IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人千葉工業大学の特許一覧

<>
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図1
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図2
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図3
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図4
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図5
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図6
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図7
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図8
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図9
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図10
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図11
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図12
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図13
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図14
  • 特許-情報処理装置および移動ロボット 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】情報処理装置および移動ロボット
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20230207BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
G01B21/00 T
G08G1/16 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020560652
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2018046320
(87)【国際公開番号】W WO2020129120
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100167900
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 仁
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智章
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】大和 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】入江 清
(72)【発明者】
【氏名】松澤 孝明
(72)【発明者】
【氏名】清水 正晴
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-103228(JP,A)
【文献】国際公開第2013/076829(WO,A1)
【文献】特開平07-229728(JP,A)
【文献】特開平11-191196(JP,A)
【文献】特開2009-032179(JP,A)
【文献】特開2014-021625(JP,A)
【文献】特開2017-026535(JP,A)
【文献】特開2004-294152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
G01B 11/00-11/30
G01C 7/00- 7/06
G01C 15/00-15/14
G05D 1/00- 1/12
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境内を移動する移動体の移動情報を処理する情報処理装置であって、
前記移動体の移動に伴い所定の時間間隔ごとに前記環境内の異なる位置までの距離を検出して測定時間および距離の測定値に係る複数組の第1測定値群を得るとともに、
前記複数組の第1測定値群を加工して前記移動体の移動距離および距離の測定値に係る複数組の第2測定値群を生成し、生成した前記複数組の第2測定値群同士を比較することにより前記環境の変化を判定する判定手段を備え
前記判定手段は、予め学習により重み係数が設定された学習モデルに基づき、前記複数組の第2測定値群を前記学習モデルに入力して前記環境の変化の有無を出力として得
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記判定手段は、前記移動体の移動距離を検出した距離測定値に基づき、前記複数組の第1測定値群の測定値間を補間するとともに移動距離ごとの値にリサンプリングして前記複数組の第2測定値群を生成する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された情報処理装置において、
前記学習モデルは、前記判定手段により前記複数組の第2測定値群同士を比較して前記環境の変化を判定する学習を実行することで重み係数が設定されている
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された情報処理装置と、
前記移動体を移動させる移動手段と、
前記環境内の異なる位置として前記環境内の異なる二位置までの距離を検出する第1の距離センサおよび第2の距離センサと、
前記第1の距離センサおよび前記第2の距離センサを制御するとともに前記判定手段として機能する制御手段と、を備え、
前記第2の距離センサにより検出する第2の位置は、前記移動体の移動方向に沿って前記第1の距離センサにより検出する第1の位置よりも前記移動体に近い位置に設定される
ことを特徴とする移動ロボット。
【請求項5】
請求項4に記載された移動ロボットにおいて、
前記制御手段は、
前記第1の距離センサおよび前記第2の距離センサにて検出された前記第1の位置および前記第2の位置までの距離の変化を取得する距離変化取得部と、
前記距離変化取得部にて取得された前記第1の位置および前記第2の位置までの距離の変化を比較する距離変化比較部と、
前記距離変化比較部にて比較された結果に基づいて、前記移動体の姿勢の変化に起因する距離の変化と、前記環境の変化に起因する距離の変化とを判別する距離変化判別部と、を備える
ことを特徴とする移動ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サービスロボットやホームロボットなどの自律走行可能な移動ロボットであって、具体的には、掃除ロボットや警備ロボット、運搬ロボット、案内ロボット、介護ロボット、農業ロボットなど、各種の移動ロボットが実用化されている。例えば、走行環境における床面に沿って自律走行する移動ロボットは、走行環境に存在する障害物や段差等を検知するために、床面や障害物等の対象物との距離を測定する距離センサを備えていることが一般的であり、そのような距離センサを用いた距離計測システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された距離計測システム(情報処理装置)は、駆動輪により床面に沿って走行可能なロボット本体(移動体)と、ロボット本体の走行方向前方の対象物までの距離を測定する距離センサ(測距センサ)と、距離センサの測定結果に基づいて駆動輪の駆動部を制御する制御装置と、を備えている。距離センサは、近距離用の第1測距センサと遠距離用の第2測距センサとを有し、各センサで測定した距離データを統合することで、走行方向前方の測定範囲が拡大されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-21625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、距離センサによって対象物までの距離を測定して障害物や段差等の環境の変化を検知するためには、距離センサの測定値に現れる環境変化のパターンを想定し、環境変化のパターンを数値化した閾値を予め設定しておく手法が考えられる。そのような閾値を設定しておいたとしても、環境変化のパターンが多岐に渡るとともに、移動体の移動速度や移動距離、姿勢変化等による影響を受けることから、環境変化の検知精度を高めるためにはさらなる改良が望まれている。
【0006】
本発明は、移動体の移動に伴って環境変化を検知する際の検知精度を向上させることができる情報処理装置および移動ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の情報処理装置は、環境内を移動する移動体の移動情報を処理する情報処理装置であって、前記移動体の移動に伴い所定の時間間隔ごとに前記環境内の異なる位置までの距離を検出して測定時間および距離の測定値に係る複数組の第1測定値群を得るとともに、前記複数組の第1測定値群を加工して前記移動体の移動距離および距離の測定値に係る複数組の第2測定値群を生成し、生成した前記複数組の第2測定値群同士を比較することにより前記環境の変化を判定する判定手段を備え、前記判定手段は、予め学習により重み係数が設定された学習モデルに基づき、前記複数組の第2測定値群を前記学習モデルに入力して前記環境の変化の有無を出力として得ることを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、判定手段は、所定の時間間隔ごとに検出した複数組の第1測定値群を加工して複数組の第2測定値群を生成し、生成した移動体の移動距離ごとの第2測定値群同士を比較して環境の変化を判定することで、移動体の移動速度等による影響を低減し、環境変化の検知精度を向上させることができる。
ここで、移動体が走行しつつ検出するサンプリング値である第1測定値群に基づいて環境の変化を判定するという本発明の判定手法においては、移動体の走行条件の変化や障害物等の移動など、測定条件が様々に変化することが予測されることから、環境変化のパターンを数値化した閾値を予め設定しておくことは困難である。
これに対して、このような構成によれば、判定手段は、予め学習により重み係数が設定された学習モデルに基づいて環境の変化の有無を出力として得るので、様々な環境変化のパターンに対応することができる。
また、第2測定値群は、移動体の移動速度等による影響を受けた第1測定値群と比較して学習モデルに対する親和性が高く、本発明の判定手段は、学習モデルに第2測定値群を入力して環境の変化の有無を出力として得るので、学習モデルに第1測定値群を直に入力して環境の変化の有無を出力として得る場合と比較して良好な判定結果を得ることができる。この際、学習モデルとしては、ニューラルネットワークを用いた学習モデルや、深層学習モデルなど、適宜なものを採用可能である。
【0009】
本発明では、前記判定手段は、前記移動体の移動距離を検出した距離測定値に基づき、前記複数組の第1測定値群の測定値間を補間するとともに移動距離ごとの値にリサンプリングして前記複数組の第2測定値群を生成することが好ましい。
【0010】
ここで、第1測定値群は、所定の時間間隔ごとに検出されたサンプリング値であるため、検出中に移動体の速度が変動すると第1測定値群の各測定値に対応した検出位置の間隔にばらつきが生じることになる。
このような構成によれば、判定手段は、移動体の移動距離を検出した距離測定値に基づいて第1測定値群の測定値間を補間するとともに移動距離ごとの値にリサンプリングして第2測定値群を生成することで、環境内を移動する移動体の位置を適切に反映した第2測定値群を得ることができ、環境変化の検知精度をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明では、前記学習モデルは、前記判定手段により前記複数組の第2測定値群同士を比較して前記環境の変化を判定する学習を実行することで重み係数が設定されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、学習モデルは、判定手段により複数組の第2測定値群同士を比較して環境の変化を判定する学習を実行することで重み係数が設定されているので、様々な環境変化のパターンに対応することができる。
【0015】
本発明の移動ロボットは、前記いずれかにの情報処理装置と、前記移動体を移動させる移動手段と、前記環境内の異なる位置として前記環境内の異なる二位置までの距離を検出する第1の距離センサおよび第2の距離センサと、前記第1の距離センサおよび前記第2の距離センサを制御するとともに前記判定手段として機能する制御手段と、を備え、前記第2の距離センサにより検出する第2の位置は、前記移動体の移動方向に沿って前記第1の距離センサにより検出する第1の位置よりも前記移動体に近い位置に設定されることを特徴とする。
【0016】
このような本発明の移動ロボットによれば、前述の情報処理装置と同様に、移動体の移動距離ごとの第2測定値群同士を比較して環境の変化を判定することで、移動体の移動速度等による影響を低減し、環境変化の検知精度を向上させることができる。また、移動体の移動方向に沿った前方の第1の位置までの距離を第1の距離センサで検出し、第1の位置よりも後方の第2の位置までの距離を第2の距離センサとで検出し、これにより二組の第1測定値群を得ることで、移動体の移動に伴って前方に出現する環境変化を確実に検出することができる。したがって、移動ロボット(移動体)は、移動する際に障害物や段差等を回避したり乗り越えたりの判断を適切に行うことができる。
【0017】
本発明では、前記制御手段は、前記第1の距離センサおよび前記第2の距離センサにて検出された前記第1の位置および前記第2の位置までの距離の変化を取得する距離変化取得部と、前記距離変化取得部にて取得された前記第1の位置および前記第2の位置までの距離の変化を比較する距離変化比較部と、前記距離変化比較部にて比較された結果に基づいて、前記移動体の姿勢の変化に起因する距離の変化と、前記環境の変化に起因する距離の変化とを判別する距離変化判別部と、を備えることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、距離変化判別部は、移動体の姿勢の変化に起因する距離の変化(同位相の変化)と、環境の変化(障害物や段差等)に起因する距離の変化(位相差を有する変化)とを判別するので、制御手段(判定手段)は、移動体の姿勢の変化に起因する距離の変化を除外しつつ、環境の変化に起因する距離の変化に基づくことにより、環境の変化を正確に検出することができる。したがって、移動体の姿勢変化が第1測定値群の測定値に与える影響を低減して測定精度を向上させることができ、これにより環境変化の検知精度をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る移動ロボットの側面図
図2】前記移動ロボットの平面図
図3】前記移動ロボットのブロック図
図4】前記移動ロボットの動作を示す図
図5】前記移動ロボットによる測定情報を示す概念図
図6】前記移動ロボットの姿勢変化による測定情報を示す概念図
図7】前記移動ロボットにおける情報処理装置の処理手順を示すフローチャート
図8】前記移動ロボットの車高調整動作を示す図
図9】前記移動ロボットによる測定動作を示す概念図
図10図9と速度が異なる前記移動ロボットによる測定動作を示す概念図
図11】前記測定動作により得られる第1測定値群を示すグラフ
図12】前記第1測定値群を加工して生成した第2測定値群を示すグラフ
図13】前記第2測定値群を比較して環境の変化を判定する手順を示す図
図14】前記移動ロボットの変形例を示す平面図
図15】前記移動ロボットの他の変形例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図1図13に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る移動ロボットの側面図であり、図2は、移動ロボットの平面図である。図3は、移動ロボットのブロック図である。図1~3に示すように、移動ロボット1は、例えば、部屋(環境)内の所定の面である床面Fに沿って走行する移動体としてのロボット本体1Aと、ロボット本体1Aの各部を駆動制御して自律走行させるための制御手段2と、ロボット本体1Aの周辺の対象物やロボット本体1Aの姿勢を検出するための検出手段3と、ロボット本体1Aを移動させるための移動手段4と、を備える。また、図3に示すように、制御手段2と検出手段3とによって、移動ロボット1の移動情報を処理する情報処理装置5が構成されている。
【0021】
制御手段2は、CPU等の演算手段やROM、RAM等の記憶手段を備えてロボット本体1Aの動作を制御するものであって、図3に示すように、移動手段4を駆動制御するための移動制御部21と、検出手段3を駆動制御するための検出制御部22と、後述するように移動ロボット1の移動情報を処理するための距離変化取得部23、距離変化比較部24、距離変化判別部25および信頼度評価部26と、各種のプログラムやデータを記憶するための記憶部27と、を備える。
【0022】
検出手段3は、例えば、ロボット本体1Aの前部に設けられた前方センサである第1の距離センサ31および第2の距離センサ32と、これらの距離センサ31,32が距離を検出する方向を変更するセンサ方向変更部33と、ロボット本体1Aの姿勢を検出するための姿勢検出手段34と、を備える。第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、ロボット本体1Aの前部にそれぞれ複数ずつ設けられ、ロボット本体1Aの前方の対象物までの距離を測定するためのものであって、例えば、赤外線レーザー等のレーザー光を照射して距離を測定するレーザー距離計で構成されている。センサ方向変更部33は、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32を上下方向に回動させることでレーザー光の照射方向を変更する。姿勢検出手段34は、例えば、加速度センサで構成され、ロボット本体1Aの水平面に対する傾きなどを検出する。
【0023】
図1、2に示すように、複数の第1の距離センサ31は、ロボット本体1Aの移動方向D1前方の床面Fにおける第1の位置P1までの距離を検出し、複数の第2の距離センサ32は、移動方向D1前方の床面Fにおける第2の位置P2までの距離を検出する。また、複数の第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、図2に示すように、ロボット本体1Aの移動方向D1と交差する交差方向D2に沿って設定された複数の第1の位置P1および複数の第2の位置P2までの距離を検出する。第2の位置P2は、ロボット本体1Aの移動方向D1に沿って第1の位置P1よりもロボット本体1Aに近い位置に設定され、平坦な床面Fにおいて第1の位置P1と第2の位置P2との距離差Lは所定値に設定されている。第2の距離センサ32は、第1の距離センサ31よりも低い分解能を有しており、すなわち、第1の距離センサ31は、距離の分解能が高い(細かい)センサで構成され、第2の距離センサ32は、距離の分解能が第1の距離センサ31よりも低い(粗い)センサで構成されている。
【0024】
移動手段4は、モータなどを有する駆動部41と、前後左右の四輪の車輪42と、前輪の高さを変更してロボット本体1Aの車高を調整する車高調整部43と、を備える。駆動部41は、左右の後輪である車輪42を各々独立して回転駆動することで、ロボット本体1Aを前進または後進させたり方向転換させたりする。車高調整部43は、左右の前輪である車輪42を上下方向に変位させることで、ロボット本体1Aの車高を調整する。
【0025】
図4は、移動ロボットの動作を示す図であり、図5は、移動ロボットによる測定情報を示す概念図である。図4(A)に示すように、移動ロボット1が床面Fに沿って移動方向D1前方に向かって走行しているとき、第1の距離センサ31が床面Fの第1の位置P1までの距離を検出し、第2の距離センサ32が床面Fの第2の位置P2までの距離を検出する。第1の距離センサ31による測定データは、制御手段2の距離変化取得部23に送信され、距離変化取得部23は、床面Fまでの距離の変化を取得し、図5(A)に示すように、その距離の変化に基づき第1の変化値S1を時系列に記憶部27に記憶する。第2の距離センサ32による測定データは、距離変化取得部23に送信され、距離変化取得部23は、床面Fまでの距離の変化を取得し、図5(B)に示すように、その距離の変化に基づき第2の変化値S2を時系列に記憶部27に記憶する。このとき、床面Fが平坦であれば、変化値S1,S2にも変化がない(すなわち、変化値S1,S2がゼロ)か、変化値S1,S2には微小な値しか表れない。
【0026】
次に、図4(B)に示すように、移動ロボット1の移動方向D1前方の床面Fに物体Mが存在する場合、第1の位置P1が物体Mに到達し、第1の距離センサ31が物体Mまでの距離を検出すると、距離変化取得部23は、図5(A)に示すように、床面Fまでよりも近くなった距離の変化を取得し、第1の変化値S1aとして記憶部27に記憶する。さらに、図4(C)に示すように、第2の位置P2が物体Mに到達し、第2の距離センサ32が物体Mまでの距離を検出すると、距離変化取得部23は、図5(B)に示すように、床面Fまでよりも近くなった距離の変化を取得し、第2の変化値S2aとして記憶部27に記憶する。この際、第1の位置P1が物体Mよりも前方になれば、第1の距離センサ31によって床面Fまでの距離が測定されることから、再び第1の変化値S1はゼロか微小な値となる。さらに、図4(D)に示すように、第2の位置P2が物体Mよりも前方になれば、再び第2の変化値S2はゼロか微小な値となる。
【0027】
このようにして第1の変化値S1および第2の変化値S2が得られると、制御手段2の距離変化比較部24は、第1の変化値S1と第2の変化値S2とを比較する。距離変化比較部24による比較方法としては、例えば、図5(C)に示すように、第1の変化値S1と第2の変化値S2との差分をとった差分値S3を算出し、その差分値S3に残る第1の差分値S3aと第2の差分値S3bとの時間差T1を算出する。距離変化判別部25は、距離変化比較部24にて比較された第1の変化値S1と第2の変化値S2との差分値S3に基づいて、移動ロボット1の姿勢の変化に起因する距離の変化(同位相の変化)と、床面Fの形状に起因する距離の変化(位相差を有する変化)とを判別する。具体的には、第1の差分値S3aと第2の差分値S3bとが所定の閾値以上となる値であって、その発生する時間差T1が移動ロボット1の速度に応じた時間差(位相差)であれば、距離変化判別部25は、変化値S1a,S2aを床面Fの形状(すなわち、物体M)に起因する距離の変化であると判別する。ここで、移動ロボット1の速度に応じた時間差とは、第1の位置P1と第2の位置P2との距離差Lを移動ロボット1の速度で除して求まる時間差である。
【0028】
一方、移動ロボット1の姿勢の変化に起因する距離の変化としては、図6に示す場合が例示できる。図6は、移動ロボットの姿勢変化による測定情報を示す概念図である。図6(A)には、第1の距離センサ31が検出した床面Fの第1の位置P1までの距離に基づき、距離変化取得部23が取得した床面Fまでの距離の変化値S1が示されている。図6(B)には、第2の距離センサ32が検出した床面Fの第2の位置P2までの距離に基づき、距離変化取得部23が取得した床面Fまでの距離の変化値S2が示されている。ここで、変化値S1b,S2bの発生タイミングがほぼ同時である場合、距離変化比較部24によって算出される第1の変化値S1と第2の変化値S2との差分である差分値S3は、図6(C)に示すようにほぼゼロとなる。このように差分値S3がほぼゼロである場合、距離変化判別部25は、変化値S1b,S2bの発生タイミングに時間差(位相差)がないものであり、床面Fの形状に起因するものではなく移動ロボット1の姿勢の変化に起因する距離の変化であると判別する。
【0029】
また、検出手段3の姿勢検出手段34は、移動ロボット1の姿勢の変化を検出する。すなわち、車輪42が床面Fにある細かい凹凸、フローリングやタイルの継ぎ目、カーペットの段差などにより、ロボット本体1Aが振動したり床面Fに対して前後左右に傾くように揺れたりすると、その振動や傾き、揺れなどの姿勢変化を姿勢検出手段34が検出して検出制御部22に送信する。このようにロボット本体1Aの姿勢変化が検出されると、制御手段2の信頼度評価部26は、距離変化取得部23にて取得された第1の変化値S1および第2の変化値S2の信頼度を評価する。さらに、距離変化比較部24は、信頼度評価部26の評価結果に基づいて、第1の変化値S1および第2の変化値S2を比較するか否かを決定する。すなわち、そのときの変化値S1,S2が信頼できないものであると信頼度評価部26が評価した場合には、前述したような距離変化比較部24による第1の変化値S1と第2の変化値S2との比較を実行しない。
【0030】
以上のような情報処理装置5(制御手段2および検出手段3)による移動ロボット1の移動情報を処理する手順について、図7も参照して説明する。図7は、移動ロボットにおける情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。情報処理装置5は、図7に示すステップST1~ST9を所定周期(例えば、0.1秒程度の短時間)で繰り返すことで移動ロボット1の移動情報を処理する。
【0031】
移動ロボット1の移動中に制御手段2が移動情報処理を開始すると、検出制御部22は、第1の距離センサ31に第1の位置P1までの距離を検出させるとともに(第1距離検出工程:ステップST1)、第2の距離センサ32に第2の位置P2までの距離を検出させる(第2距離検出工程:ステップST2)。また、検出制御部22は、姿勢検出手段34にロボット本体1Aの姿勢変化を検出させる(姿勢変化検出工程:ステップST3)。距離検出工程(ステップST1,ST2)にて第1の位置P1および第2の位置P2までの距離を検出すると、距離変化取得部23は、床面Fまでの距離の変化を取得し、変化値S1,S2を記憶部27に記憶させる(距離変化取得工程:ステップST4)。さらに、距離変化取得部23は、取得した変化値S1,S2に基づいて後述する学習モデルを用いた判定手法により走行環境の変化を判定する(環境変化判定工程:ステップST5)。姿勢変化検出工程(ステップST3)にてロボット本体1Aの姿勢変化を検出すると、信頼度評価部26は、そのときの変化値S1,S2の信頼度を評価する(信頼度評価工程:ステップST6)。
【0032】
信頼度評価工程(ステップST6)において、変化値S1,S2に信頼度が無いものと判断した場合(ステップST6でNO)、制御手段2は、第1距離検出工程(ステップST1)に戻って、前述の各ステップST1~ST6を繰り返す。信頼度評価工程(ステップST6)において、変化値S1,S2に信頼度が有るものと判断した場合(ステップST6でYES)、制御手段2は、次のステップST8を実行する。すなわち、距離変化比較部24は、第1の変化値S1と第2の変化値S2との差分をとった差分値S3を算出する(距離変化比較工程:ステップST8)。次に、距離変化判別部25は、差分値S3に基づいて、移動ロボット1の姿勢の変化に起因する距離の変化と、床面Fの形状に起因する距離の変化とを判別し(距離変化判別工程:ステップST9)、その後、第1距離検出工程(ステップST1)に戻る。
なお、本実施形態では、ステップST5の環境変化判定工程は、ステップST9の距離変化判別工程の前に実行しているが、距離変化判別工程の後に実行するようにしてもよく、この場合には、移動ロボット1の姿勢の変化に起因する距離の変化ではなく、床面Fの形状に起因する距離の変化であると距離変化判別部25にて判別された場合にのみ、環境変化判定工程を実行するようにしてもよい。
【0033】
以上のように移動ロボット1の移動情報を処理することで、制御手段2は、ロボット本体1Aの移動方向D1前方の床面Fが平坦で走行可能か、あるいは、ロボット本体1Aの移動方向D1前方の床面Fに凹凸や障害物(物体M)などが存在するか、を常時判別しつつ移動手段4によってロボット本体1Aを走行させる。ロボット本体1Aの移動方向D1前方の床面Fに障害物(物体M)が存在した場合、その物体Mの床面Fからの高さも判別されるため、制御手段2は、物体Mが乗り越えられるか否かを判定する。物体Mが乗り越えられないと判定した場合、制御手段2は、物体Mを回避するように移動制御部21によって移動手段4を駆動制御させる。ロボット本体1Aの車高を調整することなく物体Mが乗り越えられると判定した場合、制御手段2は、移動制御部21による移動手段4の駆動制御を継続して物体Mを乗り越えさせる。
【0034】
一方、ロボット本体1Aの車高を調整すれば物体Mが乗り越えられると判定した場合、制御手段2は、移動制御部21によって車高調整部43を駆動制御し、図8に示すように、左右の前輪である車輪42を下向きに変位させることで、ロボット本体1Aの前方側の車高を上げる。図8は、移動ロボットの車高調整動作を示す図である。図8(A)に示すように、車高調整部43によってロボット本体1Aの前方側の車高を上げると、ロボット本体1Aの姿勢が変化することから、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32の方向が変化する。この姿勢変化を姿勢検出手段34が検出すると、制御手段2は、検出制御部22によってセンサ方向変更部33を駆動制御し、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32の方向を下向きに変更する。また、図8(B)に示すように、前輪である車輪42が物体Mに乗り上げてロボット本体1Aの姿勢がさらに変化すると、姿勢検出手段34の検出に基づき、検出制御部22の制御によりセンサ方向変更部33が第1の距離センサ31および第2の距離センサ32の方向をさらに下向きに変更する。
【0035】
次に、情報処理装置5による走行環境の変化(床面Fの段差や凹凸、障害物である物体Mなどの有無)の判定手法について、図9図13も参照して詳しく説明する。図9、10は、移動ロボットによる測定動作を示す概念図であり、図10(A)は、図9の場合よりも移動ロボットの移動速度が速い場合を示し、図10(B)は、図9の場合よりも移動ロボットの移動速度が遅い場合を示している。図11は、移動ロボットの測定動作により得られる第1測定値群を示すグラフであり、図12は、第1測定値群を加工して生成した第2測定値群を示すグラフである。図13は、第2測定値群を比較して環境の変化を判定する手順を示す図である。情報処理装置5の制御手段2は、走行環境の変化を判定する判定手段として機能する。
【0036】
図9、10に示すように、移動ロボット1の移動に伴い、第1の距離センサ31は、ロボット本体1Aの移動方向D1前方の床面Fにおける第1の位置P1までの距離を検出し、第2の距離センサ32は、移動方向D1前方の床面Fにおける第2の位置P2までの距離を検出する。これら第1および第2の距離センサ31,32による距離の検出は、略同時に実行されるとともに、所定の時間間隔(例えば、0.01秒間隔)で連続的に実行される。第1の距離センサ31により検出された第1の位置P1までの距離、および第2の距離センサ32により検出された第2の位置P2までの距離は、それぞれ連続したサンプリングデータである二組(複数組)の第1測定値群S11,S12として、それぞれ記憶部27に記憶される(図11参照)。ここで、図10(A)に示すように、図9の場合よりも移動ロボット1の移動速度が速い場合には、第1測定値群S11,S12の間隔が広くなり、図10(B)に示すように、図9の場合よりも移動ロボット1の移動速度が遅い場合には、第1測定値群S11,S12の間隔が狭くなる。
【0037】
図11(A)は、第1の距離センサ31により検出された第1の位置P1までの距離の測定値である第1測定値群S11を示し、図11(B)は、第2の距離センサ32により検出された第2の位置P2までの距離の測定値である第1測定値群S12を示している。図11(A)に示すように、第1の位置P1までの距離(第1測定値群S11)は、測定時間が0.6秒あたりまでは150mm前後の略一定値を示し、0.6秒を過ぎたところで急激に低下し、これは第1の位置P1が物体Mに到達したことを示している。図11(B)に示すように、第2の位置P2までの距離(第1測定値群S12)は、測定時間が0.7秒あたりまでは65~70mm前後の略一定値を示し、0.7秒を過ぎたところで急激に低下し、これは第2の位置P2が物体Mに到達したことを示している。
【0038】
制御手段2は、以上のようにして所定の時間間隔ごとに得た二組の第1測定値群S11,S12を加工し、移動ロボット1の移動距離ごと(例えば、10mm間隔ごと)の二組の第2測定値群S21,S22を生成する。具体的には、記憶部27に記憶された過去の第1測定値群S11,S12から所定時間分(例えば図11にAで示す範囲)の測定値を取り出し、取り出した第1測定値群S11,S12を移動ロボット1の移動距離あたりの測定値に変換することで、図12に示すように二組の第2測定値群S21,S22が生成される。ここで、第1測定値群S11,S12を取り出す過去の所定時間の範囲としては、例えば、その時間で移動ロボット1の移動距離が150mmとなる範囲である。
【0039】
図12において、実線は第1の位置P1までの距離の測定値から生成した第2測定値群S21であり、破線は第2の位置P2までの距離の測定値から生成した第2測定値群S22である。このように第2測定値群S21,S22を生成する際、制御手段2は、移動ロボット1の車輪42の回転数などから移動距離を検出しておき、この距離測定値に基づいて第1測定値群S11,S12を補間し、これにより第2測定値群S21,S22を生成する。具体的には、第1測定値群S11,S12の各測定値を測定した時刻に対して移動距離を当てはめ、測定値の間を一次補間して移動距離に対応させるとともに、移動距離ごとに測定値をリサンプリングすることで第2測定値群S21,S22を生成する。このように第1測定値群S11,S12を補間してリサンプリングすることで、移動ロボット1の移動速度の変動などにより第1測定値群S11,S12の間隔がばらついた場合でも、移動距離ごとの第2測定値群S21,S22に生じるばらつきの影響を抑制することができる。
なお、本実施形態では、測定値の間は、一次補間して移動距離に対応させているが、他の補間法を採用してもよい。
【0040】
制御手段2は、以上のようにして移動ロボット1の移動距離ごとの二組の第2測定値群S21,S22を生成したら、これら二組の第2測定値群S21,S22を入力値とし、学習モデルを用いて走行環境の変化の有無を判定する。具体的には、制御手段2は、図13に示すように、二組の第2測定値群S21,S22を入力1、入力2とし、畳み込み層、プーリング層、結合層を有し、走行環境の変化の有無を出力するニューラルネットワークを用いて走行環境の変化の有無を判定する。入力された二組の第2測定値群S21,S22は、畳み込み層において所定の重み係数を有したフィルタによって畳み込み処理が実行され、それぞれの特徴が抽出されるとともにデータ量が縮小されてからプーリング層に出力される。さらに、プーリング層おいて、二組の第2測定値群S21,S22は、それぞれの特徴を維持しつつ所定の重み係数を有したフィルタによって縮小処理されてから結合層に出力される。結合層では、プーリング層から出力された第2測定値群S21,S22それぞれの特徴を重ね合わせて比較し、比較結果を出力する。学習モデルは、この比較結果に基づいて走行環境の変化の有無を判定する。なお、学習モデルとしては、畳み込み層、プーリング層、および結合層からなる中間層を複数有した深層学習モデルを採用してもよいし、その他の適宜な学習モデルであってもよい。
【0041】
以上のような学習モデルにおいて、各層で用いられる重み係数は、事前の学習により設定されている。この学習は、段差や凹凸、障害物等の環境変化のある環境において実行され、前述したように生成される第2測定値群S21,S22を学習モデルに入力することで出力(環境の変化の有無)を得るとともに、得られた出力が実際の環境の変化に適合しているか否かを教示する工程を繰り返し実行する。このように入力と出力、その出力に対する教示を行うことで、学習モデルが自ら重み係数を変更し、適切な重み係数となるまで学習を繰り返す。このような繰り返し学習の結果得られた重み係数を実用値として記憶部27に記憶させ、移動ロボット1の実稼働に利用する。
【0042】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)移動ロボット1の判定手段である制御手段2は、所定の時間間隔ごとに検出した二組の第1測定値群S11,S12を加工して二組の第2測定値群S21,S22を生成し、生成した移動ロボット1の移動距離ごとの第2測定値群S21,S22同士を比較して環境の変化(床面Fの段差や凹凸、障害物である物体Mなどの有無)を判定することで、移動ロボット1の移動速度等による影響を低減し、環境変化の検知精度を向上させることができる。
【0043】
(2)判定手段である制御手段2は、移動ロボット1の車輪42の回転数などから検出した距離測定値に基づいて第1測定値群S11,S12の測定値間を補間するとともに移動距離ごとの値にリサンプリングして第2測定値群S21,S22を生成することで、環境内を移動する移動ロボット1の位置を適切に反映した第2測定値群S21,S22を得ることができ、環境変化の検知精度をさらに向上させることができる。
【0044】
(3)判定手段である制御手段2は、予め学習により重み係数が設定された学習モデルに基づいて環境の変化の有無を出力として得るので、様々な環境変化のパターンに対応することができる。また、第2測定値群S21,S22は、移動ロボット1の移動速度等による影響を受けた第1測定値群S11,S12と比較して学習モデルに対する親和性が高く、制御手段2は、学習モデルに第2測定値群S21,S22を入力して環境の変化の有無を出力として得るので、学習モデルに第1測定値群S11,S12を直に入力して環境の変化の有無を出力として得る場合と比較して良好な判定結果を得ることができる。
【0045】
(4)移動ロボット1の制御手段2は、距離変化判別部25によってロボット本体1Aの姿勢変化に起因する距離の変化(同位相の変化)と、環境内の床面Fの形状に起因する距離の変化(位相差を有する変化)とを判別し、ロボット本体1Aの姿勢変化に起因する距離の変化を除外しつつ、床面Fの形状に起因する距離の変化に基づくことにより、凹凸や障害物などの対象物を正確に検出することができる。したがって、ロボット本体1Aの姿勢変化が距離測定に与える影響を低減し、床面Fに存在する凹凸や障害物などの対象物までの距離の測定精度を向上させることができる。
【0046】
(5)第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、ロボット本体1Aの移動方向D1と交差する交差方向D2に沿った複数の第1の位置P1および第2の位置P2までの距離を検出することで、床面Fの形状に起因する距離の変化をロボット本体1Aに対応した幅で検出することができる。
【0047】
(6)第2の距離センサ32は、第1の距離センサ31よりも低い分解能を有していることで、移動方向D1に沿って第1の位置P1よりもロボット本体1Aに近い位置にある第2の位置P2までの距離を検出する際に、第1の距離センサ31にて検出された第1の位置P1までの距離の変化とのバランスを取ることができる。このため、距離変化判別部25は、ロボット本体1Aの姿勢変化に起因する距離の変化と、床面Fの形状に起因する距離の変化とを判別しやすくすることができる。
【0048】
(7)距離変化比較部24は、信頼度評価部26の評価結果に基づいて、距離変化取得部23にて取得された第1の位置P1および第2の位置P2までの距離の変化を比較するか否かを決定するので、信頼度の低い第1の位置P1および第2の位置P2までの距離の変化を比較しないようにすることができ、計算コストを削減することができる。
【0049】
(8)制御手段2は、姿勢検出手段34が検出したロボット本体1Aの姿勢変化に基づき、センサ方向変更部33によって第1の距離センサ31および第2の距離センサ32の方向を変更し、床面Fに対する所定方向の距離を検出できるようにすることで、ロボット本体1Aの姿勢が変化した場合であっても確実に環境内の床面Fまでの距離を検出することができる。
【0050】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、移動ロボット1として具体的なものを例示しなかったが、移動ロボットとしては、サービスロボットやホームロボットなどであって、より具体的には、掃除ロボットや警備ロボット、運搬ロボット、案内ロボットなどが例示できる。さらに、移動体の移動範囲は、二次元平面空間に限らず、三次元空間であってもよく、その場合には移動体がドローンなどの飛行体であってもよい。また、環境内の所定の面としては、床面Fなどの水平面に限らず、鉛直面や傾斜面などの平面であってもよいし、適宜な曲面であってもよい。
【0051】
前記実施形態では、情報処理装置5を構成する制御手段2および検出手段3が移動体であるロボット本体1Aに設けられていたが、制御手段2の全部または一部は、ロボット本体1Aではなく、ロボット本体1Aと通信可能な他の機器に設けられ、他の機器によって制御手段2の全部または一部の機能が構成されていてもよい。また、本発明の情報処理装置は、移動ロボット1に適用される以外に、自動運転自動車や作業車、飛行体などの移動体の移動情報を処理する用途に利用することも可能である。また、移動体は、移動ロボット1のように移動手段4を備えたものに限らず、他の装置や人などによって移動される台車などであってもよい。
【0052】
前記実施形態では、判定手段である制御手段2が学習モデルによって環境の変化を判定したが、学習モデルを用いずに、環境変化のパターンを数値化した閾値を予め設定しておいてもよい。
前記実施形態では、制御手段2は、移動ロボット1の車輪42の回転数などから検出した距離測定値に基づいて第1測定値群S11,S12の測定値間を補間するとともに移動距離ごとの値にリサンプリングして第2測定値群S21,S22を生成したが、複数組の第1測定値群を加工して移動体の移動距離ごとの複数組の第2測定値群を生成することができれば、本実施形態とは異なる手法を採用してもよい。
【0053】
前記実施形態では、信頼度評価部26の評価結果に基づいて、距離変化取得部23にて取得された第1の位置P1および第2の位置P2までの距離の変化を比較するか否かを距離変化比較部24が決定し、信頼度が低い場合には距離の変化を比較しないように構成されていたが、信頼度に関わらず全ての距離の変化を比較するように構成されていてもよい。また、前記実施形態では、姿勢検出手段34によってロボット本体1Aの姿勢変化を検出し、センサ方向変更部33によって第1の距離センサ31および第2の距離センサ32の方向を変更したが、姿勢検出手段34やセンサ方向変更部33は本発明に必須の構成ではなく、適宜に省略することができる。
【0054】
前記実施形態では、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32がレーザー光を照射して距離を測定するレーザー距離計で構成されていたが、距離センサは、レーザー距離計に限らず、赤外線センサやLIDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)などの光学センサでもよいし、超音波センサでもよく、さらには、カメラと撮像素子を有した画像センサでもよい。また、前記実施形態では、姿勢検出手段34として、加速度センサを例示したが、これに限らず、ジャイロセンサであってもよい。また、前記実施形態では、姿勢検出手段34がロボット本体1Aの振動や傾き、揺れなどの細かい姿勢変化、および車高調整部43による車高の変化や物体Mへの乗り上げによるロボット本体1Aの大きな姿勢変化の両方を検出する構成であったが、細かい姿勢変化を検出する第1の姿勢検出手段と、大きな姿勢変化を検出する第2の姿勢検出手段と、がそれぞれ別のセンサによって構成されていてもよい。
【0055】
前記実施形態では、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32がロボット本体1Aの前部にそれぞれ複数ずつ設けられていたが、これに限らず、図14に示すような構成が採用できる。図14は、移動ロボットの変形例を示す平面図である。図14_に示すように、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、ロボット本体1Aの前部中央に各1個ずつ設けられるとともに、左右に回動可能に設けられ、これによって交差方向D2に沿った複数の第1の位置P1および第2の位置P2までの距離を検出するように構成されている。
【0056】
前記実施形態では、第1の距離センサ31と第2の距離センサ32とが別体のセンサで構成されていたが、これに限らず、図15に示すような構成が採用できる。図15は、移動ロボットの他の変形例を示す側面図である。図15に示すように、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、単一のセンサで構成され、この距離センサ31,32の上下方向の検出範囲に応じて、第1の位置P1と第2の位置P2とが識別されるように構成されている。また、単一の距離センサ31,32がセンサ方向変更部33によって上下に回動されることで、ロボット本体1Aからの検出距離が変更され、これにより第1の位置P1および第2の位置P2までの距離を検出する構成であってもよい。また、第2の距離センサ32は、第1の距離センサ31よりも低い分解能を有したものに限らず、第1の距離センサ31と第2の距離センサ32とが同じ分解能を有したものでもよいし、第2の距離センサ32が第1の距離センサ31よりも高い分解能を有したものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明は、移動体の姿勢変化による影響を低減して対象物までの距離の測定精度を向上させることができる情報処理装置および移動ロボットに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 移動ロボット
1A ロボット本体(移動体)
2 制御手段(判定手段)
3 検出手段
4 移動手段
5 情報処理装置
23 距離変化取得部
24 距離変化比較部
25 距離変化判別部
31 第1の距離センサ
32 第2の距離センサ
F 床面(所定の面)
M 物体(環境の変化)
P1 第1の位置
P2 第2の位置
S11,S12 第1測定値群
S21,S22 第2測定値群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15