(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】タイヤ用インサート
(51)【国際特許分類】
B60C 17/04 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
B60C17/04 Z
(21)【出願番号】P 2021503117
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 KR2020004975
(87)【国際公開番号】W WO2021045344
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0107947
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0145575
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519235276
【氏名又は名称】リ ヨンギ
【氏名又は名称原語表記】LEE, Young Gi
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨンギ
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03064704(US,A)
【文献】特開2000-190701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0122758(US,A1)
【文献】米国特許第01464709(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0000596(US,A1)
【文献】米国特許第10821786(US,B1)
【文献】特開昭59-063208(JP,A)
【文献】特開昭56-128206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0111463(US,A1)
【文献】米国特許第01585875(US,A)
【文献】米国特許第01714710(US,A)
【文献】実開昭55-075503(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057303(US,A1)
【文献】特開2001-088516(JP,A)
【文献】特開昭54-15204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 17/04-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム及びタイヤと共に締結されることができるタイヤ用インサートにおいて、
上面、下面、および前記上面と前記下面との間に形成された側面であって、前記インサートがリムを取り付けられたタイヤに挿入されたときに、前記上面は前記タイヤのトレッドに向かい、前記上面と前記タイヤの内面との間に上部空間を形成するように構成され、前記下面は前記リムに向かい、前記下面と前記リムとの間に下部空間を形成するように構成され、前記リムの2つのフック間の仮想水平面より上に構成された前記側面は前記タイヤの内面と接触する、上面、下面、および側面と、
前記インサートの内部に形成された内部中空であって、内部中空空間と、前記下面を貫通する開口部と、を含む、内部中空と、
前記上面を貫通して前記内部中空の前記内部中空空間に向かう貫通流路であって、前記リムに形成された流体注入部を通じて流体が注入されると、前記貫通流路が、前記内部中空空間を介して、前記下部空間から前記上部空間へと前記流体を流すように構成された、貫通流路と、
を含むことを特徴とするタイヤ用インサート。
【請求項2】
前記インサートは、流路として、前記貫通流路と、前記インサートの側面に形成された側面流路と、前記貫通流路と前記側面流路とが連結された結合流路とを含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用インサート。
【請求項3】
前記リムは、流体注入部を含み、
前記貫通流路及び前記側面流路と前記流体注入部とは、直接または間接的に連結される
ことを特徴とする請求項2に記載のタイヤ用インサート。
【請求項4】
前記貫通流路及び前記側面流路と前記流体注入部が直接または間接的に連結されることは、前記インサートの下面に形成された下部流路を通じて連結されることであることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ用インサート。
【請求項5】
前記インサートは、前記流体注入部と連結される流体収容部をさらに含み、
前記流体収容部は、前記貫通流路、側面流路、または下部流路と連結される
ことを特徴とする請求項3に記載のタイヤ用インサート。
【請求項6】
前記インサートは、上面溝、下面溝、側面溝、前記内部中空、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用インサート。
【請求項7】
前記インサートが前記下面溝を含む場合、前記下面溝は突出部を含むことを特徴とする請求項6に記載のタイヤ用インサート。
【請求項8】
前記下面溝または前記内部中空は、内部しわを含むことを特徴とする請求項6に記載のタイヤ用インサート。
【請求項9】
前記タイヤ用インサート、前記タイヤ及び前記リムが結合された状態で、
前記リムの2つのフック間の仮想水平面から前記タイヤ内部の最大高さ(h
t)及び前記リムの2つのフック間の仮想水平面から前記インサートの最大高さ(h
i)の割合(h
i/h
t)は、0.15以上且つ0.9以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用インサート。
【請求項10】
前記タイヤ用インサート、前記タイヤ及び前記リムが結合された状態で、
前記タイヤ用インサートは、ショアC硬度20以上、ショアA硬度90以下の硬度を有し、
前記タイヤの水平長径(w
t)と前記インサートの水平長径(w
i)の割合(w
i/w
t)は、0.1以上、且つ1.3以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用インサート。
【請求項11】
前記タイヤは、チューブレスタイヤであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、タイヤ用インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に優しい低炭素運動に対する認識の拡大とともに、都市型自転車(共有型自転車)の普及が全世界的に広まっている。また、マウンテンバイクのようなエクストリムスポーツを楽しむ人々が増えるとともに、自転車のタイヤに関する技術は発展し続けている。従来使用されていたチューブ内蔵型空気タイヤは、走行中に鋭い物体によりタイヤが損傷を受けると、パンクの恐れがある。
【0003】
このような問題を解決するために、近年、ソリッドタイヤ(solid tire)に対する需要が増加している。ソリッドタイヤは例えば、ゴムだけでなるタイヤであって、空気を注入しないため、パンクの危険がなく、長時間使用可能である。
【0004】
但し、ソリッドタイヤは、空気タイヤに比べて重量が重く、転がり抵抗が大きいという限界がある。従って、パンクを防止することができるソリッドタイヤの長所と、軽くて転がり抵抗の小さい空気タイヤの長所をいずれも生かすことができるタイヤに関する技術開発が要求される。
【0005】
特許文献1は、タイヤ用インサートについて開示している。しかし、上記先行文献は、空気チューブと共に使用可能なチューブタイヤ用インサートに関するもので、リムの空気注入部から空気チューブに空気が直接注入される構造を有するものであって、チューブレスタイヤの転がり抵抗、パンクなどに影響を及ぼすタイヤ内部における流体循環については全く認識していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2017/0057303号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願は、前述した従来技術の問題点を解決するためのもので、チューブレスタイヤに適用可能なタイヤ用インサートを提供することを目的とする。
【0008】
本願は、前述した従来技術の問題点を解決するためのもので、リム及びタイヤにインサートが締結された状態でもタイヤ内部における流体の流れが円滑であり、外部衝撃を吸収することができ、乗車感を向上させることができるタイヤ用インサートを提供することを目的とする。
【0009】
本願は、前述した従来技術の問題点を解決するためのもので、タイヤ及びリムと結合時に装着が容易なタイヤ用インサートを提供することを目的とする。
【0010】
但し、本願の実施形態が達成しようとする技術的課題は、上記のような技術的課題に限定されず、他の技術的課題が存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的課題を達成するための技術的手段として、本願の第1の態様によれば、リム及びタイヤと共に締結されることができるタイヤ用インサートにおいて、前記インサートの上面及び下面を連結する流路を含む、タイヤ構造体を提供する。
【0012】
本願の一実施形態によると、前記流路は、前記インサートの下面と上面を貫通する貫通流路と、前記インサートの側面に形成された側面流路と、または前記貫通流路と前記側面流路とが連結された結合流路とを含み得るが、これに制限されるものではない。
【0013】
本願の一実施形態によると、前記リムは、流体注入部を含み、前記貫通流路及び前記側面流路と前記流体注入部は、直接または間接的に連結され得るが、これに制限されるものではない。
【0014】
本願の一実施形態によると、前記貫通流路及び前記側面流路と前記流体注入部が直接または間接的に連結される、すなわち前記インサートの下面に形成された下部流路を通じて連結され得るが、これに制限されるものではない。
【0015】
本願の一実施形態によると、前記インサートは、前記流体注入部と連結される流体収容部をさらに含み、前記流体収容部は、前記貫通流路、側面流路、または下部流路と連結され得るが、これに制限されるものではない。
【0016】
本願の一実施形態によると、前記インサートは、上面溝、下面溝、側面溝、内部中空、またはこれらの組み合わせを含み得るが、これに制限されるものではない。
【0017】
本願の一実施形態によると、前記内部中空は、前記インサートの下面方向の開口部を含み、前記開口部の両末端は、機械的または化学的に結着され得るが、これに制限されるものではない。
【0018】
本願の一実施形態によると、前記下面溝は突出部を含み得るが、これに制限されるものではない。
【0019】
本願の一実施形態によると、前記インサートは、スリット状の上面溝、下面溝、または貫通ホールを含み、前記スリットの横幅は、前記リムの両フック間の長さより短いものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0020】
本願の一実施形態によると、前記下面溝または前記内部中空は、内部しわを含み得るが、これに制限されるものではない。
【0021】
本願の一実施形態によると、前記タイヤ用インサート、前記タイヤ及び前記リムが結合された状態で、前記リムの両フック間の仮想水平面から前記タイヤ内部の最大高さ(ht)及び前記リムの両フック間の仮想水平面から前記インサートの最大高さ(hi)の割合(hi/ht)は、0.15以上且つ0.9以下であり得るが、これに制限されるものではない。
【0022】
本願の一実施形態によると、前記タイヤ用インサート、前記タイヤ及び前記リムが結合された状態で、前記タイヤ用インサートは、ショアC硬度20以上、ショアA硬度90以下の硬度を有し、前記タイヤの水平長径(wt)と前記インサートの水平長径(wi)の割合(wi/wt)は、0.1以上、且つ1.3以下であり得るが、これに制限されるものではない。
【0023】
本願の一実施形態によると、前記タイヤは、チューブレスタイヤであり得るが、これに制限されるものではない。
【0024】
本願の第2の態様によると、前記タイヤ用インサート及びタイヤがリムに締結されたことを特徴とするタイヤ締結構造を提供する。
【0025】
本願の第3の態様は、前記タイヤ用インサートを含むことを特徴とする運送手段を提供する。
【0026】
上述した課題解決手段は、単に例示的なもので、本願を制限しようとする意図で解釈されてはならない。上述した例示的な実施形態の他にも、図面及び発明の詳細な説明に追加的な実施形態が存在し得る。
【発明の効果】
【0027】
前述した本願の課題解決手段によれば、チューブレスタイヤ内に本願によるタイヤ用インサートが具備されており、これにより、チューブレスタイヤの使用時に外部衝撃によるリムの損傷を防止することができるという効果がある。また、タイヤのパンクが発生した時に、前記タイヤ用インサートを含むタイヤは、ランフラット(run flat)タイヤとして駆動することができる。
【0028】
本願によるタイヤ用インサートには、流路が具備されており、前記インサートがリム及びタイヤと共に締結された状態でも前記タイヤ内部における流体の流れが円滑であることができる。
【0029】
本願によるタイヤ用インサートを含むことで、衝撃をよく吸収することができ、乗車感を向上させることができ、転がり抵抗に優れるという長所を達成することができる。
【0030】
さらに、前記タイヤ用インサートをタイヤ及びリムと結合する過程で装着が容易である。
【0031】
但し、本願で得られる効果は、上記のような効果に限定されず、他の効果が存在し得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本願の一実施形態によるタイヤ用インサートがリム及びタイヤと共に締結された状態における断面を示す図である。
【
図2】本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの流路の例を示す図である。
【
図3】本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの流路がリムの流体注入部と連結された状態を示す図である。
【
図4】本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの流体収容部がリムの流体注入部及び流路と連結された状態を示す図である。
【
図5】本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの上面溝、下面溝、側面溝、内部中空などの例を示す図である。
【
図6】(a)は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの内部中空の開口部が開放されている状態を示す図であり、(b)は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの内部中空の開口部が結着された状態を示す図である。
【
図7】本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの下面溝の突出部の例を示す図である。
【
図8】(a)は、スリット状の上面溝を具備した本願の一実施形態によるタイヤ用インサートがリムに締結された状態を示す図であり、(b)は、
図8(a)に示されたタイヤ用インサートのスリット状の上面溝を上から見た様子を拡大した図である。
【
図9】(a)は、下面溝を具備した本願の一実施形態によるタイヤ用インサートを示す図であり、(a’)は、
図9の(a)に示されたタイヤ用インサートの下面溝の内部しわを示す図である。(b)は、内部中空を具備した本願の一実施形態によるタイヤ用インサートを示す図であり、(b’)は、
図9の(b)に示されたタイヤ用インサートの内部中空の内部しわを示す図である。
【
図10】本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの側面の例を示す図である。
【
図11】本願の一実施形態によるタイヤ用インサートがタイヤ及びリムと結合された状態でリムの両フック間の仮想水平面からタイヤ内部の最大高さ及びリムの両フック間の仮想水平面からインサートの最大高さを示すための図である。
【
図12】本願の一実施形態によるタイヤ用インサートがタイヤ及びリムと結合された状態での、タイヤの水平長径とインサートの水平長径を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、添付の図面を参照して本願が属する技術分野の当業者が容易に実施することができるように、本願の実施形態を詳しく説明する。しかし、本願は、様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施形態に限定されない。そして、図面で本願を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて類似した部分については類似した図面符号をつけた。
【0034】
本願明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとする記載は、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」または「間接的に連結」されている場合も含む。
【0035】
本願明細書全体において、ある部材が他の部材「上に」、「上部に」、「上端に」、「下に」、「下部に」、「下端に」位置しているとする記載は、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0036】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする記載は、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0037】
本願明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれる「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味するものであり、すなわち、上記構成要素からなる群から選択される一つ以上を含むことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本願の第1の態様は、リム及びタイヤと共に締結されることができるタイヤ用インサートに関し、インサートの上面及び下面を連結する流路を含むタイヤ用インサートを提供する。
【0039】
以下では、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートについて図面を参照して具体的に説明する。しかし、本願はこのような実施形態及び実施例と図面に制限されるものではない。
【0040】
本願の第1の態様によるタイヤ用インサートは、例えば、リング(ring)状またはドーナツ(doughnut)状に形成され、リムの円周に沿ってリムに締結(装着)され得る。本願によるタイヤ用インサートは、例えば、射出発泡工法で製造されることができるが、これに限定されるものではない。他の例として、押出し工法で製造されて所望の長さで裁断して両端を連結させて使用されることもできる。また、本願によるインサートは、例えば、天然ゴム、合成ゴム、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びこれらの組み合わせからなる群から選択された物質を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0041】
一方、
図2~
図10は、本来リング状である本願の一実施形態によるタイヤ用インサート及びリムの一部を切断して一直線に広げた状態を仮定した図である。
【0042】
図1は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートがリム及びタイヤと共に締結された状態における断面を示す図である。
【0043】
図1を参照すると、本願の一実施形態によるタイヤ用インサート100は、上面110及び下面130を含む。インサートの上面110は、インサート100がリム200及びタイヤ300に締結された状態で、地面とタイヤ300が接触する部分(トレッド)に向かう面である。インサートの下面130は、インサート100がリム200及びタイヤ300に締結された状態で、リム200の中央に向かう面である。
【0044】
また、インサート100は、インサートの上面110及びインサートの下面130を連結する流路120を含む。
【0045】
具体的に
図1を参照すると、流路120は、下面130下の下部空間から上面110上の上部空間まで流体が通じるように連結される。従って、インサート100がリム200及びタイヤ300に締結された状態でも、リム200に具備された流体注入部210(
図3参照)を通じて注入された流体が円滑に上面110上の上部空間まで移動することができる。
【0046】
逆に、流体を抜く場合、上面110上の上部空間に満たされていた流体が下面130下の下部空間に移動する過程で、上面110に上から下方向に圧力をかけるようになり、これにより、インサート100がリム200側に密着し、インサートの側面140とタイヤ300内面の間の隙間がなくなり、流体が抜けにくい状態になる可能性がある。この時、流路120が具備されていれば、流路120を通じて流体が難なく排出される。従って、本願の一実施形態によるタイヤ用インサート120は流路120を含むので、タイヤ300に流体を容易に注入または除去することができる。
【0047】
また、インサート100がリム20及びタイヤ300と締結された状態で運送手段が運行される場合、流路120を通じてタイヤ300内部における流体循環が円滑になされ、乗車感が向上され得る。
【0048】
流体は、例えば、空気、窒素、または酸素などの気体、ポリプロピレングリコールを含むシラント組成物、または液体高分子などの液体、またはこれらの組み合わせであり得るが、これに制限されるものではない。
【0049】
空気のような気体は、インサート100がタイヤ300及びリム200に締結された状態で、タイヤ300内部に注入されて転がり抵抗を減少させ、乗車感を向上させる役割を果たしうる。
【0050】
液体は注入されて、インサート100がタイヤ300及びリム200に締結された状態でタイヤ300内部に注入されて、転がり抵抗を減少させ、制動力を向上させ、タイヤの変形を減少させる役割を果たしうる。
【0051】
特に、タイヤ300内部で、流体、例えばシラント組成物液体はインサート100の上面及び下面を自由に移動することができ、タイヤ300がパンクした場合、シラント組成物がパンクした箇所に移動してパンクを埋め、自己復元がなされ得る。
【0052】
即ち、インサート100がタイヤ300及びリム200に締結された状態でも流体の注入が可能であり、注入された流体がインサート100の上部空間及び下部空間を自由に移動することができる。
【0053】
図1を参照すると、流路120は、例えば、下面130から上面120まで一直線に貫通して連結されていてもよいが、これに限定されるものではない。他の例として、側面140に沿って連結されることもできる。多様な形態で具現可能な流路120の例示は、
図2を参照して具体的に後述する。一方、流路120は、インサート100全体において一つ以上具備され、複数個具備される場合は、例えば、円周方向に所定の間隔を置いて具備され得るが、これに制限されるものではない。
【0054】
本願の一実施形態によると、タイヤ用インサート100の流路120は、インサート100の下面130と上面110を貫通する貫通流路121、インサートの側面140に形成された側面流路122、または貫通流路121と側面流路122とが連結された結合流路123を含み得るが、これに制限されるものではない。
【0055】
図2は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの流路の例を示す図である。
【0056】
貫通流路121は、下面130と上面110を連結する、すなわちインサート100内部を貫通する流路であるといえる。即ち、貫通流路121は、周辺がインサート100物質で取り囲まれることを意味する。
図2を参照すると、貫通流路121は例えば、垂直方向に形成されてもよく、他の例として、曲げられるか撓われて形成されてもよい。また他の例として、らせん状で形成されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
側面流路122は、インサートの側面140に形成され得る。側面流路122は、少なくとも一部がリム200及びタイヤ300と締結された状態で、タイヤ300の内面と接触することができる。すなわち、側面流路122は、インサートの側面140とタイヤ300内面の間の隙間として理解することもできる。また、側面流路122の少なくとも一部は、インサートの下面130に沿って側面140と連結されるように形成され得る。
図2を参照すると、側面流路122は、例えば、下面130に沿って右側に側面140と連結されるように形成され、側面140に沿って上面110に連結されるように形成され得る。
【0058】
結合流路123は、貫通流路121と側面流路122が連結されたものであり得る。結合流路123は、少なくとも一部がインサート100内部を貫通して連結され、また、少なくとも一部がインサートの側面140に形成され得る。
図2を参照すると、例えば、結合流路123は、下面130から上面110方向にインサート100内部を一部貫通してから、側面140方向に撓われて(曲げられて)側面140に連結され、側面140に沿って上面110まで連結される構造であり得る。この場合、下面130から側面140まで連結される流路が貫通流路121に対応し、側面140に沿って上面110まで連結される流路が側面流路122に対応する。他の例として、結合流路123は、下面130と側面流路122を通じて連結され、上面110と貫通流路122を通じて連結され得る。また他の例として、結合流路123は、下面130と貫通流路121を通じて連結され、貫通流路121が側面流路122と連結され、側面流路122が貫通流路121とは異なる貫通流路121と連結され、上面110と連結され得るが、これに限定されるものではない。
【0059】
一方、
図2において、実線で表示された貫通流路121、側面流路122及び結合流路123は、インサート100の断面における形状を概略的に示したものであり、点線で表示された貫通流路121、側面流路122及び結合流路123は、インサート100の内部に位置した形状を概略的に示したものである。
【0060】
本願の一実施形態によると、リム200は、流体注入部210を含み、貫通流路121及び側面流路122と流体注入部210は、直接または間接的に連結され得るが、これに制限されるものではない。
【0061】
図3は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの流路が流体注入部と連結された状態を示す図である。
【0062】
本願の一実施形態によるタイヤ用インサート100が流体注入部210を含むリム200及びタイヤ300と共に締結される場合、流体注入部210を通じて注入された流体は、貫通流路121及び側面流路122の少なくともいずれか一つに流入し得る。一方、結合流路123は、貫通流路121と側面流路122とに連結されたものであるため、流体注入部210が結合流路123と連結される場合でも、流体注入部210を通じて注入された流体は、結果的に貫通流路121及び側面流路122の少なくともいずれか一つに流入し得る。
【0063】
図3の実線で示された流体注入部210を参照すると、流体注入部210は、貫通流路121及び側面流路122の少なくともいずれか一つと直接連結される。この場合、流体注入部210を通じて注入された流体は、貫通流路121及び側面流路122に直ちに流入し得る。
図3の点線で示された流体注入部210を参照すると、流体注入部210は、貫通流路121及び側面流路122の少なくともいずれか一つと間接的に連結される。この場合、流体注入部210を通じて注入された流体は、インサート下面130下の下部空間に沿って移動した後、貫通流路121及び側面流路122の少なくともいずれか一つに流入し得る。
【0064】
本願の一実施形態によると、貫通流路121及び側面流路122と流体注入部210が直接または間接的に連結される、すなわちインサート100の下面130に形成された下部流路124を通じて連結され得るが、これに制限されるものではない。
【0065】
図3を参照すると、下部流路124が形成されている場合、流体注入部210を通じて注入された流体は下部流路124を通じて注入された位置から他の位置に円滑に移動することができる。特に、貫通流路121及び側面流路122と流体注入部210が間接的に連結された場合に、その効果がさらに大きく表れ得る。また、流体の流れが円滑な場合、本願の一実施形態によるタイヤ用インサート100がリム200及びタイヤ300と共に締結された状態で、タイヤ300内に流体を注入または除去する時に要する労力と時間を減らすことができる。
【0066】
本願の一実施形態によると、インサート100は、流体注入部210と連結される流体収容部125をさらに含み、流体収容部125は、貫通流路121、側面流路122、または下部流路124と連結され得るが、これに制限されるものではない。
【0067】
図4は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの流体収容部が流体注入部及び流路と連結された状態を示す図である。
【0068】
貫通流路121及び側面流路122と流体注入部210が相互連結される部分が間接的に連結される場合、貫通流路121及び側面流路122は、流体注入部210と流体収容部125を通じて連結され得る。
【0069】
即ち、貫通流路121、側面流路122、または下部流路124は、流体注入部210と流体収容部125によって連結され得る。
図4を参照すると、例えば、流体収容部125は、半球形状で具備され、その直径は流体注入部210の水平断面の直径より大きく設定され得るが、これに限定されるものではなく、多様な形態で具備され得る。また、流体収容部125の直径は、貫通流路121、側面流路122または下部流路124の直径または幅以上に設定され得るが、これに限定されるものではない。
【0070】
本願の一実施形態によるタイヤ用インサート100は、流体収容部125を含むので、貫通流路121及び側面流路122と流体注入部210の相互連結される部分が互いに正確にマッチング(matching)されなくても、流体注入部210を通じて注入された流体が貫通流路121または側面流路122を通じてインサート100の上部空間に容易に到逹することができる。
【0071】
本願の一実施形態によると、インサート100は、上面溝111、下面溝131、側面溝141、内部中空150、またはこれらの組み合わせを含み得るが、これに制限されるものではない。
【0072】
図5は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの上面溝、下面溝、側面溝、内部中空などの例を示す図である。
【0073】
上面溝111、下面溝131、側面溝141、または内部中空150は、インサート100の重量を軽減すると同時に、インサート100の弾性的衝撃吸収を可能にする。例えば、インサート100が内部中空150を含む場合、インサート100の上部が外力によって押されても内部中空150の空の空間に陥没してから再び本来の形態と位置に復元されることで、インサート100の下部に伝達される衝撃が減少し得る。これにより、インサート100を含む運送手段の運行(走行)時に、乗車感を向上させることができる。
【0074】
上面溝111は、インサートの上面110に形成された溝を意味し得る。より具体的には、上面溝111は、インサートの上面110からインサートの下面130方向に凹まれた溝を意味し得る。
図5(a)を参照すると、上面溝111は、例えば、不規則な形態と不規則な間隔で形成され得る。他の例として、規則的な形態と規則的な間隔でも形成され得る。また他の例として、所定の形態の断面で連続して形成され得るが、これに限定されるものではない。
【0075】
下面溝131は、インサートの下面130に形成された溝を意味し得る。より具体的には、下面溝131は、インサートの下面130からインサートの上面110に向かって凹んだ溝を意味し得る。
図5(a)を参照すると、下面溝131は、例えば、所定の形態の断面で連続して形成され得るが、これに限定されるものではない。一方、下面溝131は、下部流路124(
図3参照)として機能することができる。
【0076】
側面溝141は、インサートの側面140に形成された溝を意味し得る。より具体的には、側面溝141は、インサートの側面140でインサート100の内部中心に凹んだ溝を意味し得る。
図5(a)を参照すると、側面溝141は、例えば、不均一な深さで凹められ得る。他の例として、均一な深さで凹められてもよいが、これに限定されるものではない。一方、
図5に示された側面溝141のうち相対的に右上に位置した側面溝141は、上面溝111と合わされたものであり得る。一方、側面溝141は、側面流路122(
図3参照)として機能することができる。一方、本願の一実施形態によるタイヤ用インサート100が側面溝141を含む場合、本願の一実施形態によるタイヤ用インサート100をリム200及びタイヤ300と共に締結する時に側面溝141に道具(例えば、レバー(lever))を挟むことができ、容易に締結(装着)することができる。一方、上面溝111、下面溝131及び側面溝141の深さと模様は、
図5に示されたものに限定されない。
【0077】
内部中空150は、インサート100の内部に形成されたホール(hole、孔)を意味し得る。
図5(b)を参照すると、内部中空150は、例えば、インサート100の内部に断面が円形であるホールが連続的に開いていることを意味し得るが、これに限定されるものではない。ここで、内部中空150の断面と断面の大きさは、多様な実施形態によって変わり得る。
【0078】
本願の一実施形態によるタイヤ用インサート100は、前述した上面溝111、下面溝131、側面溝141及び内部中空150のいずれか一つ以上を組み合わせて含み得る。例えば、互いに連結された上面溝111、内部中空150及び下面溝131を含む貫通ホールを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0079】
本願の一実施形態によると、内部中空150は、インサートの下面130方向の開口部を含み、開口部の両末端は、機械的または化学的に結着され得るが、これに制限されるものではない。
【0080】
図6(a)は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの内部中空の開口部が開放されている状態を示す図であり、
図6(b)は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの内部中空の開口部が結着された状態を示す図である。
【0081】
図6(a)を参照すると、内部中空150は、下面130方向に開口することができるが、開口部が開放された状態の場合、内部中空150は、もはやインサート100内部に形成されたホール(孔)ではないとも言える。一方、内部中空150が開口されることで、インサート100の下部が両側に分離され得る。
図6(b)を参照すると、
図6(a)で分離して示されたインサート100の下部の両側、即ち、開口部の両末端が結着され得る。この時、開口部の両末端が結着される方法としては、機械的結着や化学的結着など、結着によって再びインサート100内部にホール(孔)を形成することができる結着方法を広く包括する範囲に亘ると理解してよい。
【0082】
本願の一実施形態によると、下面溝131は突出部を含み得るが、これに制限されるものではない。
【0083】
図7は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの下面溝の突出部の例を示す図である。
【0084】
インサートの下面溝131は、観点によっては下面130方向に開口されているといえる。この時、下面溝131は、下面溝131を挟んで向かい合うインサート100の下部の両側部分の少なくとも一部が結着される構造であり得る。このような結着可能な構造の一例を、
図7と共に具体的に説明する。
【0085】
図7を参照すると、突出部132は、下面溝131の内面から下面溝131の内部の空の空間方向に突き出して形成され得る。
図7(a)を参照すると、突出部132は、例えば、下面溝131を挟んでインサート100の下部両側にそれぞれ形成され得る。また、突出部132は、インサートの下面130に沿って円周方向に連続して形成され得る。このような突出部132は、互いに上下に交互に重なって結着され得る。
【0086】
他の例として、
図7(b)を参照すると、突出部132は、下面溝131を挟んでインサート100の下部両側にそれぞれ形成され、インサートの下面130に沿って円周方向に所定の間隔を置いて複数個が形成され得る。このような突出部132が互いに上下に重なって結着され得る。この場合、所定の間隔を置いて形成された複数個の突出部132間の間隔に該当する部分は、依然として開口されていることがある。従って、前述したように、流体注入部210(
図3参照)から注入された流体が下面溝131の内部空間に沿って移動可能になることで、下面溝131は、下部流路124(
図3参照)として機能することができる。
【0087】
本願の一実施形態によるタイヤ用インサート100の下部が下面130方向に開口されている場合、インサート100下部の両側を結着させることで、インサート100は、リム200及びタイヤ300と共に締結される時に本来の場所に固定され得る。従って、走行時にインサート100はリム200及びタイヤ300と分離され発生し得る安全事故を予防することができるという効果がある。
【0088】
本願の一実施形態によると、インサート100は、スリット状の上面溝111、下面溝131、または貫通ホールを含み、該スリットの横幅は、リム200の両フック220間の長さより短く設定され得るが、これに制限されるものではない。
【0089】
貫通ホールは、例えば、インサート100の下面130及び上面110を貫通する円柱状で形成され得るが、これに限定されるものではない。
【0090】
図8(a)は、スリット状の上面溝を具備した本願の一実施形態によるタイヤ用インサートがリムに締結された状態を示す図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示されたタイヤ用インサートのスリット状の上面溝を上から見た様子を拡大した図である。
【0091】
図8(a)及び
図8(b)を参照すると、例えば、上面溝111のスリットの横幅dは、リム200の両フック220間の長さlより短く設定され得る。上面溝111のスリットの横幅dがリム200の両フック220間の長さl以上の場合、走行時に外部衝撃が加えられた時にリム200の両フック220の上でリム200を保護することができるインサート100の厚さは、スリットの横幅dが小さい場合に比べて相対的に薄い。従って、リム200の両フック220に相対的に大きな衝撃が加えられ得る。
【0092】
また、
図8(a)及び
図8(b)を参照すると、スリット状の上面溝111は、所定の間隔を置いて複数個が具備され得る。複数個のスリット状の上面溝111のいずれか一つのスリット状の上面溝111の縦幅sは、所定の範囲以内にある。上面溝111のスリットの縦幅sが所定の範囲を超える場合、インサート100がタイヤ300を両側面方向に広げる力が不足するため、転がり抵抗が増加し得る。
【0093】
前述したスリットの横幅d及びスリットの縦幅sに関する内容は、スリット状の下面溝131またはスリット状の貫通ホールにも同一に適用され得る。この時、スリットの横幅dは、リム200の両フック220の上端面上の幅を意味し得る。
【0094】
本願の一実施形態によると、下面溝131または内部中空150は、内部しわを含み得るが、これに制限されるものではない。
【0095】
図9の(a)は、下面溝を具備した本願の一実施形態によるタイヤ用インサートを示す図であり、
図9の(a’)は、
図9の(a)に示されたタイヤ用インサートの下面溝の内部しわを示す図である。
図9の(b)は、内部中空を具備した本願の一実施形態によるタイヤ用インサートを示す図であり、
図9の(b’)は、
図9の(b)に示されたタイヤ用インサートの内部中空の内部内部しわを示す図である。
【0096】
図9の(a’)及び(b’)を参照すると、より具体的には、インサートの上面110に向かう内面に内部しわが形成され得る。タイヤ内に流体が注入される場合、インサート100は圧縮されながら、相対的に力を受ける方向、即ち、上面110から下面130方向に縮まるように(すぼむように)なる。従って、下面溝131または内部中空150の内面のうち上面110に向かう内面に内部しわを形成すると、このような縮む(すぼむ)現象を防止することができる。また、このような現象を防止することで、転がり抵抗が増加することも防止することができる。
【0097】
本願の一実施形態によると、インサートの側面140は、インサート100の内部中心に向かって凹状のものまたは凸状のものを含み得るが、これに制限されない。
【0098】
図10は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートの側面の例を示す図である。
【0099】
図10を参照すると、インサートの側面140は、インサート100の内部中心に向かって凹状のものまたは凸状のものを含み得る。さらに具体的には、
図10に示された単位長さが相対的に短い点線を参照すると、インサートの側面140がインサート100の内部中心に向かって凹状であるということは、インサート100がその内部中心に向かって凹状であることを意味し得る。この場合、インサート100をリム200及びタイヤ300と共に締結(装着)するにあたって、インサートの側面140が実線で示された形状の時よりも容易であり得る。また、インサート100の体積が減少するため、重量が軽くなり、製造原価を節減することができる。
【0100】
一方、
図10に示された単位長さが相対的に長い点線を参照すると、インサートの側面140がインサート100の内部中心に向かって凸状であるということは、インサート100がその内部中心に対して凸状であることを意味し得る。この場合、リム200に加えられる衝撃を吸収可能な部分の厚さが増加するため、衝撃吸収の側面で有利である。また、インサート100がタイヤ内面を両側面方向に押す(広げる)力が増加して転がり抵抗を減少させることができる。
【0101】
本願の一実施形態によると、タイヤ用インサート100、タイヤ300及びリム200が結合された状態で、リム200の両フック220間の仮想水平面からタイヤ300内部の最大高さ(ht)及びリム200の両フック220間の仮想水平面からインサート100の最大高さ(hi)の割合(hi/ht)は、0.15以上且つ0.9以下であり得るが、これに制限されるものではない。
【0102】
図11は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートがタイヤ及びリムと結合された状態での、リムの両フック間の仮想水平面からタイヤ内部の最大高さ及びリムの両フック間の仮想水平面からインサートの最大高さを示すための図である。
【0103】
リム200の両フック220間の仮想水平面は、例えば、フック220の上端面を延長した水平面であり得るが、これに限定されるものではない。タイヤ300内部の最大高さ(ht)は、例えば、フック220間の仮想水平面からタイヤ300が地面に接触する部分方向に最も離れたタイヤ300内面の高さを意味し得るが、これに限定されるものではない。インサート100の最大高さ(hi)は、例えば、フック220間の仮想水平面からタイヤ300の内部方向に最も離れたインサート上面110の高さを意味し得るが、これに限定されるものではない。
【0104】
以下では、実施例を通じて上記本願の一実施形態によるタイヤ用インサートをさらに詳しく説明するが、下記の実施例は、単に説明の目的のためのものであり、本願の範囲を限定しようとするものではない。
【0105】
[実施例1]
実施例1の条件として、Maxxis-Minion DHR 2(27.5×2.3)タイヤを使用し、タイヤ内の空気圧は10psiとなるようにした。
【0106】
実施例1の実験方法としては、インサートを結合させたタイヤをロードセル(Load Cell)という圧力測定装備上に設置し、タイヤ上に5kgの錘を300mmの高さから落下させてロードセルに加えられる時間毎の力または荷重量(kgf)を測定し、そのうちの最大荷重点(kgf)を衝撃吸収性能を評価するための指標として選定した。
【0107】
実施例1の振動は、ドラムにタイヤを接触させた状態でドラムを回転させ、μm単位で測定可能な振動測定器を使用して測定した。この時、ドラムの速度は20km/hであり、重量は45kgである。駆動開始後、10分間の振動を測定して平均値を得た。参考として、下記表1の振動測定値は変位値であり、例えば、100μmである場合、1mmの幅の振動が発生するということを意味し、具体的には、左側に0.5mm、右側に0.5mmずつ移動することを意味する。
【0108】
実施例1の反発弾性は、タイヤとインサートが装着された中央を落下地点として500gの錘を1mの高さから落下させ、弾性によって錘が跳ね上がる高さを測定することによって、測定された。
【0109】
一方、最大荷重点を指標とした衝撃吸収性能は、リム200またはタイヤ300が再使用不可能な状態になる程度の衝撃に関するものであり、振動を指標とした衝撃吸収性能は、引き続き走行が可能な状態でのより軽微な衝撃に関するものであり得る。
【0110】
また、反発弾性は、インサート100の復元力を表すことができる指標であり、復元力が良ければ、即ち、反発弾性が大きいほど転がり抵抗が小さくなると判断することができる。また、固体が気体に比べて反発弾性が小さいことを考慮すると、リム200の両フック220間の仮想水平面からタイヤ300内部の最大高さ(ht)及びリム200の両フック220間の仮想水平面からインサート100の最大高さ(hi)の割合(hi/ht)が大きくなる場合、タイヤ300内部で気体(例えば、空気)対比固体(例えば、インサート)の割合が大きくなるため、反発弾性が小さくなり、これにより転がり抵抗値が大きくなり得る。
【0111】
実験を通じて、リム200の両フック220間の仮想水平面からタイヤ300内部の最大高さ(ht)及びリム200の両フック220間の仮想水平面からインサート100の最大高さ(hi)の割合(hi/ht)による最大荷重点、振動及び反発弾性を測定し、その結果に基づいて、総合的な適合/不適合を判定した結果を下記の表1に表した。
【0112】
<評価基準>
衝撃吸収性能:最大荷重点が50kgf以下である時、衝撃吸収性能が適正水準を満たすと評価する
衝撃吸収性能及び乗車感:振動(タイヤの振幅)が250μm以下である時、軽微な衝撃に対する衝撃吸収性能が適正水準を満たし、乗車感が満足であると評価する
転がり抵抗:反発弾性が30cm以上である時、転がり抵抗値が所定の範囲(適正水準)を満たすと評価する
適合(〇):最大荷重点が50kgf以下であり、振動が250μm以下であり、反発弾性が30cm以上である時、適合であると評価する
不適合(×):最大荷重点が50kgfを超えるか、振動が250μmを超えるか、反発弾性が30cm未満である時、不適合であると評価する
【0113】
【0114】
上記表1に表れた結果によると、リム200の両フック220間の仮想水平面からタイヤ300内部の最大高さ(ht)及びリム200の両フック220間の仮想水平面からインサート100の最大高さ(hi)の割合(hi/ht)が0.15未満である時は、衝撃吸収性能が適正水準を満たさず、この場合、タイヤ300の外部から加えられる衝撃を吸収する機能が劣ることがある。例えば、タイヤ空気圧が低い状態で突き出した物体にぶつかった時や、タイヤが空中に浮かんでから路面に着地した時、タイヤ300と路面がリム200に密着しながらピンチフラット(pinch flat)またはスネークバイト(snakebite、蛇が噛んだ時と同様に4個の孔があいた形状)パンクが発生し得て、リム200も損傷され得る。
【0115】
一方、リム200の両フック220間の仮想水平面からタイヤ300内部の最大高さ(ht)及びリム200の両フック220間の仮想水平面からインサート100の最大高さ(hi)の割合(hi/ht)が0.9を超える時は、転がり抵抗値が所定の範囲(適正水準)を満たせなくなる。この場合、タイヤ300内部は固体のインサート100で大部分満たされるため、転がり抵抗値が充足基準より増加し得る。また、タイヤの全体的な重量が増加し得る。
【0116】
本願の一実施形態によると、タイヤ用インサート100、タイヤ300及びリム200が結合された状態で、タイヤ用インサート100は、ショアC硬度20以上、ショアA硬度90以下の硬度を有し、タイヤ300の水平長径(wt)とインサート100の水平長径(wi)の割合(wi/wt)は、0.1以上、且つ1.3以下であり得るが、これに制限されるものではない。
【0117】
図12は、本願の一実施形態によるタイヤ用インサートがタイヤ及びリムと結合された状態での、タイヤの水平長径とインサートの水平長径を示すための図である。
【0118】
ここで、タイヤ300の水平長径(wt)は、例えば、タイヤ300の内面のうち両側面が図面基準水平方向に最も離れている長さを意味し得るが、これに限定されるものではない。インサート100の水平長径(wi)は、例えば、インサート100の両側面140が図面基準水平方向に最も離れている長さを意味し得るが、これに限定されるものではない。ここで、側面140は、タイヤ300内面と接触可能な面を意味し得る。
【0119】
以下では、実施例を通じて本願の一実施形態によるタイヤ用インサートをさらに詳しく説明するが、下記の実施例は、単に説明の目的のためのものであり、本願の範囲を限定するものではない。
【0120】
[実施例2]
実施例2の条件として、Maxxis-Minion DHR 2(27.5×2.3)タイヤを使用し、タイヤ内の空気圧は、10psiになるようにした。また、タイヤ水平長径は55mmと設定し、インサートの水平長径は5.5mm以上、110mm以下の範囲に調節して実験を行った。すなわち、タイヤの水平長径とインサートの水平長径の割合(wi/wt)が0.1以上、且つ2以下の範囲で0.1ずつ増加するインサートを使用した。
【0121】
実施例2の硬度は、同一の配合条件における発泡率によって調節した。また、インサート100の硬度は、ASTM D 2240基準の硬度試験方法を適用して測定した。発泡量による硬度がショアC硬度10以上、ショアC硬度90以下、及びショアA硬度10以上、ショアA硬度90以下の範囲で10ずつ増加するインサートを使用した。
【0122】
換言すると、タイヤの水平長径とインサートの水平長径の割合(wi/wt)のそれぞれについて、ショアC硬度10以上、ショアA硬度90以下のインサートに対して実験を行った。但し、転がり抵抗、振動、反発弾性を測定するための実験では、硬度及び水平長径の割合による実験で適合判定を受けた硬度範囲(ショアC硬度20以上、ショアA硬度90以下;下記の表3参照)内で通常使用される硬度のインサート100を使用した。
【0123】
実施例2の実験方法としては、リムオフテスト(Rim-Off Test)を行った。リムオフテストとは、タイヤがリムフックにかかっている状態でタイヤ側面部に力を加えてタイヤがリムフック部分から離脱する時にかかる力を測定するテストである。
【0124】
実施例2の転がり抵抗は、ドラムにタイヤを接触させた状態でドラムを回転させ、トルクセル(Torque Cell)を利用して測定した。この時、ドラムの速度は25km/hであり、重量は45kgである。参考として、下記の表2で転がり抵抗値ワット(W)は、トルク値(N-m)を消費電力(W)に変換した値であり、転がり抵抗値が小さいほどタイヤが転がるのに消耗する力は少ない。
【0125】
実施例2の振動は、ドラムにタイヤを接触させた状態でドラムを回転させ、μm単位で測定可能な振動測定器を使用して測定した。この時、ドラムの速度は20km/hであり、重量は45kgである。駆動開始後10分間の振動を測定して平均値を得た。
【0126】
実施例2の反発弾性は、タイヤとインサートが装着された中央を落下地点として500gの錘を1mの高さから落下させ、弾性によって追加で跳ね上がる高さを測定した。
【0127】
<評価基準>
転がり抵抗:120W以下である時、転がり抵抗値が適正水準であると評価する
振動:500μm以下である時、振動が適正水準であると評価する
反発弾性:30cm以上、且つ90cm以下である時、反発弾性値が適正水準であると評価する
適合(〇):タイヤにインサートを締結しないままリムオフテストを実施した時に脱着が起こる最高荷重値よりもインサートを締結した後のリムオフテストを実施した時に脱着が起こる最高荷重値のほうが大きく、硬度が増加するにつれてタイヤの装着力の増加(最高荷重値の増加)があった時に適合であると評価する
不適合(×):タイヤにインサートを締結しないままリムオフテストを実施した時に脱着が起こる最高荷重値と比べてインサートを締結した後のリムオフテストを実施した時に脱着が起こる最高荷重値が同じであるか、より小さければ不適合であると評価し、たとえ後者が大きいとしても硬度が増加するにつれてタイヤの装着力の増加(最高荷重値の増加)がなかった場合は不適合であると評価する
【0128】
【0129】
【0130】
上記表3に表す結果によると、インサート100の硬度がショアC硬度20未満である時は、インサート100をリム200及びタイヤ300と共に締結(装着)しても走行時に固定されず、リム200から離脱し易い。これは、タイヤ300の装着力において、インサート100を締結していない状態と比べて有利な効果が全くないことを意味する。また、この場合、転がり抵抗値が充足基準より大きくなり得る。インサート100、リム200及びタイヤ300が締結された状態でインサート100の硬度が所定の水準未満であれば、タイヤ300の変形率が増加するようになり、これにより、熱エネルギーに変換する値が大きくなるので、転がり抵抗値は充足基準より大きくなり得る。
【0131】
一方、インサート100の硬度がショアA硬度90を超える場合、従来の方法では、インサート100をリム200及びタイヤ300と共に締結(装着)し難い可能性がある。また、インサート100の硬度が所定の水準を超えるほど大きければ、走行時における衝撃吸収性能が劣る可能性がある。従って、リム200に伝達される衝撃量が大きいため、リム200が損傷し得る。
【0132】
また、上記表2及び表3に表す結果によると、タイヤ300の水平長径(wt)とインサート100の水平長径(wi)の割合(wi/wt)が1.3を超える場合、従来の方法では、インサート100をリム200及びタイヤ300と共に締結し難い可能性がある。
【0133】
また、上記表2に表す結果によると、タイヤ300の水平長径(wt)とインサート100の水平長径(wi)の割合(wi/wt)が0.1未満の時は、タイヤ300の装着力において、インサート100を締結していない状態と比べて有利な効果が全くない可能性がある。また、インサート100が外部衝撃に対してリム200を保護する機能が劣る可能性がある。
【0134】
一方、表2を参照すると、割合(wi/wt)が1より大きくなり始める(すなわち、インサート100の水平長径がタイヤ300の水平長径より大きくなり始める)と、転がり抵抗値が減少することを確認できる。所定の硬度を有するインサート100の水平長径がタイヤ300の水平長径より大きくなり始めると、タイヤ300の地面と摩擦が起こる部分(面積)の変化をもたらし、具体的には、タイヤ300の地面と摩擦が起こる部分の幅がタイヤ300の進行方向と垂直な方向に大きくなる。これは、転がり抵抗値を低くする上で重要な役割を果たす。
【0135】
例えば、幅が60mmで空気圧が10psiであるタイヤが地面に触れる時の幅が65mmである場合、タイヤに挿入されたインサートの水平長径がタイヤの水平長径より大きくなると、タイヤが地面に触れる時の幅は65mmより大きくなる。これは、インサートがタイヤを水平長径方向に広げるからである。
【0136】
一般的に、反発弾性値が小さくなると、転がり抵抗値が大きくなるといえる。タイヤ内部における空気(気体)の比重が高くなると、反発弾性値が大きくなり、転がり抵抗値が小さくなる。但し、表2を参照すると、インサート100の水平長径が長くなるほど反発弾性値が小さくなるにもかかわらず、転がり抵抗値が小さくなることを確認できる。すなわち、インサート100の水平長径がタイヤ300の水平長径より大きくなると(すなわち、割合(wi/wt)が1より大きい時)、上述したように、タイヤ300の接地面積の変化により転がり抵抗値が小さくなる効果のほうが、反発弾性値が小さくなるにつれて転がり抵抗値が大きくなるという効果よりも、さらに大きいということが分かる。換言すると、タイヤ300の水平長径(wt)とインサート100の水平長径(wi)の割合(wi/wt)が1を超える場合、反発弾性値が小さくなっても転がり抵抗値が小さくなるという効果がある。
【0137】
本願の一実施形態によると、タイヤ300は、チューブレスタイヤであり得るが、これに制限されるものではない。
【0138】
インサート100がチューブレスタイヤに使用されることで、インサート100を含まない従来のチューブレスタイヤに比べて衝撃吸収性能が向上され、リム200が損傷される確率を減少させることができる。
【0139】
本願の第2の態様は、タイヤ用インサート100、及びタイヤ300がリム200に締結されたタイヤ締結構造を提供する。
【0140】
本願の第2の態様によるタイヤ締結構造について、本願の第1の態様と重複する部分についての詳細な説明を省略したが、その説明が省略されても本願の第1の態様に記載された内容は本願の第2の態様に同様に適用され得る。
【0141】
本願の第3の態様は、タイヤ用インサート100を含む運送手段(vehicle)を提供する。
【0142】
運送手段は、例えば、自転車、自動車、バイク、スクーター、車椅子、ベビーカー、キックボード、電動キックボード、電動ホイール、電動スケート、トライシクル、ローラースケート、スケートボードショッピング用カート、荷車であり得るが、これに制限されるものではない。
【0143】
本願の第3の態様による運送手段について、本願の第1の態様及び第2の態様と重複する部分についての詳細な説明を省略したが、その説明が省略されても本願の第1の態様及び第2の態様に記載された内容は本願の第3の態様に同様に適用され得る。
【0144】
前述した本願の説明は例示のためのものであり、本願が属する技術分野の当業者は、本願の技術的思想や必須的な特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能なことが理解できるであろう。従って、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に分散したもので説明されている構成要素も結合された形態で実施されてもよい。
【0145】
本願の範囲は、上記詳細な説明よりも後述する特許請求の範囲によって表され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本願の範囲に含まれると解釈されるべきである。