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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】フラビウイルスの成熟ウイルス様粒子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/40 20060101AFI20230207BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230207BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230207BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C12N15/40
A61P37/04
A61K35/76
A61K38/16
C12N7/01 ZNA
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020571702
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 TH2019000015
(87)【国際公開番号】W WO2020242388
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-12-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520498309
【氏名又は名称】チェンマイ・ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】507233408
【氏名又は名称】ナショナル サイエンス アンド テクノロジー ディベロープメント エイジェンシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノッポン・シッティソムバット
(72)【発明者】
【氏名】マリニー・サエ-リム
(72)【発明者】
【氏名】ニチャ・チャロンスリ
(72)【発明者】
【氏名】プーンスック・キーラパン
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-528139(JP,A)
【文献】特表2011-516040(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212291(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/038895(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/103488(WO,A1)
【文献】Journal of Virology (2017), Vol.91, No.23, e01181-17(p.1-16)
【文献】Vaccine (2015), Vol.33, pp.5613-5622
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラビウイルスのM構造タンパク質及びE構造タンパク質の修飾されたアミノ酸配列を含む、哺乳動物において免疫応答を引き起こし得るウイルス様粒子であって、
修飾されたアミノ酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4で示されるM及びE配列を含むアミノ酸配列を含み、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaによって置き換えられており、又はデングウイルス配列のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaによって置き換えられており、
修飾されたアミノ酸配列が、デングウイルス配列のE27位、E149位、及びE209位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えを含み、
修飾されたアミノ酸配列が、
デングウイルス配列のE186位のアミノ酸Ser若しくはGlu、又はデングウイルス配列のE184位のアミノ酸Serの、それぞれ配列番号1~3の261位又は配列番号4の259位のアミノ酸Pheでの置き換え
ングウイルス配列のE188位又はデングウイルス配列のE186位のアミノ酸Argの、それぞれ配列番号1~3の263位又は配列番号4の261位のアミノ酸Leuでの置き換え
ングウイルス配列のE242位のアミノ酸Asn若しくはVal、又はデングウイルス配列のE240位のアミノ酸Asnの、配列番号2~3の317位又は配列番号4の315位のアミノ酸Serでの置き換え、ならびに
デングウイルス配列のE323位のアミノ酸Arg若しくはLys、又はデングウイルス配列のE321位のアミノ酸Lysの、配列番号2~3の398位又は配列番号4の396位のアミノ酸Glnでの置き換
含む、ウイルス様粒子。
【請求項2】
フラビウイルスが、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、又はジカウイルスに由来する、請求項1に記載のウイルス様粒子。
【請求項3】
フラビウイルスのM構造タンパク質及びE構造タンパク質の修飾されたアミノ酸配列を含む、それを薬学的に効果的な投薬量で対象に投与すると対象において免疫応答を引き起こし得るウイルス様粒子又はポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドであって、
修飾されたアミノ酸のヌクレオチド配列が、配列番号5、配列番号6、配列番号7、若しくは配列番号8で示される配列を含む、又は修飾されたアミノ酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4で示される配列を含み、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaで置き換えられており、又はデングウイルス配列のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaで置き換えられており、
修飾されたアミノ酸配列が、デングウイルス配列のE27位、E149位、及びE209位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えを含み、
修飾されたアミノ酸配列が、
デングウイルス配列のE186位のアミノ酸Ser若しくはGlu、又はデングウイルス配列のE184位のアミノ酸Serの、それぞれ配列番号1~3の261位又は配列番号4の259位のアミノ酸Pheでの置き換え
ングウイルス配列のE188位又はデングウイルス配列のE186位のアミノ酸Argの、それぞれ配列番号1~3の263位又は配列番号4の261位のアミノ酸Leuでの置き換え
ングウイルス配列のE242位のアミノ酸Asn若しくはVal、又はデングウイルス配列のE240位のアミノ酸Asnの、配列番号2~3の317位又は配列番号4の315位のアミノ酸Serでの置き換え、ならびに
デングウイルス配列のE323位のアミノ酸Arg若しくはLys、又はデングウイルス配列のE321位のアミノ酸Lysの、配列番号2~3の398位又は配列番号4の396位のアミノ酸Glnでの置き換
含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
薬学的に許容可能なアジュバントと、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4で示される配列を含むアミノ酸配列を有する、対象に投与された際に免疫学的に活性な、ポリペプチド又はウイルス様粒子とを含む、ワクチン組成物であって、
アミノ酸配列がデングウイルス配列の修飾されたアミノ酸配列を含み、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaによって置き換えられており、又はデングウイルス配列のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaによって置き換えられており、
修飾が、デングウイルス配列のE27位、E149位、及びE209位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えを含み、
修飾が、
デングウイルス配列のE186位のアミノ酸Ser若しくはGlu、又はデングウイルス配列のE184位のアミノ酸Serの、それぞれ配列番号1~3の261位又は配列番号4の259位のアミノ酸Pheでの置き換え
ングウイルス配列のE188位又はデングウイルス配列のE186位のアミノ酸Argの、それぞれ配列番号1~3の263位又は配列番号4の261位のアミノ酸Leuでの置き換え、
ングウイルス配列のE242位のアミノ酸Asn若しくはVal、又はデングウイルス配列のE240位のアミノ酸Asnの、配列番号2~3の317位又は配列番号4の315位のアミノ酸Serでの置き換え、ならびに
デングウイルス配列のE323位のアミノ酸Arg若しくはLys、又はデングウイルス配列のE321位のアミノ酸Lysの、配列番号2~3の398位又は配列番号4の396位のアミノ酸Glnでの置き換
含む、ワクチン組成物。
【請求項5】
薬学的に許容可能なアジュバントと、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4のアミノ酸配列にそれぞれ対応する、配列番号5、配列番号6、配列番号7、又は配列番号8で示されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスフェクトされた細胞におけるその発現が所望の結果をもたらす1つ又は複数の修飾された形態が組み込まれた、フラビウイルスのウイルス様粒子(VLP)又はウイルス構造タンパク質に関する。いくつかの実施形態において開示されるVLPは、好ましくは、フラビウイルスの完全に成熟したVLPである。更に重要なことに、発現したVLPは、薬学的に効果的な投薬量の発現したVLPをヒト対象等の哺乳動物に投与すると、哺乳動物において免疫応答を引き起こすことができる。本開示はまた、対象においてフラビウイルスに対する能動免疫を誘発するために適用可能な更なる修飾を伴う又は伴わない発現したVLPを含有する医薬組成物又はワクチン組成物を含む。
【背景技術】
【0002】
フラビウイルスは、70を超える異なるウイルスを含み、その多くは節足動物媒介性であり、蚊又はダニのいずれかによって伝染する。フラビウイルスは、フラビウイルス科(Flaviviridae)のウイルス属である。この属としては、ウエストナイルウイルス(WNV)、デングウイルス(DENV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、黄熱ウイルス(YFV)、ジカウイルス(ZikV)、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、及び脳炎又は出血性疾患を生じさせ得るいくつかの他のウイルスが含まれる。デング熱は、デングウイルスによって生じる蚊媒介性の疾患であり、ほとんどの熱帯地域及び多くの亜熱帯地域に広がっている。この疾患は、4つの密接に関連したウイルスであるデングウイルス1型(DENV-1)、デングウイルス2型(DENV-2)、デングウイルス3型(DENV-3)、及びデングウイルス4型(DENV-4)によって生じる。デングウイルスは世界的な疾患の発生に関して最も重要なフラビウイルスであるが、このウイルスに対するワクチンの開発及び使用は、感染の免疫増強等の、ワクチンに関連する有害事象の理論上のリスクによって、及び4つのデング血清型の全てに対して同時に長く続く防御免疫応答を誘発する必要があることから、これまでなされていない。
【0003】
過去数十年間での、効果的なデングワクチンを見出すための徹底的な研究及び開発努力にもかかわらず、デングウイルスの4つの血清型の全てによる感染の後にデングを予防し得る、信頼性のあるワクチンは存在しない。アジア及びラテンアメリカにおけるSanofi Pasteur社のデングワクシアの最近のフェーズIIb~フェーズIII試験によって、DENV-2によって生じる及び血清反応陰性のボランティアにおける疾患に対する防御をもたらすことができない、中程度に効果的なワクチンが提示された(Sabcharoenら、2012;Capedingら、2014;Villarら、2014;Hadinegoroら、2015)。DENV-2に対しても他の血清型に対しても効果的であり、且つ若者及び血清反応陰性の小児における使用にとって安全な、代替的なデングワクチン候補を見出すことが急務である。デングウイルス様粒子は、2つのウイルスエンベロープ糖タンパク質prM及びEを昆虫細胞又は哺乳動物細胞において発現させることによって生じる、潜在的ワクチン候補である。これらの2つの糖タンパク質は、宿主プロテアーゼによって特異的部位で切断されるポリプロテインとして合成される。これらは次いで、ネイティブなウイルス粒子と構造が類似しているウイルス様粒子に会合し、アセンブリするが、ウイルス様粒子は、内部コア構造又はウイルスゲノムを有していない(Shangら、2012)。その後、ウイルス様粒子は、デングウイルス感染細胞におけるウイルス粒子と同じ様式で宿主細胞の外に移出されるため、分泌経路において翻訳後修飾を受ける。デングウイルス様粒子の生成は、活動性ウイルス感染及びウイルスゲノムの細胞内複製に依存しないため、発現カセット内で利用されるprM遺伝子及びE遺伝子は、感染性ウイルス粒子の修飾ほどの制約を受けずに、移出、細胞外レベル、及び免疫原性を増強させるように多くの方法で修飾され得る。ウイルスエンベロープタンパク質の構造、細胞内及び細胞外のウイルス粒子亜集団、異なるタイプのウイルス粒子の抗原組成、並びにデングウイルス感染者におけるエンベロープタンパク質に対する抗体応答についての最近の理解は、デングワクチンとしてのデングウイルス様粒子の可能性を向上させることを目的とした操作のために重要である。
【0004】
細胞外デングウイルス粒子が、成熟レベルが異なる粒子の混合物であることは周知である(Junjhonら、2010)。新たにアセンブリした、ER内腔における未成熟ウイルス粒子は、等量の2つのエンベロープ糖タンパク質prM及びEを含有し、これらは、粒子表面上の3対の非共有結合したprM-Eヘテロ二量体を含むスパイクとして会合する(Zhangら、2003;Liら、2008)。分泌経路を経て粒子が移出する間、ゴルジ装置の低pH環境は、prMタンパク質及びEタンパク質の立体構造の変化を誘発し(Yuら、2008;Zhengら、2014)、その結果、prM-E二量体は解離し、Eは再配置されてEホモ二量体分子を形成し、そして、エンドプロテアーゼ酵素フーリンによるprMの切断が可能となる(Kuhnら、2002;Yuら、2008)。pr-MジャンクションでのprMの切断によって、低pH条件下でE二量体と非共有結合的に会合する99残基のprペプチド、及び成熟粒子においてE二量体の下側と非共有結合的に相互作用する膜結合Mタンパク質が生じる(Zhangら、2013)。粒子が放出されると、prペプチドは細胞外粒子から解離し、表面が平滑で感染性が増大した成熟粒子が生じる。pr-M切断ジャンクションのフーリン認識部位内での、切断阻害性の酸性アミノ酸残基であるグルタミン酸又はアスパラギン酸の存在は、prMの不完全な切断を生じさせ、その結果、細胞外区画において、未成熟な、部分的に成熟した、及び完全に成熟したM含有粒子の、混合集団が生じる(Junjhonら、2008、2010)。部分的に成熟した粒子は、prM-Eヘテロ二量体のパッチと共存する、E二量体のパッチを含有する(Plevkaら、2011、2014)。prMを含有する未成熟なウイルス粒子及び部分的に成熟したウイルス粒子は、成熟ウイルス粒子ほどには感染性ではないが、FcRγ+白血球に対するこれらの感染性は、適切な濃度の抗E抗体又は抗prM抗体のいずれかによってインビトロで増強し得る(Rodenhuis-Zybertら、2010;Richterら、2014)。
【0005】
未成熟粒子と成熟粒子とにおけるprM/M及びEの配置の違いは、抗原性の変化と関連する。未成熟粒子(及び部分的に成熟した粒子の未成熟パッチ)におけるEタンパク質は、E分子のある特定の部分、例えば受容体結合EDIIIドメイン(Zhangら、2003)が容易にアクセスされ得ないように、prMと会合する。成熟すると、prMからのEの解離、及びその後の成熟粒子(及び部分的に成熟した粒子の成熟パッチ)上のEホモ二量体の形成の結果、同一の二量体における2つのE分子の隣接しているドメインによって形成される、及び異なる二量体における2つ以上のE分子間で形成される、新たなエピトープが生じる。E二量体の四次構造に依存するエピトープは、成熟粒子を強力に中和する抗体の標的である(Lok、2016)。特に、最近記載された、デングウイルスの血清型間で良く保存されているE二量体依存性エピトープ(Dejniratisaiら、2015;Rouvinskiら、2015)は、交差反応性の中和抗体を誘発し得、この抗体は、デングウイルスのいくつかの血清型が共循環している地域におけるデングの予防において有用であり得る。他方で、prMと会合する形態である単量体Eタンパク質で見られた個々のエピトープは、成熟粒子上では隠される傾向があり、その結果、標的の利用可能性が低下し、これは、成熟ウイルス粒子の中和におけるこれらの抗体の活性を低減させ得る(Lok、2016)。完全には成熟していないデングウイルス様粒子上の四次構造依存性のエピトープが欠如していることによって、これらの粒子がワクチン候補としてあまり有用ではなくなる可能性がある。広大な(83%)prM切断を伴わずに又は伴って生じるVLPの免疫原性の比較は、マウスにおける、成熟レベルが高いウイルス様粒子の、アジュバントの不存在下でウイルス感染性中和抗体を誘発する優れた能力を示した(Suphatrakulら、2015)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Sabcharoenら、2012
【文献】Capedingら、2014
【文献】Villarら、2014
【文献】Hadinegoroら、2015
【文献】Shangら、2012
【文献】Junjhonら、2010
【文献】Zhangら、2003
【文献】Liら、2008
【文献】Yuら、2008
【文献】Zhengら、2014
【文献】Kuhnら、2002
【文献】Yuら、2008
【文献】Zhangら、2013
【文献】Junjhonら、2008
【文献】Plevkaら、2011
【文献】Plevkaら、2014
【文献】Rodenhuis-Zybertら、2010
【文献】Richterら、2014
【文献】Lok、2016
【文献】Dejniratisaiら、2015
【文献】Rouvinskiら、2015
【文献】Suphatrakulら、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
更に、デングウイルス様粒子は、ネイティブウイルス核酸配列を利用して2つのエンベロープ糖タンパク質prM及びEを共発現させることによって生成された(Shangら、2012)。ネイティブなprM配列を使用して生成されたデングウイルス様粒子は、ある程度の量のprMを保持しており(Purdy及びChang、2005;Konishi及びFujii、2002;Urakamiら、2017)、このprMは、未成熟の粒子及び部分的に成熟した粒子の表面で見られるprM-Eヘテロ二量体においてEと会合している。デングウイルス様粒子のある特定の設計において、pr-Mジャンクション配列は、フーリンによるprM切断を無効にするように修飾されており(Konishiら、2001;Konishi及びFujii、2002;Yamaji、2014)、その結果、完全に未成熟のウイルス様粒子が生じている。ネイティブなprM配列を用いて、又はprM切断を無効にする突然変異を用いて生成された、未成熟のウイルス様粒子及び部分的に成熟したウイルス様粒子は、prM特異的抗体を誘発し得る。E特異的抗体とは異なり、抗prM抗体は一般に、ウイルスの感染性を中和せず、デングに対する防御に寄与する可能性は低い。他方で、抗prM抗体は、デングウイルスの複数の血清型による、FcγRを有する白血球の感染を容易にし得(Dejniratisaiら、2010;Smithら、2016)、重度の疾患の原因となり得る(Katzelnickら、2017)。デングワクチン候補におけるprMの欠如が望ましい(Dejniratisaiら、2010;Flipse及びSmit、2015)が、prMは小胞体においてEタンパク質のフォールディングにおいてそのシャペロンとしても機能するため(Konishi及びMason、1993;Lorenzら、2002)、粒子ベースのワクチン候補の生成(すなわち、prM+E発現カセットのprMコード配列全体を欠失させることによって)を達成することは困難である。prMの不存在下では、Eタンパク質の発現は、膜結合粒子の放出を生じさせない(Konishi及びMason、1993;Allisonら、1995;Hsiehら、2014)。pr-Mジャンクションの酸性アミノ酸をアラニン等の非荷電残基で置換することによって、細胞外デングウイルス様粒子に残っているprMの量を低減させるための、(prM+E)発現ベクターにおける、本発明者らの以前の試み(Junjhonら、2008)の結果、増強した、しかし依然として不完全なprM切断が生じ、得られた粒子は、レベルは低減しているものの、抗prM抗体応答を引き起こすことができる(Suphatrakulら、2015)。この以前の設計は、抗デングprM抗体の誘発の問題を減らすものの、四次構造依存性のエピトープ(E二量体内の及びE二量体間の)は、残りの未成熟の粒子及び部分的に成熟した粒子においては完全に形成され得なかったため、依然として制限がある。
【0008】
デングウイルス様粒子のこの設計において、prがない(M+E)発現ベクターが、完全に成熟したタイプのウイルス様粒子の生成のために構築され、この粒子は、細胞外成熟ウイルス粒子のケースにおけるように(Kuhnら、2002)、prMの外部pr部分を欠いている。全てのE分子はEホモ二量体の形成に関与する可能性が高いため、この修飾は、粒子上の四次構造依存性のエピトープの形成を最大化する。Mの存在によって、成熟ウイルス粒子におけるように(Zhangら、2013)、Eとの相互作用が可能となる。prMのpr部分は、全ての既知の抗prMモノクローナル抗体並びにデングウイルス感染者及び免疫化された動物由来の天然の抗prM抗体がそこにおいてマッピングされている個々のエピトープを含有するため(Chanら、2012;Huangら、2006、2008;Luoら、2013;Luoら、2015;Songら、2013;Smithら、2016;Wangら、2013)、この設計におけるデングウイルスprMのpr部分の欠如は、このウイルス様粒子がヒトにおけるワクチンとして利用される場合に、抗prM抗体応答の誘発を予防することも目的としている。prMのpr部分の欠失は、しかし、収量に影響し得る望ましくない結果を有する。prM、特にpr部分の1つの機能は、移出の際のウイルス粒子と細胞内膜との融合を抑制することであることが知られている(Zhengら、2010;Zhengら、2014)。prMのpr部分が意図的に不存在である場合、成熟ウイルス様粒子は、ゴルジ装置の低pH環境に遭遇すると、宿主の細胞膜と融合する可能性が高い。移出の際の、成熟ウイルス様粒子とゴルジ装置膜との酸誘発型の融合を最小化するために、7位、102位、224位、284位(DENV-3では282位)、336位(DENV-3では334位)、357位(DENV-3では355位)、及び392位(DENV-3では390位)のヒスチジン残基を含む、Mタンパク質及びEタンパク質における多くの保存された及び内部に位置するヒスチジン残基は、アラニン又はアスパラギンで置換されている。これは、ヒスチジンがpHセンサーとして機能するという、並びに、酸性環境におけるヒスチジンのプロトン付加が移出の際(prM-Eヘテロ二量体からE二量体への変換をもたらす)及び新たなウイルス感染細胞におけるエンドソーム膜との融合の際(E二量体からE三量体への変換をもたらす)の両方でE及びprMの立体構造の変化をもたらすという、以前の所見に基づく(Kampmannら、2006;Muellerら、2008;Fritzら、2008;Fuzo及びDegreve、2014;Zhengら、2014;Chaudhuryら、2015)。任意のヒスチジン残基の単一の置換は、融合を止める可能性が低く(Nelsonら、2009;Chaudhuryら、2015)、収量を増大させる可能性が低い(Christianら、2013)ため、本願において、複数のヒスチジン残基が同時に置換される。表面からアクセス可能なヒスチジン残基は、Eタンパク質の抗原性を保存するために、置換されない。Eタンパク質の更なる修飾は、ウイルス様粒子の放出を増大させるための、261位(DENV-3では259位)、263位(DENV-3では261位)、317位(DENV-3では315位)、及び398位(DENV-3では396位)の非ヒスチジン残基を含む、E二量体の側面側での置換(Christianら、2013)、並びに、Eタンパク質の融合可能性を低減させるための、E107位又はE108位の残基を含む、Eの融合ループでの置換(Trainorら、2007;Christianら、2013;Urakamiら、2017)を伴う。それでも、細胞外レベルでのこれらのウイルス様粒子の発現は、依然として、満足のいくものからほど遠い。したがって、細胞外ウイルス様粒子の増大によってこれらのウイルス様粒子をワクチン接種されている対象においてより良好な又は向上した免疫応答が生じ得るような、デングウイルス様粒子であるMタンパク質及びEタンパク質に対する更なる修飾が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、いくつかの実施形態において、適切な投薬量で対象に成熟フラビウイルス様粒子を投与した後に対象において能動免疫応答を誘発し得る又は引き起こし得る、成熟フラビウイルス様粒子を提供することを目的としている。成熟粒子は、発現した修飾された粒子が、これらの発現した粒子が宿主細胞の外に輸送される際の、酸によって誘発される立体構造の変化又は融合に対してより耐性となるように、遺伝子修飾されている。
【0010】
本開示の別の目的は、フラビウイルスの連結したMタンパク質及びEタンパク質の修飾形態を含む、キメラペプチド又はウイルス構造タンパク質を提供することである。好ましくは、開示されるキメラペプチド内の、Mタンパク質のシグナル配列及びEタンパク質のC末端ステムアンカードメインは、細胞外ウイルス様粒子のレベルを増強させるために、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)のディフェンシンAタンパク質及び日本脳炎ウイルスのEタンパク質の対応する領域でそれぞれ置換されている。
【0011】
本開示の更なる目的としては、上記の修飾されたペプチド及び/又はキメラペプチドを含有する、フラビウイルス感染、又は特にデングウイルス感染に対して効果的に反応するように構成されているワクチン組成物を提供することが含まれる。修飾されたペプチド及び/又はキメラを有する開示されるワクチン組成物を適切な期間にわたり対象に投与し、曝露させると、曝露された対象の能動免疫化が誘発される。
【0012】
前述の目的の少なくとも1つが、その実施形態の1つが哺乳動物において免疫応答を引き起こし得るウイルス様粒子に関する本開示によって、全て又は一部解決される。ウイルス様粒子又はペプチドは、デングウイルス配列の1つ又は複数の合成の又は人工の修飾又は修飾された形態を有する、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4で示される配列に実質的に対応するアミノ酸配列を好ましくは含む。修飾又は修飾された形態は、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位で、保存されたアミノ酸Hisを含み得、これは、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaによって置き換えられており、又は、デングウイルス配列のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisは、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaによって置き換えられている。開示されるVLPが、細胞外レベルでのより良好な発現を得るために、デングウイルスのMタンパク質(prペプチドを有さない)とEタンパク質を特異的な位置で組み合わせることを伴う修飾を受けているか又は修飾された形態であることに留意することが重要である。
【0013】
一部の他の実施形態において、修飾された形態は、デングウイルス配列のE27位、E149位、及びE209位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えを更に含む。
【0014】
他の実施形態では、修飾は、デングウイルス配列のE186位のアミノ酸Ser若しくはGlu、又はデングウイルス配列のE184位のアミノ酸Serの、それぞれ配列番号1~3の261位又は配列番号4の259位のアミノ酸Pheでの置き換え、デングウイルス配列のE188位又はデングウイルス配列のE186位に位置するアミノ酸Argの、配列番号1~3の263位又は配列番号4の261位のアミノ酸Leuでの置き換え、デングウイルス配列のE242位のアミノ酸Asn若しくはVal、又はデングウイルス配列のE240位のアミノ酸Asnの、配列番号2~3の317位又は配列番号4の315位のアミノ酸Serでの置き換え、及び、デングウイルス配列のE323位に位置するアミノ酸Arg若しくはLys、又はデングウイルス配列のE321位のアミノ酸Lysの、配列番号2~3の398位又は配列番号4の396位のアミノ酸Glnでの置き換えの、いずれか1つ又は組み合わせを更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態に従うと、ウイルス様粒子は、フラビウイルス由来のものである。更に好ましくは、修飾されたペプチド又はタンパク質が一般に由来する元であるフラビウイルスは、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、又はジカウイルスである。例えば、一部の実施形態において、開示されるキメラペプチドにおける、Mタンパク質のシグナル配列及びEタンパク質のC末端ステムアンカードメインは、細胞外ウイルス様粒子のレベルを増強させるために、ネッタイシマカのディフェンシンAタンパク質及び日本脳炎ウイルスのEタンパク質の対応する領域でそれぞれ置換されている。
【0016】
本開示の別の態様は、それを薬学的に効果的な投薬量で対象に投与すると対象において免疫応答を引き起こし得るウイルス様粒子又はポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドに関する。更に具体的には、ウイルス様粒子又はポリペプチドは、フラビウイルスの修飾形態のM構造タンパク質及びE構造タンパク質を含み、このタンパク質において、アミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4で示される配列に実質的に対応しており、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位の保存されたアミノ酸Hisは、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaで置き換えられており、又はデングウイルス配列のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisは、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaで置き換えられている。改変又は修飾又は修飾された形態は、細胞外レベルでのタンパク質のより良好な発現をもたらし、開示される組成物を使用してワクチン接種される対象において、フラビウイルスに対するより良好な免疫化をもたらす。
【0017】
細胞外レベルでの発現を更に増大させるために、開示される粒子は、デングウイルス配列のE27位、E149位、及びE209位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えを更に含み得る。また、修飾又は修飾された形態は、デングウイルス配列のE186位のアミノ酸Ser若しくはGlu又はデングウイルス配列のE184位のアミノ酸Serの、それぞれ配列番号1~3の261位又は配列番号4の259位のアミノ酸Pheでの置き換え、デングウイルス配列のE188位又はデングウイルス配列のE186位のアミノ酸Argの、それぞれ配列番号1~3の263位又は配列番号4の261位のアミノ酸Leuでの置き換え、デングウイルス配列のE242位のアミノ酸Asn若しくはVal、又はデングウイルス配列のE240位のアミノ酸Asnの、配列番号2~3の317位又は配列番号4の315位のアミノ酸Serでの置き換え、及びデングウイルス配列のE323位に位置するアミノ酸Arg若しくはLys、又はデングウイルス配列のE321位のアミノ酸Lysの、配列番号2~3の398位又は配列番号4の396位のアミノ酸Glnでの置き換えの、いずれか1つ又は組み合わせを更に含む。加えて、Eタンパク質の遠位部分(配列番号1~3の472位~570位又は配列番号4の470位~568位)は、一部の実施形態では、日本脳炎ウイルスの対応する配列で置換されている。
【0018】
本開示の更なる態様は、デングウイルス等のフラビウイルスの感染に対して効果的なワクチン組成物を目的としている。特に、ワクチン組成物は、薬学的に許容可能なアジュバント、及び、対象に投与されると免疫学的に活性な、修飾されたフラビウイルスポリペプチド又はウイルス様粒子を含む。修飾されたフラビウイルスポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4で示される配列に実質的に対応するアミノ酸配列を有する。アミノ酸配列は、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaによって置き換えられており、又はデングウイルス配列のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaによって置き換えられている、デングウイルス配列の修飾された形態又は修飾を含む。
【0019】
多くの実施形態では、ワクチン組成物内のポリペプチドは、デングウイルス配列のE27位、E149位、及びE209位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えを含む、更なる修飾された形態又は修飾を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】DENV-1及び日本脳炎ウイルスに由来し、配列番号1と同定されている、フラビウイルス構造タンパク質(M及びE)の修飾されたアミノ酸配列を示す図である。
図2】DENV-2及び日本脳炎ウイルスに由来し、配列番号2と同定されている、フラビウイルス構造タンパク質(M及びE)の修飾されたアミノ酸配列を示す図である。
図3】DENV-3及び日本脳炎ウイルスに由来し、配列番号4と同定されている、フラビウイルス構造タンパク質(M及びE)の修飾されたアミノ酸配列を示す図である。
図4】DENV-4及び日本脳炎ウイルスに由来し、配列番号3と同定されている、フラビウイルス構造タンパク質(M及びE)の修飾されたアミノ酸配列を示す図である。
図5】DENV-1ウイルス様粒子のフラビウイルス構造タンパク質(M及びE)をコードし、配列番号5と同定されている、修飾されたヌクレオチド配列を示す図である。
図6】DENV-2ウイルス様粒子のフラビウイルス構造タンパク質(M及びE)をコードし、配列番号6と同定されている、修飾されたヌクレオチド配列を示す図である。
図7】DENV-4ウイルス様粒子のフラビウイルス構造タンパク質(M及びE)をコードし、配列番号7と同定されている、修飾されたヌクレオチド配列を示す図である。
図8】DENV-3ウイルス様粒子のフラビウイルス構造タンパク質(M及びE)をコードし、配列番号8と同定されている、修飾されたヌクレオチド配列を示す図である。
図9】DENV-1ウイルス様粒子、DENV-2ウイルス様粒子、DENV-3ウイルス様粒子、及びDENV-4ウイルス様粒子の発現のために蚊細胞を発現ベクターでトランスフェクションした後のウイルスタンパク質Eの細胞内発現を示す図であり、Eタンパク質はマウスモノクローナル抗E抗体、1D10、及びCy3-コンジュゲート型ヤギ抗マウスIgG抗体での間接免疫蛍光アッセイによって示されており、核は、DAPIでの染色によって可視化された。
図10】精製されたDENV-1成熟ウイルス様粒子に由来する画分におけるMタンパク質及びEタンパク質のドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び銀染色を示す図であり、ウイルス様粒子は、20%~55%ショ糖段階勾配遠心分離と、その後のレートゾーン遠心分離とによって精製され、タンパク質マーカーのサイズが左側に示されている。
図11】(a)精製されたDENV-1ウイルス様粒子、(b)精製されたDENV-2ウイルス様粒子、(c)精製されたDENV-3ウイルス様粒子、及び(d)精製されたDENV-4ウイルス様粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
図12】DENV-2ウイルス様粒子を0週齢及び12週齢の6頭のマウスに注射した後の中和抗体応答を示す図であり、異なる時点(0週目、2週目、4週目、8週目、12週目、14週目、及び20週目)で得られたマウス血清の逆50%プラーク減少中和力価(PRNT50)がプロットされており、ドットの各々は個々のマウスを表しており、線は幾何平均力価を結び、誤差のバーは標準偏差を示す。
図13】0日目のDENV-2生弱毒化ウイルスのプライム注射、60日目及び90日目のDENV-2ウイルス様粒子での2回のブースト注射、並びに120日目のDENV-2野生型ウイルスでの負荷注射後の、カニクイザル(Cynomolgus macaques)における中和抗体応答を示す図であり、異なる時点(0日目、14日目、30日目、60日目、74日目、90日目、104日目、118日目、134日目、及び150日目)に得られたカニクイザル血清の逆50%プラーク減少中和力価(PRNT50)がプロットされており、ドット及び結んでいる線の各々は個々のカニクイザルを表している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示は、好ましい実施形態に従って、並びに添付の説明及び図面を参照することによって、記載される。しかし、本発明の好ましい実施形態についての及び図面についての説明を参照することは、様々な開示される実施形態の議論を容易にするためだけものものにすぎないことが理解されるべきであり、当業者であれば添付の特許請求の範囲から逸脱することなく様々な変更を考案し得ると思われる。
【0022】
別段のことが特定されない限り、本明細書において使用される用語「含む(comprising)」及び「含む(comprise)」、並びにこれらの文法的変型は、「オープンな」又は「包括的な」語法に相当することを意図したものであり、そのため、これらは、言及された要素を含むだけではなく、更なる言及されていない要素を含めることも許容する。
【0023】
本明細書において使用される場合、「実施形態において」という表現は、一部の実施形態においてを意味し、必ずしも全ての実施形態においてを意味するものではない。
【0024】
本開示の全体を通して本明細書において使用される用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって共に連結しているがタンパク質よりも分子量が小さいアミノ酸の鎖を指す。ポリペプチドは、タンパク質の合成又は加水分解によって得ることができる。当技術分野における任意の既知の方法によってわずかなポリペプチドを繋いで、機能的単位を形成させることができる。
【0025】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、mRNA、RNA、cRNA、cDNA、又はDNAを指す。この用語は、30を超えるヌクレオチド残基長のオリゴヌクレオチドを典型的には指す。
【0026】
本開示の全体を通してポリペプチド又はペプチドを説明するために本明細書において使用される用語「部分的な」又は「~に実質的に対応する」は、図1~4で示すような開示されるポリペプチド又はペプチドに同一な、少なくとも70%、又は更に好ましくは少なくとも80%の連続するアミノ酸を含有するポリペプチド又はペプチドを指す。これらのポリペプチドはしかし、開示されるポリペプチド又はペプチドに完全に同一な配列を有していなくてもよい。これらのポリペプチドは、対応する抗体と反応してフラビウイルスに対する所望の免疫応答を引き起こす活性なエピトープを保持し得、アラインメントによると、ペプチド内で配置されているアミノ酸の配列は、開示される配列とおおよそ少なくとも70%から90%の類似性を有するため、これらの活性なエピトープはペプチド上に存在する。
【0027】
本明細書において使用される場合、「~に対応する位置」、又は、ヌクレオチド位置又はアミノ酸位置が、配列表に示されるもの等の開示される配列におけるヌクレオチド位置又はアミノ酸位置「に対応する」ということへの言及は、標準的なアラインメントアルゴリズムを使用して同一性を最大にするような開示される配列とのアラインメントで同定されたヌクレオチド位置又はアミノ酸位置を指す。配列をアラインすることによって、当業者は、対応する残基を同定することができる。
【0028】
本明細書において使用される用語「デング配列」又は「デングウイルス配列」は、デングウイルス、特に、デングウイルスの任意の既知の配列又は天然の配列に対応する位置でヌクレオチド又はアミノ酸を有する野生型ウイルス又は野生型デングウイルスの、1つ又は複数の直鎖状ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を指す。本開示において、用語「デング配列」又は「デングウイルス配列」もまた、区別せずに使用される。
【0029】
本開示の明細書及び特許請求の範囲において、用語「フラビウイルス構造タンパク質」又は「フラビウイルスペプチド」又は「フラビウイルスポリペプチド」は区別せずに使用され、対象における免疫系によって認識され得、対象における細胞介在性の免疫応答を刺激し、及び/又は対象における抗体の生成を刺激する、フラビウイルスに由来する任意のペプチドベースの配列を指す。
【0030】
開示されるペプチド又はタンパク質への修飾のための鋳型又はオリジナル構造又はペプチド配列構造として本開示において選択されるフラビウイルスは、デングウイルス、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス及び/又はジカウイルスに由来し得る。一部の実施形態では、1つのウイルス型に由来するタンパク質の1つの部分又は領域は、他のウイルス型の対応する領域又は類似の領域によって置き換える又は置換することができる。例えば、デングウイルス由来のMタンパク質のシグナル配列は、除去され、ネッタイシマカのディフェンシンAタンパク質に由来する対応する領域で置換される。デングウイルスに由来するEタンパク質のC末端ステムアンカードメインが日本脳炎ウイルス由来のEタンパク質の対応する領域で置き換えられている類似の修飾を、他の実施形態において見ることができる。このような修飾は、発現する開示されるペプチド又はタンパク質の細胞外レベルでの収量を向上させることを目的として、1つのウイルス型のタンパク質の1つの領域を動かすか又は別のウイルス型のタンパク質に置き換えることを伴う。いくつかの好ましい実施形態に従うと、開示されるペプチドが元来又は天然に得られる元であるフラビウイルスは、デングウイルスである。デングウイルスは、サブタイプIからIVを含むデングウイルス1、サブタイプアジアンI、アジアンII、コスモポリタン、アメリカン、及びアメリカン/アジアンを含むデングウイルス2、サブタイプIからIVを含むデングウイルス3、並びにサブタイプIからIIIを含むデングウイルス4であり得る。一般に、デングウイルスの構造タンパク質は、カプシドタンパク質、前駆体膜(prM)タンパク質、膜(M)タンパク質、及びエンベロープ(E)タンパク質から構成される。更に多くの実施形態で、開示されるタンパク質又はペプチドは、これらの構造タンパク質のうちの2つ、すなわち、Mタンパク質及びEタンパク質を含む成熟ウイルス様粒子である。デングウイルスの構造タンパク質は、開始コドンに対応するアミノ酸、及びM配列のシグナル配列からアミノ末端までを更に含み得る。
【0031】
更に具体的には、本開示の一部の実施形態は、複数のアミノ酸がその天然の構造から改変されている、フラビウイルスの修飾形態のM構造タンパク質及びE構造タンパク質を含む、成熟ウイルス様粒子を提供する。これらの構造タンパク質は、選択される宿主細胞又は動物の群を介して、本技術分野における任意の既知の方法を使用することによって発現させることができる。1つ又は複数の開示されるフラビウイルス構造タンパク質は、これらが、抗体と結合して免疫化プロセスを開始させるための活性なエピトープを有する微粒子状の構造に自然にアセンブルする限りにおいて、対象の免疫化に使用することができる。例えば、デングウイルスのMタンパク質及びEタンパク質をコードする遺伝子を発現する真核細胞が培養される場合、タンパク質は、細胞によって生成され、ウイルス様粒子にアセンブルし、ウイルス様粒子は、細胞培養培地から回収され得る。或いは、フラビウイルスの構造タンパク質M及びEに同一な又はほとんど同一な関心がある構造タンパク質を生じさせる化学合成方法も利用することができる。好ましくは、生成された又は発現したMタンパク質及びEタンパク質は、意図的に保持されたエピトープを曝露させて対象において期待された免疫応答を得る様式で、会合し、結び付き、付着し、又は保持される。
【0032】
フラビウイルス、又は特にデングウイルスの、修飾された形態のM領域及びE領域のアミノ酸配列は、配列番号1~4によって表される。デングウイルス型1~4等の様々なフラビウイルスのウイルス構造タンパク質が同定されており、GenBankデータベース等の様々な公共のデータベースで入手することができる。例えば、デングウイルス1型(株West Pac及び株16007):受託番号U88535及びAF180817.1、デングウイルス2型(株S1ワクチン及び株16681):受託番号M19197及びU87411.1、デングウイルス3型(株Singapore 8120/95及び株16562):受託番号AY766104及びKU725665.1、並びにデングウイルス4型(株ThD4_0476_97及び株H-241):受託番号Y618988.1及びU18433.1。デングウイルス等のフラビウイルスの連続的なアミノ酸配置を含むエンベロープタンパク質に関する情報は、データベースから得ることができる。これらのデータベースにおける配列アラインメント機能を使用することによって、当業者は、大きめのペプチドのはるかに長い配列に組み込まれているかなりの長さの配列番号1~4を同定することができるか、又は、比較的小さめのペプチドのより短い配列において配列番号1~4の部分的セグメントを見出すことができる。開示される配列番号1~4に密接に関連するこれらの長めの配列又は短めの配列の修飾又は修飾された形態は、このような修飾が対象におけるフラビウイルス又はデングウイルスに対する誘発される免疫応答をより良好にする又は向上させる限りにおいて、本開示の範囲から逸脱しない。開示される配列を介して発現されるペプチドがprMのpr部分を有さないということに留意することが重要である。
【0033】
従って、配列番号1~4の開示されるペプチドは、好ましくは7位アミノ酸と398位アミノ酸との間の、又はフラビウイルスのアミノ酸配列又はその断片を配列番号1~4とアラインする場合には上記で同定された位置と判定される位置間の、少なくとも1つのアミノ酸の改変を含むように作製又は生産される。更に具体的には、少なくとも1つのアミノ酸の改変又は修飾を含む領域は、配列番号1~4の好ましくは7位アミノ酸と398位アミノ酸との間であり得る。発現されるペプチドの一部の実施形態は、一部の実施形態において、開始コドンMet及びシグナルペプチド、それに続く、デングウイルス1、デングウイルス2、デングウイルス3、又はデングウイルス4のM及びEを一般に含み得る。開始コドン、シグナル領域、ペプチドM、及びペプチドEは、連続的なタンデムで好ましくは配置されている。いくつかの実施形態では、Eタンパク質の遠位部分は、日本脳炎ウイルスの対応する配列で置換されているか又はこれが組み込まれている。本発明の開示されるタンパク質、ペプチド、又はウイルス様粒子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4で示される配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含む哺乳動物又は対象において免疫応答を引き起こし得る。開示されるアミノ配列は、所望の修飾を有する。多くの実施形態では、修飾された形態は、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaによって置き換えられており、又はデングウイルス配列のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisが、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaによって置き換えられている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4で示されるM及びEの配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含む。
【0034】
更に多くの実施形態において、修飾された形態は、デングウイルス配列のE27位、E149位、及びE209位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えを更に含む。また、修飾された形態又は開示される配列の修飾は、デングウイルス配列のE186位のアミノ酸Ser若しくはGlu、又はデングウイルス配列のE184位のアミノ酸Serの、それぞれ配列番号1~3の261位又は配列番号4の259位のアミノ酸Pheでの置き換え、或いはデングウイルス配列のE188位又はデングウイルス配列のE186位のアミノ酸Argの、それぞれ配列番号1~3の263位又は配列番号4の261位のアミノ酸Leuでの置き換え、或いはデングウイルス配列のE242位のアミノ酸Asn若しくはVal、又はデングウイルス配列のE240位のアミノ酸Asnの、配列番号2~3の317位又は配列番号4の315位のアミノ酸Serでの置き換え、或いはデングウイルス配列のE323位に位置するアミノ酸Arg若しくはLys、又はデングウイルス配列のE321位のアミノ酸Lysの、配列番号2~3の398位又は配列番号4の396位のアミノ酸Glnでの置き換えの、いずれか1つ又は組み合わせを更に含む。
【0035】
領域内に少なくとも1つのアミノ酸改変を含むことを除いて、ウイルス様粒子に含有されるフラビウイルスの構造タンパク質は、天然のウイルス構造タンパク質又はその修飾されたタンパク質であり得る。複数の実施形態において、修飾されたタンパク質は、Mタンパク質及びEタンパク質を含む天然のウイルス構造タンパク質に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有する。更に多くの実施形態では、修飾されたタンパク質は、配列番号1~4の配列に対応するアミノ酸の潜在的に最大10%が、M領域及びエンベロープ領域を含む天然のウイルス構造タンパク質と比較して欠失している、置換されている、及び/又は付加されている、突然変異体である。配列同一性は、従来の方法によって決定することができる。
【0036】
修飾されたフラビウイルス構造タンパク質は、配列番号1~4のいずれか1つによって表されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98%のアミノ酸配列同一性を有し得る。また、修飾されたフラビウイルス構造タンパク質は、アミノ酸の最大10%が、配列番号1~4のいずれか1つによって表されるアミノ酸配列を有するフラビウイルス構造タンパク質に基づいて欠失している、置換されている、及び/又は付加されている、突然変異体であり得る。
【0037】
本開示の第2の態様は、修飾を有する又は有さない、配列番号1~4で示されるウイルス様粒子をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド又は核酸分子を目的としている。好ましくは、それを薬学的に効果的な投薬量で対象に投与すると対象において免疫応答を引き起こし得るウイルス様粒子又はポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。開示されるポリヌクレオチドによってコードされるウイルス様粒子、ペプチド、又はポリペプチドは、フラビウイルスの修飾形態のM構造タンパク質及びE構造タンパク質を含み、修飾された形態のヌクレオチド配列は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、若しくは配列番号8で示される配列、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4で示される配列に実質的に対応するアミノ酸配列に実質的に対応し、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位の保存されたアミノ酸Hisは、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaで置き換えられているか、又はデングウイルス配列のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisは、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaで置き換えられている。
【0038】
開示される核酸分子のいくつかの実施形態に従うと、核酸分子は、デングウイルス配列のE27位、E149位、及びE209位に位置する保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えの修飾もコードし得る。同様に、更に多くの実施形態では、開示される核酸分子においてコードされる修飾は、デングウイルス配列のE186位のアミノ酸Ser若しくはGlu、又はデングウイルス配列のE184位のアミノ酸Serの、それぞれ配列番号1~3の261位又は配列番号4の259位のアミノ酸Pheでの置き換え、デングウイルス配列のE188位又はデングウイルス配列のE186位のアミノ酸Argの、それぞれ配列番号1~3の263位又は配列番号4の261位のアミノ酸Leuでの置き換え、デングウイルス配列のE242位のアミノ酸Asn若しくはVal、又はデングウイルス配列のE240位のアミノ酸Asnの、配列番号2~3の317位又は配列番号4の315位のアミノ酸Serでの置き換え、及びデングウイルス配列のE323位のアミノ酸Arg若しくはLys、又はデングウイルス配列のE321位のアミノ酸Lysの、配列番号2~3の398位又は配列番号4の396位のアミノ酸Glnでの置き換えの、いずれか1つ又は組み合わせを更に含む。
【0039】
単一のアミノ酸は2つ以上のヌクレオチドコドンによってコードされ得るため、ポリヌクレオチドの複数のバリアントを、修飾されたタンパク質又はペプチドをコードするために使用することができることに留意することは重要である。配列番号1~4のタンパク質をそれぞれコードするバリアントの代表的な例が、図5~8において配列番号5~8としてそれぞれ示されている。更に重要なことに、一部の実施形態では、本開示は、配列番号5~8のいずれか1つによって表されるヌクレオチド配列を有する核酸分子から更に修飾されている、核酸分子を提供する。修飾された核酸分子は、配列番号5~8のいずれか1つによって表されるヌクレオチド配列を有する核酸分子と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98%のヌクレオチド配列同一性を有し得る。また、修飾された核酸分子は、配列番号5~8のいずれか1つによって表されるヌクレオチド配列を有する核酸分子に基づいて、アミノ酸の最大10%が欠失している、置換されている、及び/又は付加されている、突然変異体であり得る。
【0040】
本開示の更なる実施形態は、上記の核酸分子を含む発現ベクターを含む。ベクターは、場合によって、開示される核酸分子に機能可能に連結している発現制御配列を含む。更に具体的には、本開示は、フラビウイルスの構造タンパク質M及びEの発現ベクターを提供し、発現ベクターは、上記のアミノ酸置き換えを有する、配列番号1~4で示されるタンパク質のバリアントをコードするヌクレオチド配列を有する。発現ベクターが有するヌクレオチド配列は、配列番号5~8のいずれか1つであり得る。
【0041】
本開示の第3の態様は、本願の第1の態様において提供されるウイルス様粒子及び/又は本発明の第2の態様において提供される核酸分子を含む組成物又はワクチン組成物を提供する。特に、ワクチン組成物は、薬学的に許容可能なアジュバントと、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4で示される配列に実質的に対応するアミノ酸配列を有する、対象に投与されると免疫学的に活性な、ポリペプチド又はウイルス様粒子とを含む。開示される配列の各々は、デングウイルス配列の1つ又は複数の修飾された形態又は修飾が組み込まれており、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位の保存されたアミノ酸Hisは、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaによって置き換えられており、又はデングウイルス配列のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisは、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaによって置き換えられている。
【0042】
開示されるワクチン組成物の更に多くの実施形態では、修飾された形態又は修飾は、デングウイルス配列のE27位、E149位、及びE209位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えを更に含む。
【0043】
開示されるワクチン組成物のいくつかの更に多くの実施形態において、修飾された形態又は修飾は、デングウイルス配列のE186位のアミノ酸Ser若しくはGlu、又はデングウイルス配列のE184位のアミノ酸Serの、それぞれ配列番号1~3の261位又は配列番号4の259位のアミノ酸Pheでの置き換え、デングウイルス配列のE188位又はデングウイルス配列のE186位に位置するアミノ酸Argの、配列番号1~3の263位又は配列番号4の261位のアミノ酸Leuでの置き換え、デングウイルス配列のE242位のアミノ酸Asn若しくはVal、又はデングウイルス配列のE240位のアミノ酸Asnの、配列番号2~3の317位又は配列番号4の315位のアミノ酸Serでの置き換え、及びデングウイルス配列のE323位に位置するアミノ酸Arg若しくはLys、又はデングウイルス配列のE321位のアミノ酸Lysの、配列番号2~3の398位又は配列番号4の396位のアミノ酸Glnでの置き換えの、いずれか1つ又は組み合わせを更に含む。
【0044】
更に、薬学的に許容可能な担体及び/又はアジュバントは、限定はしないが、AddaVax(InvivoGen社)であり得る。アジュバント又は担体に加えて、本開示の医薬組成物は、これらが本開示の目的に反しない限り、単一の活性成分又は2つ以上の活性成分の組み合わせを含有し得る。複数の活性成分の組み合わせにおいて、開示される組成物中のそれぞれの成分の含有量又は濃度は、それらの治療効果及び安全性を考慮して、異なる実施形態において適切に変化し得る。本明細書において使用される用語「組み合わせ」は、2つ以上の活性成分が単一の物体若しくは投薬量の形態で対象に同時に投与されるか、又はこれらの活性成分が別個の物体として対象に同時に若しくは具体的な時間制限を伴わずに連続的に投与されることを意味し、このような投与は、治療上効果的なレベルの2つの成分を体内で好ましくは同時に提供する。
【0045】
第4の態様において、本開示は、免疫応答がこのような接触によって引き起こされる様式で、対象を、本願の第1の態様において提供されるウイルス様粒子及び/又は本開示の第2の態様において提供される核酸分子と接触させることを含む、フラビウイルスに対する抗体、又はフラビウイルスに対する中和抗体を含有する抗血清を生産する方法を提供する。対象は、ヒト等の哺乳動物であり得る。開示される方法によって生産される抗体は、生産された抗体を治療上効果的な投薬量で哺乳動物に投与することによって、他の対象又は哺乳動物に感染している、フラビウイルスを生じさせる病原体に対する受動免疫化に使用することができる。投与される抗体は、哺乳動物又は対象に感染しているフラビウイルスに対して効果的であり、したがって、哺乳動物をフラビウイルス感染又はフラビウイルスによって生じるあらゆる病的状態を予防する又は治癒させる。
【0046】
本開示においてヒト以外の他の哺乳動物から生産される抗体は、1つ又は複数の従来から既知の技術を使用するヒト化プロセスに更にかけることができる。したがって、更に多くの実施形態において、この態様において提供される方法は、非ヒト哺乳動物が生産した抗体をヒト化するステップを更に含む。得られた抗体又はヒト化抗体は、対象において、フラビウイルス感染を予防又は根絶する、フラビウイルス感染によって生じた任意の病的状態又は症候を処置又は軽減するために、ヒト対象に投与することができる。更に、開示される方法に従って生産された抗体は、患者に由来するB細胞及びT細胞等の免疫細胞から亜集団をインビトロで選択するために利用することができる。選択された亜集団免疫細胞は、その後、フラビウイルス感染に対する免疫性をブーストするために患者に再投与される。
【0047】
更なる実施形態は、従来の様式によって得ることができる、開示される抗体を含有する抗血清を目的としている。具体的には、血液サンプルを、免疫化された非ヒト動物から採取し、血液を処理して、抗血清、すなわち、その血液の、抗体を含有する液体成分を得る。非ヒト哺乳動物は、好ましくは、ラット、マウス、ハムスター、ブタ、ウサギ、ウマ、ロバ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラマ、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される。
【0048】
第5の態様において、本開示は、対象においてデング熱等のフラビウイルス感染によって生じる疾患又は状態を処置する方法を提示する。好ましくは、第1の態様において提供されるウイルス様粒子、第2の態様において提供されるヌクレオチド分子、又は第3の態様において提供される組成物が、対象に投与される。上記の修飾されたウイルス様粒子、修飾されたウイルス様粒子をコードするヌクレオチド分子、又はワクチン組成物を対象に投与することによって、フラビウイルスに対する免疫応答又は免疫性が、対象において誘発され得る又は増強し得る又は確立され得る。したがって、デング感染等のフラビウイルス感染によって生じる可能性があるいかなる病的状態も、確立した免疫性によって効果的に予防又は根絶することができる。この態様において、ウイルス様粒子、ヌクレオチド分子、又は組成物は、罹患した器官に対して具体的に、又は対象の免疫系全体に対して全身的に、患者に投与され得、フラビウイルス感染に対する全体的な耐性をブーストする。好ましくは、フラビウイルスによって生じる病的状態又は症候は、デング、デング熱、デング出血性の発熱、及び重度のデングであり得る。
【0049】
フラビウイルス感染を処置する方法の更なる実施形態において、ウイルス様粒子はまた、免疫療法に適用することができる。ウイルス様粒子は、患者又はヒト細胞系に由来する細胞にエクスビボで適用することができ、この細胞はその後、患者に投与される。
【0050】
第6の態様において、本開示は、ウイルス様粒子をコードする遺伝子からウイルス様粒子を発現する細胞を培養すること、及び、細胞培養物からウイルス様粒子を回収することを含む、第1の態様において提供されるウイルス様粒子を生産する方法を提供する。様々な宿主-ベクター系を、ウイルス様粒子を生産する開示される方法において使用することができる。真核細胞を、本願の第4の態様によって提供される方法に使用することができる。真核細胞の例としては、限定はしないが、昆虫細胞(例えば、C6/36細胞、Sf9細胞、High five細胞)、酵母細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、及び哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞、ヒト胎児由来腎臓293F細胞)が含まれる。本願の第2の態様によって提供される方法に使用されるベクターは、発現させるウイルス様粒子をコードする核酸分子を含む。細胞は、従来の方法(例えば、リポフェクション、エレクトロポレーション)を使用して、ベクターでトランスフェクトすることができる。当業者であれば、培養培地を選択することができる。トランスフェクションの後、トランスフェクトされた細胞の、安定的にタンパク質を生産するクローンが選択され得、ウイルス様粒子が、細胞内で生産され得、培養培地に放出され得る。ウイルス様粒子は、培養培地から回収され得、超遠心分離及び/又はクロマトグラフィーを使用して精製され得る。発現し、回収されたタンパク質又は粒子は、成熟ウイルス様粒子であり、これは、回収されたタンパク質を投与される対象において複製することができず、したがって、ワクチン組成物として安全に適用することができることに留意することが重要である。
【0051】
以下の実施例は、本開示を更に説明することを目的としたものであり、本開示を実施例において記載されている具体的な実施形態に限定することは全く意図していない。
【実施例1】
【0052】
フラビウイルス構造タンパク質の発現
デングウイルス型1~4及び日本脳炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質を、本実験において、ウイルス構造タンパク質として使用した。使用したデングウイルス構造タンパク質において、少なくとも1つの修飾又は修飾された形態を、当該技術分野において知られている1つ又は複数のアプローチによって導入した。更に具体的には、デングウイルス配列のM7位、E261位、E282位、及びE317位の保存されたアミノ酸Hisは、配列番号1~3の7位、336位、357位、及び392位のアミノ酸Alaによって置き換えられており、又はデングウイルス配列若しくは野生型のM7位、E259位、E280位、及びE315位の保存されたアミノ酸Hisは、配列番号4の7位、334位、355位、及び390位のアミノ酸Alaによって置き換えられている。行った実験の更なる実施形態において、修飾された形態は、デングウイルス配列若しくは野生型のE27位、E149位、及びE209位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号1~3の102位、224位、及び284位のアミノ酸Asnでの置き換え、又はデングウイルス配列若しくは野生型のE27位、E149位、及びE207位の保存されたアミノ酸Hisの、配列番号4の102位、224位、及び282位のアミノ酸Asnでの置き換えを更に含む。更に、行った実験の一部の実施形態において、デングウイルス配列のE186位のアミノ酸Ser若しくはGlu、又はデングウイルス配列若しくは野生型のE184位のアミノ酸Serの、それぞれ配列番号1~3の261位又は配列番号4の259位のアミノ酸Pheでの置き換え、デングウイルス配列のE188位又はデングウイルス配列のE186位に位置するアミノ酸Argの、配列番号1~3の263位又は配列番号4の261位のアミノ酸Leuでの置き換え、デングウイルス配列のE242位のアミノ酸Asn若しくはVal、又はデングウイルス配列のE240位のアミノ酸Asnの、配列番号2~3の317位又は配列番号4の315位のアミノ酸Serでの置換、デングウイルス配列のE323位に位置するアミノ酸Arg若しくはLys、又はデングウイルス配列若しくは野生型のE321位のアミノ酸Lysの、配列番号2~3の398位又は配列番号4の396位のアミノ酸Glnでの改変の、いずれか1つ又は組み合わせのために、更に多くの修飾が行われた。本実験において研究された修飾されたウイルス構造タンパク質の一部の実施形態を、以下のTable 1(表1)に列挙する。
【0053】
【表1】
【0054】
1つ又は複数の修飾されたウイルス構造タンパク質を昆虫細胞において発現させるために、M-E発現ベクターをC6/36細胞又はSf9細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの後、細胞内のEの発現を、二次抗体としてのEタンパク質及びCy3コンジュゲート型ヤギ抗マウスIg抗体に特異的に結合する抗デングウイルスモノクローナル抗体(クローン1D10)を使用することによって、間接免疫蛍光アッセイにおいて調べた。結果を図9に示す。
【0055】
Eタンパク質の細胞外レベルを、キャプチャーELISAにおいて評価した。トランスフェクトされた細胞の培養培地を回収し、Eタンパク質の発現を、一次抗体としてのデングウイルスモノクローナル抗体及び二次抗体としてのホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート型ウサギ抗マウスIgG抗体を使用することによって調べた。結果を以下のTable 2(表2)に示す。
【0056】
【表2】
【実施例2】
【0057】
安定的にフラビウイルス構造タンパク質を発現する細胞に由来するウイルス様粒子の調製
実施例1において使用したフラビウイルスのM構造タンパク質及びE構造タンパク質の発現ベクターを使用した。実施例1と同じ様式で、ベクターをC6/36細胞又はSf9細胞にトランスフェクトした。安定的に発現するトランスフェクタントの生成において、ベクターを細胞にトランスフェクトし、組換えトランスフェクト細胞を、ブラストサイジンを使用して選択した。薬剤耐性トランスフェクタントのクローンを、間接免疫蛍光フォーマット及びドットブロット免疫アッセイフォーマットにおいてマウスモノクローナル抗体1D10を利用して、デングウイルスのEタンパク質の細胞内及び細胞外発現に基づいて選択した。高レベルの細胞外Eタンパク質の発現を伴うトランスフェクタントクローンを増殖させた。細胞培養培地を濃縮し、次いで、以前に記載されているように、ショ糖勾配及び/又はカリウム酒石酸塩-グリセロール勾配における超遠心分離によって精製した(Charoensriら、2014)。ウイルス様粒子調製物における2つのエンベロープタンパク質E及びMの存在を、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び銀染色によって評価した。結果を図10に示す。
【0058】
形態学的評価を、酢酸ウラニル及び透過型電子顕微鏡法を使用して、ネガティブ染色によって行った。結果を図11に示す。精製された微粒子状画分において、コア構造を有さないウイルス様粒子から予想されたように、サイズ及び形状に多少のばらつきがある全体的に丸い粒子が見られた。
【実施例3】
【0059】
マウスにおけるデングウイルスに対する抗体
精製された、実施例2で得られたデングウイルス様粒子を、この実施例において使用した。6頭のマウスを、スクアレン-水中油型アジュバント(AddaVax、InvivoGen社)を含有する20%グリセロール-NTEバッファー(12mMのTris[pH8.0]、1mMのEDTA、及び120mMのNaCl)中に1μgのDENV-2ウイルス様粒子で、0週目及び8週目に皮下注射することによって免疫化した。血清を、DENV-2に対する中和抗体について、プロトタイプDENV-2株16681を利用することによってアッセイした。免疫化されたマウスの血清における抗DENV中和抗体を、ベロ細胞でのプラーク減少中和試験(PRNT)によって検出した。終点力価を、プラーク形成単位の数を少なくとも50%低減させた(PRNT50)、試験した最大血清希釈として計算した。結果を図12に示す。ウイルス様粒子は、免疫化されたマウスにおいて高レベルの中和抗体を誘発することができた。
【実施例4】
【0060】
サルにおけるデングウイルスに対する抗体
精製された、実施例2で得られたデングウイルス様粒子を、この実施例において使用した。6頭のカニクイザルを、0日目に、一価の弱毒生デングウイルスで免疫化した。これらのカニクイザルを、スクアレン-水中油型アジュバント(AddaVax、InvivoGen社)を含有する20%グリセロール-NTEバッファー(12mMのTris[pH8.0]、1mMのEDTA、及び120mMのNaCl)中に10μgのウイルス様粒子で、60日目及び90日目に2回皮下注射することによってブーストした。カニクイザルを次いで、120日目に、DENV-2野生型ウイルスで負荷試験を行った。血清を、DENV-2プロトタイプ株16681及びベロ細胞を利用して、プラーク減少中和試験(PRNT)において、DENV-2に対する中和抗体についてアッセイした。終点力価を、プラーク形成単位の数を少なくとも50%低減させた(PRNT50)、試験した最大血清希釈として計算した。結果を図13に示す。ウイルス様粒子は、生弱毒化ウイルスでプライムされたカニクイザルにおいて、DENV-2に対する高レベルの中和抗体を誘発することができ、DENV-2野生型ウイルスでの負荷の後、マカクを感染から防御した。
【実施例5】
【0061】
デングウイルス様粒子を含む医薬組成物の調製
デングウイルス様粒子を、実施例2に従って調製した。ワクチン組成物である医薬組成物を調製するために、10μgの精製されたウイルス様粒子を、12mMのTris(pH8.0)、1mMのEDTA、及び120mMのNaClを含有する0.1mlのNTEバッファーと混合した。
【0062】
本開示が他の具体的な形態で具現化され得ること、及び上記の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。しかし、当業者に容易に想起されるもの等の、開示される概念の変更及び同等物は、本明細書に添付される特許請求の範囲内に含まれるものである。
【0063】
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図11(d)】
図12
図13
【配列表】
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