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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】腫瘍標的化ペプチドバリアント
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20230207BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230207BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 51/06 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 33/18 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 33/244 20190101ALI20230207BHJP
   A61K 33/245 20190101ALI20230207BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 33/241 20190101ALI20230207BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230207BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 31/5365 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20230207BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230207BHJP
   G01N 33/566 20060101ALI20230207BHJP
   G01N 33/534 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A61K45/00
A61K47/64
A61K47/60
A61P35/00
A61K51/06 100
A61K51/08 100
A61K51/06 200
A61K51/08 200
A61K33/18
A61K33/244
A61K33/245
A61K33/34
A61K33/241
A61K33/24
A61K38/06
A61K31/5365
A61K38/05
A61K31/407
A61K31/7036
A61K38/12
A61K31/5517
A61K31/4745
A61K31/405
G01N33/574 A
G01N33/566
G01N33/534
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020508081
(86)(22)【出願日】2018-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018060474
(87)【国際公開番号】W WO2018197490
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】1706472.6
(32)【優先日】2017-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】598176569
【氏名又は名称】キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブリンブル,マーガレット
【審査官】中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-509562(JP,A)
【文献】特表2012-518647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00- 19/00
A61K 45/00
A61K 47/64
A61K 47/60
A61P 35/00
A61K 51/06
A61K 51/08
A61K 33/18
A61K 33/244
A61K 33/245
A61K 33/34
A61K 33/241
A61K 33/24
A61K 38/06
A61K 31/5365
A61K 38/05
A61K 31/407
A61K 31/7036
A61K 38/12
A61K 31/5517
A61K 31/4745
A61K 31/405
G01N 33/574
G01N 33/566
G01N 33/534
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
αvβ6インテグリンに選択的に結合するペプチドであって、
前記ペプチドのアミノ酸配列が、
N-[D-Asn]-AVPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号7);
N-[D-Asn]-KVPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号8);
N-[D-Asn]-K(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号8);
N-[D-Asn]-KVPNLRGDLQVLAQKVAR[D-Thr]-COOH(配列番号9);
N-[D-Asn]-K(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVAR[D-Thr]-COOH(配列番号9);および
N-[D-Asn]-AVPNLRGDLQVLAQKVAR[D-Thr]-COOH(配列番号10)
からなる群から選択される、
前記ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、Nアセチル化および/またはCアミド化されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
治療的部分、ポリマー、ポリペプチドおよび/または検出可能な部分に直接もしくはリンカーを介してコンジュゲートした請求項1または請求項2に記載のペプチドを含むコンジュゲート。
【請求項4】
前記治療的部分が、抗がん剤を含み、任意選択で、前記抗がん剤が、オーリスタチン、マイタンシノイド、チューブリシン、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、アルファ-アマニチン、ピロロベンゾジアゼピン、イリノテカンおよびインドールカルボキサミド、またはそのプロドラッグもしくは活性代謝物からなる群から選択され、そして、任意選択で、前記抗がん剤が、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、メルタンシン(DM1)、ラブタンシン(DM4)またはセンタナマイシンを含む、請求項3に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記治療的部分が、177Lu、90Y、211At、213Bi、212Pb、225Ac、223Ra、44Sc、67Ga、131I、188Re、186Reおよび67Cuからなる群から選択される放射性同位元素を含む、請求項3又は請求項4のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記検出可能な部分が、核磁気共鳴映像法(MRI)、磁気共鳴分光法(MRS)、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射断層撮影法(PET)または光学的画像化によって検出可能であり、そして、任意選択で、前記検出可能な部分が、フルオロフォア、放射性核種またはスピン標識を含み、そして、任意選択で、前記検出可能な部分が、68Ga、IRDye(登録商標)700、IRDye(登録商標)800、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、89Zr、124I、64Cu、62Cu、18F、86Y、111In、131I、123I、67Gaまたは99mTcを含む、請求項3-5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記検出可能な部分が、キレート化剤を含むリンカーを介してペプチドとカップリングされた111Inを含み、任意選択で前記キレート化剤が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン(tetrazacyclododecane)-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含み、ならびに/あるいは、前記ポリマーが、1つもしくは複数のエチレングリコール基または1つもしくは複数のポリエチレングリコール(PEG)鎖を含み、そして、任意選択で、前記1つまたは複数のPEG鎖が、長さ1~50個のエチレングリコール単位である、請求項3-6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載のペプチドまたは請求項3-7のいずれか一項に記載のコンジュゲート;および
薬学的に許容可能な担体
を含む医薬組成物。
【請求項9】
医学に使用するための、請求項1または請求項2に記載のペプチド、請求項3-7のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
哺乳動物対象においてαvβ6発現腫瘍の処置の方法に使用するための、請求項1または請求項2に記載のペプチド、請求項3-7のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記腫瘍が、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である、請求項10に記載の使用のためのペプチド、コンジュゲートまたは組成物。
【請求項12】
哺乳動物対象におけるがんの診断のin vivo方法に使用するための請求項6または請求項7のいずれかに記載のコンジュゲートであって、前記方法が、前記対象にコンジュゲートを投与する工程と、前記検出可能な部分を検出し、それにより前記対象におけるαvβ6発現腫瘍の存在を診断する工程とを含む、前記コンジュゲート
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年4月24日出願のGB1706472.6の優先権を主張し、その内容および要素をあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込む。
本発明は、ペプチドバリアント、コンジュゲートおよびその医薬組成物、ならびにがんの処置および腫瘍の画像化を含めた医学におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インテグリンは、細胞接着、浸潤、増殖およびアポトーシスを含めたいくつかの鍵となる工程に関係する細胞表面受容体の大きなファミリーを包含するαβヘテロ二量体分子である[23]。ヒトでは8クラス24個のメンバーが存在し、高度に保存されているトリペプチドモチーフArg-Gly-Aspによってフィブロネクチンおよびビトロネクチンなどの細胞外リガンドに存在する基質を認識する[27]。インテグリンαvβ6は、口腔、頭頸部、膵、卵巣および乳がんなど数多くのがんで高レベルに発現され[4~9]、インテグリンαvβ6の発現レベルの増大は、腫瘍の進行と相関していた。インテグリンαvβ6は、線維症[11]および口蹄疫を含めた一部のウイルス感染症も促進し得る[28]。したがって、インテグリンαvβ6は、腫瘍学ならびにそれを超えた分野における画像化、診断および治療の主要な標的である[29~30]。
【0003】
A20FMDV2(HN-NAVPNLRGDLQVLAQKVAR20T-OH)(配列番号1)は、口蹄疫ウイルスのウイルスタンパク質から得られる20残基の直鎖ペプチドである[1~3、10]。このペプチドは、がん細胞において高度に発現されるインテグリン膜貫通型受容体であるαvβ6に対して高い選択性および親和性を呈すると示されている[4~9]。A20FMDV2は、RGDLQV13L(配列番号2)断片のRGDトリペプチドを介してαvβ6に結合し、RGDLQVL断片に存在する2つのロイシン残基は、疎水的相互作用によって受容体へのペプチドの結合を増強し[10]、その結合はC末端ペプチドモチーフ10Leu~20Thrから生成されるαらせんによっても安定化される[1]。加えて、放射性インジウム(111In)とカップリングした場合、A20FMDV2は、肺線維症においてαvβ6に対する有効な造影剤である[24]。[18F]フルオロベンゾイル標識ペプチドである[18F]FBA-A20FMDV2は、ヒト臨床試験におけるPET放射性トレーサーとしての使用が見出されている[25]。
【0004】
A20FMDV2は、4-[18F]フルオロ安息香酸(FBA)(または誘導体)にコンジュゲートすることによって[32~34]、およびDOTAなどの金属キレート化剤を組み込んだA20FMDV2ペプチドを使用する64Cu標識によって[35~37]画像診断用途の陽電子放射断層撮影法(PET)に使用されてきた[31]。近年、[18F]-FBA-A20FMDV2は、特発性肺線維症の処置レジメ[24]において臨床の場へと歩みを進め[25]、一方で111In標識A20FMDV2誘導体は、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)を使用するαvβ6インテグリンを発現する乳がんの画像化で、特異性が高いことが示された[9]。これらの研究は、αvβ6インテグリンを標的する進行中の診断用ツールに対するA20FMDV2の重要性を概説し、αvβ6を有効な治療標的として支持している。
【0005】
WO2007/039723は、αvβ6ペプチドリガンド、その機能的バリアントおよびそれをコードしている核酸ならびにがんを含めたαvβ6媒介性疾患の処置および画像化におけるそれらの使用について記述している。
【0006】
残念なことに、マウス血漿研究において決定された通り、A20FMDV2の治療的価値は、エンドおよびエキソペプチダーゼなどの血清プロテアーゼに対する高い感受性に一部起因する短い血中半減期により限定されている[13]。
【0007】
感受性のペプチド(およびタンパク質)の半減期を改善するための報告されている一方法は、ポリエチレングリコール(PEG)の導入である[38]。Hausnerらは、N末端における1つもしくは2つのPEG28部分[13]またはNおよびC終点両方における単一PEG28[39]の配置によって4-[18F]-FBA-A20FMDV2のPEG化バージョンを調製し、2末端PEG化A20FMDV2誘導体である[18F]-FBA-PEG28-A20FMDV2-PEG28が、最も好ましい薬物動態を呈すると結論付けた。
【0008】
直鎖ペプチドのヘッドトゥテール環化も、エキソペプチダーゼによる分解を最小化する確立された方法であるが[40];重合またはラセミ化など望ましくない副反応を防止するために慎重な実験が必要とされる。
【0009】
しかしながら、強力な結合活性、細胞取り込みおよび延長された血漿内半減期を持つ腫瘍標的化ペプチドに対する必要性は満たされていない。本発明は、これらのおよび他の必要性を解決する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
概して、本発明は、細胞研究においてA20FMDV2ペプチドと比較して増強されたαvβ6結合活性、一部の場合において(in some cases)、増強された細胞取り込みを呈することが予想外に判明したA20FMDV2ペプチドバリアントに関する。特に、本明細書のさらなる詳細に記載の通り、そのようなペプチドバリアントは、それぞれのペプチドの111In標識バージョンによって評価すると、対照A20FMDV2ペプチドと比較してαvβ6発現異種移植腫瘍への増強された体内分布を呈する(αvβ6発現を欠いている対照異種移植腫瘍と比較して)ことが判明した。したがって、そのようなペプチドバリアントは、腫瘍標的化化学療法送達薬剤および腫瘍造影剤としての潜在性が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、第1の側面において、本発明は、αvβ6インテグリンに選択的に結合し、モチーフXRGDLX(配列番号3)を含むアミノ酸配列を有するペプチドを提供し、式中、Xは、任意のD-アミノ酸であり、Bは、任意のnアミノ酸の配列であり、前記アミノ酸は、天然でも非天然でもよく、D-またはL-でもよく、同一でも異なっていてもよく、nは、1~10の数であり、XおよびXは、任意のアミノ酸からそれぞれ独立に選択され、Xは、LeuまたはIleであり、Zは、任意のmアミノ酸の配列であり、前記アミノ酸は、天然でも非天然でもよく、D-またはL-でもよく、同一でも異なっていてもよく、mは、1~10の数であり、Xは任意のL-またはD-アミノ酸である。
【0012】
一部の態様において、ペプチドの長さは、少なくとも17、18、19または20アミノ酸である。一部の態様において、ペプチドの長さは、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21以下または20アミノ酸以下である。特定の態様において、ペプチドの長さは、17~25アミノ酸、例えば19~21アミノ酸である。特定の態様において、ペプチドの長さは、20アミノ酸である。
【0013】
一部の態様において、Xは、D-Asnである。本明細書の表2および表3ならびに
図3および図4に示されるように、XがD-Asnである典型的なペプチド(ペプチド19、21、25および26)は、優れた相対的活性(表2)、αvβ6発現腫瘍への高い体内分布(表3および図4)および優れた血漿安定性(図3)を呈した。
【0014】
一部の場合において、Xは、L-ThrまたはD-Thrである。
一部の場合において、Xは、L-Leuである。
一部の場合において、nは、5である。一部の場合において、mは、6である。特定の場合において、nは、5であり、mは、6である。
【0015】
一部の場合において、Bは、AVPNL(配列番号4)、KVPNL(配列番号5)またはK(ビオチン)VPNLである。Bが、K(ビオチン)VPNLである場合、ビオチンは、リジン側鎖に結合しているD-ビオチンでもよい。
【0016】
一部の場合において、Zは、AQKVAR(配列番号6)である。
特定の場合において、ペプチドのアミノ酸配列は、
N-[D-Asn]-AVPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号7);
N-[D-Asn]-KVPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号8);
N-[D-Asn]-K(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号8);
N-[D-Asn]-KVPNLRGDLQVLAQKVAR[D-Thr]-COOH(配列番号9);
N-[D-Asn]-K(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVAR[D-Thr]-COOH(配列番号9);および
N-[D-Asn]-AVPNLRGDLQVLAQKVAR[D-Thr]-COOH(配列番号10)
からなる群から選択される。
【0017】
特に、ペプチドは、
N-[D-Asn]-AVPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号7)あってもよい。
【0018】
特定の場合において、ペプチドは、Nおよび/またはC末端で修飾されてもよい。例えば、ペプチドは、Nアセチル化および/またはCアミド化されてもよい。
第2の側面において、本発明は、治療的部分、ポリマー、ポリペプチドおよび/または検出可能な部分に直接もしくはリンカーを介してコンジュゲートされた本発明の第1の側面のペプチドを含むコンジュゲートを提供する。
【0019】
一部の態様において、ペプチドは、抗がん剤を含む治療的部分にコンジュゲートされる。
一部の態様において、抗がん剤は、オーリスタチン、マイタンシノイド、チューブリシン、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、アルファ-アマニチン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、イリノテカンおよびインドールカルボキサミド、またはその類似体、誘導体、プロドラッグもしくは活性代謝物からなる群から選択される。特に、抗がん剤は、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、メルタンシン(DM1)、ラブタンシン(DM4)またはセンタナマイシンを含んでもよい。
【0020】
一部の場合において、治療的部分は、治療的同位元素を含んでもよい。例えば、治療的部分は、177Lu、90Y、211At、213Bi、212Pb、225Ac、22
Ra、44Sc、67Ga、131I、188Re、186Reおよび67Cuからなる群から選択される同位元素を含んでもよい。
【0021】
一部の場合において、ペプチドは、核磁気共鳴映像法(MRI)、磁気共鳴分光法(MRS)、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射断層撮影法(PET)または光学的画像化によって検出可能である検出可能な部分にコンジュゲートされる。特に、検出可能な部分は、フルオロフォア、放射性核種またはスピン標識を含んでもよい。特定の場合において、検出可能な部分は、68Ga、IRDye(登録商標)700、IRDye(登録商標)800、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、89Zr、124I、64Cu、62Cu、18F、86Y、111In、131I、123I、67Gaまたは99mTcを含んでもよい。
【0022】
特に、検出可能な部分は、キレートを含むリンカーを介してペプチドとカップリングされた111Inを含んでもよい。特に、キレートは、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン(tetrazacyclododecane)-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)からなる群から選択されてもよい。キレート(例えばDTPA、DOTAまたはEDTA)は、ペプチドのN末端またはC末端に連結されてもよい(例えば、キレートは、N末端でD-Asnに連結されてもよい)。
【0023】
一部の場合において、ペプチドは、血漿内半減期および/または体内分布を増強するポリマーにコンジュゲートされる。特に、ペプチドは、1つまたは複数(例えば、N末端およびC末端のそれぞれなどで1つまたは2つ)のポリエチレングリコール(PEG)基にコンジュゲートされてもよい。特定の場合において、ペプチドは、-(OCHCH-を含む部分にコンジュゲートされてもよく、式中、n≧1である。特に、nは、1~100、1~50、10~40または20~30であってもよい。例えば、nは、1または2であってもよい。特定の場合において、ペプチドは、N末端またはC末端に存在する2つのエチレングリコール基を有してもよい。
【0024】
第3の側面において、本発明は、
本発明の第1の側面のペプチドまたは本発明の第2の側面のコンジュゲート;および
薬学的に許容可能な担体
を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
第4の側面において、本発明は、医学に使用するための、本発明の第1の側面のペプチド、本発明の第2の側面のコンジュゲートまたは本発明の第3の側面の医薬組成物を提供する。
【0026】
第5の側面において、本発明は、哺乳動物対象におけるαvβ6発現腫瘍の処置の方法に使用するための本発明の第1の側面のペプチド、本発明の第2の側面のコンジュゲートまたは本発明の第3の側面の医薬組成物を提供する。一部の態様において、腫瘍は、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である。特定の場合において、コンジュゲートまたはその医薬組成物は、前記抗がん剤を1つまたは複数含むコンジュゲートである。特定の場合において、処置の方法は、哺乳動物対象の腫瘍がαvβ6を発現しているかどうか決定する工程を含んでもよく、腫瘍が、αvβ6を発現していると決定された場合、前記処置が投与される。
【0027】
第6の側面において、本発明は、αvβ6発現腫瘍を有する哺乳動物対象を処置する方法を提供し、本方法は、本発明の第1の側面のペプチド、本発明の第2の側面のコンジュゲートまたは本発明の第3の側面の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に
投与する工程を含む。一部の態様において、腫瘍は、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である。特定の場合において、コンジュゲートまたはその医薬組成物は、前記抗がん剤を1つまたは複数含むコンジュゲートである。特定の場合において、処置の方法は、哺乳動物対象の腫瘍がαvβ6を発現しているかどうか決定する工程を含んでもよく、腫瘍が、αvβ6を発現していると決定された場合、前記処置が投与される。
【0028】
第7の側面において、本発明は、哺乳動物対象のαvβ6発現腫瘍を処置するための医薬の調製における本発明の第1の側面のペプチド、本発明の第2の側面のコンジュゲートまたは本発明の第3の側面の医薬組成物の使用を提供する。一部の態様において、腫瘍は、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である。特定の場合において、コンジュゲートまたはその医薬組成物は、前記抗がん剤を1つまたは複数含むコンジュゲートである。特定の場合において、処置の方法は、哺乳動物対象の腫瘍がαvβ6を発現しているかどうか決定する工程を含んでもよく、腫瘍が、αvβ6を発現していると決定された場合、前記処置が投与される。
【0029】
本発明の第4、第5、第6または第7の側面によると、ペプチド、コンジュゲートまたは医薬組成物は、投与されてもよくまたは別の抗がん剤および/もしくは放射線療法もしくは手術と同時に投与するためのものであってもよい。特に、第2の化学療法薬(同時、逐次的、別々または並行的)および/もしくは放射線療法ならびに/または手術前もしくは手術後の併用療法が特に考えられる。どんな特定の理論に束縛されることを望むものでもないが、本発明者らは、本発明のαvβ6標的化ペプチドまたはコンジュゲートに基づく治療と1つまたは複数の受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の遮断とを組み合わせることにより、単独療法と比較して抗がん治療有効性を増強し得ると信じている。予備抗体研究は、αvβ6が、RTKシグナル伝達を調節し、さらに増強する可能性があることを示す。そのうえ、腫瘍モデルにおいて抗αvβ6抗体と組み合わせてRTK[例えば上皮成長因子受容体(EGFR)またはerbB-2(別名ヒト上皮成長因子受容体2またはHER2/neu)]を標的することにより、単独療法よりも治療が増強される。したがって、本発明のαvβ6標的化ペプチドまたはコンジュゲートに基づく治療は、特に、トラスツズマブ[ハーセプチン(登録商標)]、ゲフィチニブ[イレッサ(登録商標)]、エルロチニブ[タルセバ(登録商標)]、ラパチニブ[タイケルブ(登録商標)]、セツキシマブ[アービタックス(登録商標)]およびパニツムマブ[ベクティビックス(登録商標)]のうち1つまたは複数と組み合わせられてもよいことが本明細書において特に考えられる。
【0030】
第8の側面において、本発明は、腫瘍がある対象に本発明の第2の側面のコンジュゲート(前記検出可能な部分を含む前記コンジュゲート)またはその組成物を投与する工程と、前記検出可能な部分を検出し、それにより前記腫瘍の画像を形成する工程とを含む、哺乳動物対象のαvβ6発現腫瘍を画像化する方法を提供する。一般に、画像は、ディスプレイ(例えばデジタルディスプレイスクリーン)上に形成されることになるが、対象の身体上または内における直接画像化が、本明細書において特に考えられる。一部の態様において、腫瘍は、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である。
【0031】
第9の側面において、本発明は、哺乳動物対象においてがんを診断するin vivo方法に使用するための本発明の第2の側面のコンジュゲート(前記検出可能な部分を含む前記コンジュゲート)またはその組成物を提供し、その方法は、対象に前記コンジュゲートまたはその前記組成物を投与する工程と、前記検出可能な部分を検出し、それにより対象におけるαvβ6発現腫瘍の存在を診断する工程とを含む。一部の場合において、前記検出可能な部分の検出は、前記検出可能な部分の量、濃度、レベル、強度および/もしく
は場所を測定する工程と、測定値を関連付けまたは解釈して(参照レベル、バックグラウンドまたは対照と測定値を比較することによるなど)、測定値が対象および/もしくは対象の身体内の特定の場所におけるαvβ6発現腫瘍の存在を示すか否か決定する工程とを含む。一部の態様において、腫瘍は、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である。
【0032】
第10の側面において、本発明は、αvβ6発現腫瘍を有すると疑われる哺乳動物対象に本発明の第2の側面のコンジュゲート(前記検出可能な部分を含む前記コンジュゲート)またはその組成物を投与する工程と、前記検出可能な部分を検出し、それにより対象におけるαvβ6発現腫瘍の存在を診断する工程とを含む、がんを診断する方法を提供する。一部の場合において、前記検出可能な部分の検出は、前記検出可能な部分の量、濃度、レベル、強度および/もしくは場所を測定する工程と、測定値を関連付けまたは解釈して(参照レベル、バックグラウンドまたは対照と測定値を比較することによるなど)、測定値が対象および/もしくは対象の身体内の特定の場所におけるαvβ6発現腫瘍の存在を示すか否か決定する工程とを含む。一部の態様において、腫瘍は、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である。
【0033】
本発明によると、対象は、ヒト、コンパニオンアニマル(例えばイヌまたはネコ)、実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ブタまたはヒト以外の霊長類)、家畜または農用動物(例えばブタ、ウシ、ウマまたはヒツジ)であってもよい。好ましくは、対象はヒトである。対象は、特定の場合において、αvβ6発現腫瘍を患っている、それと診断されたまたは有すると疑われたヒトでもよい。
【0034】
本発明は、記述されている側面および好ましい特色の組合せが明らかに容認できないまたは明白に避けるべきと述べられている場合を除き、その組合せを含む。本発明のこれらのおよびさらなる側面および態様は、以下のさらなる詳細ならびに付随する例および図を参照して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】ペプチド2~15の合成に使用される非タンパク新生アミノ酸の構造を示す図である。
図2A】in vitroにおけるペプチド22~ペプチド25試験の比較を示す図である。全てのA20FMDV2バリアントが、特異性、活性および内部移行に関してスクリーニングされた。A)特異性は、1000nMにおいてA375Puroへの結合に存在せず(上のヒストグラム)、A375Pβ6への結合にのみ存在し(下のヒストグラム)、ヒストグラムの推移は、Ai)ペプチド22(左手のヒストグラム)およびAii)ペプチド25(右手のヒストグラム)によって示される同じ100nM濃度でのフローサイトメトリーによる平均蛍光強度(MFI)の幾何平均(GM)を示す。B)親和性が、フローサイトメトリーにより0.1、1、10、100および1000nMでA375Pβ6に結合するレベルを測定することによって決定された。結果は、商業的に供給されている対照ビオチン化A20FMDV2と比較してペプチドの結合を示す。一回の代表的な実験からのデータは、Bii)ペプチド25(右手のグラフ)が、Bi)ペプチド22(左手のグラフ)と比較して同程度の濃度でA375Pβ6によりよく結合することを示す。C)内部移行は、Imagestream(登録商標)を使用してA375Pβ6細胞によるαvβ6依存的内部移行を示す。データは、0分および45分後の細胞の表面におけるペプチドを示す(各パネルにおいて緑色、右側の画像)、Ci)ペプチド22およびCii)ペプチド25は内部に取り込まれ、その内部移行の速度は同程度である(画像の下のグラフを参照のこと;ペプチド22左手のグラフ、ペプチド25右手のグラフ)。
図2B】in vitroにおけるペプチド22~ペプチド25試験の比較を示す図である。全てのA20FMDV2バリアントが、特異性、活性および内部移行に関してスクリーニングされた。A)特異性は、1000nMにおいてA375Puroへの結合に存在せず(上のヒストグラム)、A375Pβ6への結合にのみ存在し(下のヒストグラム)、ヒストグラムの推移は、Ai)ペプチド22(左手のヒストグラム)およびAii)ペプチド25(右手のヒストグラム)によって示される同じ100nM濃度でのフローサイトメトリーによる平均蛍光強度(MFI)の幾何平均(GM)を示す。B)親和性が、フローサイトメトリーにより0.1、1、10、100および1000nMでA375Pβ6に結合するレベルを測定することによって決定された。結果は、商業的に供給されている対照ビオチン化A20FMDV2と比較してペプチドの結合を示す。一回の代表的な実験からのデータは、Bii)ペプチド25(右手のグラフ)が、Bi)ペプチド22(左手のグラフ)と比較して同程度の濃度でA375Pβ6によりよく結合することを示す。C)内部移行は、Imagestream(登録商標)を使用してA375Pβ6細胞によるαvβ6依存的内部移行を示す。データは、0分および45分後の細胞の表面におけるペプチドを示す(各パネルにおいて緑色、右側の画像)、Ci)ペプチド22およびCii)ペプチド25は内部に取り込まれ、その内部移行の速度は同程度である(画像の下のグラフを参照のこと;ペプチド22左手のグラフ、ペプチド25右手のグラフ)。
図2C】in vitroにおけるペプチド22~ペプチド25試験の比較を示す図である。全てのA20FMDV2バリアントが、特異性、活性および内部移行に関してスクリーニングされた。A)特異性は、1000nMにおいてA375Puroへの結合に存在せず(上のヒストグラム)、A375Pβ6への結合にのみ存在し(下のヒストグラム)、ヒストグラムの推移は、Ai)ペプチド22(左手のヒストグラム)およびAii)ペプチド25(右手のヒストグラム)によって示される同じ100nM濃度でのフローサイトメトリーによる平均蛍光強度(MFI)の幾何平均(GM)を示す。B)親和性が、フローサイトメトリーにより0.1、1、10、100および1000nMでA375Pβ6に結合するレベルを測定することによって決定された。結果は、商業的に供給されている対照ビオチン化A20FMDV2と比較してペプチドの結合を示す。一回の代表的な実験からのデータは、Bii)ペプチド25(右手のグラフ)が、Bi)ペプチド22(左手のグラフ)と比較して同程度の濃度でA375Pβ6によりよく結合することを示す。C)内部移行は、Imagestream(登録商標)を使用してA375Pβ6細胞によるαvβ6依存的内部移行を示す。データは、0分および45分後の細胞の表面におけるペプチドを示す(各パネルにおいて緑色、右側の画像)、Ci)ペプチド22およびCii)ペプチド25は内部に取り込まれ、その内部移行の速度は同程度である(画像の下のグラフを参照のこと;ペプチド22左手のグラフ、ペプチド25右手のグラフ)。
図3】24時間後のヒト血漿(n=2)およびPBS(対照)中のペプチドの安定性を示す図である。血漿中で50%未満安定であるペプチド23および24と比較して、ペプチド22、25および26は、75%以上安定である。ペプチドレベルは、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)を使用して定量化された。24時間後にヒト血漿(標識「血液」、各ペプチドについて右手のバー)およびPBS(各ペプチドについて左手のバー)中のペプチドの安定性を決定した。この実験において、PBSは対照として使用された。
図4】陽性αvβ6発現腫瘍および陰性対照腫瘍(A375Puro)における111In-DTPAカップリングしたペプチドの取り込みを示す図である。ペプチドは、陰性腫瘍(赤色;各ペプチドについて左手のバー)と比較してαvβ6発現腫瘍(青色;各ペプチドについて右手のバー)に特異的に取り入れられる。相対的取り込みは、A375Puro:A375β6比によって示される。データは、25が、陰性腫瘍と比較してαvβ6発現腫瘍に対してほぼ10倍より特異的であることを示す。データは、ペプチド22~26それぞれについて組織1グラム当たりの平均注入用量(ID)±平均の標準誤差(SEM)としてプロットされる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明について記述するにあたり、以下の用語を利用することとし、以下に示す通り定義されるものとする。
ペプチドバリアントおよび非天然アミノ酸
本明細書において定義される通り、本発明のペプチドは、親A20FMDV2ペプチドのバリアントであり、ペプチドが請求項に定義される通りであれば、1つまたは複数の非天然のアミノ酸を含んでもよい。適切な非天然のアミノ酸には、例えば、D-アミノ酸、オルニチン、ジアミノ酪酸オルニチン、ノルロイシンオルニチン、ピリジルアラニン(pyriylalanine)、チエニルアラニン、ナフチルアラニン、フェニルグリシン、アルファお
よびアルファ二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、トリフルオロチロシン、p-Cl-フェニルアラニン、p-Br-フェニルアラニン、p-I-フェニルアラニンなどの天然のアミノ酸のハロゲン化誘導体、L-アリルグリシン、b-アラニン、L-a-アミノ酪酸、L-g-アミノ酪酸、L-a-アミノイソ酪酸、L-e-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、L-メチオニンスルホン、L-ノルロイシン、L-ノルバリン、p-ニトロ-L-フェニルアラニン、L-ヒドロキシプロリン、L-チオプロリン、1-メチル-Phe、ペンタメチル-Pheなどフェニルアラニンのメチル誘導体、L-Phe(4-アミノ)、L-Tyr(メチル)、L-Phe(4-イソプロピル)、L-Tic(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボキシル酸)、L-ジアミノプロピオン酸ならびにL-Phe(4-ベンジル)がある。ペプチドは、さらに修飾されてもよい。例えば、1つまたは複数のアミド結合が、エステルまたはアルキル骨格結合によって置き換えられてもよい。NもしくはCアルキル置換基、側鎖修飾またはジスルフィド架橋、側鎖アミドもしくはエステル結合などの制約があってもよい。
【0037】
本発明のペプチドは、修飾ペプチドおよび合成ペプチド類似体の両方を含んでもよい。例えば、ペプチドを修飾して、製剤および貯蔵特性を改善し、または非ペプチド性構造を組み込むことによって、不安定なペプチド結合を保護してもよい。
【0038】
本発明のペプチドは、N末端および/またはC末端修飾を含んでもよい。例えば、N末端アセチル化および/またはC末端アミド化。
本発明のペプチドは、当業者に公知の方法を使用して調製されてもよい。例えば、ペプチドは、化学合成(例えば固相技術および自動化ペプチド合成装置)によって、または組換え手段(本明細書に記述される核酸などを使用する)によって産生されてもよい。例えば、ペプチドは、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学を使用する自動化された複数ペプチド合成装置(Abimed AMS 422)で固相戦略を使用して合成されてもよい。ペプチドは、次いで逆相-HPLCによって精製され、凍結乾燥され得る。本発明のペプチドを作る特定の合成方法は、以下の実施例に記述される。
【0039】
一部の場合において、XおよびXは、らせん促進残基である。一部の場合において、Zアミノ酸は、らせん促進残基である。本明細書で使用される、らせん促進残基は、Glu、Ala、Leu、Met、Gln、Lys、Arg、Val、Ile、Trp、PheおよびAspからなる群からそれぞれ独立に選択され得る。らせん促進残基は、1つまたは複数の人工または修飾アミノ酸を含んでもよい。
検出可能な部分
本明細書で使用される、本発明のペプチドは、検出可能な部分にコンジュゲートされてもよい。用語「検出可能な部分」は、患者に本発明のコンジュゲートを投与した後に標的部位に位置する場合に、身体の外側および標的が位置する部位から一般に非侵襲的に検出され得る部分に関する。したがって、本発明のこの態様のコンジュゲートは、画像化および診断に有用である。容易に検出可能な部分は、核磁気共鳴映像法(MRI)、磁気共鳴分光法(MRS)、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)および陽電子放射
断層撮影法(PET)などの画像化技術ならびに光学的画像化によって検出可能な実体である。好ましくは、画像化部分は、in vitroおよびin vivo条件下でその特性を保持する安定かつ非毒性な実体である。そのような部分の例には、それだけには限らないが放射性部分、例えば放射性同位元素がある。適切な放射性原子には、シンチグラフィー研究用のインジウム111、テクネチウム99mまたはヨウ素123がある。他の容易に検出可能な部分には、例えば、ヨウ素123、ヨウ素131、インジウム111、フッ素18、炭素13、窒素15、酸素17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄などMRI用のスピン標識ならびにCy5.5およびカンタムドットを含む光学的部分がある。検出可能な部分のさらなる例には、68Ga、IRDye(登録商標)700、IRDye(登録商標)800、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、89Zr、124I、64Cu、62Cu、18F、86Y、111In、131I、123I、67Gaおよび99mTcがある。
【0040】
用語「治療的部分」は、有益な、予防的および/または治療的特性を有する部分を包含する。
細胞傷害性化学療法薬は、当業者に周知であり:メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)およびクロラムブシルなどの窒素マスタードを含めたアルキル化剤;10個のエチレンイミンおよびヘキサメチルメラミンなどのメチルメラミン、チオテパ;ブスルファンなどのアルキルスルホナート;カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNLJ)、セムスチン(メチル-CCN-U)およびストレプトゾエイン(streptozoein)(ストレプトゾトシン)などのニトロソ尿素;ならびにダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド)などのトリアゼン;メトトレキサート(アメトプテリン)などの葉酸類似体を含めた代謝拮抗物質;フルオロウラシル(5-フルオロウラシル;5-FU)、フロキシウリジン(フルオロデオキシウリジン;FUdR)およびシタラビン(シトシンアラビノシド)などのピリミジン類似体;ならびにプリン類似体およびメルカプトプリン(6-メルカプトプリン;6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン;TG)およびペントスタチン(2’-デオキシコホルマイシン)などの関連阻害剤などの抗がん剤がある。天然物には、ビンブラスチン(VLB)およびビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;エトポシドおよびテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン(マイトマイシンQなどの抗生物質;L-アスパラギナーゼなどの酵素;ならびにインターフェロンアルフェノーム(alphenomes)などの生物学的応答調節物質がある。その他の薬剤には、シスプラチン(cis-DDP)およびカルボプラチンなどのプラチナ配位錯体;ミトキサントロンおよびアントラサイクリン(antbracycline)などのアントラセンジオン;水酸化尿
素などの置換尿素;プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;ならびにミトタン(o、p’-DDD)およびアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;タキソールおよび類似体/誘導体;ならびにフルタミドおよびタモキシフェンなどのホルモンアゴニスト/アンタゴニストがある。
【0041】
特に、本発明のペプチドは、オーリスタチン、マイタンシノイド、チューブリシン、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、アルファ-アマニチン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、イリノテカンおよびインドールカルボキサミド、またはその類似体、誘導体、プロドラッグもしくは活性代謝物から選択される抗がん剤にコンジュゲートされてもよい。特定の例は、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、メルタンシン(DM1)、ラブタンシン(DM4)およびセンタナマイシンを含む。
【0042】
特定の場合において、抗がん剤は、細胞死をもたらす任意の部分を含む細胞傷害性ペプチドまたはポリペプチド部分であってもよい。
細胞傷害性ペプチドおよびポリペプチド部分は、当業者に周知であり、例えば、リシン、アブリン、シュードモナス外毒素、組織因子、等がある。
【0043】
細胞毒性物質としてのリシンの使用は、Burrows & Thorpe、P.N.A.S.USA 90:8996~9000頁、1993年に記述されており、参照により本明細書に組み込む、腫瘍の限局性血液凝固および梗塞をもたらす組織因子の使用は、Ranら、Cancer Res.58:4646~4653頁、1998年およびHuangら、Science 275:25 547~550頁、1997年に記述されている。Tsaiら、Dis.Colon Rectum 38:1067~1074頁、1995年は、モノクローナル抗体にコンジュゲートされたアブリンA鎖について記述しており、参照により本明細書に組み込む。他のリボソーム不活性化タンパク質が、WO96/06641において細胞毒性物質として記述されている。シュードモナス外毒素が、細胞傷害性ポリペプチド部分として使用されてもよい(例えば、Aielloら、P.N.A.S.USA 92:10457~10461頁、1995年を参照のこと)。
【0044】
特定の放射性原子も、充分な用量で送達される場合、細胞傷害性であり得る。したがって、抗がん剤は、使用時に、細胞傷害性となるのに充分な量の放射活性を標的部位に送達する放射性原子を含んでもよい。適切な放射性原子には、リン32、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム111、レニウム186、レニウム188、アスタチン211もしくはイットリウム90または隣接する細胞、細胞小器官もしくは核酸を破壊するのに十分なエネルギーを放射する他の任意の同位元素がある。特に、治療的放射性同位元素は、177Lu、90Y、211At、213Bi、212Pb、225Ac、223Ra、44Sc、67Ga、131I、188Re、186Reおよび67Cuからなる群から選択され得る。好ましくは、本発明の化合物中の同位元素および放射性原子の密度は、4000cGyより高く、より好ましくは少なくとも6000、8000または10000cGyのような用量であり、その化合物は標的部位、好ましくは標的部位にある細胞およびその細胞の細胞小器官、特に核へ送達される。放射性原子は、公知の方法で結合部分に結合されてもよい。例えば、EDTA、DTPA、DOTAまたは別のキレート化剤が本発明のペプチドに結合され、上記の通り111In、68Ga、90Yを含めた金属放射性核種または放射性原子を結合するために使用されてもよい。チロシン残基が、本発明のペプチドに導入されてもよく、125Iまたは131Iで標識され得る。
【0045】
治療的薬剤にペプチドをコンジュゲートする方法は、当業者に周知である。これらは、リンカー、例えば切断可能なリンカーの使用を含み得る。
用語「薬学的に許容可能な担体」は、ペプチドまたはそのコンジュゲートと適合し、レシピエントに対して有害でない成分を一般に含む。一般に、担体は、無菌であり発熱物質を含まないことになる水または生理食塩水になるが;他の許容できる担体が使用されてもよい。一般に、本発明の医薬組成物または製剤は、非経口投与用、より具体的には静脈内投与用である。
【0046】
当業技術者に公知であろう通り、上で定義した本発明の医薬または医薬組成物は、他の医薬も投与される患者に有用に投与され得る。例えば、がんの場合、本発明の医薬または医薬組成物は、他の抗腫瘍剤の投与前、後もしくは最中、例えば化学療法の前、後もしくは最中に患者に投与されてもよい。化学療法後のペプチドによる処置は、腫瘍の再発または転移を減少もしくは防止するのに特に有用であり得る。例えば、抗腫瘍剤が、本発明のペプチドに直接または間接的に共有結合的に連結され得る。
【0047】
αvβ6発現の決定
当業者は、サンプル(腫瘍サンプルなど)がインテグリンαvβ6を発現するかどうか決定する数多くの技術を承知していよう。特定の態様において、処置されるべき対象は、
インテグリンαvβ6を発現する細胞を1つまたは複数有する腫瘍を有してもよい。特定の場合において、腫瘍がインテグリンαvβ6を発現する(すなわちαvβ6陽性がんである)という所見は、前もって実施されてもよく、またはがんの型から推測されてもよい。例えば、いくつかの腫瘍型は、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍を含め、インテグリンαvβ6を発現することが公知である。どんな特定の理論に束縛されることを望むものでもないが、本発明者らは、胃腸(GI)管のがんおよび多くの上皮組織から発達する癌腫が、本発明のペプチドまたはコンジュゲートを使用するαvβ6標的化治療から恩恵を受け得ると信じている。さらなる研究努力によってαvβ6を発現すると判明したがんの範囲が拡大するにつれて、その結果、本発明のペプチドまたはコンジュゲートを使用するαvβ6標的化治療から治療的恩恵を呈し得るがんの範囲は広がると期待される。
【0048】
さらにまたは別法として、特定の場合において、処置は、腫瘍がインテグリンαvβ6を発現するかどうか決定する活性工程を含んでもよい。そのような工程を、例えば、本発明のαvβ6標的化ペプチドまたはコンジュゲートによる処置を開始する前に実施して、本発明のαvβ6標的化ペプチドまたはコンジュゲートを使用する治療に対する対象の適合見込みを予測してもよい。αvβ6発現の決定は、免疫組織化学を使用する腫瘍サンプルにおけるタンパク質発現および/もしくはレベルの測定、ELISAもしくはウェスタンブロッティングによる細胞溶解物中のタンパク質レベルの測定、ならびに/またはαvβ6もしくはその断片もしくはサブユニットに特異的に結合できる結合剤の使用を含んでもよい。
【0049】
特定の態様において、対象がαvβ6陽性がんを有するかどうかの決定は、がん、血液中を循環しているがん細胞のサンプル、および/または血液もしくは血漿中を循環している腫瘍DNA(ctDNA)から得られる細胞のサンプルから抽出される核酸で実行されてもよい。
【0050】
特定の場合において、αvβ6の発現の決定は、がん細胞のサンプルからRNAを抽出する工程と、リアルタイムPCRおよび/またはαvβ6もしくはその断片をコードしているRNAにハイブリダイズすることができるプローブを使用することによって発現を測定する工程とを含む。αvβ6インテグリンの存在または量は、抗体または本発明のペプチドもしくはコンジュゲートなど、αvβ6もしくはその断片に特異的に結合する能力がある結合剤を使用して直接決定されてもよい。結合剤は、標識されているもしくは例えばELISA型アッセイにおいて検出可能な結果を生じることができる二次抗体を例えば使用して、1つまたは複数のさらなる種との反応後に検出され得るまたは検出でき得るように標識されてもよい。
【0051】
サンプル
本明細書で使用される「試験サンプル」は、細胞または組織サンプル(例えば生検)、生体液、抽出物(例えば、対象から得られるタンパク質またはDNA抽出物)でもよい。特に、サンプルは、腫瘍サンプル、血液サンプル(血漿または血清サンプルを含む)、脳脊髄液サンプルまたは非腫瘍組織サンプルでもよい。サンプルは、対象から新たに得られたものでもよくまたは決定を行う前に処理および/もしくは貯蔵された(例えば凍結、固定または1つもしくは複数の精製、富化もしくは抽出工程に供された)ものでもよい。循環腫瘍DNAのために血液または血漿サンプルを富化する技術(例えば断片サイズに基づく)が、記述されている。さらに、ctDNA内のがん関連突然変異を同定する配列決定技術が、記述されている(例えばデジタルPCR、標的ディープシーケンシング、ネステッドリアルタイムPCR、等に基づく)。
【0052】
本明細書において使用される「および/または」は、他の有無にかかわらず2つの指示
された特色または成分のそれぞれについての特定の開示と見なすべきである。例えば「Aおよび/またはB」は、まさにそれぞれが本明細書において個別に提示されるかのように、(i)A、(ii)Bならびに(iii)AおよびBのそれぞれについての特定の開示と見なすべきである。
【0053】
特定の形態においてまたは開示されている機能を実行する手段に関して表される前述の説明もしくは以下の請求項もしくは添付の図面に開示されている特色、または開示されている結果を得る方法もしくは工程は、必要に応じて、別々にまたはそのような特色の任意の組合せで、その多様な形態の本発明を理解するために利用され得る。
【0054】
本発明は、上述した典型的な態様と組み合わせて記述されているが、本開示を与えられた場合、多くの同等の修飾および変形が、当業技術者にとって明らかであろう。したがって、上に記載の本発明の典型的な態様は、例示的なものであり、制限するものではないと見なされる。記述されている態様に対する様々な変更が、本発明の精神と範囲から逸脱することなく行われてもよい。いかなる誤解も避けるために、本明細書に提供されるあらゆる理論的な説明は、読者の理解を改善する目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的な説明のいずれによっても束縛されないことを望む。
【0055】
本明細書に使用されるどんな見出しも、単なる構成の目的であり、記述されている主題を限定するものと解釈されるべきでない。
この明細書の全体を通じて、続く請求項を含めて、文脈上別段の解釈を要する場合を除き、単語「含む(comprise)」および「含む(include)」、ならびに「含む(comprises)」、「含む(comprising)」および「含む(including)」などの変形は、述べられる整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を内包するが、他の任意の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を除外しないことを意味すると理解されよう。明細書および添付の請求項に使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈に別段の明確な指図がない限り複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして本明細書に表現されてもよい。そのような範囲が表現される場合、別の態様は、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、先の「約」の使用によって値が近似値として表現される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されよう。数値に関する用語「約」は、随意であり、例えば+/-10%を意味する。
【0056】
以下は、例として示されるものであり、本請求項の範囲に対する制限と解釈されるべきでない。
【実施例
【0057】
フローサイトメトリーによってαvβ6インテグリンに対する結合活性が測定可能になるように、全てのペプチドを、天然のAlaの代わりにLys(D-ビオチン)残基を組み込んで合成した(すなわち、WO2007/039728に開示されている通り、A20FMDV2は2位にAlaを有する)。比較のために、自身でSPPS合成したペプチドを商業的に合成されたビオチン化A20FMDV2(下の表2においてビオチン化A20FMDV2-Aと呼ぶ)と比較した。活性研究後に、強力な結合活性を呈したビオチン化ペプチドを次いで選択し、金属キレート化剤ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)[17]を組み込んで、血漿安定性研究およびin vivo体内分布研究のための111Inのカップリングを容易にした。ビオチン化A20FMDV2、その非タンパク新生誘導体ならびにビオチン化およびDPTA組み込み類似体の合成、結合研究および血漿安定性について、以下で詳細に記述する。
【0058】
実験
全般的な情報
全ての試薬を試薬品質で購入し、それ以上精製することなく使用した。HPLC溶媒をHPLC品質で購入し、それ以上精製することなく使用した。FmocNH-L-Thr(Bu)-O-CH-phi-OCH-CH-COHを、PolyPeptide(Strasbourg、France)から購入した。O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)、Rinkアミド、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシ酢酸(HMP)、Boc無水物およびN,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を、GL Biochem(Shanghai、China)から購入した。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(AR品質)およびアセトニトリル(CHCN)(HPLC品質)を、Scharlau(Barcelona、Spain)から購入した。ジイソプロピルエチルアミン(PrNEt)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ピペリジン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、コリジン、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)、2-メルカプトエタノール、トリイソプロピルシラン(TIPS)および3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(DODT)を、Sigma-Aldrich(St Louis、MO)から購入した。2-ニトロベンゼンスルホニルクロリド(2-NBS-Cl)および硫酸ジメチル(DMS)を、AK Scientific(Union City、CA)から入手した。トリフルオロ酢酸(TFA)を、Oakwood Chemicals(River Edge City、CA)から購入した。アミノメチルポリスチレン樹脂およびDTPAを、公開されている手順にしたがって合成した[21、22]。以下の側鎖保護を持つFmoc-アミノ酸を、GL Biochemから購入した:Fmoc-Arg(Pbf)-OH(Pbf=2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)、Fmoc-Asn(Trt)-OH(Trt=トリフェニルメチル)、Fmoc-Asp(Bu)-OH(Bu=t-ブチル)、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(Bu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-D-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Orn(Boc)-OH、Fmoc-Dab(Boc)-OH、Fmoc-Dap(Boc)-OH、Fmoc-D-Thr(Bu)-OHおよびFmoc-D-Asn(Trt)-OH。
【0059】
エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ESI-MS)を、Hewlett Packard(Palo Alto、CA)1100MSD分光計に直列に接続したAgilent Technologies(Santa Clara、CA)1120 Compact LCで記録した。サンプルを、0.1%ギ酸/HOおよび0.1%ギ酸/CHCN(1:1、容積/容積)を使用して、ポジティブモードで、ESI供給源に0.2mL/分で直接フローインジェクションを使用して導入した。主要なおよび著しい断片が、形態x m/z(電荷に対する質量比)で提示された。分析RP-HPLCを、流速1mL/分でWaters XTerra(登録商標)C18カラム(5μm、4.6×150mm)を使用してUltimate 3000システムで実行した。0.1%
TFA/HO(溶媒A)および0.1% TFA/CHCN(溶媒B)の直線勾配を、210nmの検出で使用した。分取RP-HPLCを、流速10mL/分でWaters XTerra(登録商標)Prep MS C18カラム(10μm、19×300mm)を使用してWaters 2487二波長吸光度検出器を備えたWaters600システムで実行した。勾配システムを、溶出プロファイルおよび分析RP-HPLCクロマトグラムから得られるピークプロファイルにしたがって調整した。
【0060】
全般的なペプチド合成手順
固相ペプチド合成(0.1mmol規模)を、Fmoc化学戦略に基づいてアミノメチ
ルポリスチレン樹脂(0.8mmol/g)上で実行した。FmocNH-L-Thr(Bu)-O-CH-phi-OCH-CH-COHを、全般的な方法A(下記参照)を使用して樹脂に結合させ、Rinkアミドを、全般的な方法Bを使用して樹脂に結合させ、HMPを、全般的な方法Cを使用して樹脂にカップリングした[20]。Fmoc-D-Thr(Bu)-OHのカップリングを、全般的な方法Dを使用して達成した。所望のペプチド配列を、手作業でまたは全般的な方法Eを使用してTribute(商標)(Tucson、AZ)ペプチド合成装置で合成し、ペプチド結合N-メチル化を、全般的な方法Fを使用して実施し[19]、Nメチル化リジンへのFmoc-Gln(Trt)-OHのカップリングを、全般的な方法Gを使用して実施した。N末端アセチル化を、全般的な方法Hを使用して実施し、t-ブチル保護されたDTPAを、全般的な方法Iを使用してペプチドにカップリングした。D-ビオチンを、全般的な方法Jを使用してペプチドに結合させた。直鎖ペプチドを、全般的な方法Kを使用して樹脂から切断し、粗産物を、全般的な方法Lにしたがって精製した。
【0061】
全般的な方法A:アミノメチルポリスチレン樹脂へのFmocNH-L-Thr(Bu)-O-CH-phi-OCH-CH-COHの結合
アミノメチルポリスチレン樹脂(0.1mmol)をCHCl/DMF(1:1、容積/容積)中で20分間膨潤させ、溶媒を濾過によって除去した。樹脂に、10% DMF/CHCl(1mL、容積/容積)中のFmocNH-L-Thr(Bu)-O-CH-phi-OCH-CH-COH(2当量)溶液、その後DIC(2当量)を添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。溶液を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)、CHCl(3×5mL)で洗浄し、風乾して16を得た。陰性カイザー試験[41]は、完全な反応を示した。
【0062】
全般的な方法B:アミノメチルポリスチレン樹脂へのRinkアミドの結合
アミノメチルポリスチレン樹脂(0.1mmol)をCHCl/DMF(1:1、容積/容積)中で20分間膨潤させ、溶媒を濾過によって除去した。樹脂に、10% DMF/CHCl(1mL、容積/容積)中のRinkアミド(2当量)溶液、その後DIC(2当量)を添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。溶液を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)、CHCl(3×5mL)で洗浄し、風乾した。陰性カイザー試験は、完全な反応を示した。
【0063】
全般的な方法C:アミノメチルポリスチレン樹脂への4-(ヒドロキシメチル)フェノキシ酢酸(HMP)の結合(樹脂27の合成)
アミノメチルポリスチレン樹脂(0.1mmol)をCHCl/DMF(1:1、容積/容積)中で20分間膨潤させ、溶媒を濾過によって除去した。樹脂に、10% DMF/CHCl(1mL、容積/容積)中のHMP(2当量)溶液、その後DIC(2当量)を添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。溶液を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)、CHCl(3×5mL)で洗浄し、風乾して27を得た。陰性カイザー試験は、完全な反応を示した。
【0064】
全般的な方法D:HMP樹脂27へのFmoc-D-Thr(Bu)-OHの結合
樹脂にDMF(1mL)中のFmoc-D-Thr(Bu)-OH(2当量)溶液およびDIC(2当量)を添加し、その後DMF(100μL)中のDMAP(10%当量)を滴下した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。溶液を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)で洗浄した後、エステル化をさらなる2時間繰り返した。樹脂に20%酢酸無水物/DMF(1mL)を添加し、DMF(100μL)中のDMAP(10%当量)溶液を滴下し、反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後溶液を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)で洗浄した。
【0065】
全般的な方法E:手作業および自動化されたFmoc SPPS
DMF(1mL)中のFmoc保護されたアミノ酸(5当量)溶液にHBTU(4.75当量)およびPrNEt(10当量)を添加し、溶液を樹脂に添加した。混合物を室温で30分間撹拌した後、溶液を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)で洗浄した。Fmoc保護基を、室温で5分間次いで10分間の20%ピペリジン/DMF(5mL、容積/容積)による処理によって除去した。
【0066】
全般的な方法F:ペプチド結合N-メチル化
NBS保護:NMP(1mL)中の2-NBS-Cl(4当量)溶液にコリジン(10当量)を添加し、溶液を樹脂に添加し、反応混合物を室温で15分間攪拌した。溶液を排液し、樹脂をNMP(3×5mL)で洗浄した後、反応をさらなる10分間繰り返した。N-メチル化:樹脂にNMP(1mL)中のDBU(3当量)溶液を添加し、反応混合物を室温で3分間撹拌した。NMP(1mL)中のDMS(10当量)溶液を反応混合物に次いで添加し、反応混合物を室温で2分間撹拌した。溶液を排液し、樹脂をNMP(3×5mL)で洗浄した後、反応をさらなる2分間繰り返した。NBS脱保護:樹脂にNMP(2mL)中の2-メルカプトエタノール(10当量)およびDBU(5当量)溶液を添加し、反応混合物を室温で5分間撹拌した。溶液を排液し、樹脂をNMP(3×5mL)で洗浄した後、反応をさらなる5分間繰り返した。
【0067】
全般的な方法G:Nメチル化LysへのFmoc-Gln(Trt)-OHのカップリング
DMF(1mL)中のFmoc-Gln(Trt)-OH(5当量)溶液にHATU(4.75当量)およびPrNEt(10当量)を添加し、溶液を樹脂に添加し、反応混合物を室温で3時間攪拌した。溶液を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)で洗浄した後、反応をさらなる3時間繰り返した。
【0068】
全般的な方法H:N末端アセチル化
樹脂に20%酢酸無水物/DMF(1mL)溶液を添加し、その後DMF(100μL)中のDMAP(10%当量)溶液を滴下した。反応混合物を室温で30分間撹拌した後、溶液を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)で洗浄した。
【0069】
全般的な方法I:t-ブチル保護DTPAの結合
DMF(1mL)中の42(5当量)溶液にHBTU(4.75当量)およびPrNEt(10当量)を添加し、溶液を樹脂に添加した。混合物を室温で30分間撹拌した後、溶液を排液し、樹脂をDMF(3×5mL)で洗浄した。
【0070】
全般的な方法J:D-ビオチンの結合
ペプチド1~15およびペプチド17、19、20および21の合成のために、N末端Fmoc基を、室温で5分間次いで10分間の20%ピペリジン/DMF(5mL、容積/容積)による処理によって除去した。DMF(3×5mL)で洗浄した後、DMF(1mL)中の(Boc)O(5当量)溶液を樹脂に添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いで、DMF(3×5mL)で洗浄した。Dde基を、2%ヒドラジン/DMF(5mL、容積/容積)を室温で5分間使用することによって除去し、新鮮な試薬で10分間繰り返した。DMF(3×5mL)で洗浄した後、DMF(1mL)中のD-ビオチン(5当量)、HBTU(4.75当量)およびPrNEt(10当量)溶液を樹脂に添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いで、DMF(3×5mL)で洗浄した。
【0071】
ペプチド16および18およびペプチド22~26の合成のために、Dde基を、2%ヒドラジン/DMF(5mL、容積/容積)を室温で5分間使用することによって除去し
、新鮮な試薬で10分間繰り返した。DMF(3×5mL)で洗浄した後、DMF(1mL)中のD-ビオチン(5当量)、HBTU(4.75当量)およびPrNEt(10当量)溶液を樹脂に添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いで、DMF(3×5mL)で洗浄した。
【0072】
全般的な方法K:樹脂からのペプチドの切断
所望の直鎖ペプチドを含有する樹脂を、TFA/HO/DODT/TIPS(94:2.5:2.5:1.0、5mL、容積/容積/容積/容積)の混合物中で3時間撹拌した。濾液に冷ジエチルエーテル(30mL)を添加し、上清を廃棄する前に産物混合物を10分間遠心分離した。この手順を2回繰り返した。得られた固体を、HO/CHCN+0.1%TFA溶液(15mL)に溶解し、凍結乾燥した。
【0073】
全般的な方法L:精製
粗ペプチドを、HO/0.1% TFA溶液に溶解し、流速10mL/分で、0.5%B/分で5~20%B、次いで35%Bまで0.2%B/分の勾配を使用してXTerra(登録商標)C18カラムで分取逆相(RP)-HPLCによって精製した。ペプチドの純度を、フローインジェクション(ESI、100V)および分析RP-HPLC[XTerra(登録商標)C18カラム、5~95%B、3%B/分、1mL/分]によって決定した。
【0074】
生物学研究
ペプチドの調製
比較ために、商業的に供給されているビオチン化DOTA-A20FMDV2ペプチド(純度95%)を、PPR(Cambridge、UK)から購入した点に注意されたい。ペプチドを0.1% TFA(水に希釈した)に再懸濁して濃度1mMの保存溶液を調製し、分注し、-20℃で貯蔵した。
【0075】
細胞株
in vitroおよびin vivoで使用した細胞株は、形質導入した黒色腫株A375Ppuro、およびA375Pβ6である[ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)/10%ウシ胎仔血清(FBS)中で培養した][9]。
【0076】
ペプチドの結合の特異性およびレベル-フローサイトメトリー方法
細胞をトリプシン処理し、DMEM/0.1%(質量/容積)アジ化ナトリウム/0.1%(質量/容積)BSA(フロー培地)に再懸濁して、4×10個細胞/mLの細胞懸濁液を調製した。この時点から全てを氷上に保ち、細胞懸濁液50μLを、各フローチューブ(ファルコン2054-Millipore)に分注した。ペプチドを、2×濃度でフロー培地中に段階的に希釈した。したがって各濃度50μLを細胞50μLに添加した場合、終濃度1000nM、100nM、10nM、1nM、0.1nMおよび0nMを得た。A375Ppuro細胞の場合、最高濃度の1000nMだけを細胞に添加した。次いでペプチドを、氷上に15分間放置した。次いで、細胞をフロー培地に再懸濁し、1200rpmで3分間遠心分離することにより2回洗浄した。
【0077】
マウス抗ビオチン[1:200で50μL;Jackson ImmunoResearch(200-002-211)]を各サンプルに15分間添加し、次いで洗浄工程を繰り返した。Alexa 488にコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(1:250)を、各サンプルに添加し(50μL)、暗所で氷上に15分間放置した。洗浄工程を繰り返し、細胞をフロー培地380μLに再懸濁した。FACSCalibur血球計算器(Becton-Dickinson)を使用して、データを取得し;幾何平均蛍光強度を各サンプルについて記録した。
【0078】
内部移行アッセイ方法-Imagestreamおよびフローサイトメトリー
細胞をトリプシン処理し、DMEM(無血清培地)に再懸濁して4×10個細胞/mLの細胞懸濁液を調製した。この時点から全てを氷上に保った。細胞懸濁液50μLを、各フローチューブに分注した。ペプチドを氷冷無血清培地中に200nMになるよう希釈し、細胞サンプルに50μLを添加した後に終濃度100nMを得た。ペプチドを氷上に15分間放置し、次いでフロー培地で2回洗浄し、各洗浄工程の間に1200rpmで3分間遠心分離した。マウス抗ビオチン(1:200で50μL)を各サンプルに15分間添加し、次いで洗浄工程を繰り返した。0時点を除いて、時点サンプルのそれぞれを、37℃で15、30および45分間インキュベーター内に置き、細胞を、PBS中の4%ホルムアルデヒドで10分間固定し、PBSで1回洗浄し、PBSで再度洗浄する前に0.1% Triton X-100界面活性剤を5分間添加した。AlexaFLUOR 488にコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(1:250)を、各サンプルに添加し(50μL)、暗所で氷上に15分間放置した。サンプルを上記のように洗浄し、30μLになるように再懸濁した。サンプルを、Imagestream X Mark II(Amnis、Merck)で検査し、Imagestream画像を、搭載されているソフトウェアを使用して0分のサンプルと比較して内部移行について評価した。
【0079】
内部移行アッセイ方法-フローサイトメトリー
細胞を、抗体でビオチンを検出する前に界面活性剤を添加しなかったことを除いて上記の通り調製した。サンプルを、FACScalibur(Bekton-Dickinson)血球計算器で分析した。経時的に測定した蛍光シグナルの減少は、Imagestreamを使用して視覚的に確認したように、結合しているペプチドの内部移行と関連付けられた(データ不掲載)。
【0080】
血漿安定性
DTPAコンジュゲートしたペプチド15μgにインジウム111(Covidien-Petten、Netherlands)15MBqを添加し(最終容積20μL)、その後酢酸アンモニウム(1M)5μLを添加した。サンプルを混合し、室温で30分間放置した。この混合物2μLを蒸留水100μLに添加し、次いで混合物を勾配逆相-HPLC(Beckman)に注射した。サンプルを、蒸留水中の0.1% TFA中でAgilent Eclipse XDB-C18カラムに流した。これは、一般に>95%である放射標識の効率を確認するためであった。ヒト血液を、ナトリウムヘパリン管に採取し、2000gで10分間遠心分離した。血漿(300μL)を、7.5MBqのバリアントペプチドとインキュベートし、直ちに150μLを除去し、37℃に置き、残りの150μLを、時間0分サンプルとして使用した。これに、氷冷アセトニトリル等容積を添加し(1:1)、サンプルを混合し、14000rpmで5分間遠心分離した。上清を採集し、10分間吸引乾燥してアセトニトリルを除去した。残滓を、0.22μmフィルターによって濾過し(微粒子を除去するため)、100μLを放射HPLC機械に注射した。24時間サンプルを同様に処理した。対照サンプルをPBSとインキュベートした。(注意:PBS対照は、濾過のこの工程またはアセトニトリルの添加を必要としなかった)。サンプルを複製して実行し、類似の結果であった。
【0081】
体内分布
100μL中に2×10個の細胞を、雌CD1 Nu/Nuマウスの肩に皮下注射した。腫瘍を、左肩(A375Puro)および右肩(A375β6)で2週間にわたり皮下成長させた。腫瘍が、直径およそ5mmに成長したら、ペプチドをインジウム111で放射性標識し、放射HPLCによって分析して標識効率を決定した。標識されたペプチドを無菌PBS/BSAに希釈し、動物1匹当たり0.3MBqを与えるように投薬した。次いでマウスに放射性標識ペプチドを静脈内(尾静脈)注射し、1時間後に殺処分した。
血液、器官および腫瘍を摘出し、計量し、その翌日残留活性をガンマカウンター(LKB
Compugamma)で測定した。データを、%注射用量/g組織(%ID/g)として表した。
【0082】
ペプチド特徴付けデータ
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-OH(1)(配列番号11)
ペプチド(1)(97.1mg、50%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=13.2分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1224.3;Found 1223.6。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQkVART-OH(2)(配列番号12)
ペプチド(2)(54.3mg、22%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=11.9分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1224.3;Found 1223.7。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQ[オルニチン]VART-OH(3)(配列番号13)
ペプチド(3)(63.5mg、26%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=12.7分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1217.3;Found 1216.7。
ペプチドN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQ[ジアミノ酪酸]VART-OH(4)(配列番号14)
ペプチド(4)(70.3mg、29%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=12.7分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1210.3;Found 1209.8。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQ[ジアミノプロピオン酸]VART-OH(5)(配列番号15)
ペプチド(5)(59.9mg、25%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=12.9分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1203.2;Found 1203.1。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQ-N-MeKVART-OH(6)(配列番号16)
ペプチド(6)(72.7mg、30%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=11.5分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1231.3;Found 1230.7。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQV[アミノイソ酪酸]AQKVART-OH(7)(配列番号17)
ペプチド(7)(16.6mg、7%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=11.9分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1209.7;Found 1210.2。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQV[ノルバリン]AQKVART-OH(8)(配列番号18)
ペプチド(8)(19.5mg、8%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%
の白色固体として得た。R=12.2分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1216.8;Found 1217.2。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQV[ノルロイシン]AQKVART-OH(9)(配列番号19)
ペプチド(9)(18.7mg、8%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=12.7分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1223.8;Found 1224.7。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQV[アリルグリシン]AQKVART-OH(10)(配列番号20)
ペプチド(10)(5.5mg、2%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=11.7分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1215.7;Found 1215.8。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQV[t-ブチル-アラニン]AQKVART-OH(11)(配列番号21)
ペプチド(11)(7.5mg、3%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=12.9分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1230.8;Found 1230.7。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQV[ホモロイシン]AQKVART-OH(12)(配列番号22)
ペプチド(12)(26.1mg、11%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=13.1分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1230.8;Found 1231.2。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQV[2-アミノ-3-エチルペンタン酸]AQKVART-OH(13)(配列番号23)
ペプチド(13)(10.1mg、4%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=12.9分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1230.8;Found 1230.8。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQV[シクロヘキシルアラニン]AQKVART-OH(14)(配列番号24)
ペプチド(14)(6.2mg、2%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=13.4分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1243.8;Found 1244.2。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQV[アダマンチルグリシン]AQKVART-OH(15)(配列番号25)
ペプチド(15)(22.4mg、9%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=13.7分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1262.8;Found 1263.3。
【0083】
ペプチド(16)
ペプチドAcHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-OH(16)(配列番号11)(N末端アセチル化)(30.1mg、12%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=13.9分[XTerra
(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1244.8;Found 1245.2。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-NH(17)(配列番号11)(C末端アミド化)
ペプチド(17)(13.4mg、5%)を、分析RP-HPLCによって純度>95%の白色固体として得た。R=13.5分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1223.8;Found 1223.3。
【0084】
ペプチド(18)
ペプチドAcHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-NH(18)(配列番号11)(N末端アセチル化およびC末端アミド化)(12.5mg、5%)を、分析RP-HPLCによって純度>95%の白色固体として得た。R=13.9分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1244.3;Found 1244.6。
ペプチドHN-nK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-OH(19)(配列番号8)
ペプチド(19)(47.7mg、19%)を、分析RP-HPLCによって純度>95%の白色固体として得た。R=12.6分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1223.8;Found 1224.1。
ペプチドHN-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVARt-OH(20)(配列番号26)
ペプチド(20)(45.3mg、19%)を、分析RP-HPLCによって純度>95%の白色固体として得た。R=13.0分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1223.8;Found 1224.2。
ペプチドHN-nK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVARt-OH(21)(配列番号9)
ペプチド(21)(36.4mg、15%)を、分析RP-HPLCによって純度>95%の白色固体として得た。R=12.9分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1223.8;Found 1224.4。
ペプチドDTPA-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-OH(22)(配列番号11)(N末端DTPA)
ペプチド(22)(53.7mg、24%)を、分析RP-HPLCによって純度>99%の白色固体として得た。R=13.3分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1411.9;Found 1411.6。
ペプチドDTPA-nK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-OH(25)(配列番号8)(N末端DTPA)
ペプチド(25)(37.5mg、13%)を、分析RP-HPLCによって純度>95%の白色固体として得た。R=12.6分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1411.3;Found 1410.6。
ペプチドDTPA-nK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVARt-OH(26)(配列番号9)(N末端DTPA)
ペプチド(26)(12.5mg、4%)を、分析RP-HPLCによって純度>95%の白色固体として得た。R=12.9分[XTerra(登録商標)C18、5~9
5%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1411.3;Found 1410.6。
ペプチドDTPA-NK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-NH(24)(配列番号11)(N末端DTPAおよびC末端アミド化)
ペプチド(24)(12.1mg、4%)を、分析RP-HPLCによって純度>95%の白色固体として得た。R=13.0分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1410.8;Found 1410.1。
ペプチドDTPA-GNK(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-OH(23)(配列番号27)(N末端DTPA)
ペプチド(23)(41.9mg、15%)を、分析RP-HPLCによって純度>95%の白色固体として得た。R=12.6分[XTerra(登録商標)C18、5~95%B、3%B/分、1.0mL/分];m/z(ESI-MS):[M+2H]2+Calc.1439.9;Found 1439.2。
【0085】
実施例1-ビオチン化A20FMDV2 1、Lys16またはLeu13修飾およびビオチン化ペプチド2~15、N-および/またはC末端修飾およびビオチン化ペプチド16~21ならびに(DTPA)含有ペプチド22~26の合成。
【0086】
A20FMDV2結合活性に対する非タンパク新生アミノ酸(図1に挙げる)の導入の調査を可能にするために、ペプチド6を除くビオチン化ペプチド1~15(表1を参照のこと)を、スキーム1に図示される条件を使用してC末端カルボン酸を送達する酸不安定性ヒドロキシメチルフェノキシプロピオン酸リンカー(HMPP)上で標準的なFmoc
SPPSによって合成した。所望のペプチド配列を、20%ピペリジン/DMFを使用して取り付けて、Fmoc保護基およびカップリング試薬であるO-(ベンゾトリアゾール(benzotriazol)-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸(HBTU)/DIPEAを除去した。
【0087】
αvβ6インテグリンに対する特異的結合をフローサイトメトリーによって研究するので、A20FMDV2(1)の第2残基である天然のアラニンおよびその全ての類似体を、ビオチン化リジン残基で置換した。この置換は、よい耐性を示すことがこれまでに示されている[24、25]。側鎖Nε-アミノ基上の1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキス-1-イリデン)エチル(Dde)[19]基を選択的に脱保護し、その後HBTU/DIPEAを使用してD-ビオチンと縮合することによってD-ビオチン部分を組み込むことを選択した。トリフルオロ酢酸(TFA)/HO/3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(DODT)/トリイソプロピルシラン(TIPS)(94:2.5:2.5:1.0、容積/容積/容積/容積)は、対応するペプチジル樹脂からの合成ペプチドの切断をもたらした。ペプチド1~15を、2%~50%の範囲の優れた収量および99%を超える純度で得た(ペプチド特徴付けデータを参照のこと)。
【0088】
N-L-メチルリジン修飾を含有するペプチド6を合成するために、TFA媒介ペプチド切断およびRP-HPLC精製後に優れた収量(30%)でペプチド6を与える樹脂上でのN-メチル化プロトコール[22]を利用した。
【0089】
全て天然に存在するアミノ酸を含有するリードペプチド、A20FMDV2は、アミノおよびカルボキシ末端に作用するエキソペプチダーゼによる分解の影響を受けやすいはずである。これを軽減するために、6個のNおよび/またはC末端修飾ならびにビオチン化A20FDMV2模倣体を調製し、アミノおよびカルボキシ端(ペプチド16~18)ならびにN末端およびC末端アミノ酸(それぞれAsn1およびThr20、ペプチド19~21)を系統的に修飾した。N末端/C末端修飾したペプチド16~18を、N末端を
無水酢酸でキャッピングする(16)もしくはRinkアミドリンカーを利用してC末端カルボキサミドを与える(17)または両方を組合せる(ペプチド18)ことによって得た。
【0090】
ビオチン化A20FMDV2(1)のN末端で天然のAsn1の場所に非天然のD-Asn1を有するペプチド19を、Fmoc-D-Asn(Trt)-OH構成単位をN末端残基として合成に組み込んだことを除いてスキーム1に概説されている合成経路を使用して得た。C末端で非天然のD-Thrを含有するペプチド20および21を調製するために、HMPを固定している樹脂27(スキーム1、HMP=ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸を参照のこと)を、DIC/DMAPを使用してFmoc-D-Thr(Bu)-OHで最初にエステル化し、次いで配列をFmoc SPPSによって伸長させた。
【0091】
【表1】
【0092】
【化1】
【0093】
スキーム1.ビオチン化A20FMDV2ペプチドバリアントの調製の合成プロトコール。
結合アッセイから得られた結果(表2、後を参照のこと)は、1のNおよびC末端の修飾(それぞれペプチド16および17)、またはA20FMDV2(1)の天然のAsn1およびAsn1とThr20両方の残基の、D対応物への置換(それぞれペプチド19および21)が、1と比較して生物学的活性の改善を呈するペプチドをもたらすことを示した。したがって、ヒト血漿における細胞内部移行研究および分解アッセイを実施できるように、その4つのNおよびC終点修飾類似体(16、18、19および21)を、DTPAキレート化剤を組み込むために選択した。含DTPAビオチン化A20FMDV2ペプチド(22)も対照として調製した[25]。
【0094】
スキーム1に図示した通り、含DTPAビオチン化A20FMDV2ペプチド22および類似体23~25を、Fmoc SPPS条件(Fmoc保護基除去のために20%ピペリジン/DMFおよびカップリング試薬としてHBTU/DIPEA)を使用して合成した。A20FMDV2のN末端でDTPA、Lys2の側鎖でD-ビオチンを結合させるために、N末端Fmoc保護基を20%ピペリジン/DMFを使用して最初に除去し、t-ブチル保護DTPA[21]を、HBTU/DIPEAを使用して、得られたNα-アミノ基にカップリングした。DTPAの4つのカルボン酸が、酸不安定性t-ブチルエステルとして保護されたので、Dde保護基を2%ヒドラジン/DMFを使用して選択的に除去し、D-ビオチンをHBTU/DIPEAを使用して側鎖アミノリジルにカップリングすることができる。DTPAリガンドの組み込みを可能にするためのペプチド23および24の場合、グリシンスペーサーを利用してペプチド16および18のアセチル基を模倣し、それによりアミド結合形成を介するDTPAの容易な結合を可能にした。
【0095】
実施例2-ペプチドバリアントの生物学的活性
元のA20FMDV2より優れているペプチドバリアントがあるとすると、それはどのペプチドバリアントか試験するために、A375Pβ6細胞株におけるインテグリンαvβ6の発現[9]を除いて遺伝的に同一である2つの細胞株(A375PpuroおよびA375Pβ6)を使用して一連の試験を設計した。A375Ppuroは、そのリガンド内のRGDモチーフに結合するさらに4つのインテグリン(αvβ3、αvβ5、αvβ8およびα5β1)を発現するので、これら2つの細胞株における結合活性を比較することは、非常に厳しいアッセイであると考えられる。
【0096】
修飾ペプチド1~15、16~21および22~25の挙動を特徴付けるために使用したアッセイの例として、図2はペプチド22~25の比較を示す。A20FMDV2は、他のインテグリンより>1000倍選択的にαvβ6に結合する[9]。修飾ペプチドが特異性を保持していることを確認するために、A375Pβ6細胞と対比してどれくらいのペプチドがA375Ppuroに結合するかについてフローサイトメトリーを使用して決定した。図2Aは、1000nMでペプチド22(Ai)もペプチド25(Aii)もA375Ppuroに結合しなかったことを示す(赤色ヒストグラム;上パネル)。それに対して、両方のペプチドが、100nMでA375Pβ6によく結合した(青色ヒストグラム;下パネル)。これらのデータは、αvβ6結合特異性が、これらのペプチドバリアントにおいて保持されていることを示す。さらに、あらゆるペプチドバリアントが、1000nMでA375Ppuroに結合できなかった(データ不掲載)ことは、全てのペプチドが特異性を保持していることを示した。
【0097】
修飾ペプチドが、100nMで親ビオチン化A20FMDV2ペプチドと同様にまたはよりよく結合するかどうか決定するために、0、0.1、1、10、100および1000nMでA375Pβ6に対するバリアントの結合活性を試験した。
【0098】
例として、図2Bは、100nMでペプチド22が、商業的に得られるビオチン化A20FMDV2より16%高く結合するのでより優れていることを示す。同様に、100nMでの結合が、商業的に得られるビオチン化A20FMDV2の150%なので、ペプチド25はさらにより優れている。これらのデータは、一回の実験のものであった。表2は、研究した全てのペプチドの最大4回の実験の平均を示し、全体としてペプチド22が、親(すなわち商業的に得られたビオチン化A20FMDV2)より平均して5%高い活性を有し、ペプチド25が、親より36%高かったことを示す。
【0099】
37℃で細胞によって内部に取り込まれる能力(したがって治療法のための潜在的ベクター)を評価するために、Imagestream(登録商標)細胞数測定およびフローサイトメトリーを使用した。Imagestream(登録商標)は、細胞内区画と対比して表面上の蛍光の画像分析を可能にする各細胞の蛍光画像(図2C)を撮像する。図2Cのヒストグラムは、0分時点と比較した内部移行をプロットする。フローサイトメトリーの場合、ペプチドが内部に取り込まれるのにつれる表面発現の消失を監視した。
【0100】
表2は、商業的に供給されたビオチン化A20FMDV2と比較して本研究において使用される全てのペプチドの活性および内部移行データを要約する[本研究において合成したビオチン化A20FMDV2(1)は、ペプチド(1)が、D-ビオチンをカップリングするために活用されるAla2Lys突然変異を含むという点で商業的に得られたビオチン化A20FMDV2と異なった]。
【0101】
表2はまた、結合親和性値を内部取り込み量と乗算して相対的活性値を得ることによって、細胞内薬物送達に対する各ペプチドの潜在性の任意値(arbitrary value)を提供する。ペプチド(7)および(9)を除いて;大部分の16Lysおよび
Leu修飾は相対的活性を減少させ、相対的活性が対照ビオチン化A20FMDV2より低かったことが分かる。それに対し、NおよびC末端修飾ペプチドのほとんど(16~19および21)は、ビオチン化A20FMDV2(1)と比較してより優れた結合親和性を有し、相対的活性が改善された。例えば、非タンパク新生D-Asnアミノ酸N末端修飾を有するペプチド19は、細胞αvβ6に対し親化合物よりも平均で43%良好に結合した(表2)。1.0の値を有する非修飾A20FMDVと比較して、ペプチド16(Nアセチル化)、17(Cアミド化)、18(Nアセチル化およびCアミド化)、19(D-Asn置換)および21(D-AsnおよびD-Thr置換両方)は、対照ペプチド1より55%、31%、9%、27%、および37%高い相対的活性値を有する。
【0102】
【表2】
【0103】
有望なことに、リードペプチド(16、17、19、21)にDTPAをコンジュゲーションして、ペプチド23~26をそれぞれ作製することは、結合親和性または内部移行
にほとんど効果がなく、したがって相対的活性の増大が維持された。
実施例3-血漿安定性および体内分布研究
図3は、37℃でのPBS(黒色バー;各ペプチドについて左手のバー)と対比した血漿(赤色バー;各ペプチドについて右手のバー)中のDTPAコンジュゲートペプチド(22~26)の安定性を、0分時点と比較して示す。データは、PBS中で37℃、24時間後にペプチドの約10%しか分解されなかったことを示す。それに対し、ペプチド(22、25、26)は、24時間後に血漿中で類似レベルの残存(77%~80%)を示すが、ペプチド(23)(60%残存)およびペプチド(24)(52%残存)は大きく分解される。したがって、ペプチド24および23(それぞれC末端アミド化およびN末端アセチル化)の修飾は、対照親ペプチド(1)と比較して血漿分解に対する感受性を増大させた。Dアミノ酸(D-Asn、化合物25、およびD-Asn/D-Thr化合物26)を使用する化学操作によるペプチド修飾が、ヒト血漿プロテアーゼに対する感受性を改善するのに最適であった。
【0104】
反対側の肩にA375PpuroおよびA375Pβ6腫瘍を保有する免疫不全状態のマウス(n=3~5)に300Bqの放射性標識ペプチド22~26を静脈(iv)注射で与え、次いで1時間後に殺した。主要な器官および血液を直ちに採集し、計量し、放射活性を決定した。表3のデータは、試験した5つのDTPAコンジュゲートペプチドの挙動を示す;データは、平均%注射用量/g組織で表される。
【0105】
【表3】
【0106】
これまでの本発明者らの研究と同様に、著しい残留が、消化管(胃および腸)および肺にも存在する[9、24]。αvβ6とは独立であると本発明者らが報告した腎臓残留は[9]、最少の残留を示すペプチド25および26ならびに親ビオチン化A20FMDV2であるペプチド22よりはるかに大きな残留を示すペプチド23および24を含めた5つのペプチドで大きく変動する。αvβ6陰性対照腫瘍と比較して、αvβ6陽性腫瘍による各ペプチドの強力な選択的取り込みが存在する。図4は、ヒストグラムでこれらの差
異を強調する。DTPA標識親ペプチド22に対してペプチド23~26に統計的な取り込みの増大はないが、全てのバリアントは、対照ペプチド22と比較してαvβ6陽性腫瘍対αvβ6陰性腫瘍の残留の平均比がわずかに高い。対照ペプチド22と比較して、αvβ6陰性腫瘍に対するαvβ6陽性腫瘍おける最も高い残留比はペプチド25で見られた。
【0107】
考察
20残基直鎖ペプチドA20FMDV2は、腫瘍関連αvβ6インテグリンに対する高い特異性および親和性を呈し、細胞へのαvβ6依存的内部移行も呈する。したがってA20FMDV2は、αvβ6発現がん細胞に治療用担持物(例えば化学療法ペイロード)を送達するのに見込みがあるリード化合物と考えられる。上記の実施例において、in vitro挙動、血漿安定性およびin vivo体内分布に対するA20FMDV2の天然のアミノ酸残基の非タンパク新生置換物の影響について調査した。
【0108】
本明細書に記述されるペプチドの全ては、Fmoc SPPSによって優れた収量および卓越した純度で合成された。αvβ6インテグリンに対する結合研究は、A20FMDV2類似体の全てがA375Pβ6細胞にだけ結合し、A375Ppuro細胞に結合しないことを示し、特異性が修飾の影響を受けないことを示した。さらに、アセチル化N末端ならびにアミド化C末端または天然のAsnおよび20Thr残基の非天然のD-バージョンを組み込んだペプチドは、親ペプチド(A20FMDV2)より強力なαvβ6結合活性を呈し、さらに天然の16Lysおよび13Leu残基の非タンパク新生置換物を含有する大部分のペプチドより強力だった。例えば、非タンパク新生D-Asnアミノ酸N末端修飾を有するペプチド19は、細胞αvβ6に対し親化合物よりも平均で43%良好に結合した(表2)。
【0109】
ヒト血漿における安定性を評価し、ペプチドが、マウス血清でのこれまでの研究よりずっと長く完全なままであることが示され、このことは、ヒト血漿がこれらのペプチドに対してマウス血清より分解性でないことを示唆している。全ての放射性標識ペプチドの90%以上は、PBS中で、37℃で24時間後に完全なままであり、一方でDアミノ酸を含有するA20FMDV2である25および26だけが、ヒト血漿中で、37℃で24時間後に大部分が完全なままであった(76~80%)。
【0110】
修飾は、αvβ6発現細胞への内部移行の程度に対して中程度の効果しかなかった。したがって、表2は、試験した全てのペプチドについて内部移行が、市販のビオチン化A20FMDV2と比較して0.78~1.11倍変動したことを示す。細胞内細胞毒の送達については、ペプチドの結合親和性と内部移行の両方を考える必要があるので、表2は、各ペプチドの相対的活性の任意値も示す。対照ペプチドは1.0の値を有し、ペプチド16、19、17、18および21は、対照ペプチドよりそれぞれ55%、27%、31%、9%および37%高い相対的活性値を有する。
【0111】
治療法を送達するためのαvβ6標的化ペプチドの場合、それらペプチドは、αvβ6発現腫瘍に選択的に保持されなければならない。体内分布研究において試験した5つのリードペプチド(22~26)の全てが、αvβ6陰性腫瘍より少なくとも6~10倍高いレベルでαvβ6陽性腫瘍に選択的に保持されることを見出した。全ての修飾ペプチドがDTPA標識およびビオチン化ペプチド22よりわずかに優れていたことは、有望である。本結果は、A20FMDV2の化学修飾により、αvβ6発現がんに選択的に位置する能力が改善されたことを示す。
【0112】
参照文献
本発明および本発明が関係する最新技術についてより完全に記述し、開示するためにい
くつかの刊行物を上に引用している。これらの参照の完全な引用が、以下で提供される。これら参照のそれぞれの全体を、本明細書に組み込む。
【0113】
【表4-1】
【0114】
【表4-2】
【0115】
【表4-3】
【0116】
各個々の刊行物または特許または特許出願を、その全体を参照により組み込むように具体的かつ個別に示すがごとく、本明細書に引用される全ての参照を、その全体を参照によりおよび同じ範囲に対する全ての目的のために本明細書に組み込む。
【0117】
本明細書に記述される特定の態様は、例として提示されるものであり、制限として提示されるものではない。本明細書におけるどんな副題も、利便性のためだけに含まれ、決して開示を限定するものと解釈されるべきでない。
非限定的に本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
αvβ6インテグリンに選択的に結合し、モチーフXRGDLX(配列番号3)を含むアミノ酸配列を有するペプチドであって、式中、Xは、任意のD-アミノ酸であり、Bは、任意のnアミノ酸の配列であり、前記アミノ酸は、天然でも非天然でもよく、D-またはL-でもよく、同一でも異なっていてもよく、nは、1~10の数であり、XおよびXは、任意のアミノ酸からそれぞれ独立に選択され、Xは、LeuまたはIleであり、Zは、任意のmアミノ酸の配列であり、前記アミノ酸は、天然でも非天然でもよく、D-またはL-でもよく、同一でも異なっていてもよく、mは、1~10の数であり、Xは、任意のL-またはD-アミノ酸である、ペプチド。
[態様2]
前記ペプチドの長さが、17~25アミノ酸であり、任意選択で前記ペプチドの長さが20アミノ酸である、態様1に記載のペプチド。
[態様3]
が、D-Asnである、態様1または態様2に記載のペプチド。
[態様4]
が、L-ThrまたはD-Thrである、前記態様のいずれか一項に記載のペプチド。
[態様5]
が、Leuである、前記態様のいずれか一項に記載のペプチド。
[態様6]
nが5であり、および/またはmが6である、前記態様のいずれか一項に記載のペプチド。
[態様7]
が、AVPNL(配列番号4)、KVPNL(配列番号5)またはK(ビオチン)VPNLである、前記態様のいずれか一項に記載のペプチド。
[態様8]
が、AQKVAR(配列番号6)である、前記態様のいずれか一項に記載のペプチド。
[態様9]
前記ペプチドのアミノ酸配列が、
N-[D-Asn]-AVPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号7);
N-[D-Asn]-KVPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号8);
N-[D-Asn]-K(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号8);
N-[D-Asn]-KVPNLRGDLQVLAQKVAR[D-Thr]-COOH(配列番号9);
N-[D-Asn]-K(ビオチン)VPNLRGDLQVLAQKVAR[D-Thr]-COOH(配列番号9);および
N-[D-Asn]-AVPNLRGDLQVLAQKVAR[D-Thr]-COOH(配列番号10)
からなる群から選択される、前記態様のいずれか一項に記載のペプチド。
[態様10]
前記ペプチドが、HN-[D-Asn]-AVPNLRGDLQVLAQKVART-COOH(配列番号7)である、態様9に記載のペプチド。
[態様11]
前記ペプチドが、Nアセチル化および/またはCアミド化されている、前記態様のいずれか一項に記載のペプチド。
[態様12]
治療的部分、ポリマー、ポリペプチドおよび/または検出可能な部分に直接もしくはリンカーを介してコンジュゲートした態様1から11のいずれか一項に記載のペプチドを含むコンジュゲート。
[態様13]
前記治療的部分が、抗がん剤を含む、態様12に記載のコンジュゲート。
[態様14]
前記抗がん剤が、オーリスタチン、マイタンシノイド、チューブリシン、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、アルファ-アマニチン、ピロロベンゾジアゼピン、イリノテカンおよびインドールカルボキサミド、またはその類似体、誘導体、プロドラッグもしくは活性代謝物からなる群から選択される、態様13に記載のコンジュゲート。
[態様15]
前記抗がん剤が、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、メルタンシン(DM1)、ラブタンシン(DM4)またはセンタナマイシンを含む、態様14に記載のコンジュゲート。
[態様16]
前記治療的部分が、177Lu、90Y、211At、213Bi、212Pb、225Ac、223Ra、44Sc、67Ga、131I、188Re、186Reおよび67Cuからなる群から選択される放射性同位元素を含む、態様12から15のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[態様17]
前記検出可能な部分が、核磁気共鳴映像法(MRI)、磁気共鳴分光法(MRS)、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射断層撮影法(PET)または光学的画像化によって検出可能である、態様12から16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[態様18]
前記検出可能な部分が、フルオロフォア、放射性核種またはスピン標識を含む、態様17に記載のコンジュゲート。
[態様19]
前記検出可能な部分が、68Ga、IRDye(登録商標)700、IRDye(登録商標)800、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、89Zr、124I、64Cu、62Cu、18F、86Y、111In、131I、123I、67Gaまたは99mTcを含む、態様18に記載のコンジュゲート。
[態様20]
前記検出可能な部分が、キレート化剤を含むリンカーを介してペプチドとカップリングされた111Inを含み、任意選択で前記キレート化剤が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン(tetrazacyclododecane)-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、態様12から19のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[態様21]
前記ポリマーが、1つもしくは複数(例えば1つまたは2つ)のエチレングリコール基または1つもしくは複数(例えば1つまたは2つ)のポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む、態様12から20のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[態様22]
前記1つまたは複数(例えば1つまたは2つ)のPEG鎖が、長さ1~50個のエチレングリコール単位である、態様21に記載のコンジュゲート。
[態様23]
態様1から11のいずれか一項に記載のペプチドまたは態様12から22のいずれか一項に記載のコンジュゲート;および
薬学的に許容可能な担体
を含む医薬組成物。
[態様24]
医学に使用するための、態様1から11のいずれか一項に記載のペプチド、態様12から22のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは態様23に記載の医薬組成物。
[態様25]
哺乳動物対象においてαvβ6発現腫瘍の処置の方法に使用するための、態様1から11のいずれか一項に記載のペプチド、態様12から22のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは態様23に記載の医薬組成物。
[態様26]
前記腫瘍が、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である、態様25に記載の使用のためのペプチド、コンジュゲートまたは組成物。
[態様27]
態様1から11のいずれか一項に記載のペプチド、態様12から22のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは態様23に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、αvβ6発現腫瘍を有する哺乳動物対象を処置する方法。
[態様28]
前記腫瘍が、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である、態様27に記載の方法。
[態様29]
哺乳動物対象のαvβ6発現腫瘍を処置するための医薬の調製における態様1から11のいずれか一項に記載のペプチド、態様12から22のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは態様23に記載の医薬組成物の使用。
[態様30]
前記腫瘍が、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である、態様29に記載の使用。
[態様31]
前記腫瘍がある対象に態様17から22のいずれか一項に記載のコンジュゲートを投与する工程と、前記検出可能な部分を検出し、それにより前記腫瘍の画像を形成する工程とを含む、哺乳動物対象のαvβ6発現腫瘍を画像化する方法。
[態様32]
前記腫瘍が、頸部腫瘍、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍または膵腫瘍である、態様31に記載の方法。
[態様33]
前記対象にコンジュゲートを投与する工程と、前記検出可能な部分を検出し、それにより前記対象におけるαvβ6発現腫瘍の存在を診断する工程とを含む、哺乳動物対象におけるがんの診断のin vivo方法に使用するための態様17から22のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[態様34]
αvβ6発現腫瘍を有すると疑われる哺乳動物対象に態様17から22のいずれか一項に記載のコンジュゲートを投与する工程と、前記検出可能な部分を検出し、それにより対象におけるαvβ6発現腫瘍の存在を診断する工程とを含む、がん診断の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4