVGCDLPQTHSLGSRRTLMLLAQMRRISLFSCLKDRHDFGFPQEEFGNQFQKAETIPVLHEMIQQIFNLFSTKDSSAAWDETLLDKFYTELYQQLNDLEACVIQGVGVTETPLMKEDSILAVRKYFQRITLYLKEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSLSTNLQESLRSKE(配列番号 配列番号18);および
【0078】
ヒトIFN-β:
MSYNLLGFLQRSSNFQCQKLLWQLNGRLEYCLKDRMNFDIPEEIKQLQQFQKEDAALTIYEMLQNIFAIFRQDSSSTGWNETIVENLLANVYHQINHLKTVLEEKLEKEDFTRGKLMSSLHLKRYYGRILHYLKAKEYSHCAWTIVRVEILRNFYFINRLTGYLRN(配列番号19)
である。
【0079】
III型IFNには、IFN-λ1、IFN-λ2、IFN-λ3およびIFN-λ4ならびにこれらの一部が含まれる。非限定的な例示のIII型IFNタンパク質は:
【0080】
ヒトIFN-λ1:
PVPTSKPTPTGKGCHIGRFKSLSPQELASFKKARDALEESLKLKNWSCSSPVFPGNWDLRLLQVRERPVALEAELALTLKVLEAAAGPALEDVLDQPLHTLHHILSQLQACIQPQPTAGPRPRGRLHHWLHRLQEAPKKESAGCLEASVTFNLFRLLTRDLKYVADGNLCLRTSTHPEST(配列番号20);および
【0081】
ヒトIFN-λ3:
VPVARLRGALPDARGCHIAQFKSLSPQELQAFKRAKDALEESLLLKDCKCRSRLFPRTWDLRQLQVRERPVALEAELALTLKVLEASADTDPALGDVLDQPLHTLHHILSQLRACIQPQPTAGPRTRGRLHHWLYRLQEAPKKESPGCLEASVTFNLFRLLTRDLNCVASGDLCV(配列番号21)
である。
【0082】
本発明のいくつかの態様において、融合分子は、サイトカインとPSに対して融合分子を標的化するポリペプチとの間のリンカーをさらに含んでもよい。本融合分子における使用のリンカーは、好ましくは柔軟性があり、5~50アミノ酸またはさらに好ましくは10~30アミノ酸の範囲の長さを有する。ある態様においては、リンカーエレメントは、グリシン/セリンリンカー、すなわち、実質的にアミノ酸グリシンおよびセリンから構成されるペプチドリンカーである。アミノ酸スレオニンまたはアラニンもまた、リンカー内で用いることができる。融合分子のN末端においてIFNなどのサイトカインが例えばGlyですでに終了している場合には、かかるGlyは、リンカー配列におけるリンカーの最初のGlyを形成し得ることは、当業者には明らかであろう。同様に、C末端においてIFNなどのサイトカインが例えばProで始まる場合には、かかるPro残基は、リンカー配列におけるリンカーの最後のProを形成し得る。特定のリンカー配列の例は、表1に列挙されている。具体的な態様において、本発明の融合分子のリンカーは、配列番号42に記載されている。
【0083】
【表1】
【0084】
したがって、一つの非限定的態様においては、本発明の融合分子は、マウスIFN-βおよびマウスIFN-λ2タンパク質に融合された、マウスGAS6のシグナルペプチドおよびpro-ドメインを有するN末端PS結合型ドメインとEGF様オリゴマー化ドメインとを含むポリペプチドを含む。
【0085】
Gas6(Gla+EGF)-リンカー-IFN-β-リンカー-IFN-λ2(Gas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2):
MPPPPGPAAALGTALLLLLLASESSHTVLLRAREAAQFLRPRQRRAYQVFEEAKQGHLERECVEEVCSKEAREVFENDPETEYFYPRYQECMRKYGRPEEKNPDFAKCVQNLPDQCTPNPCDKKGTHICQDLMGNFFCVCTDGWGGRLCDKDVNECVQKNGGCSQVCHNKPGSFQCACHSGFSLASDGQTCQDIDECTDSDTCGDARCKLPGSYSCLCDEGYTYSSKEKTCQDVDECQQDRCEQTCVNSPGSYTCHCDGRGGLKLSPDMDTCEASGSSGGSSGTSGSSGGSSGTSINYRQLQLQERTNIRKSQELLEQLNGKINLTYRADFKIPMEMTEKMQKSYTAFAIQEMLQNVFLVFRNNFSSTGWNETIVVRLLDELHQQTVFLKTVLEEKQEERLTWEMSSTALHLKSYYWRVQRYLKLMKYNSYAWMVVRAEIFRNFLIIRRLTRNFQNASGSSGGSSGTSGSSGGSSGTSTDPVPRATRLPVEAKDCHIAQFKSLSPKELQAFKKAKDAIEKRLLEKDMRCSSHLISRAWDLKQLQVQERPKALQAEVALTLKVWENMTDSALATILGQPLHTLSHIHSQLQTCTQLQATAEPKPPSRRLSRWLHRLQEAQSKETPGCLEDSVTSNLFRLLTRDLKCVASGDQCV(配列番号49)。
【0086】
別の非限定的態様においては、本発明の融合分子は、ヒトIFN-βおよびヒトIFN-λ3タンパク質に融合された、ヒトGAS6のシグナルペプチドおよびpro-ドメインを有するN末端PS結合型ドメインとEGF様オリゴマー化ドメインとを含むポリペプチドを含む。
【0087】
Gas6(Gla+EGF)-リンカー-IFN-β-リンカー-IFN-λ2(Gas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2):
MAPSLSPGPAALRRAPQLLLLLLAAECALAALLPAREATQFLRPRQRRAFQVFEEAKQGHLERECVEELCSREEAREVFENDPETDYFYPRYLDCINKYGSPYTKNSGFATCVQNLPDQCTPNPCDRKGTQACQDLMGNFFCLCKAGWGGRLCDKDVNECSQENGGCLQICHNKPGSFHCSCHSGFELSSDGRTCQDIDECADSEACGEARCKNLPGSYSCLCDEGFAYSSQEKACRDVDECLQGRCEQVCVNSPGSYTCHCDGRGGLKLSQDMDTCEASGSSGGSSGTSGSSGGSSGTSMSYNLLGFLQRSSNFQCQKLLWQLNGRLEYCLKDRMNFDIPEEIKQLQQFQKEDAALTIYEMLQNIFAIFRQDSSSTGWNETIVENLLANVYHQINHLKTVLEEKLEKEDFTRGKLMSSLHLKRYYGRILHYLKAKEYSHCAWTIVRVEILRNFYFINRLTGYLRNASGSSGGSSGTSGSSGGSSGTSTDPVARLRGALPDARGCHIAQFKSLSPQELQAFKRAKDALEESLLLKDCKCRSRLFPRTWDLRQLQVRERPVALEAELALTLKVLEASADTDPALGDVLDQPLHTLHHILSQLRACIQPQPTAGPRTRGRLHHWLYRLQEAPKKESPGCLEASVTFNLFRLLTRDLNCVASGDLCV(配列番号50)。
【0088】
本発明の様々な融合分子の非限定的態様は、図1に描かれている。そこには、PSに対して融合分子を標的化するポリペプチド、リンカーおよびサイトカイン;PSに対して融合分子を標的化するポリペプチド、リンカーおよび2種の異なるサイトカインの組み合わせ;PSに対して融合分子を標的化するポリペプチドであって、それに結合するPSとの結合においてPS結合ドメインのオリゴマー化を促進するドメインをさらに含む前記ポリペプチド、リンカーおよびサイトカイン;ならびに、PSに対して融合分子を標的化するポリペプチドであって、それに結合するPSとの結合においてPS結合ドメインのオリゴマー化を促進するドメインをさらに含む前記ポリペプチド、リンカーおよび2種の異なるサイトカインの組み合わせ:を含む態様が示されている。
【0089】
図2は、本明細書において例示されるIII型IFN(IFN-λ)およびI型IFN(IFN-α/β)の受容体システムによる、サイトカイン受容体複合体およびシグナル伝達経路のモデルを描いている。IFN-λおよびI型IFNは、異なるヘテロ二量体受容体複合体を用いる。IFN-λは、固有のIFN-λR1およびIL-10R2に会合するのに対し、IFN-αR1およびIFN-αR2は、活性I型IFN受容体複合体を形成する。IFN-αまたはIFN-λ受容体の会合は、受容体関連JAKキナーゼであるJAK1およびTyk2のリン酸化をもたらし、これに、DNA結合タンパク質IRF9と相互作用するSTAT1およびSTAT2のリン酸化が続き、IFN刺激遺伝子因子3(ISGF3)と呼ばれる転写複合体の形成をもたらし、これは、IFN刺激応答配列(ISRE)に結合してIFN刺激遺伝子(ISG)の転写を制御する。
【0090】
図3は、腫瘍微小環境またはウイルス感染部位などのPSリッチ環境における、本発明の融合分子の予測される結合および相互作用についての非限定的態様の略図を提供する。図3に描かれているように、PS陽性の腫瘍微小環境においては、Gas6のGlaドメインは、アポトーシス腫瘍細胞または腫瘍血管系におけるPSに直接的に結合し、IFN-βおよび/またはIFN-λ2などの免疫刺激性サイトカインは、抗原提示細胞(APC)、腫瘍細胞、内皮細胞および他の腫瘍浸潤細胞上の、それぞれのIFN-βおよび/またはIFN-λ受容体に結合するであろう。
【0091】
IFNを介した抗腫瘍活性のメカニズムには、i)その増殖を抑制し、そのアポトーシスを促進する、ii)炎症性サイトカインおよびケモカインの産生を促進して免疫細胞の腫瘍への動員増大をもたらす、ならびにiii)MHCクラスI分子および共刺激分子の上方制御ならびに抗原のプロセシングにおける変化(これは腫瘍細胞により提示される腫瘍抗原の変化した多様なレパートリーをもたらす)によって達成される腫瘍細胞による抗原提示を増大させ、次にこれがT細胞によるより良好な認識をもたらす、という腫瘍細胞に対する直接的作用が含まれる。IFNはまた、内皮細胞の増殖を直接的に阻害することにより、および、腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞による血管新生抑制ケモカインの産生促進により、腫瘍血管新生を阻害する。
【0092】
さらに、IFNは、免疫細胞における様々な免疫刺激性活性を発揮し、これには、i)1型ヘルパーT(Th1)細胞応答の刺激をもたらす、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)による活性化および増大した抗原提示;ii)CD4+およびCD8+T細胞に対する直接的作用による、これらの細胞の増殖および分化の刺激;iii)NK細胞の直接的刺激およびその抗腫瘍活性の促進、が含まれる。
【0093】
さらに、PS標的化サイトカインは、Gas6およびPros1などの内因性PSリガンドによるPS結合に競合し、したがって、Gas6およびPros1の、TAM受容体を介して免疫抑制性シグナルを誘導する能力を遮断するであろう。本発明の融合分子は、受容体のクラスター形成を誘導し、IFN-βおよびIFN-λ2単独と比較して強力なpStat1シグナル伝達をもたらすであろう。本発明の融合分子は、それゆえ、免疫抑制性PS分子への結合および腫瘍微小環境におけるサイトカイン受容体を介した免疫原性シグナル伝達の誘導により、標的化療法および免疫療法という二つの機能を果たすであろう。
【0094】
本発明のPS標的化分子は、PSに結合するが、むしろ、それらは、TAM受容体を介して免疫抑制性経路に関与し、IFN受容体を活性化させて宿主の抗腫瘍および抗ウイルス免疫を誘導する(図4)。
【0095】
Gas6の、Glaドメイン単独またはGlaドメインおよびEGF様ドメインの両方(Gla+EGF)のいずれかを含有する、12種のマウスGas6-IFN融合分子シリーズをクローニングして配列を決定した。6種のマウスGas6-IFN融合分子は、図1に描かれている。他の変異体は、Hisタグタンパク質を含んでおり、その精製を容易にするのみならず、タグはin vivoにおけるタンパク質分布を画像化するためにタンパク質を標識することを可能にする(図7)。全てのキメラタンパク質は、続いてHEK293T細胞で発現され、条件培地(conditioned media)に分泌されていることが示されたが、高度にカルボキシル化されていることが示されており、これは、細胞がビタミンKの存在下において培養された場合に、PSに結合する融合分子に必要とされる不可欠な翻訳後修飾である。
【0096】
図5は、対応する発現プラスミドをトランスフェクションされたHEK293細胞の条件培地中におけるいくつかのHisタグGas6-IFN融合分子の存在を表しており、細胞からのその産生および分泌(図5(A))ならびにγカルボキシル化(図5(B))を示している。さらに、Gas6由来EGFリピートの存在下では、二量体形成が強く促進されることが観察された。全てのGas6-IFNタンパク質は、レポーター細胞株においてIFNシグナル伝達を誘導する能力により示されているように生物学的活性を保持しており、全てのものがγカルボキシル化依存的にPSに結合する能力を保持していた。さらに、Gas6のPS結合ドメイン(Gla-EGF様ドメイン)は、IFNと融合された場合には、アポトーシス細胞の存在下でIFNがより強いシグナル伝達を誘導することを可能にし、Gas6-IFN融合分子により引き起こされるIFN応答の強度は、理論的根拠および設計によって意図した通り、PS濃度の増加によって増強される(図6および8、ならびに19Aから19C参照)。さらに、IFN活性は、Gas6-IFN融合分子がγカルボキシル化された場合にのみ、アポトーシス細胞と一緒に共沈されるため、γカルボキシル化されたGas6-IFN融合分子のみがアポトーシス細胞と結合する(図8)。
【0097】
さらに、マウス乳癌細胞E0771細胞を乳房脂肪体に同所性移植した、乳房腫瘍増殖のマウスモデルは、Gas6(Gla+EGF)-IFN-λ2(図21Aおよび21B参照)およびGas6(Gla+EGF)-IFN-βを構成的に発現および分泌するEO771腫瘍細胞が、同系免疫コンピテントC57BL/6マウスの乳房脂肪体に注射された場合、増殖遅滞を示すことを示した。Gas6(Gla+EGF)-IFN-λ2融合分子は、本明細書においてはモックとも称されるコントロールと比較して、腫瘍体積の有意な減少を示した。EO771細胞から分泌されたGas6(Gla+EGF)-IFN-λ2融合分子はまた、IFN-λレポーター細胞においてIFN-λ2活性を有することもin vitroで示されている。
【0098】
さらに、乳房腫瘍増殖のマウスモデルはまた、Gas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2融合分子が、IFN-β-IFN-λ2融合分子のものと同等の抗癌活性を有することも示した(図16および17参照)。このモデルにおいては、Gas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2またはIFN-β-IFN-λ2分子を構成的に発現および分泌するEO771乳房腫瘍細胞が、同系免疫コンピテントC57BL/6マウスの乳房脂肪体に注射された場合、増殖遅滞を示した。Gas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2またはIFN-β-IFN-λ2融合分子のいずれかを発現する腫瘍細胞は、モックトランスフェクションされた腫瘍細胞と比較して、腫瘍体積の有意な減少を示し、各群において8匹のマウスのうち4匹が腫瘍フリーのままであった(図16および17)。
【0099】
さらに、Gas6-IFN-β-IFN-λ2融合分子を発現するEO771細胞は、Gas6-IFN-βおよびGas6-IFN-λ2の各タンパク質を構成的に分泌するE0771細胞の50:50の混合物よりも、in vivoでは非常にゆっくり増殖し、融合Gas6-IFN-β-IFN-λ2分子は、PS標的化された各I型およびIII型IFNの組み合わせよりも、より高い抗腫瘍効力を有することが示された。
【0100】
本発明のPS標的化IFN融合分子の抗ウイルス活性は、自然のタンパク質と同等であるか(図20A;IFN-λ2に対するGas6(Gla)-IFN-λ2およびGas6(Gla+EGF)-IFN-λ2)、または、図10および11(IFN-β-IFN-λ2に対するGas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2)において示されているようにIFN融合分子単独で作用するよりもより強力であるかのいずれかであった。さらに、免疫刺激性タンパク質であるカルレティキュリンおよびMHCクラスIタンパク質ならびに免疫修飾性PD-L1タンパク質の発現により誘導される、本発明の融合分子のIFN受容体応答を誘導する能力については、それぞれ図12、20C、20Bおよび13に表されている。
【0101】
本発明の融合分子は、既知の発現システムを用いた慣用の組み換え発現方法論により産生することができ、これには大腸菌、酵母、バキュロウイルス、昆虫、植物または哺乳類動物タンパク質発現システムが含まれるがこれらに限定されない。融合分子は、組み換え細胞培養物から、あらゆる有効な方法で回収および精製することができる。例えば、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー。例えば、Lin, et al. (1986) Meth. Enzymol. 119: 183-192参照。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製に用いられる。さらに、本発明の融合分子の産生および単離に用いられ得る方法は、米国特許第6,433,145号に開示されている。
【0102】
加えて、本発明の融合分子は、あらゆる有効な技術を用いて化学的に合成することもできる(例えば、Creighton (1983) Proteins: Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman & Co., NY; Hunkapiller, et al. (1984) Nature 310:105-111を参照)。例えば、融合分子または融合分子の断片は、ペプチド合成装置を用いて合成することができる。
【0103】
本発明はまた、例えば、γカルボキシル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断(blocking)基による誘導体化、タンパク質切断、抗体分子もしくは他の細胞リガンドへの結合などによって、翻訳の間または後に修飾された融合分子をも包含する。臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的な化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;チュニカマイシン存在下における代謝的合成などを含むがこれらに限定されない、既知の技術によって、あらゆる多数の化学的修飾を行うことができる。
【0104】
本発明が包含する追加的な翻訳後修飾には、例えば、例として、γカルボキシル化、N結合またはO結合糖鎖、N末端またはC末端のプロセシング、アミノ酸骨格への化学的部分(chemical moiety)の付着、N結合またはO結合糖鎖の化学的修飾、および原核宿主細胞発現の結果としてのN末端メチオニン残基の付加または除去が含まれる。融合分子はまた、タンパク質の検出および単離を可能にする、酵素、蛍光、同位体または親和標識などの検出可能な標識により修飾されていてもよい。
【0105】
また本発明により、本発明の融合分子の化学的に修飾された誘導体も提供され、これは、ポリペプチドの増加した溶解性、安定性および循環時間または減少した免疫原性などの付加的な利点を提供し得る(米国特許第4,179,337号参照)。誘導体化のための化学的部分は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーから選択され得る。ポリペプチドは、分子内のランダムな位置において、または分子内の予め定められた位置において、修飾されていてもよく、1個、2個、3個以上の付着された化学的部分を含んでもよい。
【0106】
ポリマーは、いかなる分子量であってもよく、分岐であってもまたは非分岐であってもよい。ポリエチレングリコールについては、好ましい分子量は、取り扱いおよび製造の容易さから、約1kDaと約100kDaの間である(用語「約」は、ポリエチレングリコールの調製において、ある分子は、規定の分子量よりもより重く、ある分子はより軽いであろうことを示している)。所望の治療プロファイル(例えば、所望の持続的放出の継続時間、もしあるならば、生物学的活性に対する作用、取り扱いの容易さ、抗原性の程度または欠如、およびポリエチレングリコールの治療タンパク質または類似体に対する他の既知の作用)に応じて、他のサイズを用いてもよい。例えば、ポリエチレングリコールは、約200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、15,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000、または100,000kDaの平均分子量を有していてもよい。
【0107】
上述のように、ポリエチレングリコールは分枝構造を有していてもよい。分枝ポリエチレングリコールは、例えば、米国特許第5,643,575号;Morpurgo, et al.(1996) Appl. Biochem. Biotechnol. 56:59-72;Vorobjev, et al. (1999) Nucleosides Nucleotides 18:2745-2750;およびCaliceti, et al. (1999) Bioconjug, Chem. 10:638-646に記載されている。
【0108】
ポリエチレングリコール分子(または他の化学的部分)は、タンパク質の機能的ドメインまたは抗原性ドメインに対する作用を考慮して、融合分子に付着されるべきである。当業者に利用可能な多数の付着方法があり、例えば、PEGのG-CSFへのカップリングを教示する欧州特許出願公開第0401384号明細書、および塩化トレシルを用いたGM-CSFのペグ化を記載するMalik, et al. (1992) Exp. Hematol. 20:1028-1035参照。例えば、ポリエチレングリコールは、遊離のアミノ基またはカルボキシル基などの反応性基を介しアミノ酸残基によって共有結合され得る。反応性基は、活性化されたポリエチレングリコール分子が結合し得るものである。遊離のアミノ基を有するアミノ酸残基には、リジン残基およびN末端アミノ酸残基が含まれてもよく;遊離のカルボキシル基を有するものには、アスパラギン酸残基 グルタミン酸残基およびC末端残基が含まれてもよい。スルフヒドリル基もまた、ポリエチレングリコール分子を付着させるための反応性基として用いることができる。治療目的に好ましいのは、N末端またはリジン基における付着などの、アミノ基における付着である。
【0109】
上述のように、ポリエチレングリコールは、多数のアミノ酸残基のうちのいずれかへの結合を介してタンパク質へ付着されていてもよい。例えば、ポリエチレングリコールは、リジン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはシステイン残基への共有結合を介してタンパク質に結合され得る。ポリエチレングリコールを、タンパク質のうちの特定のアミノ酸(例えば、リジン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはシステイン)に、あるいはタンパク質のうちの2種以上のアミノ酸残基(例えば、リジン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、およびこれらの組み合わせ)に、付着させるためには、1種以上の反応化学が用いられてもよい。
【0110】
N末端において化学的に修飾されたタンパク質を特に所望する場合もある。ポリエチレングリコールを説明の通りに用いて、(分子量、分岐などにより)様々なポリエチレングリコール分子から、反応混合物中におけるタンパク質(ポリペプチド)分子に対するポリエチレングリコール分子の割合、行われるべきペグ化反応の種類、および選択されたN-末端ペグ化タンパク質を得る方法を選択することができる。N-末端ペグ化調製物を得る(すなわち、必要に応じて、他のモノペグ化部分からこの部分を分離する)方法は、ペグ化タンパク質分子の集団からのN末端ペグ化材料の精製によってもよい。N末端修飾で化学的に修飾されている選択的タンパク質は、特定のタンパク質における誘導体化に利用可能な1級アミノ基の異なる種(N末端に対するリジン)の差異的反応性を活用する還元アルキル化により達成され得る。適切な反応条件下では、ポリマーを含有するカルボニル基を用いて、N末端におけるタンパク質の実質的な選択的誘導体化が実現される。
【0111】
上に示したように、本発明の融合分子のペグ化は、いくつもの手段により達成され得る。例えば、ポリエチレングリコールは、直接的にまたはリンカーを介在させてのいずれかでタンパク質に付着させることができる。ポリエチレングリコールをタンパク質に付着させるためのリンカーを用いないシステムは、Delgado et al. (1992) Crit. Rev. Thera. Drug Carrier Sys. 9:249-304; Francis, et al. (1998) Intern. J. Hematol. 68:1-18;米国特許第4,002,531号;米国特許第5,349,052号;国際公開第95/06058号公報;および国際公開第98/32466号公報に記載されている。
【0112】
本発明の融合分子に付着されるポリエチレングリコール部分の数(すなわち、置換度)はまた、変化してもよい。例えば、本発明のペグ化タンパク質は、平均で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20個以上のポリエチレングリコール分子に結合されていてもよい。同様に、平均置換度は、タンパク質分子あたり、1-3、2-4、3-5、4-6、5-7、6-8、7-9、8-10、9-11、10-12、11-13、12-14、13-15、14-16、15-17、16-18、17-19、または18-20個のポリエチレングリコール部分などの範囲内である。置換度を決定する方法は、例えば、Delgado, et al. (1992) Crit. Rev. Thera. Drug Carrier Sys. 9:249-304において議論されている。
【0113】
本発明の融合分子は、様々な癌、ウイルス疾患および他の適応症、特に病変部位がPSに富んでいる適応症の処置に用いることができる。
【0114】
したがって、本発明はまた、対象の病変部位にサイトカインまたはその一部を標的化する、対象の病変部位における内因性PSリガンドおよび受容体によるPS認識から生じる免疫抑制を阻害する、対象の病変部位における1種以上のサイトカイン特異的生物学的活性を活性化させる、対象におけるサイトカインの全身作用を最小化する、および/または、有効量の融合分子もしくは融合分子を含む医薬組成物の対象への投与を介して対象におけるサイトカイン処置に対して応答性の疾患、障害もしくは症状を処置するための、医薬組成物ならびに方法をも提供する。一つの非限定的態様においては、本発明により標的化されるおよび/または処置される疾患、障害もしくは症状は、癌、感染または炎症性症状もしくは障害である。
【0115】
本発明の目的においては、「対象」は、哺乳類動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、オラウータン、サル)、マウス、ブタ、ウシ、ヤギ、ネコ、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、ウマ、サル、ヒツジ;あるいは、例えば、鳥類(例えば、ニワトリまたはアヒル)または魚類などの非哺乳類脊椎動物、および非哺乳類無脊椎動物を含む、非哺乳類動物が含まれることが意図されている。
【0116】
本発明の方法にしたがって、「有効量」は、所望の結果を生み出すのに十分な、融合分子または融合分子を含む医薬組成物の用量または量を意味する。所望の結果には、用量または量を受容する対象における、客観的または主観的な改善が含まれ得る。特に、有効量は、疾患または症状に関連した1種以上の兆候あるいは病徴を、抑制する、緩和する、減少させる、または解消させる量である。処置には、存在する症状の治療、または、インフルエンザなどの感染の一般的な再発を含むがこれに限定されない、予測される感染の予防、および生物兵器攻撃などの状況が要求する緊急的な予防が含まれる。
【0117】
いくつかの非限定的態様においては、本発明の方法は、慢性C型肝炎感染、慢性B型肝炎感染、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、ジカウイルス、エボラウイルス、デングウイルス、チクングニアウイルス、ハンタウイルスおよびAIDS/HIVなどであるがこれらに限定されない、慢性および急性ウイルス感染;乳房、骨、肝臓、腎臓、肺、首および喉、皮膚、大腸、前立腺、膀胱ならびに膵臓の肉腫、癌腫、およびリンパ腫を含む、固形腫瘍を含むがこれらに限定されない、癌;ならびに、クローン病、多発性硬化症および関節炎、喘息、乾癬、皮膚炎、自己免疫性肺炎または胃腸炎、尖圭コンジローマなどであるがこれらに限定されない、炎症性および/または自己免疫性症状または疾患の処置において用いられる。特定の非限定的態様においては、本発明の融合分子および方法は、ウイルス感染または癌の処置において用いられる。
【0118】
あらゆる有効量の本発明の融合分子は、その必要がある対象、例えば、疾患もしくは症状を有するかまたは疾患または症状を獲得する危険性がある対象に、投与されてもよい。一般的な提案としては、用量当たりの非経口投与される薬学的有効量の総量は、患者の体重に対し約1μg/kg/日~10mg/kg/日であろうが、上述のように、これは治療的裁量にしたがうこととなるだろう。より好ましくは、この用量は、少なくとも0.01mg/kg/日であり、ヒトに関しては、最も好ましくは、約0.01と1mg/kg/日との間である。継続的に与えられる場合には、組成物は典型的に、1日当たり1~4回の注射または例えばミニポンプを用いた継続的皮下注入のいずれかにより、約1μg/kg/時間~約50μg/kg/時間の投与速度で投与される。静脈内バッグ溶液(bag solution)もまた用いることができる。変化を観察するのに必要な処置の期間および応答が生じるための次の処置の間隔は、所望の効果に依存して変化し得る。
【0119】
治療目的には、本発明の融合分子は、好ましくは、薬学的に許容し得る担体との混合物中に融合分子を含有する医薬組成物として提供される。用語「医薬組成物」は、動物またはヒトを含む対象における薬学的使用に適した組成物を意味する。医薬組成物は、一般的に、有効量の活性剤および、例えば、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤などの薬学的に許容し得る担体を含む担体、希釈剤、カプセル化物質またはあらゆる種類の製剤の助剤などを含む。
【0120】
本発明の融合分子を含有する医薬組成物は、例えば、経口的に、直腸的に、非経口的に、大槽内的に、膣内的に、腹腔内的に、(粉末、軟膏、点滴または経皮パッチによるような)局所的に、口腔内的に、または経口もしくは経鼻スプレーとして、を含む、あらゆる有効な経路により投与され得る。
【0121】
本明細書において用いられるように用語「非経口的」は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内注射および注入などの投与様式を含む、あらゆる有効な非経口的投与様式をいう。
【0122】
組成物はまた、徐放システムにより適切に投与されてもよい。徐放組成物の適した例には、成形品の形態での半透過性ポリマーマトリックス、例えばフィルム、またはマイクロカプセルが含まれる。徐放マトリックスには、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号、欧州特許出願公開第58,481号明細書)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタミン酸とのコポリマー(Sidman et al. Biopolymers 1983 22:547-556)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)(Langer et al. J. Biomed. Mater. Res. 1981 15:167-277; Langer Chem. Tech. 1982 12:98-105)、エチレンビニルアセタートまたはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許出願公開第133,988号明細書)が含まれる。
【0123】
徐放組成物はまた、リポソームにより封入されたポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドを含有するリポソームは、当該分野において既知の方法により調製される ドイツ特許出願公開第3,218,121号明細書;Epstein, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1985 82:3688-3692;Hwang, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1980 77:4030-4034;欧州特許出願公開第52,322号明細書;欧州特許出願公開第36,676号明細書;欧州特許出願公開第88,046号明細書;欧州特許出願公開第143,949号明細書;欧州特許出願公開第142,641号明細書;特願昭58-118008号明細書;米国特許第4,485,045号;米国特許第4,544,545号;および欧州特許出願公開第102,324号明細書。通常、リポソームは、小さい(約200~800オングストローム)単層型であり、脂質含有量は、約30モルパーセントコレステロールよりも大きく、選択される割合は、有効なポリペプチド療法に合わせて調節される。
【0124】
免疫腫瘍学的製剤(ICI)として用いられる場合には、本発明の融合分子は、単独で用いられてもよく、または、他のICIと組み合わせて用いられてもよい。一つの非限定的態様において、本発明の融合分子は、抗PD-1治療と組み合わせて用いられてもよい。I型およびIII型IFNはPD-L1の上方制御を誘導し、この効果が融合分子の抗腫瘍的有効性を減少させ得るため、この組み合わせは特に魅力的である。
【0125】
抗ウイルス剤として用いられる場合には、本発明の融合分子は、単独で投与されてもよく、または、IL-2、KDI、リバビリンおよびテモゾロミドなどの、他の既知の抗ウイルス性、免疫修飾性および抗増殖性の治療法と組み合わせて投与されてもよい。
【0126】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1種以上の成分が充填された1個以上の容器を含む、医薬のパックまたはキットをも提供する。かかる容器には、医薬もしくは生物学的製剤製品の製造、使用または販売を統制する政府機関により規定された形態の注意書が添えられていてもよく、かかる注意書は、ヒトへの投与に対する機関による製造、使用または販売の承認を反映するものである。加えて、本発明の融合分子は、他の治療化合物と併せて用いられてもよい。
以下の非限定的な例は、本発明をさらに説明するために提供される。
【0127】

例1:融合分子の合成方法
生物学的評価のために融合分子を作製するため、インタクト(intact)未修飾GAS6、IFN-λ2、IFN-β、および融合IFN分子であるIFN-β-IFN-λ2(コントロール)、および6個のGAS6-IFN融合分子であるGas6(Gla)-IFN-λ2、Gas6(Gla)-IFN-β、Gas6(Gla)-IFN-β-IFN-λ2、Gas6(Gla+EGF)-IFN-λ2、Gas6(Gla+EGF)-IFN-βおよびGas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2を発現する哺乳類動物プラスミドを、HEK293T細胞に一過性にトランスフェクションした。融合分子のHisタグを付したバージョンおよびリン酸化可能バージョンを発現するプラスミドもまた、製作してHEK293細胞にトランスフェクションした。分泌されたインタクトタンパク質または融合タンパク質を含有する条件培地を、トランスフェクションの48時間後に回収した。
【0128】
例2:イムノブロッティング法
様々なインタクトGas6およびIFN分子、ならびにGas6(Gla)、またはGas6(Gla+EGF)IFN融合分子を含有する条件培地を、SDS-PAGEにより分離して、膜に転写し、γカルボキシル化およびHisタグ特異的な抗体を用いたイムノブロッティングによりγカルボキシル化を評価した。
【0129】
例3:γカルボキシル化およびサイトカイン活性の評価
Gas6(Gla)、またはGas6(Gla+EGF)IFN融合タンパク質の活性を、IFN-λR-γR1レポーター細胞株を処置することにより評価した。レポーター細胞を、コントロールとして用いられた組み換えIFN-λ2、または、アポトーシス細胞ありもしくはなしでGas6(Gla)およびGas6(Gla+EGF)IFN融合分子を含有するHEK293T細胞上清により、30分間処置した。細胞溶解物を調製し、IFN-λ受容体活性化の出力としてのチロシンリン酸化Stat1(pStat1)に特異的な抗体によるイムノブロッティングにより、Stat1リン酸化を測定した。pStat1イムノブロットは、融合分子によるIFN-λ受容体の活性化の、ホスファチジルセリン結合依存的な増大を示した。さらに、アポトーシス細胞のγカルボキシル化Gas6-IFN融合分子への結合は、IFN活性のアポトーシス細胞との共沈により示された。
【0130】
例4:抗ウイルス活性
同数のヒト網膜色素上皮ARPE19細胞またはマウス腸上皮細胞(mIEC)を、96穴マイクロタイタープレートの全穴において、10%FCS含有DMEM培地中に播種し、300ng/ml~0.002ng/mlの範囲の様々な濃度で組み換えIFN-λ2により、あるいは、Gas6(Gla)-IFN-λ2およびGas6(Gla+EGF)-IFN-λ2融合分子、またはIFN-β-IFN-λ2およびGas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2をそれぞれ含有するHEK293T細胞上清の3倍系列希釈物により、処置した。前処置の24時間後、細胞に、0.1pfu/細胞の濃度で穴に添加された水疱性口炎ウイルス(VSV)を負荷し、細胞をさらに24時間インキュベートして、融合分子の抗ウイルス活性を分析した。細胞生存能を、製造者のプロトコール(Millipore / Sigma)にしたがってMTTアッセイを用いて測定した。
【0131】
ARPE-19細胞またはmIECをまた、6穴プレートにおいて10%FCS含有DMEM培地中に播種し、未処置で、あるいは、組み換えIFN-λ2(100ng/ml)により、または、Gas6(Gla)-IFN-λ2、Gas6(Gla+EGF)-IFN-λ2、IFN-β-IFN-λ2もしくはGas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2融合分子を含有するHEK293T細胞上清の1/10希釈物により、処置して、72時間放置した。次いで、細胞を回収し、細胞表面レベルのMHCクラスI抗原発現、カルレティキュリン発現またはPD-L1発現をフローサイトメトリーにより測定した。
【0132】
例5:抗腫瘍活性
免疫コンピテントな同系の6~8週齢C57BL/6マウス(Jackson Laboratory)に、10個の、EO771モック細胞(空ベクターをトランスフェクションしたEO771細胞) IFN-β-IFN-λ2 Gas6(Gla+EGF)-IFN-β、Gas6(Gla+EGF)-IFN-λ2またはGas6(Gla+EGF)-IFN-β-IFN-λ2融合分子を分泌する細胞(様々な融合分子を発現するベクターをトランスフェクションしたEO771細胞)を、乳房脂肪体に注射した。マウスを、1~2日おきに注射部位の触診により腫瘍増殖を確認し、腫瘍体積(V)を、クリッパー(clipper)を用いて腫瘍の長さ(L)および幅(W)を測定し、次いで式V=(LxWxW)/2に適用することにより、計算した。
【0133】
例6:融合分子の、腫瘍微小環境へ動員され、腫瘍微小環境中に局在する能力の評価
本発明の融合分子が腫瘍微小環境へ動員され、腫瘍微小環境中に局在する能力を保持しているかどうかを調べるため、融合分子が腫瘍部位へ特異的に送達され得るかどうかを決定するための評価を行った。これらの研究には、Pulverer, J.E. et al. (Journal of Virology 2010 84:8626-8638)により記載されている、ルシフェラーゼの発現がIFN誘導性Mx2プロモーターにより制御されている、Mx2ルシフェラーゼレポータートランスジェニック(TG)マウスが用いられる。これらのレポーターマウスは、I型またはIII型IFNのいずれかを静脈内注射した場合に、組織特異的にルシフェラーゼを発現する:I型IFNは、主に肝臓においてルシフェラーゼ発現を誘導するのに対し、III型IFNは胃腸管においてルシフェラーゼ発現を引き起こす(McElrath, C. et al. Cytokine 2016 87:141-141)。
【0134】
Hisタグタンパク質は、HEK293細胞において産生され、均一に精製される。インタクトおよび融合IFNタンパク質を、最初に様々な濃度でレポーターマウスに注射し、ルシフェラーゼの位置および継続時間を、例えばXenogen IVIS 200 Imaging Systemを用い、生存している動物においてモニターする。次に、雌性マウスには、乳房脂肪体にE0771細胞を注射し、腫瘍が定着した後、マウスにインタクトまたはGas6融合IFN分子を注射して、ルシフェラーゼ発現を生存している動物において評価した。
【0135】
生理学的条件下においては、胸腺および脾臓などの細胞のターンオーバー速度が速い組織においてさえも、除去されていないアポトーシス細胞およびPS陽性ストレス細胞はほとんど観察されない。これは、正常なホメオスタシスの一部としてのアポトーシスが起こっている細胞は、非常に効率的におよび強力にエフェロサイトーシスされて、PSが正常組織においては検出されないためである。したがって、本研究により決定された本発明の融合分子のPS標的化は、ストレス応答および癌、ウイルス感染または炎症の一部としてPSが上方制御されている部位への、設計された融合分子の局所的送達を示す。
【0136】
例7:融合分子の、腫瘍微小環境およびウイルス感染部位へ動員され、腫瘍微小環境およびウイルス感染部位中に局在する能力の評価
均一に精製した後、リン酸化可能なIFN融合分子を、in vitroで放射性標識し、尾静脈もしくはSQ注射により、担癌(tumor-bearing)マウスおよび呼吸器インフルエンザAウイルスもしくは胃腸ロタウイルスのいずれかに感染したマウスに注射し、標識タンパク質のin vivo分布を、X線画像化および様々な解剖組織における放射活性分布を測定することにより、モニターした。
【0137】
例8:2種のマウスモデルにおける融合分子の抗腫瘍的有効性
本発明の融合分子の腫瘍微小環境を変化させる特性を、2種の独立した、遺伝的に受容可能な、乳癌増殖の同所性移植モデルにおいて比較する。これらのモデルには、(BALB/cマウス系統には)4T1細胞モデルおよび(C57BL/6マウス系統には)E0771細胞モデルが含まれる。両方のモデルは、低い免疫原性の潜在的能力および肺への自然転移を含むヒト乳癌の側面を再現する、悪性のトリプルネガティブ(triple negative)腫瘍乳癌モデルを反映する。さらに、4T1およびE0771細胞の両方は、3種の全てのTAMを発現すると考えられており、これらの癌モデルを、PS受容体を発現する腫瘍を研究するのに適したものにしている。様々なインタクトまたはGas6融合IFN分子を構成的に発現する4T1およびE0771細胞を作製した。同等のレベルのIFN分子を発現する細胞集団を選択する。
【0138】
修飾された細胞の増殖動態は、in vitroで最初に比較する。動物研究には、8週齢同系野生型のC57BL/6(E0771)またはBALB/c(4T1)雌性未交尾マウスに、(50%マトリゲルに再懸濁した)10個のマウス乳癌細胞株を、右4番鼠径乳房脂肪体の中心に注射する(n=12マウス/群)。原発性腫瘍の体積を、1日おきに評価して記録する。原発性腫瘍が1cmに達したとき、マウスを犠牲にし、肺転移を定量化する。肺、骨、脳および他の主要臓器は、秤量して、半分を急速凍結し(snap-frozen)、半分をさらなる生化学的および組織学的分析のために固定し、増殖(Ki67)、アポトーシス(Tunnel)、微小血管(CD31)およびPASR染色について研究する。必要に応じて、レーザーマイクロキャプチャー(micro-capture)技術を用いて、潜在的な自然転移を解剖し、生化学的分析を行うこととする。
【0139】
例9:TMEにおける免疫細胞頻度に対する融合分子の効果の評価
TMEにおける免疫細胞のサブセット(subset)およびこれらが本発明の融合分子によりどのように変化するかを調べることは、免疫応答を変化させることにおけるそれらの役割のメカニズム的な洞察を与える。融合分子は、宿主の抗腫瘍応答に影響を与える阻害性シグナルを元に戻して、TMEをより免疫競合的な環境へプログラミングし直す(reprogram)であろうと予想される。これらの問題に実験的に取り組むため、NanostringおよびIHCに基づく方法の組み合わせを用いて、TMEにおいておよび腫瘍境界におけるPMN、DC、MPh、NKおよびT細胞の細胞頻度をプローブする。
【0140】
そのため、原発性腫瘍を除去した際に、一部を用いてIHCにより腫瘍境界を調べ、次いで、酵素的消化を行って腫瘍および腫瘍浸潤細胞を単離してF4/80+MPh、GR1+好中球、CD11+DCおよびT細胞、筋線維芽細胞ならびに内皮細胞(PECAM+細胞)のプロファイリングをする。腫瘍部位における白血球(DC、MPh、NKおよびT細胞)浸潤およびDC成熟状態もまた、免疫染色細胞、それに続く、DCに対してCD86(Alexa 350標識)、MPhに対してF4/80(Alexa 405標識)、ならびにT細胞に対してCD4+(PE-Cy7標識)およびCD8+(Alexa 649標識)などの、特異的マーカーを用いたFACS分析(BD LSR II)によって、評価する。加えて、腫瘍関連サイトカインおよびケモカインを、MSD-cytokine array(Meso Scale Diagnostics, Rockville, MD)により定量化する。
【0141】
例10:腫瘍増殖動物モデルにおける融合分子の治療効果の評価
上記モデルにおいて、抗癌治療剤として、最も強力な抗腫瘍的有効性を示す融合分子をさらに試験する。これらの実験のために、融合分子を産生し、Hisタグ精製技術を用いて、動物試験に十分な量を、エンドトキシンフリーで精製する。これらの実験のために、元の4T1およびE0771腫瘍を定着させて、約0.3cmの体積まで増殖させ、動物に、1μgの選択された精製融合分子を、毎日静脈内注射する。有効な腫瘍抑制が達成された場合には、組換えタンパク質の投与について、低い用量および頻度もまた試験する。
【0142】
例11:ウイルス感染動物モデルにおける融合分子の治療効果の評価
PS標的化IFN融合分子の抗ウイルス効力を、A型インフルエンザ感染マウスモデルを用いて試験する。効力は、インタクトIFNと比較する。マウスに1LD50のA型インフルエンザウイルスPR8、WSN、Udorn株または他の株を感染させる8~24時間前に、予防として、様々な用量で(成体の約20mgの8週齢マウス当たり0.1、0.3、1、3、10μg;PBSをコントロールモック処置として用いる)マウスにSQまたは鼻内(IN)注射する。生存および体重減少を毎日モニターする。
【0143】
加えて、別の実験において、感染後3、6および9日にウイルス力価および肺の組織病変を評価する。組織病変は、病変を評価するのに用いる。ウイルス抗原のIHC染色は、ウイルス伝播のパターンが処置により変化するかどうかを決定するのに用いる。感染後の生存を増大するための最適なIFN処置もまた評価する。この実験においては、A型インフルエンザウイルス(1LD50 PR8、WSN、Udorn株または他の株)に感染後の処置の効果を複数の投薬レジメンで試験する。上のように、マウスは、様々な用量で(成体の約20mgの8週齢マウス当たり0.1、0.3、1、3、10μg;PBSをコントロールモック処置として用いる)SQまたは鼻内(IN)注射される、IFN融合分子、単一のIFNあるいはこれらの組み合わせにより処置する。感染マウスは、下記スケジュール:1、3、5;1~4;2、4、6;2~5日、にしたがって処置する。マウスは、上のように分析し、抗ウイルス保護ならびに疾患の進行について計測する。
【0144】
例12:融合分子の、TAM受容体を介したインタクトTAMリガンドのシグナル伝達を阻害する能力の評価
TAMレポーター細胞株(Tyro3/IFN-γR1、Axl/IFN-γR1およびMertk/IFN-γR1)を、過剰に与えられたGas6-IFN融合分子の存在下または非存在下で、インタクトγカルボキシル化Gas6およびPros1により処置する。融合分子が内因性インタクトリガンドによるTAM受容体活性化を遮断する能力を、Stat1活性化(pStat1)の減少を測定することにより評価する。
図1
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図19A
図19BC
図20AB
図20C
図21AB
【配列表】
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