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特許7221898電力系統制御装置、電力系統制御方法、および、電力系統制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】電力系統制御装置、電力系統制御方法、および、電力系統制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230207BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230207BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20230207BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230207BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230207BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/00 170
H02J3/14
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
H02J13/00 311R
H02J7/00 P
H02J7/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020036389
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021141681
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 照久
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 廣次
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 道彦
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/199502(WO,A1)
【文献】特開2019-216534(JP,A)
【文献】特開2014-054048(JP,A)
【文献】特開2005-057821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/00
H02J 3/14
H02J 13/00
H02J 7/00
H02J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給電力が第1の確率分布として表される第1の電力供給設備と、前記第1の電力供給設備に対応し、充電量と放電量の少なくともいずれかを調節可能な第1の可変電力源と、供給電力が第2の確率分布として表される第2の電力供給設備と、を含む電力系統を制御する電力系統制御装置であって、
前記第1の電力供給設備から時系列の第1の電力供給量データを取得するとともに、前記第2の電力供給設備から時系列の第2の電力供給量データを取得する取得部と、
前記第1の電力供給量データと前記第2の電力供給量データの相関値を算出する算出部と、
前記相関値が所定の閾値範囲から外れていた場合、前記第1の電力供給設備による電力供給量と前記第1の可変電力源による充放電量の合計が前記第1の確率分布の平均に近づくように、前記第1の可変電力源に対して充電量と放電量の少なくともいずれかの調節を指示する制御部と、を備える電力系統制御装置。
【請求項2】
電力潮流シミュレーションにおいて所定の電力負荷条件に基づいて前記電力系統の潮流状態を計算する潮流計算部をさらに備え、
前記第1の電力供給設備と、前記第1の可変電力源と、前記第2の電力供給設備とは、前記潮流計算部による前記電力潮流シミュレーションの結果に基づいて選択されたものである、請求項1に記載の電力系統制御装置。
【請求項3】
前記第1の可変電力源は、電力の需要家が所持する電気機器であり、
前記制御部は、前記相関値が所定の閾値範囲から外れていた場合であって、前記電力系統の電力が通常よりも低下している場合、前記需要家に対して、前記第1の可変電力源の消費電力量の低減を指示する、請求項1に記載の電力系統制御装置。
【請求項4】
前記第1の可変電力源は、電気自動車である、請求項1に記載の電力系統制御装置。
【請求項5】
前記電力系統は、
前記第2の電力供給設備に対応し、充電量と放電量の少なくともいずれかを調節可能な第2の可変電力源を、さらに備えており、
前記制御部は、
前記相関値が所定の閾値範囲から外れていた場合、
前記第1の確率分布の裾の広がり度が、前記第2の確率分布の裾の広がり度よりも小さいときは、前記第1の電力供給設備による電力供給量と前記第1の可変電力源による充放電量の合計が前記第1の確率分布の平均に近づくように、前記第1の可変電力源に対して充電量と放電量の少なくともいずれかの調節を指示する、請求項1に記載の電力系統制御装置。
【請求項6】
供給電力が第1の確率分布として表される第1の電力供給設備と、前記第1の電力供給設備に対応し、充電量と放電量の少なくともいずれかを調節可能な第1の可変電力源と、供給電力が第2の確率分布として表される第2の電力供給設備と、を含む電力系統を制御する電力系統制御装置による電力系統制御方法であって、
前記第1の電力供給設備から時系列の第1の電力供給量データを取得するとともに、前記第2の電力供給設備から時系列の第2の電力供給量データを取得する取得ステップと、
前記第1の電力供給量データと前記第2の電力供給量データの相関値を算出する算出ステップと、
前記相関値が所定の閾値範囲から外れていた場合、前記第1の電力供給設備による電力供給量と前記第1の可変電力源による充放電量の合計が前記第1の確率分布の平均に近づくように、前記第1の可変電力源に対して充電量と放電量の少なくともいずれかの調節を指示する制御ステップと、を含む電力系統制御方法。
【請求項7】
供給電力が第1の確率分布として表される第1の電力供給設備と、前記第1の電力供給設備に対応し、充電量と放電量の少なくともいずれかを調節可能な第1の可変電力源と、供給電力が第2の確率分布として表される第2の電力供給設備と、を含む電力系統を制御する電力系統制御装置としてコンピュータを機能させるための電力系統制御プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記第1の電力供給設備から時系列の第1の電力供給量データを取得するとともに、前記第2の電力供給設備から時系列の第2の電力供給量データを取得する取得ステップと、
前記第1の電力供給量データと前記第2の電力供給量データの相関値を算出する算出ステップと、
前記相関値が所定の閾値範囲から外れていた場合、前記第1の電力供給設備による電力供給量と前記第1の可変電力源による充放電量の合計が前記第1の確率分布の平均に近づくように、前記第1の可変電力源に対して充電量と放電量の少なくともいずれかの調節を指示する制御ステップと、を実行させるための電力系統制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力系統制御装置、電力系統制御方法、および、電力系統制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力設備の高経年化が進行すると、設備更新が必要となる。一方、人口減少等によりエネルギー需要の減少が想定されると、電力設備容量の抑制が求められる。
【0003】
また、電力供給設備には、供給電力が確率分布として表されるものがある。例えば、太陽光発電設備や風力発電設備などである。太陽光発電設備の発電電力は、日射量に依存するので、確率分布として表される。また、風力発電設備の発電電力は、風速に依存するので、確率分布として表される。
【0004】
例えば、そのような電力供給設備が複数ある場合、それらの発電電力量の相関(経時的な相関)が低いと仮定すると、合計の発電電力量を統計学的に充分に確保するための電力設備容量は比較的抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4203993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際には、そのような複数の電力供給設備の発電電力量の相関が高い場合もある。そのようなときに、統計的に極低頻度に発生する場合に対して電力設備容量を決定した場合、設備利用率や設備コストの観点で好ましくない。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、供給電力が確率分布として表される複数の電力供給設備の相関が高い場合でも、必要な電力供給設備容量を抑制することができる電力系統制御装置、電力系統制御方法、および、電力系統制御プログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の電力系統制御装置は、供給電力が第1の確率分布として表される第1の電力供給設備と、第1の電力供給設備に対応し、充電量と放電量の少なくともいずれかを調節可能な第1の可変電力源と、供給電力が第2の確率分布として表される第2の電力供給設備と、を含む電力系統を制御する。電力系統制御装置は、第1の電力供給設備から時系列の第1の電力供給量データを取得するとともに、第2の電力供給設備から時系列の第2の電力供給量データを取得する取得部と、第1の電力供給量データと第2の電力供給量データの相関値を算出する算出部と、相関値が所定の閾値範囲から外れていた場合、第1の電力供給設備による電力供給量と第1の可変電力源による充放電量の合計が第1の確率分布の平均に近づくように、第1の可変電力源に対して充電量と放電量の少なくともいずれかの調節を指示する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の電力システムの概要を模式的に示す全体構成図である。
図2図2は、第1実施形態の電力系統制御装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態の電力供給設備による発電量の確率分布を示すグラフである。
図4図4は、第1実施形態の電力供給設備による発電量の経時的変化の様子を示すグラフである。
図5図5は、第1実施形態の2つの電力供給設備による発電量の相関図である。
図6図6は、第1実施形態の電力系統制御装置による処理を示すフローチャートである。
図7図7は、第5実施形態の電力システムの概要を模式的に示す全体構成図である。
図8図8は、第5実施形態の2つの電力供給設備によるそれぞれの発電量の確率分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態(第1実施形態~第5実施形態)について、図面を参照して説明する。なお、以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、本発明は以下の記載内容に限定されない。また、第2実施形態以降において、それまでの実施形態と同様の事項については、説明を適宜省略する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の電力システムの全体構成について説明する。図1は、第1実施形態の電力システムSの概要を模式的に示す全体構成図である。
【0012】
図1に示すように、電力システムSは、変電所1、変圧器2、第1の電力供給設備3、第1の可変電力源4、第2の電力供給設備5、電力系統制御装置6、電力線PL等を備える。
【0013】
変電所1は、電力系統中で電気の電圧の変換(変電)を行い、各電力系統の接続や開閉等を行って、電力の流れを制御する施設である。
【0014】
変圧器2は、変電所1からの電力を所定の電圧に変換する機器である。
【0015】
第1の電力供給設備3は、供給電力が第1の確率分布として表される電力供給設備である。第1の電力供給設備3は、例えば、発電電力が日射量に依存して確率分布として表される太陽光発電設備である。また、第1の電力供給設備3は、例えば、発電電力が風速に依存して確率分布として表される風力発電設備である。
【0016】
ここで、図3は、第1実施形態の電力供給設備による発電量の確率分布を示すグラフである。図3のグラフにおいて、縦軸は発生確率、横軸は発電量である。図3に示すように、第1の電力供給設備3による供給電力(発電電力)は、確率分布(グラフG1)として表される。
【0017】
図1に戻って、第1の可変電力源4は、第1の電力供給設備3に対応し、充電量と放電量の少なくともいずれかを調節可能な可変電力源である。第1の可変電力源4は、例えば、充電池である。
【0018】
第2の電力供給設備5は、供給電力が第2の確率分布として表される電力供給設備である。第2の電力供給設備5は、例えば、第1の電力供給設備3と同様に、太陽光発電設備や風力発電設備である。
【0019】
電力系統制御装置6について、図2を参照して説明する。図2は、第1実施形態の電力系統制御装置6の機能構成を模式的に示すブロック図である。
【0020】
電力系統制御装置6は、コンピュータ装置であり、処理部61、記憶部62、入力部63、表示部64を備える。なお、電力系統制御装置6は、他の装置と通信するための通信インタフェースも備えるが、説明を簡潔にするために、その図示と説明を省略する。
【0021】
処理部61は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、機能構成として、取得部611、計測情報演算部612、相関値算出部613、制御部614、潮流計算部615を備える。
【0022】
取得部611は、例えば、電力系統内に存在する変圧器2や架空線やケーブルなどの電力設備の定格容量やインピーダンスなどの情報を外部装置等から取得する。
【0023】
また、取得部611は、第1の電力供給設備3から時系列の第1の電力供給量データを取得するとともに、第2の電力供給設備5から時系列の第2の電力供給量データを取得し、それらのデータを記憶部62に日時情報付の計測情報として保存する。
【0024】
ここで、図4は、第1実施形態の電力供給設備による発電量の経時的変化の様子を示すグラフである。図4に示すように、第1の電力供給設備3や第2の電力供給設備5による発電量は、経時的に変化する。
【0025】
図2に戻って、計測情報演算部612は、記憶部62に保存された過去の計測情報、および、現在の計測情報を用いて、計測情報(電力供給量。発電量)の平均値や標準偏差などの統計量、および、確率密度関数、累積分布関数等の演算を行う。演算結果は、記憶部62に保存される。また、計測情報演算部612は、計測情報についてのこのような演算を、時間帯別や、平日、休日別で行ってもよい。
【0026】
相関値算出部613は、計測情報演算部612による演算結果等に基づいて、第1の電力供給量データと第2の電力供給量データの相関値を算出する。相関値算出部613は、例えば、ケンドール、またはスピアマンの順位相関係数を用いてこのような相関値を算出することができる。
【0027】
また、相関値算出部613は、例えば、接合分布関数を用いてこのような相関値を算出してもよい。接合分布関数は、複数の確率変数の同時分布とそれぞれの確率変数の累積分布関数の積との関係を表す関数である。接合分布関数を用いることで、確率変数の値の組み合わせに対して相関の強さを表現可能であるため、特に低頻度事象(第1の電力供給設備3と第2の電力供給設備5のそれぞれの供給電力がともに非常に低い事象等)における相関の程度を評価したい本実施形態において適している。
【0028】
また、相関値算出部613は、単純に、第1の電力供給量データと第2の電力供給量データの差を用いて、相関値を算出してもよい。
【0029】
ここで、図5は、第1実施形態の2つの電力供給設備による発電量の相関図である。図5では、例えば、横軸のxは、第1の電力供給設備3による発電量である。また、縦軸のxは、第2の電力供給設備5による発電量である。これらの2つの発電量における相関は、線L1のように直線的な場合もあれば、線L2のように曲線的な場合もある。いずれの場合も、相関値算出部613によって、相関値を算出することができる。相関値は、例えば、-1~1で表される相関係数や、それに準じた指標値である。
【0030】
図2に戻って、制御部614は、相関値算出部613によって算出された相関値が所定の閾値範囲から外れていた場合、第1の電力供給設備3による電力供給量と第1の可変電力源4による充放電量の合計が第1の確率分布の平均に近づくように(図3参照)、第1の可変電力源4に対して充電量と放電量の少なくともいずれかの調節を指示する。つまり、制御部614は、第1の可変電力源4に対してそのような制御指令を送信する。なお、所定の閾値範囲は、事前に設定しおいてもよいし、あるいは、外部装置から設定できるようにしておいてもよい。所定の閾値範囲は、例えば、-0.5~0.5の範囲である。
【0031】
潮流計算部615は、記憶部62に保存されている計測情報等に基づいて、電力系統内の電圧、位相、潮流状態を計算する。計算結果は記憶部62に潮流計算結果として保存される。
【0032】
記憶部62は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、CDドライブ装置などから構成される。記憶部62は、処理部61が動作するためのプログラムや、計測情報や、潮流計算結果等の各情報を保存する。
【0033】
入力部63は、キーボードやマウスなどから構成される。表示部64は、LCD(Liquid Crystal Display)などから構成される。
【0034】
次に、図6を参照して、第1実施形態の電力系統制御装置6による処理について説明する。図6は、第1実施形態の電力系統制御装置6による処理を示すフローチャートである。なお、定期的に、取得部611による第1の電力供給量データと第2の電力供給量データの取得や、計測情報演算部612による演算が行われているものとする。また、この図6の処理も定期的に行われる。
【0035】
まず、ステップS1において、相関値算出部613は、計測情報演算部612による演算結果等に基づいて、第1の電力供給量データと第2の電力供給量データの相関値を算出する。
【0036】
次に、ステップS2において、制御部614は、ステップS1で算出された相関値が所定の閾値範囲から外れているか否かを判定し、Yesの場合はステップS3に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
【0037】
ステップS3において、制御部614は、第1の電力供給設備3による電力供給量と第1の可変電力源4による充放電量の合計が第1の確率分布の平均に近づくように(図3参照)、第1の可変電力源4に対して、充電量と放電量の少なくともいずれかの調節を指示するための制御指令を送信する。
【0038】
このように、第1実施形態の電力系統制御装置6によれば、上述の相関値が所定の閾値範囲から外れていた場合、第1の電力供給設備3による電力供給量と第1の可変電力源4による充放電量の合計が第1の確率分布の平均に近づくように、第1の可変電力源4に対して充電量と放電量の少なくともいずれかの調節を指示する。これにより、供給電力が確率分布として表される複数の電力供給設備の相関が高い場合でも、必要な電力供給設備容量を抑制することができる。
【0039】
つまり、例えば、第1の電力供給設備3と第2の電力供給設備5が太陽光発電設備の場合、日射量が少なくて両者の発電量が確率分布の平均から大きく外れて少ない場合でも、第1の可変電力源4から電力系統に電力を供給することで、電力系統の電力を安定化させることができる。その結果として、必要となる電力設備容量を低減することができ、設備利用率や設備コストの観点で好ましい状態とすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、潮流計算部615は、実データを用いて潮流計算を行うのではなく、電力潮流シミュレーションにおいて所定の電力負荷条件に基づいて電力系統の潮流計算を行う。
【0041】
その際、例えば、さまざまな負荷条件の組み合わせに対して、モンテカルロシミュレーションを行うことによって、電力設備の潮流状態と電力負荷の値を対応づけることができる。そして、そのシミュレーション結果から、複数の電力供給設備のうち、潮流状態に特に影響を与える電力供給設備を絞り込むことができる。つまり、例えば、図6の処理の対象施設として、第1の電力供給設備3と、第1の可変電力源4と、第2の電力供給設備5とを選択することができる。
【0042】
このようにして、第2実施形態の電力系統制御装置6によれば、シミュレーション結果から図6の処理の対象施設を適切に選択できるので、すべての電力供給設備を対象に相関値を算出する必要が無いため、計算に必要となるハードウェア資源の低減や計算時間の短縮化を図ることができる。
【0043】
また、必要なすべての負荷条件に対して潮流計算を実行するには膨大な計算時間が必要となる場合には、特定の負荷条件に対して潮流計算を行い、その他の負荷条件の潮流計算を特定の負荷条件の潮流計算結果の重み付きの値の和として近似計算することもできる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1の可変電力源4は、電力の需要家(デマンドレスポンスに対応可能な需要家)が所持する電気機器である。そして、制御部614は、相関値が所定の閾値範囲から外れていた場合であって、電力系統の電力が通常よりも低下している場合、需要家に対して、第1の可変電力源4の消費電力量の低減を指示する。
【0045】
このように、第3実施形態によれば、第1の可変電力源4を電力の需要家とすることができる。なお、指示をした対象のすべての需要家が消費電力を低減してくれるとは限らないので、この手法は制御したい電力量が小さい場合に特に適している。
【0046】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、第1の電力供給設備3と第2の電力供給設備5は電気自動車の充電ステーションで、第1の可変電力源4は電気自動車である。
【0047】
充電ステーションから電気自動車への充電電力は車両台数や車種や使用目的などにより変動するため、その充電電力量は確率分布として表される。また、電気自動車の充電電力を電力系統に放電し、電力系統の安定化に使用するVehicle to Grid(V2G)を想定した充電ステーションにおいては、電気自動車から電力系統への放電も可能である。
【0048】
このように、第4実施形態によれば、第1の電力供給設備3と第2の電力供給設備5を電気自動車の充電ステーションとし、第1の可変電力源4を電気自動車とすることができる。つまり、電気自動車を、移動可能な充電池と考え、有効活用することができる。
【0049】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。図7は、第5実施形態の電力システムSの概要を模式的に示す全体構成図である。図7では、図1と比べて、第2の電力供給設備5に対応し、充電量と放電量の少なくともいずれかを調節可能な第2の可変電力源7が追加されている点で異なっている。第2の可変電力源7は、第1の可変電力源4と同様の構成である。
【0050】
そして、制御部614は、第1の確率分布の裾の広がり度が、第2の確率分布の裾の広がり度よりも小さいときは、第1の電力供給設備3による電力供給量と第1の可変電力源4による充放電量の合計が第1の確率分布の平均に近づくように、第1の可変電力源4に対して充電量と放電量の少なくともいずれかの調節を指示する。
【0051】
ここで、図8は、第5実施形態の2つの電力供給設備によるそれぞれの発電量の確率分布を示すグラフである。図8のグラフにおいて、縦軸は発生確率、横軸は発電量である。図8において、グラフG1が第1の確率分布である。グラフG2が第2の確率分布である。そして、グラフG1に示す第1の確率分布の裾の広がり度は、グラフG2に示す第2の確率分布の裾の広がり度よりも小さい。なお、図示を簡潔にするためにグラフG1とグラフG2の平均を同じとしているが、これに限定されず、両者の平均が異なっていてもよい。
【0052】
この場合、裾の広がり度が小さいグラフG1に示す第1の確率分布に対応する第1の可変電力源4に対して上述の調節を指示するほうが、第2の可変電力源7に対して上述の調節を指示するよりも有効である。
【0053】
つまり、複数の可変電力源から制御対象の可変電力源を選択する場合に、裾の広がり度が小さい確率分布に対応する電力供給設備から電気的に近接している(電力供給設備に対応している)可変電力源を優先的に制御することが望ましい。ここで、電気的に近接しているとは電力供給設備と可変電力源の間のインピーダンスが小さいことを意味する。裾の広がり度が大きい確率分布に対応する電力供給設備から電気的に近接している(電力供給設備に対応している)可変電力源を制御すると、可変電力源に必要となる電力容量が大きくなってしまうためである。
【0054】
このように、第5実施形態によれば、複数の可変電力源がある場合に、確率分布の裾の広がり度に基づいて制御対象の可変電力源を選択することで、可変電力源に必要となる電力容量を抑制することができる。
【0055】
また、制御対象の可変電力源が複数あることで、上述の低頻度事象が起きた場合でも、電力系統における電力量低下を打ち消すように複数の可変電力源から電力系統に電力を供給でき、より効果的である。
【0056】
本実施形態の電力系統制御装置6で実行されるプログラム(電力系統制御プログラム)は、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0057】
また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、当該プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、当該プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0058】
当該プログラムは、上述した各部611~615を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部611~615が主記憶装置上にロードされ、主記憶装置上に生成される。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0060】
例えば、上述の各実施形態では、説明を簡潔にするために、電力供給設備を2つ(第1の電力供給設備3と第2の電力供給設備5)としたが、これに限定されない。電力供給設備は3つ以上であってもよい。その場合、3つ以上の電力供給設備の相関値を算出してもよいし、任意の組合せの2つの電力供給設備の相関値を算出してもよい。後者の場合、潮流状態への影響の多い2つの電力供給設備の組合せをそれまでの情報から特定しておき、それ以降は、その組合せの2つの電力供給設備についてだけ相関値を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…変電所、2…変圧器、3…第1の電力供給設備、4…第1の可変電力源、5…第2の電力供給設備、6…電力系統制御装置、7…第2の可変電力源、61…処理部、62…記憶部、63…入力部、64…表示部、611…取得部、612…計測情報演算部、613…相関値算出部、614…制御部、615…潮流計算部、PL…電力線、S…電力システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8