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  • -心血管状態におけるセマグルチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】心血管状態におけるセマグルチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/26 20060101AFI20230207BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A61K38/26
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P3/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018556411
(86)(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2017060160
(87)【国際公開番号】W WO2017186896
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-28
(31)【優先権主張番号】16167458.5
(32)【優先日】2016-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16188262.6
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オルフ・クリスティアン・ホイビェア・ハンスン
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-533105(JP,A)
【文献】循環器内科, 2012, Vol.71 No.5, p.470-476
【文献】日本臨床, 2011, Vol.69 No.5, p.836-841
【文献】糖尿病, 2012, Vol.55, No.Supplement 1, p.S-135 (I-P-177)
【文献】Exp Diab Res., 2011, Vol.2011, Article.215764(p.1-10)
【文献】The Laccet Diabetes & Endocrinology,Elsevier,2015年08月11日,3,9,667-669
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/26
A61P 9/00
A61P 9/04
A61P 9/10
A61P 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグルチド及び1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤からなる2型糖尿病及び高い心血管リスクを有する対象における主要心血管イベント(MACE)のリスクを低減する方法において使用するための医薬組成物であって、前記MACEが、以下:
1.心血管(CV)死、
2.非致死性の心筋梗塞(MI)、
3.非致死性の脳卒中、
4.血行再建、
5.心不全のための入院、及び
6.不安定狭心症のための入院
からなる群から選択される医薬組成物。
【請求項2】
前記MACEが、以下:
1.心血管(CV)死、
2.非致死性の心筋梗塞(MI)及び
3.非致死性の脳卒中
からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記MACEが、非致死性の脳卒中である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
記MACEが、プラセボと比較して20%から30%低減する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記対象がヒトである、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
セマグルチドの投与量が、0.01から10mgの範囲又は0.1から5.0mgの範囲である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
セマグルチドが、週に1回又はそれより頻繁に投与されるためのものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
セマグルチドが、1週当り0.05~2.0mgの範囲の量で投与されるためのものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
セマグルチドが、週に1回、0.5mg又は1.0mgの量で投与されるためのものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
0.1~20mg/mlのセマグルチドを含み、7.0~9.0の範囲のpHを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
0.1~20mg/mlのセマグルチド、2~15mMのリン酸緩衝液、2~25mg/mlのプロピレングリコール、1~18mg/mlのフェノールを含み、7.0~9.0の範囲のpHを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記対象が、30kg/m2以下のBMIを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記対象が、心不全を有さないか、又は心不全NYHAクラスIを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記対象が、心不全NYHAクラスII、III、又はIVを有さない、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記セマグルチドが、少なくとも16ヶ月にわたり投与される長期治療として投与され、前記方法が、非致死性の心筋梗塞(MI)を低減又は遅延させる、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病を有し、心血管リスクが高い対象の治療において使用するための、GLP-1受容体アゴニストであるセマグルチドに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、高い心血管リスク及び他の重度の健康に関連する結果を伴う高血糖を特徴とする代謝障害である。糖尿病を有する人は、他の心血管リスク因子についてコントロールした後であっても、糖尿病の既往歴がない人よりも心血管の原因で死亡する可能性が2から3倍高い。これらの人はまた、早期死亡を最終的にもたらす重度の微小血管合併症、すなわち、腎症及び腎不全、網膜疾患及び失明、自律神経及び末梢神経障害、並びに心血管系に関連する他の状態、すなわち、高血圧、下肢切断、認知機能低下、及び勃起不全を発症するリスクが非常に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2006/097537
【非特許文献】
【0004】
【文献】Thygesen K.ら、「Universal Definition of Myocardial Infarction.」J Am Coll Cardiol 2007年11月27日、50(22):2173~95頁
【文献】New Engl J Med 1993、329:977~986頁
【文献】The Criteria Committee of the New York Heart Association. Nomenclature and Criteria for Diagnosis of Diseases of the Heart and Great Vessels. 第9版、Boston, Mass: Little, Brown & Co、1994:253~256頁
【文献】Remington: The Science and Practice of Pharmacy(例えば、第19版(1995)、及び任意のその後の版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
糖尿病を有する人の大部分は2型糖尿病を有し、これは、インスリン抵抗性及び結果的に機能低下したインスリン分泌を特徴とする。最適な血糖コントロールは、2型糖尿病を有する対象における治療目的であり、それは、血糖コントロールが悪いと長期の合併症のリスクが増大するためである。いくつかの経口糖尿病治療薬及びインスリンが利用可能であるにもかかわらず、2型糖尿病を有する対象の大部分が、推奨される血糖コントロール標的レベルまで達しておらず、心血管疾患又は微小血管合併症を発症するリスクが高い。したがって、2型糖尿病を有する対象において血糖コントロールを提供するのみならず、心血管疾患のリスクも低減させる代替治療に対する医学的要求が解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部の実施形態では、本発明は、治療上効果的な量のセマグルチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、2型糖尿病を治療する方法であって、前記対象が、心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は心血管疾患の準臨床的エビデンスを有し、前記方法が、主要心血管イベント(MACE)の発症を遅延又は低減させる、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、セマグルチド(Sema)又はそのプラセボを投与した後の、ランダム化から最初の非致死性のMIまでの時間を示す図である。図1は、ランダム化後の異なる時点での、関連するイベントについてのリスクを有する対象の数を示し、イベントまでの時間のカプランマイヤープロットである。
図2図2は、セマグルチド(Sema)又はそのプラセボを投与した後の、ランダム化から最初の血行再建までの時間を示す図である。図2は、ランダム化後の異なる時点での、関連するイベントについてのリスクを有する対象の数を示し、イベントまでの時間のカプランマイヤープロットである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、GLP-1受容体アゴニストであるセマグルチドを、糖尿病を有し、心血管リスクが高い対象に投与する方法に関する。本明細書において使用される用語「高い心血管リスク」は、少なくとも1つの心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は少なくとも1つの心血管疾患の準臨床的エビデンスを指す。一部の実施形態では、高い心血管リスクは、対象が少なくとも1つの心血管疾患の臨床的又は準臨床的エビデンスを有する場合に存在する。
【0009】
一部の実施形態では、本発明は、治療上効果的な量のセマグルチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、2型糖尿病を治療する方法であって、前記対象が、心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は心血管疾患の準臨床的エビデンスを有し、前記方法が、プラセボと比較して心血管イベントのリスクを低減させる、方法に関する。一部の実施形態では、心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は心血管疾患の準臨床的エビデンスは、セマグルチド投与の開始前に存在していた。
【0010】
一部の実施形態では、本発明は、2型糖尿病を有し、心血管リスクが高い対象におけるMACEのリスクを低減させる方法に関する。一部の実施形態では、本発明は、2型糖尿病を有し、心血管リスクが高い対象におけるMACEのリスクを低減させる方法であって、前記MACEが、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、MIが原因のCV死、及び脳卒中が原因のCV死からなる群から選択される、方法に関する。一部の実施形態では、前記MACEは、非致死性のMI、及びMIが原因のCV死からなる群から選択される。一部の実施形態では、前記MACEは、非致死性の脳卒中、及び脳卒中が原因のCV死からなる群から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、本発明は、2型糖尿病を有し、心血管リスクが高い対象における心筋梗塞又は脳卒中を遅延させる方法に関する。一部の実施形態では、本明細書において使用される用語「遅延させる」は、「予防する」を指す。一部の実施形態では、本発明は、2型糖尿病を有する対象における心血管イベントを予防する方法であって、前記「心血管イベント」が、1つ又は複数の主要心血管イベントであり、「主要心血管イベント」は本明細書で定義される通りである、方法に関する。
【0012】
一部の実施形態では、本発明は、治療上効果的な量のセマグルチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、2型糖尿病を治療する方法であって、前記対象が、心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は心血管疾患の準臨床的エビデンスを有し、前記方法が、主要心血管イベント(MACE)を低減又は遅延させる、方法に関する。
【0013】
一部の実施形態では、MACEは、心血管(CV)死、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、不安定狭心症のための入院、及び心不全のための入院からなる群から選択されるイベントである。本明細書において使用される用語「非致死性のMI」は、非致死性の心筋梗塞を指す。一部の実施形態では、MACEは、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択されるイベントである。
【0014】
一部の実施形態では、本方法は、主要心血管イベント(MACE)を低減又は遅延させる。一部の実施形態では、本方法は、前記対象が主要心血管イベント(MACE)を発症するリスクを低減させる。一部の実施形態では、本方法は、前記対象がその人にとって最初のMACEを発症するリスクを低減させる。したがって、一部の実施形態では、本明細書において言及されるMACEは、例えばセマグルチドの投与を開始した後の、最初のMACEである。本明細書において使用される用語「最初のMACE」は、セマグルチド投与を開始した後の、対象の最初のMACEイベントを指す。
【0015】
一部の実施形態では、MACEは、CV死、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、心不全のための入院、及び不安定狭心症のための入院からなる群から選択される。一部の実施形態では、MACE(例えば、CV死、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、心不全のための入院、及び不安定狭心症のための入院からなる群から選択される)は、プラセボと比較して少なくとも1%低減又は遅延される。一部の実施形態では、MACE(例えば、CV死、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、心不全のための入院、及び不安定狭心症のための入院からなる群から選択される)は、プラセボと比較して約20%から約35%低減又は遅延される。一部の実施形態では、MACE(例えば、CV死、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、心不全のための入院、及び不安定狭心症のための入院からなる群から選択される)は、プラセボと比較して約27%低減する。一部の実施形態では、最初のMACE(例えば、CV死、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、心不全のための入院、及び不安定狭心症のための入院からなる群から選択される)は、プラセボと比較して少なくとも1%低減又は遅延される。一部の実施形態では、最初のMACE(例えば、CV死、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、心不全のための入院、及び不安定狭心症のための入院からなる群から選択される)は、プラセボと比較して約20%から約27%低減又は遅延される。一部の実施形態では、最初のMACE(例えば、CV死、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、心不全のための入院、及び不安定狭心症のための入院からなる群から選択される)は、プラセボと比較して約27%低減する。
【0016】
一部の実施形態では、MACEは、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される。一部の実施形態では、MACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)は、プラセボと比較して少なくとも10%低減又は遅延される。一部の実施形態では、MACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)は、プラセボと比較して約20%から約30%低減又は遅延される。一部の実施形態では、MACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)は、プラセボと比較して約26%低減又は遅延される。一部の実施形態では、MACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)は、プラセボと比較して約0.74のハザード比を有する。一部の実施形態では、MACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)は、プラセボと比較して(0.58、0.95)の95%CIで0.74のハザード比を有する。一部の実施形態では、前記対象がMACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)を発症するリスクは、プラセボと比較して少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、その人にとって最初のMACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)を発症する対象は、プラセボと比較して少なくとも10%低減又は遅延される。一部の実施形態では、最初のMACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)は、プラセボと比較して約20%から約30%低減又は遅延される。一部の実施形態では、最初のMACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)は、プラセボと比較して約26%低減又は遅延される。一部の実施形態では、その人にとって最初のMACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)を発症する対象は、プラセボと比較して約0.74のハザード比を有する。一部の実施形態では、その人にとって最初のMACE(例えば、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択される)を発症する対象は、プラセボと比較して(0.58、0.95)の95%CIで0.74のハザード比を有する。
【0017】
一部の実施形態では、MACEは、非致死性のMIである。一部の実施形態では、非致死性のMIは、プラセボと比較して少なくとも10%低減又は遅延される。一部の実施形態では、非致死性のMIは、プラセボと比較して約15%から約35%低減又は遅延される。一部の実施形態では、非致死性のMIは、プラセボと比較して約26%低減又は遅延される。
【0018】
一部の実施形態では、MACEは、非致死性の脳卒中である。一部の実施形態では、非致死性の脳卒中は、プラセボと比較して少なくとも10%低減又は遅延される。一部の実施形態では、非致死性の脳卒中は、プラセボと比較して約20%から約60%低減又は遅延される。一部の実施形態では、非致死性の脳卒中は、プラセボと比較して約30%から約50%低減又は遅延される。一部の実施形態では、非致死性の脳卒中は、プラセボと比較して約39%低減又は遅延される。
【0019】
一部の実施形態では、MACEは、血行再建である。一部の実施形態では、血行再建は、プラセボと比較して少なくとも10%低減又は遅延される。一部の実施形態では、血行再建は、プラセボと比較して約20%から約60%低減又は遅延される。一部の実施形態では、血行再建は、プラセボと比較して約30%から約50%低減又は遅延される。一部の実施形態では、血行再建は、プラセボと比較して約38%低減又は遅延される。血行再建は、冠血行再建又は末梢動脈血行再建であり得る。
【0020】
一部の実施形態では、MACEは、不安定狭心症のための入院である。一部の実施形態では、不安定狭心症のための入院は、プラセボと比較して少なくとも10%低減又は遅延される。一部の実施形態では、不安定狭心症のための入院は、プラセボと比較して約10%から約30%低減又は遅延される。一部の実施形態では、不安定狭心症のための入院は、プラセボと比較して約18%低減又は遅延される。
【0021】
一部の実施形態では、セマグルチドの投与は、セマグルチドが少なくとも16ヶ月(例えば、少なくとも30ヶ月、及び場合によって最大54ヶ月)にわたり投与される長期治療であり、前記方法は、非致死性の心筋梗塞(MI)を低減又は遅延させる。
【0022】
一部の実施形態では、セマグルチドの投与は、セマグルチドが少なくとも18ヶ月(例えば、少なくとも30ヶ月、及び場合によって最大54ヶ月)にわたり投与される長期治療であり、前記方法は、血行再建の必要性又は血行再建を必要とするリスクを低下させる。
【0023】
一部の実施形態では、MACEは、CV死である。一部の実施形態では、CV死は、プラセボと比較して少なくとも1%低減する。一部の実施形態では、CV死は、プラセボと比較して約1%から約3%低減又は遅延される。一部の実施形態では、CV死は、プラセボと比較して約2%低減又は遅延される。
【0024】
本明細書において使用される用語「プラセボ」は、セマグルチドを含まないことを除いてセマグルチド製剤と同一の製剤を指し、プラセボは、セマグルチド投与で使用されるのと同等の容量で投与した。プラセボを投与された対象はまた、1つ又は複数の経口糖尿病治療薬(OAD)、或いは、単独の又は1つ若しくは2つのOADと組み合わせた、ヒトNPHインスリン又は長時間作用型のインスリン類似体又は混合型インスリン等の併用薬も含み得る。
【0025】
「CV死」は、死亡の原因が心血管疾患からなる群から選択されるか又は未知である死亡として定義され得る。一部の実施形態では、CV死は、心血管によらない原因が明らかには記録されなかった死亡として定義され得る。CV死には、急性心筋梗塞が原因の死亡、突然心臓死、心不全が原因の死亡、脳卒中が原因の死亡、心血管手術が原因の死亡、CV出血が原因の死亡、及び具体的な既知のCV原因(例えば、肺塞栓症又は末梢動脈疾患)を伴う他のCV原因が原因の死亡が含まれ得る。
【0026】
「非致死性のMI」は、対象の死亡を伴わない心筋虚血と一致する心筋の壊死として定義され得る。一部の実施形態では、MIは、Thygesen K.ら、「Universal Definition of Myocardial Infarction.」J Am Coll Cardiol 2007年11月27日、50(22):2173~95頁において記載されている通りの、ESC(欧州心臓病学会)/ACCF(米国心臓病学会財団)/AHA(アメリカ心臓協会)/WHF(世界心臓連合)のタスクフォースによって提案されている再定義に基づいて診断される。
【0027】
「血行再建」は、閉塞若しくは破裂した血管の障害物除去をすることによる、又はステント等の代替物を外科的に移植することによる、虚血を患っている身体の一部又は器官への灌流の回復として定義され得る。更に具体的には、「冠血行再建」は、心筋の血流量の改善として定義され得、「末梢動脈血行再建」は、末梢動脈の血流量の改善として定義され得る。
【0028】
「不安定狭心症のための入院」は、1)持続時間が10分間以上の、安静時に生じる又は、運動能力が徐々に低下する頻繁なエピソードを伴う加速パターンの、虚血性苦痛、2)心臓バイオマーカーの上昇がないこと、及び急性MIのエビデンスがないこと、並びに3)a.安静時ECG(LBBB若しくはLVH等の交絡因子の不存在下で)での新規の若しくは悪化しているST波若しくはT波の変化、一時的なST上昇(持続時間<20分)、並びに/又は、40歳以上の男性では≧0.2mV(40歳未満の男性では≧0.25mV)若しくは女性では≧0.15mVのカットポイントが適用される誘導V2-V3以外の全ての誘導では≧0.1mVのカットポイントを有する2の連続的な誘導でのJ点での新規のST上昇、並びに/又は、ST低下及びT波変化、並びに/又は、2の連続的な誘導において≧0.05での新規の水平型若しくは下降型のST低下、並びに/又は、顕著化したR波若しくはR/S比>1を伴う2の連続的な誘導において≧0.3mVでの新規のT逆転、b. 5metsの前のST上昇若しくは≧2mmのST低下として定義される初期の正の運動負荷試験又は負荷心エコー(可逆性の壁運動異常)又は心筋シンチグラフィー(可逆性の灌流欠損(perfusion defect))又はMRI(薬理学的負荷下での心筋の灌流欠損(perfusion deficit))によって実証され、心筋の虚血性症候/兆候の原因であると考えられている、誘導性心筋虚血の確定されたエビデンス、c.心筋の虚血性症候/兆候の原因であると考えられている、新規の又は悪化している心外膜冠動脈における70%以上の病変及び/又は血栓の血管造影でのエビデンス、並びに、d.推定される責任病変についての冠血行再建手術(PCI又はCABG)の必要性(この基準は、血行再建が、計画外の入院の間、又は自宅への退院を伴わない別の施設への転院後に行われた場合に満たされる)、からなる群から選択される少なくとも1つ、を特徴とする、計画外の入院として定義され得る。不安定狭心症に関連する用語「心臓バイオマーカー」には、トロポニン及びCK-MBが含まれ得る。
【0029】
「非致死性の脳卒中」は、出血又は梗塞の結果である、脳、脊髄、又は網膜血管損傷を原因とする局所性又は全身性の神経機能不全の急性エピソード、例えば、対象の死亡を伴わない虚血性脳卒中又は出血性脳卒中として定義され得る。一部の実施形態では、虚血性脳卒中は、中枢神経系組織の梗塞を原因とする、局所性の脳、脊椎、又は網膜機能不全の急性エピソードとして定義される(例えば、出血は、虚血性脳卒中の結果生じ得、この状況の場合、脳卒中は、出血性変化を伴う及び虚血性脳卒中であり、出血性脳卒中ではない)。一部の実施形態では、出血性脳卒中は、実質内、脳室内、又はくも膜下出血が原因の局所性又は全身性の脳又は脊椎機能不全の急性エピソードとして定義される。
【0030】
「心不全のための入院」は、以下の心不全の臨床的徴候、すなわち、呼吸困難(労作時呼吸困難、安静時呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難)、運動耐性の低下、疲労、及び悪化した末端器官灌流又は容量過負荷の他の症候の、少なくとも1つが存在し、a.経口利尿療法の増強、b.静脈内利尿療法、変力物質療法、又は血管拡張物質療法、c.機械的又は外科的介入(i.機械的な循環補助(例えば、大動脈内バルーンポンプ、心室補助装置)又はii.機械的な体液除去(例えば、限外濾過、血液濾過、透析)を含む)の少なくとも1つを含む、心不全に特異的な治療の開始又は強化が存在する、心不全の一次診断を伴う少なくとも24時間の入院として定義され得る。悪化した末端器官灌流又は容量過負荷の他の症候には、a.新規の又は悪化した、i.末梢の浮腫、ii.増大している異常な膨張又は腹水(原発性の肝臓疾患の不存在下で)、iii.肺のラ音/クラックル音/捻髪音、iv.増大した頚静脈圧及び/又は肝頚静脈逆流、v. S3ギャロップ、vi.体液貯留に関連すると考えられる臨床的に顕著な又は迅速な体重増加、を含む、心不全に起因すると考えられる身体検査所見、b.症状の24時間以内に得られる場合には、i.ナトリウム利尿ペプチドが慢性的に上昇している患者における、心不全の代償障害と一致する、増大したB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)/N末端pro-BNP(NT-proBNP)濃度(例えば、BNP>500pg/mL又はNT-proBNP>2000pg/mL)であって、ベースラインを超える有意な増大が認められるもの、ii.肺うっ血の放射線学的エビデンス、iii.臨床的に顕著な上昇した左心室若しくは右心室充満圧、又は低心拍出量の、非侵襲性診断によるエビデンス(例えば、心エコーの基準は、E/e'>15若しくはD-ドミナントの肺静脈流入パターン、吸気の際の虚脱が最小の多血症の下大静脈、又は減少した左室流出路(LVOT)のわずかなストローク距離(時間流速積分値(TVI)))、又はiv.肺毛細血管楔入圧(肺動脈閉塞圧)≧18mmHg、中心静脈圧≧12mmHg、若しくは心係数<2.2L/分/m2を示す右心カテーテル法での、侵襲性診断によるエビデンスを含む、新規の又は悪化しているHFの実験室でのエビデンス、を含む、(i)少なくとも2つの身体検査所見、又は(ii)1つの身体検査所見及び少なくとも1つの実験基準が含まれ得る。
【0031】
一部の実施形態では、本発明の方法は、イベントの発生を低減させる。一部の実施形態では、本発明の方法は、プラセボと比較してイベントの発生を低減させる。
【0032】
対象及び部分母集団
本発明に従ってセマグルチドを投与される対象は、成人等のヒトであり得る。一部の実施形態では、前記対象は成人である。
【0033】
一部の実施形態では、本発明の方法に従うセマグルチド投与を受ける対象は、2型糖尿病を有し、(i)心血管疾患の臨床的エビデンス、及び/又は(ii)心血管疾患の準臨床的エビデンスを有する。これらの心血管疾患は併発性と言うことができ、すなわち、1つ又は複数の心血管疾患が、対象において2型糖尿病と同時に存在している。
【0034】
「心血管疾患の臨床的エビデンス」は、対象が、
a)過去の心筋梗塞、
b)過去の脳卒中又は一過性虚血発作(TIA)、
c)過去の冠血行再建、頸動脈血行再建、又は末梢動脈血行再建、
d)冠状動脈、頸動脈、又は下肢動脈の血管造影又は画像化での>50%狭窄、
e)症候性の冠動脈性心疾患の既往歴(例えば、正の運動負荷試験又は任意の心臓画像化又はECG変化を伴う不安定狭心症によって記録されている)、
f)無症候の心臓虚血(例えば、正の核画像化試験、又は運動試験、又は負荷エコー又は任意の心臓画像化によって記録されている)、
g)ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスII~IIIの心不全、及び
h)慢性的な腎機能障害(例えば、推算糸球体濾過量(eGFR)<MDRD当たり60mL/分/1.73m2によって記録されている(スクリーニング前に))
からなる群から選択される少なくとも1つの基準を満たす場合に存在し得る。
【0035】
一部の実施形態では、心血管疾患の臨床的エビデンスは、過去の心筋梗塞である。一部の実施形態では、心血管疾患の臨床的エビデンスは、過去の脳卒中又は一過性虚血発作(TIA)である。一部の実施形態では、心血管疾患の臨床的エビデンスは、過去の冠血行再建、頸動脈血行再建、又は末梢動脈血行再建である。一部の実施形態では、心血管疾患の臨床的エビデンスは、冠状動脈、頸動脈、又は下肢動脈の血管造影又は画像化での>50%狭窄である。一部の実施形態では、心血管疾患の臨床的エビデンスは、症候性の冠動脈性心疾患(例えば、正の運動負荷試験、又は任意の心臓画像化、又はECG変化を伴う不安定狭心症によって記録されている)の既往歴である。一部の実施形態では、心血管疾患の臨床的エビデンスは、無症候の心臓虚血(例えば、正の核画像化試験又は運動試験又は負荷エコー又は任意の心臓画像化によって記録されている)である。一部の実施形態では、心血管疾患の臨床的エビデンスは、ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスII~IIIの心不全である。一部の実施形態では、心血管疾患の臨床的エビデンスは、慢性的な腎機能障害(例えば、推算糸球体濾過量(eGFR)<MDRD当たり60mL/分/1.73m2によって記録されている(スクリーニング前に))である。
【0036】
「心血管疾患の準臨床的エビデンス」は、対象が、
i)持続性の微量アルブミン尿(例えば、30~299mg/g)又はタンパク尿、
j)高血圧及びECG又は画像化による左心室肥大、
k)左心室収縮又は拡張機能不全(例えば、画像化による)、並びに
l)足関節/上腕血圧比<0.9
からなる群から選択される少なくとも1つの基準を満たす場合に存在し得る。
【0037】
一部の実施形態では、心血管疾患の準臨床的エビデンスは、持続性の微量アルブミン尿(30~299mg/g)又はタンパク尿である。一部の実施形態では、心血管疾患の準臨床的エビデンスは、高血圧及びECG又は画像化による左心室肥大である。一部の実施形態では、心血管疾患の準臨床的エビデンスは、画像化による左心室収縮又は拡張機能不全である。一部の実施形態では、心血管疾患の準臨床的エビデンスは、足関節/上腕血圧比<0.9である。
【0038】
一部の実施形態では、用語「過去の」は、セマグルチドの投与を開始する前を指す。
【0039】
一部の実施形態では、BMI又は年齢等の、本明細書において記載される対象の特徴は、セマグルチドの投与を開始する前又はセマグルチドの投与を開始する時点を指す。
【0040】
一部の実施形態では、対象は、少なくとも50歳、例えば少なくとも60歳である。一部の実施形態では、対象は、60歳未満である。一部の実施形態では、対象は、(i)少なくとも50歳であり、心血管疾患の臨床的エビデンスを有する、及び/又は(ii)少なくとも60歳であり、心血管疾患の準臨床的エビデンスを有する。
【0041】
一部の実施形態では、対象は、例えばセマグルチド投与を受ける前に、少なくとも7.0%のHbA1cを有する。一部の実施形態では、対象は、例えばセマグルチド投与を受ける前に、少なくとも9.0%のHbA1cを有する。一部の実施形態では、対象は、例えばセマグルチド投与を受ける前に、7.0%から15.0%の範囲のHbA1cを有する。HbA1cは、当技術分野において公知の方法に従って決定され得、例えば、糖尿病コントロールと合併症に関する研究(Diabetes Control and Complications Trial)(DCCT)によって定義される方法に従って決定されたパーセンテージとして決定され得る。New Engl J Med 1993、329:977~986頁を参照されたい。
【0042】
一部の実施形態では、対象は、セマグルチドを除いて糖尿病治療薬を未投与であるか、或いは1つ又は複数の経口糖尿病治療薬(OAD)で治療されているか、或いは、単独の又は1つ若しくは2つのOADと組み合わせた、ヒトNPHインスリン又は長時間作用型のインスリン類似体又は混合型インスリンで治療されている。対象は、糖尿病治療薬を未投与であり得る。対象は、1つ又は複数の経口糖尿病治療薬(OAD)で治療され得る。対象は、単独の又は1つ若しくは2つのOADと組み合わせた、ヒトNPHインスリン又は長時間作用型のインスリン類似体又は混合型インスリンで治療され得る。一部の実施形態では、OADは、スルホニルウレア、インスリン分泌促進剤、チアゾリジンジオン、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害剤、及びその組み合わせからなる群から選択され得る。一部の実施形態では、OADは、スルホニルウレア(例えば、グリメピリド、グリピジド、グリブリド)である。一部の実施形態では、OADは、インスリン分泌促進剤(例えば、メトホルミン等のビグアニド、又はナテグリニド等のメグリチニド)である。一部の実施形態では、OADは、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)である。一部の実施形態では、OADは、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ミグリトール、ボグリボース)である。一部の実施形態では、OADは、ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害剤(例えば、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン)である。一部の実施形態では、OADは、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤(例えば、シタグリプチン)である。一部の実施形態では、OADは、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤ではない。
【0043】
一部の実施形態では、対象は、例えばセマグルチド投与を受ける前に、30kg/m2以下のBMIを有する。一部の実施形態では、対象は、例えばセマグルチド投与を受ける前に、少なくとも30kg/m2のBMIを有していない。BMI(ボディマスインデックス)は、身長及び体重に基づく体脂肪の測定値である。計算式は、BMI=(キログラム単位の体重)/(メートル単位の身長)2である。一部の実施形態では、対象は、30~50kg/m2の範囲のBMIを有する。
【0044】
一部の実施形態では、対象は男性である。一部の実施形態では、対象は女性ではない。一部の実施形態では、対象は、アジア系人種である。一部の実施形態では、対象は、アジア系以外の人種ではない。
【0045】
心不全は、異なる程度の重症度で存在する。心不全の最も一般的に使用される分類体系は、New York Heart Association Functional Classification(「NYHA」とも呼ばれる)である。NYHAは、対象を、彼らの身体活動の際の制限の程度に基づいて、4つのクラスI~IV(Table A(表1))の1つに分類し、場合によって、客観的評価に基づいて、更なるサブグループA~Dに分類する。更なる詳細については、The Criteria Committee of the New York Heart Association. Nomenclature and Criteria for Diagnosis of Diseases of the Heart and Great Vessels. 第9版、Boston, Mass: Little, Brown & Co、1994:253~256頁を参照されたい。一部の実施形態では、対象は、心不全NYHAクラスI~III、例えば、クラスI、クラスII、又はクラスIIIを有する。
【0046】
【表1】
【0047】
一部の実施形態では、対象は、例えばセマグルチド投与を受ける前に、心不全を有していないか、又は心不全NYHAクラスIを有している。一部の実施形態では、対象は、例えばセマグルチド投与を受ける前に、心不全を有するか、又は心不全NYHAクラスIを有する。一部の実施形態では、対象は、例えばセマグルチド投与を受ける前に、心不全NYHAクラスII又はIIIを有していない。一部の実施形態では、対象は、例えばセマグルチド投与を受ける前に、心不全NYHAクラスII、III、又はIVを有していない。
【0048】
推算糸球体濾過量(eGFR)は、共に、対象の年齢、性別、及び人種についての変数を伴う、腎臓病における食事改善(Modification of Diet in Renal Disease)(MDRD)又は慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)(CKD-EPI)のいずれかの方程式に従って血清クレアチニン濃度に基づいて計算され得る。MDRDによって決定されたeGFRは、eGFR-MDRDと呼ぶことができる。CKD-EPIによって決定されたeGFRは、eGFR-CKD-EPIと呼ぶことができる。eGFR-MDRDの方程式は、式V:eGFR(mL/分/1.73m2)=175×(Scr)-1.154×(年齢)-0.203×(女性なら0.742)×(アフリカ系アメリカ人なら1.212)[V]で定義される通りであり得る。CKD-EPIの方程式は、式VI:eGFR=141×minα×max-1.209×0.993年齢×(女性なら1.018)×(黒人なら1.159)[VI]で定義される通りであり得、式中、「min」はScr/κの最小値又は1を示し、「max」はScr/κの最大値又は1を示し、Scrはmg/dL単位の血清クレアチニンであり、κは女性では0.7、男性では0.9であり、αは女性では-0.329であるか又は男性では-0.411である。「コッククロフト-ゴールトの式」によって代替的に決定され得る糸球体濾過量は、式III:CrCl(mL/分)=(N×[140-年齢(歳)]×体重*(kg))/血清クレアチニン(μM)[III]によって定義され得る通りであり、式中、CrClは、Cockcroft及びGaultのクレアチニンクリアランスであり、Nは男性では1.23、女性では1.04であり、実際の体重が120%IBWより大きければ、体重は、式IIIa:IBW(kg)=(5フィートを超えるインチ数×2.3)+M[IIIa]において定義される理想体重(IBW)であり、式中、Mは、男性では50、女性では45.5である。
【0049】
一部の実施形態では、対象は、1型糖尿病を有していない。
【0050】
一部の実施形態では、対象は、本発明に従ったセマグルチドの投与を開始する前に、例えば、この開始前100日以内又は104日以内に、GLP-1受容体アゴニスト(エキセナチド、リラグルチド、又はその他)又はプラムリンチドの投与を受けていない。
【0051】
一部の実施形態では、対象は、本発明に従ったセマグルチドの投与を開始する前に、例えば、この開始前30日以内又は44日以内に、DPP-IV阻害剤の投与を受けていない。
【0052】
一部の実施形態では、対象は、本発明に従ったセマグルチドの投与を開始する前に、例えば、この開始前90日以内又は104日以内に、基本的な及び予混合されたインスリン以外のインスリンの投与(併発疾患と関連する短期使用を除く)を受けていない。
【0053】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、例えば、この開始前90日又は104日以内に、糖尿病の急性合併症(例えば、糖尿病性ケトアシドーシス)を予防するために治療を迅速に強化する必要がある、血糖コントロールの急性代償障害を有していない。
【0054】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、慢性膵炎又は特発性急性膵炎の既往歴を有していない。
【0055】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前90日以内に、急性冠状動脈イベント又は脳血管イベントを有していない。
【0056】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、現在計画されている冠血行再建、頸動脈血行再建、又は末梢動脈血行再建を有していない。
【0057】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、心不全NYHAクラスIVを有していない。
【0058】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、慢性的な血液透析又は慢性的な腹膜透析を受けていない。
【0059】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、末期の肝臓疾患を有していない。「末期の肝臓疾患」は、急性又は慢性の肝臓疾患、及び、腹水、脳症、静脈瘤の出血、ビリルビン≧2.0mg/dL、アルブミンレベル≦3.5g/dL、4秒以上延長したプロトロンビン時間、国際標準比(INR)≧1.7、又は過去の肝臓移植の、1つ又は複数の最近の既往歴の存在として定義され得る。
【0060】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、過去の固形臓器移植を受けていないか又は固形臓器移植を待っていない。
【0061】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前、過去5年の間に、悪性新生物(基底細胞皮膚がん又は扁平上皮細胞皮膚がんを除く)の診断を受けていない。
【0062】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、多発性内分泌腫瘍症2型又は家族性甲状腺髄様癌の個人の既往歴又は家族歴を有していない。
【0063】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、非家族性甲状腺髄様癌の個人の既往歴を有していない。
【0064】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前2週間以内に、50ng/L以上のカルシトニンを投与されていない。
【0065】
一部の実施形態では、対象は、研究ステントを用いる臨床試験への参加を除いて、治験薬のあらゆる他の臨床試験に同時に参加していない。
【0066】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前45日以内に、いかなる試験薬(IMP)の投与も受けていない。
【0067】
一部の実施形態では、対象は、本発明によるセマグルチドの投与を開始する前に、妊娠中の、授乳中の、又は妊娠を希望している、妊娠の可能性がある女性ではない。
【0068】
セマグルチド
セマグルチドは、GLP-1受容体アゴニストであるN6.26-{18-[N-(17-カルボキシ-ヘプタデカノイル)-L-γ-グルタミル]-10-オキソ-3,6,12,15-テトラオキサ-9,18-ジアザオクタデカノイル}-[8-(2-アミノ-2-プロパン酸),34-L-アルギニン]ヒトグルカゴン様ペプチド1(7-37)であり、その構造を化学式(I)で示す。セマグルチドはまた、N-イプシロン26-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1-(7-37)と呼ぶこともできる。セマグルチドは、WO2006/097537の実施例4において記載されているように調製することができる。
【0069】
【化1】
【0070】
医薬組成物
セマグルチドは、医薬組成物の形態で投与することができる。医薬組成物は、0.1mg/mlから100mg/mlの濃度でセマグルチドを含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、0.01~50mg、又は0.01~20mg、又は0.01~10mg/mlのセマグルチドを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、0.1~20mg/mlのセマグルチドを含む。
【0071】
本明細書において記載される医薬組成物は、例えば、緩衝液系、防腐剤、張性剤、キレート剤、安定剤、及び界面活性剤からなる群から選択される、1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤を更に含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、緩衝液、等張剤、及び防腐剤からなる群から選択される1つ又は複数等の、1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。薬学的に活性な成分と様々な賦形剤との製剤は、当技術分野において公知である。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(例えば、第19版(1995)、及び任意のその後の版)を参照されたい。用語「賦形剤」は、活性治療成分、例えばセマグルチド以外のあらゆる構成成分を広く指す。賦形剤は、不活物質、不活性物質、及び/又は薬として活性ではない物質であり得る。
【0072】
一部の実施形態では、医薬組成物は、リン酸ナトリウム緩衝液等のリン酸緩衝液、例えば、リン酸二ナトリウムを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、プロピレングリコール等の等張剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、フェノール等の防腐剤を含む。
【0073】
医薬組成物は、溶液又は懸濁液の形態であり得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、水性溶液又は水性懸濁液等の水性組成物である。用語「水性組成物」は、少なくとも50%w/wの水を含む組成物として定義される。同様に、用語「水性溶液」は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義され、用語「水性懸濁液」は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液として定義される。水性組成物は、少なくとも50%w/wの水、又は少なくとも60%、70%、80%、若しくは更に少なくとも90%w/wの水を含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、7.0~9.0の範囲のpH、例えば7.0~8.5の範囲のpHを有する。
【0074】
一部の実施形態では、セマグルチドは、約0.1~20mg/mlのセマグルチド、約2~15mMのリン酸緩衝液、約2~25mg/mlのプロピレングリコール、約1~18mg/mlのフェノールを含み、7.0~9.0の範囲のpHを有する、医薬組成物の形態で投与される。一部の実施形態では、セマグルチドは、約1.34mg/mlのセマグルチド、約1.42mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物、約14.0mg/mlのプロピレングリコール、約5.5mg/mlのフェノールを含み、約7.4のpHを有する、医薬組成物の形態で投与される。一部の実施形態では、セマグルチドは、1.34mg/mlのセマグルチド、1.42mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物、14.0mg/mlのプロピレングリコール、5.5mg/mlのフェノールを含み、7.4のpHを有する医薬組成物の形態で投与される。
【0075】
投与レジメン
セマグルチドは、治療上効果的な量で、例えば、2型糖尿病を治療するために治療上効果的な量で投与することができる。治療上効果的な量のセマグルチドは、医師によって評価され得る。セマグルチドの投与量は、0.01から10mgの範囲であり得る。
【0076】
セマグルチドは、週に1回、又はそれより頻繁に、例えば1日に1回投与することができる。一部の実施形態では、セマグルチドは、1日のいずれかの時点で投与される。一部の実施形態では、セマグルチドの投与量は、0.1から5.0mgの範囲、例えば、0.1から3.0mgの範囲である。一部の実施形態では、セマグルチドの1日投与量は、0.5及び1.0mgからなる群から選択される。
【0077】
一部の実施形態では、セマグルチドを参照して本明細書において使用される用語「長期治療」は、治療効果をもたらすための量及び頻度での投与を意味する。一部の実施形態では、セマグルチドを参照して本明細書において使用される用語「長期治療」は、0.1~3.0mg、例えば0.5又は1.0mgのセマグルチドを週に1回投与することを意味する。一部の実施形態では、セマグルチドを参照して本明細書において使用される用語「長期治療」は、0.05~0.3mg、例えば0.05、0.1、0.2、又は0.3mgのセマグルチドを1日に1回投与することを意味する。
【0078】
一部の実施形態では、セマグルチドは、1週当たり0.05~2.0mgの範囲の量、例えば1週当たり0.5又は1.0mgの量で、場合によって週に1回の投与によって投与される。一部の実施形態では、セマグルチドは、1週当たり少なくとも0.1mgの量、例えば1週当たり少なくとも0.2mg又は1週当たり少なくとも0.3mgの量で、場合によって週に1回の投与によって投与される。一部の実施形態では、セマグルチドは、1週当たり1.8mg以下の量、例えば1週当たり1.6mg以下又は1週当たり1.4mg以下の量で、場合によって週に1回の投与によって投与される。一部の実施形態では、セマグルチドは、週に1回、0.5又は1.0mgの量で投与される。一部の実施形態では、セマグルチドは、1週当たり0.7mg未満の量、例えば1週当たり0.05~0.7mgの範囲の量で、場合によって週に1回の投与によって投与される。
【0079】
セマグルチドは、非経口投与、例えば皮下注射を介して投与することができる。セマグルチドは、3mlの使い捨てのペン型注射器等のペン型注射器を使用して投与することができる。
【0080】
本明細書において使用される用語「長期治療」は、所定の投与レジメン(例えば、週に1回の投与)に従って長期にわたり(例えば、少なくとも2年又は少なくとも5年)薬物を投与することであって、10回以下の連続的な投与が行われなければ、投与量の最大10%、例えば最大5%が失われ得るものを指す。
【0081】
別段の記載がない限り、本明細書における範囲は、その終点を含む。一部の実施形態では、用語「a」は、「1つ又は複数の」を意味する。一部の実施形態では、また明細書において別段の指示がない限り、単数形で表される用語は、複数形の状況も含む。本明細書において、用語「約」は、言及された値の±10%を意味し、前記値を含む。
【0082】
本発明の非限定的な実施形態
本発明の非限定的な実施形態には、以下のものが含まれる。
【0083】
1.治療上効果的な量のセマグルチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、2型糖尿病を治療する方法であって、前記対象が、心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は心血管疾患の準臨床的エビデンスを有し、前記方法が、主要心血管イベント(MACE)を遅延又は低減させる、方法。
【0084】
2.治療上効果的な量のセマグルチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、2型糖尿病を治療する方法であって、前記対象が、心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は心血管疾患の準臨床的エビデンスを有し、前記方法が、非致死性のMIを遅延又は低減させる、方法。
【0085】
3.治療上効果的な量のセマグルチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、2型糖尿病を治療する方法であって、前記対象が、心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は心血管疾患の準臨床的エビデンスを有し、前記方法が、非致死性の脳卒中を遅延又は低減させる、方法。
【0086】
4.治療上効果的な量のセマグルチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、2型糖尿病を治療する方法であって、前記対象が、心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は心血管疾患の準臨床的エビデンスを有し、前記方法が、血行再建を遅延又は低減させる、方法。
【0087】
5.治療上効果的な量のセマグルチドを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、2型糖尿病を治療する方法であって、前記対象が、心血管疾患の臨床的エビデンス及び/又は心血管疾患の準臨床的エビデンスを有し、前記方法が、不安定狭心症のための入院を遅延又は低減させる、方法。
【0088】
6. 2型糖尿病を有し、心血管リスクが高い対象における、MACEのリスクを低減させる方法。
【0089】
7. 2型糖尿病を有し、心血管リスクが高い対象におけるMACEのリスクを低減させる方法であって、前記MACEが、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、MIが原因のCV死、及び脳卒中が原因のCV死からなる群から選択される、方法。
【0090】
8. 2型糖尿病を有し、心血管リスクが高い対象における、心筋梗塞又は脳卒中を遅延させる方法。
【0091】
9. 2型糖尿病を有する対象における心血管イベントを予防する方法であって、前記「心血管イベント」が、1つ又は複数の主要心血管イベントであり、「主要心血管イベント」は本明細書で定義される通りである、方法。
【0092】
10.非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、又は不安定狭心症のための入院を遅延又は低減させる、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
11.前記MACEが、CV死、非致死性のMI、非致死性の脳卒中、血行再建、心不全のための入院、及び不安定狭心症のための入院からなる群から選択され、MACEが、プラセボと比較して約20%から約35%低減又は遅延され、例えばプラセボと比較して約27%低減される、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
12.前記MACEが、CV死、非致死性のMI、及び非致死性の脳卒中からなる群から選択され、前記MACEが、プラセボと比較して約20%から約30%低減する、例えばプラセボと比較して約26%低減する、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
13.前記MACEが、非致死性のMIであり、前記非致死性のMIが、(i)プラセボと比較して約15%から約35%、又は(ii)プラセボと比較して約26%低減又は遅延される、実施形態1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
14.前記MACEが、非致死性の脳卒中であり、前記非致死性の脳卒中が、(i)プラセボと比較して約30%から約50%、又は(ii)プラセボと比較して約39%低減又は遅延される、実施形態1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
15.前記MACEが血行再建であり、前記血行再建が、(i)プラセボと比較して約30%から約50%、又は(ii)プラセボと比較して約38%低減又は遅延される、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
16.前記MACEが、不安定狭心症のための入院であり、前記不安定狭心症のための入院が、(i)プラセボと比較して約10%から約30%、又は(ii)プラセボと比較して約18%低減又は遅延される、実施形態1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0099】
17.前記対象が30kg/m2以下のBMIを有する、実施形態1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0100】
18.前記対象が30kg/m2を超えるBMIを有さない、実施形態1~17のいずれか一項に記載の方法。
【0101】
19.前記対象が心不全NYHAクラスII又はIIIを有さない、実施形態1~18のいずれか一項に記載の方法。
【0102】
20.前記対象が心不全NYHAクラスII、III、又はIVを有さない、実施形態1~19のいずれか一項に記載の方法。
【0103】
21.前記対象が心不全を有さないか、又は心不全NYHAクラスIを有する、実施形態1~20のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
22.前記対象が心不全を有するか、又は心不全NYHAクラスIを有する、実施形態1~21のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
23.前記対象が男性である、実施形態1~22のいずれか一項に記載の方法。
【0106】
24.前記対象が女性ではない、実施形態1~23のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
25.前記対象がアジア系人種である、実施形態1~24のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
26.前記対象がアジア系以外の人種ではない、実施形態1~25のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
27.セマグルチドの前記投与が、セマグルチドが少なくとも16ヶ月、例えば少なくとも30ヶ月にわたり投与される長期治療であり、前記方法が非致死性の心筋梗塞(MI)を低減又は遅延させる、実施形態1~26のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
28.セマグルチドの前記投与が、セマグルチドが少なくとも18ヶ月、例えば少なくとも30ヶ月にわたり投与される長期治療であり、前記方法が血行再建を低減又は遅延させる、実施形態1~27のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
29.前記MACEが、セマグルチドの投与を開始した後の最初のMACEである、実施形態1~28のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
30.セマグルチドが、1週当たり0.05~2.0mgの範囲の量、例えば1週当たり0.5又は1.0mgの量で、場合によって週に1回の投与によって投与される、実施形態1~29のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
31.セマグルチドが、約1~20mg/mlのセマグルチド、約2~15mMのリン酸緩衝液、約2~25mg/mlのプロピレングリコール、約1~18mg/mlのフェノールを含み、7.0~9.0の範囲のpHを有する、医薬組成物の形態で投与される、実施形態1~30のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
32.セマグルチドが、約1~20mg/mlのセマグルチドを含み、7.0~9.0の範囲のpHを有する医薬組成物の形態で投与される、実施形態1~31のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
33.セマグルチドの投与量が、0.1から5.0mgの範囲である、実施形態1~32のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
34.セマグルチドが、週に1回、0.5又は1.0mgの量で投与される、実施形態1~33のいずれか一項に記載の方法。
【実施例
【0117】
略記の列挙
MACE:主要心血管イベント
HbA1c:グリコシル化されたヘモグロビン
GLP-1:グルカゴン様ペプチド-1
BMI:ボディマスインデックス
N:対象の数
CV:心血管
OAD:経口糖尿病治療薬
TIA:一過性虚血発作
CI:信頼区間
CKD-EPI:慢性腎臓病疫学共同研究
MDRD:腎臓病における食事改善
MI:心筋梗塞。
UAP:不安定狭心症。
【0118】
臨床試験:材料及び方法
長期の、ランダム化された、二重盲式の、プラセボ対照の、4群からなる並行群の、多施設の、多国籍の、安全性及び有効性試験を行って、2型糖尿病を有する3297人のヒト対象における、セマグルチドを用いる心血管の及び他の長期の結果を評価した。対象の組み入れ及び除外の基準は、Table 2(表3)に記載する通りであった。
【0119】
対象を、0.5mgのセマグルチド、1.0mgのセマグルチド、又は同じ容量のプラセボの、週に1回の治療用量を、その標準治療への追加治療として投与するようにランダム化し、この場合、投与は、Table 1(表2)に示すように、0.25mgのセマグルチドを週に1回、4週間にわたって投与する初回用量増大ステップで開始し、1.0mgのセマグルチド群では、更に4週間にわたり0.5mgのセマグルチド又はその同じ容量のプラセボを週に1回投与した。研究者の裁量で、標的血糖コントロールを維持するために、更なるグルコース低下薬が抗糖尿病レジメンに加えられた。
【0120】
セマグルチドは、セマグルチド又はプラセボを含む水性溶液の形態で、共に3mlの使い捨てのペン型注射器を使用して投与した。このペン型注射器は、セマグルチド及びプラセボ投与で同一であった。この水性溶液は、1.34mg/mlのセマグルチド、1.42mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物、14.0mg/mlのプロピレングリコール、5.5mg/mlのフェノールを含有し、pH7.40であった。セマグルチドは、WO2006/097537の実施例4において記載されているように調製することができる。
【0121】
注射は、食事に関係なく、1日のいずれかの時点で、大腿部、腹部、又は上腕に投与した。注射は、試験の間の同一の曜日に投与した。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3A】
【0124】
【表3B】
【0125】
この試験では、「心血管疾患の臨床的エビデンス」は、対象が以下のa)からh)からなる群から選択される少なくとも1つの基準を満たした場合に存在した。
a)過去の心筋梗塞、
b)過去の脳卒中又は一過性虚血発作、
c)過去の冠血行再建、頸動脈血行再建、又は末梢動脈血行再建、
d)冠状動脈、頸動脈、又は下肢動脈の血管造影又は画像化での>50%狭窄、
e)症候性の冠動脈性心疾患の既往歴(例えば、正の運動負荷試験又は任意の心臓画像化又はECG変化を伴う不安定狭心症によって記録されている)、
f)無症候の心臓虚血(例えば、正の核画像化試験又は運動試験又は負荷エコー又は任意の心臓画像化によって記録されている)、
g)ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスII~IIIの心不全、及び
h)慢性的な腎機能障害(推算糸球体濾過量(eGFR)<MDRD当たり60mL/分/1.73m2によって記録されている(スクリーニング前に))。
【0126】
この試験では、「心血管疾患の準臨床的エビデンス」は、対象が以下のi)からl)からなる群から選択される少なくとも1つの基準を満たす場合に存在した。
i)持続性の微量アルブミン尿(30~299mg/g)又はタンパク尿、
j)ECG又は画像化による高血圧及び左心室肥大、
k)画像化による左心室収縮又は拡張機能不全、及び
l)足関節/上腕血圧比<0.9。
【0127】
対象のベースラインの特徴をTable 3(表4)に示す。
【0128】
【表4A】
【0129】
【表4B】
【0130】
本明細書において使用される用語「プラセボ」は、セマグルチドを含まないことを除いてセマグルチド製剤と同一の製剤を指し、プラセボは、セマグルチド投与で使用されるのと同等の容量で投与した。
【0131】
本明細書における(例えば、「ベースラインの特徴」又は「ベースラインの心血管リスクプロファイル」の一部として使用される)用語「ベースライン」は、対象のランダム化の時点での、医療機関受診に関連して行われる判定による、ある特定のパラメータのレベル(例えば、HbA1cのレベル)を指し得る。一部の実施形態では、ベースラインという用語は、セマグルチドの投与を開始する前のパラメータ、例えば、対象におけるある特定のイベントの既往歴を指す。
【0132】
この試験の結果は、イベントを経験している対象の数又は割合として、本明細書において表され得る。或いは、この試験の結果は、イベントまでの時間を推定するために使用される標準的な統計モデルであるCox比例ハザードモデルで推定されるハザード比と共に表され得る。本明細書において使用される用語「ハザード比」(「HR」とも呼ばれる)は、この試験における2つの治療である、プラセボと比較した、セマルチドを投与された場合の、イベントを経験する瞬間リスク比を意味する。1.00未満のHRについての95%信頼区間(CI)の上限は、目的のイベントに関するセマグルチドとプラセボとの間の推定される治療比が、5%有意性レベルでセマグルチドに有利に、統計的に有意であることを意味する。5%有意性レベルは、臨床試験における有意性を調べるための標準的なレベルである。
【0133】
MACEの効果に関する試験結果をTable 4(表5)、Table 5(表6)、及びTable 6(表7)に示す。図1は、最初の非致死性の心筋梗塞までの時間をカプランマイヤープロットで示す。図2は、最初の血行再建までの時間を示す。図1及び図2の結果は、セマグルチドが、長期治療のある特定の期間後に、非致死性の心筋梗塞又は血行再建の遅延において特に良好な効果を有することを示す。
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
【表7】
【0137】
これらの結果は、セマグルチドが、心血管疾患の低減に対して驚くほど良好な効果を有すること、及びこの効果が一部のサブグループにおいて更に明らかであることを示す。
【0138】
本発明のある特定の特長を本明細書において説明及び記載してきたが、多くの修正、置換、変更、及び同等物が今や当業者に明らかとなろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、全てのこのような修正及び変更を本発明の真の趣旨の範囲に含まれるものとして網羅することが理解される。
図1
図2