(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】溶剤を含有しないポリイミド含有配合物を使用する付加製造
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20230207BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20230207BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230207BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230207BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y70/00
C08F222/40
(21)【出願番号】P 2020536634
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 IL2018051403
(87)【国際公開番号】W WO2019130312
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-14
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】クノ, レヴ
(72)【発明者】
【氏名】ポクラス, マリアナ
(72)【発明者】
【氏名】シュペイザー, エレナ
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/193933(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/193934(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/019374(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/027482(WO,A1)
【文献】特開2008-013772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0100817(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00- 64/40
B33Y 10/00- 99/00
C08G 73/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物体の付加製造の方法であって、三次元物体が、その少なくとも一部においてポリイミド含有材料を含有し、前記方法が、
物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を連続的に形成し、それによって物体を形成すること、但し前記複数の層のうちの少なくとも二、三の層の各々の前記形成は、ポリイミドプリカーサー及び多官能硬化性材料を含む造形用材料配合物を吐出することを含む、及び
吐出された層の各々を硬化条件に露出し、それによって前記ポリイミド含有材料を含む硬化された造形用材料を形成すること
を含み、
前記ポリイミドプリカーサーを含む前記造形用材料配合物が、
溶剤非含有の配合物であり、かつ有機溶剤を欠き
、及び前記造形用材料配合物中の前記多官能硬化性材料の量が、25重量%未満である、方法。
【請求項2】
前記ポリイミドプリカーサーを含む前記造形用材料配合物が、極性有機溶剤を欠いている、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶剤が、190℃未満の沸点及び/又は1未満もしくは0.5未満の蒸発速度を有する、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリイミドプリカーサーを含む前記造形用材料配合物が、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を欠いている、請求項1~
3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ポリイミドプリカーサーを含む前記造形用材料配合物の粘度が、70℃
で16
~20センチポアズである、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ポリイミドプリカーサーが、ビスマレイミドである、請求項1~
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリイミドプリカーサーが、300~2000ダルトンの分子量を有する、請求項1~
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリイミドプリカーサーが、以下の式Iによって表わされる、請求項1~
7のいずれかに記載の方法:
式中、Lは、連結部分であり、R
1-R
4は、各々独立して水素、アルキル、及びシクロアルキルから選択される。
【請求項9】
前記連結部分Lが、炭化水素であるか、又はそれを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記炭化水素が、枝分かれユニットを介して間を接続される二つ以上のアルキレン鎖を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記枝分かれユニットが、シクロアルキルを含むか、又はそれからなる、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記造形用材料配合物中の前記ポリイミドプリカーサーと前記多官能硬化性材料の重量比が、50:50~90:10の範囲である、請求項1~
11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記造形用材料配合物中の前記ポリイミドプリカーサーと前記多官能硬化性材料の重量比が、80:20~90:10の範囲である、請求項1~
11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記多官能硬化性材料が、以下の少なくとも一つを特徴とする、請求項1~
13のいずれかに記載の方法:
15センチポアズ未満又は10センチポアズ未満の室温における粘度;及び
前記方法中の配合物に付与される温度より少なくとも10℃高い引火点。
【請求項15】
前記多官能硬化性材料が、炭化水素を介して互いに連結された二つ以上の重合可能な部分を含む、請求項1~
14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記炭化水素が、任意選択的に1~4個のヘテロ原子によって中断された、3~20、又は3~10、又は3~8、又は4~8個の炭素原子を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記多官能硬化性材料が、二官能硬化性材料である、請求項1~
16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記二官能硬化性材料が、以下の式IIによって表わされる、請求項
17に記載の方法:
式中、Xは、-O-及び-O-C(=O)-から選択され、Dは、任意選択的に1~4個のヘテロ原子によって中断された、3~20、又は3~10、又は3~8、又は4~8個の炭素原子の炭化水素であり、Rx及びRyは、各々独立して水素、アルキル、及びシクロアルキルから選択される。
【請求項19】
前記炭化水素が、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はそれらのいずれかの組み合わせからなる、請求項
15,16,18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
物体を熱処理に供することをさらに含む、請求項1~
19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記熱処理が、少なくとも100℃の温度で少なくとも一時間物体を熱に露出することを含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
ポリイミドプリカーサー及び多官能硬化性材料を含む
、付加製造において造形用材料配合物として使用するための配合物であって、
配合物が、溶剤非含有の配合物であり、配合物が、有機溶剤を欠き
、及び多官能硬化性材料の量が、配合物の全重量の25重量%未満である、配合物。
【請求項23】
多官能硬化性材料が、以下の少なくとも一つを特徴とする
、請求項22に記載の配合物:
15センチポアズ未満又は10センチポアズ未満の室温における粘度;及び
少なくとも80℃の引火点。
【請求項24】
前記有機溶剤が、極性有機溶剤である、請求項
22又は
23に記載の配合物。
【請求項25】
前記有機溶剤が、190℃未満の沸点及び/又は1未満もしくは0.5未満の蒸発速度を有する、請求項
22~24のいずれかに記載の配合物。
【請求項26】
ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を欠いている、請求項
22~
25のいずれかに記載の配合物。
【請求項27】
70℃
で16
~20センチポアズの粘度を特徴とする、請求項
22~
26のいずれかに記載の配合物。
【請求項28】
前記ポリイミドプリカーサーが、ビスマレイミドである、請求項
22~
27のいずれかに記載の配合物。
【請求項29】
前記ポリイミドプリカーサーが、300~2000ダルトンの分子量を有する、請求項
22~
28のいずれかに記載の配合物。
【請求項30】
前記ポリイミドプリカーサーが、式Iによって表わされる、請求項
22~
29のいずれかに記載の配合物:
式中、Lは、連結部分であり、R
1-R
4は、各々独立して水素、アルキル、及びシクロアルキルから選択される。
【請求項31】
前記連結部分Lが、炭化水素であるか、又はそれを含む、請求項
30に記載の配合物。
【請求項32】
前記炭化水素が、枝分かれユニットを介して間を接続される二つ以上のアルキレン鎖を含む、請求項
31に記載の配合物。
【請求項33】
前記枝分かれユニットが、シクロアルキルを含むか、又はそれからなる、請求項
32に記載の配合物。
【請求項34】
配合物中の前記ポリイミドと前記多官能硬化性材料の重量比が、50:50~90:10の範囲である、請求項
22~
33のいずれかに記載の配合物。
【請求項35】
配合物中の前記ポリイミドと前記多官能硬化性材料の重量比が、80:20~90:10の範囲である、請求項
22~
33のいずれかに記載の配合物。
【請求項36】
前記多官能硬化性材料が、炭化水素を介して互いに連結された二つ以上の重合可能な部分を含む、請求項
22~
35のいずれかに記載の配合物。
【請求項37】
前記炭化水素が、任意選択的に1~4個のヘテロ原子によって中断された、3~20、又は3~10、又は3~8、又は4~8個の炭素原子を含む、請求項
36に記載の配合物。
【請求項38】
前記多官能硬化性材料が、二官能硬化性材料である、請求項
22~
37のいずれかに記載の配合物。
【請求項39】
前記二官能硬化性材料が、以下の式IIによって表わされる、請求項
38に記載の配合物:
式中、Xは、-O-及び-O-C(=O)-から選択され、Dは、任意選択的に1~4個のヘテロ原子によって中断された、3~20、又は3~10、又は3~8、又は4~8個の炭素原子の炭化水素であり、Rx及びRyは、各々独立して水素、アルキル、及びシクロアルキルから選択される。
【請求項40】
前記炭化水素が、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はそれらのいずれかの組み合わせからなる、請求項
36,37,39のいずれかに記載の配合物。
【請求項41】
包装材料に包装された請求項
22~
40のいずれかに記載の配合物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2017年12月28日出願の米国仮特許出願No.62/610984の優先権の利益を主張する。
【0002】
本願はまた、2017年12月28日出願の米国仮特許出願No.62/610983に関する。
【0003】
本願はまた、「ADDITIVE MANUFACTURING EMPLOYING POLYIMIDE-CONTAINING FORMULATIONS」(Attorney Docket No.75819)の名称の下で出願されたPCT特許出願に関する。
【0004】
上記出願の内容は全て、本明細書においてそれらの全体が完全に述べられているかのように、参考としてここに組み入れられる。
【0005】
発明の分野
本発明は、その一部の実施形態において、付加製造に関し、特に限定されないが、溶剤を含有しないポリイミド含有配合物を使用する付加製造に関する。
【背景技術】
【0006】
付加製造は、一般的に、三次元(3D)物体が物体のコンピューターモデルを利用して製造される方法である。かかる方法は、視覚化、デモンストレーション及び機械的試作、並びに迅速生産(RM)の目的のためにデザイン関連分野のような様々な分野で使用されている。
【0007】
いかなるAMシステムの基本操作も、三次元コンピューターモデルを薄い横断面にスライスし、結果を二次元位置データに変換し、データを、三次元構造を層状に製造する制御装置に供給することからなる。
【0008】
様々なAM技術が存在し、その中にはステレオリソグラフィー、デジタルライトプロセッシング(DLP)、及び三次元(3D)印刷(特に3Dインクジェット印刷)がある。かかる技術は、一種以上の構築材料、一般的には光重合性(光硬化性)材料の層ごとの堆積、及び凝固によって実施されることが一般的である。
【0009】
三次元印刷プロセスでは、例えば構築材料が、一組のノズルを有する印刷ヘッドから吐出され、支持構造上に層を堆積する。構築材料に依存して、層は、次いで、任意選択的に好適な装置を使用して凝固、固化又は硬化されることができる。
【0010】
様々な三次元印刷技術が存在し、例えば米国特許第6,259,962号、第6,569,373号、第6,658,314号、第6,850,334号、第7,183,335号、第7,209,797号、第7,225,045号、第7,300,619号、第7,479,510号、第7,500,846号、第7,962,237号及び第9,031,680号に開示される。それらの全ては、出願人が同じであり、その内容は、参考としてここに組み入れられる。
【0011】
付加製造に使用される印刷システムは、受容媒体及び一つ以上の印刷ヘッドを含むことができる。受容媒体は、例えば印刷ヘッドから吐出された材料を担持するための水平面を含むことができる製作トレイであることができる。印刷ヘッドは、例えば印刷ヘッドの長手方向軸に沿った一つ以上の列の配列で配置された複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドであることができる。印刷ヘッドは、その長手方向軸が指示方向と実質的に平行になるように位置されることができる。印刷ヘッドは、予め規定された走査計画(ステレオリソグラフィー(STL)フォーマットに変換されかつコントローラにプログラムされたCAD構成)に従った印刷ヘッドの動きを含む、印刷プロセスを制御するマイクロプロセッサーのようなコントローラをさらに含むことができる。印刷ヘッドは、複数の噴射ノズルを含むことができる。噴射ノズルは、材料を受容媒体上に吐出し、3D物体の横断面を表わす層を作る。
【0012】
印刷ヘッドに加えて、吐出された構築材料を硬化するために、硬化エネルギーの源が存在してもよい。硬化エネルギーは、一般的には放射線、例えばUV放射線である。
【0013】
加えて、印刷システムは、堆積後かつ少なくとも部分的な凝固後で続く層の堆積前に各層の高さをレベリング及び/又は確立するためのレベリング装置を含むことができる。
【0014】
構築材料は、造形用材料及び支持材料を含むことができ、それらは、物体、及び物体が構築されるように物体を支持する一時的な支持構造を形成する。
【0015】
造形用材料(それは、一種以上の材料を含むことができる)は、希望の物体を生成するために堆積され、支持材料(それは、一種以上の材料を含むことができる)は、造形用材料要素のあり又はなしで使用され、構築時に物体の特定の領域のために支持構造を与え、例えば物体が湾曲した幾何学的形状、負角、間隙などの突き出ている特徴又は形状を含む場合には、連続する物体層の適切な垂直配置を確実にする。
【0016】
造形用材料及び支持材料はともに、それらが吐出される作業温度で液体であり、続いて一般的に硬化エネルギー(例えばUV硬化)にさらすと硬化又は凝固し、必要な層形状を形成することが好ましい。印刷完了後、支持構造は、除去され、製作された3D物体の最終形状を出現する。
【0017】
複数の付加製造プロセスは、一種より多い造形用材料を使用する物体の付加形成を可能にする(「複数材料(multi-material)」AMプロセスとしても言及される)。例えば、本出願人の公開No.2010/0191360を有する米国特許出願は、複数の印刷ヘッドを有する固体自由形状製作装置、複数の構築材料を製作装置に供給するように構成された構築材料供給装置、及び製作装置及び供給装置を制御するために構成された制御ユニットを含むシステムを開示する。システムは、複数の操作モードを持つ。一つのモードでは、全ての印刷ヘッドが製作装置の単一構築走査サイクル時に作動する。別のモードでは、印刷ヘッドの一つ以上が単一構築走査サイクル又はその一部の時に作動しない。
【0018】
Polyjet(商品名)(Stratasys Ltd.、イスラエル)のような3Dインクジェット印刷プロセスでは、構築材料は、一つ以上の印刷ヘッドから選択的に噴射され、ソフトウェアファイルによって規定されるような予め決定された構成に従って連続層で製作トレイの上に堆積される。
【0019】
本出願人による米国特許第9227365号は、複数の層、及び芯領域を構成する層状の芯、及び外被領域を構成する層状の鞘から構成される、鞘で覆われた物体の固体自由形状製作のための方法及びシステムを開示する。
【0020】
Polyjet(商品名)技術は、各ボクセル(ボリュームピクセル)の位置及び組成に対する制御を可能にし、それは、複数材料構造の巨大なデザインバーサティリティ及びデジタルプログラミングを与える。Polyjet(商品名)技術の他の利点は、14μm層高さまでの極めて高い印刷解像度、及び単一の物体において、同時に複数材料を印刷する能力である。この複数材料3D印刷プロセスは、異なる剛性、性能、カラー、又は透明性を有する要素からなる複雑な部分及び構造の製作のために役立つことが多い。ボクセルレベルでプログラムされた新しい範囲の材料は、少数(2,3)の出発材料のみを使用して、Polyjet(商品名)印刷プロセスによって作られることができる。
【0021】
3Dインクジェット印刷システムに利用される商業的に入手可能な印刷ヘッドのほとんどと適合可能にするために、未硬化構築材料は、次の特徴を具備すべきである:作業(例えば噴射)温度での相対的に低い粘度(例えば50cpsまで、又は35cpsまで、好ましくは8~25cpsのブルックフィールド粘度);約25~約55ダイン/cm、好ましくは約25~約40ダイン/cmの表面張力;及び1分以下、好ましくは20秒以下で硬化条件にさらしたときの噴射された層の高速凝固を可能とするための選択された硬化条件に対するニュートン液体挙動及び高い反応性。追加の条件は、例えば200℃未満又は190℃未満の沸点を具備する、低沸点溶剤(もし溶剤が使用されるなら)を含み、さらに好ましくは作業(例えば噴射)温度での低い蒸発速度によって特徴づけられ、もし構築材料が固体粒子を含むなら、これらは、2ミクロン以下の平均サイズを具備する。
【0022】
現在のPolyjet(商品名)技術は、例えば剛くかつ硬い材料(例えばVero(商品名)ファミリー材料として販売される硬化性配合物)から柔軟で可撓性の材料(例えばTango(商品名)及びAgilus(商品名)ファミリーとして販売される硬化性配合物)までの範囲の種々の特性を具備するポリマー材料を与える硬化性(例えば重合性)材料の範囲を使用する能力を与え、それは、二つの出発材料(例えばRGD515&RGD535/531)から作られた複数材料を含み、エンジニアリングプラスチックの特性をシミュレートするデジタルABSを使用して作られた物体も含む。現在実践されるPolyjet材料のほとんどは、放射線、ほとんどはUV放射線及び/又は熱に露出すると硬化又は凝固する硬化性材料である。
【0023】
3D印刷を拡張し、それをよりバーサティリティにするために、種々の特性を有するエンジニアリングポリマーを含む広い範囲の材料の堆積を可能にする新しいプロセスが開発されるべきである。エンジニアリングポリマーは、優れた熱安定性及び機械特性を有する材料であり、それは、構造要素の製造においてそれらを価値あるものとする。
【0024】
ポリイミドは、3Dインクジェット印刷のような付加製造のために極めて有望な材料である。なぜならこれらの材料は、高い熱安定性、優れた機械特性、耐摩耗性、放射線抵抗性、溶剤に対する不活性、低誘電率、及び良好な接着強度のような希望の特性を具備するからである。一部のポリイミドは、熱可塑性であり、一部は、熱硬化性ポリマーである。ポリイミドの特性は、ポリマープリカーサーの終わりのない数及び得られたポリイミドの莫大な範囲の用途とともに、モノマープリカーサーの化学構造及び/又は重合機構によって決定されることができる。
【0025】
しかしながら、付加製造、特に3Dインクジェット印刷法におけるポリイミドの使用は、ほとんどこれらの材料が凝固(硬化)するために必要な相対的に長い時間によって制限される。例えば、F.Zhangら,J.Applied Polymer Science,2016,133,43361を参照されたい。さらなる制限は、これらのプロセスによって得られるポリイミドの特性にある。従って、例えば、Ultem、熱可塑性ポリエーテルイミド(それは、FDM(熱溶解積層)技術によって3D印刷において現在使用される)は、対応する適切なポリイミドより劣る特性を有することが示された(例えばwww.stratasys.com/materials/fdm/ultem-9085参照)。ポリアミン酸溶液を噴射した後に熱イミド化を行なうことによってインクジェット印刷することにより形成されるポリイミドフィルムは、Liuら Solid State Electron.2003,47,1543;及びJensenら,J.F.Phys.Chem.Chem.Phys.2011,13,4888において報告され、F.Zhangらは、J.Applied Polymer Science,2016,133,43361において、3Dインシュレーターがポリアミン酸凝縮の同じアプローチを使用して印刷されたが、これらの構造のZ方向寸法が1μm以下であったことを報告した。
【0026】
2017年7月5日に出願された国際特許出願No.PCT/IB2017/054054は、任意選択的に重合開始剤(例えば光開始剤)、界面活性剤、安定剤、補強剤、又はいずれかの他の添加剤とともに、好適な溶剤中で、ポリイミドの化学プリカーサーとしてビスマレイミド(BMI)を含有する溶液を記載する。
【0027】
EP特許No.1857478B1(それは、参考として本明細書に完全に述べられているかのように組み入れられる)は、インクジェット印刷のための硬化性配合物を記載し、それは、そこで式Iによって規定されるビス-アリル-ナディ(nadi)-イミド化合物、そこで式IIによって規定されるビスマレイミド、及び重合可能な材料及び任意選択的に有機溶剤を含む希釈剤を含む。EP特許No.1857478B1の教示によれば、重合可能な材料の量は、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物の100重量部に対して少なくとも25重量部であるべきである。
【0028】
追加の背景技術は、本出願人によるWO2016/151586を含み、それは、触媒インクを利用する付加製造において焼結誘導配合物内にポリイミドを使用することを記載する(Deckerら,Macromolecular Chemistry and Physics,201(13):1493-1503,2000;及びFanら,Express Polymer Letters 1(6):397-405,2007)。
【発明の概要】
【0029】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、三次元物体の付加製造の方法が提供され、三次元物体は、その少なくとも一部においてポリイミド含有材料を含有し、前記方法は、
物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を連続的に形成し、それによって物体を形成すること、但し前記複数の層のうちの少なくとも二、三の層の各々の前記形成は、ポリイミドプリカーサー及び多官能硬化性材料を含む少なくとも一種の造形用材料配合物を吐出することを含む、及び
吐出された層の各々を硬化条件に露出し、それによって前記ポリイミド含有材料を含む硬化された造形用材料を形成すること
を含む。
【0030】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーを含む前記少なくとも一種の造形用材料配合物が、有機溶剤を欠き、及び/又は前記ポリイミドプリカーサーを含む前記少なくとも一種の造形用材料配合物が、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を欠き、及び/又は前記硬化条件が、赤外線を含まず、及び/又は前記造形用材料配合物中の前記多官能硬化性材料の量が、25重量%未満である。
【0031】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーを含む前記少なくとも一種の造形用材料配合物が、有機溶剤を欠いている。
【0032】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、有機溶剤が、極性有機溶剤である。
【0033】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記有機溶剤が、190℃未満の沸点及び/又は1未満もしくは0.5未満の蒸発速度を有する。
【0034】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーを含む前記少なくとも一種の造形用材料配合物が、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を欠いている。
【0035】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーを含む前記造形用材料配合物の粘度が、70℃で約16~約20センチポアズである。
【0036】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーが、ビスマレイミドである。
【0037】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーが、300~2000ダルトンの分子量を有する。
【0038】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーが、以下の式Iによって表わされる:
式中、Lは、連結部分であり、R
1-R
4は、各々独立して水素、アルキル、及びシクロアルキルから選択される。
【0039】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、R1-R4は、各々水素である。
【0040】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記連結部分Lが、炭化水素であるか、又はそれを含む。
【0041】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記炭化水素が、枝分かれユニットを介して間を接続される二つ以上のアルキレン鎖を含む。
【0042】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記枝分かれユニットが、シクロアルキルを含むか、又はそれからなる。
【0043】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記造形用材料配合物中の前記ポリイミドプリカーサーと前記多官能硬化性材料の重量比が、50:50~90:10の範囲である。
【0044】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーを含む前記造形用材料配合物中の前記多官能硬化性材料の量が、前記配合物の全重量の25重量%未満である。
【0045】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記造形用材料配合物中の前記ポリイミドプリカーサーと前記多官能硬化性材料の重量比が、80:20~90:10の範囲である。
【0046】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記多官能硬化性材料が、15センチポアズ未満又は10センチポアズ未満の室温における粘度を特徴とする。
【0047】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記多官能硬化性材料が、前記方法中の配合物に付与される温度より少なくとも10℃高い引火点を特徴とする。
【0048】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記多官能硬化性材料が、炭化水素を介して互いに連結された二つ以上の重合可能な部分を含む。
【0049】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記炭化水素が、任意選択的に1~4個のヘテロ原子によって中断された、3~20、又は3~10、又は3~8、又は4~8個の炭素原子を含む。
【0050】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記多官能硬化性材料が、二官能硬化性材料である。
【0051】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記二官能硬化性材料が、以下の式IIによって表わされる:
式中、Xは、-O-及び-O-C(=O)-から選択され、Dは、任意選択的に1~4個のヘテロ原子によって中断された、3~20、又は3~10、又は3~8、又は4~8個の炭素原子の炭化水素であり、Rx及びRyは、各々独立して水素、アルキル、及びシクロアルキルから選択される。
【0052】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記炭化水素が、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はそれらのいずれかの組み合わせからなる。
【0053】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記方法は、物体を熱処理に供することをさらに含む。
【0054】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記熱処理が、少なくとも100℃の温度で少なくとも一時間物体を熱に露出することを含む。
【0055】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、本明細書に記載された実施形態のいずれかに記載の方法及びそれらのいずれかの組み合わせによって作られた三次元物体が提供される。
【0056】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、三次元物体であって、三次元物体が、その少なくとも一部にポリイミド含有材料を含み、三次元物体の前記少なくとも一部が、以下によって特徴づけられる、三次元物体が提供される:
前記ポリイミドから本質的になる物体の一部の貯蔵弾性率及び/又はガラス転移温度のそれぞれより少なくとも10%高い貯蔵弾性率(E′)及び/又はガラス転移温度(Tg)。
【0057】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、ポリイミドプリカーサー及び多官能硬化性材料を含む配合物が提供される。
【0058】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物が、有機溶剤を欠き、及び/又は配合物が、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を欠き、及び/又は多官能硬化性材料の量が、配合物の全重量の25重量%未満である。
【0059】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、ポリイミドプリカーサー及び多官能硬化性材料を含む配合物であって、多官能硬化性材料が、以下の少なくとも一つを特徴とする配合物が提供される:
15センチポアズ未満又は10センチポアズ未満の室温における粘度;及び
少なくとも80℃の引火点。
【0060】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物が、有機溶剤を欠き、及び/又は配合物が、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を欠き、及び/又は多官能硬化性材料の量が、配合物の全重量の25重量%未満である。
【0061】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物が、有機溶剤を欠いているか、及び/又は本明細書に規定される有機溶剤をそれに加えずに付加製造(例えばインクジェット印刷)に使用するためのものである。
【0062】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記有機溶剤が、極性有機溶剤である。
【0063】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記有機溶剤が、190℃未満の沸点及び/又は1未満もしくは0.5未満の蒸発速度を有する。
【0064】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物が、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を欠いているか、及び/又は本明細書に規定されるように、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を組み合わせることなく付加製造(例えばインクジェット印刷)に使用するためのものである。
【0065】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物が、70℃で約16~約20センチポアズの粘度を特徴とする。
【0066】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーが、ビスマレイミドである。
【0067】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーが、300~2000ダルトンの分子量を有する。
【0068】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記ポリイミドプリカーサーが、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に規定される式Iによって表わされる。
【0069】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物中の前記ポリイミドと前記多官能硬化性材料の重量比が、50:50~90:10の範囲である。
【0070】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、多官能硬化性材料の量が、配合物の全重量の25重量%未満である。
【0071】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物中の前記ポリイミドと前記多官能硬化性材料の重量比が、80:20~90:10の範囲である。
【0072】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記多官能硬化性材料が、15センチポアズ未満又は10センチポアズ未満の室温における粘度を特徴とする。
【0073】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記多官能硬化性材料が、前記方法中の配合物に付与される温度より少なくとも10℃高い引火点を特徴とする。
【0074】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記多官能硬化性材料が、炭化水素を介して互いに連結された二つ以上の重合可能な部分を含む。
【0075】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記炭化水素が、任意選択的に1~4個のヘテロ原子によって中断された、3~20、又は3~10、又は3~8、又は4~8個の炭素原子を含む。
【0076】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記多官能硬化性材料が、二官能硬化性材料である。
【0077】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記二官能硬化性材料が、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に規定されるように、式IIによって表わされる。
【0078】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、前記炭化水素が、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はそれらのいずれかの組み合わせからなる。
【0079】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物が、光開始剤をさらに含む。
【0080】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物が、三次元物体の付加製造に使用するために同定され、三次元物体が、その少なくとも一部においてポリイミド材料を含む。
【0081】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、包装材料に包装された、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせに記載された配合物を含むキットが提供される。
【0082】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、キットが、光開始剤をさらに含む。
【0083】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、光開始剤が、配合物から分離して包装される。
【0084】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、キットが、三次元物体の付加製造に使用するために同定され、三次元物体が、その少なくとも一部においてポリイミド材料を含む。
【0085】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0086】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0087】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピューターが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面及び画像を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0089】
【
図1A】
図1Aは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1B-1C】
図1B-1Cは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1D】
図1Dは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
【0090】
【
図2A-2C】
図2A-2Cは、本発明の一部の実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【0091】
【
図3A-3B】
図3A及び3Bは、本発明の一部の実施形態による座標変換を実証する概略図である。
【0092】
【
図4】
図4は、本発明の様々な例示的実施形態による三次元物体のAMのために好適な方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
本発明は、その一部の実施形態において、付加製造に関し、特に限定されないが、ポリイミド含有配合物を使用する付加製造に関する。
【0094】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0095】
上で述べたように、付加製造、特に3D物体の3Dインクジェット印刷に使用可能な最も一般的な硬化性材料は、アクリレートファミリー(即ち、アクリレート、メタクリレート、アリールアミド、メタクリルアミドなどの化合物、それらは、本明細書ではまとめて「アクリル材料」として言及される)の光硬化性材料である。
【0096】
ポリイミドは、極めて高い熱安定性(例えば450℃まで)によって特徴づけられるポリマーであり、それは、アクリル材料から形成されたポリマーにとって代わる。
【0097】
ポリイミドの従来の合成は、環状ジハイドライドとジアミンの間の反応に基づき、それは、ポリアミン酸をもたらす。ポリアミン酸は、熱可塑性ポリアミドを与えるために加熱中に環化反応を受ける。この重合経路は、3Dインクジェット印刷のような付加製造に対して適していない。なぜなら反応は、有機溶剤中でかつ高温で起こるからである。
【0098】
別の重合経路は、ビスマレイミド(BMI)プリカーサーに基づき、それは、熱硬化性ポリイミドをもたらす付加型重合を受ける。この重合反応は、熱的に又はUVによって活性化されることができる。
【0099】
ビスマレイミドは、一般的に室温で固体である。現在、限定された数の液体ビスマレイミドがあり、これらは、例えばDesigner MoleculesによってBMI689,BMI1400,BMI1500、及びBMI3000として販売されているものである。しかしながら、液体マレイミドは、インクジェット印刷のために適さない粘度によって特徴づけられる。とりわけ最も低い粘度を有するBMI689は、室温で1500±500cPsの粘度を具備する。
【0100】
上でさらに述べたように、3Dインクジェットプロセスは、噴射温度で約8~25cPsの粘度を要求する。
【0101】
EP特許No.1857478及びPCT/IB2017/054054は、ポリイミドプリカーサー(例えばBMI)を含有する配合物を記載し、そこでは粘度は、有機溶剤の添加によって低下されている。かかる配合物は、付加製造で使用されるとき、一般的に蒸発によって有機溶剤の除去を要求し、従って環境に優しくないことに加えて、プロセス時間及びエネルギー消費を課す。
【0102】
EP特許No.1857478はさらに、硬化性材料(例えば重合可能なモノマー又はオリゴマー)の形で、ポリイミドプリカーサーの混合物を含有する配合物に反応性希釈剤を加えることを記載する。かかる硬化性材料は、おそらく、例えばDeckerら(2000)及びFanら(2007)に記載されるようにポリイミドプリカーサーと化学的に相互作用することによって最終物体の一部を形成する。
【0103】
しかしながら、これらの化学反応は、得られたポリマー材料の機械的及び熱的特性に悪影響を与えうる。
【0104】
本発明者は、ある硬化性材料をポリイミドプリカーサーへの反応希釈剤として加えると、有機溶剤を加える必要性をうまく回避し、得られたポリマー材料の熱的及び機械的特性を維持し、さらには改良し、即ち得られたポリマー材料の、従ってポリイミドプリカーサーを使用して得られた三次元物体の特性に悪影響を与えないことを驚くべきことに発見した。本発明者は、かかる配合物がPolyjet技術のような3Dインクジェット印刷でうまく使用されることができ、この技術のためのいずれかの他の利用可能な材料によって達成できない極めて高い熱安定性を具備する硬化材料を与えることができることを示した。
【0105】
それゆえ、本発明の実施形態は、3Dインクジェット印刷のような付加製造に使用可能な新規な配合物、これらの配合物を含むキット、これらの配合物を利用する付加製造、及びそれによって得られた3D物体に関する。
【0106】
本明細書において全体を通して、用語「物体」は、付加製造の最終生成物を記載する。この用語は、支持体材料が構築材料の一部として使用されたなら、支持体材料の除去後に本明細書に記載されたような方法によって得られた生成物を示す。「物体」は、それゆえ硬化(例えば固化)された造形用材料から本質的になる(少なくとも95重量%からなる)。
【0107】
本明細書において全体を通して使用される用語「物体」は、物品全体又は物品の一部を示す。
【0108】
本実施形態による物体は、その少なくとも一部又は部分がポリイミド材料を含むようなものである。物体は、その複数の部品又は部分がポリイミド材料から作られるようなものであるか、又はポリイミド材料から完全に作られるようなものであることができる。ポリイミド材料は、異なる部品又は部分で同じ又は異なることができ、ポリイミド材料から作られた各部品、部分、又は物体全体に対して、ポリイミド材料は、部分、部品又は物体内で同じ又は異なることができる。異なるポリイミド材料が使用されるとき、それらは、以下にさらに説明されるように、それらの化学組成及び/又は機械特性において異なることができる。
【0109】
用語「ポリイミド材料」はまた、本明細書では「ポリイミド含有材料」として交換可能に言及され、本明細書で使用されるように、少なくとも一部においてポリイミドの主鎖ユニットを含むポリマー材料を記載する。本発明によるポリマー材料は、ポリマー鎖又はポリマー鎖の3Dネットワーク(ポリイミド及び別のポリマー(本明細書に記載されるような追加の硬化性材料から形成される)の主鎖ユニットが互いにインターレースされている)、及び/又は別のポリマー(本明細書に記載されるような追加の硬化性材料から形成される)のポリマー鎖に化学的に連結される(例えば架橋するか又は架橋される)ポリイミド鎖からなるポリマー鎖の3Dネットワークのポリマー鎖から作られることができる。
【0110】
本明細書において全体を通して、表現「構築材料配合物」、「未硬化構築材料」、「未硬化構築材料配合物」、「構築材料」、及び他の変形は、それゆえ集合して、本明細書に記載されるように、層を連続して形成するために吐出される材料を記載する。この表現は、物体、即ち一つ以上の未硬化造形用材料配合物を形成するように吐出された未硬化材料、及び支持体、即ち未硬化支持材料配合物を形成するように吐出された未硬化材料を包含する。
【0111】
本明細書中において全体を通して、表現「硬化(した又はされた)造形用材料」および表現「固化(した又はされた)造形用材料」は、吐出された構築材料を硬化にさらしたとき、本明細書中で規定されるように、物体を形成する構築材料の部分であって、任意選択的に、もし支持体材料が吐出されるなら、本明細書に記載されるように、硬化した支持体材料を除いた後の構築材料の部分を記載する。硬化(した又はされた)造形用材料は、本明細書中に記載されるように、当該方法で使用される造形用材料配合物に依存して、単一の種類の硬化した材料、または、二種以上の硬化した材料の混合物であることが可能である。
【0112】
表現「硬化(した又はされた)造形用材料」又は「硬化(した又はされた)造形用材料配合物」は、構築材料が(支持材料配合物ではなく)造形用材料配合物のみからなる硬化構築材料として見なすことができる。即ち、この表現は、構築材料の一部を示し、それは、最終物体を与えるために使用される。
【0113】
本明細書において全体を通して、表現「造形用材料配合物」(それはまた、交換可能に、「造形用配合物」、「造形配合物」、「造形材料配合物」、又は単に「配合物」として示される)は、本明細書に記載されるように、物体を形成するように吐出される構築材料の一部又は全てを記載する。造形用材料配合物は、(特に他で示さない限り)未硬化の造形用配合物であり、それは、硬化条件にさらすと物体又はその一部を形成する。
【0114】
本発明の一部の実施形態では、造形用材料配合物は、三次元インクジェット印刷に使用するために配合され(例えば3Dインクジェットシステム及びプロセスの条件に合致する流動学的、熱的、及び物理的特性を具備する)、それ自身で、即ちいかなる他の物質と混合したり又は組み合わせたりする必要なしで三次元物体を形成することができる。
【0115】
未硬化の構築材料は、一つ又はそれより多い種類の造形用材料配合物を含むことができ、硬化されると物体の異なる部分が異なる硬化された造形用材料配合物又はその異なる組み合わせから作られ、従って異なる硬化された造形用材料又は硬化された造形用材料の異なる混合物から作られるように吐出されることができる。
【0116】
構築材料を形成する配合物(造形用材料配合物及び支持体材料配合物)は、一種以上の硬化性材料を含み、それは、硬化条件にさらされるとき、固化(硬化)材料を形成する。
【0117】
本明細書中全体を通して、「硬化性材料」は、本明細書に記載されるように硬化条件にさらされるとき、凝固又は固化して硬化材料を形成する化合物(一般的にはモノマー又はオリゴマー化合物、しかし任意選択的にポリマー化合物)である。硬化性材料は、一般的に重合可能な材料であり、それは、好適な硬化条件(例えば好適なエネルギー源)にさらされるときに重合及び/又は架橋を受ける。
【0118】
本実施形態による硬化性材料はまた、硬化エネルギーに、しかしむしろ硬化条件(例えば化学薬剤にさらす)にさらすことなく、又は単に環境にさらすだけで固化又は凝固(硬化)する材料を包含する。
【0119】
本明細書に使用される用語「硬化性(硬化可能)」及び「凝固性(凝固可能)」は、交換可能である。
【0120】
重合は、例えばフリーラジカル重合、カチオン重合、又はアニオン重合であることができ、各々は、本明細書に記載されるように、例えば放射線、熱などの硬化エネルギーにさらすと誘導されることができる。
【0121】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、光重合可能な材料であり、それは、本明細書に記載されるように、放射線にさらされると重合するか、及び/又は架橋を受けるものであり、一部の実施形態では、硬化性材料は、UV硬化性材料であり、それは、本明細書に記載されるように、UV放射線にさらされると重合するか、及び/又は架橋を受けるものである。
【0122】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような硬化性材料は、光誘導性フリーラジカル重合を介して重合する光重合可能な材料である。あるいは、硬化性材料は、光誘導されたカチオン重合によって重合する光重合可能な材料である。
【0123】
一部の実施形態では、硬化性材料は、光誘導性付加重合を介して重合可能であるポリイミドプリカーサーであるか、又はそれを含む。
【0124】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、モノマー、オリゴマー、又は短鎖ポリマーであることができ、各々は、本明細書に記載されるように重合可能及び/又は架橋可能である。
【0125】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料が硬化条件(例えば放射線)にさらされるとき、それは、鎖延長及び架橋のいずれか一つ又はそれらの組み合わせによって固化する(硬化を受ける)。
【0126】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらされるとき、重合反応で重合材料を形成することができるモノマー又はモノマーの混合物である。かかる硬化性材料はまた、本明細書においてモノマー硬化性材料として言及される。
【0127】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらされるとき、重合反応で重合材料を形成することができるオリゴマー又はオリゴマーの混合物である。かかる硬化性材料はまた、本明細書においてオリゴマー硬化性材料として言及される。
【0128】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化エネルギーにさらされるとき、鎖延長もしくは付加によって重合反応でポリマー又はコポリマー材料を形成できるか、又は他の硬化性材料によって架橋するかもしくは架橋される、ポリマー又はポリマーの混合物である。
【0129】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、モノマーであるか又はオリゴマーであるかにかかわらず、単官能硬化性材料又は多官能硬化性材料であることができる。
【0130】
本明細書では、単官能硬化性材料は、硬化条件(例えば放射線のような硬化エネルギー)にさらされるときに重合を受けることができる一つの官能基を含む。
【0131】
多官能硬化性材料は、硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらされると重合を受けることができる、2つ又はそれより多い、例えば2つ、3つ、4つ又はそれより多い官能基を含む。多官能硬化性材料は、例えば二官能、三官能、又は四官能硬化性材料であることができ、それらは、それぞれ重合を受けることができる2つ、3つ又は4つの基を含む。多官能硬化性材料における2つ以上の官能基は、一般的に本明細書に規定されるように、連結部分によって互いに連結される。連結部分がオリゴマー又はポリマー部分であるとき、多官能基は、オリゴマー又はポリマー多官能硬化性材料である。多官能硬化性材料は、硬化条件(例えば硬化エネルギー)を受けるときに重合を受けることができ、及び/又は架橋剤として作用することができる。
【0132】
本実施形態の方法は、本明細書に記載されるように、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することによって層状に三次元物体を製造する。
【0133】
最終的な三次元物体は、造形用材料、または複数の造形用材料の組合せ、または造形用材料(単数又は複数)と支持体材料(単数又は複数)の組合せもしくはそれらの変性物(例えば硬化後)から作られる。これらの作業は全て、立体自由造形の当業者にはよく知られている。
【0134】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、本明細書に規定されたように、ポリイミド含有材料を(以下にさらに詳細に記載されるように)少なくとも一部に含む三次元物体の付加製造の方法が提供される。
【0135】
前記方法は、一般的に、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を連続的に形成することによって実施され、従って前記層のうち少なくとも二つ又は三つの層の各々、又は前記層の各々の形成は、以下にさらに詳細に記載されるように、一種以上の造形用材料配合物を含む構築材料(未硬化)を吐出し、吐出された造形用配合物を硬化条件(例えば硬化エネルギー)に露出し、それによって硬化された造形用材料を形成することを含む。
【0136】
本発明の実施形態によれば、一種以上の造形用材料配合物は、本明細書に記載されるように、ポリイミドプリカーサー及び追加の硬化性材料を含む。本実施形態による、ポリイミドプリカーサー及び追加の硬化性材料は、同じ造形用材料配合物に含められる。二種以上の造形用材料配合物が使用されるとき、追加の造形用材料配合物は、異なるポリイミドプリカーサー及び/又は異なる追加の硬化性材料を含むことができ、又はポリイミドプリカーサー以外の硬化性材料及び/又は追加の硬化性材料を含むことができる。
【0137】
本発明の実施形態のいずれかの一部の実施形態によれば、付加製造は、3Dインクジェット印刷である。
【0138】
本発明の一部の例示的実施形態では、物体は、二種以上の異なる造形用材料配合物を含む構築材料(未硬化)を吐出することによって製造され、各造形用材料配合物は、異なる吐出(例えば印刷)ヘッドから又はインクジェット印刷装置の異なるノズルもしくは異なるアレイのノズルからのものである。造形用材料配合物は、任意選択的にかつ好ましくは、吐出(例えば印刷)ヘッドの同じ通過中に層で吐出される。層内の造形用材料配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体の希望の特性に従って、以下に詳細にさらに記載されるように選択される。
【0139】
本明細書及び業界で使用される表現「デジタル材料」(DMと略される)は、特定の材料の印刷された領域が2,3個のボクセルのレベルで又は1個のボクセルのレベルであるように微視的なスケール又はボクセルレベルで二種以上の材料の組み合わせを記載する。かかるデジタル材料は、材料のタイプ及び/又は二種以上の材料の比率及び相対的な空間分布の選択によって影響される新しい特性を示すことができる。
【0140】
例示的なデジタル材料では、硬化で得られた、各ボクセル又はボクセルブロックの造形用材料は、硬化で得られた、隣接ボクセル又はボクセルブロックの造形用材料から独立しており、従って各ボクセル又はボクセルブロックは、異なる造形用材料をもたらし、全体の部分の新しい特性は、複数の異なる造形用材料のボクセルレベルでの空間組み合わせの結果である。
【0141】
本明細書において全体を通じて、表現「ボクセルレベルで」が異なる材料及び/又は特性の文脈において使用されるときはいつでも、ボクセルブロック間の差、並びに複数のボクセル又は2,3個のボクセルのグループの間の差を含むことが意味される。好ましい実施形態では、全体の部分の特性は、複数の異なる造形用材料のボクセルブロックレベルでの空間組み合わせの結果である。
【0142】
造形用材料配合物:
本発明の一部の実施形態の態様によれば、本明細書に記載されるようなポリイミドプリカーサー、及び本明細書に記載されるような硬化性材料(ポリイミドプリカーサー以外のもの、本明細書では「追加の硬化性材料」としても言及される)を含む配合物が提供される。配合物は、本明細書に規定されるように、少なくとも一部にポリイミド含有材料を含む物体の付加製造において本発明の一部の実施形態に従って使用可能であるか、又は使用するためのものである。
【0143】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物は、噴射温度(吐出ヘッド、例えば印刷ヘッドの温度)で約8~約25センチポアズ(cps)又は約16~約20センチポアズの、3Dインクジェット印刷のような付加製造のために好適な粘度を具備する。一部の実施形態では、噴射温度は、50~90℃、一部の実施形態では、それは、70℃である。一部の実施形態では、配合物は、70℃で約8~約25センチポアズ(cps)又は約16~約20センチポアズの粘度を具備する。
【0144】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物は、有機溶剤を欠いている。
【0145】
これらの実施形態の一部では、有機溶剤は、国際特許出願No.PCT/IB2017/054054に記載されるようなものである。
【0146】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、有機溶剤の文脈において、有機溶剤は、極性有機溶剤である。
【0147】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物は、極性有機溶剤を欠いている。
【0148】
一部の実施形態では、有機溶剤は、アルコール及び/又はカルボン酸エステルであるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、有機溶剤は、190℃以下の沸点、及び1未満又は0.5未満、好ましくは0.3未満の低い蒸発速度(evaporation rate)によって特徴づけられる。
【0149】
本明細書に使用される蒸発速度は、基準材料としてn-ブチルアセテートに関するものである。
【0150】
例示的な有機溶剤(例えば極性有機溶剤)は、n-ブチルアセテート、n-ペンチルアセテート、n-ヘキシルアセテート、n-ヘプチルアセテート、n-ブチルプロピオネート、n-ペンチルプロピオネート、n-ヘキシルプロピオネート、n-ヘプチルプロピオネート、ヘキサノール、ブタノール、ペンタノール、ヘプタノール、並びに枝分かれしたアルコール、及び枝分かれしたアルキルを含むエステルを含むが、それらに限定されない。
【0151】
本明細書全体を通して使用される用語「欠いている」は、配合物が、それぞれの材料(例えば本明細書に記載される有機溶剤)を、それぞれの配合物の全重量の1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、又は0.1重量%以下、又は0.05重量%以下、又は0.01重量%以下、又は0.005重量%以下、さらにはそれより少ない重量%しか含まないか、又はゼロの含有量であることを意味する。
【0152】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物は、硬化条件に露出するとポリイミドを形成する硬化性材料を含む。かかる硬化性材料はまた、本明細書では「ポリイミドプリカーサー」として言及され、かかる硬化性材料を含む造形用配合物は、本明細書ではポリイミドプリカーサー含有配合物として言及される。
【0153】
ポリイミドプリカーサーは、一般的に一つ以上のイミド部分及び一つ以上の重合可能な部分を含む。
【0154】
イミド部分は、窒素原子に結合された二つのアシル基からなる基であり、-C(=O)-NRa-C(=O)-によって表わされることができ、式中、Raは、例えば水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、及び他の化学基について本明細書で規定された他の代替物であることができる。
【0155】
本発明の一部の実施形態によれば、本実施形態の文脈において使用可能なポリイミドプリカーサーは、α,ω-ビスマレイミド(BMI)を含む。
【0156】
BMIは、熱硬化性材料の製造のために使用されるポリイミドのプリカーサーである。
【0157】
α,ω-ビスマレイミドは、二つのイミド部分を具備し、それらは、連結部分を介して互いに連結され、それらは、UV放射線、熱エネルギー及び/又は化学触媒にさらすとホモ重合及び/又は共重合を受ける重合可能な部分をさらに具備し、それによって以下のスキーム1に描かれるように、架橋されたポリイミドを与える。
【0158】
マレイミド末端基の二重結合は、隣接電子吸引アシル基によって高度に電子が不足している。従って、低分子量ビスマレイミドプリカーサーは、架橋されたネットワークを与えるために炭素-炭素の二重結合でホモ重合及び/又は共重合を受けることができる。
【0159】
さらに、不飽和アルケニル基は、極めて反応性のジエノファイルであり、それゆえアミン(例えばポリアミン)のマイケル付加及びジエンのディールスアルダー反応のような付加反応を受けることができる。
【0160】
得られたポリイミド材料は、分子量及びおそらく連結部分の化学組成を制御することによって特定の流動特性を作る能力及び加工の相対的容易性によって特徴づけられる熱硬化性材料である。さらに、得られたPIは、高温で、湿潤環境で、かつ溶剤及び潤滑液の存在下で物理的特性の優れた保持を持つ。
【0161】
本実施形態の文脈において使用可能なα,ω-ビスマレイミドは、まとめて式Iによって表わされることができる:
式中、Lは、連結部分であり、それは、例えばアルキル、アリール、シクロアルキル、炭化水素(これらの用語は、本明細書において規定される)、又は代替的にヘテロ脂環式、ヘテロアリール、ポリ(アルキレン鎖)及び前記のいずれかの組み合わせであるか、又はそれらを含むことができ、
R
1-R
4は、水素、アルキル、シクロアルキル、及び任意選択的に本明細書に記載されるようないずれかの他の置換基から独立して選択される。
【0162】
好ましくは、R1-R4は、各々水素である。
【0163】
連結部分Lの化学組成及び分子量は、得られたポリイミドの特性を決定する。
【0164】
一部の実施形態では、L連結部分は、本明細書に記載されるような炭化水素である。一部の実施形態では、炭化水素は、一つ以上のアルキレン鎖からなる。一部の実施形態では、炭化水素は、枝分かれユニットを介して間を接続される二つ以上のアルキレン鎖を含む。一部の実施形態では、枝分かれユニットは、シクロアルキルを含むか、又はそれからなる。
【0165】
一部の実施形態では、L連結部分は、以下の式によって表わされる:
A1-B-A2
式中、A1及びA2は、各々アルキレン鎖であり、Bは、枝分かれユニットである。一部の実施形態では、Bは、シクロアルキル、例えばシクロヘキシルであり、それは、一つ以上のアルキレン鎖によってさらに置換される。
【0166】
一部の実施形態では、A1及びA2及びシクロアルキルを代替する任意のアルキレン鎖は、各々独立して3~20個の炭素原子の長さであり、3~15又は3~10又は5~10個の炭素原子の長さである。
【0167】
本明細書で使用される「枝分かれユニット(単位)」は、複数ラジカル、好ましくは脂肪族又は脂環式の基を記載する。「複数ラジカル」は、連結部分が二つ以上の接続点を有し、それが二つ以上の原子及び/又は基又は部分の間で連結することを意味する。
【0168】
一部の実施形態では、枝分かれユニットは、二つ以上又は三つ以上の官能基を有する化学部分から誘導される。一部の実施形態では、枝分かれユニットは、枝分かれしたアルキル又は本明細書に規定されたようなシクロアルキルである。
【0169】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、連結部分は、BMIの分子量が200~5000ダルトン、好ましくは300~2000ダルトン又は300~1000ダルトン又は500~1000ダルトンの範囲であるように選択される。
【0170】
例示的なBMIは、689ダルトンの分子量を有する、本明細書に規定されるようなBMI-689である。
【0171】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、造形用材料配合物は、本明細書に記載されたような一つ以上のビスマレイミド、及び/又は一つ以上の他のポリイミドプリカーサーを含む。業界で知られているいずれかの他のポリイミドプリカーサーが考えられる。
【0172】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、ポリイミドプリカーサーは、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物である。
【0173】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、ポリイミドプリカーサー含有配合物は、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を(本明細書に規定されるように)欠いている。
【0174】
これらの実施形態によって包含される例示的なビス-アリル-ナディ-イミド化合物は、EP特許No.1857478B1(その中の式I参照)に記載されている。
【0175】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、ポリイミドプリカーサーは、熱エネルギー、UV放射線、又はそれらの両方にさらすと重合を受ける。
【0176】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、本明細書に記載されるようなポリイミドプリカーサー(例えばBMI)を含む造形用材料配合物は、高速硬化(層あたり1~20秒)を受け、熱硬化ポリイミド含有材料の三次元ネットワークを形成する。
【0177】
硬化は、熱エネルギー(熱)、UV照射、又はそれらの両方にさらすことによってなされることができる。
【0178】
本実施形態によれば、本明細書に規定されるようなポリイミドプリカーサーを含む造形用材料配合物は、一種以上の追加の硬化性材料をさらに含む。
【0179】
好ましくは、必須ではないが、追加の硬化性材料は、ポリイミドプリカーサーが例えば放射線照射(例えばUV照射)にさらすと重合可能である同じ硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらすときに重合可能である。
【0180】
従って、一部の実施形態では、追加の硬化性材料は、光硬化性又は光重合性材料である。一部の実施形態では、追加の硬化性材料は、UV硬化性材料である。
【0181】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、追加の硬化性材料は、本明細書に規定されるような多官能硬化性材料であり、これらの実施形態の一部では、それは、UV硬化性多官能硬化性材料である。
【0182】
上で述べたように、追加の硬化性材料は、それを含み、ポリイミドプリカーサーをさらに含む配合物が付加製造、例えば3Dインクジェット印刷に使用するために好適であるように、即ち配合物が本明細書に記載されるように、かかるプロセスの条件に合致する物理的特性及び流動特性を具備するように選択される。
【0183】
一部の実施形態では、多官能硬化性材料は、本明細書に規定されるような粘度を具備する配合物を与えるようなものである。
【0184】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、多官能硬化性材料は、室温で15センチポアズ未満又は10センチポアズ未満の粘度を具備するものとして特徴づけられる。
【0185】
粘度又はいずれかの他の特性が本明細書に記載されているときはいつでも、この特性は、それぞれの特性を決定するために一般に業界で使用されている手順に従って及び/又は測定装置によって決定される。例示的な手順及び装置は、以下の実施例の部分(「材料及び実験方法」)で規定される。
【0186】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、多官能硬化性材料は、付加製造プロセス中に配合物に付与される温度より少なくとも5℃又は少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、例えば30℃より多く高い引火点を具備するものとして特徴づけられる。
【0187】
「引火点」は、発火源(例えば酸素)にさらされるときに材料が発火する最も低い温度を意味する。材料の引火点は、例えばISO TR 29662に従って業界で知られた手段によって決定されることができる。
【0188】
付加製造プロセス中に配合物に付与される温度は、噴射温度(例えば吐出ヘッド、例えば3Dインクジェット印刷中の印刷ヘッド及び/又はノズルの温度);層が吐出される受容トレイの温度;吐出された層の温度(それは、吐出された配合物中の材料間の発熱反応の場合、及び/又は硬化エネルギーの付与によって増加しうる);及び吐出された層の隣接環境の温度(例えばプロセスが行なわれるチャンバー内の温度)であることができる。
【0189】
一部の実施形態では、引火点は、硬化エネルギーにさらすと材料間の発熱反応のため、吐出された配合物で生じる温度(配合物が付与される先行する層及び/又は配合物を含む吐出された層の温度)より、本発明に規定されるように、高い。
【0190】
一部の実施形態では、引火点は、吐出ヘッド及び/又はノズル(例えばインクジェット印刷ヘッド及び/又はノズル)の温度より、本明細書に規定されるように、高い。
【0191】
一部の実施形態では、この温度は、約70℃である。
【0192】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、多官能硬化性材料は、少なくとも80℃、好ましくは例えば85,90,95℃より高く、例えば少なくとも95℃、少なくとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも120℃の引火点によって特徴づけられる。
【0193】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、多官能硬化性材料は、本明細書に規定されるように、15センチポアズ未満又は10センチポアズ未満の室温における粘度、及び少なくとも80℃の引火点によって特徴づけられる。
【0194】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、多官能硬化性材料は、本明細書に規定されるように、炭化水素を介して互いに連結された二つ以上の重合可能な部分を含む。
【0195】
炭化水素鎖は、合計1~40個の原子を含むことができる。一部の実施形態では、炭化水素鎖は、より少ない鎖であり、それは、任意選択的に1~4個の炭素原子によって中断された、1~20、又は2~10、又は2~8個の炭素原子を含む。
【0196】
一部の実施形態では、炭化水素鎖は、炭素原子からなる。
【0197】
一部の実施形態では、炭化水素鎖は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はそれらのいずれかの組み合わせを含むか、又はそれからなる。
【0198】
多官能硬化性材料が三官能又は四官能硬化性材料である実施形態では、炭化水素は、本明細書に規定されているように、枝分かれユニットであることができる。
【0199】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、多官能硬化性材料は、二官能硬化性材料である。
【0200】
本実施形態の文脈において使用可能な例示的二官能硬化性材料は、まとめて以下の式IIによって表わされる:
式中、Xは、-O-及び-O-C(=O)-から選択され、Dは、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に規定されたような炭化水素であり、Rx及びRyは、各々独立して水素、アルキル、及びシクロアルキルから選択される。
【0201】
XがOであるとき、二官能硬化性材料は、ジビニルエーテルである。
【0202】
Xが-O-C(=O)-であるとき、二官能硬化性材料は、ジ(メタ)アクリレートである。
【0203】
Xが-O-C(=O)-であり、Rx及びRyが各々水素であるとき、二官能硬化性材料は、ジアクリレートである。
【0204】
Xが-O-C(=O)-であり、Rx及びRyが各々メチルであるとき、二官能硬化性材料は、ジメタクリレートである。
【0205】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、二官能硬化性材料は、式IIによって表わされるジビニルエーテルである。
【0206】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、二官能硬化性材料は、式IIによって表わされるジメタクリレートである。
【0207】
いかなる特定の理論によって拘束されないが、硬化条件にさらすときに低い重合速度によって特徴づけられる硬化性材料が好ましいと思われる。
【0208】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、炭化水素は、剛い部分、例えばシクロアルキル(脂環式部分)及び/又はアリール(例えばフェニル)又はアルカリール(例えばベンジル)のような環式部分であるか、又はそれを含む。
【0209】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、ポリイミドプリカーサーと多官能硬化性材料の間の重量比は、50:50~99:1、又は50:50~90:10、又は60:40~90:10、又は70:30~90:10、又は80:20~90:10の範囲である。一部の実施形態では、重量比は、80:20である。
【0210】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、多官能硬化性材料の量は、それを含む配合物(それは、ポリイミドプリカーサーを含む)において、25重量%以下である。
【0211】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、多官能硬化性材料の量は、それを含む配合物(それは、ポリイミドプリカーサーを含む)において、ポリイミドプリカーサーの100重量部に対して25重量部以下、又は20重量部以下である。
【0212】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合物は、本明細書に規定されるように、有機溶剤を欠いている。配合物は、本明細書に規定されるように、ビス-アリル-ナディ-イミド化合物を欠いている。多官能硬化性材料の量は、配合物の全重量の25重量%未満である。
【0213】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、本明細書に記載されるようなポリイミドプリカーサーを含む一種以上の造形用材料配合物、及び一種以上の追加の硬化性材料を含みかつポリイミドプリカーサーを欠いている一種以上の追加の造形用材料配合物を含む配合物系が提供される。これらの追加の配合物中の硬化性材料は、単官能硬化性材料、多官能硬化性材料、又はそれらの混合物を含むことができ、各材料は、モノマー、オリゴマー又はポリマー、又はそれらの組み合わせであることができ、必ずしも本明細書に規定されるような多官能硬化性ではない。
【0214】
好ましくは、必須ではないが、追加の硬化性材料は、ポリイミドプリカーサー及び/又は本実施形態の多官能硬化性材料が例えば放射線照射(UV照射)にさらすと重合可能である同じ硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらすときに重合可能である。
【0215】
一部の実施形態では、追加の硬化性材料は、単官能アクリレート又はメタクリレート((メタ)アクリレート)である。限定されない例は、イソボルニルアクリレート(IBOA)、イソボルニルメタアクリレート、アクリロイルモルフォリン(ACMO)、フェノキシエチルアクリレート(商品名SR-339の下でSartomer Company(米国)によって販売)、商品名CN 131Bの下で販売されるようなウレタンアクリレートオリゴマー、及びAM法(例えば3Dインクジェット印刷)に使用可能ないずれかの他のアクリレート及びメタクリレートを含む。
【0216】
一部の実施形態では、追加の硬化性材料は、多官能アクリレート又はメタクリレート((メタ)アクリレート)である。多官能(メタ)アクリレートの限定されない例は、商品名SR-9003の下でSartomer Company(米国)によって販売されるプロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DiTMPTTA)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(TETTA)、及びジペンタエリトリトールペンタアクリレート(DiPEP)、及び例えばEbecryl 230として販売されるような脂肪族ウレタンジアクリレートを含む。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの限定されない例は、エトキシル化又はメトキシル化ポリエチレングリコールジアクリレート又はジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコールウレタンジアクリレート、部分的にアクリル化されたポリオールオリゴマー、CN991として販売されるようなポリエステルベースのウレタンジアクリレートを含む。
【0217】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、一種以上の造形用材料配合物は、硬化性材料の重合を開始するための開始剤をさらに含む。
【0218】
全ての硬化性材料(ポリイミドプリカーサー、本明細書に記載されるような多官能硬化性材料、及び追加の硬化性材料(もし存在するなら))は、光重合性であり(例えばUV硬化性)、光開始剤は、これらの実施形態では使用可能である。
【0219】
好適な光開始剤の限定されない例は、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン及びキサントンのようなベンゾフェノン(芳香族ケトン);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(TMPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド(TEPO)、及びビスアシルホスフィンオキサイド(BAPO)のようなアシルホスフィンオキサイドタイプの光開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、及びベンゾインイソプロピルエーテルのようなベンゾイン及びベンゾインアルキルエーテルなどを含む。光開始剤の例は、アルファ-アミノケトン、及びビスアシルホスフィンオキサイド(BAPO)、及び商品名Irgacure(登録商標)の下で販売されるものである。
【0220】
光開始剤は、単独で、又は共開始剤と組み合わせて使用されることができる。ベンゾフェノンは、フリーラジカルを生成するためにアミンのような第二分子を要求する光開始剤の一例である。放射線を吸収した後、ベンゾフェノンは、アクリレートの重合を開始するアルファ-アミノラジカルを生成するために水素引き抜きによって第三アミンと反応する。共開始剤の限定されない例は、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンのようなアルカノールアミンである。
【0221】
光開始剤の濃度は、それを含む配合物において約0.1~約0.5重量%、又は約1~約5重量%の範囲であることができ、それらのいずれかの中間値及び下位範囲を含む。
【0222】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、一種以上の造形用材料配合物は、ポリイミドプリカーサーと化学的に相互作用する(例えば本明細書に記載されるようなマイケル付加又はディールスアルダー反応による)硬化性又は非硬化性材料をさらに含む。例示的なかかる材料は、ポリアミン又はポリアミンプリカーサーである。
【0223】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、造形用材料配合物は、一種以上の追加材料をさらに含むことができ、それは、本明細書では非反応性材料としても言及される。
【0224】
かかる薬剤は、例えば界面活性剤、安定剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、分散剤、及び/又は衝撃改良剤(強化剤又は強靱性改良剤)を含む。
【0225】
複数噴射法の場合には、非反応性薬剤が、造形用材料配合物の一種又は全てに独立して含められることができる。
【0226】
用語「充填剤」は、ポリマー材料の特性を改良したり、及び/又は最終製品の品質を調整する不活性材料を記載する。充填剤は、無機粒子、例えば炭酸カルシウム、シリカ、及びクレーであることができる。
【0227】
充填剤は、重合時又は冷却時の収縮を減少するため、例えば熱膨張係数を減少し、強度を増加し、熱安定性を高め、コストを減少し、及び/又は流動特性を調節するために造形用配合物に添加されることができる。ナノ粒子充填剤は、一般にインクジェット用途のような低粘度を要求する用途で有用である。
【0228】
一部の実施形態では、造形用配合物は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、配合物の表面張力を噴射又は印刷プロセスのために要求される値まで減少するために使用されることができ、その値は、一般的に10ダイン/cm~50ダイン/cmであり、例えば約30ダイン/cmである。例示的なかかる薬剤は、シリコーン表面添加剤である。
【0229】
好適な安定剤(安定化剤)は、例えば熱安定剤を含み、それは、高温で配合物を安定させる。
【0230】
一部の実施形態では、造形用配合物は、一種以上の顔料を含む。一部の実施形態では、顔料の濃度は、35重量%未満、又は25重量%未満、又は15重量%未満である。
【0231】
顔料は、白色顔料であることができる。顔料は、有機顔料、又は無機顔料、又は金属顔料、又はそれらの組み合わせであることができる。
【0232】
一部の実施形態では、造形用配合物は、染料をさらに含む。
【0233】
一部の実施形態では、白色顔料と染料の組み合わせは、着色された硬化材料を作るために使用される。
【0234】
染料は、広い範囲の溶剤溶解性染料のいずれかであることができる。一部の限定されない例は、黄、オレンジ、茶、及び赤であるアゾ染料;緑及び青であるアントラキノン及びトリアリールメタン染料;及び黒であるアジン染料である。
【0235】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、一種以上の造形用材料配合物は、強化剤を含む。
【0236】
強化剤の限定されない例は、エラストマー材料を含む。代表例は、限定されないが、天然ゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、エチレン-プロピレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロックゴム、ランダムスチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-スチレントリブロックゴム、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、エチレン-ビニルアセテート及びニトリルゴムを含む。好ましい薬剤は、ポリブタジエンのようなエラストマーである。エラストマー材料のような強化剤は、造形用材料配合物中に分散/溶解相のエラストマー材料を入れることによって配合物に添加されることができる。
【0237】
エラストマー材料の濃度は、それを含む配合物に対して約0.10phr~約10phr、又は約0.1phr~約5phrの範囲であることができる。
【0238】
エラストマー材料の濃度は、代替的に、それを含む配合物の約0.1重量%~約20重量%の範囲であることができる。
【0239】
例えばカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、ガラスファイバー、アラミドKevlar、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールZylon、並びに他の極性及び非極性衝撃改良剤のような他の衝撃改良剤もまた、考えられる。
【0240】
光硬化は、UV-VISスペクトル範囲で2000J/cm2までの強度を有する、Xeランプ、水銀ランプ、LED UVランプ、強化パルス光(IPL)、又はUVレーザーのようなUV源によってなされることができる。
【0241】
熱硬化は、UV-VIS放射又は伝導によって、例えばIRランプを使用することによって、及び/又は印刷トレイもしくはチャンバー内環境の加熱により印刷表面を加熱することによって行なわれることができる。
【0242】
熱硬化は、過酸化ジクミル(0.01~2重量%添加)のような過酸化触媒、又は第三アミン、イミダゾール及びアルコールのような熱エポキシ触媒の添加によって増強されることができる。
【0243】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、本明細書に記載されるように、ポリイミドプリカーサーを含む配合物、又は前記配合物を含む配合物系は、三次元物体の付加製造に使用するためのものであるか及び/又はそのために特定され、三次元物体は、本明細書に規定されるように、ポリイミド材料をその少なくとも一部に含む。
【0244】
キット:
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載されるように、造形用材料配合物又は配合物系を含むキットが提供される。
【0245】
一部の実施形態では、キットが二種以上の造形用材料配合物、又は二種以上の配合物を含む配合物系を含むとき、各配合物は、キット内に個々に包装される。
【0246】
一部の実施形態では、配合物又は配合物系は、本明細書に記載されるような光開始剤をさらに含み、これらの実施形態の一部では、光開始剤は、配合物又は配合物系の他の成分から分離して、キット内に個々に包装される。
【0247】
例示的な実施形態では、配合物は、好適な包装材料、好ましくは不透過性材料(例えば水及び気体不透過性材料)、さらに好ましくは不透明材料でキット内に包装される。一部の実施形態では、キットは、付加製造プロセス、好ましくは本明細書に記載されるような3Dインクジェット印刷プロセスで配合物を使用する指示をさらに含む。キットは、本明細書に記載された方法に従ってプロセス中に配合物を使用する指示をさらに含むことができる。
【0248】
システム:
本発明の一部の実施形態による、物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ非限定的実施例を、
図1Aに示す。システム110は、複数の吐出(例えば印刷)ヘッドを含む吐出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは、下述する
図2A~
図2Cに示すように、液状構築材料配合物124が吐出される1つ以上のノズル122のアレイを含むことが好ましい。
【0249】
装置114は、三次元印刷装置であることが好ましいが、必須ではない。その場合、吐出ヘッドは、印刷ヘッドであり、構築材料配合物は、インクジェット技術によって吐出される。用途によっては、付加製造装置は、三次元印刷技術を採用する必要がない場合があるので、これは必ずしも該当しない。本発明の様々な例示的実施形態に従って構想される付加製造装置の代表的実施例は、熱溶解積層造形装置および熱溶解材料配合物堆積装置を含むが、それらに限定されない。
【0250】
本明細書で使用される用語「印刷ヘッド」は、3Dインクジェット印刷のような3D印刷で使用可能な吐出ヘッドを表わす。
【0251】
本明細書で使用される用語「印刷ヘッド」、「プリントヘッド」は、交換可能に使用され、3Dインクジェット印刷のような3D印刷に使用可能な吐出ヘッドを表わす。
【0252】
用語「吐出ヘッド」は、印刷ヘッドを包含する。
【0253】
各吐出(例えば印刷)ヘッドは、任意選択的にかつ好ましくは一つ以上の構築材料配合物リザーバを介して供給され、リザーバは、任意選択的に、温度制御ユニット(例えば温度センサおよび/または加熱装置)および材料レベルセンサを含んでもよい。構築材料配合物を吐出するために、例えば圧電式インクジェット印刷技術の場合のように、吐出(例えば印刷)ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴が選択的に堆積されるように、電圧信号が吐出ヘッドに印加される。各ヘッドの吐出率は、ノズルの個数、ノズルの種類、および印加電圧の信号レート(周波数)に依存する。そのような吐出ヘッドは、立体自由造形の当業者には知られている。
【0254】
吐出ノズルまたはノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半数が支持体材料配合物を吐出するように設計され、かつ吐出ノズルの半数が造形用材料配合物を吐出するように設計され、すなわち造形用材料配合物を噴出するノズルの個数が支持体材料配合物を噴出するノズルの個数と同数になるように、選択されることが好ましいが、必須ではない。
図1Aの代表的実施例には4つの吐出ヘッド16a、16b、16c、および16dが示される。ヘッド16a、16b、16c、および16dの各々がノズルアレイを有する。この実施例では、ヘッド16aおよび16bは造形用材料配合物用に設計することができ、ヘッド16cおよび16dは支持体材料配合物用に設計することができる。こうして、ヘッド16aは第一造形用材料配合物を吐出することができ、ヘッド16bは第二造形用材料配合物を吐出することができ、ヘッド16cおよび16dは両方とも支持体材料配合物を吐出することができる。代替的実施形態では、例えばヘッド16cおよび16dは、支持体材料配合物を吐出するための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドに組み合わされてよい。さらなる代替実施形態では、いかなる一つ以上の印刷ヘッドも一種より多い材料配合物を吐出するために一つより多いノズルアレイ、例えば二つの異なる造形用材料配合物又は一つの造形用材料配合物及び支持体材料配合物を吐出するための二つのノズルアレイであって、各配合物が異なるアレイ又は数のノズルを介するものを持つことができる。
【0255】
それにも関わらず、それは本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、造形用材料配合物吐出ヘッド(造形用ヘッド)の個数および支持体材料配合物吐出ヘッド(支持体用ヘッド)の個数は異なってもよいことを理解されたい。一般的に、それぞれのアレイにおいて、造形用材料配合物を吐出するノズルのアレイの個数、支持体材料配合物を吐出するノズルのアレイの個数は、支持体材料配合物の最大吐出率と造形用材料配合物の最大吐出率との間に所定の比率αがもたらされるように選択される。所定の比率αの値は、形成される各層における造形用材料配合物の高さが支持体材料配合物の高さに等しいことを確実にするように選択されることが好ましい。αの典型値は約0.6~約1.5である。
【0256】
例えばα=1の場合、全てのノズルのアレイが作動しているときに、支持体材料配合物の総吐出率は、造形用材料配合物の総吐出率と略同一である。
【0257】
例えば、装置114には、ノズルp個のアレイm個を各々有する造形用ヘッドM個、およびノズルq個のアレイs個を各々有する支持体用ヘッドS個が存在しうるので、M×m×p=S×s×qとなる。M×m個の造形用アレイおよびS×s個の支持体用アレイの各々は、別個の物理ユニットとして製造することができ、それをアレイ群に組み立てたり、そこから分解したりすることができる。この実施形態では、そのようなアレイの各々は、任意選択的にかつ好ましくは、それ自体の温度制御ユニットおよび材料配合物レベルセンサを含み、かつその動作のために個々に制御された電圧を受け取る。
【0258】
装置114は、凝固装置324をさらに含むことができ、それは、堆積された材料配合物を硬化させる光、熱などを放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば凝固装置324は、1つ以上の放射源を含むことができ、それは、使用される造形用材料配合物に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。本発明の一部の実施形態では、凝固装置324は、造形用材料配合物を硬化または凝固させるように働く。
【0259】
本発明の一部の実施形態では、装置114は、一つ以上のファンなどの冷却システム134を含む。
【0260】
吐出(例えば印刷)ヘッドおよび放射源は、作業面として働くトレイ360上を往復運動するように動作することが好ましいフレームまたはブロック128に取り付けられることが好ましい。本発明の一部の実施形態では、放射源は、吐出ヘッドによって吐出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化または凝固するために、放射源が吐出ヘッドの後に追従するようにブロックに取り付けられる。トレイ360は水平に配置される。一般的な取決めに従って、X‐Y‐Zデカルト座標系はX‐Y面がトレイ360と平行になるように選択される。トレイ360は、垂直方向に(Z方向に沿って)、通常は下方に移動するように構成されることが好ましい。本発明の様々な例示的実施形態では、装置114は、1つ以上のレベリング装置132、例えばローラ326をさらに備える。レベリング装置326は、新たに形成された層の厚さを、その上に次の層が形成される前に矯正し、平準化し、かつ/または確立するように働く。レベリング装置326は、レベリング中に発生した余分な材料配合物を回収するために、廃棄物回収装置136を含むことが好ましい。廃棄物回収装置136は、廃棄物タンクまたは廃棄物カートリッジに材料配合物を送達する何らかの機構を含んでよい。廃棄物回収については後でさらに詳述する。
【0261】
使用中に、ユニット16の吐出ヘッドは、本書ではX方向と呼ぶ走査方向に移動し、それらがトレイ360上を通過する過程で所定の構成に構築材料配合物を選択的に吐出する。構築材料は通常、1種類以上の支持体材料配合物および1種類以上の造形用材料配合物を含む。ユニット16の吐出ヘッドの通過に続いて、放射源126による造形用材料配合物の硬化が行われる。堆積されたばかりの層のためのヘッドの出発点に戻るヘッドの逆方向の通過中に、所定の構成に従って構築材料配合物の追加吐出が実行されてよい。吐出ヘッドの順方向または逆方向の通過中に、こうして形成された層は、レベリング装置の順方向および/または逆方向の移動中に好ましくは吐出ヘッドの経路に従うレベリング装置326によって矯正される。吐出ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、吐出ヘッドは、本書ではY方向と呼ぶ割出し方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復運動によって同じ層を構築し続けてよい。代替的に、吐出ヘッドは、順方向および逆方向の移動の間に、または2回以上の順方向‐逆方向移動の後に、Y方向に移動してよい。単一の層を完成させるために吐出ヘッドによって実行される一連の走査は、本書で単一走査サイクルと呼ばれる。
【0262】
層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ360は、Z方向に所定のZレベルまで下降する。この手順は、三次元物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0263】
別の実施形態では、トレイ360は、層内で、ユニット16の吐出ヘッドの順方向および逆方向の通過の間に、Z方向に変位されてよい。そのようなZ変位は、レベリング装置を1方向に表面と接触させ、かつ他の方向の接触を防止するために実行される。
【0264】
システム110は、任意選択的にかつ好ましくは、構築材料配合物容器またはカートリッジを含みかつ複数の構築材料配合物を製造装置114に供給する構築材料配合物供給システム330を備える。
【0265】
制御ユニット152は、製造装置114および任意選択的にかつ好ましくは供給システム330をも制御する。制御ユニット152は通常、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。制御ユニット152は、コンピュータ物体データ、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形式でコンピュータ可読媒体に表されたCAD構成に基づいて、製作命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信することが好ましい。通常、制御ユニット152は、各吐出ヘッドまたは各ノズルアレイに印加される電圧、およびそれぞれの印刷ヘッド又はそれぞれのノズルアレイの構築材料配合物の温度を制御する。
【0266】
製造データが制御ユニット152にロードされると、制御ユニットは、ユーザの介入なしに動作することができる。一部の実施形態では、制御ユニット152は、例えばデータプロセッサ154を用いて、あるいはユニット152と通信するユーザインタフェース116を用いて、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインタフェース116は、例えばキーボード、タッチスクリーンなど、しかしそれらに限らず、当業界で公知の任意の種類とすることができる。例えば制御ユニット152は、追加の入力として、1つ以上の構築材料配合物の種類および/または属性、例えば色、特性歪み、および/または転移温度、粘度、電気特性、磁気特性などを受信することができるが、それらに限定されない。他の属性および属性群も考えられる。
【0267】
本発明の一部の実施形態に係る物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的実施例を
図1B~
図1Dに示す。
図1B~
図1Dは、システム10の上面図(
図1B)、側面図(
図1C)、および等角図(
図1D)を示す。
【0268】
本実施形態では、システム10は、トレイ12と、各々が一つ以上の複数の分離したノズルを持つ一つ以上のノズルアレイを有する複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備える。トレイ12は、円板の形状を有することができ、あるいは環状とすることができる。垂直軸線を中心に回転することができることを前提として、非円形の形状も考えられる。
【0269】
トレイ12およびヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的回転運動ができるように取り付けられる。これは、(i)トレイ12がヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するようにトレイを構成することによって、(ii)ヘッド16がトレイ12に対して垂直軸線14を中心に回転するようにヘッドを構成することによって、または(iii)トレイ12およびヘッド16の両方が垂直軸線14を中心に、しかし異なる回転速度で回転(例えば逆方向に回転)するように構成することによって、達成することができる。以下の実施形態は、トレイが、ヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するように構成された回転トレイである構成(i)を特に重点的に記載するが、本願は構成(ii)および(iii)をも企図していることを理解されたい。本書に記載する実施形態はいずれも、構成(ii)および(iii)のいずれかに適用できるように調整することができ、本書に記載する詳細を前提として、そのような調整をどのように行うかが当業者には分かるであろう。
【0270】
以下の説明では、トレイ12と平行で軸線14から外向きの方向を半径方向rと呼び、トレイ12と平行で半径方向rに垂直な方向をここでは方位角方向φと呼び、トレイ12に直角な方向をここでは垂直方向zと呼ぶ。
【0271】
本書で使用する用語「半径方向位置」とは、軸線14から特定の距離にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸線14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、半径が軸線14から特定の距離にあってその中心が軸線14にある円を描く点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0272】
本書で使用する用語「方位角位置」は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。したがって、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線を描く点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0273】
本書で使用する用語「垂直位置」は、特定の点で垂直軸線14と交差する面全体の位置を指す。
【0274】
トレイ12は、三次元印刷のための支持体構造として働く。1つ以上の物体が印刷される作業領域は通常、トレイ12の総面積より小さいが、必ずしもそうである必要はない。本発明の一部の実施形態では、作業領域は、環状である。作業領域は、符号26で示される。本発明の一部の実施形態では、トレイ12は、物体の形成中ずっと、同一方向に連続的に回転し、本発明の一部の実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば振動するように)回転方向を逆転する。トレイ12は、任意選択的にかつ好ましくは取外し可能である。トレイ12の取外しは、システム10の保守のために、あるいは希望する場合には、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するために、行うことができる。本発明の一部の実施形態では、システム10には1つ以上の異なる交換トレイ(例えば交換トレイのキット)が提供され、2つ以上のトレイが異なる種類の物体(例えば異なる重量)、異なる動作モード(例えば異なる回転速度)等のために設計される。トレイ12の交換は希望通り手動または自動にすることができる。自動交換が採用された場合、システム10は、トレイ12をヘッド16の下にあるその位置から取り外して、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を含む。
図1Bの代表図では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を持つドライブ38として示されるが、他の種類のトレイ交換装置も考えられる。
【0275】
印刷ヘッド16の例示的実施形態を
図2A~
図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110およびシステム10を含め、それらに限らず、上述したAMシステムのいずれかに採用することができる。
【0276】
図2A~
図2Bは、1つ(
図2A)および2つ(
図2B)のノズルアレイ22を持つ印刷ヘッド16を示す。アレイにおけるノズルは直線に沿って線状に並ぶことが好ましい。特定の印刷ヘッドが2つ以上のリニア・ノズル・アレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、任意選択的にかつ好ましくは、相互に平行にすることができる。印刷ヘッドが二つ以上のノズルアレイを持つとき(例えば
図2B)、ヘッドの全てのアレイは、同じ構築材料配合物を供給されることができ、又は同じヘッドの少なくとも二つのアレイは、異なる構築材料配合物を供給されることができる。
【0277】
システム110と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、走査方向に沿ったそれらの位置が互いにずらされ、割出し方向に沿って向き付けられる。
【0278】
システム10と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、それらの方位角位置が互いにずらされ、放射状に(放射方向と平行に)向き付けられる。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは互いに平行ではなく、むしろ互いに角度を成しており、その角度はそれぞれのヘッド間の方位角のずれに略等しい。例えば1つのヘッドは放射状に向き付け、かつ方位角位置φ1に配置することができ、別のヘッドは放射状に向き付け、かつ方位角位置φ2に配置することができる。この実施例では、2つのヘッド間の方位角のずれはφ1-φ2であり、2つのヘッドのリニア・ノズル・アレイ間の角度もまたφ1-φ2である。
【0279】
一部の実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを組み立てて、1ブロックの印刷ヘッドにすることができる。その場合、そのブロックの印刷ヘッドは一般的に、互いに平行である。幾つかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックが
図2Cに示される。
【0280】
一部の実施形態では、システム10は、トレイ12が支持体構造30とヘッド16との間にくるように、ヘッド16の下に位置する支持体構造30を含む。支持体構造30は、インクジェット印刷ヘッド16が作動している間発生することのあるトレイ12の振動を防止または低減するように働く。印刷ヘッド16が軸線14を中心に回転する構成では、支持体構造30が常にヘッド16の真下にくるように(トレイ12と共にヘッド16とトレイ12の間で)支持体構造30も回転することが好ましい。
【0281】
トレイ12および/または印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離が変動するように垂直方向zに沿って垂直軸線14と平行に移動するように構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離が変動する構成では、支持体構造30もトレイ12と共に垂直方向に移動することが好ましい。トレイ12の垂直位置は固定されたままで、垂直距離がヘッド16によって垂直方向に沿って変動する構成では、支持体構造30もまた固定垂直位置に維持される。
【0282】
垂直移動は、垂直ドライブ28によって確立することができる。ある層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて所定の垂直間隔だけ、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を増大させることができる(例えばヘッド16に対してトレイ12を下降させる)。この手順は、三次元物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0283】
吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッド16の操作、および任意選択的にかつ好ましくは、システム10の1つ以上の他の構成部品の操作、例えばトレイ12の移動の操作も、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路および回路によって読出し可能な不揮発性記憶媒体を有することができ、記憶媒体は、回路によって読み出されたときに、以下でさらに詳述するように制御動作を回路に実行させるプログラム命令を格納する。
【0284】
コントローラ20はまた、例えば標準テッセレーション言語(STL)またはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴン・ファイル・フォーマット(PLY)、またはコンピュータ支援設計(CAD)に適したいずれかの他のフォーマットの形のコンピュータ物体データに基づいて、製作命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することもできる。物体データフォーマットは一般的に、デカルト座標系に従って構成される。このような場合、コンピュータ24は、コンピュータ物体データにおける各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行することが好ましい。コンピュータ24は、任意選択的にかつ好ましくは、変換された座標系で製作命令を送信する。代替的に、コンピュータ24は、コンピュータ物体データによって提供された元の座標系で、製作命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0285】
座標の変換は、回転トレイ上の三次元印刷を可能にする。静止トレイを有する非回転システムでは、印刷ヘッドは、一般的に静止トレイ上を直線に沿って往復運動する。そのようなシステムでは、ヘッドの吐出率が均一であることを前提として、印刷解像度はトレイ上のどの点でも同じである。非回転システムとは異なり、システム10では、ヘッド点の全てのノズルが同時にトレイ12全体で同一距離をカバーするわけではない。座標の変換は、任意選択的にかつ好ましくは、異なる半径方向位置における過剰な材料配合物の均等な量が確保されるように実行される。本発明の一部の実施形態に係る座標変換の代表的実施例が、物体の3つのスライスを示す
図3A~
図3Bに提示される(各スライスは物体の異なる層の製作命令に対応する)。
図3Aは、スライスをデカルト座標系で示し、
図3Bは、座標変換手順がそれぞれのスライスに適用された後の同じスライスを示す。
【0286】
通常、コントローラ20は、製作命令に基づき、かつ下述する格納されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成部品に印加される電圧を制御する。
【0287】
一般的に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、トレイ12上で三次元物体を印刷するために構築材料配合物の液滴を層状に吐出するように、印刷ヘッド16を制御する。
【0288】
システム10は、任意選択的にかつ好ましくは、1つ以上の放射源18を備え、それは、使用する造形用材料配合物に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。放射源は、発光ダイオード(LED)、デジタル・ライト・プロセシング(DLP)システム、抵抗ランプ等をはじめ、それらに限らず、任意の種類の放射線放出素子を含むことができる。放射源18は、造形用材料配合物を硬化または凝固させるように働く。本発明の様々な例示的実施形態では、放射源18の動作はコントローラ20によって制御され、それは、放射源18を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に放射源18によって発生する放射線の量も制御することができる。
【0289】
本発明の一部の実施形態では、システム10は、ローラまたはブレードとして製造することのできる1つ以上のレベリング装置32をさらに備える。レベリング装置32は、新たに形成された層を、次の層がその上に形成される前に矯正するのに役立つ。一部の実施形態では、レベリング装置32は、円錐ローラの形状を有し、その対称軸線34がトレイ12の表面に対して傾斜し、かつその表面がトレイの表面と平行になるように配置される。この実施形態をシステム10の側面図に示す(
図1C)。
【0290】
円錐ローラは、円錐または円錐台の形状を有することができる。
【0291】
円錐ローラの開き角は、その軸線34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸線14との間の距離との比率が一定になるように選択されることが好ましい。ローラが回転する間、ローラの表面上の点pはどれも、点pの鉛直下方に位置する点のトレイの線速度に比例する(例えば同一の)線速度を有するので、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に平準化することを可能にする。一部の実施形態では、ローラは高さh、軸線14から最も近い距離位置における半径R1、および軸線14から最も遠い距離位置における半径R2を有する円錐台の形状を有する。ここでパラメータh、R1、およびR2は、R1/R2=(R-h)/hの関係を満たし、ここでRは軸線14からのローラの最遠距離である(例えばRはトレイ12の半径とすることができる)。
【0292】
レベリング装置32の動作は、任意選択的にかつ好ましくは、コントローラ20によって制御される。コントローラは、レベリング装置32を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に、垂直方向(軸線14と平行)に沿ったその位置、および/または放射方向(トレイ12と平行に、軸線14に近づくかまたはそれから離れる方向)に沿ったその位置をも制御することができる。
【0293】
本発明の一部の実施形態では、印刷ヘッド16は、径方向rに沿ってトレイに対して往復運動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の径方向に沿った幅より短いときに、有用である。径方向に沿ったヘッド16の運動は、任意選択的にかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0294】
一部の実施形態は、(同じ又は異なる印刷ヘッドに属する)異なるノズルアレイから異なる配合物を吐出することによって物体の製作を企図する。例えば、製作は、第一ノズルアレイからの第一配合物の吐出、及び第二ノズルアレイからの第二配合物の吐出を含む。一部の実施形態では、第一ノズルアレイ及び第二ノズルアレイは、同じ印刷ヘッドを持つ。一部の実施形態では、第一ノズルアレイ及び第二ノズルアレイは、別個の印刷ヘッドを持つ。これらの実施形態の一部では、第一配合物及び第二配合物は、本明細書に記載されるような配合物系を形成する異なる造形用材料配合物である。
【0295】
これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料配合物から材料配合物を選択し、かつ選択された材料配合物およびそれらの性質の所望の組合せを画定する能力を提供する。本実施形態によれば、異なる材料配合物による異なる三次元空間位置の占有を達成するか、あるいは2つ以上の異なる材料配合物による略同一の三次元位置または隣接する三次元位置の占有を達成するように、層における各材料配合物の堆積の空間位置が画定され、層内の材料配合物の堆積後の空間的組合せが可能になり、それによってそれぞれの位置(単数または複数)で複合材料配合物を形成することが可能になる。
【0296】
造形用材料配合物の任意の堆積後の組合せまたは混合が企図される。例えば特定の材料配合物が吐出された後、それはその元の性質を維持することができる。しかし、別の造形用材料配合物または他の吐出材料配合物と同時に、同じ位置あるいは近傍位置で吐出された場合、吐出された材料配合物とは異なる性質を有する複合材料配合物が形成される。
【0297】
こうして本実施形態は、広範囲の材料配合物の組合せの堆積を可能にし、かつ物体の各部分を特徴付けるために望ましい特性に応じて、物体の異なる部分を複数の異なる材料配合物の組合せから構成することのできる物体の製作を可能にする。
【0298】
本実施形態に適したAMシステムの原理および動作のさらなる詳細は米国公開出願第20100191360号に見られ、その内容を参照によって本書に援用する。
【0299】
方法:
図4は、本発明の一部の実施形態による例示的な方法を記載するフローチャートを与える。
【0300】
他に規定されない限り、以下に記載される操作は、多くの実施の組み合わせ又は順序で同時に又は連続して実施されることができることが理解されるべきである。特に、フローチャート図の順序は、限定として考えられるべきではない。例えば、特定の順序でフローチャート図に又は以下の記載に現われる二つ以上の操作は、異なる順序で(例えば逆の順序で)又は実質的に同時に実施されることができる。さらに、以下に記載される複数の操作は、任意であり、実施されなくてもよい。
【0301】
本実施形態の方法を実施するコンピュータープログラムは、一般にフロッピーディスク、CD-ROM、フラッシュメモリー装置、及び携帯可能なハードドライブのような限定されない配布媒体でユーザーに配布されることができる。配布媒体から、コンピュータープログラムは、ハードディスク又は同様の中間記憶媒体にコピーされることができる。コンピュータープログラムは、コンピューター指示をそれらの配布媒体又はそれらの中間記憶媒体から本発明の方法に従ってコンピューターを作動するように構成するコンピューターの実施記憶装置にロードすることによって実行されることができる。全てのこれらの操作は、コンピューターシステムの分野の熟練者に周知である。
【0302】
本実施形態のコンピューター実施される方法は、多くの形態で実現されることができる。例えば、それは、方法操作を実施するためのコンピューターのような有形的表現媒体で実現されることができる。それは、方法操作を実施するためのコンピューター可読指示を含む、コンピューター可読媒体で実現されることができる。それは、コンピュータープログラムを有形的表現媒体に実行させたり、又は指示をコンピューター可読媒体に実施させたりするように配置されたデジタルコンピューター能力を有する電子装置で実現されることもできる。
【0303】
方法は、200で開始し、任意選択的にかつ好ましくは201に続き、そこで物体の形状に相当するコンピューター物体データ(例えば3D印刷データ)を受けとる。データは、例えばホストコンピューターから受けとられることができ、それは、例えばコンピューター物体データ、例えばSTL,SLCフォーマット、VRML,AMFフォーマット、DXF,PLY、又はいずれかの他のCADのために好適なフォーマットの形のものに基づいて製作指示に関するデジタルデータを送信する。
【0304】
方法は、202に続き、そこで本明細書に記載されるような未硬化の構築材料(例えば本明細書に記載されるような一種以上の造形用材料配合物、及び任意選択的に支持材料配合物)の液滴は、コンピューター物体データ(例えば印刷データ)に従って、かつ本明細書に記載されるように、システム110又はシステム10(これらに限定されない)のようなAMシステムを任意選択的にかつ好ましくは使用して、受容媒体上に層状に吐出される。一部の実施形態では、AMシステムは、例えば本明細書に記載されるように、3Dインクジェット印刷システムである。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、吐出202は、少なくとも二つの異なるマルチノズルインクジェット印刷ヘッドによって及び/又は少なくとも二つの異なるノズルアレイによって行なわれる。受容媒体は、本明細書に記載されるようにAMシステムのトレイ(例えばトレイ360又は12)、又は前に堆積された層であることができる。
【0305】
本発明の一部の実施形態では、吐出202は、周囲環境下で実施される。
【0306】
任意選択的に、未硬化の構築材料、又はその一部(例えば構築材料の一種以上の配合物)は、吐出される前に加熱される。これらの実施形態は、3Dインクジェット印刷システムの作業室の操作温度で相対的に高い粘度を有する未硬化の構築材料配合物のために特に有用である。配合物の加熱は、3Dインクジェット印刷システムの印刷ヘッドのノズルを通してそれぞれの配合物を噴射することを可能にする温度にすることが好ましい。本発明の一部の実施形態では、加熱は、それぞれの配合物がそれぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるような粘度を示す温度にする。
【0307】
加熱は、AM(例えば3Dインクジェット印刷)システムの印刷ヘッドへのそれぞれの配合物の充填前、又は配合物が印刷ヘッド中にある間、又は組成物が印刷ヘッドのノズルを通過する間に実施されることができる。
【0308】
一部の実施形態では、加熱は、配合物の粘度が高すぎる場合に配合物による吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドの詰まりを避けるように、吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッド中へのそれぞれの配合物の充填前に実施される。
【0309】
一部の実施形態では、加熱は、少なくとも吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドのノズルを造形用材料配合物が通過する間、吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドを加熱することによって実施される。
【0310】
いったん未硬化の構築材料がコンピューター物体データ(例えば印刷データ)に従って受容媒体上に吐出されたら、方法は、任意選択的にかつ好ましくは203に続き、そこで硬化条件(例えば硬化エネルギー)が、例えば本明細書に記載されるような放射線源によって堆積された層に付与される。好ましくは、硬化は、層の堆積後及び前の層の堆積前に各個々の層に付与される。
【0311】
一部の実施形態では、硬化エネルギーの付与は、本明細書に記載されるように、ほぼ乾燥した不活性環境下で実施される。
【0312】
方法は、204で終了する。
【0313】
一部の実施形態では、方法は、それぞれの実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載されるような例示的なシステムを使用して実施される。
【0314】
造形用材料配合物は、固体自由形状製作装置の特定の容器もしくはカートリッジ、又は装置の異なる容器から堆積された造形用材料配合物の組み合わせに含まれることができる。
【0315】
一部の実施形態では、少なくとも一つ、又は少なくとも二つもしくは三つ(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれより多く)、又は全ての層は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、単一の造形用材料配合物の202におけるような液滴の吐出によって形成される。
【0316】
一部の実施形態では、少なくとも一つ、又は少なくとも二つもしくは三つ(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれより多く)、又は全ての層は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、二種以上の造形用材料配合物(各々が異なる吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッド又は本明細書に記載される異なるノズルアレイからのもの)の202におけるような液滴の吐出によって形成される。
【0317】
これらの実施形態は、特に所定数の材料から材料を選択し、選択された材料の希望の組み合わせ及びそれらの特性を規定する能力を与える。本実施形態によれば、層での各材料の堆積の空間位置は、異なる材料による異なる三次元空間位置の占有を実施するか、又は二種以上の異なる材料による実質的に同じ三次元位置又は隣接三次元位置の占有を実施し、層内で材料の後で堆積空間組み合わせを可能とし、それによってそれぞれの位置で複合材料を形成するために規定される。
【0318】
造形用材料のいかなる後での堆積組み合わせ又は混合も考えられる。例えば、いったんある材料が吐出されると、それは、その元の特性を保持することができる。しかしながら、それが同じ又は隣接位置で吐出される別の造形用材料又は他の吐出された材料と同時に吐出されるとき、吐出された材料とは異なる特性を持つ複合材料が形成される。
【0319】
実施形態の一部は、幅広い範囲の材料組み合わせの吐出、及び複数の異なる材料組み合わせからなりうる物体の製作を、物体の異なる部分において、物体のそれぞれの部分を特徴づけるために望ましい特性に従って可能にする。
【0320】
これらの実施形態の一部では、二種以上の造形用材料配合物は、ボクセル方式で吐出され、前記造形用材料配合物のうちの一種のボクセルは、少なくとも一つの別の種類の造形用材料配合物のボクセルとインターレースされる。
【0321】
一部の実施形態は、三次元物体の層状製作の方法を提供し、そこでは少なくとも二つもしくは三つ(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも80)の層又は全ての層の各々に対して、二種以上の造形用材料配合物が、任意選択的にかつ好ましくはシステム10又はシステム110を使用して吐出される。各造形用材料配合物は、印刷ヘッド(例えばヘッド16)の複数のノズルからそれを噴射することによって吐出されることが好ましい。吐出は、ボクセル方式で吐出され、前記造形用材料配合物のうちの一種のボクセルは、予め決められたボクセル比に従って、少なくとも一つの別の種類の造形用材料配合物のボクセルとインターレースされる。
【0322】
予め決められたボクセル比での二種の造形用材料配合物のかかる組み合わせは、デジタル材料(DM)として言及される。
【0323】
本発明の実施形態のいずれかの一部では、いったん層が本明細書に記載されるように吐出されると、本明細書に記載されるような硬化エネルギーへの露出が実施される。一部の実施形態では、硬化性材料は、UV硬化性材料であり、硬化エネルギーは、放射線源がUV放射線を放出するようなものである。
【0324】
一部の実施形態では、構築材料が支持材料配合物も含む場合、方法は、硬化された支持材料を除去することが行なわれる。これは、当業者によって認識されているように、機械的及び/又は化学的手段によって実施されることができる。
【0325】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、方法は、支持体材料(かかる材料が構築材料に含められるなら)の除去の前又は後のいずれかに硬化された造形用材料を後処理条件にさらすことをさらに含む。後処理条件は、一般的に、硬化された造形用材料をさらに硬化することを目的としている。一部の実施形態では、後処理は、部分的に硬化された材料を硬化し、それによって完全に硬化された材料を得る。
【0326】
一部の実施形態では、後処理は、本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載されるように、熱又は放射線への露出によって実施される。一部の実施形態では、条件が熱(熱の後処理)であるとき、後処理は、数分(例えば10分)から数時間(例えば1~24時間)の範囲の時間で実施されることができる。
【0327】
一部の実施形態では、熱の後処理は、少なくとも一時間、少なくとも100℃の熱に物体を露出することを含む。
【0328】
一部の実施形態では、熱の後処理は、少なくとも200℃、例えば250℃の熱に物体を徐々に露出することを含む。例えば、物体は、第一時間、第一温度(例えば100℃)に露出され、次いで第二時間、第二のより高い温度(例えば150℃又は200℃)に露出され、次いで第三の時間、第三のさらにより高い温度(例えば200℃又は250℃)に露出される。各時間は、10分~2時間であることができる。
【0329】
物体:
本発明の実施形態は、本明細書に規定されるようなポリイミド材料を少なくとも一部に含む三次元物体を提供する。
【0330】
一部の実施形態によれば、三次元物体は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、ポリイミドプリカーサーを含む造形用材料配合物を利用する付加製造によって作られる。
【0331】
一部の実施形態によれば、三次元物体は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるような方法によって作られる。
【0332】
一部の実施形態によれば、三次元物体は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、ポリイミド材料をその少なくとも一部に含む。
【0333】
一部の実施形態によれば、ポリイミド材料を含む物体のそれらの部分は、以下の一つ以上によって特徴づけられる:
それぞれのポリイミドから本質的になる物体の一部の貯蔵弾性率より少なくとも10%高い貯蔵弾性率(E′);及び
それぞれのポリイミドから本質的になる物体の一部のガラス転移温度より少なくとも10%高いガラス転移温度(Tg)。
【0334】
これらの実施形態の文脈において、「それぞれのポリイミド」は、それぞれの実施形態において本明細書に規定されるような多官能硬化性材料の存在なしで、ポリイミドプリカーサーの重合の結果である硬化材料を意味する。即ち、本明細書に記載された多官能硬化性材料及びポリイミドプリカーサーを含む配合物で形成された硬化材料は、唯一の硬化性材料としてポリイミドプリカーサーを含む配合物で形成された硬化材料より高い貯蔵弾性率及び/又はTgを示す。
【0335】
例えば、本実施形態によるポリイミド材料は、約800MPa又はそれより高い貯蔵弾性率を具備し、それぞれのポリイミドの貯蔵弾性率は、約700MPaである。
【0336】
一部の実施形態によれば、物体中のポリイミド材料は、高いHDT(この用語は、本明細書に規定される)、例えば100℃より高い又は120℃より高い又は150℃より高い又はさらに高いHDTによって特徴づけられる。
【0337】
一部の実施形態によれば、物体中のポリイミド材料は、本明細書に規定されるように、有機極性溶剤を欠いている。
【0338】
本明細書及び業界で使用されているように、貯蔵弾性率(E′)は、動的機械分析で測定された材料の剛さを表わすものとして、ISO 6721-1に従って規定され、負荷サイクル中に標本に貯蔵されるエネルギーに比例する。一部の実施形態では、貯蔵弾性率は、後述の実施例の部分に記載されるように決定される。一部の実施形態では、貯蔵弾性率は、ASTM D4605に従って決定される。
【0339】
本明細書において「Tg」は、E′′曲線の極大値の位置として規定されたガラス転移温度を示し、E′′は、温度の関数として材料の損失弾性率である。広く言うと、温度がTg温度を含む温度の範囲内で上昇するにつれて、材料(特にポリマー材料)の状態がガラス状態からゴム状態に徐々に変化する。
【0340】
本明細書において「Tg範囲」は、E′′値が上で規定されたTg温度でのその値の少なくとも半分である(例えば、その値までであることができる)温度範囲である。
【0341】
いかなる特定の理論に拘束されることを望まないが、ポリマー材料の状態が上で規定されたTg範囲内でガラス状態からゴム状態に徐々に変化することが想定される。Tg範囲の最も低い温度は、本明細書においてTg(low)として言及され、Tg範囲の最も高い温度は、本明細書においてTg(high)として言及される。
【0342】
本明細書に記載された実施形態のいずれかでは、「Tgより高い温度」は、Tg温度より高い温度、又はより好ましくはTg(high)より高い温度を意味する。
【0343】
一部の実施形態では、Tgは、後述する実施例の部分に記載されるように決定される。
【0344】
本明細書で使用されるHDTは、それぞれの材料がある温度で予め決められた負荷の下で変形する温度を示す。材料のHDTを決定するために好適な試験手順は、ASTM D-648シリーズ、特にASTM D-648-06及びASTM D-648-07法である。一部の実施形態では、HDTは、0.45MPaの圧力で決定される。
【0345】
本明細書中で全体を通して使用される用語「約」は、±10%又は±5%を示す。
【0346】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0347】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0348】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0349】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0350】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0351】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0352】
本出願の全体を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0353】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0354】
本明細書中全体を通して、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリル材料を包含する。
【0355】
本明細書中全体を通して、表現「連結部分」又は「連結基」は、化合物中の二つ以上の部分又は基を接続する基を記載する。連結部分は、一般的に二又は三官能化合物から誘導され、二つ又は三つのラジカル部分として見なされることができ、二つ又は三つのラジカルは、それぞれ、その二つ又は三つの原子を介して二つ又は三つの他の部分に接続される。
【0356】
例示的な連結部分は、本明細書に規定されるように、一つ以上のヘテロ原子によって任意選択的に中断される、炭化水素部分又は鎖、及び/又は連結基として規定されるとき、以下に挙げられる化学基のいずれかを含む。
【0357】
化学基が本明細書において「末端基」として言及されるとき、それは、置換基として中断され、置換基は、その一つの原子によって別の基に接続される。
【0358】
本明細書中全体を通して、用語「炭化水素」は、主として炭素及び水素原子から構成される化学基を集合的に記載する。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール、及び/又はシクロアルキルからなることができ、各々は、置換されても置換されなくてもよく、一つ以上のヘテロ原子によって中断されてもよい。炭素原子の数は、2~30の範囲であり、好ましくはそれより低く、例えば1~10、又は1~6、又は1~4の範囲であることができる。炭化水素は、連結基又は末端基であることができる。
【0359】
ビスフェノールAは、2つのアリール基及び1つのアルキル基から構成される炭化水素の一例である。ジメチレンシクロヘキサンは、2つのアルキル基及び1つのシクロアルキル基から構成される炭化水素の一例である。
【0360】
本明細書で使用される用語「アミン」は、-NR’R”基および-NR’-基の両方を記載し、ここでR’およびR”はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0361】
従って、アミン基は、第一級アミン(ここでR’およびR”の両方は水素である)、第二級アミン(ここでR’は水素でありかつR”はアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールである)、または第三級アミン(ここでR’およびR”はそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキルもしくはアリールである)であることができる。
【0362】
代替的に、R’およびR”は、それぞれ独立してヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。
【0363】
用語「アミン」は、アミンが末端基である場合には、本明細書中下記で定義されるように、-NR’R”基を表すために本明細書中では使用され、また、アミンが連結基または連結部分の一部である場合には-NR’-基を表すために本明細書中では使用される。
【0364】
用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個~3個又は1個~20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個~20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されたアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。
【0365】
アルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の部分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。アルキルが連結基であるとき、それはまた、「アルキレン」または「アルキレン鎖」として本明細書中に言及される。
【0366】
本明細書中で使用されるアルケンおよびアルキンは、一つ以上の二重結合または三重結合をそれぞれ含む、本明細書中で定義されるアルキルである。
【0367】
用語「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。例示は、限定されないが、シクロヘキサン、アダマチン、ノルボルニル、イソボルニル、及びその類似物を含む。シクロアルキル基は、置換または非置換であることができる。置換されたシクロアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。シクロアルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。
【0368】
用語「複素脂環(ヘテロ脂環)」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を記載する。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は、完全共役のπ電子系を有しない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノおよびその類似物である。
【0369】
複素脂環は、置換または非置換であることができる。置換された複素脂環は、一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。複素脂環基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。
【0370】
用語「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。アリール基は、置換または非置換であることができる。置換されたアリールは、一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。アリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。
【0371】
用語「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であることができる。置換されたヘテロアリールは、一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。ヘテロアリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。代表的な例はピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンおよびその類似物である。
【0372】
用語「ハリド(ハライド)」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、または沃素を記載する。
【0373】
用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハリドによってさらに置換された、上記で定義されるアルキル基を記載する。
【0374】
用語「スルファート」は、-O-S(=O)2-OR’末端基または-O-S(=O)2-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0375】
用語「チオスルファート」は、-O-S(=S)(=O)-OR’末端基または-O-S(=S)(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0376】
用語「スルファイト」は、-O-S(=O)-O-R’末端基または-O-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0377】
用語「チオスルファイト」は、-O-S(=S)-O-R’末端基または-O-S(=S)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0378】
用語「スルフィナート」は、-S(=O)-OR’末端基または-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0379】
用語「スルホキシド」または「スルフィニル」は、-S(=O)R’末端基または-S(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0380】
用語「スルホネート」は、-S(=O)2-R’末端基または-S(=O)2-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0381】
用語「S-スルホンアミド」は、-S(=O)2-NR’R”末端基または-S(=O)2-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0382】
用語「N-スルホンアミド」は、R’S(=O)2-NR”末端基または-S(=O)2-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0383】
用語「ジスルフィド」は、-S-SR’末端基またはS-S-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0384】
用語「ホスホナート」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=O)(OR’)(OR”)末端基または-P(=O)(OR’)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0385】
用語「チオホスホナート」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=S)(OR’)(OR”)末端基または-P(=S)(OR’)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0386】
用語「ホスフィニル」は、本明細書中上記で定義されるようなR’およびR”を有する-PR’R”末端基または-PR’-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0387】
用語「ホスフィンオキシド」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=O)(R’)(R”)末端基または-P(=O)(R’)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0388】
用語「ホスフィンスルフィド」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=S)(R’)(R”)末端基または-P(=S)(R’)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0389】
用語「ホスファイト」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-O-PR’(=O)(OR”)末端基または-O-PH(=O)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0390】
用語「カルボニル」または用語「カルボネート」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようなR’を有する-C(=O)-R’末端基または-C(=O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0391】
用語「チオカルボニル」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようなR’を有する-C(=S)-R’末端基または-C(=S)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0392】
用語「オキソ」は、本明細書中で使用される場合、(=O)基を表し、この場合、酸素原子が、示された位置における原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結される。
【0393】
用語「チオオキソ」は、本明細書中で使用される場合、(=S)基を表し、この場合、イオウ原子が、示された位置における原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結される。
【0394】
用語「オキシム」は、=N-OH末端基または=N-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0395】
用語「ヒドロキシル」は、-OH基を記載する。
【0396】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で定義される通り-O-アルキル基および-O-シクロアルキル基の両方を記載する。
【0397】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り-O-アリール基および-O-ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0398】
用語「チオヒドロキシ」は、-SH基を記載する。
【0399】
用語「チオアルコキシ」は、本明細書中で定義される通り-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を記載する。
【0400】
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り-S-アリール基および-S-ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0401】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書中で「アルコール」としても言及され、ヒドロキシ基によって置換される、本明細書中で定義されるアルキルを記載する。
【0402】
用語「シアノ」は、-C≡N基を記載する。
【0403】
用語「イソシアネート」は、-N=C=O基を記載する。
【0404】
用語「イソチオシアネート」は、-N=C=S基を記載する。
【0405】
用語「ニトロ」は、-NO2基を記載する。
【0406】
用語「アシルハリド」は、-(C=O)R””基(式中、R””は本明細書中上記で定義される通りハリドである)を記載する。
【0407】
用語「アゾ」または「ジアゾ」は、-N=NR’末端基または-N=N-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0408】
用語「パーオキソ」は、-O-OR’末端基または-O-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0409】
用語「カルボキシレート」は、本明細書中で使用される場合、C-カルボキシレートおよびO-カルボキシレートを包含する。
【0410】
用語「C-カルボキシレート」は、-C(=O)-OR’末端基または-C(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0411】
用語「O-カルボキシレート」は、-OC(=O)R’末端基または-OC(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0412】
カルボキシレートは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、C-カルボキシレートで環を形成し、この基はまた、ラクトンとして示される。あるいは、R’とOとが一緒に連結されて、O-カルボキシレートで環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0413】
用語「チオカルボキシレート」は、本明細書中で使用される場合、C-チオカルボキシレートおよびO-チオカルボキシレートを包含する。
【0414】
用語「C-チオカルボキシレート」は、-C(=S)OR’末端基または-C(=S)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0415】
用語「O-チオカルボキシレート」は、-OC(=S)R’末端基または-OC(=S)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0416】
チオカルボキシレートは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、C-チオカルボキシレートで環を形成し、この基はまた、チオラクトンとして示される。あるいは、R’とOとが一緒に連結されて、O-チオカルボキシレートで環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0417】
用語「カーバメート(カルバメート)」は、本明細書中で使用される場合、N-カーバメートおよびO-カーバメートを包含する。
【0418】
用語「N-カーバメート」は、R”OC(=O)-NR’-末端基または-OC(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0419】
用語「O-カーバメート」は、-OC(=O)-NR’R”末端基または-OC(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0420】
カーバメートは、直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、O-カーバメートで環を形成する。あるいは、R’とOとが一緒に連結されて、N-カーバメートで環を形成する。環状カーバメートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0421】
用語「カーバメート」は、本明細書中で使用される場合、N-カーバメートおよびO-カーバメートを包含する。
【0422】
用語「チオカーバメート」は、本明細書中で使用される場合、N-チオカーバメートおよびO-チオカーバメートを包含する。
【0423】
用語「O-チオカーバメート」は、-OC(=S)-NR’R”末端基または-OC(=S)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0424】
用語「N-チオカーバメート」は、R”OC(=S)NR’-末端基または-OC(=S)NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0425】
チオカーバメートは、カーバメートについて本明細書中に記載したように、直鎖または環状であることが可能である。
【0426】
用語「ジチオカーバメート」は、本明細書中で使用される場合、S-ジチオカーバメートおよびO-チオジチオカーバメートを包含する。
【0427】
用語「S-ジチオカーバメート」は、-SC(=S)-NR’R”末端基または-SC(=S)NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0428】
用語「N-ジチオカーバメート」は、R”SC(=S)NR’-末端基または-SC(=S)NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0429】
用語「尿素(ウレア)」(「ウレイド」とも称される)は、-NR’C(=O)-NR”R”’末端基または-NR’C(=O)-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りであり、R”’はR’およびR”について本明細書中で定義される通りである)を記載する。
【0430】
用語「チオ尿素(チオウレア)」(「チオウレイド」とも称される)は、-NR’C(=S)-NR”R”’末端基または-NR’-C(=S)-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’,R”およびR”’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0431】
用語「アミド」は、本明細書中で使用される場合、C-アミドおよびN-アミドを包含する。
【0432】
用語「C-アミド」は、-C(=O)-NR’R”末端基または-C(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0433】
用語「N-アミド」は、R’C(=O)-NR”-末端基またはR’C(=O)-N-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0434】
アミドは、直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、C-アミドで環を形成し、この基はまた、ラクタムとして示される。環状アミドは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0435】
用語「グアニル」は、R’R”NC(=N)-末端基または-R’NC(=N)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0436】
用語「グアニジン」は、-R’NC(=N)-NR”R”’末端基または-R’NC(=N)-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’,R”およびR”’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0437】
用語「ヒドラジン」は、-NR’-NR”R”’末端基または-NR’-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’,R”およびR”’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0438】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒドラジド」は、R’、R”およびR”’が本明細書中で定義される通りである-C(=O)-NR’-NR”R”’末端基または-C(=O)-NR’-NR”-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0439】
本明細書中で使用される場合、用語「チオヒドラジド」は、R’、R”およびR”’が本明細書中で定義される通りである-C(=S)-NR’-NR”R”’末端基または-C(=S)-NR’-NR”-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0440】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキレングリコール」は-O-[(CR’R”)z-O]y-R”’末端基または-O-[(CR’R”)z-O]y-連結基を表し、ただし、式中、R’、R”およびR”’は本明細書中で定義される通りであり、zは1~10の整数であり、好ましくは2~6の整数であり、より好ましくは2または3の整数であり、yは1またはそれ以上の整数である。好ましくは、R’およびR”はともに水素である。zが2であり、かつ、yが1であるとき、この基はエチレングリコールである。zが3であり、かつ、yが1であるとき、この基はプロピレングリコールである。yが2~4であるとき、アルキレングリコールは、本明細書ではオリゴ(アルキレングリコール)として言及される。yが4よりも大きいとき、このアルキレングリコールは、本明細書ではポリ(アルキレングリコール)として示される。
【0441】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0442】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の部分において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0443】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0444】
材料及び実験方法
材料:
Designer Molecules Inc.によって販売されるBMI-689が全ての実験において使用された。
【0445】
溶剤含有BMI配合物(BMI-689/HA)は、2重量%のIrgacure 819(BASF)及び1重量%のIrgacure TPO-L(BASF)のフリーラジカル光開始剤の添加とともにn-ヘキシルアセテート99%(Alfa Aesar)において80重量%のBMI-689を作ることによって調製された。
【0446】
溶剤不含BMI配合物(本明細書ではBMI-689/RDとしても言及される)は、1phr(樹脂100部あたりの部数)のIrgacure TPO(BASF)(フリーラジカル光開始剤)、及びBYK307 0.05phrの添加とともに80重量%のBMI-689を20重量%の反応希釈剤(RD:本明細書の全体を通して「硬化性材料」又は「追加の硬化性材料」としても言及される)と混合することによって調製された。
【0447】
試験された硬化性材料を含む全ての他の成分は、既知の販売会社から得られた。
【0448】
分析方法:
BMI含有配合物の粘度は、Brookfield粘度計(model LVDVE)によって測定された。
【0449】
BMI溶液の表面張力は、du Nouey ring法を使用して、Kruss張力計、model K-6によって測定された。
【0450】
Tg(tanδ)及び貯蔵弾性率(E′)は、Q-800(TA Instruments)によるDMA(動的機械分析)を使用して測定された。測定は、5℃/分の加熱速度で室温から180℃まで温度傾斜モードでなされた。
【0451】
HDTは、ASTM D648によってHDT 3 Vicat装置(Ceast)を使用して測定された。
【0452】
型製造:
複数のBMI-689/RD試料の50グラム配合物が、上記のようにBMI-689(40グラム)、反応希釈剤(10グラム)及び光開始剤を添加することによって100ml容器中に調製された。混合物は、30分間又は均質な混合物が得られるまで60℃で攪拌された。
【0453】
得られた配合物は、その後、型中に注がれ、型は、完全な反応を確保するために、10~20時間、10UVランプ(Philips TL-K 40W化学線BL反射体)を備えたUVオーブンを使用して、UV照射に供された。
【0454】
得られた造形物は、型から除去され、熱衝撃を避けるために150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間と連続的に加熱する段階的な熱的後処理に供された。
【0455】
造形物は、HDT測定用には3.2mm×12mm×125mmの寸法及びDMA測定用には3.2mm×12mm×64mmの寸法を有する矩形形状を有していた。
【0456】
印刷:
3D造形物の印刷は、他に示さない限り、E1印刷ヘッド及び温度調節された印刷トレイを備えた、Stratasys(Objet)Connex2 3Dインクジェットプリンターで実施された。溶剤含有BMI配合物(BMI-689/HA)に対して、IRランプヒーター(P=500W,model T-HTS/2,Elstein)が加えられた。印刷試行は、約28μmの層厚さで、単一噴射モードで実施された。
【0457】
溶剤含有配合物は、IRランプで各印刷スライス後に8走査での走査を実施しながら、かつ印刷中に印刷トレイを90℃に加熱しながら、印刷された。高温環境の維持を助けるために冷却ファンが切られた。
【0458】
溶剤不含BMI-689配合物は、IR走査なしで、60℃への印刷トレイの加熱で、標準条件で印刷された。発熱反応による温度を維持するために冷却ファンが使用された。
【0459】
印刷造形物は、プリンターから除去され、熱衝撃を避けるために150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間と連続的に加熱する段階的な熱的後処理に供された。
【0460】
造形物は、HDT測定用には3.2mm×12mm×125mmの寸法及びDMA測定用には3.2mm×12mm×64mmの寸法を有する矩形形状を有していた。
【0461】
実験結果
以下の表1及び表2は、純粋なBMI-869、及び様々な反応希釈剤(本明細書に規定されるような硬化性材料)を含むBMI-869の溶剤不含配合物を使用しながら作られた型に対して得られたデータを与える。
【0462】
以下の単官能反応希釈剤が使用された:
・ドデシルビニルエーテル;
・ヒドロキシブチルビニルエーテル;
・ビニルカプロラクタム;
・イソボルニルメタクリレート(IBOMA);及び
・アクリロイルモルフォリン(ACMO)。
【0463】
以下の二官能硬化性材料が試験された:
・シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDVE)
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(DVE-3)
・ジエチレングリコールジビニルエーテル(DVE-2)
・ヘキサン-1,6-ジオールジアクリレート(SR238として販売)
・3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート(MPDA;SR341として販売)
・1,3-ブチレングリコールジメタクリレート(BGDMA;SR297Jとして販売)
【0464】
【0465】
【0466】
型中の追加の実験は、様々な濃度の様々な光開始剤を使用して実施され、光開始剤のタイプ及び濃度が得られた試料の特性に実質的に影響しないことを示した。
【0467】
得られたデータから明らかにわかるように、単官能反応希釈剤の添加は、特性、特にBMIの機械的安定性に悪影響するが、二官能反応希釈剤の添加は、高いHDT値によって反映されるBMIの顕著な熱安定性の維持をもたらすだけでなく、(溶剤含有配合物中で)BMIのみを使用しながら得られたものと比較して機械的特性も改良した。
【0468】
前述したように、BMIは、その極めて高い粘度のためにそれ自体3Dインクジェット印刷に使用されることができない。従って、3D印刷物体を製造するための実験では、BMI及び溶剤(例えばヘキシルアセテート)を含有する配合物が使用された。
【0469】
他方で、表1及び表2に与えられた配合物は、3Dインクジェット印刷のために好適である粘度を示す。全ての試験された配合物は、作業温度(70~80℃)で16~20センチポアズの範囲の粘度を具備する。
【0470】
BMI(BMI-689/RD)の代表的な溶剤不含配合物は、3Dインクジェット印刷で試験され、得られた造形物の特性は、80:20のBMI/ヘキシルアセテート(BMI-689/HA)の混合物を含む溶剤ベースの配合物を使用して印刷された造形物のものと比較された。
【0471】
表3及び表4は、上記配合物で得られた印刷造形物に対して得られたデータを与える。
【0472】
【0473】
【0474】
明らかにわかるように、溶剤ベースのBMI配合物は、溶剤を除去するために、IR走査が各スライス後に要求されるので、過剰な印刷時間を要求する。本実施形態に従って例示的な配合物を使用することは、吐出された層をIR走査に供さずに実施され、従って印刷時間は、実質的に減少され、IRの付与は、要求されず、溶剤蒸発による体積収縮は、避けられ、VOC(揮発性有機溶剤)の取り扱いは、溶剤不含方法のために要求されず、従ってそれは、環境的により優しい。
【0475】
さらに、溶剤含有BMI配合物のものより有利であるプロセスパラメーターに加えて、得られた造形物の特性が、(型製造及び溶剤含有配合物の両方と比較して)各層のより効果的な硬化のために、さらに改良されることが明らかにわかる。
【0476】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0477】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。