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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】印刷版位置決め装置および画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20230207BHJP
   B41C 1/00 20060101ALI20230207BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230207BHJP
   G03F 7/24 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
G03F9/00 G
B41C1/00
G03F7/20 511
G03F7/24 G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019086186
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020181164
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】松谷 一志
(72)【発明者】
【氏名】山内 基晴
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-020641(JP,A)
【文献】特開2001-356489(JP,A)
【文献】特開2005-041123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/24
G03F 9/00
B41F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版を位置決めする印刷版位置決め装置であって、
導電性を有する印刷版を第1方向へ移動させる第1移動ユニットと、
前記印刷版を前記第1方向に直交する第2方向へ移動させる第2移動ユニットと、
導電性を有し、かつ、前記第2方向に間隔をあけて配置される第1ピンおよび第2ピンと、
前記第1ピンと前記第2ピンの間の導通を検出する導通検出部と、
を備え、
前記第1ピンおよび前記第2ピンは、それぞれ、
前記第1方向および前記第2方向の双方に交差する第3方向を軸とする円筒状であり、かつ、前記第1移動ユニットによって前記第1方向の下流側へ移動される前記印刷版の端縁部に当接する外周面と、
前記外周面を、前記第3方向の回転軸線まわりに回転可能に保持する保持具と、
を含み、
前記導通検出部は、
前記第1ピンの前記外周面に導通接続される第1導通部と、
前記第2ピンの前記外周面に導通接続される第2導通部と、
を含み、前記第1導通部と前記第2導通部の間の導通を検出する、印刷版位置決め装置。
【請求項2】
請求項1の印刷版位置決め装置であって、
前記第1導通部は、前記第1ピンの前記外周面に摺動可能に接触する摺動部、を有する、印刷版位置決め装置。
【請求項3】
請求項2の印刷版位置決め装置であって、
前記第1導通部は、前記摺動部を、前記第1ピンの前記回転軸線に接近する方向へ付勢する、印刷版位置決め装置。
【請求項4】
請求項3の印刷版位置決め装置であって、
前記第1導通部は、前記第1方向とは交差する方向へ前記摺動部を付勢する、印刷版位置決め装置。
【請求項5】
請求項4の印刷版位置決め装置であって、
前記第1導通部は、弾性変形することによって、前記摺動部を付勢する弾性部材を含む、印刷版位置決め装置。
【請求項6】
請求項5の印刷版位置決め装置であって、
前記弾性部材は、板バネを含む、印刷版位置決め装置。
【請求項7】
請求項6の印刷版位置決め装置であって、
前記第1導通部は、前記第1ピンの前記外周面に向かって凸状に湾曲するとともに、前記外周面と接する弧状部、を含み、
前記摺動部が、前記弧状部における前記外周面と接する部分である、印刷版位置決め装置。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれか1項の印刷版位置決め装置であって、
前記摺動部における前記第1ピンの前記外周面に対して摺動する摺動面が、前記第3方向に長さを有する、印刷版位置決め装置。
【請求項9】
請求項8の印刷版位置決め装置であって、
前記印刷版の前記第3方向の位置を所定の規制範囲内に規制するガイド、
をさらに備え、
前記第1ピンおよび前記第2ピンそれぞれの前記外周面が、前記規制範囲と前記第1方向に重なる大きさを有する、印刷版位置決め装置。
【請求項10】
請求項9の印刷版位置決め装置であって、
前記第3方向に関して、前記摺動部の両端部が、前記規制範囲の外側に配置される、印刷版位置決め装置。
【請求項11】
請求項10の印刷版位置決め装置であって、
前記第3方向は上下方向であり、前記摺動部の上端は前記規制範囲の上方に位置し、前記摺動部の下端は前記規制範囲の下方に位置する、印刷版位置決め装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか1項の印刷版位置決め装置であって、
前記ガイドは、
第1部材と、
前記第1部材に対して前記第3方向に隙間をあけて配置される第2部材と、
を含む、印刷版位置決め装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項の印刷版位置決め装置であって、
前記第2移動ユニットは、
前記印刷版の前記第2方向の一方側に配置される第1移動部材と、
前記印刷版の前記第2方向の他方側に配置される第2移動部材と、
前記第1移動部材を前記第2方向の他方へ移動させることによって、前記印刷版を前記第2方向の他方へ移動させるとともに、前記第2移動部材を前記第2方向の一方へ移動させることによって、前記印刷版を前記第2方向の一方へ移動させる移動駆動部と、
を含み、
前記第1移動部材の前記第2方向の他方への移動距離が、前記第2移動部材の前記第2方向の一方への移動距離よりも大きい、印刷版位置決め装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項の印刷版位置決め装置であって、
前記導通検出部からの検出信号に応じて、前記第1移動ユニットおよび前記第2移動ユニットの駆動を制御することを含む規定の位置決め処理を実行する制御部、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第1ピンと前記第2ピンの間の導通が検出されるまで、前記位置決め処理を繰り返し実行する、印刷版位置決め装置。
【請求項15】
請求項14の印刷版位置決め装置であって、
前記位置決め処理の実行回数が規定の回数を越える場合に報知する報知部、
をさらに備える、印刷版位置決め装置。
【請求項16】
請求項14または請求項15の印刷版位置決め装置であって、
前記第1ピンの前記外周面の回転方向および回転量を検出する回転検出器、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記回転検出器からの検出信号に応じて、前記位置決め処理を実行する、印刷版位置決め装置。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項の印刷版位置決め装置であって、
前記第1ピンおよび前記第2ピンの硬度が、前記印刷版の硬度よりも大きい、印刷版位置決め装置。
【請求項18】
画像記録装置であって、
請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の位置決め装置と、
前記位置決め装置によって位置決めされた前記印刷版に画像を形成する画像形成部と、
を備える、画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷版を位置決めする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄板状の印刷版をドラムの外周面に装着し、当該印刷版にレーザ光を照射することによって、印刷版の表面に画像を記録する画像記録装置(CTP(Computer To Plate)装置)が知られている。この種の画像記録装置では、印刷版に対して正しい位置に画像を記録するため、印刷版の位置決めが行なわれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、印刷版を巻きつけるドラムと、ドラムに巻きけられた印刷版に画像信号に応じてレーザ光を照射して画像記録を行う記録ヘッドと、印刷版にパンチ孔を開けるパンチユニットと、ドラムおよびパンチユニットに向けて選択的に印刷版を供給できるトレーとが開示されている。パンチユニットは、印刷版の横幅方向の位置決めを行う位置決め機構を備えており、当該位置決め機構は、横幅方向に離れて配置された2つの位置決めピンに、印刷版の先端部が当接した状態で、当該印刷版を横幅方向に移動させることによって、印刷版の横幅方向の位置決めを行なう。
【0004】
また、特許文献2には、位置決めピンを備えたパンチ部と、位置決めピンに印刷版の先端を突き当てた状態で印刷版を左右の方向に移動させることが記載されているとともに、位置決めピンが回転自在であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-069485号公報
【文献】特開2003-095489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のように、位置決めピンが回転自在とされた場合、印刷版を位置決めピンに当接させた状態で横幅方向に移動させたときに、印刷版と位置決めピンの間の摩擦が低減される。しかしながら、従来技術では、印刷版が、各位置決めピンの回転部分に接触しているか否かが不明である。このため、各位置決めピンが印刷版と接触できないことによって、印刷版の位置決めが不良となるおそれがあった。また、印刷版と各位置決めピンの間の摩擦によって、削りかすが発生した場合、当該削りかすが各位置決めピンと印刷版の接触を阻害することによって、印刷版の位置決めが不良となるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、回転する位置決めピンを用いて、印刷版を精度良く位置決めする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1態様は、印刷版を位置決めする印刷版位置決め装置であって、導電性を有する印刷版を第1方向へ移動させる第1移動ユニットと、前記印刷版を前記第1方向に直交する第2方向へ移動させる第2移動ユニットと、導電性を有し、かつ、前記第2方向に間隔をあけて配置される第1ピンおよび第2ピンと、前記第1ピンと前記第2ピンの間の導通を検出する導通検出部と、を備え、前記第1ピンおよび前記第2ピンは、それぞれ、前記第1方向および前記第2方向の双方に交差する第3方向を軸とする円筒状であり、かつ、前記第1移動ユニットによって前記第1方向の下流側へ移動される前記印刷版の端縁部に当接する外周面と、前記外周面を、前記第3方向の回転軸線まわりに回転可能に保持する保持具と、を含み、前記導通検出部は、前記第1ピンの前記外周面に導通接続される第1導通部と、前記第2ピンの前記外周面に導通接続される第2導通部と、を含み、前記第1導通部と前記第2導通部の間の導通を検出する。
【0009】
第2態様は、第1態様の印刷版位置決め装置であって、前記第1導通部は、前記第1ピンの前記外周面に摺動可能に接触する摺動部を有する。
【0010】
第3態様は、第2態様の印刷版位置決め装置であって、前記第1導通部は、前記摺動部を、前記第1ピンの前記回転軸線に接近する方向へ付勢する。
【0011】
第4態様は、第3態様の印刷版位置決め装置であって、前記第1導通部は、前記第1方向とは交差する方向へ前記摺動部を付勢する。
【0012】
第5態様は、第4態様の印刷版位置決め装置であって、前記第1導通部は、弾性変形することによって、前記摺動部を付勢する弾性部材を含む。
【0013】
第6態様は、第5態様の印刷版位置決め装置であって、前記弾性部材は、板バネを含む。
【0014】
第7態様は、第6態様の印刷版位置決め装置であって、前記第1導通部は、前記第1ピンの前記外周面に向かって凸状に湾曲するとともに、前記外周面と接する弧状部、を含み、前記摺動部が、前記弧状部における前記外周面と接する部分である。
【0015】
第8態様は、第2態様から第7態様のいずれか1つの印刷版位置決め装置であって、前記摺動部における前記第1ピンの前記外周面に対して摺動する摺動面が、前記第3方向に長さを有する。
【0016】
第9態様は、第8態様の印刷版位置決め装置であって、前記印刷版の前記第3方向の位置を所定の規制範囲内に規制するガイド、をさらに備え、前記第1ピンおよび前記第2ピンそれぞれの前記外周面が、前記規制範囲と前記第1方向に重なる大きさを有する。
【0017】
第10態様は、第9態様の印刷版位置決め装置であって、前記第3方向に関して、前記摺動部の両端部が、前記規制範囲の外側に配置される。
【0018】
第11態様は、第10態様の印刷版位置決め装置であって、前記第3方向は上下方向であり、前記摺動部の上端は前記規制範囲の上方に位置し、前記摺動部の下端は前記規制範囲の下方に位置する
【0019】
第12態様は、第9態様から第11態様のいずれか1つの印刷版位置決め装置であって、前記ガイドは、第1部材と、前記第1部材に対して前記第3方向に隙間をあけて配置される第2部材とを含む。
【0020】
第13態様は、第1態様から第12態様のいずれか1つの印刷版位置決め装置であって、前記第2移動ユニットは、前記印刷版の前記第2方向の一方側に配置される第1移動部材と、前記印刷版の前記第2方向の他方側に配置される第2移動部材と、前記第1移動部材を前記第2方向の他方へ移動させることによって、前記印刷版を前記第2方向の他方へ移動させるとともに、前記第2移動部材を前記第2方向の一方へ移動させることによって、前記印刷版を前記第2方向の一方へ移動させる移動駆動部と、を含み、前記第1移動部材の前記第2方向の他方への移動距離が、前記第2移動部材の前記第2方向の一方への移動距離よりも大きい。
【0021】
第14態様は、第1態様から第13態様のいずれか1つの印刷版位置決め装置であって、前記導通検出部からの検出信号に応じて、前記第1移動ユニットおよび前記第2移動ユニットの駆動を制御することを含む規定の位置決め処理を実行する制御部、をさらに備え、前記制御部は、前記第1ピンと前記第2ピンの間の導通が検出されるまで、前記位置決め処理を繰り返し実行する。
【0022】
第15態様は、第14態様の印刷版位置決め装置であって、前記位置決め処理の実行回数が規定の回数を越える場合に報知する報知部をさらに備える。
【0023】
第16態様は、第14態様または第15態様の印刷版位置決め装置であって、前記第1ピンの前記外周面の回転方向および回転量を検出する回転検出器、をさらに備え、前記制御部は、前記回転検出器からの検出信号に応じて、前記位置決め処理を実行する。
【0024】
第17態様は、第1態様から第16態様のいずれか1つの印刷版位置決め装置であって、前記第1ピンおよび前記第2ピンの硬度が、前記印刷版の硬度よりも大きい。
【0025】
第18態様は、画像記録装置であって、請求項1から第17態様のいずれか1項に記載の位置決め装置と、前記位置決め装置によって位置決めされた前記印刷版に画像を形成する画像形成部とを備える。
【発明の効果】
【0027】
第1態様の印刷版位置決め装置によると、印刷版を第1および第2ピンの各外周面に接触させた状態で、該印刷版を第2方向へ移動させたとき、印刷版と各ピンの間の摩擦力によって、各ピンの外周面を回転軸線まわりに回転させることができる。このため、各ピンまたは印刷版において削りかすが発生することを抑制できる。したがって、当該削りかすの発生によって、印刷版と各ピンの接触が阻害されることを抑制でき、もって印刷版の位置決めが不良となることを抑制できる。また、第1ピンおよび第2ピンそれぞれの外周面間の導通を検出することによって、第1ピンおよび第2ピンに対する印刷版の接触を適切に検出できる。これにより、第1ピンおよび第2ピン各々の外周面で印刷版を適切に位置決めできる。
【0028】
第2態様の印刷版位置決め装置によると、第1導通部の摺動部が、第1ピンの外周面に接触しつつ摺動する。このため、第1ピンの外周面が回転しても、当該外周面と第1導通部の間の導通を、適切に確保できる。
【0029】
第3態様の印刷版位置決め装置によると、摺動部を第1ピンの回転軸線に接近する方向へ付勢する。これにより、摺動部を第1ピンの外周面に押し付けることができるため、第1ピンと摺動部の間の導通を、適切に確保できる。
【0030】
第4態様の印刷版位置決め装置によると、第1導通部が摺動部を第1方向とは交差する方向へ付勢する。この場合、摺動部が第1ピンの外周面を第1方向へ押圧する力を軽減できる。このため、第1ピンの外周面ががたつきを有する場合に、摺動部が第1ピンの外周面を第1方向へ変位させることを軽減でき、もって、印刷版の位置決めが妨げられることを抑制できる。
【0031】
第5態様の印刷版位置決め装置によると、第1導通部が弾性的に摺動部を付勢する。この場合、摺動部がピンの外周面を押圧する力を和らげることができる。したがって、摺動部による押圧が、第1ピンの外周面の回転を妨げることを抑制できる。
【0032】
第6態様の印刷版位置決め装置によると、板バネに生じる弾性力によって、摺動部を第1ピンの外周面に適度な力で接触させることができる。
【0033】
第7態様の印刷版位置決め装置によると、第1導通部が、湾曲する弧状部を有する板バネで構成されており、当該弧状部に配置された摺動部が第1ピンの外周面上を摺動する。この場合、摺動部が外周面に対して接触する周方向の長さを短くすることができるため、摺動部が外周面の正逆両方向の回転を妨げることを軽減できる。
【0034】
第8態様の印刷版位置決め装置によると、摺動部における第1ピンの外周面に接触する摺動面が、第3方向に長さを有する。このため、摺動面の面積を増やすことができ、第1ピンの外周面と摺動面との間に発生する単位面積当たりの摩擦力を低減させることができる。この場合、外周面の局所的に摩擦力がかかる場合と比べて、摺動部または外周面における削りかすの発生を抑制できる。したがって、削りかすの発生によって、印刷版と第1ピンの接触が阻害されることを抑制できる。
【0035】
第9態様の印刷版位置決め装置によると、ガイドによって印刷版の第3方向における位置が所定の規制範囲に規制され、かつ、第1ピンおよび第2ピンそれぞれの外周面が、当該規制範囲と第1方向に重なる大きさを有する。この場合、印刷版を第1方向に移動させたときに、印刷版を第1ピンおよび第2ピンの外周面に適切に接触させることができる。
【0036】
第10態様の印刷版位置決め装置によると、摺動部の両端部が規制範囲の外側に配置される。このため、仮に、摺動部の両端部のいずれか一方が第1ピンの外周面に対して摺動することによって、第1ピンに削りかすが付着したとしても、当該削りかすが外周面の規制範囲内に付着することを軽減できる。したがって、当該削りかすの発生によって、印刷版と第1ピンの接触が阻害されることを有効に軽減できる。
【0037】
第11態様の印刷版位置決め装置によると、摺動部が規制範囲と重なる大きさを有する。この場合、摺動部が規制範囲と重ならない場合と比べて、第1ピンの外周面の第3方向における長さを短くすることができるため、印刷版位置決め装置の占有空間を小さくすることができる。
【0038】
第12態様の印刷版位置決め装置によると、第1部材と第2部材の間で、印刷版の第3方向の位置を規制できる。
【0039】
第13態様の印刷版位置決め装置によると、第1移動部材の他方への移動距離を、第2移動部材の一方への移動距離よりも大きくすることによって、印刷版を第2方向の他方へより大きく移動させることができる。この場合、印刷版の第2方向の他方および一方への移動によって、第1ピンおよび第2ピンそれぞれの外周面が、初期状態から他方に対応する方向へ回転を進めることとなる。したがって、複数の印刷版を順次に位置決めした場合、各ピンの外周面が一方向に回転を進めることによって、第1導通部の摺動部を、外周面の周方向全体に摺動させることができる。このため、当該摺動部が外周面の特定部分に対して局所的に摺接することを抑制できる。
【0040】
第14態様の印刷版位置決め装置によると、第1ピンと第2ピンの間の導通が検出されるまで位置決め処理が繰り返される。すなわち、第1ピンと第2ピンに印刷版が接触するまで位置決め処理が繰り返されるため、印刷版を適切に位置決めできる。
【0041】
第15態様の画像記録装置によると、位置決め処理の実行回数が規定の回数を越えることを、作業者に報知できる。これにより、作業者に対して、第1ピン、第2ピン、または印刷版における削りかすの付着状態の確認などの確認作業の実行を促すことができる。
【0042】
第16態様の画像記録装置によると、導通検出部からの検出信号に加えて、第1ピンの外周面の回転方向および回転量を検出するため、印刷版と第1ピンとの接触状態をより多角的に確認することができる。したがって、印刷版と第1ピンとの接触状態をより正確に検出することが可能になる。
【0043】
第17態様の画像記録装置によると、第1ピンおよび第2ピンの硬度が印刷版の硬度よりも大きいため、第1ピンおよび第2ピンに、印刷版の削りかすが付着することを抑制できる。このため、削りかすが第1ピンまたは第2ピンと印刷版の接触を阻害することを抑制できる。
【0044】
第18態様の画像記録装置によると、印刷版を第1および第2ピンの各外周面に接触させた状態で、該印刷版を第2方向へ移動させたとき、印刷版と各ピンの間の摩擦力によって、各ピンの外周面を回転軸線まわりに回転させることができる。このため、各ピンまたは印刷版において削りかすが発生することを抑制できる。したがって、当該削りかすの発生によって、印刷版と各ピンの接触が阻害されることを抑制でき、もって印刷版の位置決めが不良となることを抑制できる。また、第1ピンおよび第2ピンそれぞれの外周面間の導通を検出することによって、第1ピンおよび第2ピンに対する印刷版の接触を適切に検出できる。これにより、第1ピンおよび第2ピン各々の外周面で印刷版を適切に位置決めできる。これらの作用により、印刷版に対して適切な位置に画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】実施形態の画像記録装置の概略全体図である。
図2】幅寄せ機構およびパンチ孔形成機構の上面図である。
図3】位置決め機構の位置決め本体部を示す斜視図である。
図4】位置決め本体部を示す側面図である。
図5】位置決め本体部の全体および要部を示す平面図である。
図6】制御部と、画像記録装置内の各部との接続を示すブロック図である。
図7】制御部において実現される機能の一部を概念的に示す図である。
図8】画像記録時における画像記録装置の一連の動作を示すフローチャートである。
図9】幅寄せ機構による幅寄せ処理の過程を模式的に示す図である。
図10】変形例に係る位置決め本体部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0048】
<1. 実施形態>
図1は、実施形態の画像記録装置1の概略全体図である。画像記録装置1は、入力された画像データに基づいて、印刷版9の一方側の主面である記録面91を露光することにより、印刷版9に画像を記録する装置(CTP装置)である。例えば、商業用のカラー印刷工程では、画像記録装置1を用いて、画像データを構成する単色画像の各々に対応する印刷版9が作製され、そして、各印刷版9の画像が印刷用紙に重ね刷りされることによって、印刷用紙の表面にカラー画像が形成される。
【0049】
画像記録装置1は、搬送機構10、幅寄せ機構20、パンチ孔形成機構30、ドラム40、光照射部50、操作部60、および制御部70を備えている。
【0050】
<搬送機構10>
搬送機構10は、露光前の印刷版9を搬送する装置である。搬送機構10の搬送対象となる印刷版9は、例えば、矩形状の金属板であり、その記録面91に、予め感光材料が塗布されている。印刷版9は、自動供給装置またはユーザによって、画像記録装置1内の所定の搬送開始位置にセットされる。そして、搬送機構10は、搬送開始位置にセットされた印刷版9を、搬送ベルト11を回動させることによって搬送する。
【0051】
搬送機構10は、図示を省略した揺動機構によって、図1中に実線で示したパンチ対向位置P1と、図1中に二点鎖線で示したドラム対向位置P2との間で、搬送ベルト11の位置および傾きを変更する。搬送ベルト11をパンチ対向位置P1に配置し、搬送ベルト11を順方向に回動させると、パンチ孔形成機構30に対して、印刷版9が供給される。また、この状態で、搬送ベルト11を逆方向に回動させると、パンチ孔形成機構30から印刷版9を引き戻すことができる。また、搬送ベルト11をドラム対向位置P2に配置し、搬送ベルト11を順方向に回動させると、ドラム40に対して、印刷版9が供給される。
【0052】
以下の説明では、搬送機構10が印刷版9を移動させる方向を第1方向D1とする。搬送機構10は、印刷版9を第1方向D1に移動させる第1移動ユニットの一例である。また、搬送ベルト11が順方向に回動するときに印刷版9が進む向きを、第1方向D1の下流側(下流方向)とし、搬送ベルト11が逆方向に回動するときに印刷版9が進む向きを、第1方向D1の上流側(上流方向)とする。さらに、第1方向D1に直交する方向を第2方向D2とし、第1方向D1および第2方向D2に直交する方向を第3方向D3とする。搬送ベルト11がパンチ対向位置P1に配置された状態では、第1方向D1および第2方向D2は水平方向に一致し、第3方向D3は鉛直方向に一致する。
【0053】
<幅寄せ機構20>
幅寄せ機構20は、印刷版9の第2方向D2における位置を、所望の位置に位置決めする機構である。幅寄せ機構20は、印刷版9を、その種類に応じて、第2方向D2に関する規定の位置に位置決めする。
【0054】
図2は、幅寄せ機構20およびパンチ孔形成機構30の上面図である。幅寄せ機構20は、2つの幅寄せピン21a,21b、および、ピン駆動機構22を有する。幅寄せピン21aは、搬送ベルト11によって搬送される印刷版9の搬送経路に対して、第2方向D2の一方側に配置されている。また、幅寄せピン21bは、搬送ベルト11によって搬送される印刷版9の搬送経路に対して、第2方向D2の他方側に配置されている。
【0055】
ピン駆動機構22は、幅寄せピン21a,21bそれぞれを、第2方向D2(搬送幅方向)の両側へ個別に往復移動させる。ピン駆動機構22には、例えば、サーボモータの回転運動を、ボールねじを介して直進運動に変換する機構が用いられる。幅寄せ機構20は、印刷版9の第2方向D2の両側縁部を、2つの幅寄せピン21a,21bで押圧することによって、第2方向D2に関して印刷版9を位置決めする。
【0056】
幅寄せ機構20は、第2移動ユニットの一例である。そして、幅寄せピン21a,21bは、第1移動部材および第2移動部材の一例であり、ピン駆動機構22は、移動駆動部の一例である。なお、第2移動ユニットは、幅寄せピン21a,21bに加えて、印刷版9に接触する1つ以上の幅寄せピン、および、その1本以上の幅寄せピンを第2方向D2へ移動させるピン駆動機構を備えていてもよい。第2移動ユニットは、印刷版9を押圧して移動させる方式であることは必須ではなく、例えば、搬送ベルト11のようにピンとは異なる搬送方式であってもよい。
【0057】
<パンチ孔形成機構30>
パンチ孔形成機構30は、ドラム40への印刷版9の装着よりも前に、印刷版9にパンチ孔を形成するユニットである。図2に示すように、パンチ孔形成機構30は、ここでは、第2方向D2に間隔をあけて配置されている2つのパンチ具31,31を含む。図1に示すように、パンチ具31,31それぞれは、略U字状の凹部である間隙部32と、印刷版9にパンチ孔を形成するパンチピン33とを有する。間隙部32は、パンチ具31における第1方向D1の上流側部分に設けられており、第1方向D1の下流方向に窪む凹状を有する。間隙部32には、搬送機構10によって搬送される印刷版9の前端部93(第1方向D1の下流側の端縁)が挿入される。パンチピン33は、間隙部32の内側に設けられている。
【0058】
2つのパンチピン33は、図示を省略した駆動機構により上下動し、印刷版9の前端縁93の一部分を打ち抜く。これにより、印刷版9の前端部93の所定の位置に、パンチ孔が形成される。印刷版9に形成されたパンチ孔は、例えば、露光・現像後の印刷版9を使用する印刷装置において、印刷版9の位置決めを行うために用いられる。このように、印刷版9が位置決めされることによって、印刷装置において、各色の印刷版9が高精度に位置決めされる。その結果、印刷装置から出力される印刷物において、各色の画像が互いに位置ずれすることを抑制できる。
【0059】
幅寄せ機構20は、パンチ孔形成機構30によって規定の位置にパンチ孔が形成されるように、印刷版9を位置決めする。なお、間隙部32の内側に挿入された印刷版9の前端部93は、後述する位置決め機構80の2つ位置決めピン83,83に接触する。これにより、印刷版9が第1方向D1に関して位置決めされる。
【0060】
<位置決め機構80>
図3は、位置決め機構80の位置決め本体部81を示す斜視図である。図4は、位置決め本体部81を示す側面図である。図4中、ガイドユニット87の一部(上ガイド871および下ガイド873)の一部を断面図にて示している。図5は、位置決め本体部81の全体および要部を示す平面図である。
【0061】
パンチ孔形成機構30は、印刷版9を第1方向D1に関して位置決めする位置決め機構80を備えている。位置決め機構80は、第2方向D2に間隔をあけて配置された2つの位置決め本体部81,81を有する。2つの位置決め本体部81,81は、互いに同一の構成を備えている。具体的に、位置決め本体部81,81それぞれは、土台部82、位置決めピン83、導通部85、およびガイドユニット87を備える。
【0062】
位置決めピン83は、搬送機構10によって第1方向D1の下流側へ搬送される印刷版9の前端部93(詳細には、印刷版9における第1方向D1の下流側の側端面)に接触することによって、印刷版9を第1方向D1に関して位置決めする。ここでは、位置決め本体部81,81それぞれの位置決めピン83,83が、第2方向D2に間隔をあけて配置されており、位置決めピン83,83の双方が、印刷版9が接触することによって、印刷版9が第1方向D1に関して位置決めされる。2つの位置決めピン83,83は、第1ピンおよび第2ピンの一例である。
【0063】
位置決めピン83は、軸部831および回転体833を有する。軸部831は、軸部831の下端に形成されたネジ部(不図示)に螺合するナット832によって土台部82の上面に固定されている。回転体833は、金属などの導電性を有する素材で形成されており、第3方向D3に延びる軸を中心とする円筒状を有する。回転体833は、軸部831の外周側に取り付けられている。回転体833は、導電性を有する素材で形成されている。なお、本実施形態では、回転体833の回転軸線Q1が第1方向D1および第2方向D2に直交する第3方向D3に平行に延びているが、これは必須ではない。回転軸線Q1は、第1方向D1および第2方向D2の双方に交差する方向であればよい。
【0064】
軸部831は、回転体833を回転軸線Q1まわりに正逆両方向に回転させるように軸支する。軸部831は、回転体833を回転軸線Q1まわりに回転することが可能に保持する保持具の一例である。詳細な図示を省略するが、軸部831は、回転体833をスムーズに回転させる軸受け構造を有する。回転体833は、第3方向D3に延びる軸を中心とする円筒状の外周面835を有する。外周面835は搬送機構10によって第1方向D1の下流側へ移動される印刷版9の前端部93に当接する。
【0065】
導通部85は、摺動電極部材851(導通ブラシ)と、摺動電極部材851を一定姿勢に保持する電極保持具852を備える。摺動電極部材851は、導通性を有する素材(例えば、銅など)で形成された板状の部材である。摺動電極部材851は、図5に示すように、平面視において円弧状(ここでは、半円弧状)である弧状部853と、弧状部853に連続した平板状の固定板部854とを有する。なお、弧状部853の平面視形状は、円弧状に限定されるものではなく、例えば、楕円弧状であってもよい。固定板部854は、ネジ855を介して電極保持具852に固定される。本実施形態では、2つの位置決め本体部81それぞれの摺動電極部材851,851と、後述する導通検出回路857および導通検出器858とによって、位置決めピン83,83間の導通を検出する導通検出部84が構成されている(図4参照)。
【0066】
弧状部853は、位置決めピン83の外周面835に向かって(換言すると、回転軸線Q1に向かって)凸状に湾曲している。弧状部853の中間部には、位置決めピン83の外周面835に摺動可能に接触する摺動部856が設けられている。摺動部856が外周面835に対して接触しつつ摺動することによって、外周面835が回転しても、当該外周面835と導通部85の間の導通を、適切に確保できる。
【0067】
摺動電極部材851は、弾性的に変形することが可能な弾性部材で構成されており、ここでは、薄板状の板バネで構成されている。摺動電極部材851は、ネジ855によって電極保持具852に固定された固定板部854および弧状部853との間の境界部分を支点として、弧状部853が水平方向に弾性的に変位することが可能となっている。電極保持具852は、摺動部856を位置決めピン83の外周面835に接触させた状態で、当該摺動部856を外周面835へ向けて付勢する。このように、本例では、摺動電極部材851が弾性的に摺動部856を付勢するため、摺動部856が外周面835を押圧する力を和らげることができる。特に、摺動電極部材851が板バネであるため、当該板バネで生じる弾性力によって、摺動部856を外周面835に適度な力で接触させることができる。したがって、摺動部856による押圧が、外周面835の回転を妨げることを抑制できる。
【0068】
導通部85の摺動電極部材851は、回転体833の外周面835に導通接続される部分である。図2または図4に示すように、2つの位置決め本体部81,81それぞれの各摺動電極部材851,851は、1つの導通検出回路857によって互いに接続されている。摺動電極部材851,851は、第1および第2導通部の一例である。導通検出回路857には、摺動電極部材851,851間の導通を検出する導通検出器858が設けられている。導通検出器858は、例えば、導通検出回路857を流れる電流を検出するテスターによって構成されうる。導通検出器858は、制御部70と電気通信可能に接続されており、導通状態に関する情報(例えば、電流量または抵抗値など)を示す信号を制御部70へ出力する。
【0069】
印刷版9が導電性を有する素材(例えば、アルミニウム)で形成されている場合、図2に示すように、当該印刷版9が2つの位置決めピン83,83の外周面835,835に接触すると、2つの摺動電極部材851,851が、外周面835,835および印刷版9を介して電気的に接続された導通状態となる。この状態で、導通検出器858が導通部85,85間に電圧を印加することによって、導通検出回路857に、印刷版9の抵抗に応じた電流が発生する。
【0070】
例えば、印刷版9が位置決めピン83,83(詳細には、外周面835,835)に対して正常に接触している場合、摺動電極部材851,851間を流れる電流値は、あらかじめ想定された基準値にほぼ一致した値となる。また、印刷版9が位置決めピン83,83の双方またはどちらか一方に接触していない場合は、導通検出回路857に電流が流れない。さらに、印刷版9と各位置決めピン83,83との間に異物(印刷版9の削りかすなど)が介在することによって、印刷版9が位置決めピン83,83と正常に接触していない場合、導通部85,85間を流れる電流は、所定の基準値とは異なる値(例えば、基準値よりも小さい値)となりうる。後述する制御部70の判定部71は、導通検出器858からの電流値を所定の基準値と比較することによって、位置決めピン83,83の外周面835,835と印刷版9の接触状態を判定する。
【0071】
図5に示すように、本例では、摺動電極部材851は、回転軸線Q1よりも第1方向D1の下流側に配置されており、摺動部856は、位置決めピン83の外周面835における回転軸線Q1よりも第1方向D1の下流側の部分に接触する。そして、摺動電極部材851は、摺動部856が外周面835に接触する状態で、当該摺動部856を第1方向D1の上流側へ付勢する。摺動電極部材851が摺動部856を付勢する付勢方向と、第1方向D1とは、互いに交差する方向である。当該付勢方向と、第1方向D1とが成す角度をθとすると、本例では、θ=45°としている。また、摺動部856が付勢される向きは、第1方向D1の上流方向の成分と、第2方向D2の他方の成分とを持つ。
【0072】
画像記録装置1では、搬送機構10が印刷版9を第1方向D1の下流側へ搬送した場合、図5に示すように、位置決めピン83の外周面835に対して、第1方向D1の下流方向の押圧力F1がかけられる。また、図5に示すように、摺動電極部材851が摺動部856を第1方向D1と交差する付勢方向へ付勢力F2で付勢する場合、当該付勢力F2は、第1方向D1の上流方向への付勢力F2a(=F2・cosθ)と、第2方向D2の他方への付勢力F2b(=F2・sinθ)とに分解される。すると、第1方向D1に関して、位置決めピン83にかかる力は、F1-F2aとなる。
【0073】
位置決めピン83においては、軸部831に対して回転体833をスムーズに回転させるため、回転体833と軸部831の間に微小な隙間が形成されている。このため、回転体833の外周面835に対して、径方向(回転軸線Q1に直交する方向)の内方(すなわち、回転軸線Q1に接近する方向)へ押圧力が加わると、回転体833ががたつくことによって、その位置が押圧力の方向へわずかに変位する場合がある。この回転体833のがたつきを考慮しつつ、位置決めピン83による印刷版9の第1方向D1に関する位置決めを精度良く行なうためには、位置決め時において、押圧力F1によって、できるだけ回転体833を第1方向D1の下流側へ最大限変位させることが望ましい。そして、摺動部856が回転体833を第1方向D1へ変位させることを抑制するため、摺動部856が外周面835を上流側へ押す力(付勢力F2a)をできるだけ小さくすることが望ましい。本例では、上述したように、摺動電極部材851が摺動部856を付勢する向きが、第1方向D1の下流の向きとは交差する方向に設定されている。この場合、摺動部856の付勢する向きが、例えば、第1方向D1と一致する場合に比べて、押圧力F1に逆らう付勢力F2aを小さくすることができる。これにより、摺動部856が回転体833を第1方向D1の上流へ押し返すことによって、外周面835を第1方向D1の上流側に変位させることを抑制できる。したがって、位置決めピン83による印刷版9の第1方向D1に関する位置決めを精度良く行なうことができる。
【0074】
本例では、摺動部856が湾曲した弧状部853の一部とされており、摺動部856が回転体833の外周面835に対して接するように、弧状部853が配置される。このため、例えば、摺動部856が平板状の一部とされた場合と比べて、外周面835が摺動部856と接する部分の周方向(回転軸線Q1まわりの回転方向)の長さをできるだけ短くすることができる。すなわち、外周面835における摺動部856と接触する部分の面積をできるだけ小さくすることができる。これにより、外周面835に摺動部856が接触することによって、外周面835の正逆両方向への回転(すなわち、回転体833の正逆両方向の回転)が妨げられることを軽減できる。
【0075】
本例では、外周面835に摺接する摺動部856の摺動面が、第3方向D3に長さL1を有する(図4参照)。この長さL1は、例えば、印刷版9の厚さよりも十分に大きい。この場合、摺動部856の摺動面の面積を増やすことができ、摺動面と外周面835と摺動面との間に発生する単位面積当たりの摩擦力を低減させることができる。このため、外周面835の一部に対して局所的に摩擦力がかかる場合と比べて、摺動部856または外周面835において削りかすが発生することを抑制できる。したがって、削りかすの発生によって、印刷版9と位置決めピン83の接触が阻害されることを抑制できる。
【0076】
図4に示すように、ガイドユニット87は、印刷版9の第3方向D3の位置を所定の規制範囲RA1内に規制する。ガイドユニット87は、上ガイド871および下ガイド873を備える。上ガイド871および下ガイド873は、例えば、金属で形成された部材である。上ガイド871は、規制範囲RA1の上端TA1を規定する下面881を有する。下ガイド873は、規制範囲RA1の下端TA2を規定する上面883を有する。下面881と上面883とは、それぞれ、互いに間隙をあけて平行に対向する。上ガイド871および下ガイド873は、それぞれ、第1部材および第2部材の一例である。
【0077】
上ガイド871および下ガイド873は薄板状を有しており、土台部82上に重ねて配置された状態で、土台部82に固定されている。このため、ガイドユニット87は、位置決め機構80の位置決め本体部81と一体化されている。ただし、これは必須ではなく、ガイドユニット87は、位置決め本体部81とは別の部位に設けられていてもよい。
【0078】
図3および図5に示すように、上ガイド871は、第1方向D1の下流側から上流側へ向かって順に、第1部分891、第2部分892および第3部分893を有する。第1部分891は、下ガイド873に接触する平板状である。第2部分892は、第1部分891に連続しており、下ガイド873から第3方向D3の上方に立ち上がる部分である。第3部分893は、第2部分892に連続しており、下ガイド873の上面883に対して離間しつつ対向する下面881を有する。第3部分893の第1方向D1の上流側端部は、上側に反る形状の鍔部を有する。この鍔部により、搬送機構10によって印刷版9が下流側へ搬送されたときに、当該鍔部によって、印刷版9の前端部93が規制範囲RA1の内側へ誘導される。
【0079】
図3に示すように、上ガイド871および下ガイド873それぞれの略中央には、貫通穴が設けられており、当該貫通穴に位置決めピン83および導通部85が配置されている。上ガイド871の貫通穴は、上ガイド871における上記第1部分891、第2部分892および第3部分893を第3方向D3に貫通する位置に設けられている。
【0080】
<ガイドユニット87の規制範囲RA1について>
図4に示すように、回転体833の外周面835は、ガイドユニット87による規制範囲RA1と第1方向D1に重なっており、かつ、規制範囲RA1よりも上下方向(第3方向D3)に大きい長さを有する。このため、印刷版9の第3方向D3の位置が規制範囲RA1内に規制されることによって、印刷版9の前端部93が、2つの位置決めピン83,83それぞれの外周面835,835に当接される。
【0081】
摺動部856の第3方向D3の両端部である上端部TB1および下端部TB2は、いずれもガイドユニット87による規制範囲RA1より外側に配置されている。具体的には、上端部TB1は規制範囲RA1よりも上側に配置され、下端部TB2は規制範囲RA1よりも下側に配置されている。すなわち、上端部TB1および下端部TB2は、いずれも外周面835における規制範囲RA1に対応する領域RT1(規制範囲RA1と第1方向D1に重なる領域)とは重ならない高さに配置されている。このため、摺動部856の第3方向D3の両端部は、ガイドユニット87による規制範囲RA1外の高さで、位置決めピン83の外周面835に接触する。
【0082】
仮に、摺動部856の摺動面が第3方向D3に対して傾く姿勢で配置された場合、摺動部856の上端部TB1および下端部TB2のどちらか一方が外周面835に接触して、外周面835上を摺動する可能性がある。この場合、摩擦力が局所的に作用することによって、外周面835に削りかすが発生しうる。本例では、摺動部856の上端部TB1および下端部TB2が規制範囲RA1との外側に配置されているため、仮に、削りかすが発生したとしても、当該削りかすが外周面835の領域RT1に付着する可能性が軽減されている。したがって、当該削りかすの発生によって、外周面835と印刷版9の接触が阻害されることを有効に軽減できる。
【0083】
回転体833の硬度(例えば、ビッカース硬さ)は、好ましくは、印刷版9の硬度よりも大きい。この場合、回転体833の外周面835に対して印刷版9を位置決めする際に、外周面835の磨耗を抑制することができる。回転体833は、好ましくは、150Hv以上の硬度を有する素材で形成される。さらに、回転体833は印刷版9の素材(アルミニウム)とは異なる素材を選定している。ここでは、ステンレス鋼を選定している。仮に、回転体833の素材が印刷版9の素材と同一であると、印刷版9の削りかすが発生したときに、当該削りカスが回転体833に付着しやすい。本実施形態では、回転体833と印刷版9の素材が異なるため、仮に印刷版9の削りカスが発生しても回転体833に付着することが抑制できる。なお、回転体833は特殊鋼または焼き入れ処理した鋼材で形成されてもよい。
【0084】
図4に示すように、導通部85には、回転検出器86が設けられている。回転検出器86は、位置決めピン83における回転体833の回転軸線Q1まわりの回転量および回転方向を検出する。回転検出器86は、例えば、光センサまたはエンコーダなどで構成されうる。回転検出器86は、制御部70と電気通信可能に接続されており、制御部70に対して、回転体833の回転に関する検出信号を出力する。
【0085】
<ドラム40>
図1に戻って、ドラム40は、パンチ孔形成機構30の下方に配置される回転体である。ドラム40は、第2方向D2に延びる円筒状の外周面41を有する。図1中に破線で示したように、ドラム40には、回転駆動部42が接続されている。回転駆動部42は、例えば、モータと、モータの駆動力をドラム40に伝達するタイミングベルト等の動力伝達機構とにより構成される。回転駆動部42を動作させると、ドラム40は、第2方向D2に延びる中心軸まわりに回転する。
【0086】
ドラム40の外周面41には、複数の前端クランパ43と、複数の後端クランパ44とが、設けられている。複数の前端クランパ43は、搬送機構10から搬送される印刷版9の前端縁を、ドラム40の外周面41に固定する。複数の後端クランパ44は、印刷版9の後端縁(搬送方向上流側の端縁)を、ドラム40の外周面41に固定する。これにより、ドラム40の外周面41に、印刷版9が、記録面91を外側へ向けた状態で装着される。
【0087】
<光照射部50>
光照射部50は、ドラム40の外周面41に向けて記録光を照射するユニットである。光照射部50は、レーザ光などの記録光を出射する記録ヘッド51と、記録ヘッド51を第2方向D2に移動させるヘッド移動機構52とを有する。印刷版9に画像を記録するときには、印刷版9が装着されたドラム40を回転させながら、ヘッド移動機構52により記録ヘッド51を第2方向D2に移動させ、記録ヘッド51から印刷版9の記録面91へ向けて、レーザ光を照射する。これにより、印刷版9の記録面91に、単色画像に応じた露光領域が形成される。光照射部50は、位置決め機構80によって位置決めされた印刷版9に画像を形成する画像形成部の一例である。
【0088】
露光後の印刷版9は、図示を省略した搬出機構によって、ドラム40から画像記録装置1内の所定の搬出位置へ搬出される。
【0089】
<操作部60、制御部70>
操作部60は、ユーザインタフェースとなる部位である。操作部60は、表示部61と入力部62とを有する。表示部61は、画像記録装置1の処理に関わる種々の情報を、画面上に表示する。表示部61には、例えば、液晶ディスプレイが用いられる。入力部62は、ユーザからの種々の情報の入力を受け付ける。入力部62には、例えば、キーボードやマウスが用いられる。画像記録装置1のユーザは、表示部61を確認しながら、入力部62を操作して、種々の情報を制御部70に入力できる。なお、表示部61の機能と、入力部62の機能との双方が、タッチパネル式のディスプレイなどの単一のデバイスにより、実現されていてもよい。
【0090】
図6は、制御部70と、画像記録装置1内の各部との接続を示すブロック図である。図6中に概念的に示したように、制御部70は、CPU等のプロセッサ701、RAM等のメモリ702、およびハードディスクドライブ等の記憶部703を有するコンピュータにより構成される。記憶部703内には、画像記録装置1において実現される各処理を実行するためのコンピュータプログラムPがインストールされている。
【0091】
図6に示すように、制御部70は、上述した搬送機構10、ピン駆動機構22、パンチ孔形成機構30、回転駆動部42、前端クランパ43、後端クランパ44、記録ヘッド51、ヘッド移動機構52、表示部61、入力部62、導通検出器858、および、回転検出器86のそれぞれと、電気通信可能に接続されている。制御部70は、記憶部703に記憶されたコンピュータプログラムPをメモリ702に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに従ってプロセッサ701が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、印刷版9の搬送、第2方向D2の位置決め、パンチ孔の形成、画像の記録等の各処理が、順次に進行する。
【0092】
図7は、制御部70において実現される機能の一部を概念的に示す図である。図7に示すように、制御部70は、判定部71を有する。制御部70は、判定部71によって、印刷版9が2つの位置決めピン83,83のそれぞれに正常に接触しているか否かを判定する接触判定処理を行なう。この接触判定処理については、後述する。
【0093】
<画像記録装置1の動作>
図8は、画像記録時における画像記録装置1の一連の動作を示すフローチャートである。なお、図8に示す各動作の手順は一例であり、画像記録装置1の動作の手順は矛盾が生じない限りにおいて適宜変更してもよい。また、以下に説明する画像記録装置1の各動作は、特に断らない限り、制御部70の制御下で行なわれるものとする。
【0094】
画像記録装置1において印刷版9に画像を記録する場合、自動供給装置(不図示)またはユーザが、画像記録装置1に印刷版9をセットする。また、ユーザは、入力部62を操作することによって、動作開始の指示を入力する。この入力に基づいて、画像記録装置1は、搬送機構10による印刷版9の搬入を開始する。具体的には、搬送機構10が、まず、搬送ベルト11をパンチ対向位置P1に配置する。そして、搬送ベルト11を順方向に回動させることによって、印刷版9を位置決め機構80の各位置決め本体部81へ向けて搬送するステップS1が行なわれる。印刷版9の前端部93は、幅寄せ機構20の幅寄せピン21a,21bの間を通過して、各位置決め本体部81のガイドユニット87内へ挿入される。そして、印刷版9の前端部93が、位置決めピン83,83に押し当てられる。
【0095】
ステップS1に続いて、幅寄せ機構20のピン駆動機構22が駆動されることによって、印刷版9を、第2方向D2において幅寄せする(ステップS2)。ここでは、パンチ孔形成機構30が印刷版9の規定の位置にパンチ孔を形成できるように、幅寄せ機構20が第2方向D2の規定位置に印刷版9を幅寄せする。このステップS2の幅寄せ処理(位置決め処理)について、図9を参照しつつ説明する。
【0096】
図9は、幅寄せ機構20による幅寄せ処理の過程を模式的に示す図である。図9に示すように、幅寄せ機構20の幅寄せピン21a,21bは、初期の段階PH1では、印刷版9から第2方向D2に離れた位置に配置されている。この段階PH1から、幅寄せ機構20は、ピン駆動機構22を動作させることにより、印刷版9に対して第2方向D2一方にある幅寄せピン21aを、印刷版9の第2方向D2一方の端縁部に接触させる。さらに、幅寄せ機構20は、当該幅寄せピン21aで印刷版9を押圧することによって、印刷版9を、第2方向D2の他方へ移動させる(段階PH2)。この段階PH2では、印刷版9は、図9中に一点鎖線で示した規定位置Cよりも、第2方向D2の他方側の位置まで一旦移動される。
【0097】
段階PH2の後、幅寄せ機構20は、ピン駆動機構22を動作させることによって、一方の幅寄せピン21aを、第2方向D2の一方へ移動させる。これにより、幅寄せ機構20は、幅寄せピン21aを、印刷版9から一旦離間させる(段階PH3)。
【0098】
続いて、幅寄せ機構20は、ピン駆動機構22を動作させることによって、他方の幅寄せピン21bを、印刷版9における第2方向D2の他方の端縁部に接触させるとともに、当該幅寄せピン21bで印刷版9を押圧する。これによって、印刷版9を、第2方向D2の一方へ移動させる。そして、幅寄せ機構20は、印刷版9の第2方向D2の位置が規定位置Cと一致するように、幅寄せピン21bを第2方向D2の一方側へ移動させて停止させる。これによって、印刷版9の第2方向の位置が、規定位置Cに位置決めされる(段階PH4)。
【0099】
段階PH4にて、印刷版9が規定位置Cに位置決めされると、幅寄せ機構20は、一方の幅寄せピン21aを、第2方向D2の他方へ移動させることによって、印刷版9の第2方向D2の一方の端縁部に再び接触させる(段階PH5)。これにより、印刷版9が、幅寄せ機構20の幅寄せピン21a,21bに挟持されることによって、一定位置に固定される。
【0100】
図8に戻って、ステップS2の幅寄せ処理が完了すると、判定部71が、印刷版9と位置決めピン83,83とが正常に接触しているか否かを判定する(ステップS3)。上述したように、判定部71は、導通検出器858から出力される電流値に基づいて、接触状態を判定する。
【0101】
ステップS3において、接触状態が異常であると判定された場合(Noの場合)、ステップS2の幅寄せ処理が再度実行される。すなわち、印刷版9と位置決めピン83,83における正常な接触が確認されるまで、ステップS2の幅寄せ処理が繰り返し実行される。なお、本実施形態では、ステップS3の後、幅寄せ処理の実行回数が、規定回数を超えるか否かが判定される(ステップS31)。そして、ステップS31において、規定回数を超えない場合(Noの場合)は、ステップS2に戻って幅寄せ処理が実行される。これに対して、幅寄せ処理の実行回数が規定回数を超える場合(ステップS31において、Yesの場合)、エラー報知が行なわれる(ステップS32)。エラー報知としては、例えば、制御部70が表示部61に印刷版9と位置決めピン83,83との接触状態が異常であることを示す画面を表示すること、制御部70がランプ(不図示)を点灯させること、または、制御部70が不図示のスピーカーから所定の警告音を発すること、などが含まれる。制御部70は、エラー報知を行なった後、画像記録装置1における可動部の動作を一旦停止させる。これにより、作業者が、画像記録装置1において、確認作業を行うことが可能となる。このように、印刷版9と2つの位置決めピン83,83との接触状態が異常である場合に、エラー報知が行われることによって、作業者に対して、エラーに対応した確認作業(例えば、位置決めピン83,83または印刷版9における、削りかす等の付着状態の確認)の実行を促すことができる。
【0102】
ステップS3において、接触状態が正常であると判定された場合(Yesの場合)、パンチ孔形成機構30によるパンチ孔の形成が行われる(ステップS4)。具体的には、幅寄せ処理によって規定位置Cに位置決めされた段階PH5(図9参照)の印刷版9に対して、パンチ孔形成機構30の2つのパンチ具31,31がパンチ孔を形成する。詳細には、各パンチピン33を上下動させることにより、印刷版9の前端縁93の一部分が打ち抜かれる。その結果、印刷版9の前端部93の所定の位置に、パンチ孔が形成される。
【0103】
ステップS4にて、印刷版9にパンチ孔が形成されると、制御部70は、印刷版9をドラム40に装着する処理を行なう(ステップS5)。このステップS5では、搬送機構10が、搬送ベルト11を、逆方向に回動させることによって、各パンチ具31の間隙部32から、印刷版9の前端部93が引き抜かれ、その後、印刷版9の全体が、搬送ベルト11上に配置される。続いて、搬送機構10は、搬送ベルト11の位置を、パンチ対向位置P1からドラム対向位置P2に切り替える。その後、搬送機構10は、搬送ベルト11を、順方向に回動させることにより、印刷版9の前端部93をドラム40へ供給する。
【0104】
ドラム40に供給された印刷版9の前端部93は、複数の前端クランパ43に接触する。これにより、印刷版9が停止する。印刷版9が停止すると、制御部70は、複数の前端クランパ43を閉じる。これにより、ドラム40の外周面41と前端クランパ43との間に、印刷版9の前端縁が固定される。その後、制御部70は、ドラム40を回転させることによって、搬送機構10からドラム40へ、印刷版9を受け渡す。そして、印刷版9の全体がドラム40の外周面41に配置された後、制御部70は、複数の後端クランパ44を閉じ、ドラム40の外周面41と後端クランパ44との間に、印刷版9の後端縁を固定する。その結果、ドラム40の外周面41に印刷版9が装着される。
【0105】
ドラム40の外周面41に印刷版9が装着されると、制御部70は、ヘッド移動機構52を動作させることによって、記録ヘッド51を、印刷版9の記録開始位置と対向する位置まで、第2方向D2へ移動させる(ステップS6)。
【0106】
ステップS6の後、制御部70は、印刷版9の記録面91に、画像を記録する(ステップS7)。具体的には、制御部70は、回転駆動部42、ヘッド移動機構52、および、記録ヘッド51を動作させる。これによって、ドラム40の回転、および、記録ヘッド51の第2方向D2(副走査方向)への移動が並行に行われつつ、記録ヘッド51から印刷版9へ向けて、記録光が照射される。これにより、印刷版9の記録面91に、画像が形成される。
【0107】
本例では、ステップS2の幅寄せ処理において、印刷版9を位置決めピン83,83それぞれの外周面835に接触させた状態で、印刷版9を第2方向D2へ移動させる。このため、印刷版9と外周面835との間の摩擦力によって、外周面835を回転軸線Q1まわりに回転させることができる。このため、各位置決めピン83または印刷版9において、削りかすが発生することを抑制できる。したがって、当該削りかすの発生によって、印刷版9と各位置決めピン83の接触が阻害されることを抑制でき、もって、印刷版9の第1方向D1に関する位置決めが不良となることを抑制できる。
【0108】
本例では、導通検出器858によって、2つの位置決めピン83,83それぞれの外周面835,835間の導通が検出される。これによって、2つの外周面835,835と印刷版9の接触を有効に検出できるため、印刷版9を第1方向D1に関して適切に位置決めできる。さらに、外周面835,835間の導通が検出されるまで、幅寄せ処理が繰り返し行なわれることによって、印刷版9を適切に位置決めできる。すなわち、印刷版9の位置決め不良の発生を有効に低減できる。また、位置決めピン83の外周面835が回転できるため、外周面835と印刷版9の間の摩擦が小さくなる。このため、幅寄せ処理を繰り返し実行しても、印刷版9の前端部93が損耗することを抑制できる。
【0109】
本例では、段階PH2において、ピン駆動機構22が幅寄せピン21aを第2方向D2の他方へ移動させるときの移動距離L11が、段階PH4において、ピン駆動機構22が幅寄せピン21bを第2方向D2の一方へ移動させるときの移動距離L12よりも大きい。この場合、印刷版9が、段階PH2にて他方へ移動する距離が、段階PH4にて一方へ移動する距離よりも大きくなる。すると、幅寄せ処理が完了した時点で、位置決めピン83の外周面835は、初期状態から第2方向の他方に対応する方向に回転を進めることとなる。この場合、複数の印刷版9を順次に位置決めすることによって、外周面835が一方向に回転を進めることができる。このため、導通部85の摺動部856を、外周面835の周方向全体にわたって摺動させることができる。したがって、摺動部856が外周面835の特定領域に対して局所的に接触することを抑制できる。
【0110】
本例では、判定部71は、ステップS2が完了してから、導通検出器858からの検出信号を取得するようにしてもよい。この場合、仮に、ステップS2の間に一時的に印刷版9が位置決めピン83,83から離間したとしても、判定部71がこれに基づいて導通異常と判定することを抑制できる。このため、幅寄せ処理が過剰に行なわれることを抑制できる。
【0111】
なお、導通検出器858が、ステップS2の幅寄せ処理の間、すなわち、ピン駆動機構22が幅寄せピン21a,21bを移動させている間も、導通状態を検出し、その検出信号を制御部70へ出力してもよい。この場合、ステップS3において、判定部71が、ステップS2の間の検出信号を判断基準の一つとして採用し、接触状態を判定してもよい。そして、ステップS3において、判定部71が、ステップS2の間の導通検出器858からの検出信号に基づいて、ステップS2の間に印刷版9と位置決めピン83との接触が正常でなかったと判定した場合に、制御部70が、ステップS31を経由して、ステップS2を再度行なうようにしてもよい。
【0112】
ステップS3において、判定部71が印刷版9と接触状態を判定する際、判定部71は、回転検出器86からの検出信号を参照してもよい。具体的には、ステップS2の幅寄せ処理の間における、位置決めピン83,83それぞれの回転体833の回転量および回転方向などの情報を参照することによって、印刷版9の移動に伴い回転体833が回転していたか否かを判別できる。これにより、印刷版9が、2つの位置決めピン83によって位置決めされた状態で、幅寄せが行なわれた否かを判別できる。仮に、回転が異常であった場合には、位置決め不良が起こっている可能性があるため、判定部71が、接触異常であることを示す判定を行なってもよい。これにより、位置決めピン83の回転不良の場合にも、幅寄せ処理(ステップS2)が繰り返し行なわれるか、もしくは、エラー報知(ステップS32)が行なわれるため、印刷版9の位置決め不良の発生を有効に軽減できる。
【0113】
また、印刷版9が、非導通性の素材(例えば、樹脂)で形成されている場合、印刷版9が2つの位置決めピン83,83に接触しても、導通検出器858によって導通を検出することは困難である。これに対して、回転検出器86からの回転体833の回転に関する検出信号を取得することにより、各位置決めピン83に対する印刷版9の接触状態を間接的に検出できる。したがって、導通検出によらずとも、印刷版9の位置決めを適切に行なうことができる。
【0114】
ステップS1において、印刷版9が位置決めピン83,83に正常に接触したか否かを、導通検出器858からの検出信号に基づいて、判定部71が判定してもよい。この場合、判定部71は、例えば、基準時から一定時間経過した後、印刷版9が各位置決めピン83に接触したことを示す信号が導通検出器858から出力されないときに、接触異常が発生していると判定してもよい。そして、判定部71が当該判定をした場合には、制御部70が当該判定内容に応じた報知を行ってもよい。
【0115】
上記実施形態では、搬送機構10がパンチ対向位置P1に配置された状態では、搬送機構10による印刷版9の搬送方向(第1方向D1)が、水平方向に設定されている。しかしながら、この状態での搬送方向を水平方向に対して傾斜した方向に設定させてもよい。例えば、この搬送方向を、第1方向D1の下流に向かって下向きに傾斜させた方向とした場合、幅寄せ処理(ステップS2)の間、重力の作用によって印刷版9を位置決めピン83,83それぞれに押し当てることができる。この場合、幅寄せ処理の間に、搬送ベルト11の動作を停止させてもよい。
【0116】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0117】
上記実施形態では、図4に示すように、外周面835において、規制範囲RA1に対応する領域RT1が、摺動部856に接触する領域RT2の内側に含まれている。しかしながら、領域RT1,RT2の位置関係はこれに限定されない。図10は、変形例に係る位置決め本体部81Aを示す側面図である。図10に示す変形例では、摺動部856が規制範囲RA1よりも第3方向D3の上側に配置されている。このため、摺動部856が外周面835に対して接する高さが、規制範囲RA1よりも上側に設定されている。このため、外周面835において、摺動部856に接触する領域RT2と、規制範囲RA1に対応する領域RT1とが第3方向D3に異なる高さに設定されている。この場合、外周面835において、摺動部856と印刷版9が接触する領域が一致しないため、摺動部856の摺動によって発生しうる削りかすが、外周面835の規制範囲RA1に対応する領域RT1に付着することを抑制できる。すなわち、当該変形例の場合、図4に示す実施形態の場合と比べて、削りかすが印刷版9と外周面835の接触を阻害することをさらに抑制できる。なお、図4に示す実施形態の場合、図10に示す変形例の場合と比べて、位置決めピン83の第3方向D3の長さを短くすることができる。このため、位置決め機構80の位置決め本体部81の占有空間を小さくすることができる。
【0118】
また、上記実施形態では、摺動電極部材851は弧状部853を有し、当該弧状部853を介して回転体833の外周面835に摺動していた。しかし、摺動電極部材851は他の態様で外周面835に摺動してもよい。例えば、摺動電極部材851の先端を平板状とし、当該平板状の部分を介して回転体833の外周面835に摺動してもよい。
【0119】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定されうるものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0120】
1 画像記録装置
10 搬送機構(第1移動ユニット)
20 幅寄せ機構(第2移動ユニット)
21a,21b 幅寄せピン(第1移動部材、第2移動部材)
22 ピン駆動機構(移動駆動部)
50 光照射部(画像記録部)
61 表示部(報知部)
70 制御部
71 判定部
80 位置決め機構
81 本体部
83 位置決めピン(第1ピン、第2ピン)
831 軸部
833 回転体
835 外周面
85 導通部(第1導通部、第2導通部)
851 摺動電極部材(弾性部材、板バネ)
852 電極保持具
853 弧状部
856 摺動部
858 導通検出器
86 回転検出器
87 ガイドユニット
871 上ガイド(第1部材)
873 下ガイド(第2部材)
9 印刷版
93 前端部
C 規定位置
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向
Q1 回転軸線
RA1 規制範囲
TB1 上端部
TB2 下端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10