(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230207BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20230207BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20230207BHJP
【FI】
B62D6/00 ZYW
B62D101:00
B62D119:00
(21)【出願番号】P 2019041790
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100113011
【氏名又は名称】大西 秀和
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佳夫
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/037019(WO,A1)
【文献】特開2015-058753(JP,A)
【文献】特開2014-031100(JP,A)
【文献】特開2011-245918(JP,A)
【文献】特開2004-148952(JP,A)
【文献】特開2009-051491(JP,A)
【文献】特開2003-175835(JP,A)
【文献】特開2005-297807(JP,A)
【文献】特開2001-138936(JP,A)
【文献】特開平10-258748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 101/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアバイワイヤシステムを備える車両制御システムであって、
前記ステアバイワイヤシステムは、
車両の車輪を転舵する転舵装置と、
前記転舵装置から機械的に分離され、ステアリングホイールに操舵反力を付与する反力装置と、
前記ステアリングホイールの操作に応じて前記反力装置の駆動を制御することによって前記操舵反力を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記車輪に作用する路面からの反力に起因する成分を含む信号を取得し、
前記反力に起因する成分を含む信号から所定周波数以上の信号を抽出し、
抽出された前記所定周波数以上の信号に基づいて、
前記反力装置が前記転舵装置から機械的に分離されることで遮断される前記路面からの反力に起因する振動を前記ステアリングホイールに伝達するための前記反力装置の制御量を演算
し、
前記所定周波数以上の信号は、第1周波数帯に属する第1信号と、前記第1周波数帯を除いた残りの周波数帯に相当する第2周波数帯に属する第2信号と、を含み、
前記第1信号は、前記路面からの反力に起因する振動のうち、前記ステアリングホイールに伝達する必要のない振動に起因する信号を含み、
前記制御装置は、更に、
所定条件が成立するか否かを判定し、
前記所定条件の成立時、前記制御量の演算処理において、前記第1信号を弱化させる処理を行う
ことを特徴とす
る車両制御システム。
【請求項2】
前記所定条件が、前記車両が制動状態にあることであり、
前記第1周波数帯が、前記車両の制動時に発生する振動の周波数帯である
ことを特徴とする請求項
1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記所定条件が、前記車両が所定の速度域で走行していることであり、
前記第1周波数帯が、フラッタにより発生する振動の周波数帯である
ことを特徴とする請求項
1に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記車両は、第1または第2走行モードで走行するように構成され、
前記制御装置は、更に、前記第1走行モードでの走行中は、前記第2走行モードでの走行中に比べて前記ステアリングホイールの振動が大きくなるように前記制御量を演算する
ことを特徴とする請求項1乃至
3何れか1項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記所定周波数以上の信号が、前記路面の凹凸に起因する信号を含む
ことを特徴とする請求項1乃至
4何れか1項に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアバイワイヤ(Steer-By-Wire)方式の操舵システムを備える車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000-108914号公報は、転舵装置とステアリングホイールとが機械的に分離された、いわゆるステアバイワイヤシステム(以下、「SBWシステム」とも称す。)を開示する。この従来のSBWシステムは、転舵モータと、反力モータと、制御装置と、を備えている。転舵モータは、車輪を転舵する。反力モータは、ステアリングホイールに操舵反力を付与する。制御装置は、これらのモータの制御量を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-108914号公報
【文献】特開2018-184129号公報
【文献】特開2018-094966号公報
【文献】特開2017-149359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行中は、車輪に作用する路面からの反力(以下、「路面反力」とも称す。)に起因して車輪が振動する。車輪とステアリングホイールとが機械的に接続されるシステムでは、この振動がステアリングホイールに伝わる。一方、SBWシステムでは、このような振動を基本的には遮断する。そのため、車両のドライバは、路面反力に対する適度な操舵感(手応え感)を得ることが難しい。このことは、操舵性の低下を招く要因の一つである。
【0005】
路面反力に含まれる振動成分を加味して反力モータの制御量を演算すれば、ドライバに適度な操舵感を与えることが可能となる。しかしながら、路面反力に含まれるあらゆる振動成分を加味すると、伝達する必要のない振動までステアリングホイールに伝達されてしまう。したがって、操舵性が低下し、または、ドライバが不安を感じるおそれがある。
【0006】
本開示の1つの目的は、SBWシステムが適用される車両において、路面反力に対する適度な操舵感をドライバに与えることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点は、車両制御システムである。
前記車両制御システムは、ステアバイワイヤシステムを備える。
前記ステアバイワイヤシステムは、転舵装置と、反力装置と、制御装置と、を備える。
前記転舵装置は、車両の車輪を転舵する。
前記反力装置は、前記転舵装置から機械的に分離される。前記反力装置は、ステアリングホイールに操舵反力を付与する。
前記制御装置は、前記ステアリングホイールの操作に応じて前記反力装置の駆動を制御することによって前記操舵反力を制御するように構成されている。
前記制御装置は、
前記車輪に作用する路面からの反力に起因する成分を含む信号を取得し、
前記反力に起因する成分を含む信号から所定周波数以上の信号を抽出し、
抽出された前記所定周波数以上の信号に基づいて、前記反力装置が前記転舵装置から機械的に分離されることで遮断される前記路面からの反力に起因する振動を前記ステアリングホイールに伝達するための前記反力装置の制御量を演算する
ように構成されている。
前記所定周波数以上の信号は、第1信号と、第2信号とを含む。
前記第1信号は、第1周波数帯に属する。
前記第2信号は、前記第1周波数帯を除いた残りの周波数帯に相当する第2周波数帯に属する。
前記第1信号は、前記路面からの反力に起因する振動のうち、前記ステアリングホイールに伝達する必要のない振動に起因する信号を含む。
前記制御装置は、更に、
所定条件が成立するか否かを判定し、
前記所定条件の成立時、前記制御量の演算処理において、前記第1信号を弱化させる処理を行う
ように構成されている。
【0009】
本開示の第2の観点は、第1の観点において、更に次の特徴を有する。
前記所定条件は、前記車両が制動状態にあることである。
前記第1周波数帯は、前記車両の制動時に発生する振動の周波数帯である。
【0010】
本開示の第3の観点は、第1の観点において、更に次の特徴を有する。
前記所定条件は、前記車両が所定の速度域で走行していることである。
前記第1周波数帯は、フラッタにより発生する振動の周波数帯である。
【0011】
本開示の第4の観点は、第1乃至3の観点の何れか1つにおいて、更に次の特徴を有する。
前記車両は、第1または第2走行モードで走行するように構成されている。
前記制御装置は、更に、前記第1走行モードでの走行中は、前記第2走行モードでの走行中に比べて前記ステアリングホイールの振動が大きくなるように前記制御量を演算するように構成されている。
【0012】
本開示の第5の観点は、第1乃至4の観点の何れか1つにおいて、更に次の特徴を有する。
前記所定周波数以上の信号が、前記路面の凹凸に起因する信号を含む。
【発明の効果】
【0013】
第1の観点によれば、路面反力に起因する成分を含む信号から所定周波数以上の信号が抽出される。そのため、所定周波数の適切な設定により、反力装置が転舵装置から機械的に分離されることで遮断される路面反力に起因する振動から、ステアリングホイールに伝達する必要のない振動に起因する信号を除き、または、ステリングホイールに伝達すべき振動に起因する信号を残すことが可能となる。そして、抽出された所定周波数以上の信号に基づいて反力装置の制御量が演算されれば、路面反力に対する適度な操舵感をドライバに与えることが可能となる。
【0014】
第1の観点によれば、また、所定条件の成立時、制御量の演算処理において第1信号を弱化させる処理が行われる。第1信号は第1周波数帯に属し、路面反力に起因する振動のうちステアリングホイールに伝達する必要のない振動に起因する信号を含むことから、第1周波数帯の適切な設定により、所定周波数以上の信号に対する第1信号の寄与の程度を下げることが可能となる。したがって、伝達する必要のない振動がステアリングホイールに伝達されるのを抑えることができる。
【0015】
第2の観点によれば、車両の制動時に発生する振動がステアリングホイールに伝達されるのを抑えることができる。
【0016】
第3の観点によれば、フラッタにより発生する振動がステアリングホイールに伝達されるのを抑えることができる。
【0017】
第4の観点によれば、第1走行モードでの走行中は、第2走行モードでの走行中に比べてステアリングホイールの振動が大きくなるように反力装置の制御量が演算される。そのため、第1および第2走行モードの適切な設定により、第1走行モードでの走行中は伝達すべき振動をステリングホイールに伝え易くし、第2走行モードでの走行中は当該振動をステアリングホイールに伝え難くすることが可能となる。
【0018】
第5の観点によれば、路面の凹凸により発生する振動をステリングホイールに伝達して路面反力に対する適度な操舵感をドライバに与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】SBWシステムの構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1において、目標反力電流の演算処理を行うための制御装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【
図3】BPF処理の有無による転舵電流の検出信号の違いを説明する図である。
【
図4】凹凸路面判定処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】実施の形態1において、目標反力電流の演算処理を行うための制御装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態2において、目標反力電流の演算処理を行うための制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態3において、目標反力電流の演算処理を行うための制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態4において、目標反力電流の演算処理を行うための制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0021】
1.実施の形態1
先ず、
図1乃至5を参照しながら実施の形態1について説明する。
【0022】
1.1 SBWシステム
実施の形態1に係る車両制御システムは、車両に搭載される。車両制御システムは、操舵システムとしてのSBWシステムを備えている。
図1は、SBWシステムの構成例を概略的に示すブロック図である。
図1に示すSBWシステム100は、ステアリングホイール10と、ステアリングシャフト20と、反力装置30と、転舵装置40と、制御装置50と、センサ群61~69と、を備えている。
【0023】
ステアリングホイール10は、車両のドライバが操舵に用いる操作部材である。ステアリングシャフト20は、ステアリングホイール10に連結されており、ステアリングホイール10とともに回転する。
【0024】
反力装置30は、ステアリングホイール10に操舵反力を付与する。操舵反力とは、ドライバによるステアリングホイール10の操作方向と反対方向に作用する力(トルク)である。反力装置30は、反力モータ31(反力アクチュエータ)と、減速機構32とを備えている。
【0025】
反力モータ31は、操舵反力の発生源である。反力モータ31としては、三相(U,V,W)のブラシレスモータが例示される。反力モータ31のロータは、減速機構32を介してステアリングシャフト20に連結されている。反力モータ31のトルクは、操舵反力として、ステアリングシャフト12ひいてはステアリングホイール10に付与される。反力装置30の駆動は、制御装置50によって制御される。
【0026】
転舵装置40は、左右の車輪70を転舵させるための動力(転舵力)を生成する。転舵装置40は、転舵モータ(転舵アクチュエータ)41と、減速機構42と、ラックバー43と、タイロッド44とを備えている。
【0027】
転舵モータ41は、転舵力の発生源である。転舵モータ41としては、三相(U,V,W)のブラシレスモータが例示される。転舵モータ41のロータは、減速機構42を介してラックバー43に連結されている。ラックバー43は、タイロッド44を介して車輪70に連結されている。転舵モータ41のトルクは、転舵力としてラックバー43に付与される。転舵モータ41が回転すると、その回転運動はラックバー43の直線運動に変換され、それにより車輪70が転舵される。転舵モータ41の駆動は、制御装置50によって制御される。
【0028】
尚、反力装置30と転舵装置40とは、機械的に分離されている。
【0029】
操舵角センサ61は、ステアリングシャフト20に設けられている。操舵角センサ61は、ステアリングホイール10の操舵角δを検出する。操舵角センサ61は、操舵角δの検出信号を制御装置50に送る。
【0030】
トルクセンサ62は、ステアリングシャフト20における減速機構32よりもステアリングホイール10側の部分に設けられている。トルクセンサ62は、ステアリングシャフト20に印加される操舵トルクTを検出する。トルクセンサ62は、操舵トルクTの検出信号を制御装置50に送る。
【0031】
回転角センサ63は、反力モータ31に設けられている。回転角センサ63は、反力モータ31の回転角θsを検出する。回転角センサ63は、回転角θsの検出信号を制御装置50に送る。
【0032】
電流センサ64は、反力モータ31に設けられている。電流センサ64は、反力モータ31に流れる電流(以下、「反力電流」とも称す。)Imsを検出する。電流センサ64は、反力電流Imsの検出信号を制御装置50に送る。
【0033】
回転角センサ65は、転舵モータ41に設けられている。回転角センサ65は、転舵モータ41の回転角θwを検出する。回転角センサ65は、回転角θwの検出信号を制御装置50に送る。
【0034】
電流センサ66は、転舵モータ41に設けられている。電流センサ66は、転舵モータ41に流れる電流(以下、「転舵電流」とも称す。)Imwを検出する。電流センサ66は、転舵電流Imwの検出信号SImwを制御装置50に送る。
【0035】
車速センサ67は、車両の速度である車速Vを検出する。車速センサ67は、車速Vの検出信号SVを制御装置50に送る。尚、車速センサ67の代わりに車輪速センサを用い、車輪70の回転速度の検出信号に基づいて車速Vが演算されてもよい。
【0036】
ヨーレートセンサ68は、車両のヨーレートγを検出する。ヨーレートセンサ68は、ヨーレートγの検出信号を制御装置50に送る。
【0037】
横加速度センサ69は、車両に作用する横加速度Gyを検出する。横加速度センサ69は、横加速度Gyの検出信号を制御装置50に送る。
【0038】
制御装置50は、SBWシステム100を制御する。この制御装置50は、プロセッサと、メモリと、入出力インタフェースと、を含むマイクロコンピュータを備えている。当該マイクロコンピュータは、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる。
【0039】
制御装置50は、ステアリングホイール10の操作に応じて転舵モータ41の駆動を制御する転舵制御を行う。転舵制御は、例えば次のように行われる。まず、実際の操舵角δまたは回転角θsに基づいて、目標転舵角θw*が演算される。実際の操舵角δは、操舵角δの検出信号に基づいて演算される。実際の回転角θsは、回転角θsの検出信号に基づいて演算される。目標転舵角θw*とは、回転角θwの目標値である。
【0040】
続いて、実際の回転角θwと、目標転舵角θw*との差に基づいて、目標転舵電流Imw*が演算される。目標転舵電流Imw*は、転舵モータ41に対する電流指令値である。そして、実際の転舵電流Imwがこの目標転舵電流Imw*と一致するように、転舵電流Imwが制御される。
【0041】
制御装置50は、また、ステアリングホイール10の操作に応じて反力モータ31の駆動を制御する反力制御を行う。反力制御は、例えば次のように行われる。まず、信号SImwに基づいて、目標反力電流Ims*が演算される。目標反力電流Ims*は、反力モータ31に対する電流指令値である。そして、この目標反力電流Ims*に基づいて、反力電流Imsが制御される。以下、目標反力電流Ims*の演算処理について説明する。
【0042】
1.2 目標反力電流の演算処理
まず、信号SImwに基づいて目標反力電流Ims*が演算される理由について説明する。車輪70に作用する路面反力は、車輪70を振動させる。車輪70が振動すれば、転舵装置40も振動する。ただし、転舵装置40が反力装置30と機械的に分離されるSBWシステム100によれば、この振動を遮断することが可能となる。仮に、実際の車速Vおよび操舵角δに基づいて目標反力電流Ims*を演算すれば、路面反力に起因する振動をドライバに意図的に伝えないことが可能となる。
【0043】
ただし、ドライバに操舵感を与えるという観点からすると、路面反力に起因する振動の全てを遮断するのは必ずしも望ましくない。この点、上述した転舵制御では、転舵電流Imwが目標転舵電流Imw*に基づいて制御され、また、この目標転舵電流Imw*は、路面の凹凸により変動する回転角θwに基づいて演算される。つまり、信号SImwは、凹凸に起因する信号を含んでいる。したがって、信号SImwに基づいて目標反力電流Ims*を演算すれば、路面反力に起因する振動をドライバに伝えることが可能となる。
【0044】
ただし、信号SImwには、凹凸に起因する信号以外の信号が含まれる。そのため、信号SImwをそのまま用いて目標反力電流Ims*を演算すれば、余計な振動までドライバに伝わってしまう。そこで、実施の形態1では、目標反力電流Ims*の演算処理に際し、信号SImwから余計な信号を除外する処理を行う。
【0045】
1.2.1 第1の構成例
図2は、実施の形態1において、目標反力電流Ims*の演算処理を行うための制御装置50の第1の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置50は、BPF(Band-Pass Filter)51と、凹凸路面判定部52と、目標反力電流演算部53と、を備えている。
【0046】
BPF51は、信号SImwから所定周波数以上の信号を抽出する。この所定周波数は、路面に形成された轍(rat)等により発生する低周波の振動の周波数帯FB_rの上限として、予め設定されている。そのため、BPF51を通過させると、信号SImwから轍等に起因する低周波の信号が除かれる。
【0047】
図3は、BPF処理の有無による信号SImwの違いを説明する図である。
図3の上段は、BPF処理前の信号SImwを表している。この上段に示すように、時刻t1~t2の間、信号SImwは、ある電流値(例えば、0mV)を中心として振動する。これは、凹凸に起因する信号が信号SImwに含まれているからである。また、信号SImwは、時刻t2を境にその振動特性が変化する。例えば、時刻t2以降の信号SImwは、時刻t2以前のそれに比べて振動の中心位置が変わり、振幅も変わる。これは、時刻t2以降は、轍等に起因する低周波の信号が信号SImwに更に加わるためである。
【0048】
図3の下段は、BPF処理後の信号SImwを表している。この下段に示す信号SImwのデータは、上段のそれと同じである。この下段に示すように、BPF処理を行った場合は、時刻t2以降の信号SImwの振幅が小さくなる。これは、BPF処理を行うことによって、轍等に起因する低周波の信号が信号SImwから除かれているためである。
【0049】
凹凸路面判定部52は、BPF51を通過した信号SImw(以下、「信号SImw_51」とも称す。)に対して、凹凸路面判定処理を行う。
図4は、凹凸路面判定処理の流れを説明するフローチャートである。
図4に示すルーチンでは、まず、凹凸条件が成立するか否かが判定される(ステップS10)。ステップS10の判定処理では、例えば、信号SImw_51と閾値TH1との比較が所定時間に亘って行われる。そして、信号SImw_51が閾値TH1を上回る回数が閾値TH2以上の場合、凹凸条件が成立すると判定される。
【0050】
ステップS10の判定処理では、信号SImw_51を不感帯と比較してもよい。この場合、信号SImw_51が不感帯を超えた場合、凹凸条件が成立すると判定される。
【0051】
ステップS10の判定結果が否定的な場合、路面は平坦であると判定される(ステップS11)。そうでない場合、路面は凹凸であると判定される(ステップS12)。
【0052】
目標反力電流演算部53は、凹凸路面判定処理の結果と、信号SImw_51とに基づいて目標反力電流Ims*を演算する。路面が平坦であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_51にゲインG1を乗算することにより、目標反力電流Ims*を演算する。路面が凹凸であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_51にゲインG2を乗算することにより、目標反力電流Ims*を演算する。ゲインG2はゲインG1と同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
【0053】
路面が凹凸であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_51に特定周波数帯の成分を加えて目標反力電流Ims*を演算してもよい。この特定周波数帯は、路面の凹凸(asperity)により発生する振動の周波数帯FB_aとして、予め設定されている。
【0054】
第1の構成例において、目標反力電流Ims*は、軸力センサの出力信号に基づいて演算されてもよい。軸力センサは、ラックバー43に設けられている。軸力センサは、ラックバー43の軸方向に作用する軸力を検出する。この軸力は、路面の凹凸により変動する。そのため、軸力センサの出力信号は、凹凸に起因する信号を含んでいる。ただし、信号SImw同様、軸力センサの出力信号には、凹凸に起因する信号以外の信号が含まれている。そのため、
図2で説明した手法と同じ手法で軸力センサの出力信号を処理すれば、目標反力電流Ims*を演算することが可能となる。
【0055】
このようにして演算された目標反力電流Ims*は、反力モータ31の制御量として反力モータ31に与えられる。
【0056】
1.2.2 第2の構成例
図5は、実施の形態1において、目標反力電流Ims*の演算処理を行うための制御装置50の第2の構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、制御装置50は、第1フィルタ51a、第2フィルタ51bと、第3フィルタ51cと、凹凸路面判定部52と、目標反力電流演算部53と、を備えている。
【0057】
上記第1の構成例では、BPF51が設定された。これに対し、第2の構成例では、このBPF51を細分化することにより、第1フィルタ51a、第2フィルタ51bおよび第3フィルタ51cが設定される。例えば、第1フィルタ51aは、BPF51が抽出する周波数帯FB_51の低周波数帯を占めるように設定される。また、第3フィルタ51cは、周波数帯FB_51の高周波数帯を占めるように設定され、第2フィルタ51bは、周波数帯FB_51の中間周波数帯を占めるように設定される。なお、周波数帯FB_51を細分化するフィルタの数は、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0058】
凹凸路面判定部52は、第1フィルタ51aを通過した信号SImw(以下、「信号SImw_51a」とも称す。)に対して、凹凸路面判定処理を行う。凹凸路面判定部52は、また、第2フィルタ51bを通過した信号SImw(以下、「信号SImw_51b」とも称す。)および第3フィルタ51cを通過した信号SImw(以下、「信号SImw_51c」とも称す。)に対して、凹凸路面判定処理を行う。凹凸路面判定処理の内容は、第1の構成例でのそれと同じである。
【0059】
目標反力電流演算部53は、凹凸路面判定処理の結果と、信号SImw_51a~SImw_51cと、に基づいて目標反力電流Ims*を演算する。例えば、信号SImw_51aに対する凹凸路面判定処理の結果、路面が平坦であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_51aにゲインG31を乗算する。路面が凹凸であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_51aにゲインG41を乗算する。ゲインG41はゲインG31と同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
【0060】
このようなゲインの乗算処理は、信号SImw_51bおよびSImw_51cに対しても行われる。なお、信号SImw_51bに乗算されるゲインG32およびG42は、同じ値でもよいし、異なる値でもよい。また、信号SImw_51cに乗算されるゲインG33およびG43は、同じ値でもよいし、異なる値でもよい。また、ゲインG31~G43は同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
【0061】
ゲインG31~G33が異なる値に設定される場合、または、ゲインG41~G43が異なる値に設定される場合、フィルタの占有周波数帯が高くなるほどゲインの値を大きくすることが望ましい。振動はその周波数が高くなるほど伝わり難くなる。そのため、ゲインの値をこのように設定することで、凹凸により発生する振動をドライバに伝え易くすることが可能となる。
【0062】
目標反力電流演算部53は、乗算処理後の信号SImw_51a~SImw_51cを合成する。これにより、目標反力電流Ims*が演算される。
【0063】
第2の構成例において、目標反力電流Ims*は、軸力センサの出力信号に基づいて演算されてもよい。
【0064】
1.3 効果
以上説明した実施の形態1によれば、目標反力電流Ims*の演算処理において、信号SImw(または、軸力センサの出力信号)から轍等に起因する低周波の信号が除かれる。轍等に起因する低周波の信号が除かれた信号SImwは、主として凹凸に起因する信号から構成される。したがって、轍等により発生する低周波の振動がドライバに伝わるのを抑えつつ、凹凸により発生する振動をドライバに伝えることが可能となる。故に、路面反力に対する適度な操舵感をドライバに与えることが可能となる。
【0065】
2.実施の形態2
次に、
図6を参照しながら実施の形態2について説明する。以下においては、上記実施の形態1との相違点を中心に説明し、上記実施の形態1の説明と重複する説明については適宜省略される。
【0066】
2.1 目標反力電流の演算処理
図6は、実施の形態2において、目標反力電流Ims*の演算処理を行うための制御装置50の構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、制御装置50は、第1フィルタ54a、第2フィルタ54bと、第3フィルタ54cと、凹凸路面判定部52と、目標反力電流演算部53と、第1条件判定部55と、を備えている。
【0067】
上記実施の形態1の第2の構成例では、BPF51の抽出周波数帯(つまり、周波数帯FB_51)を細分化したフィルタ51a~51cが設定された。第2の構成例同様、実施の形態2では、周波数帯FB_51を細分化したフィルタ54a~54cが設定される。ただし、実施の形態2では、フィルタ54a~54cのうちの特定のフィルタの占有周波数帯が、車両の制動時に発生する振動の周波数帯FB_bに設定されている。
【0068】
制動時に発生する振動は、轍等により発生する低周波の振動と同じく余計な振動に分類される。ただし、周波数帯FB_bは周波数帯FB_aの内側に存在する。そのため、上記実施の形態1の第1または第2の構成例に基づいて目標反力電流Ims*を演算すると、制動時において余計な振動がドライバに伝わってしまう。このような問題に鑑み、実施の形態2では、特定のフィルタが設定されている。
【0069】
凹凸路面判定部52の機能は、第2の構成例におけるそれと基本的に同じである。すなわち、凹凸路面判定部52は、第1フィルタ54aを通過した信号SImw(以下、「信号SImw_54a」とも称す。)に対して、凹凸路面判定処理を行う。凹凸路面判定部52は、また、第2フィルタ54bを通過した信号SImw(以下、「信号SImw_54b」とも称す。)および第3フィルタ54cを通過した信号SImw(以下、「信号SImw_54c」とも称す。)に対して、凹凸路面判定処理を行う。凹凸路面判定処理の内容は、第1の構成例でのそれと同じである。
【0070】
第1条件判定部55は、第1条件が成立するか否かを判定する。第1条件は、車両が制動状態にある場合に成立する。第1条件の成否は、例えば、信号SV、信号SGxおよび信号Sstに基づいて判定される。信号SGxは、車両に別途設けられる前後方向の加速度Gxの検出信号である。信号Sstは、ブレーキランプの点灯動作により検出される信号である。ドライバによるブレーキペダルの踏み込み動作、または、マスター弁の閉じ動作により信号Sstが検出されてもよい。
【0071】
目標反力電流演算部53は、第1条件の判定結果と、凹凸路面判定処理の結果と、信号SImw_54a~SImw_54cと、に基づいて目標反力電流Ims*を演算する。例えば、第1条件が成立しないと判定され、かつ、路面が平坦であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_54aにゲインG51を乗算する。このようなゲインの乗算処理は、信号SImw_54bおよびSImw_54cに対しても行われる。
【0072】
また、例えば、第1条件が成立しないと判定され、かつ、路面が凹凸であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_54aにゲインG61を乗算する。このようなゲインの乗算処理は、信号SImw_54bおよびSImw_54cに対しても行われる。なお、ゲインG51およびG61、信号SImw_54bに乗算されるゲインG52およびG62、並びに、信号SImw_54cに乗算されるゲインG53およびG63の大小関係については、ゲインG31~G43のそれと同じである。
【0073】
また、例えば、第1条件が成立する判定された場合、目標反力電流演算部53は、特定のフィルタを通過した信号SImwに乗算するゲインを変更する。具体的に、特定のフィルタがフィルタ54bの場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_54bに乗算するゲインを、ゲインG52またはG62よりも小さな値に設定する。つまり、第1条件の成立時、目標反力電流演算部53は、特定のフィルタを通過した信号を弱化させる処理を行う。
【0074】
目標反力電流演算部53は、乗算処理後の信号SImw_54a~SImw_54cを合成する。これにより、目標反力電流Ims*が演算される。
【0075】
2.2 効果
以上説明した実施の形態2によれば、目標反力電流Ims*の演算処理に際して、第1条件の判定結果が加味される。そのため、車両の制動時、信号SImw(または、軸力センサの出力信号)から、車両の制動に起因する信号が除かれる。したがって、制動時に発生する振動がドライバに伝わるのを抑えることが可能となる。故に、制動時の操舵感を向上することが可能となる。
【0076】
2.3 対応関係
上記実施の形態2と、上記第1観点との対応関係は次のとおりである。すなわち、周波数帯FB_bが、第1の観点の「第1周波数帯」に相当する。特定のフィルタを通過した信号が、第1の観点の「第1信号」に相当する。周波数帯FB_51から周波数帯FB_bを除いた残りの周波数帯が、第1の観点の「第2周波数帯」に相当する。特定のフィルタ以外のフィルタを通過した信号が、第1の観点の「第2信号」に相当する。第1条件が第1の観点の「所定条件」に相当する。
【0077】
3.実施の形態3
次に、
図7を参照しながら実施の形態3について説明する。以下においては、既述の実施の形態との相違点を中心に説明し、これらの説明と重複する説明については適宜省略される。
【0078】
3.1 目標反力電流の演算処理
図7は、実施の形態3において、目標反力電流Ims*の演算処理を行うための制御装置50の構成例を示すブロック図である。
図7に示すように、制御装置50は、第1フィルタ56a、第2フィルタ56bと、第3フィルタ56cと、凹凸路面判定部52と、目標反力電流演算部53と、第2条件判定部57と、を備えている。
【0079】
実施の形態3では、BPF51の抽出周波数帯(つまり、周波数帯FB_51)を細分化したフィルタ56a~56cが設定される。実施の形態3では、フィルタ56a~56cのうちの特定のフィルタの占有周波数帯が、フラッタ(flutter)により発生する振動の周波数帯FB_fに設定されている。特定のフィルタを設定する理由は、上記実施の形態2で説明した理由と同じである。
【0080】
凹凸路面判定部52の機能は、上記実施の形態2におけるそれと基本的に同じである。すなわち、凹凸路面判定部52は、第1フィルタ56aを通過した信号SImw(以下、「信号SImw_56a」とも称す。)に対して、凹凸路面判定処理を行う。凹凸路面判定部52は、また、第2フィルタ56bを通過した信号SImw(以下、「信号SImw_56b」とも称す。)および第3フィルタ56cを通過した信号SImw(以下、「信号SImw_56c」とも称す。)に対して、凹凸路面判定処理を行う。
【0081】
第2条件判定部57は、第2条件が成立するか否かを判定する。第2条件は、フラッタが発生する所定の速度域で車両が走行している場合に成立する。第2条件の成否は、例えば、信号SVに基づいて判定される。
【0082】
目標反力電流演算部53は、第2条件の判定結果と、凹凸路面判定処理の結果と、信号SImw_56a~SImw_56cと、に基づいて目標反力電流Ims*を演算する。目標反力電流Ims*の演算の考え方は、上記実施の形態2におけるそれと基本的に同じである。
【0083】
3.2 効果
以上説明した実施の形態3によれば、目標反力電流Ims*の演算処理に際して、第2条件の判定結果が加味される。そのため、車両の制動時、信号SImw(または、軸力センサの出力信号)からフラッタに起因する信号が除かれる。したがって、フラッタにより発生する振動がドライバに伝わるのを抑えることが可能となる。故に、フラッタが発生する所定の速度域での操舵感を向上することが可能となる。
【0084】
3.3 対応関係
上記実施の形態3と、上記第1観点との対応関係は次のとおりである。すなわち、周波数帯FB_fが、第1の観点の「第1周波数帯」に相当する。特定のフィルタを通過した信号が、第1の観点の「第1信号」に相当する。周波数帯FB_51から周波数帯FB_fを除いた残りの周波数帯が、第1の観点の「第2周波数帯」に相当する。特定のフィルタ以外のフィルタを通過した信号が、第1の観点の「第2信号」に相当する。第2条件が、第1の観点の「所定条件」に相当する。
【0085】
4.実施の形態4
次に、
図8を参照しながら実施の形態4について説明する。以下においては、既述の実施の形態との相違点を中心に説明し、これらの説明と重複する説明については適宜省略される。
【0086】
4.1 目標反力電流の演算処理
図8は、実施の形態4において、目標反力電流Ims*の演算処理を行うための制御装置50の構成例を示すブロック図である。
図8に示すように、制御装置50は、BPF51と、凹凸路面判定部52と、目標反力電流演算部53と、走行モード判定部58と、を備えている。つまり、
図8の構成例は、上記実施の形態1の第1の構成例に、走行モード判定部58が追加されたものである。
【0087】
実施の形態4では、ドライバからの指示に基づいて、車両制御システムが車両の走行モードを切り替える。この車両モードは、スポーツモードと、ノーマルモード(コンフォートモード)とを含む。スポーツモードは、路面状態の把握性能を重視した走行モードである。ノーマルモードは、走行安定性能を重視した走行モードである。ノーマルモードは、スポーツモードよりも把握性能を緩和させた走行モードでもある。走行モードの切り替えは、例えば、選択スイッチの手動操作により行われる。
【0088】
走行モード判定部58は、現在選択中の走行モードを判定する。走行モードの判定は、例えば、信号Smoに基づいて判定される。信号Smoは、選択スイッチの操作状態により検出される。
【0089】
BPF51および凹凸路面判定部52の機能は、第1の構成例におけるそれと同じである。
【0090】
目標反力電流演算部53は、現在選択中の走行モードと、凹凸路面判定処理の結果と、信号SImw_51とに基づいて目標反力電流Ims*を演算する。例えば、スポーツモードが選択されていると判定され、かつ、路面が平坦であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_51にゲインG7を乗算する。スポーツモードが選択されていると判定され、かつ、路面が凹凸であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_51にゲインG8を乗算する。ゲインG7はゲインG8と同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
【0091】
ノーマルモードが選択されていると判定され、かつ、路面が平坦であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_51にゲインG9を乗算する。ノーマルモードが選択されていると判定され、かつ、路面が凹凸であると判定されている場合、目標反力電流演算部53は、信号SImw_51にゲインG10を乗算する。ゲインG9はゲインG10と同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
【0092】
ただし、ゲインG9はゲインG7よりも小さな値に設定され、ゲインG10はゲインG8よりも小さな値に設定される。つまり、ノーマルモードの選択時には、スポーツモードの選択時に比べて小さなゲインが信号SImw_51に乗算される。
【0093】
4.2 効果
以上説明した実施の形態4によれば、ノーマルモードの選択時、スポーツモードの選択時に比べて小さなゲインが信号SImw_51に乗算される。そのため、スポーツモードでの走行中は凹凸により発生する振動をドライバに伝え易くし、ノーマルモードでの走行中は当該振動をドライバに伝え難くすることが可能となる。スポーツモードでの走行中には凹凸により発生する振動をドライバに積極的に伝え、ノーマルモードでの走行中は当該振動をドライバに一切伝えなくすることも可能となる。
【0094】
4.3 対応関係
上記実施の形態4と、上記第4観点との対応関係は次のとおりである。すなわち、スポーツモードが第4の観点の「第1走行モード」に相当する。ノーマルモードが第4の観点の「第2走行モード」に相当する。
【符号の説明】
【0095】
10 ステアリングホイール
30 反力装置
31 反力モータ
40 転舵装置
41 転舵モータ
50 制御装置
51 BPF
51a、54a、56a 第1フィルタ
51b、54b、56b 第2フィルタ
51c、54c、56c 第3フィルタ
52 凹凸路面判定部
53 目標反力電流演算部
55 第1条件判定部
57 第2条件判定部
58 走行モード判定部
66 電流センサ
70 車輪
100 ステアバイワイヤシステム(SBWシステム)