(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】捲縮型複合纎維の不織布及びその積層体、並びにその物品
(51)【国際特許分類】
D04H 3/007 20120101AFI20230207BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20230207BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20230207BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20230207BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
D04H3/007
B32B5/26
D04H3/16
D01F8/06
A61F13/511 300
(21)【出願番号】P 2020558439
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(86)【国際出願番号】 KR2019004037
(87)【国際公開番号】W WO2019203484
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0044536
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジン・イル・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】デ・ヒ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・クォン・アン
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-032139(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153802(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/122277(WO,A1)
【文献】特開2007-308868(JP,A)
【文献】国際公開第2011/129211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 3/007
B32B 5/26
D04H 3/16
D01F 8/06
A61F 13/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プロピレン系重合体成分と第2プロピレン系重合体成分とを含む捲縮型複合纎維の不織布であって、
前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分は、示差走査熱量計(DSC)で測定される前記第2プロピレン系重合体成分の融点が、前記第1プロピレン系重合体成分の融点より、30℃以上高く、前記第1プロピレン系重合体成分と前記第2プロピレン系重合体成分との、ASTM D1238によって測定される溶融指数(MFR:測定温度230℃、荷重2.16kg)の比(第2成分/第1成分)が1.7以上であり、前記第1プロピレン系重合体成分/前記第2プロピレン系重合体(重量比)で表示される成分比が、50/50ないし10/90であ
り、
前記不織布は、炭素数5ないし25の脂肪酸アミドを、前記不織布全体重量対比で、0.01ないし3重量%の含量でさらに含み、
前記捲縮型複合纎維は、サイドバイサイド型の複合纎維である捲縮型複合纎維の不織布。
【請求項2】
前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分は、それぞれ互いに独立して、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の捲縮型複合纎維の不織布。
【請求項3】
前記不織布は、エンボシング部及び非エンボシング部を含み、前記エンボシング部は、オープンエンボシングタイプであり、同一でもあったり、異なったりする間隔で、連続して配列された複数個の単位エンボシングパターン部を含む、請求項1に記載の捲縮型複合纎維の不織布。
【請求項4】
前記単位エンボシングパターン部に含まれたそれぞれのエンボシングパターンは、面積が0.2ないし0.7mm
2である、請求項
3に記載の捲縮型複合纎維の不織布。
【請求項5】
前記不織布は、ボンディング率が13%以下である、請求項
3に記載の捲縮型複合纎維の不織布。
【請求項6】
前記不織布は、スパンボンド不織布である、請求項1に記載の捲縮型複合纎維の不織布。
【請求項7】
少なくとも2層以上の層構成を有する不織布積層体であり、そのうち少なくと
も1層が請求項1ないし
6のうちいずれか1項に記載の捲縮型複合纎維の不織布である不織布積層体。
【請求項8】
前記不織布は、スパンボンド不織布であり、前記スパンボンド不織布4枚が積層されてなるものであり、均一度(CV%)が3%以下である、請求項
7に記載の不織布積層体。
【請求項9】
前記不織布積層体は、厚みが0.02mm以上であり、クリンプ数が10個/10mm以上であり、ボンディング率が13%以下であり、各エンボシングパターンのボンディング領域のMD剛軟度が50mm以下である、請求項
8に記載の不織布積層体。
【請求項10】
請求項
7ないし
9のうちいずれか1項に記載の不織布積層体を含む物品。
【請求項11】
前記物品は、おむつ、吸収用品、排便用品、支持層またはトップシートである、請求項1
0に記載の物品。
【請求項12】
前記物品がおむつである場合、前記不織布積層体は、親水剤含浸量(OPU)が0.7%以下であり、前記不織布積層体が前記おむつのトップシート層に適用されたとき、前記物品は、3sec以下の水の吸収速度を有する、請求項1
1に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捲縮型複合纎維の不織布及びその積層体、並びにその物品に係り、さらに詳細には、ソフト性及びバルキー性が向上された捲縮型複合纎維の不織布及びその積層体、並びにその物品に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、ウェブの形成方法及び結合方法により、最終物性が決定される。
【0003】
既存のスパンボンド不織布の製造時、ウェブ形成は、単独紡糸または芯鞘型複合紡糸を介し、ウェブが形成される。そのように形成されたウェブは、クリンプがない単純な構造を有することになり、加熱カレンダーによって結合され、薄い形態の不織布を形成することになる。
【0004】
薄い形態の不織布は、おむつ製造時、トップシート用及びバックシート用として使用されるが、カーディング(carding)によってウェブを形成し、熱風で結合させた単繊維エアスルー不織布に比べ、バルキー性が顕著に低く、ソフト性が低下してしまうという問題点がある。
【0005】
また、ウェブ形成時、クリンプ付与がなされず、バルキー性が落ち、おむつ製造時、赤ちゃんの尻皮膚に直接当接する面積が大きく、不織布ラミネーティング時、ADL層(acquisition distribution layer)との間に余裕空間がなく、排尿時、小便が一部トップシートに残り、赤ちゃんの尻をただれさせたり、発疹を誘発させたりする問題点がある。また、おむつ外部に小便が漏れてしまう問題点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一具現例は、ソフト性及びバルキー性が向上された捲縮型複合纎維の不織布を提供する。
【0007】
本発明の他の具現例は、前記捲縮型複合纎維の不織布を2枚以上含む不織布積層体を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の具現例は、前記不織布積層体を含む物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、
第1プロピレン系重合体成分と第2プロピレン系重合体成分とを含む捲縮型複合纎維の不織布であって、前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分は、示差走査熱量計(DSC)で測定される前記第2プロピレン系重合体成分の融点が、前記第1プロピレン系重合体成分の融点より30℃以上高く、前記第1プロピレン系重合体成分と前記第2プロピレン系重合体成分との、ASTM D1238によって測定される溶融指数(MFR:測定温度230℃、荷重2.16kg)の比(第2成分/第1成分)が1.7以上であり、前記第1プロピレン系重合体成分/前記第2プロピレン系重合体(重量比)で表示される成分比が、50/50ないし10/90である捲縮型複合纎維不織布を提供する。
【0010】
前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分は、それぞれ互いに独立して、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0011】
前記不織布は、炭素数5ないし25の脂肪酸アミドを、前記不織布全体重量対比で、0.01ないし3重量%の含量でさらに含んでもよい。
【0012】
前記不織布は、エンボシングブ及び非エンボシング部を含み、前記エンボシング部は、オープンエンボシングタイプであり、同一でもあったり、異なったりする間隔で、連続して配列された複数個の単位エンボシングパターン部を含んでもよい。
【0013】
前記単位エンボシングパターン部は、下記形状を有することができる:
【0014】
【0015】
前記単位エンボシングパターン部に含まれたそれぞれのエンボシングパターンは、面積が0.2ないし0.7mm2でもある。
【0016】
前記不織布は、ボンディング率が13%以下でもある。
【0017】
前記捲縮型複合纎維は、モノ型、芯鞘型、サイドバイサイド型またはサンドイッチ型の複合纎維でもある。
【0018】
前記不織布は、スパンボンド不織布でもある。
【0019】
本発明の他の側面は、
少なくとも2層以上の層構成を有する不織布積層体であり、そのうち少なくともなくとも1層が、前記捲縮型複合纎維の不織布である不織布積層体を提供する。
【0020】
前記不織布は、スパンボンド不織布であり、前記不織布積層体は、前記スパンボンド不織布4枚が積層されてなるものであり、均一度(CV%)が3%以下でもある。
【0021】
前記不織布積層体は、厚みが0.02mm以上であり、クリンプ数が10個/10mm以上であり、ボンディング率が13%以下であり、各エンボシングパターンのボンディング領域のMD剛軟度が50mm以下でもある。
【0022】
本発明のさらに他の側面は、
前記不織布積層体を含む物品を提供する。
【0023】
前記物品は、おむつ、吸収用品、排便用品、支持層またはトップシートでもある。
【0024】
前記物品がおむつである場合、前記不織布積層体は、親水剤含浸量(OPU)が0.7%以下であり、前記不織布積層体が前記おむつのトップシート層に適用されたとき、前記物品は、3sec以下の水の吸収速度を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一具現例による捲縮型複合纎維の不織布は、クリンプ形態が鮮明であり、形態安定性にすぐれ、優秀なソフト性及びバルキー性を持つことができる。
【0026】
従って、前記捲縮型複合纎維の不織布を含むおむつは、着用者の皮膚を傷つけたり、発疹を起こさせたりしないのである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一具現例による捲縮型複合纎維の不織布のエンボシングパターンを示す部分図である。
【
図2】実施例及び比較例で使用された捲縮型複合纎維の一断面図である。
【
図3】実施例1で製造された捲縮型複合纎維の不織布のエンボシングパターンを示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一具現例による捲縮型複合纎維の不織布について詳細に説明する。
【0029】
本発明の一具現例による捲縮型複合纎維(以下、簡単に「複合纎維」とする)の不織布は、第1プロピレン系重合体成分と第2プロピレン系重合体成分とを含む。
【0030】
前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分は、(i)示差走査熱量計(DSC)で測定される前記第2プロピレン系重合体成分の融点が、前記第1プロピレン系重合体成分の融点より30℃以上高く、(ii)前記第1プロピレン系重合体成分と前記第2プロピレン系重合体成分との、ASTM D1238によって測定される溶融指数(MFR:測定温度230℃、荷重2.16kg)の比(第2成分/第1成分)が1.7以上であり、(iii)前記第1プロピレン系重合体成分/前記第2プロピレン系重合体(重量比)で表示される成分比が、50/50ないし10/90である。
【0031】
例えば、前記第2プロピレン系重合体成分の融点は、前記第1プロピレン系重合体成分の融点より、30℃ないし60℃、または30℃ないし100℃も高い。
【0032】
例えば、前記溶融指数の比(第2成分/第1成分)は、1.7ないし2.0、1.7ないし3.0、または1.7ないし4.0でもある。
【0033】
前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分が、前記条件(i)ないし(iii)をいずれも満足することにより、前記複合纎維は、捲縮性を有することになり、該複合纎維で構成された不織布は、優秀なソフト性及びバルキー性を有することができる。
【0034】
前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分は、前記複合纎維の断面内において、実質的にそれぞれの領域を占めるように配列され、長手方向に沿って連続して伸長され、前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分のうち少なくとも一成分は、前記複合纎維の長手方向に沿い、連続して周縁部表面の少なくとも一部を形成することができる。
【0035】
前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分は、それぞれ互いに独立して、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0036】
前記プロピレン・エチレンランダム共重合体は、10ないし30モル%のエチレン単位成分の含量、及び10ないし200g/10分のMFR(melt flow rate)を有することができる。また、前記エチレン単位成分の含量は、13C-NMRスペクトル測定法によって求められる。
【0037】
一例として、前記エラストマー系ランダム共重合体が、前記第1プロピレン系重合体成分に、10ないし30重量%の比率で含まれてもよい。
【0038】
他の例として、前記プロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体が、前記第1プロピレン系重合体成分に、10ないし30重量%の比率で含まれてもよい。
【0039】
さらに他の例として、前記エラストマー系ランダム共重合体及び前記プロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体が、前記第1プロピレン系重合体成分に、10ないし30重量%の比率で含まれてもよい。
【0040】
さらに具体的には、前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分のうち少なくとも一成分は、プロピレンの単独重合体;プロピレンを主要構造単位成分にして、それと、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンのような炭素数2ないし20、例えば、炭素数2ないし8のα-オレフインのうち1種または2種以上との共重合体;またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0041】
特に、優秀なソフト性及びバルキー性を有する複合纎維の不織布を得ることができるという点において、前記第1プロピレン系重合体成分は、プロピレン単独重合体70~90重量%と、前記エラストマー系ランダム共重合体または前記プロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体10~30重量%との混合物であり、前記第2プロピレン系重合体成分は、プロピレン単独重合体でもある。
【0042】
前記第2プロピレン系重合体成分の融点は、120ないし175℃の範囲でもあり、前記第1プロピレン系重合体成分の融点は、110ないし155℃の範囲でもある。また、前述の2成分の融点差は、前述のように、30℃以上、30℃ないし60℃、または30℃ないし100℃の範囲でもある。
【0043】
前述のようなプロピレン系重合体は、高立体規則性重合触媒を使用して製造することができる。
【0044】
前記高立体規則性重合触媒は、ジエステル成分の触媒、スクシネート成分の触媒、メタロセン触媒、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0045】
前記複合纎維を含む不織布は、特別な装置を使用せず、通常の複合溶融紡糸法で得ることができるが、例えば、生産性にすぐれるスパンボンディング法によって製造されたスパンボンド不織布でもある。
【0046】
以下、該スパンボンド不織布の製造方法について詳細に説明する。
【0047】
まず、複合纎維の一方領域を形成する前記第1プロピレン系重合体成分と、他方領域を形成する前記第2プロピレン系重合体成分とをそれぞれ別個に押出機などで溶融し、所望する纎維構造を形成して吐出するように構成された複合紡糸ノズルを有する紡糸口金から各溶融物を吐出させ、複合長纎維を放出させる。
【0048】
その後、前記放出された長纎維を、冷却用空気によって冷却し、さらに延伸用空気によって張力を加え、所定纎度を有させ、そのまま捕集ベルト上に捕集し、所定厚に堆積させる。
【0049】
その後、交絡処理として、ニードルパンチ、ウォータージェット、超音波などの手段を利用する方法、加熱エンボシングロールを利用するエンボシング加工、または高温通気によって熱融着する方法により、後加工が進められる。
【0050】
本発明の一具現例においては、前記不織布は、エンボシング加工によって熱融着されて形成されたものでもある。
【0051】
前記エンボシング加工は、ボンディング率(すなわち、エンボシング面積率)が13%以下であり、非エンボシング単位面積が0.2mm2以上、例えば、0.2ないし0.7mm2の条件においても行われる。ここで、非エンボシング単位面積とは、四方がエンボシング部で取り囲まれた最小単位の非エンボシング部において、エンボシングに内接する四角形の最大面積を意味する。当該範囲の条件でもってエンボシング加工を行えば、必要な不織布強度を維持したまま、さらにバルキー性が高い不織布を得ることができる。
【0052】
ボンディング率及び非エンボシング単位面積は、エンボシングパターンを変更することによっても調節される。
【0053】
前記エンボシング加工の結果、前記不織布は、エンボシング部及び非エンボシング部を含み、前記エンボシング部は、オープンエンボシングタイプであり、同一でもあったり、異なったりする間隔で、連続して配列された複数個の単位エンボシングパターン部を含んでもよい。
【0054】
前記単位エンボシングパターン部は、下記形状を有することができる:
【0055】
【0056】
前記不織布の繊度及び基本重量は、用途によっても適切に選択されるが、一般的に纎度は、1.0ないし2.5デニール、例えば、0.7ないし2.0デニールであり、基本重量は、15ないし100g/m2、例えば、7ないし30g/m2でもある。
【0057】
また、前記単位エンボシングパターン部に含まれたそれぞれのエンボシングパターンは、面積が0.2ないし0.7mm2でもある。
【0058】
前記複合纎維の不織布は、炭素数5ないし25の脂肪酸アミドを、前記不織布全体重量対比で、0.01ないし3重量%の含量でさらに含んでもよい。
【0059】
前記脂肪酸アミドは、スリップ剤としての役割を遂行することができる。
【0060】
前記脂肪酸アミドは、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0061】
前記複合纎維は、前記第1プロピレン系重合体成分及び前記第2プロピレン系重合体成分以外に、本発明の目的を損傷させない範囲において、必要により、その他成分を含んでもよい。前記その他成分は、公知された耐熱安定剤、耐候安定性、各種安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、充填剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0062】
前記安定剤は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)のような老化防止剤;テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2’-オキサミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートのようなフェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムのような脂肪酸金属塩;モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、ペンタエリトリトールモノステアレート、ペンタエリトリトールジステアレート、ペンタエリトリトールトリステアレートのような多価アルコール脂肪酸エステル;またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0063】
前記充填剤は、シリカ、規藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、白雲石、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、滑石、クレイ、雲母、石綿、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0064】
前述のプロピレン系重合体と、必要によって使用される前記その他成分は、公知された方法を利用して混合することができる。
【0065】
前記複合纎維は、モノ型(mono)、芯鞘型(core/sheath)、サイドバイサイド型(side-by-side)またはサンドイッチ型(sandwitch)の複合纎維でもある。
【0066】
以下、本発明の一具現例による不織布積層体について詳細に説明する。
【0067】
本発明の一具現例による不織布積層体は、少なくとも2層以上の層構成を有する積層体であり、そのうち少なくとも1層が前述の不織布でもある。
【0068】
前記不織布積層体は、前述の不織布のうちスパンボンド不織布を含んでもよい。
【0069】
また、前記不織布積層体は、前記スパンボンド不織布4枚が積層されてなるものでもあり、その場合、前記不織布積層体は、均一度(CV%)が3%以下でもある。本明細書において「均一度(CV%)」は、不織布積層体を1m2の大きさに切断し、30枚の試験片を作った後、前記30枚の試験片の重量偏差を、前記複数枚の試験片の平均重量で除した値の百分率を意味する。
【0070】
前記スパンボンド不織布4枚が積層されてなる前記不織布積層体は、厚みが0.02mm以上であり、クリンプ数が10個/10mm以上であり、ボンディング率が13%以下であり、前記不織布積層体のソフト性を示すMD剛軟度(MD stiffness)が40mm以下でもある。本明細書において、「MD剛軟度」は、不織布積層体の機械方向屈曲変形(すなわち、不織布積層の反り程度)を意味する。
【0071】
以下、本発明の一具現例による物品について詳細に説明する。
【0072】
本発明の一具現例による物品は、前述の不織布積層体を含む。
【0073】
前記物品は、おむつ、吸収用品、排便用品、支持層(support layer)またはトップシート(top sheet)でもある。
【0074】
前記物品がおむつである場合、前記不織布積層体は、親水剤含浸量(OPU:oil pick-up)が0.7%以下であり、前記おむつのトップシート層に適用されたとき、水の吸収速度が3sec以下でもある。
【0075】
前記親水剤含浸量(OPU)は、下記数式1によっても計算される。
【0076】
[数式1]
OPU(%)=(W1-W0)/W0X100
【0077】
数式1で、W0は、親水剤を含まない不織布積層体の重さであり、W1は、親水剤を含む不織布積層体の重さである。また、前記親水剤は、濃度が15重量%であるポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)の水懸濁液である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を介し、本発明をさらに詳細に説明する。本実施例は、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0079】
実施例1~6、及び比較例1~5
第1プロピレン系重合体成分(A)、第2プロピレン系重合体成分(B)及びエルカ酸アミドスリップ剤を使用し、スパンボンディング法により、複合溶融紡糸を実施し、
図2の構成を有するサイドバイサイド型複合纎維を捕集面上に堆積させ、
図1に図示されたエンボシングパターンにより、上部温度が146℃であり、下部温度が144℃に加熱されたカレンダーロールを使用し、エンボシング加工を施し、捲縮型複合纎維を含む不織布を製造した。前記第1プロピレン系重合体成分(A)及び前記第2プロピレン系重合体成分(B)の種類、物性及び含量比、エルカ酸アミドスリップ剤の含量、及びエンボシングパターンの特性を、下記表1に示した。下記表1において、MFRは、ASTM D1238により、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定された溶融指数を意味し、スリップ剤含量は、不織布全体重量対比における重量を意味する。
【0080】
【0081】
前記表1において、PA1ないしPA7、及びPBは、それぞれ下記のところを意味する。
【0082】
(1)PA1:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)70重量%、及びポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)30重量%の混合物
【0083】
(2)PA2:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)60重量%、及びポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(EXXON、VISTAMAXX 7020)40重量%の混合物
【0084】
(3)PA3:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)40重量%、及びポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(DOW、VERSIFY 4200)60重量%の混合物
【0085】
(4)PA4:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)70重量%、及びポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)30重量%の混合物
【0086】
(5)PA5:プロピレン単独重合体(LG化学、MH7700)70重量%、及びポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)30重量%の混合物
【0087】
(6)PA6:プロピレン単独重合体(LG化学、MH7700)60重量%、及びポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)40重量%の混合物
【0088】
(7)PA7:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)70重量%、及びポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)30重量%の混合物
【0089】
(8)PB:プロピレン単独重合体(PMC、H562T)
【0090】
評価例1:スパンボンド不織布の物性評価
前記実施例1~6、及び比較例1~5で製造されたそれぞれのスパンボンド不織布の物性を、下記のような方法で評価し、その結果を下記表2に示した。
【0091】
(1)単位面積当たり重さ(重量:g/m2):ASTM D 3776-1985によって測定した。
【0092】
(2)引っ張り強度:引っ張り強伸度機(Instron)測定設備を利用し、KSK 0520法により、試験片の幅5cm、その間隔10cm、引っ張り速度500mm/minの条件で、引っ張り試験を行い、最大引っ張り荷重を求めた。
【0093】
(3)引っ張り伸度:前記(2)の方法で測定した最大伸長時の伸度を求めた。
【0094】
(4)厚み(mm):KSK 0506の方法によって測定した。
【0095】
(5)クリンプ数:顕微鏡を利用し、10mm範囲内のフィラメントクリンプの個数を直接測定した。
【0096】
(6)紡糸性:溶融紡糸時、フィラメント揺れを肉眼で観察し、ポリマードリップ(drip)は、欠点検出器で検出した。
【0097】
【0098】
前記表2を参照すれば、実施例1~6で製造された捲縮型複合纎維の不織布は、比較例1~5で製造された捲縮型複合纎維の不織布対比で、厚みが厚く、クリンプ数が多く、引っ張り強度(MD:machine direction)、引っ張り強度(CD:cross direction)、引っ張り伸度(MD:machine direction)、引っ張り伸度(CD:cross direction)及び紡糸性のようなその他物性は、すぐれているか、あるいは互いに類似していると分かった。
【0099】
図3は、実施例1で製造された捲縮型複合纎維の不織布のエンボシングパターンを示す部分図である。
【0100】
図3を参照すれば、実施例1で製造された捲縮型複合纎維の不織布は、約20枚/10mmのクリンプ数を有すると分かった。
【0101】
評価例2:スパンボンド不織布で構成された不織布積層体の物性評価
前記実施例1~6、及び比較例1~5で製造されたそれぞれのスパンボンド不織布を4枚ずつ積層し、不織布積層体を製造した。その後、前記各不織布積層体の物性を、下記のような方法で評価し、その結果を下記表3に示した。
【0102】
(1)均一度(CV%):不織布積層体を1m2の大きさに切断し、30枚の試験片を作った後、前記30枚の試験片の重量偏差を、前記複数枚の試験片の平均重量で除した値の百分率で求めた。均一度(CV%)値が小さいほど均一度にすぐれるということを意味する。
【0103】
(2)厚み(mm):KSK 0506の方法によって測定した。
【0104】
(3)クリンプ数:顕微鏡を使用し、10mm範囲内のフィラメントクリンプの個数を直接測定した。
【0105】
(4)ボンディング率(%):エンボシングパターンの陽刻部分であり、熱が伝達されて不織布がボンディングされる部分の百分率を意味する。
【0106】
(5)MD剛軟度(mm):不織布積層体サンプルを45°傾度であるテスター器で測定するとき、傾斜面と接触するときの反り距離を測定した。MD剛軟度が小さいほど柔軟性にすぐれるということを意味する。
【0107】
(6)OPU:Oil Pick Upの略語であり、親水剤が不織布積層体に塗られる量を、全体重量に対する百分率で計算して求めた。
【0108】
(7)水の吸収速度:EDANA 150.5(02)により、不織布積層体に人工排尿を落としたとき、前記人工排尿が不織布積層体を通過する時間をセンサで測定した。
【0109】
【0110】
前記表3を参照すれば、実施例1~6で製造されたそれぞれの捲縮型複合纎維の不織布を4枚ずつ積層して製造した不織布積層体は、比較例1~5で製造されたそれぞれの捲縮型複合纎維の不織布を4枚ずつ積層して製造した不織布積層体対比で、均一度は、いずれも3%以下と良好であり、厚みが厚く、クリンプ数が多く、MD(machine direction)剛軟度は、小さく、OPUは、互いに類似しており、水の吸収速度が迅速であるということが分かった。
【0111】
本明細書に記載の実施形態は、限定の目的ではなく、説明的な意味でのみ考慮されるべきであることを理解されたい。各実施形態内の特徴または態様の説明は、通常、他の実施形態における他の同様の特徴または態様に利用可能であると見なされるべきである。
【0112】
本発明は、図面及び実施例を参照して説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められるものである。