特許 7221886 電動車両

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-02-06

(45)【発行日】2023-02-14

(54)【発明の名称】電動車両

(51)【国際特許分類】

   B62D 25/08 20060101AFI20230207BHJP

   B60K 1/00 20060101ALI20230207BHJP

   B62D 21/00 20060101ALI20230207BHJP

【ＦＩ】

B62D25/08 E

B60K1/00

B62D21/00 A

B62D25/08 H

【請求項の数】 5

(21)【出願番号】P 2020005973

(22)【出願日】2020-01-17

(65)【公開番号】P2021112958

(43)【公開日】2021-08-05

【審査請求日】2022-01-17

(73)【特許権者】

【識別番号】000003207

【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社

(73)【特許権者】

【識別番号】000005348

【氏名又は名称】株式会社ＳＵＢＡＲＵ

(74)【代理人】

【識別番号】110000110

【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】龍野 功幸

(72)【発明者】

【氏名】室井 裕佐

【審査官】志水 裕司

(56)【参考文献】

【文献】特開２００３－１１２５１９（ＪＰ，Ａ）

【文献】国際公開第２０１３／１０８７７４（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特開２０１６－１０７９１３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１０－２２１８７９（ＪＰ，Ａ）

【文献】国際公開第２０１８／１８０３８２（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特開２０１４－１３６５３１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－１１４８９９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－１１１９８２（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２０２０／０２６９７８５（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６２Ｄ １７／００ － ２９／０４

Ｂ６０Ｈ １／００ － ３／０６

Ｂ６０Ｋ １／００ － １６／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

一又は複数の車輪をモータによって駆動する電動車両であって、
ダッシュパネルを含むボデーと、
前記ダッシュパネルの上端に沿って設けられ、その少なくとも一部が前記ダッシュパネルよりも前方に位置するカウルと、
前記ダッシュパネルの前方に位置するとともに、前記ボデーによって支持された電気ユニットと、
前記カウルの中間部分と前記電気ユニットとを互いに連結する連結部材と、
を備え、
前記電気ユニットは、ハウジングと、前記ハウジング内に収容された高電圧部品とを有し、
前記連結部材は、前記カウルと前記ハウジングとを互いに連結し、
前記高電圧部品は、前記モータへの供給電力を調節する電力変換装置を含む、
電動車両。

【請求項2】

前記ハウジングは、絶縁材料で構成されている、請求項１に記載の電動車両。

【請求項3】

前記ボデーは、前記電気ユニットを下方から支持するマウントフレームをさらに有する、請求項１又は２に記載の電動車両。

【請求項4】

前記カウルの前記中間部分には、補強部材が設けられている、請求項１から３のいずれか一項に記載の電動車両。

【請求項5】

前記ボデーは、一対のサスペンションタワーをさらに有し、
前記カウルの両端は、前記一対のサスペンションタワーにそれぞれ接続されている、請求項１から４のいずれか一項に記載の電動車両。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本明細書が開示する技術は、電動車両に関し、特に、電動車両の前部構造に関する。ここでいう電動車両とは、一又は複数の車輪をモータによって駆動する車両を広く意味し、例えば、外部の電源によって充電される再充電式の電気自動車、燃料電池を電源とする燃料電池車、及び、エンジンを併せ持つハイブリッド車等が含まれる。

【背景技術】

【0002】

特許文献１に、エンジン車両が開示されている。このエンジン車両は、ダッシュパネルを含むボデーと、ダッシュパネルの上端に沿って設けられたカウルを備える。カウルの少なくとも一部は、ダッシュパネルよりも前方に張り出しており、フロントコンパートメント（エンジンコンパートメントとも称する）内への異物の侵入を防止する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１９－２７４０１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

上記したエンジン車両では、カウルの変形を抑制するために、カウルに対して補強部材を接合することによって、カウルの剛性を高めている。しかしながら、カウルの剛性を十分に高めるためには、比較的に大きな補強部材を設ける必要があり、車重の増大を招いてしまう。

【0005】

上記を鑑み、本明細書は、車重の増大を抑制しつつ、カウルの変形を抑止し得る技術を提供する。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本明細書が開示する技術は、一又は複数の車輪をモータによって駆動する電動車両に具現化される。この電動車両は、ダッシュパネルを含むボデーと、ダッシュパネルの上端に沿って設けられ、その少なくとも一部が前記ダッシュパネルよりも前方に位置するカウルと、ダッシュパネルの前方に位置するとともに、ボデーによって支持された電気ユニットと、カウルの中間部分と電気ユニットとを互いに連結する連結部材とを備える。

【0007】

上記した電動車両では、カウルの中間部分が、連結部材を介して電気ユニットに接続されている。このような構成によると、比較的に簡素な（即ち、軽量な）連結部材を用いても、カウルの変形を効果的に抑制することができる。なお、電気ユニットは、エンジンのように振動しないことから、カウルを電気ユニットに連結しても、不快なノイズ音や振動を発生さえることがない。そのことから、本技術は、エンジン車両よりも、電動車両において好適に採用することができる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】実施例の電動車両１０の構成を模式的に示す図。

【図2】電動車両１０の前部構造１０ｆを模式的に示す図。

【図3】図２中のＩＩＩ－ＩＩＩ線における断面図。

【発明を実施するための形態】

【0009】

本技術の一実施形態において、電気ユニットは、ハウジングと、ハウジング内に収容された高電圧部品とを有し、連結部材は、カウルと電気ユニットのハウジングとを互いに連結してもよい。この場合、特に限定されないが、連結部材は、ハウジングと一体に構成されてもよい。なお、ここでいう高電圧部品とは、３０ボルトを超える交流電圧又は６０ボルトを超える直流電圧で動作する電気部品を意味する。

【0010】

上記した実施形態において、高電圧部品は、モータへの供給電力を調節する電力変換装置を含んでもよい。この場合、電力変換装置は、例えば、ＤＣ－ＤＣコンバータとインバータとの少なくとも一方を含んでもよい。

【0011】

上記した実施形態において、電気ユニットのハウジングは、絶縁材料で構成されていてもよい。

【0012】

本技術の一実施形態において、ボデーは、電気ユニットを下方から支持するマウントフレームをさらに有してもよい。このような構成によると、電気ユニットがボデーに対して安定することで、カウルの変形がより効果的に抑制される。

【0013】

本技術の一実施形態において、連結部材が接続されたカウルの中間部分には、補強部材が設けられてもよい。このような構成によると、カウルの変形をより効果的に抑制することができる。

【0014】

本技術の一実施形態において、ボデーは、左右一対のサスペンションタワーをさらに有してもよい。この場合、カウルの両端は、一対のサスペンションタワーにそれぞれ接続されていてもよい。サスペンションタワーは、通常、立体的な形状を有しており、その剛性が比較的に高い。従って、カウルの両端をサスペンションタワーに接続することで、カウルの剛性を効果的に高めることができる。なお、他の実施形態として、カウルの両端は、サスペンションタワーに代えて、又は加えて、エプロンアッパメンバに接続されてもよい。

【0015】

本明細書において単に前後方向との記載は、電動車両における前後方向を意味するものとする。同様に、単に左右方向との記載は、電動車両における左右方向を意味し、単に上下方向との記載は、電動車両における上下方向を意味する。例えば、電動車両が水平面上に配置されたときに、電動車両の上下方向は、鉛直方向と一致する。また、電動車両の左右方向は、電動車両の車軸に平行な方向であり、電動車両の前後方向は、水平面に平行かつ電動車両の車軸に垂直な方向となる。

【実施例】

【0016】

図面を参照して、実施例の電動車両１０について説明する。図１に示すように、電動車両１０は、ボデー１２と、複数の車輪１４ｆ、１４ｒとを含む。ボデー１２は、特に限定されないが、金属で構成されている。ボデー１２の内部には、客室や荷室が画定されている。複数の車輪１４ｆ、１４ｒには、一対の前輪１４ｆと、一対の後輪１４ｒとが含まれる。なお、車輪１４ｆ、１４ｒの数については、四つに限定されない。

【0017】

電動車両１０は、モータ１６と、バッテリユニット１８と、電気ユニット２０とをさらに備える。モータ１６は、複数の車輪１４ｆ、１４ｒの少なくとも一つ（例えば、一対の後輪１４ｒ）を駆動する。モータ１６には、電気ユニット２０を介して、バッテリユニット１８が接続されている。バッテリユニット１８は、複数の二次電池セルを内蔵しており、外部の電力によって繰り返し充電可能に構成されている。

【0018】

電気ユニット２０は、例えばＤＣ－ＤＣコンバータ及び／又はインバータといった、電力変換装置２２（図３参照）を備えており、バッテリユニット１８からモータ１６への供給電力を調節することができる。モータ１６、バッテリユニット１８及び電力変換装置２２は、いわゆる高電圧部品であり、３０ボルトを超える交流電圧又は６０ボルトを超える直流電圧で動作する電気部品である。

【0019】

以下、図１－図３を参照して、電動車両１０の前部構造１０ｆについて説明する。ボデー１２は、ダッシュパネル３０と、カウル３２を備える。ダッシュパネル３０は、電動車両１０の前部構造１０ｆと、その後方に位置するキャビン１０ｃとの境界を画定している。カウル３２は、ダッシュパネル３０の上端３０ａに沿って設けられおり、その少なくとも一部はダッシュパネル３０よりも前方に位置している。本実施例におけるカウル３２は、溝形の断面形状を有する板材であって、左右方向に沿って延びている。

【0020】

ボデー１２はさらに、一対の右フロントサイドメンバ３４Ｒ及び左フロントサイドメンバ３４Ｌと、一対の右サスペンションタワー３６Ｒ及び左サスペンションタワー３６Ｌと、一対の右エプロンアッパメンバ３８Ｒ及び左エプロンアッパメンバ３８Ｌとを備える。各々のフロントサイドメンバ３４Ｒ、３４Ｌは、ダッシュパネル３０から前方に向けて延びている。各々のサスペンションタワー３６Ｒ、３６Ｌは、それぞれフロントサイドメンバ３４Ｒ、３４Ｌの外側に位置しており、その外側にサスペンションを収容する空間を画定する。各々のエプロンアッパメンバ３８Ｒ、３８Ｌは、それぞれサスペンションタワー３６Ｒ、３６Ｌの外側に位置しており、ダッシュパネル３０から前方に延びている。

【0021】

ボデー１２はさらに、マウントフレーム４０を備える。マウントフレーム４０は、一対のフロントサイドメンバ３４Ｒ、３４Ｌに固定されており、電気ユニット２０を下方から支持している。これにより、電気ユニット２０は、ボデー１２に対して強固に固定されている。なお、電気ユニット２０は、前述した電力変換装置２２を収容するハウジング２４を備える。ハウジング２４は絶縁材料で構成されており、電力変換装置２２をボデー１２から電気的に絶縁している。

【0022】

本実施例の電動車両１０は、二つの連結部材４２をさらに備える。各々の連結部材４２は、カウル３２の中間部分３２ｃと電気ユニット２０とを互いに連結する。これにより、カウル３２の中間部分３２ｃが、電気ユニット２０によって支持されており、カウル３２の変形が効果的に抑制される。電気ユニット２０は、エンジンのように振動しないことから、カウル３２を電気ユニット２０に連結しても、不快なノイズ音や振動が発生することがない。ここで、連結部材４２の具体的な構成は特に限定されない。連結部材４２は、比較的に簡素な（即ち、軽量な）構造に設計することができる。

【0023】

本実施例の電動車両１０では、特に限定されないが、カウル３２の両端３２ａ、３２ｂは、一対のサスペンションタワー３６Ｒ、３６Ｌにそれぞれ接続されている。サスペンションタワー３６Ｒ、３６Ｌは、立体的な形状を有しており、その剛性が比較的に高い。従って、カウル３２の両端３２ａ、３２ｂをサスペンションタワー３６Ｒ、３６Ｌに接続することで、カウル３２の剛性を効果的に高めることができる。なお、他の実施形態として、カウル３２の両端３２ａ、３２ｂは、サスペンションタワー３６Ｒ、３６Ｌに代えて、又は加えて、エプロンアッパメンバ３８Ｒ、３８Ｌに接続されてもよい。

【0024】

本実施例の電動車両１０では、特に限定されないが、連結部材４２が接続されたカウル３２の中間部分３２ｃに、補強部材４４が設けられている。カウル３２の中間部分３２ｃには、連結部材４２から比較的に大きな力が作用するおそれがある。従って、カウル３２の中間部分３２ｃに補強部材４４を設けることで、カウル３２の変形をより効果的に抑制することができる。言い換えると、カウル３２及び連結部材４２によって、電気ユニット２０を安定させることもできる。なお、一例ではあるが、本実施例のカウル３２では、連結部材４２がカウル３２の下面に接合されており、補強部材４４がカウル３２の上面に接合されており、連結部材４２と補強部材４４とがカウル３２を介して互いに対向している。

【0025】

本実施例の電動車両１０は、二つの連結部材４２を備えているが、連結部材４２の数は二つに限定されない。他の実施形態として、電動車両１０は、単一の、又は三以上の連結部材４２を備えてもよい。また、電動車両１０が複数の連結部材４２が備える場合、その複数の連結部材４２は、同一の形状を有してもよいし、互いに異なる形状を有してもよい。また、各々の連結部材４２が、複数の部材で構成されてもよい。

【0026】

本実施例の電動車両１０では、各々の連結部材４２が、独立した部材で構成されている。しかしながら、他の実施形態として、連結部材４２の少なくとも一部が、電気ユニット２０のハウジング２４又はカウル３２と一体に設けられてもよい。例えば、連結部材４２の一部が、電気ユニット２０のハウジング２４と一体に設けられ、連結部材４２の他の一部が、カウル３２と一体に設けられてもよい。

【0027】

連結部材４２を構成する材料は特に限定されない。連結部材４２は、金属材料で構成されてもよいし、樹脂材料で構成されてもよく、金属材料と樹脂材料との組み合わせで構成されてもよい。連結部材４２の少なくとも一部を樹脂材料で構成することで、連結部材４２の軽量化を図ることができる。また、樹脂材料は、繊維強化樹脂であってもよいし、各種のフィラーを含有してもよい。

【0028】

以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

【符号の説明】

【0029】

１０：電動車両
１０ｆ：前部構造
１０ｃ：キャビン
１２：ボデー
１４ｆ、１４ｒ：車輪
１６：モータ
１８：バッテリユニット
２０：電気ユニット
２２：電気ユニットの電力変換装置
２４：電気ユニットのハウジング
３０：ダッシュパネル
３２：カウル
３４Ｒ、３４Ｌ：フロントサイドメンバ
３６Ｒ、３６Ｌ：サスペンションタワー
３８Ｒ：３８Ｌ：エプロンアッパメンバ
４０：マウントフレーム
４２：連結部材
４４：補強部材

【図1】

【図2】

【図3】