IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パヴィーニ、マリーの特許一覧

特許7221547任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード
<>
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図1
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図2
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図3A
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図3B
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図3C
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図4
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図5A
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図5B
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図6
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図7
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図8
  • 特許-任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】任意選択の保持システムと任意選択のセンサとを備える気管内チューブガード
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020529437
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018064603
(87)【国際公開番号】W WO2019113536
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】62/595,778
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518052740
【氏名又は名称】パヴィーニ、マリー
【氏名又は名称原語表記】PAVINI,Marie
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】パヴィーニ、マリー
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0279367(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0041391(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0156322(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0261441(US,A1)
【文献】米国特許第05647358(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口または経鼻的に配置されたアクセスチューブ用の保護ガードシステムであって、
配置されたアクセスチューブとそれを取り囲む細長い管状構造との間に空間がある状態で経口または経鼻的に配置されたアクセスチューブを取り囲むように構成および寸法決めされた細長い管状構造を備え、前記細長い管状構造は、患者の口から延びる前記配置されたアクセスチューブの長さと少なくとも実質的に等しい長さと、前記配置されたアクセスチューブを前記患者の口内に固定するチューブホルダのマウスピースに固定されるように構成された遠位端とを有し、
前記細長い管状構造は可撓性部分と実質的に剛性の部分とを有し、
前記実質的に剛性の部分は、前記配置されたアクセスチューブのポートまたはコネクタをそれを通して受け入れるように構成および寸法決めされ且つ前記ポートまたはコネクタの動作と干渉することなく前記実質的に剛性の部分の移動を可能にするようにサイズ決めされた少なくとも1つの長手方向に延びる開口部を画定し、
前記細長い管状構造はさらに、前記配置されたアクセスチューブを前記患者のその位置から抜去することも、接続されたデバイスから前記配置されたアクセスチューブを外したりすることもなく、前記配置されたアクセスチューブの周りに横方向から配置するためにまたは前記配置されたアクセスチューブから横方向に取り外すために開放するように構成される、保護ガードシステム。
【請求項2】
前記可撓性部分が、少なくとも長手方向の拡張および収縮を提供するように構成および寸法決めされ、その遠位端はチューブホルダの前記マウスピースと嵌合するように構成され、近位端は前記実質的に剛性の部分と嵌合する、請求項1に記載の保護ガードシステム。
【請求項3】
前記細長い管状構造に取り付けられた動きセンサをさらに備え、前記動きセンサは所定の動き閾値を超える前記システムの動きを検出するように構成される、請求項1または2に記載の保護ガードシステム。
【請求項4】
前記動きセンサが、前記可撓性部分の伸びを検出するように構成されたセンサを含む、請求項3に記載の保護ガードシステム。
【請求項5】
前記細長い管状構造が前記配置されたアクセスチューブから取り外され且つ交換されるために開放されることができるように、前記細長い管状構造が、ロック手段を備えた長手方向に延びる分割線と、反対側に延びるヒンジ構造とを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護ガードシステム。
【請求項6】
前記細長い管状構造が、少なくとも2つの反対側の長手方向に延びる分割線を有し、各前記分割線は、前記細長い管状構造が前記配置されたアクセスチューブから取り外され且つ交換されるために少なくとも2つの部分に分離し得るようにロック手段を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護ガードシステム。
【請求項7】
前記実質的に剛性の部分が、長手方向の長さ調整用の伸縮構造を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の保護ガードシステム。
【請求項8】
前記細長い管状構造が、前記実質的に剛性の部分と前記可撓性部分との間に配置された近位取り付けカラーと、前記可撓性部分の遠位端にある遠位取り付けカラーとをさらに備え、前記遠位取り付けカラーは、前記チューブホルダの前記マウスピースに係合するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の保護ガードシステム。
【請求項9】
前記可撓性部分および前記実質的に剛性の部分が別々に形成され、前記近位取り付けカラーで取り外し可能および取り付け可能である、請求項8に記載の保護ガードシステム。
【請求項10】
実質的に反対側に配置され、且つ前記可撓性部分の遠位側または遠位面に配置された固定接続点と、
各前記固定接続点の間に取り付け可能であり、且つ前記チューブホルダの頭部ストラップに取り付けられるように適合された、長手方向に伸張不可能な接続ストラップと、
実質的に反対側に配置され、且つ前記可撓性部分の近位側または近位面に配置された可動接続点と、
各前記近位接続点の間に取り付け可能であり、且つ前記チューブホルダの前記頭部ストラップに取り付けられるように適合された、長手方向に伸張可能な接続ストラップと
をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の保護ガードシステム。
【請求項11】
ウスピースを含むチューブホルダと、
前記可撓性部分の前記遠位端に配置された前記マウスピースと嵌合するように適合されたコネクタと
をさらに備える、請求項1~1のいずれか一項に記載の保護ガードシステム。
【請求項12】
前記コネクタが、前記可撓性部分の前記遠位端の周りに配置された取り付けカラーと、前記マウスピース上の嵌合取り付け部分とを備える、請求項10に記載の保護ガードシステム。
【請求項13】
前記細長い管状構造が前記マウスピースと嵌合され且つ回転されて前記構造を前記マウスピースにロックできるように、前記取り付けカラーおよび前記嵌合取り付け部分の一方がキーを備え、一方が嵌合キー溝を備える、請求項12に記載の保護ガードシステム。
【請求項14】
記取り付けカラーおよび前記嵌合取り付け部分が嵌合環状リングおよび環状凹部を一緒に備え、その結果、前記細長い管状構造は前記環状リングおよび環状凹部を係合するために前記細長い管状構造を開することによって前記マウスピースと嵌合することができる、請求項12に記載の保護ガードシステム。
【請求項15】
前記細長い管状構造の前記可撓性部分が、前記細長い管状構造と共に開放されるように配置され且つそれを通して鼻アクセスチューブを受け入れるように構成された開口部を画定する、請求項1~14のいずれか一項に記載の保護ガードシステム。
【請求項16】
経口または経鼻的に配置されたアクセスチューブ用の保護ガードシステムであって、
配置されたアクセスチューブとそれを取り囲む細長い管状構造との間に空間がある状態で経口または経鼻的に配置されたアクセスチューブを取り囲むように構成および寸法決めされた伸縮式の細長い管状構造を備え、前記細長い管状構造は、前記配置されたアクセスチューブを前記患者の口内に固定するチューブホルダのマウスピースに固定されるように構成された遠位端を有し、
前記細長い管状構造は可撓性部分と、内側および外側の伸縮式管状部材を構成する実質的に剛性の部分とを有し、
前記実質的に剛性の部分は、前記配置されたアクセスチューブのポートまたはコネクタをそれを通して受け入れるように構成および寸法決めされ且つ前記ポートまたはコネクタの動作と干渉することなく前記実質的に剛性の部分の移動を可能にするようにサイズ決めされた、前記内側および外側の伸縮式管状部材の両方を貫く少なくとも1つの長手方向に延びる開口部を画定し、
前記細長い管状構造はさらに、前記細長い管状構造が前記アクセスチューブを前記患者内のその位置から抜去することも、接続されたデバイスから前記アクセスチューブを外したりすることもなく、前記配置されたアクセスチューブから取り外され且つ交換されるために開放されることができるように、ロック手段を備えた長手方向に延びる分割線と、反対側に延びるヒンジ構造とを有する、保護ガードシステム。
【請求項17】
前記細長い管状構造が、前記実質的に剛性の部分と前記可撓性部分との間に配置された近位取り付けカラーと、前記可撓性部分の前記遠位端にある遠位取り付けカラーとをさらに備え、前記遠位取り付けカラーは前記チューブホルダの前記マウスピースと係合するように構成される、請求項16に記載の保護ガードシステム。
【請求項18】
前記可撓性部分および前記実質的に剛性の部分が別々に形成され、前記近位取り付けカラーで取り外し可能および取り付け可能である、請求項16に記載の保護ガードシステム。
【請求項19】
実質的に反対側に配置され、且つ前記可撓性部分の遠位側または遠位面に配置された固定接続点と、
各前記固定接続点の間に取り付け可能であり、且つ前記チューブホルダの頭部ストラップに取り付けられるように適合された、長手方向に伸張不可能な接続ストラップと、
実質的に反対側に配置され、且つ前記可撓性部分の近位側または近位面に配置された可動接続点と、
各前記近位接続点の間に取り付け可能であり、且つ前記チューブホルダの前記頭部ストラップに取り付けられるように適合された、長手方向に伸張可能な接続ストラップと
をさらに備える、請求項16~18のいずれか一項に記載の保護ガードシステム。
【請求項20】
前記細長い管状構造に取り付けられた動きセンサをさらに備え、前記動きセンサは所定の動き閾値を超える前記システムの動きを検出するように構成される、請求項16~19のいずれか一項に保護ガードシステム。
【請求項21】
前記動きセンサが、前記可撓性部分の伸びを検出するように構成されたセンサを含む、請求項20に記載の保護ガードシステム。
【請求項22】
経口または経鼻的に配置されたアクセスチューブ用の保護ガードシステムであって、
配置されたアクセスチューブとそれを取り囲む細長い管状構造との間に空間がある状態で経口または経鼻的に配置されたアクセスチューブを取り囲むように構成および寸法決めされた細長い管状構造であって、
前記細長い管状構造は可撓性部分と実質的に剛性の部分とを有し、
前記実質的に剛性の部分は、前記配置されたアクセスチューブのポートまたはコネクタをそれを通して受け入れるように構成および寸法決めされ且つ前記ポートまたはコネクタの動作と干渉することなく前記実質的に剛性の部分の移動を可能にするようにサイズ決めされた少なくとも1つの長手方向に延びる開口部を画定し、
前記細長い管状構造はさらに、前記配置されたアクセスチューブを前記患者のその位置から抜去することも、接続されたデバイスから前記配置されたアクセスチューブを外したりすることもなく、前記配置されたアクセスチューブの周りに横方向から配置するためにまたは前記配置されたアクセスチューブから横方向に取り外すために開放するように構成される、細長い管状構造と、
前記配置されたアクセスチューブを受け入れ且つ固定するように適合されたマウスピースを含むチューブホルダと、
前記可撓性部分の遠位端に配置された前記マウスピースと嵌合するように適合されたコネクタと
を備える、保護ガードシステム。
【請求項23】
実質的に反対側に配置され、且つ前記可撓性部分の遠位側または遠位面に配置された固定接続点と、
各前記固定接続点の間に取り付け可能であり、且つ前記チューブホルダの頭部ストラップに取り付けられるように適合された、長手方向に伸張不可能な接続ストラップと、
実質的に反対側に配置され、且つ前記可撓性部分の近位側または近位面に配置された可動接続点と、
各前記近位接続点の間に取り付け可能であり、且つ前記チューブホルダの前記頭部ストラップに取り付けられるように適合された、長手方向に伸張可能な接続ストラップと
をさらに備える、22に記載の保護ガードシステム。
【請求項24】
前記コネクタが、前記可撓性部分の前記遠位端の周りに配置された取り付けカラーと、前記マウスピース上の嵌合取り付け部分とを備える、請求項22または23に記載の保護ガードシステム。
【請求項25】
前記細長い管状構造が前記マウスピースと嵌合され且つ回転されて前記構造を前記マウスピースにロックできるように、前記取り付けカラーおよび前記嵌合取り付け部分の一方がキーを備え、一方が嵌合キー溝を備える、請求項24に記載の保護ガードシステム。
【請求項26】
記取り付けカラーおよび前記嵌合取り付け部分が嵌合環状リングおよび環状凹部を一緒に備え、その結果、前記細長い管状構造は前記環状リングおよび環状凹部を係合するために前記細長い管状構造を開することによって前記マウスピースと嵌合することができる、請求項24に記載の保護ガードシステム。
【請求項27】
前記細長い管状構造の前記可撓性部分が、前記細長い管状構造と共に開放されるように配置され且つそれを通して鼻アクセスチューブを受け入れるように構成された開口部を画定する、請求項16~26のいずれか一項に記載の保護ガードシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、医療用保護システムおよび保護拘束の分野に関する。特に、本発明は、気管内チューブガードおよび関連する保持システムおよびセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
挿管された患者の頭部にETT(気管内チューブ)を固定するように設計されたETTホルダにもかかわらず、自己抜管(ETTの取り外し)は依然として起こり得ることであり、珍しくなく、悲惨な結果をもたらす可能性がある。ETTで挿管された患者は、通常、自己抜管を防止するために手首で拘束されて鎮静化される。したがって、自律的なベッド内活動の形態での早期モビリゼーション、ならびに幻覚および認知機能低下を軽減する鎮静化の最小化(これら両方は、挿管後の生活の質を改善し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の一種であるPICS(集中治療後症候群)を予防することが示されている)など、病的状態および死亡率を軽減する重要な要素に従事できなくなる。しばしば、病気、投薬、または睡眠のいずれかに起因する混乱状態において、患者はETTを口から取り外すために手を伸ばす。ETTの不適当な取り外しは呼吸不全および死亡につながる可能性があるため、拘束と鎮静化による自己抜管の防止が必要であるが、看護師は常にこのイベントを防止するために患者と一緒にいるわけではない。
【0003】
例えば、図1に示されるように、ETTシステムの典型的な特徴は、外部チューブ10と、患者の気道に着座するために近位に配置されたカフ14を備えた内部チューブ12とを含む。ETTホルダ15は、マウスピースまたはリッププロテクタ16と、ETTを通してETTホルダ15に固定するためのロック用クランプ20などのチューブクランプ18とを含み得る。ETTシステムの他の構成要素は、カフチューブ44を介してバルーンカフ14と連通する取り付け/膨張ポート24、調整可能な付属品22を介して取り付け可能なマルチポートコネクタ26、ベントチューブポート28および拡張可能なベントチューブ30、気管支鏡ポート32およびロック34、吸引ポート36ならびに吸引カテーテル38を含み得る。ETTホルダは頭部ストラップ40を使用して患者の口に固定することができる。チークプロテクタ42は、患者の頬の上の過度の擦れを防止する。
【0004】
ETTを患者の口および頭部に固定する試みにおいて、様々なタイプのETTホルダが使用される。しかしながら、既存のシステムは、自己抜管からの信頼できる十分な保護を提供していない。既存のシステムの難解さは、ICUスタッフに負担をかける可能性がある。それというのも、ICUスタッフは、別の患者ならびに書類作成および薬物分配義務に不利益が及ぶまで1人の患者を看るのにより多くの時間を費やすことを要求される可能性があるからである。
【発明の概要】
【0005】
開示された実施形態は、取り外しを反射的に試みる可能性がある覚醒患者のETTの自己抜管を妨げるのに役立つが、可能な限り多くの筋肉の強度を維持するために必要な早期のモビリゼーションおよび運動、人工呼吸器からの解放に必要な横隔膜運動の促進、およびベッドに縛られないことによる患者のストレスの軽減も可能にし、鎮静化の最小化と認識力の向上を可能にする。実施形態は、ETTホルダなしで利用される、または現在市販されている任意のETTホルダに取り付けられたETTホルダを含み得る。実施形態はまた、ETTガードチューブが引っ張られると警報を発するセンサを含み得る。
【0006】
開示された実施形態は、透明で、ラテックスを含まず、MRIおよび他の診断モダリティに対応可能で、潜在的に使い捨てで、軽量で、迅速かつ容易に着脱可能で、頑丈で、そして清掃可能なセンサ、綿、およびプラスチックなどの従来の容易に入手可能な医学的に承認された材料から作製され得る。ETTガードチューブはETTを封入するが、それと接触することはない。ETTガードチューブの近位端は、ETTホルダのリッププロテクタの遠位端にあり、遠位端は、人工呼吸器コネクタシステムのマルチポートロック機構の近位部分にある。ETTガードチューブは、長さを調整できるように、チューブの本体内に伸縮機構または他の長手方向の拡張機構を有し得る。近位ストラップは剛性があり、ETTホルダシステムの頭部ストラップ内に取り付けられる。遠位ストラップは柔軟性があり、同じくETTホルダシステムの頭部ストラップに取り付けられる。剛性ストラップの遠位にあり、可撓性ストラップの近位にあるETTガードチューブの部分は、遠位方向に引っ張られると長手方向に弾性的に拡張または伸張可能であり、解放すると圧壊された形態に戻る。センサがETTガードチューブ上に配置され、チューブが絞られたり、拡張されたり、その他の方法で動かされたときに警報を示すことができる。人工呼吸器コネクタシステムのサイドポートが外向きに延在する側のETTガードチューブの近位端と遠位端には、ETTガードチューブを開放し且つ閉鎖/ロックする固定点がある。その側には、1つの固定点から他の固定点までの長手方向の開口部があり、その幅の測定値は人工呼吸器コネクタシステムの幅よりも大きい。ETTガードチューブは、人工呼吸器コネクタシステムよりも直径が大きく、近位端から遠位端まで直径が異なっていてもよい。ETTガードチューブは、様々な市販のマルチポートコネクタシステムに対応するように再構成することができる。
【0007】
開示されるシステムの実施形態は、ロック機構を備えたチューブクランプ、マウスピース、リッププロテクタ、チークプロテクタ、およびフックアンドループファスナーを備えたパッド付き頭部ストラップを連続的に含むETTホルダシステムを含み得る。ETTホルダシステムはまた、ETTガードチューブへの直接かつ確実な接続のために、マウスピース部分に環状コネクタを含み得、これは、ETTホルダとETTガードチューブとの間の剛性および可撓性ストラップの必要性を排除し得る。
【0008】
開示された実施形態の一例において、医療スタッフは、挿管後、ETTシステムの周りにETTガードチューブを配置して、長手方向の開口部で遠位ETTシステムの人工呼吸器ポートがその開口部から確実に突出するようにする。ETTガードチューブの長さは、伸縮機構を使用して調整される。ETTガードチューブは、固定機構を使用して所定の位置にロックされる。
【0009】
当業者には明らかであり得るように、開示されたシステムの実施形態は、ETTシステムを抜去することなくETTガードチューブを遠位に引っ張ることを可能にし、覚醒状態にあり且つそのような傾向がある対象者がETTシステムを抜去することを防止する。開示されたシステムの他の利点は、錯乱したまたは注意を怠った患者による自己抜管を防止しながら、安全な自由および運動のレベルを提供することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明を例示する目的で、図面は本発明の1つまたは複数の実施形態の態様を示す。しかしながら、本発明は、図面に示される正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【0011】
図1】ETT、ETTホルダシステム(近位)および人工呼吸器コネクタシステム(遠位)を含むETTシステムの立面図である。
図2図1に示されるETTシステムを覆って配置された、本開示の実施形態によるETTガードチューブの立面図である。
図3A】本明細書に開示される実施形態による代替ETTガードチューブの立面図および2つの端面図である。
図3B】本明細書に開示される実施形態による代替ETTガードチューブの立面図および2つの端面図である。
図3C】本明細書に開示される実施形態による代替ETTガードチューブの立面図および2つの端面図である。
図4】ETTホルダに接続するための接続リングを備えたさらなる代替ETTガードチューブの側面図および端面図である。
図5A】代替的な一実施形態におけるETTガードチューブおよびETTホルダの接続および分離をそれぞれ示す側面図である。
図5B】代替的な一実施形態におけるETTガードチューブおよびETTホルダの接続および分離をそれぞれ示す側面図である。
図6】切り離された状態の代替ETTガードチューブおよびETTホルダを示す側面図である。
図7】ETT/ETTホルダシステム/人工呼吸器コネクタシステム上のETTガードの側面からの写真である。
図8】ガードチューブのさらなる代替実施形態の斜視図であり、図8は閉鎖位置にあるガードを示し、図9は開放位置にあるガードを示す。
図9】ガードチューブのさらなる代替実施形態の斜視図であり、図8は閉鎖位置にあるガードを示し、図9は開放位置にあるガードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に開示される実施形態は、完全なシステムの一部としてETTホルダを備えるまたは備えないETTガードを提供し、これにより、ETTガードの中に入れられたETTを動かすことなくETTガードに触れたり引っ張ったりすることが可能になり、本明細書に開示される実施形態はまた、デバイスが引っ張られるとアラームを発するセンサを含み得る。本明細書の実施形態の記載は主にETTを参照して作成されるが、本明細書の実施形態および教示は、他の経口または経鼻的に配置された患者アクセスチューブにも等しく適用できることに当業者は気付くであろう。
【0013】
図2に示されるように、本明細書に開示されるETTガードの実施形態は、ETTに接触することなくETTを覆って取り付けられるように構成および寸法決めされた細長い管状構造として形成されたガードチューブ50を含み得る。チューブ50の近位端に、可撓性部分52が提供される。可撓性部分52より上のチューブ50の近位端は、チューブホルダマウスピース16などのETTホルダシステムへの取り付け用に構成されている。近位端の取り付け構成は、特別に構成されたコネクタまたはカラーを備え得る、またはチューブはマウスピース16と接触するように適合された滑らかな縁部で単に終端し得る。後述するように、患者の接触または取り外す試みに起因するチューブ50の動きを検出するために、動きセンサ58が可撓性部分52の領域に配置されてもよい。可撓性部分52により、ETT自体に動きを与えることなく、チューブ50をわずかに左右に動かしたり、遠位に引っ張ったりすることができる。これは、ETTの抜去を回避するために重要であり得、ETTの抜去は、患者および臨床状況次第では非常に小さな動きでも起こり得る。インチの動きおよび潜在的により少ない動きは、ETTを抜去するのに十分であり、生命を脅かす可能性のある合併症につながる可能性がある。患者がチューブガードに少量の動きを引き起こすことを許容することは、ETT自体が移動することを実際に許容することなくデバイスの動きの感覚を提供することによって、ETTの問題のある動きを引き起こす可能性のある点まで患者がチューブを引っ張ったりその他の方法でチューブを取り扱ったりする可能性を低減する傾向があり得る。
【0014】
ETTの意図しない抜去を防止する別の態様は、ホルダへの取り付けおよびホルダシステム自体である。いくつかの実施形態では、チューブ50の近位端は、それを従来のETTチューブホルダマウスピース16に固定するための取り付け手段を含み得る。このような取り付け手段は、剛性ストラップ60aおよび可撓性ストラップ60bを使用してチューブをホルダに固定できるように、適切な取り付け開口部または接続点(剛性接続点62aおよび可撓性接続点62bなど)をチューブ50内に含み得る。このような配置において、剛性ストラップ60aはチューブ50の近位端に固定可能であり、可撓性ストラップ60bは、いくらかより遠位に、可撓性部分52の下に固定可能である。別の代替形態では、チューブ50の近位端に沿った開口部を使用して、ジップタイまたは他の一般的に使用される取り付けデバイスを介してホルダにチューブを固定することができる。このようにして、ガードチューブ50は、以下により詳細に説明されるものなどの特別に適合されたシステムを必要とせずに、多種多様な異なるホルダシステムと共に利用することができる。
【0015】
チューブ50の側面の細長い開口部54は、ポート28または気管支鏡ポート32(場所に依存する)などのポートおよびアタッチメントがチューブガード50を通って延びることを可能にする。開口部54の細長い形状は、患者がチューブと接触したために可撓性部分52が拡張されたときにチューブ50の動きを許容する。
【0016】
ETTを取り外すことなくチューブ50を取り付けおよび取り外すことを可能にするために、例えば図3Aに示すように、ガードチューブの長手方向の範囲に沿って延びる少なくとも1つの分割線70が設けられる。1つの代替形態では、図3Bに示すように、単一の分割線70がチューブ50の片側に設けられ、長手方向ヒンジ74が反対側に設けられる。この実施形態では、単一のコネクタ72が分割線70に沿って走り、チューブ50はヒンジ74に沿って開く。戻り止めコネクタ72は、干渉/インターロック用長手方向隆起部を含み得る。干渉/インターロック用長手方向隆起部は、十分な指圧の下で相互にロックし、その後、接合された縁部を切り離すための接合縁部に隣接した適切な指圧(医療従事者によって容易に達成されるが、典型的な挿管患者によって容易に達成されないもの)によって取り外すことができる。いくつかの実施形態では、チューブの両側に1つずつ、2つの分割線70を設けることができる。2つの分割線70が設けられる場合、それらの両方にインターロック用隆起部72などのコネクタを取り付けることができる。これにより、チューブ50の2分割された半部を相互に押してロックし、その後、適切な指圧でコネクタを分離することで分割することが可能になる。長さに沿って連続的であるのではなく、接続部72およびヒンジ74の両方は、それぞれ1つまたは複数のより短いコネクタおよびヒンジとして交互に設けられてもよい。
【0017】
同じく図3Aに示されるのは、任意選択の経鼻胃管開口部56である。開口部56は、経鼻胃管などの第2のより小さな患者アクセスチューブをガードチューブ50内に配置することを可能にする。分割線70に沿って開口部56を配置することにより、経鼻胃管を取り外すことも除去することもなくガードチューブを配置または取り外すことができる。また、経鼻胃管は、中のETTを妨害することなく、後でガードチューブ50に追加することができる。
【0018】
チューブ50にホルダマウスピースを取り付けるための代替手段は、例えば、図4、5A、5Bおよび6に示されている。実施形態では、取り付けカラー76が、可撓性部分52に対して近位で、チューブ50の近位端に提供される。取り付けカラー76は、キー溝78を形成するためのノッチおよび溝を有してもよい。図5Aおよび5Bに示される1つの代替的なホルダマウスピース80では、取り付けカラー76の開口部内に受け入れられるサイズの突起に延長キー82が設けられている。2つの部品を接続するために、チューブ50と取り付けカラー76をマウスピース上に配置し回転させ、キー82およびキー溝78を介して適所でロックする。別の代替実施形態では、取り付けカラー76a(図6)は、内面に環状溝を備える。この環状溝は、チューブ50が分離線70に沿って開閉されるときに、代替マウスピース80a上の環状突起84を受け入れるようなサイズである。
【0019】
例えば図2に示されるようなセンサ58は様々な形態を取ることができる。それは、所定の閾値レベルを超えたときにチューブ50の動きを単に検出する動きセンサであり得、または、所望であれば、同じく閾値を設定して、可撓性部分52の長さの変化を検出するひずみゲージタイプのセンサであり得る。センサ58は、患者の監視システムに接続され、動きまたは伸びの閾値を超えたときに、担当者に警報を送ることができる。これにより、任意の動きの即時アラートが発せられ、かくしてETTの意図しない抜去を防止することができる。
【0020】
チューブガードのさらなる代替実施形態が、図8および9に示されている。この実施形態では、チューブ50は、2つの伸縮式部分50aおよび50bで作られた細長い管状構造を形成する。両方のチューブ部分は、ヒンジ74および閉鎖要素72を含む。近位チューブ部分50bは、図6の環状突起84などの環状リングコネクタを使用して遠位カラー76aと接続するように適合される。可撓性部分52は、遠位カラー76aに近位で接続され、近位カラー76bは可撓性部分52をチューブホルダマウスピース16に接続する。この実施形態では、可撓性ストラップ60aは遠位カラー76aに接続され、剛性ストラップ60bは近位カラー76bに接続される。
【0021】
伸縮チューブ50の遠位部分50aは、コネクタポートに対応する大きな遠位端と、内側の近位チューブ部分50bの隆起部と両立可能な隆起部を有するより小さな近位端とを有し、それにより、異なる長さのETTおよび他の挿管デバイスに対応する調整可能な長さを提供する。内側の近位チューブ部分50bは、チューブ部分50aの隆起部と接触する対応する隆起部を有する。細長いサイドポート54は、両方のチューブ部品を通して提供される。
【0022】
開示されたチューブガードは単独で使用することができる、または出願人の同時出願のPCT出願第________号(代理人整理番号15953-006WOU1)(これは完全な形で本明細書に組み込まれる)に記載されているような保護および運動用手拘束システムと組み合わせて、または自己抜管を防止するまたは自己抜管に対する妨害を追加する方法として他の現在市販されているミット拘束と組み合わせて使用することができる。別の代替実施形態では、経口または経鼻的に配置された患者アクセスチューブ用の保護ガードシステムは、経口または経鼻的に配置された患者アクセスチューブを取り囲むように構成および寸法決めされた細長いチューブ状構造を含み、その遠位端は、患者の口の中の配置されたチューブを固定するチューブホルダのマウスピースに係合するように構成されている。細長いチューブ状構造は、可撓性部分と、実質的に剛性の部分とを有する。実質的に剛性の部分は、ポートまたはコネクタを受け入れるように構成および寸法決めされた少なくとも1つの長手方向に延びる開口部を画定する。細長いチューブ状構造はさらに、配置されたアクセスチューブを患者内のその位置から抜去したり、配置されたチューブを接続されたデバイスから外したりすることなく、配置されたアクセスチューブの周囲への横方向からの配置のためにまたは配置されたアクセスチューブからの横方向からの取り外しのために開かれるように構成される。
【0023】
開示されたシステムは、通常であれば意図的にまたは意図せずに自己抜管する可能性のある覚醒状態にあり且つ危険に晒されている患者のためにベッドにも椅子にも縛り付けられない一方で自己抜管を防止し、人工呼吸器からの進展に必要な強さを促進しながら早期のモビリゼーションおよび運動を奨励する独自の機能を提供する。開示されたシステムにより提供される自由度の増加により、患者の興奮が減少し、したがって鎮静薬が減少および最小化され、それにより患者の認知の増加が促進され、せん妄およびPICSの発生率が減少する可能性が高くなり得る。一定の1:1の監視のない状態で患者をベッドや椅子につなぐ拘束をなくすことは自己抜管を引き起こすが、ETTガードを一度設置したら、看護師またはシッターの直接的な監視は必要ないかもしれない。
【0024】
例示的な実施形態が上に開示され、添付の図面に示されている。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示されているものに対して、様々な変更、省略、および追加を行うことができることは、当業者には理解されよう。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9