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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】スリーブプレス装置のカフス押え装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 71/24 20060101AFI20230207BHJP
   D06F 71/28 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
D06F71/24
D06F71/28 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019113168
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020202989
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】519221659
【氏名又は名称】ワイエイシイマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093953
【弁理士】
【氏名又は名称】横川 邦明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亮
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-360999(JP,A)
【文献】実開昭52-058200(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 71/24
D06F 71/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャツのスリーブを仕上げるスリーブプレス装置のカフス押え装置において、
前記スリーブが装着される袖立と、
前記袖立の上方に設けられており、前記スリーブのカフスが装着されるカフス装着部と、
当該カフス装着部に装着されたカフスを外側から押え付ける押え板と、
前記カフス装着部の内部に収納される位置と前記カフス装着部の外部へ張出す位置との間で進退移動する拡張板とを有しており、
前記拡張板はカフスが装着される部分のカフス装着部の部分において進退移動
さらに、前記袖立の内部に設けられており、出力ロッドが前記カフス装着部の内部で上下移動する駆動装置と、
前記出力ロッドの上下運動を前記拡張板の水平運動に変換するリンク機構と、を有しており、
さらに、前記出力ロッドの上下移動に応じて上下移動するリンク用ロッドを有しており、
前記リンク機構は、第1端が前記リンク用ロッドに回転自在に連結され、第2端が前記拡張板に回転自在に連結された第1リンクを有しており、
当該第1リンクは前記第1端から前記第2端へ向かって傾斜しており、
さらに、前記袖立に固定された基台を有しており、
当該基台には支持板が固定されており、
当該支持板に第2リンクの第1端が回転自在に取り付けられており、
前記第2リンクの第2端が前記第1リンクの第1端と第2端の間の中間部分に回転自在に連結されている
ことを特徴とするスリーブプレス装置のカフス押え装置。
【請求項2】
前記第1リンクの第1端を押し下げる第1の弾性部材を有することを特徴とする請求項記載のスリーブプレス装置のカフス押え装置。
【請求項3】
前記第1リンクの第1端を押し上げる第2の弾性部材を有することを特徴とする請求項記載のスリーブプレス装置のカフス押え装置。
【請求項4】
前記出力ロッドと共に上下移動する動部材を有しており、
当該動部材に前記押え板が固定されており、
前記動部材の動動作によって前記押え部材がカフスを外側から押え付ける
ことを特徴とする請求項記載のスリーブプレス装置のカフス押え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツ等といった衣類の袖部(すなわちスリーブ)をシワの無い状態に仕上げる装置であるスリーブプレス装置に関する。特に、袖部のプレス処理を円滑に行い得るようにするためにカフスを押える装置であるカフス押え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1により、スリーブプレス装置のカフス押え装置が知られている。この従来のスリーブプレス装置においては、ワイシャツのスリーブが袖立に装着され、スリーブのカフスがカフス押え装置によって保持される。この従来のカフス押え装置は、開閉動作する一対の押え板バネを有している。袖立に装着されたスリーブのカフスは、一対の押え板バネを閉じることにより保持される。
【0003】
一般のワイシャツにおいては、スリーブとカフスのつなぎ目部分にシワが発生し易い。このため、特許文献1のカフス押え装置を用いてカフスを保持した状態でスリーブのプレス処理を行った場合に、スリーブとカフスのつなぎ目部分において布地がクシャクシャに乱れてしまい、プレス品質が低下するおそれがあった。
【0004】
また、一般のワイシャツにおいては、スリーブのカフスの手首サイズが小さいものや、大きいものが存在する。従来のカフス押え装置においては、カフスが小さいサイズのワイシャツからカフスが大きいサイズのワイシャツのプレス処理を可能とするために、カフス押え装置においてカフスを装着する部分(すなわちカフス装着部)のサイズを予め小さいサイズに合わせていた。小さいサイズのカフスも大きいサイズのカフスもカフス押え装置に装着できるようにするためである。
【0005】
しかしながら、このような従来のカフス押え装置に、カフスが大きいサイズのワイシャツを装着した場合には、カフス装着部の所にある布地に緩みが生じ、その結果、スリーブのプレス処理を行った際に、カフスにシワが発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-360999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のカフス押え装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであり、カフスの手首サイズが小さいワイシャツでも、手首サイズが大きいワイシャツでも、シワを発生させることなく、綺麗にプレス処理を行うことを可能にしたカフス押え装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスリーブプレス装置のカフス押え装置は、シャツのスリーブを仕上げるスリーブプレス装置のカフス押え装置において、前記スリーブが装着される袖立と、前記袖立の上方に設けられており前記スリーブのカフスが装着されるカフス装着部と、当該カフス装着部に装着されたカフスを外側から押え付ける押え板と、前記カフス装着部の内部に収納される位置と前記カフス装着部の外部へ張出す位置との間で進退移動する拡張板とを有しており、前記拡張板はカフスが装着される部分のカフス装着部の部分において進退移動することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るカフス押え装置によれば、拡張板をカフス装着部から進出移動させることによってカフスを伸ばしながら、すなわち拡張させながら、スリーブをプレス処理することにした。このため、カフスの手首サイズが大きい場合であっても、シワを発生させることなく、プレス処理を行うことができる。
【0010】
また、拡張板がカフスを外側へ伸ばすので、カフスとスリーブとのつなぎ目の部分において布地がクシャクシャに乱れることを防止でき、その結果、綺麗にプレス処理を仕上げることができる。
【0011】
本発明に係るスリーブプレス装置のカフス押え装置は、前記袖立の内部に設けられており出力ロッドが前記カフス装着部の内部で上下移動する駆動装置(例えばエアシリンダ)と、前記出力ロッドの上下運動を前記拡張板の水平運動に変換する運動変換装置(例えばリンク機構)とを有することを特徴とする。
【0012】
このカフス押え装置によれば、拡張板を供えたカフス押え装置を小型に形成できる。また、出力ロッドの動きを無理なく押え板の動きに変換できる。
【0013】
本発明に係るスリーブプレス装置のカフス押え装置において、前記運動変換装置はリンク機構である。このカフス押え装置によれば、拡張板を供えたカフス押え装置を小型に形成できる。また、出力ロッドの動きを無理なく押え板の動きに変換できる。
【0014】
本発明に係るスリーブプレス装置のカフス押え装置は、前記出力ロッドの上下移動に応じて上下移動するリンク用ロッドを有しており、前記リンク機構は、第1端が前記リンク用ロッドに回転自在に連結され、第2端が前記拡張板に回転自在に連結された第1リンクを有しており、当該第1リンクは前記第1端から前記第2端へ向かって傾斜していることを特徴とする。このカフス押え装置によれば、出力ロッドの上下移動を確実に拡張板の水平移動に変換できる。
【0015】
本発明に係るスリーブプレス装置のカフス押え装置は、前記袖立に固定された基台を有しており、当該基台には支持板が固定されており、当該支持板に第2リンクの第1端が回転自在に取り付けられており、前記第2リンクの第2端が前記第1リンクの第1端と第2端の間の中間部分に回転自在に連結されていることを特徴とする。このカフス押え装置によれば、リンク機構による上下運動から水平運動への運動変換を確実に行うことができる。
【0016】
本発明に係るスリーブプレス装置のカフス押え装置の第の発明態様は、前記第1リンク(48a)の第1端を押し下げる第1の弾性部材(例えば圧縮バネ)を有することを特徴とする。このカフス押え装置によれば、リンク機構が圧縮バネのような弾性部材によって押し出されるので、拡張板を弾性的に進出移動(すなわち張出し移動)させることができる。そのため、拡張板はカフスを無理矢理に伸ばす(すなわち拡張)ことが無くなるので、カフスを損傷させることが無い。
【0017】
本発明に係るスリーブプレス装置のカフス押え装置の第の発明態様は、前記第1リンクの第1端を押し上げる第2の弾性部材(例えば圧縮バネ)を有することを特徴とする。このカフス押え装置によれば、リンク機構が圧縮バネのような弾性部材によって押し戻される、拡張板を弾性的に退避移動(すなわち引き込み移動)させることができる。そのため、拡張板はカフス装着部の内部へ無理なく滑らかに引き込まれる。
【0018】
本発明に係るスリーブプレス装置のカフス押え装置の第の発明態様は、前記出力ロッドと共に上下移動する動部材を有しており、当該動部材に前記押え板が固定されており、前記動部材の動動作によって前記押え部材がカフスを外側から押え付けることを特徴とする。このカフス押え装置によれば、1つの駆動装置(例えばエアシリンダ)によって拡張板と押え板の両方を駆動できる。このため、カフス押え装置の全体形状を小型に形成できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るカフス押え装置によれば、拡張板をカフス装着部から進出移動させることによってカフスを伸ばしながら、すなわち拡張させながら、スリーブをプレス処理することにした。このため、カフスの手首サイズが大きい場合であっても、シワを発生させることなく、プレス処理を行うことができる。
【0020】
また、拡張板がカフスを外側へ伸ばすので、カフスとスリーブとのつなぎ目の部分において布地がクシャクシャに乱れることを防止でき、その結果、綺麗にプレス処理を仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るスリーブプレス装置の一実施形態の正面図である。
図2図1のスリーブプレス装置の側面図である。
図3図1のスリーブプレス装置の平面図である。
図4】本発明に係るカフス押え装置の右側側面図である。
図5】本発明に係るカフス押え装置の左側側側面である。
図6】カフス押え装置を構成する要素であるカフス装着部の分解図である。
図7】カフス押え装置の内部構造を示す側面断面図である。
図8図7の矢印Cに従ったカフス押え装置10の正面図である。
図9図7の矢印Dに従ったカフス押え装置10の背面図である。
図10】駆動装置であるエアシリンダの出力ロッドの先端部分に構築された構造を分解状態で示す斜視図である。
図11】(a)は図7の側面断面図において押え板及び押受板を実線で明確に示した図である。(b)は図11(a)の構造を矢印C方向から見た場合の正面図である。
図12図11に示すカフス押え装置10の斜視図である。
図13】駆動装置であるエアシリンダの出力ロッドの先端部が中間位置にあって、押え板が開いている状態を示す図である。
図14図13に示す状態を斜視図で示す図である。
図15】駆動装置であるエアシリンダの出力ロッドの先端部が最下位位置にあって、押え板が閉じている状態を示す図である。
図16図15に示す状態を斜視図で示す図である。
図17】拡張板の進退移動及び拡張板を駆動するリンク機構の移動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るスリーブプレス装置のカフス押え装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0023】
(スリーブプレス装置)
図1は、本発明に係るスリーブプレス装置の正面図である。図2はそのスリーブプレス装置の側面図である。図3はそのスリーブプレス装置の平面図である。図1において、スリーブプレス装置1は、衣類であるワイシャツSのスリーブSsにプレス処理を施す装置である。符号ScはスリーブSsのカフスである。符号Sdはワイシャツの胴部である。
【0024】
このスリーブプレス装置1は、プレス機本体2と、プレス機本体2の前面の下部に設けられた第1の基台3と、この第1の基台3に設けられた2個の袖立4,4と、これらの袖立4,4に対応して設けられた2個のプレス部5,5とを有している。袖立4は駆動源としてのエアシリンダ6によって駆動されて、第1の基台3と一緒に、矢印A-A’で示す方向へ往復傾斜移動できる。プレス部5は蒸気で加熱される熱板を有している。プレス部5は通常スリーブプレス装置1の稼働中、常時高温状態である。
【0025】
プレス機本体2は縦長の形状を有している。第1の基台3は、図3に示すように、長方形状又は正方形状の平面形状に形成されている。袖立4,4は第1の基台3上に設けられており、上方へ延びている。プレス部5,5は、図3に示すように、凹形状の平面形状を有している。袖立4は傾斜移動によりこのプレス部5,5の凹形状の内部に入り込むことができる。
【0026】
ワイシャツSのスリーブSsは、図1に鎖線で示すように、袖立4,4の外側に上方から嵌め込まれる。スリーブSsが嵌め込まれた袖立4が図2の矢印A方向へ傾斜移動させられると、スリーブSsが袖立4とプレス部5によって挟まれる。この状態で、高温状態であるプレス部5がスリーブSsを袖立4へ押し付けることにより、スリーブSsにプレス処理が施される。なお、符号7はスリーブSsの形を整えるための空気袋を示している。
【0027】
(カフス押え装置)
袖立4,4の上端にカフス押え装置10が設けられている。カフス押え装置10はワイシャツSのカフスScを把持する。この把持により、スリーブSsの袖立4に対する装着状態が安定する。図4は、スリーブプレス装置1の前方から見てカフス押え装置10の右側側面を示している。図5は、スリーブプレス装置1の前方から見てカフス押え装置10の左側側面を示している。カフス押え装置10は、図4に示すように右側面カバー11aを有し、さらに図5に示すように左側面カバー11bを有する。カフス押え装置10の上部には頭部カバー12が設けられている。右側面カバー11aと左側面カバー11bは協働してカフス装着部11を構成している。
【0028】
図6に示すように、右側面カバー11a及び左側面カバー11bの中央に縦長開口15が形成されている。縦長開口15は、上部の細長開口15aと下部の広開口15bとがつながることによって形成されている。図4及び図5に示すように、カフス押え装置10は、左右一対の押え板16,16と、左右一対の押受板17,17とを有している。押え板16,16は細長開口15aを通って外部へ露出している。押受板17,17は広開口15bを介して外部へ露出している。
【0029】
押え板16は、好ましい押圧力を発揮できる材料、例えばバネ材によって形成されている。また、押受材17は、適度の摩擦力を発揮できる材料、例えばシリコーンゴム等によって形成されている。
【0030】
図7は、カフス押え装置10の内部構造を示している。図7は、図5において左側面カバー11bを取外した上で、矢印B方向からカフス押え装置10の内部構造を見た状態を示している。図8図7の矢印Cに従ったカフス押え装置10の正面図である。図9図7の矢印Dに従ったカフス押え装置10の背面図である。
【0031】
(押え板16に関する構造)
図7において、カフス押え装置10は、袖立4の頂部に固定された第2の基台20と、第2の基台20の下面に固定された駆動装置としてのエアシリンダ21と、エアシリンダ21の出力ロッド21aの先端に固定された直方体状の取付部材22とを有している。図10に示すように、取付部材22の前側の側面にピン23を介して前揺動部材24aが取り付けられている。取付部材22の後側の側面にピン23を介して後揺動部材24bが取り付けられている。揺動部材24a,24bは矢印Eで示す上方向から見てL字形状に曲がっている。揺動部材24a,24bはピン23を中心として矢印F,Fで示すように揺動可能である。
【0032】
図4及び図5に示した押え板16,16は図10において揺動部材24a,24bの左右の側面にネジによって固定されている。もちろん、ネジ以外の固定手段を採用することも可能である。押え板16,16の頂部は押え板用引張バネ25によって連結されている。このため、押え板用引張バネ25の自然状態において図13に示すように押え板16,16はバネ力によってそれらの下端が開いた状態を維持する。
【0033】
図7において、第2の基台20の上面に、前支持板28a及び後支持板28bが固定されている。前支持板28aは図8(a)に破線で示すように縦方向へ延びる長い長方形状の板部材である。前支持板28aには、細長い上側開口29及び上側開口29よりも幅が広い下側開口30が形成されている。下側開口30の下端は開放端となっている。図7の後支持板28bは図9(a)に破線で示すように縦方向へ延びる長い長方形状の板部材である。後支持板28bには、細長い上側開口31及び上側開口31よりも幅が広い下側開口32が形成されている。上側開口31と下側開口32はつながっている。
【0034】
図7図8(a)及び図8(b)に示すように、前支持板28aの上部に止部材33aが設けられている。この止部材33aは、前支持板28aに固定された軸部材34aに回転自在に取り付けられている。また、図7図9(a)及び図9(b)に示すように、後支持板28bの上部に止部材33bが設けられている。この止部材33bは、後支持板28bに固定された軸部材34bに回転自在に取り付けられている。
【0035】
図7及び図8(b)に示すように、前支持板28aの高さ方向の略中央の位置に、動板37が設けられている。図8(b)に示すように、動板37は前支持板28aに設けた軸部材38に動自在に取り付けられている。動板37の先端に軸部材34cが設けられており、この軸部材34cに止部材33cが回転自在に取り付けられている。動板37は止め用引張りバネ39のバネ力によって上方へ持上げられている。軸部材34cは図7及び図8(a)に示すように前支持板28aに形成した切欠き開口40を貫通している。
【0036】
図7図9(a)及び図9(b)に示すように、後支持板28bの高さ方向の略中央の位置に止部材33dが設けられている。この止部材33dは、後支持板28bに設けた軸部材34dに回転自在に取り付けられている。止部材33a,33b,33c,33dは、例えば機械構造を構成する要素部品の1つであるベアリング(軸受)によって形成できる。
【0037】
図7図8(a)及び図8(b)の前支持板28aの上部に設けられた止部材33aは、前支持板28aの上部に設けられていることから前上止部材33aと呼ばれることがある。また、前支持板28aの中央部に設けられた止部材33cは、前上止部材33aよりも下位置の前支持板28aに設けられていることから前下止部材33cと呼ばれることがある。
【0038】
図7図9(a)及び図9(b)において、後支持板28bの上部に設けられた止部材33bは、後支持部材28bの上部に設けられていることから後上止部材33bと呼ばれることがある。後支持板28bの略中央部に設けられた止部材33dは、後上止部材33bよりも下位置の後支持板28bに設けられていることから後下止部材33dと呼ばれることがある。
【0039】
これらの止部材33a,33b,33c,33dの相対的な位置関係は図10に示す通りである。前上止部材33aは、前側動部材24aの上面に当接するようになっている。後上止部材33bは、後側動部材24bの上面に当接するようになっている。前下止部材33cは、前側動部材24aの下面に当接するようになっている。後下止部材33dは、後側動部材24bの下面に当接するようになっている。
【0040】
(拡張板45に関する構造)
図4及び図5において、カフス押え装置10の下部に拡張板45が設けられている。拡張板45は1枚の平板である。図7において、拡張板45の後部に中間板46が連結されている。中間板46の後部にリンク機構47の一端が連結されている。リンク機構47は、図9(b)にも示すように、第1リンク48a,第2リンク48b,第3リンク48c及び第4リンク48dによって構成されている。図9(b)に示すように、第1リンク48a,第2リンク48b,第3リンク48c及び第4リンク48dの組は、カフス押え装置10の左右両側に1組ずつ設けられている。リンク機構47は、エアシリンダ21の出力ロッド21aの上下運動を拡張板45の水平運動へ変換するための運動変換装置として作用する。
【0041】
中間板46は第1リンク48aの下部の一端及び第3リンク48cの下部の一端に接続されている。第2リンク48bの下部の一端及び第4リンク48dの下部の一端は、後支持板28bから延びるリンク用ブラケット49に接続されている。図9(b)に示すように、一対の第1リンク48a,48aの上端は連結ブロック50によって連結されている。
【0042】
図7において、取付部材22の底面部分において、エアシリンダ21の出力ロッド21aにロッド用ブラケット54が固定されている。ロッド用ブラケット54は出力ロッド21aの半径方向の外側へ延びている。ロッド用ブラケット54の外側の先端部にリンク駆動用のロッド55が固定されている。ロッド55は下方向へ延びている。図9(b)において、連結ブロック50の中央部には貫通孔が開けられている。ロッド55はこの連結ブロック50の貫通孔を通過して連結ブロック50を貫通している。ロッド55と連結ブロック0の貫通孔の内壁面との間には空隙が設けられており、ロッド55は連結ブロック50に対して自由に上下移動できる。
【0043】
連結ブロック50よりも上側のロッド55の周囲に第1の弾性部材としての第1の圧縮バネ56aが配置されている。連結ブロック50よりも下側のロッド55の周囲に第2の弾性部材としての第2の圧縮バネ56bが配置されている。エアシリンダ21の出力ロッド21aが収縮移動(図7の下方への移動)するとき、ロッド55はブラケット54と共に下方向へ移動する。移動するブラケット54の先端が第1の圧縮バネ56aの上端に達すると、それ以降、ブラケット54は圧縮バネ56aを介して第1リンク48aを下方へ押す。ロッド55が下方から上方へ移動する際には、ロッド55は第2圧縮バネ56bを介して第1リンク48aを押し上げる。
【0044】
(スリーブプレス装置1の作用及びカフス押え装置10の作用)
ワイシャツの袖(すなわちスリーブ)をプレス仕上げする際、図1及び図2に示すように、ワイシャツSのスリーブSsを袖立4に通すことによってワイシャツSがスリーブプレス装置1に装着される。次に、ワイシャツSのカフスScがカフス押え装置10のカフス装着部11(すなわち、側面カバー11a,11b)の周囲に巻き付けられる。さらに、押え板16,16によってカフスScを押受板17.17へ押し付ける。これにより、カフスScがカフス押え装置10によって把持される。この把持により袖立4,4に対するワイシャツSの装着状態が一定の状態に決められる。
【0045】
図1図2及び図3において、プレス部5は蒸気によって予め高温に加熱されている。カフス押え装置10によってカフスScが把持された後、図2の下部のエアシリンダ6が作動して袖立4が矢印A方向へ傾斜移動させられる。この傾斜移動により、袖立4に装着されたワイシャツSのスリーブSsが袖立4と共にプレス部5の内部に持ち運ばれる。次に、加熱されたプレス部5と袖立4とによってスリーブSsが挟み付けられて、プレス処理が行われる。
【0046】
(押え板16の作用)
動部材24a,24bの上死点>
図11(a)は、図7において押え板16及び押受板17を実線ではっきりと描いた状態のカフス押え装置10を示している。図11(b)は矢印Cに従ってカフス押え装置10を見た場合を示している。図12は、図11に示すカフス押え装置10の斜視図を示している。
【0047】
図11に示す状態は、エアシリンダ21の出力ロッド21aが上死点(すなわち最上位の位置)まで伸長している状態である。この状態では、押え板16,16を支持している前側動部材24aの上面及び後側動部材24bの上面が、それぞれ、前上止部材33a及び後上止部材33bに下から突き当たっている。このとき、前側動部材24a及び後側動部材24bは、それぞれ、前上止部材33a及び後上止部材33bによって下方へ押し付けられて、引張りバネ25のバネ力に抗して、図11(b)の矢印Gで示す閉じる方向へ回動している。これにより、前側動部材24a及び後側動部材24bに固定された押え板16,16が押受板17,17に押し付けられている。
【0048】
この状態において、図1において、ワイシャツSのスリーブSsが袖立4へ装着される。このとき押え板16,16は閉じているので、スリーブSsの袖立4への嵌め込み作業は楽に行われる。
【0049】
動部材24a,24bの中間点>
その後、図11(a)において、エアシリンダ21が出力ロッド21aを収縮移動させる動作状態にセットされる。すると、前側揺動部材24a及び後側動部材24bが降下して、図13に示すように、前側揺動部材24a及び後側動部材24bに対する前上止部材33a及び後上止部材33bの突き当たりが解除される。この結果、引張りバネ25のバネ力により、押え板16,16が矢印Hで示すように開き移動する。図14は開いた状態の押え板16,16を斜視図によって示している。前側揺動部材24a及び後側動部材24bが降下するとき、それらの回動中心であるピン23の両端部が前支持板28aの上側開口29及び後支持板28bの上側開口31によってガイドされる。
【0050】
開いた状態の押え板16,16は、図14において、装着されたワイシャツSのカフスScの外側を通って降下する。押え板16,16は開いているので、押え板16,16の降下はカフスScに邪魔されることなく、円滑に行われる。
【0051】
動部材24a,24bの下死点>
図13において、降下する前側揺動部材24aの下面は前支持板28aに設けた前下止部材33cに上方から突き当たる。また、降下する後動部材24bの下面は図9(a)及び図9(b)に示した後支持板28bに設けた後下止部材33dに上方から突き当たる。図15は、前側揺動部材24aの下面が前下止部材33cに突き当たって止まり、後側動部材24bの下面が後下止部材33dに突き当たって止まった状態を示している。
【0052】
この状態で、前側揺動部材24aは前下止部材33cによって矢印Iのように押し上げられる。また、後側動部材24bは後下止部材33dによって矢印Iのように押し上げられる。この結果、押え板16,16は引張りバネ25のバネ力に抗して矢印J,Jに示すように閉じる。図16は押え板16,16が上記のように閉じた状態を斜視図によって示している。
【0053】
押え板16,16がこのように閉じることにより、図13において側面カバー11a,11bの周囲に巻き付けられたカフスScが押え板16,16と押受板17,17とによって挟持される。このカフスScの挟持により、ワイシャツSが袖立4の周囲にしっかりと保持される。この後に、図1図3に示した袖立4,4がプレス部5の凹部内へ挿入され、さらに加熱されたプレス部5によってスリーブSsに対するプレス処理が行われることは、既述の通りである。このプレス処理の際、スリーブSsは押え板16,16によってしっかりと保持されているので、スリーブSsは綺麗にプレス仕上げされる。
【0054】
動板37の作用)
図8(b)において、動板37は前支持板28aに動自在に取り付けられている。動板37の左端に支持されている前下止部材33cは、図15(b)から明らかなように前側動部材24aの下面に突き当たる止部材である。前側動部材24aは右側面カバー11a側の押え板16を支持している動部材である。そして、右側面カバー11aは、図4に示すように、ワイシャツSのカフスScが巻き付けられる部分であり、特にカフスScのボタン部分が2重に重なり合う部分である。
【0055】
ここで、仮に、図15(b)において前下止部材33cが動板37に支持されるのではなくて、前支持板28aに直接に設けられると仮定すると、前側動部材24aはエアシリンダ21の駆動力を直接に受けることになる。こうなると、図4においてカフスScの重なり部分が押え板16によって強く押え付けられることになる。その結果、カフスScの重なり部分が必要以上に加圧されてしまい、プレス品質が損なわれるおそれがある。
【0056】
これに対し、図15(b)に示すように、前下止部材33cを動板37を介して引張りバネ39によって支持することにすれば、右側面カバー11a側の押え部材16の押圧力を緩やかにすることができる。この結果、カフスScの重なり部分は適正な圧力で加圧されることになり、プレス品質を高く維持することができる。
【0057】
(拡張板45の作用)
図4及び図5に示すように、拡張板45が右側面カバー11aと左側面カバー11bの境界部分の下部に配置されている。当該境界部分の下部の間隔はそれよりも上方部分の境界部分の間隔よりも広くなっており、拡張板45の先端面はこの境界部分の下部において外部から視認できる状態になっている。
【0058】
図7において、エアシリンダ21の出力ロッド21aは伸長状態に伸び出ており、出力ロッド21の先端は上死点(すなわち最も最上位の位置)にある。この状態において、出力ロッド21aはリンク用ロッド55を上方へ持上げられている。リンク用ロッド55が上方へ持上げられていると、そのロッド55に連結された第1リンク48aの上側先端が上方へ持上げられ、その結果、中間板46及び拡張板45が側面カバー11a,11bの内部側へ引き込まれている。この状態で、拡張板45は側面カバー11a,11bの内部に隠れている。
【0059】
図17に示すようにエアシリンダ21の出力ロッド21aが下死点(すなわち最も最下位の位置)まで収縮移動すると、ロッド用ブラケット54が第1の圧縮バネ56aを上方から下方へと押し込み、その第1の圧縮バネ56aが第1リンク48aの上端を下方へ押し込む。この押し込み動作により、拡張板45が側面カバー11a,11bの外側へ張出す。図4から明らかなように、拡張板45が側面カバー11a,11bの外側へ張出すと、カフスScを外側へ押しやり、これによりカフスScにシワが生じることを防止できる。
【0060】
このとき、拡張板45は図17の第1の圧縮バネ56aのバネ力によって側面カバー11a,11bの外側へ張出しているので、カフスScの手首部分のサイズが小さい場合でも、あるいは大きい場合でも、カフスScに一定のテンション、すなわち張力をかけることができる。この結果、カフスScの手首部分のサイズが小さいワイシャツでも、大きいワイシャツでも、シワの発生を防止できる。
【0061】
ワイシャツのスリーブのプレス処理が終了すると、エアシリンダ21の出力ロッド21aが図17の状態から上昇する。すると、リンク用ロッド55が上昇し、それに応じて第2の圧縮バネ56bが上昇する。上昇する第2の圧縮バネ56bは第1リンク48aの上端を押し上げ、最終的に図7に示す状態に戻る。これにより、拡張板45は側面カバー11a,11bの内部に戻る。以上のように、本実施形態では、リンク47を押し込む処理を第1の圧縮バネ56aによって行い、リンク47を元に戻す処理を第2の圧縮バネ56bによって行っている。
【0062】
(本実施形態によって実現できる効果)
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、図7においてエアシリンダ21をカフス押え装置10の底部に配置した。そして、出力ロッド21aの下死点から上死点の間の距離を大きく設定した。これにより、1つのエアシリンダ21の出力ロッド21aの進退移動(図7の上下方向移動)によって、押え板16の開閉動作及び拡張板45の進退動作の2つの動作を1つのエアシリンダによってまかなうことが可能になった。
【0063】
また、本実施形態によれば、図4において拡張板45をカフス装着部11(すなわち、側面カバー11a,11b)から進出移動させることによってカフスScを伸ばしながら、すなわち拡張させながら、スリーブSsをプレス処理することにした。このため、カフスScの手首サイズが大きい場合であっても、シワを発生させることなく、プレス処理を行うことができる。
【0064】
また、拡張板45がカフスScを外側へ伸ばすので、カフスScとスリーブSsとのつなぎ目の部分において布地がクシャクシャに乱れることを防止でき、その結果、綺麗にプレス処理を仕上げることができる。
【0065】
また、拡張板45は図17の第1の圧縮バネ56aのバネ力によって進出移動するので、カフスScの手首サイズが小さい場合でも、カフスScに過剰な力が加わることが無い。そのため、カフスScの手首サイズが小さい場合でも、あるいは大きい場合でも、カフスScに一定のテンション、すなわち張力をかけることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、拡張板45を進退移動させるに際して、出力ロッド21aの上下移動をリンク機構47によって拡張板45の水平移動に変換している。このため、カフス押え装置10を小型に形成できる。
【0067】
また、本実施形態によれば、拡張板45を進出移動させるためにリンク機構47を押し込む処理を第1の圧縮バネ56aによって行い、拡張板45を退避移動させるためにリンク機構47を押し戻す処理を第2の圧縮バネ56bによって行っている。このように、バネ力すなわち弾性力を用いて拡張板45の進退移動を行っているので、拡張板45の移動が滑らかで安定している。
【0068】
(他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0069】
例えば、上記実施形態では、スリーブSsのカフスScを把持するために一対の押え板16,16を用いたが、1個の押え板によってカフスScを把持することも可能である。
【0070】
上記実施形態では、図7において、中間板46を介してリンク機構47を拡張板45に連結した。中間板46を介在させることにより、拡張板45の円滑な水平運動を実現できる。しかしながら、中間板46を用いることなく、リンク機構47を拡張板45に直接に連結することも可能である。
【0071】
上記実施形態では仕上げの対象としてワイシャツを挙げたが、仕上げの対象がワイシャツに限られないことはもちろんである。一般的なシャツも仕上げの対象とすることができる。
【符号の説明】
【0072】
1:スリーブプレス装置、2:プレス機本体、3:第1の基台、4:袖立、5:プレス部、6:エアシリンダ(駆動源)、7:空気袋、10:カフス押え装置、11:カフス装着部、11a:右側面カバー、11b:左側面カバー、12:頭部カバー、15:縦長開口、15a:細長開口、15b:広開口、16:押え板、17:押受板、20:第2の基台、21:エアシリンダ(駆動装置)、21a:出力ロッド、22:取付部材、23:ピン、24a:前側揺動部材、24b:後側動部材、25:押え板用引張バネ、28a:前支持板、28b:後支持板、29:上側開口、30:下側開口、31:上側開口、32:下側開口、33a:前上止部材、33b:後上止部材、33c:前下止部材、33d:後下止部材、34a,34b,34c,34d:軸部材、37:動板、38:軸部材、39:止め用引張りバネ、40:切欠き開口40、41:軸部材、45:拡張板、46:中間板、47:リンク機構(運動変換装置)、48a:第1リンク、48b:第2リンク、48c:第3リンク、48d:第4リンク、49:リンク用ブラケット、50:連結ブロック、54:ロッド用ブラケット、55:リンク用ロッド、56a:第1の圧縮バネ(第1の弾性部材)、56b:第2の圧縮バネ(第2の弾性部材)、S:ワイシャツ、Ss:スリーブ、Sc:カフス、Sd:胴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17