(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】AR+乳癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4245 20060101AFI20230207BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230207BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20230207BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230207BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230207BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A61K31/4245
A61K31/519
A61K31/436
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018566897
(86)(22)【出願日】2017-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017038390
(87)【国際公開番号】W WO2017223115
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-19
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521182892
【氏名又は名称】エリプセス ファーマ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ハタスリー,ガリー
(72)【発明者】
【氏名】サー,ジャマル
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ジーヤン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ビハニ,テール
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-513219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0080905(US,A1)
【文献】ACS Medicinal Chemistry Letters,2011年,2(2),pp.124-129
【文献】Cancer Research,2016年02月15日,Vol.76,No.4,Supp.SUPPL.1,Abstract Number.OT2-01-06
【文献】Pharmacogenomics and Personalized Medicine,2014年,Vol.7,pp.203-215
【文献】Cancer Biology & Therapy,2010年,10(9),pp.903-917
【文献】Molecular Cancer Research,2016年02月,Vol.14,No.2,Supp. Supplement,Abstract Number.IA19
【文献】Seminars in oncology,2003年,Vol.30,No.Suppl 16,pp.143-149
【文献】Sci Transl Med.,2015年,7(313),313ra182,pp.1-8
【文献】Nature Genetics,2013年,Vol.45,No.12,pp.1415-1416
【文献】Cancer Research,2015年,Vol.75,No.9,Supp.SUPPL.1,Abstract Number.PD64-4[online]STN,EMBASE
【文献】Cell Reports,2013年,4(6),pp.1116-1130
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 43/00
A61P 35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式III
【化1】
の化合物、その薬学的に許容され得る塩、またはその薬学的に許容され得る溶媒和物を含む、被験体におけるAR+/ER+乳癌の治療のための医薬。
【請求項2】
前記医薬が経口経路により投与される、請求項1記載の医薬。
【請求項3】
前記被験体が女性である、請求項1または2記載の医薬。
【請求項4】
前記女性が閉経前の女性または閉経後の女性である、請求項3記載の医薬。
【請求項5】
(i)前記被験体が、アジュバント設定(adjuvant setting)において治療される;
(ii)前記被験体が、1つ以上の内分泌学的薬剤による治療後に疾患の進行を有していた;または
(iii)前記被験体が、CDK4/6阻害剤、mTOR阻害剤、BCL-2阻害剤、PI3K阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤による治療後に疾患の進行を有していた、
請求項1~4いずれか記載の医薬。
【請求項6】
前記1つ以上の内分泌学的薬剤が、SERM、SERD、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項5記載の医薬。
【請求項7】
前記治療が、非アジュバント設定における第一線の治療である、請求項1~4いずれか記載の医薬。
【請求項8】
前記乳癌が、局所的、進行性または転移性の乳癌である、請求項1~
7いずれか記載の医薬。
【請求項9】
前記式IIIの化合物が、1日当たり10~500mg、10mg~250mgまたは25mg~250mgで投与される、請求項1~
8いずれか記載の医薬。
【請求項10】
前記投与が1日に1回である、請求項
9記載の医薬。
【請求項11】
前記被験体が、1つ以上の変異を含むESR1を発現する、請求項1~
10いずれか記載の医薬。
【請求項12】
前記変異が、非変異ESR1と比較して、リガンドの結合親和性に影響する、請求項
11記載の医薬。
【請求項13】
前記変異が、非変異ESR1と比較して、変異したESR1に対するエストラジオール親和性の低減を生じる、請求項
12記載の医薬。
【請求項14】
前記変異が、ESR1経路を介して、リガンド依存的に、またはリガンドに独立してシグナル伝達する、請求項
11~
13いずれか記載の医薬。
【請求項15】
前記変異が、非変異ESR1の配列から少なくとも10個の連続したアミノ酸および別のヒトタンパク質から少なくとも10個の連続したアミノ酸を含む融合タンパク質を生じる、請求項
11~
14いずれか記載の医薬。
【請求項16】
前記変異が、ESR1の正常(非変異)リガンド結合ドメインアミノ酸配列から10個以上の連続したアミノ酸を欠損するESR1を生じる、請求項
11~
15いずれか記載の医薬。
【請求項17】
前記変異が、ESR1-AKAP12、ESR1-CCDC170、ESR1-YAP1、ESR1-POLH、ESR1-PCDH11Xおよびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の変異を含む、請求項
11~
16いずれか記載の医薬。
【請求項18】
前記医薬が、CDK4/6阻害剤、mTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤またはBCL-2阻害剤と組み合わせて使用される、請求項1~
17いずれか記載の医薬。
【請求項19】
前記CDK4/6阻害剤が、CDK4およびCDK6に対して<100nMのIC
50を有する、請求項
18記載の医薬。
【請求項20】
前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブ、アベマシクリブおよびAMG925からなる群より選択される、請求項5、
18または
19記載の医薬。
【請求項21】
前記mTOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダファロリムスおよびMLN0128からなる群より選択される、請求項
18記載の医薬。
【請求項22】
前記PI3K阻害剤が、BEZ235、GDC-0980、BKM120、GDC-0941、BYL719、GDC-0032、MK2206、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、AZD5363、AZD2014、MLN0128またはCC-223である、請求項
18記載の医薬。
【請求項23】
前記PARP阻害剤が、タラゾパリブ、ベリパリブ、ニラパリブ、beigene290、E7449、KX01、ABT767、CK102、JPI289、KX02、IMP4297、SC10914、NT125、PJ34、VPI289またはANG-3186である、請求項
18記載の医薬。
【請求項24】
前記MCL-1阻害剤が、7-(5-((4-(4-(N,N-ジメチルスルファモイル)ピペラジン-1-イル)フェノキシ)メチル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(2-モルホリノエチル)-3-(3-(ナフタレン-1-イルオキシ)プロピル)-1H-インドール-2-カルボン酸、S63845、オマサタキシン、セリシクリブ、UMI-77、AT101、サブトクラックスまたはTW-37である、請求項
18記載の医薬。
【請求項25】
前記BCL-2阻害剤が、ベネトクラックス、ナビトクラックス、ABT737、G3139またはS55746である、請求項
18記載の医薬。
【請求項26】
前記医薬が、ラパマイシン、エベロリムス、リダフォロリムス、テムシロリムス、MLN0128、CC115、CC223、OSI-027、AZD8055、AZD2014、GDC-0980、SAR245409、LY3023414、NVP-BEZ235、NVP-BGT226、SF1126およびPKI-587からなる群より選択される治療剤と組み合わせて使用される、請求項1記載の医薬。
【請求項27】
前記CDK4/6阻害剤がパルボシクリブである、請求項5、18または19記載の医薬。
【請求項28】
前記CDK4/6阻害剤がリボシクリブである、請求項5、18または19記載の医薬。
【請求項29】
前記CDK4/6阻害剤がアベマシクリブである、請求項5、18または19記載の医薬。
【請求項30】
前記mTOR阻害剤がエベロリムスである、請求項18記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、2016年6月22日に出願された米国仮特許出願第62/353,350号、2016年8月19日に出願された米国仮特許出願第62/377,497号および2017年2月21日に出願された米国仮特許出願第62/461,546号に対する優先権を主張し、該特許出願の全ては、図面を含むそれらの全体において、参照により本明細書において援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
アンドロゲンと乳癌の関係は長い間(for some time)認識されてきた。過去には、アンドロゲン療法は、しばしば成功しながらしばしば失敗して(with mixed success)、女性における乳癌を治療するために使用されていた。乳癌は、抗エストロゲンホルモン治療に対して抵抗性を生じるように急速に進化するので、乳癌の新規の治療を開発するための緊急の必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
発明の概要
一局面において、本開示は、1つ以上のARアゴニストの投与による、アンドロゲン受容体を発現する乳癌(AR+乳癌)を有する被験体(例えばヒト)を治療するための方法に関する。ある態様において、ARアゴニストは、選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)である。いくつかの態様において、乳癌は、アンドロゲン受容体およびエストロゲン受容体の両方に対して陽性である(AR+/ER+)。本明細書に開示される方法のある態様において、乳癌は、AR、ERおよびプロゲステロン受容体に対して陽性である(AR+/ER+/PR+)。ある態様において、ARを発現する乳癌は、Her2について陽性を示さない(Her2-)。ある態様において、乳癌は、本明細書に開示されるようにER中に1つ以上の変異を含む。ある態様において、1つ以上のER変異は、ERのリガンド結合ドメインが非変異ER(野生型ER)に対して親和性を有するリガンドに結合する能力に影響する。ある態様において、ERに対して初期に陽性である乳癌は、ERの腫瘍発現を消失し得る。ある態様において、被験体は、閉経前または閉経後の女性である。ある態様において、乳癌を治療するために使用されるSARMは、細胞サイクリン阻害剤と組み合わせて使用され、いくつかの態様において、細胞サイクリン阻害剤は、CDK4および/またはCDK6の阻害剤(CDK4/6阻害剤)である。ある態様において、SARMは、mTOR阻害剤と組み合わせて使用される。ある態様において、mTOR阻害剤は、mTOR2および/またはmTOR3の阻害剤である。いくつかの例において、SARMは、経口投与により与えられる。いくつかの態様において、細胞サイクリン阻害剤および/またはmTOR阻害剤は経口投与により与えられる。ある態様において、SARMおよびmTOR阻害剤またはSARMおよびCDK4/6阻害剤は、キット内で一緒に組み合される。いくつかの態様において、SARMおよびmTOR阻害剤またはSARMおよびCDK4/6阻害剤は共製剤化(co-formulated)される。
【0004】
ある態様において、SARMはステロイド性または非ステロイド性であり、ある態様において、SARMは非ステロイド性である。いくつかの態様において、本発明のSARMは、エノボサルム(enobosarm)、BMS-564929、LGD-4033、AC-262,356、JNJ-28330835、S-40503、LY-2452473およびGSK-2881078からなる群より選択される。本明細書に開示される方法のある態様において、本開示の方法に従って使用されるSARMは、本明細書に開示されるように式Iおよび式IVにより表される化合物の種類により記載される。
【0005】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様において、細胞サイクリン阻害剤は、パルボシクリブ(palbociclib)、リボシクリブ(ribociclib)、トリラシクリブ(trilaciclib)およびアベマシクリブ(abemaciclib)からなる群より選択されるCDK4/CDK6阻害剤である。ある態様において、CDK4/CDK6阻害剤は、IC50<250nMまたは<100nMまたは<50nMでCDK4およびCDK6の両方を阻害する化合物である。本明細書に開示される方法のある態様において、mTOR阻害剤(TORC1および/またはTORC2)は、シロリムス(sirolimus)、テムシロリムス(temsirolimus)、エベロリムス(everolimus)、リダファロリムス(ridafarolimus)およびMLN0128からなる群より選択される。ある態様において、SARMとPARP阻害剤を併用する乳癌の治療方法が開示され、いくつかの態様においてPARP阻害剤はタラゾパリブ(talazoparib)、ベリパリブ(veliparib)、ニラパリブ(niraparib)、beigene290、E7449、KX01、ABT767、CK102、JPI289、KX02、IMP4297、SC10914、NT125、PJ34、VPI289、ANG-3186 であることが開示される。ある態様において、SARMとBCL2阻害剤を併用する乳癌の治療方法が開示され、いくつかの態様において、BCL-2阻害剤は、ベネトクラックス(venetoclax)、ナビトクラックス(navitoclax)、ABT737、G3139またはS55746である。ある態様において、SARMとMCL1阻害剤を併用する乳癌の治療方法が開示され、いくつかの態様において、MCL-1阻害剤は、7-(5-((4-(4-(N,N-ジメチルスルファモイル)ピペラジン-1-イル)フェノキシ)メチル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(2-モルホリノエチル)-3-(3-(ナフタレン-1-イルオキシ)プロピル)-1H-インドール-2-カルボン酸、S63845、オマサタキシン(omacataxine)、セリシクリブ(seliciclib)、UMI-77、AT101、サブトクラックス(sabutoclax)、TW-37である。特定の態様において、SARMとPI3K阻害剤を併用する乳癌の治療方法。
【0006】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様において、乳癌は治療ナイーブである。いくつかの態様において、乳癌は、任意の内分泌学的治療によってはいまだ治療されていない。本明細書に開示される方法のある態様において、乳癌は少なくとも1つの以前の治療に対して抵抗性である。いくつかの態様において、抵抗性が生じた以前の治療は、抗エストロゲン治療、例えばアロマターゼ阻害剤、選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)または選択的エストロゲン受容体抑制剤(degrader) (SERD)の少なくとも1つである。ある態様において、被験体(例えば女性)は閉経後であり、限定されないが、SERD(例えば、フルベストラント(fulvestrant)、RAD1901、AZD9496);SERM(例えば、タモキシフェン、トレミフェン)、アロマターゼ阻害剤およびそれらの組合せを含む以前の内分泌治療に対して進行している。いくつかの態様において、被験体(例えば女性)は転移性の乳癌を有するが依然として治療されていない。いくつかの態様において、被験体(例えば女性)は転移性の乳癌(breast)を有し、以前の内分泌学的治療後に進行している。いくつかの態様において、被験体(例えば女性)は転移性の乳癌を有し、mTOR阻害剤またはCDK4/6阻害剤またはPIK3阻害剤による治療後に進行している。
【0007】
ある態様は、ER+/AR+乳癌被験体におけるZBTB16のmRNA発現またはタンパク質発現のベースラインレベルを測定する工程、本明細書に記載されるようなARアゴニストまたは選択的アンドロゲン受容体調節剤を用いて治療する工程、治療後のZBTB16(タンパク質PLZFをコードする)のレベルを測定する工程、および治療後のZBTB16レベルが増加した場合に、ARアゴニストまたは選択的アンドロゲン受容体調節剤を用いた治療を継続する工程を含む、乳癌の治療方法を提供する。ある態様において、被験体は女性、例えば閉経前または閉経後の女性である。
【0008】
いくつかの態様において、ZBTB16のmRNAまたはタンパク質の発現を測定するための試薬を含むIsa診断キットも本発明において提供される。
【0009】
ZBTB16のmRNA発現またはタンパク質発現のベースラインレベルを測定する工程、少なくとも1回の投与を含む時間にARアゴニスト(例えばSARM)を用いて治療する工程、ARアゴニスト治療後のZBTB16 mRNA発現レベルを測定する工程、およびZBTB16 mRNA発現の増加が生じた場合にARアゴニスト治療に対して応答性である可能性のある被験体を同定する工程を含む、本明細書に開示されるARアゴニスト治療に応答性である可能性のある被験体を同定する方法が本発明において提供される。いくつかの態様において、応答性を決定するための発現カットオフは、少なくともx2倍の増加、x4倍の増加、x8倍の増加、x10倍の増加、x25倍の増加、x50倍の増加または>1x100倍の増加である。
【0010】
ある態様において、乳癌を有する女性を治療する方法が提供され、ここで前記女性はエストロゲン受容体中に1つまたは複数の変異、例えばERα遺伝子(ESR1)の変異を発現する。かかる変異は、エストロゲン受容体の一部が別のタンパク質の一部または全部と融合した融合タンパク質を含み得る。いくつかの態様において、乳癌を有する女性を治療する方法が提供され、ここで前記女性は、前記変異および/または融合の1つ以上について最初に評価され、1つ以上の変異および/または融合について陽性を示す場合は、女性は、本明細書に記載されるように、ARアゴニスト、例えばSARMを、単一療法または1つ以上のさらなる化学療法剤との併用のいずれかを用いて治療される。いくつかの態様において、被験体は変異PI3Kを発現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1:CDK阻害剤と組み合わせた化合物III(「RAD140」)は、患者由来異種移植片(PDx)マウスにおいてER+/AR+乳癌の増殖を阻害した。
【
図2】
図2:RAD140と、CDK阻害剤またはmTOR阻害剤の組合せ投与は、細胞株由来異種移植片(CDx)マウスにおいてER+/AR+乳癌の増殖を阻害した。
【
図3】
図3:RAD140は、PDxマウスにおいてER+/AR+乳癌の増殖を低減し、フルベストラントよりも効果的であった。
【
図4】
図4:RAD140はPDxマウスにおいてER+/AR+乳癌の増殖を低減した。
【
図5】
図5A~5B:乳癌のRAD140 治療におけるZBTB16 mRNA発現の増加。
図5A:インビトロにおけるT47D乳癌細胞のRAD140治療におけるZBTB16 mRNA発現の増加。
図5B:インビボ(PDx #2)におけるAR+/ER+乳癌のRAD140治療におけるZBTB16 mRNA発現の増加。
【
図6】
図6:ESR1-YAP1融合およびPIK3CAにおけるE545K変異を有するWHIM 18モデルにおけるPDx腫瘍に対するRAD140、パルボシクリブおよびRAD140とパルボシクリブの組合せの阻害効果。
【
図7】
図7:RAD140は、
図3において使用したものと同じPDXモデルにおいてER+/AR+乳癌患者由来異種移植片の増殖を阻害した。
【
図8】
図8:RAD140は、
図1において使用したものと同じモデルにおいてER+/AR+乳癌患者由来異種移植片の増殖を阻害した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
RAD140は、経口的に利用可能な、異なる組織選択性プロフィールを有する非ステロイド性SARMである。インビトロ機能分析により、RAD140は、乳癌細胞においてジヒドロテストステロンと同等の潜在的なARアゴニストであることが示された。以下の実施例の区分に示されるように、SARM(例えばRAD140)単独(実施例3および4;実施例7および8)またはCDK4/6阻害剤(例えば実施例1および2のパルボシクリブ)もしくはmTOR阻害剤(例えば実施例2のエベロリムス)と組み合わせたSARMの治療は、複数のPDxおよび/またはCDxマウスにおいてER+/AR+乳癌の増殖を効率的に阻害した。異種移植片腫瘍生検の分子的分析により、ARおよびERの経路(ERシグナル伝達はPRを上方制御する)の間のクロストークに関する以前の報告と一致して、プロゲステロン受容体(PR)の実質的な抑制が明らかになったが、RAD140処理腫瘍におけるAR経路の潜在的な活性化も示された。さらに、インビボ(PDx #2)およびインビトロ(T47D乳癌細胞)におけるAR+/ER+乳癌のRAD140治療においてZBTB16 mRNA発現の増加が観察されたが、一方でSERD(フルベストラント)で処理したPDx #2は、ZBTB16 mRNA発現の目に見えるほどの誘導は示さなかった(実施例5)。SARM(例えばRAD140)単独(実施例6)またはCDK4/6阻害剤(例えばパルボシクリブ)と組み合わせたSARMの治療は、ESR-1 YAP融合を最初に発現しているWHIM18 PDxマウスにおいてER+/PR+/AR+/HER-乳癌の増殖を効果的に阻害した。
【0013】
より具体的に、RAD140は、4つ全てのPDxモデル(PDx #1 (AR+/ER+/PR+/Her2-)、PDx #2 (AR+/ER+)、PDx#3 (AR+/ER+)およびWHIM18 PDx (ER+/PR+/AR+/HER-))ならびにCDxモデル(ZR-75-1癌細胞株由来のZR75 CDx (AR+/ER+)において腫瘍増殖を予期せずに阻害した(実施例参照)。
【0014】
RAD140は単独で、潜在的なER-抑制剤フルベストラントに対して高度に抵抗性であるWHIM18 PDxにおいてER+/PR+/AR+/HER-乳癌に対する腫瘍増殖阻害(TGI)を示した(実施例6)。予期されずに、CDK4/6阻害剤(例えばパルボシクリブ)と組み合わせたRAD140の投与は、RAD140またはパルボシクリブの単独の治療よりも高められたTGI効果を生じた。さらに、PDx #1(実施例1)およびCDx(実施例2)モデルにおいて、CDK4/6阻害剤(例えばパルボシクリブ)と組み合わせたRAD140の投与は再度予期せずに、RAD140またはパルボシクリブの単独での治療と比較して、高められたTGI効果を生じた。CDx(実施例2)モデルにおいて、mTOR阻害剤(例えばエベロリムス)と組み合わせたRAD140の投与も、RAD140またはパルボシクリブの単独の治療と比較して、高められたTGI効果を生じた(実施例2)。したがって、SARM(例えばRAD140)は、内分泌抵抗性または内分泌治療(例えばフルベストラントなどのSERD)に対してより応答性の低いものを含むAR+/ER+および/またはER+/PR+/AR+/HER-癌治療のTGIを増強する効果的内分泌バックボーンである可能性が高く、またcdk4/6阻害剤、m-TOR阻害剤、PI3k阻害剤、PARP阻害剤、BCL-2阻害剤、MCL-1阻害剤またはそれらの任意の組合せなどの有効剤の活性を強く増強する。
【0015】
本明細書において提供される結果に基づいて、AR+腫瘍の治療を必要とする被験体に、治療有効量のARアゴニスト(例えばRAD140などのSARM)、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは薬学的に許容され得る溶媒和物(例えば水和物)を投与することにより、該被験体においてAR+腫瘍を治療するための方法が提供される。ある態様において、該方法は、該被験体に、本明細書に記載される1つ以上の第2の治療剤、例えばCDK4/6阻害剤、mTOR阻害剤、PARP阻害剤、PIK3阻害剤、BCL-2阻害剤およびMCL-1阻害剤の治療有効量を投与する工程をさらに含む。
【0016】
以下の工程:
a) ZBTB16 mRNAおよび/またはタンパク質のベースラインレベルを決定する工程;
b) アンドロゲン受容体アゴニストを投与する工程;
c) ARアゴニストを用いて被験体を治療し、次いでZBTB16 mRNAおよび/またはタンパク質のレベルを再度試験して、ZBTB16 mRNAおよび/またはタンパク質の第1のレベルを提供する工程;ならびに
d) 第1のレベルがZBTB16 mRNAおよび/またはタンパク質のベースラインレベルよりも高い場合に、ARアゴニストの投与を継続する工程
を含む、被験体において乳癌を治療するための方法も提供される。
【0017】
被験体の例としては限定されることなく、哺乳動物、例えばヒトが挙げられる。ある態様において、本明細書に開示される方法のための被験体は女性、例えば閉経前の女性および閉経後の女性である。ある態様において、本明細書に開示される方法のための被験体は、限定されることなくSERD(例えばフルベストラント、RAD1901、AZD9496);SERM(例えばタモキシフェン、トレミフェン)、アロマターゼ阻害剤(例えばアリミデックス、レトロゾール、アロマシンまたはそれらの組合せを直接または連続)を含む内分泌治療の前に進行していた。いくつかの態様において、被験体は転移性の乳癌を有し、内分泌治療(例えばSERD、SERM、アロマターゼ阻害剤またはそれらの組合せ)の前に進行していた。ある態様において、被験体(例えば女性)は、原発性または転移性の乳癌を有し、cdk4/6阻害剤、mTOR阻害剤またはPI3K阻害剤に対して進行していた。いくつかの態様において、女性は乳癌について治療されておらず、本明細書に記載されるようにARアゴニスト(例えばSARM) (例えばRAD140)は、単独でまたは本明細書に記載される他の薬剤の1つとの組合せのいずれかで投与される。
【0018】
乳癌腫瘍細胞または腫瘍組織におけるAR、ERおよび/またはPRの存在は、例えば免疫組織化学(IHC)により容易に評価され得る。本明細書に開示される方法のある態様は、腫瘍がARおよび任意に1つ以上の他の受容体(例えばER、PRおよびHer2)、特にESR1を発現することを測定する工程をさらに含む。さらに、本明細書に開示される方法は、既に治療されて抵抗性(例えば抗エストロゲン抵抗性)になっている可能性がある経路に依存しない新規の治療計画(regimen)を開発する。
【0019】
ERα遺伝子(ESR1)の変異
ER+乳癌におけるホルモン療法に対する抵抗性はしばしば、エストロゲン受容体における種々の変異を伴う。いくつかの例において、これらの変異した受容体は、アロマターゼ阻害剤、タモキシフェンなどの抗エストロゲンSERMまたはフルベストラントなどのエストロゲン受容体抑制剤(SERD)による治療の結果として抵抗性が生じる場合に、抗エストロゲン/抗内分泌学的治療に対する抵抗性の増加または完全な抵抗性を生じる。いくつかの例において、抗エストロゲン治療に対する抵抗性は、エストロゲン受容体自体の消失によりエストロゲン受容体シグナル伝達の完全な消失を伴うが、多くの例において、該変異した受容体は依然としてER経路を介してシグナルを伝達する。抗エストロゲン抵抗性の理由には、エストロゲン受容体が直接的競合リガンド(すなわちY537S ESR1、D538G)についての親和性の低減を示すか、またはエストロゲン受容体がそのリガンド結合ドメイン(LBD)の一部または全部を消失するが、他の機能性ドメイン(例えばDNA結合ドメイン、AF1ドメインおよび/またはヒンジ領域)を十分に保持しているために該受容体がリガンドに結合しない(またはリガンドに結合できない)場合でも、受容体が効果的にオンになったままであることを意味する構成的な活性を保持する様式で、該エストロゲン受容体が変異する例が含まれる。いくつかの例において、これは、染色体の転座が起こり、ERのリガンド結合ドメインが切断または欠失し、この位置において置換された別の遺伝子もしくは部分的な遺伝子が、リガンド結合を必要としない構成的に活性な受容体を生じる遺伝子融合産物を生じる場合に起こる。かかる遺伝子的変化を有する腫瘍細胞はER LBDを標的化する治療剤に対して抵抗性であることが示されている。かかる変異細胞は長期間にわたり富化され得る。また、該変異のいくつかは、抗エストロゲン/SERD/アロマターゼ阻害剤を用いた治療よりも先に存在することが知られている。かかる受容体を発現する被験体は、従来の抗ER治療に対して応答性が乏しくなるリスクが高くなることがあるが、本明細書に記載されるようなARアゴニストまたはSARM治療についての優れた候補である。したがって、患者は、被験体がかかる変異または融合を発現する場合に第一線治療またはアジュバント治療ARアゴニストまたはSARMについての候補になり得る。ある態様において、被験体は、被験体が内分泌学的薬剤でまだ治療されていない場合に、ネオアジュバント(neoadjuvant)、アジュバントまたは第一線の設定において被験体を治療するかどうかを決定するために、候補変異または融合の発現について試験される。SARMの第一線の使用は、単一療法であり得るかまたはCDK阻害剤(例えばCDK4/6阻害剤)、mTOR阻害剤(例えばmTORc 1および/または2阻害剤)、PARP阻害剤、PIK3阻害剤、BCL-2阻害剤およびMCL-1阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤との組合せのいずれかであり得る。本明細書に記載される方法の前は、これらの変異はER+乳癌患者についての第一線である抗エストロゲン性薬剤による治療を妨げたので、特に問題であった。結果的に、患者はしばしば細胞傷害性薬剤に進行し、しばしば促進されて治療がより困難になる一連のそれらの疾患を経験する。本明細書に記載されるARアゴニストはかかる変異ERを有する被験体を効果的に治療し得るということが本開示の重要な局面である。
【0020】
本明細書に開示される方法のある態様において、本明細書に開示されるARアゴニストは、1つ以上のER変異を含むAR+/ER+乳癌を有する被験体を治療するために使用される。ある態様において、これらの変異は、リガンド結合ドメインが非変異ERに対する親和性を有するリガンドに結合する能力に影響する。本発明のある態様において、該ERは、リガンド結合ドメイン中に、SERMおよびSERDを含むアゴニストおよび/またはアンタゴニストの型の通常結合するERリガンドへの結合を低減または断ち切る1つ以上の点変異を有し、いくつかの例において、構成的なERシグナル伝達活性を有し、例えばアロマターゼ阻害剤にも抵抗性である。ある態様において、該変異した受容体は、部分的または完全に非存在であるリガンド結合ドメインを有する。いくつかの態様において、該変異受容体は、ESR1の一部と、別のタンパク質の一部または全部の間の融合受容体である。ある態様において、該変異受容体は、リガンドに結合できないかまたは非変異ERに結合するリガンドについて弱まった親和性を有するにもかかわらず、ER経路を介してシグナルを伝達し得る。いくつかの態様において、該変異または融合は、DNA結合ドメイン機能のERを保持する。
【0021】
本明細書に開示される方法のある態様において、該被験体は、少なくとも1つの具体的に記載されるER融合遺伝子を発現する。一態様において、該遺伝子は、PIK3CA中のE545K変異産物、ESR1-AKAP12融合産物、ESR1-CCDC170遺伝子融合産物、ESR1-YAP1遺伝子融合産物、ESR1-POLH遺伝子融合産物、ESR1-PCDH11X遺伝子融合産物またはそれらの組合せを含む。特定の態様において、被験体はESR1-YAP1融合を発現する。ある態様において、被験体は、被験体がその癌細胞の1つ以上の試料中に1つ以上のER遺伝子融合変異を有するかどうか決定するために評価される、彼/彼女の第1の乳癌または腫瘍を有する。記載されるER変異の1つ以上を被験体が実際に有する場合、被験体は本発明の化合物および方法による治療のための候補となる。本発明のいくつかの態様において、被験体はすでに1つ以上の以前の治療で治療されており、いくつかの態様において、該以前の治療は、例えばアロマターゼ阻害剤、SERMまたはSERDを利用する抗エストロゲン治療を含む。いくつかの態様において、示される変異を有する被験体は、彼/彼女の乳癌について前もっては全く治療されていないか、または抗エストロゲンで前もって治療されていない。ある態様において、被験体は、リガンド結合機能またはESR1活性を含む1つ以上の変異/融合を有する。
【0022】
ある態様において、被験体は最初に、ERについて陽性であり、ついでERの腫瘍発現を消失する。いくつかの態様において、前記発現の消失は、一連の1つ以上の以前の治療後に生じた。ある態様において、該1つ以上の以前の治療は、アロマターゼ阻害剤、SERMおよびSERDの1つ以上をさらに含む抗エストロゲンによる治療を含んだ。ある態様において、腫瘍においてER発現を消失した被験体は、プロゲステロン受容体(PR)を発現する。
【0023】
本明細書に開示される方法のある態様において、本明細書に開示される方法は診断工程をさらに含み、ここで該被験体は最初に、本明細書に記載される1つ以上の変異/融合について評価される。該変異/融合が所定のカットオフを満たすと推定される場合、該被験体は、単一療法としてまたは本明細書に記載される組み合わせとしてのいずれかのARアゴニスト/SARM治療の候補である。いくつかの態様において、該変異または融合は、ESR1-YAP融合および/または密接に関連する態様を含む。
【0024】
ARアゴニスト
本明細書に開示される方法は、任意の単一の化合物の群に限定されることなく、むしろより広い範囲で、アンドロゲン受容体に対する親和性を有し、広義にARアゴニストのものであると考えられる(thought of as)少なくともいくつかの古典的なアンドロゲン活性を発現し得る化合物を含む。かかる活性を前臨床的に識別するための1つの方法は、例えば化合物が肛門挙筋、前立腺および/または精嚢などのアンドロゲン標的組織に対して刺激的な効果を有するかどうかを決定するために去勢されたバックグラウンドに対して予想されるARアゴニストの効果が評価されるラットハーシュバーガーアッセイにおけるものである。ARアゴニストは、ステロイド性または非ステロイド性、選択性または非選択性であり得る。いくつかの態様において、ARアゴニストは、テストステロン(およびそのエステル)、DHT (およびそのエステル)、フルオキシメステロン(fluoxymesterone)、オキサンドロロン(oxandrolone)、スタノゾロール(stanzolol)、メタンドロステノロン(methandrostenelone)、メチルテストステロン、オキシメトロン(oxymetholone)、ナンドロロン(nandrolone)(およびそのエステル)などのステロイド性ARアゴニストである。ある態様において、ARアゴニストはSARM(例えばRAD140)である。ある態様において、SARMは、女性における男性化および多毛などの望ましくない結果を生じる他の組織(例えば前立腺)または他の発現プロフィールにおける低減したアンドロゲン駆動(drive)を有するにもかかわらず、腫瘍終点に対して有効性を示す。ある態様において、SARMはしばしば、肝臓酵素の上昇に対して、および/またはHDlの低下および/またはLDLの増加などのコレステロールレベルの可能性のある有害な変化に対して低減した駆動と共に存在する。ある態様において、SARMは非ステロイド性であり、一般的に依然として良好な経口活性を有していたとしても、17αアルキル化ステロイドの潜在的な部類の不都合(liability)を示さない。ある態様において、SARMは、男性化しにくいかまたは男性化しない有効な治療を提供する。ある態様において、SARMは、中心ホルモン軸(central hormonal axis)をフィードバック刺激しにくい。ある態様において、SARM(例えばRAD140)は、血液脳関門(「BBB」)を通過し得る。ある態様において、BBBを通過し得るSARMは、中心ホルモン軸に対して抑制性の効果を有し、性ステロイド、例えばエストロンおよびエストラジオールなどのエストロゲンならびにDHEA、アンドロステンジオンなどの細胞内分泌前駆体(intracrine precursor)等の卵巣生成物を、増加させるのではなく減少させる。本明細書に開示される方法のある態様において、SARMは一般的に、乳癌を有する閉経前の女性および乳癌を有する閉経後の女性を治療するために使用され得る。ある態様において、抑制性SARM(例えばRAD140)は、乳癌を有する閉経前または閉経後の女性においてさらなるCNSの利益を提供する。ある態様において、本明細書に開示されるARアゴニスト(例えばSARM)は、除脂肪筋肉量および/または食欲を増加させる。したがって、本明細書に開示されるARアゴニスト(例えばSARM)は、癌悪液質状態またはるい痩が問題となる場合に有益であり得る。
【0025】
実施例に拘束されることを望まないが、本明細書に開示される方法において企図されるSARMのいくつかとしては、限定されることなく、2-クロロ-4-[[(1R,2R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-シクロペンチル]アミノ]-3-メチル-ベンゾニトリル(J Med Chem 2016; 59(2) 750)、PF-06260414、エノボサルム、BMS-564929、LGD-4033、AC-262356、JNJ-28330835、S-40503、GSK-2881078、RAD140、AZD-3514、MK4541、LG121071、GLPG0492、NEP28、YK11、MK0773、ACP-105、LY-2452473、S-101479、S-40542、S-42、LGD-3303ならびに参照により本明細書に援用されるUS8,067,448およびUS9,133,182に開示されるSARMが挙げられる。また、本明細書に開示される方法に適したSARMとしては、本明細書に開示される式Iの化合物(例えば化合物IIおよび化合物III)、および本明細書に開示される式IVの化合物が挙げられ、これらは単独で、またはCDK阻害剤(例えばCDK4/6阻害剤)、mTOR阻害剤(例えばmTORc 1阻害剤および/またはmTORc 2阻害剤)、PARP阻害剤、PIK3阻害剤、BCL-2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤と組み合わせて、被験体におけるAR+乳癌の治療のために使用され得る。
【0026】
式Iの化合物としては、式I:
【化1】
(式中、
R
x=CN;
R
y=CF
3もしくはCl;
R
z=CH
3、CH
2CH
3もしくはCl;または
R
yおよびR
zは一緒になって:
【化2】
を形成し;
R
a'は、H、F、Cl、CN、OHもしくはOSO
3であり;ならびに
R
1およびR
2は、それぞれ独立して水素およびメチルから選択される)
の構造を有する化合物、その薬学的に許容され得る塩、およびその薬学的に許容され得る溶媒和物が挙げられる。
【0027】
ある態様において、式Iの化合物は、化合物IIまたは化合物III(RAD140):
【化3】
、その薬学的に許容され得る塩、またはその薬学的に許容され得る溶媒和物である。
【0028】
ある態様において、式IV:
【化4】
(式中、
R
xはCN、Cl、BrまたはNO
2であり;
R
yはCH
3、CF
3またはハロゲンであり;
R
zは水素、任意に置換されるC
1-3アルキル、任意に置換されるC
2-3アルケニル、任意に置換されるC
1-3ヒドロキシアルキル、任意に置換されるC
1-3ハロアルキル、NO
2、NH
2、OMe、ハロゲンまたはOHであり;
P
1は水素または代謝的に不安定な基であり;
R
aおよびR
bはそれぞれ独立して水素またはC
1-3アルキルであり;および
XはOである)
の化合物としては、その薬学的に許容され得る塩およびその薬学的に許容され得る溶媒和物が含まれる。
【0029】
任意の置換の例としては限定されることなく1~3個のハロゲン原子が挙げられる。
【0030】
ある態様において、SARMは、式IVの化合物、その薬学的に許容され得る塩、またはその薬学的に許容され得る溶媒和物であり、ここでRxはCNである。
【0031】
ある態様において、SARMは式IVの化合物、その薬学的に許容され得る塩、またはその薬学的に許容され得る溶媒和物であり、ここでRxはCNであり;RyはClまたはCF3であり;Rzは水素、ClまたはCH3であり;P1は(C=O)-C1-6アルキルまたは水素であり;RaおよびRbはそれぞれ独立して水素または-CH3である。
【0032】
ある態様において、SARMは式IVの化合物、その薬学的に許容され得る塩、またはその薬学的に許容され得る溶媒和物であり、ここでRxはCNであり;RyはClまたはCF3であり;Rzは水素、ClまたはCH3であり;P1は(C=O)-C1-6アルキルまたは水素であり;RaおよびRbはともに水素である。
【0033】
ARアゴニストおよびmTOR阻害剤の組合せ療法
ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/プロテインキナーゼB(AKT)/哺乳動物のラパマイシン標的(mammalian target of rapamycin) (mTOR)経路は、細胞周期の調節に重要な細胞内シグナル伝達経路である。癌におけるPI3K/AKT/mTOR経路の頻繁な活性化ならびに細胞増殖および生存におけるその重要な役割は、種々の治療の開発にこのバランスを利用するために、増殖 対 分化の適切な量を発見するという課題を提供する。例えば、Gitto et al., 「Recent insights into the pathophysiology of mTOR pathway dysregulation」, Res. Rep. Bio., 2:1-16 (2015)参照。
【0034】
PI3K経路の阻害剤は、他の治療と組み合わせて提供される場合に見込みを示している。例えば、エベロリムスは、2012年に、アロステリックmTOR阻害剤として、進行したホルモン受容体陽性(HR+)、HER2-乳癌(BOLERO-2試験)を有する閉経後の女性のためにAIエキセメスタン(アロマシン)と組み合わせて承認された最初のmTOR阻害剤であった。PI3K経路の他の成分を標的化する薬剤、例えばATP-競合性のPI3KおよびmTORの二重阻害剤(例えばBEZ235、GDC-0980)、クラスI PI3Kの4つ全てのアイソフォームを阻害するpan-PI3K阻害剤(例えばBKM120、GDC-0941)、種々のPI3Kアイソフォームのアイソフォーム特異的阻害剤(例えばBYL719、GDC-0032)、AKTのアロステリックで触媒性の阻害剤(MK2206、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、AZD5363)、ならびにmTORのみのATP-競合性阻害剤(AZD2014、MLN0128およびCC-223)は、HR+癌を治療するために開発中である。Dienstmann et al., 「Picking the point of inhibition: a comparative review of PI3K/AKT/mTOR pathway inhibitors」, Mol. Cancer Ther., 13(5):1021-31 (2014)。
【0035】
それらの大きな可能性に関わらず、mTOR阻害剤に関連する望ましくない副作用は、有効な癌治療としてのそれらの開発を妨害している。Kaplan et al., 「Strategies for the management of adverse events associated with mTOR inhibitors」, Transplant Rev (Orlando), 28(3): 126-133 (2014);およびPallet et al., 「Adverse events associated with mTOR inhibitors」, Expert Opin. Drug Saf. 12(2): 177-186 (2013)。
【0036】
さらに、現在の内分泌治療に関連する課題を克服し得るより耐久性があり有効な標的化治療の必要性が残り、一方で第2の治療剤(例えばエベロリムスおよびPI3K/AKT/mTOR経路を標的化する他の薬剤)と組み合わせることにより、進行した病期におけるおよび/または以前の治療に抵抗性を有する癌に対抗するようなさらなる利点が提供される。
【0037】
いくつかの態様において、第2の治療剤はPI3K/AKT/mTOR経路を標的化し、mTOR阻害剤、二重mTOR阻害剤、PI3K/mTOR阻害剤あるいはmTOR2および/またはmTOR3の阻害剤であり得る。いくつかの態様において、第2の治療剤は、ラパマイシン(シロリムスまたはラパミューン、Pfizer)、エベロリムス(アフィニトール(Affinitor)またはRAD001、Novartis)、リダフォロリムス(ridaforolimus) (AP23573またはMK-8669、Merck and ARIAD Pharmaceuticals)、テムシロリムス(ToriselまたはCCI779、Pfizer)、それらの溶媒和物(例えば水和物)および塩を含むものなどのラパマイシン誘導体(rapalogとして公知)である。いくつかの態様において、第2の治療剤は、MLN0128、CC115およびCC223 (Celgene)、OSI-027 (OSI Pharmaceuticals)、ならびにAZD8055およびAZD2014 (AstraZeneca)、それらの溶媒和物(例えば水和物)および塩を含むものなどのmTORC1およびmTORC2の両方を阻害する二重mTOR阻害剤である。いくつかの態様において、第2の治療剤は、GDC-0980、SAR245409 (XL765)、LY3023414 (Eli Lilly)、NVP-BEZ235 (Novartis)、NVP-BGT226 (Novartis)、SF1126およびPKI-587 (Pfizer)、それらの溶媒和物(例えば水和物)および塩を含むものなどのPI3K/mTOR阻害剤である。
【0038】
ある態様において、上述の第2の治療剤の1つより多くが、本明細書に開示されるARアゴニスト(例えばSARM)、例えば式Iの化合物、式IVの化合物、化合物IIおよび化合物IIIと組み合わせて使用され得る。例えば、mTOR阻害剤は、別のmTOR阻害剤またはPI3K/mTOR阻害剤と一緒に使用され得る。また、mTOR阻害剤、二重mTOR阻害剤およびPI3K/mTOR阻害剤を含む上述の第2の治療剤を、他の活性剤と共に投与して治療の有効性を高め得る、例えばJAK2阻害剤(Bogani et al., PLOS One, 8(1): e54826 (2013))、化学療法剤(Yardley, Breast Cancer (Auckl) 7: 7-22 (2013))と組み合わせて使用し得ることは当該技術分野で公知である。したがって、第2の治療剤としてはこれらの補助的な活性剤も挙げられる。
【0039】
図2は、インビボモデルにおいてmTOR阻害剤エベロリムスをSARM RAD140と組み合わせて使用した場合に得られた増加した有効性を示す。
【0040】
ARアゴニストおよびCDK阻害剤の組合せ療法
サイクリンおよびサイクリン依存的キナーゼ(CDK)などの細胞周期調節剤は、ER発現に効果を有することが報告されている。Lamb et al., 「Cell cycle regulators cyclin D1 and CDK4/6 have estrogen receptor-dependent divergent functions in breast cancer migration and stem cell-like activity」, Cell Cycle 12(15): 2384-2394 (2013)。選択的CDK4/6阻害剤(例えばリボシクリブ、アベマシクリブおよびパルボシクリブ)は、CDK4/6がG1-からS期への細胞周期遷移において中心的な役割を有する腫瘍型を、向上された有効性により標的化させ、正常細胞に対する有害効果を小さくした。O'Leary et al., 「Treating cancer with selective CDK4/6 inhibitors」, Nat. Rev. Clin. Oncol. (2016)、2016年3月31日公開(http://www.nature.com/nrclinonc/journal/vaop/ncurrent/full/nrclinonc.2016.26.html)。選択的CDK4/6阻害剤は、ER陽性乳癌を有する患者においてER内分泌治療と組み合わせて試験した場合に最良の応答を示した。これに関して、これは、AR経路がER経路と相互作用して、いくつかの条件下で、直接ER拮抗とは異なる様式でER活性に拮抗(antagonize)し得る可能性があることを考慮することに有用である。
【0041】
アロマターゼ阻害剤、レトロゾールと組み合わせたパルボシクリブ(PALoMA-1/TRIO 18試験)は、ホルモン受容体(HR)陽性(HR+)、HER2陰性(HER2-)の進行した乳癌の治療のために、閉経後の女性における最初の内分泌に基づいた治療として2015年2月に認可された。2016年2月に、SERDフルベストラントと組み合わせたパルボシクリブ(PALOMA-3試験)は、内分泌治療の前に進行していたER+、HER2-の進行したまたは転移性の乳癌患者の治療のために認可された。FDAは、フェーズI試験(JPBA試験)のデータに基づいて、難治性のHR陽性進行乳癌を有する重度の治療前患者のための単一療法として、画期的治療薬指定(breakthrough therapy designation)であるCDK4/6阻害剤アベマシクリブ(LY2835219)を許可した。選択的CDK4/6阻害剤(例えばリボシクリブ、アベマシクリブおよびパルボシクリブ)とER内分泌治療(例えばAI、SERMおよびSERD)のさらなる組合せが現在開発中である。しかしながら、SARMとcdk4/6阻害剤の間の予期されない組合せの有効性を示す臨床または前臨床試験は現在まで欠如していると思われる。
【0042】
さらに、CDK4/6阻害剤は周期的な治療を必要とし得る毒性を示す(O'Leary)。したがって、現在の内分泌治療に関連する課題を解決し得、CDK4/6阻害剤と組み合わせて、乳癌、特に進行した病期にありおよび/または以前の治療に抵抗性を有するかもしくはESR1標的をアンドロゲン介入(SARMを含む)に応答するようにする以前の治療の前後に存在するものとして同定される変異を有する乳癌に対抗することによりさらなる利点を提供する、有効かつ代替的な組合せ-標的化治療の必要性が残り、ここで他の内分泌学的治療、特にアロマターゼ阻害剤、SERMまたはSERDなどの直接的な抗エストロゲン性効果に頼る治療は一般に、より有効性が低いかまたは全く有効でない。
【0043】
ある態様において、CDK4および/またはCDK6阻害剤としては、限定されることなくパルボシクリブ、アベマシクリブ、リボシクリブおよびAMG925が挙げられる。
【0044】
CDK4/CDK6阻害剤(例えばパルボシクリブ)と組み合わせたARアゴニスト(例えばSARM)のこの概念のインビボにおける例示は
図1に見ることができる。
図1に示すように、SARM RAD140は、パルボシクリブを用いた単一療法と同様の非常に有効な腫瘍抑制能力を有する。RAD140およびパルボシクリブの組合せ治療は、RAD140またはパルボシクリブを用いた単一療法と比較して、高められたTGIを提供したことは予期されなかった。したがって、ARアゴニストとCDK4/6阻害剤の組合せ治療は、AR+乳癌の治療に対して向上された活性および顕著な臨床的利点を提供し得る。同様に、
図6は、最初にESR1-YAP融合を発現するWHIM18モデルにおける単独またはパルボシクリブと一緒のものの有効性を示し、ここでフルベストラント(SERDとして)は単独で有効でなく、フルベストラント-パルボシクリブ組合せ治療におけるパルボシクリブの有効性を高めなかった。
【0045】
投与および製剤化
本明細書に開示される方法による化合物および組合せの投与に関して、本明細書に開示されるARアゴニスト(例えばSARM)またはその溶媒和物もしくは塩ならびにCDK4および/またはCDK6阻害剤(例えばリボシクリブ、アベマシクリブおよびパルボシクリブ)またはmTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤は、必要性のある被験体に、組み合わせて投与される。句「組み合わせて」は、本明細書に開示されるARアゴニスト(例えばSARM)を、CDK4および/またはCDK6阻害剤またはmTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤の投与の前、間または後に投与し得ることを意味する。例えば、ARアゴニスト(例えばSARMs)ならびにCDK4および/またはCDK6阻害剤またはmTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤は、約1週間離して、約6日離して、約5日離して、約4日離して、約3日離して、約2日離して、約24時間離して、約23時間離して、約22時間離して、約21時間離して、約20時間離して、約19時間離して、約18時間離して、約17時間離して、約16時間離して、約15時間離して、約14時間離して、約13時間離して、約12時間離して、約11時間離して、約10時間離して、約9時間離して、約8時間離して、約7時間離して、約6時間離して、約5時間離して、約4時間離して、約3時間離して、約2時間離して、約1時間離して、約55分離して、約50分離して、約45分離して、約40分離して、約35分離して、約30分離して、約25分離して、約20分離して、約15分離して、約10分離してまたは約5分離して投与され得る。ある態様において、ARアゴニスト(例えばSARMs)ならびにCDK4および/またはCDK6阻害剤またはmTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤は、同時にまたは実質的に同時に被験体に投与される。これらの態様のあるものにおいて、本明細書に開示されるARアゴニスト(例えばSARMs)ならびにCDK4および/またはCDK6阻害剤(例えばリボシクリブ、アベマシクリブおよびパルボシクリブ)またはmTOR阻害剤(例えばシロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダファロリムスおよびMLN0128)、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤は、単一製剤の一部として投与され得る。ARアゴニストおよび本明細書に記載される1つ以上のさらなる薬剤がキット中に、例えば共パッケージ配置として一緒に含まれるキットが含まれる。非限定的な例として、RAD140と、CDK4/6阻害剤、m-TOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤、例えば本明細書に詳述されるものを含むキットが該範囲に含まれる。
【0046】
いくつかの態様において、単一のARアゴニスト(例えばSARM)ならびに単一のCDK4および/またはCDK6阻害剤またはmTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤の組合せが被験体に投与される。ある態様において、ARアゴニスト(例えばSARM)ならびにCDK4/CDK6阻害剤およびmTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤の組合せは一緒に被験体に投与される。本明細書に開示される方法において使用されるARアゴニスト(例えばSARM)の製剤は一般的に、文献中に開示されており、これらの教示は一般的な参照により本明細書中に援用される。特に、US8,067,448には、該化合物をどのように作製するか、ならびに式Iの化合物、化合物IIおよび化合物IIIを製剤化するために有用な一般的な製剤化方法が開示され、参照により本明細書に援用される。同様に、US9,133,182には、式IVの化合物をどのように作製するかおよび一般的に製剤化するかが開示され、参照により本明細書に援用される。具体的な調製の助言または指示が利用可能ではない例において、製剤化についてのいくつかの一般的な原理を適用し得る。例えば、本明細書に開示される方法の化合物および組合せは、治療を受けている被験体についての単位用量として適切な物理的に別個の単位を意味する単位剤型に製剤化され得、それぞれの単位は、適切な医薬担体を任意に伴って所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性材料を含む。単位剤型は単一の日用量のためのものであり得るかまたは複数の日用量のうちの1つであり得る(例えば約1~4回またはそれ以上q.d.)。複数の日用量が使用される場合、単位剤型はそれぞれの用量について同じであり得るかまたは異なり得る。ある態様において、該化合物は、制御放出のために製剤化され得る。
【0047】
本発明に開示される方法における使用のための化合物および組合せは、任意の利用可能な従来の方法に従って製剤化され得る。好ましい剤型の例としては、錠剤、散剤、微細粒(subtle granule)、顆粒、コーティングされた錠剤、カプセル、シロップ剤、トローチ、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏、眼軟膏、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等が挙げられる。該製剤中、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、着色剤、矯味矯臭剤、および必要な場合は安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の一般的に使用される添加剤が使用され得る。また、製剤化は、医薬製剤のための原料として一般的に使用される組成物を従来の方法に従って組み合わせることによっても実施される。これらの組成物の例としては、例えば(1)ダイズ油、牛獣脂および合成グリセリドなどの油;(2)液体パラフィン、スクアランおよび固形パラフィンなどの炭化水素;(3)オクチルドデシルミリスチン酸およびイソプロピルミリスチン酸などのエステル油;(4)セトステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールなどの高級アルコール;(5)シリコン樹脂;(6)シリコン油;(7)ポリエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、固形ポリオキシエチレンヒマシ油およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどの界面活性剤;(8)ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびメチルセルロースなどの水溶性マクロ分子;(9)エタノールおよびイソプロパノールなどの低級アルコール;(10)グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびソルビトールなどの多価アルコール;(11)グルコースおよび甘蔗糖などの糖;(12)無水ケイ酸、アルミニウムマグネシウムシリケート(silicicate)およびケイ酸アルミニウムなどの無機粉末;(13)精製水等が挙げられる。上記の製剤化における使用のための添加剤としては、例えば、1)希釈剤として、ラクトース、トウモロコシデンプン、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、結晶セルロースおよび二酸化ケイ素;2)結合剤として、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガカント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール-ポリオキシエチレン-ブロックコポリマー、メグルミン、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン等;3)崩壊剤として、デンプン、寒天、ゼラチン粉末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン(pectic)、カルボキシメチルセルロース/カルシウム等;4)滑剤として、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、濃縮植物油等;5)着色剤として、その添加が薬学的に許容され得、適切である任意の着色剤;6)矯味矯臭剤として、カカオ粉末、メントール、芳香化剤、ペパーミント油、シナモン粉末;7)その添加が薬学的に許容されるアスコルビン酸またはαトフェノール(tophenol)などの酸化防止剤が挙げられ得る。
【0048】
本発明に開示される方法における使用のための化合物および組合せは、本明細書に記載される活性化合物および生理学的に許容され得る担体(薬学的に許容され得る担体または溶液または希釈剤とも称される)のいずれか1つ以上のものとして医薬組成物に製剤化され得る。かかる担体および溶液としては、本発明の方法において使用される化合物の薬学的に許容され得る塩および溶媒和物、ならびにかかる化合物、該化合物の薬学的に許容され得る塩および該化合物の薬学的に許容され得る溶媒和物の2つ以上を含む混合物が挙げられる。かかる組成物は、参照により本明細書中に援用されるRemington's Pharmaceutical Sciences, 17版、Alfonso R. Gennaro編, Mack Publishing Company, Eaton, Pa. (1985)に記載されるものなどの許容され得る医薬的手法に従い調製される。
【0049】
用語「薬学的に許容され得る担体」は、それが投与された患者においてアレルギー反応または他の都合の悪い効果を生じずに、製剤中の他の成分と適合性である担体をいう。薬学的に許容され得る担体としては例えば、意図される投与形態に関して適切に選択され、従来の薬学的実務と矛盾しない医薬希釈剤、賦形剤または担体が挙げられる。例えば、固形担体/希釈剤としては、限定されないが、ゴム、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、前ゼラチン化デンプン)、糖(例えばラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース材料(例えば微結晶セルロース)、アクリル酸塩(例えばアクリル酸ポリメチル)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルクまたはそれらの混合物が挙げられる。薬学的に許容され得る担体はさらに、治療剤の保存寿命または有効性を高める湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤などの微量の補助物質を含み得る。
【0050】
遊離形態のARアゴニスト(例えばSARM)および/またはCDK4/6阻害剤および/またはmTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤は、従来の方法により、必要に応じて塩に変換され得る。本明細書で使用される用語「塩」は、塩が薬学的に許容され得るものであれば限定されず、塩の好ましい例としては、ハロゲン化水素塩(例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)等が挙げられる。また、塩化水素塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩等は、本明細書に開示される化合物の「薬学的に許容され得る塩」として好ましい。
【0051】
ある態様において、本明細書に開示されるARアゴニスト(例えばSARM)ならびにCDK4/6および/またはmTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤はプロドラッグ形態であり得、その活性形態を達成するためにいくつかの変化(例えば酸化または加水分解)を経なければならないことを意味する。
【0052】
本明細書に開示される化合物および/または組合せの投与は、これらの化合物についてこれまでに記載された経路によるものであり得るが、一般に経皮、皮下、静脈内、鼻腔内、肺および経口などであり得る。本発明の組合せ方法について、経口が好ましい経路である。
【0053】
本明細書に開示される方法におけるARアゴニスト(例えばSARM)ならびにCDK4/6阻害剤および/またはmTOR阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、MCL-1阻害剤および/またはBCL2阻害剤の組合せの治療有効量は、特定の時間間隔にわたり投与される場合に、1つ以上の治療水準(例えば腫瘍増殖の遅延または停止、腫瘍退縮、症状の停止等を生じる)の達成を生じる量である。本発明に開示される方法における使用のための組合せは、1回または複数回被験体に投与され得る。化合物が複数回投与されるこれらの態様において、化合物は設定間隔、例えば毎日、1日おき、毎週または毎月投与され得る。代替的に、化合物は、不規則な間隔、例えば症状、患者の健康状態等に基づいて必要とされる基準で投与され得る。該組み合わせの治療有効量は、1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、または少なくとも15日間のq.d.で投与され得る。任意に、癌の状態または腫瘍の退縮は、治療中または治療後に、例えば被験体のFES-PETスキャンによりモニタリングされる。被験体に投与される組み合わせの用量は、検出される癌の状態または腫瘍の退縮に応じて増加または減少され得る。
【0054】
当業者は、個々の被験体基準(例えば治療されている被験体において特定の治療水準を達成するために必要な化合物の量)または集団基準(例えば所定の集団の平均被験体において特定の治療水準を達成するために必要な化合物の量)のいずれかにおいてこの量を容易に決定し得る。理想的には、治療有効量は、治療された被験体の50%以上が悪心、多毛、嗄れ声またはさらなる薬物投与を妨げる他のより重度な反応を経験する最大許容用量を超えない。治療有効量は、症状の変化および程度、被験体の性別、年齢、体重または一般的な健康状態、投与形態および塩または溶媒和物の型、薬物への感受性の変形、疾患の特定の型等を含む種々の要因に応じて、被験体について変化し得る。本発明の治療計画に対して急性応答を示す一つの手段は、プロゲスチン受容体発現を分析することである。本発明の方法で使用されるARアゴニスト(例えばSARM)は薬剤に対する応答を示すプロゲスチン受容体の発現の低下をもたらすことが見出されている。実施例に示されるマウス異種移植片における豊富な前臨床有効性データに基づいて、SARM RAD140についての予測される有効なヒト臨床用量の計算および開示を実施例9に記載する。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]被験体に、式I
【化A-1】
(式中、
R
x
=CN;
R
y
=CF
3
もしくはCl;
R
z
=CH
3
、CH
2
CH
3
もしくはCl;または
R
y
およびR
z
は一緒になって:
【化A-2】
を形成する;
R
a’
は、H、F、Cl、CN、OHもしくはOSO
3
-であり;ならびに
R
1
およびR
2
はそれぞれ独立して、水素およびメチルからなる群より選択される)
の化合物、その薬学的に許容され得る塩、またはその薬学的に許容され得る溶媒和物を投与する工程を含む、被験体においてAR+/ER+乳癌を治療する方法。
[2]式Iの化合物が、化合物II:
【化A-3】
である、[1]記載の方法。
[3]式Iの化合物が、RAD140(化合物III):
【化A-4】
である、[1]記載の方法。
[4]投与が経口経路によるものである、[1]~[3]いずれか記載の方法。
[5]前記被験体が女性である、[1]~[4]いずれか記載の方法。
[6]前記女性が閉経前の女性である、[5]記載の方法。
[7]前記女性が閉経後の女性である、[5]記載の方法。
[8]該被験体が、アジュバント設定(adjuvant setting)において治療される、[1]~[7]いずれか記載の方法。
[9]該被験体が、1つ以上の内分泌学的薬剤による治療後に疾患の進行を有していた、[1]~[7]いずれか記載の方法。
[10]前記1つ以上の内分泌学的薬剤が、SERM、SERD、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される、[9]記載の方法。
[11]前記被験体が、CDK4/6阻害剤、mTOR阻害剤、BCL-2阻害剤、PI3K阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤による治療後に疾患の進行を有していた、[1]~[7]いずれか記載の方法。
[12]前記乳癌が、局所的、進行性または転移性の乳癌である、[1]~[11]いずれか記載の方法。
[13]前記RAD140が、1日当たり10~500mg、10mg~250mgまたは25mg~250mgで投与される、[3]~[12]いずれか記載の方法。
[14]該投与が1日に1回である、[13]記載の方法。
[15]該被験体が、1つ以上の変異を含むESR1を発現する、[1]~[14]いずれか記載の方法。
[16]前記変異が、非変異ESR1と比較して、リガンドの結合親和性に影響する、[15]記載の方法。
[17]前記変異が、非変異ESR1と比較して、変異したESR1に対するエストラジオール親和性の低減を生じる、[16]記載の方法。
[18]前記変異が、ESR1経路を介して、リガンド依存的に、またはリガンドに独立してシグナル伝達する、[15]~[17]いずれか記載の方法。
[19]前記変異が、非変異ESR1の配列から少なくとも10個の連続したアミノ酸および別のヒトタンパク質から少なくとも10個の連続したアミノ酸を含む融合タンパク質を生じる、[15]~[18]いずれか記載の方法。
[20]前記変異が、ESR1の正常(非変異)リガンド結合ドメインアミノ酸配列から10個以上の連続したアミノ酸を欠損するESR1を生じる、[15]~[19]いずれか記載の方法。
[21]前記変異が、ESR1-AKAP12、ESR1-CCDC170、ESR1-YAP1、ESR1-POLH、ESR1-PCDH11Xおよびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の変異を含む、[15]~[20]いずれか記載の方法。
[22]該治療が、CDK4/6阻害剤の投与をさらに含む、[1]~[21]いずれか記載の方法。
[23]前記CDK4/6阻害剤が、CDK4およびCDK6に対して<100nMのIC
50
を有する、[22]記載の方法。
[24]前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブおよびアベマシクリブからなる群より選択される、[1]~[23]いずれか記載の方法。
[25]前記治療が、mTOR阻害剤の投与をさらに含む、[1]~[21]いずれか記載の方法。
[26]前記mTOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダファロリムスおよびMLN0128からなる群より選択される、[25]記載の方法。
[27]PI3K阻害剤の投与をさらに含む、[1]~[21]いずれか記載の方法。
[28]PI3K阻害剤が、BEZ235、GDC-0980、BKM120、GDC-0941、BYL719、GDC-0032、MK2206、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、AZD5363、AZD2014、MLN0128またはCC-223である、[27]記載の方法。
[29]PARP阻害剤の投与をさらに含む、[1]~[21]いずれか記載の方法。
[30]前記PARP阻害剤が、タラゾパリブ、ベリパリブ、ニラパリブ、beigene290、E7449、KX01、ABT767、CK102、JPI289、KX02、IMP4297、SC10914、NT125、PJ34、VPI289またはANG-3186である、[29]記載の方法。
[31]MCL-1阻害剤の投与をさらに含む、[1]~[21]いずれか記載の方法。
[32]前記MCL-1阻害剤が、7-(5-((4-(4-(N,N-ジメチルスルファモイル)ピペラジン-1-イル)フェノキシ)メチル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(2-モルホリノエチル)-3-(3-(ナフタレン-1-イルオキシ)プロピル)-1H-インドール-2-カルボン酸、S63845、オマサタキシン、セリシクリブ、UMI-77、AT101、サブトクラックスまたはTW-37である、[31]記載の方法。
[33]BCL-2阻害剤の投与をさらに含む、[1]~[21]いずれか記載の方法。
[34]前記BCL-2阻害剤が、ベネトクラックス、ナビトクラックス、ABT737、G3139またはS55746である、[33]記載の方法。
[35]前記治療が、非アジュバント設定における第一線の治療である、[1]~[7]または[12]~[34]のいずれか1項記載の方法。
[36][1]~[3]いずれか記載のARアゴニストならびにPARP阻害剤、mTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤を含む、キット。
[37]mTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤と一緒にステロイド性または非ステロイド性のARアゴニストの投与を含む、被験体においてAR+/ER+乳癌を治療する方法。
[38]前記ARアゴニストがステロイド性ARアゴニストである、[37]記載の方法。
[39]前記ARアゴニストが選択的アンドロゲン受容体調節剤である、[38]記載の方法。
[40]前記選択的アンドロゲン受容体調節剤が、2-クロロ-4-[[(1R,2R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-シクロペンチル]アミノ]-3-メチル-ベンゾニトリル、PF-06260414、エノボサルム、BMS-564929、LGD-4033、AC-262356、JNJ-28330835、S-40503、GSK-2881078、AZD-3514、MK4541、LG121071、GLPG0492、NEP28、YK11、MK0773、ACP-105、LY-2452473、S-101479、S-40542、S-42およびLGD-3303からなる群より選択される、[39]記載の方法。
[41]該治療がアジュバント設定におけるものである、[37]~[40]いずれか記載の方法。
[42]前記治療が非アジュバント設定における第一線のものである、[37]~[40]いずれか記載の方法。
[43]前記被験体が、以前の内分泌学的治療による治療後に疾患の進行を有していた、[37]~[40]いずれか記載の方法。
[44]前記被験体が、mTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤による治療後に疾患の進行を有していた、[37]~[40]または[43]のいずれか1項記載の方法。
[45]前記被験体が女性である、[37]~[44]いずれか記載の方法。
[46]前記女性が閉経前の女性である、[45]記載の方法。
[47]前記女性が閉経後の女性である、[45]記載の方法。
[48]前記乳癌が局所的である、[37]~[47]いずれか記載の方法。
[49]前記乳癌が進行性または転移性のものである、[37]~[47]いずれか記載の方法。
[50]前記m-TOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダファロリムスまたはMLN0128である、[37]~[49]いずれか記載の方法。
[51]前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブまたはアベマシクリブである、[37]~[50]いずれか記載の方法。
[52]前記PI3K阻害剤が、BEZ235、GDC-0980、BKM120、GDC-0941、BYL719、GDC-0032、MK2206、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、AZD5363、AZD2014、MLN0128またはCC-223である、[37]~[51]いずれか記載の方法。
[53]前記PARP阻害剤が、タラゾパリブ、ベリパリブ、ニラパリブ、beigene290、E7449、KX01、ABT767、CK102、JPI289、KX02、IMP4297、SC10914、NT125、PJ34、VPI289またはANG-3186である、[37]~[52]いずれか記載の方法。
[54]前記MCL-1阻害剤が、7-(5-((4-(4-(N,N-ジメチルスルファモイル)ピペラジン-1-イル)フェノキシ)メチル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(2-モルホリノエチル)-3-(3-(ナフタレン-1-イルオキシ)プロピル)-1H-インドール-2-カルボン酸、S63845、オマサタキシン、セリシクリブ、UMI-77、AT101、サブトクラックスまたはTW-37である、[37]~[53]いずれか記載の方法。
[55]前記BCL-2阻害剤が、ベネトクラックス、ナビトクラックス、ABT737、G3139またはS55746である、[37]~[54]いずれか記載の方法。
[56]活性剤が一緒に投与される、[37]~[55]いずれか記載の方法。
[57]活性剤が、共製剤化(coformulation)において投与される、[35]~[56]いずれか記載の方法。
[58]ARアゴニストまたは選択的アンドロゲン受容体調節剤、ならびにmTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤を含む、乳癌の治療に有用なキット。
[59]被験体においてAR+/ER+乳癌を治療する方法であって、前記被験体が1つ以上のESR1変異を有し、前記方法が、ARアゴニストの投与を含む、方法。
[60]前記ARアゴニストが非ステロイド性である、[59]記載の方法。
[61]前記ARアゴニストが選択的アンドロゲン受容体調節剤である、[60]記載の方法。
[62]前記選択的アンドロゲン受容体調節剤が、2-クロロ-4-[[(1R,2R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-シクロペンチル]アミノ]-3-メチル-ベンゾニトリル、PF-06260414、エノボサルム、BMS-564929、LGD-4033、AC-262356、JNJ-28330835、S-40503、GSK-2881078、AZD-3514、MK4541、LG121071、GLPG0492、NEP28、YK11、MK0773、ACP-105、LY-2452473、S-101479、S-40542、S-42およびLGD-3303からなる群より選択される、[61]記載の方法。
[63]前記変異が、非変異ESR1と比較して、リガンドの結合親和性に影響する、[59]~[62]いずれか記載の方法。
[64]前記変異が、非変異ESR1と比較して、変異したESR1に対するエストラジオール親和性の低減を生じる、[59]~[63]いずれか記載の方法。
[65]前記変異が、ESR1経路を介して、リガンド依存的に、またはリガンドに独立してシグナル伝達する、[59]~[64]いずれか記載の方法。
[66]前記変異が、非変異ESR1の配列から少なくとも10個の連続したアミノ酸および別のヒトタンパク質から少なくとも10個の連続したアミノ酸を含む融合タンパク質を生じる、[59]~[65]いずれか記載の方法。
[67]前記変異が、ESR1の正常(非変異)リガンド結合ドメインアミノ酸配列から10個以上の連続したアミノ酸を欠損するESR1を生じる、[59]~[66]いずれか記載の方法。
[68]前記変異が、ESR1-AKAP12、ESR1-CCDC170、ESR1-YAP1、ESR1-POLH、ESR1-PCDH11Xおよびそれらの組合せからなる群より選択される融合である、[59]~[67]いずれか記載の方法。
[69]該投与が経口経路によるものである、[59]~[68]いずれか記載の方法。
[70]前記治療がアジュバント設定におけるものである、[59]~[69]いずれか記載の方法。
[71]前記治療が非アジュバント設定における第一線のものである、[59]~[69]いずれか記載の方法。
[72]前記被験体が、以前の内分泌学的治療による治療後に疾患の進行を有していた、[59]~[69]いずれか記載の方法。
[73]前記被験体が、mTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤による治療後に疾患の進行を有していた、[59]~[69]または[72]のいずれか1項記載の方法。
[74]前記被験体が女性である、[59]~[73]いずれか記載の方法。
[75]前記女性が閉経前の女性である、[74]記載の方法。
[76]前記女性が閉経後の女性である、[74]記載の方法。
[77]前記乳癌が局所的である、[59]~[76]いずれか記載の方法。
[78]前記乳癌が進行性または転移性である、[59]~[76]いずれか記載の方法。
[79]該治療が、CDK4/6阻害剤の投与をさらに含む、[59]~[78]いずれか記載の方法。
[80]前記CDK4/6阻害剤が、CDK4およびCDK6に対して、<100nMのIC
50
を有する、[79]記載の方法。
[81]前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブおよびアベマシクリブからなる群より選択される、[79]記載の方法。
[82]前記治療が、mTOR阻害剤の投与をさらに含む、[59]~[78]いずれか記載の方法。
[83]前記mTOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダファロリムスおよびMLN0128からなる群より選択される、[82]記載の方法。
[84]PI3K阻害剤の投与をさらに含む、[59]~[78]いずれか記載の方法。
[85]前記PI3K阻害剤が、BEZ235、GDC-0980、BKM120、GDC-0941、BYL719、GDC-0032、MK2206、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、AZD5363、AZD2014、MLN0128またはCC-223である、[84]記載の方法。
[86]PARP阻害剤の投与をさらに含む、[59]~[78]いずれか記載の方法。
[87]前記PARP阻害剤が、タラゾパリブ、ベリパリブ、ニラパリブ、beigene290、E7449、KX01、ABT767、CK102、JPI289、KX02、IMP4297、SC10914、NT125、PJ34、VPI289またはANG-3186である、[86]記載の方法。
[88]MCL-1阻害剤の投与をさらに含む、[59]~[78]いずれか記載の方法。
[89]前記MCL-1阻害剤が、7-(5-((4-(4-(N,N-ジメチルスルファモイル)ピペラジン-1-イル)フェノキシ)メチル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(2-モルホリノエチル)-3-(3-(ナフタレン-1-イルオキシ)プロピル)-1H-インドール-2-カルボン酸、S63845、オマサタキシン、セリシクリブ、UMI-77、AT101、サブトクラックスまたはTW-37である、[88]記載の方法。
[90]BCL-2阻害剤の投与をさらに含む、[59]~[78]いずれか記載の方法。
[91]前記BCL-2阻害剤が、ベネトクラックス、ナビトクラックス、ABT737、G3139またはS55746である、[90]記載の方法。
[92]前記治療が非アジュバント設定における第一線の治療である、[59]~[91]いずれか記載の方法。
[93]1) 1つ以上のESR1変異について被験体を試験する工程;および
2) 被験体が1つ以上のESR1変異について陽性の試験結果を示す場合に、該被験体を、[1]~[35]、[37]~[57]、[59]~[92]のいずれか1項に記載の方法により治療する工程
を含む、乳癌について被験体を治療する方法。
[94]前記変異が、非変異ESR1と比較して、変異したESR1に対するエストラジオール親和性の低減を生じる、[93]記載の方法。
[95]前記変異が、ESR1経路を介して、リガンド依存的に、またはリガンドに独立してシグナル伝達する、[93]または[94]記載の方法。
[96]前記変異が、非変異ESR1の配列から少なくとも10個の連続したアミノ酸および別のヒトタンパク質から少なくとも10個の連続したアミノ酸を含む融合タンパク質を生じる、[93]~[96]いずれか記載の方法。
[97]前記変異が、ESR1の正常(非変異)リガンド結合ドメインアミノ酸配列から10個以上の連続したアミノ酸を欠損するESR1を生じる、[93]~[96]いずれか記載の方法。
[98]前記変異が、ESR1-AKAP12、ESR1-CCDC170、ESR1-YAP1、ESR1-POLH、ESR1-PCDH11Xおよびそれらの組合せからなる群より選択される融合である、[93]記載の方法。
[99]前記被験体がZBTB16のmRNAまたはタンパク質の発現のベースラインレベルについて最初に試験され、次いで治療期間後にZBTB16のmRNAまたはタンパク質の発現のレベルについて再度試験され、該レベルがベースラインよりも増加した場合に、被験体が治療を継続することが推奨される、[1]~[35]、[37]~[57]、[59]~[98]のいずれか1項記載の方法。
[100]前記治療期間が少なくとも3日のARアゴニストの毎日投与である、[99]記載の方法。
[101]前記期間が少なくとも1週間のARアゴニストの毎日投与である、[100]記載の方法。
[102]治療前のレベルに対する治療後のレベルの比が>3である、[99]~[101]いずれか記載の方法。
[103]該比が>10である、[102]記載の方法。
[104]該比が>50である、[103]記載の方法。
【0055】
本明細書に開示される方法の実施例は例示目的のためであるので、本発明は例示される態様には限定されない。
【実施例】
【0056】
実施例
実施例1:CDK阻害剤と組み合わせたSARM RAD140はPDxマウスにおいてERおよびAR陽性乳癌の増殖を阻害した(
図1)
材料および方法:
開発業務受託機構(Contract Research Organization)(CRO)により維持されたPDxモデル#1は、IHCおよび遺伝子チップマイクロアレイを使用してAR+/ER+/PR+/Her2-と特徴付けた。ドナー腫瘍切片をインタクトな雌ヌードマウス(n=7)の脇腹の皮下に埋め込んだ。60~256mm
3のサイズの腫瘍を有する動物を4つの処理群に無作為化した。それぞれの群の動物は、ビヒクル(円、
図1)、RAD140 100mg/kgを1日に2回(bid)(三角形、
図1)、パルボシクリブ 75mg/kgを1日に1回(qd)(正方形、
図1)またはRAD140 100mg/kg (bid)とパルボシクリブ75mg/kg (qd)の組合せ(ひし形、
図1)のそれぞれを与えられた。全ての試験化合物は42日間連続して経口投与された。1週間に2回腫瘍体積を測定し、%腫瘍増殖阻害(TGI)を計算した。2,000mm
3を越えるサイズの腫瘍を有する動物は動物愛護規則(animal welfare regulation)に従って安楽死させた。試験の終わりに、薬物動態学および薬力学の分析のために血漿および腫瘍試料を回収した。腫瘍の増殖を刺激するために、マウスに、水に添加したエストラジオールを追加した。
【0057】
結果:
RAD140またはパルボシクリブの単独での処理により、それぞれ約53% TGI(腫瘍増殖阻害)を有する腫瘍増殖の阻害がもたらされた(
図1)。SARMとCDK4/6阻害剤の組合せ投与は、28日目に70%のTGIを生じ、この時点では、ビヒクル処理群の動物の数は、より大きな腫瘍を有するマウスの倫理学的な処理のために6匹未満になった。RAD140とパルボシクリブの組合せは、試験の終了(42日目)まで有力な腫瘍抑制効果を発揮し続けた。推定終点TGIは70%より高かった。認められる程度のRAD140処理関連重量減少は観察されなかった(データは示さず)。
【0058】
要約すると、SARM単独による処理は、AR+/ER+/PR+/Her2-乳癌PDx-保有マウスにおいて、パルボシクリブによる処理と同等の腫瘍阻害を示した。RAD140とパルボシクリブの組合せ投与は、これらの異種移植片において、単独で作用したRAD140およびパルボシクリブのそれぞれよりも高い増殖阻害効果を生じた。これらの結果は、CDK4/6阻害剤ありまたはなしでのSARMの組合せ投与は、ER+/AR+乳癌において有効であり、CDK4/6との組合せはSARMおよびCKD4/6阻害剤をそれぞれ単独で投与した場合にSARMおよびCKD4/6阻害剤がなし得たよりもTGIを高めたことを示す。
【0059】
実施例2: CDK阻害剤またはmTOR阻害剤と組み合わせたSARM RAD140の投与はCDxマウスにおいてERおよびAR陽性乳癌増殖を阻害した(
図2)
材料および方法:
ZR-75-1は、ER+/AR+である頻繁に使用される乳癌細胞株モデルである。ZR-75-1細胞(ドナー腫瘍)を雌ヌードマウスの脇腹に注射して、親ZR-75-1 CDxモデル(ZR75モデル)を確立した。これらのドナー腫瘍のER+/AR+状態を、イムノブロッティング(IB)およびIHCを使用して確認した。ドナー腫瘍切片をインタクトな雌ヌードマウス(n=7)の脇腹の皮下に埋め込んだ。確立した異種移植片腫瘍の無作為化後、それぞれの群の動物には、ビヒクル(ひし形、
図2)、RAD140 100mg/kg (bid)(正方形、
図2)、パルボシクリブ45mg/kg (qd)(三角形、
図2)、RAD140 100mg/kg (bid)とパルボシクリブ45mg/kg (qd)の組合せ(星形、
図2)、エベロリムス2.5mg/kg (qd) (「X」、
図2)またはRAD140 100mg/kg (bid)とエベロリムス2.5mg/kg (qd)の組合せ(円、
図2)のそれぞれを与えた。全ての試験化合物は28日間連続して経口投与した。動物におけるZR75-1異種移植片腫瘍はエストラジオールペレットで支持された(0.18mg 90日放出、Innovative Research America)。腫瘍体積を1週間に2回測定して%TGIを計算した。2,000mm
3を越えるサイズの腫瘍を有する動物は動物愛護規則に従って安楽死させた。試験の終わりに、薬物動態学および薬力学の分析のために血漿および腫瘍試料を回収した。
【0060】
結果:
RAD140、パルボシクリブまたはエベロリムス単独での処理により、それぞれ52%、84%または75%のTGIを有する腫瘍増殖の阻害がもたらされた(
図2)。RAD140と、パルボシクリブまたはエベロリムスとの組合せは試験の終了(28日目)まで有力な腫瘍抑制効果を示した。RAD140-パルボシクリブ組合せおよびRAD140-エベロリムス組合せについての終点TGIは、それぞれ96%および101%であった。認められる程度のRAD140処理関連体重減少は観察されなかった(データは示さず)。
【0061】
要約すると、RAD140単独での処理は、ER+/AR+乳癌CDxマウスにおいて抗腫瘍活性を示した。RAD140とパルボシクリブまたはエベロリムスのいずれかとの組み合わせた投与は、これらの異種移植片において、RAD140、パルボシクリブまたはエベロリムス単独のそれぞれよりも高められた増殖阻害効果を生じた。これらの結果は、SARM RAD140単独またはCDK4/6阻害剤もしくはmTORのいずれかと組み合わせた組合せ投与はER+/AR+乳房腫瘍において有効であることを示す。
【0062】
実施例3:SARMは、PDxモデルにおいてERおよびAR乳癌増殖を低減し、フルベストラントよりも有効であった(
図3)
材料および方法:
CROにより維持されたPDxモデル#2は、IHCおよび遺伝子チップマイクロアレイを使用してAR+/ER+と特徴付けられた。ドナー腫瘍切片を、インタクトな雌ヌードマウス(n=10)の脇腹の皮下に埋め込んだ。確立された異種移植片の無作為化後、それぞれの群の動物には、ビヒクル(ひし形、
図3)、RAD140 100mg/kg毎日(qd)(正方形、
図3)、フルベストラント1mg毎週(qw)(円、
図3)またはRAD140 100mg/kg (qd)とフルベストラント1mg (qw)の組合せ(星形、
図3)のそれぞれが与えられた。RAD140は42日間連続して経口投与され、フルベストラントは1週間おきに6週間間皮下投与された。1週間に2回腫瘍体積を測定して%TGIを計算した。2,000mm
3を越えるサイズの腫瘍を有する動物は動物愛護規則に従って安楽死させた。腫瘍の増殖を刺激するために、PDxモデルに、水に添加したエストラジオールを追加した。試験の終了時に、薬物動態学および薬力学の分析のために血漿および腫瘍試料を回収した。
【0063】
結果:
RAD140単独での処理により、約76% TGIを有する腫瘍増殖の阻害がもたらされた(
図3)。フルベストラント単独により59% TGIがもたらされた。RAD140とフルベストラントとの組み合わされた投与は、RAD140単独により観察されるものと同様の76%のTGIを生じた。認められる程度のSARM処理関連重量減少は観察されなかった(データは示さず)。
【0064】
要約すると、SARM単独はSERD(例えばフルベストラント、ER+乳癌のための治療標準薬物)よりも効果的な抗腫瘍活性を示した。SARMとフルベストラントとの組み合わされた投与は、ER+/AR+乳癌PDxマウスにおいて、RAD140が単独で示したものを超える有効性の向上を示さなかった。
【0065】
実施例4:RAD140はPDxモデルにおいてERおよびAR陽性乳癌増殖を低減した(
図4)
材料および方法:
CROにより維持されたPDxモデル#3は、IHCおよび遺伝子チップマイクロアレイを使用してAR+/ER+と特徴付けられた。ドナー腫瘍切片をインタクトな雌ヌードマウス(n=10)の脇腹の皮下に埋め込んだ。確立された異種移植片の無作為化後、それぞれの群の動物には、ビヒクル(ひし形、
図4)またはRAD140 100mg/kg (bid)(三角形、
図4)が45日間与えられた。腫瘍の増殖を刺激するために、PDxマウスに、水に添加したエストラジオールを追加した。
【0066】
結果:
RAD140での処理により49% TGIを有する腫瘍増殖の阻害がもたらされた(
図4)。認められる程度のRAD140処理関連重量減少は観察されなかった(データは示さず)。
【0067】
要約すると、これらの結果は、SARMがER+/AR+乳腺腫瘍の増殖を阻害することを示す。
【0068】
実施例5:RAD140はER+/AR+乳癌細胞および患者由来異種移植片(PDx)においてAR標的遺伝子ZBTB16発現を誘導する(
図5)
材料および方法:
PDXモデル#2を実施例3に記載されるように処理して、最後の投与の6時間後に回収した腫瘍試料を凍結した。ERおよびARについて陽性であるT47D乳癌細胞を、5%チャコール-デキストラン除去(stripped)血清(CSS)を追加した培地中でインキュベートして48時間後にビヒクル(DMSO)、1nM、10nM、100nM、1,000nMのRAD140または1nMもしくは10nMのDHTで処理した。処理の24時間後に細胞を回収した。上述のPDX #2およびT47D細胞由来の凍結腫瘍試料からQiagen RNeasyキットを用いてRNAを抽出した。AR標的遺伝子ZBTB16(PLZFタンパク質をコード)およびGAPDH(内部対照)についてのプライマー/プローブセット(Applied Biosystems/ThermoScientific)を使用してリアルタイム定量的PCR(qPCR)を行った。
【0069】
結果:
インビトロにおけるRAD140でのT47D細胞の処理によりZBTB16 mRNA発現の用量依存的な増加がもたらされ(
図5A)、1,000nMの処理により、ビヒクル処理細胞と比較して約130倍の増加がもたらされた。天然アンドロゲンDHTもこの遺伝子の300~500倍の誘導をもたらした。これはさらに、RAD140が有効なARアゴニストであることを支持する。一貫して、RAD140 100mg/kg (mpk) qdで45日間処理したPDX #2において、ビヒクル処理腫瘍の誘導と比較して、ZBTB16遺伝子の約25倍の誘導も見られた(
図5B)。対照的に、フルベストラント、SERDおよびER経路のアンタゴニストは、ZBTB16遺伝子発現において認められるほどの増加はもたらさなかった(
図5B)。ZBTB16/PLZFは、アンドロゲン欠乏治療(ADT、別名精巣除去)後の再発腫瘍において抑制される癌抑制因子として、前立腺癌に関与した。これらの結果は、SARM RAD140が乳癌細胞においてAR標的遺伝子の転写を活性化したことを示唆する。より重要なことに、RAD140は、限定されないがZBTB16/PLZFを含む特定の腫瘍サプレッサー遺伝子を誘導することにより乳癌増殖を抑制した。
【0070】
実施例6:RAD140はパルボシクリブありおよびなしでWHIM18 PDxモデルにおいて有効であった
WHIM18 PDxモデルは、胸腺除去雌ヌードマウスに移植された、患者由来の乳癌腫瘍の異種移植片である。WHIM18異種移植片はER+/PR+/AR+/HER-であり、外因性のエストロゲン(例えば17β-エストラジオール)とは独立して増殖した。WHIM18 PDxモデルは、有力なER抑制剤フルベストラントに対して高度に抵抗性であった。WHIM18 PDxモデルはPIK3CAにおいてESR1-YAP1融合およびE545K変異を有した。
【0071】
WHIM18 PDxモデルにおけるRAD140またはフルベストラント単独およびパルボシクリブと組み合わせたものの有効性を56日(8週)の処理の間に評価した。主要評価項目は腫瘍増殖であった。EDTA血漿および腫瘍組織を最後の投与後に回収した。
【0072】
材料および方法
雌異種交配胸腺除去ヌードマウス(The Jackson Laboratory 007850) (DOB 7-19-16)に、1.5x106 WHIM18細胞、継代9の単一細胞懸濁物を埋め込んだ。該細胞を、総体積100μl/マウス中、DMEM:Matrigel (Corning REF 354234)と1:1で混合した。腫瘍が約100~300mm3(実際の平均=179.9)の平均体積に達したところで60匹のマウスを腫瘍体積により、細胞の埋め込みの62日後にBiopticon's TumorManagerTMソフトウェアを用いて6処理群の1つ(10マウス/群)に無作為化した。
【0073】
それぞれのマウスに表1に記載される投与計画により56日間投与して、ビヒクル0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC, Sigma C4888)、RAD140またはパルボシクリブを1日に1回経口栄養法により投与し、フルベストラントを7日毎に1回皮下注射により投与した。用量体積は表1に示されるそれぞれの群についての週間平均動物重量に基づいて計算した。2.5gを400mlの滅菌温水に溶解して、溶解するまで撹拌しながら加熱して0.5% CMCを調製し、滅菌水で500mlまでのqsを4℃で保存した。
【表1】
【0074】
この実施例における投与のためのRAD140組成物は、適量の0.5% CMCを遮光しながら4℃で連続撹拌してRAD140に添加することにより調製した。RAD140組成物は毎週調製した。
【0075】
この実施例における投与のためのパルボシクリブ組成物は、適量の滅菌食塩水(0.9%塩化ナトリウム、注射用NDC 0409-7983-03)を撹拌しながらパルボシクリブに添加して調製した。パルボシクリブ組成物は、パルボシクリブが溶解するまで4℃で連続撹拌した。パルボシクリブ組成物は毎週調製した。
【0076】
Biopticon's TumorImagerTMを使用して1週間に2回腫瘍体積を測定し、対応するTumorManagerTMソフトウェアを使用して体積を計算した。試験の前半(27日)に1週間に1回マウスを計量した。一旦重量減少を示したマウスは、1週間に2回計量した。さらに、0日目と比較して≧5%の体重減少(BWL)を有するかまたは有意な臨床徴候(例えば背中を曲げた姿勢、汚らしい見た目)を示した任意のマウスは毎日計量した。0日目と比較して≧15%のBWLを有した任意のマウスについて投与を中止し、マウスの体重がBWL≦15%まで戻った場合に投与を再開した。
【0077】
マウスが瀕死になった場合、マウスの腫瘍体積が2,000mm3を越えた場合または0日目と比較してマウスの体重が≧20%減少した場合にはマウスを試験から取り除いた。可能な場合は、試験試料を採取し、最後の投与の時間および屠殺(take down)時間を記録した。
【0078】
56日目の最後の投与の6時間後に残りの動物を屠殺した(taken down)。フルベストラントの最後の投与は屠殺の朝に行った。実際の屠殺は6~9時間の間であった。CO2での死亡の直後に心臓穿刺により採血し、血液をEDTAチューブに入れて2000g、4℃で10分間スピンダウンした。血漿をエッペンドルフチューブに移して-80℃で保存した。
【0079】
採血後に腫瘍を切除して計量した。それぞれの腫瘍について、腫瘍の半分を10%中性緩衝化ホルマリン(NBF)に入れ、腫瘍のもう半分をエッペンドルフチューブに入れて液体N2中で瞬時に凍結し、-80℃で保存した。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックのために回収した全ての組織を中性緩衝化ホルマリン(NBF)中で24~48時間固定し、次いで70%エタノールに移して、その後FFPEブロックに処理されるように輸送した。
【0080】
結果:
インビボ実験の結果をグラフにより
図6に示す。腫瘍増殖の相対的減少を以下の表2および3に統計により示す。
【0081】
腫瘍増殖阻害(TGI、%)は、56日目のビヒクル群に対して計算した(表2、式1)。
【数1】
【表2】
【0082】
Δ腫瘍体積56日目-0日目の双方向分布および2つの試料の等分散を使用して、スチューデントt検定をエクセルで計算した。
【表3】
【0083】
100mg/kgの用量で単独またはパルボシクリブと組み合わせたRAD140の投与は、雌胸腺除去ヌードマウス(WHIM18 PDx)に埋め込んだHER2-、ER+、PR+乳癌腫瘍の増殖を阻害した(
図6)。RAD140とパルボシクリブの組合せは、いずれかの薬物単独よりも有効であるように思われる。いずれの群においても明らかな毒性は観察されなかった。
【0084】
実施例7
PDxモデル#2、すなわち実施例/
図3に記載されるものと同じPDxモデルにおいて、低用量1mg/kg bidまたは10mg/kg bidで投与されたRAD140は共に、両方の群で約81%のTGI値で判断されるように、腫瘍増殖の実質的な阻害をもたらした。
【0085】
実施例8
PDxモデル#1、すなわち実施例/
図1に記載されるものと同じPDxモデルにおいて、低用量1mg/kg bid、3mg/kg bidまたは10mg/kg bidで投与されるRAD140は全て、49%、65%および57%のそれぞれのTGI値で判断されるように、腫瘍増殖の実質的な阻害をもたらした。
【0086】
実施例9
RAD140は、ヌードマウス中に移植されたPDx腫瘍異種移植片において良好な活性を有することが示された。活性は、1mg/kg~100mg/kgの範囲で有意であった。マウスにおける特異的曝露レベル、ならびに公知および誘導(derived)薬物動態学パラメーターの両方からの交差種(cross species)薬物動態学的モデリングを考慮すると、女性患者における用量範囲を計算できる。特に、1mg/kg (bid)~100mg/kg (bid)の用量は全て、本明細書の実施例に記載される1つ以上のモデルにおいて良好な有効性を有することが示された。種間の半減期およびミクロソーム安定性に基づいて、RAD140は5mg~500mgの用量範囲での1日1回の経口用量として有効であることが予測される。例えば、10mg/kg (qd)のマウス有効用量は、60kgの女性において約50mg qdの用量に効果的に変換されると考えられる。1mg/kg~100mg/kg (bid)の範囲は有効であることが示されたので、10mg~1000mgのより広い範囲が臨床的に明らかである。特にこの範囲において、10mg~250mg、25mg~250mg、25~500のさらなる範囲も支持されることが見出され得る。同様に、該範囲のいずれかに該当する個々の用量点は良好に支持されるので、該範囲内の具体的な点、整数または非整数が支持される。例えば、12.5mg、17.5mgなどの用量は、10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mgおよび500mgなどの用量と同様に具体的に企図される。さらなる非限定的な例により、10mg、15mg、20mg、25mg、50mg、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500mgの用量。記載される用量のQD投与は、動物における薬物動態学的試験からRAD140は1日に一回の投与に適する長い半減期を有することが予測されるので、非常に適切であると予測されるが、bid投与も作用するが、しかしながら1日1回の投与のための上述の用量は、1日に2回で与えられるので2回に分割される。
【0087】
実施例10:
方法1: 被験体に、式I
【化5】
(式中、
R
x=CN;
R
y=CF
3もしくはCl;
R
z=CH
3、CH
2CH
3もしくはCl;または
R
yおよびR
zは一緒になって:
【化6】
を形成する;
R
a'は、H、F、Cl、CN、OHもしくはOSO
3-であり;ならびに
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素およびメチルからなる群より選択される)
の化合物、その薬学的に許容され得る塩、またはその薬学的に許容され得る溶媒和物を投与する工程を含む、被験体においてAR+/ER+乳癌を治療する方法。
方法2: 式Iの化合物が、化合物II:
【化7】
である、方法1記載の方法。
方法3. 式Iの化合物が、RAD140(化合物III):
【化8】
である、方法1記載の方法。
方法4. 投与が経口経路によるものである、方法1~3いずれか記載の方法。
方法5. 前記被験体が女性である、方法1~4いずれか記載の方法。
方法6. 前記女性が閉経前の女性である、方法5記載の方法。
方法7. 前記女性が閉経後の女性である、方法5記載の方法。
方法8. 該被験体が、アジュバント設定(adjuvant setting)において治療される、方法1~7いずれか記載の方法。
方法9. 該被験体が、1つ以上の内分泌学的薬剤による治療後に疾患の進行を有していた、方法1~7いずれか記載の方法。
方法10. 前記1つ以上の内分泌学的薬剤が、SERM、SERD、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される、方法9記載の方法。
方法11. 前記被験体が、CDK4/6阻害剤、mTOR阻害剤、BCL-2阻害剤、PI3K阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤による治療後に疾患の進行を有していた、方法1~7いずれか記載の方法。
方法12. 前記乳癌が、局所的、進行性または転移性の乳癌である、方法1~11いずれか記載の方法。
方法13. 前記RAD140が、1日当たり10~500mg、10mg~250mgまたは25mg~250mgで投与される、方法3~12いずれか記載の方法。
方法14. 該投与が1日に1回である、方法13記載の方法。
方法15. 該被験体が、1つ以上の変異を含むESR1を発現する、方法1~14いずれか記載の方法。
方法16. 前記変異が、非変異ESR1と比較して、リガンドの結合親和性に影響する、方法15記載の方法。
方法17. 前記変異が、非変異ESR1と比較して、変異したESR1に対するエストラジオール親和性の低減を生じる、方法16記載の方法。
方法18. 前記変異が、ESR1経路を介して、リガンド依存的に、またはリガンドに独立してシグナル伝達する、方法15~17いずれか記載の方法。
方法19. 前記変異が、非変異ESR1の配列から少なくとも10個の連続したアミノ酸および別のヒトタンパク質から少なくとも10個の連続したアミノ酸を含む融合タンパク質を生じる、方法15~18いずれか記載の方法。
方法20. 前記変異が、ESR1の正常(非変異)リガンド結合ドメインアミノ酸配列から10個以上の連続したアミノ酸を欠損するESR1を生じる、方法15~19いずれか記載の方法。
方法21. 前記変異が、ESR1-AKAP12、ESR1-CCDC170、ESR1-YAP1、ESR1-POLH、ESR1-PCDH11Xおよびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の変異を含む、方法15~20いずれか記載の方法。
方法22. 該治療が、CDK4/6阻害剤の投与をさらに含む、方法1~21いずれか記載の方法。
方法23. 前記CDK4/6阻害剤が、CDK4およびCDK6に対して<100nMのIC
50を有する、方法22記載の方法。
方法24. 前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブおよびアベマシクリブからなる群より選択される、方法1~23いずれか記載の方法。
方法25. 前記治療が、mTOR阻害剤の投与をさらに含む、方法1~21いずれか記載の方法。
方法26. 前記mTOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダファロリムスおよびMLN0128からなる群より選択される、方法25記載の方法。
方法27. PI3K阻害剤の投与をさらに含む、方法1~21いずれか記載の方法。
方法28. PI3K阻害剤が、BEZ235、GDC-0980、BKM120、GDC-0941、BYL719、GDC-0032、MK2206、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、AZD5363、AZD2014、MLN0128またはCC-223である、方法27記載の方法。
方法29. PARP阻害剤の投与をさらに含む、方法1~21いずれか記載の方法。
方法30. 前記PARP阻害剤が、タラゾパリブ、ベリパリブ、ニラパリブ、beigene290、E7449、KX01、ABT767、CK102、JPI289、KX02、IMP4297、SC10914、NT125、PJ34、VPI289またはANG-3186である、方法29記載の方法。
方法31. MCL-1阻害剤の投与をさらに含む、方法1~21いずれか記載の方法。
方法32. 前記MCL-1阻害剤が、7-(5-((4-(4-(N,N-ジメチルスルファモイル)ピペラジン-1-イル)フェノキシ)メチル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(2-モルホリノエチル)-3-(3-(ナフタレン-1-イルオキシ)プロピル)-1H-インドール-2-カルボン酸、S63845、オマサタキシン、セリシクリブ、UMI-77、AT101、サブトクラックスまたはTW-37である、方法31記載の方法。
方法33. BCL-2阻害剤の投与をさらに含む、方法1~21いずれか記載の方法。
方法34. 前記BCL-2阻害剤が、ベネトクラックス、ナビトクラックス、ABT737、G3139またはS55746である、方法33記載の方法。
方法35. 前記治療が、非アジュバント設定における第一線の治療である、方法1~7または12~34のいずれか1つ記載の方法。
方法36. 方法1~3いずれか記載のARアゴニストならびにPARP阻害剤、mTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤を含む、キット。
方法37. mTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤と一緒にステロイド性または非ステロイド性のARアゴニストの投与を含む、被験体においてAR+/ER+乳癌を治療する方法。
方法38. 前記ARアゴニストがステロイド性ARアゴニストである、方法37記載の方法。
方法39. 前記ARアゴニストが選択的アンドロゲン受容体調節剤である、方法38記載の方法。
方法40. 前記選択的アンドロゲン受容体調節剤が、2-クロロ-4-[[(1R,2R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-シクロペンチル]アミノ]-3-メチル-ベンゾニトリル、PF-06260414、エノボサルム、BMS-564929、LGD-4033、AC-262356、JNJ-28330835、S-40503、GSK-2881078、AZD-3514、MK4541、LG121071、GLPG0492、NEP28、YK11、MK0773、ACP-105、LY-2452473、S-101479、S-40542、S-42およびLGD-3303からなる群より選択される、方法39記載の方法。
方法41. 該治療がアジュバント設定におけるものである、方法37~40いずれか記載の方法。
方法42. 前記治療が非アジュバント設定における第一線のものである、方法37~40いずれか記載の方法。
方法43. 前記被験体が、以前の内分泌学的治療による治療後に疾患の進行を有していた、方法37~40いずれか記載の方法。
方法44. 前記被験体が、mTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される薬剤による治療後に疾患の進行を有していた、方法37~40または43のいずれか1つ記載の方法。
方法45. 前記被験体が女性である、方法37~44いずれか記載の方法。
方法46. 前記女性が閉経前の女性である、方法45記載の方法。
方法47. 前記女性が閉経後の女性である、方法45記載の方法。
方法48. 前記乳癌が局所的である、方法37~47いずれか記載の方法。
方法49. 前記乳癌が進行性または転移性のものである、方法37~47いずれか記載の方法。
方法50. 前記m-TOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダファロリムスまたはMLN0128である、方法37~49いずれか記載の方法。
方法51. 前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブまたはアベマシクリブである、方法37~50いずれか記載の方法。
方法52. 前記PI3K阻害剤が、BEZ235、GDC-0980、BKM120、GDC-0941、BYL719、GDC-0032、MK2206、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、AZD5363、AZD2014、MLN0128またはCC-223である、方法37~51いずれか記載の方法。
方法53. 前記PARP阻害剤が、タラゾパリブ、ベリパリブ、ニラパリブ、beigene290、E7449、KX01、ABT767、CK102、JPI289、KX02、IMP4297、SC10914、NT125、PJ34、VPI289またはANG-3186である、方法37~52いずれか記載の方法。
方法54. 前記MCL-1阻害剤が、7-(5-((4-(4-(N,N-ジメチルスルファモイル)ピペラジン-1-イル)フェノキシ)メチル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(2-モルホリノエチル)-3-(3-(ナフタレン-1-イルオキシ)プロピル)-1H-インドール-2-カルボン酸、S63845、オマサタキシン、セリシクリブ、UMI-77、AT101、サブトクラックスまたはTW-37である、方法37~53いずれか記載の方法。
方法55. 前記BCL-2阻害剤が、ベネトクラックス、ナビトクラックス、ABT737、G3139またはS55746である、方法37~54いずれか記載の方法。
方法56. 活性剤が一緒に投与される、方法37~55いずれか記載の方法。
方法57. 活性剤が、共製剤化(coformulation)において投与される、方法35~56いずれか記載の方法。
方法58. ARアゴニストまたは選択的アンドロゲン受容体調節剤、ならびにmTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤を含む、乳癌の治療に有用なキット。
方法59. 被験体においてAR+/ER+乳癌を治療する方法であって、前記被験体が1つ以上のESR1変異を有し、前記方法が、ARアゴニストの投与を含む、方法。
方法60. 前記ARアゴニストが非ステロイド性である、方法59記載の方法。
方法61. 前記ARアゴニストが選択的アンドロゲン受容体調節剤である、方法60記載の方法。
方法62. 前記選択的アンドロゲン受容体調節剤が、2-クロロ-4-[[(1R,2R)-2-ヒドロキシ-2-メチル-シクロペンチル]アミノ]-3-メチル-ベンゾニトリル、PF-06260414、エノボサルム、BMS-564929、LGD-4033、AC-262356、JNJ-28330835、S-40503、GSK-2881078、AZD-3514、MK4541、LG121071、GLPG0492、NEP28、YK11、MK0773、ACP-105、LY-2452473、S-101479、S-40542、S-42およびLGD-3303からなる群より選択される、方法61記載の方法。
方法63. 前記変異が、非変異ESR1と比較して、リガンドの結合親和性に影響する、方法58~62いずれか記載の方法。
方法64. 前記変異が、非変異ESR1と比較して、変異したESR1に対するエストラジオール親和性の低減を生じる、方法59~63いずれか記載の方法。
方法65. 前記変異が、ESR1経路を介して、リガンド依存的に、またはリガンドに独立してシグナル伝達する、方法59~64いずれか記載の方法。
方法66. 前記変異が、非変異ESR1の配列から少なくとも10個の連続したアミノ酸および別のヒトタンパク質から少なくとも10個の連続したアミノ酸を含む融合タンパク質を生じる、方法59~65いずれか記載の方法。
方法67. 前記変異が、ESR1の正常(非変異)リガンド結合ドメインアミノ酸配列から10個以上の連続したアミノ酸を欠損するESR1を生じる、方法59~66いずれか記載の方法。
方法68. 前記変異が、ESR1-AKAP12、ESR1-CCDC170、ESR1-YAP1、ESR1-POLH、ESR1-PCDH11Xおよびそれらの組合せからなる群より選択される融合である、方法59~67いずれか記載の方法。
方法69. 該投与が経口経路によるものである、方法59~68いずれか記載の方法。
方法70. 前記治療がアジュバント設定におけるものである、方法59~69いずれか記載の方法。
方法71. 前記治療が非アジュバント設定における第一線のものである、方法59~69いずれか記載の方法。
方法72. 前記被験体が、以前の内分泌学的治療による治療後に疾患の進行を有していた、方法59~69いずれか記載の方法。
方法73. 前記被験体が、mTOR阻害剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、BCL2阻害剤、MCL-1阻害剤およびそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の薬剤による治療後に疾患の進行を有していた、方法59~69または72のいずれか1つ記載の方法。
方法74. 前記被験体が女性である、方法59~73いずれか記載の方法。
方法75. 前記女性が閉経前の女性である、方法74記載の方法。
方法76. 前記女性が閉経後の女性である、方法74記載の方法。
方法77. 前記乳癌が局所的である、方法59~76いずれか記載の方法。
方法78. 前記乳癌が進行性または転移性である、方法59~76いずれか記載の方法。
方法79. 該治療が、CDK4/6阻害剤の投与をさらに含む、方法59~78いずれか記載の方法。
方法80. 前記CDK4/6阻害剤が、CDK4およびCDK6に対して、<100nMのIC
50を有する、方法79記載の方法。
方法81. 前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブおよびアベマシクリブからなる群より選択される、方法79記載の方法。
方法82. 前記治療が、mTOR阻害剤の投与をさらに含む、方法59~78いずれか記載の方法。
方法83. 前記mTOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダファロリムスおよびMLN0128からなる群より選択される、方法82記載の方法。
方法84. PI3K阻害剤の投与をさらに含む、方法59~78いずれか記載の方法。
方法85. 前記PI3K阻害剤が、BEZ235、GDC-0980、BKM120、GDC-0941、BYL719、GDC-0032、MK2206、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、AZD5363、AZD2014、MLN0128またはCC-223である、方法84記載の方法。
方法86. PARP阻害剤の投与をさらに含む、方法59~78いずれか記載の方法。
方法87. 前記PARP阻害剤が、タラゾパリブ、ベリパリブ、ニラパリブ、beigene290、E7449、KX01、ABT767、CK102、JPI289、KX02、IMP4297、SC10914、NT125、PJ34、VPI289またはANG-3186である、方法86記載の方法。
方法88. MCL-1阻害剤の投与をさらに含む、方法59~78いずれか記載の方法。
方法89. 前記MCL-1阻害剤が、7-(5-((4-(4-(N,N-ジメチルスルファモイル)ピペラジン-1-イル)フェノキシ)メチル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(2-モルホリノエチル)-3-(3-(ナフタレン-1-イルオキシ)プロピル)-1H-インドール-2-カルボン酸、S63845、オマサタキシン、セリシクリブ、UMI-77、AT101、サブトクラックスまたはTW-37である、方法88記載の方法。
方法90. BCL-2阻害剤の投与をさらに含む、方法59~78いずれか記載の方法。
方法91. 前記BCL-2阻害剤が、ベネトクラックス、ナビトクラックス、ABT737、G3139またはS55746である、方法90記載の方法。
方法92. 前記治療が非アジュバント設定における第一線の治療である、方法59~91いずれか記載の方法。
方法93. 1) 1つ以上のESR1変異について被験体を試験する工程;および
2) 被験体が1つ以上のESR1変異について陽性の試験結果を示す場合に、該被験体を、方法1~35、37~57、59~92のいずれか1つに記載の方法により治療する工程
を含む、乳癌について被験体を治療する方法。
方法94. 前記変異が、非変異ESR1と比較して、変異したESR1に対するエストラジオール親和性の低減を生じる、方法93記載の方法。
方法95. 前記変異が、ESR1経路を介して、リガンド依存的に、またはリガンドに独立してシグナル伝達する、方法93または94記載の方法。
方法96. 前記変異が、非変異ESR1の配列から少なくとも10個の連続したアミノ酸および別のヒトタンパク質から少なくとも10個の連続したアミノ酸を含む融合タンパク質を生じる、方法93~95いずれか記載の方法。
方法97. 前記変異が、ESR1の正常(非変異)リガンド結合ドメインアミノ酸配列から10個以上の連続したアミノ酸を欠損するESR1を生じる、方法93~95いずれか記載の方法。
方法98. 前記変異が、ESR1-AKAP12、ESR1-CCDC170、ESR1-YAP1、ESR1-POLH、ESR1-PCDH11Xおよびそれらの組合せからなる群より選択される融合である、方法93記載の方法。
方法99. 前記被験体がZBTB16のmRNAまたはタンパク質の発現のベースラインレベルについて最初に試験され、次いで治療期間後にZBTB16のmRNAまたはタンパク質の発現のレベルについて再度試験され、該レベルがベースラインよりも増加した場合に、被験体が治療を継続することが推奨される、方法1~35、37~57、59~98のいずれか1つ記載の方法。
方法100. 前記治療期間が少なくとも3日のARアゴニストの毎日投与である、方法99記載の方法。
方法101. 前記期間が少なくとも1週間のARアゴニストの毎日投与である、方法100記載の方法。
方法102. 治療前のレベルに対する治療後のレベルの比が>3である、方法99~101いずれか記載の方法。
方法103. 該比が>10である、方法102記載の方法。
方法104. 該比が>50である、方法103記載の方法。