(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】上皮増殖因子受容体変異体IIIおよびCD3の単一および二重特異性抗体およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230207BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230207BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230207BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230207BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230207BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230207BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230207BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230207BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230207BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230207BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230207BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230207BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230207BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230207BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20230207BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230207BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230207BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230207BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230207BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20230207BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K16/28
C07K16/46
C07K19/00
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K47/68
A61K47/55
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K38/02
A61K49/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021094240
(22)【出願日】2021-06-04
(62)【分割の表示】P 2018538177の分割
【原出願日】2017-01-10
【審査請求日】2021-06-04
(32)【優先日】2016-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス・チン・シュウ
(72)【発明者】
【氏名】オイ・クワン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】バーブラ・ジョンソン・サス
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-526880(JP,A)
【文献】特表2009-532358(JP,A)
【文献】国際公開第2015/006482(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/018527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮増殖因子受容体変異体III(EGFRvIII)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(a)(i)配列番号74、75、または76で示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号77または78で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号79で示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および
(i)配列番号156で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号157で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号158で示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域;または
(b)(i)配列番号80、81、または82で示される配列を含むCDR1;(ii)配列番号83または84で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号85で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号159で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号160で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号161で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(c)(i)配列番号80、81、または82で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号86または87で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号79で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号162で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号163で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号164で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(d)(i)配列番号88、89、または90で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号91または92で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号85で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号165で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号163で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号161で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(e)(i)配列番号93、94、または95で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号96または97で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号79で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号166で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号163で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号167で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(f)(i)配列番号93、94、または95で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号96または97で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号85で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号168で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号163で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号167で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(g)(i)配列番号80、81、または82で示される配列を含むCDR1;(ii)配列番号83または84で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号85で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号169で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号163で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号161で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(h)(i)配列番号80、81、または82で示される配列を含むCDR1;(ii)配列番号83または84で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号85で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号170で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号163で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号161で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(i)(i)配列番号80、81、または82で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号98または78で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号85で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号171で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号172で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号167で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(j)(i)配列番号80、81、または82で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号98または78で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号85で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号174で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号175で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号167で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(k)(i)配列番号99、100、または101で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号83または84で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号85で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号173で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号163で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号161で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(l)(i)配列番号74、75、または76で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号102または103で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号104で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号176で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号172で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号177で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(m)(i)配列番号74、75、または76で示される配列を含むCDR1;(ii)配列番号105または103で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号107で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号178で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号179で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号180で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(n)(i)配列番号74、75、または76で示される配列を含むCDR1;(ii)配列番号102または103で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号108で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号176で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号172で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号177で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(o)(i)配列番号74、75、または76で示される配列を含むCDR1;(ii)配列番号106または87で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号85で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号181で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号172で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号167で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(p)(i)配列番号109、110、または111で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号112、または113で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号114で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号182で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号183で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号184で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(q)(i)配列番号115、116、または
117で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号118、または119で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号120で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号185で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号186で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号184で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(r)(i)配列番号121、122、または123で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号124、または125で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号126で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号187で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号188で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号189で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(s)(i)配列番号115、116、または117で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号127、または128で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号129で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号185で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号186で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号184で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(t)(i)配列番号115、116、または117で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号130、または131で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号120で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号190で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号191で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号184で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域;または
(u)(i)配列番号132、133、または134で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号135、または136で示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号126で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および
(i)配列番号192で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号193で示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号194で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域
を含む、単離された抗体。
【請求項2】
抗体が、
(a)配列番号9で示される配列を含むVH領域;および
配列番号10で示される配列を含むVL領域;または
(b)配列番号11で示される配列を含むVH領域;および
配列番号12で示される配列を含むVL領域;または
(c)配列番号13で示される配列を含むVH領域;および
配列番号14で示される配列を含むVL領域;または
(d)配列番号15で示される配列を含むVH領域;および
配列番号16で示される配列を含むVL領域;または
(e)配列番号17で示される配列を含むVH領域;および
配列番号18で示される配列を含むVL領域;または
(f)配列番号19で示される配列を含むVH領域;および
配列番号20で示される配列を含むVL領域;または
(g)配列番号21で示される配列を含むVH領域;および
配列番号22で示される配列を含むVL領域;または
(h)配列番号23で示される配列を含むVH領域;および
配列番号24で示される配列を含むVL領域;または
(i)配列番号25で示される配列を含むVH領域;および
配列番号26で示される配列を含むVL領域;または
(j)配列番号25で示される配列を含むVH領域;および
配列番号29で示される配列を含むVL領域;または
(k)配列番号27で示される配列を含むVH領域;および
配列番号28で示される配列を含むVL領域;または
(l)配列番号30で示される配列を含むVH領域;および
配列番号31で示される配列を含むVL領域;または
(m)配列番号32で示される配列を含むVH領域;および
配列番号33で示される配列を含むVL領域;または
(n)配列番号34で示される配列を含むVH領域;および
配列番号31で示される配列を含むVL領域;または
(o)配列番号35で示される配列を含むVH領域;および
配列番号36で示される配列を含むVL領域;または
(p)配列番号37で示される配列を含むVH領域;および
配列番号38で示される配列を含むVL領域;または
(q)配列番号39で示される配列を含むVH領域;および
配列番号40で示される配列を含むVL領域;または
(r)配列番号41で示される配列を含むVH領域;および
配列番号42で示される配列を含むVL領域;または
(s)配列番号43で示される配列を含むVH領域;および
配列番号40で示される配列を含むVL領域;または
(t)配列番号44で示される配列を含むVH領域;および
配列番号45で示される配列を含むVL領域;または
(u)配列番号46で示される配列を含むVH領域;および
配列番号47で示される配列を含むVL領域
を含む、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項3】
抗体が二重特異性抗体であって、二重特異性抗体が、ヒト免疫エフェクター細胞に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することにより、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員できる第2の抗体可変ドメインをさらに含む全長抗体である、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項4】
抗体が二重特異性抗体であって、二重特異性抗体が、ヒト免疫エフェクター細胞に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することにより、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員できる第2の抗体可変ドメインをさらに含む全長抗体である、請求項2に記載の単離された抗体。
【請求項5】
二重特異性抗体が、ヒンジ領域内の223位、225位および228位、並びに、ヒトIgG2(配列番号290)のCH3領域内の409位または368位(EUナンバリングスキーム)にアミノ酸修飾を含む;所望により、ヒトIgG2の265位、330位および331位の1つまたはそれ以上にアミノ酸修飾をさらに含む、請求項3~4のいずれかに記載の単離された抗体。
【請求項6】
特定の部位に設計されたアシル供与体であるグルタミンを含有するタグを含むか、またはリンカーを含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の抗体をコードする核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含むベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の核酸または請求項8に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項10】
抗体が作用物質にコンジュゲートしており、作用物質が、細胞傷害性物質、免疫調節剤、イメージング剤、治療的タンパク質、バイオポリマーおよびオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1~2および6のいずれかに記載の抗体のコンジュゲート。
【請求項11】
請求項1~6のいずれかに記載の抗体または請求項10に記載のコンジュゲートを含む、医薬組成物。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1~6のいずれかに記載の抗体、請求項10に記載のコンジュゲート、または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
がん;EGFRvIIIを発現する悪性細胞に関連する症状;EGFRvIIIを発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍の増殖、進行、または転移;または、多形神経膠芽腫、退形成星状細胞腫、巨細胞膠芽腫、膠肉腫、退形成乏突起神経膠腫、退形成上衣腫、退形成乏突起星細胞腫、脈絡叢癌腫、退形成神経節膠腫、松果体芽腫、松果体細胞腫、髄膜腫、髄上皮腫、上衣芽腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、混合膠腫、頭頸部癌、非小細胞肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、髄芽腫、結腸直腸癌、肛門癌、子宮頸癌、腎臓癌、皮膚癌、膵臓癌、肝臓癌、膀胱癌、胃癌、甲状腺癌、中皮腫、子宮癌、リンパ腫および白血病からなる群から選択されるEGFRvIIIに関連するがんの処置において使用するための、請求項1~6のいずれかに記載の抗体、請求項10に記載のコンジュゲート、または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項9に記載の宿主細胞を、抗体または二重特異性抗体の産生をもたらす条件下で培養すること、および、抗体または二重特異性抗体を宿主細胞または培養物から単離することを含む、請求項1~6のいずれかに記載の抗体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、上皮増殖因子受容体変異体III(EGFRvIII)に特異的に結合する抗体、例えば、全長抗体またはその抗原結合性断片に関する。本発明はさらに、ヘテロ多量体抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体コンジュゲート(例えば、抗体-薬物-コンジュゲート)に関する。EGFRvIII抗体を含む組成物、そのような抗体の製造および精製方法、並びに、診断および治療におけるそれらの使用も提供される。
【背景技術】
【0002】
背景
EGFRの腫瘍特異的突然変異体であるEGFR変異体III(EGFRvIII)は、野生型EGFR遺伝子の増幅にしばしば伴うゲノム再編成の産物である。EGFRvIIIは、267個のアミノ酸の欠損と接合部でのグリシン置換を導くエキソン2-7のインフレーム欠損により形成される。この切断された受容体は、そのリガンド結合能を失うが、恒常的なキナーゼ活性を獲得する。興味深いことに、EGFRvIIIは、頻繁に、同じ腫瘍細胞において、全長野生型EGFRと共発現する。さらに、EGFRvIIIを発現する細胞は、増殖、浸潤、血管新生およびアポトーシス耐性の増加を示す。
【0003】
EGFRvIIIは、多形神経膠芽腫(GBM)において最もよく見られる。GBMの25~35%がこの切断型受容体を有すると見積もられている。さらに、その発現は、しばしばより攻撃的な表現型および予後の悪さを反映する。EGFRvIIIの発現は、GBMに加えて、非小細胞性肺癌、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌および前立腺癌などの他の固形腫瘍でも報告されてきた。対照的に、EGFRvIIIは健康な組織では発現されない。正常組織での発現の欠如のために、EGFRvIIIは腫瘍特異的標的化治療の開発に理想的な標的である。今日まで、高親和性、高特異性、および、GBMなどのがんの処置における高い効力により特定される、FDAに承認されたEGFRvIIIに対するモノクローナル抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)は存在しなかった。従って、効力と安全性プロフィールが改善され、ヒトの患者への使用に適する、GBMなどのがんを処置する抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
概要
本明細書に開示される発明は、上皮増殖因子受容体変異体III(EGFRvIII)に特異的に結合する抗体(例えば、単一特異性または二重特異性抗体)および抗体コンジュゲートを対象とする。ある態様では、本発明は、EGFRvIIIに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、その抗体は、(a)(i)配列番号62、63、64、74、75、76、80、81、82、88、89、90、93、94、95、99、100、101、109、110、111、115、116、117、121、122、123、132、133、134、137、138、139、143、144、または145で示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号65、66、68、69、70、71、77、78、83、84、86、87、91、92、96、97、98、102、103、105、106、112、113、118、119、124、125、127、128、130、131、135、136、140、141、146、147、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、または237で示される配列を含むVH CDR2;および、iii)配列番号67、72、73、79、85、104、107、108、114、120、126、129、142、148、219、220、221、222、223、または236で示される配列を含むVH CDR3を含む、重鎖可変(VH)領域;および/または、(i)配列番号149、154、156、159、162、165、166、168、169、170、171、173、174、176、178、181、182、185、187、190、192、195、198、238、または239で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号150、152、155、157、160、163、172、175、179、183、186、188、191、193、196、または199で示される配列を含むVL CDR2;および、(iii)配列番号151、153、158、161、164、167、177、180、184、189、194、197、または200で示される配列を含むVL CDR3を含む、軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0005】
別の態様では、EGFRvIIIに特異的に結合する単離された抗体が提供され、その抗体は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、30、32、34、35、37、39、41、43、44、46、48、50、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、202、203、204、205、206、207、208、209、210、214、216、217または218で示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含むVH領域;および/または、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、29、31、33、36、38、40、42、45、47、49、51、211、212、213または215で示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含むVL領域を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のVH領域は、CDR内にない残基に1個または複数の保存的アミノ酸置換を有する変異体を含み、かつ/または、本明細書に記載のVL領域は、CDR内にないアミノ酸に1個または複数のアミノ酸置換を有する変異体を含む。例えば、いくつかの実施態様では、VHまたはVL領域は、上記のアミノ酸配列、または、CDR内にない残基に、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個以下の保存的置換を有するその変異体を含み得る。
【0006】
いくつかの実施態様では、EGFRvIIIに特異的に結合する単離された抗体が提供され、ここで、その抗体は、配列番号5、9、11、15、30、37、または41で示される配列を含むVH領域;および/または、配列番号6、10、12、16、31、38、または42で示される配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施態様では、VH領域は、配列番号5で示される配列を含み、VL領域は、配列番号6で示される配列を含む。いくつかの実施態様では、VH領域は、配列番号9で示される配列を含み、VL領域は、配列番号10で示される配列を含む。いくつかの実施態様では、VH領域は、配列番号11で示される配列を含み、VL領域は、配列番号12で示される配列を含む。いくつかの実施態様では、VH領域は、配列番号15で示される配列を含み、VL領域は、配列番号16で示される配列を含む。いくつかの実施態様では、VH領域は、配列番号30で示される配列を含み、VL領域は、配列番号31で示される配列を含む。いくつかの実施態様では、VH領域は、配列番号37で示される配列を含み、VL領域は、配列番号38で示される配列を含む。いくつかの実施態様では、VH領域は、配列番号41で示される配列を含み、VL領域は、配列番号42で示される配列を含む。
【0007】
別の態様では、二重特異性抗体が提供され、二重特異性抗体は、全長ヒト抗体であり、標的抗原(例えば、EGFRvIII)に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞に位置するエフェクター抗原(例えば、表面抗原分類3(CD3))に特異的に結合することにより、ヒト免疫エフェクター細胞を動員できる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む。いくつかの実施態様では、第1の抗体可変ドメインは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、30、32、34、35、37、39、41、43、44、46、48、50、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、202、203、204、205、206、207、208、209、210、214、216、217または218で示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および/または、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、29、31、33、36、38、40、42、45、47、49、51、211、212、213または215で示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。いくつかの実施態様では、第1の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号62、63、64、74、75、76、80、81、82、88、89、90、93、94、95、99、100、101、109、110、111、115、116、117、121、122、123、132、133、134、137、138、139、143、144、または145で示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号65、66、68、69、70、71、77、78、83、84、86、87、91、92、96、97、98、102、103、105、106、112、113、118、119、124、125、127、128、130、131、135、136、140、141、146、147、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、または237で示される配列を含むVH CDR2;および、iii)配列番号67、72、73、79、85、104、107、108、114、120、126、129、142、148、219、220、221、222、223、または236で示される配列を含むVH CDR3を含む、重鎖可変(VH)領域;および/または、(b)(i)配列番号149、154、156、159、162、165、166、168、169、170、171、173、174、176、178、181、182、185、187、190、192、195、198、238、または239で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号150、152、155、157、160、163、172、175、179、183、186、188、191、193、196、または199で示される配列を含むVL CDR2;および、(iii)配列番号151、153、158、161、164、167、177、180、184、189、194、197、または200で示される配列を含むVL CDR3を含む、軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0008】
いくつかの実施態様では、第2の抗体可変ドメインは、CD3に対して特異的なVHおよび/またはVL領域を含む。例えば、第2の抗体可変ドメインは、配列番号240で示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および/または配列番号241で示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。いくつかの実施態様では、第2の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号244、110または245で示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号246または247で示される配列を含むVH CDR2;および、iii)配列番号248で示される配列を含むVH CDR3を含むVH領域;および/または、(i)配列番号249で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号250で示される配列を含むVL CDR2;および、(iii)配列番号251で示される配列を含むVL CDR3を含むVL領域を含む。
【0009】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、定常領域を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgG1、IgG2またはIgG2Δa、IgG3またはIgG4サブクラスのものである。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、グリコシル化された定常領域を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、1つまたはそれ以上のヒトFcガンマ受容体への結合親和性が低下した定常領域を含む。
【0010】
いくつかの実施態様では、二重特異性抗体の第1および第2の抗体可変ドメインの両方は、ヒンジ領域内の223、225および228位(例えば、(C223EまたはC223R)、(E225R)および(P228EまたはP228R))、並びに、ヒトIgG2(配列番号290)のCH3領域内の409または368位(例えば、K409RまたはL368E(EUナンバリングスキーム))にアミノ酸修飾を含む。
【0011】
いくつかの実施態様では、二重特異性抗体の第1および第2の抗体可変ドメインの両方は、ヒトIgG2の265位(例えば、D265A)にアミノ酸修飾を含む。
【0012】
いくつかの実施態様では、二重特異性抗体の第1および第2の抗体可変ドメインの両方は、ヒトIgG2の265位(例えば、D265A)、330位(例えば、A330S)および331位(例えば、P331S)の1つまたはそれ以上にアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗体の第1および第2の抗体可変ドメインの両方は、ヒトIgG2の265位(例えば、D265A)、330位(例えば、A330S)および331位(例えば、P331S)の各々にアミノ酸修飾を含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、本発明のEGFRvIII抗体の特定の部位に設計されたアシル供与体であるグルタミンを含有するタグを含む、単離された抗体を提供する。
【0014】
ある応用では、本発明は、アシル供与体であるグルタミンを含有するタグおよび本発明のEGFRvIII抗体の222、340または370位のアミノ酸修飾を含む、単離された抗体を提供する。いくつかの実施態様では、アミノ酸修飾は、リジンからアルギニンへの置換である。
いくつかの実施態様では、本発明のEGFRvIII抗体は、さらにリンカーを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のEGFRvIII抗体のコンジュゲートを提供し、ここで、抗体は、作用物質にコンジュゲートしており、作用物質は、細胞傷害性物質、免疫調節剤、イメージング剤、治療的タンパク質、バイオポリマーおよびオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、作用物質は、アントラサイクリン、アウリスタチン、カンプトセシン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ-ベンゾジアゼピン二量体、マイタンシン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、タキサン、ビンカアルカロイド、ツブリシン、ヘミアステリン、スプリセオスタチン、プラジエノライド、およびそれらの立体異性体、アイソスター、類似体または誘導体を含むがこれらに限定されない細胞傷害性物質である。例えば、細胞傷害性物質は、MMAD(モノメチルアウリスタチンD)、0101(2-メチルアラニル-N-[(3R,4S,5S)-3-メトキシ-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソ-3-{[(1S)-2-フェニル-1-(1,3-チアゾール-2-イル)エチル]アミノ}プロピル]ピロリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチル-L-バリンアミド)、3377(N,2-ジメチルアラニル-N-{(1S,2R)-4-{(2S)-2-[(1R,2R)-3-{[(1S)-1-カルボキシル-2-フェニルエチル]アミノ}-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-2-メトキシ-1-[(1S)-1-メチルプロピル]-4-オキソブチル}-N-メチル-L-バリンアミド)、0131(2-メチル-L-プロリ(proly)-N-[(3R,4S,5S)-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-3-{[(1S)-1-カルボキシ-2-フェニルエチル]アミノ}-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチル-L-バリンアミド)、または0121(2-メチル-L-プロリ-N-[(3R,4S,5S)-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-3-{[(2S)-1-メトキシ-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル]アミノ}-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチル-L-バリンアミド)である。
【0016】
いくつかの実施態様では、本発明は、式:抗体-(アシル供与体であるグルタミンを含有するタグ)-(リンカー)-(細胞傷害性物質)を含むコンジュゲートを提供する。
【0017】
他の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体または抗体コンジュゲートのいずれかを含む医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明は、また、本明細書に記載の抗体のいずれかを組換え的に産生する細胞株を提供する。
【0019】
本発明はまた、本明細書に記載の抗体のいずれかをコードする核酸を提供する。本発明は、また、本明細書に記載の抗体のいずれかの重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする核酸を提供する。
【0020】
本発明は、また、本明細書に記載の抗体または抗体コンジュゲートのいずれかの有効量を含むキットを提供する。
【0021】
本発明は、また、本明細書に記載の単離された抗体、二重特異性抗体または抗体コンジュゲートを提供し、該抗体を対象に投与することを含む、それを必要としている対象の処置方法を提供する。
【0022】
本明細書に記載の抗体または抗体コンジュゲートを含む医薬組成物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、対象におけるEGFRvIIIを発現する悪性細胞に関連する症状の処置方法も提供される。いくつかの実施態様では、症状は、がんである。いくつかの実施態様では、がんは、多形神経膠芽腫、退形成星状細胞腫、巨細胞膠芽腫、膠肉腫、退形成乏突起神経膠腫、退形成上衣腫、退形成乏突起星細胞腫、脈絡叢癌腫、退形成神経節膠腫、松果体芽腫、松果体細胞腫、髄膜腫、髄上皮腫、上衣芽腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、頭頸部癌、非小細胞肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、髄芽腫、結腸直腸癌、肛門癌、胃癌、甲状腺癌、中皮腫、子宮癌および膀胱癌からなる群から選択されるEGFRvIIIに関連するがん(例えば、EGFRvIII発現を伴う任意のがん)である。
【0023】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の単離された抗体、二重特異性抗体または抗体コンジュゲートを含む医薬組成物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、EGFRvIIIを発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍増殖または進行の阻害方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の単離された抗体、二重特異性抗体または抗体コンジュゲートを含む医薬組成物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、対象におけるEGFRvIIIを発現する悪性細胞の転移を阻害する方法を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の単離された抗体、二重特異性抗体または抗体コンジュゲートを含む医薬組成物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、EGFRvIIIを発現する悪性細胞を有する対象において腫瘍退縮を誘導する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1A、1Bおよび1Cは、3つのEGFRvIII抗体:mAb42G9(
図1A)、32A10(
図1B)および32G8(
図1C)の、3つのF98細胞株:F98(EGFR陰性)、F98-EGFRwtおよびF98-EGFRvIIIに対するFACS結合ヒストグラムの例を示す。X軸は蛍光強度である;Y軸は最大/モードに対する標準化(normalized to mode)の割合である。
【
図2】
図2A、2Bおよび2Cは、フローサイトメトリーにより測定されたGBM細胞株における野生型EGFRおよびEGFRvIIIの発現を示すヒストグラムである:LN229-EGFRvIII(
図2A)、LN18-EGFRvIII(
図2B)およびDKMG(
図2C)。EGFRvIIIをmAb42G9で検出し、EGFRwtをEGFR野生型特異的mAbで検出した。X軸は蛍光強度である;Y軸は最大/モードに対する標準化の割合である。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、EGFRvIIIを導入されたLN18-EGFRvIII(
図3A)および親のLN18(
図3B)細胞における、3つのEGFRvIII-CD3二重特異性抗体の細胞傷害性を示すグラフである。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、EGFRvIIIを導入されたLN229-EGFRvIII(
図4A)および親のLN229(
図4B)細胞における、3つのEGFRvIII-CD3二重特異性抗体の細胞傷害性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、内在性EGFRvIIIおよびEGFR野生型タンパク質を発現するDKMG細胞における、3つのEGFRvIII-CD3二重特異性抗体の細胞傷害性を示すグラフである。
【
図6】
図6は、LN229-EGFRvIII GBM細胞株の皮下モデルにおいて、EGFRvIII-CD3二重特異性抗体のインビボ抗腫瘍活性を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本明細書に開示される発明は、EGFRvIII(例えば、ヒトEGFRvIII)に特異的に結合する抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)および抗体コンジュゲートを提供する。本発明は、また、これらの抗体をコードするポリヌクレオチド、これらの抗体および抗体コンジュゲートを含む組成物、これらの抗体および抗体コンジュゲートの製造方法および使用方法を提供する。本発明は、また、対象におけるがんなどのEGFRvIIIにより媒介される病態に関連する症状の処置方法を提供する。
【0028】
一般的な技法
本発明の実施は、断りのない限り、当業者の技能の範囲内である、分子生物学 (組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、免疫学、ウイルス学、モノクローナル抗体生成および加工の従来の技法を用いる。そのような技法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook et al., 1989) Cold Spring Harbor Press; Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-1998) J. Wiley and Sons; Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987); Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel et al., eds., 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J.D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995) などの文献で詳細に説明されている。
【0029】
定義
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、この用語は、未加工のポリクローナルまたはモノクローナル抗体のみならず、それらの抗原結合性断片(Fab、Fab'、F(ab')2、Fvなど)、一本鎖(ScFv)およびドメイン抗体(例えば、サメおよびラクダ科の抗体を含む)および抗体を含む融合タンパク質、並びに、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のいかなる他の改変された構成も包含する。抗体は、IgG、IgAまたはIgM(またはそれらのサブクラス)などのいかなるクラスの抗体も含み、抗体は、特定のクラスのものである必要はない。抗体の重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、様々なクラスに分類できる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分けられ得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、各々、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造が周知である。
【0030】
抗体の「抗原結合性断片」または「抗原結合部分」という用語は、本明細書で使用する場合、所定の抗原(例えば、EGFRvIII)に特異的に結合する能力を保持する、未加工の抗体の1つまたはそれ以上の断片を表す。抗体の抗原結合機能は、未加工の抗体の断片により発揮され得る。抗体の「抗原結合性断片」という用語に包含される結合断片の例には、Fab;Fab';F(ab')2;VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単腕のVLおよびVHドメインからなるFv断片;単一ドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al., Nature 341:544-546, 1989)、および、単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。
【0031】
標的(例えば、EGFRvIIIタンパク質)に「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(これらは本明細書で互換的に使用される)抗体、抗体コンジュゲートまたはポリペプチドは、当分野で周知の用語であり、そのような特異的または優先的結合を測定する方法も当分野で周知である。ある分子が、特定の細胞または物質と、代替的な細胞または物質とよりも、頻繁に、迅速に、長い期間および/または大きい親和性で反応または会合する場合に、その分子は「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも、高い親和性で、高い結合力で、迅速に、かつ/または長い期間で結合する場合に、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、あるEGFRvIIIエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他のEGFRvIIIエピトープまたは非EGFRvIIIエピトープに結合するよりも、高い親和性で、高い結合力で、迅速に、かつ/または長い期間でそのエピトープに結合する抗体である。この定義を読むことにより、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は、第2の標的に特異的または優先的に結合してもよく、しなくてもよいことも理解される。このように、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的な結合を(含んでもよいが)必ずしも要しない。一般的に、必ずではないが、結合への言及は優先的結合を意味する。
【0032】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を、いずれかまたは組み合わせて表す。当分野で知られている通り、重鎖および軽鎖の可変領域は、各々、超可変領域とも呼ばれる3個の相補性決定領域(CDR)により連結された、4個のフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖のCDRは、FRにより近くにまとめられており、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に貢献する。CDRを決定するための少なくとも2つの技法がある:(1)種間配列変動性に基づくアプローチ(即ち、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda MD));および(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al., 1997, J. Molec. Biol. 273:927-948)。本明細書で使用する場合、CDRは、いずれかのアプローチまたは両アプローチの組合せにより定義されるCDRを表し得る。
【0033】
可変ドメインの「CDR」は、Kabat、Chothia、Kabat と Chothia の両方の蓄積、AbM、接触および/または構造の定義または当分野で周知の任意のCDR決定方法の定義に従って同定される、可変領域内のアミノ酸残基である。抗体のCDRは、Kabat らにより初めに定義された超可変領域として同定し得る。例えば、 Kabat et al., 1992, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, NIH, Washington D.C 参照。CDRの位置も、Chothia らにより初めに記載された構造的ループ構造として同定し得る。例えば、 Chothia et al., Nature 342:877-883, 1989 参照。CDR同定の他のアプローチには、Kabat と Chothia の折衷物であり、Oxford Molecular のAbM抗体モデル化ソフトウェア(現在は Accelrys(登録商標))を使用して導かれる「AbMの定義」、または、MacCallum et al., J. Mol. Biol., 262:732-745, 1996 に記載される、観察される抗原の接触に基づくCDRの「接触の定義」が含まれる。本明細書でCDRの「構造の定義」と呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置を、抗原結合にエンタルピー的な貢献をなす残基として同定し得る。 例えば、 Makabe et al., Journal of Biological Chemistry, 283:1156-1166, 2008 参照。また他のCDR境界の定義は、上記のアプローチに厳密に従わなくてもよいが、それでもなお Kabat のCDRの少なくとも一部と重複するであろうし、とはいえ、特定の残基もしくは残基群またはCDR全体でさえ、抗原結合に有意な影響を与えないという予測または実験的知見に照らして、短く、または長くしてもよい。本明細書で使用する場合、CDRは、アプローチの組合せを含めて、当分野で知られている任意のアプローチにより定義されるCDRを表し得る。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれに従って定義されるCDRを利用してもよい。1つより多いCDRを含むいかなる実施態様のためにも、CDRは、Kabat、Chothia、拡張型、AbM、接触および/または構造の定義のいずれに従っても定義され得る。
【0034】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を表す。即ち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る、起こり得る自然発生の突然変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に対するものである。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体の調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対するものである。修飾語の「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、何らかの特定の方法による抗体の産生を要求すると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature 256:495, 1975 により最初に記載されたハイブリドーマにより作られてもよく、または、米国特許第4,816,567号に記載される組換えDNA法によって作られてもよい。また、モノクローナル抗体は、例えば McCafferty et al., Nature 348:552-554, 1990 に記載される技法を使用して生成されるファージライブラリーから単離してもよい。
【0035】
本明細書で使用する場合、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらの断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合下位配列など)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を表す。好ましくは、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基により置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基が、対応する非ヒト残基により置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも導入されるCDRまたはフレームワーク配列にも見出されないが、抗体の性能をさらに改良および最適化するために含められる残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、実質的に少なくとも1個、典型的には2個の可変ドメインの全部を含み、そこでは、全部または実質的に全部のCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、全部または実質的に全部のFR領域がヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含むであろう。好ましいのは、WO99/58572に記載されるように改変されたFc領域を有する抗体である。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体から変更された1個またはそれ以上のCDR(CDR L1、CDR L2、CDR L3、CDR H1、CDR H2またはCDR H3)を有し、これらは元の抗体からの1個またはそれ以上のCDR「に由来する」1個またはそれ以上のCDRとも呼ばれる。
【0036】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体のものに相当するアミノ酸配列を有する抗体、および/または、当業者に知られているか、または本明細書に開示されるヒト抗体を製造するための技法を使用して製造された抗体を意味する。このヒト抗体の定義には、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。そのような例の1つは、マウス軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当分野で知られている各種の技法を使用して産生できる。ある実施態様では、ヒト抗体は、ファージライブラリーから選択され、そのファージライブラリーは、ヒト抗体を発現するものである(Vaughan et al., Nature Biotechnology, 14:309-314, 1996; Sheets et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 95:6157-6162, 1998; Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381, 1991; Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581, 1991)。ヒト抗体は、また、内在性の遺伝子座の代わりにヒト免疫グロブリンの遺伝子座を遺伝子組換え的に導入された動物、例えば、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスを免疫化することにより製造できる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;および第5,661,016号に記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することにより調製し得る(そのようなBリンパ球は、個体から、または、cDNAの単一細胞クローニングから回収し得るか、または、インビトロで免疫されてもよい)。例えば、Cole et al. Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77, 1985; Boerner et al., J. Immunol., 147 (1):86-95, 1991;および米国特許第5,750,373号参照。
【0037】
用語「キメラ抗体」は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が他の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を表すと意図する。
【0038】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸鎖を表す。例えば、鎖は比較的短くてもよく(例えば、10~100アミノ酸)、長くてもよい。鎖は、直鎖状または分枝状であってよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、かつ/または、非アミノ酸により中断されていてもよい。これらの用語は、天然または人為的に改変されたアミノ酸鎖も包含する;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質修飾、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作または改変、例えば、標識成分の結合。例えば、1個またはそれ以上のアミノ酸類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)や、当分野で知られている他の修飾を含有するポリペプチドも定義に含まれる。ポリペプチドは、一本鎖で生じてもよく、または、会合した複数の鎖であってもよいと理解される。
【0039】
「一価抗体」は、分子1個につき1個の抗原結合部位を含む(例えば、IgGまたはFab)。いくつかの例では、一価抗体は、1個より多い抗原結合部位を有し得るが、これらの結合部位は異なる抗原からのものである。
【0040】
「単一特異性抗体」は、2個の結合部位が抗原の同一のエピトープに結合するように、分子1個につき2個の同一の抗原結合部位を含む(例えばIgG)。従って、それらは相互に1個の抗原分子への結合を競合する。自然に見られる殆どの抗体は、単一特異性である。いくつかの例では、単一特異性抗体は一価抗体でもあり得る(例えばFab)。
【0041】
「二価抗体」は、分子1個につき2個の抗原結合部位を含む(例えば、IgG)。いくつかの例では、これらの2個の結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかしながら、二価抗体は、二重特異性であってもよい。
【0042】
「二重特異性(bispecific)」または「二重特異性(dual-specific)」は、2個の異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体の2個の抗原結合部位は、同一または異なるタンパク質標的にあってよい2個の異なるエピトープに結合する。
【0043】
「二機能性」抗体は、2つのアームに同一の抗原結合部位(即ち、同一のアミノ酸配列)を有するが、各結合部位が2つの異なる抗原を認識できる抗体である。
【0044】
「ヘテロ多量体」、「ヘテロ多量体複合体」または「ヘテロ多量体ポリペプチド」は、少なくとも第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含み、第2のポリペプチドが、少なくとも1個のアミノ酸残基により、第1のポリペプチドとアミノ酸配列において異なる分子である。ヘテロ多量体は、第1および第2のポリペプチドにより形成される「ヘテロ二量体」を含んでもよく、または、第1および第2のポリペプチドに加えてポリペプチドが存在する高次の三次元構造を形成してもよい。
【0045】
「ヘテロ二量体」、「ヘテロ二量体タンパク質」、「ヘテロ二量体複合体」または「ヘテロ多量体ポリペプチド」は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含み、第2のポリペプチドが、少なくとも1個のアミノ酸残基により、第1のポリペプチドとアミノ酸配列において異なる分子である。
【0046】
「ヒンジ領域」、「ヒンジ配列」およびこれらの変形は、本明細書で使用する場合、例えば、Janeway et al., ImmunoBiology: the immune system in health and disease, (Elsevier Science Ltd., NY) (4th ed., 1999); Bloom et al., Protein Science (1997), 6:407-415; Humphreys et al., J. Immunol. Methods (1997), 209:193-202 に例示される、当分野で知られている意味を含む。
【0047】
「免疫グロブリン様ヒンジ領域」、「免疫グロブリン様ヒンジ配列」およびこれらの変形は、本明細書で使用する場合、免疫グロブリン様または抗体様分子(例えば、イムノアドヘシン)のヒンジ領域およびヒンジ配列を表す。いくつかの実施態様では、免疫グロブリン様ヒンジ領域は、任意のIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4サブタイプ、または、IgA、IgE、IgDもしくはIgMに由来するか、またはこれらから派生したものであり得、そのキメラ形態、例えば、キメラIgG1/2ヒンジ領域を含む。
【0048】
用語「免疫エフェクター細胞」または「エフェクター細胞」は、本明細書で使用する場合、ヒト免疫系の天然のレパートリー内にあり、活性化されて標的細胞の生存能に影響を与え得る細胞を表す。標的細胞の生存能には、細胞の生存、増殖および/または他の細胞と相互作用する能力が含まれる。
【0049】
本発明の抗体は、当分野で周知の技法、例えば、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術またはそれらの技術の組合せまたは当分野で容易に知られる他の技法を使用して製造できる(例えば、Jayasena, S.D., Clin. Chem., 45: 1628-50, 1999 and Fellouse, F.A., et al, J. MoI. Biol., 373(4):924-40, 2007 参照)。
【0050】
当分野で知られている通り、本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチド鎖を表し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、および/または、それらの類似体、またはDNAまたはRNAポリメラーゼにより鎖に取り込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体を含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、鎖の集合の前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識成分の結合などにより、重合後にさらに修飾されてもよい。他の種類の修飾には、例えば、「キャップ」、1個またはそれ以上の天然産生ヌクレオチドの類似体による置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、無電荷連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマートなど)および荷電連結(例えば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアートなど)を有するもの、ペンダント部分を含むもの、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)、インターカレーターを有するもの(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレーターを含むもの(例えば、金属、放射性金属、ボロン、酸化的金属など)、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を有するもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、並びに、ポリヌクレオチドの非修飾形態が含まれる。さらに、糖に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えば、ホスホン酸基、リン酸基により置換されていてもよく、標準的な保護基により保護されていてもよく、または、活性化されてさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を形成してもよく、または、固体支持体に結合していてもよい。5'および3'末端のOHは、リン酸化されていてもよく、または、アミンまたは1~20個の炭素原子の有機キャップ形成基部分で置換されていてもよい。他のヒドロキシルは、標準的な保護基に誘導体化されていてもよい。ポリヌクレオチドは、当分野で一般的に知られているリボースまたはデオキシリボースの糖の類似体、例えば、2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ-または2'-アジド-リボース、炭素環式の糖類似体、アルファ-またはベータ-アノマーの糖、エピマーの糖、例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体および脱塩基ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドを含んでもよい。1個またはそれ以上のホスホジエステル連結は、代替的な連結基により置き換えられていてもよい。これらの代替的な連結基には、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、COまたはCH2(「フォルマセタル(formacetal)」)(ここで、各RまたはR'は、独立して、H、または、場合によりエーテル(-O-)連結を含んでもよい置換もしくは非置換アルキル(1~20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジル(araldyl)である)である実施態様が含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド中のすべての連結が同一である必要はない。上述の説明は、本明細書に記載される、RNAおよびDNAを含むすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0051】
当分野で知られている通り、抗体の「定常領域」は、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を、単独で、または組み合わせて、表す。
【0052】
本明細書で使用する場合、「実質的に純粋な」は、少なくとも50%純粋(即ち、混入物がない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、さらにより好ましくは少なくとも98%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋な物質を表す。
【0053】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の導入用ベクターのレシピエントであり得るか、それであったことのある、個別の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、天然、偶発的または計画的な突然変異のために、元の親細胞と必ずしも完全に同一でなくてもよい(形態またはゲノムDNA相補体において)。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドをインビボで遺伝子導入された細胞が含まれる。
【0054】
当分野で知られている通り、用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに使用される。「Fc領域」は、天然配列のFc領域または変異体のFc領域であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226またはPro230の位置のアミノ酸残基から、そのカルボキシル末端に渡ると定義される。Fc領域の残基の番号付けは、Kabatに記載されるEUインデックスのものである。Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般的に、CH2およびCH3の2個の定常領域を含む。
【0055】
当分野で使用される通り、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングを受けた形態を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、これらは主として細胞質ドメインで異なる類似のアミノ酸配列を有する。FcRは、Ravetch and Kinet, Ann. Rev. Immunol., 9:457-92, 1991; Capel et al., Immunomethods, 4:25-34, 1994; および de Haas et al., J. Lab. Clin. Med., 126:330-41, 1995 に概説されている。「FcR」は、母体のIgGの胎児への移行を担う新生児受容体(FcRn)も含む(Guyer et al., J. Immunol., 117:587, 1976; および Kim et al., J. Immunol., 24:249, 1994)。
【0056】
本明細書で抗体に関して使用される用語「競合する」は、第1の抗体の同族エピトープとの結合の結果が、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下で検出可能に減少するように、第1の抗体またはその抗原結合性断片(または部分)が、第2の抗体またはその抗原結合部分の結合と十分に同様にエピトープに結合することを意味する。第2の抗体のエピトープへの結合も、第1の抗体の存在下で検出可能に減少するという代替案も可能であるが、そうである必要はない。つまり、第2の抗体が第1の抗体のエピトープへの結合を阻害することなく、第1の抗体は第2の抗体のエピトープへの結合を阻害できる。しかしながら、同程度、高度または低度という阻害の程度に拘わらず、各抗体が他の抗体の同族エピトープまたはリガンドへの結合を検出可能に阻害する場合、抗体はそれらの各々のエピトープの結合について、相互に「交差競合する」と言われる。競合する抗体および交差競合する抗体の両方が本発明に含まれる。そのような競合または交差競合が生じるメカニズムに拘わらず(例えば、立体障害、立体構造変化または共通のエピトープもしくはその部分への結合)、当業者は、本明細書で提供される教示に基づいて、そのような競合および/または交差競合抗体が包含され、本明細書に開示される方法に有用であり得ることを理解するであろう。
【0057】
「機能的Fc領域」は、少なくとも1つの天然配列Fc領域のエフェクター機能を有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害;貪食;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御などが含まれる。そのようなエフェクター機能は、一般的に、Fc領域が結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と一緒になることを要求し、抗体エフェクター機能を評価するための当分野で知られている様々なアッセイを使用して評価できる。
【0058】
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「変異体Fc領域」は、少なくとも1個のアミノ酸修飾により天然配列Fc領域のものと異なるアミノ酸配列を含むが、少なくとも1つの天然配列Fc領域のエフェクター機能を保持する。いくつかの実施態様では、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1個のアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域中に、約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは、約1個~約5個のアミノ酸置換を有する。ここで、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と、好ましくは少なくとも約80%の配列同一性、最も好ましくは、少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する。
【0059】
用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に帰される生物学的活性を表す。抗体エフェクター機能の例には、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、Fc受容体結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、貪食、C1q結合および細胞表面受容体(例えばB細胞受容体;BCR)の下方制御(例えば、B細胞受容体)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第6,737,056号参照。そのようなエフェクター機能は、一般的に、Fc領域が結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と一緒になることを要求し、抗体エフェクター機能を評価するための当分野で知られている様々なアッセイを使用して評価できる。例示的なエフェクター機能の測定は、Fcγ3および/またはC1q結合によるものである。
【0060】
本明細書で使用される「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」または「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞に結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞に介在される反応を表す。関心のある分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載のものなどのインビトロADCCアッセイを使用して評価できる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)およびNK細胞が含まれる。代替的または付加的に、関心のある分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al., 1998, PNAS (USA), 95:652-656 に開示されるものなどの動物モデルにおいて、インビボで評価し得る。
【0061】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下での標的の溶解を表す。補体活性化経路は、補体系の第1の成分(C1q)が、同族抗原と複合体化した分子(例えば抗体)に結合することにより開始される。補体活性化を評価するために、CDCアッセイ、例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods, 202: 163 (1996) に記載のものを、実施し得る。
【0062】
本明細書で使用する場合、「処置」は、有益または所望の臨床的結果を得るためのアプローチである。本発明のために、有益または所望の臨床的結果には、新生物または癌性細胞の増殖の減少(または破壊)、新生物細胞の転移の阻害、EGFRvIIIを発現する腫瘍のサイズの縮小または減少、EGFRvIII関連疾患(例えば、がん)の緩解、EGFRvIII関連疾患(例えば、がん)に起因する症状の減少、EGFRvIII関連疾患(例えば、がん)に罹患する者の生活の質の向上、EGFRvIII関連疾患(例えば、がん)の処置に必要な他の薬物の用量の減少、EGFRvIII関連疾患(例えば、がん)の進行の遅延、EGFRvIII関連疾患(例えば、がん)の治療、および/または、EGFRvIII関連疾患(例えば、がん)を有する患者の生存の延長の1つまたはそれ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
「寛解」は、EGFRvIII抗体(単一特異性または二重特異性)を投与しない場合と比較した、1つまたはそれ以上の症状の軽減または改善を意味する。「寛解」は、症状の期間の短縮または減少も含む。
【0064】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、任意の1つまたはそれ以上の有益または所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的使用について、有益または所望の結果には、疾患(疾患の生化学的、組織学的および/または行動学的症状、その合併症、および、疾患の発生中に現れる中間的な病的形質を含む)のリスクの排除または減少、重篤度の軽減、または、発症の遅延が含まれる。治療的使用について、有益または所望の結果には、様々なEGFRvIII関連疾患または状態(例えば、多発性骨髄腫など)の1つまたはそれ以上の症状の発生率の低下または寛解、疾患の処置に必要な他の薬物の用量の減少、他の薬物の効果の増強、および/または、患者のEGFRvIII関連疾患の進行の遅延などの臨床的結果が含まれる。有効投与量は、1回またはそれ以上の投与回数で投与し得る。本発明のために、薬物、化合物または医薬組成物の有効投与量は、予防的または治療的処置を、直接的または間接的に達成するのに十分な量である。臨床に関して理解される通り、薬物、化合物または医薬組成物の有効投与量は、他の薬物、化合物または医薬組成物と共に達成されても、されなくてもよい。従って、「有効投与量」は、1種またはそれ以上の治療剤の投与に関して検討され得、単一の物質は、1種またはそれ以上の他の物質と共に、所望の結果が達成されるか、または達成され得る場合に、有効量で与えられたとみなされ得る。
【0065】
「個体」または「対象」は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットも含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、関心のある1つまたはそれ以上の遺伝子または配列を、宿主細胞に送達できる、好ましくは発現できる、コンストラクトを意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、陽イオン性縮合剤を伴うDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、ある種の真核生物細胞、例えば産生細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用する場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を導く核酸配列を意味する。発現制御配列は、恒常的または誘導可能プロモーターなどのプロモーター、またはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列と動作可能に連結している。
【0068】
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容し得る担体」または「医薬的に許容し得る賦形剤」には、有効成分と組み合わせられると、その成分の生物学的活性の保持を可能にし、対象の免疫系と非反応性である任意の物質が含まれる。例には、リン酸緩衝食塩水、水、油/水乳液などの乳液、様々な種類の湿潤剤などの任意の標準的な医薬担体が含まれるが、これらに限定されない。エアロゾルまたは非経口的投与に好ましい希釈剤は、リン酸緩衝食塩水(PBS)または生理食塩水(0.9%)である。そのような担体を含む組成物は、周知の従来法により製剤化される(例えば、 Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990; and Remington, The Science and Practice of Pharmacy 21st Ed. Mack Publishing, 2005 参照)。
【0069】
本明細書で使用される用語「アシル供与体であるグルタミンを含有するタグ」または「グルタミンタグ」は、トランスグルタミナーゼアミンアクセプターとして作用する1個またはそれ以上のGln残基を含むポリペプチドまたはタンパク質を表す。例えば、WO2012059882およびWO2015015448参照。
【0070】
用語「kon」または「ka」は、本明細書で使用する場合、抗体の抗原への会合の速度定数を表す。特に、速度定数(kon/kaおよびkoff/kd)および平衡解離定数は、抗体の全体(即ち、二価)と単量体のEGFRvIIIタンパク質(例えば、ヒスチジンタグ付加EGFRvIII融合タンパク質)を使用して測定される。
【0071】
用語「koff」または「kd」は、本明細書で使用する場合、抗体の抗体/抗原複合体からの解離の速度定数を表す。
用語「KD」は、本明細書で使用する場合、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を表す。
【0072】
本明細書における「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施態様を含む(そして、記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。数値範囲は、その範囲を定める数値を含む。一般的に言って、用語「約」は、その変数の示された値、および、示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)または示された値の10パーセント以内のいずれか大きい方に含まれるその変数のすべての値を表す。用語「約」が期間(年、月、週、日など)の文脈で使用される場合、用語「約」は、次の位の期間を1単位プラスまたはマイナスした期間(例えば、約1年は、11~13ヵ月を意味する;約6ヵ月は、6ヵ月プラスまたはマイナス1週間を意味する;約1週間は、6~8日間を意味する;など)、または、示された値の10パーセント以内の、いずれか大きい方の期間を意味する。
【0073】
本明細書において「……を含む」という語で実施態様が説明される場合は、「……からなる」および/または「実質的に……からなる」の用語で説明される他の類似の実施態様も提供されると理解される。
【0074】
本発明の態様または実施態様がマーカッシュグループまたは他の選択肢のグループ化の用語で説明される場合は、本発明は、まとめて列挙されたグループ全体のみならず、グループの個々の各構成要素、および、その大きいグループの1つまたはそれ以上の構成要素を欠くすべての可能なサブグループも包含する。本発明は、また、特許請求される発明における1つまたはそれ以上のグループの構成要素の明示的な除外も想定している。
【0075】
特記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。相容れない場合、定義を含む本明細書が統制する。本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「含む」または「含み」もしくは「含んでいる」などのその活用形は、言及される要素または要素のグループの包含を意味するが、任意の他の要素または要素のグループの除外を意味しないと理解される。文脈によりそうではないことを求められない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。
【0076】
本明細書に記載の方法および材料と類似のものも本発明の実施または試験において使用できるが、例示的な方法および材料が本明細書に記載される。材料、方法および実施例は、例示するのみであり、限定することを意図されていない。
【0077】
EGFRvIII抗体およびその製造方法
本発明は、EGFRvIII[例えば、ヒトEGFRvIII(例えば、受託番号:P00533 Feature Identifier VAR_066493, または GenBank Acession No. AJN69267;
【化1】
(配列番号201))]に結合し、以下の特徴の1つまたはそれ以上を特徴とする抗体を提供する:(a)EGFRvIIIのタンパク質発現を低減または下方調節する;(b)対象においてEGFRvIIIを発現する悪性細胞に関連する状態(例えば、多形神経膠芽腫などのがん)の1つまたはそれ以上の症状を処置、予防、寛解する;(c)対象(EGFRvIIIを発現する悪性腫瘍を有する者)における腫瘍の増殖または進行を阻害する;(d)対象(1つまたはそれ以上のEGFRvIIIを発現する悪性細胞を有する者)におけるEGFRvIIIを発現するがん(悪性)細胞の転移を阻害する;(e)EGFRvIIIを発現する腫瘍の退縮(例えば、長期退縮)を誘導する;(f)EGFRvIIIを発現する悪性細胞における細胞傷害活性を発揮する;(g)他の未だ同定されていない因子とEGFRvIIIの相互作用を遮断する;および/または(h)近傍の非EGFRvIII発現悪性細胞を殺傷するか、またはその増殖を阻害するバイスタンダー効果を誘導する。
【0078】
ある態様では、EGFRvIIIに特異的に結合する単離された抗体が提供され、その抗体は、(a)(i)配列番号62、63、64、74、75、76、80、81、82、88、89、90、93、94、95、99、100、101、109、110、111、115、116、117、121、122、123、132、133、134、137、138、139、143、144、または145で示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号65、66、68、69、70、71、77、78、83、84、86、87、91、92、96、97、98、102、103、105、106、112、113、118、119、124、125、127、128、130、131、135、136、140、141、146、147、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、または237で示される配列を含むVH CDR2;および、iii)配列番号67、72、73、79、85、104、107、108、114、120、126、129、142、148、219、220、221、222、223、または236で示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および/または、(b)(i)配列番号149、154、156、159、162、165、166、168、169、170、171、173、174、176、178、181、182、185、187、190、192、195、198、238、または239で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号150、152、155、157、160、163、172、175、179、183、186、188、191、193、196、または199で示される配列を含むVL CDR2;および、(iii)配列番号151、153、158、161、164、167、177、180、184、189、194、197、または200で示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0079】
別の態様では、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、30、32、34、35、37、39、41、43、44、46、48、50、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、202、203、204、205、206、207、208、209、210、214、216、217または218で示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含むVH領域;および/または、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、29、31、33、36、38、40、42、45、47、49、51、211、212、213または215で示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含むVL領域を含む、EGFRvIIIに特異的に結合する単離された抗体が提供される。
【0080】
いくつかの実施態様では、表1に列挙される部分的軽鎖配列のいずれか、および/または、表1に列挙される部分的重鎖配列のいずれかを有する抗体が提供される。表1中、下線を付した配列は Kabat によるCDR配列、太字の配列は Chothia によるCDR配列である。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
EGFRvIIIに対する抗体の抗原結合ドメインのCDR部分(Chothia、KabatのCDR、および、CDR接触領域)も提供される。CDR領域の決定は、十分に当業者の技能の範囲内である。いくつかの実施態様では、CDRは、Kabat と Chothia のCDRの組合せ(「組合せのCR」または「拡張型CDR」とも呼ばれる)であり得ると理解される。いくつかの実施態様では、CDRは KabatのCDRである。他の実施態様では、CDRは Chothia のCDRである。換言すると、1より多いCDRを伴う実施態様では、CDRは、Kabat、Chothia、組合せのCDR、またはこれらの組合せのいずれでもよい。表2は、本明細書で提供されるCDR配列の例を提供する。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
いくつかの実施態様では、本発明は、m62G7、h62G7、h62G7-H14/L1-DV、h62G7-EQ/L6、42G9、32A10、20B9、14C11、21E11、49B11、46E10、12H6、19A9、21E7、11B11、12B2、11F10、17G11、29D5、30D8、20E12、26B9、32G8、34E7、20G5、C6、B5、42G9-1、32A10-1、20B9-1、14C11-1、21E11-1、49B11-1、46E10-1、12H6-1、19A9-1、21E7-1、11B11-1、12B2-1、11F10-1、17G11-1、29D5-1、30D8-1、20E12-1、26B9-1、32G8-1、34E7-1、20G5-1、C6-1およびB5-1を含む、結合し、本明細書に記載の抗体と競合する抗体を提供する。
【0113】
いくつかの実施態様では、本発明は、また、CDR接触領域に基づいて、EGFRvIII抗体に対する抗体のCDR部分を提供する。CDR接触領域は、抗原に対する抗体の特異性をもたらす抗体の領域である。一般に、CDR接触領域には、CDRおよび、特異的抗原に結合する抗体の適正なループ構造を維持するために拘束されるバーニアゾーン(Vernier zone)の残基の位置が含まれる。例えば、Makabe et al., J. Biol. Chem., 283:1156-1166, 2007 参照。CDR接触領域の決定は、十分に当業者の技能の範囲内である。
【0114】
本明細書に記載のEGFRvIII抗体のEGFRvIII(ヒトEGFRvIII(例えば、(配列番号201)など)に対する結合親和性(KD)は、約0.001~約5000nMであり得る。いくつかの実施態様では、結合親和性は、約5000nM、4500nM、4000nM、3500nM、3000nM、2500nM、2000nM、1789nM、1583nM、1540nM、1500nM、1490nM、1064nM、1000nM、933nM、894nM、750nM、705nM、678nM、532nM、500nM、494nM、400nM、349nM、340nM、353nM、300nM、250nM、244nM、231nM、225nM、207nM、200nM、186nM、172nM、136nM、113nM、104nM、101nM、100nM、90nM、83nM、79nM、74nM、54nM、50nM、45nM、42nM、40nM、35nM、32nM、30nM、25nM、24nM、22nM、20nM、19nM、18nM、17nM、16nM、15nM、12nM、10nM、9nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.3nM、0.1nM、0.01nM、または0.001nMのいずれかである。いくつかの実施態様では、結合親和性は、約5000nM、4000nM、3000nM、2000nM、1000nM、900nM、800nM、250nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、10nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5nM、4.5nM、4nM、3.5nM、3nM、2.5nM、2nM、1.5nM、1nM、または0.5nMのいずれかより低い。
【0115】
二重特異性抗体、即ち、少なくとも2個の異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体は、本明細書に記載の抗体を使用して調製できる。二重特異性抗体の作製方法は、当分野で知られている(例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology 121:210, 1986 参照)。伝統的には、二重特異性抗体の組換え的製造は、2個の免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づくものであり、2個の重鎖が異なる特異性を有した(Millstein and Cuello, Nature 305, 537-539, 1983)。従って、ある態様では、標的抗原(例えば、EGFRvIII)に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによりヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員できる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む、全長ヒト抗体である二重特異性抗体が提供される。
【0116】
ヒト免疫エフェクター細胞は、当分野で知られている様々な免疫エフェクター細胞のいずれであってもよい。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を含むがこれらに限定されない、ヒトリンパ球系細胞系列の構成要素であり得る。免疫エフェクター細胞は、また、例えば、限定されずに、単核球、好中性顆粒球および樹状細胞を含むがこれらに限定されない、ヒト骨髄系列の構成要素であり得る。そのような免疫エフェクター細胞は、エフェクター抗原の結合により活性化されると、標的細胞に対する細胞傷害性またはアポトーシス作用、またはその他の望ましい作用を有し得る。
【0117】
エフェクター抗原は、ヒト免疫エフェクター細胞に発現される抗原(例えば、タンパク質またはポリペプチド)である。ヘテロ二量体タンパク質(例えば、ヘテロ二量体抗体または二重特異性抗体)により結合され得るエフェクター抗原の例には、ヒトCD3(またはCD3(表面抗原分類)複合体)、CD16、NKG2D、NKp46、CD2、CD28、CD25、CD64およびCD89が含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
標的細胞は、ヒトに対して生得性または外来性である細胞であり得る。生得性の標的細胞では、細胞は、悪性細胞に形質転換したものであってもよく、病的に改変されたもの(例えば、ウイルス、原虫または細菌に感染した生得的な標的細胞)であってもよい。外来性の標的細胞では、細胞は、細菌、原虫またはウイルスなどの、侵入する病原体である。
【0119】
標的抗原は、病的状態(例えば、炎症性疾患、増殖性疾患(例えば、がん)、免疫疾患、神経疾患、神経変性疾患、自己免疫疾患、感染性疾患(例えば、ウイルス感染または寄生虫感染)、アレルギー反応、移植片対宿主病または宿主対移植片病)において、標的細胞上に発現される。標的抗原は、エフェクター抗原ではない。いくつかの実施態様では、標的抗原はEGFRvIIIである。
【0120】
いくつかの実施態様では、標的抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによりヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員できる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む、全長ヒト抗体である二重特異性抗体が提供され、ここで、第1の抗体可変ドメインは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、30、32、34、35、37、39、41、43、44、46、48、50、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、202、203、204、205、206、207、208、209、210、214、216、217または218で示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および/または、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、29、31、33、36、38、40、42、45、47、49、51、211、212、213または215で示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0121】
いくつかの実施態様では、標的抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによりヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員できる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む、全長ヒト抗体である二重特異性抗体が提供され、ここで、第1の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号62、63、64、74、75、76、80、81、82、88、89、90、93、94、95、99、100、101、109、110、111、115、116、117、121、122、123、132、133、134、137、138、139、143、144、または145で示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号65、66、68、69、70、71、77、78、83、84、86、87、91、92、96、97、98、102、103、105、106、112、113、118、119、124、125、127、128、130、131、135、136、140、141、146、147、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、または237で示される配列を含むVH CDR2;および、iii)配列番号67、72、73、79、85、104、107、108、114、120、126、129、142、148、219、220、221、222、223、または236で示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および/または、(b)(i)配列番号149、154、156、159、162、165、166、168、169、170、171、173、174、176、178、181、182、185、187、190、192、195、198、238、または239で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号150、152、155、157、160、163、172、175、179、183、186、188、191、193、196、または199で示される配列を含むVL CDR2;および、(iii)配列番号151、153、158、161、164、167、177、180、184、189、194、197、または200で示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0122】
いくつかの実施態様では、第2の抗体可変ドメインは、配列番号240で示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および/または、配列番号241で示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0123】
いくつかの実施態様では、第2の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号244、110または245で示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号246または247で示される配列を含むVH CDR2;および、iii)配列番号248で示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および/または、(b)(i)配列番号249で示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号250で示される配列を含むVL CDR2;および、(iii)配列番号251で示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0124】
表3は、CD3に特異的な、第2の抗体可変ドメインの特定のアミノ酸および核酸配列を示す。表3において、下線を付した配列は Kabat によるCDR配列、太字の配列は Chothia によるCDR配列である。
【0125】
【0126】
表4は、CD3に特異的な、第2の抗体可変ドメインのCDR配列の例を示す。
表4
【表4】
【0127】
いくつかの実施態様では、本明細書で提供されるCD3特異的可変ドメインを含む二重特異性抗体は、すべての目的で参照により本明細書に導入される米国特許公開番号20160297885で提供される抗CD3配列を含む。
【0128】
二重特異性抗体を作製するためのあるアプローチによれば、望ましい結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常領域配列に融合させる。好ましくは、少なくともヒンジ、CH2およびCH3領域の部分を含む免疫グロブリン重鎖定常領域と融合させる。少なくとも融合体の1つに、軽鎖の結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)が存在するのが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、および、所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適する宿主の生物に同時導入する。これは、3つのポリペプチド鎖を不均等な割合で構築に使用することが最適な収率をもたらす実施態様において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調節することに、多大な柔軟性を与える。しかしながら、同じ割合の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率をもたらす場合、または、割合に特に意味がない場合、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入できる。
【0129】
他のアプローチでは、二重特異性抗体は、一方のアームにおける第一の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および、他方のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)で構成される。二重特異性分子の半分にのみ免疫グロブリン軽鎖があるこの非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を望まれない免疫グロブリン鎖の組合せから分離することを容易にする。このアプローチは、PCT公開番号WO94/04690に記載されている。
【0130】
他のアプローチでは、二重特異性抗体は、一方のアームの第1のヒンジ領域にアミノ酸修飾を含み、第1のヒンジ領域において置換/交換されたアミノ酸は、他方のアームにある第2のヒンジ領域の対応するアミノ酸と反対の電荷を有する。このアプローチは、国際特許出願番号PCT/US2011/036419(WO2011/143545)に記載されている。
【0131】
他のアプローチでは、所望のヘテロ多量体またはヘテロ二量体タンパク質(例えば、二重特異性抗体)の形成は、第1および第2の免疫グロブリン様Fc領域(例えば、ヒンジ領域および/またはaCH3領域)の間の境界面を変更または操作することにより増強される。このアプローチでは、二重特異性抗体はCH3領域を含み得、CH3領域は、一緒に相互作用してCH3境界面を形成する第1のCH3ポリペプチドおよび第2のCH3ポリペプチドを含み、CH3境界面内の1つまたはそれ以上のアミノ酸は、ホモ二量体形成を不安定化し、静電気的にホモ二量体形成に好ましくない。このアプローチは、国際特許出願番号PCT/US2011/036419(WO2011/143545)に記載されている。
【0132】
他のアプローチでは、二重特異性抗体は、トランスグルタミナーゼの存在下で、あるエピトープ(例えば、EGFRvIII)に対する抗体に設計されたグルタミンを含有するペプチドタグを一方のアームに、第2のエピトープに対する第2の抗体に設計された他のペプチドタグ(例えば、Lysを含有するペプチドタグまたは反応性内在性Lys)を他方のアームに使用して、生成できる。このアプローチは、国際特許出願番号PCT/IB2011/054899(WO2012/059882)に記載されている。
【0133】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のヘテロ二量体タンパク質(例えば、二重特異性抗体)は、全長ヒト抗体を含み、二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインが標的抗原(例えば、EGFRvIII)に特異的に結合し、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原(例えば、CD3)に特異的に結合することによりヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員できる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含み、ヘテロ二量体タンパク質の第1および第2の抗体可変ドメインは、アミノ酸修飾を、ヒトIgG2(配列番号290)のヒンジ領域の223、225および228の位置(例えば、(C223EまたはC223R)、(E225R)および(P228EまたはP228R))、CH3領域の409または368の位置(例えば、K409RまたはL368E(EUナンバリングスキーム(numbering scheme)))に含む。
【0134】
いくつかの実施態様では、ヘテロ二量体タンパク質の第1および第2の抗体可変ドメインは、アミノ酸修飾を、ヒトIgG1(配列番号291)のヒンジ領域の221および228の位置(例えば、(D221RまたはD221E)および(P228RまたはP228E))およびCH3領域の409または368の位置(例えば、K409RまたはL368E(EUナンバリングスキーム))に含む。
【0135】
いくつかの実施態様では、ヘテロ二量体タンパク質の第1および第2の抗体可変ドメインは、アミノ酸修飾を、ヒトIgG4(配列番号292)のヒンジ領域の228の位置(例えば、(P228EまたはP228R))およびCH3領域の409または368の位置(例えば、R409またはL368E(EUナンバリングスキーム))に含む。
【0136】
ヒトIgG1、IgG2およびIgG4の野生型Fc領域のアミノ酸配列を以下に挙げる:
IgG2(配列番号290)
【化2】
【0137】
【0138】
【0139】
本発明において有用な抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、一本鎖(ScFv)、これらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質(例えば、ドメイン抗体)、ヒト化抗体、必要とされる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成(抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体および共有結合的に改変された抗体を含む)が含まれる。抗体は、マウス、ラット、ヒトまたは任意の他の起源のものであり得る(キメラまたはヒト化抗体を含む)。
【0140】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のEGFRvIII抗体は、モノクローナル抗体である。例えば、EGFRvIII抗体は、ヒト化モノクローナル抗体またはキメラモノクローナル抗体である。
【0141】
いくつかの実施態様では、抗体は、例えば、限定ではなく、免疫応答を誘発する潜在能力が高い定常領域などの、改変された定常領域を含む。例えば、定常領域は、Fcガンマ受容体、例えば、FcγRI、FcγRIIAまたはFcγIIIへの高い親和性を有するように改変され得る。
【0142】
いくつかの実施態様では、抗体は、免疫的に不活性な、つまり、免疫応答を誘発する潜在能力が低い定常領域などの、改変された定常領域を含む。いくつかの実施態様では、定常領域は、Eur. J. Immunol., 29:2613-2624, 1999;PCT出願番号PCT/GB99/01441;および/または英国特許出願番号98099518に記載の通りに改変される。Fcは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3またはヒトIgG4であり得る。Fcは、A330P331からS330S331への変異を含むヒトIgG2(IgG2Δa)であり得る(ここで、アミノ酸残基は野生型IgG2配列を参照して番号付けられている)。Eur. J. Immunol., 29:2613-2624, 1999。いくつかの実施態様では、抗体は、以下の変異を含むIgG4の定常領域を含む(Armour et al., Molecular Immunology 40 585-593, 2003):E233F234L235からP233V234A235(IgG4Δc)(ここで、番号は野生型IgG4を参照したものである)。また他の実施態様では、Fcは、E233F234L235からP233V234A235およびG236の欠損を含むヒトIgG4(IgG4Δb)である。他の実施態様では、Fcは、ヒンジを安定化するS228からP228への変異を含む、任意のヒトIgG4Fc(IgG4、IgG4ΔbまたはIgG4Δc)である(Aalberse et al., Immunology 105, 9-19, 2002)。他の実施態様では、Fcは、グリコシル化されたFcであり得る。
【0143】
いくつかの実施態様では、定常領域は、オリゴ糖結合残基(Asn297など)、および/または、定常領域のグリコシル化認識配列の一部である隣接する残基を変異させることにより脱グリコシル化されている。いくつかの実施態様では、定常領域は、N結合型グリコシル化について、酵素的に脱グリコシル化される。定常領域は、N結合型グリコシル化について、酵素的に、または、グリコシル化できない宿主細胞における発現により、脱グリコシル化され得る。
【0144】
いくつかの実施態様では、定常領域は、Fcガンマ受容体結合を除去または低減する、改変された定常領域を有する。例えば、Fcは、変異D265を含むヒトIgG2であり得る(ここで、アミノ酸残基は野生型IgG2配列(配列番号290)を参照して番号付けられている)。従って、いくつかの実施態様では、定常領域は、配列番号252:
【化5】
で示される配列を有する、改変された定常領域を有する。
【0145】
配列番号252で示される配列をコードする核酸を、配列番号253
【化6】
に示す。
【0146】
いくつかの実施態様では、定常領域は、配列番号254:
【化7】
で示される配列を有する、改変された定常領域を有する。
【0147】
配列番号254で示される配列をコードする核酸を、配列番号255
【化8】
に示す。
【0148】
ヒトカッパ定常領域のアミノ酸を、配列番号256
【化9】
に示す。配列番号256の配列をコードする核酸を、配列番号257
【化10】
に示す。
【0149】
EGFRvIIIに対する抗体の結合親和性を決定する1つの方法は、二価抗体の単量体EGFRvIIIタンパク質への結合親和性を測定することによるものである。EGFRvIII抗体の親和性は、予め固定化された抗マウスFcまたは抗ヒトFcを備える表面プラズモン共鳴(Biacore(商標)3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、Biacore(商標) INC, Piscataway NJ))により、HBS-EPランニング緩衝液(0.01M HEPES、pH7.4、0.15 NaCl、3mM EDTA、0.005%v/v Surfactant P20)を用いて、測定できる。単量体8-ヒスチジンタグ付加ヒトEGFRvIII細胞外ドメインを0.5ug/mL未満の濃度にHBS-EP緩衝液中に希釈し、様々な接触時間を用いて個々のチップチャネルへ注入して、詳細な反応速度論的試験に関する50~200レスポンスユニット(RU)またはスクリーニングアッセイに関する800~1,000RUのいずれかの2つの範囲の抗原密度を達成できる。再生試験については、25%v/vエタノール中の25mM NaOHが、200回を超える注入に対して、チップ上のEGFRvIII抗体の活性を保持したまま、結合したEGFRvIIIタンパク質を効果的に除去することが示された。典型的には、精製した8-ヒスチジンタグ付加EGFRvIII試料の連続希釈物(予想されるKDの0.1~10倍の濃度域)を100μL/分で1分間注入し、最大2時間の解離時間をとる。EGFRvIIIタンパク質の濃度は、8-ヒスチジンタグ付加EGFRvIIIタンパク質の配列特異的吸光係数に基づいて、280nmでの吸光度により測定される。反応速度論的結合速度(konまたは ka))および解離速度(koffまたは kd)は、BIAevaluationプログラムを用いて、1:1 Langmuir 結合モデル(Karlsson, R. Roos, H. Fagerstam, L. Petersson, B. (1994). Methods Enzymology 6. 99-110)にデータを全体的にフィットさせることにより、同時に得られる。平衡解離定数(KD)の値は、koff/konとして算出される。このプロトコルは、ヒトEGFRvIII、別の哺乳動物のEGFRvIII(マウスEGFRvIII、ラットEGFRvIIIまたは霊長類EGFRvIIIなど)、並びに、異なる型のEGFRvIII(例えば、グリコシル化されたEGFRvIII)を含むあらゆる単量体EGFRvIIIに対する、抗体の結合親和性の測定における使用に適している。抗体の結合親和性は、一般に、25℃で測定されるが、37℃で測定してもよい。
【0150】
本明細書に記載の抗体は、当分野で知られている任意の方法によって作製し得る。ハイブリドーマ細胞株を産生するために、宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは、本明細書において詳述する通り、抗体刺激および抗体産生に関して確立されている従来技術に概して沿うものである。ヒトおよびマウス抗体の産生のための一般的技法は、当分野で知られており、かつ/または、本明細書に記載されている。
【0151】
ヒトを含む任意の哺乳動物対象または抗体産生細胞を操作して、ヒトを含む哺乳動物、ハイブリドーマ細胞株の作製の基礎とし得ることが企図される。典型的には、宿主動物に対して、本明細書に記載のものを含めたある量の免疫原を、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内および/または皮内に接種する。
【0152】
ハイブリドーマは、Kohler, B. and Milstein, C., Nature 256:495-497, 1975 に記載された、または、Buck, D. W., et al., In Vitro, 18:377-381, 1982 により改変された、一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を用いて、リンパ球および不死化骨髄腫細胞から作製できる。X63-Ag8.653、および、the Salk Institute, Cell Distribution Center, San Diego, Calif., USA から得られるものを含むが、これらに限定されない入手可能な骨髄腫株を、ハイブリダイゼーションに使用できる。一般に、この技法は、ポリエチレングリコールなどの融合物質を用いて、または当業者に周知の電気的手段によって、骨髄腫細胞とリンパ系細胞を融合させることを伴う。融合後、融合培地から細胞を分離し、ハイブリダイズしていない親細胞を取り除くために、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地などの選択増殖培地中で増殖させる。モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために、本明細書に記載の任意の培地を、血清を添加して、または添加せずに、用いることができる。細胞融合技術の別の代替法として、EBV不死化B細胞を用いて本発明のモノクローナル抗体を産生し得る。ハイブリドーマを増殖させ、サブクローニングし、所望により、従来のイムノアッセイ手順(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイまたは蛍光イムノアッセイ)によって抗免疫原活性について上清を分析する。
【0153】
抗体の供給源として使用され得るハイブリドーマは、すべての誘導体、EGFRvIIIに特異的なモノクローナル抗体またはその部分を産生する親ハイブリドーマの子孫細胞を包含する。
【0154】
このような抗体を産生するハイブリドーマは、公知の手順を用いて、インビトロまたはインビボで増殖させ得る。モノクローナル抗体は、所望により、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィーおよび限外濾過などの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培地または体液から単離され得る。望ましくない活性が存在する場合には、例えば、固相に付着させた免疫原からできた吸着剤に調製物を通し、免疫原から所望の抗体を溶出または放出させることによって、除去できる。ヒトEGFRvIIIを発現する細胞、ヒトEGFRvIIIタンパク質、または、二官能性もしくは誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2もしくはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は、異なるアルキル基である)を用いて、免疫化対象の種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンもしくはダイズトリプシン阻害剤に結合させた標的アミノ酸配列を含有する断片により、宿主動物を免疫化すると、抗体(例えば、モノクローナル抗体)集団を得ることができる。
【0155】
所望により、目的の抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)の配列を決定し得、次いで、発現または増殖のために、ポリヌクレオチド配列をベクターにクローニングし得る。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞中のベクターに維持され得、次いで、宿主細胞を増殖させ、将来の使用のために凍結できる。細胞培養における組換えモノクローナル抗体の産生は、当分野で知られている手段により、B細胞から抗体の遺伝子をクローニングすることにより実施できる。例えば、Tiller et al., J. Immunol. Methods 329, 112, 2008; 米国特許第7,314,622号参照。
【0156】
代替法では、抗体を「ヒト化」するか、または抗体の親和性もしくは他の特徴を改善する遺伝子操作のために、ポリヌクレオチド配列を使用し得る。例えば、抗体がヒトにおける臨床試験および処置において用いられる場合、免疫応答を回避するために、ヒト定常領域にさらに類似するように、定常領域を遺伝子操作し得る。EGFRvIIIへのより高い親和性、およびEGFRvIII阻害のより高い有効性を得るために、抗体配列を遺伝子的に操作することが望ましい場合がある。
【0157】
モノクローナル抗体のヒト化には、4つの一般的工程がある。(1)出発抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび予想されるアミノ酸配列の決定、(2)ヒト化抗体の設計、即ち、ヒト化プロセスにおいて使用する抗体フレームワーク領域の決定、(3)実際のヒト化方法/技法、並びに(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。例えば、米国特許第4,816,567号;第 5,807,715号;第5,866,692号;第6,331,415号;第5,530,101号;第5,693,761号;第5,693,762号;第5,585,089号;および、第6,180,370号参照。
【0158】
非ヒト免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を含む「ヒト化」抗体分子については、齧歯類または改変齧歯類V領域およびそれらの関連CDRをヒト定常領域に融合させたキメラ抗体を含め、多数記載されている。例えば、Winter et al. Nature 349:293-299, 1991, Lobuglio et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:4220-4224, 1989, Shaw et al. J Immunol. 138:4534-4538, 1987, および Brown et al. Cancer Res. 47:3577-3583, 1987 参照。他の参考文献には、適切なヒト抗体定常領域との融合前に、ヒト支持フレームワーク領域(FR)にグラフトされた齧歯類CDRについて記載されている。例えば、Riechmann et al. Nature 332:323-327, 1988, Verhoeyen et al. Science 239:1534-1536, 1988, および Jones et al. Nature 321:522-525, 1986 参照。別の参考文献は、組み換え的に操作された齧歯類フレームワーク領域によって支持された齧歯類CDRについて記載している。例えば、欧州特許公開第0519596号参照。これらの「ヒト化」分子は、ヒトレシピエントにおいて、これらの部分の治療適用の持続期間および有効性を制限する、齧歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答を最小限にするように設計される。例えば、免疫学的に不活性である(例えば、補体溶解を誘発しない)ように抗体定常領域を操作できる。例えば、PCT公開第PCT/GB99/01441号;英国特許出願第9809951.8号参照。他の利用し得る抗体をヒト化する方法は、Daugherty et al., Nucl. Acids Res. 19:2471-2476, 1991 並びに米国特許第6,180,377号、第6,054,297号、第5,997,867号、第5,866,692号、第6,210,671号および第6,350,861号並びにPCT公開第WO01/27160号に開示されている。
【0159】
上記で議論されたヒト化抗体に関する一般原理は、例えば、イヌ、ネコ、霊長類、ウマおよびウシで使用するために抗体をカスタマイズするのにも適用できる。さらに、本明細書に記載の抗体をヒト化する1つまたはそれ以上の態様、例えば、CDRグラフト、フレームワーク変異導入およびCDR変異導入を、併用し得る。
【0160】
ある変法では、特異的ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された購入できるマウスを用いることによって、完全ヒト抗体を得てもよい。より望ましい(例えば、完全ヒト抗体)またはより強い免疫応答をもたらすように設計された遺伝子組換え動物も同様に、ヒト化またはヒト抗体の作製に使用し得る。このような技術の例は、Abgenix, Inc. (Fremont, CA) のXenomouse(商標)並びに Medarex, Inc. (Princeton, NJ) の HuMAb-Mouse(登録商標)および TC Mouse(商標)である。
【0161】
ある代替法では、当分野で知られている任意の方法を使用して、抗体を組み換え的に作製し、発現させてもよい。別の代替法では、ファージディスプレイ技術によって、抗体を組み換え的に作製してもよい。例えば、米国特許第5,565,332号、第5,580,717号、第5,733,743号および第6,265,150、並びにWinter et al., Annu. Rev. Immunol. 12:433-455, 1994参照。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., Nature 348:552-553, 1990)を用いて、免疫化していないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体断片をインビトロで作製できる。この技法に従って、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdなどの繊維状バクテリオファージのメジャーまたはマイナーのいずれかのコートタンパク質遺伝子にインフレームでクローニングし、機能性抗体断片としてファージ粒子の表面上に提示させる。繊維状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAのコピーを含有しているので、抗体の機能性に基づく選択により、当該特性を示す抗体をコードする遺伝子も選択される。従って、ファージは、B細胞の性質の一部を再現するものである。ファージディスプレイは、種々の形式で実施することができ、概説については、例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571, 1993 参照。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源をファージディスプレイに使用できる。Clackson et al., Nature 352:624-628, 1991 は、免疫化したマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小ランダムコンビナトリアルライブラリーから多種多様な抗オキサゾロン抗体を単離した。免疫化していないヒトドナー由来のV遺伝子レパートリーを構築することができ、Mark et al., J. Mol. Biol. 222:581-597, 1991, または Griffith et al., EMBO J. 12:725-734, 1993 に記載の技法に従って、多種多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を本質的に単離できる。自然な免疫応答において、抗体遺伝子は、高い割合で突然変異を蓄積する(体細胞高頻度突然変異)。導入された変化の一部は、より高い親和性を付与し、その後の抗原刺激において、高親和性表面免疫グロブリンを提示するB細胞が優先的に複製され、分化する。この自然の過程は、「鎖シャフリング」として知られる技法を用いることによって再現できる。(Marks et al., Bio/Technol. 10:779-783, 1992)。この方法において、ファージディスプレイによって得られた「一次」ヒト抗体の親和性を、その重鎖および軽鎖V領域遺伝子を、非免疫化ドナーから取得したVドメイン遺伝子の天然変異体(レパートリー)のレパートリーで順次置き換えることによって、改善できる。この技法により、pM~nM範囲の親和性を有する抗体および抗体断片の作製が可能となる。非常に大きいファージ抗体レパートリー(「マザーオブオールライブラリー(the mother-of-all libraries)」としても知られる)を作製するための戦略は、Waterhouse et al., Nucl. Acids Res. 21:2265-2266, 1993 に記載されている。遺伝子シャフリングを用いて齧歯類抗体からヒト抗体を得ることも可能であり、この場合、ヒト抗体は、出発齧歯類抗体と類似の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従って、ファージディスプレイ技法によって得られた齧歯類抗体の重鎖または軽鎖Vドメイン遺伝子を、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換えることで、齧歯類-ヒトキメラが作製される。抗原の選択により、機能性抗原結合部位を復元できるヒト可変領域が単離される。即ち、エピトープがパートナーの選択を支配する(刷り込む)。残りの齧歯類Vドメインを置き換えるために、このプロセスを繰り返すと、ヒト抗体が得られる(PCT公開第WO93/06213号参照)。CDRグラフティングによる齧歯類抗体の従来のヒト化とは異なり、この技法は、齧歯類起源のフレームワークまたはCDR残基を有さない、完全なヒト抗体を提供する。
【0162】
抗体は、宿主動物から抗体および抗体産生細胞をまず分離し、遺伝子配列を得、その遺伝子配列を用いて宿主細胞(例えば、CHO細胞)中で抗体を組み換え的に発現させることによって、組み換え的に作製してもよい。用い得る別の方法は、植物(例えば、タバコ)またはトランスジェニックミルクにおいて抗体配列を発現させることである。植物またはミルクにおいて組み換え的に抗体を発現させる方法は、開示されている。例えば、Peeters, et al. Vaccine 19:2756, 2001; Lonberg, N. and D. Huszar Int. Rev. Immunol 13:65, 1995; および Pollock, et al., J Immunol Methods 231:147, 1999 参照。抗体の誘導体、例えば、ヒト化、一本鎖などを作製するための方法は、当分野で知られている。
【0163】
イムノアッセイおよび蛍光標識細胞分取(FACS)などのフローサイトメトリー分取技術を用いて、EGFRvIIIまたは目的の腫瘍抗原に特異的な抗体を単離することもできる。
【0164】
本明細書に記載の抗体は、多種多様な担体に結合させてもよい。担体は、活性および/または不活性であってよい。周知の担体の例には、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、ガラス、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース並びにマグネタイトが含まれる。担体の性質は、本発明のために、可溶性または不溶性のいずれであってもよい。当業者は、抗体に結合させる他の好適な担体を認識しており、または慣用的な実験を用いてそれを確認できるであろう。いくつかの実施態様において、担体は、心筋を標的にする部分を含む。
【0165】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に、従来の手順を用いて、単離し、配列決定される(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。ハイブリドーマ細胞は、こうしたDNAの好ましい供給源として役立つ。DNAを単離したら、そのDNAを発現ベクター内(PCT公開第WO87/04462号に開示の発現ベクターなど)に配置し、次いで、これを、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または他の免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクションして、組み換え宿主細胞中にてモノクローナル抗体の合成を達成する。例えば、PCT公開第WO87/04462号参照。DNAはまた、例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常領域をコードする配列を相同的ネズミ配列に代えて用いるか(Morrison et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 81:6851, 1984)、または免疫グロブリンをコードする配列に免疫グロブリンではないポリペプチドをコードする配列のすべてもしくは一部を共有結合させることによって、改変してもよい。このようにして、本明細書のモノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体を作製する。
【0166】
本明細書に記載のEGFRvIII抗体は、EGFRvIII発現レベルの減少を検出および/または測定できる当分野で知られている方法を使用して、同定または特性評価できる。いくつかの実施態様では、EGFRvIII抗体は、候補物質をEGFRvIIIとインキュベートし、結合および/または付随するEGFRvIII発現レベルの減少をモニターすることにより同定される。結合アッセイは、精製したEGFRvIIIポリペプチドを用いるか、またはEGFRvIIIポリペプチドを自然に発現する細胞もしくはEGFRvIIIポリペプチドを発現するように形質転換した細胞を用いて実施し得る。ある実施態様において、結合アッセイは、競合結合アッセイであり、この場合、EGFRvIII結合に関して、既知の抗EGFRvIII抗体と競合する候補抗体の能力が評価される。アッセイは、ELISA形式を含む各種の形式で実施され得る。
【0167】
最初の同定の後、候補EGFRvIII抗体の活性を、標的とする生物活性を試験するのに知られているバイオアッセイによってさらに確認し、正確にすることができる。あるいは、バイオアッセイを用いて、候補を直接スクリーニングできる。抗体を同定し、特性評価するための方法のいくつかは、実施例にて詳細に記載する。
【0168】
EGFRvIII抗体は、当分野で周知の方法を用いて、特性評価し得る。例えば、1つの方法は、結合するエピトープを同定する方法、即ち「エピトープマッピング」である。タンパク質上のエピトープ位置のマッピングおよび特性評価のために、抗体-抗原複合体の結晶構造の解明、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイおよび合成ペプチド系アッセイを含め、当分野で知られている多くの方法があり、例えば、Harlow and Lane, Using Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1999 の第11章に記載されている通りである。さらなる例として、エピトープマッピングを用いて、抗体が結合する配列を決定できる。エピトープマッピングは、様々な供給源、例えば、Pepscan Systems(Edelhertweg 15, 8219 PH Lelystad, The Netherlands)から購入できる。エピトープは、直線状エピトープ、即ち、ひと続きのアミノ酸中に含有されているエピトープであっても、ひと続きのアミノ酸中に必ずしも含有されていない場合もあるアミノ酸の三次元相互作用によって形成された立体構造エピトープであってもよい。様々な長さのペプチド(例えば、少なくとも4~6のアミノ酸長)を単離または合成でき(例えば、組み換え的に)、EGFRvIIIまたは他の腫瘍抗原の抗体との結合アッセイに用いることができる。他の例では、EGFRvIII抗体が結合するエピトープは、EGFRvIII配列に由来する重複ペプチドを使用し、EGFRvIII抗体による結合を決定することにより、体系的スクリーニングにおいて決定できる。遺伝子断片発現アッセイでは、EGFRvIIIをコードするオープンリーディングフレームをランダムにまたは特定の遺伝子構造により断片化し、EGFRvIIIの発現断片と試験対象抗体との反応性を決定する。遺伝子断片は、例えば、PCRによって作製し、次いで、放射性アミノ酸の存在下で、インビトロで転写し、タンパク質に翻訳し得る。次いで、抗体と放射性標識したEGFRvIIIとの結合を、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定する。ある種のエピトープは、ファージ粒子の表面上に提示されたランダムペプチド配列の大型ライブラリー(ファージライブラリー)を用いることにより、同定することもできる。あるいは、重複ペプチド断片の確定ライブラリーを、単純な結合アッセイにおいて、試験抗体への結合について試験できる。さらなる例では、抗原結合ドメインの変異導入、ドメイン交換実験およびアラニンスキャニング変異導入を実施して、エピトープ結合に必須、十分および/または必要である残基を同定できる。例えば、ドメイン交換実験は、EGFRvIIIタンパク質の様々な断片が、別の種(例えばマウス)由来のEGFRvIII、または、密接に関係しているが抗原的には異なるタンパク質(例えば、Trop-1)に由来する配列に置き換えられた(交換された)変異EGFRvIIIを用いて実施できる。抗体と変異EGFRvIIIの結合を評価することにより、抗体結合に対する特定のEGFRvIII断片の重要性を評価できる。EGFRvIII特異的抗体(即ち、EGFRwt(野生型)または任意の他のタンパク質に結合しない抗体)の場合、EGFRvIIIのEGFRwtに対する配列アラインメントから、エピトープを推定できる。
【0169】
EGFRvIII抗体の特性評価に使用できるさらに別の方法は、同じ抗原(即ち、EGFRvIII上の各種断片)に結合することが知られている他の抗体との競合アッセイを用いて、EGFRvIII抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定することである。競合アッセイは、当業者に周知である。
【0170】
発現ベクターを用いて、EGFRvIII上抗体の発現を誘導できる。当業者は、発現ベクターを投与して外来性タンパク質の発現をインビボで得ることについて精通している。例えば、米国特許第6,436,908号、第6,413,942号および第6,376,471号参照。発現ベクターの投与には、注入、経口投与、パーティクルガンまたはカテーテル投与および局所投与を含む、局所または全身投与が含まれる。他の実施態様において、発現ベクターは、交感神経幹もしくは神経節、または冠状動脈、心房、心室もしくは心膜に直接投与される。
【0171】
発現ベクターまたはサブゲノムポリヌクレオチドを含有する治療用組成物の標的送達も使用できる。受容体媒介性DNA送達技術については、例えば、Findeis et al., Trends Biotechnol., 1993, 11:202; Chiou et al., Gene Therapeutics: Methods And Applications Of Direct Gene Transfer, J.A. Wolff, ed., 1994; Wu et al., J. Biol. Chem., 263:621, 1988; Wu et al., J. Biol. Chem., 269:542, 1994; Zenke et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:3655, 1990; および Wu et al., J. Biol. Chem., 266:338, 1991 に記載されている。ポリヌクレオチドを含有する治療用組成物は、遺伝子治療プロトコルにおいて、局所投与の場合、約100ng~約200mgの範囲のDNAで投与する。遺伝子治療プロトコル中、約500ng~約50mg、約1μg~約2mg、約5μg~約500μgおよび約20μg~約100μgの濃度範囲のDNAを使用することもできる。遺伝子送達ビヒクルを用いて、治療用ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを送達できる。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源でも非ウイルス起源でもよい(一般的に、Jolly, Cancer Gene Therapy,1:51, 1994; Kimura, ヒト Gene Therapy, 5:845, 1994; Connelly, ヒト Gene Therapy, 1995, 1:185; および Kaplitt, Nature Genetics, 6:148, 1994 参照)。そのようなコード配列の発現は、内在性哺乳動物プロモーターまたは異種プロモーターを用いて誘導できる。コード配列の発現は、構成的であってもよく、制御されていてもよい。
【0172】
所望のポリヌクレオチドを送達し、所望の細胞において発現させるためのウイルス性ベクターは、当分野で周知である。例示的なウイルス系ビヒクルには、組み換えレトロウイルス(例えば、PCT公開第WO90/07936号;第WO94/03622号;第WO93/25698号;第WO93/25234号;第WO93/11230号;第WO93/10218号;第WO91/02805号;米国特許第5、219,740号および第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;並びに欧州特許第0345242号を参照)、アルファウイルス系ベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67;ATCC VR-1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373;ATCC VR-1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR-923;ATCC VR-1250;ATCC VR1249;ATCC VR-532))およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT公開第WO94/12649号、第WO93/03769号;第WO93/19191号;第WO94/28938号;第WO95/11984号および第WO95/00655号を参照)が含まれるが、これらに限定されない。Curiel, Hum. Gene Ther., 1992, 3:147 に記載されている不活化アデノウイルスに連結したDNAの投与も用いることができる。
【0173】
非ウイルス性の送達ビヒクルおよび方法もまた用いることができ、不活化アデノウイルスにのみ連結したまたは連結していないポリカチオン性濃縮DNA(例えば、Curiel, Hum. Gene Ther., 3:147, 1992参照);リガンド連結DNA(例えば、Wu, J. Biol. Chem., 264:16985, 1989参照);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許第5,814,482号;PCT公開第WO95/07994号;第WO96/17072号;第WO95/30763号および第WO97/42338号参照)および核電荷中和または細胞膜との融合が含まれるが、これらに限定されない。ネイキッドDNAも用いることができる。例示的なネイキッドDNA導入法は、PCT公開第WO90/11092号および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用するリポソームは、米国特許第5,422,120号;PCT公開第WO95/13796号;第WO94/23697号;第WO91/14445号およびEP0524968に記載されている。さらなるアプローチは、Philip, Mol. Cell Biol., 14:2411, 1994 and in Woffendin, Proc. Natl. Acad. Sci., 91:1581, 1994に記載されている。
【0174】
いくつかの実施態様では、本発明は、本明細書に記載される、または、本方法により作製され、本明細書に記載される特徴を有する抗体を含む、組成物(医薬組成物を含む)を包含する。本明細書で使用する場合、組成物は、EGFRvIIIに結合する1つまたはそれ以上の抗体、および/または1つまたはそれ以上のこれらの抗体をコードする配列を含む1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、緩衝液を含む医薬的に許容し得る賦形剤などの好適な賦形剤をさらに含み得、これらは当分野で周知である。
【0175】
本発明はまた、これらの抗体のいずれをも作製する方法を提供する。本発明の抗体は、当分野で知られている手順によって作製できる。ポリペプチドは、抗体のタンパク質分解もしくは他の分解、上述した組み換え法(即ち、単一または融合ポリペプチド)または化学合成によって作製できる。抗体のポリペプチド、特に約50のアミノ酸までの短いポリペプチドは、化学合成によって簡便に生成される。化学合成の方法は、当分野で知られており、商業的に利用可能である。例えば、固相方法を使用する自動ポリペプチドシンセサイザーによって抗体を作製できるであろう。米国特許第5,807,715号、第4,816,567号および第6,331,415号も参照。
【0176】
別の代替法において、抗体は、当分野で周知の手順を用いて、組み換え的に作製できる。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、抗体m62G7、h62G7、h62G7-H14/L1-DV、h62G7-EQ/L6、42G9、32A10、20B9、14C11、21E11、49B11、46E10、12H6、19A9、21E7、11B11、12B2、11F10、17G11、29D5、30D8、20E12、26B9、32G8、34E7、20G5、C6、B5、42G9-1、32A10-1、20B9-1、14C11-1、21E11-1、49B11-1、46E10-1、12H6-1、19A9-1、21E7-1、11B11-1、12B2-1、11F10-1、17G11-1、29D5-1、30D8-1、20E12-1、26B9-1、32G8-1、34E7-1、20G5-1、C6-1またはB5-1の重鎖および/または軽鎖可変領域をコードする配列を含む。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞中のベクターに維持され得、次いで、宿主細胞を増殖させ、将来の使用のために凍結できる。ベクター(発現ベクターを含む)および宿主細胞については、本明細書でさらに説明されている。
【0177】
2つの共有結合した抗体を含むヘテロコンジュゲート抗体も本発明の範囲内である。そのような抗体は、免疫系細胞を不必要な細胞に対して標的化するために(米国特許第4,676,980号)、またHIV感染の治療のために(PCT公開第WO91/00360号および第WO92/200373号;EP03089)使用されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を用いて作製できる。好適な架橋剤および技術については、当分野で周知であり、米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0178】
キメラまたはハイブリッド抗体もまた、架橋剤が関与するものを含む、タンパク質合成化学の既知の方法を用いて、インビトロで調製できる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いるか、またはチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素が構築され得る。この目的に好適な試薬の例には、イミノチオレートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミダートが含まれる。
【0179】
組換えヒト化抗体において、Fcγ部分は、Fcγ受容体および補体との相互作用並びに免疫系を回避するように改変できる。そのような抗体を作製するための技法は、WO99/58572に記載されている。例えば、抗体がヒトでの治験および処置に使用される場合に、免疫反応を回避するために、定常領域をよりよく似たヒト定常領域に加工し得る。例えば、米国特許第5,997,867号および第5,866,692号参照。
【0180】
本発明は、表5に示す変異体を含む本発明の抗体およびポリペプチドの修飾物を包含し、これには、その特性に有意な影響を与えない機能的に等価である抗体、および、活性および/または親和性が向上または低下した変異体が含まれる。例えば、EGFRvIIIに対して所望の結合親和性を有する抗体を得るために、アミノ酸配列を変異させ得る。ポリペプチドの修飾は、当分野で慣用的な作業であり、本明細書にて詳述する必要はない。修飾ポリペプチドの例には、アミノ酸残基の保存的置換、機能活性に有意な有害な変化をもたらさない、または、ポリペプチドのそのリガンドへの親和性を成熟させる(増強する)アミノ酸の1つまたはそれ以上の欠失または付加を有するポリペプチド、または化学的類似体の使用が含まれる。
【0181】
アミノ酸配列の挿入には、1つの残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの長さまでの範囲に及ぶアミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、並びに1つまたはそれ以上のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体またはエピトープタグに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体のN末端またはC末端に、酵素、または、抗体の血液循環における半減期を増大させるポリペプチドを融合したものが含まれる。
【0182】
置換変異体は、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基を除去し、その位置に異なる残基を挿入したものである。置換変異導入に関して最大の目的となる部位には超可変領域が含まれるが、FRの変更もまた企図される。保存的置換を、表5に「保存的置換」の見出しで示す。置換が生物活性に変化をもたらすならば、表5に「例示的置換」と称するか、または、アミノ酸クラスに関して以下で詳述する、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングし得る。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される抗体の置換変異体は、参照する親抗体と比較して、VHまたはVL領域に、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個を超えない保存的置換を有する。いくつかの実施態様では、置換は、VHまたはVL領域のCDR内にない。
【0183】
【0184】
抗体の生物学的特性の実質的な改変は、(a)置換領域内のポリペプチド主鎖の構造、例えば、シートもしくはヘリックス構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩を維持することに対する効果が有意に異なる置換を選択することによって達成される。天然産生のアミノ酸残基は、共通する側鎖特性に基づいて分類される:
(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)極性無電荷:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性(負電荷):Asp、Glu;
(4)塩基性(正電荷):Lys、Arg;
(5)鎖配向性に影響する残基:Gly、Pro;および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0185】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つの構成要素を別のクラスに交換することによってなされる。
【0186】
分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防ぐために、抗体の適切な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基も、一般的にセリンで置換し得る。逆に、特にその抗体がFv断片などの抗体断片である場合、抗体の安定性を改善するために、システイン結合を抗体に付加してもよい。
【0187】
アミノ酸修飾は、1つまたはそれ以上のアミノ酸の変化または修飾から、可変領域などの領域の完全な再設計まで、多様であり得る。可変領域における変化は、結合親和性および/または特異性を変更し得る。いくつかの実施態様において、CDRドメイン内に1つから5つを超えない保存的アミノ酸置換がなされる。他の実施態様において、CDRドメイン内に1つから3つを超えない保存的アミノ酸置換がなされる。さらに他の実施態様において、CDRドメインは、CDR H3および/またはCDR L3である。
【0188】
修飾にはまた、グリコシル化および非グリコシル化ポリペプチド、並びに他の翻訳後修飾、例えば、種々の糖によるグリコシル化、アセチル化およびリン酸化などがなされたポリペプチドも含まれる。抗体は、定常領域の保存的位置でグリコシル化される(Jefferis and Lund, Chem. Immunol. 65:111-128, 1997; Wright and Morrison, TibTECH 15:26-32, 1997)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boyd et al., Mol. Immunol. 32:1311-1318, 1996; Wittwe and Howard, Biochem. 29:4175-4180, 1990)、並びに糖タンパク質の立体構造および提示される三次元表面に影響し得る糖タンパク質の部分間の分子内相互作用(Jefferis and Lund, supra; Wyss and Wagner, Current Opin. Biotech. 7:409-416, 1996)に影響を与える。オリゴ糖はまた、特異的認識構造に基づいて、所定の糖タンパク質をある特定の分子に標的化するのに役立ち得る。抗体のグリコシル化は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に影響することも報告されている。特に、二分岐GlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリン制御発現を示すCHO細胞は、ADCC活性が向上することが報告された(Umana et al., Mature Biotech. 17:176-180, 1999)。
【0189】
抗体のグリコシル化は、典型的には、N-結合型またはO-結合型のいずれかである。N-結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付加を表す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン、アスパラギン-X-スレオニンおよびアスパラギン-X-システイン(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付加のための認識配列である。従って、これらのトリペプチド配列のいずれかがポリペプチド中に存在することで、潜在的なグリコシル化部位が創出される。O-結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニン(しかし、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンも用いられ得る)への、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースの糖のうちの1つの付加を表す。
【0190】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列のうちの1つまたはそれ以上を含むようにアミノ酸配列を変更することによって簡便に実施される(N-結合型グリコシル化部位に関して)。この変更はまた、元の抗体の配列に1つまたはそれ以上のセリンまたはスレオニン残基の付加、またはこれらの残基による置換によって行うことができる(O結合型グリコシル化部位に関して)。
【0191】
抗体のグリコシル化パターンは、基本となるヌクレオチド配列を変更することなく、変更することもできる。グリコシル化は、抗体を発現させるために使用する宿主細胞に大きく依存する。候補治療薬としての組み換え糖タンパク質、例えば抗体の発現に使用される細胞の種類が、その生来の細胞であることは稀であるので、抗体のグリコシル化パターンにおける多様性が見込まれ得る(例えば、Hse et al., J. Biol. Chem. 272:9062-9070, 1997 参照)。
【0192】
宿主細胞の選択に加えて、抗体の組み換え産生時のグリコシル化に影響を与える要因には、増殖様式、培地配合、培養密度、酸素添加、pH、精製スキームなどが挙げられる。特定の宿主生物にて達成されるグリコシル化パターンを変更するために、オリゴ糖産生に関与するある特定の酵素の導入または過剰発現を含む様々な方法が提案されている(米国特許第5,047,335号、第5,510,261号および第5.278,299号)。グリコシル化またはある種のグリコシル化は、例えば、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、N-グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3を用いて、糖タンパク質から酵素的に除去できる。加えて、組み換え宿主細胞を遺伝子的に組み換えて、特定の種類の多糖のプロセッシングができないようにすることができる。これらの技術および類似技術は、当分野で周知である。
【0193】
他の修飾方法には、当分野で知られているカップリング技術を用いることが挙げられ、酵素的手段、酸化的置換およびキレート化を含むが、これらに限定されない。修飾は、例えば、イムノアッセイのための標識の付加に使用できる。修飾ポリペプチドは、当分野において確立された手順を用いて作製され、当分野で知られている標準的なアッセイを用いてスクリーニングでき、これらのいくつかについて、以下および実施例で説明する。
【0194】
他の抗体改変には、PCT公開第WO99/58572号に記載の通りに改変された抗体が含まれる。これらの抗体は、標的分子に対する結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域の全部または一部と実質的に相同であるアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、有意な補体依存性溶解または標的の細胞媒介性破壊を誘発することなく、標的分子に結合できる。いくつかの実施態様において、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbに特異的に結合できる。これらは、典型的には、2つまたはそれ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインに由来するキメラドメインに基づく。このように改変された抗体は、長期抗体療法での使用に特に適しており、従来の抗体療法に対する炎症性反応および他の有害な反応を回避する。
【0195】
本発明は、親和性が成熟した実施態様を含む。例えば、親和性成熟抗体は、当分野で知られている手順によって作製できる(Marks et al., Bio/Technology, 10:779-783, 1992; Barbas et al., Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813, 1994; Schier et al., Gene, 169:147-155, 1995; Yelton et al., J. Immunol., 155:1994-2004, 1995; Jackson et al., J. Immunol., 154(7):3310-9, 1995, Hawkins et al., J. Mol. Biol., 226:889-896, 1992; および、PCT公開番号WO2004/058184)。
【0196】
抗体の親和性の調節およびCDRの特性評価には、以下の方法を使用し得る。抗体のCDRの特性評価および/または抗体などのポリペプチドの結合親和性の変更(改善など)を行う1つの方法は、「ライブラリースキャニング変異導入」と呼ばれる。一般に、ライブラリースキャニング変異導入は、以下のように行われる。当分野にて認識されている方法を用いて、CDR中の1つまたはそれ以上のアミノ酸位置を2つまたはそれ以上(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20など)のアミノ酸で置換する。これにより、2つまたはそれ以上の構成要素の複雑性(すべての位置で2つまたはそれ以上のアミノ酸を置換する場合)をそれぞれ有する、クローンの小ライブラリー(いくつかの実施態様では、分析される各アミノ酸の位置に1つ)が作られる。一般的に、ライブラリーは、天然(無置換)アミノ酸を含むクローンも包含する。各ライブラリーからの少数のクローン、例えば、約20~80のクローン(ライブラリーの複雑性による)を、標的ポリペプチド(または他の結合標的)に対する結合親和性についてスクリーニングし、結合が多い、同じ、少ない、または全くない候補を特定する。結合親和性を決定するための方法は、当分野で周知である。結合親和性は、約2倍以上の結合親和性の差異を検出する、Biacore(商標)表面プラズモン共鳴分析を用いて決定し得る。Biacore(商標)は、出発抗体がすでに比較的高い親和性、例えば、約10nM以下のKDで結合する場合、特に有用である。Biacore(商標)表面プラズモン共鳴を用いるスクリーニングは、本明細書の実施例において説明する。
【0197】
結合親和性は、Kinexa Biocensor、シンチレーション近接アッセイ、ELISA、ORIGENイムノアッセイ(IGEN)、蛍光消光、蛍光移動および/または酵母ディスプレイを用いて決定できる。結合親和性はまた、好適なバイオアッセイを用いて、スクリーニングしてもよい。
【0198】
いくつかの実施態様では、当分野にて認識されている変異導入法(そのいくつかについて本明細書に記載する)を用いて、CDR中の各アミノ酸位置を20種すべての天然アミノ酸で置換する(いくつかの実施態様では、1回に1つ)。これにより、20の構成要素の複雑性(各位置で全20種のアミノ酸を置換する場合)をそれぞれ有する、クローンの小ライブラリー(いくつかの実施態様では、分析される各アミノ酸位置に1つ)が作られる。
【0199】
いくつかの実施態様において、スクリーニングされるライブラリーは、2つまたはそれ以上の位置に置換を含み、これらの置換は、同じCDR中であってもよく、2つまたはそれ以上のCDR中であってもよい。従って、ライブラリーは、1つのCDR中の2つまたはそれ以上の位置に置換を含み得る。ライブラリーは、2つまたはそれ以上のCDR中の2つまたはそれ以上の位置に置換を含み得る。ライブラリーは、3、4、5つまたはそれ以上の位置に置換を含み得、当該位置は、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDR中に認められる。置換は、冗長性の低いコドンを用いて作製し得る。例えば、Balint et al., Gene 137(1):109-18, 1993 の表2参照。
【0200】
CDRは、CDRH3および/またはCDRL3であってよい。CDRは、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2および/またはCDRH3のうちの1つまたはそれ以上であってよい。CDRは、KabatのCDR、ChothiaのCDRまたは拡張CDRであってよい。
【0201】
結合が改善した候補の配列を決定し、それにより、親和性が改善されたCDR置換変異体(「改善された」置換とも呼ぶ)を同定できる。また、結合する候補の配列も決定し、それにより、結合を保持するCDR置換を同定してもよい。
【0202】
複数回のスクリーニングを実行し得る。例えば、結合の改善した候補(それぞれ、1つまたはそれ以上のCDRの1つまたはそれ以上の位置にアミノ酸置換を含む)はまた、改善された各CDR位置(即ち、置換変異体が結合の改善を示したCDR中のアミノ酸位置)に少なくとも元のアミノ酸および置換したアミノ酸を含む第2のライブラリーの設計に有用である。このライブラリーの作製およびスクリーニングまたは選別は、以下に詳述する。
【0203】
ライブラリースキャニング変異導入はまた、結合が改善されたクローン、同じ結合のクローン、結合が減少したクローンまたは結合のないクローンの頻度から、抗体-抗原複合体の安定性に対しての各アミノ酸位置の重要性に関する情報が提供されるという点で、CDRの特性評価の手段を提供する。例えば、CDRのある位置を全20種のアミノ酸に変えたときに結合が保持される場合、その位置は、抗原結合に必要でない可能性が高い位置として同定される。逆に、CDRのある位置が低い割合の置換でしか結合を保持しない場合、その位置は、CDR機能に重要な位置として同定される。従って、ライブラリースキャニング変異導入法により、多数の異なるアミノ酸(全20種のアミノ酸を含む)に変更できるCDRの位置、および、変えることができないか、または少数のアミノ酸にのみ変更できるCDRの位置に関する情報がもたらされる。
【0204】
親和性の改善した候補を組み合わせて、改善されたアミノ酸、その位置の元のアミノ酸を含み、かつ望ましいスクリーニング法または選別法を用いて、望ましいか、または許容されるライブラリーの複雑性に応じて、その位置のさらなる置換を含み得る、第2のライブラリーにしてもよい。加えて、所望により、隣接するアミノ酸位置を少なくとも2つまたはそれ以上のアミノ酸にランダム化できる。隣接するアミノ酸のランダム化は、変異CDRにおけるさらなる立体構造の柔軟性を与え得るものであり、これにより、多数の改善する変異の導入が可能または容易になり得る。ライブラリーはまた、初回のスクリーニングで親和性の改善を示さなかった位置での置換を含み得る。
【0205】
第2のライブラリーは、Biacore(商標)表面プラズモン共鳴分析を用いるスクリーニング、および当分野で知られている選択のための任意の方法(ファージディスプレイ、酵母ディスプレイおよびリボソームディスプレイを含む)を用いる選択を含む、当分野で知られている任意の方法を使用して、結合親和性が改善したおよび/または変化したライブラリーの構成要素について、スクリーニングまたは選別される。
【0206】
本発明はまた、本発明の抗体に由来する1つまたはそれ以上の断片または領域を含む融合タンパク質を包含する。ある実施態様では、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、29、31、33、36、38、40、42、45、47、49、51、211、212、213または215に示す可変軽鎖領域の少なくとも10個の連続するアミノ酸、および/または、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、30、32、34、35、37、39、41、43、44、46、48、50、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、202、203、204、205、206、207、208、209、210、214、216、217または218に示す可変重鎖領域の少なくとも10個のアミノ酸を含む、融合ポリペプチドが提供される。他の実施態様では、可変軽鎖領域の少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個もしくは少なくとも約30個の連続するアミノ酸、および/または、可変重鎖領域の少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個もしくは少なくとも約30個の連続するアミノ酸を含む、融合ポリペプチドが提供される。別の実施態様では、融合ポリペプチドは、1つまたはそれ以上のCDRを含む。さらに他の実施態様では、融合ポリペプチドは、CDR H3(VH CDR3)および/またはCDR L3(VL CDR3)を含む。本発明の目的上、融合タンパク質は、1つまたはそれ以上の抗体と、天然分子には結合していない別のアミノ酸配列、例えば、別の領域からの非相同配列または相同配列とを含有する。例示的な非相同配列には、FLAGタグまたは6Hisタグなどの「タグ」が含まれるが、これらに限定されない。タグは、当分野で周知である。
【0207】
融合ポリペプチドは、当分野で知られている方法によって、例えば、合成的にまたは組み換え的に作製できる。典型的には、本発明の融合タンパク質は、本明細書に記載の組み換え法を使用して、それらをコードするポリヌクレオチドを発現させることにより作製されるが、当分野で知られている他の手段、例えば、化学合成などによって調製してもよい。
【0208】
本発明はまた、固体支持体(ビオチンまたはアビジンなど)への結合を容易にする物質とコンジュゲート(例えば、連結)した抗体を含む組成物を提供する。説明を簡潔にするために、これらの方法が本明細書に記載のEGFRvIII抗体の実施態様のいずれにも適用されるという理解を前提に、概して、抗体に関して言及する。コンジュゲーションとは、一般に、本明細書に記載する成分を連結することを表す。連結(一般的に、少なくとも投与のために、これらの成分を隣接関係に固定すること)は、数々の方法で達成できる。例えば、作用物質と抗体のそれぞれが他方と反応できる置換基を持つ場合、作用物質と抗体との間の直接反応が可能である。例えば、一方にあるアミノ基またはスルフヒドリル基などの求核基は、他方にある無水物もしくは酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基または良好な脱離基(例えば、ハロゲン化物)を含有するアルキル基と反応できる。
【0209】
本発明はまた、本発明の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド、並びに、そのポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞を提供する。
従って、本発明は、以下のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド(または医薬組成物を含めた組成物)を提供する:m62G7、h62G7、h62G7-H14/L1-DV、h62G7-EQ/L6、42G9、32A10、20B9、14C11、21E11、49B11、46E10、12H6、19A9、21E7、11B11、12B2、11F10、17G11、29D5、30D8、20E12、26B9、32G8、34E7、20G5、C6、B5、42G9-1、32A10-1、20B9-1、14C11-1、21E11-1、49B11-1、46E10-1、12H6-1、19A9-1、21E7-1、11B11-1、12B2-1、11F10-1、17G11-1、29D5-1、30D8-1、20E12-1、26B9-1、32G8-1、34E7-1、20G5-1、C6-1およびB5-1、または、EGFRvIIIに結合する能力を有するそれらの任意の断片または部分。
【0210】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の抗体(抗体断片を含む)およびポリペプチド、例えばエフェクター機能を欠損させた抗体およびポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、当分野で知られている手順によって作製し、発現させることができる。
【0211】
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドのいずれかを含む組成物(医薬組成物など)を提供する。いくつかの実施態様において、組成物は、本明細書に記載の抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。
発現ベクター、およびポリヌクレオチド組成物の投与については、本明細書においてさらに説明する。
【0212】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法を提供する。
【0213】
こうした配列に相補的なポリヌクレオチドもまた、本発明に包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード化またはアンチセンス)でも、二本鎖でもよく、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。RNA分子には、イントロンを含有し、DNA分子に1対1で対応するHnRNA分子およびイントロンを含有しないmRNA分子が含まれる。さらなるコード配列または非コード配列が本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよいが、それは必須ではなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持体材料に連結していてもよいが、それは必須ではない。
【0214】
ポリヌクレオチドは、天然配列(即ち、抗体またはその一部をコードする内在性配列)を含んでもよいし、そのような配列の変異体を含んでもよい。ポリヌクレオチドの変異体は、コードされるポリペプチドの免疫反応性が天然の免疫反応性分子と比較して低下しないように、1つまたはそれ以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含む。コードされるポリペプチドの免疫反応性への影響は、一般に、本明細書に記載の通りに評価され得る。変異体は、天然抗体またはその一部をコードするポリヌクレオチド配列に対して、好ましくは少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも約90%の同一性、最も好ましくは少なくとも約95%の同一性を示す。
【0215】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が後述するように最大一致するように配列させたときに同じであれば、「同一」であると言う。2つの配列間の比較は、典型的には、配列を比較領域にわたって比較し、配列が類似している局所的領域を同定し比較することによって行われる。本明細書で使用する「比較領域」とは、2つの配列を最適配列した後に、配列が同数の連続的な位置の参照配列と比較され得る、少なくとも約20個の連続的な位置、通常、30個~約75個、または、40個~約50個のセグメントを表す。
【0216】
比較のための配列の最適アラインメントは、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergeneスイートのMegalignプログラム(DNASTAR, Inc., Madison, WI)を使用して、デフォルトパラメータを用いて行い得る。このプログラムは、以下の参考文献に記載のいくつかのアラインメントスキームを具体化する:Dayhoff, M.O., 1978, A model of evolutionary change in proteins - Matrices for detecting distant relationships. In Dayhoff, M.O. (ed.) Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, Washington DC Vol. 5, Suppl. 3, pp. 345-358; Hein J., 1990, Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp. 626-645 Methods in Enzymology vol. 183, Academic Press, Inc., San Diego, CA; Higgins, D.G. and Sharp, P.M., 1989, CABIOS 5:151-153; Myers, E.W. and Muller W., 1988, CABIOS 4:11-17; Robinson, E.D., 1971, Comb. Theor. 11:105; Santou, N., Nes, M., 1987, Mol. Biol. Evol. 4:406-425; Sneath, P.H.A. and Sokal, R.R., 1973, Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy, Freeman Press, San Francisco, CA; Wilbur, W.J. and Lipman, D.J., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:726-730。
【0217】
好ましくは、「配列同一性のパーセンテージ」は、最適に配列された2つの配列を少なくとも20個の位置の比較領域にわたって比較することにより決定され、比較領域中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、最適なアラインメントの2つの配列の参照配列(付加または欠失を含まないもの)と比較して、20%以下、通常5~15%または10~12%の付加または欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージを計算するには、両配列中で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が生じている位置の数を特定して一致した位置の数を得て、一致した位置の数を参照配列中の総位置数(即ち、領域の大きさ)で割り、その結果に100を掛けることにより、配列同一性のパーセンテージを得る。
【0218】
変異体は、さらに、または、あるいは、天然遺伝子またはその一部もしくは相補体に実質的に相同であり得る。このようなポリヌクレオチドの変異体は、中程度にストリンジェントな条件下で、天然抗体(または相補的配列)をコードする自然に生じるDNA配列にハイブリダイズできる。
【0219】
好適な「中程度にストリンジェントな条件」には、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中での予洗、50℃~65℃、5×SSC、終夜でのハイブリダイズ、次いで、0.1%SDSを含有する2×、0.5×および0.2×SSCをそれぞれ用いた65℃で20分間の2回の洗浄が含まれる。
【0220】
本明細書で使用するとき、「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」とは、(1)洗浄に低イオン強度および高温を用いる、例えば、50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤を用いる、例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストランを42℃で用い、42℃にて0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃にて50%ホルムアミドで洗浄し、続いて、55℃にてEDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を行う。当業者は、プローブ長などの要素に適合させるのに必要な温度、イオン強度などを調整する方法を認識するであろう。
【0221】
遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が多数存在することは、当業者に理解されるであろう。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小限の相同性を有する。しかしながら、コドンの用法の違いにより異なるポリヌクレオチドは、本発明によって特に企図される。さらに、本明細書において提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子も本発明の範囲内である。対立遺伝子とは、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換などの1つまたはそれ以上の変異の結果として改変される内在性遺伝子である。こうして得られるmRNAおよびタンパク質は、改変された構造または機能を有する場合があるが、そうである必要はない。対立遺伝子は、標準的な技法(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較など)を用いて同定できる。
【0222】
本発明のポリヌクレオチドは、化学的合成、組み換え法またはPCRを用いて得ることができる。化学的ポリヌクレオチド合成方法は、当分野でよく知られており、本明細書にて詳述する必要はない。当業者は、本明細書で提供される配列および市販のDNA合成装置を用いて所望のDNA配列を作製できる。
【0223】
組み換え法を用いてポリヌクレオチドを作製するには、本明細書においてさらに論ずる通り、所望の配列を含むポリヌクレオチドを好適なベクターに挿入することができ、次に、そのベクターを複製および増幅に好適な宿主細胞に導入できる。ポリヌクレオチドは、当分野で知られている任意の手段によって、宿主細胞に挿入できる。細胞は、直接取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F接合またはエレクトロポレーションにより外来性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。導入後、外来性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(プラスミドなど)として細胞内に維持されるか、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。このようにして増幅されたポリヌクレオチドは、当分野内で周知の方法によって、宿主細胞から単離できる。例えば、Sambrook et al., 1989 参照。
【0224】
あるいは、PCRによりDNA配列を複製させる。PCR技術は、当分野でよく知られており、米国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号および第4,683,202号、並びに、PCR: The Polymerase Chain Reaction, Mullis et al. eds., Birkauswer Press, Boston, 1994に記載されている。
【0225】
RNAは、適切なベクター中の単離したDNAを使用し、それを好適な宿主細胞に挿入することによって得ることができる。細胞が複製され、DNAがRNAに転写されたら、当業者に周知の方法、例えば、前出の Sambrook et al., 1989 に記載されている方法を用いて、RNAを単離できる。
【0226】
好適なクローニングベクターは、標準的な技法に従って構築してもよいし、当分野で入手可能な多数のクローニングベクターから選択してもよい。選択されるクローニングベクターは、使用を意図する宿主細胞に応じて変わり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製能を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼの標的を1つ有し得、かつ/または、ベクターを含有するクローンの選択に用いることができるマーカーの遺伝子を保持し得る。好適な例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、並びにpSA3およびpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これらおよび多くの他のクローニングベクターは、BioRad、Strategene および Invitrogenなどの商業的供給業者から入手可能である。
【0227】
発現ベクターは、一般に、本発明によるポリヌクレオチドを含有する複製可能なポリヌクレオチドコンストラクトである。発現ベクターは、エピソームとしてまたは染色体DNAの構成部分として宿主細胞中で複製可能でなければならないことが示唆される。好適な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミドおよびPCT公開第WO87/04462号に記載の発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクター構成要素は、一般に、シグナル配列、複製起点、1つまたはそれ以上のマーカー遺伝子、好適な転写調節エレメント(プロモーター、エンハンサーおよびターミネーターなど)のうちの1つまたはそれ以上を含み得るが、これらに限定されない。発現(即ち、翻訳)には、リボソーム結合部位、翻訳開始部位および終止コドンなどの1つまたはそれ以上の翻訳制御エレメントも通常必要である。
【0228】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAEデキストランまたは他の物質を用いるトランスフェクション、微粒子銃、リポフェクションおよび感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染因子である場合)を含む、多数の適切な手段のいずれかによって、宿主細胞に導入できる。導入ベクターまたはポリヌクレオチドの選択は、多くの場合、宿主細胞の特徴に依存する。
【0229】
本発明はまた、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞を提供する。目的の抗体、ポリペプチドまたはタンパク質をコードしている遺伝子を単離するために、異種DNAを過剰発現できる任意の宿主細胞を使用できる。哺乳動物の宿主細胞の非限定的な例には、COS、HeLaおよびCHO細胞が含まれるが、これらに限定されない。PCT公開第WO87/04462号も参照。好適な非哺乳動物の宿主細胞には、原核生物(大腸菌または枯草菌など)および酵母菌(出芽酵母、分裂酵母またはK.ラクチスなど)が挙げられる。好ましくは、宿主細胞は、宿主細胞中に対応する内在性抗体または目的のタンパク質が存在するならば、それよりも約5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらにより好ましくは20倍以上のレベルでcDNAを発現する。EGFRvIIIへの特異的結合に関する宿主細胞のスクリーニングは、イムノアッセイまたはFACSによって行われる。目的の抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞を同定できる。
【0230】
EGFRvIII抗体コンジュゲート
本発明はまた、本明細書に記載のEGFRvIII抗体のコンジュゲート(またはイムノコンジュゲート)を提供し、ここで、抗体は、標的化された免疫療法のための作用物質(例えば、細胞傷害性物質)と直接的に、またはリンカーを介して間接的に、コンジュゲートされている(例えば、抗体-薬物コンジュゲート)。例えば、細胞傷害性物質部分の腫瘍(例えば、EGFRvIIIを発現する腫瘍)への標的化された局所的送達のために、細胞傷害性物質が、本明細書に記載のEGFRvIII抗体に連結またはコンジュゲートされ得る。
【0231】
細胞傷害性物質または他の治療剤を抗体にコンジュゲートする方法は、様々な刊行物に記載されてきた。例えば、リジン側鎖のアミンを介して、または、コンジュゲーション反応が起こるように鎖間のジスルフィド結合を還元することにより活性化されたシステインのスルフヒドリル基を介して、抗体に化学的修飾を成し得る。例えば、 Tanaka et al., FEBS Letters 579:2092-2096, 2005, および Gentle et al., Bioconjugate Chem. 15:658-663, 2004 参照。所定の化学量論で特定の薬物コンジュゲーションのために抗体の特定の部位に加工された反応性システイン残基も、記載されてきた。例えば、 Junutula et al., Nature Biotechnology, 26:925-932, 2008 参照。アシル供与体であるグルタミンを含有するタグまたは反応性にされた内在性グルタミン(即ち、アシル供与体として共有結合を形成する能力)を使用する、トランスグルタミナーゼおよびアミン(例えば、反応性アミンを含むか、それに結合した細胞傷害性物質)の存在下におけるポリペプチドエンジニアリングによるコンジュゲーションは、国際出願WO2012/059882およびWO2015015448にも記載されている。
【0232】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のEGFRvIII抗体またはコンジュゲートは、抗体の特定の部位(例えば、EGFRvIII抗体のカルボキシル末端、アミノ末端または他の部位)に設計されたアシル供与体であるグルタミンを含有するタグを含む。いくつかの実施態様では、タグは、アミノ酸グルタミン(Q)またはアミノ酸配列LQG、LLQGG(配列番号258)、LLQG(配列番号259)、LSLSQG(配列番号260)、GGGLLQGG(配列番号261)、GLLQG(配列番号262)、LLQ、GSPLAQSHGG(配列番号263)、GLLQGGG(配列番号264)、GLLQGG(配列番号265)、GLLQ(配列番号266)、LLQLLQGA(配列番号267)、LLQGA(配列番号268)、LLQYQGA(配列番号269)、LLQGSG(配列番号270)、LLQYQG(配列番号271)、LLQLLQG(配列番号272)、SLLQG(配列番号273)、LLQLQ(配列番号274)、LLQLLQ(配列番号275)、LLQGR(配列番号276)、LLQGPP(配列番号277)、LLQGPA(配列番号278)、GGLLQGPP(配列番号279)、GGLLQGA(配列番号280)、LLQGPGK(配列番号281)、LLQGPG(配列番号282)、LLQGP(配列番号283)、LLQP(配列番号284)、LLQPGK(配列番号285)、LLQAPGK(配列番号286)、LLQGAPG(配列番号287)、LLQGAP(配列番号288)、およびLLQLQG(配列番号289)を含む。
【0233】
アシル供与体であるグルタミンを含有するタグおよび抗体の位置222、340または370(EUナンバリングスキーム)でのアミノ酸修飾を含み、修飾がアミノ酸欠損、挿入、置換、変異またはこれらの任意の組合せである、単離された抗体も提供される。いくつかの実施態様では、アミノ酸修飾は、リジンからアルギニンへの置換である(例えば、K222R、K340RまたはK370R)。
【0234】
本発明のEGFRvIII抗体にコンジュゲートできる作用物質には、細胞傷害性物質、免疫調節性、イメージング剤、治療的タンパク質、バイオポリマーまたはオリゴヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0235】
細胞傷害性物質の例には、アントラサイクリン、オーリスタチン、ドラスタチン、コンブレタスタチン、デュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、インドリノ-ベンゾジアゼピン二量体、エンジイン、ゲルダナマイシン、メイタンシン、ピューロマイシン、タキサン、ビンカアルカロイド、カンプトテシン、チューブリシン、ヘミアステリン、スプライセオスタチン、プラジエノライド、および、それらの立体異性体、アイソスター、類似体または誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0236】
アントラサイクリンは、ストレプトマイセス属の細菌に由来し、白血病、リンパ腫、乳癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌などの広範ながんの処置に使用されてきた。例示的なアントラサイクリンには、ダウノルビシン、ドキソルビシン(即ち、アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシンおよびミトキサントロンが含まれるが、これらに限定されない。
【0237】
ドラスタチン並びにそれらのペプチド類似体および誘導体のオーリスタチンは、抗癌および抗真菌活性を有すると示された、非常に強力な抗有糸分裂剤である。例えば、米国特許第5,663,149 号およびPettit et al., Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965, 1998 参照。例示的なドラスタチンおよびオーリスタチンには、ドラスタチン10、オーリスタチンE、オーリスタチンEB(AEB)、オーリスタチンEFP(AEFP)、MMAD(モノメチルオーリスタチンDまたはモノメチルドラスタチン10)、MMAF(モノメチルオーリスタチンFまたはN-メチルバリン-バリン-ドライソロイシン-ドラプロイン-フェニルアラニン)、MMAE(モノメチルオーリスタチンEまたはN-メチルバリン-バリン-ドライソロイシン-ドラプロイン-ノルエフェドリン)、5-ベンゾイル吉草酸-AEエステル(AEVB)および他の新規オーリスタチン(米国特許公開番号2013/0129753に記載のものなど)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、オーリスタチンは、以下の構造
【化11】
を有する0101(2-メチルアラニル-N-[(3R,4S,5S)-3-メトキシ-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソ-3-{[(1S)-2-フェニル-1-(1,3-チアゾール-2-イル)エチル]アミノ}プロピル]ピロリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチル-L-バリンアミド)である。
【0238】
いくつかの実施態様では、オーリスタチンは、以下の構造:
【化12】
を有する3377(N,2-ジメチルアラニル-N-{(1S,2R)-4-{(2S)-2-[(1R,2R)-3-{[(1S)-1-カルボキシル-2-フェニルエチル]アミノ}-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-2-メトキシ-1-[(1S)-1-メチルプロピル]-4-オキソブチル}-N-メチル-L-バリンアミド)である。
【0239】
いくつかの実施態様では、オーリスタチンは、以下の構造:
【化13】
を有する0131-OMe(N,2-ジメチルアラニル-N-[(3R,4S,5S)-3-メトキシ-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-1-メトキシ-3-{[(2S)-1-メトキシ-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル]アミノ}-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチルL-バリンアミド)である。
【0240】
他の実施態様では、オーリスタチンは、以下の構造:
【化14】
を有する0131(2-メチル-L-プロリル-N-[(3R,4S,5S)-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-3-{[(1S)-1-カルボキシ-2-フェニルエチル]アミノ}-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチル-L-バリンアミド)である。
【0241】
他の実施態様では、オーリスタチンは、以下の構造:
【化15】
を有する0121(2-メチル-L-プロリル-N-[(3R,4S,5S)-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-3-{[(2S)-1-メトキシ-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル]アミノ}-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチル-L-バリンアミド)である。
【0242】
カンプトテシンは、酵素トポイソメラーゼIを阻害する細胞傷害性キノリンアルカロイドである。カンプトテシンおよびその誘導体の例には、トポテカンおよびイリノテカン、並びにSN-38などのそれらの代謝物が含まれるが、これらに限定されない。
【0243】
コンブレタスタチンは、腫瘍における血管破壊特性を有する天然フェノールである。例示的なコンブレタスタチンおよびそれらの誘導体には、コンブレタスタチンA-4(CA-4)およびオムブラブリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0244】
デュオカルマイシンおよびCC-1065は、細胞傷害性の能力を有するDNAアルキル化剤である。Boger and Johnson、PNAS 92:3642-3649(1995)参照。例示的なデュオカルマイシンおよびCC-1065には、(+)-デュオカルマイシンAおよび(+)-デュオカルマイシンSA、(+)-CC-1065、および、国際出願PCT/IB2015/050280に開示される化合物(構造:
【化16】
を有するN~2~-アセチル-L-リジル-L-バリル-N~5~-カルバモイル-N-[4-({[(2-{[({(1S)-1-(クロロメチル)-3-[(5-{[(1S)-1-(クロロメチル)-5-(ホスホノオキシ)-1,2-ジヒドロ-3H-ベンゾ[e]インドール-3-イル]カルボニル}チオフェン-2-イル)カルボニル]-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]インドール-5-イル}オキシ)カルボニル](メチル)アミノ}エチル)(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]-L-オルニチンアミド、構造:
【化17】
を有するN~2~-アセチル-L-リジル-L-バリル-N~5~-カルバモイル-N-[4-({[(2-{[({(8S)-8-(クロロメチル)-6-[(3-{[(1S)-1-(クロロメチル)-8-メチル-5-(ホスホノオキシ)-1,6-ジヒドロピロロ[3,2-e]インドール-3(2H)-イル]カルボニル}ビシクロ[1.1.1]ペンタ-1-イル)カルボニル]-1-メチル-3,6,7,8-テトラヒドロピロロ[3,2-e]インドール-4-イル}オキシ)カルボニル](メチル)アミノ}エチル)(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]-L-オルニチンアミド、構造:
【化18】
を有するN~2~-アセチル-L-リジル-L-バリル-N~5~-カルバモイル-N-[4-({[(2-{[({(8S)-8-(クロロメチル)-6-[(4-{[(1S)-1-(クロロメチル)-8-メチル-5-(ホスホノオキシ)-1,6-ジヒドロピロロ[3,2-e]インドール-3(2H)-イル]カルボニル}ペンタシクロ[4.2.0.0~2,5~.0~3,8~.0~4,7~]オクタ-1-イル)カルボニル]-1-メチル-3,6,7,8-テトラヒドロピロロ[3,2-e]インドール-4-イル}オキシ)カルボニル](メチル)アミノ}エチル)(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]-L-オルニチンアミドが含まれるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。
【0245】
エンジインは、9員および10員環またはコンジュゲートした三重-二重-三重結合の環系の存在を特徴とする抗腫瘍性細菌産物のクラスである。例示的なエンジインには、カリケアマイシン、エスペラマイシン、ウンシアラマイシン(uncialamicin)、ジネマイシン(dynemicin)、およびそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0246】
ゲルダナマイシンは、Hsp90(熱ショックタンパク質90)に結合するベンゾキノンアンサマイシン抗生物質であり、抗腫瘍薬として使用されている。例示的なゲルダナマイシンには、17-AAG(17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)および17-DMAG(17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)が含まれるが、これらに限定されない。-
【0247】
ヘミアステリンおよびその類似体(例えば、HTI-286)は、チューブリンに結合し、正常な微小管力学を崩壊させ、化学量論量で、微小管を脱重合する。
【0248】
メイタンシンまたはその誘導体であるメイタンシノイドは、チューブリンの重合を阻害して有糸分裂の際の微小管形成を阻害することにより、細胞増殖を抑制する。Remillard et al., Science 189:1002-1005, 1975 参照。例示的なメイタンシンおよびメイタンシノイドには、メルタンシン(mertansine)(DM1)およびその誘導体、並びにアンサマイトシン(ansamitocin)が含まれるが、これらに限定されない。
【0249】
ピロロベンゾジアゼピン二量体(PBD)およびインドリノ-ベンゾジアゼピン二量体(IGN)は、二重鎖のDNAに結合する、1つまたはそれ以上のイミン官能基を含んでいる抗腫瘍剤またはその同等物である。PBDおよびIGN分子は、天然産物アトラマイシンをベースとし、配列選択的に、プリン-グアニン-プリン配列を優先して、DNAと相互作用する。例示的なPBDおよびその類似体には、SJG-136が含まれるが、これに限定されない。
【0250】
スプリセオスタチンおよびプラジエノライドは、スプライシングを阻害し、スプライセオソームSF3bと相互作用する抗腫瘍化合物である。スプリセオスタチンの例には、スプリセオスタチンA、FR901464、および、
【化19】
の構造を有する(2S,3Z)-5-{[(2R,3R,5S,6S)-6-{(2E,4E)-5-[(3R,4R,5R,7S)-7-(2-ヒドラジニル-2-オキソエチル)-4-ヒドロキシ-1,6-ジオキサスピロ[2.5]オクタ-5-イル]-3-メチルペンタ-2,4-ジエン-1-イル}-2,5-ジメチルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]アミノ}-5-オキソペンタ-3-エン-2-イルアセテートが含まれるが、これらに限定されない。プラジエノライドの例には、プラジエノライドB、プラジエノライドD、またはE7107が含まれるが、これらに限定されない。
【0251】
タキサンは、抗チューブリン剤または有糸分裂阻害剤として作用するジテルペンである。例示的なタキサンには、パクリタキセル(例えば、TAXOL(登録商標))、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0252】
チューブリシン(tubulysin)は、微小管を脱重合し、有糸分裂停止を誘導することが示された、粘液細菌の系統から単離された天然産物である。例示的なチューブリシンには、チューブリシンA、チューブリシンBおよびチューブリシンDが含まれるが、これらに限定されない。
【0253】
ビンカアルカロイドも、抗チューブリン剤である。例示的なビンカアルカロイドには、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビンが含まれるが、これらに限定されない。
【0254】
従って、いくつかの実施態様では、細胞傷害性物質は、MMAD(モノメチルオーリスタチンD)、0101(2-メチルアラニル-N-[(3R,4S,5S)-3-メトキシ-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソ-3-{[(1S)-2-フェニル-1-(1,3-チアゾール-2-イル)エチル]アミノ}プロピル]ピロリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチル-L-バリンアミド)、3377(N,2-ジメチルアラニル-N-{(1S,2R)-4-{(2S)-2-[(1R,2R)-3-{[(1S)-1-カルボキシル-2-フェニルエチル]アミノ}-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-2-メトキシ-1-[(1S)-1-メチルプロピル]-4-オキソブチル}-N-メチル-L-バリンアミド)、0131(2-メチル-L-プロリル-N-[(3R,4S,5S)-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-3-{[(1S)-1-カルボキシ-2-フェニルエチル]アミノ}-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチル-L-バリンアミド)、0131-OMe(N,2-ジメチルアラニル-N-[(3R,4S,5S)-3-メトキシ-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-1-メトキシ-3-{[(2S)-1-メトキシ-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル]アミノ}-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチルL-バリンアミド)、0121(2-メチル-L-プロリル-N-[(3R,4S,5S)-1-{(2S)-2-[(1R,2R)-3-{[(2S)-1-メトキシ-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル]アミノ}-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]ピロリジン-1-イル}-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル]-N-メチル-L-バリンアミド)、および、(2S,3Z)-5-{[(2R,3R,5S,6S)-6-{(2E,4E)-5-[(3R,4R,5R,7S)-7-(2-ヒドラジニル-2-オキソエチル)-4-ヒドロキシ-1,6-ジオキサスピロ[2.5]オクタ-5-イル]-3-メチルペンタ-2,4-ジエン-1-イル}-2,5-ジメチルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]アミノ}-5-オキソペンタ-3-エン-2-イルアセテートからなる群から選択される。
【0255】
いくつかの実施態様では、作用物質は免疫調節剤である。免疫調節剤の例には、ガンシクロビル、エタネルセプト、タクロリムス、シロリムス、ボクロスポリン、シクロスポリン、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキセート、糖質コルチコイドおよびその類似体、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、腫瘍壊死因子(TNF)、造血因子、インターロイキン(例えば、インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-3、IL-6、IL-10、IL-12、IL-18、およびIL-21)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)および顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン-α、-β、および-γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、並びにトロンボポエチン、またはこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0256】
いくつかの実施態様では、作用物質の部分は、イメージング剤(例えば、フルオロフォアまたはキレート剤)、例えば、フルオレセイン、ローダミン、ランタニド蛍光体、およびそれらの誘導体、または、キレート剤に結合した放射性同位元素である。フルオロフォアの例には、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(例えば、5-FITC)、フルオレセインアミダイト(FAM)(例えば、5-FAM)、エオシン、カルボキシフルオレセイン、エリトロシン、AlexaFluor(登録商標)(例えば、Alexa350、405、430、488、500、514、532、546、555、568、594、610、633、647、660、680、700、または750)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)(例えば、5-TAMRA)、テトラメチルローダミン(TMR)、およびスルホローダミン(SR)(例えば、SR101)が含まれるが、これらに限定されない。キレート剤の例には、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラ酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ酢酸(NOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン,1-グルタル酸-4,7-酢酸(デフェロキサミン)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、および、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-テトラ酢酸)(BAPTA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0257】
いくつかの実施態様では、治療用もしくは診断用放射性同位体または他の標識(例えば、PETもしくはSPECT標識)を、本明細書に記載のEGFRvIII抗体へのコンジュゲーションのために作用物質中に組み込むことができる。放射性同位体または他の標識の例には、3H、11C、13N、14C、15N、15O、35S、18F、32P、33P、47Sc、51Cr、57Co、58Co、59Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、75Se、76Br、77Br、86Y、89Zr、90Y、94Tc、95Ru、97Ru、99Tc、103Ru、105Rh、105Ru、107Hg、109Pd、111Ag、111In、113In、121Te、122Te、123I、124I、125I、125Te、126I、131I、131In、133I、142Pr、143Pr、153Pb、153Sm、161Tb、165Tm、166Dy、166H、167Tm、168Tm、169Yb、177Lu、186Re、188Re、189Re、197Pt、198Au、199Au、201Tl、203Hg、211At、212Bi、212Pb、213Bi、223Ra、224Acまたは225Acが含まれるが、これらに限定されない。
【0258】
いくつかの実施態様では、作用物質は、毒素、ホルモン、酵素、および増殖因子を含むがこれらに限定されない治療用タンパク質である。
【0259】
毒素タンパク質(またはポリペプチド)の例には、ジフテリア(例えば、ジフテリアA鎖)、シュードモナス外毒素およびエンドトキシン、リシン(例えば、リシンA鎖)、アブリン(例えば、アブリンA鎖)、モデッシン(例えば、モデッシンA鎖)、α-サルシン、アレウリテス・フォルジ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase I、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルス剤タンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、フィトラカ・アメリカナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテセン、阻害剤シスチンノット(ICK)ペプチド(例えば、セラトトキシン)、並びにコノトキシン(例えば、KIIIAまたはSmIIIa)が含まれるが、これらに限定されない。
【0260】
いくつかの実施態様では、作用物質は生体適合性ポリマーである。本明細書に記載のEGFRvIII抗体を生体適合性ポリマーにコンジュゲートさせて、血清半減期および生物活性を増大させ、かつ/またはインビボの半減期を延長できる。生体適合性ポリマーの例には、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体など、および双性イオン含有生体適合性ポリマー(例えば、ホスホリルコリン含有ポリマー)が含まれる。
【0261】
いくつかの実施態様では、作用物質は、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドである。
【0262】
別の態様では、本発明は、式:抗体-(アシル供与体であるグルタミンを含有するタグ)-(リンカー)-(細胞傷害剤)を含む、本明細書に記載の抗体のコンジュゲートを提供する。
【0263】
1つまたはそれ以上の反応性アミンを含むリンカーの例には、Ac-Lys-Gly(アセチル-リジン-グリシン)、アミノカプロン酸、Ac-Lys-β-Ala(アセチル-リジン-β-アラニン)、アミノ-PEG2(ポリエチレングリコール)-C2、アミノ-PEG3-C2、アミノ-PEG6-C2(またはアミノPEG6-プロピオニル)、Ac-Lys-Val-Cit-PABC(アセチル-リジン-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル)、アミノ-PEG6-C2-Val-Cit-PABC、アミノカプロイル-Val-Cit-PABC、[(3R,5R)-1-{3-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン-3,5-ジイル]ビス-Val-Cit-PABC、[(3S,5S)-1-{3-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン-3,5-ジイル]ビス-Val-Cit-PABC、プトレシンまたはAc-Lys-プトレシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0264】
EGFRvIII抗体およびこれらの抗体コンジュゲートを使用する方法
本発明の抗体および抗体コンジュゲートは、治療的処置方法および診断的処置方法を含むがこれらに限定されない、様々な用途で有用である。
【0265】
上記の方法により得られる抗体(例えば、単一特異性および二重特異性)および抗体コンジュゲートは、医薬として使用できる。いくつかの実施態様では、そのような医薬は、固形腫瘍および液性腫瘍を含むがんの処置に使用できる。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫(例えば、多形神経膠芽腫)、退形成星状細胞腫、巨細胞膠芽腫、膠肉腫、退形成乏突起神経膠腫、退形成上衣腫、退形成乏突起星細胞腫、脈絡叢癌腫、退形成神経節膠腫、松果体芽腫、松果体細胞腫、髄膜腫、髄上皮腫、上衣芽腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、混合膠腫、頭頸部癌、非小細胞肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、髄芽腫、結腸直腸癌、肛門癌、子宮頸癌、腎臓癌、皮膚癌、膵臓癌、肝臓癌、膀胱癌、胃癌、甲状腺癌、中皮腫、子宮癌、リンパ腫または白血病を含むがこれらに限定されない、EGFRvIIIに関連するがんである。
【0266】
いくつかの実施態様では、EGFRvIIIを発現する悪性細胞を有する対象において、腫瘍の増殖または進行を阻害する方法が提供され、その方法は、それを必要としている対象に有効量の本明細書に記載のEGFRvIII抗体またはEGFRvIII抗体コンジュゲートを含む組成物を投与することを含む。他の実施態様では、対象においてEGFRvIIIを発現している細胞の転移を阻害する方法が提供され、その方法は、それを必要としている対象に有効量の本明細書に記載のEGFRvIII抗体またはEGFRvIII抗体コンジュゲートを含む組成物を投与することを含む。他の実施態様では、対象の悪性細胞における腫瘍退縮を誘導する方法が提供され、その方法は、それを必要としている対象に有効量の本明細書に記載のEGFRvIII抗体またはEGFRvIII抗体コンジュゲートを含む組成物を投与することを含む。
【0267】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲートは、それを必要としている患者においてがんを処置するための医薬の製造において使用できる。
【0268】
いくつかの実施態様では、この処置を、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、標的化療法、ワクチン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、外科的切除、レーザー光療法および放射線療法の群から選択される1つまたはそれ以上のがんに対する療法と組み合わせることができる。例えば、本発明の抗体(単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲートを、1)標準治療、例えば、放射線、外科的切除、化学療法(例えば、テモゾロマイド、プロカルバジン、カルムスチン、ロムスチン、ビンクリスチンなど)、抗体療法、例えば、ベバシズマブ、抗血管新生療法、および/または、腫瘍治療電場;2)ワクチン、例えば、EGFRvIIIワクチン;3)標的化療法、例えば、キナーゼ阻害剤(例えばエベロリムス);および4)免疫療法(抗-PD-1、抗-PD-L1、抗-PD-L2、抗-41BB、抗-TIM3、抗-LAG3、抗-TIGIT、抗-OX40、抗-HVEM、抗-BTLA、抗-CD40、抗-CD47、抗-CSF1R、抗-CSF1、抗-MARCO、抗-IL8、抗-CXCR4および抗-CTLA4抗体を含むがこれらに限定されない)と共に(例えば、前に、同時に、または後に)、患者に投与できる。
【0269】
本発明の抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲートの投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸注、留置または移植を含む、任意の簡便な方法で実施し得る。本明細書に記載の組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、頭蓋内、節内、髄内、筋肉内で、静脈内もしくはまたはリンパ内注射により、または腹腔内で、患者に投与され得る。ある実施態様では、本発明のヘテロ多量体抗体組成物は、好ましくは静脈内注射により投与される。
【0270】
いくつかの実施態様では、抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲートの投与は、例えば、約0.01~約20mg/kg体重(これらの範囲内のすべての整数の値のmg/kgを含む)の投与を含み得る。いくつかの実施態様では、抗体または抗体コンジュゲートの投与は、約0.1~10mg/kg体重(これらの範囲内のすべての整数の値のmg/kgを含む)の投与を含む。ヘテロ多量体抗体は、1回またはそれ以上の投与回数で投与できる。いくつかの実施態様では、有効量の抗体または抗体コンジュゲートを、単回投与で投与できる。いくつかの実施態様では、有効量の抗体を、ある期間にわたり、1回より多い回数で投与できる。投与のタイミングは、担当医の判断の範囲内であり、患者の臨床的状態に依存する。個々の要請は異なるが、特定の疾患または症状のための所定の抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲートの有効量の最適範囲の決定は、当業者の技能の範囲内である。有効量は、治療的または予防的利益をもたらす量を意味する。投与される量は、齢、受容者の健康および体重、併用する処置の種類(もしあれば)、処置の頻度および望まれる効果の性質によるであろう。いくつかの実施態様では、ヘテロ多量体抗体またはそれらの抗体を含む組成物の有効量は、非経口投与される。いくつかの実施態様では、投与は、静脈内投与であり得る。いくつかの実施態様では、投与は、腫瘍内注射により直接的に行われ得る。
【0271】
いくつかの実施態様では、本明細書で提供される抗-EGFRvIII抗体は、診断目的で、例えば、試料(例えば、免疫組織化学アッセイにおいて)または患者におけるEGFRvIIIタンパク質を同定するためのアッセイにおいて、使用し得る。
【0272】
組成物
ある態様では、本発明は、本発明の抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲート、または上記のそれらの一部を、医薬的に許容し得る担体中に含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様では、本発明のポリペプチドは、中性の形態(双性イオンの形態を含む)で、または、正もしくは負に荷電した化学種として、存在し得る。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、対イオンと複合体化して、「医薬的に許容し得る塩」(1つまたはそれ以上のポリペプチドおよび1つまたはそれ以上の医薬的に許容し得る無機および塩基の酸および塩基に由来する対イオンを含む複合体を表す)を形成してもよい。
【0273】
抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲート、またはそれらの一部は、単独で、または、1つまたはそれ以上の他の本発明のポリペプチドと組み合わせて、または、1つまたはそれ以上の他の薬物(または、それらの任意の組合せ)と組み合わせて、投与し得る。従って、本発明の医薬組成物、方法および使用は、以下に詳述する通り、他の有効成分との組合せの実施態様(共投与)も包含する。
【0274】
本明細書で使用するとき、用語「共投与」、「共投与された」および「と組み合わせて」は、本発明の抗体および1つまたはそれ以上の他の治療剤に言及して、(i)処置を必要とする患者への、本明細書で開示するヘテロ二量体と治療剤の組合せの同時投与(そのような成分が、成分を該患者に対して実質的に同時に放出する単一剤形に一緒に製剤される場合)、(ii)処置を必要とする患者への、本明細書で開示するヘテロ二量体と治療剤の組合せの実質的な同時投与(そのような成分が、該患者によって実質的に同時に摂取される別個の剤形に、互いに離れて製剤され、その結果、該成分が、該患者に対して実質的に同時に放出される場合)、(iii)処置を必要とする患者への、本明細書で開示するヘテロ二量体と治療剤の組合せの順次投与(そのような成分が、該患者によって各投与の間にかなりの間隔を置いて連続した時期に摂取される別個の剤形に、互いから離れて製剤され、その結果、該成分が、該患者に対して、実質的に異なる時期に放出される場合)、および(iv)処置を必要とする患者への、本明細書で開示するヘテロ二量体と治療剤の組合せの順次投与(そのような成分が、該成分を制御された様式で放出する単一剤形に一緒に製剤され、その結果、それらが、該患者に対して、同時および/または異なる時期に、並行して、連続して、および/または、一部重複して放出される)を意味し、表し、含み、各パートは、同じ経路または異なる経路のどちらによって投与してもよい。
【0275】
一般に、本明細書で開示する抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲート、またはそれらの一部は、1つまたはそれ以上の医薬的に許容し得る賦形剤と共に、製剤として投与するのに適する。用語「賦形剤」は、本明細書では、本発明の化合物以外の任意の成分を述べるのに使用する。賦形剤の選択は、特定の投与方式、溶解性および安定性対する賦形剤の影響、剤形の性質などの要因に大きく依存する。本明細書で使用するとき、「医薬的に許容し得る賦形剤」には、生理的に適合性のある任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。医薬的に許容し得る賦形剤の一部の例は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、並びにこれらの組合せである。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムが組成物に含まれることが好ましいであろう。医薬的に許容し得る物質のさらなる例は、抗体の有効期間または有効性を高める、湿潤剤、または少量の補助物質、例えば、湿潤もしくは乳化剤、保存剤または緩衝剤である。
【0276】
本発明の医薬組成物およびその調製方法は、当業者には容易に明らかとなろう。そのような組成物およびその調製方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995) で見ることができる。医薬組成物は、GMP条件下で製造することが好ましい。
【0277】
本発明の医薬組成物は、まとめて、単一単位用量として、または複数の単一単位用量として、調製、包装、または販売し得る。本明細書で使用するとき、「単位用量」とは、所定の量の有効成分を含む、医薬組成物の個別の量である。有効成分の量は、一般に、対象に投与されることになる有効成分の投薬量、または、例えば、そのような投薬量の2分の1や3分の1などの、そのような投薬量の好都合な分数に等しい。ペプチド、タンパク質または抗体を投与するための、当分野で受け入れられているいかなる方法も、本明細書で開示するヘテロ二量体タンパク質およびそれらの一部に適切に用い得る。
【0278】
本発明の医薬組成物は、典型的には、非経口投与に適する。本明細書で使用する場合、医薬組成物の「非経口投与」には、対象の組織を物理的に突破し、組織における突破口を介して医薬組成物が投与され、従って、一般に、血流中、筋肉中、または内臓に直接投与される結果となることを特徴とする、任意の投与経路が含まれる。従って、非経口投与には、組成物の注射、外科的切開を経た組成物の適用、組織を貫通する非外科的創傷を介した組成物の適用などによる医薬組成物の投与が含まれるが、これらに限定されない。詳しくは、非経口投与には、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、滑液包内の注射または注入、および腎臓透析注入技術が含まれるが、これらに限定されないと企図される。好ましい実施態様には、静脈内または皮下経路が含まれる。
【0279】
非経口投与に適する医薬組成物の製剤は、典型的には、滅菌水や等張性滅菌食塩水などの医薬的に許容し得る担体と組み合わされた有効成分を一般に含む。このような製剤は、ボーラス投与または継続的投与に適する形で、調製、包装、または販売できる。注射用製剤は、アンプルや、保存剤を含有する多用量容器などの、単位剤形で調製、包装、または販売できる。非経口投与用の製剤には、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、乳濁液、泥膏などが含まれるが、これらに限定されない。そのような製剤は、懸濁化剤、安定剤、または分散剤を含むがこれらに限定されない、1種または複数の追加成分をさらに含み得る。非経口投与用製剤のある実施態様では、有効成分は、適切なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)で再構成してから、再構成された組成物を非経口投与するための、乾燥(即ち、粉末または顆粒)形態で提供される。非経口製剤には、塩、炭水化物、(好ましくは3~9のpHにする)緩衝剤などの賦形剤を含有してよい水溶液も含まれるが、非経口製剤は、同じ用途について、非水性滅菌溶液として、または発熱物質を含まない滅菌水などの適切なビヒクルと共に使用される乾燥形態として、より適切に製剤できる。例示的な非経口投与形態には、滅菌水溶液、例えば、プロピレングリコールまたはデキストロース水溶液中の溶液または懸濁液が含まれる。このような剤形は、所望により、適切に緩衝剤処理してもよい。非経口投与可能な他の有用な製剤として、有効成分を、微結晶の形で、またはリポソーム調製物中に含むものが挙げられる。非経口投与用の製剤は、即時型および/または変更型の放出がなされるように製剤することもできる。変更型放出製剤には、制御、遅延、持続、パルス、標的化、およびプログラム放出製剤が含まれる。例えば、ある態様では、注射用滅菌溶液は、ヘテロ二量体タンパク質、例えば二重特異性抗体を、必要に応じて、上で列挙した成分の1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に必要な量で混ぜた後、濾過滅菌することにより調製できる。一般には、基礎分散媒と、上で列挙したものからの必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に、活性化合物を導入することにより、分散液を調製する。注射用滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過されたその溶液から、有効成分と所望の任意の追加成分からなる粉末が得られる、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適正な流動度は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合では必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持できる。注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることにより実現できる。
【0280】
例示的、非限定的な本発明の医薬組成物は、約5.0~約6.5の範囲のpHを有し、約1mg/mL~約200mg/mLの本明細書に開示される抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲート、約1ミリモル濃度~約100ミリモル濃度のヒスチジン緩衝液、約0.01mg/mL~約10mg/mLのpolysorbate 80、約100ミリモル濃度~約400ミリモル濃度のトレハロース、および、約0.01ミリモル濃度~約1.0ミリモル濃度のEDTA二ナトリウム二水和物を含む滅菌水性溶液としての製剤である。
【0281】
投薬計画は、所望の最適な応答が得られるように調整できる。例えば、単一のボーラスを投与してもよく、分割されたいくつかの用量を、時間をかけて投与してもよく、または治療状況の緊急性に合わせて用量を増減してもよい。非経口組成物を投薬量単位形態で製剤することは、投与しやすく、投薬量が一律になるので、特に有利である。本明細書で使用する、投薬量単位形態とは、必要な医薬担体と共同して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を各単位が含有する、処置を受ける患者/対象への単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指す。本発明の投薬量単位形態の仕様は、一般に、(a)化学療法剤および達成される特定の治療または予防効果の独特な特性、および(b)個体の感受性を処置するためにこのような活性化合物を配合する分野に固有の制約によって一般的に決まり、これらに直接依存する。
【0282】
従って、本明細書で提供される開示に基づき、用量および投与計画を、当治療分野で周知の方法に従って調整することは、当業者に理解されるであろう。即ち、最大耐用量は、容易に確立され得、患者に検出可能な治療利益をもたらす有効量も決定し得、各薬剤を投与して患者に検出可能な治療利益をもたらす時間要件も決定できる。従って、ある特定の用量および投与計画を本明細書で例示するが、これらの例は、本発明を実践する際に患者に提供することのできる用量および投与計画を一切限定しない。
【0283】
投薬量の値は、緩和しようとする状態のタイプおよび重篤度によって変動し得、単回または複数回の用量を含み得ることに留意されたい。任意の特定の対象について、詳細な投薬計画は、個々の要求、および組成物の投与を管理監督する者の専門的な判断に従って時間と共に調整すべきであること、並びに本明細書で示す投薬量範囲は、例示的なものにすぎず、請求項に係る組成物の範囲または実用を限定するものでないことは、さらに理解されるべきである。さらに、本発明の組成物を用いた投薬計画は、疾患のタイプ、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、状態の重症度、投与経路、および用いる特定の抗体を含めた様々な要因に基づくものでよい。即ち、投薬計画は、幅広く変動し得るが、標準の方法を使用して日常的に決めることができる。例えば、用量は、薬動学的または薬力学的パラメータに基づき調整することができ、パラメータは、毒作用などの臨床作用および/または臨床検査値を含み得る。従って、本発明は、当業者によって決定される患者内での用量漸増を包含する。適切な投薬量および計画の決定は、関連分野で周知であり、本明細書で開示する教示が一度提供されれば、当業者によって実現されると理解される。
【0284】
ヒト対象への投与について、本明細書で開示する抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲートの合計1か月用量は、典型的には、当然のことながら投与方式、作用機序および標的の生物学に応じて、患者1人あたり約0.5mg~約1200mgの範囲にある。例えば、静脈内の1か月用量には、約1~約1000mg/患者が必要であり得る。合計1か月用量は、単回または分割用量で投与し得、医師の裁量で、本明細書で示す典型的範囲の範囲外になってもよい。
【0285】
本明細書で開示する抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲートの治療または予防有効量の例示的かつ非限定的な範囲は、約1~約1000mg/患者/月である。ある特定の実施態様では、ヘテロ二量体タンパク質は、約1~約200または約1~約150mg/患者/月で投与され得る。
【0286】
キット
本発明は、本方法で使用するためのキットも提供する。本発明のキットは、本明細書に記載の抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲート、および本明細書に記載の本発明の方法のいずれかによって使用するための指示書を含む、1つまたはそれ以上の容器を含む。一般に、これらの指示書は、上述した治療的処置のためにヘテロ二量体タンパク質を投与する説明を含む。
【0287】
本明細書に記載の抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)または抗体コンジュゲートの使用に関する指示書は、一般に、意図される治療のための投与量、投薬スケジュール、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、マルチドーズパッケージ)、またはサブユニット用量のものであり得る。本発明のキット内に供給される指示書は、一般に、ラベルまたは添付文書(例えば、キット内に含まれる紙シート)での書面による指示書であるが、機械で読める指示書(例えば、磁気または光記憶ディスクで実行される指示書)も許容できる。
【0288】
本発明のキットは、適当な包装内にある。適当な包装には、バイアル、ボトル、広口瓶、フレキシブル包装(例えば、密封されたマイラーバッグまたはビニール袋)などが含まれるが、これらに限定されない。特定のデバイス、例えば、吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザ)、またはミニポンプなどの注入デバイスなどと組み合わせて使用するためのパッケージも企図されている。キットは、滅菌したアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであり得る)。容器も、滅菌したアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1種の活性物質は、二重特異性抗体である。容器は、第2の医薬的活性物質をさらに含むことができる。
【0289】
キットは、追加の構成要素、例えば、緩衝液および解釈情報などを任意選択により提供できる。通常、キットは、容器、および容器上の、またはこれに付随したラベルまたは添付文書を含む。
【0290】
米国仮出願番号62/281,543(2016年1月21日出願)および62/431,766(2016年12月8日出願)の内容を、あらゆる目的で本明細書の一部とする。
【0291】
生物の寄託
本発明の代表的な材料は、American Type Culture Collection(アメリカ合衆国、20110-2209、バージニア州、マサチューセッツ、ユニバーシティブールバード、10801)に寄託した。ATCC受託番号 を有するベクターは、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドであり、ATCC受託番号 を有するベクターは、重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドである。寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約およびその下の規定(ブダペスト条約)の条項下で行った。これにより、寄託日から30年間、寄託物の生存培養が保証される。寄託物は、ブダペスト条約の条項、並びにファイザー・インクとATCCとの契約の対象であって、関係する米国特許の発行の後、または米国もしくは外国特許出願の公共への公開の後のいずれか早い方に、公共に寄託物の培養の子孫の永続的および非制限的利用可能性を保証し、米国特許法第122条およびこれに準じた長官規則(886 OG 638を特に参照して連邦規則法典第37巻第1.14条を含む)によって、米国特許商標庁長官が権利を有すると決定したものへの子孫の利用可能性を保証する、契約の対象の下でATCCによって利用可能にされることになる。
【0292】
本願の譲受人は、寄託した材料の培養物が、適当な条件下で培養されたとき、死滅し、または失われ、もしくは破壊された場合、通知された後、材料を別の同じものに即座に置き換えることに同意した。寄託した材料の利用可能性は、任意の政府の権限下でその特許法に従って付与された権利に違反した本発明の実施のライセンスと解釈されるべきでない。
【0293】
以下の実施例は、例示的な目的だけのために提供されており、本発明の範囲を決して限定するように意図されていない。実際に、本明細書に示し、記載したものに加えて、本発明の様々な改変形態が、前述の説明から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内にある。
【実施例】
【0294】
実施例
実施例1:組換え抗-EGFRvIIIマウス-ヒトキメラ抗体およびヒト化抗体の親和性測定
本実施例は、キメラおよびヒト化抗-EGFRvIII抗体の親和性を25℃および37℃で測定するものである。
【0295】
ハイブリドーマから生成した抗-EGFRvIIIマウス(m)抗体m62G7を配列解読し、マウス-ヒトキメラ抗体として発現するのに適するベクターにサブクローニングした。マウス抗体m62G7のCDRをヒトフレームワークに移植し、ヒトIgG1組換え抗体h62G7として発現させた。重鎖および軽鎖のCDRに変異を導入することにより、h62G7の親和性変異体を作製した。組換え抗-EGFRvIIIキメラ抗体m62G7およびヒト化h62G7抗体の親和性を、実験等級の抗-ヒトFc結合CM4センサーチップ(GE Healthcare Inc., Piscataway, NJ)を備えた表面プラズモン共鳴Biacore(商標)T200バイオセンサーで測定した。次いで、抗-EGFRvIII抗体を抗-ヒトFcにより捕捉した。次いで、単量体8-ヒスチジンタグ付加ヒトEGFRvIII細胞外ドメインを分析物として最高濃度1000nMの10倍希釈系列で注入した。抗-EGFRvIII抗体のヒトEGFRvIIIに対する親和性を25℃および37℃で測定した(表6)。これらの抗体のいずれも、1000nM 8-ヒスチジンタグ付加組換え野生型タンパク質EGFRwtに、同じアッセイ条件下で検出可能な結合を示さなかった。
【0296】
表6において、h62G7の変異体を、重鎖の改変、次いで軽鎖の改変を参照して記述する。例えば、抗体クローン「h62G7-EQ/L6」は、重鎖の「EQ」改変(本明細書において「h62G7-EQ」とも呼ばれる)および軽鎖の「L6」改変(本明細書において「h62G7-L6」とも呼ばれる)を含むh62G7クローンを表す。これらの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を、表2に提供する。また、本願において、h62G7変異体は、重鎖または軽鎖変異体のいずれかを最初に記載して表し得る-よって、例えば、「h62G7-EQ/L6」および「h62G7-L6/EQ」は、両方とも、h62G7-EQ重鎖およびh62G7-L6軽鎖を含む抗体を表す。
【0297】
【0298】
実施例2:ヒト抗-EGFRvIII抗体の親和性測定
本実施例は、各種のヒト抗-EGFRvIII抗体の親和性を37℃で測定するものである。
【0299】
EGFRvIIIに対するヒト抗体を生成するために、遺伝子組換えAlivaMab マウス (Ablexis LLC, San Francisco, CA) を、EGFRvIII、F98-npEGFRvIII (American Type Culture Collection, Manassas, VA) およびEGFRvIIIのジャンクション領域に割り当てられたペプチド(配列番号227:CGSGSGLEEKKGNYVVTDH)を発現するラット神経膠芽腫細胞株の交互のスケジュールで免疫した。標準的な技法を使用してハイブリドーマを生成した。これらのハイブリドーマのEGFRvIIIに対する結合親和性および特異性を決定するために、培養上清中の抗体を、抗-マウスFc結合CM4センサーチップ(Biacore(商標) AB, Uppsala, Sweden - 現 GE Healthcare)を備えたBiacore(商標)T200バイオセンサーを使用して、抗-マウスFcにより捕捉した。次いで、単量体8-ヒスチジンタグ付加ヒトEGFRvIII細胞外ドメインを分析物として、最高濃度1000nMで出発する10倍希釈系列で注入した。抗-EGFRvIII抗体のヒトEGFRvIIIに対する親和性を37℃で測定した(表7)。これらのハイブリドーマ抗体のいずれも、1000nM 8-ヒスチジンタグ付加組換え野生型タンパク質EGFRwtに、同じアッセイ条件下で検出可能な結合を示さなかった。
【0300】
【0301】
実施例3:フローサイトメトリーによる、抗-EGFRvIII抗体のEGFRvIII発現細胞株に対する結合特異性
本実施例は、抗-EGFRvIII抗体のEGFRvIII発現細胞に対する細胞結合特異性を立証するものである。
【0302】
AlivaMab マウスから生成した抗-EGFRvIII抗体の細胞結合特異性を評価するために、3つの同質遺伝子的ラット神経膠芽腫細胞株およびヒト癌細胞株を使用した:F98(いずれの形態のヒトEGFRも発現しない)、F98-EGFRwt(野生型EGFRを発現する)、F98-npEGFRvIII(EGFRvIIIを発現する)およびA431(野生型EGFRを過剰発現する類表皮癌細胞株)、すべてAmerican Type Culture Collection (Manassas, VA) から入手した。細胞染色のために、500,000個の細胞を50μlのハイブリドーマ上清と45分間4℃でインキュベートし、結合バッファー(PBS(リン酸緩衝食塩水)+0.5%BSA(ウシ血清アルブミン))で洗浄し、続いて Jackson ImmunoResearch Laboratories (West Grove, PA) のFITC-コンジュゲート-ヤギ抗-マウスFc特異的二次抗体とインキュベートした。表8Aおよび8Bは、EGFRvIII発現細胞株上のEGFRvIII抗体(クローン20G5を除く)の平均蛍光強度(MFI)が、非発現細胞株よりも少なくとも10倍高かったことを示す。
図1A、
図1Bおよび
図1Cは、組換えヒトIgG1抗体としてクローニングされ、発現された3つのEGFRvIII特異的クローンである、42G9(
図1A)、32A10(
図1B)および32G8(
図1C)の、3つのF98細胞株に対するFACS結合ヒストグラムの例を示す。
【0303】
【0304】
【0305】
実施例4:ファージライブラリー由来の完全ヒト抗-EGFRvIII抗体の親和性測定
本実施例は、各種のヒト抗-EGFRvIII抗体の親和性を25℃で測定するものである。
【0306】
ファージライブラリースクリーンにより得られたヒト抗-EGFRvIII抗体を配列解読し、ヒトIgG1抗体として発現するのに適するベクターにサブクローニングした。抗体の親和性を、25℃で、抗-ヒトFc結合CM4センサーチップ(GE Healthcare Inc., Piscataway, NJ)を備えた表面プラズモン共鳴Biacore(商標)T200バイオセンサーで測定した(表9)。抗-EGFRvIII抗体を抗-ヒトFcにより捕捉した。次いで、単量体8-ヒスチジンタグ付加ヒトEGFRvIII細胞外ドメインを分析物として1000nMから出発する10倍希釈系列で注入した。これらの2つの抗体のうち、C6のみが、25℃で1000nM 8-ヒスチジンタグ付加組換え野生型タンパク質EGFRwtに非常に弱いが検出可能な結合を示した。
【0307】
【0308】
実施例5:EGFRvIIIを発現するGBM細胞株の生成および特性評価
本実施例は、GBM細胞株における野生型EGFRおよびEGFRvIIIの発現を立証するものである。
【0309】
5つのGFP(緑色蛍光タンパク質)およびルシフェラーゼを導入されたヒト神経膠芽腫細胞株、DKMG、LN18、LN18-EGFRvIII、LN229およびLN229-EGFRvIIIを機能解析に使用した。内在性野生型EGFRおよびEGFRvIIIの両方を発現するDKMGは、DSMZ(Braunschweig, Germany)から入手した。野生型EGFRのみを発現するLN18およびLN229は、American Type Culture Collection (Manassas, VA) から入手した。GFP-ルシフェラーゼ標識細胞株を生成するために、DKMG、LN18およびLN229に、GFP(緑色蛍光タンパク質)およびルシフェラーゼの両方をバイシストロニックな系でコードするレンチウイルス粒子 (Amsbio, Cambridge, MA) を導入した。次いで、これらの親細胞株に全長EGFRvIII遺伝子(配列番号201)をコードするレンチウイルスベクターを導入することにより、LN18-EGFRvIIIおよびLN229-EGFRvIIIを生成した。次いで、各細胞株における野生型EGFRおよびEGFRvIIIの発現をフローサイトメトリーで分析した。細胞染色のために、300,000個の細胞を、3μgのEGFR野生型特異的抗体またはEGFRvIII特異的抗体と、100μlの結合バッファー(PBS(リン酸緩衝食塩水)+2%FBS)中、45分間4℃でインキュベートし、結合バッファーで洗浄し、続いて、Jackson ImmunoResearch Laboratories (West Grove, PA)の Alexa Fluor 647-コンジュゲート-ヤギ抗-ヒトFc特異的二次抗体とインキュベートした。
図2A-Cは、各々、LN229-EGFRvIII、LN18-EGFRvIIIおよびDKMGにおける野生型EGFRおよびEGFRvIIIの発現プロフィールを示す。
【0310】
実施例6:EGFRvIII-CD3二重特異性抗体のインビトロ細胞傷害性アッセイ
本実施例は、EGFRvIIIを発現するGBM細胞株に対するEGFRvIII-CD3二重特異性抗体の細胞傷害性を立証するものである。
【0311】
EGFRvIII-CD3二重特異性抗体を生成するために、抗-EGFRvIII抗体および抗-CD3抗体の重鎖可変ドメインを、適当なヒトIgG2をベースとする二重特異性ベクターにサブクローニングし、それらの対応する軽鎖と共にHEK293細胞に発現させた。EGFRvIII-CD3二重特異性抗体の精製は、公開された方法(J Mol Biol, 2012, 3, pp204-219; 米国特許出願公開2013/0115208)に従って行った。これらのアッセイにおいて、EGFRvIII-CD3二重特異性抗体は、抗-EGFRvIIIクローンh62G7-EQ/L6、30D8または42G9の抗-EGFRvIII配列を含む。
【0312】
本実施例における標的細胞は:EGFRvIIIを導入されたLN18-EGFRvIII細胞(
図3A)および親のLN18(
図3B)細胞;EGFRvIIIを導入されたLN229-EGFRvIII(
図4A)および親のLN229(
図4B)細胞;並びに、DKMG細胞(内在性のEGFRvIIIおよびEGFR野生型タンパク質を発現する)(
図5)であった。
【0313】
細胞傷害性アッセイのために、ルシフェラーゼを導入された標的細胞を、PBMC培地(RPMI、10%FBS、2mM L-グルタミン、1%Pen/Strep、20uM β-メルカプトエタノール、10mM HEPES、1%非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム)中、白色96ウェルプレートに細胞10,000個/ウェルで播種し、37℃でインキュベートした。24時間後、所望のT:E(標的:エフェクター)比(LN18およびLN229細胞には、1:1とするために10,000個のT細胞;DKMG細胞には、1:5とするために50,000個のT細胞)で活性化されたT細胞を、EGFRvIII-CD3二重特異性抗体、負の対照としてのヒトIgG、負の対照としての二重特異性Fc骨格中のCD3一価抗体、または、負の対照としての野生型ヒトIgG中の二価抗-EGFRvIIImAb 42G9と共に標的細胞に添加した。細胞をさらに24時間37℃でインキュベートした。アッセイ終了時に生きている標的細胞の量を検出するために、培地を廃棄し、100μlの150μg/mlルシフェリンを各ウェルに添加した。発光シグナルをSpectraMax M5 Plate Reader (Molecular Devices, Sunnyvale, CA) で取得した。生きている標的細胞の割合を、各サンプルの発光の値を標的細胞のみを含む対照ウェルのものに対して標準化することにより決定した。
【0314】
結果を
図3A、3B、4A、4Bおよび5にまとめる。これらのグラフにおいて、EGFRvIII-CD3二重特異性抗体のデータを白色の記号で、負の対照抗体のデータを黒色の記号で表す。
【0315】
EGFRvIIIを発現する標的細胞は、EGFRvIII-CD3二重特異性抗体h62G7-EQ/L6/CD3biFc、30D8/CD3biFcおよび42G9/CD3biFcによる処理に対して用量依存的応答を示した。対照的に、EGFR野生型タンパク質のみを発現する標的細胞は殺されなかった。これは、EGFRvIIIを発現する細胞に対するEGFRvIII-CD3二重特異性抗体の特異性を示す。加えて、EGFRvIIIを発現する標的細胞は、負の対照抗体であるヒトIgG、CD3一価biFcまたは42G1 hIgG1(抗-EGFRvIII抗体)による処理に応答を示さなかった。
【0316】
例えば、0.01nM h62G7-EQ/L6/CD3biFcで処理されたLN18-EGFRvIII標的細胞は、アッセイ終了時に約20%のみが生存できた。対照的に、0.1nM対照IgG、CD3一価biFcまたは42G9 hIgG1で処理されたLN18-EGFRvIII標的細胞は、アッセイ終了時に約100%が生存できた(
図3A)。加えて、0.01nM h62G7-EQ/L6/CD3biFcで処理された親の細胞株であるLN18標的細胞は、アッセイ終了時に約100%が生存できた(
図3B)。
【0317】
他の例では、0.01nM 42G9/CD3biFcで処理されたLN229-EGFRvIII標的細胞は、アッセイ終了時に約35%のみが生存できた。対照的に、0.1nM対照IgG、CD3一価biFcまたは42G9 hIgG1で処理されたLN229-EGFRvIII標的細胞は、アッセイ終了時に約90~100%が生存できた(
図4A)。加えて、0.01nM 42G9/CD3biFcで処理された親の細胞株であるLN229標的細胞は、アッセイ終了時に約100%が生存できた(FIG4B)。
【0318】
他の例では、1nM h62G7-EQ/L6/CD3biFcで処理されたDKMG標的細胞は、アッセイ終了時に約35%のみが生存できた(
図5)。対照的に、1nM対照IgG、CD3一価biFcまたは42G9 hIgG1で処理されたDKMG標的細胞は、アッセイ終了時に約100%が生存できた(
図5)。
【0319】
これらのデータは、EGFRvIII-CD3二重特異性抗体が、T細胞によるEGFRvIII発現細胞の殺傷を効果的に媒介することを立証する。
【0320】
実施例7:GBMモデルLN229-EGFRvIIIにおける抗-EGFRvIII-CD3二重特異性抗体のインビボ研究
本実施例は、皮下LN229-EGFRvIII GBM細胞株モデルにおいて抗-EGFRvIII二重特異性抗体のインビボ抗腫瘍活性を測定するものである。
【0321】
300万個のLN229-EGFRvIII細胞を5~6週齢NSGマウス (Jackson Laboratory, Sacramento, CA) に皮下移植した。腫瘍の体積を、週に1回ノギスで測定し、式:腫瘍の体積=(長さx幅2)/2に従って算出した。腫瘍移植後18日目に、動物を腫瘍のサイズにより無作為に5匹ずつの群に分けた。2000万個の新鮮な汎T細胞を腹腔内に単回投与し、続いて、0.5mg/kgのEGFRvIII-CD3二重特異性抗体(これらの抗体は、抗-EGFRvIIIクローンh62G7-EQ/L6、30D8または42G9の抗-EGFRvIII配列を含む)または二重特異性Fc骨格中のCD3一価対照を尾静脈にボーラス注射した。
【0322】
結果を
図6にまとめる。このグラフにおいて、EGFRvIII-CD3二重特異性抗体のデータを白色の記号で、負の対照抗体のデータを黒色の記号で表す。
【0323】
EGFRvIII-CD3二重特異性抗体h62G7-EQ/L6/CD3biFc、30D8/CD3biFcおよび42G9/CD3biFcは、EGFRvIIIを発現するLN229-EGFRvIII GBM細胞のインビボでの増殖を阻害した。対照的に、負の対照の抗体CD3一価biFcおよび無処理の対照(即ち、マウスはT細胞または抗体を投与されなかった)は、LN229-EGFRvIII GBM細胞のインビボでの増殖を阻害しなかった。例えば、腫瘍移植後37日目に、EGFRvIII-CD3二重特異性抗体30D8/CD3biFcおよび42G9/CD3biFcで処置されたマウスの平均腫瘍体積は100mm3未満であったが、無処置またはCD3一価biFcで処置したマウスの平均腫瘍体積は1200mm3より大きかった。
【0324】
これらのデータは、EGFRvIII発現腫瘍細胞に対するEGFRvIII-CD3二重特異性抗体のインビボの抗腫瘍活性を立証する。
【0325】
開示する教示について、種々の用途、方法、キットおよび組成物を参照して説明してきたが、本明細書における教示および以下の請求項に係る発明から離れることなく、種々の変更および改良がなし得ることは理解されよう。前述の実施例は、開示する教示をより十分に例示するために提供したものであり、本明細書で示す教示の範囲を限定するものでない。本教示について、これらの例示的な実施態様に関して説明してきたが、当業者は、これらの例示的な実施態様のいくつもの変形および改変が、過度な実験なしで可能であることを容易に理解するであろう。このような変形および改変はすべて、本教示の範囲内にある。
【0326】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用するすべての参考文献、およびその中で引用されている参考文献は、すでにそうされていない限り、その全体が参照により本明細書に導入される。導入された文献および同様の資料の1つまたはそれ以上が、定義された用語、用語の用法、記載される技法などを含むが、これらに限定されない事項について、本出願、本出願と相違または矛盾する場合、本出願が統制する。
【0327】
前述の説明および実施例は、本発明のある特定の詳細な実施態様を詳述し、発明者らが企図する最良の形態について説明するものである。しかしながら、前述の事項が本文中でどんなに詳細に説明されていようと、本発明は、多様に実施されてよく、また、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈すべきであることが理解されよう。
【配列表】