(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】衛生薄葉紙
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
A47K10/16 B
(21)【出願番号】P 2018221901
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏彦
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-036391(JP,U)
【文献】特開2009-285489(JP,A)
【文献】特開2002-255405(JP,A)
【文献】特開2004-049261(JP,A)
【文献】米国特許第05704566(US,A)
【文献】実開昭60-031896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
B65H 16/00-16/10
B65H 18/00-18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に所定の間隔で配置され、前記長手方向と交差する幅方向に延びるスリットを有する衛生薄葉紙であって、
前記スリットは、
前記幅方向の少なくとも一方の端部寄りに形成された第1ミシン目と、
前記幅方向の中央部と前記第1ミシン目との間に形成された第2ミシン目とを有し、
前記第2ミシン目のタイカット比が、前記第1ミシン目のタイカット比より小さ
く、
前記第1ミシン目のタイカット比が0.07~0.13であり、且つ前記第2ミシン目のタイカット比が0.02~0.08である、衛生薄葉紙。
【請求項2】
前記第2ミシン目は、前記少なくとも一方の端部から前記衛生薄葉紙の幅寸法の8.5%以上離れた位置に形成されている、請求項1に記載の衛生薄葉紙。
【請求項3】
前記第2ミシン目は、前記第1ミシン目と連続する、請求項1に記載の衛生薄葉紙。
【請求項4】
前記第2ミシン目の長さは、前記衛生薄葉紙の幅寸法の20%以上32%以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項5】
前記中央部に形成された第3ミシン目を有し、
前記第3ミシン目のタイカット比が、前記第2ミシン目のタイカット比より大きい、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項6】
前記第3ミシン目のタイカット比が、0.07~0.13である、請求項
5に記載の衛生薄葉紙。
【請求項7】
前記第1ミシン目は、前記少なくとも一方の端部の端縁と連続する端縁カット部を有する、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項8】
前記第1ミシン目のカット長に対する前記端縁カット部の端縁カット長の比が、0.02~0.16である、請求項
7に記載の衛生薄葉紙。
【請求項9】
前記第2ミシン目のカット長に対する前記端縁カット部の端縁カット長の比が、0.01~0.08である、請求項
7に記載の衛生薄葉紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生薄葉紙に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンペーパー等の衛生薄葉紙は、シートがロール状に巻き付けられた薄葉紙ロールとして使用される場合がある。このロール状のシートには、長手方向に所定の間隔で長手方向を横切るミシン目が形成されている。このような薄葉紙ロールは、ホルダー等に設置され、シートに形成されたミシン目を切ることにより、切り取られたシートの一部が衛生薄葉紙として使用される(例えば、特開2007-37595号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の衛生薄葉紙は、ホルダー等に設置された薄葉紙ロールからシートの一部が切り取られる際に、ミシン目が形成された位置できれいに切れずに、シートが予期せぬ方向に破れたり、余分なシートが引き出されることがある。このように、従来の衛生薄葉紙では、切り取りが困難となる場合がある。
【0005】
本発明の課題は、切り取りが容易な衛生薄葉紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の態様は、長手方向に所定の間隔で配置され、前記長手方向と交差する幅方向に延びるスリットを有する衛生薄葉紙であって、前記スリットは、前記幅方向の少なくとも一方の端部寄りに形成された第1ミシン目と、前記幅方向の中央部と前記第1ミシン目との間に形成された第2ミシン目とを有し、前記第2ミシン目のタイカット比が、前記第1ミシン目のタイカット比より小さい、衛生薄葉紙を提供する。
【0007】
本明細書において、幅方向の少なくとも一方の端部寄りとは、衛生薄葉紙の幅方向の両端部のうち、スリットが形成されたいずれか一方の端部寄りのゾーンまたは区間(以下、ゾーンという)または両方の端部寄りの各ゾーンを示す。すなわち、第1ミシン目は、幅方向の一方の端部寄りのゾーンおよび/または他方の端部寄りのゾーンに形成されている。
【0008】
また、中央部とは、衛生薄葉紙の幅方向の中心とその周辺を含むゾーンを示す。すなわち、中央部には、第1ミシン目および第2ミシン目を除いたスリットの一部が形成されている。
【0009】
また、幅方向の中央部と第1ミシン目との間とは、スリットが形成された幅方向の中央部のゾーンといずれか一方の端部寄りのゾーンとの間のゾーン、および/または幅方向の中央部のゾーンといずれか他方の端部寄りのゾーンとの間のゾーンを示す。すなわち、第2ミシン目は、一方の端部寄りのゾーンおよび/または他方の端部寄りのゾーンと中央部のゾーンとを除いたゾーンに形成されている。
【0010】
また、ミシン目は、カットされた部分(以下カット部という)と隣り合う2つのカット部間のカットされていない部分(以下タイ部という)とが交互に配置された構造である。また、タイカット比とは、ミシン目が延びる方向に隣り合うカット部とタイ部を単位として、カット部の長さに対するタイ部の長さの比である。なお、ミシン目は、タイカット比が小さい程、タイ部の長さに対してカット部の長さの比率が大きく高くなるため、切れやすくなる。
【0011】
長手方向と交差する幅方向に延びるスリットを有する衛生薄葉紙では、長手方向に配置された各スリットに沿って、幅方向のいずれか一方の端部から幅方向の中央部に向かって衛生薄葉紙が切り取られる。このとき、従来の衛生薄葉紙では、該一方の端部寄りのゾーンではスリットに沿ってきれいに切れるが、該一方の端部と中央部との間のゾーン(該一方の端部寄りのゾーンと該中央部のゾーンとを除いたゾーン)ではスリットに沿ってきれいに切れない傾向がある。そのため、衛生薄葉紙が予期せぬ方向に破れたり、ミシン目が切れずに余分な衛生薄葉紙が引き出される傾向がある。
【0012】
これに対して、第1の態様では、一方の端部寄りのゾーンにタイカット比が大きい第1ミシン目が形成され、一方の端部と中央部との間のゾーンにタイカット比が小さい第2ミシン目が形成されている。これにより、第1の態様では、一方の端部と中央部との間のゾーンでも、スリットに沿ってきれいに切ることができる。
【0013】
また、第1の態様では、衛生薄葉紙の切り取りが、幅方向の少なくとも一方の端部側から開始され、幅方向の中央部に向かって進行するが、切り取り方向は、タイカット比が大きい第1ミシン目からタイカット比が小さい第2ミシン目に進むにつれて次第に安定する。そして、切り取りの進行が該中央部に達し、さらに幅方向の他方の端部側に達しても、切り取り方向が安定したまま切り取りを進行させることができる。
【0014】
これにより、第1の態様では、衛生薄葉紙が固定されない状態または不安定な状態(例えば、ホルダー等に回転自在に設置された薄葉紙ロールから衛生薄葉紙の一部を切り取る場合、衛生薄葉紙を押さえ付けずに片手で切り取る場合等)でも、ミシン目が形成された位置で衛生薄葉紙の一部を切り取ることができる。そのため、第1の態様では、衛生薄葉紙の一部を切り取る際に、衛生薄葉紙が予期せぬ方向に破れることを抑制することができる。また、余分な衛生薄葉紙が引き出されることを抑制することができる。したがって、第1の態様によれば、切り取りが容易な衛生薄葉紙を提供することができる。
【0015】
本発明に係る第2の態様は、前記第2ミシン目は、前記少なくとも一方の端部から前記衛生薄葉紙の幅寸法の8.5%以上離れた位置に形成されている、衛生薄葉紙を提供する。本明細書において、端部から衛生薄葉紙の幅寸法の8.5%以上離れた位置とは、衛生薄葉紙の幅寸法を100%としたときに、幅方向の端部から中央部に向かって幅方向に少なくとも衛生薄葉紙の幅寸法の8.5%分離れた中央部を除くゾーンを示す。
【0016】
従来の衛生薄葉紙では、衛生薄葉紙が切り取られる際に、幅方向の端部と中央部との間のゾーンの中でも、端部から幅方向に衛生薄葉紙の幅寸法の8.5%以上離れたゾーンで、特に、スリットに沿ってきれいに切にくい傾向がある。これに対して、第2の態様では、このような端部から衛生薄葉紙の幅寸法の8.5%以上離れたゾーンに第2ミシン目が形成されているため、一方の端部と中央部との間のゾーンで、さらにスリットに沿ってきれいに切ることができる。
【0017】
本発明に係る第3の態様は、前記第2ミシン目は、前記第1ミシン目と連続する、衛生薄葉紙を提供する。本明細書において、第2ミシン目が第1ミシン目と連続するとは、第1ミシン目と第2ミシン目が一連または一続きのミシン目で構成されていることを示す。
【0018】
第3の態様では、このように第1ミシン目と第2ミシン目とが連続するため、衛生薄葉紙が切り取られる際に、スリットにかかる力が第1ミシン目から第2ミシン目に伝わり易くなる。これにより、第3の態様では、第1ミシン目から第2ミシン目にかけてスリットをきれいに切ることができる。そのため、第3の態様によれば、ミシン目が予期せぬ方向に破れたり、ミシン目が切れずに余分な衛生薄葉紙が引き出されるのを、さらに抑制することができる。
【0019】
本発明に係る第4の態様は、前記第2ミシン目の長さは、前記衛生薄葉紙の幅寸法の20%以上32%以下である、衛生薄葉紙を提供する。本明細書において、ミシン目の長さとは、ミシン目を構成するカット部とタイ部とが交互に配置されたスリットにおけるゾーンの長さを示す。また、衛生薄葉紙の幅寸法の20%以上32%以下とは、衛生薄葉紙の幅寸法を100%としたときに、第2ミシン目の長さが衛生薄葉紙の幅寸法に対して20%以上32%以下であることを示す。
【0020】
従来の衛生薄葉紙では、衛生薄葉紙が切り取られる際に、幅方向の端部と中央部との間のスリットが形成されたゾーンの中でも、特に、衛生薄葉紙の幅寸法を100%としたときに、スリットの一部の長さが衛生薄葉紙の幅寸法の20%以上32%以下の範囲で、スリットがきれいに切れにくい傾向がある。これに対して、第4の態様では、このようなスリットの一部の範囲が第2ミシン目で構成されているため、一方の端部と中央部との間のゾーンで、さらにスリットに沿ってきれいに切ることができる。
【0021】
本発明に係る第5の態様は、前記第2ミシン目のタイカット比が、0.02~0.08である、衛生薄葉紙を提供する。第5の態様では、第2ミシン目のタイカット比をこのような範囲にすることにより、一方の端部と中央部との間のゾーン(衛生薄葉紙が予期せぬ方向に破れる傾向があるゾーン)で、さらにスリットに沿ってきれいに切ることができる。これにより、第5の態様では、衛生薄葉紙が予期せぬ方向に破れたり、余分な衛生薄葉紙が引き出されることを、ほぼ確実に防ぐことができる。
【0022】
本発明に係る第6の態様は、前記第1ミシン目のタイカット比が、0.07~0.13である、衛生薄葉紙を提供する。第1ミシン目が形成される少なくとも一方の端部寄りのゾーンは、第2ミシン目が形成される該一方の端部と中央部との間のゾーンに比べて、スリットに沿ってきれいに切れる反面、衛生薄葉紙の製造時または包装時等(以下、未使用時という)にスリットが切れやすい。これに対して、第6の態様では、第1ミシン目のタイカット比をこのような範囲にすることにより、第1ミシン目が形成された端部寄りのゾーンで、衛生薄葉紙の未使用時にスリットが切れるのを抑制することができる。
【0023】
本発明に係る第7の態様は、前記中央部に形成された第3ミシン目を有し、前記第3ミシン目のタイカット比が、前記第2ミシン目のタイカット比より大きい、衛生薄葉紙を提供する。スリットが形成された幅方向の中央部のゾーンは、第2ミシン目が形成される該一方の端部と中央部との間のゾーンに比べて、スリットに沿ってきれいに切れるが、その反面、衛生薄葉紙の未使用時にスリットが切れやすいゾーンでもある。そこで、第2ミシン目よりもタイカット比が大きい第3ミシン目を幅方向の中央部に形成することにより、幅方向の中央部で、衛生薄葉紙の未使用時にスリットが切れるのを抑制することができる。
【0024】
本発明に係る第8の態様は、前記第3ミシン目のタイカット比が、0.07~0.13である、衛生薄葉紙を提供する。第8の態様では、第3ミシン目のタイカット比をこのような範囲にすることにより、第3ミシン目が形成された幅方向の中央部で、衛生薄葉紙の未使用時にスリットが切れるのをさらに抑制することができる。
【0025】
本発明に係る第9の態様は、前記第1ミシン目は、前記少なくとも一方の端部の端縁と連続する端縁カット部を有する、衛生薄葉紙を提供する。すなわち、第9の態様では、第1ミシン目に、幅方向の少なくとも一方の端部の端縁と連続する端縁カット部が設けられている。
【0026】
このような構成により、第9の態様では、衛生薄葉紙が切り取られる際に、ミシン目にかかる力が、一方の端部の端縁から第1ミシン目に伝わり易くなる。そのため、第9の態様によれば、衛生薄葉紙の一部を切り取る際に、スリットが一方の端部側でも切れ易くなり、衛生薄葉紙の切り取りがさらに容易になる。
【0027】
本発明に係る第10の態様は、前記第1ミシン目のカット長に対する前記端縁カット部の端縁カット長の比が、0.02~0.16である、衛生薄葉紙を提供する。本明細書において、カット長とは、ミシン目を構成するカット部の幅方向における長さである。また、第1ミシン目のカット長に対する端縁カット部の端縁カット長の比は、第1ミシン目のカット長を1としたときの端縁カット部の端縁カット長の比率を示す。
【0028】
第10の態様では、第1ミシン目のカット長に対する端縁カット部の端縁カット長の比をこのような範囲にすることにより、衛生薄葉紙が切り取られる際に、ミシン目にかかる力が、一方の端部の端縁から第1ミシン目により伝わり易くなる。そのため、第10の態様によれば、衛生薄葉紙の一部を切り取る際に、ミシン目全体がより切れ易くなり、衛生薄葉紙の切り取りがさらに容易になる。
【0029】
また、このような構成により、第10の態様では、衛生薄葉紙の幅方向の少なくとも一方の端部の端縁と連続する端縁カット部がめくれ難くなる。そのため、第10の態様によれば、衛生薄葉紙の未使用時に、衛生薄葉紙の予期せぬ破断や製品不良を防ぐことができる。
【0030】
本発明に係る第11の態様は、前記第2ミシン目のカット長に対する前記端縁カット部の端縁カット長の比が、0.01~0.08である、衛生薄葉紙を提供する。本明細書において、第2ミシン目のカット長に対する端縁カット部の端縁カット長の比は、第2ミシン目のカット長を1としたときの端縁カット部の端縁カット長の比率を示す。
【0031】
第11の態様では、衛生薄葉紙が切り取られる際に、ミシン目にかかる力が、一方の端部の端縁から第1ミシン目を介して第2ミシン目に伝わり易くなる。そのため、第11の態様によれば、衛生薄葉紙の一部を切り取る際に、ミシン目全体がさらに切れ易くなり、衛生薄葉紙の切り取りがさらに容易になる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、切り取りが容易な衛生薄葉紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る衛生薄葉紙の一部を拡大して厚み方向に見た図である。
【
図3】本実施形態に係る衛生薄葉紙のスリットの拡大図である。
【
図4】本実施形態に係る衛生薄葉紙の使用状態(切り取り前)を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る衛生薄葉紙の使用状態(切り取り後)を示す図である。
【
図7】従来の衛生薄葉紙の使用状態(切り取り後)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、理解を容易にするため、各図における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。また、以下に示す説明では、各図において共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0035】
また、本明細書では、3軸方向(X方向、Y方向、Z方向)の3次元直交座標系を用いる。なお、本明細書において、X方向は衛生薄葉紙の長手方向(引き出し方向)を示し、Y方向は衛生薄葉紙の長手方向(引き出し方向)と交差(直交)する幅方向を示し、Z方向は衛生薄葉紙の厚み方向を示す。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙を示す図である。また
図2は、本実施形態に係る衛生薄葉紙の一部を拡大して厚み方向(Z方向)に見た図である。さらに
図3は、本実施形態に係る衛生薄葉紙のスリットの拡大図である。
【0037】
図1において、符号100は、本発明の衛生薄葉紙の一例であるキッチンペーパーを示す。衛生薄葉紙(キッチンペーパー100)の態様は、特に限定されないが、例えば、
図1に示すような、ロール状のキッチンペーパー(以下、薄葉紙ロールまたはキッチンロールという場合がある)を用いることができる。
【0038】
ロール状のキッチンペーパー100は、
図1に示すように、帯状のシートSTが紙管PTに巻き付けられものである。帯状のシートSTには、スリット10が形成されている。スリット10は、帯状のシートSTの長手方向(X方向)に所定の間隔Lで配置され、長手方向(X方向)と交差する幅方向(Y方向)に延びるミシン目で構成されている。
【0039】
このようなロール状のキッチンペーパー100では、巻き付けられたシートSTを引き出して、ミシン目Mに沿ってシートSTを切ることにより、1枚のキッチンペーパーKPが得られる(
図5参照)。なお、このような使用形態は、ピックアップ式と呼ばれる場合がある。なお、衛生薄葉紙(キッチンペーパー)100は、ロール状に限定されず、帯状のシートSTが折り畳まれて積層されたものでもよい。
【0040】
また、本実施形態に係る衛生薄葉紙は、キッチンペーパーに限定されず、ティシューペーパー、ペーパータオル等の衛生薄葉紙に適用可能である。これらの衛生薄葉紙には、ドライタイプに限定されず、水、薬液等を含浸させたウェットタイプの衛生薄葉紙も含まれる。また、衛生薄葉紙の用途は、家庭用、業務用のいずれも対象となり得る。
【0041】
衛生薄葉紙(キッチンペーパー)100の寸法は、特に限定されないが、例えば、
図1、
図2に示すキッチンロールの場合、ロール径Rは70mm~150mm、ロール幅Wは100mm~300mm、ミシン目Mの間隔Lは100mm~300mm、シートSTの厚み(2プライ)は100μm~1100μmである。
【0042】
衛生薄葉紙(キッチンペーパー)100を構成するシートSTは、クレープ紙で構成されている。クレープ紙は、抄紙工程において抄紙機のドライヤーの出口で、ドクターブレードと呼ばれる刃を当てることにより表面に細かいシワが形成された紙である。
【0043】
シートSTを構成するクレープ紙には、原紙の原料がパルプを主材とする紙が用いられる。パルプ組成は、キッチンペーパーにおける公知の組成を用いることができる。例えば、パルプの配合割合を50質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%とすることができる。
【0044】
また、クレープ紙におけるパルプ組成は、例えば、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプとを適宜の比率で使用することができる。特に、広葉樹パルプに対して針葉樹パルプの比率がより多い組成のパルプ組成であることが好ましい。針葉樹パルプと広葉樹パルプの比は、好ましくは50:50~80:20である。
【0045】
クレープ紙の坪量は、特に限定されるものではないが、例えば、JIS P 8124(1998)で測定された坪量(または米坪)を採用することができる。衛生薄葉紙がキッチンペーパー100の場合、衛生薄葉紙を構成するクレープ紙の坪量は、1プライあたり、好ましくは14.0~50.0g/m2であり、より好ましくは15.0~30.0g/m2であり、特に好ましくは16.0~24.0g/m2である。
【0046】
また、クレープ紙の紙厚は、特に限定されるものではないが、例えば、JIS P 8111(1998)の環境下で測定された紙厚を採用することができる。衛生薄葉紙がキッチンペーパー100の場合、クレープ紙の紙厚は、1プライあたり、50μm~550μmであり、好ましくは70~500μmであり、より好ましくは100~330μm程度である。
【0047】
なお、紙厚の測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて2プライの状態で測定する。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、該ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせる。次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしたときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーは載せるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにする。また、紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、紙厚は、測定を10回行って得られる平均値を用いる。
【0048】
また、シートSTを構成するクレープ紙には、1プライの状態でエンボス加工が施されていても良い。このようなエンボス加工は、例えば、公知のスチールラバー式のエンボス付与方法により、図示しない凸エンボスロールをクレープ紙に押し付けて、クレープ紙の一方の面上に凸エンボスを形成するものである。また、クレープ紙の他方の面には凸エンボスに対応する凹エンボスが形成される。
【0049】
なお、クレープ紙に形成される凸エンボスの頂部(または凸エンボスに対応する凹エンボスの開口部)の形状は、特に限定されないが、例えば、平面視で四角形状、三角形状、円形状等の形状にすることができる。また、凸エンボスの側面は、クレープ紙の凸エンボスが形成されていない面から凸エンボスの頂部に向かって図示しないテーパにするのが好ましい。このようなテーパの側面を有する凸エンボスを設けることにより、キッチンペーパー100が厚み方向(Z方向)に潰れ難くなる。
【0050】
衛生薄葉紙(キッチンペーパー)100を構成するシートSTのプライ数は、特に限定されないが、1プライ以上にすることができ、好ましくは2プライ(二枚重ね)である。また、衛生薄葉紙の形状は、特に限定されないが、例えば、平面の輪郭形状が長方形のものであることが好ましい。本実施形態の衛生薄葉紙(キッチンペーパー100)は、上述の凸エンボスが形成されたクレープ紙が2プライ(2枚重ね)で形成されている。
【0051】
具体的には、本実施形態のキッチンペーパー100は、凸エンボスが形成された2枚のクレープ紙が積層されて一体化された積層構造を有する。このような積層構造の形態は、特に限定されるものではなく、キッチンペーパーの積層構造で採用されているティップトゥティップ形式の積層構造、ネステッド形式の積層構造等を採用することができる。
【0052】
また、このような積層構造は、2枚のクレープ紙を接着剤により接着して形成することができる。このような接着剤には、積層構造を有するキッチンペーパーに採用される公知の接着剤を用いることができる。このような接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系接着剤等が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る衛生薄葉紙100では、
図2、
図3に示すように、スリット10(ミシン目M)が、第1ミシン目11と第2ミシン目12とを有する。第1ミシン目11は、幅方向(Y方向)の少なくとも一方の端部寄りに形成されている。また、第2ミシン目12は、幅方向(Y方向)の中央部WCと第1ミシン目11との間に形成されている。
【0054】
また、幅方向(Y方向)の少なくとも一方の端部寄りは、衛生薄葉紙100の幅方向(Y方向)の両端部WA、WBのうち、スリット10が形成されたいずれか一方の端部のゾーンまたは両方の端部の各ゾーンを示す。本実施形態では、
図2、
図3に示すように、第1ミシン目11は、幅方向(Y方向)の一方の端部WA寄りのゾーンS1および他方の端部WB寄りのゾーンS5に形成されている。
【0055】
また、中央部WCは、衛生薄葉紙100の幅方向(Y方向)の中心とその周辺を含むゾーンS3を示す。本実施形態では、
図2、
図3に示すように、中央部には、第1ミシン目11および第2ミシン目12のいずれも形成されず、後述の第3ミシン目が形成されている。
【0056】
また、幅方向(Y方向)の中央部WCと第1ミシン目11との間は、スリット10が形成された幅方向(Y方向)の中央部WCのゾーンS3と一方の端部WA寄りのゾーンS1との間のゾーンS2、および/または幅方向(Y方向)の中央部WCのゾーンS3と他方の端部WB寄りのゾーンS5との間のゾーンS4を示す。本実施形態では、
図2、
図3に示すように、第2ミシン目12は、一方の端部寄りのゾーンS1と中央部WCのゾーンS3と他方の端部WB寄りのゾーンS5とを除いたゾーン(ゾーンS2およびゾーンS4)に形成されている。
【0057】
本実施形態では、第2ミシン目12のタイカット比TC2が、第1ミシン目11のタイカット比TC1より小さい。ここで、タイカット比TCとは、ミシン目Mが延びる方向における、カット部MCの長さに対するタイ部MTの長さの比である。
【0058】
なお、スリット10を構成するミシン目Mは、カットされた部分(以下カット部という)MCと隣り合う2つのカット部MC間のカットされていない部分(以下タイ部という)MTとが交互に配置された構造である(
図3参照)。ミシン目Mは、タイカット比が小さい程、タイ部MTの長さに対してカット部MCの長さの比率が大きく高くなるため、切れやすくなる。一方の、タイカット比が大きい程、タイ部MTの長さに対してカット部MCの長さの比率が小さくなるため、ミシン目Mは切れにくくなる。
【0059】
本実施形態に係る衛生薄葉紙100では、第1ミシン目11のタイカット比TC1は、任意であるが、好ましくは0.07~0.13であり、より好ましくは0.08~0.12、さらに好ましくは0.09~0.11である。なお、タイカット比TC1は、第1ミシン目11が延びる方向に隣り合うカット部11aとタイ部11bを単位として、カット部11aの長さ(カット長)C1に対するタイ部11bの長さ(タイ長)T1の比である。
【0060】
また、第2ミシン目12のタイカット比TC2は、任意であるが、好ましくは0.02~0.08であり、より好ましくは0.03~0.07、さらに好ましくは0.04~0.06である。なお、タイカット比TC2は、第2ミシン目12が延びる方向に隣り合うカット部12aとタイ部12bを単位として、カット部12aの長さ(カット長)C2に対するタイ部12bの長さ(タイ長)T2の比である。
【0061】
本実施形態に係る衛生薄葉紙100では、第2ミシン目12が、一方の端部WAから衛生薄葉紙100の幅寸法の8.5%以上離れた位置(ゾーンS2)に形成されている。また、第2ミシン目12は、他方の端部WBから衛生薄葉紙の幅寸法の8.5%以上離れた位置(ゾーンS4)にも形成されている。
【0062】
言い換えると、第2ミシン目12が形成されたゾーンS2およびゾーンS4が、衛生薄葉紙100の幅寸法を100%としたときに、幅方向(Y方向)の一方の端部WAおよび他方の端部WBからそれぞれ中央部WCに向かって幅方向(Y方向)に少なくとも衛生薄葉紙の幅寸法の8.5%離れた位置に配置されている。例えば、衛生薄葉紙100の幅寸法が228mmのとき、第2ミシン目12は、一方の端部WAから20mm以上離れた位置(ゾーンS2)に形成される。また、第2ミシン目12は、他方の端部WBから20mm以上離れた位置(ゾーンS4)に形成される。
【0063】
本実施形態に係る衛生薄葉紙100では、第2ミシン目12が、第1ミシン目11と連続して形成されている。具体的には、第1ミシン目11と第2ミシン目12が一連または一続きのミシン目Mで構成されている。
【0064】
本実施形態に係る衛生薄葉紙100では、第2ミシン目12の長さが、衛生薄葉紙の幅寸法の20%以上32%以下である。ここで、ミシン目Mの長さは、ミシン目Mを構成するカット部MCとタイ部MTとが交互に配置されたスリット10におけるゾーンの長さを示す。
【0065】
また、衛生薄葉紙100の幅寸法の20%以上32%以下であるとは、衛生薄葉紙100の幅寸法を100%としたときに、第2ミシン目12の長さが衛生薄葉紙100の幅寸法に対して20%以上32%以下であることを示す。例えば、衛生薄葉紙100の幅寸法が228mmのとき、第2ミシン目12は、第2ミシン目12の長さが、約50mm以上70mm以下となる。
【0066】
本実施形態に係る衛生薄葉紙100は、さらに第3ミシン目13を有する。第3ミシン目13は、
図3に示すように、中央部WC(ゾーンS3)に形成されている。また、第3ミシン目13のタイカット比TC3は、第2ミシン目12のタイカット比TC2より大きい。
【0067】
また、本実施形態に係る衛生薄葉紙100では、第3ミシン目13のタイカット比TC3は、第2ミシン目12のタイカット比TC2より大きい限り任意であるが、好ましくは0.07~0.13であり、より好ましくは0.08~0.12、より好ましくは0.09~0.11である。なお、タイカット比TC3は、第3ミシン目13が延びる方向に隣り合うカット部13aとタイ部13bを単位として、カット部13aの長さ(カット長)C3に対するタイ部13bの長さ(タイ長)T3の比である。本実施形態では、第3ミシン目13のタイカット比TC3は、第1ミシン目11のタイカット比TC1と等しくなっている。
【0068】
本実施形態に係る衛生薄葉紙100では、さらに、第1ミシン目11が、端縁カット部11cを有する。端縁カット部11cは、
図3に示すように、少なくとも一方の端部の端縁と連続して形成されている。本実施形態では、第1ミシン目11の端縁カット部11cが、幅方向(Y方向)の一方の端部WAで端縁AEと連続して形成され、他方の端部WBで端縁BEと連続して形成されている。
【0069】
本実施形態に係る衛生薄葉紙100は、第1ミシン目11のカット長C1に対する端縁カット部11cの端縁カット長CEの比が、好ましくは0.02~0.16であり、より好ましくは0.03~0.13、さらに好ましくは0.04~0.11である。ここで、カット長は、ミシン目Mを構成するカット部MCの幅方向(Y方向)における長さを示す。また、第1ミシン目11のカット長C1に対する端縁カット部11cの端縁カット長CEの比は、第1ミシン目11のカット長C1を1としたときの端縁カット部11cの端縁カット長CEの比率を示す。
【0070】
本実施形態に係る衛生薄葉紙100は、第2ミシン目12のカット長C2に対する端縁カット部11cの端縁カット長CEの比が、好ましくは0.01~0.16であり、より好ましくは0.02~0.13、さらに好ましくは0.03~0.11である。ここで、第2ミシン目12のカット長C2に対する端縁カット部11cの端縁カット長CEの比は、第2ミシン目12のカット長C2を1としたときの端縁カット部11cの端縁カット長CEの比率を示す。
【0071】
図4、
図5は、本実施形態に係る衛生薄葉紙の使用状態を示す図である。ここで、
図4、
図5により、本実施形態による効果について説明する。本実施形態では、
図4に示すように、衛生薄葉紙100を片手Hで掴み(または摘まみ)、PD方向に引き出しながら、衛生薄葉紙100の一部(キッチンペーパーKP)が切り取られる。具体的には、長手方向(X方向)に配置された各スリット10(ミシン目M)に沿って、幅方向(Y方向)の一方の端部WAまたは他方の端部WBから幅方向(Y方向)の中央部WCに向かって衛生薄葉紙100が切り取られる。
【0072】
このとき、従来の衛生薄葉紙100では、一方の端部WA寄りのゾーンS1および他方の端部WB寄りのゾーンS5ではスリット10に沿ってきれいに切れるものの、一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2および他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS4(該一方の端部WA寄りのゾーンS1と該中央部WCのゾーンS3と該他方の端部WB寄りのゾーンS5とを除いたゾーン)ではスリット10に沿ってきれいに切れない傾向がある。そのため、衛生薄葉紙100が予期せぬ方向に破れたり、ミシン目Mが切れずに余分な衛生薄葉紙100が引き出される傾向がある。
【0073】
これに対して、本実施形態では、上述のように幅方向(Y方向)の一方の端部WA寄りのゾーンS1および他方の端部WB寄りのゾーンS5にそれぞれタイカット比が大きい第1ミシン目11が形成されている。また、一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2および他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS4にそれぞれタイカット比が小さい第2ミシン目12が形成されている。これにより、本実施形態では、一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2および他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS4でも、スリット10に沿ってきれいに切ることができる。
【0074】
また、本実施形態では、衛生薄葉紙100の切り取りが、幅方向(Y方向)の一方の端部WA側または他方の端部WB側から開始され、幅方向(Y方向)の中央部WCに向かって進行するが、切り取り方向は、タイカット比が大きい第1ミシン目11からタイカット比が小さい第2ミシン目12に進むにつれて次第に安定する。そして、切り取りの進行が該中央部WCに達し、さらに幅方向(Y方向)の他方の端部WB側または一方の端部WA側に達しても、切り取り方向が安定したまま切り取りを進行させることができる。
【0075】
これにより、本実施形態では、衛生薄葉紙100が固定されない状態または不安定な状態でも、ミシン目Mが形成された位置で衛生薄葉紙100を切り取
ることができる。具体的には、
図4に示すように、キッチンペーパー100がキッチンロール(薄葉紙ロール)の場合に、この薄葉紙ロールをホルダー(支持棒RS)に回転自在に設置する。そして、支持棒RSに設置されたキッチンペーパー100の先端部を片手Hで掴み、キッチンペーパー100をPD方向に引き出しながら、薄葉紙ロールからキッチンペーパーKPを切り取る。このとき、キッチンペーパー100では、キッチンペーパー100の薄葉紙ロールを押さえ付けずに、1枚のキッチンペーパーKPを片手Hで切り取ることができる。
【0076】
そのため、本実施形態では、衛生薄葉紙100の一部を切り取る際に、衛生薄葉紙100が予期せぬ方向に破れることを抑制することができる。また、余分な衛生薄葉紙100が引き出されることを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、切り取りが容易な衛生薄葉紙100を提供することができる。
【0077】
また、従来の衛生薄葉紙では、衛生薄葉紙100が切り取られる際に、幅方向(Y方向)の一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2の中でも、特に、一方の端部WAから幅方向(Y方向)に20mm以上離れたゾーンで、スリット10に沿ってきれいに切れない傾向がある。また、幅方向(Y方向)の他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS4の中でも、特に、他方の端部WBから幅方向(Y方向)に20mm以上離れたゾーンで、スリット10に沿ってきれいに切れない傾向がある。
【0078】
これに対して、本実施形態では、上述のように第2ミシン目12が一方の端部WAから20mm以上離れたゾーンに形成されているため、一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2で、さらにスリット10に沿ってきれいに切ることができる。また、第2ミシン目12は、他方の端部WBから20mm以上離れたゾーンにも形成されているため、他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS2でも、さらにスリット10に沿ってきれいに切ることができる。
【0079】
また、本実施形態では、上述のように第1ミシン目11と第2ミシン目12とが連続して形成されているため、衛生薄葉紙100が切り取られる際に、スリット10にかかる力が第1ミシン目11から第2ミシン目12に伝わり易くなる。これにより、本実施形態では、第1ミシン目11から第2ミシン目12にかけてスリット10をきれいに切ることができる。そのため、本実施形態によれば、スリット10のミシン目Mが予期せぬ方向に破れたり、ミシン目Mが切れずに余分な衛生薄葉紙100が引き出されるのを、さらに抑制することができる。
【0080】
また、従来の衛生薄葉紙では、衛生薄葉紙100が切り取られる際に、幅方向(Y方向)の一方の端部WAと中央部WCとの間のスリット10が形成されたゾーンの中でも、特に、スリット10の一部の長さが50mm以上70mm以下の範囲で、スリット10がきれいに切れない傾向がある。
【0081】
これに対して、本実施形態では、上述のように幅方向(Y方向)の一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2および幅方向(Y方向)の他方の端部WBAと中央部WCとの間のゾーンS4の長さがいずれも50mm以上70mm以下の第2ミシン目12がで構成されている。そのため、本実施形態によれば、一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2および他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS4のいずれでも、さらにスリット10に沿ってきれいに切ることができる。
【0082】
また、本実施形態では、第2ミシン目12のタイカット比TC2を上述の範囲にすることにより、一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2で、さらにスリット10に沿ってきれいに切ることができる。他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS4でも、さらにスリット10に沿ってきれいに切ることができる。これにより、本実施形態では、衛生薄葉紙100が予期せぬ方向に破れたり、余分な衛生薄葉紙100が引き出されることを、ほぼ確実に防ぐことができる。
【0083】
なお、第1ミシン目11が形成される一方の端部WA寄りのゾーンS1は、第2ミシン目12が形成される該一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2に比べて、スリット10に沿ってきれいに切れる反面、衛生薄葉紙100の未使用時に切れやすい。また、第1ミシン目11が形成される他方の端部WB寄りのゾーンS5は、第2ミシン目12が形成される該他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS4に比べて、スリット10に沿ってきれいに切れる反面、衛生薄葉紙100の未使用時に切れやすい。
【0084】
これに対して、本実施形態では、第1ミシン目11のタイカット比TC1を上述の範囲にすることにより、第1ミシン目11が形成された一方の端部WA寄りのゾーンS1で、衛生薄葉紙100の未使用時にスリット10が切れるのを抑制することができる。
【0085】
なお、スリット10が形成された幅方向(Y方向)の中央部WCのゾーンS3は、第2ミシン目12が形成される一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2または第2ミシン目12が形成される他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS4に比べて、スリット10に沿ってきれいに切れるが、その反面、衛生薄葉紙100の未使用時にスリット10が切れやすいゾーンでもある。
【0086】
これに対して、本実施形態では、上述のように第2ミシン目12よりもタイカット比TC2が大きい第3ミシン目13が幅方向(Y方向)の中央部WCに形成されているため、幅方向(Y方向)の中央部WCで、衛生薄葉紙100の未使用時にスリット10が切れるのを抑制することができる。
【0087】
本実施形態では、第3ミシン目13のタイカット比TC3を上述の範囲にすることにより、第3ミシン目13が形成された幅方向(Y方向)の中央部WCで、衛生薄葉紙100の未使用時にスリット10が切れるのをさらに抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上述のように第1ミシン目11が端縁カット部11cを有するため、衛生薄葉紙100が切り取られる際に、ミシン目Mにかかる力が、一方の端部WAの端縁AEから第1ミシン目11に伝わり易くなる。また、ミシン目Mにかかる力は、他方の端部WBの端縁BEからも第1ミシン目11に伝わり易くなる。そのため、本実施形態によれば、衛生薄葉紙100の一部を切り取る際に、スリット10が一方の端部WA側および他方の端部WB側のいずれでも切れ易くなり、衛生薄葉紙100の切り取りがさらに容易になる。
【0089】
また、本実施形態では、第1ミシン目11のカット長C1に対する端縁カット部11cの端縁カット長CEの比を上述の範囲にすることにより、衛生薄葉紙100が切り取られる際に、ミシン目Mにかかる力が、一方の端部WAの端縁AEからでも他方の端部WBの端縁BEからでも第1ミシン目11により伝わり易くなる。そのため、本実施形態によれば、衛生薄葉紙100の一部(キッチンペーパーKP)を切り取る際に、ミシン目M全体がより切れ易くなり、衛生薄葉紙100の切り取りがさらに容易になる。
【0090】
また、このような構成により、本実施形態では、衛生薄葉紙100の幅方向(Y方向)の一方の端部WAの端縁AEと連続する端縁カット部11cおよび他方の端部WBの端縁BEと連続する端縁カット部11cのいずれもめくれ難くなる。そのため、本実施形態によれば、衛生薄葉紙100の未使用時に、衛生薄葉紙100の予期せぬ破断や製品不良を防ぐことができる。
【0091】
また、本実施形態では、第2ミシン目12のカット長C2に対する端縁カット部11cの端縁カット長CEの比を上述の範囲にすることにより、衛生薄葉紙100が切り取られる際に、ミシン目Mにかかる力が、一方の端部WAの端縁AEから第1ミシン目11を介して第2ミシン目12に伝わり易くなる。そのため、本実施形態によれば、衛生薄葉紙100の一部を切り取る際に、ミシン目M全体がさらに切れ易くなり、衛生薄葉紙100の切り取りがさらに容易になる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明について、さらに実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明は、なお、これらの実施例のみに限定されるものではない。実施例および比較例の各物性は、以下の方法により測定した。
【0093】
<衛生薄葉紙の坪量>
衛生薄葉紙(キッチンペーパー)のクレープ紙(原紙)の坪量(米坪)(g/m2)を、JIS P 8124(1998)に準拠して算出した。坪量は、1プライ当たりの坪量として算出した。
【0094】
<切り取り試験>
キッチンペーパー100(キッチンロール)をホルダー(ベース形状:円形、ベース径:120mm、ベース厚さ:15mm、支持棒高さ:300mm、支持棒径:15mm)にセットした(キッチンロールの紙管PTに支持棒RSを挿入した)。キッチンペーパー100(キッチンロール)を一方の片手で押さえ(固定し)、キッチンペーパー100の先端を他方の片手Hで持ち、所定の間隔LでキッチンペーパーKP(シートST)を長手方向(PD方向)に引っ張り、切り取った(
図4、
図5参照)。この操作を、各実施例・比較例につき5回行い、このときのキッチンペーパーKP(シートST)が長手方向に裂けた(または破れた)回数を確認した。
【0095】
<引張試験>
キッチンペーパーKP(シートST)の長手方向(X方向)の一方の端部寄りにスリット10(ミシン目M)を形成した試験片を用意した。試験片の寸法は、幅方向(Y方向)の寸法を約228mm、長手方向(X方向)の寸法を約240mm、長手方向(X方向)の端部からスリット10(ミシン目M)までの距離を約20mmとした。この試験片について、引張試験を行った。この試験では、引張試験機(IMADA社製、「MX-500N」)にプッシュプルゲージ(IMADA社製、「Z2-20N」)を取り付けた。また、プッシュプルゲージには、クリップ(サンケーキコム社製の目玉クリップMD-3A、狭口幅:約40mm)を取り付けた。このクリップを試験片に取り付けた。クリップは、クリップの先端の中心が試験片の幅方向(Y方向)の他方の端部WB(端縁BE)から約70mm離れた位置であり、クリップの先端が試験片の長手方向(X方向)にスリット10(ミシン目M)から約15mm離れた位置となるように、試験片の長手方向(X方向)の一方の端部側に取付けた。試験片の他方の端部側を固定し、この試験片を長手方向(X方向)に300mm/minの速度で5回引っ張り、このときのキッチンペーパーKP(シートST)が長手方向に裂けた(または破れた)回数を確認した。
【0096】
以下、実施例及び比較例について、説明する。
【0097】
[実施例1]
衛生薄葉紙(キッチンペーパー)の坪量(1プライ)は、約21g/m2とした。キッチンペーパー(キッチンロール)の寸法は、ロール径Rを約110mm、ロール幅Wを約280mm、所定の間隔Lを約220mm、厚み(2プライ)を約0.7mmとした。幅方向(Y方向)に延びるスリット10を長手方向(X方向)に所定の間隔Lで配置した。スリット10には、幅方向(X方向)の一方の端部WA寄り(ゾーンS1)および他方の端部WB寄り(ゾーンS5)に第1ミシン目11を形成し、幅方向(X方向)の中央部WCと第1ミシン目11との間(ゾーンS2、S4)に第2ミシン目12を第1ミシン目11と連続して形成し、中央部WC(ゾーンS3)に第3ミシン目13を第2ミシン目12と連続して形成した。第1ミシン目11(ゾーンS1)では、カット長C1を約7.0mm、タイ長T1を約0.7mm、タイカット比TC1を約0.10、幅方向(Y方向)の両端部WA、WBの端縁カット長CEを約0.5mmとした。第2ミシン目12(ゾーンS2、S4)では、カット長C2を約14.78mm、タイ長T2を約0.7mm、タイカット比TC2を約0.05とし、両端部WA、WBからそれぞれ20mm以上離れた位置に形成し、第2ミシン目12(ゾーンS2、S4)の長さを約70mmとした。第3ミシン目13(ゾーンS3)では、カット長C3を約7.0mm、タイ長T3を約0.7mm、タイカット比TC3を約0.10とした。実施例1の条件および結果を表1に示す。
【0098】
[実施例2]
第2ミシン目12(ゾーンS2、S4)で、カット長C2を約7.0mm、タイ長T2を約0.4mm、タイカット比TC2を約0.06とした以外は、実施例1と同様にした。実施例2の条件および結果を表1に示す。
【0099】
[比較例1]
スリット10の全体を第1ミシン目11(M)のみで形成し(第2ミシン目12を設けず)、端縁カット部を設けなかった以外は、実施例1と同様にした。比較例1の条件および結果を表1に示す。
【0100】
[比較例2]
スリット10において、幅方向(X方向)の一方の端部WA寄り(ゾーンS1)および他方の端部WB寄り(ゾーンS5)に第2ミシン目21を形成し、第2ミシン目12(ゾーンS1、S5)で、カット長C2を約6.6mm、タイ長T2を約0.3mm、タイカット比TC2を約0.05、両端部WA、WB寄り(ゾーンS1、ゾーンS5)以外のゾーンS2~S4に第1ミシン目11を形成し、端縁カット部を設けなかった以外は、実施例1と同様にした。比較例2の条件および結果を表1に示す。
【0101】
[比較例3]
スリット10の全体を第1ミシン目11(M)のみで形成し(第2ミシン目12を設けず)、第1ミシン目11で、カット長C1を約7.0mm、タイ長T1を約1.2mm、タイカット比TC1を約0.17とし、端縁カット部を設けなかった以外は、実施例1と同様にした。比較例3の条件および結果を表1に示す。
【0102】
【0103】
スリット10において、幅方向(Y方向)の一方の端部WA寄りのゾーンS1および他方の端部WB寄りのゾーンS5にそれぞれタイカット比が大きい第1ミシン目11を形成し、一方の端部WAと中央部WCとの間のゾーンS2および他方の端部WBと中央部WCとの間のゾーンS4にそれぞれタイカット比が小さい第2ミシン目12を形成したキッチンペーパー100は、切り取り試験、引張試験のいずれも、スリット10(ミシン目M)に沿ってきれいに切り取れた(実施例1、2)。
【0104】
これに対して、スリット10において、第1ミシン目11(ゾーンS1、S5)のみを形成し、第2ミシン目12(ゾーンS2、S4)を形成しなかったキッチンペーパー100(比較例1、3)、および第2ミシン目12を幅方向(X方向)の中央部WCと第1ミシン目11との間(ゾーンS2、S4)に形成しなかったキッチンペーパー100(比較例2)は、切り取り試験、引張試験のいずれも、1回以上破れた。
【0105】
これらの結果から、衛生薄葉紙に配置されたスリットに、幅方向の少なくとも一方の端部寄りに形成された第1ミシン目を有し、幅方向の中央部と第1ミシン目との間に形成された第2ミシン目を有し、第2ミシン目のタイカット比を、第1ミシン目のタイカット比より小さくすることにより、切り取りが容易な衛生薄葉紙が得られることが判った。
【0106】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0107】
100 衛生薄葉紙
KP キッチンペーパー
ST シート
L 間隔
WA 一方の端部
AE 端縁
WB 他方の端部
BE 端縁
WC 中央部
M ミシン目
10 スリット
11 第1ミシン目
11a カット部
11b タイ部
11c 端縁カット部
11d 端縁カット部
C1 カット長
T1 タイ長
CE 端縁カット長
12 第2ミシン目
12a カット部
12b タイ部
C2 カット長
T2 タイ長
13 第3ミシン目
13a カット部
13b タイ部
C3 カット長
T3 タイ長
S1~S5 ゾーン