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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】骨固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/72 20060101AFI20230207BHJP
   A61B 17/76 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A61B17/72
A61B17/76
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021130448
(22)【出願日】2021-08-10
(62)【分割の表示】P 2017118714の分割
【原出願日】2017-06-16
(65)【公開番号】P2021178213
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】393024186
【氏名又は名称】株式会社ホムズ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】堀江 誠
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009803(JP,A)
【文献】特開2015-073843(JP,A)
【文献】特開平02-021859(JP,A)
【文献】特開2005-205201(JP,A)
【文献】特表2012-507355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/72 - 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に係合する骨係合部、及び、該骨係合部から延びる軸部を含み、該軸部に骨固定具側係合部を備えた骨固定具と、骨の内部若しくは表面に配置されるインプラント本体であって、前記骨固定具の前記軸部が挿通される挿通孔を備えるとともに、前記挿通孔の内部に配置された前記骨固定具側係合部と係合することにより前記骨固定具を前記インプラント本体に対して保持する本体側係合部を含む、前記インプラント本体と、を具備し、
前記本体側係合部は係合部材に設けられ、前記本体側係合部が前記骨固定具側係合部から離間する離隔配置と、前記本体側係合部が前記骨固定具側係合部に係合する係合配置との間で、前記係合部材が前記インプラント本体の軸線に沿って移動可能に構成され、
前記本体側係合部が第1の前記骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記骨固定具に対して前記軸線の方向へ当接する前に、前記インプラント本体若しくは前記インプラント本体に保持された部材に当接して移動限界位置に達し、前記軸線の方向に規制されることにより位置決めされ、
前記本体側係合部が前記第1の骨固定具側係合部とは異なる第2の前記骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記移動限界位置に達する前に、前記骨固定具に当接して前記軸線の方向に規制されることにより位置決めされる、
骨固定装置。
【請求項2】
前記係合部材若しくは前記係合部材を位置決めする部材と、前記インプラント本体若しくは前記インプラント本体に保持された部材とが前記挿通孔と交差する軸線の周りに螺合する螺合構造が設けられ、前記係合部材の前記離隔配置と前記係合配置とが前記螺合構造の螺合深さの変化によりそれぞれ実現される、
請求項1に記載の骨固定装置。
【請求項3】
前記離隔配置では、前記本体側係合部が前記挿通孔の内部へ突出せず、前記係合配置では、前記本体側係合部が前記挿通孔の内部に突出する、
請求項1又は2に記載の骨固定装置。
【請求項4】
前記本体側係合部と前記骨固定具側係合部の係合は、前記インプラント本体に対する前記骨固定具の軸線の周りの前記骨固定具の回転を規制する、
請求項1-3のいずれか一項に記載の骨固定装置。
【請求項5】
骨に係合する骨係合部、及び、該骨係合部から延びる軸部を含み、該軸部に骨固定具側係合部を備えた骨固定具と、骨の内部若しくは表面に配置されるインプラント本体であって、前記骨固定具の前記軸部が挿通される挿通孔を備えるとともに、前記挿通孔の内部に配置された前記骨固定具側係合部と係合することにより前記骨固定具を前記インプラント本体に対して保持する本体側係合部を含む、前記インプラント本体と、を具備し、
前記骨固定具は、前記本体側係合部とそれぞれが係合可能な第1の前記骨固定具側係合部と第2の前記骨固定具側係合部とを含み、
前記本体側係合部は係合部材に設けられ、前記本体側係合部が前記第1の骨固定具側係合部及び前記第2の骨固定具側係合部から離間する離隔配置と、前記本体側係合部が前記骨固定具側係合部に係合する係合配置との間で、前記係合部材が前記インプラント本体の軸線に沿って移動可能に構成され、
前記本体側係合部が前記第1の骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記骨固定具に対して前記軸線の方向へ当接する前に、前記インプラント本体若しくは前記インプラント本体に保持された部材に当接して移動限界位置に達し、前記軸線の方向に規制されることにより位置決めされ、
前記本体側係合部が前記第2の骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記移動限界位置に達する前に、前記骨固定具に当接して前記軸線の方向に規制されることにより位置決めされる、
骨固定装置。
【請求項6】
前記本体側係合部が前記第2の前記骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記第1の骨固定具側係合部の前記本体側係合部と前記インプラント本体の軸線の方向に対面する部分よりも前記隔離位置の側に設けられた前記第2の骨固定具側係合部の対応する部分に当接して前記インプラント本体の軸線の方向に規制されることにより位置決めされる、
請求項1-5のいずれか一項に記載の骨固定装置。
【請求項7】
前記骨固定具側係合部は前記骨固定具の外面に形成された凹溝若しくは凸条であり、
前記本体側係合部は前記骨固定具側係合部に嵌合可能な凸部若しくは凹部である、
請求項6に記載の骨固定装置。
【請求項8】
前記第1の骨固定具側係合部は、前記本体側係合部を収容する相対的に深い内底部、若しくは、前記本体側係合部に収容される相対的に低い頂部を有し、
前記第2の骨固定具側係合部は、前記本体側係合部を収容する相対的に浅い内底部、若しくは、前記本体側係合部に収容される相対的に高い頂部を備える、
請求項7に記載の骨固定装置。
【請求項9】
前記第1の骨固定具側係合部は、前記本体側係合部を収容する相対的に広い第1の溝内幅、若しくは、前記本体側係合部に収容される相対的に狭い第1の凸条幅を有し、
前記第2の骨固定具側係合部は、前記本体側係合部を収容する相対的に狭い第2の溝内幅、若しくは、前記本体側係合部に収容される相対的に広い第2の凸条幅を備える、
請求項7に記載の骨固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨を固定するために用いられる骨固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、骨を固定するために用いられる各種の骨固定装置が知られている。このような骨固定装置としては、ねじ、釘、ピンなどの骨と係合する骨係合部を備えた骨固定具が単独で用いられる場合があるが、このような骨固定具と、この骨固定具を挿通するように構成され、骨に対して所定の位置に配置されるインプラント本体とを備えたものが多く用いられている。例えば、大腿骨近位部の骨折治療に用いられる骨固定装置を例として述べると、上記インプラント本体に相当する髄内釘本体を大腿骨の髄腔に挿入し、髄内釘本体に設けられた横断孔に上記骨固定具に相当するラグスクリュー(ねじ)を挿通することにより、大腿骨近位部の骨折箇所を固定するように用いられる髄内固定装置がある(例えば、以下の特許文献1及び2を参照)。
【0003】
上記の髄内固定装置においては、大腿骨の髄腔内の髄内釘本体の横断孔にラグスクリューを挿通し、大腿骨の骨頭部に向けてねじ込むことにより、近位部の骨折箇所よりも骨頭部の側にラグスクリューの先端部のねじを係合させるとともに、髄内釘本体の軸孔にねじ結合などで配置されたセットスクリューなどの係合部材の先端部をラグスクリューの外周面に形成された凹溝に係合させることにより、ラグスクリューを髄内釘本体に対して所定の態様で保持する。この場合に、係合部材をラグスクリューに強く押し付けると、ラグスクリューは、その軸線方向にもロックされたスライドロック状態となる。一方、係合部材を少し戻してその先端部が凹溝の内底面から離れた状態にすることにより、ラグスクリューは、その軸線方向に移動可能なスライドフリー状態となる。
【0004】
また、CHS(圧縮ヒップねじ)システムでは、筒状のバレル部とプレート部を備えたインプラント本体を大腿骨の外側部上に設置した状態で、上記バレル部を骨頭部に向けて穿孔した部分に挿入し、当該バレル部を通してラグスクリューを骨頭部に向けてねじ込むとともに、上記プレート部を皮質スクリューで骨幹部に固定する(例えば、以下の特許文献3を参照)。なお、上記のバレル部を備えない、単に複数のねじ孔を備えたプレートと、このプレートの一つのねじ孔に挿通して骨に係合するスクリュー(ねじ)を備えたプレートシステムも知られている(例えば、以下の特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平02-21859号公報
【文献】特開2000-342596号公報
【文献】特開2002-065687号公報
【文献】特開2004-097446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記髄内固定装置において、ラグスクリューを髄内釘本体に対して所望の状態において保持しようとすると、セットスクリューなどの係合部材の先端部がラグスクリューの凹溝に係合する態様を精密に設定しなければならないため、熟練を要する場合がある。例えば、特許文献1に記載のシステムでは、骨折態様に応じてラグスクリューを髄内釘本体に対して上記スライドフリー状態とすることがあるが、このスライドフリー状態では、セットスクリューなどの係合部材のねじ込み態様をスライドロック状態に対応する突き当り位置よりも僅かに戻すことにより、係合部材の先端部がラグスクリューの凹溝の内底面から離反するようにセットしなければならない。このセット位置が適切でない場合には、骨折治癒過程における骨の癒合による軸方向の移動が不十分になる。また、このスライドフリー状態では、係合部材が髄内釘本体から軸力を受けないため、係合部材が回転することにより軸方向に移動し、保持状態が変化する虞もある。
【0007】
一方、特許文献2に記載のシステムでは、上記スライドフリー状態にすることができる第1のセット部材と、上記スライドロック状態にすることができる第2のセット部材とを用いるため、上記のように手術者が手作業により精密な調整を行う必要はない。しかし、手術状況に応じて二つのセット部材を選択して用いる必要がある、二つのセット部材の取り違えミスが起こり得て、しかもそれを外部から確認できない、二つのセット部材を用意するために部品の在庫が増えるなどといった問題がある。ちなみに、骨固定具のインプラント本体に対する保持状態は、わずかな変化でも骨折などの治癒過程に大きな影響を与える虞があるため、確実に所定の保持状態を得ることが要望される。
【0008】
そこで、本発明は、手術時における骨固定具の保持状態を得るための作業や準備等の困難性を低減するとともに、骨固定具のインプラント本体に対する所望の保持状態を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の骨固定装置は、骨に係合する骨係合部、及び、該骨係合部から延びる軸部を含み、該軸部に骨固定具側係合部を備えた骨固定具と、骨の内部若しくは表面に配置されるインプラント本体であって、前記骨固定具の前記軸部が挿通される挿通孔を備えるとともに、前記挿通孔の内部に配置された前記骨固定具側係合部と係合することにより前記骨固定具を前記インプラント本体に対して保持する本体側係合部を含む、前記インプラント本体と、を具備する。ここで、第1の発明においては、前記本体側係合部は係合部材に設けられ、前記本体側係合部が前記骨固定具側係合部から離間する離隔配置と、前記本体側係合部が前記骨固定具側係合部に係合する係合配置との間で、前記係合部材が移動可能に構成される。また、前記本体側係合部が第1の前記骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記インプラント本体若しくは前記インプラント本体に保持された部材に当接して移動限界位置に達し、前記軸線の方向に規制されることにより位置決めされ、前記本体側係合部が前記第1の骨固定具側係合部とは異なる第2の前記骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記移動限界位置に達する前に、前記骨固定具に当接して前記軸線の方向に規制されることにより位置決めされる。
【0010】
また、第2の発明においては、前記骨固定具は、前記本体側係合部とそれぞれ(各々)が係合可能な第1の前記骨固定具側係合部と第2の前記骨固定具側係合部とを含む。前記第1の骨固定具側係合部と前記第2の骨固定具側係合部は、前記本体側係合部に対する異なる係合構造を備える。このとき、前記本体側係合部は係合部材に設けられ、前記本体側係合部が前記第1の骨固定具側係合部及び前記第2の骨固定具側係合部から離間する離隔配置と、前記本体側係合部が前記骨固定具側係合部に係合する係合配置との間で、前記係合部材が移動可能に構成される。そして、前記本体側係合部が前記第1の骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記インプラント本体若しくは前記インプラント本体に保持された部材に当接して移動限界位置に達し、前記軸線の方向に規制されることにより位置決めされ、前記本体側係合部が前記第2の骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記移動限界位置に達する前に、前記骨固定具に当接して前記軸線の方向に規制されることにより位置決めされる。
【0011】
上記各発明において、前記本体側係合部が前記第2の前記骨固定具側係合部に係合するときには、前記係合配置にある前記係合部材は、前記第1の骨固定具側係合部の前記本体側係合部と前記軸線の方向に対面する部分よりも前記隔離位置の側に設けられた前記第2の骨固定具側係合部の対応する部分に当接して前記軸線の方向に規制されることにより位置決めされることが好ましい。また、前記本体側係合部が前記第1の骨固定具側係合部と係合したときの前記インプラント本体に対する前記骨固定具の第1の保持態様と、前記本体側係合部が前記第2の骨固定具側係合部と係合したときの前記インプラント本体に対する前記骨固定具の第2の保持態様とが異なることが望ましい。
【0012】
本発明において、前記第1の骨固定具側係合部と前記第2の骨固定具側係合部とは、前記骨固定具の軸線に沿った方向の位置と、前記骨固定具の前記軸線の周りの角度位置との少なくとも一方の異なる部位に設けられ、前記本体側係合部が前記第1の骨固定具側係合部と係合したときの前記インプラント本体に対する前記骨固定具の前記軸線に沿った方向の位置又は前記軸線の周りの角度姿勢と、前記本体側係合部が前記第2の骨固定具側係合部と係合したときの前記インプラント本体に対する前記骨固定具の前記軸線に沿った方向の位置又は前記軸線の周りの角度姿勢とが、前記部位の前記位置と前記角度位置の少なくとも一方の相違に対応して互いに異なることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記第1の骨固定具側係合部と前記第2の骨固定具側係合部とは、前記骨固定具の前記軸線の周りの異なる角度位置に設けられ、前記本体側係合部が前記第1の骨固定具側係合部と係合したときの前記インプラント本体に対する前記骨固定具の前記軸線の周りの角度姿勢と、前記本体側係合部が前記第2の骨固定具側係合部と係合したときの前記インプラント本体に対する前記骨固定具の前記軸線の周りの角度姿勢とが、前記角度位置の相違に対応して互いに異なることが好ましい。この場合において、前記第1の骨固定具側係合部と前記第2の骨固定具側係合部は、いずれも前記骨固定具の前記軸線に沿って延長された形状を有するとともに、前記骨固定具の前記軸線に沿った方向の位置が相互に共通する形成範囲を備えることが望ましい。
【0014】
本発明において、前記第1の保持態様及び前記第2の保持態様は、いずれも前記インプラント本体に対する前記骨固定具の軸線の周りの回転を規制することが好ましい。この場合において、前記骨固定具側係合部は前記骨固定具の外面に形成された凹溝若しくは凸条であり、前記本体側係合部は前記骨固定具側係合部に嵌合可能な凸部若しくは凹部であることが望ましい。また、前記骨固定具側係合部は前記骨固定具の外面に形成された平坦部であり、前記本体側係合部は前記骨固定具側係合部に対面可能な平坦部であることが望ましい。
【0015】
本発明において、前記第1の保持態様は、前記骨固定具の軸線に沿った前記骨固定具の移動を可能とし、前記第2の保持態様は、前記骨固定具の軸線に沿った前記骨固定具の移動を少なくとも前記第1の保持態様よりも拘束する態様で規制することが好ましい。この場合において、前記第2の骨固定具側係合部は、前記骨固定具の軸線と直交する方向に沿った輪郭形状が前記本体側係合部の輪郭形状に対応する形状であることが望ましい。
【0016】
この場合において、前記第1の骨固定具側係合部は、前記本体側係合部を収容して、前記本体側係合部との間に前記第1の保持態様を実現可能とする相対的に深い内底部、若しくは、前記本体側係合部に収容されて、前記本体側係合部との間に前記第1の保持態様を実現可能とする相対的に低い頂部を有し、前記第2の骨固定具側係合部は、前記本体側係合部を収容して、前記本体側係合部との間に前記第2の保持態様を実現可能とする相対的に浅い内底部、若しくは、前記本体側係合部に収容されて、前記本体側係合部との間に前記第2の保持態様を実現可能とする相対的に高い頂部を備えることがある。
【0017】
また、前記第1の骨固定具側係合部は、前記本体側係合部を収容して、前記本体側係合部との間に前記第1の保持態様を実現可能とする相対的に広い第1の溝内幅、若しくは、前記本体側係合部に収容されて、前記本体側係合部との間に前記第1の保持態様を実現可能とする相対的に狭い第1の凸条幅を有し、前記第2の骨固定具側係合部は、前記本体側係合部を収容して、前記本体側係合部との間に前記第2の保持態様を実現可能とする相対的に狭い第2の溝内幅、若しくは、前記本体側係合部に収容されて、前記本体側係合部との間に前記第2の保持態様を実現可能とする相対的に広い第2の凸条幅を備えることがある。
【0018】
本発明において、前記第1の保持態様は、前記インプラント本体に対して前記骨固定具の軸線に沿った前記骨固定具の第1の範囲にわたる移動を可能とし、前記第2の保持態様は、前記インプラント本体に対する前記骨固定具の前記軸線に沿った前記骨固定具の前記第1の範囲とは異なる第2の範囲にわたる移動を可能とすることが好ましい。ここで、前記第1の範囲と前記第2の範囲が異なるとは、両範囲が完全に一致することがないこと、すなわち、両範囲に共通する部分があってもなくても、各範囲の両端の位置の少なくとも一方が異なることを言う。
【0019】
上記各発明において、前記離隔配置では、前記本体側係合部が前記挿通孔の内部へ突出せず、前記係合配置では、前記本体側係合部が前記挿通孔の内部に突出することが望ましい。また、前記係合部材若しくは前記係合部材を位置決めする部材と、前記インプラント本体若しくは前記インプラント本体に保持された部材とが前記挿通孔と交差する軸線の周りに螺合する螺合構造が設けられ、前記係合部材の前記離隔配置と前記係合配置とが前記螺合構造の螺合深さの変化によりそれぞれ実現されることが望ましい。
【0020】
上記各発明において、前記インプラント本体は前記挿通孔と交差して連通する操作穴を有し、前記操作穴の内部で前記操作穴の軸線に沿った方向に移動可能に配置されるとともに前記操作穴の前記軸線に沿った方向に位置決め可能に構成された係合部材をさらに具備し、前記本体側係合部は前記係合部材に設けられることが好ましい。この場合において、前記係合部材は、前記インプラント本体に対して前記操作穴の軸線に沿って前記挿通孔とは反対側に向けた弾性力により支持されることが望ましい。
【0021】
上記各発明において、前記係合部材若しくは前記係合部材を位置決めする部材と、前記インプラント本体若しくは前記インプラント本体に保持された部材とが相互に螺合する螺合構造が設けられ、前記係合部材は、前記螺合構造の螺合深さに応じて前記操作穴の前記軸線に沿った方向に位置決めされることが好ましい。
【0022】
上記各発明において、前記係合部材は、前記操作穴の内部で生ずる駆動操作により前記所定位置に位置決め可能に構成されることが好ましい。この場合において、前記インプラント本体は、前記操作穴の内部において前記係合部材を直接若しくは間接的に固定する固定部材をさらに含むことが望ましい。この固定部材は、例えば、前記インプラント本体の前記操作穴の前記挿通孔とは反対側に設けられる端部開口を密閉するエンドキャップとして構成することができる。
【0023】
上記各発明において、前記操作穴の内部において前記係合部材と螺合し、その回転によって前記係合部材を前記インプラント本体の軸線に沿った方向に駆動可能に構成された駆動部材をさらに含むことが好ましい。この場合において、前記操作穴の内部において前記駆動部材に対して前記挿通孔とは反対側に配置され、前記駆動部材を前記インプラント本体の軸線の方向に保持するとともに、前記駆動部材に対して前記開口端の側からアクセス可能とする開口部を備えた保持部材をさらに含むことが望ましい。上記駆動部材や保持部材は、前記インプラント本体に保持される部材に相当する。
【0024】
上記各発明において、前記操作穴の内部において前記インプラント本体に螺合するとともに前記係合部材と当接し、その当接によって前記係合部材を前記インプラント本体の軸線に沿った方向に駆動可能に構成された駆動部材をさらに含むことが好ましい。この場合において、前記操作穴の内部において前記係合部材に対して前記挿通孔とは反対側に配置され、前記弾性的な支持力との間で前記係合部材を前記操作穴の前記軸線の方向に移動可能な状態で保持するとともに、前記係合部材に対して前記挿通孔とは反対側からアクセス可能とする開口部を備えた保持部材をさらに含むことが望ましい。上記駆動部材は、前記係合部材を位置決めする部材に相当する。
【0025】
上記各発明において、前記インプラント本体は、軸線に沿って延在し、髄内に挿入される髄内釘本体であり、前記挿通孔は、前記髄内釘本体の軸線を横断するように形成された横断孔であり、前記操作穴は、前記軸線に沿って設けられ近位端に開口端を備える軸穴であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、手術時における骨固定具の保持状態を得るための作業の困難性を低減するとともに、骨固定具のインプラント本体に対する所望の保持状態を実現することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態の骨固定装置のインプラント本体を示す正面図(a)及び側面図(b)である。
図2】同実施形態の骨固定具の側面図及び両端面図(a)、縦断面図及び横断面図(b)、横断面を拡大した拡大横断面図(c)、並びに、挿入器具を骨固定具の基端に接続した構造の軸線に沿った方向に見た様子を示す端面図(d)である。
図3】同実施形態の主要部の内部構造を示す部分縦断面図(a)、並びに、スライドフリー状態の係合部分を示す横断面図(b)、及び、スライドロック状態の係合部分を示す横断面図(c)である。
図4】同実施形態の主要部の内部構造を示す部分縦断面図(a)、並びに、係合構造の第1構成例を示す部分説明図(b)、及び、係合構造の第2構成例を示す部分説明図(c)である。
図5】第2実施形態の骨固定具の側面図及び両端面図(a)、縦断面図及び横断面図(b)、並びに、横断面を拡大した拡大横断面図(c)である。
図6】第3実施形態のインプラント本体の主要部の内部構造を示す部分縦断面図である。
図7】第4実施形態のインプラント本体の主要部の内部構造を示す部分縦断面図である。
図8】第5実施形態のインプラント本体の主要部の内部構造を示す部分縦断面図である。
図9】第6実施形態のインプラント本体の主要部の内部構造を示す部分縦断面図である。
図10】第1参考形態の骨固定具を示す図(a)、及び、骨折態様Iへの適用状態を示す縦断面図(b)及び(c)である。
図11】第1参考形態の骨固定具を示す図(a)、骨折態様IIへの適用状態を示す縦断面図(b)、及び、Y-Y線に沿った断面を示す横断面図(c)である。
図12】第2参考形態の骨固定具を示す図(a)、及び、骨折態様Iへの適用状態を示す縦断面図(b)及び(c)、並びに、骨折部への装着時の最初の作業状態を示す説明図(d)である。
図13】第2参考形態の骨固定具を示す図(a)、骨折態様Iへの適用状態を示す縦断面図(b)及び(c)、Y-Y線に沿った断面を示す横断面図(d)、並びに、骨折部への装着時の次の作業状態を示す説明図(d)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1乃至図4を参照して、本発明に係る第1実施形態の構成について説明する。
【0029】
[第1実施形態]図1は、第1実施形態の上記骨固定装置である髄内固定装置のインプラント本体11を示す正面図(a)及び側面図(b)である。このインプラント本体11は、図示例では、長管骨の髄腔に挿入された状態で用いられる髄内釘である。なお、インプラント本体11において、正面とは患者に装着したときに患者の正面に向く面を示し、側面とは患者の側面に向く面を示す。インプラント本体11は、軸線11xに沿って延長された形状を有する。インプラント本体11は、この軸線11xが骨の髄腔内に挿入された姿勢で用いられる。インプラント本体11は、基端側領域11Aと先端側領域11Bを有し、軸線11xは基端側領域11Aと先端側領域11Bとの間で僅かに屈折している。
【0030】
基端側領域11Aには、上記挿通孔に相当する横断孔12,13が形成され、先端側領域11Bには、横断孔14A,14Bが形成される。また、基端側領域11Aには、基端開口11bから軸線11xに沿って形成された上記操作穴に相当する軸穴11aが形成される。この軸穴11aは、上記横断孔12,13と交差し、かつ、連通する。なお、軸穴11aは、本実施形態では、先端側領域11Bにも連続して形成され、先端側開口をも備える貫通孔となっている。軸穴11aの基端開口11bにはキー溝11cが設けられる。キー溝11cは、インプラント本体11を骨内に導入する際に用いる図示しない挿入器具のキー付きの端部と嵌合し、インプラント本体11と挿入器具を既定の姿勢関係でのみ接続可能とする。
【0031】
本実施形態では、上記横断孔12,13は、軸線11xに対して斜めに交差する軸線12x、13xを備える。軸線12xと13xは相互に平行である。また、上記横断孔14A,14Bは、軸線11xに対して直交する軸線14ax,14bx,14byを備える。横断孔14A,14Bは、図示しない横止め用のコーティカルスクリュー(皮質ねじ)を挿通するための孔である。
【0032】
本実施形態の骨固定装置10は、図1に示す上記のインプラント本体11の横断孔12に対して、図2に示す上記骨固定具15を挿通した状態で用いる。この骨固定具15は、軸線15xに沿って先端部から基端部へ向けて延長した形状を有する。骨固定具15は、ガイドピンなどの案内具を挿通可能とするために貫通した軸孔15aを備える。また、骨固定具15は、先端部に骨に係合する骨係合部15sを含む。図示例では、骨固定具15はラグスクリューであり、骨係合部15sは骨にねじ込まれるタッピングスクリューにより構成される。一般的には、骨固定具15はラグスクリューなどの骨ねじに限らず、骨内に打ち込まれる釘、骨内に食い込むフック、骨内に圧入されるピンなどで構成され得る。したがって、上記の骨係合部15sも、刃形状を備える刃状部、操作により骨内で拡大するように形成された拡大部、操作により骨内に突出するフック部、骨に食い込む尖鋭形状を備えた尖端部、ピンの単なる先端部などにより構成され得る。
【0033】
また、骨固定具15は、基端部に図示しない工具が係合し、器具が連結する接続部15bを含む。この接続部15bは、図示例では、レンチなどの工具に係合する工具係合構造15gと、手術中において骨固定具15の挿入時や牽引時などに用いる各種器具の先端部に連結されるねじ構造(雌ねじ)等からなる器具連結構造15hとを備える。接続部15bは、工具や器具との接続時において軸線周りの姿勢を規定する機能を備えることが好ましい。図示例では、上記工具係合構造15gがキー溝15k付きの六角穴で構成され、これに図示しないキー付き六角レンチからなる工具を、上記キー溝にキーが嵌合する回転姿勢で係合させることにより、骨固定具15に対する工具の軸線周りの相対姿勢が規定される。
【0034】
上記の工具係合構造15gに工具や器具を接続すると、当該工具や器具の手元部分(例えば、レンチのT型ハンドル部)の角度姿勢がそのまま骨固定具15の角度姿勢を示すこととなるため、骨固定具15の角度姿勢が体外において確認可能となる。例えば、手術者がインプラント本体11に対して既定の角度姿勢の関係が確立されたスリーブなどの基準器具の内部に上記工具を通した状態で、工具の先端に接続された骨固定具15を骨内へ導入する場合には、当該手術者は、上記基準器具に対する上記工具の角度姿勢により骨固定具15の角度姿勢を手元で知ることができる。
【0035】
骨固定具15は、上記先端部と上記基端部の間にシャフト状の軸部を備える。この軸部の外面には骨固定具側係合部15c、15dが形成されている。骨固定具側係合部15c、15dは、図示例の場合、それぞれが軸線15xに沿った方向に延長された形状を有する凹溝である。ここで、骨固定具側係合部15cは相対的に浅く、骨固定具側係合部15dは相対的に深い溝形状を備える。なお、図2(c)の骨固定具側係合部15d(上記の第1の骨固定具側係合部に相当する。)の内部に記載された二点鎖線は、凹溝の深さの差を示すために、骨固定具側係合部15c(上記の第2の骨固定具側係合部に相当する。)の内底面の輪郭の位置及び形状を示す。骨固定具側係合部15c、15dの内底面は、幅方向に見て円弧状の輪郭を備えている。図示例の場合、骨固定具側係合部15c、15dはそれぞれ二つずつ、軸線15xの周りに90度間隔で交互に配置される態様で形成される。図示例の場合、骨固定具側係合部15cと15dは、軸線15xに沿った方向の形成範囲が相互に共通かつ同一(完全に一致した範囲)に構成される。この点は、以下の骨固定具25でも同様である。
【0036】
図3(a)に示すように、インプラント本体11の上記軸穴11a内には、骨固定具15と係合する本体側係合部16sを備える係合部材16が内蔵される。係合部材16は、インプラント本体11の軸線11xに沿って貫通する軸孔16aを備える。また、係合部材16の基端部16bは、周囲に張り出したフランジ状に形成される。基端部16bは、軸穴11a内に形成されたインプラント本体11の内面段差との間に収納されたコイルばね等からなる弾性部材17によってインプラント本体11の基端側へ付勢される。係合部材16は、軸穴11aの内部において軸線11xに沿って移動可能に配置される。このとき、係合部材16は、図3に示す初期位置(上記離隔配置)では、上記弾性部材17によって本体側係合部16sが横断孔12の内部に突出しない。実際には図示例のように本体側係合部16sは横断孔12から軸穴11a内に僅かに退避した位置に配置される。このため、骨固定具15は、本体側係合部16sに干渉されずに横断孔12に容易に挿入できる。
【0037】
また、係合部材16は軸線11xに沿った縦溝16eを備え、この縦溝16eにインプラント本体11に固定された規制ピン22の先端である規制部22aが嵌合する。これにより、係合部材16は、軸線11xに沿って移動可能ではあるが、規制部22aにより軸線11xの周りに回転しないように規制され、その角度姿勢は一定に保たれる。なお、係合部材16の軸線周りの回転を規制する構成としては、上記規制ピン22の規制部22aを用いる構造に限定されず、結果として係合部材16の軸線周りの回転が何らかの規制部により妨げられればよい。例えば、係合部材16の外周の輪郭を六角形状などの非円形状(円形とは異なる異形)とし、軸穴11aの内周の輪郭をこれに対応する六角穴などの係合形状とすることにより、上記のような規制ピン22の装着や溶接などの固定作業を行うことなしに係合部材16の姿勢を規制できる。この点は後述する他の実施例でも同様である。
【0038】
上記本体側係合部16sは、係合部材16の先端部(図示下端)において、横断孔12の軸線12xに沿った軸孔16aの両側にそれぞれ設けられる。本体側係合部16sの先端は、図3(b)及び(c)に示すように、軸線12xと直交する平面に沿って(幅方向に)円弧状の輪郭を備える。この本体側係合部16sの先端の円弧状の輪郭は、上記骨固定具15の骨固定具側係合部15cの内底面の軸線15xと直交する平面に沿った円弧状の輪郭と整合する。この様子は、骨固定具15を描く図2にも二点鎖線で示されている。その結果、本体側係合部16sが骨固定具側係合部15cの内底面に嵌合したとき、両者の接触面積を増大させることができる。これにより、骨固定具15の軸線15xに沿った方向のスライド動作に対する抵抗を大きくすることができるため、スライドロック状態のスライド動作に対する規制力を高めることができるから、確実なロック状態を実現できる。
【0039】
なお、本実施形態の上記横断孔13には、上記骨固定具15とは異なるねじ、ピン、釘などの骨固定具23(図3(b)及び(c)参照)を挿入することができる。ただし、本実施形態において、横断孔13に挿通される骨固定具23のインプラント本体11による保持状態を切り替える構造は存在しない。横断孔13に挿通される骨固定具23の保持状態を切り替えることのできる構成は、後述する第5実施形態を参照されたい。係合部材16には、上記横断孔13に挿通される骨固定具23を挿通可能にするための挿通孔16cが形成される。この挿通孔16cは、係合部材16の上記軸線11xに沿った方向の動作範囲Ld内で少なくとも横断孔13に挿通される上記骨固定具23の挿入を可能にすることができるように、軸線11xに沿った方向に延長された形状(図示例では長円状若しくは楕円状)に形成されている。ここで、上記動作範囲Ldは、例えば、本体側係合部16sが横断孔12の内部に突出しない位置(例えば、図3(a)に示すようにやや引っ込んだ位置、上記の離隔配置に相当する。)から、図3(b)に示すスライドフリー状態を実現するときの横断孔12内に最も突出した位置(上記の係合配置に相当する。)までの範囲である。
【0040】
係合部材16の軸孔16aの上部内面には雌ねじ16dが形成され、この雌ねじ16dに駆動部材18の雄ねじ18dが螺合する。駆動部材18は、軸線に沿って貫通する軸孔18aを備えるとともに、フランジ状の基端部18bを備える。この基端部18bの内側にある上記軸孔18aの基端側の内面には六角穴等の工具係合部18cが形成される。駆動部材18は、保持部材19によって軸線11xの方向に保持される。保持部材19は、軸穴11aの内面に形成された雌ねじ11dに螺合し、しかも、軸穴11aの内面段差に当接することによって軸線11xの先端側に移動できないように規制される。駆動部材18は、係合部材16を介して受ける上記弾性部材17の付勢力により上記フランジ状の基端部18bが保持部材19の内側段部19cに当接した状態とされ、これにより軸線11xに沿った方向の駆動部材18の位置が保持される。すなわち、駆動部材18は、保持部材19と同様に、インプラント本体11に対して軸線11xに沿った方向に保持された部材である。
【0041】
図3に示す状態では、係合部材16と駆動部材18との螺合深さが最大となっており、このとき、駆動部材18の基端部18bは、上記係合部材16のフランジ状の基端部16bに対して基端側から当接している。保持部材19には開口部19aが形成される。手術者は、開口部19aを通して駆動部材18の上記工具係合部18cに図示しない工具(例えば、六角レンチ等)を係合し、駆動部材18を回転操作することができる。なお、インプラント本体11の雌ねじ11dに螺合させて保持部材19を既定の位置に装着するために、保持部材19の開口部19aの内面にも六角穴などの工具係合部19bが形成される。
【0042】
手術者が図示しない工具により工具係合部18cを介して駆動部材18を回転操作すると、上述のように係合部材16が回転規制されているため、上記雄ねじ18dと上記雌ねじ16dの螺合深さが変化する。これにより、係合部材16は、上記動作範囲内において、駆動部材18の回転に従って軸穴11aの内部で軸線11xに沿って上下に移動する。この係合部材16の移動により、本体側係合部16sを横断孔12の内部に突出させることができ、また、その突出量を変化させることもできる。
【0043】
本実施形態の場合には、図3(b)に示すように、骨固定具側係合部15dが係合部材16の本体側係合部16sと対向する位置に配置される場合には、手術者は、駆動部材18を回転操作することにより、上記縦溝16eの上端部16fに規制部22aが突き当たるまで、係合部材16を図示下方へ移動させることができる。このとき、本体側係合部16sの先端は、骨固定具側係合部15dの凹溝内において、図3に示すフリーラインFL上に位置する。しかし、本体側係合部16sの先端は骨固定具側係合部15dの凹溝の内底面には接触しない。したがって、骨固定具15は、軸線15xの周りの回転が規制されるものの、インプラント本体11に対して軸線15xに沿って移動可能なスライドフリー状態とされる。ここで、上端部16fが規制部22aに突き当たることにより係合部材16と駆動部材18の間の螺合構造に軸線11xに沿った方向の軸力が与えられる。この軸力は、雌ねじ16dと雄ねじ18dの間の螺合構造の緩みを抑制する。
【0044】
一方、図3(c)に示すように、本体側係合部16sに骨固定具側係合部15cを対向配置させた場合には、手術者が上記操作により係合部材16を図示下方へ移動させると、上記縦溝16eの上端部16fが規制部22aに突き当たる前に、本体側係合部16sの先端が骨固定具側係合部15cの凹溝の内底面に突き当たる。このとき、本体側係合部16sの先端は、図3に示すロックラインLL上に位置する。これにより、骨固定具15は、軸線15xの周りの回転が規制されるだけでなく、軸線15xに沿った方向の移動も規制されるスライドロック状態とされる。ここで、本体側係合部16sが骨固定具側係合部15cの内底面に突き当たることにより係合部材16と駆動部材18の間の螺合構造に軸線11xに沿った方向の軸力が与えられる。この軸力は、雌ねじ16dと雄ねじ18dの間の螺合構造の緩みを抑制する。
【0045】
本実施形態の骨固定具15では、骨固定具側係合部15c、15dが凹溝として形成され、骨固定具側係合部15cよりも骨固定具側係合部15dが深く形成される。これにより、インプラント本体11において軸線11xに沿った方向の特定の位置(上記の係合配置に相当する。)に位置決めされる係合部材16の本体側係合部16sが骨固定具側係合部15cに係合することにより、インプラント本体11に対して骨固定具15がスライドロック状態となる。また、インプラント本体11において軸線11xに沿った方向の特定の位置(上記の係合配置に相当する。)に位置決めされる係合部材16の本体側係合部16sが骨固定具側係合部15dに係合することにより、インプラント本体11に対して骨固定具15がスライドフリー状態となる。
【0046】
本実施形態では、駆動部材18は係合部材16を介して弾性部材17により常に基端側に付勢されるため、駆動部材18の軸線11xに沿った方向の位置は、保持部材19によって規定される図示の位置に常に保持される。これにより、図示しない工具で駆動部材18を回転操作する場合でも操作位置が移動しない。このことは、手術者の感覚的な変化を防止することができるとともに、インプラント本体11に接続する挿入器具などを介して駆動部材18を回転操作するための構造、例えば、挿入器具の内部に組み込まれた操作機構、或いは、手術時において軸穴11a内に配置される工具などの寸法その他の構造が一定であっても支障が生じないという利点をもたらす。また、駆動部材18及び係合部材16は弾性部材17により弾性支持された状態にあるため、駆動部材18を係合部材16とともに本体側係合部16sがフリーラインFL上又はロックラインLL上に達する位置まで押し下げることができる。このことは、骨固定具15の骨固定具側係合部15c,15dが本体側係合部16sに係合し得る角度位置にあるか否かを、骨固定具15を回転させながら駆動部材18の押し下げ可能な深さの変化を感じとることにより、確認できることを意味する。これにより、骨固定具側係合部15c,15dから逸脱した角度位置にある骨固定具15の外周面上に本体側係合部16sが突き当てられることにより、骨固定具15の回転規制状態が得られないといった不具合の発生を回避できる。
【0047】
図4は、本実施形態のインプラント本体11に対してさらにエンドキャップ21A,21B(上記の固定部材に相当する。)を取り付けた場合の構成について示す説明図である。図4(b)に示すエンドキャップ21Aは、上記駆動部材18の軸孔18aに挿入可能な先端部21Aaと、基端部に設けられた六角穴などの工具係合部21Abと、インプラント本体11の上記軸穴11aの雌ねじ11dに螺合する雄ねじ21Acと、駆動部材18の基端に当接する段差部21Adとを備える。手術者がエンドキャップ21Aを軸穴11a内に挿入し、雄ねじ21Acを雌ねじ11dに螺合させ、ねじ込んでいくと、やがて、段差部21Adが駆動部材18の基端部18bに当接することによりエンドキャップ21は位置決めされる。このとき、エンドキャップ21Aを装着することにより、段差部21Adが駆動部材18の基端部18bに当接するため、駆動部材18が図示上方より押さえられることにより螺合部分が緩み止めされるとともに、駆動部材18とエンドキャップ21Aの間に軸力が生ずることにより、エンドキャップ21Aの緩み止め効果も得られる。これによって、係合部材16や駆動部材18の上下位置も規制されるため、インプラント本体11に対する骨固定具15の保持状態が安定する。
【0048】
図4(c)に示すエンドキャップ21Bは、上記駆動部材18の軸孔18aに挿入可能な先端部21Baと、基端部に設けられた六角穴などの工具係合部21Bbと、インプラント本体11の上記軸穴11aの雌ねじ11dと螺合する雄ねじ21Bcと、保持部材19の基端に当接する段差部21Bdとを備える。手術者がエンドキャップ21Bを軸穴11a内に挿入し、雄ねじ21Bcを雌ねじ11dに螺合させ、ねじ込んでいくと、やがて、段差部21Bdが保持部材19の基端に当接することによりエンドキャップ21Bは位置決めされる。このとき、先端部21Baは駆動部材18の軸孔18a内に挿入されているが、エンドキャップ21Bのその他の部分、特に、上記段差部21Bdは駆動部材18には接触しない。このため、エンドキャップ21Bを装着することにより、保持部材19が図示上方より抑えられてその螺合部分が緩み止めされるとともに、保持部材19との間に生ずる軸力によりエンドキャップ21Bの緩み止め効果を得ることもできる。これによって、係合部材16や駆動部材18の上下位置も間接的に規制されるため、インプラント本体11に対する骨固定具15の保持状態が安定する。
【0049】
本実施形態においては、手術者は、図2(d)に模式的に示す導入器具20の挿入工具20Aを骨固定具15の接続部15bに接続した状態で、骨固定具15をインプラント本体11の横断孔12に挿入する。ここで、横断孔12を挿通する骨固定具15の挿入経路はドリルやリーマなどにより事前に骨に穿孔される。上記導入器具20には、典型的には、上記挿入工具20Aと、この挿入工具20A及びこれに接続された上記骨固定具15を上記挿入経路に向けて案内する案内スリーブ20Bとが含まれる。上記挿入工具20Aは、例えば、上記接続部15bの工具係合構造15gに対応するレンチなどが用いられる。ここで、挿入工具20Aの接続部分を内側部材と外側部材からなる内外二重構造とし、内側部材の先端に形成した雄ねじを雌ねじなどの器具連結構造15hに螺合させ、外側部材の先端外周に形成したレンチ係合部を工具係合構造15gに嵌合させた状態で、内側部材の基端を外側部材の基端に対して基端側へ引き出す方向の保持力を生ずるように締付ねじ等により保持することで、挿入工具20Aの先端部に骨固定具15の上記接続部15bを接続固定することができる。
【0050】
上記挿入工具20Aと上記接続部15bとの接続態様は、上記挿入工具20Aに対する骨固定具15の軸線15xの周りの角度姿勢が一意に決まる接続構造を備えていることが望ましい。図示例では、キー溝15kを備えた工具係合部(六角穴)15gに対応するキー付き係合部(六角レンチ部)20Asを備えた挿入工具20Aを用いることにより、当該挿入工具20Aと上記骨固定具15の軸線周りの角度姿勢の関係を常に一定とすることができる。このため、例えば、骨固定具15の上記骨固定具側係合部15cと15dのそれぞれの角度位置に対応する挿入工具20Aの角度位置を操作基部において識別可能に構成することにより、挿入工具20Aの操作基部を見るだけで、これに接続された骨固定具15の骨固定具側係合部15cと15dが本体側係合部16sと対面する位置にあるか否か、骨固定具側係合部15cと15dのいずれが当該位置にあるかを容易に知ることができる。
【0051】
なお、上記のような識別可能に構成する態様としては、挿入工具20Aに骨固定具側係合部15c,15dの角度位置を示すマーク20M(図示例では、一方の骨固定具側係合部15dに対応する角度位置を示すマークとなっている。)を設けることが考えられる。図示例ではマーク20Mは挿入工具20Aに設けているが、挿入工具20Aと案内スリーブ20Bとが対応する角度姿勢を備える構造であれば、案内スリーブ20Bの視認可能な部位(基端部外面など)にマークを設けてもよい。ただし、特別なマークを設けるのではなく、挿入工具20AのT型ハンドル20Ahの軸線周りの角度を骨固定具側係合部15cと15dのいずれか一方に合わせておくだけでもよい。図示例では、T型ハンドル20Ahが他方の骨固定具側係合部15cに対応する角度位置を示している。上記マークやハンドルは、患者の体外で手術者に骨固定具15の姿勢(軸線の周りの角度姿勢)を示す姿勢識別手段を構成する。
【0052】
本実施形態では、骨固定具側係合部15cの凹溝は、浅いだけでなく、幅狭に形成され、骨固定具側係合部15dの凹溝は、深いだけではなく、幅広に形成されている。このため、本実施形態のように本体側係合部16sが骨固定具側係合部15c、15dの凹溝の深さの差異により骨固定具15の保持態様を変える代わりに、本体側係合部16sの先端形状と骨固定具側係合部15c、15dの凹溝形状を適宜に設定することにより、本体側係合部16sが骨固定具側係合部15c、15dの凹溝の幅の広狭により骨固定具15の保持態様を変えることもできる。
【0053】
図5には、上記のように構成した、本発明に係る第2実施形態の構成を示す。この実施形態は、上記第1実施形態の骨固定具15の変形例である骨固定具25を示す。この骨固定具25では、図5に示すように、4つの骨固定具側係合部25c,25d,25e,25fが全て同じ深さを備えた凹溝によって構成される点と、4つの骨固定具側係合部25c,25d,25e,25fの凹溝の構造が全て相互に異なる点とが上記第1実施形態とは異なる。各凹溝は、図5(c)に示すように、いずれも、内底面bと、この内底面bの幅方向両側にそれぞれ設けられた内側面sとを備える。なお、特に限定されるものではないが、図示例では、内底面bは平坦面であり、内側面sは内底面bに対して傾斜した平坦面として構成される。
【0054】
骨固定具側係合部25cは、上記フリーラインFL上に配置された図示二点鎖線で示す本体側係合部16sの先端の輪郭形状との比較によりわかるように、本体側係合部16sの先端を収容し、しかも、当該先端と接触しないだけの広い溝幅を備えている。これに対して、骨固定具側係合部25dは、骨固定具側係合部25cよりも溝幅が狭く、上記位置にある本体側係合部16sの先端の輪郭形状に対して、幅方向両側の内側面sが当接する程度の溝幅となっている。また、骨固定具側係合部25eは、骨固定具側係合部25dよりもさらに溝幅が狭く、本体側係合部16sが上記位置に達する前に、本体側係合部の先端が幅方向両側の内側面sに当接するようになっている。さらに、骨固定具側係合部25fは、骨固定具側係合部25eよりもさらに溝幅が狭く、本体側係合部16sが骨固定具側係合部25eと係合する際の位置よりもさらに手前(図示上方)において、本体側係合部16sの先端が幅方向両側の内側面sに当接するように構成されている。
【0055】
上記の骨固定具側係合部25c~25fのように、本体側係合部16sの先端に対して幅方向に当接することにより、インプラント本体11に対する骨固定具25の軸線方向に沿ったスライド動作を規制するように構成してもよい。また、上記の骨固定具側係合部25c~25fのように、3以上の相互に異なる凹溝形状を骨固定具側係合部として形成しておくことも可能である。これにより、インプラント本体11に対する骨固定具25の軸線方向に沿ったスライド動作の規制状態を3以上の段階に切り替えることができる。この第2実施形態では、インプラント本体11に対する骨固定具25の軸線方向のスライド動作の規制力は、本体側係合部16sが骨固定具側係合部25cに係合したときには0である。一方、本体側係合部16sの係合相手が骨固定具側係合部25d、25e、25fの三つである場合には、上記係合相手が骨固定具側係合部25d、25e、25fの順で、インプラント本体11に対する骨固定具25のスライド動作に対する規制力が増大する。
【0056】
なお、図5に示される、骨固定具25のキー溝25k付きの工具係合構造25gや雌ねじ25hの構造及び意義は、図2に示す骨固定具15のキー溝15k付きの工具係合構造15gと同様である。したがって、挿入工具20Aを含む導入器具20の構造は第1実施形態の場合と同様に構成できる。
【0057】
次に、図6を参照して、本発明に係る第3実施形態の骨固定装置30の構成について説明する。この実施形態は、上記第1実施形態のインプラント本体11の係合構造の変形例を示す。この実施形態のインプラント本体31は、キー溝31cを備えた基端開口31bから軸線31xに沿った方向に伸びる軸穴31aを備え、この軸穴31aの内面に雌ねじ31dを備える点で上記第1実施形態と同様である。しかし、この実施形態では、上記とは異なり、軸穴31aの奥部に設けられた小径部分に雌ねじ31fが形成され、この雌ねじ31fに螺合する係合部材36が設けられる。この係合部材36の先端部には本体側係合部36sが形成される。係合部材36は、基端部36bの端面に開口する六角穴等の工具係合部36cと、外周に設けられた、上記雌ねじ31fと螺合する雄ねじ36dとを備える。このインプラント本体31を体内に導入する際には、図示二点鎖線で示すターゲットデバイスなどの挿入器具26が接続ねじ27を介してインプラント本体31に連結された状態とされる。接続ねじ27は、軸孔27aと、フランジ状の基端部27bと、軸孔27aの基端に形成された工具係合部27cと、外周に形成された雄ねじ27dとを有する。挿入器具26の接続端部内に形成された接続孔26aに基端部27bを係合させた状態で、工具係合部27cを用いた回転操作により、軸穴31aの基端開口31bに近い位置に設けられた大径部分に形成された雌ねじ31dに接続ねじ27の雄ねじ27dを螺合することにより、挿入器具26の接続端部をインプラント本体31に固定することができる。なお、係合部材36は、接続ねじ27の軸孔27aを通過可能に構成される。このため、上記挿入器具26をインプラント本体31に接続した状態で、接続孔26aの上部開口から係合部材36を挿入し、この係合部材36を上記軸孔27aを通してインプラント本体31内の図示の位置まで導入することができる。
【0058】
手術者が上記工具係合部36cに六角レンチなどの工具を係合させて回転操作することにより、係合部材36は、軸穴31a内においてインプラント本体31に対して軸線31xに沿った方向に移動する。なお、係合部材36は上記回転操作により軸線周りに回転するが、先端の本体側係合部36sは係合部材36の回転軸線を中心にした回転体形状を備えるので、本体側係合部36sは係合部材36の回転操作によっても実質的な係合形状は変化しない。また、係合部材36の外周段差部36eが、これと対応するインプラント本体31の内周段差部31eに当接することにより、インプラント本体31に対する係合部材36のねじ込み深さが規制される。
【0059】
本実施形態においては、図6に示すように、本体側係合部36sに対して横断孔32に挿通された骨固定具15の骨固定具側係合部15cが対向配置されている場合には、手術者が係合部材36をねじ込んでいくと、インプラント本体31に対する係合部材36のねじ込み深さの規制が生ずる前に、本体側係合部36sが骨固定具15の上記骨固定具側係合部15cに突き当たる。このため、本体側係合部36sはロックラインLL上に配置され、骨固定具15は上記スライドロック状態となる。このとき、骨固定具15と係合部材36の間に軸力が働くため、係合部材36の緩みが抑制される点は第1実施形態と同様である。
【0060】
一方、本体側係合部36sに対して骨固定具15の骨固定具側係合部15d(図示せず。)が対向配置されている場合には、係合部材36をねじ込んでいくと、外周段差部36eがインプラント本体31の内周段差部31eに当接することによってねじ込み深さが規制され、それ以上ねじ込むことができなくなる。このため、本体側係合部36s(図示点線で示す。)はフリーラインFL上に配置される。このとき、本体側係合部36sは骨固定具側係合部15dの凹溝内に収容されるが、凹溝の内底面には当接しないため、骨固定具15は軸線周りの回転は規制されるものの、スライド運動可能なスライドフリー状態とされる。ここでも、インプラント本体31と係合部材36の間に軸力が働くので、係合部材36の緩みが抑制される点は第1実施形態と同様である。
【0061】
なお、本実施形態において、係合部材36をインプラント本体31の雌ねじ31fに直接螺合させる代わりに、インプラント本体31に螺合などにより保持される部材(第1実施形態の保持部材19など)に螺合させてもよい。この部材は、上記のインプラント本体に保持される部材に相当する。この部材は、インプラント本体31の軸穴31a内の凹溝に弾性係合する弾性リングなどで構成されてもよい。
【0062】
次に、図7を参照して、本発明に係る第4実施形態の骨固定装置40の構成について説明する。この実施形態も、上記第1実施形態のインプラント本体11の係合構造の変形例を示す。この実施形態のインプラント本体41は、キー溝41cを備えた基端開口41bから軸線41xに沿った方向に伸びる軸穴41aを備え、この軸穴41aの内面に雌ねじ41dを備える点で上記第1実施形態と同様である。この実施形態では、軸穴41a内で係合部材46が軸線41xの方向に沿って移動可能に設けられ、この係合部材46の先端部に本体側係合部46sが設けられる。係合部材46のフランジ状の基端部46bには、インプラント本体41の内部段差との間に収容されるコイルばね等の弾性部材47が係合し、この弾性部材47によって係合部材46が図示上方へ付勢される。基端部46bの端面には軸穴46aが拡径されてなる開口部46cが設けられる。
【0063】
インプラント本体41の軸穴41aの内部には、止め輪などからなる、開口部49aを備えた保持部材49が固定される。係合部材46は、この保持部材49により図示上方より保持される。このため、係合部材46は、外力を受けない状態において、上記弾性部材47と保持部材49により、本体側係合部46sが横断孔42内に突出しない位置において軸線41xに沿った方向に位置決めされる(上記の離隔配置に相当する。)。また、インプラント本体41の軸穴41aの内面に形成された雌ねじ41dには、図示二点鎖線で示す駆動部材でもあるエンドキャップ48の雄ねじ48dが螺合する。エンドキャップ48は、雄ねじ48dより小径に構成された先端部48aを備える。この先端部48aの先端には凸部48sが突出する。先端部48aは保持部材49の開口部49aを通して図示下方へ挿入可能とされる。また、上記の凸部48sは、係合部材46の基端部46bに設けられた上記開口部46cに挿入可能に構成される。さらに、エンドキャップ48の基端部48bには六角穴などの工具係合部48cが設けられる。
【0064】
手術者が上記工具係合部48cに六角レンチなどの工具を係合させてエンドキャップ48を回転操作することにより、エンドキャップ48は、軸穴41a内においてインプラント本体41に対して軸線41xに沿った方向に移動する。なお、エンドキャップ48は上記回転操作により軸線周りに回転するが、先端部48aや凸部48sは、エンドキャップ48の回転軸線を中心にした回転体形状を有するので、上記回転操作によっても実質的な係合形状は変化しない。エンドキャップ48をねじ込むことにより、先端部48aは係合部材46を図示下方へ押し下げる。このようにして係合部材46が降下すると、上記本体側係合部46sは、横断孔42内に突出する。ここで、係合部材46の基端部46bに形成される外周段差部46eが、これと対応するインプラント本体41の内周段差部41eに当接することにより、インプラント本体41に対する係合部材46の深さが規制される。
【0065】
本実施形態においては、図7に示すように、本体側係合部46sに対して横断孔42に挿通された骨固定具15の骨固定具側係合部15cが対向配置されている場合には、手術者がエンドキャップ48をねじ込むと、インプラント本体41に対する係合部材46の深さの規制が生ずる前に、本体側係合部46sが骨固定具15の上記骨固定具側係合部15cに突き当たる。このため、本体側係合部46sはロックラインLL上に配置され(上記の係合配置に相当する。)、骨固定具15は上記スライドロック状態となる。このとき、骨固定具15と係合部材46を介してエンドキャップ48とインプラント本体41の間に軸力が働くため、エンドキャップ48の緩みが防止される点は第1実施形態と同様である。
【0066】
一方、本体側係合部46sに対して骨固定具15の骨固定具側係合部15dが対向配置されている場合には、エンドキャップ48をねじ込むと、外周段差部46eがインプラント本体41の内周段差部41eに当接することによってねじ込み深さが規制され、それ以上ねじ込むことができなくなる。このため、本体側係合部46s(図示点線で示す。)はフリーラインFL上に配置される(上記の係合配置に相当する)。ここで、本体側係合部46sは骨固定具側係合部15dの凹溝内に収容されるが、凹溝の内底面には当接しないため、骨固定具15は軸線周りの回転は規制されるものの、スライド運動可能なスライドフリー状態とされる。このとき、インプラント本体41とエンドキャップ48の間に軸力が働くので、エンドキャップ48の緩みが防止される点は第1実施形態と同様である。なお、本実施形態のエンドキャップ48は上記係合部材を位置決めする部材に相当する。本実施形態では、エンドキャップ48からなる駆動部材を一種類だけ用意すればよく、従来のように微妙な操作を行ったり、複数の駆動部材を用意したりする必要がない。
【0067】
次に、図8を参照して、本発明に係る第5実施形態の骨固定装置50の構成について説明する。この実施形態は、上記第1実施形態のインプラント本体11の係合構造の変形例を示す。この実施形態では、前述の各実施形態とは異なり、インプラント本体51の内部に第1の係合部材56Aと第2の係合部材56Bがそれぞれ軸線51xに沿った方向に移動可能に配置されている。ここで、第1の係合部材56Aは、横断孔52に挿通される骨固定具25を保持するための係合部材であり、第2の係合部材56Bは、横断孔52よりもさらに基端側に設けられた横断孔53に挿通される骨固定具23を保持するための係合部材である。第1の係合部材56Aの先端部には本体側係合部56Asが形成される。第2の係合部材56Bの先端部には本体側係合部56Bsが形成される。
【0068】
また、この第5実施形態は、第1の係合部材56Aの基端部56b(軸穴56Aaの開口縁)に対して図示上方より当接し、軸穴51aの内面に形成される雌ねじ51dに螺合する雄ねじ59dを備える保持部材59を備える。保持部材59は開口部59aを備え、この開口部59aを通して手術者が工具などによる操作を行うために軸穴51a内で上記第1の係合部材56Aや第2の係合部材56Bにアクセスできる。第1の係合部材56Aは、規制ピン58Aの先端の規制部58Aaが縦溝56Aeに嵌合することにより、軸線51xに沿った方向には移動可能であるが、軸線51xの周りには回転しないように案内される。さらに、第1の係合部材56Aには、横断孔53に挿通される骨固定具23を通過させるための挿通孔56Acが設けられる。また、第2の係合部材56Bは、第1の係合部材56Aの軸穴56Aa内に収容される。そして、第1の係合部材56Aに固定された規制ピン58Bに縦溝56Beが嵌合することにより、第2の係合部材56Bは、第1の係合部材56Aに対して軸線51xに沿った方向には移動可能に、軸線51xの周りには回転しないように案内される。なお、第2の係合部材56Bは、その周壁にスリット56Bcが形成されることにより、軸線51xに沿った方向に伸縮可能に構成される。
【0069】
この実施形態では、保持部材59の開口部59aを通して、第1の係合部材56Aの基端部56Abと第2の係合部材56Bの基端部56Bbを押し下げることにより、本体側係合部56As及び56Bsを骨固定具25及び23に押し付けることができる。このとき、インプラント本体51の軸穴51aに図示しない駆動部材を挿入し、この駆動部材の外周に形成された雄ねじを上記雌ねじ51dに螺合させることにより、軸穴51aの内部で駆動部材を位置決めすることができる。そして、この駆動部材の先端を第1の係合部材56Aの基端部56Abと第2の係合部材56Bの基端部56Bbに当接させることにより、第1の係合部材56A及び第2の係合部材56Bを押し下げることができる。なお、第1の係合部材56Aの押し下げ量と、第2の係合部材56Bの押し下げ量は相互に同じ量とするなどの任意に設定できるが、例えば、当接部材の先端形状を軸線周りの内外位置で段差を備える形状とすることにより、第1の係合部材56Aの押し下げ量と、第2の係合部材56Bの押し下げ量とを異ならしめることができる。この駆動部材も上記係合部材を位置決めする部材に相当する。
【0070】
さらに、この第5実施形態において、骨固定具25の骨固定具側係合部25c~25fのいずれかを軸穴51aに臨むように配置することにより、第1の係合部材56Aの本体側係合部56Asを係合させることができる。このときの本体側係合部56Asの横断孔52内への突出量と、骨固定具25のインプラント本体51に対する保持態様との関係は、上記第2実施形態と同様である。ただし、骨固定具15を第1実施形態と同様に横断孔52に挿通させ、骨固定具15を保持してもよい。手術者が上記駆動部材により第2の係合部材56Bを押し下げると、本体側係合部56Bsが骨固定具23に当接し、スリット56Bcにより生ずる弾性力によって骨固定具23の軸線の周りの回転や軸線に沿ったスライドを規制することができる。このとき、骨固定具23の外面に形成される溝や平坦部などで骨固定具側係合部を形成すれば、それらの深さ位置や表面凹凸などの係合構造の相違により、骨固定具15,25と同様に、骨固定具23の保持態様を適宜に設定でき、必要に応じて変更することができる。
【0071】
次に、図9を参照して、本発明に係る第6実施形態の骨固定装置60の構成について説明する。この実施形態は、上記第1実施形態のインプラント本体11の係合構造の変形例を示す。この実施形態では、前述の第5実施形態と同様に、インプラント本体61の内部に第1の係合部材66Aと第2の係合部材66Bがそれぞれ軸線61xに沿った方向に移動可能に配置される。ただし、第5実施形態とは異なり、この実施形態では、第1の係合部材66Aと保持部材69の間に駆動部材68が配置される。この駆動部材68は、第1実施形態と同様に、保持部材69によって保持されるとともに、雄ねじ68dが第1の係合部材66Aの雌ねじ66Adに螺合する。また、第5実施形態と同様に、第1の係合部材66Aの先端には本体側係合部66Asが設けられる。さらに、第1の係合部材66Aには、横断孔63に挿通される骨固定具23を通過させるための挿通孔66Acが設けられる。
【0072】
本実施形態において、第2の係合部材66Bは、駆動部材68の軸穴68a内に配置される。第2の係合部材66Bは、第5実施形態の第2の係合部材56Bと同様に、周壁にスリット66Bcを備え、これによって軸線61xに沿った方向に伸縮可能に構成される。また、第2の係合部材66Bの先端には本体側係合部66Bsが設けられる。さらに、第2の係合部材66Bの基端部66Bbは、上記駆動部材68の軸穴68a(工具係合部68cが形成される部分)を通して図示上部からアクセス可能とされる。
【0073】
本実施形態では、横断孔62に挿通される骨固定具25(骨固定具15でもよい。)に対しては、第1実施形態と同様に駆動部材68を回転操作することによって第1の係合部材66Aが軸線61xに沿って軸穴61a内を移動する。これにより、本体側係合部66Asを骨固定具側係合部25c~25fのいずれかに対して所定の態様で係合させ、所望の保持態様を実現できる。このときの他の作用効果は上記第1実施形態と同様であるので、省略する。この駆動部材68は、上記インプラント本体に保持される部材に相当する。
【0074】
本実施形態では、図示しないエンドキャップなどの他の駆動部材により、保持部材69の開口部69a及び駆動部材68の軸穴68aを通して第2の係合部材66Bを押し下げ、これによって、本体側係合部66Bsを横断孔63に挿通された骨固定具23の外周面に押し付けることにより、その摩擦力により骨固定具23をインプラント本体61に対して保持することができる。このとき、第1実施形態と同様に、上記他の駆動部材として、エンドキャップ21A,21Bを用いることにより、第1実施形態や第5実施形態において記述した上記と同様の作用を果たすことも可能になる。ここで、第5実施形態と同様に、骨固定具23に複数の相互に異なる係合構造を備える骨固定具側係合部を設けることにより、第2の係合部材66Bも本発明に係る係合部材として機能することが可能になる。このとき、他の駆動部材は係合部材を位置決めする部材に相当する。
【0075】
次に、図10及び図11を参照して、本発明に係る第1参考形態の骨固定装置70の構成について説明する。図10及び図11は、第1参考形態の骨固定装置70の全体構成と大腿骨近位部への適用態様を示す断面図である。先に説明した各実施形態では、髄腔に挿入される髄内釘をインプラント本体として備えた髄内固定システムが例示されるが、インプラント本体としては、本参考形態のように骨の表面上に設置されるものが含まれる。
【0076】
本参考形態のインプラント本体71は、図10(b)及び図11(b)に示すように、骨(大腿骨近位部)内に挿入される筒状のバレル部71Aと、骨の表面上(大腿骨の外側部上)に設置されるプレート部71Bとが一体に構成された構造を備える。バレル部71Aは先端71Abから基端71Acまで軸線方向に貫通する挿通孔71Aaを備える。バレル部71Aの先端71Abでは、挿通孔71Aaは部分的に縮径された角度位置を備えた開口形状を有する。図示例の場合、図11(c)に示すように、先端71Abには挿通孔71Aaの開口内に突出する一対の突起からなる本体側係合部71Adが形成される。ただし、本体側係合部71Adは、このような突起に限定されるものではなく、後述する骨固定具75の骨固定具側係合部とスライド可能に係合し得る種々の係合構造により構成できる。例えば、円形の開口縁の一部に設けられた平坦部により構成されてもよい。
【0077】
プレート部71Bには複数の開口71Baが設けられ、これらの開口71Baには、骨係合部73aと頭部73bを備えた骨固定具(コーティカルスクリュー)73が挿通される。骨固定具73は、頭部73bを開口71Baの座面71Bbに係合させ、大腿骨の幹部の皮質に骨係合部73aを係合させた状態で、プレート部71Bを外側部表面上に押し付ける態様で固定する。
【0078】
上記バレル部71Aの挿通孔71Aaには、骨固定具75が挿通される。骨固定具75は、図10(a)及び図11(a)に示すように、骨に係合するタッピングスクリューなどからなる骨係合部75aと、軸部75bとを含む。軸部75bの外面には、複数の骨固定具側係合部75cと75dが設けられる。図示例では、骨固定具側係合部75cと75dはそれぞれ骨固定具75の軸線に沿った方向に伸びる凹溝である。図示例の場合、骨固定具側係合部75cと75dは、軸線に沿った方向の位置が相互に共通する形成範囲を備えている。すなわち、両係合部は、軸線に沿った方向の共通する位置範囲に形成された部分を有している。この点は、以下の第2参考形態でも同様である。ここで、図10及び図11に示すように、骨固定具側係合部75cの軸線に沿った方向の長さは、骨固定具側係合部75dの同長さよりも、距離Aだけ長い。これらの骨固定具側係合部75c,75dは、いずれも、上記本体側係合部71Adと係合し、上記距離Aによって、骨固定具75のインプラント本体71に対する相互に異なる保持態様を定める。
【0079】
図10(b)及び図11(b)に示すように、骨固定具75を大腿骨骨頭部に導入し、骨係合部75aを好適な深さで骨に係合した状態となるようにねじ込んだ後に、インプラント本体71のバレル部71Aを骨内に導入し、バレル部71Aの挿通孔71Aaに対して骨固定具75をその基端から挿入する。このとき、図10(a)及び(b)に示すように、骨固定具側係合部75cが図示上下方向を向くように骨固定具75の軸線周りの角度姿勢を調整することにより、バレル部71Aの上記本体側係合部71Adが骨固定具側係合部75cに嵌合し、骨固定具75はインプラント本体71に対してその軸線の周りに回転規制されるとともに当該軸線に沿った方向にスライド可能な保持態様となる。このとき、骨固定具側係合部75cの骨固定具側係合部75dに対する上記距離Aにより、その軸線に沿った方向のスライド範囲が骨固定具側係合部75dの場合に比べて上記距離Aだけ長くなる。
【0080】
一方、骨固定具75の角度姿勢を、図示例の角度位置とは90度異なる角度位置となるように調整すると、図11(a)及び(b)に示すように、上記本体側係合部71Adは骨固定具側係合部75dに嵌合する。このときには、骨固定具75は、上記と同様にその軸線の周りに回転規制されるとともに当該軸線に沿った方向にスライド可能であるが、骨固定具75は、図11(b)に示す位置よりも基端側にはスライドできない状態とされる。
【0081】
上述のように、本参考形態の骨固定装置70では、骨固定具75がインプラント本体71に対してバレル部71Aの軸線の周りに回転規制されるとともに当該軸線に沿った方向にスライド可能に保持されるため、外側骨折(図10(b)に示す骨折線を備える骨折態様Iを参照)や転子下骨折(図11(b)に示す骨折線を備える骨折態様IIを参照)の治癒過程において、骨頭部の回旋を防止することができるとともに、骨折部の修復により生ずる整復態様の変化に応じた骨固定具75のスライド動作が可能である。図10(c)には骨頭部の短縮による骨固定具75のスライド後の様子を示す。この場合、上記外側骨折の場合には、図10(b)に示す状態から骨固定具75が上記距離Aだけ基端側へ余分にスライド可能に構成されるため、治癒過程で必要な大きなスライド量を確保できる。ただし、このときのスライド量である距離Aは、図示の状態から骨固定具75が基端側へスライドしたとしても、図10(c)に示すように、骨固定具75の基端がインプラント本体71のバレル部71Aの基端71Acから突出することがないように、上記距離Aが図示の状態における骨固定具75の軸部75bの基端とバレル部71Aの基端71Acとの距離とほぼ対応する長さになるように構成されることが好ましい。このような外側骨折に対する本参考形態(CHSシステム)の適用状態では、骨固定具75の軸線の周りの回転動作が規制されるとともに当該軸線に沿ったスライド動作が許容される。この状態は、上述の髄内固定システムである第1実施形態~第6実施形態における上記スライドフリー状態に相当する。
【0082】
一方、上記転子下骨折の場合には、図11(b)に示すように、バレル部71A及び骨固定具75により固定される大腿骨近位部と、プレート部71B及び骨固定具73により固定される外側部との間に骨折線(骨折態様II)が形成されていることから、治癒過程において必要とされる骨固定具75のスライド量は0か或いは極めて小さい。このため、スライド範囲が短い骨固定具側係合部75dを本体側係合部71Adに係合させることにより、スライド範囲を制限する。このような転子下骨折に対する本参考形態(CHSシステム)の適用状態では、骨固定具75の軸線の周りの回転動作が規制されるとともに当該軸線に沿ったスライド動作も規制される。この状態は、上述の髄内固定システムである第1実施形態~第6実施形態における上記スライドロック状態に相当する。
【0083】
なお、上記参考形態では、インプラント本体71の本体側係合部71Adを突起とし、骨固定具75の骨固定具側係合部75c,75dを凹溝としているが、本参考形態の構成はこのような凹凸構造の嵌合態様に限定されるものではない。例えば、本体側係合部71Adと骨固定具側係合部75c,75dの凹凸関係を図示例とは逆に構成してもよい。また、本体側係合部71Adをバレル部71Aの挿通孔71Aaに臨む内周面の一部に構成された平坦面部分とし、骨固定具側係合部75c、75dを骨固定具75の外周面の一部に構成された平坦面部分とし、両平坦面部分が相互に対面した状態で係合する構成としてもよい。これらは以下の第2参考形態でも同様である。
【0084】
本参考形態の変形例として、図10(b)及び(c)に示すように手術後のスライド動作によるものではなく、意図的に手術時において挿通孔71Aa内における骨固定具75の軸線に沿った方向の位置を変えることにより、骨固定具75のスライド運動の可否や抵抗力が変化するように構成することもできる。例えば、骨固定具側係合部の凹溝の内底面の凹凸形状の有無その他の態様を骨固定具75の軸線に沿った方向に変えることにより、相互に異なる係合構造を備える複数の骨固定具側係合部が骨固定具75の軸線に沿った方向に配列される。このように、互いに異なる係合構造(上記内底面の態様)を備える複数の骨固定具側係合部が骨固定具75の軸線に沿った方向に形成されることにより、インプラント本体71に対する骨固定具75の保持態様が異ならせることができるといった参考例を構成できる。すなわち、この変形例では、骨固定具75の軸線に沿った方向の位置(深さ)を変えるだけで、インプラント本体71に対する骨固定具75のスライド運動の可否やスライド運動時の抵抗力を変更することができる。ここで、上述の本参考形態では、図10図11に示すように、外側骨折や転子下骨折などの骨折態様の相違に応じて骨固定具75の角度姿勢を変更して対応するが、この変形例においても、骨折態様の相違に適するように骨固定具75の軸線に沿った方向の位置を変更することにより、上記スライド運動の可否や抵抗力を調整できる。
【0085】
次に、図12及び図13を参照して、第2参考形態の骨固定装置80の構成について説明する。図12及び図13は、第2参考形態の骨固定装置80の全体構成と大腿骨近位部への適用態様を示す断面図である。第1参考形態では、骨表面に設置されるプレート部を含むものをインプラント本体として備えているが、本参考形態でも、インプラント本体81にバレル部81A及びプレート部81Bを備える。ただし、本参考形態のインプラント本体81は、バレル部81Aとプレート部81Bが着脱可能に構成されたものである点で、第1参考形態とは異なる。また、インプラント本体としては、本参考形態のバレル部81Aを単独で用いることも可能であり、また、当該バレル部81Aの代わりに、筒状のスリーブ体を設け、このスリーブ体に、骨表面の近傍で骨の穿孔部分の内面に係合するコーティカルスレッド(骨に食い込むねじ山)などの骨係合部を形成した、スライディングスクリューを構成することも可能である。
【0086】
本参考形態のインプラント本体81は、図12(b)及び図13(b)に示すように、骨(大腿骨近位部)内に挿入される筒状のバレル部81Aと、骨の表面上(大腿骨の外側部上)に設置されるプレート部81Bとがスライド構造により着脱可能に構成された構造を備える。バレル部81Aは、先端81Abから基端81Acまで軸線方向に貫通する挿通孔81Aaを備える。バレル部81Aの先端81Abでは、挿通孔81Aaは部分的に縮径された角度位置を備えた開口形状を有する。図示例の場合、図13(d)に示すように、先端81Abには挿通孔81Aaの開口内に突出する一対の突起からなる本体側係合部81Adが形成される。ただし、本体側係合部81Adは、このような突起に限定されるものではなく、後述する骨固定具85の骨固定具側係合部とスライド可能に係合し得る種々の係合構造を設けることができる。例えば、円形の開口縁の一部に設けられた平坦部により構成されてもよい。
【0087】
また、バレル部81Aには、上記基端81Acから一方へ張り出すように延出した張り出し部81Aeが設けられている。この張り出し部81Aeは、プレート部81Bの端部81Beに対して嵌合可能に構成される。すなわち、バレル部81Aの張り出し部81Aeと、プレート部81Bの端部81Beは、プレート部81Bの延長方向に沿ってスライドさせることにより相互に嵌合する。図示例では、端部81Beが張り出し部81Aeを収容する態様で嵌合する。ただし、これとは逆に、張り出し部81Aeが端部81Beを収容する態様で嵌合する構造であってもよい。
【0088】
プレート部81Bには複数の開口81Baが設けられ、これらの開口81Baには、骨係合部83aと頭部83bを備えた骨固定具(コーティカルスクリュー)83が挿通される。骨固定具83は、頭部83bを開口81Baの座面81Bbに係合させ、大腿骨の幹部の皮質に骨係合部83aを係合させた状態で、プレート部81Bを外側部表面上に押し付ける態様で固定する。
【0089】
上記バレル部81Aの挿通孔81Aaには、骨固定具85が挿通される。骨固定具85は、図12(a)及び図13(a)に示すように、骨に係合するタッピングスクリューなどからなる骨係合部85aと、軸部85bとを含む。軸部85bの外面には、複数の骨固定具側係合部85cと85dが設けられる。図示例では、骨固定具側係合部85cと85dはそれぞれ骨固定具85の軸線に沿った方向に伸びる凹溝である。ここで、図12及び図13に示すように、骨固定具側係合部85cの軸線に沿った方向の長さは、骨固定具側係合部85dの同長さよりも長い。これらの骨固定具側係合部85c,85dは、いずれも、上記本体側係合部81Adと係合し、それによって、骨固定具85のインプラント本体81に対する保持態様を定める。
【0090】
骨固定具85の軸部85bの基端85b1は、先端81Abに設けられた上記本体側係合部81Adの存在にも拘わらず、バレル部81Aの挿通孔81Aaに対して挿入可能な小径に形成される。これにより、製造者は、基端85b1をバレル部81A内に挿入することができ、また、上記本体側係合部81Adを骨固定具85の骨固定具側係合部85cと85dのいずれかに係合させてから、バレル部81Aの基端81Acの側から上記基端85b1に対して筒状の取付体85b2を装着し、固定することが可能になる。なお、基端85b1に対する取付体85b2の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶接であれば、確実に固定できる。このようにすると、図12(b)及び(c)並びに図13(b)及び(c)に示すように、骨固定具85は、バレル部81Aに対して、基端側へは骨固定具側係合部85c、85dの端部により、先端側へは取付体85b2によりそれぞれ両側に抜け止めされた状態となる。これにより、インプラント本体81に対する骨固定具85のスライド範囲は、基端側と先端側の両側にそれぞれ移動限界位置を備えた態様で規定される。
【0091】
図12(d)に示すように、上記の骨固定具85とバレル部81Aとの組立体を大腿骨骨頭部に導入し、バレル部81Aを通して工具90の軸部91の先端の係合部91aを骨固定具85の基端に形成された工具係合部85fに係合させた状態で、骨固定具85をバレル部81Aに対して先端側へ最も突出させた状態とする。このとき、骨固定具85には、取付体85b2より先端側の部分に上記基端85b1が露出した小径部分が存在し、当該小径部分が先端81Abの上記本体側係合部81Adとは軸線周りに係合しない形状とされる。このため、骨固定具85をバレル部81Aに対して先端側へ最も突出させた図示の状態とすると、バレル部81Aに対して骨固定具85を自在に回転することができるから、工具90により、バレル部81Aを回転させずに、骨係合部85aを好適な深さで骨に係合した状態となるようにねじ込むことができる。この後に、骨固定具85の軸線の周りの角度姿勢を所定の姿勢に設定した後に、インプラント本体81のバレル部81Aを押し込み、図13(e)に示すように、バレル部81Aの上記張り出し部81Aeを骨の表面上に突き当てた状態とする。
【0092】
ここで、工具90の係合部91aと骨固定具85の工具係合部85fとの間をキー付きの嵌合構造にするなどにより、両者が一定の角度姿勢でのみ係合するように構成しておくとともに、軸部91に表示される表示92やハンドル93の角度姿勢を見ることにより、骨固定具85の角度姿勢を知ることができるようにしておく。これにより、工具90の基端側部分(特に、患者の体内に隠れた部分より手元側にある視認できる部分)を見ることで、骨固定具85の骨固定具側係合部85c,85dの角度位置を知ることができるため、手術中に当該角度位置を適宜に設定することができる。ここで、表示92やハンドル93は骨固定具85の姿勢(軸線の周りの角度姿勢)を示す姿勢識別手段を構成する。
【0093】
図12(b)及び(c)に示すように、骨固定具側係合部85cが図示上下方向を向くように骨固定具85の軸線周りの角度姿勢が調整されれば、バレル部81Aの上記本体側係合部81Adが骨固定具側係合部85cに嵌合し、骨固定具85はインプラント本体81に対してその軸線の周りに回転規制されるとともに当該軸線に沿った方向に距離Aだけスライド可能な保持態様となる。
【0094】
一方、骨固定具85の角度姿勢が、図12の角度位置とは90度異なる角度位置となるように調整されていると、図13(b)及び(c)に示すように、上記本体側係合部81Adは骨固定具側係合部85dに嵌合する。このときには、骨固定具85は、上記と同様にその軸線の周りに回転規制されるとともに当該軸線に沿った方向に距離Bだけスライド可能となる。
【0095】
上述のように、本実施形態の骨固定装置80では、骨固定具85がインプラント本体81に対してバレル部81Aの軸線の周りに回転規制されるとともに当該軸線に沿った方向にスライド可能に保持されるため、骨粗しょう症の患者の場合(図12に示す場合)には、骨固定具85の骨係合部85aが骨内で軸線方向に移動したときを想定してスライド範囲を大きく確保し、図示の適用状態では後退可能なスライド量をAとすることにより、骨頭が骨折部方向に落ち込んでカットアウトなどの不具合が生ずることを防止できる。一方、通常の患者の場合(図13に示す場合)には、骨頭の落ち込みが少なく、カットアウトの危険性も低いため、スライド範囲を抑制し、図示の適用状態では後退可能なスライド量を上記Aよりも小さなBとすることができる。このとき、上述のように、スライド範囲の一部、すなわち、図示例では骨固定具85がバレル部81Aに対して先端側へ最も突出した位置(本体側係合部81Adが基端部85bの小径部分に対面する軸線方向の位置)において、骨固定具85がバレル部81Aに対して回転可能となるので、本体側係合部81Adが係合する相手を複数の骨固定具側係合部85cと85dの間で変更することが可能になる。したがって、図示例の場合には、バレル部81Aを骨面から最も離反させた状態とすれば、骨固定具85を回転させて係合相手を変更できる。
【0096】
なお、本参考形態の変形例として、第1参考形態で述べた内容と同様に、相互に異なる係合構造を有する骨固定具側係合部を骨固定具85の軸線に沿った方向に配列することにより、図12(b)及び(c)や図13(b)及び(c)に示すように挿通孔81Aa内における骨固定具85の軸線に沿った方向の位置を変えることにより、骨固定具85のスライド運動の可否やスライド運動の抵抗力を変えることができる。ここで、本参考形態では、図12図13に示すように、骨粗鬆症を発症した骨質と清浄な骨質との相違に応じて骨固定具85の角度姿勢を変更して対応するが、この変形例においても、骨質の相違に応じて骨固定具85の軸線に沿った位置を変更することにより、スライド運動の可否や抵抗力を変えることができる。
【0097】
また、本参考形態では、バレル部81Aとプレート部81Bが着脱可能に構成されたインプラント本体81を用いたが、プレート部81Bを不要とし、バレル部81Aの代わりに円筒状のスリーブ部をインプラント本体として用い、このスリーブ部に対してスライド可能な骨固定具を備えたスライディングスクリューなどのインプラントにも本参考形態の骨固定装置を適用することができる。このようなスライディングスクリューでは、骨固定具に骨係合部を設けるだけでなく、インプラント本体に相当する上記スリーブ部の外面にも骨の皮質に係合するねじ山などの別の(第2の)骨係合部を設けることが好ましい。
【0098】
以上説明した各実施形態では、以下の効果を奏する。上記の各骨固定具は、上記の本体側係合部と係合可能な上記の第1の骨固定具側係合部と第2の骨固定具側係合部とを含み、第1の骨固定具側係合部と第2の骨固定具側係合部は異なる係合構造を備え、本体側係合部が第1の骨固定具側係合部と係合したときのインプラント本体に対する骨固定具の第1の保持態様と、本体側係合部が第2の骨固定具側係合部と係合したときのインプラント本体に対する骨固定具の第2の保持態様とが異なることにより、骨固定具の骨固定具側係合部を選択するだけで骨固定具の保持態様を適宜に設定し、変更することができる。このため、骨固定具の保持態様を複数の態様から選択して実現できるとともに、そのための手術時に行う本体側係合部の調整作業が不要になる。また、骨固定具に設けた複数の係合構造を切り替えて本体側係合部に係合させるだけでよいため、骨固定具の所望の保持態様を確実かつ容易に実現できる。すなわち、相互に異なる複数の保持態様のいずれかを実現する際に、従来のセットスクリューの戻し設定などの微妙で不安定な操作を行う必要がないとともに、異なる保持態様に対応する複数のセット部材を用意し、それらを選択して用いる必要もない。
【0099】
また、骨固定具の軸線の周りの角度姿勢を変えることで骨固定具の保持態様を変更できるため、さらに選択作業を容易に行うことができる。このとき、第1の骨固定具側係合部と第2の骨固定具側係合部が上記軸線の周りの異なる角度位置に設けられることで、選択作業も製造も容易化される。第1の骨固定具側係合部と第2の骨固定具側係合部は、骨固定具の軸線に沿って延長された形状をそれぞれ有するとともに、当該軸線に沿った方向の位置が相互に共通する形成範囲を備えることにより、軸線に沿った方向の骨固定具の配置を変更しなくてもいずれかの骨固定具側係合部を選択して骨固定具の保持態様を変更できる。
【0100】
また、上記各実施形態で実現される複数の保持態様では、いずれもインプラント本体に対する骨固定具の軸線の周りの回転が規制されることにより、骨折部の回旋を抑制することができる。このような構成は、例えば、骨固定具側係合部が凹溝若しくは凸条であり、本体側係合部が凸条若しくは凹溝であることにより実現できる。また、骨固定具側係合部は骨固定具の外面に形成された平坦部であり、本体側係合部は骨固定具側係合部に対面して係合可能な平坦部であってもよい。
【0101】
さらに、第1の保持態様は骨固定具の軸線に沿った骨固定具の移動を可能とし、第2の保持態様は骨固定具の軸線に沿った骨固定具の移動を少なくとも第1の保持態様よりも拘束する態様で規制することにより、骨折態様に応じてインプラント本体に対する骨固定具の軸線に沿った方向の拘束状態を変更できるため、骨折部に最適な固定状態を実現できる。この場合に、第2の骨固定具側係合部が骨固定具の軸線と直交する方向に沿った輪郭形状が本体側係合部の輪郭形状に対応する形状であることにより、本体側係合部を第2の骨固定具側係合部に当接させたときに接触面積を増大させることができるため、骨固定具の軸線に沿った移動を容易に規制できる。
【0102】
また、第1の保持態様がインプラント本体に対して骨固定具の軸線に沿った骨固定具の第1の範囲にわたる移動を可能とし、第2の保持態様がインプラント本体に対する骨固定具の軸線に沿った骨固定具の第1の範囲とは異なる第2の範囲にわたる移動を可能とすることにより、骨折態様に応じてインプラント本体に対する骨固定具の軸線に沿った方向の移動範囲を変更できるため、骨折状態に最適な骨固定具の保持態様を実現できる。
【0103】
さらに、第1実施形態~第6実施形態のように、本体側係合部が係合部材に設けられ、本体側係合部が第1の骨固定具側係合部及び第2の骨固定具側係合部から離間する離隔配置と、本体側係合部が第1の骨固定具側係合部及び第2の骨固定具側係合部に係合する係合配置との間で、係合部材が移動可能に構成されることにより、本体側係合部と骨固定具側係合部との間の係合構造に拘わらず、係合部材を離隔配置としたときには、インプラント本体に対する骨固定具の所定の保持態様を解除することができる。特に、離隔配置では本体側係合部が挿通孔の内部へ突出せず、係合配置では本体側係合部が挿通孔の内部に突出することにより、骨固定具を離隔配置としたときには骨固定具を挿通孔へ支障なく挿通できるようになり、骨固定具を係合配置としたときには骨固定具をインプラント本体に容易に保持できる。この場合、係合部材を離隔配置と係合配置の間で移動させるための操作は必要であるものの、骨固定具の第1の保持態様と第2の保持態様とを切り替えるための作業は上記と同様に不要である。
【0104】
上記の場合において、係合部材若しくは係合部材を位置決めする部材と、インプラント本体若しくはインプラント本体に保持された部材とが挿通孔と交差する軸線の周りに螺合する螺合構造が設けられ、係合部材の離隔配置と係合配置とが螺合構造の螺合深さの変化によりそれぞれ実現されることにより、上記螺合構造を用いて係合部材の配置を容易に変更することができる。ここで、本体側係合部が第1の骨固定具側係合部に係合するときには、係合配置にある係合部材は、インプラント本体若しくは保持された部材に当接して軸線の方向に規制されることにより位置決めされ、本体側係合部が第2の骨固定具側係合部に係合するときには、係合配置にある係合部材は、骨固定具に当接して軸線の方向に規制されることにより位置決めされることにより、いずれの骨固定具の保持態様においても、上記螺合構造に軸力が働く状態で係合部材が位置決めされるため、螺合構造の緩みを防止できる。
【0105】
さらに、第1参考形態や第2参考形態のように、本体側係合部がインプラント本体において固定して設けられることにより、本体側係合部に対する操作を完全に不要とすることができる。この場合に、第1の保持態様と第2の保持態様の少なくとも一方において、インプラント本体に対して骨固定具が軸線の方向に沿って所定のスライド範囲内でスライド可能に構成されるときには、当該スライド範囲の少なくとも一部において、本体側係合部に対して第1の骨固定具側係合部が係合する状態と、本体側係合部に対して第2の骨固定具側係合部が係合する状態とを変更可能な構造を備えることにより、骨固定具が挿通孔に挿通された状態のままでその保持態様を切り替えることが可能になるため、手術中の作業が容易になる。特に、骨固定具がインプラント本体から抜け止めされている場合には、保持態様の切り替えを行うために必須の構造となる。
【0106】
なお、本発明の骨固定装置は、上記各実施形態に限らず、本発明の範囲に包含される種々の改変を施すことができる。例えば、上記各実施形態では、インプラント本体に対する骨固定具の保持態様の相違として、骨固定具のスライド動作に対する規制の有無、当該スライド動作の可否、前記スライド動作のスライド範囲の長短などを実現する場合について示したが、本発明はこのような保持態様の相違に限定されるものではなく、例えば、骨固定具の軸線の周りの回転動作に対する規制の有無、当該回転動作の可否、当該回転動作の回転範囲の大小などを実現する場合にも適用することができる。なお、本明細書における「保持態様」は、インプラント本体に対して骨固定具が保持される態様を言い、上述のように、固定された態様だけでなく、インプラント本体に対して骨固定具が可動な態様も含み、さらに、この態様における「異なる保持態様」には、可動範囲の配置や広狭が相互に異なる場合が含まれる。このような場合の異なる保持態様を設ける構成は、上記第7及び第8実施形態の構成(CHSシステム)に限らず、第1~第6実施形態のような髄内固定システムにも適用することができる。
【0107】
第1参考形態や第2参考形態の変形例として説明したように、骨固定具の異なる角度位置に異なる係合構造を備える骨固定具側係合部を配置する場合に限らず、骨固定具の異なる軸線方向の位置に異なる係合構造を備える骨固定具側係合部を配置してもよい。この点は、上記第1~第6実施形態等の髄内固定システムにも適用できる。また、異なる係合構造を備える骨固定具側係合部の配置態様としては、異なる軸線方向の位置と、異なる角度位置の双方に、互いに異なる係合構造を備える複数の骨固定具側係合部が配置されていてもよく、或いは、互いに異なる係合構造を備える複数の骨固定具側係合部が、軸線方向の位置と角度位置の双方について異なる部位に設けられていてもよい。さらに、互いに異なる係合構造を備える複数の骨固定具側係合部の配置態様としては、複数の骨固定具側係合部が相互に分離して配置されている場合に限らず、互いに連続するように繋がった態様で形成されていてもよい。ここで、骨固定具側係合部において、骨固定具の軸線に沿った方向と、当該軸線の周りの周方向の少なくとも一方に向けて、本体側係合部に対する係合構造が連続的に又は漸次に変化していくような構造も、互いに異なる係合構造を備える複数の骨固定具側係合部が設けられる一つの構成例となる。
【0108】
本発明に係るインプラント本体や骨固定具は、それぞれ、複数の部材が着脱可能に連結される構成とされることも可能である。例えば、本発明は、第1~第6実施形態のような髄内釘本体と、この髄内釘本体の横断孔に挿通されたスリーブと、このスリーブに作用する、上記髄内釘本体に設けられたセットスクリューなどの係合部材やその他の連結具と、上記スリーブ内に挿通されるラグスクリューと、を備える骨固定装置にも適用可能である。このような適用対象の構成例としては、特開平9-66061号公報、特開平4-215751号公報、特開平5-176942号公報に記載されたものがある。この場合、上記髄内釘本体をインプラント本体とし、上記ラグスクリュー及びスリーブを骨固定具として把握し、本発明を適用することも可能である。しかし、上記髄内釘本体と上記スリーブをインプラント本体とし、上記ラグスクリューを骨固定具として把握し、本発明を適用することも可能である。後者の場合には、本体側係合部は上記スリーブの内面に設けるが、当該本体側係合部を、第1及び第2参考形態のように固定的に形成してもよく、或いは、上記スリーブの壁面にスリットを設けるなどして当該壁面の一部を可動にし、髄内釘本体に内蔵された駆動部材が上記壁面に外側から当接することにより動作可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0109】
10,30,40,50,60,70,80…骨固定装置、11…インプラント本体(髄内釘本体)、11x…軸線、11A…基端側領域、11B…先端側領域、11a…軸穴、11b…基端開口、11c…キー溝、11d…雌ねじ、12,13,14A,14B…横断孔、12x,13x,14ax,14bx,14by…軸線、15,23,25…骨固定具、15a…軸孔、15x…軸線、15s…骨係合部、15b…接続部、15c,15d…骨固定具側係合部、15k…キー溝、16…係合部材、16a…軸孔、16s…本体側係合部、16b…基端部、16c…挿通孔、16d…雌ねじ、16e…縦溝、16f…縦溝の上端部、17…弾性部材、18…駆動部材、18a…軸孔、18b…基端部、18c…工具係合部、18d…雄ねじ、19…保持部材、19a…開口部、21A,21B…エンドキャップ、21Aa21Bb…先端部、21Ab,21Bb…工具係合部、21Ac,21Bc…雄ねじ、21Ad,21Bd…段差部、22…規制ピン、22a…規制部、LL…ロックライン、FL…フリーライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13