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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20230207BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20230207BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
B60K1/00
B62D21/00 A
B62D25/08 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019193507
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021066340
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】島崎 修
(72)【発明者】
【氏名】根川 亮佑
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-85088(JP,A)
【文献】特開2013-219862(JP,A)
【文献】特開2011-20602(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0162902(US,A1)
【文献】特開2014-43124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両であって、
キャビンよりも前方にコンパートメントを有するボディと、
前記コンパートメント内に配置されており、前記ボディに接続されている部品搭載フレームと、
前記部品搭載フレーム上に配置されており、走行用モータを制御する制御回路を内蔵しており、金属により構成されている回路ケース
バッテリと、
前記バッテリと前記制御回路とを電気的に接続する配線、
を有し、
前記部品搭載フレームが、
左右方向に伸びている複数のクロスメンバと、
前記複数のクロスメンバを互いに接続する接続メンバ、
を有し、
前記複数のクロスメンバが、前記複数のクロスメンバのうちで最も後方に配置されている後方クロスメンバを有し、
上から見たときに、前記回路ケースが、前記後方クロスメンバの後縁よりも前方に配置されており、
前記後方クロスメンバの後方側面に凹部が設けられており、
前記配線が、前記回路ケースの後方側面から下方向へ伸びて前記凹部内を通過するように配置されている、
電動車両。
【請求項2】
前記複数のクロスメンバが、前記複数のクロスメンバのうちで最も前方に配置されている前方クロスメンバを有し、
上から見たときに、前記回路ケースが、前記前方クロスメンバの前縁よりも後方に配置されている、請求項1の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、電動車両に関する。
【0002】
特許文献1に開示の電動車両は、キャビンの前方にコンパートメント(モータルーム)を有している。そのコンパートメント内に、走行用モータと、走行用モータを制御する制御回路(インバータ及びDC/DCコンバータ等)が配置されている。また、コンパートメント内には、部品搭載フレームが設けられている。制御回路は、部品搭載フレーム上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-020628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにコンパートメント内に制御回路を有する電動車両においては、電動車両がその前部で衝突したときに、制御回路が損傷し易い。制御回路が損傷すると、車両の電気的な制御が困難となる。本明細書では、衝突時にコンパートメント内に配置された制御回路の損傷を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電動車両であって、キャビンよりも前方にコンパートメントを有するボディと、前記コンパートメント内に配置されているとともに前記ボディに接続されている部品搭載フレームと、回路ケースを有する。回路ケースは、前記部品搭載フレーム上に配置されており、走行用モータを制御する制御回路を内蔵しており、金属により構成されている。前記部品搭載フレームが、左右方向に伸びている複数のクロスメンバと、前記複数のクロスメンバを互いに接続する接続メンバを有する。前記複数のクロスメンバが、前記複数のクロスメンバのうちで最も後方に配置されている後方クロスメンバを有する。上から見たときに、前記回路ケースが、前記後方クロスメンバの後縁よりも前方に配置されている。
【0006】
電動車両がその前部で衝突すると、ボディの変形によって、回路ケースが部品搭載フレームとともに後方に向かって押し出される。このとき、回路ケースがその後方に配置されたボディ構成部材に衝突して回路ケースに強い荷重が加わると、回路ケース内の制御回路が損傷する。しかしながら、上記の電動車両では、上から見たときに、回路ケースが、後方クロスメンバの後縁よりも前方に配置されている。このため、電動車両の衝突によって回路ケースと部品搭載フレームが後方に向かって押し出されると、回路ケースよりも先に後方クロスメンバがボディ構成部材と衝突し易い。これによって、回路ケースに加わる荷重が軽減される。このため、回路ケースの内部の制御回路の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ボディの斜視図。
図2】コンパートメントの平面図(回路ケースを省略した図)。
図3】コンパートメントの斜視図(回路ケースを省略した図)。
図4】コンパートメントの平面図(回路ケースを含む図)。
図5】コンパートメントの斜視図(回路ケースを含む図図)。
図6】配線54の経路を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態の電動車両は、走行用モータを搭載している。電動車両は、走行用モータによって車輪を駆動して走行する。図1は、実施形態の電動車両のボディ10を示している。なお、図1を含む各図において、矢印FRは車両前方向を示し、矢印RHは車両右方向を示し、矢印UPは車両上方向を示す。ボディ10は、フロントピラー11と、フロントピラー11から前方に向かって伸びるエプロンアッパメンバ14(すなわち、右エプロンアッパメンバ14Rと左エプロンアッパメンバ14L)を有している。ボディ10は、2つのエプロンアッパメンバ14に囲まれた範囲に、コンパートメント16を有している。コンパートメント16は、キャビン12よりも前方に設けられている。
【0009】
図2、3は、コンパートメント16の内部を示している。コンパートメント16の最後部に、ダッシュパネル20が配置されている。ダッシュパネル20は、コンパートメント16とキャビン12を分離している。右エプロンアッパメンバ14Rと左エプロンアッパメンバ14Lは、コンパートメント16の左右の両縁に沿って伸びている。右エプロンアッパメンバ14Rと左エプロンアッパメンバ14Lは、ボディ10の最前部において、コアサポート18によって互いに接続されている。コアサポート18は、コンパートメント16の前縁を構成している。
【0010】
コンパートメント16の内部に、一対のフロントサイドメンバ22(右フロントサイドメンバ22Rと左フロントサイドメンバ22L)が設けられている。各フロントサイドメンバ22は、前後方向に沿って伸びている。フロントサイドメンバ22は、エプロンアッパメンバ14よりも下側に配置されている。右フロントサイドメンバ22Rと左フロントサイドメンバ22Lは、コンパートメント16内において、フロントクロスメンバ24によって互いに接続されている。また、右フロントサイドメンバ22Rと左フロントサイドメンバ22Lは、ボディ10の最前部において、バンパリインフォースメント26に接続されている。
【0011】
コンパートメント16の内部に、部品搭載フレーム30が配置されている。部品搭載フレーム30は、コンパートメント16内で、ボディ10に固定されている。部品搭載フレーム30は、前方クロスメンバ32、後方クロスメンバ34、右接続メンバ36、及び、左接続メンバ38を有している。
【0012】
前方クロスメンバ32は、左右方向に長く伸びている。前方クロスメンバ32の右端部は、ブラケット42に接続されている。ブラケット42は、斜め上方向に向かって伸びており、右エプロンアッパメンバ14Rに接続されている。すなわち、前方クロスメンバ32の右端部は、ブラケット42を介して、右エプロンアッパメンバ14Rに接続されている。前方クロスメンバ32の左端部は、ブラケット44に接続されている。ブラケット44は、斜め上方向に向かって伸びており、左エプロンアッパメンバ14Lに接続されている。すなわち、前方クロスメンバ32の左端部は、ブラケット44を介して、左エプロンアッパメンバ14Lに接続されている。
【0013】
後方クロスメンバ34は、左右方向に長く伸びている。後方クロスメンバ34は、前方クロスメンバ32よりも後方に配置されている。後方クロスメンバ34の後方側面34a(ダッシュパネル20に対向する側面)には、凹部34bが形成されている。後方クロスメンバ34の右端部は、ブラケット46を介して右フロントサイドメンバ22Rに接続されている。後方クロスメンバ34の左端部は、ブラケット48を介して左フロントサイドメンバ22Lに接続されている。
【0014】
右接続メンバ36は、前後方向に長く伸びている。右接続メンバ36は、前方クロスメンバ32と後方クロスメンバ34を接続している。左接続メンバ38は、前後方向に長く伸びている。左接続メンバ38は、前方クロスメンバ32と後方クロスメンバ34を接続している。
【0015】
図4、5は、部品搭載フレーム30上に固定された回路ケース50を示している。回路ケース50は、内部に制御回路を収容している。回路ケース50の内部の制御回路は、図示しない走行用モータを制御する。例えば、回路ケース50の内部には、走行用モータに交流電力を供給するインバータ回路が収容されている。回路ケース50は、金属により構成されている。図4に示すように上から見たときに、回路ケース50の後方側面50aは、後方クロスメンバ34の後方側面34a(凹部34bを含む後方側面34a全体)よりも前方に位置している。すなわち、上から見たときに、回路ケース50は、後方クロスメンバ34の後方側面34aよりも後方には突出していない。また、図4に示すように上から見たときに、回路ケース50の前方側面50bは、前方クロスメンバ32の前方側面32aよりも後方に位置している。すなわち、上から見たときに、回路ケース50は、前方クロスメンバ32の前方側面32aよりも前方には突出していない。
【0016】
回路ケース50の前方側面50bには、端子台付きカバー52が設けられている。端子台付きカバー52は、配線部分を除く全体が樹脂により構成されている。端子台付きカバー52は、回路ケース50の前方側面50bから前方に突出している。図4に示すように上から見たときに、端子台付きカバー52は、前方クロスメンバ32の前方側面32aよりも前方に突出している。
【0017】
回路ケース50の後方に、配線54が設けられている。配線54は、回路ケース50の後方側面50aから回路ケース50の内部に引き込まれており、回路ケース50の内部の制御回路に接続されている。図6に示すように、配線54は、回路ケース50から、後方クロスメンバ34の後方を通って下方向に伸びている。配線54は、後方クロスメンバ34の凹部34b内を通って下方向に伸びている。配線54は、後方クロスメンバ34よりも下側の位置で折れ曲がって後方に伸びており、フロアパネル60(キャビン12の床面を構成する板材)の下側に配置されたメインバッテリ62に接続されている。配線54を介して、メインバッテリ62から回路ケース50内の制御回路に直流電力が供給される。
【0018】
車両がその前部で衝突した場合には、ボディ10が変形する。ボディ10の変形によって、回路ケース50が部品搭載フレーム30と共に、後方(ダッシュパネル20側)に向かって押し出される。これにより、回路ケース50と部品搭載フレーム30が、後部ボディ構成部材(コンパートメント16の後部を構成するボディ構成部材(例えば、ダッシュパネル20等))に接触する。このとき、回路ケース50が後方クロスメンバ34の後方側面34aよりも前側に配置されているので、回路ケース50が後部ボディ構成部材に衝突するよりも先に、後方クロスメンバ34が後部ボディ構成部材に衝突し易い。このため、回路ケース50に加わる荷重が軽減され易く、回路ケース50が損傷し難い。また、配線54が凹部34b内に配置されているので、後方クロスメンバ34が後部ボディ構成部材(ダッシュパネル20等)に衝突するときに、配線54が後方クロスメンバ34と後部ボディ構成部材との間に挟まれ難い。これによって、配線54の損傷が抑制される。
【0019】
また、車両がその前部で衝突した場合には、前部ボディ構成部材(コンパートメント16の前部を構成するボディ構成部材(例えば、コアサポート18等))が、後方(回路ケース50側)に向かって押し出される。これにより、前部ボディ構成部材が、回路ケース50及び部品搭載フレーム30に接触する。このとき、回路ケース50が前方クロスメンバ32の前方側面32aよりも後側に配置されているので、前部ボディ構成部材が回路ケース50に衝突するよりも先に、前部ボディ構成部材が前方クロスメンバ32に衝突し易い。このため、回路ケース50に加わる荷重が軽減され易く、回路ケース50が損傷し難い。また、端子台付きカバー52は前方クロスメンバ32の前方側面32aよりも前側に突出しているので、前部ボディ構成部材は、端子台付きカバー52に衝突し易い。前部ボディ構成部材が端子台付きカバー52に衝突すると、端子台付きカバー52が回路ケース50に向かって加圧される。しかしながら、樹脂製の端子台付きカバー52は、金属製の回路ケース50よりも強度が低い。したがって、端子台付きカバー52が回路ケース50に向かって加圧されても、回路ケース50が損傷し難い。このように、樹脂製の端子台付きカバー52が前方クロスメンバ32の前方側面32aよりも前側に突出していても、回路ケース50の損傷を抑制することができる。
【0020】
以上に説明したように、本実施形態の電動車両によれば、衝突時に回路ケース50の損傷を抑制することができる。このため、回路ケース50の内部の制御回路の損傷を抑制することができる。
【0021】
なお、上述した実施形態では、部品搭載フレーム30が2つのクロスメンバ32、34を有していたが、部品搭載フレームが3つ以上のクロスメンバを有していてもよい。また、上述した実施形態では、部品搭載フレーム30が2つの接続メンバ36、38を有していたが、部品搭載フレームが1つまたは3つ以上の接続メンバを有していてもよい。
【0022】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0023】
本明細書が開示する一例の電動車両においては、前記複数のクロスメンバが、前記複数のクロスメンバのうちで最も前方に配置された前方クロスメンバを有していてもよい。上から見たときに、前記回路ケースが、前記前方クロスメンバの前縁よりも後方に配置されていてもよい。
【0024】
電動車両がその前部で衝突したときには、電動車両の前部を構成するボディ構成部材が回路ケースに向かって押し出される。ボディ構成部材が回路ケースに衝突すると、回路ケースの内部の制御回路が損傷し易い。上記の構成では、回路ケースが前方クロスメンバの前縁よりも後方に配置されている。このため、電動車両の前部を構成するボディ構成部材が回路ケースに向かって押し出されたときに、ボディ構成部材が回路ケースよりも先に前方クロスメンバと衝突し易い。これによって、回路ケースに加わる荷重が軽減され易い。このため、回路ケースの内部の制御回路の損傷を抑制することができる。
【0025】
本明細書が開示する一例の電動車両は、バッテリと、前記バッテリと前記制御回路とを電気的に接続する配線、をさらに有していてもよい。前記後方クロスメンバの後方側面に凹部が設けられていてもよい。前記配線が、前記回路ケースの後方側面から下方向へ伸びて前記凹部内を通過するように配置されていてもよい。
【0026】
この構成によれば、電動車両の衝突によって回路ケースと部品搭載フレームが後方に向かって押し出されたときに、配線が損傷し難い。
【0027】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0028】
10 :ボディ
14 :エプロンアッパメンバ
16 :コンパートメント
20 :ダッシュパネル
22 :フロントサイドメンバ
30 :部品搭載フレーム
32 :前方クロスメンバ
34 :後方クロスメンバ
34b :凹部
36 :接続メンバ
38 :接続メンバ
50 :回路ケース
52 :端子台付きカバー
54 :配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6