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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】束縛機能を有するファブリック
(51)【国際特許分類】
   A44B 18/00 20060101AFI20230207BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20230207BHJP
   D04B 1/04 20060101ALI20230207BHJP
   D04B 21/04 20060101ALI20230207BHJP
   D04B 1/18 20060101ALI20230207BHJP
   D04B 21/18 20060101ALI20230207BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20230207BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20230207BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20230207BHJP
   D04B 21/14 20060101ALI20230207BHJP
   D06C 9/00 20060101ALI20230207BHJP
   D06C 11/00 20060101ALI20230207BHJP
   D03D 27/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A44B18/00
D03D15/56
D04B1/04
D04B21/04
D04B1/18
D04B21/18
D06M17/00 H
D03D11/00 Z
D04B1/00 B
D04B21/14 Z
D06M17/00 M
D06M17/00 B
D06C9/00
D06C11/00 Z
D03D27/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020213450
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2021110081
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】109100003
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】109140226
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593091957
【氏名又は名称】周 朝木
(73)【特許権者】
【識別番号】507267285
【氏名又は名称】鄭 秀英
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】周 朝木
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-023810(JP,A)
【文献】特開2016-223059(JP,A)
【文献】特開平02-182203(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214172(JP,U)
【文献】特開昭61-146838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B13/00-18/00
D03D1/00-27/18
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
D06M17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の熱可塑性繊維を含む糸により形成し、少なくとも1つの表面には複数の熱可塑性糸状羽を有し、前記熱可塑性糸状羽の少なくとも一部分にはビーズ状体及び/または柱状体末端を有している第一束縛糸状羽を形成する束縛機能を有するファブリックであって、
前記第一束縛糸状羽の少なくとも一部分には、不規則な変形体末端を有する第二束縛糸状羽が形成され、前記第二束縛糸状羽は、ランダムかつ無秩序に分布し、全て同じ方向を向いておらず、前記ファブリックの前記少なくとも1つの表面及び複数のファイバーループを水平方向及び垂直方向に束縛する機能を形成していることを特徴とする束縛機能を有するファブリックの製造方法であって、
前記ファブリックの少なくとも1つの前記表面は毛羽立て及び/または刷毛の起毛プロセスを経て、前記熱可塑性糸状羽を形成する工程を含み、
前記ビーズ状体及び/または前記柱状体末端を有する前記第一束縛糸状羽を、前記熱可塑性糸状羽が毛焼きプロセスを経て形成する工程と、
前記不規則な変形体末端を有する前記第二束縛糸状羽は前記第一束縛糸状羽の少なくとも一部分をホットメルトプレスプロセスを経て形成する工程を含む、束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性繊維糸の単繊維の太さは6デニール未満であることを特徴とする請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項3】
前記ファブリックは織物のタフタ、綾織物、及び二層組織から選択され、或いは前記ファブリックはニット生地の単面、両面、及び二層組織から選択されることを特徴とする請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性糸状羽はステープル繊維糸が紡糸プロセスを経て生成される糸状羽であり、且つ毛羽立て及び/または刷毛の起毛プロセスにより、前記熱可塑性糸状羽を生成する工程を含む、請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性糸状羽を、前記ファブリックの少なくとも1つの前記表面に突出する複数のリングの剪毛プロセスにより形成する工程を含む、請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項6】
少なくとも1本の前記熱可塑性繊維糸は、少なくとも経糸方向及び/または緯糸方向に弾性繊維を備えていることにより弾性を有していることを特徴とする請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項7】
前記ファブリックと、対応して接着される前記ファイバーループを有する他のファブリックが背合わせ方式で貼り合わされ、前記貼り合わせた後のファブリックの相異する2つの前記表面には相互束縛機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項8】
前記ファブリックと前記他のファブリックとの間には弾性体が貼り付けるように挟まれ、ファブリックの組み合せを形成していることを特徴とする請求項7に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項9】
前記弾性体は高分子透湿防水フィルム、高分子通気防水フィルム、クロロプレンゴム、または弾性ファブリックから選択されることを特徴とする請求項8に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項10】
前記ファブリックの前記表面には前記不規則な変形体末端である前記第二束縛糸状羽を有し、而前記ファブリックの他の前記表面には前記ファイバーループを有し、前記ファブリックの2つの前記表面は相互束縛機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項11】
少なくとも一部分の前記不規則な変形体は複数の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体をホットメルト接着することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項12】
前記不規則な変形体は粗面を有していることを特徴とする請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【請求項13】
前記不規則な変形体は光沢面を有していることを特徴とする請求項1に記載の束縛機能を有するファブリックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファブリックに関し、更に詳しくは、束縛機能を有するファブリックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の特許文献では、例えば、下記特許文献1(特許文献2に対応)、特許文献3、特許文献4、特許文献5など、「粘着性バックルファブリック」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】台湾特許出願公告第I388291号明細書
【文献】米国特許出願公告第8,551,596号明細書
【文献】台湾特許出願公告第I559862号明細書
【文献】米国特許出願第15/690,799号明細書
【文献】台湾特許出願第106101627号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら前記特許文献に記載される束縛性ファブリックは全て毛焼きプロセスを経て形成するカール状及び/またはビーズ状末端である複数の束縛繊維を有している。これら前記束縛繊維のビーズ状末端の大きさが小さく、各前記ビーズ状末端には光沢面を有するため、対応するように粘着するループファブリックが容易に滑脱してしまい、水平方向の束縛機能しか備えられず、垂直方向の束縛機能を欠いていた。このため、前述のスナップファブリック(Snapping Fabrics)を包帯として使用する場合、特に水を含んだ状態では、前記包帯の末端がすぐに剥離し、前記包帯が緩んでしまうという欠陥があった。
【0005】
また、従来の面ファスナー(Hook & Loop Fastener)は、太いモノフィラメントで構成するフック部材の末端形状が基本的にフック状またはトラス頭状であり、各前記フック部材の前記フック状または前記トラス頭状の外形には全て一致性を有し、且つ規則的及び平均的に分布されている。前記フック部材に採用されるモノフィラメントの太さは全て約300d/f以上であり、ファスナーとしてしか使用できず、直接皮膚に接触する包帯のような完全な製品とすることはできなかった。前記面ファスナーを衣類の粘着用途に使用すると、衣類を容易に破壊してしまい、ひいては皮膚も傷付けることがあり、改善が急がれた。
【0006】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、束縛機能を有するファブリックを提供することにある。換言すれば、前記ファブリックが少なくとも1つの表面が不規則な変形体末端である束縛糸状羽を有し、前記ファブリックがリング組織を含むループファブリックに対して垂直方向の束縛機能を有する。
【0008】
本発明の他の目的は、束縛機能を有するファブリックを提供することにある。すなわち、前記ファブリックの表面及び裏面に不規則な変形体末端である束縛糸状羽及びリング組織をそれぞれ有し、前記ファブリックの表面及び裏面に垂直方向の相互の束縛機能を有する。
【0009】
本発明のさらなる他の目的は、束縛機能を有するファブリックを提供することにある。すなわち、前記ファブリックの表面及び裏面に垂直方向の相互束縛機能を有している。前記ファブリックの束縛繊維の太さは約6d/f以下であり、よって直接自己粘着性の包帯用途とすることができ、皮膚を傷付けない。
【0010】
本発明のさらなる他の目的は、束縛機能を有するファブリックを提供することにある。すなわち、少なくとも一部分の不規則な変形体は複数のビーズ状体及び/または柱状体をホットメルト接着することにより形成している。
【0011】
本発明のさらなる他の目的は、束縛機能を有するファブリックを提供することにある。すなわち、前記ファブリックが少なくとも1つの表面に不規則な変形体末端である束縛糸状羽を有し、前記不規則な変形体末端である束縛糸状羽が本来の束縛繊維の面積を拡大している。これにより、一般的な従来の繊維のリング組織と相互に束縛可能とし、超極細繊維で製造するループファブリックに限定する必要がなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の束縛機能を有するファブリックは、少なくとも1本の熱可塑性繊維を含む糸により形成し、少なくとも1つの表面には複数の熱可塑性糸状羽を有し、これら前記熱可塑性糸状羽の少なくとも一部分にはビーズ状体及び/または柱状体末端の第一束縛糸状羽を有している。これら前記第一束縛糸状羽の少なくとも一部分には不規則な変形体末端を有する第二束縛糸状羽を形成し、前記ファブリックの前記少なくとも1つの表面及び複数のファイバーループを水平方向及び垂直方向に束縛する機能を形成していることを特徴とする。
【0013】
本発明の好適例において、前記ファブリックの少なくとも1つの前記表面が毛羽立て及び/または刷毛の起毛プロセスを経て、これら前記熱可塑性糸状羽を形成している。
【0014】
本発明の好適例において、前記ビーズ状体及び/または前記柱状体末端を有するこれら前記第一束縛糸状羽は、これら前記熱可塑性糸状羽が毛焼きプロセスを経て形成され、前記不規則な変形体末端を有するこれら前記第二束縛糸状羽はこれら前記第一束縛糸状羽の少なくとも一部分がホットメルトプレスプロセスを経て形成されている。
【0015】
本発明の好適例において、前記熱可塑性繊維糸の単繊維の太さは6デニール未満である。
【0016】
本発明の好適例において、前記ファブリックは織物のタフタ、綾織物、及び二層組織から選択し、或いは前記ファブリックはニット生地の単面、両面、及び二層組織から選択している。
【0017】
本発明の好適例において、これら前記熱可塑性糸状羽はステープル繊維糸が紡糸プロセスを経て生成される糸状羽であり、必要であれば、毛羽立て及び/または刷毛の起毛プロセスを経て、より多くのこれら前記熱可塑性糸状羽を生成する。
【0018】
本発明の好適例において、これら前記熱可塑性糸状羽は前記ファブリックの少なくとも1つの前記表面に突出する複数のリングが剪毛プロセスを経て形成されている。
【0019】
本発明の好適例において、少なくとも1本の前記熱可塑性繊維糸は少なくとも経糸方向及び/または緯糸方向に弾性繊維を備えていることにより弾性を有している。
【0020】
本発明の好適例において、前記熱可塑性繊維糸はポリオレフィン、ポリアミド、またはポリエステル材質の長繊維糸或いはステープル繊維糸から選択している。
【0021】
本発明の好適例において、前記ファブリック及び対応して接着すると共にこれら前記ファイバーループを有する他のファブリックは背合わせ方式で貼り合わせ、前記貼り合わせた後のファブリックの相異する2つの前記表面には相互束縛機能を有している。
【0022】
本発明の好適例において、前記ファブリックと前記他のファブリックとの間には弾性体を貼り付けるように挟み、ファブリックの組み合せを形成している。
【0023】
本発明の好適例において、前記ファブリックの前記表面は前記不規則な変形体末端であるこれら前記第二束縛糸状羽を有し、前記ファブリックの他の前記表面にはこれら前記ファイバーループを有し、前記ファブリックの2つの前記表面は相互束縛機能を有している。
【0024】
本発明の好適例において、これら前記ファイバーループはエアーテクスチャードヤーン(ATY)、延伸仮撚加工糸(DTY)、または超極細繊維異熱収縮糸から選択している。
【0025】
本発明の好適例において、前記不規則な変形体は複数の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体をホットメルト接着することにより形成している。
【0026】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図であって、熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽及び第二束縛糸状羽を有する織りタフタファブリックを示す表面である。
図2a図1の熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽、第二束縛糸状羽及びファイバーリンク束縛の拡大概略図である。
図2b図1の熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽、第二束縛糸状羽及びファイバーリンク束縛の拡大概略図である。
図2c図1の熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽、第二束縛糸状羽及びファイバーリンク束縛の拡大概略図である。
図2d図1の熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽、第二束縛糸状羽及びファイバーループ束縛の拡大概略図である。
図3】本発明の第2実施形態による束縛機能を有するファブリックの概略図であって、熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽及び第二束縛糸状羽を有する経編ニットタフタ片面ファブリックの表面である。
図4】本発明の第3実施形態による束縛機能を有するファブリックの概略図であって、熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽及び第二束縛糸状羽を有する丸編みニット片面ループパイルフファブリックの表面である。
図5】本発明の第4実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図であって、織り物の表面は熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽及び第二束縛糸状羽を有し、裏面はファイバーリンクを有する説明図である。
図6】本発明の第5実施形態による束縛機能を有するファブリックの概略図であって、丸編みニット両面ループパイルファブリックの表面は熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽及び第二束縛糸状羽を有し、裏面はファイバーリンクを有する説明図である。
図7】本発明の第6実施形態による束縛機能を有するファブリックの概略図であって、ニット両面ファブリックの表面は熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽及び第二束縛糸状羽を有し、裏面はファイバーリンクを有する説明図である。
図8】本発明の第7実施形態による束縛機能を有するファブリックの概略図であって、ニット立体ファブリックの表面は熱可塑性糸状羽、第一束縛糸状羽及び第二束縛糸状羽を有し、裏面はファイバーリンクを有する説明図である。
図9】本発明の第8実施形態による束縛機能を有するファブリックの概略図であって、束縛機能を有するファブリックとループファブリックに弾性膜を挟持している説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0029】
図1乃至図2dは本発明の第1実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図であって、前記ファブリック1は織物のタフタ組織であり、対向するように設けている正面11及び裏面12を有している。前記ファブリック1は経糸2及び/または緯糸3により形成している。前記経糸2及び前記緯糸3には熱可塑性長繊維糸を採用する場合、起毛プロセスを経て前記ファブリック1の前記正面11に複数の熱可塑性糸状羽5を有する必要がある。
【0030】
前記起毛プロセスは毛羽立て及び/または刷毛から選択し、必要であればさらに剪毛プロセスを経てこれら前記熱可塑性糸状羽5の長さが一致するようにする。次いで、前記熱可塑性長繊維糸はポリエステル、ポリオレフィンまたはポリアミド等の材質の延伸仮撚加工糸(DTY)、或いはエアーテクスチャードヤーン(ATY)等から選択している。ポリエステル、ポリオレフィンまたはポリアミド等の材質を含むリング紡績糸のようなステープル繊維糸から選択してもよく、前記糸のこれら前記熱可塑性糸状羽5の数量に基づいて前記起毛プロセスを行うかどうか決定する。
【0031】
図1を参照すれば、前記裏面12には前記起毛プロセスを未実施であり、よって、前記熱可塑性糸状羽5を有していない。
【0032】
前記ファブリック1は毛焼きプロセスを経て、少なくとも一部分のこれら前記熱可塑性糸状羽5の末端が融解凝集して表面が滑らかなビーズ状体及び/または柱状体511を有する複数の第一束縛糸状羽51を形成している(図2b参照)。その後、ホットメルトプレスプロセスを経て少なくとも一部分のこれら前記第一束縛糸状羽51の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511をさらに加熱融解することで、不規則な変形体521を有する複数の第二束縛糸状羽52を形成している(図2cと図2d参照)。前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511は加熱融解を経ると共に粘結して体積がさらに大きな前記不規則な変形体521を形成している。よって、これら前記第二束縛糸状羽52の前記不規則な変形体521により束縛されるファイバーループを滑脱しにくくし、ループファブリックのこれら前記ファイバーループに対する前記ファブリック1の束縛機能を向上させている。このため、前記ファブリック1が水を含む状態では、これら前記第二束縛糸状羽52はこれら前記第一束縛糸状羽51に比べて水平方向及び垂直方向に好ましい束縛機能を有している。
【0033】
前記束縛機能を有するファブリック1と相互に束縛するループファブリック6(図示省略)とは、前記ループファブリックの少なくとも1つの表面に複数のファイバーループ61を有するものを指し(図2a乃至図2d参照)、前記ファイバーループ61は糸自体から得られ、例えば、表面にすでに密集ファイバーループを有したエアーテクスチャードヤーン(ATY)、繊維がルーズになりカールしている延伸仮撚加工糸(DTY)、または2組の成分のカール弾性糸(例えば、INVISTAが製造するT400繊維)等である。或いは、超極細繊維異熱収縮糸を熱作用により緩めた超極細ファイバーループ、タオル生地の製織方法により前記ファブリックの表面にルーズなリングを形成し、前記ルーズのリング自体をルーズにしているファイバーループ、織物及びニット生地で少ない交織点によりこれら前記ファブリックの表面をルーズにしている浮き糸、前記ルーズな浮き糸自体がルーズさを発生させているファイバーループ、融解紡糸、静電紡糸等の積層して形成されているファイバーループ等も全て前述のループファブリックとすることが可能である。
【0034】
また、弾性糸の弾性収縮によりこれら前記ファイバーループ61の前記ループファブリックの表面密度を高め、これら前記ファイバーループ61をさらにルーズにし、前記ループファブリックの表面から突出する効果を有している。例えば、弾性糸を芯とするカバードヤーン(Covered Yarn)や弾性糸を直接織り込むもの等である。前述のループファブリックのこれら前記ファイバーループ61は従来の技術であるため、詳述はしない。
【0035】
図2a乃至図2dに示されるように、前記熱可塑性糸状羽5、末端に前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511を有する前記第一束縛糸状羽51、及び末端に前記不規則な変形体521を有する前記第二束縛糸状羽52が前記ファイバーループ61にそれぞれ相互に束縛する拡大概略図をそれぞれ図示する。図2aに示されるように、前記熱可塑性糸状羽5は前記毛焼きプロセスを経て、その末端を自然融解させ凝集させて前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511を有する前記第一束縛糸状羽51を形成している(図2b参照)。
【0036】
前記ファブリック1に用いる繊維は一般的な衣服に常用する繊維であり、例えば、単繊維の太さを1d/f乃至10d/fから選択するが、但し6d/f以下が好ましく、そのサイズは従来の面ファスナーのフック部材に採用されている太さ約300d/fのモノフィラメントよりも明らかに小さい。本実施例の前記第一束縛糸状羽51の末端には前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511を有し、これにより前記ファイバーループ61の束縛機能が低下し、特に垂直方向の束縛機能が低下し、いくつかの用途では、例えば、包帯の末端の粘着力が不足して容易に滑脱し、特に水分を含んだ状態では束縛機能を喪失する。
【0037】
その後、前記第一束縛糸状羽51はホットメルトプレスプロセスを経て、前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511がさらに融解して変形し、不規則な変形体521を有する第二束縛糸状羽52を呈している(図2c参照)。前記不規則な変形体521は前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511が熱融解して軟化した状態で周囲の前記ファブリックの組織の織目及びその繊維により圧印されることにより形成され、すなわちランダムな組織の織目及び繊維の交錯分布の立体空間に圧印により形状が異なる前記不規則な変形体521を有する前記第二束縛糸状羽52を形成している。
【0038】
前記ホットメルトプレスプロセスは本来の前記第一束縛糸状羽51の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511の表面積を拡大し、且つその外観及び方向を改変している。換言すれば、大部分の前記第一束縛糸状羽51の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511は本来の前記熱可塑性糸状羽5の方向に沿って形成され、これら前記第二束縛糸状羽52の末端の前記不規則な変形体521が圧扁される以外、前述の組織の織目及び繊維の交錯分布の立体空間が圧搾湾曲され、これら前記第二束縛糸状羽52がランダムに無秩序に分布され、特定の方向効果がなくなっている。よって、束縛が規則性を有するこれら前記ファイバーループ61でも、束縛が無秩序なこれら前記ファイバーループ61でもよい。
【0039】
また、前記不規則な変形体521は前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511が周囲の前記ファブリック1の組織の織目及びその繊維により圧印されることにより形成されている。このため、前記ホットメルトプレスプロセスにおいて、少なくとも一部分の前記不規則な変形体521は複数のビーズ状体及び/または前記柱状体511がホットメルト束縛により形成されている(図2d参照)。次いで、前記不規則な変形体521の体積及び面積を拡大し、より太い繊維を選択して対応して束縛するファイバーループ61とする。
【0040】
前述のホットメルトプレスプロセスは加熱及び接触加圧装置により、少なくとも一部分に前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511を有するこれら前記第一束縛糸状羽51を軟化し、圧縮成形により前記不規則な変形体521を有するこれら前記第二束縛糸状羽52を形成している。前記加熱及び加圧装置は選択熱転写紙印刷機に類似する機構を選択し、前記加熱及び接触加圧装置は加熱ローラー及び圧迫用循環ベルトを有し、前記ファブリック1を前記加熱ローラーと前記圧迫用循環ベルトとの間に供給し、連続的にホットメルトプレスプロセスを実行する。熱転写紙印刷機により前記ホットメルトプレスプロセスを行った後、前記不規則な変形体521が粗面を有している。
【0041】
非連続的ホットメルトプレスプロセスを選択した場合、前述の加熱及び接触加圧装置を加熱板及びパッドに変更し、前記ファブリック1を前記加熱板と前記パッドとの間に配置し、非連続的熱融解を行う。前記ファブリック1と前記加熱板との間に少なくとも1枚の用紙を挟入し、前記ファブリック1が先にファブリックに残留する色素により汚染されるのを回避する。供給する熱転写紙用紙は、適合する熱融解組み合わせ条件に調整し、転写及び融解プロセスを同時に完結し、コストを節約する。
【0042】
前記熱融解組み合わせ条件の範囲は繊維材質、組織、及び加熱及び接触加圧装置の設備の種類に基づいて決定し、選択する温度、圧力、及び時間には特別な制限はなく、前記ファブリックの組織特性を破壊せず、少なくとも一部分が前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511を有するこれら前記第一束縛糸状羽51を圧縮成形することにより前記不規則な変形体521を有するこれら前記第二束縛糸状羽52を形成することを原則としている。例えば、ファブリック1はポリエチレン繊維であり、温度、圧力、時間というホットメルトプレスプロセスの組み合わせ条件は全てポリアミド繊維(Polyamide)よりもはるかに低く、ポリアミド繊維のホットメルトプレスプロセスの組み合わせ条件もポリエステル繊維(Polyester)よりもやや低い。
【0043】
また、前記ファブリック1の厚さも熱融解効果に影響する。熱融解条件は前記ファブリック1の組織に基づいて修正し、例えば、前記第一実施例の織物タフタファブリック1は一般的なタオル生地よりも薄く結実し、よって、前記第一実施例の熱融解の圧力、時間、及び温度は厚いタオル生地未満でよい。前記束縛機能を有するファブリックの熱可塑性繊維材質はポリエチレン(Polyethylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリアミド(Polyamide)、またはポリエステル(Polyester)等の熱可塑性長繊維糸から選択しているが、これらに限られない。
【0044】
周囲の無秩序状態の繊維及び前記ファブリック自体の組織の織目の圧印作用を受け、これら前記第二束縛糸状羽52の前記不規則な変形体521の多くが湾曲圧扁される不規則片状を呈している。前記不規則な変形体521は前記第一束縛糸状羽51の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511に対し、前記不規則な変形体521の表面積が前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511よりも大きく、前記不規則な変形体521の束縛機能が前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511よりも明らかに優れており、特に湿潤状態でも垂直束縛機能が優れる。
【0045】
これら前記第一束縛糸状羽51の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511は主に水平方向に束縛機能を有し、これら前記第二束縛糸状羽52は前記不規則な変形体521を有するため、水平方向の束縛機能を有する以外、垂直方向にフックする束縛機能もさらに有している。
【0046】
また、前記不規則な変形体521の表面積が前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511より大きいため、太い繊維で構成する前記ファイバーループ61を選択し、前記束縛に用いる熱可塑性長繊維糸の繊維の太さは3.125d/fであり、前記ファイバーループ61の繊維はそれより細い繊維を選択可能である以外、同じ程度かそれより太い従来の繊維を選択してもよい。従来の粘着性ファブリックのリング部材の太さは束縛に用いるフック部材よりも必ず小さくし、前記ファイバーループの繊維の太さの選択範囲を拡大する。特に、常用される繊維は製造プロセスが超極細繊維よりも簡単であり、耐用性がさらに高く、環境保護にもさらに適している。例えば、超極細繊維は容易に家庭で洗浄中に分解されて海に流れ込み、最後には我々の食物連鎖に入り込む。
【0047】
なお、前記第一束縛糸状羽51の数量は前記熱可塑性糸状羽5の数量に基づいて決定する。例えば、前記起毛プロセスが厳重になるほど糸状羽が多くなり、前記熱可塑性ステープル繊維糸も起毛プロセスを経て前記熱可塑性糸状羽5の数量が増加する。また、前記第二束縛糸状羽52の数量は前記第一束縛糸状羽51の数量に基づいて決定する。異なる起毛及び毛焼き条件により大きさの異なる前記第一束縛糸状羽51の末端の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511を形成し、大きな前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511は熱融解により比較的大きな前記不規則な変形体521を形成している。よって、起毛プロセス、毛焼きプロセス、及びホットメルトプレスプロセスの条件を調整することによりこれら前記ファイバーループ61に対する前記束縛機能を有するファブリック1の束縛機能に影響を与え、且つ対応して束縛するファイバーループ61の繊維の太さを選択する。これら前記起毛及び毛焼きプロセスは全て従来の技術であるため、その説明を省略する。
【0048】
また、前記経糸2及び/または緯糸3中に弾性繊維を設け、前記弾性繊維は商品名Lycraのポリウレタン弾性糸を芯とするカバードヤーン、或いは前述のT400の2成分の弾性糸から選択し、前記束縛機能を有するファブリック1が経糸方向及び/または緯糸方向に弾性を有し、前記ファブリック1を包帯製品とする際にさらに好ましい緊結機能を有するようにする。
【0049】
これら前記第二束縛糸状羽52の前記不規則な変形体521は水平方向の束縛機能を有する以外、垂直方向にフックする束縛機能をさらに有している。前記垂直方向の束縛機能が強すぎる場合、これら前記第二束縛糸状羽52が脱落することがあり、このため前記ファブリック1の背面に設けている背面接着層により、これら前記第二束縛糸状羽52の脱落を防止している。前記背面接着層を設けることは従来の技術であるため、その説明を省略する。
【0050】
図3は本発明の第2実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図である。本実施例では、前記ファブリック1はシングルジャージー(single jersey)またはトリコット(tricot)等のニット生地であり、正面11及び裏面12を有している。前記ファブリック1はポリエステル、ポリオレフィン、またはポリアミド等の材質を含む熱可塑性長繊維糸により形成し、糸の太さが75d/36f、150d/36f、または150d/48f等の延伸仮撚加工糸であり、或いは弾性繊維を含む。前記ファブリック1は経糸方向及び/または緯糸方向に弾性を有し、前記弾性繊維としてポリウレタン弾性糸を芯とするカバードヤーンから選択し、毛羽立てる際に前記弾性繊維が擦り切れるのを防ぐ。
【0051】
前記ファブリック1は毛羽立て及び/または刷毛の起毛プロセスを経て前記ファブリック1の前記正面11に複数の熱可塑性糸状羽5を有している。次いで、毛焼きプロセスを経て、少なくとも一部分のこれら前記熱可塑性糸状羽5の末端が各々融解凝集してビーズ状体及び/または柱状体511を有する複数の第一束縛糸状羽51を形成している。最後に、ホットメルトプレスプロセスを経て少なくとも一部分の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511が圧印されて不規則な変形体521を有する複数の第二束縛糸状羽52を形成し、前記不規則な変形体521と複数のファイバーループ61との束縛機能を生成している。
【0052】
必要であれば、前記ファブリック1に前述の適合するループファブリックを貼り合わせ、正面及び裏面に相互に束縛する機能を有してもよい。
【0053】
図4は本発明の第3実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図である。本実施例では、前記ファブリック1は丸編み片面ループパイルフニットであり、正面11及び裏面裏面12を有し、前記正面11には複数のループを有している。前記ファブリック1はポリエステル、ポリオレフィン、またはポリアミド材質等を含む熱可塑性長繊維糸で形成し、熱可塑性長繊維糸は75d/36f、150d/36f、または150d/48f等のポリエステルまたはナイロン等の材質の熱可塑性長繊維から選択し、例えば、延伸仮撚加工糸を剪毛プロセスを経て前記ループの上端を除去し、前記ファブリック1の前記正面11が起立する複数の熱可塑性糸状羽5を有するようにする。次いで、毛焼きプロセスを経て少なくとも一部分のこれら前記熱可塑性糸状羽5の末端を融解凝集し、ビーズ状体及び/または柱状体511を有する複数の第一束縛糸状羽51を形成している。最後に、ホットメルトプレスプロセスを経て少なくとも一部分の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511が圧印されることにより不規則な変形体521を有する複数の第二束縛糸状羽52を形成し、前記不規則な変形体521が複数のファイバーループ61との束縛機能を生成している。
【0054】
また、製織密度を改変することでこれら前記熱可塑性糸状羽5の数量を改変し、束縛の粘着力をさらに調整し、異なる各種製品に粘着力を提供する。必要であれば、前記ファブリック1の組織に弾性繊維を設け、前記ファブリック1が弾性及び裏面柔軟性を有するようにし、同時に前記ファブリック1がさらに好ましい密着性を有し、前記密着性により束縛機能をさらに高めている。前記不規則な変形体521が束縛強度を大幅に高めるが、前記束縛強度のために前記第二束縛糸状羽52が前記ファイバーループ61に引っ張られて脱落することがあり、このため、前記単面タオル生地1は背面接着プロセスを増加することにより前記第二束縛糸状羽52に粘着させる。或いは、テリー生地(terry fabric)を選択し、前記ループ糸を地組織糸により被覆し、第二束縛糸状羽52の脱落問題を改善する。
【0055】
図5は本発明の第4実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図である。本実施例では、前記ファブリック1は織り物であり、正面11及び裏面12を有している。本実施例では前記ファブリック1の使用範囲を拡大し、前記正面11及び前記裏面12を接触させた後に相互に束縛する機能を有している。本実施例の経糸2及び緯糸3の少なくとも一部分にはポリアミド或いはポリエステル等の熱可塑性長繊維糸を使用し、例えば、ポリウレタン弾性繊維を被覆することで弾性コアスパン経糸2a及び弾性コアスパン緯糸3aを形成し、前記ファブリック1が経糸方向及び緯糸方向に共に弾性を有する。
【0056】
本実施例の前記経糸2及び前記緯糸3は求められる弾性強度に基づいて、全て弾性コアスパン経糸2a及び弾性コアスパン緯糸3aを採用してもよく、或いは部分的に弾性コアスパン経糸2a及び弾性コアスパン緯糸3aを採用してもよい。前記弾性コアスパン経糸2a及び前記弾性コアスパン緯糸3aは引っ張られた状態で製織し、生機を製織機から下した後、前記弾性コアスパン経糸2a及び前記弾性コアスパン緯糸3aは染色仕上げ前の事前定型プロセスにより、まず前記弾性コアスパン経糸2a及び前記弾性コアスパン緯糸3aの製織過程で発生する残存応力を解放し、前記弾性コアスパン経糸2a及び前記弾性コアスパン緯糸3aの弾性を回復し、十分収縮する前記ファブリック1を再度引っ張って定型し、需要を満たす長さ及び幅を取得する。前記ファブリック1が経糸方向及び/または緯糸方向に弾性を有し、細長い形状に裁断した際に縦方向に変形するエッジカール問題を克服し、前記ファブリック1を包帯等に用いるための最適な材料とする。
【0057】
本実施例では、前記ファブリック1の前記正面11は経糸面であり、前記裏面12は緯糸面であり、前記ファブリック1は基本的に前記弾性コアスパン経糸2a及び前記弾性コアスパン緯糸3aで製織することで形成し、前記ファブリック1は経糸方向及び緯糸方向に共に弾性を有している。前記正面11は毛羽立て及び/または刷毛の起毛プロセスを経て、前記ファブリック1の前記正面11に複数の熱可塑性糸状羽5を有している。次いで、毛焼きプロセスを経て、少なくとも一部分のこれら前記熱可塑性糸状羽5の末端が融解凝集してビーズ状体及び/または柱状体511を有する複数の第一束縛糸状羽51を形成している。最後に、ホットメルトプレスプロセスを経て少なくとも一部分の表面の滑らかなビーズ状体及び/または柱状体511が圧印されることで不規則な変形体521を有する複数の第二束縛糸状羽52を形成している。
【0058】
前記緯糸面は前記弾性コアスパン緯糸3aを有する以外、複数のふわふわしたファイバーループ61をさらに有する緯糸3bを有し、これら前記ふわふわしたファイバーループ61の前記緯糸3bはポリエステル、ポリアミド等のエアーテクスチャードヤーン、2成分のカール弾性糸、または延伸仮撚加工糸等の常用の繊維から選択している。超極細繊維は、例えば、単繊維が0.25Dより小さい超極細繊維では耐熱程度が常用の繊維に及ばないため、常用の繊維を使用することで熱融解時に溶融してフェルト状となることを回避し、これら前記ファイバーループ61のふわふわ感が失われないようにする。
【0059】
前記緯糸3bのふわふわ感により、前記裏面12の前記弾性コアスパン緯糸3aが基本的にこれら前記ふわふわしたファイバーループ61の前記緯糸3bにより被覆または遮蔽されている。その機能は、前記弾性コアスパン緯糸3aが弾性収縮した後にこれら前記緯糸3bのこれら前記ファイバーループ61のふわふわ感を増加し、これら前記第一束縛糸状羽51の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511とこれら前記第二束縛糸状羽52の前記不規則な変形体521との束縛機能を向上するものである。これら前記ふわふわしたファイバーループ61の前記緯糸3bは間隔を空けて出現し、例えば、3本の緯糸に1回の割合で出現し、且つ少ない交織点によってこれら前記ふわふわしたファイバーループ61の前記緯糸3bが長いスパンを有し、浮き糸形式で出現している。例えば、5本の経糸を跨いで1つの交織点が出現し、このような緩い交織により、これら前記ふわふわしたファイバーループ61の前記緯糸3bのふわふわ感が向上し、前記正面11及び前記裏面12の相互束縛機能を高めている。
【0060】
これにより、本実施例のファブリック1自体が前記正面及び前記裏面を相互に束縛する機能を有し、これら前記第一束縛糸状羽51が水平方向の束縛機能を提供し、これら前記第二束縛糸状羽52が水平方向及び垂直方向の束縛機能を同時に提供する。よって、前記ファブリック1の厚さを大幅に減らし、従来の感圧接着包帯は湿った状態では粘性が失われるという問題を克服する。
【0061】
また、2種類の糸は前記ファブリック1の正面及び裏面にそれぞれ大方浮き出し、前記ファブリック1は共に正面及び裏面が相互に粘着するファブリックの組織とすることが可能である。例えば、綾織物及びサテン組織も経糸及び緯糸を相異面にそれぞれ浮き出す機能を有し、これは従来の技術であるため詳述はしない。
【0062】
図6は本発明の第5実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図である。本実施例では、前記ファブリック1は両面ループパイル織り、丸編み、或いは経編ニットである。前記ファブリック1は正面11及び裏面12を有し、本実施例は第三実施例のさらなる応用であり、前記正面11及び前記裏面12が接触した後に相互に束縛する機能を有している。前記ファブリック1の両面には共に複数のループを有し、ポリエステル、ポリオレフィン、またはポリアミド材質等の熱可塑性長繊維糸を含み、前記熱可塑性長繊維糸は75d/36f、150d/36f、または150d/48f等のポリエステル、或いはポリアミド等の材質の熱可塑性長繊維から選択し、例えば、延伸仮撚加工糸、熱塑性長繊維エアーテクスチャードヤーン等である。
【0063】
製作時には、前記ファブリック1の前記正面11は延伸仮撚加工糸とし、剪毛プロセスにより前記ループの上端を除去し、前記ファブリック1の前記正面11に起立する複数の熱可塑性糸状羽5を有している。次いで、毛焼きプロセスを経て、少なくとも一部分のこれら前記熱可塑性糸状羽5の末端を融解凝集してビーズ状体及び/または柱状体511を有する複数の第一束縛糸状羽51を形成している。最後に、ホットメルトプレスプロセスを経て少なくとも一部分の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511が圧印されることで不規則な変形体521を有する複数の第二束縛糸状羽52を形成し、前記不規則な変形体521と複数のファイバーループ61との束縛機能を形成している。
【0064】
本実施例では、前記ファブリック1の前記裏面12のループはエアーテクスチャードヤーンから選択しても、延伸仮撚加工糸から選択してもよい。また、前記ファブリック1の地組織糸に弾性繊維を添加することで、前記弾性繊維の反発により前記エアーテクスチャードヤーンをさらにふわふわにし、前記ファブリック1の前記裏面12に形成するこれら前記ファイバーループ61の被覆面積を増加させ、前記正面11及び前記裏面12の相互の束縛機能をさらに高めている。
【0065】
上述したように、前記第二束縛糸状羽52の前記不規則な変形体521は前記熱可塑性糸状羽5より大きい表面積を有している。よって、前記正面11に用いている繊維に近似する太さの繊維を前記ファイバーループ61として選択し、例えば、50d/144f、75d/36f、150d/36f、または150d/48f等を選択する。
【0066】
図7は本発明の第6実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図である。本実施例では、前記ファブリック1は製織される両面組織ファブリックであり、例えば、PK鳥の目ピケニット生地(Bird-eye pique fabric)である。前記PK鳥の目ピケニット生地は熱可塑性糸状羽5を発生させるための糸及びファイバーループ61として用いる糸が正面11及び裏面12にそれぞれ大方浮き出している。前記ファブリック1の前記正面11はポリエステル、ポリオレフィン、またはポリアミド材質等の熱可塑性長繊維糸を含み、前記熱可塑性長繊維糸は前述の実施例に示されるような延伸仮撚加工糸等から選択し、前記ファブリック1は起毛プロセスを経て、前記ファブリック1の前記正面11に複数の熱可塑性糸状羽5を形成している。次いで、毛焼きプロセスを経て、少なくとも一部分のこれら前記熱可塑性糸状羽5の末端を融解凝集することでビーズ状体及び/または柱状体511を有する複数の第一束縛糸状羽51を形成している。最後に、ホットメルトプレスプロセスを経て少なくとも一部分の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511が圧印されて不規則な変形体521を有する複数の第二束縛糸状羽52を形成し、前記不規則な変形体521と複数のファイバーループ61との束縛機能を形成している。
【0067】
前記ファブリック1の前記裏面12は弾性繊維を含むエアーテクスチャードヤーンまたは80d/156fのような異熱収縮糸で形成している複数のファイバーループ61であるが、これらに限られない。前述の実施例に示されるように、前記弾性繊維が製織時に引っ張られる張力及び染色仕上げ後に前記張力が消除した後の収縮により、これら前記ファイバーループ61をさらに緩めてふわふわにし、本実施例のファブリック1が正面及び裏面に相互束縛機能を有している。
【0068】
図8は本発明の第7実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図である。本実施例では、前記ファブリック1は製織される立体両面ファブリック(spacer)であり、2種類の糸が前記ファブリック1の正面11及び裏面12にそれぞれ浮き出し、これにより前記ファブリック1が前記正面11と前記裏面12との間に連結しているリンク糸8を有している。前記正面11に浮き出した糸は150d/48f、150d/36f等のポリエステル、またはポリアミド等の材質の熱可塑性長繊維糸から選択し、例えば、延伸仮撚加工糸である。前記熱可塑性長繊維糸には適切な比率の弾性繊維を設け、弾性を有するようにしている。
【0069】
前述の実施例に示されるように、前記ファブリック1は起毛プロセスを経て、前記ファブリック1の前記正面11に複数の熱可塑性糸状羽5を形成している。次いで、毛焼きプロセスを経て、少なくとも一部分のこれら前記熱可塑性糸状羽5の末端を融解凝集することでビーズ状体及び/または柱状体511を有する複数の第一束縛糸状羽51を形成している。最後に、ホットメルトプレスプロセスを経て少なくとも一部分の前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511が圧印されることで不規則な変形体521を有する複数の第二束縛糸状羽52を形成している。
【0070】
前記裏面12は複数のファイバーループ61を有し、これら前記ファイバーループ61に用いている糸はポリエステル、またはポリアミド材質、弾性繊維を含むエアーテクスチャードヤーン、または延伸仮撚加工糸等から選択するが、これらに限られない。前述の実施例に示されるように、前記裏面12のこれら前記ファイバーループ61はエアーテクスチャードヤーンで構成し、例えば、弾性繊維を被覆するエアーテクスチャードヤーンを使用し、且つ前記弾性繊維が製織時に引っ張られる張力及び染色仕上げ後に前記張力が消除した後の収縮により、前記エアーテクスチャードヤーンの表面のファイバーループをさらに緩めてふわふわにし、密集したこれら前記ファイバーループ61をルーズにしている。前記ファブリック1の前記正面11及び前記裏面12には相互束縛機能を有し、且つ従来の感圧接着包帯が湿った状態では粘性を失うという問題を克服している。
【0071】
また、本実施例では、前記立体両面ファブリック1の前記リンク糸8と前記正面11及び前記裏面12との交織点が多くなるほど、前記ファブリック1の裁断辺繊維の散乱問題が軽減する。前記リンク糸8として太いモノフィラメントを選択し、前記立体両面ファブリック1の厚さ方向の支持力を増強するか、或いは一般的な熱可塑性長繊維糸を選択して前記立体両面ファブリックの厚さを減らすか、もしくは弾性繊維を使用して前記立体両面ファブリック1の経糸方向及び緯糸方向に弾性を有してもよい。
【0072】
また、前記両面立体ファブリック1ははさみ等のツールを使用して直接裁断可能であり、超音波カッターやレーザーカッター等の溶断方式を使用する必要がない。また、裁断辺が柔軟になり、溶断による太くて硬い焼結粒が発生せず、使用者が必要な長さ及び形状に裁断しやすくし、経糸方向及び緯糸方向に弾性を有し、前記製品を使用する利便性を大幅に向上している。また、細長い形状に裁断すると縦方向に変形してしまうというエッジカール問題を克服し、包帯の利便性を高め、包帯の最適な材料とする。
【0073】
図9は本発明の第7実施形態による束縛機能を有するファブリックの断面図である。本実施例では、前記ファブリック1及びループファブリック6を供給過剰(overfeed)の条件で弾性体9を挟んで貼り付け、前記弾性体9として高分子透湿防水フィルム、高分子通気防水フィルム、Neoprene(クロロプレンゴム)、または弾性ファブリック等から選択し、ファブリックの組み合せ10を形成している。前記ファブリックの組み合せを包帯とする場合、前記包帯の弾性が増加し、従来の編まれたループファブリックの縦方向に生じるエッジカール問題を克服し、静脈瘤を包帯で巻く等の包帯を圧迫するように巻く必要がある場合に使用可能にする。
【0074】
また、前述の実施例所で選択する前記熱可塑性長繊維糸及び前記熱可塑性ステープル繊維糸の繊維中には複数の中空チャンバー及び/または表面の複数の微小孔を有し、これにより表面積を拡大し、前記ファブリック1に吸湿速乾機能を備えさせている。また、前記ファブリックはさらに衛生加工を経るか、銀めっき、亜鉛めっき、或いはグラフェンめっきが施された繊維と交織することにより、前記ファブリック1が抗菌機能を有している。また、前記熱可塑性長繊維糸は、例えば、銀めっき繊維、銅繊維のような金属繊維、或いはグラフェンを含む繊維と併合し、帯電防止及び導電機能を有している。
【0075】
前記加熱及び加圧装置は前述の熱転写紙印刷機を選択する以外、熱カレンダーや熱ラミネーター等の類似する機構を選択してもよい。前記加熱及び接触加圧装置は少なくとも1つの加熱圧着ローラーセットを有し、前記ファブリック1を前記加熱圧着ローラーセットに供給して連続的ホットメルトプレスプロセスを実行し、少なくとも一部分に前記ビーズ状体及び/または前記柱状体511を有するこれら前記第一束縛糸状羽51を軟化させている。これら前記圧着ローラーセットが金属またはシリコンゴム等の表面を有するため、これら前記第二束縛糸状羽52が各々圧縮されて粗面または光沢面を有する不規則な変形体521を形成している。
【0076】
このように、本発明によれば、次のような効果がある。
(1)前記ファブリックのこれら前記第二束縛糸状羽の末端には前記不規則な変形体を各々有し、前記不規則な変形体は水平方向の束縛機能を有するのみならず、垂直方向の束縛機能も有している。前記ファブリックを包帯とする場合、前記包帯の末端が堅固に粘着して緩まなくなる。
(2)前記ファブリックのこれら前記第二束縛糸状羽の末端には前記不規則な変形体を各々有し、湿った環境でも束縛機能を有している。
(3)前記ファブリックの組成繊維は一般的な衣類のファブリックと違いはなく、よって、生地となる以外に、水平方向及び垂直方向の束縛機能も有している。よって、前記ファブリックの柔軟性により、衣料、包帯、おむつ、またはバックルとして直接使用可能である。
(4)前記ファブリックは正面及び裏面に相互束縛機能を有するように製織するため、布地のように製織可能であり、形状も随意で印刷、染色、及び裁断可能である。また、全面的な束縛機能を有している。おむつ及び包帯とする場合、随意粘着させて使用可能であり、用途が無限に広がり、粘着物品のブレークスルーを引き起こす。
【0077】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
1 ファブリック
1a 正面
1b 裏面
2 経糸
2a 弾性コアスパン経糸
3 緯糸
3a 弾性コアスパン緯糸
3b 緯糸
5 熱可塑性糸状羽
51 第一束縛糸状羽
511 ビーズ状体及び/または柱状体
52 第二束縛糸状羽
521 不規則な変形体
6 ループファブリック
61 ファイバーループ
8 リンク糸
9 弾性体
10 ファブリックの組み合せ
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9