IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電動コンプレッサ 図1
  • 特許-電動コンプレッサ 図2
  • 特許-電動コンプレッサ 図3
  • 特許-電動コンプレッサ 図4
  • 特許-電動コンプレッサ 図5
  • 特許-電動コンプレッサ 図6
  • 特許-電動コンプレッサ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】電動コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20230207BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20230207BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
F04B39/12 G
F04C29/00 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018143683
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020289
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】張 東元
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝次
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-228126(JP,A)
【文献】特開2016-153606(JP,A)
【文献】特開2009-127443(JP,A)
【文献】特開2008-082266(JP,A)
【文献】特開2009-036042(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/12
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに構成された収容部内に制御装置を収容し、前記ハウジングの一部を構成する蓋部材にて前記収容部を閉塞して成る電動コンプレッサにおいて、
前記制御装置に構成されたグランドパターンのうち、前記収容部の周辺部に位置するものを前記収容部の側壁に導通させ、前記収容部の中心部に位置するものは前記蓋部材、又は、前記収容部の底壁に導通させたことを特徴とする電動コンプレッサ。
【請求項2】
前記制御装置を前記ハウジングに固定するためのネジを備え、該ネジを前記グランドパターンに導通させ、且つ、前記収容部の側壁、又は、前記蓋部材、若しくは、前記収容部の底壁に導通させたことを特徴とする請求項1に記載の電動コンプレッサ。
【請求項3】
複数の前記ネジを備え、各ネジを前記グランドパターンに導通させると共に、
前記収容部の周辺部に位置する前記ネジを、前記収容部の側壁に導通させ、
前記収容部の中心部に位置する前記ネジは、前記蓋部材、又は、前記収容部の底壁に導通させたことを特徴とする請求項2に記載の電動コンプレッサ。
【請求項4】
前記グランドパターンを、弾性を有する導電性の接地材により、前記収容部の側壁、又は、前記蓋部材、若しくは、前記収容部の底壁に導通させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の電動コンプレッサ。
【請求項5】
前記グランドパターンを、Yコンデンサを介して前記収容部の側壁、又は、前記蓋部材、若しくは、前記収容部の底壁に導通させたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の電動コンプレッサ。
【請求項6】
前記グランドパターンを、ノイズの規制値特性に基づき、低減させたいノイズの周波数帯域に応じた複数のYコンデンサを介して前記収容部の側壁、又は、前記蓋部材、若しくは、前記収容部の底壁に導通させたことを特徴とする請求項5に記載の電動コンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングの収容部内に制御装置を収容して成る電動コンプレッサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の地球環境問題の顕在化から、ハイブリッド自動車や電気自動車が開発されて来ているが、これら自動車の車室内を空調するための空気調和装置では、エンジン駆動のコンプレッサに代わってモータを備えた電動コンプレッサが使用される。その場合、車両には例えば300V程の高電圧バッテリから成る高電圧電源と、12V程の通常のバッテリから成る低電圧電源が搭載され、電動コンプレッサのモータには制御装置により高電圧電源の直流電圧をインバータ回路で交流とした電圧を供給し、制御装置の電源としては、低電圧電源の直流電圧をスイッチングした電圧(例えば15V等)を供給していた。
【0003】
そのため、制御装置の基板には高電圧側の回路パターンと、それと独立した低電圧側の回路パターンが構成される。また、電動コンプレッサのハウジング(筐体)外面には収容部が構成され、制御装置の基板はこの収容部に収容されるものであった。
【0004】
一方、インバータ回路等でのスイッチングで発生するEMIノイズについては、基板固定用のネジのうちの何れかを用い、高電圧側と低電圧側の各グランドパターンを、コンデンサ(Yコンデンサ:ラインバイパスコンデンサ)を介してハウジング(GND)に導通させることで接地し、低減するという対策が採られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3473853号公報
【文献】特許第5289697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の如く基板固定用のネジで基板のグランドパターンをハウジングに導通させる場合、ネジは収容部の底壁から起立する金属製の円柱にネジ込まれる構造であったため、ハウジングとの間の距離が長くなり、ハウジングの電位に対してインピーダンスを十分に低くすることができず、ノイズ低減効果が阻害されるという問題があった。
【0007】
また、グランドパターンと導通させていない基板固定用の他のネジは、基板のグランドパターンから完全に浮いていたため、基板のグランド電位が安定しないという問題もあった。
【0008】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、制御装置のグランドパターンを短い距離でハウジングに導通させることで、効果的且つ安定的なノイズ低減効果を実現することが可能となる電動コンプレッサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動コンプレッサは、ハウジングに構成された収容部内に制御装置を収容し、ハウジングの一部を構成する蓋部材にて収容部を閉塞して成るものであって、制御装置に構成されたグランドパターンのうち、収容部の周辺部に位置するものを収容部の側壁に導通させ、収容部の中心部に位置するものは蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の電動コンプレッサは、上記発明において制御装置をハウジングに固定するためのネジを備え、このネジをグランドパターンに導通させ、且つ、収容部の側壁、又は、蓋部材、若しくは、収容部の底壁に導通させたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明の電動コンプレッサは、上記発明において複数のネジを備え、各ネジをグランドパターンに導通させると共に、収容部の周辺部に位置するネジを、収容部の側壁に導通させ、収容部の中心部に位置するネジは、蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の電動コンプレッサは、上記各発明においてグランドパターンを、弾性を有する導電性の接地材により、収容部の側壁、又は、蓋部材、若しくは、収容部の底壁に導通させたことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明の電動コンプレッサは、上記各発明においてグランドパターンを、Yコンデンサを介して収容部の側壁、又は、蓋部材、若しくは、収容部の底壁に導通させたことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明の電動コンプレッサは、上記発明においてグランドパターンを、ノイズの規制値特性に基づき、低減させたいノイズの周波数帯域に応じた複数のYコンデンサを介して収容部の側壁、又は、蓋部材、若しくは、収容部の底壁に導通させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハウジングに構成された収容部内に制御装置を収容し、ハウジングの一部を構成する蓋部材にて収容部を閉塞して成る電動コンプレッサにおいて、制御装置に構成されたグランドパターンのうち、収容部の周辺部に位置するものを収容部の側壁に導通させ、収容部の中心部に位置するものは蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させるようにしたので、制御装置のグランドパターンを、最短距離で、若しくは、従来よりも短い距離でハウジングに導通させることができるようになる。それにより、ハウジングの電位に対してインピーダンスを十分に低くして、高いノイズ低減効果を得ることが可能となる。
【0016】
この場合、収容部の周辺部に位置するグランドパターンは、収容部の側壁に近く、収容部の中心部に位置するグランドパターンは、側壁からは遠くなるものの、蓋部材、又は、収容部の底壁はその近くに位置することになるので、本発明の如く収容部の周辺部に位置するグランドパターンを、収容部の側壁に導通させ、収容部の中心部に位置するグランドパターンは、蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させることで、収容部内の位置に応じて制御装置のグランドパターンを、最短距離、若しくは、短い距離で円滑にハウジングに導通させることが可能となる。
【0017】
また、制御装置はネジにてハウジングに固定されるものであるが、このネジは制御装置から突出しているので、例えば請求項2の発明の如くネジをグランドパターンに導通させ、且つ、収容部の側壁、蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させるようにすれば、制御装置のグランドパターンを容易にハウジングに導通させることができるようになる。
【0018】
特に、請求項3の発明の如く複数のネジで制御装置をハウジングに固定する場合、各ネジをグランドパターンに導通させると共に、収容部の周辺部に位置するネジを、収容部の側壁に導通させ、収容部の中心部に位置するネジは、蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させることで、各ネジを最短距離、若しくは、短い距離で円滑にハウジングに導通させ、更に制御装置のグランド電位の安定化も図ることができるようになる。
【0019】
更に、請求項4の発明の如く弾性を有する導電性の接地材により、グランドパターンを収容部の側壁、蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させるようにすれば、制御装置のグランドパターンを確実に収容部の側壁、蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させることができるようになる。特に、請求項2や請求項3の発明の如く制御装置を固定するためのネジをハウジングへの導通に用いる場合、接地材をネジに接触させ、或いは、接地材をネジにより制御装置に固定し、且つ、導通させることが可能となるので、グランドパターンをより確実、且つ、効果的にハウジングに導通させることができるようになる。
【0020】
また、請求項5の発明の如くグランドパターンを、Yコンデンサを介して収容部の側壁、蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させるようにすれば、極めて高いEMIノイズ低減効果を実現することができるようになる。
【0021】
この場合、請求項6の発明の如くグランドパターンを、ノイズの規制値特性に基づき、低減させたいノイズの周波数帯域に応じた複数のYコンデンサを介して収容部の側壁、蓋部材、又は、収容部の底壁に導通させるようにすれば、ノイズの周波数帯域に応じて的確に対応し、より高いEMIノイズ低減効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を適用した一実施例の電動コンプレッサの斜視図である。
図2図1の電動コンプレッサの電気回路の概略ブロック図である。
図3図1の電動コンプレッサの蓋部材を取り外した状態の収容部側から見た平面図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5図3のB-B線断面図である。
図6図3の基板のネジ部分の構造を説明する図である。
図7】本発明の他の実施例の電動コンプレッサの収容部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。図面において、1は電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載されて車室内を空調する車両用空気調和装置の冷媒回路を構成する所謂インバータ一体型の電動コンプレッサであり、モータ2(図2に示す)と、このモータ2により駆動される圧縮機構(図示せず)を内蔵した金属製(アルミニウムや鉄製等の導電性金属。実施例ではアルミニウム製)のハウジング3と、モータ2に給電して駆動する制御装置4(図2に示す)を備えている。
【0024】
ハウジング3は、前記モータ2を内蔵するモータハウジング6と、このモータハウジング6の軸方向の一側に接続されて前記圧縮機構を内蔵する圧縮機構ハウジング7と、この圧縮機構ハウジング7の一側の開口を閉塞する圧縮機構カバー8と、モータハウジング6の軸方向の他側の外面に構成された収容部9(図3に示す)と、この収容部9の他側の開口11を開閉可能に閉塞する蓋部材12を備えている。そして、この収容部9内に制御装置4が収容された後、収容部9は蓋部材12により閉塞され、この蓋部材12はネジ13によりモータハウジング6に着脱可能に取り付けられる。即ち、この発明では蓋部材12もハウジング3の一部を構成するもので、同じく金属製(アルミニウムや鉄製等の導電性金属。実施例ではアルミニウム製)である。
【0025】
尚、図1図3では収容部9を上に、圧縮機構カバー8を下にした状態で実施例の電動コンプレッサ1を示しているが、実際には圧縮機構カバー8が一側、収容部9が他側となるように横方向で配置されるものである。
【0026】
実施例のモータ2は、三相同期モータ(ブラシレスDCモータ)から構成されており、前記圧縮機構は例えばスクロール式の圧縮機構である。圧縮機構はモータ2により駆動され、冷媒を圧縮して冷媒回路内に吐出する。そして、モータハウジング6には、これも冷媒回路の一部を構成するエバポレータ(吸熱器とも称される)から吸入された低温のガス冷媒が流通される。そのため、モータハウジング6内は冷却されている。そして、収容部9は、モータハウジング6(ハウジング3)に形成された隔壁14(図4図5に示す収容部9の底壁)によりモータ2が収容されるモータハウジング6内と区画されており、この隔壁14も低温のガス冷媒により冷却される。
【0027】
尚、車両には電動コンプレッサ1のモータ2や、図示しない走行用のモータに給電して駆動するためのDC300V程の高電圧バッテリから成る高電圧電源(HV電源)21と、DC12V程のバッテリから成る低電圧電源(LV電源)22が搭載されている。また、電動コンプレッサ1のハウジング3は車体(グランド)に導通される。
【0028】
制御装置4は、例えば制御基板17とHVフィルタ基板(EMIフィルタ)18から構成されており、制御装置4を構成するこれら制御基板17とHVフィルタ基板18は、図3に示す如くハウジング3(モータハウジング6)の他側の外面に構成された収容部9内に収容されている。制御基板17には高電圧電源21の直流電圧がHVフィルタ基板18を介して供給される。制御基板17にはインバータ回路が設けられており、このインバータ回路により高電圧電源21の直流電圧を交流としてモータ2に供給し、モータ2を運転する。
【0029】
また、制御基板17には低電圧電源22の直流電圧も供給される。制御基板17にはスイッチングトランス(絶縁トランス)を有したスイッチング電源が設けられており、このスイッチング電源により低電圧電源22の電圧をスイッチングしてインバータ回路のゲートドライブ用の電圧(例えばDC15V)と制御装置4自体の電源電圧(例えばDC5V)を生成する。
【0030】
即ち、制御基板17には高電圧側の回路パターンと、それと独立した低電圧側の回路パターンが構成されており、そのため、制御基板17上には高電圧用のグランドパターン26と低電圧用のグランドパターン27が形成されると共に、それらは絶縁されている(図3)。また、HVフィルタ基板18上にも高電圧用のグランドパターン28が形成されている(図3)。
【0031】
また、制御基板17は複数(実施例では7本)のネジ31~37により開口11側からハウジング3(モータハウジング6)に固定され、HVフィルタ基板18も複数(実施例では5本)のネジ41~45により、これも開口11側からハウジング3に固定されている。従って、各ネジ31~37、41~45のネジ頭は各基板17、18より蓋部材12側に突出するかたちとなる。
【0032】
図4はHVフィルタ基板18を固定するネジ41部分の断面を示し(図3のA-A線断面)、図5は制御基板17を固定するネジ31部分の断面を示している(図3のB-B線断面)。尚、各図は蓋部材12で収容部9を閉塞した状態を示している。各ネジ31~37、41~45は各基板17、18を貫通し、何れも隔壁14から一体に起立するネジ固定用の円柱(金属円柱)51に螺合されている。従って、各ネジ31~37、41~45はハウジング3(モータハウジング6)と導通している。
【0033】
また、実施例ではネジ31~35、37、42~45は収容部9の周辺部に位置している。従って、各ネジ31~35、37、42~45は収容部9の側壁3A(収容部9を構成する壁)の近傍に位置しており、その距離は実施例では円柱51の高さ寸法より小さくなっているものとする。尚、これらネジ31~35、37、42~45側となる各グランドパターン26~28の側壁3A側の周辺部は当該側壁3Aに近接している。また、この実施例では側壁3Aはハウジング3(モータハウジング6)の一部として構成されている。一方、ネジ36、41は収容部9の中心部に位置している。従って、各ネジ36、41は側壁3Aから離間しているが、各ネジ36、41と蓋部材12との距離は円柱51の高さ寸法より小さくなっているものとする。
【0034】
更に、ネジ31、32、36、37はそれぞれYコンデンサ52~55を介して制御基板17の高電圧用のグランドパターン26に導通されており、ネジ41~45はそれぞれYコンデンサ56~60を介してHVフィルタ基板18のグランドパターン28に導通されている。尚、ネジ41は接地用パターン61とYコンデンサ56を介してグランドパターン28に導通される。
【0035】
一方、ネジ33~35はそれぞれ接地用パターン62~64を介して制御基板17の低電圧用のグランドパターン27に導通されている。即ち、制御基板17をハウジング3に固定するための全てのネジ31~37はグランドパターン26又はグランドパターン27に導通されており、HVフィルタ基板18をハウジング3に固定するための全てのネジ41~45もグランドパターン28に導通されている。
【0036】
ここで、図6は例えばネジ31部分の制御基板17の構造を平面(上)と断面(下)で示している。実施例の場合、制御基板17はL1~L4の四層構造を呈しており、各相L1~L4の高電圧用のグランドパターン26は多数のVIA66を用いて対向する位置において最短距離で導通されている。尚、係る構造は低電圧用のグランドパターン27についても同様であるものとする。
【0037】
また、ネジ31が螺合される支柱51とグランドパターン26の間には、複数(実施例では二個)のYコンデンサ52A、52Bが並列に設けられており、これら並列のYコンデンサ52A、52Bで図3におけるYコンデンサ52を構成している。各Yコンデンサ52A、52Bはノイズの規制値特性に基づき、低減させたいノイズの周波数帯域にそれぞれ応じた容量を有しており、実施例ではYコンデンサ52Aが低周波用、Yコンデンサ52Bは高周波用とされている。これにより、グランドパターン26は並列のYコンデンサ52A、52Bを介して支柱51に螺合したネジ31に導通することになる。尚、係る構造は図3の他のネジ32、36、37とYコンデンサ53、54、55、HVフィルタ基板18のネジ41~45とYコンデンサ56~60についても同様であるものとする。
【0038】
そして、実施例では収容部9の中心部に位置する各ネジ36、41を、図4に示す如くフィンガー67により蓋部材12に導通させ、収容部9の周辺部に位置する各ネジ31~35、37、42~45については、図5に示す如くガスケット68により側壁3Aに導通させている。
【0039】
フィンガー67は弾性を有する導電性の接地材であり、各ネジ36、41の位置に対応して予め蓋部材12の内面(収容部9側の面)にそれぞれ取り付けておく。それにより、蓋部材12で収容部9を閉塞したとき、フィンガー67は各ネジ36、41のネジ頭に当接して接触し、蓋部材12と各ネジ36、41を導通させる。
【0040】
これにより、収容部9の中心部に位置する制御基板17の高電圧用のグランドパターン26と、HVフィルタ基板18のグランドパターン28は、ネジ36、41とフィンガー67により蓋部材12に導通されることになるが、前述した如く各ネジ36、41と蓋部材12との間の距離は、円柱51の高さ寸法より小さいので、各グランドパターン26、28は実施例における最短距離で蓋部材12(ハウジング3)に導通されることになる。
【0041】
一方、ガスケット68は収容部9の側壁3Aと蓋部材12間をシールする部材であり、弾性を有する導電性の接地材となる。実施例では各ネジ31~35、37、42~45に対応する箇所のみ内方に突出延長させ、ネジ31~35、37、42~45により各グランドパターン26、27、28に締め付けて固定し、導通させる。それにより、側壁3Aと各ネジ31~35、37、42~45が導通される。
【0042】
これにより、収容部9の周辺部に位置する制御基板17の高電圧用のグランドパターン26及び低電圧用のグランドパターン27と、HVフィルタ基板18のグランドパターン28は、ネジ31~35、37、42~45とガスケット68により側壁3Aに導通されることになるが、前述した如く各ネジ31~35、37、42~45と側壁3Aとの間の距離は、円柱51の高さ寸法より小さいので、各グランドパターン26~28は、ガスケット68を用いない場合(円柱51のみで導通させる場合)よりも短い距離で側壁3A(ハウジング3)に導通されることになる。
【0043】
尚、この実施例によらず、ネジ31~35、37、42~45もフィンガー67で蓋部材12に導通させてもよい。特に図5の例では、ネジ31は側壁3Aよりも蓋部材12に近いので、ネジ36、41と同様にフィンガー67を当接(接触)させて蓋部材12に導通させてもよい。
【0044】
以上の如く、本発明では制御装置4を構成する制御基板17やHVフィルタ基板18に構成されたグランドパターン26~28を、蓋部材12、又は、グランドパターン26~28に近接する収容部9の側壁3Aに導通させるようにしたので、制御装置4の制御基板17やHVフィルタ基板18のグランドパターン26~28を、最短距離で、若しくは、従来よりも短い距離でハウジング3に導通させることができるようになる。それにより、ハウジング3の電位に対してインピーダンスを十分に低くして、高いノイズ低減効果を得ることが可能となる。
【0045】
ここで、実施例の如く収容部9の周辺部に位置するグランドパターン26~28が収容部9の側壁3Aに近く、収容部9の中心部に位置するグランドパターン26、28は側壁3Aからは遠くなるものの、蓋部材12がその近くに位置するときは、収容部9の周辺部に位置するグランドパターン26~28を、側壁3Aに導通させ、収容部9の中心部に位置するグランドパターン26、28は、蓋部材12に導通させることで、収容部9内の位置に応じて制御基板17やHVフィルタ基板18のグランドパターン26~28を、最短距離、若しくは、短い距離で円滑にハウジング3に導通させることが可能となる。
【0046】
また、実施例の如く制御装置4の制御基板17やHVフィルタ基板18がネジ31~37、41~45にてハウジング3に固定されるときは、これらネジ31~37、41~45は各基板17、18から突出することになるので、各ネジ31~37、41~45をグランドパターン26~28に導通させ、且つ、蓋部材12、又は、側壁3Aに導通させることで、各基板17、18のグランドパターン26~28を容易にハウジング3に導通させることができるようになる。
【0047】
特に、実施例の如く複数のネジ31~37、41~45で制御装置4の制御基板17やHVフィルタ基板18をハウジング3に固定する場合、各ネジ31~37、41~45をグランドパターン26~28に導通させると共に、収容部9の周辺部に位置するネジ31~35、37、42~45を、側壁3Aに導通させ、収容部9の中心部に位置するネジ36、41は、蓋部材12に導通させることで、各ネジ31~37、41~45を最短距離、若しくは、短い距離で円滑にハウジング3に導通させ、更に各基板17、18のグランド電位の安定化も図ることができるようになる。
【0048】
更に、実施例の如くフィンガー67やガスケット68(弾性を有する導電性の接地材)により、グランドパターン26~28を蓋部材12、又は、側壁3Aに導通させるようにすれば、制御基板17やHVフィルタ基板18のグランドパターン26~28を確実に蓋部材12、又は、側壁3Aに導通させることができるようになる。特に、実施例の如く各基板17、18を固定するためのネジ31~37、41~45をハウジング3への導通に用いる場合、フィンガー67(接地材)をネジ36、41に接触させ、或いは、ガスケット68(接地材)をネジ31~35、37、42~45により各基板17、18に固定し、且つ、導通させることが可能となるので、グランドパターン26~28をより確実、且つ、効果的にハウジング3に導通させることができるようになる。
【0049】
また、実施例の如く制御装置4が、高電圧電源21と低電圧電源22に接続され、制御基板17には、高電圧用のグランドパターン26と低電圧用のグランドパターン27がそれぞれ構成されており、HVフィルタ基板18には高電圧用のグランドパターン28が構成されている場合、高電圧用のグランドパターン26、28を、Yコンデンサ52~60を介して蓋部材12、又は、側壁3Aに導通させるようにすれば、極めて高いEMIノイズ低減効果を実現することができるようになる。
【0050】
この場合、実施例の如くグランドパターン26、28を、ノイズの規制値特性に基づき、低減させたいノイズの周波数帯域に応じた複数のYコンデンサ52A、52Bを介して蓋部材12、又は、側壁3Aに導通させるようにすれば、ノイズの周波数帯域に応じて的確に対応し、より高いEMIノイズ低減効果を得ることが可能となる。即ち、実施例の構造にてBiconiアンテナの全域30~300MHzの周波数帯において、5dB程のノイズ低減効果が得られた。
【0051】
尚、実施例では各ネジ31~37、41から45を介してグランドパターン26~28を蓋部材12、又は、側壁3Aに導通させたが、請求項2、請求項3以外の発明ではそれに限らず、各グランドパターン26~28を、実施例で示したフィンガーやガスケットで直接蓋部材12や側壁3Aに導通させてもよい。
【0052】
また、実施例では高電圧用のグランドパターン26、28を、Yコンデンサ52~60を介して蓋部材12、又は、側壁3Aに導通させたが、低電圧用のグランドパターン27もYコンデンサを介して蓋部材12、又は、側壁3Aに導通させ、EMIノイズの低減を図ってもよい。
【0053】
更に、実施例では図4図5に示される如くハウジング3のモータハウジング6側に側壁3Aを構成し、この側壁3Aの内側に収容部9を構成すると共に、平板状の蓋部材12にて収容部9を閉塞するようにしたが、蓋部材12側とモータハウジング6側の双方に側壁を構成し、両者で収容部9の側壁を構成する構造としてもよい。その場合、収容部9の側壁とは、蓋部材12の側壁とモータハウジング6の側壁ということになる。
【0054】
その他にも、蓋部材12のみに側壁を構成し、ハウジング3のモータハウジング6には側壁の無い構造としてもよい。その場合は、モータハウジング6の軸方向の他側の外面に収容部9の位置のみが設定され、蓋部材12がモータハウジング6に取り付けられた状態で、蓋部材12(ハウジング3の一部に含まれる)とモータハウジング6とで囲まれる空間が収容部9となる。そして、この収容部9の側壁も蓋部材12の側壁ということになる。
【0055】
更にまた、図7図4に対応した箇所の他の実施例の構造を示している。この実施例では制御装置4(図7ではHVフィルタ基板18の部分を示す)を蓋部材12側に取り付ける構造としている。尚、この例では前述した如く収容部9の側壁を蓋部材12の側壁とモータハウジング6の側壁で構成している。
【0056】
係る構造の場合、ネジ41(グランドパターン28)のネジ頭は下向きとなるので、ネジ41に近接する収容部9の壁は、この収容部9の底壁3B(モータハウジング6の一部)となる。そこで、この場合にはフィンガー67を底壁3Bに取り付けておき、蓋部材12で収容部9を閉塞したとき、フィンガー67がネジ41のネジ頭に当接して接触し、底壁3Bとネジ41が導通されるようにする。係る構造によっても、制御基板17やHVフィルタ基板18のグランドパターン26~28を、最短距離、若しくは、短い距離で円滑にハウジング3に導通させることが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 電動コンプレッサ
2 モータ
3 ハウジング
3A 側壁
3B 底壁
4 制御装置
6 モータハウジング
9 収容部
12 蓋部材
17 制御基板
18 HVフィルタ基板
21 高電圧電源
22 低電圧電源
26~28 グランドパターン
31~37、41~45 ネジ
52~60、52A、52B Yコンデンサ
67 フィンガー(接地材)
68 ガスケット(接地材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7