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特許7221949正極板、正極板を含む電気化学装置及び電子装置
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  • 特許-正極板、正極板を含む電気化学装置及び電子装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】正極板、正極板を含む電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20230207BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230207BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230207BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230207BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/62 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020518549
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 CN2020075871
(87)【国際公開番号】W WO2021163926
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲鵬▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲夢▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 磊敏
(72)【発明者】
【氏名】王 亮
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/058841(WO,A1)
【文献】特開2012-033372(JP,A)
【文献】特開2013-016515(JP,A)
【文献】特開2009-009753(JP,A)
【文献】特開2018-160444(JP,A)
【文献】特開2018-170234(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105428628(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/00-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
第一の材料を含む第一の材料層と、
第二の材料を含む第二の材料層とを備え、
前記第一の材料は、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミ酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄マンガンリチウム、マンガン酸リチウム、リチウムリッチマンガン系材料及びその組み合わせからなる群から選択され、
前記第二の材料は、一般式M1PO で表されるリン酸塩及び一般式LiTi 2-x M2 (PO で表されるリチウムチタンリン酸塩の中の少なくとも1つを含み、M1は、Co、Mn、Fe、Ti及びその組み合わせからなる群から選択され、M2は、V、Sc、Ge、A1及びその組み合わせからなる群から選択され、且つ0≦x<2であり、
前記第二の材料層は、前記集電体と前記第一の材料層の間に設置されており、
前記第二の材料層の厚さは、3μm~10μmであり、
前記第二の材料層は、正極板の厚さの方向に沿う面密度が前記第一の材料層の正極板の厚さの方向に沿う面密度の1%~5%である、ことを特徴とする正極板。
【請求項2】
前記第一の材料と前記第二の材料は、異なることを特徴とする請求項1に記載の正極板。
【請求項3】
記第二の材料層の圧縮密度は、1.8g/cm~3.1g/cmであることを特徴とする請求項1に記載の正極板。
【請求項4】
前記第二の材料の粒度Dv50は、0.5μm~5.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の正極板。
【請求項5】
前記第二の材料層は、接着剤及び導電剤の中の少なくとも一種類を更に含み、前記第二の材料層の合計重量で計算すると、前記接着剤は、前記第二の材料層の中の含有量が1wt%~5wt%であり、前記導電剤は、前記第二の材料層の中の含有量が1wt%~10wt%であることを特徴とする請求項1に記載の正極板。
【請求項6】
前記第一の材料層は、厚さが120μm~450μmであり、圧縮密度が4.05g/cm~4.3g/cmであり、前記第一の材料の粒度Dv50は、2.5μm~20μmであることを特徴とする請求項1に記載の正極板。
【請求項7】
負極板と、隔離膜と、請求項1~の何れか1つに記載の正極板とを含むことを特徴とする電気化学装置。
【請求項8】
請求項に記載の電気化学装置を含むことを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、エネルギー貯蔵装置に関し、特に、正極板、正極板を含む電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の中の正極材料は、電気化学装置の重要な構成部分であり、電気化学装置の性能に対して顕著な影響を与える。ノードパソコン、携帯電話、携帯ゲーム機、タブレットPC、モバイル電源及び無人機等のようなコンシューマ電子製品の普及に伴い、高いエネルギー密度の電気化学装置を追い求めることは、必然的な発展の成り行きであり、高いエネルギー密度を有する正極材料を用いることで、電気化学装置のエネルギー密度を高めることは、その中の1つの方法である。しかしながら、高いエネルギー密度の正極材料は、材料の安全性能に対する要求も高くなり、電解液又は電極アセンブリの構造等の面により電気化学装置の安全性能を改善することは、その効果に限界がある。
【0003】
現在では、高いエネルギー密度の電気化学装置の改良は、一般的には、正極活性材料に対してドーピングし、又は、その表面を覆うことで、その熱安定性及び構造安定性を変える方法で行う。もう1つの方法では、電解液の中に不活性添加物又は界面添加剤を添加して界面膜を形成する方法により、電気化学装置のサイクルの安定性を維持する。しかしながら、上述した方法では、何れも電気化学装置のダイナミックス性能、サイクル性能及びエネルギー密度を下げるというリスクが存在する。
【0004】
電気化学装置の内部の電気化学の安定性、サイクル性能及び安全性能を改善するために、正極板の構造及び材料に対して更なる改良及び設計を行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、正極板(正極シート)、正極板を含む電気化学装置及び電気装置を提供することで、関連領域に存在する少なくとも1つの問題を少なくともある程度解決しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の1つの側面により、本願の実施例は、集電体と、第一の材料を含む第一の材料層と、第二の材料を含む第二の材料層とを備える正極板を提供する。前記第二の材料は、一般式M1PO で表されるリン酸塩及び一般式LiTi2-xM2(PO で表されるリチウムチタンリン酸塩の中の少なくとも1つを含み、なお、M1は、Co、Mn、Fe、Ti及びその組み合わせからなる群から選択され、M2は、V、Sc、Ge、A1及びその組み合わせからなる群から選択され、0≦x<2であり、前記第二の材料層は、前記集電体と前記第一の材料層の間に設置されている。
【0007】
本願のもう1つの側面により、本願の実施例は、負極板(負極シート)と、隔離膜(セパレータ)と、前記正極板とを含む電気化学装置を提供する。
【0008】
本願のもう1つの側面により、本願の実施例は、上述した電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0009】
本願の実施例の他の面及びメリットは、部分的に後述の説明において記述し、示し、又は、本願の実施例の実施により詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本願の実施例を記述しやすくするために、以下に本願の実施例及び従来技術を記述するために必要とする図面を簡単に説明する。当然ながら、以下の記述における図面は、本願の一部の実施例に過ぎない。当業者にとっては、創造性のある労働を必要とせず、これらの図面に示された構造に基づいて他の実施例の図面を得ることができる。
図1】本願の幾つかの実施例による正極板の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願の実施例は、後述において詳しく記載する。本願の明細書の全文においては、同じ又は類似するアセンブリ及び同じ又は類似する機能を有するアセンブリは、類似する図面符号で示されている。ここで記載されている図面に関する実施例は、説明し、図示するためのものであり、本願の基本を理解するために用いられる。本願の実施例は、本願に対する制限として解釈されるべきではない。
【0012】
本明細書においては、用語「大体」、「ほぼ」、「実質的」及び「約」は、小さな変化を記述し、説明するために用いられる。イベント又は状況と組み合わせて使用する際に、前記用語は、イベント又は状況が正確に発生した例及びイベント又は状況が類似的に発生した例を指しても良い。例を挙げると、値と組み合わせて使用する際に、用語は、前記値の±10%以下の変化範囲を指してもよく、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下又は±0.05%以下であっても良いことが理解されたい。例を挙げると、2つの値の間の差が前記値の平均値の±10%以下(例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は、±0.05%以下)であれば、前記2つの値は、「ほぼ」同じであると見なされても良い。
【0013】
本願においては、特別の指定又は限定を除き、「中央の」、「縦方向の」、「横方向の」、「前方の」、「後方の」、「右方の」、「左方の」、「内部の」、「外部の」、「比較的低い」、「比較的高い」、「水平の」、「垂直の」、「より高い」、「より低い」、「上方の」、「下方の」、「頂部の」、「底部の」のような相対性の用語及びその発展した用語(例えば、「水平的に」、「下へ」、「上へ」等)は、討論における記載又は図面における記載の方向を引用するものであると解釈されるべきである。これらの相対性のある用語は、記載をしやすくするために用いられ、本願を特定の方向で構築又は操作することが求められているわけではない。
【0014】
また、説明しやすくするために、「第一」、「第二」、「第三」等は、本願において一つの図面又は一連の図面の異なるアセンブリを区別するために用いられている。「第一」、「第二」、「第三」等は、対応するアセンブリを説明するという意図がない。
【0015】
また、本願において範囲の形で量、比及び他の値を表す場合がある。これらの範囲の形は、便利さ及び簡潔さのためであり、柔軟に理解すべきであり、範囲の制限を明確に指定する値を含む他、当該範囲内に含まれる全ての各々の値又はサブ範囲を含み、それぞれの値及びサブ範囲を明確に指定することと同じである。
【0016】
具体的な発明を実施するための形態及び特許請求の範囲においては、用語「中の少なくとも一者」、「中の少なくとも1つ」、「中の少なくとも一種類」又は他の類似する用語で接続されている項目のリストは、挙げられた項目の全ての組み合わせを意味することができる。例えば、項目A及びBが挙げられた場合、フレーズ「A及びBの中の少なくとも一者」は、Aだけ、Bだけ、又はA及びBを意味する。他の1つの実例においては、項目A、B、Cが挙げられた場合、フレーズ「A、B及びCの中の少なくとも一者」は、Aだけ、Bだけ、Cだけ、A及びB(Cが除外される)、A及びC(Bが除外される)、B及びC(Aが除外される)、又はA、B及びCの全部を意味する。項目Aは、単独の素子又は複数の素子を含んでも良い。項目Bは、単独の素子又は複数の素子を含んでも良い。項目Cは、単独の素子又は複数の素子を含んでも良い。
【0017】
本願の1つの側面により、本願の実施例は、リン酸塩、リチウムチタンリン酸塩又はその組み合わせを含む材料層の多層構造の正極板を提供する。リン酸塩及びリチウムチタンリン酸塩の電子導電性がとても低いので、正極活性材料層と集電体の間に、リン酸塩、リチウムチタンリン酸塩又はその組み合わせを含む一層の材料層を設置することによって、充放電のサイクル過程においては、当該材料層は、充放電のサイクル過程において正極板端の高電圧を非常に良く保護することができる。また、リン酸塩、リチウムチタンリン酸塩は、高電圧で安定構造を有するので、リン酸塩、リチウムチタンリン酸塩の表面に対しては、他の材料(例えば、炭素又は金属酸化物)で覆うという処理を行う必要がなく、正極板の中の各層の境界面が高電圧で酸化されることが低減される。釘刺しテスト又は衝撃テストのような安全テストを行う際に、当該材料層は、正極板の集電体と負極材料層が直接的に接触することを非常によく隔てることができるので、電気化学装置の安全性能を高めることができる。従来技術の他の酸化物塗布層(例えば、酸化アルミニウム)に比べ、リン酸塩は、より良い加工性能及び安定性を有するので、充放電過程全体においては、正極板は、厚さの変化が小さく、脱落しにくい。また、リチウムチタンリン酸塩のリチウム嵌め込み(挿入)電位は、約2.5Vであり、放電過程においては、リチウムイオンが主に正極活性材料層(第一の材料層)に嵌め込まれ、リチウムチタンリン酸塩を含む材料層(第二の材料層)は、リチウム嵌め込みの反応に寄与しない。よって、当該材料層(第二の材料層)は、体積の変化及び生じた反応電流の密度が非常に小さく、各層の境界面の反応電流密度の差が電気伝導システムに与える影響を低減させることができ、特に、層間の境界面に対する破壊を低減させることができるので、正極板の全体抵抗の安定性を保障することができる。本願の実施例による正極板は、より低い初期抵抗を有すると同時に、高温貯蔵下での抵抗増加を減少することができる。
【0018】
図1は、本願の幾つかの実施例による正極板の構造模式図である。
【0019】
図1に示すように、正極板10は、集電体101と、第一の材料層102と、集電体101と第一の材料層102の間に設置されている第二の材料層103とを含む。幾つかの実施例においては、第一の材料層102は、第一の材料を含み、第二の材料層103は、第二の材料を含み、なお、第一の材料と第二の材料は、同じであっても良く、異なっても良く、第二の材料は、一般式M1PO で表されるリン酸塩及び一般式LiTi2-xM2(PO で表されるリチウムチタンリン酸塩の中の少なくとも1つを含み、なお、M1は、Co、Mn、Fe、Ti及びその組み合わせからなる群から選択され、M2は、V、Sc、Ge、A1及びその組み合わせからなる群から選択され、且つ0≦x<2である。図1における正極板10の集電体101の両側には、何れも第一の材料層102及び第二の材料層103の二層の構造が設置されているが、図1は、正極板の構造の例示的な実施例を説明するために用いられるものに過ぎず、本願の精神から逸脱しない限り、当業者は、実際のニーズ又は極板の設計により、集電体101の片側又は両側に二層の構造を設置しても良く、それに限定されるわけではない。
【0020】
幾つかの実施例においては、第二の材料層103の厚さは、約2μm~約10μmである。正極板10の第二の材料層103の厚さは、上述した範囲内にあれば、第二の材料(リン酸塩またはリチウムチタンリン酸塩)は、集電体により均一的に設置することができる。これにより、電気化学装置は、より良いサイクル性能及び比較的高いエネルギー密度を有することができる。幾つかの実施例においては、第二の材料層103の厚さは、約3μm~約7μmである。
【0021】
幾つかの実施例においては、第二の材料層103の圧縮密度は、約1.8g/cm~約3.1g/cmである。第二の材料層103の圧縮密度は、上述した範囲内にあれば、比較的安定な構造強度を有することができる。これにより、電気化学装置は、比較的良いサイクル製造及び比較的高いエネルギー密度を有することができる。幾つかの実施例においては、第二の材料層103の圧縮密度は、約2.4g/cm~約2.7g/cmである。
【0022】
幾つかの実施例においては、第二の材料の粒度Dv50は、約0.5μm~約5.0μmである。正極板10の第二の材料の粒度Dv50は、上述した範囲内にあれば、第二の材料を集電体により均一的に設置することができる。本願においては、用語「Dv50」は、「粒度」とも呼ばれ、体積基準の粒度分布において小さい粒径側から体積累積50%に達した粒径を表す。
【0023】
当業者は、実際のニーズに基づいて当分野の慣用の正極活性材料を第一の材料として選択することができる。幾つかの実施例においては、第一の材料は、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミ酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄マンガンリチウム、マンガン酸リチウム、リチウムリッチマンガン系材料及びその組み合わせからなる群から選択される。また、当業者は、実際のニーズに基づいて第一の材料に対して遷移金属元素ドーピング又は無機酸化物クラッド等のような、当分野において周知されている正極活性材料の処理を採用することができる。幾つかの実施例においては、本願の第一の材料は、遷移金属ドーピングを更に含み、例えば、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、A1、Mg、Ti、Zr及びその組み合わせからなる群の元素を含むが、これらに限らない。幾つかの実施例においては、本願の第一の材料は、クラッド層を更に含み、前記クラッド層は、B、A1、Zr、C、Sの中の少なくとも1つの元素を含むが、これらに限らない。
【0024】
幾つかの実施例においては、第二の材料層103と第一の材料層102は、正極板の厚さの方向に沿う面密度の比の値は、約1%~約5%であることによって、電気化学装置は、より良いサイクル性能及び比較的高いエネルギー密度を有する。本願においては、用語「面密度」は、単位面積の質量である。
【0025】
幾つかの実施例においては、第一の材料層102の厚さは、約120μm~約450μmである。
【0026】
幾つかの実施例においては、第一の材料層102の圧縮密度は、約4.05g/cm~約4.3g/cmである。幾つかの実施例においては、第一の材料層102の圧縮密度は、約4.15g/cm~4.25g/cmである。
【0027】
幾つかの実施例においては、第一の材料の粒度Dv50は、約2.5μm~約20μmである。
【0028】
幾つかの実施例においては、第二の材料層103は、接着剤及び導電剤の中の少なくとも一種類を更に含む。
【0029】
幾つかの実施例においては、第二の材料層103の総重量で計算すると、前記接着剤は、第二の材料層103の中の含有量が約1wt%~約5wt%である。幾つかの実施例においては、第二の材料層103の総重量で計算すると、前記導電剤は、前記第二の材料層の中の含有量が約1wt%~10wt%である。接着剤及び導電剤の中の少なくとも1つを添加することによって、第二の材料層103の電子導電性及び構造安定性を調整することができるので、電気化学装置のサイクル性能及び安全性能を高めることができる。
【0030】
幾つかの実施例においては、第一の材料層102は、接着剤及び導電剤の中の少なくとも一種類を更に含む。
【0031】
幾つかの実施例においては、第一の材料層102の総重量で計算すると、前記接着剤は、第一の材料層102の中の含有量が約0.1wt%~約8wt%である。幾つかの実施例においては、第一の材料層102の総重量で計算すると、前記導電剤は、前記第一の材料層の中の含有量が約0.01wt%~約10wt%である。接着剤及び導電剤の中の少なくとも1つを添加することによって、第一の材料層102の電子導電性及び構造安定性を調整することができるので、電気化学装置のサイクル性能及び安全性能を高めることができる。
【0032】
幾つかの実施例においては、第一の材料層102又は第二の材料層103の中に用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、スチレンブタジエンゴム及びその組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施例においては、第一の材料層102又は第二の材料層103の中に用いられる導電剤は、カーボンナノチューブ、炭素繊維、導電カーボン黒、アセチレンブラック、グラフェン、ケッチェンブラック及びその組み合わせからなる群から選択される。当業者は、実際のニーズに基づいて当分野の慣用の接着剤及び導電剤を選択することができ、上述したものに限らないことが理解されたい。
【0033】
幾つかの実施例においては、本願の正極板の製造方法は、次のステップを含む。
【0034】
(1)第二の材料、接着剤及び導電剤を、一定の重量比で混合し、それを稀釈溶媒(N-メチルピロリドン)に溶かして十分にかき混ぜることにより、第二の材料層のスラリーを形成し、その後、前記第二の材料層のスラリーを集電体の一面又は両面に均一的に塗布する。乾燥、冷間圧縮の工程を経ると、下層膜(第二の材料層)を得る。
【0035】
(2)正極材料(第一の材料)、接着剤及び導電剤を、一定の重量比で混合し、それを稀釈溶媒(N-メチルピロリドン)に溶かして十分にかき混ぜることにより、第一の材料層のスラリーを形成し、その後、前記第一の材料層のスラリーを前記下層膜(ベース層膜)の露出した表面に均一的に塗布する。乾燥、冷間圧縮の工程を経ると、二層の構造を有する正極板を得る。
【0036】
本願の実施例における正極板の製造方法は、当分野の慣用方法であっても良く、上述した方法に限らないことが理解されたい。
【0037】
本願の幾つかの実施例は、本願の正極板を含む電気化学装置を更に提供する。幾つかの実施例においては、前記電気化学装置は、リチウムイオン電池である。前記リチウムイオン電池は、本願による正極板、負極板及び隔離膜を含み、なお、隔離膜は、正極板と負極板の間に設置されている。
【0038】
幾つかの実施例においては、本願の正極板の集電体は、アルミ箔又はニッケル箔であっても良く、負極板の集電体は、銅箔又はニッケル箔であっても良いが、当分野の良く使われる他の正極集電体及び負極集電体を用いても良く、それに限らない。
【0039】
幾つかの実施例においては、負極板は、リチウム(Li)を吸収し、放出することができる負極材料(後述においては、「リチウム(Li)を吸収/放出することができる負極材料」と呼ばれる場合がある)を含む。リチウム(Li)を吸収/放出することができる負極材料の例としては、炭素材料、金属化合物、酸化物、硫化物、LiNのようなリチウムの窒化物、リチウム金属、リチウムと共に合金を形成する金属及びポリマー材料を含んでも良い。
【0040】
本願の幾つかの実施例の隔離膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド及びアラミドの中の少なくとも一種類を含むが、これらに限らない。例を挙げると、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び超高分子量ポリエチレンの中から選択された少なくとも1つのコンポーネントを含む。特に、ポリエチレンとポリプロピレンは、ショートを防止するのに良好な作用を有し、シャットダウン効果によりリチウムイオン電池の安定性を改善することができる。
【0041】
本願のリチウムイオン電池は、電解質を更に含み、前記電解質は、ゲル電解質、固態電解質及び電解液の中の一種類又は多種類であっても良く、電解液は、リチウム塩及び非水性溶媒を含む。
【0042】
幾つかの実施例においては、前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiB(C、LiCHSO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiC(SOCF、LiSiF、LiBOB及びジフルオロホウ酸リチウムの中の一種類又は多種類から選択される。例を挙げると、リチウム塩は、LiPFを選択してもよい。なぜならば、LiPFは、高いイオン導電率を与え、サイクル特性を改善することができるからである。
【0043】
前記非水性溶媒は、カーボネート化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、他の有機溶媒またはそれらの組み合わせであって良い。
【0044】
前記カーボネート化合物は、鎖状カーボネート化合物、環状カーボネート化合物、フルオロカーボネート化合物またはそれらの組み合わせであっても良い。
【0045】
前記鎖状カーボネート化合物の例は、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(MEC)とその組み合わせである。前記環状カーボネート化合物の例は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、プロピオン酸プロピル(PP)及びその組み合わせである。前記フルオロカーボネート化合物の例は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネートおよびそれらの組み合わせである。
【0046】
前記カルボン酸エステル化合物の例は、酢酸メチル、酢酸エチル、N-プロピルアセテート、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカラクトン、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン、ギ酸メチルおよびそれらの組み合わせである。
【0047】
前記エーテル化合物の例は、ジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメチルオキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランおよびそれらの組み合わせである。
【0048】
前記他の有機溶媒の例は、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン)、N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル、リン酸エステル、およびそれらの組み合わせである。
【0049】
幾つかの実施例においては、前記リチウムイオン電池の製造方法は、上述した実施例における正極板、隔離膜及び負極板を順に巻回し、折り畳んで又は積層して電極アセンブリを形成し、前記電極アセンブリを、例えば、アルミプラスチックフィルムの中に取り付け、電解液を注入し、その後、真空パッケージング、放置、化成、整形等の工程を行うことにより、リチウムイオン電池を得ることを含む。
【0050】
当業者は、次の内容を理解すべきであり、即ち、上述したように、リチウムイオン電池を例として説明したが、当業者は、本願を閲覧した後、本願の正極板が他の適切な電気化学装置に用いられることができることを想到することができる。このような電気化学装置は、電気化学反応が発生する任意の装置を含み、その具体的な実例は、全ての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はキャパシタンスを含む。特に、当該電気化学装置は、リチウム二次電池であり、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池を含む。
【0051】
本願の幾つかの実施例は、本願の実施例の中の電気化学装置を含む電子装置を更に提供する。
【0052】
本願の実施例における電子装置は、特に限定されず、従来技術で知られている任意の電子装置に使用されてもよい。幾つかの実施例では、前記電子装置は、ノートブックコンピュータ、ペン入力コンピュータ、モバイルコンピュータ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、ポータブルファックス機、ポータブルコピー機、ポータブルプリンタ、ヘッドセットステレオイヤホン、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、ポータブルCDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリカード、ポータブルレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、電動アシスト自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュ、カメラ、家庭用大型蓄電池及びリチウムイオンコンデンサー等を含むが、これらに限らない。
【実施例
【0053】
以下、幾つかの具体的な実施例及び比較例を挙げ、その電気化学装置(リチウムイオン電池)に対して高温貯蔵インピーダンステスト、釘刺しテスト及び衝撃テストを行うことで、本願の技術案をよりよく説明する。
【0054】
容量テスト:
実施例および比較例のリチウムイオン電池を、25℃±2℃の恒温ボックスに入れ、0.5Cの定電流で4.45Vに充電した後、電流が0.02C未満になるまで、4.45Vの定電圧で充電し、リチウムイオン電池が完全に充電されている状態にする。30分放置後、0.2Cの倍率(レート)でリチウムイオン電池を3.0Vまで放電させる。30分放置後、放電容量をリチウムイオン電池の実際の電池容量とする。各グループに5個のリチウムイオン電池を用意し、リチウムイオン電池のエネルギー密度(グラム容量)の平均値を計算する。
【0055】
エネルギー密度(グラム容量)=放電容量/第一の材料層と第二の材料層の合計重量
【0056】
高温貯蔵インピーダンステスト:
実施例および比較例のリチウムイオン電池を、25℃±2℃の恒温ボックスに入れ、0.5Cの定電流で4.45Vに充電した後、電流が0.02C未満になるまで、4.45Vの定電圧で充電し、リチウムイオン電池が完全に充電されている状態にする。完全に充電されている状態でのリチウムイオン電池のインピーダンス(IMP)を初期インピーダンスとして記録する。続いて、リチウムイオン電池を85℃±2℃のオーブンに入れ、6時間放置し、高温貯蔵後、リチウムイオン電池のインピーダンスをテストインピーダンスとして記録する。各グループに5個のリチウムイオン電池を用意し、リチウムイオン電池の高温貯蔵インピーダンスの増加率の平均値を計算する。リチウムイオン電池の高温貯蔵インピーダンスの増加率=(テストインピーダンス-初期インピーダンス)/初期インピーダンス×100%である。
【0057】
釘刺しテスト:
リチウムイオン電池を25°Cの恒温ボックスに入れ、リチウムイオン電池が恒定の温度に達するように30分間放置する。恒定の温度に達したリチウムイオン電池を0.5Cの定電流で4.45Vの電圧に充電し、その後、電流が0.02C未満になるまで、4.45Vの定電圧で充電し、リチウムイオン電池が完全に充電されている状態にする。完全に充電されているリチウムイオン電池を釘刺しテスト機に移し、テスト環境温度を25℃±2℃に保ち、直径4mmの鋼製釘を使用し、リチウムイオン電池の中心を30mm/sの均一速度で貫通させ、300秒維持し、リチウムイオン電池が発煙、発火、爆発しない場合、合格として記録する。毎回10個のリチウムイオン電池をテストし、釘刺しテストに合格したリチウムイオン電池の数を、リチウムイオン電池の安全性能を評価する指標とする。
【0058】
衝撃テスト:
リチウムイオン電池を25°Cの恒温ボックスに入れ、リチウムイオン電池が恒定の温度に達するように30分放置する。恒定の温度に達したリチウムイオン電池を0.5Cの定電流で4.45Vの電圧に充電し、その後、電流が0.02C未満になるまで、4.45Vの定電圧で充電し、リチウムイオン電池が完全に充電されている状態にする。完全に充電されているリチウムイオン電池を衝撃テスト機に移し、テスト環境温度を25°C±2°Cに保つ。直径が15.8±0.2mmであり、長さが少なくとも7cmである鋼棒をリチウムイオン電池の中心に垂直に配置し、重量が9.1±0.1kgのスチールハンマーを使用してリチウムイオン電池の中心から61±2.5cmのところからスチールハンマーをまっすぐ落として鋼棒を叩き、リチウムイオン電池に衝撃を与える。衝撃後、リチウムイオン電池を300秒間保持し、リチウムイオン電池は、発煙、発火、爆発しない場合、合格として記録する。毎回10個のリチウムイオン電池をテストし、衝撃テストに合格したリチウムイオン電池の数を、リチウムイオン電池の安全性能を評価する指標とする。
【0059】
負極板の製造:
負極集電体として銅箔を使用し、グラファイトスラリーの層(負極材料層)を負極集電体の表面に均一に塗布する。グラファイトスラリーの組成は、95wt%の人造グラファイト、2wt%のアセチレンブラック、2wt%のスチレンブタジエンゴム及び1wt%のカルボキシメチルセルロースナトリウムであり、グラファイトスラリーが塗布された負極集電体を、120°Cで1時間ベークし、その後、冷間プレス、切断、切出を行うことにより、負極板を得る。
【0060】
電解液の製造:
水含有率が10ppm未満の環境で、ヘキサフルオロリン酸リチウムを非水性有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1:1、質量比)と8:92の質量比で混合することで、電解液を形成する。
【0061】
リチウムイオン電池の製造:
以下の製造方法で実施例および比較例の正極板をリチウムイオン電池に製造する。具体的には、隔離膜としてポリエチレンフィルムを用い、以下の実施例および比較例で製造された正極板を、正極板と、隔離膜と前記負極板の順で積層し、隔離膜が正極板と負極板の間において隔離する役割を果たし、その後、巻回して電極アセンブリにする。続いて、当該電極アセンブリをアルミプラスチックフィルム製の包装袋に入れ、80℃で水分を除去した後、乾式の電極アセンブリを得る。そして、上記電解液を乾式の電極アセンブリに注入し、真空パッケージング、放置、化成、整形等の工程を行うと、以下の実施例および比較例のリチウムイオン電池の製造が完了する。
【0062】
[実施例1]
粒度Dv50が1.0μmであるリン酸鉄(FePO)を第二の材料とし、ポリフッ化ビニリデン、アセチレンブラックと96:2:2の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)溶液に溶かすことで、第二の材料層のスラリーを形成する。集電体としてアルミ箔を使用し、集電体の表面に第二の材料層のスラリーを塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、下層膜(第二の材料層)を得る。下層膜の中の第二の材料層の厚さが5μmであり、圧縮密度は、2.5g/cmである。
【0063】
コバルト酸リチウム(Dv50が12μmであり)、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、N-メチルピロリドン溶液に97:2:1の重量比で溶かし、第一の材料層のスラリーを形成する。次に、第一の材料層のスラリーを、下層膜のうちの、第二の材料層の露出する面に塗布する。乾燥、冷間プレス、切断の処理を経て、正極板を得る。なお、前記第一の材料層は、厚さが300μmであり、圧縮密度が4.2g/cmである。
【0064】
[実施例2]
実施例1の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例2におけるリン酸鉄の粒度Dv50が1.5μmである。
【0065】
[実施例3]
実施例1の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例3におけるリン酸鉄の粒度Dv50が2.0μmである。
【0066】
[実施例4]
実施例1の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例4におけるリン酸鉄の粒度Dv50が2.5μmである。
【0067】
[実施例5]
実施例1の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例5におけるリン酸鉄の粒度Dv50が5.0μmである。
【0068】
[実施例6]
実施例2の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例6における第二の材料層の厚さは、2μmである。
【0069】
[実施例7]
実施例2の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例7における第二の材料層の厚さは、7μmである。
【0070】
[実施例8]
実施例2の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例8における第二の材料層の厚さは、10μmである。
【0071】
[実施例9~11]
実施例2の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例9においてリン酸チタン(TiPO)を第二の材料として用いられ、実施例10においてリン酸マンガン(MnPO)を第二の材料として用いられ、実施例11においてリン酸コバルト(CoPO)を第二の材料として用いられている。
【0072】
[実施例12~19]
順に実施例1~8の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例12~19においてリン酸チタンリチウム(LiTi(PO)を第二の材料として用いられ、リン酸チタンリチウム(LiTi(PO)をポリフッ化ビニリデン、アセチレンブラックと96:2.5:1.5の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)溶液に溶かすことである。
【0073】
[実施例20]
実施例13の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例20においてリン酸チタンリチウム(LiTi(PO)を第二の材料として用いられ、リン酸チタンリチウム(LiTi(PO)をポリフッ化ビニリデン、アセチレンブラックと96:3:1の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)溶液に溶かすことである。
【0074】
[実施例21]
実施例13の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例21においてリン酸チタンリチウム(LiTi(PO)を第二の材料として用いられ、リン酸チタンリチウム(LiTi(PO)をポリフッ化ビニリデン、アセチレンブラックと96:2:2の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)溶液に溶かすことである。
【0075】
[実施例22~25]
実施例13の製造方法と同じであるが、違うところは、実施例22においてバナジウムドープリン酸チタンリチウム(LiTi1.990.01(PO)を第二の材料として用いられ、実施例23においてスカンジウムドープリン酸チタンリチウム(LiTi1.99Sc0.01(PO)を第二の材料として用いられ、実施例24においてゲルマニウムドープリン酸チタンリチウム(LiTi1.99Ge0.01(PO)を第二の材料として用いられ、実施例25においてアルミニウムドープリン酸チタンリチウム(LiTi1.99Al0.01(PO)を第二の材料として用いられている。
【0076】
[比較例1]
コバルト酸リチウム、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンをN-メチルピロリドン溶液に97:2:1の重量比で溶かし、第一の材料層のスラリーを形成する。集電体としてアルミ箔を使用し、第一の材料層のスラリーを集電体の表面に直接に塗布する。乾燥、冷間プレス、切断の処理を経て、正極板を得る。
【0077】
[比較例2]
実施例1の製造方法と同じであるが、違うところは、比較例2においてリン酸鉄リチウム(LiFePO)を第二の材料として用いられている。
【0078】
[比較例3]
実施例2の製造方法と同じであるが、違うところは、比較例3における第二の材料層の厚さは、2μmである。
【0079】
[比較例4]
実施例13の製造方法と同じであるが、違うところは、比較例4における第二の材料層の厚さは、2μmである。
【0080】
[比較例5]
実施例2の製造方法と同じであるが、違うところは、比較例5において粒度Dv50が0.2μmである酸化アルミニウム(Al)を第二の材料とし、ポリフッ化ビニリデン、アセチレンブラックと96:2:2の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)溶液に溶かすことである。
【0081】
上述した実施例及び比較例の正極板に対し、その厚さ、幅、長さ及び重量を測定し、その第一の材料層又は第二の材料層の圧縮密度、及び、第二の材料層と第一の材料層102の、正極板に沿う表面の面密度の比の値を記録する。その後、リチウムイオン電池に対して高温貯蔵インピーダンステスト、釘刺しテスト及び衝撃テストを行い、そのテスト結果を記録する。
【0082】
実施例1~25及び比較例1~5の第一の材料層及び第二の材料層の統計の値は、次の表1に表されている。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例1~11及び比較例1~3及び5のリチウムイオン電池は、高温貯蔵インピーダンステスト、釘刺しテスト及び衝撃テストによるテスト結果は、次の表2に表されている。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例12~25及び比較例1~2及び4~5のリチウムイオン電池は、容量テスト、高温貯蔵インピーダンステスト、釘刺しテスト及び衝撃テストによるテスト結果は、次の表3に表されている。
【0087】
【表3】
【0088】
表1~3から分かるように、比較例1に比べ、本願の実施例における本願の正極板を有するリチウムイオン電池は、安全性能の面で顕著な進歩が得られた。具体的には、比較例1と実施例1~25を比較して分かるように、本願の正極板を有する電気化学装置は、釘刺しテスト及び衝撃テストにおいてその合格率を有効的に高めることができる。これは、本願の正極板における第二の材料層が正極板における集電体と負極板の接触を有効的に防止することができるので、リチウムイオン電池の安全性能をある程度改善できたことを意味する。また、表3に示すように、比較例1に比べ、本願の実施例12~25のリチウムイオン電池の第二の材料自身は、リチウムドープを更に含み、リチウムイオン電池のエネルギー密度を有効的に高めることができる。
【0089】
実施例1~5及び12~16を比較して分かるように、第二の材料の粒度の上昇に伴い、リチウムイオン電池の初期インピーダンスも高まる一方、その高温貯蔵インピーダンスの増加率が下がる。本願では、第二の材料の粒度を制御することにより、リチウムイオン電池は、初期インピーダンスがある比較的低い範囲内に保たれる状態で、その高温貯蔵インピーダンスの増加率を最適化することができる。よって、リチウムイオン電池は、優れたサイクル性能及び高温貯蔵性能を同時に有することができる。
【0090】
実施例13、20及び21を比較して分かるように、導電剤の第二の材料層へのドープ含有量は、リチウムイオン電池の初期インピーダンス及び高温貯蔵インピーダンスの増加率に影響を与えることができる。導電剤の第二の材料層へのドープ含有量は、高ければ高いほど、リチウムイオン電池の初期インピーダンス及び高温貯蔵インピーダンスの増加率は低いが、高すぎる導電剤含有量は、リチウムイオン電池の、釘刺し及び衝撃テストの合格率を下げる可能性がある。本願の実施例の範囲内の導電材含有量は、リチウムイオン電池が比較的低い初期インピーダンス及び高温貯蔵インピーダンスの増加率を保たせることができ、かつ90%以上の釘刺し及び衝撃テストの合格率を保つことができる。
【0091】
比較例2と実施例2、9~11、13及び22~25を比較して分かるように、比較例2においてリン酸鉄リチウムを第二の材料とするリチウムイオン電池に比べ、実施例2及び9~11においてリン酸塩を第二の材料とするリチウムイオン電池、及び、実施例13及び22~25においてリチウムチタンリン酸塩を第二の材料とするリチウムイオン電池は、高温貯蔵後のインピーダンスの増加を有効的に下げ、高温貯蔵インピーダンスの増加率を25%以下に保つことができる。これは、本願においてリン酸塩を用いる第二の材料層は、高温及び高電圧の環境で良好な安定性を有し、膨張、変形、脱落等の現象が生じにくいということを意味する。よって、本願のリチウムイオン電池は、比較的低い初期インピーダンス及び高温貯蔵インピーダンスの増加率を有するので、そのサイクル性能を高めることができる。
【0092】
比較例3及び4と実施例2、6~8、13及び17~19を比較して分かるように、正極板における第二の材料層の厚さは、リチウムイオン電池の安全性能に対して顕著な影響を与える。比較例3及び4のリチウムイオン電池の第二の材料層の厚さが低すぎることによって、リン酸塩及びリチウムチタンリン酸塩の分布が均一ではないことを招いてしまうので、第二の材料層は、正極板における集電体と負極板に対する隔離効果が弱くなってしまう。本願のリチウムイオン電池の正極板の構造設計は、その安全性能を高めると同時に、第二の材料層がエネルギー密度及びインピーダンスに与える影響を下げることができるので、リチウムイオン電池のサイクル及び安全性能を最適化することができる。
【0093】
上述した実施例及び比較例の比較により、本願の正極板は、リン酸塩及びリチウムチタンリン酸塩の中の少なくとも一種類を含む第二の材料層及び二層構造を設置することにより、正極板における集電体と負極板の接触を隔離し、よって電気化学装置の電気化学安定性及び安全性能が顕著に高まった。また、本願の正極板は、第二の材料層に対する設計を最適化することにより、電気化学装置のインピーダンス及びその高温及び高電圧の環境でのインピーダンスの増加を下げることができるので、安全性能を最適化した環境で、サイクル性能を高めることができる。
【0094】
全明細書においては、「幾つかの実施例」、「一部の実施例」、「1つの実施例」、「もう1つの例」、「例を挙げる」、「具体的な例」又は「一部の例」に対する引用は、本願における少なくとも1つの実施例又は例が当該実施例又は例に記載の特定の特徴、構造、材料又は特性を含むことを意味する。故に、「幾つかの実施例における」、「実施例において」、「1つの実施例において」、「もう1つの例において」、「1つの例において」、「特定の例において」又は「例を挙げる」のような、全明細書の各箇所に現れる記述は、必ずしも本願の同じ実施例又は例を引用するとは限らない。また、本願における特定の特徴、構造、材料又は特性は、任意の適切な方法で1つ又は複数の実施例又は例において組み合わせることができる。
【0095】
説明用の実施例を提示し、説明したが、当業者は、上述した実施例が本願を限定すると解釈せず、本願の精神、原理及び範囲から逸脱しない限り、実施例に対する変更、置換え及び補正を行うことができることを理解すべきである。
図1