(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】負極材料、およびその調製方法と用途
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20230207BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230207BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230207BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20230207BHJP
C01B 33/113 20060101ALI20230207BHJP
C01B 33/00 20060101ALI20230207BHJP
C01B 33/32 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/36 B
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
C01B33/113 A
C01B33/00
C01B33/32
(21)【出願番号】P 2020572373
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 CN2019098884
(87)【国際公開番号】W WO2020113982
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】201811496263.0
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】▲でん▼志強
(72)【発明者】
【氏名】屈▲り▼娟
(72)【発明者】
【氏名】▲ぱん▼春雷
(72)【発明者】
【氏名】任建国
(72)【発明者】
【氏名】岳敏
(72)【発明者】
【氏名】▲へ▼雪琴
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-204374(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136180(WO,A1)
【文献】特開2005-259697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C01B 33/113
C01B 33/00
C01B 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合基材と、前記複合基材を被覆する炭素被覆層とを含み、
前記複合基材は、ケイ酸リチウム、ケイ素酸化物、活性剤、及び前記ケイ酸リチウムと前記ケイ素酸化物とに埋め込まれたシリコンを含
み、
前記ケイ素酸化物の分子式がSiOxであり、ただし、xが0.5~1.8の定数であり、
前記活性剤が、前記ケイ酸リチウムの支持骨格として機能
し、
前記活性剤が、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせであり、
前記ケイ酸リチウム含有量が30wt%~70wt%である
ことを特徴とする負極材料。
【請求項2】
a.前記ケイ素酸化物含有量が1wt%~13wt%であ
ること、
b.炭素含有量が0.05wt%~25wt%であ
ること、
c.前記活性剤の含有量が1wt%~10wt%であ
ること、
d.前記シリコンの含有量が20wt%~40wt%であ
ること、
e.前記ケイ酸リチウムがオルトケイ酸リチウム、メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウム及び五ケイ酸リチウムのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む
こと、
の特徴a~eの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項
1に記載の負極材料。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の負極材料の調製方法であって、
前記調製方法は、
(1)炭素含有ケイ素酸化物をリチウム源と混合し、原料混合物を得る工程と、
(2)保護性雰囲気または真空条件で前記原料混合物を一次焼結し、焼結混合物を得る工程と、
(3)前記焼結混合物と前記活性剤とを融合し、活性化前駆体を得る工程と、
(4)保護性雰囲気または真空条件で前記活性化前駆体を二次焼結する工程とを含む
ことを特徴とする調製方法。
【請求項4】
a.工程(3)における前記焼結混合物と前記活性剤との質量比が5:1~30:1であ
ること、
b.前記融合の温度が100~300℃であ
ること、
c.前記融合の時間が1h~4hであ
ること、
の特徴a~cの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項
3に記載の調製方法。
【請求項5】
工程(1)における前記炭素含有ケイ素酸化物と前記リチウム源とのモル比が2.5:1~9:1であることを特徴とする請求項
3または
4に記載の調製方法。
【請求項6】
a.前記炭素含有ケイ素酸化物の分子式がSiOxCであり、ただし、xが0.5~1.8の定数であ
ること、
b.前記リチウム源が金属リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酢酸リチウムのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む
こと、
の特徴a~bの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項
3または
4に記載の調製方法。
【請求項7】
a.工程(2)における前記一次焼結の温度が200~1000℃であ
ること、
b.前記一次焼結の時間が2h~6hであ
ること、
c.工程(4)における前記二次焼結の温度が150~1000℃であ
ること、
d.前記二次焼結の時間が6h~10hであ
ること、
e.前記保護性雰囲気が窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気、ヘリウムガス雰囲気、ネオンガス雰囲気、クリプトンガス雰囲気及びキセノンガス雰囲気のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む
こと、
の特徴a~eの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項
3~
6のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項8】
前記調製方法は、
(1)SiOCと金属リチウムとをモル比2.5:1~9:1で混合し、前記原料混合物を得る工程と、
(2)保護性雰囲気において前記原料混合物を500~900℃で2h~6h焼結し、前記焼結混合物を得る工程と、
(3)前記焼結混合物とMgとをモル比5:1~30:1で100~300℃の温度で1h~4h融合し、前記活性化前駆体を得る工程と、
(4)保護性雰囲気において前記活性化前駆体を300~900℃で6h~10h焼結し、負極材料を得る工程とを含む
ことを特徴とする請求項
3~
7のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項9】
リチウムイオン電池分野に適用することを特徴とする請求項1
または2に記載の負極材料の用途。
【請求項10】
前記負極材料をリチウムイオン電池の負極材料として用いられることを特徴とする請求項
9に記載の負極材料の用途。
【請求項11】
請求項1
または2に記載の負極材料を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池材料調製分野に属し、例えば負極材料、およびその調製方法と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
1991年に、SONYは、商品化されたリチウムイオン電池を発表し、その後、リチウムイオン電池に関連する材料の研究が盛んになる。さらに、各種製品の機能の多様化に伴って、電池への要求も高まりつつある。特に、省エネ・低排出の電気自動車(EV)が注目され、自動車の研究開発の焦点となったので、リチウムイオン電池の出力電力、エネルギー密度、安全性、電圧などに対する要求が高くなった。リチウムイオン電池の性能は、主要材料の性能に依存し、これにより、リチウムイオン電池の新規電極材料の開発と研究を促進している。
【0003】
現在、リチウムイオン電池の負極材料は、通常、製造されたグラファイトを使用するが、グラファイト負極の理論容量はわずか372mAh/gであるため、日々増え続ける市場の要求を満足することができない。シリコン材料は、理論容量が4200mAh/gと高いため、注目されているが、300%と高い体積膨張、悪いサイクル性能により、その産業化と応用に制限がある。ケイ素酸化物材料は高い比容量と優れたサイクル性能を持つが、ケイ素酸化物材料の初回クーロン効率が低い。
【0004】
CN104603993Bは、非水電解質二次電池用負極活物質および当該負極活物質を用いた非水電解質二次電池を開示し、前記負極活物質の内部にはケイ酸リチウム相のSiOx粒子を含有し、前記SiOx粒子表面の50%~100%が炭素で被覆され、前記SiOx粒子の平均粒子径が1μm~15μmである。前記負極材料は、単純なケイ素酸化物材料負極に比べて、初回クーロン効率を顕著に向上させるが、前記負極活物質に含まれるケイ酸リチウムが電気化学的不活性成分であり、材料の可逆容量が低減される。
【0005】
そのため、本分野では、高比容量、高初回クーロン効率および良好なサイクル安定性を持たせる負極材料を開発することを求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下は、本発明で詳しく説明する形態の概要である。この概要は、特許請求の保護範囲を制限することを意図するものではない。
【0008】
本出願の第一目的は、負極材料を提供することにあり、前記負極材料は、複合基材と、前記複合基材を被覆する炭素被覆層とを含み、
【0009】
前記複合基材が、ケイ酸リチウム、ケイ素酸化物、活性剤、及び前記ケイ酸リチウムと前記ケイ素酸化物とに埋め込まれたシリコンを含む。
【0010】
本出願の負極材料は、単純なケイ素酸化物材料に比べて、複合基材におけるケイ酸リチウムが、ケイ素酸化物材料の初回充電時に正極材料から脱離するリチウムの消耗を低減でき、さらに負極材料の初回クーロン効率を効果的に向上させることができる。また、イ素がケイ酸リチウムに埋め込まれたため、シリコンの充放電時の体積膨張を緩和することができる。
【0011】
本出願の複合基材における活性剤は、材料の導電性を向上させ、さらに負極材料の電気化学的性能を高めることができるとともに、活性剤は、支持骨格として役割を果たし、ケイ酸リチウムの結晶構造を改善することができる。これによって、リチウムイオンが構造から脱離及び挿入するのに十分なスペースを確保し、一定の可逆容量を持ち、さらに負極材料の初回クーロン効率を向上させることができる。初回クーロン効率≧83.6%となる。
【0012】
本出願のケイ酸リチウムは、従来技術で調製されたケイ酸リチウムと異なり、従来技術では、シリコン負極に生成したケイ酸リチウムがすべて化学的不活性成分であり、本出願のケイ酸リチウムは、活性剤の作用により、リチウムイオンの保持および脱離の能力があり、良好な電気化学的活性を有し、負極材料の容量をさらに向上させることができる。初回放電比容量≧1263mAh/gとなる。
【0013】
本出願の複合基材を被覆する炭素被覆層は、材料の導電性をさらに向上させ、負極材料容量を十分に発揮させることができるとともに、シリコンと酸化シリコンの充放電による体積膨張をさらに緩和することができる。これにより、負極材料が良好なサイクル安定性を持ち、0.1C電流密度での50サイクル後の容量維持率≧82%となる。
【0014】
好ましくは、前記活性剤が、アルカリ金属、遷移金属、アルカリ金属酸化物及び遷移金属酸化物のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み、好ましくはカリウム、マグネシウム、アルミニウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0015】
本出願の活性剤は、原子半径がLiよりも大きい金属元素または原子半径がLiよりも大きい金属元素の酸化物である。
【0016】
好ましくは、前記ケイ酸リチウム含有量が30wt%~70wt%であり、例えば35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%、65wt%等である。
【0017】
好ましくは、前記ケイ素酸化物含有量が1wt%~13wt%であり、例えば2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%等である。
【0018】
好ましくは、前記炭素含有量が0.05wt%~25wt%であり、例えば1wt%、3wt%、5wt%、8wt%、10wt%、12wt%、15wt%、18wt%、20wt%、22wt%等である。
【0019】
好ましくは、前記活性剤の含有量が1wt%~10wt%であり、例えば2wt%、4wt%、5wt%、6wt%、8wt%、9wt%等である。
【0020】
好ましくは、前記シリコンの含有量が20wt%~40wt%であり、例えば22wt%、24wt%、25wt%、26wt%、28wt%、30wt%、32wt%、35wt%、38wt%等である。
【0021】
好ましくは、前記負極材料におけるケイ酸リチウムが、オルトケイ酸リチウム、メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウム及び五ケイ酸リチウムのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0022】
好ましくは、前記ケイ素酸化物の分子式がSiOxであり、ただし、xが0.5~1.8の定数であり、例えば0.8、1、1.2、1.5、1.7等である。
【0023】
本出願の第二目的は、負極材料の調製方法を提供することにあり、前記調製方法は、
(1)炭素含有ケイ素酸化物をリチウム源と混合し、原料混合物を得る工程と、
(2)保護性雰囲気または真空条件で前記原料混合物を一次焼結し、焼結混合物を得る工程と、
(3)前記焼結混合物と前記活性剤とを融合し、活性化前駆体を得る工程と、
(4)保護性雰囲気または真空条件で前記活性化前駆体を二次焼結する工程とを含む。
【0024】
好ましくは、本出願に係る工程(3)における前記焼結混合物と前記活性剤との質量比が5:1~30:1であり、例えば8:1、10:1、12:1、15:1、18:1、20:1、22:1、25:1、28:1等である。
【0025】
好ましくは、前記融合の温度が100~300℃であり、例えば150℃、200℃、250℃、280℃等である。
【0026】
好ましくは、前記融合の時間が1h~4hであり、例えば1.5h、2h、2.5h、3h、3.5h等である。
【0027】
好ましくは、本出願に係る工程(1)での前記炭素含有ケイ素酸化物と前記リチウム源とのモル比が2.5:1~9:1であり、例えば3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1等である。
【0028】
好ましくは、前記炭素含有ケイ素酸化物の分子式がSiOxCであり、ただし、xが0.5~1.8の定数であり、好ましくはSiOCであり、例えば0.6、0.8、1、1.2、1.5、1.7等である。
【0029】
好ましくは、前記リチウム源が、金属リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酢酸リチウムのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0030】
好ましくは、本出願に係る工程(2)における前記一次焼結の温度が200~1000℃であり、好ましくは500~900℃であり、例えば300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃等である。
【0031】
好ましくは、前記一次焼結の時間が2h~6hであり、例えば3h、3.5h、4h、4.5h、5h等である。
【0032】
好ましくは、工程(4)における前記二次焼結の温度が150~1000℃であり、好ましくは300~900℃であり、例えば200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃等である。
【0033】
好ましくは、前記二次焼結の時間が6h~10hであり、例えば6.5h、7h、7.5h、8h、9h等である。
【0034】
好ましくは、前記保護性雰囲気が、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気、ヘリウムガス雰囲気、ネオンガス雰囲気、クリプトンガス雰囲気及びキセノンガス雰囲気のいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含み、例えば窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気、ヘリウム雰囲気等である。
【0035】
好ましい技術案として、本出願は、負極材料の調製方法を提供し、前記調製方法は、
(1)SiOCと水酸化リチウムとをモル比2.5:1~9:1で混合し、前記原料混合物を得る工程と、
(2)保護性雰囲気において前記原料混合物を500~900℃で2h~6hし、焼結混合物を得る工程と、
(3)前記焼結混合物とMgとを質量比5:1~30:1で、100~300℃の温度で1h~4h融合し、活性化前駆体を得る工程と、
(4)保護性雰囲気において前記活性化前駆体を300~900℃で6h~10h焼結し、負極材料を得る工程とを含む。
【0036】
本出願の第三目的は、第一目的に記載の負極材料の用途を提供することにあり、前記負極材料をリチウムイオン電池分野に適用する。
【0037】
好ましくは、前記負極材料がリチウムイオン電池の負極材料として用いられる。
【0038】
本出願の第四目的は、リチウムイオン電池を提供することにあり、前記リチウムイオン電池は、第一目的に記載の負極材料を含む。
【0039】
好ましくは、前記リチウムイオン電池の負極材料が第一目的に記載の負極材料である。
【発明の効果】
【0040】
従来技術に比べて、本出願は、以下の有益な効果を有する。
【0041】
(1)本出願の負極材料は、単純なケイ素酸化物材料に比べて、複合基材におけるケイ酸リチウムが、ケイ素酸化物材料の初回充電時に正極材料から脱離するリチウムの消耗を低減でき、さらに負極材料の初回クーロン効率を効果的に向上させることができる。また、イ素がケイ酸リチウムに埋め込まれたため、シリコンの充放電時の体積膨張を緩和することができる。
【0042】
(2)本出願のケイ酸リチウムは、従来技術で調製されたケイ酸リチウムと異なり、従来技術では、シリコン負極に生成したケイ酸リチウムがすべて化学的不活性成分であり、本出願のケイ酸リチウムは、活性剤の作用により、リチウムイオンの保持および脱離の能力があり、良好な電気化学的活性を有し、負極材料の容量をさらに向上させることができる。初回放電比容量≧1263mAh/gとなる。
【0043】
(3)本出願の複合基材における活性剤は、材料の導電性を向上させ、さらに負極材料の電気化学的性能を高めることができるとともに、活性剤は、支持骨格として役割を果たし、ケイ酸リチウムの結晶構造を改善することができる。これによって、リチウムイオンが構造から脱離及び挿入するのに十分なスペースを確保し、さらに一定の可逆容量を持ち、さらに負極材料の初回クーロン効率を向上させることができる。初回クーロン効率≧83.6%となる。
【0044】
(4)本出願の複合基材を被覆する炭素被覆層は、材料の導電性をさらに向上させ、負極材料容量を十分に発揮させることができるとともに、シリコンと酸化シリコンの充放電による体積膨張をさらに緩和することができる。これにより、負極材料が良好なサイクル安定性を持ち、0.1C電流密度での50サイクル後の容量維持率≧82%となる。
【0045】
詳細な説明と図面を閲読すると、他の点を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本出願の具体的な実施形態1で得られたサンプルのSEM図である。
【
図2】本出願の具体的な実施形態7で得られたサンプルのSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本出願の理解を容易にするために、以下、実施例を列挙する。当業者は、以下の実施例が本出願の理解を容易にするためのものに過ぎず、本出願を制限するものではないと理解すべきである。
【0048】
実施例1
負極材料の調製方法は、
(1)SiOCと金属リチウムをモル比3:1で混合し、原料混合物を得る工程と、
(2)保護性雰囲気において前記原料混合物を700℃で4h焼結し、焼結混合物を得る工程と、
(3)前記焼結混合物とMgとを質量比10:1で、180℃の温度で2h融合し、活性化前駆体を得る工程と、
(4)保護性雰囲気において前記活性化前駆体を750℃で8h焼結し、負極材料を得る工程とを含む。
図1は、前記負極材料のトポグラフィーを示し、
図1に示すように、得られた負極材料の粒子径が5~10μmであり、最外層が炭素被覆層であった。
【0049】
実施例2
実施例1との相違点は、以下のとおりである。
工程(3)での焼結混合物とMgとのモル比が5:1であった。
【0050】
実施例3
実施例1との相違点は、以下のとおりである。
工程(3)での焼結混合物とMgとのモル比が30:1であった。
【0051】
実施例4
実施例1との相違点は、以下のとおりである。
工程(3)での焼結混合物とMgとのモル比が4:1であった。
【0052】
実施例5
実施例1との相違点は、以下のとおりである。
工程(3)での焼結混合物とMgとのモル比が31:1であった。
【0053】
実施例6
負極材料の調製方法は、
(1)SiOxC(x=0.5)と水酸化リチウムとをモル比9:1で混合し、原料混合物を得る工程と、
(2)窒素ガス雰囲気において前記原料混合物を200℃で6h焼結し、焼結混合物を得る工程と、
(3)前記焼結混合物とK2Oとをモル比5:1で、100℃の温度で4h融合し、活性化前駆体を得る工程と、
(4)窒素ガス雰囲気において前記活性化前駆体を150℃で10h焼結し、負極材料を得る工程とを含む。
【0054】
実施例7
負極材料の調製方法は、
(1)SiO
xC(x=1.8)と金属リチウムとをモル比2.5:1で混合し、原料混合物を得る工程と、
(2)アルゴンガス雰囲気において前記原料混合物を1000℃で2h焼結し、焼結混合物を得る工程と、
(3)前記焼結混合物とAlとをモル比30:1で、300℃の温度で1h融合し、活性化前駆体を得る工程と、
(4)アルゴンガス雰囲気において前記活性化前駆体を1000℃で6h焼結し、負極材料を得る工程とを含む。
図2は、前記負極材料のトポグラフィーを示し、
図2に示すように、得られた負極材料の粒子径が5~10μmであり、最外層が炭素被覆層であった。
【0055】
比較例1
実施例1との相違点は、以下のとおりである。
工程(3)においてMgを加えなかった。
【0056】
比較例2
実施例1との相違点は、以下のとおりである。
工程(1)においてSiOCをSiO2に置き替える。
性能測定
調製された負極材料に対して以下の性能測定を行った。
(1)リチウムイオン電池の調製
調製された負極材料、導電性炭黒及びCMC/SBRを、調製された負極材料:導電性炭黒:CMC/SBR=75:15:10の比で銅箔にコーティングし、負極片として調製し、金属リチウムシートを対電極として、PP/PEをセパレータとして、ボタン電池を作製した。
(2)初回クーロン効率測定
LAND 5V/10mA型電池測定装置により電池の電気化学的性能を測定した。充放電電圧が1.5Vであり、充放電レートが0.1Cであり、初回クーロン効率=初回充電比容量/初回放電比容量である。
(3)50サイクル後の容量維持率測定
LAND 5V/10mA型電池測定装置により電池の電気化学的性能を測定した。充放電電圧が1.5Vであり、充放電レートが0.1Cであり、50サイクル後の容量維持率=50回目の充電比容量/初回充電比容量である。
【0057】
【0058】
表1から分かるように、本出願の実施例1~7の調製された負極材料において、ケイ酸リチウムが電気化学的活性成分であり、さらに前記負極材料は、良好な電気化学的性能を持ち、初回放電比容量≧1263mAh/gであり、初回クーロン効率≧83.6%であり、0.1C電流密度で、50サイクル後の容量維持率≧82%であった。
【0059】
表1から分かるように、実施例4は、実施例1に比べて、初回クーロン効率と50サイクル後の容量維持率が低い。これは、実施例4では、活性剤Mgの添加量が高すぎ、ケイ酸リチウムの構造を破壊したからと考えられる。そのため、作製された負極材料は、初回放電比容量、初回クーロン効率及び50サイクル後の容量維持率が低かった。
【0060】
表1から分かるように、実施例5は、実施例1に比べて、初回放電比容量、初回クーロン効率及び50サイクル後の容量維持率が低い。これは、実施例5では、活性剤Mgの添加量が低すぎ、さらに負極材料におけるケイ酸リチウムが活性化されていないからと考えられる。そのため、作製された負極材料の初回放電比容量、初回クーロン効率及び50サイクル後の容量維持率が低かった。
【0061】
表1から分かるように、比較例1は、実施例1に比べて、初回放電比容量、初回クーロン効率及び50サイクル後の容量維持率が低い。これは、比較例1では、活性剤Mgを添加しなく、さらに負極材料におけるケイ酸リチウムが化学的不活性成分であるからと考えられる。そのため、作製された負極材料の初回放電比容量、初回クーロン効率及び50サイクル後の容量維持率が低かった。
【0062】
表1から分かるように、比較例2は、実施例1に比べて、初回クーロン効率及び50サイクル後の容量維持率が低い。これは、比較例2では、ケイ素源がSiO2であり、また作製された負極材料には炭素被覆層がないからと考えられる。そのため、作製された負極材料の初回クーロン効率及び50サイクル後の容量維持率が低かった。
【0063】
出願人は、本出願において上記の実施例を使用して本出願の詳細なプロセス機器およびプロセスフローを説明するが、本出願が上記の詳細なプロセス機器およびプロセスフローに限定されず、即ち、本出願が上記の詳細なプロセス機器およびプロセスフローに依存しなければならないことを意味しないことを声明する。