(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】光学部材駆動装置、カメラ装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20230207BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20230207BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20230207BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20230207BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B30/00
G03B17/02
H04N23/68
(21)【出願番号】P 2021148437
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】202010982255.8
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】316006783
【氏名又は名称】新思考電機有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】和出 達貴
【審査官】小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-081785(JP,A)
【文献】特開平11-234962(JP,A)
【文献】特開2013-172629(JP,A)
【文献】特開2018-061326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0119684(US,A1)
【文献】国際公開第2010/104130(WO,A1)
【文献】中国実用新案第210344756(CN,U)
【文献】特開2003-235273(JP,A)
【文献】特開2011-129064(JP,A)
【文献】特開平09-006435(JP,A)
【文献】特開平09-054356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G03B 30/00
G03B 17/02
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電素子で構成され円環状に形成された圧電板と、前記圧電板の表面に設けられ、半径方向且つ厚さ方向に複数の切り込みが設けられることで形成された複数の駆動面を有する円環状の金属板と、を有するモータと、
前記複数の駆動面に当接する被駆動面を有し、前記円環状の中心を通る軸の軸周りに前記金属板に対して相対的に回転する被駆動部と、
前記モー
タが設けられている固定部と、
光学部材を保持する保持部を有し
、前記被駆動
部が設けられ、前記軸周りに前記固定部に対して相対的に回転する可動部と、
を具備
し、
前記可動部は、ホルダを有し、前記ホルダは、前記保持部が設けられた水平部と、一方に前記被駆動部が設けられ、他方に摺動部が設けられて互いに対向する2つの側板が弾性部材を折り曲げて形成されており、
前記ホルダは、前記被駆動部を介して前記モータを押圧し、前記摺動部を介して前記固定部に設けられた回転支持部又はもう1つの前記モータを押圧している
ことを特徴とする光学部材駆動装置。
【請求項2】
前記被駆動部の前記被駆動面は、前記光学部材の側と反対側を向いた凸球面を呈しており、前記軸は前記凸球面の中心を通る
ことを特徴とする請求項1に記載の光学部材駆動装置。
【請求項3】
前記被駆動面と、前記被駆動面と同形状の
前記摺動部の凸球面と、が前記保持部を挟んで両側に設けられており、2つの前記凸球面の中心は前記保持部の中心にあるとともに一致している
ことを特徴とする請求項2に記載の光学部材駆動装置。
【請求項4】
前記固定部は、前記可動部を囲んで前記可動部に対向しており、
前記被駆動面には、前記モータの駆動面が当接し、
前記
摺動部の凸球面には
、前記回転
支持部の凹球面、円錐面、若しくは3点の当接点を有する当接面、又はもう1つの前記モータの駆動面が当接する
ことを特徴とする請求項3に記載の光学部材駆動装置。
【請求項5】
前記被駆動面と、前記
摺動部の凸球面は、さらに、前記保持部を挟んで他の両側にも設けられており、4つの前記凸球面の中心は前記保持部の中心にあるとともに一致しており、2つの前記軸は直交している
ことを特徴とする請求項3に記載の光学部材駆動装置。
【請求項6】
前記被駆動面は、さらにもう1つ設けられており、5つの前記凸球面の中心は前記保持部の中心にあるとともに一致しており、3つの前記軸は互いに直交している
ことを特徴とする請求項
5に記載の光学部材駆動装置。
【請求項7】
前記金属板が設けられた側とは反対側の前記圧電板は、エラストマー部材を介して前記固定
部に保持されている
請求項1に記載の光学部材駆動装置。
【請求項8】
前記ホルダの前記水平部及び2つの
前記側
板と
それぞれ対向する3つの板部を有するFPCを具備し、
それぞれの前記板部に前記モータが設けられている
ことを特徴とする請求項
6に記載の光学部材駆動装置。
【請求項9】
2つの前記側板に対向する
前記板部に設けられたそれぞれの前記モータを挟んだ両側に位置検出用センサが設けられている
ことを特徴とする請求項
8に記載の光学部材駆動装置。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の光学部材駆動装置を備えたカメラ装置。
【請求項11】
請求項
10に記載のカメラ装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン等の電子機器に用いられる光学部材駆動装置、カメラ装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の電子機器に用いられるカメラ装置の中には、レンズ体と画像センサとを有するモジュールを可動部とし、可動部をX軸やY軸の軸周りに傾動させて手振れ補正を行うものがある。この種のカメラ装置に関わる技術を開示した文献として、特許文献1がある。この文献1に開示された撮影用光学装置は、レンズ、撮像素子、及びフォーカス機構を有する可動部におけるX、及びY方向に対向する外面に手振れ補正用の磁石を設けるとともに、可動部を保持する固定部の底面の中心にピボット部を設け、このピボット部により可動部の底面の中心を支持し、固定部の内面に手振れ補正用のコイルを設けたものである。この装置では、コイルに電流を流すと、可動部が、ピボット部に支持された点を中心として傾動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術の場合、大きな駆動量を必要とする場合には、駆動力が不足し、十分な駆動力を得るためには、装置自体が大型化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、小型でも大きな駆動力を得ることができる光学部材駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の好適な態様である光学部材駆動装置は、複数の圧電素子で構成され円環状に形成された圧電板と、前記圧電板の表面に設けられ、半径方向且つ厚さ方向に複数の切り込みが設けられることで形成された複数の駆動面を有する円環状の金属板と、を有するモータと、前記複数の駆動面に当接する被駆動面を有し、前記円環状の中心を通る軸の軸周りに前記金属板に対して相対的に回転する被駆動部と、前記モータ又は前記被駆動部の一方が設けられている固定部と、光学部材を保持する保持部を有し、前記モータ又は前記被駆動部の他方が設けられ、前記軸周りに前記固定部に対して相対的に回転する可動部と、を具備することを特徴とする。
【0007】
この態様において、前記可動部に設けられた前記被駆動部の前記被駆動面は、前記光学部材の側と反対側を向いた凸球面を呈しており、前記軸は前記凸球面の中心を通ってもよい。
【0008】
また、前記被駆動面と、前記被駆動面と同形状の凸球面と、が前記保持部を挟んで両側に設けられており、2つの前記凸球面の中心は前記保持部の中心にあるとともに一致していてもよい。
【0009】
また、前記固定部は、前記可動部を囲んで前記可動部に対向しており、前記被駆動面には、前記モータの駆動面が当接し、前記被駆動面と同形状の凸球面には、前記固定部に設けられた回転受部の凹球面、円錐面、若しくは3点の当接点を有する当接面、又はもう1つの前記モータの駆動面が当接してもよい。
【0010】
また、前記可動部は、ホルダを有し、前記ホルダは、前記保持部が設けられた水平部と前記被駆動面が設けられた2つの側部が弾性部材を折り曲げて形成されており、前記ホルダが前記モータを押圧し、前記被駆動面と同形状の凸球面が前記回転受部又はもう1つの前記モータを押圧していてもよい。
【0011】
また、前記被駆動面と、前記被駆動面と同形状の凸球面は、さらに、前記保持部を挟んで他の両側にも設けられており、4つの前記凸球面の中心は前記保持部の中心にあるとともに一致しており、2つの前記軸は直交していてもよい。
【0012】
また、前記被駆動面は、さらにもう1つ設けられており、5つの前記凸球面の中心は前記保持部の中心にあるとともに一致しており、3つの前記軸は互いに直交していてもよい。
【0013】
また、前記金属板が設けられた側とは反対側の前記圧電板は、エラストマー部材を介して前記固定部又は前記可動部に保持されていてもよい。
【0014】
また、前記ホルダの前記水平部及び2つの側部と対向する3つの板部を有するFPCを具備し、それぞれの前記板部に前記モータが設けられていてもよい。
【0015】
また、2つの前記側板に対向する板部に設けられたそれぞれの前記モータを挟んだ両側に位置検出用センサが設けられていてもよい。
【0016】
本発明の別の好適な態様であるカメラ装置は、上記の光学部材駆動装置を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の別の好適な態様である電子機器は、上記のカメラ装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明による光学部材駆動装置は、複数の圧電素子で円環状に形成された圧電板と、前記圧電素子の表面に設けられ、半径方向且つ厚さ方向に複数の切り込みが設けられることで形成された複数の駆動面を有する円環状の金属板と、を有するモータと、前記複数の駆動面に当接する被駆動面を有し、前記円環状の中心を通る軸の軸周りに前記金属板に対して相対的に回転する被駆動部と、前記モータ又は前記被駆動部の一方が設けられている固定部と、光学部材を保持する保持部を有し、前記モータ又は前記被駆動部の他方が設けられ、前記軸周りに前記固定部に対して相対的に回転する可動部と、を具備する。モータは、駆動面が被駆動部の被駆動面に当接して回転させるので小さくても駆動力が大きい。よって、小型でも大きな駆動力を得ることができる光学部材駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態である光学部材駆動装置100を含むカメラ装置101が搭載されたスマートフォン109の正面図である。
【
図2】
図1の光学部材駆動装置100の斜視図である。
【
図3】
図2の光学部材駆動装置100を分解した斜視図である。
【
図5】
図4から第1FPC3、第2FPC9及び底板10を除いた斜視図である。
【
図9】
図2の光学部材駆動装置100におけるモータ8cの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態である光学部材駆動装置100を含むカメラ装置101は、スマートフォン109の筐体内に収容される。
【0021】
カメラ装置101は、光学部材としてのカメラモジュール2と、カメラモジュール2を駆動する光学部材駆動装置100とを有する。カメラモジュール2は、レンズ体21と、画像センサ22と、レンズ駆動装置23と、これらを覆う直方体状の筐体24とを有する。画像センサ22は、レンズ体21を経由して入射する光を画像信号に変換して出力する。レンズ駆動装置23は、レンズ体21を、その光軸と平行な方向に沿って駆動する。
【0022】
ここでは、XYZ直交座標系が用いられ、X軸とY軸とZ軸は互いに直交する。レンズ体21の光軸方向は、初期状態においてZ方向と平行である。また、レンズ体21から見て被写体の側が+Z側であり、前側と称し、その反対側(画像センサ22側)が-Z側であり、後側と称することがある。
【0023】
図3に示すように、光学部材駆動装置100は、3つのモータ8a、モータ8b、モータ8cと、被駆動部と、固定部と、可動部と、を具備している。
【0024】
図9(A)に示すように、モータ8は、圧電板85と、金属板86と、を有する。圧電板85は、複数の圧電素子89で構成され円環状に形成されている。金属板86は圧電板85の表面に円環状に設けられ、半径方向且つ厚さ方向に複数の切り込み87が設けられることで形成された複数の駆動面88を有している。本実施形態において、モータ8は、モータ8a、8b、8cの3台が用いられている。
【0025】
被駆動部は、本実施形態においてはホルダ6の被駆動面670、680が設けられている部分が対応し、複数の駆動面88に当接する受面である被駆動面670、680を有している。被駆動部は、モータ8の円環状の中心Oを通る軸(
図9AではZ軸)の軸周りに金属板86に対して相対的に回転する。
【0026】
固定部は、本実施形態においてカバー1、第2FPC9、及び底板10が対応し、また、2つの回転支持部4及び4つの位置検出用センサ7も固定部に属する。また、本実施形態においては、モータ8が設けられている。
【0027】
可動部は、本実施形態において、ホルダ6の被駆動面670、680が設けられている部分を除いた部分が対応し、第1FPC3、4つの位置検出用磁石5も可動部に属する。ホルダ6は、光学部材であるカメラモジュール2を保持する保持部である後板67を有し、被駆動部の被駆動面670、680が設けられている。そして、可動部はモータ8の軸周りに固定部に対して相対的に回転する。ただし、本実施形態において、被駆動面670、680は、後述するようにホルダ6を構成する金属板で構成されており、被駆動面670、680も可動部を構成している。
【0028】
カバー1は、四角形の前板17と、前板17の四辺から-Z側に延在する4つの側板18とを有する。カバー1と四角形の底板10は、筐体として組み合わされる。カバー1の前板17には、貫通孔15が設けられている。カバー1と底板10は、ホルダ6を囲み、ホルダ6に対向する。
【0029】
カメラモジュール2は、ホルダ6に収められている。ホルダ6は、1枚の弾性を有する金属板で、水平部である後板67と、この後板67の四辺から折り曲げられて起立する4つの側板68とを有する。後板67は、正方形状をなしている。側板68は、逆T字状をなしている。後板67の中央は、被駆動面670として、カメラモジュール2がある側とは反対側の-Z側に膨らんでいる。後板67における被駆動面670の周囲は、カメラモジュール2を保持する保持部である。+X側と-Y側の側板68の中央は、被駆動面680として、それぞれカメラモジュール2がある側とは反対側の+X側、-Y側に膨らんでいる。-X側と+Y側の側板68の中央は、摺動面690として、それぞれカメラモジュール2がある側とは反対側の-X側、+Y側に膨らんでいる。被駆動面670、680、及び摺動面690は例えばプレス加工で形成された、凸球面である。2つの被駆動面680と2つの摺動面690は同じ形状、同じ大きさを有する。被駆動面670、680、及び摺動面690の中心Oは、カメラモジュール2の中心である保持部の中心にあるとともに一致する。被駆動面670、680における凸球面の中心Oを各モータ8の軸が通る。隣り合う側板68の端辺の間には隙間がある。
【0030】
+X側の側板68の外面における被駆動面680を挟んだY方向の両側と、-Y側の側板68の外面における被駆動面680を挟んだX方向の両側には、位置検出用磁石5が、1つずつ設けられている。この位置検出用磁石5は、外側を向いた面が+Z側と-Z側とで逆の磁極となるように着磁されている。この位置検出用磁石5は、ホルダ6に保持されたカメラモジュール2のX方向及びY方向の軸周りの回転の検出に用いられる。+X+Y側の位置検出用磁石5の+Y側には、もう1つの位置検出用磁石5が設けられている。この位置検出用磁石5は、外側を向いた面が+Y側と-Y側とで逆の磁極となるように着磁されている。この位置検出用磁石5は、ホルダ6に保持されたカメラモジュール2のZ方向の軸周りの回転の検出に用いられる。
【0031】
カメラモジュール2の後側には、第1FPC3が配置されている。第1FPC3は、XY面と平行な外部接続部36と、外部接続部36の端辺の+Y側及び-Y側の2カ所から+X側に延在する2つの帯状部37とを有する。2つの帯状部37は、カメラモジュール2の+X側の端部の後側において-X側に折り返され、折り返された先が、ホルダ6を突き抜けて、カメラモジュール2に接続されている。
【0032】
底板10の前面には、第2FPC9が載置固定されている。第2FPC9は、ホルダ6の+X側、-Y側、及び-Z側を覆うようにして配置されている。第2FPC9は、YZ面と平行な第1板部98a、XZ面と平行な第2板部98b、XY面と平行な第3板部98c、及び第1板部98aの後端から-X側に折れ曲がって突出する外部接続部97を有する。
【0033】
第1板部98a及び第2板部98bは、T字状をなしている。第1板部98aの-Y側の端辺と第2板部98bの+X側の端辺は、直角に交わり、繋がっている。第3板部98cは長方形の形状を有し、その-Y側の端辺と、第2板部98bの-Z側の端辺は、直角に交わり、繋がっている。
【0034】
第1板部98a、第2板部98b、及び第3板部98cの各々の中央には、貫通孔980が設けられている。第1板部98aの内面における貫通孔980を挟んだY方向の両側と、第2板部98bの内面における貫通孔980を挟んだX方向の両側には、1つの位置検出用磁石5に1つの位置検出用センサ7が対向するように、5つの位置検出用センサ7が設けられている。位置検出用センサ7は、ホール素子である。位置検出用センサ7は、当該位置検出用センサ7と対向する位置検出用磁石5の磁界を検知し、検知結果を示す信号を出力する。
【0035】
図2に示すように、カバー1と底板10との間に設けられた隙間を通って、第1FPC3の外部接続部36は、光学部材駆動装置100の-X側から外部に出ており、第2FPC9の外部接続部97は、+X側から外部に出ている。外部接続部36及び外部接続部97は、外部の基板に接続、固定される。
【0036】
モータ8a、8b、及び8cは、圧電板85及び金属板86を有して構成される円盤部81と、円盤部81の中心に設けられ駆動面88とは反対側に突出した円柱状の凸部83と、を有している。圧電板85と金属板86の円環状の中心を通る軸が回転の中心になる。この凸部83が貫通孔980を貫通して、モータ8a、8b、8cがカバー1に接着固定される。モータ8a、8b、及び8cの円盤部81の第2FPC9と対向する面は、変形可能なように、エラストマー部材のような柔らかな部材を介して第1板部98a、第2板部98b、及び第3板部98cに固定されている。または、何も介さずに、他の部材とは非接触としてもよい。駆動面88は、本実施形態では、被駆動面670、680と中心Oが一致する凹球面としている。
【0037】
回転支持部4は、全体としてモータ8と同形状であり、摺動面690に当接する円盤部41と、円盤部41の中央から突出する凸部43と、を有する。当接面44は、被駆動面680と中心Oが一致する凹球面になっているが、駆動面88のように分割されている必要は無い。回転支持部4は、凸部43がカバー1に接着固定されるが、凸部43を無くして円盤部41が直接接着固定されてもよい。回転支持部4は、摩擦係数の小さな金属または樹脂により形成されるとよい。回転支持部4を、金属プレス、又は、樹脂モールドにより成形することにより、高精度化、組立自動化が可能になる。
【0038】
X方向において、+X側でカバー1の側板18にモータ8aが装着され、ホルダ6の被駆動面680と当接し、-X側で側板18に回転支持部4が装着され、ホルダ6の摺動面690と当接している。このとき、ホルダ6の被駆動面680と摺動面690は、ホルダ6の側板68の外側に開こうという弾性力により、モータ8a及び回転支持部4を側板18に向けて押圧する。これにより、ホルダ6がモータ8aと回転支持部4との間で安定して支持される。被駆動面680と摺動面690の中心Oは、カメラモジュール2の中心で一致するとともに、この中心Oを前述したX方向に延びるモータ8aの軸が通る。さらに、この軸は、回転支持部4の円盤部41の中心を通る。
【0039】
Y方向において、-Y側で側板18にモータ8bが装着され、ホルダ6の被駆動面680と当接し、+Y側で側板18に回転支持部4が装着され、ホルダ6の摺動面690と当接している。このとき、ホルダ6の被駆動面680と摺動面690は、ホルダ6の側板68の外側に開こうという弾性力により、モータ8b及び回転支持部4を側板18に向けて押圧する。これにより、ホルダ6がモータ8bと回転支持部4との間で安定して支持される。被駆動面680と摺動面690の中心Oは、カメラモジュール2の中心で一致するとともに、X方向における被駆動面680及び摺動面690の中心Oとも一致する。さらに、この中心OをY方向に延びるモータ8bの軸が通るとともに、この軸は、回転支持部4の円盤部41の中心を通る。
【0040】
Z方向において、底板10に、モータ8cが装着され、ホルダ6の被駆動面670と当接している。このとき、モータ8a、8bの駆動面88の+Z側及び回転支持部4の当接面44の+Z側によって被駆動面680及び摺動面690が+Z側に変位することが阻害されるので、被駆動面670は常にモータ8cの駆動面88に当接している。被駆動面670の中心Oは、被駆動面680の中心Oと一致する。この中心Oをモータ8cのZ方向に延びる軸が通るとともに、この軸は初期状態において光軸と一致する。
【0041】
以上の構造により、ホルダ6に保持されたカメラモジュール2は、ホルダ6とともに、X、Y、Z方向に回転自在に支持される。そして、モータ8aによってX軸周りに回転し、モータ8bによってY軸周りに回転し、モータ8cによってZ軸周りに回転する。
【0042】
図9(A)に示す圧電板85の各圧電素子89に電圧を印加すると、各圧電素子89は電圧に応じで伸縮するが、金属板86は伸縮しない。それによって円盤部81は円周方向において駆動面88が全体として突出する部分と凹む部分とが生じるように変形する。そのとき、
図9(B)に示すように、隣り合う駆動面88の間隔、即ち切り込み87の幅が変化する。例えば、各圧電素子89に共振周波数の矩形波を印加することによって、そのような変形を生じさせることができる。さらにその位相を変えることにより、
図9(B)に示すように、駆動面88は周方向に沿って楕円運動をする。例えば、ホルダ6の被駆動面670を、Z方向に沿った軸の軸周りに時計回り方向に動かす場合は、円環状に並ぶ駆動面88が突出したときに時計周り方向に動くような楕円運動をするように電圧が印加される。
【0043】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態における光学部材駆動装置100は、複数の圧電素子89で構成され円環状に形成された圧電板85と、圧電板85の表面に設けられ、半径方向且つ厚さ方向に複数の切り込み87が設けられることで形成された複数の駆動面88を有する円環状の金属板86と、を有するモータ8と、複数の駆動面88に当接する被駆動面670、680を有し、円環状の中心を通る軸の軸周りに金属板86に対して相対的に回転する被駆動部であるホルダ6の被駆動面670、680の部分と、モータ8又は被駆動部の一方が設けられている固定部と、光学部材であるカメラモジュール2を保持する保持部を有し、モータ8又は被駆動部の他方が設けられ、軸周りに固定部に対して相対的に回転する可動部であるホルダ6と、を具備する。モータ8は、駆動面88が被駆動部の被駆動面670、680に当接して回転させるので小さくても駆動力が大きい。よって、小型でも大きな駆動力を得ることができる光学部材駆動装置100を提供することができる。
【0044】
また、上記実施形態において、ホルダ6は、ばね部材等によって、前側からモータ8cを押圧して、駆動面88と被駆動面670とが安定して当接するようにすることが望ましい。ばね部材としては、板ばねを用いてもよいし、底板10の中央部が周辺部よりも少し前側になるように底板10を反らせてもよいし、モータ8a、8bの凸部83及び回転支持部4の凸部43を本来の位置よりもわずかに後側に固定して、弾性部材であるホルダ6の弾性力で押圧してもよい。また、ばね部材でなくても、例えば、磁石と磁性体又は磁石の吸引力又は反発力を用いても構わない。
【0045】
また、上記実施形態において、モータ8cと被駆動面670を配置せずに、モータ8a、8bと被駆動面680のみを配置し、ホルダ6を、X及びY方向の2軸の軸周りに駆動するようにしてもよい。また、回転支持部4をモータ8に置き換えてもよい。その場合、摺動面690は被駆動面680となる。
【0046】
光学部材はカメラモジュール2に限らない。例えば、プリズムでもよく、光の入射面、反射面、及び出射面ではない、一方の側面側にモータ、被駆動部を設け、他方の側面側に回転支持部と摺動面を設け、側面の法線方向を軸に回転させてもよい。
【0047】
駆動面88は、全体として平面となるようにしてもよい。また、1つ1つの駆動面88を平面とし、その平面の法線が被駆動面670、680の中心Oを通るようにしてもよい。また、駆動面88は、その法線が被駆動面670、680の中心Oを通る円錐面としてもよい。同様に、当接面44は、その法線が摺動面690の中心Oを通る円錐面としてもよい。また、当接面44として、3点の点接触で、摺動面690を支持してもよい。
【0048】
被駆動部を構成する被駆動面670、680はホルダ6を構成する金属板で構成されていたが、被駆動部を別部品で構成して被駆動面670、680を形成し、それをホルダ6に例えば接着固定してもよい。ホルダ6の弾性を考慮することなく、駆動面88との適切な摩擦、摩耗状態を得やすい。また、駆動面88についても、金属板86の材料そのものである必要は無く、何らかの表面処理を行ったり、被駆動面670、680との間に摩擦、摩耗状態を変えるような処理を行ったりしても構わない。摺動面690及び当接面44も同様である。
【0049】
モータ8を可動部に設け、被駆動部を固定部に設けても構わない。その場合、被駆動部の被駆動面670、680を凹球面にすることが望ましい。また、その場合、凹球面の中心Oが一致するようにするとよい。
【符号の説明】
【0050】
1 カバー
2 カメラモジュール
3 第1FPC
4 回転支持部
5 位置検出用磁石
6 ホルダ
7 位置検出用センサ
8、8a、8b、8c モータ
9 第2FPC
10 底板
15 980 貫通孔
17 前板
18 68 側板
21 レンズ体
22 画像センサ
23 レンズ駆動装置
24 筐体
36 97 外部接続部
37 帯状部
41 円盤部
43 凸部
44 当接面
67 後板
81 円盤部
83 凸部
85 圧電板
86 金属板
87 切り込み
88 駆動面
89 圧電素子
98a 第1板部
98b 第2板部
98c 第3板部
100 光学部材駆動装置
101 カメラ装置
109 スマートフォン
670 680 被駆動面
690 摺動面