(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】リフレクタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20230207BHJP
G02B 5/12 20060101ALI20230207BHJP
G02B 5/122 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
G02B5/08 A
G02B5/12
G02B5/122
(21)【出願番号】P 2022501776
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2021004067
(87)【国際公開番号】W WO2021166657
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-07-27
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】桑垣内 智仁
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-112053(JP,A)
【文献】特開平08-105017(JP,A)
【文献】米国特許第05459316(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08
G02B 5/12
G02B 5/122
G02B 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリフレクタ・ユニットを備えたリフレクタであって、それぞれのリフレクタ・ユニットは、角柱または円柱の一方の端に再帰反射構造を備え、該再帰反射構造は該角柱または該円柱の他方の端から入射した光線を入射方向に反射するように構成されており、該角柱または該円柱の中心軸を含む断面であって、その断面において該再帰反射構造の形状が該中心軸に関して線対称となるように定めた該リフレクタ・ユニットの基準断面において、該他方の端の入射面の形状は、該リフレクタ・ユニット内において該中心軸に関して線対称であり、該中心軸に垂直な方向に対して傾斜した部分を有するように構成され
、
それぞれのリフレクタ・ユニットが正六角形の断面を有する角柱の一方の端に再帰反射構としてコーナー・キューブを備え、それぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面が該正六角形の対向する二辺に直交するように定められたリフレクタ。
【請求項2】
それぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面において、該入射面上の第1の点における該入射面の該中心軸に垂直な方向に対する反時計回りの角度をθとすると、線対称に関して第1の点に対応する第2の点における該入射面の該中心軸に垂直な方向に対する時計回りの角度はθであり、それぞれのリフレクタ・ユニットは、該角柱または該円柱に入射した光線を該中心軸に対して角度θに応じた角度傾いた方向へ反射するように構成されている請求項1に記載のリフレクタ。
【請求項3】
該複数のリフレクタ・ユニットの少なくとも一部は、それぞれの基準断面が互いに一致するか平行となるように組み合わされ、該入射面は、該少なくとも一部のリフレクタ・ユニットの任意のリフレクタ・ユニットの基準断面及びそれに平行な断面において同一の形状を有するように構成された請求項1または2に記載のリフレクタ。
【請求項4】
それぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面における入射面の形状は、該中心軸に関して線対称な線分の組み合わせである請求項1から
3のいずれかに記載のリフレクタ。
【請求項5】
それぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面における入射面の形状は、該中心軸に関して線対称な曲線である請求項1から
3のいずれかに記載のリフレクタ。
【請求項6】
形状の異なる複数の種類の入射面を含む請求項1から
5のいずれかに記載のリフレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射構造を備えたリフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
再帰反射構造とは、入射した光を入射方向に反射させる構造である。再帰反射構造の一例はコーナー・キューブである。コーナー・キューブは三平面が互いに直交して立方体の頂点を形成し、該三平面は入射した光線を入射方向に反射するように構成されている。複数のコーナー・キューブを組み合わせてリフレクタが形成される。
【0003】
ところで、リフレクタの用途によっては、入射した光線を入射方向ではなく入射方向に対して所定の角度の方向に反射させるニーズがある。このようなニーズに対応するために、たとえばコーナー・キューブの三平面の角度を調整して入射した光を入射方向に対して所定の角度の方向に反射させるリフレクタが開発されている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
複数のコーナー・キューブを備えたリフレクタは金型を使用して射出成形によって製造される。リフレクタの金型は、複数の柱状のピンを組み合わせて構成される。それぞれのピンの先端には上記の三平面のうちの二平面に対応する面が備わり、組み合された複数のピンの先端によって隙間なく配置された複数のコーナー・キューブを備えたリフレクタの金型が形成される。
【0005】
入射光線に対する所定の角度に応じてコーナー・キューブの三平面の角度を調整する場合には、上記の所定の角度ごとにピンの形状を設計し製造する必要がある。用途に応じた所定の角度ごとにピンの形状を設計し製造するには手間及びコストがかかる。しかし、これまで、入射方向に対して所定の角度の方向に光線を反射させるリフレクタであって、該所定の角度に応じて簡単かつ低コストで製造することのできるリフレクタは開発されていない。
【0006】
したがって、入射方向に対して所定の角度の方向に光線を反射させるリフレクタであって、該所定の角度に応じて簡単かつ低コストで製造することのできるリフレクタに対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許文献1:特開平10-11000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、入射方向に対して所定の角度の方向に光線を反射させるリフレクタであって、該所定の角度に応じて簡単かつ低コストで製造することのできるリフレクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるリフレクタは、複数のリフレクタ・ユニットを備えたリフレクタである。それぞれのリフレクタ・ユニットは、角柱または円柱の一方の端に再帰反射構造を備え、該再帰反射構造は該角柱または該円柱の他方の端から入射した光線を入射方向に反射するように構成されており、該角柱または該円柱の中心軸を含む断面であって、その断面において該再帰反射構造の形状が該中心軸に関して線対称となるように定めた該リフレクタ・ユニットの基準断面において、該他方の端の入射面の形状は、該リフレクタ・ユニット内において該中心軸に関して線対称であり、該中心軸に垂直な方向に対して傾斜した部分を有するように構成されている。
【0010】
本発明によるリフレクタにおいては、同一の形状の再帰反射構造を使用し、入射面の形状のみを変えるによって反射光線の方向を変えることができる。したがって、本発明によるリフレクタは用途に対応した所定の角度に応じて簡単かつ低コストで製造することができる。
【0011】
本発明の第1の実施形態によるリフレクタのそれぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面において、該入射面上の第1の点における該入射面の該中心軸に垂直な方向に対する反時計回りの角度をθとすると、線対称に関して第1の点に対応する第2の点における該入射面の該中心軸に垂直な方向に対する時計回りの角度はθであり、それぞれのリフレクタ・ユニットは、該角柱または該円柱に入射した光線を該中心軸に対して角度θに応じた角度傾いた方向へ反射するように構成されている。
【0012】
本発明の第2の実施形態によるリフレクタにおいて該複数のリフレクタ・ユニットの少なくとも一部は、それぞれの基準断面が互いに一致するか平行となるように組み合わされ、該入射面は、該少なくとも一部のリフレクタ・ユニットの任意のリフレクタ・ユニットの基準断面及びそれに平行な断面において同一の形状を有するように構成されている。
【0013】
本発明の第3の実施形態によるリフレクタにおいて、それぞれのリフレクタ・ユニットが正六角形の断面を有する角柱の一方の端に再帰反射構としてコーナー・キューブを備え、それぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面が該正六角形の対向する二辺に直交するように定められている。
【0014】
本発明の第4の実施形態によるリフレクタにおいて、それぞれのリフレクタ・ユニットが円柱の一方の端に再帰反射構としてボール・レンズを備える。
【0015】
本発明の第5の実施形態によるリフレクタにおいて、それぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面における入射面の形状は、該中心軸に関して線対称な線分の組み合わせである。
【0016】
本実施形態のリフレクタにより、該中心軸に対して所定の角度傾斜した反射光線を生成することができる。該所定の角度は、入射光線の入射点の線分の中心軸に対する傾きによって定まる。
【0017】
本発明の第6の実施形態によるリフレクタにおいて、それぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面における入射面の形状は、該中心軸に関して線対称な曲線であるそれぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面における入射面の形状は、該中心軸に関して線対称な曲線である。
【0018】
本実施形態のリフレクタにより、該曲線によって定まる所定の角度範囲の反射光線を生成することができる。
【0019】
本発明の第7の実施形態によるリフレクタは、形状の異なる複数の種類の入射面を含む。
【0020】
本実施形態のリフレクタにより、該中心軸の方向に対する種々の角度の反射光線を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態のリフレクタの平面図、A-A断面図及びB-B断面図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態のリフレクタ・ユニットの再帰反射構造であるコーナー・キューブの透視図である。
【
図3】本発明の一実施形態のリフレクタ・ユニットの再帰反射構造であるコーナー・キューブの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態のリフレクタ・ユニットの基準断面を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態のリフレクタ・ユニットの基準断面を示す図である。
【
図6】リフレクタ・ユニットから射出する光線の基準軸に平行な方向に対する角度を説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態のリフレクタを説明するための図である。
【
図8】実施例1のリフレクタ・ユニットの基準断面を示す図である。
【
図9】実施例2のリフレクタ・ユニットの基準断面を示す図である。
【
図10】実施例3のリフレクタ・ユニットの基準断面を示す図である。
【
図11】リフレクタの基準軸に平行な入射光線の反射光線がリフレクタの中心軸を含む基準断面(一例として、
図1のB-B断面)において基準軸に平行な方向となす角度と反射光線の光度との関係を示す図である。
【
図12】拡散構造がなく入射面が平面である場合の反射光の光度分布を示す図である。
【
図13】実施例1及び実施例2の場合の反射光の光度分布を示す図である。
【
図14】実施例3の場合の反射光の光度分布を示す図である。
【
図15】実施例4のリフレクタを説明するための図である。
【
図16】実施例4の二種類の拡散構造を備える複数のリフレクタ・ユニットの共通の基準断面を示す図である。
【
図17】リフレクタの基準軸に平行な入射光線の反射光線が基準断面において基準軸に平行な方向となす角度と反射光線の光度との関係を示す図である。
【
図18】実施例4の場合の反射光の光度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態のリフレクタの平面図、A-A断面図及びB-B断面図を示す。リフレクタは、該平面図において正六角形で表される形状のリフレクタ・ユニットを隙間なく組み合わせた形状を有する。リフレクタ・ユニットとは再帰反射機能を有するリフレクタの構成ユニットであり、リフレクタはリフレクタ・ユニットの集合として形成される。
【0023】
図2は本発明の一実施形態のリフレクタ・ユニットの再帰反射構造であるコーナー・キューブの透視図である。
【0024】
図3は本発明の一実施形態のリフレクタ・ユニットの再帰反射構造であるコーナー・キューブの平面図である。
【0025】
リフレクタ・ユニットのコーナー・キューブは、断面が正六角形の角柱において、三組の隣接する二側面をそれぞれ横断する三平面が互いに直交して立方体の頂点を形成するように構成され、該三平面は該角柱に入射した光線を入射方向に反射するように構成されている。
図2及び
図3において、上記の三平面をS1、S2及びS3で示す。上記の三平面のいずれかに入射した光線は他の二平面に反射された後、入射方向に反射される。上記の頂点を通る該角柱の中心軸を基準軸と呼称する。
図2において基準軸をAxで示す。コーナー・キューブの形状は、基準軸Axに関し120度対称である。
図2において、基準軸と平行な方向の入射光と同様に基準軸と平行な方向の反射光が示されている。
【0026】
上記の基準軸を含み正六角形の対向する二辺に直交する断面をリフレクタ・ユニットの基準断面と呼称する。
図3において基準断面を破線で示す。
図1におけるB-B断面は関連する複数のリフレクタ・ユニットの共通の基準断面である。
図3において正六角形の対向する二辺間の距離をPrで表す。
【0027】
複数のリフレクタ・ユニットは、
図1に示すように基準軸に垂直な断面においてそれぞれのリフレクタ・ユニットの正六角形の間の隙間がないように配置される。このとき、複数のリフレクタ・ユニットの基準断面は一致するか互いに平行となる。
図1におけるB-B断面は基準断面の一つを示す。
【0028】
図4及び
図5は、本発明の一実施形態のリフレクタ・ユニットの基準断面を示す図である。
【0029】
基準断面において、基準軸Axに関してコーナー・キューブの頂点と反対側の入射面の形状は、リフレクタ・ユニット内において基準軸Axに関して線対称であり、入射面上の第1の点における入射面の基準軸Axに垂直な方向に対する反時計回りの角度をθとすると、線対称に関して第1の点に対応する第2の点における入射面の基準軸Axに垂直な方向に対する反時計回りの角度は-θであるように構成されている。ここで反時計回りの角度-θは時計回りの角度θを示す。リフレクタの入射面の形状は、いずれかのリフレクタ・ユニットの基準断面と平行な断面において同一であり、基準軸に関して線対称であるように構成されている。また、リフレクタ・ユニットのコーナー・キューブの形状は、基準断面と平行な断面において基準軸に関して線対称である。
【0030】
図4において、基準軸Axと平行な方向の入射光線をA1で示す。光線A1が入射する面の、基準軸Axと垂直な方向に対する反時計回りの角度はθである。したがって、入射光線はリフレクタ・ユニット内において基準軸Axと平行にならず、基準軸Axに平行な方向に対してθ及びリフレクタ・ユニットの材料の屈折率で定まる第1の所定の角度を有する。
図4において、リフレクタ・ユニット内において入射面から再帰反射構造に向かう光線をA1’で示す。上述のように再帰反射構造で反射された光線は光線A1’と平行となる。
図4において、この光線をB1’で示す。後で説明するようにθは非常に小さな角度であるので、光線B1’と入射面との交点は基準軸Axに関して光線A1と入射面との交点とほぼ対称な点である。したがって、光線B1’が入射する面の、基準軸Axと垂直な方向に対する反時計回りの角度は-θ、時計回りの角度はθである。結果として、入射面から射出する光線B1は基準軸Axに平行な方向に対して第2の所定の角度を有する。
【0031】
図5において、基準軸Axと平行な方向の入射光線をA2で示す。光線A2が入射する面の、基準軸Axと垂直な方向に対する反時計回りの角度は-θ、時計回りの角度はθである。したがって、入射光線はリフレクタ・ユニット内において基準軸Axと平行にならず、基準軸Axに平行な方向に対してθ及びリフレクタ・ユニットの材料の屈折率で定まる第3の所定の角度を有する。
図5において、リフレクタ・ユニット内において入射面から再帰反射構造に向かう光線をA2’で示す。上述のように再帰反射構造で反射された光線は光線A2’と平行となる。
図5において、この光線をB2’で示す。後で説明するようにθは非常に小さな角度であるので、光線B2’と入射面との交点は基準軸Axに関して光線A2と入射面との交点とほぼ対称な点である。したがって、光線B2’が入射する面の、基準軸Axと垂直な方向に対する反時計回りの角度はθである。結果として、入射面から射出する光線B2は基準軸Axに平行な方向に対して第4の所定の角度を有する。
【0032】
図6は、リフレクタ・ユニットから射出する光線の基準軸に平行な方向に対する角度(上述の第3及び第4の角度)を説明するための図である。
図6は基準断面を示す図である。
図6における角度は鋭角を正の値で示し、負の符号は使用しない。
【0033】
図6において、リフレクタ・ユニットに入射する光線をA、光線Aが入射する面をSA、光線Aの入射点における面SAの法線をN1、リフレクタ・ユニット内の入射光線をA’で示す。光線Aは基準軸と平行である。面SAの基準軸と垂直な方向に対する角度をθとすると、光線Aの入射角はθである。リフレクタ・ユニットの材料の屈折率をnとすると、θは非常に小さいので、光線A’の屈折角は
θ/n
である。したがって、光線A’が基準軸の方向(V1)となす角度は
(1-1/n)・θ
である。
【0034】
図6において、光線A’が再帰反射構造で反射された後の光線をB’、光線B’が入射する面をSB、光線B’の入射点における面SBの法線をN2、面SBを通過した後リフレクタ・ユニットから射出する光線をBで示す。面SBの基準軸と垂直な方向に対する角度はθである。ただし、面SBは基準軸と垂直な方向に対し、面SAと反対の方向に傾斜している。光線B’は光線A’と平行なので、光線B’が基準軸の方向(V2)となす角度は
(1-1/n)・θ
である。したがって、光線B’がN2となす角度は
(2-1/n)・θ
である。θは非常に小さいので、光線Bの屈折角は
(2・n-1)・θ
である。したがって、光線Bが基準軸の方向(V2)となす角度は
2・(n-1)・θ
である。結果として、リフレクタ・ユニットに入射した基準軸の方向の(V1)の光線Aは、基準軸の方向の(V2)に対して
Φ=2・(n-1)・θ
傾斜した方向に光線Bとして射出(反射)される。
【0035】
図7は、本発明の一実施形態のリフレクタを説明するための図である。
図7に示すように入射面へ入射した基準軸Axの方向の入射光は再帰反射構造によって反射された後、基準軸Axの方向に対して上記の角度傾斜した反射光として射出される。上述のように、たとえば
図1に示すB-B断面のようにそれぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面に一致するか平行な断面において入射面の形状は同一である。
図7及び以下の図において、理解しやすくするために、入射面の基準軸と垂直な方向に対する傾斜角度θを実際よりも拡大して描いている。実際には、
図1に示すように入射面の形状を肉眼で認識するのは困難である。
【0036】
本発明の実施例を以下に説明する。実施例のリフレクタの寸法、具体的に
図1の平面図の縦の長さと横の長さはそれぞれ27ミリメータ及び81ミリメータである。
【0037】
実施例1
図8は実施例1のリフレクタ・ユニットの基準断面を示す図である。
【0038】
基準断面において、入射面の形状は基準軸Axに関して線対称である。
図3における正六角形の対向する二辺間の距離Prをリフレクタ・ユニットの長さと呼称する。基準断面において、入射面は、基準軸Axに垂直な方向に対する反時計回りの傾斜角度がθである線分及び時計回りの傾斜角度がθである線分を組み合わせた三角波形状である。すべての線分、すなわち三角形の辺の長さは等しく、線分のリフレクタ・ユニットの長さ方向の成分の大きさはPs/2である。三角波の高さ(基準軸Ax方向の長さ)はhである。
【0039】
入射面の形状を拡散構造とも呼称する。拡散構造は周期Psの周期的な構造とみなすこともできる。
【0040】
表1は実施例1のリフレクタ・ユニットの数値データを示す。
【表1】
基準軸方向に対する反射光線の角度は、上述のように以下の式で表せる。
Φ=2・(n-1)・θ
【0041】
一般的に、リフレクタ・ユニットの長さPrは0.5-10ミリメータ、入射面の基準軸Axに垂直な方向に対する傾斜角度θは2度以下であるのが好ましい。
【0042】
図4及び
図5を使用して説明したように、θが反時計回りに測定した角度(鋭角)がθである傾斜角度の面に入射した光線の場合には、基準軸方向に対する反射光線の角度Φは反時計回りに測定した角度(鋭角)となり、θが時計回りに測定した角度(鋭角)がθである傾斜角度の面に入射した光線の場合には、基準軸方向に対する反射光線の角度Φは時計回りに測定した角度(鋭角)となる。したがって、二方向の反射光線が生成される。
【0043】
実施例2
図9は実施例2のリフレクタ・ユニットの基準断面を示す図である。
【0044】
基準断面において、入射面の形状は基準軸Axに関して線対称である。
図3における正六角形の対向する二辺間の距離Prをリフレクタ・ユニットの長さと呼称する。基準断面において、入射面は、基準軸Axに垂直な方向に対する反時計回りの傾斜角度がθまたは-θである線分を組み合わせた三角波形状である。すべての線分、すなわち三角形の辺の長さは等しく、線分のリフレクタ・ユニットの長さ方向の成分の大きさはPs/2である。三角波の高さ(基準軸Ax方向の長さ)はhである。
【0045】
入射面の形状を拡散構造とも呼称する。拡散構造は周期Psの周期的な構造とみなすこともできる。
【0046】
表2は実施例2のリフレクタ・ユニットの数値データを示す。
【表2】
基準軸方向に対する反射光線の角度は、上述のように以下の式で表せる。
Φ=2・(n-1)・θ
【0047】
図4及び
図5を使用して説明したように、θが反時計回りに測定した角度(鋭角)がθである傾斜角度の面に入射した光線の場合には、基準軸方向に対する反射光線の角度Φは反時計回りに測定した角度(鋭角)となり、θが時計回りに測定した角度(鋭角)がθである傾斜角度の面に入射した光線の場合には、基準軸方向に対する反射光線の角度Φは時計回りに測定した角度(鋭角)となる。したがって、二方向の反射光線が生成される。
【0048】
実施例3
図10は実施例3のリフレクタ・ユニットの基準断面を示す図である。
【0049】
基準断面において、入射面の形状は基準軸Axに関して線対称である。
図3における正六角形の対向する二辺間の距離Prをリフレクタ・ユニットの長さと呼称する。基準断面において、入射面は正弦波形状である。正弦波の周期はPsである。
【0050】
入射面の形状を拡散構造とも呼称する。拡散構造は周期Psの周期的な構造とみなすこともできる。
【0051】
表3は実施例3のリフレクタ・ユニットの数値データを示す。
【表3】
【0052】
実施例1-3のリフレクタの性能
図11はリフレクタの基準軸に平行な入射光線の反射光線がリフレクタの中心軸を含む基準断面(一例として、
図1のB-B断面)において基準軸に平行な方向となす角度と反射光線の光度との関係を示す図である。
図11の横軸は基準軸に平行な入射光線の反射光線が上記の基準断面において基準軸となす角度を示す。角度の単位は度である。正の値は反時計回りの角度を示し、負の値は時計回りの角度を示す。
図11の縦軸は光度を示す。光度の単位はカンデラである。全ての実施例において、リフレクタの反射光の光度はリフレクタの面の照度を18.5ルクスとするような光束をリフレクタに入射させた場合の光度である。
図11の実線は拡散構造がなく入射面が平面である場合を示す。反射光線の方向はほぼ基準軸に平行な方向である。
図11の破線は実施例1及び実施例2の場合を示す。反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度はほぼ-0.2度及び+0.2度である。
図11の一点鎖線は実施例3の場合を示す。反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度はほぼ-0.25度から+0.25度の範囲に分布している。
【0053】
図12は拡散構造がなく入射面が平面である場合の反射光の光度分布を示す図である。光度(luminous intensity)の単位はカンデラである。
図12の横軸は、リフレクタの中心軸を含み基準断面と垂直な断面(一例として、
図1のA-A断面)において基準軸に平行な入射光線の反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度を示す。
図12の縦軸は、リフレクタの中心軸を含む基準断面(一例として、
図1のB-B断面)において基準軸に平行な入射光線の反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度を示す。角度の単位は度である。
【0054】
図13は実施例1及び実施例2の場合の反射光の光度分布を示す図である。光度(luminous intensity)の単位はカンデラである。
図13の横軸は、リフレクタの中心軸を含み基準断面と垂直な断面(一例として、
図1のA-A断面)において基準軸に平行な入射光線の反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度を示す。
図13の縦軸は、リフレクタの中心軸を含む基準断面(一例として、
図1のB-B断面)において基準軸に平行な入射光線の反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度を示す。角度の単位は度である。
【0055】
図14は実施例3の場合の反射光の光度分布を示す図である。光度(luminous intensity)の単位はカンデラである。
図14の横軸は、リフレクタの中心軸を含み基準断面と垂直な断面(一例として、
図1のA-A断面)において基準軸に平行な入射光線の反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度を示す。
図14の縦軸は、リフレクタの中心軸を含む基準断面(一例として、
図1のB-B断面)において基準軸に平行な入射光線の反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度を示す。角度の単位は度である。
【0056】
実施例4
図15は実施例4のリフレクタを説明するための図である。実施例4のリフレクタは基準軸方向に対する反射光線の角度が±0.2度の拡散構造1及び上記の角度が±1.5度の拡散構造2の二種類の拡散構造を備える。
【0057】
図16は、実施例4の二種類の拡散構造を備える複数のリフレクタ・ユニットの共通の基準断面を示す図である。
図16において一点鎖線で示す基準軸を有するリフレクタ・ユニットのみが拡散構造2を有し、他のリフレクタ・ユニットは拡散構造1を有する。
【0058】
上記の基準断面において、それぞれのリフレクタ・ユニットの入射面の形状はそれぞれの基準軸に関して線対称である。
図3における正六角形の対向する二辺間の距離Prをリフレクタ・ユニットの長さと呼称する。上記の基準断面において、入射面は、基準軸Axに垂直な方向に対する反時計回りの傾斜角度がθ1またはθ2である線分及び時計回りの傾斜角度がθ1またはθ2である線分を組み合わせた三角波形状である。線分のリフレクタ・ユニットの長さ方向の成分の大きさはPs/2である。三角波の高さ(基準軸Ax方向の長さ)はh1またはh2である。
【0059】
表4は実施例4のリフレクタ・ユニットの数値データを示す。
【表4】
基準軸方向に対する反射光線の角度は、上述のように以下の式で表せる。
Φ=2・(n-1)・θ
【0060】
図4及び
図5を使用して説明したように、θが反時計回りに測定した角度(鋭角)がθである傾斜角度の面に入射した光線の場合には、基準軸方向に対する反射光線の角度Φは反時計回りに測定した角度(鋭角)となり、θが時計回りに測定した角度(鋭角)がθである傾斜角度の面に入射した光線の場合には、基準軸方向に対する反射光線の角度Φは時計回りに測定した角度(鋭角)となる。したがって、それぞれの拡散構造ごとに二方向の反射光線が生成される。
【0061】
実施例4のリフレクタの性能
図17はリフレクタの基準軸に平行な入射光線の反射光線が基準断面において基準軸に平行な方向となす角度と反射光線の光度との関係を示す図である。
図17の横軸は基準軸に垂直に入射した光線の反射光線が基準断面において基準軸となす角度を示す。角度の単位は度である。正の値は反時計回りの角度を示し、負の値は時計回りの角度を示す。
図17の縦軸は光度を示す。光度の単位はカンデラである。
図17によると、拡散構造1によって生じる、基準軸に平行な方向となす角度がほぼ-0.2度、+0.2度の反射光線、及び拡散構造2によって生じる、基-1.5度、+1.5度の反射光線が観察される。
【0062】
図17によると、基準軸に平行な方向となす角度が上記の角度の他に-0.85度、+0.85度の反射光線が観察される。その理由は以下のとおりである。拡散構造1及び拡散構造2に境界において、拡散構造1及び拡散構造2に対応する入射面を含み、入射面の形状がそれぞれの基準軸に関して線対称とならないリフレクタ・ユニットが生じる。これらのリフレクタ・ユニットによって基準軸に平行な方向となす角度が±0.85度の反射光線が生成される。
【0063】
一般的に拡散構造によって生じる反射光線の光度の大きさは、その拡散構造を有するリフレクタ・ユニットの数に比例する。したがって、たとえば、拡散構造1及び拡散構造2を有するリフレクタ・ユニットの数を大きくすれば、拡散構造1及び拡散構造2の境界の、入射面の形状がそれぞれの基準軸に関して線対称とならないリフレクタ・ユニットによって生じる反射光線の光度を相対的に小さくすることができる。
【0064】
図18は実施例4の場合の反射光の光度分布を示す図である。光度(luminous intensity)の単位はカンデラである。
図18の横軸は、リフレクタの中心軸を含み基準断面と垂直な断面(一例として、
図1のA-A断面)において基準軸に平行な入射光線の反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度を示す。
図18の縦軸は、リフレクタの中心軸を含む基準断面(一例として、
図1のB-B断面)において基準軸に平行な入射光線の反射光線の方向が基準軸に平行な方向となす角度を示す。角度の単位は度である。
【0065】
他の実施形態
上述の実施形態及び実施例において、再帰反射構造はコーナー・キューブである。再帰反射構造として他の構造、たとえば、ボール・レンズを使用することもできる。それぞれのリフレクタ・ユニットの基準断面が一致するか平行となるように再帰反射構造としてボール・レンズをそなえた複数のリフレクタ・ユニットを配置する。入射面の形状は、いずれかのリフレクタ・ユニットの基準断面及びその基準断面に平行な断面において同一であり、任意のリフレクタ・ユニット内においてそのリフレクタ・ユニットの基準軸に関し線対称であるように定める。
【0066】
再帰反射構造としてボール・レンズを使用した場合にも、基準軸方向に対する反射光線の角度は、実施例1-4の場合と同様に入射面の傾斜角度θ及びリフレクタ・ユニットの材料の屈折率nを含む以下の式によって定まる。
Φ=2・(n-1)・θ