(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】表示装置およびその組立方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20230207BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
G02F1/1333
G09F9/00 350Z
G09F9/00 302
G09F9/00 313
G09F9/00 336E
(21)【出願番号】P 2019085415
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】持地 浩行
(72)【発明者】
【氏名】原 智
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/140463(WO,A1)
【文献】特表2014-529105(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217009(WO,A1)
【文献】特開2015-184397(JP,A)
【文献】特開2011-013511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0085563(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070826(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
G09F 9/00
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示セルと、前記表示セルの表示方向である前方を覆う透光性のカバーパネルと、が設けられた表示装置において、
前記カバーパネルの後方に向く後面に、前記カバーパネルよりも剛性の高い枠形状の補強部材が固定され、前記補強部材で囲まれた領域で、前記カバーパネルの後面に前記表示セルが固定され、
前記表示セルの後方に位置するバックライト装置が設けられて、前記バックライト装置が前記補強部材に固定されており、
前記補強部材と前記バックライト装置の少なくとも一方が、前記バックライト装置よりも後方に位置する後方支持部材に固定されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
表示セルと、前記表示セルの表示方向である前方を覆う透光性のカバーパネルと、が設けられた表示装置において、
前記カバーパネルの後方に向く後面に、前記カバーパネルよりも剛性の高い枠形状の補強部材が固定され、前記補強部材で囲まれた領域で、前記カバーパネルの後面に前記表示セルが固定されており、
前記カバーパネルは、屈曲部または湾曲部を有しており、前記屈曲部またはその近傍、あるいは前記湾曲部の少なくとも一部あるいは前記湾曲部の近傍で、前記カバーパネルの後面に前記補強部材が固定されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記補強部材には、枠形状の内部を仕切る仕切り部が設けられており、前記仕切り部の少なくとも一部が、前記カバーパネルの後面に固定されている
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記仕切り部には、前記屈曲部または前記湾曲部の曲げ方向に沿って延び後方へ突出する複数のリブが設けられており、それぞれの前記リブの後方に向く端部の少なくとも一部が
前記カバーパネルよりも後方に位置する後方支持部材に固定されている
請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
表示セルと、前記表示セルの表示方向である前方を覆う透光性のカバーパネルと、が設けられた表示装置の組立方法において、
(a)前記カバーパネルの後方に向く後面に、前記カバーパネルよりも剛性の高い枠形状の補強部材を固定する工程と、
(b)前記(a)の工程の後に、前記補強部材で囲まれた領域で、前記カバーパネルの後面に前記表示セルを固定する工程と、
(c)前記(b)の
工程の後で、前記表示セルの後方に位置するバックライト装置を前記補強部材に固定する
工程と、
(d)前記補強部材と前記バックライト装置の少なくとも一方を、前記バックライト装置よりも後方に位置する後方支持部材に固定する
工程と、
を有する
ことを特徴とする表示装置の組立方法。
【請求項6】
前記カバーパネルは、屈曲部または湾曲部を有しており、
前記(a)の工程では、前記屈曲部またはその近傍、あるいは前記湾曲部の少なくとも一部あるいは前記湾曲部の近傍で、前記カバーパネルの後面に前記補強部材を固定する
請求項5記載の表示装置の組立方法。
【請求項7】
表示セルと、前記表示セルの表示方向である前方を覆う透光性のカバーパネルと、が設けられた表示装置の組立方法において、
(a)前記カバーパネルの後方に向く後面に、前記カバーパネルよりも剛性の高い枠形状の補強部材を固定する工程と、
(b)前記(a)の工程の後に、前記補強部材で囲まれた領域で、前記カバーパネルの後面に前記表示セルを固定する工程と、を有し
前記カバーパネルは、屈曲部または湾曲部を有しており、
前記(a)の工程では、前記屈曲部またはその近傍、あるいは前記湾曲部の少なくとも一部あるいは前記湾曲部の近傍で、前記カバーパネルの後面に前記補強部材を固定することを特徴とする表示装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性のカバーパネルの後面に表示セルが固定された車載用などの表示装置およびその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ディスプレイを有する電子機器に関する発明が記載されている。
この電子機器には、ディスプレイと、ディスプレイよりも大きいパネルが設けられ、パネルはディスプレイの前面に透明接着剤を介して固定されている。パネルのディスプレイからはみ出ている部分は、ディスプレイの後方に設けられた支持部の前面に接着剤を介して固定されている。
【0003】
この構造の電子機器では、パネルを支持部に固定するときに、パネルの平面度の公差や支持部の成形公差に起因して、パネルに歪みが発生しやすい。パネルにはディスプレイが全面的に固定されるため、パネルからディスプレイに応力が伝達されやすく、ディスプレイに歪みが発生して画像品質が低下する課題がある。特に、パネルとディスプレイが大型の場合に、パネルからディスプレイに与えられる歪みが大きくなり、歪みの範囲も広くなって、画像品質の劣化が顕著になる。
【0004】
特許文献2には、液晶セルの反りを抑制し、液晶セルの反りに起因する画質の低下を抑制することを目的とした液晶表示装置に関する発明が記載されている。
【0005】
特許文献2の
図2に記載されている液晶表示装置は、液晶セルの図示下面に透明補強板が接着層を介して貼り付けられ、中間フレームの突出部に、透明補強板が、粘着性を有しないクッション部材を介して載置されている。また、液晶セルの図示上面と上部フレームとの間にも、同様にクッション材が介在している。この液晶表示装置は、液晶セルに貼り合わされた補強板が、中間フレームの突出部にクッション材を介して設置されているため、透明補強板に反りが発生しにくく、IPS方式の表示セルであっても、黒表示におけるムラの発生を抑制できる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-219518号公報
【文献】特開2018-54941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された液晶表示装置は、互いに貼り合わされた液晶セルと透明補強板とが、クッション部材で上下から挟まれた構造であるため、液晶セルを安定して固定することはできない。また、液晶セルの前面にタッチセンサなどを配置したときには、表示画面に指が触れたときに液晶セルが動いてしまい、操作しにくいものとなる。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、表示セルを固定して設置することができ、しかもカバーパネルと液晶セルの歪みを抑制できる表示装置およびその組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表示セルと、前記表示セルの表示方向である前方を覆う透光性のカバーパネルと、が設けられた表示装置において、
前記カバーパネルの後方に向く後面に、前記カバーパネルよりも剛性の高い枠形状の補強部材が固定され、前記補強部材で囲まれた領域で、前記カバーパネルの後面に前記表示セルが固定され、
前記表示セルの後方に位置するバックライト装置が設けられて、前記バックライト装置が前記補強部材に固定されており、
前記補強部材と前記バックライト装置の少なくとも一方が、前記バックライト装置よりも後方に位置する後方支持部材に固定されていることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明の表示装置は、前記カバーパネルは、屈曲部または湾曲部を有しており、前記屈曲部またはその近傍、あるいは前記湾曲部の少なくとも一部あるいは前記湾曲部の近傍で、前記カバーパネルの後面に前記補強部材が固定されているものとして構成できる。
【0012】
さらに本発明の表示装置は、前記補強部材に、枠形状の内部を仕切る仕切り部が設けられており、前記仕切り部の少なくとも一部が、前記カバーパネルの後面に固定されているものが好ましい。
【0013】
本発明の表示装置は、前記仕切り部に、前記屈曲部または前記湾曲部の曲げ方向に沿って延び後方へ突出する複数のリブが設けられており、それぞれの前記リブの後方に向く端部の少なくとも一部が前記カバーパネルよりも後方に位置する後方支持部材に固定されているものが好ましい。
【0015】
次に本発明は、表示セルと、前記表示セルの表示方向である前方を覆う透光性のカバーパネルと、が設けられた表示装置の組立方法において、
(a)前記カバーパネルの後方に向く後面に、前記カバーパネルよりも剛性の高い枠形状の補強部材を固定する工程と、
(b)前記(a)の工程の後に、前記補強部材で囲まれた領域で、前記カバーパネルの後面に前記表示セルを固定する工程と、
(c)前記(b)の工程の後で、前記表示セルの後方に位置するバックライト装置を前記補強部材に固定する工程と、
(d)前記補強部材と前記バックライト装置の少なくとも一方を、前記バックライト装置よりも後方に位置する後方支持部材に固定する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の表示装置の組立方法は、前記カバーパネルは、屈曲部または湾曲部を有しており、
前記(a)の工程では、前記屈曲部またはその近傍、あるいは前記湾曲部の少なくとも一部あるいは前記湾曲部の近傍で、前記カバーパネルの後面に前記補強部材を固定するものとして構成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、カバーパネルの後面に枠状の補強部材が固定されているため、補強部材によってカバーパネルの形状や平面度を高精度に決めることができ、このカバーパネルの後面に固定される表示セルに歪みが与えられるのを抑制でき、画像品質の低下を防止できるようになる。
【0018】
特に、カバーパネルが屈曲部や湾曲部を有する立体形状の場合に、カバーパネルの後面に補強部材を固定することによって、カバーパネルの立体形状の寸法精度を高く維持できるとともに、表示セルが固定される領域でカバーパネルの平面度を高く維持することができる。そのため、カバーパネルに全面的に接着される表示セルに与えられる歪みを抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の表示装置を前方から示す斜視図、
【
図2】
図1に示す表示装置を前方から見た分解斜視図、
【
図3】
図1に示す表示装置の構成部材の一部を後方から見た分解斜視図、
【
図4】
図3に示した補強部材の一部を示すIV部分の拡大斜視図、
【
図5】
図1に示す表示装置をV-V線で切断した断面図、
【
図6】(A)は、
図5のVI(A)部分の部分拡大断面図、(B)は、
図5のVI(B)部分の部分拡大断面図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1ないし
図7に示す表示装置1は車載用であり、Y1方向が表示方向である前方、Y2方向が後方である。X1は左方向でX2方向が右方向、Z1方向が上方向でZ2方向が下方向である。
【0021】
表示装置1は、自動車の車室内の前方に位置するインストルメントパネルやダッシュボードあるいはセンターコンソールなどに固定されて使用される。このとき、Y1-Y2方向が垂直に向けられ、あるいは下方が前方にせり出すように斜めの向きで設置される。
【0022】
図1と
図2に示すように、表示装置1は、後方に位置する後方支持部材2と、その前方に位置する表示パネル組立体10とから構成されている。後方支持部材2が車体の一部に固定されて、表示装置1が車両に搭載される。
図2と
図3に示すように、表示パネル組立体10は、カバーパネル20と補強部材30と表示セル40およびバックライト装置50が、前方から後方に向けて順に重ねられて組み立てられている。
【0023】
カバーパネル20は、透光性の板材で構成されている。本明細書での透光性は、例えば全光線透過率が60%以上である。さらに好ましくは70%以上である。カバーパネル20はガラス板であり、あるいはプラスチック板である。好ましい実施形態では、カバーパネル20がガラス板で構成されている。
【0024】
カバーパネル20は立体形状あるいは三次元形状であり、左側(X1側)が第1平面部21で、右側(X2側)が第2平面部22であって、第1平面部21と第2平面部22との境界部に屈曲部23が設けられている。第2平面部22は第1平面部21よりも上下方向(Z1-Z2方向)の寸法が大きく、第2平面部22は第1平面部21よりも面積が大きい。
図5に示されるように、屈曲部23を境として、第1平面部21と第2平面部22は、前方(Y1方向)に向けて開き角度αを有している。前記開き角度αは、表示装置1のデザインに応じて任意に設定される。
【0025】
図5の断面図および
図7の部分拡大断面図に示されるように、カバーパネル20は立体形状あるいは三次元形状である。カバーパネル20の屈曲部23では、ガラス板などのカバーパネル20が角部を有して曲げられており、あるいは左右方向(X1-X2方向)へ小さい曲率で曲げられている。この場合の角部または曲率中心は上下方向(Z1-Z2方向)に延びている。なお、カバーパネル20では、第1平面部21と第2平面部22との間に湾曲部が設けられていてもよい。この湾曲部とは、左右方向(X1-X2方向)の曲率が比較的大きい形状を意味している。すなわち、第1平面部21と第2平面部22との境界部では、カバーパネル20が角部を有して曲げられていてもよいし、大小さまざまな曲率を有して曲げられていてもよい。
【0026】
カバーパネル20は、表示方向である前方(Y1方向)に向く前面に透光性の硬質膜であるカバーコートが設けられている。カバーパネル20の後方(Y2方向)に向く後面には、枠状の非透光層(加飾層)24が印刷手段や塗装手段で形成されている。第1平面部21は、非透光層24が形成されている枠状の領域が非透光領域(加飾領域)21bであり、非透光層24で囲まれた中央部分が表示領域21aである。第2平面部22は、非透光層24が形成されている枠状の領域が非透光領域(加飾領域)22bであり、非透光層24で囲まれた中央部分が表示領域22aである。また、屈曲部23にも非透光層24が設けられており、屈曲部23も非透光領域である。さらに、表示領域21a,22aの少なくとも一方には、カバーパネル20の前面または後面に静電容量検知方式あるいは抵抗変化検知方式のタッチパネルが設けられて、指の接触座標位置を検知できるようにしているものが好ましい。
【0027】
図2と
図3および
図4に示されるように、カバーパネル20の後方に位置する補強部材30は枠形状である。補強部材30の枠形状の内部に、上下方向(Z1-Z2方向)に延びる柱板形状の仕切り部33が一体に形成されている。補強部材30は、仕切り部33を境として、左側(X1側)が四角形の第1枠部31で右側が四角形の第2枠部32である。第1枠部31には第1窓部31aが開口しており、第1枠部31は、第1窓部31aの上下と左右の4辺を連続して囲んでいる。第2枠部32には第2窓部32aが開口しており、第2枠部32は、第2窓部32aの上下と左右の4辺を連続して囲んでいる。
【0028】
補強部材30は、カバーパネル20の面と平行な面内に向く全ての仮想軸の軸方向を曲率方向とする曲げ剛性が、カバーパネル20の同じ方向での曲げ剛性よりも高い。また、補強部材30は、カバーパネル20の面と平行な面内に向く全ての仮想軸を中心とする捩じれ剛性が、カバーパネル20の同じ仮想軸を中心とする捩じれ剛性よりも高い。これを実現するために、補強部材30は、マグネシウムあるいはマグネシウム合金などの金属材料を用いたダイキャスト製法で製造されている。前記曲げ剛性は、断面二次モーメントIと縦弾性係数Eとの積であり、捩じれ剛性は、断面二次極モーメントJと横弾性係数Gとの積である。本明細書での剛性は、前記両剛性を含む概念である。
【0029】
図4に示すように、補強部材30の仕切り部33の後方(Y2方向)に向く後面に、上下方向(Z1-Z2方向)に直線的に延びる縦リブ34と、上下方向(Z1-Z2方向)に間隔を空けて配置された複数の横リブ35とが一体に形成されている。縦リブ34および横リブ35は、仕切り部33から後方(Y2方向)へ向けて突出している。縦リブ34は、左右方向(X1-X2方向)が板厚方向で、板面がY-Z平面と平行な細長い板形状である。横リブ35は、上下方向(Z1-Z2方向)が板厚方向で、板面がX-Y平面と平行な板形状であり、仕切り部33の後面において、屈曲方向あるいは湾曲方向であるX1-X2方向に平面的に延びている。
【0030】
カバーパネル20の後方(Y2方向)に向く後面に、補強部材30の前面が接着剤層38を介して接着されて固定されている。接着剤層38は
図6および
図7の断面図に表れている。
図6(A)(B)に示されるように、接着剤層38は、補強部材30の第1枠部31の前面と第2枠部32の前面と、カバーパネル20の後面との間に介入するように塗布されて、第1枠部31と第2枠部32の全周がカバーパネル20に接着されて固定されている。
【0031】
図7に示されるように、補強部材30の仕切り部33の前面とカバーパネル20の後面との間にも接着剤層38が介在するように塗布されて、仕切り部33とカバーパネル20とが接着されて固定されている。すなわち、仕切り部33は、カバーパネル20の屈曲部23の後面または屈曲部23の左右いずれかの近傍の後面に接着されて固定される。なお、カバーパネル20が湾曲部を有している場合には、仕切り部33は、湾曲部の後面の少なくとも一部、あるいは湾曲部の左右いずれかの近傍に接着されて固定される。
【0032】
補強部材30の第1枠部31は、カバーパネル20の第1平面部21に形成された非透光領域21bに接着され、第2枠部32は、第2平面部22に形成された非透光領域22bに接着される。仕切り部33は、カバーパネル20の屈曲部23を含む領域の非透光領域に接着される。したがって、カバーパネル20の表示領域21a,22aの後方に補強部材30は位置していない。
【0033】
補強部材30は金属材料を用いてダイキャスト成形されたものであるため、寸法精度が高く、第1枠部31の前面の平面度と第2枠部32の前面の平面度が高くなっている。一方で、カバーパネル20は平板であるため、第1平面部21と第2平面部22の平面度の公差が大きく、平面部21,22が大面積になるにしたがって、さらに平面度の公差が大きくなる。また、第1平面部21と第2平面部22との間での
図5に示す開き角度αのばらつきも大きい。特にカバーパネル20がガラスで形成されていると開き角度αのばらつきがさらに大きくなる。しかし、カバーパネル20の第1平面部21が補強部材30の第1枠部31に接着され、第2平面部22が第2枠部32に接着され、さらに屈曲部23の後面に仕切り部33が接着されており、補強部材30の剛性はカバーパネル20のそれよりも高くなっている。そのため、カバーパネル20の単体における平面度の誤差や開き角度αの誤差が大きかったとしても、補強部材30を固定することで、カバーパネル20の第1平面部21と第2平面部22の平面度と開き角度αを高く維持することができる。
【0034】
図4に示すように、補強部材30には仕切り部33の後面に縦リブ34と複数の横リブ35が形成されている。そのため、補強部材30の仕切り部33の強度が高くなり、外力が作用しても、第1枠部31と第2枠部32の開き角度αが変化しにくくなっている。カバーパネル20と補強部材30との間に開き角度αの違いがあり、またカバーパネルに大きな歪みが発生していると、カバーパネル20と補強部材30とを接着固定したときに、カバーパネル20から補強部材30に応力が与えられることになる。しかし、この場合も、補強部材30の強度が高いため、補強部材30が歪むことがなく、その結果、カバーパネル20平面度と開き角度αの精度を高く維持することができる。
【0035】
表示セル40は、互いに独立した第1表示セル41と第2表示セル42とから構成されている。第1表示セル41と第2表示セル42は透過型の液晶表示セルである。この液晶表示セルは、内面に電極層を有する2枚の透光性基板の間に液晶層が挟まれ、一方の透光性基板の内面にカラーフィルタが設けられたものであり、さらに偏光層を有している。車載用の表示装置1では、前記液晶表示セルとしてIPS駆動方式のものが好ましく使用される。IPS駆動方式は、無電圧状態で非透光性であるため、非駆動時の外観が良好であり、また駆動時の視野角が広いため、車載用の大型の表示セルとして適している。ただし、IPS駆動方式の液晶表示セルは、歪みが与えられると表示画像に黒ムラが発生する課題を有している。
【0036】
図6(A)と
図7に示されるように、第1表示セル41は、補強部材30の第1枠部31の第1窓部31aの内部で第1平面部21の後面に接着される。第1表示セル41の前方の透明基板の前面の全面が透明な光学接着剤層45を介して第1平面部21の後面に接着固定される。
図6(B)と
図7に示されるように、第2表示セル42は、補強部材30の第2枠部32の第2窓部32aの内部で第2平面部22の後面に接着される。第2表示セル42の前方の透明基板の前面の全面が透明な光学接着剤層46を介して第2平面部22の後面に接着固定される。
【0037】
表示パネル組立体10では、剛性の高い補強部材30にカバーパネル20を接着して固定することにより、カバーパネル20の第1平面部21と第2平面部22の平面度が高く維持されている。そのため、第1平面部21に接着された第1表示セル41と第2平面部22に接着された第2表示セル42に大きな歪が作用することがなく、表示画像の黒ムラの発生を抑制しやすい。
【0038】
バックライト装置50は、互いに独立した第1バックライト装置51と第2バックライト装置52とから構成されている。
図3と
図6(A)に示されるように、第1バックライト装置51は、支持体53の内部に、光源と光源からの光を第1表示セル41に与える導光体とが保持されている。
図3と
図6(B)に示すように、第2バックライト装置52は、支持体54の内部に、光源と光源からの光を第2表示セル42に与える導光体とが保持されている。
【0039】
第1バックライト装置51の枠状支持体53には、その4辺にフランジ部53aが形成されている。
図6(A)と
図7に示すように、フランジ部53aが、補強部材30の第1枠部31の後面に接着剤層55を介して接着されて固定されている。第2バックライト装置52の枠状支持体54には、その4辺にフランジ部54aが形成されている。
図6(B)と
図7に示すように、フランジ部54aが、補強部材30の第2枠部32の後面に接着剤層56を介して接着されて固定されている。第1バックライト装置51と第2バックライト装置52は、カバーパネル20に固定されることなく、補強部材30の第1枠部31と第2枠部32に固定されている。
【0040】
カバーパネル20に補強部材30と表示セル40が固定され、さらに補強部材30にバックライト装置50が固定された表示パネル組立体10が、後方支持部材2に固定されて支持される。
【0041】
図1と
図2に示されている後方支持部材2は、合成樹脂材料で射出成形されまたは金属材料を用いてダイキャスト成形されている。
図2に示すように、後方支持部材2には、第1平面支持部3と第2平面支持部4および、第1平面支持部3と第2平面支持部4との境界部に位置する屈曲部(または湾曲部)5が形成されている。第1平面支持部3は、四角形の支持後面6aと、その上辺と下辺および左辺から前方(Y1方向)に延びる側壁部7aを有している。第2平面支持部4は、四角形の支持後面6bと、その上辺と下辺および右辺から前方(Y1方向)に延びる側壁部7bを有している。
【0042】
表示パネル組立体10は後方支持部材2に設置され、
図6(A)に示すように、補強部材30の第1枠部31が、後方支持部材2の支持後面6aの前面と側壁部7aの内側面に接着剤層8を介して接着固定され、
図6(B)に示すように、補強部材30の第2枠部32が、後方支持部材2の支持後面6aの前面と側壁部7bの内側面に接着剤層8を介して接着固定される。さらに、
図7に示すように、仕切り部33の後面に形成された横リブ35の後方に向く端部35aの少なくとも一部が、後方支持部材2の屈曲部5またはその近傍の前面に接着剤層8を介して接着固定される。なお、縦リブ34の後方に向く端部も屈曲部5の前面またはその近傍に接着されていることが好ましい。
【0043】
この表示装置1は、剛性の高い補強部材30にカバーパネル20を接着して固定することにより、第1平面部21と第2平面部22の平面度を高く維持でき、第1表示セル41と第2表示セル42に歪が作用しにくくなっている。また、
図6と
図7に示されるように、補強部材30の第1枠部31と第2枠部32および仕切り部33が後方支持部材2に固定されているため、表示装置1の全体の強度が高くなり、後方支持部材2を車体に固定するときに外力が作用しても、カバーパネル20の第1平面部21と第2平面部22に歪が作用しにくくなっている。
【0044】
また、
図6(A)(B)に示されるように、補強部材30の第1枠部31が、後方支持部材2の支持後面6aの前面と3辺の側壁部7aの内面に突き当てられて接着固定され、第2枠部32が、支持後面6bの前面と3辺の側壁部7bの内面に突き当てられて接着固定されている。特に、3辺の側壁部7aと3辺の側壁部7bにおいて、補強部材30が接着剤層8によって接着固定されているため、後方支持部材2の外周部分の強度を高く維持することができ、外部衝撃が作用したとしても、破損が生じにくくなり、カバーパネル20と補強部材30の縁部が後方支持部材2から前方へ剥がれるなどの現象が生じにくくなっている。
【0045】
前記表示装置1の組立方法は以下の通りである。
表示装置1は、まず表示パネル組立体10を組立て、その後に表示パネル組立体10を後方支持部材2に固定する。表示パネル組立体10の組立では、カバーパネル20の後面に、補強部材30を、接着剤層38を介して接着固定する。この行程では、成型時の歪などによりカバーパネル20の単体における平面度の誤差や開き角度αの誤差が大きかったとしても、カバーパネル20をそれよりも剛性の高い補強部材30に接着することで、カバーパネル20を、その形状を矯正しつつ補強部材30に接着固定することができ、カバーパネル20を補強部材30の形状に合わせた立体形状にできる。そのため、接着後は、カバーパネル20の第1平面部21と第2平面部22の平面度を高く維持でき、
図5に示されている第1平面部21と第2平面部22の開き角度αを高精度に維持することができる。
【0046】
カバーパネル20に補強部材30が接着された後に、補強部材30の第1枠部31の第1窓部31aの内部において、カバーパネル20の第1平面部21の後面に第1表示セル41を光学接着剤層45を介して接着し、第2枠部32の第2窓部32aの内部において、第2平面部22の後面に第2表示セル42を光学接着剤層46を介して接着する。さらに、第1表示セル41の後方で補強部材30の第1枠部31に第1バックライト装置51を固定し、第2表示セル42の後方で補強部材30の第2枠部32に第2バックライト装置52を固定する。
【0047】
カバーパネル20の単体における平面度の誤差や開き角度αの誤差は、それ以前の行程で、カバーパネル20をそれよりも剛性の高い補強部材30に接着固定する時点で予め矯正されている。そのため、カバーパネル20の後面に第1表示セル41および第2表示セル42を接着するときに、カバーパネル20の形状の矯正に伴う大きな歪みが表示セル41,42に与えられることがなく、第1表示セル41と第2表示セル42に、組立時の歪みに起因する黒ムラが発生するのを防止できるようになる。
【0048】
前記の行程で表示パネル組立体10の組立てを完了した後に、表示パネル組立体10を後方支持部材2に取り付け、補強部材30を後方支持部材2に固定する。補強部材30は金属製で剛性が高くなっているため、補強部材30を後方支持部材2に固定するときに補強部材30に応力が作用したとしても、第1枠部31と第2枠部32に大きな歪みが与えられることがない。よって、組立後に、カバーパネル20の第1平面部21と第2平面部22の平面度を高く維持でき、第1表示セル41と第2表示セル42に大きな歪みが与えられることがなく、黒ムラの発生などを防止でき、画像品質を高く維持することができる。
【0049】
なお、前記実施の形態では、表示パネル組立体10を後方支持部材2に固定する際に、補強部材30を後方支持部材2に固定し、バックライト装置50は後方支持部材2に接着固定していない。ただし、補強部材30と後方支持部材2との接着固定に加えて、あるいは補強部材30と後方支持部材2との接着固定に代えて、表示パネル組立体10のバックライト装置50の後面を後方支持部材2に接着固定してもよい。すなわち、本発明では、補強部材30とバックライト装置50の少なくとも一方が後方支持部材2に接着固定される。ただし、表示装置1の全体の耐衝撃強度を高めるためには、
図6(A)(B)に示すように、補強部材30の周囲部分が後方支持部材2に接着固定されていることが好ましい。
【0050】
また、本発明は、カバーパネル20が屈曲部や湾曲部を有しておらずに平面的な構造であっても、枠形状の補強部材30でカバーパネル20を補強することで、カバーパネル20の表示セルが接着される平面部の平面度を維持する効果を発揮できる。また表示セルは、バックライト装置を有しないエレクトロルミネッセンス表示セルなどであってもよい。ただし、黒ムラを有効に防止できる点において、表示セルがIPS駆動方式の液晶表示セルである場合に、特に本発明が有効である。
【符号の説明】
【0051】
1 表示装置
2 後方支持部材
3 第1平面支持部
4 第2平面支持部
6a,6b 支持後面
7a,7b 側壁部
10 表示パネル組立体
20 カバーパネル
21 第1平面部
22 第2平面部
23 屈曲部
30 補強部材
31 第1枠部
32 第2枠部
33 仕切り部
34 縦リブ
35 横リブ
40 表示セル
41 第1表示セル
42 第2表示セル
50 バックライト装置
51 第1バックライト装置
52 第2バックライト装置