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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】タンクシステム、船舶
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/02 20060101AFI20230207BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20230207BHJP
   B65D 88/06 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
F17C5/02 Z
B63B25/16 Z
B65D88/06 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019231720
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099143
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 聡成
(72)【発明者】
【氏名】小形 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋介
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-207989(JP,A)
【文献】特開平09-142576(JP,A)
【文献】特開平10-086995(JP,A)
【文献】特表2005-517144(JP,A)
【文献】特表2001-506357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/02
B63B 25/16
B65D 88/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液化二酸化炭素が収容されるタンクと、
上下方向に延びて前記タンク内に下端が開口するとともに、外部から供給される液化二酸化炭素を前記下端から前記タンク内に放出する積込配管と、
前記積込配管において最も高い位置に位置する配管頂部に対して前記下端側に設けられ、前記積込配管を流通する液化二酸化炭素に圧力損失を発生させる配管圧力抵抗部と、を備え
前記配管圧力抵抗部は、タンク運用圧力に前記配管圧力抵抗部にて発生する圧力損失を加えたものから、前記タンク内における液化二酸化炭素の液面と前記配管頂部との高低差に相当する圧力を差し引いた値が、液化二酸化炭素の三重点圧力値に安全マージン値を加えた設定圧力下限値を上回るように決められる圧力損失を発生させる
タンクシステム。
【請求項2】
前記配管圧力抵抗部は、前記積込配管の前記下端に設けられている
請求項に記載のタンクシステム。
【請求項3】
前記配管圧力抵抗部は、前記積込配管の前記下端よりも高く、かつ前記タンクのタンク底面からの高さが、前記配管圧力抵抗部を通過した液化二酸化炭素の圧力が、前記三重点圧力値を下回らないように設けられている
請求項に記載のタンクシステム。
【請求項4】
前記配管圧力抵抗部は、前記積込配管内の流路断面積よりも小さい開口面積を有し、液化二酸化炭素が流通する流通開口部を有する
請求項1からの何れか一項に記載のタンクシステム。
【請求項5】
前記配管圧力抵抗部は、
前記流通開口部の開口面積を可変とする制御弁と、
前記制御弁における前記流通開口部の開度を調整する制御装置と、を備える
請求項に記載のタンクシステム。
【請求項6】
前記積込配管の前記配管頂部における前記液化二酸化炭素の圧力を検出する配管頂部圧力センサーをさらに備え、
前記制御装置は、前記配管頂部圧力センサーにおける検出値に基づいて、前記制御弁の開度を調整する
請求項に記載のタンクシステム。
【請求項7】
船体と、
前記船体に設けられた、請求項1からの何れか一項に記載のタンクシステムと、
を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンクシステム、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガス積込配管系統を通してLNG(Liquefied Natural Gas)等の液化ガスをタンク内に積み込むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5769445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようなタンクを用いて液化二酸化炭素を運搬することが要望されている。液化二酸化炭素は、気相、液相、固相が共存する三重点の圧力(以下、三重点圧力と称す)が、LNGやLPGの三重点圧力に比較して高い。そのため、三重点圧力がタンクの運用圧力に近くなる。タンク内に液化二酸化炭素を収容する場合、以下のような理由により、液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される可能性がある。
【0005】
特許文献1のような液化ガスを収容するタンクでは、タンク内で開口する積込配管の下端がタンク内の下部に配置されている場合がある。このような配置とすることで、液ヘッドの増加に伴い積込配管の開口付近が加圧される。そのため、積込配管の開口から放出された液化ガスがフラッシュ蒸発することを抑制できる。しかしながら、積込配管のうち最も高い位置に配置された配管頂部では、内部の液化二酸化炭素の圧力が、配管下端における液化二酸化炭素の圧力に対し、配管下端と配管頂部との高低差に応じた分だけ低くなる。
その結果、タンク運用圧力によっては、液化二酸化炭素の圧力が最も低くなる積込配管の配管頂部において、液化二酸化炭素の圧力が三重点圧力以下となり、液化二酸化炭素の蒸発が生じて、その蒸発潜熱により、蒸発せずに残った液化二酸化炭素の温度低下が生じて、液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される可能性が有る。
そして、このように、積込配管内でドライアイスが生成されてしまうと、積込配管内における液化二酸化炭素の流れが阻害され、タンクの運用に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、積込配管内のドライアイス生成を抑え、タンクの運用を円滑に行うことができるタンクシステム、船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るタンクシステムは、タンクと、積込配管と、配管圧力抵抗部と、を備える。前記タンクは、内部に液化二酸化炭素が収容される。前記積込配管は、上下方向に延びて前記タンク内に下端が開口する。前記積込配管は、外部から供給される液化二酸化炭素を前記下端から前記タンク内に放出する。前記配管圧力抵抗部は、前記積込配管において最も高い位置に位置する配管頂部に対して前記下端側に設けられている。前記配管圧力抵抗部は、積込配管を流通する液化二酸化炭素に圧力損失を発生させる。前記配管圧力抵抗部は、タンク運用圧力に前記配管圧力抵抗部にて発生する圧力損失を加えたものから、前記タンク内における液化二酸化炭素の液面と前記配管頂部との高低差に相当する圧力を差し引いた値が、液化二酸化炭素の三重点圧力値に安全マージン値を加えた設定圧力下限値を上回るように決められる圧力損失を発生させる。
【0008】
本開示に係る船舶は、船体と、前記船体に設けられた、上記したようなタンクシステムと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示のタンクシステム、船舶によれば、積込配管内のドライアイス生成を抑え、タンクの運用を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態における船舶の全体構成を示す平面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る船舶に設けられたタンクシステムの断面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係るタンクシステムに設けられた配管圧力抵抗部を示す断面図である。
図4】本開示の第一実施形態の変形例に係る配管圧力抵抗部を示す断面図である。
図5】本開示の第一実施形態の変形例に係る配管圧力抵抗部を示す断面図である。
図6】本開示の第二実施形態に係る船舶に設けられたタンクシステムの断面図である。
図7】本開示の第三実施形態に係る船舶に設けられたタンクシステムの断面図である。
図8】本開示の第三実施形態に係るタンクシステムに設けられた配管圧力抵抗部を示す断面図である。
図9】本開示の第三実施形態に係るタンクシステムに設けられた制御装置のハードウェア構成を示す図である。
図10】本開示の第三実施形態に係るタンクシステムに設けられた制御装置の機能ブロック図である。
図11】本開示の第三実施形態に係るタンクシステムに設けられた制御装置における制御弁の開度調整処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、本開示の実施形態に係るタンクシステム、船舶について、図1図3を参照して説明する。
(船舶の船体構成)
図1に示すように、本開示の実施形態の船舶1Aは、液体二酸化炭素、あるいは液化二酸化炭素を含む多種の液化ガスを運搬する。この船舶1Aは、船体2と、タンクシステム20Aと、を少なくとも備えている。
【0012】
(船体の構成)
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底(図示無し)と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底(図示無し)は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を備える。これら一対の舷側3A,3B及び船底(図示無し)により、船体2の外殻は、船首尾方向Daに直交する断面において、U字状を成している。上甲板5は、外部に露出する全通甲板である。船体2には、船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
【0013】
船体2には、上部構造(居住区画)7よりも船首2a側に、タンクシステム格納区画(ホールド)8が形成されている。タンクシステム格納区画8は、上甲板5に対して下方の船底(図示無し)に向けて凹むとともに、上方に突出する、あるいは上甲板5を天井とする閉鎖区画である。
【0014】
(タンクシステムの構成)
図2に示すように、タンクシステム20Aは、タンク21と、積込配管25と、配管圧力抵抗部30Aと、を備えている。
【0015】
(タンクの構成)
図1に示すように、タンク21は、タンクシステム格納区画8内に複数設けられている。この実施形態におけるタンク21は、タンクシステム格納区画8内に、例えば計7個が配置されている。タンクシステム格納区画8内におけるタンク21のレイアウト、設置数は何ら限定するものではない。この実施形態において、各タンク21は、例えば、水平方向(具体的には、船首尾方向)に延びる円筒状である。タンク21は、その内部に液化二酸化炭素Lが収容される。
なお、タンク21は、円筒状に限られるものではなく、タンク21は球形等であってもよい。
【0016】
(積込配管の構成)
図2に示すように、積込配管25は、陸上の液化二酸化炭素供給施設やバンカー船等、外部から供給される液化二酸化炭素Lをタンク21内に積み込む。この実施形態における積込配管25は、タンク21の外部からタンク21の上部を貫通してタンク21内に挿入されている。積込配管25は、タンク21内で上下方向Dvに延びている。積込配管25の下端25bは、タンク21内で開口している。積込配管25は、外部から供給される液化二酸化炭素Lを、下端25bからタンク21内に放出する。積込配管25において、最も高い位置に位置する配管頂部25tは、タンク21の外部に配置されている。
【0017】
積込配管25の下端25bは、タンク21の底部近傍に配置されている。底部近傍とは、上下方向Dvにおけるタンク21の中央よりも底部に近い位置である。なお、図2では、タンク21に貯留される液化二酸化炭素L内に積込配管25の下端25bが液没している状況を例示している。また、図2では、下端25bは、下向きに開口しているが、その開口方向は下向きに限らない。
【0018】
(配管圧力抵抗部の構成)
配管圧力抵抗部30Aは、積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lに配管圧力抵抗として作用する。配管圧力抵抗部30Aは、積込配管25において最も高い位置となる配管頂部25tに対して下端25b側に設けられている。この実施形態において、配管圧力抵抗部30Aは、積込配管25の下端25bに設けられているが,下端25bに限定されるものではない。図3に示すように、配管圧力抵抗部30Aは、液化二酸化炭素Lが流通する流通開口部30aを有している。流通開口部30aは、積込配管25内の流路断面積A1よりも小さい開口面積A2を有している。
【0019】
この実施形態において、配管圧力抵抗部30Aは、オリフィス31を用いて構成されている。オリフィス31は、積込配管25の下端25bに取り付けられている。オリフィス31は、積込配管25の下端25bの開口を閉塞するように設けられたプレート部31aと、プレート部31aに形成された貫通孔31bと、を備えている。貫通孔31bは、上記流通開口部30aを形成する。貫通孔31bは、プレート部31aの板厚方向(積込配管25の下端25bにおける管軸方向)に貫通して形成されている。この実施形態において、貫通孔31bは、プレート部31aの中央部に一つのみが形成されている。
【0020】
下端25bに配管圧力抵抗部30Aが設けられた積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの配管頂部25tにおける圧力Pcは、タンク運用圧力Ptに配管圧力抵抗部にて発生する圧力損失ΔPを加えたものから、タンク21内における液化二酸化炭素Lの液面と配管頂部25tの高低差に相当する圧力を差し引いた値となるが,積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの動圧が有意な場合はその影響を考慮する必要がある。
【0021】
積込配管25の配管頂部25tにおいて、液化二酸化炭素Lが、液化二酸化炭素Lの三重点圧力を下回らないようにするには、配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcが、予め設定された液化二酸化炭素Lの設定圧力下限値Psを、次式(1)のように上回る必要がある。
Pc>Ps ・・・(1)
ここで、設定圧力下限値Psは、液化二酸化炭素Lの三重点圧力値に、安全マージン値を加えたものとすることができる。
【0022】
配管圧力抵抗部30A(オリフィス31)では、発生する圧力損失ΔPが配管頂部25tにおける圧力Pcを高めることを利用して,上式(1)で表される条件を満足するよう、流通開口部30aの開口面積A2が設定されている。
【0023】
(具体的な検討例)
ここで、例えば、タンク21の運用圧:580[kPa(G)]、液化二酸化炭素Lの密度ρ:1150[kg/m]、タンク21内における液化二酸化炭素Lの液面高さH1:0[m]、積込配管25の配管頂部25tのタンク底面21bからの高さH2:30[m]とする。すると、配管圧力抵抗部30Aを備えない状態での積込配管25における配管頂部25t内の液化二酸化炭素Lの圧力は、242[kPa(G)]となる。液化二酸化炭素Lの三重点圧力は417[kPa(G)]であるので、配管圧力抵抗部30Aを設けない状態では、積込配管25の配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力は、三重点圧力以下となり、ドライアイスが生成される可能性がある。
これに対し、配管圧力抵抗部30Aを備えた積込配管25では、上式(1)を満足するように配管圧力抵抗部30Aで圧力損失ΔPが発生し、配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcが設定圧力下限値Psを常に上回り、三重点圧力を十分に超えることができる。
【0024】
(作用効果)
上記第一実施形態のタンクシステム20Aでは、タンク21と、積込配管25と、配管圧力抵抗部30Aと、を備えている。配管圧力抵抗部30Aは、積込配管25において最も高い位置に位置する配管頂部25tに対して下端25b側に設けられている。配管圧力抵抗部30Aによって、積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの圧力が圧力損失ΔPの分だけ高められ、液化二酸化炭素Lの圧力Pcが三重点圧力に近づくことが抑えられる。これにより、積込配管25内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。その結果、タンク21内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管25内でドライアイスが生成されるのを抑え、タンク21の運用を円滑に行うことが可能となる。
【0025】
上記第一実施形態のタンクシステム20Aでは、配管圧力抵抗部30Aは、上式(1)を満たす圧力損失ΔPを発生させる。
したがって、実施形態のタンクシステム20Aによれば、積込配管25の配管頂部25tの高さH2に応じた適切な圧力損失ΔPを配管圧力抵抗部30Aで発生させ、液化二酸化炭素Lの圧力を高めることができる。これにより、積込配管25内の全域で、液化二酸化炭素Lの圧力が、液化二酸化炭素Lの三重点圧力に応じて設定する設定圧力下限値Ps以上となる。これにより、積込配管25内でドライアイスが生成されることが抑えられる。
【0026】
上記第一実施形態のタンクシステム20Aでは、配管圧力抵抗部30Aは、積込配管25の下端25bに設けられている。
したがって、実施形態のタンクシステム20Aによれば、積込配管25の下端25bに設けた配管圧力抵抗部30Aにより、積込配管25内でドライアイスが生成されることが抑えられる。また、既存のタンクシステム20Aの積込配管25の下端25bに対しても、配管圧力抵抗部30Aを追設することができる。
【0027】
上記第一実施形態のタンクシステム20Aでは、配管圧力抵抗部30A(オリフィス31)は、積込配管25内の流路断面積A1よりも小さい開口面積A2を有し、液化二酸化炭素Lが流通する流通開口部30aを有している。
このような配管圧力抵抗部30Aは、流通開口部30aを有する簡易な構成であり、低コストで液化二酸化炭素Lにおけるドライアイスの生成抑制が実現できる。
【0028】
上記第一実施形態の船舶1Aでは、船体2と、船体2に設けられたタンクシステム20Aと、を備えている。
したがって、実施形態の船舶1Aによれば、タンク21内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管25内でドライアイスが生成されるのを抑え、タンク21の運用を円滑に行うことができるタンクシステム20Aを備えた船舶1Aを提供することが可能となる。
【0029】
<変形例>
上記第一実施形態では、配管圧力抵抗部30Aとして、オリフィス31を設ける構成としたが、これに限られない。
例えば、図4に示すように、配管圧力抵抗部30Aとして、多孔板32を設けるようにしてもよい。多孔板32は、積込配管25の下端25bに取り付けられている。多孔板32は、積込配管25の下端25bの開口を閉塞するように設けられたプレート部32aと、プレート部32aに形成された複数(多数)の貫通孔32bと、を備えている。各貫通孔32bは、プレート部32aの板厚方向に貫通している。これら複数の貫通孔32bにより、上記流通開口部30aが構成されている。流通開口部30aは、複数の貫通孔32bの合計開口面積A3が、積込配管25内の流路断面積A1よりも小さい。
このような多孔板32を用いた配管圧力抵抗部30Aは、積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの圧力を圧力損失ΔPの分だけ高めることができる。
【0030】
また、図5に示すように、配管圧力抵抗部30Aとして、フラップ33を設けるようにしてもよい。フラップ33は、積込配管25の下端25bの内側に取り付けられている。フラップ33は、板状で、積込配管25の下端25bにおける管軸方向Dpに直交する面に対し、傾斜して設けられている。フラップ33は、その外周縁33aと、積込配管25の下端25bの内周面25fとの間に隙間33bを空けるように設けられている。フラップ33の外周縁33aと積込配管25の内周面25fとの隙間33bが、上記流通開口部30aを形成する。流通開口部30aを形成する隙間33bの開口面積A4は、積込配管25内の流路断面積A1よりも小さい。
このようなフラップ33を用いた配管圧力抵抗部30Aは、積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの圧力を圧力損失ΔPの分だけ高めることができる。
【0031】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態に係るタンクシステム、船舶について、図6を参照して説明する。以下に説明する本開示の第二実施形態においては、本開示の第一実施形態と配管圧力抵抗部30Bの位置のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
(船舶の船体構成)
図1に示すように、この実施形態の船舶1Bは、液化二酸化炭素、あるいは液化二酸化炭素を含む多種の液化ガスを運搬する。この船舶1Bは、船体2と、タンクシステム20Bと、を少なくとも備えている。
【0032】
(タンクシステムの構成)
図6に示すように、タンクシステム20Bは、タンク21と、積込配管25と、配管圧力抵抗部30Bと、を備えている。
【0033】
(配管圧力抵抗部の構成)
配管圧力抵抗部30Bは、積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの圧力を圧力損失分だけ高めることができる。配管圧力抵抗部30Bは、積込配管25において最も高い位置に位置する配管頂部25tに対して下端25b側に設けられている。この第二実施形態において、配管圧力抵抗部30Bは、積込配管25の配管頂部25tと下端25bとの間に設けられている。配管圧力抵抗部30Bは、積込配管25の下端25bよりも高い位置に設けられている。
配管圧力抵抗部30Bは、上記第一実施形態で示した、オリフィス31(図3参照)、多孔板32(図4参照)、及びフラップ33(図5参照)の一つを用いて形成されている。配管圧力抵抗部30Bは、発生する圧力損失ΔPが上式(1)で表される条件を満足するように設けられている。
【0034】
また、配管圧力抵抗部30Bを、積込配管25の下端25bよりも高い位置に設けた場合、配管圧力抵抗部30Bの下方(下端25b)側で、配管圧力抵抗部30Bを通過した液化二酸化炭素Lの圧力が、三重点圧力を下回らないようにする必要がある。
このため、配管圧力抵抗部30Bを、タンク21のタンク底面21bからの高さH[mm]に設けた場合、配管圧力抵抗部30Bの高さHにおける液化二酸化炭素Lの圧力が、設定圧力下限値Psを上回るようする必要がある。
【0035】
配管圧力抵抗部30Bが設置されるタンク底面21bからの高さH[mm]は、配管圧力抵抗部30Bを通過した液化二酸化炭素Lの圧力がHとタンク21内における液化二酸化炭素Lの液面高さH1との高低差に応じて低下することを考慮して、その圧力が三重点圧力を下回らないように制限される。
【0036】
(作用効果)
上記第二実施形態のタンクシステム20Bでは、タンク21と、積込配管25と、配管圧力抵抗部30Bと、を備えている。配管圧力抵抗部30Bは、積込配管25において最も高い位置に位置する配管頂部25tに対して下端25b側に設けられている。配管圧力抵抗部30Bによって、積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの圧力は圧力損失ΔPの分だけ高められ、液化二酸化炭素Lの圧力Pcが三重点圧力に近づくことが抑えられる。その結果、タンク21内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管25内でドライアイスが生成されるのを抑え、タンク21の運用を円滑に行うことが可能となる。
【0037】
上記第二実施形態のタンクシステム20Bでは、配管圧力抵抗部30Bは、上式(1)を満たす圧力損失ΔPを発生させる。
したがって、実施形態のタンクシステム20Bによれば、積込配管25の配管頂部25tの高さH2に応じた適切な圧力損失ΔPを配管圧力抵抗部30Bで発生させ、液化二酸化炭素Lの圧力を高めることができる。これにより、積込配管25内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。
【0038】
上記第二実施形態のタンクシステム20Bでは、配管圧力抵抗部30Bは、積込配管25の下端25bよりも高く、かつタンク21のタンク底面21bからの高さH[mm]は、配管圧力抵抗部30Bを通過した液化二酸化炭素Lの圧力が、タンク底面21bからの高さHとタンク21内における液化二酸化炭素Lの液面高さH1との高低差に応じて低下することを考慮して、その圧力が三重点圧力を下回らないように制限されている。
したがって、実施形態のタンクシステム20Bによれば、配管圧力抵抗部30Bよりも下方(下端25b側)で、液化二酸化炭素Lの圧力が、設定圧力下限値Ps以上となる。これにより、配管圧力抵抗部30Bを通過した液化二酸化炭素Lの圧力低下が生じてドライアイスが生成されてしまうことを抑えることができる。
【0039】
上記第二実施形態の船舶1Bでは、船体2と、船体2に設けられたタンクシステム20Bと、を備える。
したがって、第二実施形態の船舶1Bによれば、タンク21内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管25内でドライアイスが生成されるのを抑え、タンク21の運用を円滑に行うことができるタンクシステム20Bを備えた船舶1Bを提供することが可能となる。
【0040】
[第三実施形態]
次に、本開示の第三実施形態に係るタンクシステム、船舶について、図7図11を参照して説明する。以下に説明する本開示の第三実施形態においては、本開示の第一、第二実施形態と配管圧力抵抗部30Cの構成のみが異なるので、第一、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
(船舶の船体構成)
図1に示すように、この第三実施形態の船舶1Cは、液化二酸化炭素、あるいは液化二酸化炭素を含む多種の液化ガスを運搬する。この船舶1Cは、船体2と、タンクシステム20Cと、を少なくとも備えている。
【0041】
(タンクシステムの構成)
図7に示すように、タンクシステム20Cは、タンク21と、積込配管25と、配管圧力抵抗部30Cと、を備えている。
【0042】
(配管圧力抵抗部の構成)
配管圧力抵抗部30Cは、積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの圧力を圧力損失分だけ高めることができる。この実施形態において、配管圧力抵抗部30Cは、制御弁35と、制御装置60と、を備えている。
【0043】
配管圧力抵抗部30Cの制御弁35は、積込配管25において最も高い位置に位置する配管頂部25tに対して下端25b側に設けられている。この第三実施形態において、制御弁35は、積込配管25の下端25bに設けられている。制御弁35は、上記第二実施形態と同様に、積込配管25の下端25bよりも高い位置に設けてもよい。
【0044】
図8に示す制御弁35は、流通開口部30aの開口面積A5を可変とする。制御弁35は、積込配管25における液化二酸化炭素Lの流路内で回動可能に設けられた弁体35aを有している。弁体35aは、弁軸周りに回動することで、積込配管25内の流路を開閉する。弁体35aは、弁軸周りの開度を調整することで、弁体35aと、積込配管25の内周面25fとの間に形成される隙間35bを増減させる。弁体35aと積込配管25の内周面25fとの隙間35bが、上記流通開口部30aを形成する。流通開口部30aを形成する隙間35bの開口面積A5は、積込配管25内の流路断面積A1よりも小さい。制御弁35には、低温の液化二酸化炭素L中でも作動可能な液没耐低温弁を用いるのが好ましい。
このような制御弁35を用いた配管圧力抵抗部30Cは、積込配管25を流通する液体二酸化炭素Lの圧力を圧力損失ΔPの分だけ高めることができる。
【0045】
配管圧力抵抗部30Cの制御弁35では、発生する圧力損失ΔPが配管頂部25tにおける圧力Pcを高めることを利用して,上式(1)で表される条件を満足するよう、流通開口部30aの開口面積A4が設定されている。
【0046】
(制御装置の構成)
制御装置60は、制御弁35における流通開口部30aの開度を調整する。制御装置60で、制御弁35の開度調整を行うため、タンクシステム20Cは、タンク内圧センサー51と、配管頂部圧力センサー52と、を備えている。タンク内圧センサー51は、タンク21の内圧を検出する。配管頂部圧力センサー52は、配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcを検出する。
【0047】
(制御装置のハードウェア構成図)
図9に示すように、制御装置60は、CPU61(Central Processing Unit)、ROM62(Read Only Memory)、RAM63(Random Access Memory)、HDD64(Hard Disk Drive)、信号受信モジュール65を備えるコンピュータである。信号受信モジュール65は、タンク内圧センサー51、配管頂部圧力センサー52からの検出信号を受信する。
【0048】
(制御装置の機能ブロック図)
図10に示すように、制御装置60のCPU61は予めHDD64やROM62等に記憶されたプログラムを実行することにより、信号受信部71、開度制御部72、指令信号出力部73の各機能構成を実現する。
信号受信部71は、信号受信モジュール65を介して、タンク内圧センサー51、配管頂部圧力センサー52からの検出信号、つまりタンク内圧センサー51におけるタンク21の内圧の検出値、及び配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcの検出値のデータを受信する。
開度制御部72は、配管頂部圧力センサー52における検出値に基づいて、制御弁35の開度を調整する制御を実行する。
指令信号出力部73は、開度制御部72における制御により、制御弁35の開度を変更するための指令信号を、制御弁35に出力する。
【0049】
(処理の手順)
次に、タンクシステム20Cにおいて、制御装置60により制御弁35の開度を調整する手順について説明する。
図11に示すように、制御装置60の信号受信部71は、予め設定された時間間隔で、タンク内圧センサー51、配管頂部圧力センサー52から、タンク内圧センサー51におけるタンク21の内圧(運用圧力Pt)の検出値、及び配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcの検出値のデータを受信する(ステップS1)。
【0050】
次いで、開度制御部72が、ステップS1で受信した配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcが、予め設定された閾値(例えば、設定圧力下限値Ps)未満であるか否かを判定する(ステップS2)。その結果、配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcが、閾値未満でなければステップS1に戻る。
【0051】
ステップS2において、配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcが、閾値未満であった場合、つまり、配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcが、設定圧力下限値Ps未満であった場合、開度制御部72は、制御弁35の開度を減少させる(ステップS3)。これには、開度制御部72が、指令信号出力部73を介し、制御弁35に対して弁体35aの開度を所定角度減少させるための指令信号を出力する。指令信号の出力後、制御装置60は、処理を終了し、ステップS1に戻る。
【0052】
(作用効果)
上記実施形態のタンクシステム20Cでは、タンク21と、積込配管25と、配管圧力抵抗部30Cと、を備えている。また、配管圧力抵抗部30Cは、積込配管25において最も高い位置に位置する配管頂部25tに対して下端25b側に設けられている。配管圧力抵抗部30Cによって、積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの圧力は圧力損失ΔPの分だけ高められ、液化二酸化炭素Lの圧力Pcが三重点圧力に近づくことが抑えられる。その結果、タンク21内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管25内でドライアイスが生成されるのを抑え、タンク21の運用を円滑に行うことが可能となる。
【0053】
上記実施形態のタンクシステム20Cでは、配管圧力抵抗部30Cは、上式(1)を満たす圧力損失ΔPを発生させる。
したがって、実施形態のタンクシステム20Cによれば、積込配管25の配管頂部25tの高さH2に応じた適切な圧力損失ΔPを配管圧力抵抗部30Cで発生させ、液化二酸化炭素Lの圧力を高めることができる。これにより、積込配管25内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。
【0054】
上記実施形態のタンクシステム20Cでは、配管圧力抵抗部30Cは、積込配管25内の流路断面積A1よりも小さい開口面積A5を有し、液体二酸化炭素Lが流通する流通開口部30aを有する。
このような配管圧力抵抗部30Cは、流通開口部30aを有する簡易な構成であり、低コストで液化二酸化炭素Lにおけるドライアイスの生成抑制が実現できる。
【0055】
上記実施形態のタンクシステム20Cでは、配管圧力抵抗部30Cは、流通開口部30aの開口面積A5を可変とする制御弁35と、制御弁35における流通開口部30aの開度を調整する制御装置60と、を備える。
したがって、実施形態のタンクシステム20Cによれば、制御装置60により、制御弁35における流通開口部30aの開度を調整することで、配管圧力抵抗部30Cで発生する圧力損失ΔPを調整することができる。これにより、タンクシステム20Cの運用条件等に応じて、液化二酸化炭素Lの圧力を高める圧力損失ΔPを適切に調整することが可能となる。
【0056】
上記実施形態のタンクシステム20Cでは、積込配管25の配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcを検出する配管頂部圧力センサー52をさらに備え、制御装置60は、配管頂部圧力センサー52における検出値に基づいて、制御弁35の開度を調整する。
したがって、実施形態のタンクシステム20Cによれば、配管頂部圧力センサー52で検出された配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcに応じて、配管圧力抵抗部30Cで積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの圧力を高める圧力損失ΔPを調整することができる。したがって、配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力が、設定圧力下限値Psを下回らないように、液化二酸化炭素Lの圧力を高める圧力損失ΔPを適切に調整することが可能となる。
【0057】
上記実施形態の船舶1Cでは、船体2と、船体2に設けられたタンクシステム20Cと、を備える。
したがって、実施形態の船舶1Cによれば、タンク21内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管25内でドライアイスが生成されるのを抑え、タンク21の運用を円滑に行うことができるタンクシステム20Cを備えた船舶1Cを提供することが可能となる。
【0058】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態では、タンク21を、船体2内に形成されたタンクシステム格納区画8内に設ける構成としたが、これに限るものではなく、例えば、タンク21は、例えば、上甲板5上に設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態ではタンク21を船舶1A~1Cに備えるようにしたが、これに限るものではなく、例えばタンク21は、船舶1A~1C以外の場所、例えば陸上や海上設備に設置したり、タンクローリー等の車両に設置したりするようにしてもよい。
【0059】
<付記>
実施形態に記載のタンクシステム20A、20B、20C、船舶1A~1Cは、例えば以下のように把握される。
【0060】
(1)第1の態様に係るタンクシステム20A、20B、20Cは、内部に液化二酸化炭素Lが収容されるタンク21と、上下方向Dvに延びて前記タンク21内に下端25bが開口するとともに、外部から供給される液化二酸化炭素Lを前記下端25bから前記タンク21内に放出する積込配管25と、前記積込配管25において最も高い位置に位置する配管頂部25tに対して前記下端25b側に設けられ、前記積込配管25を流通する前記液化二酸化炭素Lに圧力損失ΔPを発生させる配管圧力抵抗部30A、30B、30Cと、を備える。
配管圧力抵抗部30A、30B、30Cの例としては、オリフィス31、多孔板32、フラップ33がある。
【0061】
このタンクシステム20A、20B、20Cは、配管圧力抵抗部30A、30B、30Cにより、積込配管25を流通する液化二酸化炭素Lの圧力が圧力損失ΔPの分だけ高められる。積込配管25の配管頂部25tにおける液体二酸化炭素Lの圧力Pcが高められることで、液化二酸化炭素Lの圧力Pcが三重点圧力に近づくことが抑えられる。これにより、積込配管25内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。その結果、タンク21内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管25内のドライアイス生成を抑え、タンク21の運用を円滑に行うことが可能となる。
【0062】
(2)第2の態様に係るタンクシステム20A、20B、20Cは、(1)のタンクシステム20A、20B、20Cであって、前記配管圧力抵抗部30A、30B、30Cは,タンク運用圧力Ptに前記配管圧力抵抗部30A、30B、30Cにて発生する圧力損失ΔPを加えたものから、前記タンク21内における液化二酸化炭素Lの液面と前記配管頂部25tの高低差に相当する圧力を差し引いた値が、液化二酸化炭素Lの三重点圧力値に安全マージン値を加えた設定圧力下限値Psを上回るように決められる圧力損失ΔPを発生させる。
【0063】
これにより、積込配管25の配管頂部25tの高さに応じた適切な圧力損失ΔPを配管圧力抵抗部30A、30B、30Cで発生させ、液化二酸化炭素Lの圧力を高めることができる。これにより、積込配管25内の液化二酸化炭素Lの圧力Pcが、液化二酸化炭素Lの三重点圧力に応じて設定する設定圧力下限値Ps以上となる。これにより、積込配管25内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。
【0064】
(3)第3の態様に係るタンクシステム20A、20Cは、(2)のタンクシステム20A、20Cであって、前記配管圧力抵抗部30A、30Cは、前記積込配管25の前記下端25bに設けられている。
【0065】
これにより、積込配管25の下端25bに設けた配管圧力抵抗部30A、30Cにより、積込配管25内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。また、既存のタンクシステムの積込配管25の下端25bに対しても、配管圧力抵抗部30A、30Cを追設することができる。
【0066】
(4)第4の態様に係るタンクシステム20Bは、(2)のタンクシステム20Bであって、前記配管圧力抵抗部30Bは、前記積込配管25の前記下端25bよりも高く、かつ前記タンク21のタンク底面21bからの高さHが、前記配管圧力抵抗部30Bを通過した液化二酸化炭素Lの圧力が、前記三重点圧力値を下回らないように設けられている。
【0067】
これにより、配管圧力抵抗部30Bを、積込配管25の下端25bよりも高く、配管頂部25tよりも低い位置に設置した場合において、配管圧力抵抗部30Bよりも下方(下端25b側)においても、液化二酸化炭素Lの圧力が設定圧力下限値Ps以上となる。これにより、配管圧力抵抗部30Bよりも下方で、配管圧力抵抗部30Bを通過した液化二酸化炭素Lの圧力低下が生じてドライアイスが生成されてしまうことが抑えられる。
【0068】
(5)第5の態様に係るタンクシステム20A、20B、20Cは、(1)から(4)の何れか一つタンクシステム20A、20B、20Cであって、前記配管圧力抵抗部30A、30B、30Cは、前記積込配管25内の流路断面積A1よりも小さい開口面積A2~A5を有し、液化二酸化炭素Lが流通する流通開口部30aを有する。
【0069】
このような配管圧力抵抗部30A、30B、30Cは、流通開口部30aを有する簡易な構成であり、低コストで液化二酸化炭素Lにおけるドライアイスの生成抑制が実現できる。
【0070】
(6)第6の態様に係るタンクシステム20Cは、(5)のタンクシステム20Cであって、前記配管圧力抵抗部30Cは、前記流通開口部30aの開口面積A5を可変とする制御弁35と、前記制御弁35における前記流通開口部30aの開度を調整する制御装置60と、を備える。
【0071】
これにより、制御装置60により、制御弁35における流通開口部30aの開度を調整することで、配管圧力抵抗部30Cで発生する圧力損失ΔPを調整することができる。したがって、タンクシステム20Cの運用条件等に応じて、液化二酸化炭素Lの圧力を高める圧力損失ΔPを適切に調整することが可能となる。
【0072】
(7)第7の態様に係るタンクシステム20Cは、(6)のタンクシステム20Cであって、前記積込配管25の前記配管頂部25tにおける前記液化二酸化炭素Lの圧力Pcを検出する配管頂部圧力センサー52をさらに備え、前記制御装置60は、前記配管頂部圧力センサー52における検出値に基づいて、前記制御弁35の開度を調整する。
【0073】
これにより、配管頂部圧力センサー52で検出された配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcに応じて、配管圧力抵抗部30Cで発生する圧力損失ΔPを調整することができる。したがって、配管頂部25tにおける液化二酸化炭素Lの圧力Pcが設定圧力下限値Psを下回らないように、液化二酸化炭素Lの圧力を高める圧力損失ΔPを適切に調整することが可能となる。
【0074】
(8)第8の態様に係る船舶1A~1Cは、船体2と、前記船体2に設けられた、(1)から(7)の何れか一つタンクシステム20A、20B、20Cと、を備える。
【0075】
これにより、タンク21内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管25内でドライアイスが生成されるのを抑え、タンク21の運用を円滑に行うことができるタンクシステム20A、20B、20Cを備えた船舶1A~1Cを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1A、1B、1C…船舶
2…船体
2a…船首
2b…船尾
3A、3B…舷側
5…上甲板
7…上部構造
8…タンクシステム格納区画
20A、20B、20C…タンクシステム
21…タンク
21b…タンク底面
25…積込配管
25b…下端
25f…内周面
25t…配管頂部
30A、30B、30C…配管圧力抵抗部
30a…流通開口部
31…オリフィス
31a…プレート部
31b…貫通孔
32…多孔板
32a…プレート部
32b…貫通孔
33…フラップ
33a…外周縁
33b…隙間
35…制御弁
35a…弁体
35b…隙間
51…タンク内圧センサー
52…配管頂部圧力センサー
60…制御装置
61…CPU
62…ROM
63…RAM
64…HDD
65…信号受信モジュール
71…信号受信部
72…開度制御部
73…指令信号出力部
A1…流路断面積
A2、A3、A4、A5…開口面積
Da…船首尾方向
Dp…管軸方向
Dv…上下方向
H…配管圧力抵抗部のタンク底面からの高さ
H1…タンク内における液化二酸化炭素の液面高さ
H2…積込配管の配管頂部のタンク底面からの高さ
L…液化二酸化炭素
ΔP…圧力損失
Pc…圧力
Ps…設定圧力下限値
Pt…運用圧力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11