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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20230207BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20230207BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20230207BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/12 Z
H01L21/56 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020501184
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018068604
(87)【国際公開番号】W WO2019011890
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】17181052.6
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トリューセル,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン,ダビド
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-129797(JP,A)
【文献】特開2009-044152(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174158(WO,A1)
【文献】特開2017-028132(JP,A)
【文献】特開平11-340374(JP,A)
【文献】特開2013-225555(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00962974(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/12
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化された上部金属被覆(22)および底部金属被覆(38)が設けられた電気絶縁主層(20)を有する基板(12)を備える、パワー半導体モジュール(10)であって、前記上部金属被覆(22)には、少なくとも1つのパワー半導体装置(24)および少なくとも1つの接触領域(26)が設けられ、前記主層(20)は、その上部金属被覆(22)および前記少なくとも1つのパワー半導体装置(24)とともに成形化合物(30)に埋め込まれ、前記成形化合物(30)は、前記少なくとも1つの接触領域(26)に接触するための少なくとも1つの開口部(32)を備えるようになっており、
前記パワー半導体モジュール(10)は、前記成形化合物(30)上に接続される周囲側壁(16)を有するハウジング(14)を備え、前記周囲側壁(16)の全部が前記主層(20)の上方に位置付けられるようになっている、パワー半導体モジュール(10)。
【請求項2】
前記周囲側壁(16)は、前記成形化合物(30)の上部側に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項3】
前記周囲側壁(16)は、前記成形化合物(30)によって、前記基板(12)から、前記基板(12)と平行な平面に直交する方向に間隔をあけられることを特徴とする、請求項1または2に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項4】
前記基板(12)と平行な平面に投影された場合、前記基板(12)の延在領域は、前記周囲側壁(16)の延在領域と重なることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項5】
前記開口部(32)は電気絶縁体で充填されることを特徴とする、請求項1に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項6】
前記基板(12)を冷却器に固定するための固定リング(28)が前記成形化合物(30)に位置することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項7】
前記ハウジング(14)は、接着によって、またはねじ接続によって前記成形化合物(30)に接続されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項8】
前記ハウジング(14)は、前記成形化合物(30)に当たって封止されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項9】
前記底部金属被覆(38)は、前記成形化合物(30)に部分的に埋め込まれることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項10】
前記成形化合物(30)はエポキシ成形化合物を備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項11】
前記上部金属被覆(22)および前記底部金属被覆(38)の少なくとも一方が、保護コーティングでコーティングされることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項12】
少なくとも1つの端子が、前記上部金属被覆(22)の接触領域(26)に溶接されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項13】
前記成形化合物(30)に加えて、保護コーティングが、前記上部金属被覆の縁の周りに施されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項14】
前記上部金属被覆の縁の周りに施された保護コーティングはポリイミドから形成されることを特徴とする、請求項13に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項15】
パワー半導体モジュール(10)を製造するための方法であって、前記方法は、
構造化された上部金属被覆(22)および底部金属被覆(38)が設けられた電気絶縁主層(20)を有する基板(12)を提供することを備え、前記上部金属被覆(22)には、少なくとも1つのパワー半導体装置(24)および少なくとも1つの接触領域(26)が設けられ、前記方法はさらに、
第1のステップで、前記主層(20)を、その上部金属被覆(22)および前記少なくとも1つのパワー半導体装置(24)とともに成形化合物(30)に埋め込むことを備え、前記成形化合物(30)は、前記少なくとも1つの接触領域(26)に接触するための少なくとも1つの開口部(32)を備えるようになっており、前記方法はさらに、
第2のステップで、周囲側壁(16)を有するハウジング(14)を前記成形化合物(30)上に接続することを備え、前記周囲側壁(16)の全部が前記主層(20)の上方に位置付けられるようになっている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体モジュールに関する。本発明は特に、優れた長寿命信頼性、優れた性能を示し、低コストで生産可能であるパワー半導体モジュールに言及する。
【背景技術】
【0002】
スイッチングパワー半導体装置などのパワー半導体装置を備えるパワー半導体モジュールは、当該技術分野において一般に知られている。モジュールが長時間確実に作動するために、パワー半導体装置を機械的におよび/または環境要因に関して保護することが、特定の用途にとって重要であり得る。
【0003】
US2010/0133684 A1は、金属ベースプレート、高熱伝導性絶縁層、および配線パターンを有する回路基板と、配線パターンに電気的に接続されたパワー半導体素子と、外部端子のために配線パターンに設けられた管状外部端子接続体と、金属ベースプレートの他方側の面に冷却フィンを取付部材で固定して取付けるために使用される金属ベースプレートの貫通孔、金属ベースプレートの他方側の面、および管状外部端子接続体の上部を露出するようにカプセル化されて、貫通孔と連通し貫通孔の直径よりも大きい直径を有する取付部材用の挿入孔を形成し、金属ベースプレ-トおよびパワー半導体素子の一方側および側面を覆うトランスファー成形樹脂体とを含む、パワー半導体モジュールを記載する。
【0004】
JP2011-187819Aは、絶縁基板と、絶縁基板上に配置されたパワー半導体素子と、絶縁基板上に配置された複数の中空筒状ソケットと、複数の凹部が上面に形成され、パワー半導体素子および複数の中空筒状ソケットを覆うように形成された樹脂ケースとを含む、樹脂封止型パワーモジュールを記載する。複数の中空筒状ソケットは、複数の中空筒状ソケットのうちの単一の中空筒状ソケットが複数の凹部のうちの単一の凹部から露出されるように、複数の凹部から露出される。
【0005】
US2008/0203559 A1は、ボルトを使用してヒートシンクに結合されたパワーデバイスパッケージと、それを作製するための半導体パッケージモールドとを記載する。パワーデバイスパッケージは、基板と、基板上に搭載された少なくとも1つのパワーデバイスと、基板およびパワーデバイスを封止するモールド部材と、ヒートシンクをモールド部材に結合するためのボルト部材用の貫通孔を提供するためにモールド部材に固定された少なくとも1つのブッシング部材とを含む。
【0006】
WO2013/121491 A1は、パッケージと、ブロックモジュールと、パワー半導体素子を制御するための制御盤とを含む、半導体装置を記載する。ブロックモジュールは、埋め込まれたパワー半導体素子と、ブロックモジュールから引き出される第2のリードおよび第1のリードとを有する。パッケージは、ブロックモジュールの第1のリードと接触する外部接続端子を有する。第2のリードは制御盤に接続され、一方、第1のリードは外部接続端子に接合される。
【0007】
DE10 2015 112 451 A1は、基板と、基板の上部側に設けられた半導体と、半導体および基板上に形成されたパッケージとを備え、パッケージはその上部側に開口部を有し、開口部を通して、半導体および基板の端子接点が外部に露出され、外部からアクセス可能である、パワー半導体モジュールを記載する。
【0008】
CN101615601 Aは、ベースプレートと、基板上に配置された半導体と、電気接点とを備える、リードフレームを有する垂直上向き接点半導体に関する。接点は、接続面の下方の一方側でベースプレートから突出する接触体として形成され、接点は、半導体の周りの注入された成形材料内に少なくとも部分的に配置される。
【0009】
US2010/0013085 A1は、回路基板の配線パターンに接合されたパワー半導体素子と、筒状外部端子通信部と、たとえばパワー半導体素子と筒状外部端子通信部との間に電気的接続を形成するための配線手段とを含む、パワー半導体装置を開示する。パワー半導体素子と筒状外部端子通信部と配線手段とは、トランスファー成形樹脂で封止される。筒状外部端子通信部は、外部端子が筒状外部端子通信部に挿入可能かつ接続可能であるように、および、筒状外部端子通信部のうちの複数の筒状外部端子通信部が、主回路として機能する配線パターンの各々の上に2次元的に配置されるように、配線パターンに略垂直になるように配線パターン上に配置される。
【0010】
US2004/0089931 A1は、優れた生産性および耐振性を有する、小型、軽量、低コストのパワー半導体装置に関する。成形樹脂ケーシングが、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で作られ、上面と底面とを有する。成形樹脂ケーシングの非周辺部分には、貫通孔が、上面と底面との間を通過するように形成される。電極の第1の端部が、成形樹脂ケーシングの側面から突出する。成形樹脂ケーシングの底面では、ヒートスプレッダの底面が露出される。ヒートスプレッダは、貫通孔の周りに形成された開口部を有する。
【0011】
DE10 2008 023 711 A1は、第1の金属箔と、第1の金属箔の上面上に搭載された絶縁シートと、絶縁シートの上面上に搭載された少なくとも1つの第2の金属箔と、第2の金属箔上に搭載された少なくとも1つの半導体装置と、第1の金属箔、絶縁シート、第2の金属箔、および半導体装置を包囲するための樹脂ケースとを含む、半導体モジュールに関する。樹脂ケースの周壁の底端は、第1の金属箔の底面の上方に位置する。樹脂が樹脂ケースの内部に設けられ、樹脂ケースの内部を充填する。第1の金属箔の底面と樹脂とが平坦な底面を形成するため、平坦な底面は外部搭載部材に接触する。
【0012】
US7,902,653 B2は、第1の金属箔と、第1の金属箔の上面上に搭載された絶縁シートと、絶縁シートの上面上に搭載された少なくとも1つの第2の金属箔と、第2の金属箔上に搭載された少なくとも1つの半導体装置と、第1の金属箔、絶縁シート、第2の金属箔、および半導体装置を包囲するための樹脂ケースとを含む、半導体モジュールに関する。樹脂ケースの周壁の底端は、第1の金属箔の底面の上方に位置する。樹脂が樹脂ケースの内部に設けられ、樹脂ケースの内部を充填する。第1の金属箔の底面と樹脂とが平坦な底面を形成するため、平坦な底面は外部搭載部材に接触する。
【0013】
JP2014-179376 Aは、半導体素子が搭載された回路基板と、回路基板が搭載されたベースプレートと、半導体素子、回路基板、およびベースプレートなどの構成部品をカプセル化し、第1の表面および対向する第2の表面を有する樹脂ハウジングとを備える、半導体装置を記載する。樹脂ハウジングは貫通孔および筒状部材を有し、その内部は、樹脂ハウジングを構成する材料の剛性よりも高い剛性を有する材料から構成される。ベースプレートの裏面が、樹脂ハウジングの第1の表面上に露出される。筒状部材の一端が、樹脂ハウジングの第2の表面上に露出される。
【0014】
ヤスヒロ サカイ他:新しいデュアルHVIGBTモジュールの熱応力の減少によるパワー循環寿命の向上(Power cycling lifetime improvement by reducing the thermal stress of a new dual HVIGBT module)、EPE’16 ECCEヨーロッパ、ISBN:9789075815252、CFP16850-USBはまた、セラミック基板がベースプレートに直接接合され、それにより、基板とベースプレートとの間のはんだ層が排除される、いわゆるMCB(Metal Casting direct Bonding:金属鋳造直接ボンディング)を記載する。加えて、チップと基板との間のはんだは、Sn-Sbはんだによって実現される。
【0015】
US2016/254 255 A1は、樹脂に埋め込まれた回路基板を有するパワー半導体モジュールを示す。回路基板が底部側に接続されたベースプレート上に、フレーム本体が位置付けられる。カバーがフレーム本体および回路基板上に配置され、そのカバーはパイプを有し、パイプは、回路基板上の接点へ端子を導くために使用される。
【0016】
US6 353 258 B1は、半導体チップを担持する基板を有するパワー半導体モジュールに関する。基板は金属プレートに接続され、その上にケースが接続され、それは基板を覆う。ケース内部の体積はシリコーンゲルで充填される。
【0017】
しかしながら、先行技術の解決策は依然として、たとえばパワー半導体装置に作用する悪影響に対する効果的な措置の提供に関し、ひいては長寿命信頼性に関し、改良の余地を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
発明の開示
本発明の目的は、先行技術の少なくとも1つの欠点を克服するパワー半導体モジュールを提供することである。より詳細には、本発明の目的は、高い長寿命信頼性または長期信頼性を示し、優れた性能を示し、および/または、形成コストを削減する、パワー半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的は、独立請求項1に記載のパワー半導体モジュールによって少なくとも部分的に解決される。本発明の有利な実施形態が、従属請求項、さらなる説明、および図面において与えられる。異なる実施形態は、明らかに除外されない限り、単独でまたは任意の組合せで本発明の特徴を提供することができる。
【0020】
本発明は、構造化された上部金属被覆および底部金属被覆が設けられた電気絶縁主層を有する基板を備える、パワー半導体モジュールであって、上部金属被覆には、少なくとも1つのパワー半導体装置および少なくとも1つの接触領域が設けられ、主層は、その上部金属被覆および少なくとも1つのパワー半導体装置とともに成形化合物に埋め込まれ、成形化合物は、少なくとも1つの接触領域に接触するための少なくとも1つの開口部を備えるようになっており、パワー半導体モジュールは、周囲側壁を有するハウジングを備え、側壁は主層の上方に位置付けられるようになっている、パワー半導体モジュールを提供する。
【0021】
そのようなパワー半導体モジュールは、効果的で長期間信頼できる保護を提供する。それにより、それはコストを削減する態様で形成され、また、優れた性能を示し得る。詳細には、特に湿度問題についての信頼性に関する著しい利点が達成され得る。
【0022】
特に、側壁は成形化合物上に接続され、側壁は主層の上方に位置付けられるようになっている。なお、ハウジングは、成形化合物に接続される。ハウジングは、成形化合物に直接接続されてもよく、および/または、基板に必ずしも直接接続されなくてもよい。さらに、側壁は主層の上方に位置付けられており、それは、側壁が、主層を通る平面の上方の空間にのみ存在することを意味し得る。
【0023】
この発明の一実施形態によれば、周囲側壁は、成形化合物の上部側に接続される。成形化合物は、基板および/またはパワー半導体パワーのケーシングとして見られ得る。成形化合物は、略平面の上部側を備え得る。上部側には、少なくとも1つの接触領域への開口部が設けられ得る。周囲側壁は上部側の周囲境界に接続され得る。
【0024】
さらに、成形化合物は、底部金属被覆の底部側と同一平面上にあり得る底部側を含み得る。
【0025】
この発明の一実施形態によれば、周囲側壁は、成形化合物によって、基板から、基板と平行な平面に直交する方向に間隔をあけられる。このため、(上部側および/または底部側に略直交して整列され得る)成形化合物の周辺側が、パワー半導体モジュールの外側を提供し得る。
【0026】
この発明の一実施形態によれば、基板と平行な平面に投影された場合、基板の延在領域は、周囲側壁の延在領域と重なる。たとえば、底部金属被覆は、主層および/または上部金属被覆よりも大きい延在領域を有し得る。周囲側壁の延在領域は、底部金属被覆と重なり得る。なお、周囲側壁の底面は、周囲側壁の延在領域を規定し得る。この底面で、周囲側壁は成形化合物に接続され得る。
【0027】
本発明は、パワー半導体モジュール、またはパワートランジスタモジュールに言及する。パワー半導体モジュールは、構造化された上部金属被覆および底部金属被覆が設けられた電気絶縁主層を有する基板を備える。絶縁という用語はそれにより、モジュールが当該技術分野において知られているように適切に作動することを可能にする電気抵抗特性を非限定的に意味するものとする。非限定的な例として、電気絶縁材料の典型的な抵抗率は、10オームcm以上の範囲にある。そのような構成は当該技術分野において一般に知られており、たとえば、電気絶縁主層としてセラミックス材料を備え得る。
【0028】
特に基板を冷却器に熱的に接続するために、主層にはその下側に底部金属被覆が設けられる。また、上部金属被覆が設けられ、この金属被覆は、たとえば金属被覆によって形成されたそれぞれの導体の提供によって電気回路を形成するために構造化される。したがって、上部金属被覆には少なくとも1つのパワー半導体装置が設けられる。または、言い換えれば、少なくとも1つのパワー半導体装置が上部金属被覆に電気的に接続される。また、少なくとも1つの接触領域が、たとえば、端子パッドなどの1つ以上のそれぞれの端子またはコネクタによって、少なくとも1つのパワー半導体装置または電気回路に外部接触するために設けられる。詳細には、上部金属被覆は1つまたは2つ以上のパワー半導体装置を担時してもよく、また、1つまたは2つ以上の接触領域を含んでいてもよいということが提供され得る。
【0029】
パワー半導体装置に関し、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated-gate bipolar transistor:IGBT)デバイス、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(metal oxide semiconductor field-effect transistor:MosFET)、ダイオードなどのトランジスタまたはスイッチングデバイスが1つまたは複数設けられるということが提供され得る。
【0030】
また、主層は、その上部金属被覆および設けられたパワー半導体装置とともに成形化合物に埋め込まれ、成形化合物は、少なくとも1つの接触領域に接触するための少なくとも1つの開口部を備えるようになっているということが提供される。言い換えれば、成形化合物が設けられ、それは、主層、加えて上部金属被覆および設けられたパワー半導体装置、ならびに好ましくは底部金属被覆の一部を包囲する。基板はこのため、少なくとも1つの接触領域を露出する開口部および底部金属被覆の一部を除き、基本的に全体的に成形化合物に埋め込まれ得る。しかしながら、1つ以上のパワー半導体装置は、それらの電気結線とともに、好ましくは全体的に成形化合物に埋め込まれる。
【0031】
たとえば、設けられたパワー半導体装置はワイヤボンドによって少なくとも部分的に接触されること、すなわち、少なくともいくつかの結線はワイヤボンドによって実現されることが提供され得る。たとえば、ワイヤボンドは、接触領域といった上部金属被覆のさらなる部分へ進み得る。このため、パワー半導体装置は、たとえばそのボンディング位置およびボンディングワイヤとともに、全体的に成形化合物に埋め込まれる。
【0032】
これに従って、機械的影響または湿度といった外部の影響に関する電子回路の保護が、非常に効果的に向上し得る。電子回路をたとえばワイヤボンドとともに基本的に全体的に埋め込むことは、さらなる信頼性を与える。なぜなら、そのようなボンディング位置は状況下で破損または劣化しやすいかもしれないので、これらの位置が成形化合物によって固定されることが提供され得るためである。したがって、機械的影響および/または湿度に関する信頼性が大いに向上する。パワー半導体装置としてIGBTデバイスを備えるようなパワーモジュールでは、特に湿度ストレスが信頼性問題に関するリスクであり得るので、この問題に対抗することは、有利な態様でモジュールを改良し得る。
【0033】
前述の構成はまた、沿面距離を改良し得る。特に、パワー半導体装置が成形化合物に全体的に埋め込まれるという事実により、沿面距離は改良され得る。なぜなら、半導体チップの終端および絶縁基板のセラミックが成形化合物によって覆われるためである。このため、封止材料を用いて行なわれるワイヤボンドおよびはんだ接合部の寿命の増加が実現され得る。
【0034】
また、成形化合物がたとえば端子プレートを受けるために設計され得る少なくとも1つの接触領域に接触するための少なくとも1つの開口部を備えるという事実により、著しい利点が提供され得る。端子プレート、ひいては端子、たとえば銅パワー端子が接触領域上に位置付けられた場合、端子プレートは成形化合物から間隔をあけられ得る。言い換えれば、成形化合物は端子プレートまたは端子と直接接触していないということが提供され得る。これに従って、銅から形成されるような端子から、または端子の一部として見られる銅リードなどのそのリードから、成形化合物へ機械的応力を与えるリスクが回避され得る。したがって、説明されるようなパワー半導体モジュールの長期信頼性がさらに向上し得る。それとは別に、コレクタ、エミッタ、および補助端子などの端子の接続性が著しく向上する。なぜなら、それは、比較的容易に、および成形化合物を空間的に妨害することなく接続され得るためである。
【0035】
それとは別に、成形化合物を施してから端子を接続する場合、後者は、成形化合物に埋め込まれた電気回路または少なくとも部品に悪影響を及ぼす危険を有することなく、それぞれの接触領域上に配置され得る。たとえば、パワーモジュールの構成には、溶接手法に対応する問題がない。端子ボンディング手法からの相互汚染の懸念はそれほど重大ではない。なぜなら、IGBTなどでエミッタをボンディングするようなボンディング手法を実行する前に、敏感な領域の多くはすでに成形化合物によって保護され得るためである。
【0036】
したがって、パワー半導体モジュールの生産がさらに単純化され、長期信頼性はさらに向上する。
【0037】
端子プレートの配置後自由である接触領域は、以下に示されるような追加の電気絶縁材料に埋め込まれ得る。
【0038】
上記とは別に、パワー半導体モジュールは周囲側壁を有するハウジングを備え、側壁は主層の上方に位置付けられるということが提供される。後者は、側壁が主層の上に位置付けられることを意味するものとする。側壁の底面は、主層を有する一平面に位置付けられ、後者の平面は特に、主層の主面に直角に進み得る。
【0039】
この構成は、著しい利点をさらに提供し得る。詳細には、まず、ハウジングは、基板または成形化合物の上に設けられた周辺部に関して、追加の機械的安定性を提供し得る。それとは別に、追加の電気絶縁材料が成形化合物の上に位置付けられるということが提供され得る。これは、湿度に対する耐性を、たとえば以下に詳細に説明されるようにさらに向上させ得る。したがって、長期の耐性、ひいては信頼性がさらに向上し得る。
【0040】
また、側壁が主層の隣りではなく主層の上方に、ひいては主層上に位置付けられるという事実により、優れた性能が達成され得る。これは主として、基板の周りにハウジングを配置するための側方空間を設けることが要求されないという事実に起因し得る。それは、モジュールのアクティブ領域の増加、ひいては性能特性の向上を可能にする。したがって、基板は各方向において、たとえば1方向当たり6mmの範囲でより大きくなり得る。それとは別に、この実施形態は特に機械的に安定した構成を可能にし、そのため、この実施形態は特に高い長期信頼性を可能にし得る。
【0041】
成形化合物に関し、厳しい条件についても、成形化合物を提供するためのトランスファー成形技術または圧縮成形技術は、耐湿性に関して有望な結果を示す。たとえば、エポキシ樹脂などのエポキシ成形化合物(Epoxy-Mold Compound:EMC)を封止材料として使用する場合、良好な結果が達成され得る。したがって、たとえば、トランスファー成形プロセスまたは圧縮成形プロセスが、成形化合物を施すために実現され得る。そのような態様で施される材料は、極めて優れた機械的安定性および電子絶縁特性を提供し得る。基板金属被覆上に成形化合物がない開口部が、出力電気結線または外部コネクタのために、上述のような接触領域に容易に設けられ得る。
【0042】
そのようなパワー半導体モジュールはこのため、今日の標準パワーモジュールで実現可能であり、ひいては、極めて優れた利用可能性を示す。特定の設計の独立性により、パワー半導体モジュールは、低コストを要求することによって非常に高い設計柔軟性を示し、それは利用可能性を強化する。
【0043】
また、沿面距離および絶縁距離は、先行技術の解決策と比べて改良され得る。それは、前述のようなパワー半導体モジュールの利用可能性および電気特性をさらに向上させる。
【0044】
前述のようなパワー半導体モジュールはまた、向上した利用可能性を可能にする。なぜなら、1つの構成または1つの技術が、複数の異なるモジュールに適合し得るためである。この点に関し、成形化合物の、たとえばエポキシ樹脂などのエポキシ成形化合物のCTEが、動作中のモジュールの屈曲を最小限にするように調節され得るということが提供され得る。したがって、そのような異なるパワー半導体モジュールの開発および生産が、特にコストを削減して実現され得る。
【0045】
この点に関し、基板およびその成形化合物は、先行技術の解決策に従った、ベースプレートに固定された基板を備える構成を置き換え得るということに留意されたい。詳細には、基板がはんだ付けされた同等に高価なAlSiCベースプレートが、この発明に従った基板によって交換されてもよく、それは材料コストの削減を可能にし、それにより、少なくとも同等の特性に達する。
【0046】
基板に成形化合物を設けることはまた、ベースプレートにおいて強化セラミックを必要とすることなく、特に高い機械的安定性を実現する。なぜなら、すでに成形化合物により、高い機械的安定性が得られ得るためである。
【0047】
また、そのようなパワー半導体モジュールは特に高い電流定格を提供し得るため、特に高い要求を有する使用についての利用可能性も得られ得る。一例として、先行技術に従った従来の技術での240Aの代わりに、300Aの電流定格を有する6.5kVのモジュールが可能である。
【0048】
上記とは別に、たとえば、はんだがないことまたはより少ないことにより、高い熱パワー循環能力が得られ得る。それは、上述のようなパワーモジュールの長期信頼性をさらに向上させる。後者は、ケースへの熱抵抗接合が、たとえば従来のAlSiCベースのモジュールと比べてより低いという事実により、さらに向上し得る。
【0049】
開口部は、特に端子などがそれぞれの周辺部内に位置付けられた後に、電気絶縁体で充填されるということが提供され得る。開口部の隣りで、ハウジングは前記電気絶縁体で充填され、したがって、成形化合物の上面に絶縁体が設けられるということが有利に提供され得る。絶縁体はたとえば、シリコーンゲル、またはエポキシ樹脂、たとえばエポキシポッティング樹脂から構成または形成され得る。したがって、電気絶縁体は、ハウジングの内部および成形化合物の上部に位置する。この実施形態は、先行技術に対する著しい利点を提供し得る。なぜなら、それは、基板レベルで、およびチップレベルで、電子回路の安全な保護を提供するためである。
【0050】
これは主として、成形化合物を設けることにより、状況下のそれぞれの部品を十分に保護することはできないという事実に起因し得る。なぜなら、それぞれの電子回路の支持体およびパワー半導体装置またはさらなる部品のすべての所望位置が成形化合物によって効果的に覆われることを保証することは難しいかもしれないためである。これはたとえば、パワーモジュールの実際の設計によって生じ得る。なぜなら、これらは単に、ハウジングの完全な充填を保証するための措置を講じる基本的必要性を有することなくハウジングに単に注入され得るシリコーンゲルで充填されることが知られているためである。しかしながら、これらの実際の設計には概して、成形化合物が設けられていない。なぜなら、設計は、絶縁材料を注入し硬化するために最適化されているためである。
【0051】
しかしながら、この実施形態に従ったパワー半導体モジュールは、この欠点を克服する。なぜなら、成形化合物がそれぞれの位置で全体的に設けられなかった場合、それはもはや有害ではないためである。さらなる絶縁材料、すなわちシリコーンゲルまたはエポキシ樹脂が、生じる問題に対処するであろう。ハウジングはシリコーンゲルなどの絶縁材料または電気絶縁体で全体的に充填されるが、これは必須ではなく、特定の用途によれば、ハウジングフレームか開口部のみを電気絶縁体または保護材料で部分的に充填するだけで十分であり得る、ということが提供され得る。
【0052】
また、成形化合物のみを備える解決策は、複雑な構造に適用することが難しい場合が多いため、例示的にシリコーンゲルから形成された絶縁材料と成形化合物との組合せは、この実施形態によれば非常に効果的であり得る。
【0053】
上述に鑑み、本発明は、今日の解決策とはまったく異なる道を行く。今日の用途では、シリコーンゲルを封止材料に完全に置き換えることが主として試みられており、パワーモジュールのパッケージ化は、成形体の高い絶縁特性による、主電位コレクタとエミッタ/ゲートとの間の内部沿面距離を保つための課題である。しかしながら、この実施形態に説明されるようなパワーモジュールによれば、シリコーンゲルは封止材料によって置き換えられず、双方の材料が組合されて使用され、特性の向上を示す。
【0054】
特にこの実施形態は、特に高い性能データを有するパワーモジュールにとって有利であり得ることがさらに見出された。たとえば、3.3kV以上の電圧定格を有するパワーモジュールについては、フレームに充填されたシリコーンゲルのようなさらなる絶縁材料が、異なる電位間の必要な沿面距離を達成するために大いに有利である。
【0055】
また、ヒートシンクなどの冷却器に基板を固定するための固定リングまたは締結リングが成形化合物に位置するということが提供され得る。これは、特に容易で適応可能な製造プロセスを可能にする。なぜなら、固定リングは、所望の必要性に非常に容易に適応し得るためである。たとえば、固定リングは、金属リングとして形成され得る。固定リングまたは締結リングは、それらを通るようにねじを導き、ヒートシンクなどの冷却器にねじがねじ込まれる冷却器へのねじ接続を実現するために使用され得る。信頼できる接続を得るために、機械的固定手段が、たとえば基板の4つの縁で実現され得る。この実施形態はこのため、高い適応性を、コスト削減および長期信頼性とともに可能にし得る。
【0056】
また、基板主層は、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、および窒化シリコン(SiN)からなる群から選択された材料から形成されるということが提供され得る。特に、前述の材料は、コストを削減する生産と組合された、優れた機械的安定性、ひいては長期信頼性を提供し得る。非限定的な例として、主層は以下のように形成され得る。主層は、厚さがたとえば0.3mmであるジルコニア添加酸化アルミニウムから形成されてもよく、それに、厚さが0.6mmなどである、上部金属被覆としての銅金属被覆が設けられてもよい。この例は、特に低いコストを可能にし得る。さらなる例として、主層は、厚さがたとえば0.32mm~1mmである窒化シリコンから形成されてもよく、それに、厚さが1.0mmなどである、上部金属被覆としての銅金属被覆が設けられてもよい。この実施形態は、特に高い電圧を可能にし得る。さらなる例として、主層は、厚さが0.63~1.0mmなどである窒化アルミニウムから形成されてもよく、アルミニウムは両側にアルミニウム金属被覆および追加の厚い銅金属被覆を有する。これは、特に高い電圧、高い熱性能、および高い機械的安定性を提供し得る。したがって、基板の全厚は最大4mmに達し得る。
【0057】
したがって、特定の実施形態から独立して、高性能を示すために、主層は、0.2mm~2.0mmの範囲の厚さを有すること、および/または、金属被覆、特に以下に説明されるような上部金属被覆および/または底部金属被覆は、0.1mm~1.5mm、たとえば、0.5mmを上回り、例示的には1.5mmを下回る範囲といった、≧0.1mmの範囲の厚さを有し得ることが提供され得る。
【0058】
上記とともに、または上記から独立して、金属被覆、特に以下に説明されるような上部金属被覆および/または底部金属被覆は、銅、アルミニウムから、および/または、たとえば1層としての銅とさらに別の層としてのアルミニウムとから形成された多層構成から構成または形成され得る。使用される銅またはアルミニウムに関し、非限定的な例として、後者の金属には保護コーティングが設けられるということが提供され得る。好ましくは、上部金属被覆および底部金属被覆の少なくとも一方は、ニッケルでめっきされ得る。そのような保護コーティングは、酸化に対する保護を与えることができ、また、はんだ付けステップにおける改良を可能にし得る。
【0059】
また、少なくとも1つの端子が、上部金属被覆の少なくとも1つの接触部分に溶接されるということが提供され得る。この実施形態は信頼できる接続方法を保証することができ、上述のようなモジュールを提供することで、生じ得る欠点が克服される。詳細には、溶接ステップの前に成形化合物が提供され得るという事実により、溶接はねまたは粒子形成といった、溶接ステップに起因する有害作用が回避され得る。たとえば、超音波溶接が使用され得る。
【0060】
また、ハウジングは、接着によって、またはねじ接続によって成形化合物に接続されるということが提供され得る。特に、前述の手法は、パワーモジュールの性能に悪影響を及ぼすことなく、長期信頼性を確実にし得る。この点に関し、たとえば雌ねじを有する機械的固定手段が、それぞれのねじ接続を実現するために成形化合物に位置付けられるということが提供され得る。これに代えて、ねじが成形化合物を通って導かれ、ハウジングまたはその側壁に固定され得るように、ハウジングの側壁に雌ねじが設けられ、成形化合物はそれぞれの貫通孔を有し得る。
【0061】
また、ハウジングは、たとえばゴム製バスケットなどのゴムによって、成形化合物に当たって封止されるということが提供され得る。言い換えれば、ハウジングと成形化合物との間に封止材料が設けられる。これは長期信頼性をさらに向上させ得る。なぜなら、成形化合物とハウジングフレーム、特にその側壁との直接接触が防止されるためである。詳細には、この実施形態によれば、成形化合物およびハウジングの熱膨張(CTE)の値がしばしば異なるため、熱循環特性が向上し得る。
【0062】
また、成形化合物に加えて、保護コーティングが、上部金属被覆の縁の周りに、ひいては金属被覆の縁と成形化合物との間に施されるということが提供され得る。この実施形態によれば、成形化合物はこのため、上部金属被覆の少なくとも一部と、さらには保護コーティングとの双方を埋め込み得る。たとえば、保護コーティングはポリイミドから構成され、またはポリイミドからなり得る。この実施形態は、沿面距離がさらに改良され得るという事実により、特に高い性能データを可能にし得る。
【0063】
また、底部金属被覆は少なくとも部分的に成形化合物に埋め込まれるということが提供され得る。言い換えれば、成形化合物は底部金属被覆を部分的に埋め込み得るものの、ヒートシンクなどの冷却器との底部金属被覆の直接接触を実現するために1つ以上の開口部を残す。この実施形態によれば、特に効果的な温度管理が実現可能であり、それはさらに、長期信頼性および予想される性能データに良い影響を与える。
【0064】
この発明のさらに別の局面は、上述のような、および以下に説明されるようなパワー半導体モジュールといった、パワー半導体モジュールを製造するための方法に関する。
【0065】
この発明の一実施形態によれば、方法は、構造化された上部金属被覆および底部金属被覆が設けられた電気絶縁主層を有する基板を提供することを備え、上部金属被覆には、少なくとも1つのパワー半導体装置および少なくとも1つの接触領域が設けられ、方法はさらに、第1のステップで、主層を、その上部金属被覆および少なくとも1つのパワー半導体装置とともに成形化合物に埋め込むことを備え、成形化合物は、少なくとも1つの接触領域に接触するための少なくとも1つの開口部を備えるようになっており、方法はさらに、第2のステップで、周囲側壁を有するハウジングを成形化合物上に接続することを備え、側壁は主層の上方に位置付けられるようになっている。
【0066】
言い換えれば、まず、基板が成形化合物に埋め込まれ、第2のステップで、ハウジングが成形化合物に取り付けられ得る。なお、基板とハウジングとの間の直接接触はないかもしれない。
【0067】
要約すると、先行技術における代替的なパッケージ化技術について述べられた欠点を克服するために、パワー半導体モジュールの構成が説明される。成形化合物が設けられたベースプレートが提供され、それは、機械的に安定した構成、電気絶縁、および防湿を同時に実現する。安定性をさらに向上させるために、または追加の絶縁材料を受けるために、ハウジングが成形体の上に搭載される。したがって、パワーモジュールは、高い電流定格などの高い性能データおよび低コストと組合された、高いパワー循環信頼性、高い機械的安定性、および高い耐湿性による高い長期信頼性を可能にする。
【0068】
パワー半導体モジュールのさらなる利点または特徴に関し、図面および図面の説明が参照される。
【0069】
図面の簡単な説明
この発明のこれらのおよび他の局面は、以下に説明される実施形態から明らかになり、実施形態を参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】パワー半導体モジュールの一実施形態の概略図である。
図2図1に従ったパワー半導体モジュールの概略分解図である。
図3】成形化合物がない、図3に従った基板の概略図である。
図4】先行技術のモジュールと比較した、図1に従ったハウジングの概略的な側壁および基板の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
発明の詳細な説明
図面に示された例示的な一実施形態を、以下に詳細に参照する。この例は説明のために提供されており、限定として意図されてはいない。本開示はさらなる変更および変形を含むことが意図される。
【0072】
図面の以下の説明では、同じ参考番号は同じ構成要素を指す。一般に、個々の実施形態に関する違いのみが説明される。いくつかの同一のアイテムまたは部品が図面に見える場合、見た目を簡略化するために、部品のすべてが参照番号を有するとは限らない。
【0073】
図1は、パワー半導体モジュール10を示す。パワー半導体モジュール10は、基板12とハウジング14とを備える。基板12は、図2および図3により詳細に示される。ハウジング14は、以下により詳細に説明されるような周囲側壁16を備える。また、ハウジングは、たとえば主端子および補助端子などのそれぞれの端子を備える、そのアクティブな周辺部18を備える。それは当該技術分野において一般に知られており、ここでは詳細には説明されない。
【0074】
ここで図2および図3を参照すると、基板12が電気絶縁主層20を備えることが示される。電気絶縁主層20はたとえば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および窒化シリコンからなる群から選択された材料から形成され、電気絶縁主層20には、構造化された上部金属被覆22が設けられる。上部金属被覆22には、少なくとも1つのパワー半導体装置24および少なくとも1つの接触領域26が設けられる。また、固定リング28または締結リングが設けられ、それらは、たとえば冷却器に基板12をねじ固定するためのたとえばねじを受けるために使用され得る。
【0075】
その主層20とその上に設けられた上部金属被覆22とを有する基板12は、固定リング28とともに成形化合物30に埋め込まれ、成形化合物30は、接触領域26に接触するための開口部32を備えるようになっていることがさらに示される。成形化合物30は、たとえばエポキシ樹脂などのエポキシ成形化合物から形成され得る。主層20上に形成され、そのため基板12の一部である電気回路に外部接触するための端子が、開口部32に設けられ、接触領域26に固定されることが明らかである。また、ハウジング14を基板12または成形化合物30にねじ留めするために、ねじを受けるための貫通孔34が、成形化合物30に設けられ得る。しかしながら、ハウジング14を基板12または成形化合物30に接着することも可能である。
【0076】
ハウジング14によって包囲される体積のすべてまたは一部、もしくは、開口部32のみが、シリコーンゲルなどの追加の絶縁体で充填され得る。
【0077】
図4は、本発明のプラスの局面を示す。詳細には、図1に従ったパワー半導体モジュール10の一部の断面図が示される。まず、ヒートシンクなどの冷却器に接触するために、底部金属被覆38が主層20の底部側に設けられることが示される。底部金属被覆38は、成形化合物30の底部側と同一平面上にあってもよい。
【0078】
図4b)は、周囲側壁16が成形化合物30の上部側に接続されることを示す。周囲側壁16は、成形化合物30によって、基板12から、基板12と平行な平面に直交する方向に間隔をあけられる。さらに、基板12と平行な平面に投影された場合、基板12の延在領域は、側壁16の延在領域と重なる。
【0079】
また、この発明に従った基板12を備えるモジュール10を計算することにより、パワーモジュール10の輪郭から基板12までの必要な図示された距離は約2mmであるということが図4bから分かる。一方、先行技術に従った、金属被覆116とパワー半導体装置118とを有する基板112を有する同等のパワー半導体モジュール110が、図4aに従って計算される場合、距離は約5mmである。したがって、両側での距離を考慮すると、総基板領域は、両方向で6mm大きくなり得る。言い換えれば、この発明によれば、ハウジング14またはその側壁16は、先行技術から公知であるような基板12の隣りではなく、主層20の真上に配置され得るということが提供される。これはモジュールのアクティブ領域が拡大され得ることを可能にし、それは次に、パワー半導体モジュール10の性能を向上させる。
【0080】
この発明を図面および前述の説明において詳細に例示し、説明してきたが、そのような例示および説明は、限定的ではなく例示的であると考えられるべきであり、この発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形は、請求される発明を実践する当業者によって、図面、開示、および添付された請求項の研究から理解され、実施され得る。請求項において、「備える」という単語は他の要素またはステップを除外せず、単数は複数を除外しない。ある措置が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの措置の組合せを有利に使用することができないということを示さない。請求項におけるどの参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0081】
参照符号リスト
10:パワー半導体モジュール、12:基板、14:ハウジング、16:側壁、18:周辺部、20:主層、22:上部金属被覆、24:パワー半導体装置、26:接触領域、28:固定リング、30:成形化合物、32:開口部、34:貫通孔、36:ねじ、38:底部金属被覆、110:パワー半導体モジュール、112:基板、116:金属被覆、118:パワー半導体装置。
図1
図2
図3
図4a)】
図4b)】