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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】臭い成分不活性化用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/66 20060101AFI20230207BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20230207BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 38/44 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A61K8/66
A61K8/60
A61K8/46
A61Q15/00
A61Q11/00
A61K38/44
A61K31/7004
A61P1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020507751
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010820
(87)【国際公開番号】W WO2019181783
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018056397
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】中野 学
(72)【発明者】
【氏名】若林 裕之
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/105113(WO,A1)
【文献】特開2015-149904(JP,A)
【文献】特表2009-511078(JP,A)
【文献】特表2012-515541(JP,A)
【文献】特開2012-213357(JP,A)
【文献】特表2007-507488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 38/44
A61K 31/7004
A61P 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS/CABA/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む、チオシアン酸又はその塩の存在下で用いられる臭い成分不活性化用組成物であって、
前記臭い成分は、アリルメルカプタン、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、及びトリメチルアミンからなる群より選ばれるいずれか1種以上であり、
前記組成物を水溶媒に溶解させたときのpHは、6.0~8.0である、臭い成分不活性化用組成物。
【請求項2】
前記臭い成分が、食品由来及び/又は喫煙由来のものである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記食品由来の臭い成分が、ネギ属(Allium)植物を含む食品由来の臭い成分である、請求項記載の組成物。
【請求項4】
ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物を備え、チオシアン酸又はその塩の存在下で用いる臭い成分不活性化用組成物キットであって、
前記臭い成分は、アリルメルカプタン、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、及びトリメチルアミンからなる群より選ばれるいずれか1種以上であり、
前記組成物を水溶媒に溶解させたときのpHは、6.0~8.0である、臭い成分不活性化用組成物キット。
【請求項5】
前記組成物キットが、以下の(a)、(b)、(c)又は(d)を少なくとも有する、請求項記載の臭い成分不活性化用組成物キット。
(a)ラクトパーオキシダーゼを含む組成物、グルコースオキシダーゼを含む組成物、及びグルコースを含む組成物;
(b)ラクトパーオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼを含む組成物、並びに、グルコースを含む組成物;
(c)ラクトパーオキシダーゼを含む組成物、並びに、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物;
(d)ラクトパーオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物、並びに、グルコースオキシダーゼを含む組成物。
【請求項6】
ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物を使用して、チオシアン酸又はその塩の存在下で臭い成分を不活性化する方法であって、
前記臭い成分は、アリルメルカプタン、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、及びトリメチルアミンからなる群より選ばれるいずれか1種以上であり、
前記組成物を水溶媒に溶解させたときのpHは、6.0~8.0である、臭い成分を不活性化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭い成分不活性化用組成物及び臭い成分を不活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニク、ネギ、ニラ、タマネギ等のネギ属(Allium)植物は、特有の香りや味が食欲を惹起するために食品によく利用され、体にも良いと云われている。また、魚類も、健康維持や健康増進を目的として積極的に摂取されることが推奨されている。一方で、タバコは嗜好品として喫煙されている。
【0003】
しかし、ネギ属植物や魚等又はタバコに含まれる硫黄成分や窒素成分(例えば、アリシン、コリン等)等の成分が、臭い成分に変化する原因物質(起点物質、中間物質等)になっていることが多い。この原因物質が微生物や熱等によって体内で不快な臭い成分に変化する。そして、この不快な臭い成分が体外に放出される。
この不快な臭い成分として、硫化水素;メチルメルカプタンやアリルメルカプタン等のメルカプタン類の揮発性硫黄化合物;アンモニア;トリメチルアミン、ニコチン(ピリジン系)等のアミン類の揮発性窒素化合物等が知られている。そして、この不快な臭い成分は、喫食直後の息から発生すると共に、体内の血流に不快な臭い成分が存在すると翌日まで息又は皮膚等から発生することがある。
近年、エチケット意識の高まりに伴い、口臭や体臭、排泄臭(尿臭・便臭)等の動物(例えば、ヒト、ペット等)から発せられる臭いが気にされるようになってきている。このため、口臭や体臭等の不快な臭いを消臭又は防臭したいという要望がある。
【0004】
従来技術として、微生物又は酵素を標的として、殺菌作用又は酵素活性阻害作用にて臭い成分の生成を抑制する技術がある。このような従来技術は、一旦生成された臭い成分を分解等によって不活性化するのではなく、原因物質から臭い成分に変化する前の段階(すなわち、生成段階)を抑制する技術(例えば、殺菌、酵素活性阻害等)である。また、従来技術として、臭いを香料で変調させる技術、臭い成分を吸着させる技術がある。
【0005】
例えば、臭い成分の生成を抑制する技術として、ラクトパーオキシダーゼシステムによる口腔内の殺菌のための口腔用殺菌剤(特許文献1);歯周病病原菌のポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)の抗菌による、オリーブ葉抽出物を有効成分として含有するメチルメルカプタン発生抑制用の口腔用組成物(特許文献2);カテキン類を有効成分とする硫化水素酵素阻害剤(特許文献3);ラクトパーオキシダーゼシステムによる含硫アミノ酸リアーゼ阻害剤(特許文献4)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2008/105113
【文献】特開2016-147869号公報
【文献】特開2011-51946号公報
【文献】特開2015-149904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生成されてしまった臭い成分は口臭や体臭等として体外に放出される。しかしながら、この口臭又は体臭等として放出された臭い成分を自身又は他人が感じることをできるだけ回避したい要望がある。
例えば、にんにくを食べた直後の口臭にはアリルメルカプタンが存在し、このアリルメルカプタンは胃等の消化器官又は口腔内で発生している。さらに、不快な臭い成分又はその原因物質は体内で消化吸収されて血流で各器官に移動する。原因物質は血流で移動しながら代謝等によって臭い成分に変化していく。
その結果、胃腸や肺から口臭として臭い成分が体外に放出されたり、口腔内で変化した臭い成分が息として体外に放出される。また、血流に含まれる又は皮膚上で変化した不快な臭い成分が体臭として皮膚から体外に放出される。また、不快な臭い成分を含む腸内ガスや排尿・排便等が排泄臭(尿臭や便臭等)として体外に放出されることで、不快な臭いが発生したりすることもある。
なお、ここで「口臭」とは、息をしたときの口腔又は呼気の臭いである。
【0008】
さらに、生成された臭い成分には、比較的安定的な物質(例えば、メルカプタン、トリメチルアミン等)がある。このような比較的安定的な物質は、臭い成分の化学的吸着や臭い成分の分解等は困難とされている。このように、生成された臭い成分を不活性化し、消臭すること又は臭いを低減することは技術的に困難であると一般的に云われている。
【0009】
そこで、本技術は、生成された臭い成分を不活性化できる組成物及び方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、後記実施例に示すように、生成された臭い成分自体を直接的に不活性化するモデルを用いて、鋭意検討した。
ところで、殺菌剤や漂白剤としてよく使用されている過酸化水素水でメチルメルカプタンを処理すると、2CHSH+HOOH→CHS-SCH(二硫化メチル)+2HOとなることが一般的に知られている。この二硫化メチルは臭い成分でもあることから、過酸化水素水を用いても臭い成分を不活性化できない。
しかしながら、本発明者らは、鋭意検討した結果、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを利用したLPO反応系が、チオシアン酸又はその塩の存在下で臭い成分自体を直接不活性化して臭い(例えば、口臭、体臭、排泄物臭等)を低減できることを全く意外にも見出し、本発明を完成させた。
しかも、本技術は、臭い成分自体を標的とする技術であり、従来技術とは系統が全く異質の技術である。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
本技術は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む、チオシアン酸又はその塩の存在下で用いられる臭い成分不活性化用組成物であって、前記臭い成分は、アリルメルカプタン、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、及びトリメチルアミンからなる群より選ばれるいずれか1種以上であり、前記組成物を水溶媒に溶解させたときのpHは、6.0~8.0である、臭い成分不活性化用組成物を提供するものである。
本技術は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物を備え、チオシアン酸又はその塩の存在下で用いられる臭い成分不活性化用組成物キットであって、前記臭い成分は、アリルメルカプタン、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、及びトリメチルアミンからなる群より選ばれるいずれか1種以上であり、前記組成物を水溶媒に溶解させたときのpHは、6.0~8.0である、臭い成分不活性化用組成物キットを提供するものである。
本技術は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物を使用して、チオシアン酸又はその塩の存在下で臭い成分を不活性化する方法であって、前記臭い成分は、アリルメルカプタン、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、及びトリメチルアミンからなる群より選ばれるいずれか1種以上であり、前記組成物を水溶媒に溶解させたときのpHは、6.0~8.0である、臭い成分を不活性化する方法を提供するものである
記臭い成分が、食品由来及び/又は喫煙由来のものであってもよい。
前記食品由来の臭い成分が、ネギ属(Allium)植物を含む食品由来の臭い成分であってもよい。
前記組成物キットが、以下の(a)、(b)、(c)又は(d)を少なくとも有するものであってもよい。 (a)ラクトパーオキシダーゼを含む組成物、グルコースオキシダーゼを含む組成物、及びグルコースを含む組成物; (b)ラクトパーオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼを含む組成物、並びに、グルコースを含む組成物; (c)ラクトパーオキシダーゼを含む組成物、並びに、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物; (d)ラクトパーオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物、並びに、グルコースオキシダーゼを含む組成物。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、生成された臭い成分を不活性化できる組成物及び方法を提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0014】
本技術は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む、チオシアン酸又はその塩の存在下で用いられる臭い成分不活性化用組成物である。
また、本技術は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを備え、チオシアン酸又はその塩の存在下で臭い成分を不活性化する組成物キットである。
また、本技術は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを使用して、チオシアン酸又はその塩の存在下で臭い成分を不活性化する方法である。
本技術のラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを使用することによる酵素反応系を「LPO反応系」ともいう。
【0015】
なお、本技術は、適用対象を動物にしてもよく、また、適用対象を臭い成分が発生する物にしてもよい。
適用対象の動物として、ヒト、及び非ヒト動物(好適には、哺乳類、鳥類、爬虫類等)等が挙げられる。このうち、ヒト及びペットが好ましく、より好ましくはヒトである。
また、適用対象の物として、臭い成分を含む物であり、例えば、食品、衣類、布製品、生理用品、排泄物、臭い付着物等が挙げられる。
【0016】
また、本技術は、治療目的使用であっても、非治療目的使用であってもよい。「非治療目的」とは、医療行為、すなわち、治療による人体への処置行為を含まない概念である。例えば、口臭エチケット等が挙げられる。
「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止や遅延、又は適用対象の疾患若しくは症状の危険性の低下をいう。
「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;悪化の防止又は遅延;進行の逆転、防止又は遅延をいう。
【0017】
本技術の構成である、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコース、チオシアン酸又はその塩について、以下の(1)~(4)において、詳述する。
【0018】
(1)成分(A)ラクトパーオキシダーゼ
一般的にラクトパーオキシダーゼは、乳中の酸化還元酵素で、過酸化水素及びチオシアン酸から、次亜チオシアン酸と水の生成を触媒する作用を有することが知られている。
本技術に使用するラクトパーオキシダーゼは、特に限定されないが、ほ乳類の乳に由来するものを使用することが好ましい。当該ラクトパーオキシダーゼのうち、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の乳に由来するラクトパーオキシダーゼが好ましく、より好ましくは牛乳由来のものである。
乳はヒトの飲食に長年使用されていたために、乳由来のラクトパーオキシダーゼもヒト等の動物に対する安全性が高いので、乳由来のラクトパーオキシダーゼが好ましい。さらに、食経験による安全性及び大量的・安定的な生産性の観点から、牛乳由来のラクトパーオキシダーゼがより好ましい。
【0019】
前記ラクトパーオキシダーゼは、ほ乳類の乳等から得ることができ、例えば、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の乳等から得ることができる。
本技術に使用するラクトパーオキシダーゼは、乳等未加熱のホエー又は脱脂乳から、常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー等)に従って工業的に製造することが好ましい(例えば、参考文献1(特開平5-41981公報)、参考文献2(WO2005/078078))。
また、市販の天然物由来のラクトパーオキシダーゼ(例えば、バイオポール社製等)、又は組換え型ラクトパーオキシダーゼ、発現・精製された組換え型ラクトパーオキシダーゼ(例えば、参考文献3(Biochemical and Biophysical Research Communications、第271巻、2000年、p.831-836))、又は市販の組換え型ラクトパーオキシダーゼを使用してもよい。
このうち、本技術に使用するラクトパーオキシダーゼの原料として、安定して大量に得ることができることから、牛乳由来の脱脂乳又はホエーが好適である。
【0020】
(2)成分(B)グルコースオキシダーゼ
一般的にグルコースオキシダーゼは、β-D-グルコースを酸化してD-グルコノ-δ-ラクトンと過酸化水素を生成する酵素であると知られている。
本技術に使用するグルコースオキシダーゼは特に限定されないが、微生物由来のグルコースオキシダーゼが品質の安定性及び生産性の観点から好ましい。
当該微生物由来の酵素として、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)等の微生物の産生する酵素が挙げられる。
当該微生物由来のグルコースオキシダーゼは、公知の微生物由来酵素の製造方法を利用して得ることができる。また、市販品のグルコースオキシダーゼを使用してもよく、市販品の微生物由来のグルコースオキシダーゼ(例えば、新日本化学工業社製等)を使用してもよい。
【0021】
(3)成分(C)グルコース
本技術に使用するグルコースは、特に限定されず、例えば、市販品の食品添加物用のグルコース(例えば、日本食品化工社製等)を使用することもできる。また、グルコース含有製品(例えば、異性化糖、水飴、デンプン加水分解物等)を使用してもよい。
【0022】
(4)成分(D)チオシアン酸又はその塩
本技術は、チオシアン酸又はその塩の存在下で用いるものである。当該チオシアン酸又はその塩を必要に応じて添加する場合、市販品(例えば、Merck Millipore社製)を用いてもよい。塩は特に限定されず、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、鉄(III)塩等が挙げられる。
【0023】
チオシアン酸が既に存在する領域(例えば、口腔内等)に対して本技術のLPO反応系を使用する場合、チオシアン酸又はその塩を添加しなくともよく、また、チオシアン酸又はその塩を本技術の組成物に含有させなくともよい。
チオシアン酸又はその塩が存在しない領域に対して本技術のLPO反応系を使用する場合、その領域にチオシアン酸又はその塩を別途添加することが望ましく、また、チオシアン酸又はその塩を本技術のLPO反応系又は組成物に含有させることが望ましい。
また、LPO反応系を反応させる領域に本技術のチオシアン酸又はその塩の量が不足する場合、LPO反応系に又はその領域にその不足分を別途添加することが望ましく、また、不足するチオシアン酸又はその塩を本技術の組成物に含有させることが望ましい。
【0024】
本技術の組成物は、さらにpH調整成分を含有させることが、安定的な反応を行う観点から、好ましい。また、本技術の組成物は、本技術の効果を損なわない範囲で、適宜任意成分を配合してもよい。
本技術の組成物のpH調整成分は、特に限定されないが、水溶媒に溶解させたときのpHが、好ましくは4.0~9.0、より好ましくは6.0~8.0、さらに好ましくは7.0~8.0である。
当該pH調整成分として、例えば、無機酸、有機酸及びこれらの塩等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。当該pH調整成分は、水溶性のものが好ましく、また市販食品添加物を用いてもよい。
前記無機酸としては、リン酸、硝酸及び硫酸等が挙げられる。
前記有機酸として、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルタミン酸等が挙げられる。
塩として、アルカリ金属塩(リチウム、カリウム、ナトリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)等が挙げられる。
前記pH調整成分の群より選択される1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本技術は、標的となる「臭い成分」自体に上述したLPO反応系を反応させることによって、当該臭い成分を不活性化できる。臭い成分の不活性化の作用機序は、現在鋭意検討中であるが、しかし、後記〔実施例〕に示すように、少なくともLPO反応系が臭い成分自体の不活性化に直接的に又は間接的に関与すると考えられる。この不活性化により、臭い成分に起因する臭いを低減すること又は消臭することができる。
本技術の標的となる「臭い成分」について、以下に詳述する。
【0026】
本技術の標的となる「臭い成分」は、特に限定されないが、例えば、食品及び/又は喫煙に起因して生成された臭い成分が挙げられる。
本技術において、食品由来の臭い成分及び/又は喫煙由来の臭い成分が好適である。これらは、後述する不快な臭い成分又はその原因物質を含むものである。
動物が食品を摂取した又は動物がタバコを喫煙した場合、食品及び/若しくは喫煙に起因する不快な臭い成分又は当該原因物質が体内に存在することになる。なお、喫煙には間接喫煙も含まれる。そして、息、皮膚呼吸、排泄等によって、不快な臭い成分が体外に放出されることになる。
【0027】
なお、「口臭由来の臭い成分」として、胃腸空間で生成された臭い成分(以下、「胃腸由来の臭い成分」ともいう);血流に存在する臭い成分が肺から放出された臭い成分(以下、「肺由来の臭い成分」ともいう);口腔内で生成された臭い成分(以下、「口腔由来の臭い成分」ともいう)等が挙げられる。
これら胃腸由来、肺由来及び口腔由来の臭い成分は息に含まれている。このため、これら生成された臭い成分を含む気体は呼吸することで息として放出される。この息は「口臭」と認識される。
また、「体臭由来の臭い成分」として、血流に存在する臭い成分が皮膚呼吸によって放出された臭い成分(以下、「皮膚呼吸由来の臭い成分」ともいう);汗等の分泌物が皮膚上で変化して生成された臭い成分(以下、「皮膚分泌物由来の臭い成分」ともいう)等が挙げられる。
これら皮膚由来の臭い成分を含む気体は皮膚から放出される。この気体は「体臭」として認識される。
また、「排泄由来の臭い成分」として、腸内ガス由来の臭い成分;糞尿由来の臭い成分等が挙げられる。これら排泄由来の臭い成分を含む気体は、「尿臭・便臭」として認識される。
【0028】
本技術によれば、体外に放出された臭い成分を不活性化することができる。本技術は、好適には口臭又は体臭に含まれる臭い成分に対して有効である。
さらに、本技術は、口腔は狭い空間であり咀嚼等で動くところであるため、口腔内に存在する臭い成分及び口腔内を通過する臭い成分に対して本技術のLPO反応系が反応し易くなる。これにより、本技術のLPO反応系は、当該臭い成分を容易に即効的に不活性化させやすく、よって即効的に効率よく簡便に口臭を低減又は消臭できる。
【0029】
本技術の標的となる「臭い成分」は、口臭由来臭い成分、体臭由来臭い成分、及び排泄由来の臭い成分が好適である。
当該口臭由来臭い成分は、好適には胃腸由来の臭い成分又は肺由来の臭い成分であり、胃腸由来の臭い成分は、食品又は喫煙成分が胃腸に存在することを起因として体外に放出される臭い成分である。
また、肺由来の臭い成分は、食品の摂取等により生成された原因物質又は臭い成分が血流中に存在することを起因として体外に放出される臭い成分である。
さらに、前記体臭由来の臭い成分は、好適には皮膚由来の臭い成分であり、原因物質又は臭い成分が血流中に又は皮膚上に存在することを起因として体外に放出される臭い成分である。
また、前記排泄由来の臭い成分は、食品の摂取等により生成された原因物質又は臭い成分がガスや糞尿等の排泄物から放出される臭い成分である。
【0030】
本技術で標的とする「臭い成分」は、好適には臭い成分及びその原因物質を有する食品に起因するものであり、当該食品に起因して体外に放出されることが多い。
前記起因成分を有する食品として、例えば、ネギ属(Allium)植物が挙げられる。当該ネギ属植物として、例えば、ネギ、ラッキョウ、ニンニク、タマネギ、ニラ等が挙げられる。これらから選ばれる1種又は2種以上のものが、食品原料としてよく用いられている。これらには、メルカプタンになる原因物質が多く含まれている。
よって、本技術は、ネギ属(Allium)植物を含む食品を食することによって生じる当該食品由来の臭い成分を不活性化できる。従来技術では、体内で(特に消化吸収後に)生成されたネギ属植物由来の臭い成分を不活性化できなかった。例えば、ネギ属植物を食した翌日に発生する口臭又は体臭があるが、このような臭いは従来技術では消臭できなかった。しかし、本技術であれば、口臭及び体臭由来の臭い成分として発せられる生成された臭い成分を不活性化できる。
また、臭い成分及びその原因物質を有する嗜好品として、タバコ等が挙げられる。本技術は、直接喫煙又は間接喫煙によって生じる当該喫煙由来の臭い成分を不活性化することができる。なお、本技術は、衣類等に付着した喫煙由来の臭い成分も不活性化することができる。
【0031】
本技術の標的となる「臭い成分」は、特に限定されないが、好ましくは揮発性硫黄化合物及び/又は揮発性窒素化合物である。
当該揮発性硫黄化合物及び/又は揮発性窒素化合物は、食品由来又は喫煙由来の臭い成分と重複するものが好適である。また、揮発性化合物とは常温常圧で大気中に容易に揮発するものをいう。
【0032】
前記揮発性硫黄化合物として、例えば、硫化水素、メルカプタン、ジスルフィド等が挙げられる。当該メルカプタンとして、好ましくは炭素数1~4を有するものであり、より好ましくは炭素数1~3を有するものである。
当該メルカプタンとして、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン(別名:1-プロパンチオール)、アリルメルカプタン等が挙げられる。
本技術は、これらから1種又は2種以上選択することができる。
【0033】
当該揮発性窒素化合物として、例えば、アンモニア、アミン等が挙げられる。当該アミンとして、好ましくは、アルキルアミン系、ピリジン系(例えば、ニコチン等)等が挙げられる。当該アルキルアミン系におけるアルキル基として、炭素数1~3が好ましく、より好ましくはメチルである。アルキルアミン系として、例えば、アミノメタン(別名:メチルアミン)、ジメチルアミン、トリメチルアミンが挙げられる。
本技術は、これらから1種又は2種以上選択することができる。
【0034】
本技術の標的となる「臭い成分」として、好適には、硫化水素、メルカプタン、アンモニア、アルキルアミン系からなる群から選択される1種又は2種以上である。
本技術の標的となるメルカプタンとして、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、アリルメルカプタンが、本技術にて良好に不活性化できる観点から、好適である。
本技術の標的となるアルキルアミン系として、アミノメタン、ジメチルアミン、トリメチルアミンからなる群から選択される1種又は2種以上である。
本技術の標的となる「臭い成分」として、好適には、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、アリルメルカプタン、アミノメタン、ジメチルアミン、トリメチルアミンからなる群から選択される1種又は2種以上である。
このうち、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、アリルメルカプタン、トリメチルアミン、及びこれら2種以上の混合物が、本技術にてより良好に不活性化できる観点から、好適である。
【0035】
本技術のLPO反応系における好適な各濃度について、以下に詳述する。
本技術の組成物における成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコースの含有量は、使用時における各成分の濃度(反応系における濃度)が後述の濃度になるように調整することが好ましい。
【0036】
本技術のLPO反応系における成分(A)ラクトパーオキシダーゼの濃度は、特に限定されない。当該成分(A)濃度の下限値として、好ましくは0.05μg/mL以上、より好ましくは0.15μg/mL以上、さらに好ましくは1.5μg/mL以上、よりさらに好ましくは15μg/mL以上であることが、消臭率向上の観点から好適である。また、当該成分(A)濃度の上限値として、好ましくは10000μg/mL以下、より好ましくは250μg/mL以下、さらに好ましくは150μg/mL以下であることが、成分(A)使用量と消臭率との兼ね合いの観点から好適である。さらに、当該成分(A)濃度の範囲として、より好ましくは0.1~500μg/mL、さらに好ましくは0.5~400μg/mL、よりさらに好ましくは1.2~300μg/mLであり、コスト及び消臭率の観点から、好適である。
【0037】
本技術のLPO反応系における成分(B)グルコースオキシダーゼの濃度は、特に限定されない。当該成分(B)濃度の下限値として、好ましくは1μg/mL以上、より好ましくは13.5μg/mL以上、さらに好ましくは15μg/mLであり、よりさらに好ましくは135μg/mL以上であることが、消臭率向上の観点から好適である。また、当該成分(B)濃度の上限値として、好ましくは10000μg/mL以下、より好ましくは3000μg/mL以下であり、さらに好ましくは1350μg/mL以下であることが、成分(A)の使用量と消臭率との兼ね合いの観点から好適である。当該成分(B)濃度の範囲として、より好ましくは5~5000μg/mL、さらに好ましくは10~4000μg/mL、よりさらに好ましくは10~2700μg/mLであり、コスト及び消臭率の観点から、好適である。
【0038】
本技術のLPO反応系における成分(C)グルコースの濃度は、特に限定されないが、その下限値として、好ましくは1μg/mL以上、より好ましくは15μg/mL以上、さらに好ましくは50μg/mL以上、さらに好ましくは100μg/mL以上、よりさらに好ましくは200μg/mL以上であり、その上限値として、好ましくは10000μg/mL以下、より好ましくは3000μg/mL以下、さらに好ましくは1500μg/mL以下である。当該成分(C)濃度の範囲として、より好ましくは10~10000μg/mL、さらに好ましくは10~5000μg/mL、よりさらに好ましくは10~3000μg/mLであり、コスト、甘み低減及び消臭率の観点から、好適である。
【0039】
本技術のLPO反応系における成分(D)チオシアン酸又はその塩の濃度は、好ましくは0.1~100mM、より好ましくは0.2~60mM、さらに好ましくは0.3~20mMである。当該濃度に満たない場合に、チオシアン酸又はその塩をこの濃度になるように、本技術の組成物に添加するか、また使用領域に使用してもよい。
【0040】
また、本技術のLPO反応系における成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコースの各使用割合は、特に限定されず、上述の各濃度を組み合わせればよい。
さらに、本技術のLPO反応系を使用する場合、成分(A)ラクトパーオキシダーゼ及び成分(B)グルコースオキシダーゼの質量割合は、特に限定されないが、好ましくは成分(A)1:成分(B)5~15、より好ましくは成分(A)1:成分(B)7~12であり、成分(A)1:成分(B)8~10であり、特に好ましくは成分(A)1:成分(B)9である。
なお、成分(C)グルコース(質量割合)は、特に限定されないが、成分(B)グルコースオキシダーゼ1質量部に対して0.5~1.5質量部で使用してもよい。本技術において、特に好ましくは成分(A)1:成分(B)9:成分(C)10である。
【0041】
本技術のLPO反応系の標的となる「臭い成分」の濃度は、特に限定されないが、500ppb以下が好ましく、300ppb以下がより好ましく、260ppb以下がさらに好ましい。
【0042】
本技術は、後記〔実施例〕に示すように、成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコースを、チオシアン酸又はその塩の存在下で、使用するものである。
本技術に使用する成分(A)~(C)は、組成物の有効成分として含有させることも可能であり、これら成分は臭い成分を不活性化させることに有効である。これにより、口臭、体臭、又は排泄物臭を抑制又は低減することもできる。
本技術の成分(A)~(C)は、生成された臭い成分に対して用いることが好適であり、当該成分(A)~(C)は、臭い成分の不活性化に用いることができる。
したがって、本技術の成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコースは、有効成分として、臭い成分不活性化用組成物に含有させることができ、また、臭い成分に起因する臭いに対する低減効果又は消臭効果を期待する組成物に含有させることができ、これら各種組成物は製剤としても使用することができる。
本技術の成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコースは、これら自体をそのまま用いることが可能であり、又は生理的若しくは薬剤学的に許容される通常の担体若しくは希釈剤と共に混合して用いることもできる。
さらに、本技術は、必要に応じて、チオシアン酸又はその塩を成分(D)として使用又は含有させてもよい。
また、本技術のLPO反応系は、医薬、飲食及び飼料等の種々の用途及び種々の組成物に使用できる。
【0043】
また、本技術は、上述した臭い成分不活性化等の目的のために用いる、成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコース又はその使用を提供することができる。
また、本技術の成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコースは、臭い成分を不活性化する方法等の有効成分として使用することができる。
また、本技術の成分(A)~(C)は、上述した効果を有する又は上述した使用目的の各種製剤又は各種組成物等の製造のために使用することができる。
また、本技術の成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコース又は当該成分(A)~(C)含有組成物は、体外に放出される臭い成分に対する予防又は改善等に使用することが可能である。
さらに、本技術は、必要に応じて、チオシアン酸又はその塩を成分(D)として使用又は含有させてもよい。
【0044】
また、本技術は、成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコースから選ばれる1種又は2種以上を含む各組成物を作製することができる。さらに、本技術は、必要に応じて、チオシアン酸又はその塩を成分(D)として使用又は含有させてもよい。そして各組成物を使用する組成物キットとして使用することができる。
よって、本技術は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを備え、チオシアン酸又はその塩の存在下で臭い成分を不活性化する組成物キットを提供することができる。
前記組成物キットが、以下の(a)、(b)、(c)又は(d)を少なくとも有することが好ましい。なお、必要に応じて、チオシアン酸又はその塩を成分(D)として使用又は含有させてもよいし、別途チオシアン酸又はその塩を含有する組成物としてもよい。
(a)ラクトパーオキシダーゼを含む組成物、グルコースオキシダーゼを含む組成物、及びグルコースを含む組成物;
(b)ラクトパーオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼを含む組成物、並びに、グルコースを含む組成物;
(c)ラクトパーオキシダーゼを含む組成物、並びに、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物;
(d)ラクトパーオキシダーゼ及びグルコースを含む組成物、並びに、グルコースオキシダーゼを含む組成物。
【0045】
本技術は、前記成分(A)~(C)を用いて組成物又は製剤にする場合、前記成分(A)~(C)の有効成分としての含有量は、通常0.005~20質量%であり、好ましくは0.005~12.5質量%である。このとき、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤を使用することができる。
【0046】
本技術の組成物を使用者が1回当たり使用する量は、使用者の性別、年齢、状態等に応じて適宜決定してもよい。
本技術の組成物の使用量は、上述した、本技術のLPO反応系における成分(A)ラクトパーオキシダーゼの濃度、成分(B)グルコースオキシダーゼの濃度、成分(C)グルコースの濃度になるように、使用してもよい。
本技術の組成物の使用量は、前記成分(A)~(C)の濃度範囲に加えて、上述した本技術のLPO反応系におけるチオシアン酸又はその塩の濃度になるように調整することが好ましい。
【0047】
本技術の組成物は、水溶液組成物の形態としてもよいし、固形組成物の形態としてもよい。
水溶液組成物の形態の場合、スプレーボトル等に充填して使用対象に散布するような使用態様が可能となる。また、固形組成物の形態とした場合、口腔内で使用して不活性化効果を発揮させることができる。かかる場合には、本技術の消臭剤をタブレット形状やフィルム形状に成形することが好ましい。
【0048】
本技術のLPO反応系は、水存在下で行うことが好ましい。このため、使用領域ではLPO反応系は水を含んだ状態になっていることが好ましい。
口腔の空間に存在する臭い成分又は口腔を通過する臭い成分は、口腔内の舌等の動きや咀嚼等によって唾液と混合されやすい。本技術のLPO反応系を口腔に存在させることで、当該LPO反応系と唾液と臭い成分自体とが混合される。これにより、当該LPO反応系が臭い成分自体に作用する。よって、本技術のLPO反応系により口腔に存在する臭い成分自体又は口腔を通過する臭い成分自体が不活性化される。この口腔を通過する臭い成分とは肺由来及び/又は胃腸由来である。
【0049】
本技術は、前記成分(A)ラクトパーオキシダーゼ、成分(B)グルコースオキシダーゼ及び成分(C)グルコース、並びに適宜任意成分を対象に使用する。そして、成分(A)~(C)によって生成された臭い成分自体を不活性化する方法である。
本技術は、上述で説明した各成分の濃度範囲において臭い成分に対して高い不活性化作用を発揮する。そのため、本技術において、不快な臭い成分が生成されている領域を処理する際のラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースの各濃度は、上述で説明した濃度範囲内であることが好ましい。また、チオシアン酸又はその塩の濃度についても上述した濃度範囲内であることが好ましい。通常口腔内にはチオシアン酸が存在しており、口腔内に存在するこのチオシアン酸量で本技術のLPO反応系は良好に進行し、臭い成分を不活性化できることも、本技術の利点である。
【0050】
本技術のLPO反応系による反応期間は、特に限定されない。当該反応期間は、反応開始後、好ましくは1分~1時間、より好ましくは5分~45分、さらに好ましくは5分~30分、よりさらに好ましくは5分~20分である。本技術の利点として、微生物殺菌又は酵素阻害でないため、比較的短時間で不活性化が進行し易い。
また、本技術のLPO反応系の反応開始は特に限定されない。当該反応の開始は、食後直後~翌日に行うことが好ましく、具体的には食後5分~12時間がより好ましく、食後30分~6時間がさらに好ましい。当該範囲は、体内に臭い成分又は原因物質が残存し、口臭又は体臭等として発生する。
【0051】
本技術のLPO反応系においては、前記成分(A)~成分(C)、並びに適宜任意成分の各成分を対象に順次添加する形態としても良いし、各成分を含む混合物、すなわち本技術の臭い成分の不活性化用組成物又は組成物キットを標的の臭い成分に作用させるようにしても良い。
また、本技術のLPO反応系における使用領域は、LPOの各構成成分は経験的に安全性が高いので、生成された臭い成分が存在し易い観点からも、口腔内又は皮膚である。反応の方法として、噴霧、塗布、接触等が挙げられる。
【0052】
本技術の前記成分(A)~(C)又はLPO反応系は、医薬組成物又は医薬用途に用いることが可能である。
なお、本技術の用法及び用量は、上述した用法及び用量を採用することができる。
【0053】
投与経路は、例えば経口投与、経粘膜投与、鼻腔内投与、直腸内投与等が挙げられる。このうち、経口投与(経口摂取)が好ましい。
なお、投与対象は、通常、ヒトであることが好ましいが、ヒト以外の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ等のペット動物、ウシ、ヒツジ、ブタ等の家畜も含むものとする。
【0054】
投与形態(又は製剤)としては、固体製剤及び液体製剤のいずれの形態でもよく、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、溶液剤、注射剤、粉末剤、噴霧製剤等が挙げられる。
【0055】
本技術の医薬組成物は、製薬上許容可能な担体を含んでいてもよい。かかる担体には、賦形剤又は希釈剤が含まれ、例えば、デキストラン類、サッカロース、ラクトース、マルトース、キシロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、カルボキエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、グアーガム、トラガカント、アクリル酸コポリマー、エタノール、生理食塩水、リンゲル液等が挙げられる。
【0056】
前記担体に加えて、必要に応じて防腐剤、安定化剤、結合剤、pH調整剤、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、抗酸化剤等の添加剤を加えることができる。これらの添加剤は、製薬の際に使用されるものが好ましい。
【0057】
本技術の前記成分(A)~(C)又はLPO反応系を有効成分として含む医薬組成物を製造する際は、製剤技術分野において慣用の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。
【0058】
本技術に係る生成された臭い成分を不活性化するための医薬組成物は、他の医薬品と組み合わせて使用してもよい。 組み合わせて使用する医薬品は、本技術の組成物の投与と同時に、投与前に、あるいは投与後のいずれかの時点で投与することができる。その投与量は特に限定されないが、市販の医薬品である場合、医薬メーカーによって指示される投与量であることが好ましい。
【0059】
[1]飲食品組成物及び飼料組成物
本技術は、飲食品組成物又は飲食品用途、飼料組成物又は飼料用途に用いることが可能である。なお、当該用法及び用量は、上述した用法及び用量を採用することができる。
本技術に用いられる前記成分(A)~(C)又はLPO反応系は、上述した臭い成分の不活性化等に用いるためのヒト若しくは動物用の飲食品、健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品等(以下、「飲食品等」ともいう)の有効成分として、これらに配合して使用可能である。
【0060】
例えば、本技術に用いられる前記成分(A)~(C)又はLPO反応系は、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販食品や、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等に添加して用いることができる。飲食品の形態は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず用いることができる。
【0061】
本技術で定義される飲食品等は、特定の用途(特に保健の用途)や機能が表示された飲食品として提供・販売されることも可能である。
本技術の飲食品組成物は、上述した臭い成分の不活性化に用いるための、又は食事又は喫煙に起因する臭いを予防・改善に用いるため、の保健用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。かかる表示としては、例えば、「食べた直後の口臭又は体臭が気になる方」、「翌日の口臭又は体臭が気になる方」、「にんにく、ねぎ等のネギ属植物を食べた後に」等と表示することが挙げられる。
【0062】
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
【0063】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0064】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0065】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
【0066】
上記飲食品の例示として発酵飲食品も含まれるが、当該発酵飲食品の製造の際に、前記成分(A)~(C)又はLPO反応系を配合してもよい。さらに、蔗糖等の甘味料、ペクチン、果実、フルーツジュース、寒天、ゼラチン、油脂、香料、着色料、安定剤、還元剤等を添加してもよい。また、発酵飲食品は、適宜、容器に充填してもよい。
上述した発酵飲食品の製造方法で得られた発酵飲食品は、通常の発酵飲食品と同様に適宜加工することができる。
上述にて得られた発酵飲食品には、前記成分(A)~(C)又はLPO反応系が含まれており、これにより本技術の効能を良好に発揮することができる。
【0067】
また、本技術は、上述した生成された臭い成分の不活性化に用いるための動物用の飼料の有効成分として、使用可能である。本技術は、公知の飼料に添加して調製することもできるし、飼料の原料中混合して新たな飼料を製造することもできる。
前記飼料の原料としては、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦等の穀類;ふすま、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕脱脂粉乳、ホエー、魚粉、骨粉等の動物性飼料類;ビール酵母等の酵母類;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;アミノ酸類;糖類等が挙げられる。また、前記飼料の形態としては、例えば、愛玩動物用飼料(ペットフード等)、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
【0068】
このように、本技術は、飲食品、飲食品組成物、機能性食品、医薬品、飼料等の幅広い分野に使用することができる。
【0069】
また、本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕 ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む、チオシアン酸又はその塩の存在下で用いられる臭い成分不活性化用組成物。当該組成物は、臭い成分自体を不活性化することで、臭い成分の発生量を抑制又は低減できる。これにより、当該組成物を、口臭抑制用、体臭抑制用、又は排泄物臭抑制用に利用できる。
〔2〕ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む、チオシアン酸又はその塩の存在下で用いられる、口臭抑制用組成物、体臭抑制用組成物、又は、排泄物臭抑制用組成物。当該組成物は、発生する臭い成分自体を抑制又は低減することが好ましい。
〔3〕 ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを備え、チオシアン酸又はその塩の存在下で用いられる臭い成分不活性化用組成物キット。
〔4〕 チオシアン酸又はその塩の存在下で臭い成分を不活性化させるための、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコース。
〔5〕 チオシアン酸又はその塩の存在下で臭い成分を不活性化させるための、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースの使用。
〔6〕 ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを使用して、チオシアン酸又はその塩の存在下で臭い成分を不活性化する方法。当該臭い成分を不活性化することによって、不快な臭い(例えば、口臭、体臭、又は排泄物臭等)を抑制又は低減することもできる。当該不活性化方法は、予防又は治療目的であってもよいし、非治療目的であってもよい。
〔7〕 チオシアン酸又はその塩の存在下で用いられる臭い成分不活性化用組成物又は臭い成分不活性化用組成物キットを製造するための、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースの使用。
〔8〕 ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースの有効量を、予防又は治療を必要とするヒト又は患者に投与することを含む、不快な臭いを発生する症状の予防方法又は治療方法。当該不快な臭いを発生する症状は、例えば、口臭、体臭等が挙げられ、このうち、口臭、体臭が好適である。
〔9〕 ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びグルコースの有効量を、予防又は治療を必要とするヒト又は患者に投与することを含む、口臭、体臭、又は排泄物臭のいずれかの抑制方法又は低減方法。
【0070】
〔10〕 前記〔1〕~〔9〕の何れか1つであり、前記臭い成分が、揮発性硫黄化合物及び/又は揮発性窒素化合物である。
〔11〕 前記〔1〕~〔10〕の何れか1つであり、前記臭い成分が、食品由来及び/又は喫煙由来のものである。
〔12〕 前記〔1〕~〔11〕の何れか1つであり、前記食品由来の臭い成分が、ネギ属(Allium)植物を含む食品由来の臭い成分である。
〔13〕 前記〔1〕~〔12〕の何れか1つであり、前記臭い成分が、口臭由来、体臭由来、又は排泄由来である。
〔14〕 前記〔1〕~〔13〕の何れか1つであり、前記臭い成分が、胃腸由来、肺由来、又は皮膚由来である。
〔15〕 前記〔1〕~〔14〕の何れか1つであり、前記臭い成分が、メチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、アリルメルカプタン、アミノメタン、ジメチルアミン及びトリメチルアミンからなる群から選択される1種又は2種以上である。
〔16〕 前記〔1〕~〔15〕の何れか1つであり、前記不活性化が、食後~翌日に行うものである。
〔17〕 前記〔1〕~〔16〕の何れか1つであり、前記不活性化が、即効性の不活性化である。当該不活性化の反応時間が5分~45分であることが好適である。
〔18〕 前記〔1〕~〔17〕の何れか1つであり、前記臭い成分が含まれるものが、食品、衣類、布製品、生理用品、排泄物又は臭い付着物である。
〔19〕 前記〔1〕~〔18〕の何れか1つであり、使用目的が非治療目的又は口臭エチケットである。
〔20〕 前記〔1〕~〔19〕の何れか1つであり、適用対象が動物であり、当該動物が、ヒト又はペットである。
【実施例
【0071】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
[試験例1]
[試験例1-1]
本試験1-1は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼおよびグルコースを含む組成物による、硫黄系の臭い成分(アリルメルカプタン及びメチルメルカプタン)に対する作用を調べるために行った。
【0073】
(1)試料の調製
ラクトパーオキシダーゼ(DOMO社製)、グルコースオキシダーゼ(新日本化学工業社製)及びグルコース(ナカライテスク社製)を各原料、質量比がラクトパーオキシダーゼ:グルコースオキシダーゼ:グルコース=1:9:10となるように各原料を混合してLPO組成物を調製した。
前記LPO組成物を、0.66mMチオシアン酸ナトリウムを含む40mMリン酸緩衝液(pH7.7)を用いて、種々の濃度になるように溶解してLPO溶液を調製し、この各LPO溶液を試験試料とした。なお、LPO組成物の濃度は、3、30、300、及び3000μg/LPO溶液1mLの4通りに設定した。
【0074】
さらに、アリルメルカプタンに対する消臭作用が知られているエピガロカテキンガレート(EGCg、長良サイエンス社製)を、0.66mMチオシアン酸ナトリウムを含む40mMリン酸緩衝液(pH7.7)に種々の濃度で溶解してEGCg溶液を調製し、これを比較試料とした。EGCgの濃度は、試験試料と同様に、3、30、300、及び3000μg/mLの4通りに設定した。
【0075】
(2)臭い成分の不活性化確認試験
前記(1)で調製したLPO溶液又は10mLを採取したバイアル瓶に、アリルメルカプタン(東京化成工業社製)の濃度が250ppbになるように添加した後、速やかに密閉した。37℃で30分間保温した後、ヘッドスペースガス2mLを採取してガスクロマトグラフ用検出器(Agilent社製、GC7890B)に注入して、アリルメルカプタンの含量を分析した。アリルメルカプタンの量は、予め作成した検量線からアリルメルカプタンを定量した。
また、アリルメルカプタンを、メチルメルカプタン(和光純薬工業社製)に変更して同様の試験を行った。
【0076】
<ガスクロマトグラフの条件>
・カラム:Agilent DB-1(60m×0.32mm×5um)
・検出器:PFPD
・キャリアガス:He
・流速:1.7mL/min
・注入口温度:230℃
・オーブン温度:35℃ < 0.1℃/min < 36℃ < 15℃/min < 240℃(10min)
・検出器温度:260℃
【0077】
(3)結果
その結果、アリルメルカプタン及びメチルメルカプタンの各消臭率は、以下の表1及び2の通りとなった。なお、消臭率は、LPO反応系の組成物又はEGCgを含まない溶液(アリルメルカプタン又はメチルメルカプタン濃度250ppb)のヘッドスペースに検出された各成分量に対する、試験試料又は比較試料中の成分量の比率を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
[試験例1-2]
本試験1-2は、アリルメルカプタン及びメチルメルカプタンの硫黄系の臭い成分以外の硫黄系の臭い成分にも消臭効果があるかどうか、プロピルメルカプタンに対する作用を調べるために行った。LPO組成物の濃度は、30、300、及び3000μg/LPO溶液1mLの3通りに設定し、アリルメルカプタンをプロピルメルカプタン(東京化成工業社製)に代えた以外は、上記試験例1-1と同様の試験を行った。
その結果、プロピルメルカプタンの各消臭率は、以下の表3の通りとなった。なお、消臭率は、LPO反応系の組成物又はEGCgを含まない溶液(プロピルメルカプタン濃度250ppb)のヘッドスペースに検出された各成分量に対する、試験試料又は比較試料中の成分量の比率を示す。
【0081】
【表3】
【0082】
上記試験例1-1及び試験例1-2の結果、比較試料では、エピガロカテキンガレートの濃度依存的に消臭効果が高まるものの、エピガロカテキンガレートの濃度が最も高い3000μg/mLでも24.3%の消臭率に留まった。
これに対して、試験試料も、同様に濃度依存的な消臭効果を示したが、比較試料よりも低濃度で高い効果を示した。試験試料では、僅か3μg/mLの濃度で36%もの消臭率となり、30μg/mL濃度でほぼ100%の消臭率を示す高い消臭効果が確認された。また、表1~3のLPO組成物を用いて消臭率100%になったバイアル瓶について、バイアル瓶を開封し実験者が臭いを嗅いで臭いの有無を確認したところ、臭いは認められなかった。
【0083】
[試験例2]
本試験は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼおよびグルコースを含む組成物による、窒素系の臭い成分(トリメチルアミン)に対する作用を調べるために行った。
【0084】
試験例1と同様の手順で臭い成分をトリメチルアミンに代えて試験を実施した。具体的には、試験例1の(1)にて調製したLPO溶液20mLを1L容量の三角フラスコに採取し、さらに0.3%トリメチルアミン溶液0.5mLを添加した後、密閉して37℃で30分間保温した。その後、ヘッドスペースのガス100mLを検知器(ガステック社、検知管(トリメチルアミン;No. 3M))で採取し、トリメチルアミンの濃度を測定した。
【0085】
その結果、以下の表4の通りとなった。試験試料は、濃度依存的にトリメチルアミンに対する消臭効果を示すことが確認された。すなわち、LPO組成物は、窒素系の臭い成分に対しても消臭効果を示すことがわかった。
【0086】
【表4】
【0087】
以上のことから、LPO組成物は、種々の臭い成分を不活性化させる効果を有することがわかった。これら種々の臭い成分又はその原因物質は、特にネギ属植物及びタバコに含まれている。
したがって、本技術のLPO反応系の組成物は、食品の経口摂取又は喫煙に起因する生成された臭い成分自体を標的として不活性化させて口臭や体臭等を抑制又は低減する等の用途に有用である。本技術は、臭い成分の生成工程を標的にしているのではなく、体内で生成され残存している臭い成分自体を標的にしているところに斬新性がある。