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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】変圧器および変圧器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20230207BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20230207BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
H01F30/10 H
H01F30/10 C
H01F27/32 130
H01F41/04 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021523424
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019079719
(87)【国際公開番号】W WO2020089329
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】18203720.0
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラディンガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ドロフェニック,ウーベ
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-029219(JP,U)
【文献】実開昭61-038916(JP,U)
【文献】国際公開第2019/087466(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/007514(WO,A1)
【文献】特開昭61-218123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0295665(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/32
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器(1)であって、
軸方向を規定する軸(2)の周りに配置された第1の巻線(10)と、
前記軸(2)の周りに配置され第2の巻線(20)とを備え、
前記第2の巻線(20)は、前記第2の巻線(20)の軸方向端部位置に配置された端部(21)と前記第2の巻線(20)の軸方向中央位置に配置された中央部(22)とを有するリッツ線(23)を含み、前記リッツ線(23)は、前記端部(21)で第1の断面を有し、前記中央部(22)で第2の断面を有し、前記軸方向中央位置から前記軸方向端部位置に向かう方向が、軸外向き方向を規定し、前記第1の断面および前記第2の断面の各々は、前記軸外向き方向と前記第1の巻線(10)に向かう方向との間の象限(40)において、前記軸外向き方向と前記第1の巻線(10)に向かう方向との間に延びる湾曲を含み、前記第1の断面の前記湾曲は、前記第2の断面の前記湾曲よりも小さい、変圧器。
【請求項2】
前記第1の巻線(10)は、内側巻線であり、
前記第2の巻線(20)は、外側巻線である、請求項1に記載の変圧器。
【請求項3】
前記第1の巻線(10)は、前記軸方向に沿って第1の長さ(L1)で延在し、
前記第2の巻線(20)は、前記軸方向に沿って第2の長さ(L2)で延在し、
前記第2の長さ(L2)は、前記第1の長さ(L1)よりも短い、請求項1または2に記載の変圧器。
【請求項4】
前記第1の断面および前記第2の断面の各々は、前記軸外向き方向と前記第1の巻線(10)から離れる方向との間の第2の象限(41)において、第2の湾曲を含み、
前記第2の湾曲は、前記軸外向き方向と前記第1の巻線(10)に向かう方向との間に延び、
前記第1の断面の前記第2の湾曲は、前記第2の断面の前記第2の湾曲よりも小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項5】
前記変圧器は、強磁性コア(30)をさらに備え、
前記第1の巻線(10)は、前記強磁性コア(30)の周りに配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項6】
前記第2の巻線(20)の前記端部(21)は、前記軸(2)の周りに配置された少なくとも300°のターン、特に少なくとも360°のターンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項7】
前記第2の巻線(20)は、高圧巻線であり、
前記第1の巻線(10)は、低圧巻線である、請求項1~6のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項8】
前記第2の断面は、本質的に矩形の形状を有し、
前記第1の断面は、楕円部分と本質的に矩形部分との形状を有し、
前記楕円部分は、少なくとも、前記軸外向き方向と前記第1の巻線(10)に向かう方向との間の前記象限(40)に配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項9】
前記リッツ線(23)は、前記中央部(22)および前記端部(21)を含む連続導体(23)であり、
前記軸外向き方向と前記第1の巻線(10)に向かう方向との間の前記象限(40)に位置する前記端部(21)の前記第1の断面の前記湾曲は、前記リッツ線(23)をプレス成形することによって形成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項10】
前記第2の巻線(20)は、2列の径方向の前記リッツ線(23)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項11】
前記変圧器は、前記第1の巻線(10)および前記第2の巻線(20)を埋め込む鋳物(24)をさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項12】
前記リッツ線(23)の前記第1の断面の断面積と前記第2の断面の断面積とは、本質的に等しい、請求項1~11のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項13】
前記変圧器は、中周波変圧器、特に乾式注型中周波変圧器である、請求項1~12のいずれか一項に記載の変圧器。
【請求項14】
変圧器の製造方法であって、
軸(2)の方向に沿って第1の巻線(10)を配置することと、
中央部(22)および端部(21)を含むリッツ線(23)を準備することと、
記リッツ線(23)から、第2の巻線(20)を前記軸(2)の周りに形成することとを含み、
前記端部(21)は、前記第2の巻線の軸方向端部位置に配置され、前記中央部(22)は、前記第2の巻線(20)の軸方向中央位置に配置され、前記リッツ線(23)は、前記端部(21)で第1の断面を有し、前記中央部(22)で第2の断面を有し、前記軸方向中央位置から前記軸方向端部位置に向かう方向が、軸外向き方向を規定し、前記第1の断面および前記第2の断面の各々は、前記軸外向き方向と前記第1の巻線(10)に向かう方向との間の象限において、前記軸外向き方向と前記第1の巻線(10)に向かう方向との間に延びる湾曲を含み、前記第1の断面の前記湾曲は、前記第2の断面の前記湾曲よりも小さい、方法。
【請求項15】
記リッツ線(23)は、前記第2の巻線(20)の長さにわたって本質的に一定の断面を有し、
前記第2の巻線(20)の形成は、前記端部(21)に応じて、前記リッツ線(23)の特定の長さにわたって、前記リッツ線(23)を第1のホイールまたはロール(101)と第2のホイールまたはロール(104)との間に押し込むことを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示の実施形態は、変圧器、特に中周波変圧器(MFT)に関する。本開示のさらなる実施形態は、変圧器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
中周波数変圧器(MFT)は、様々な電気電子システムにおいて重要な部品である。一例として、鉄道車両において、補助変換器および固体変圧器(SST)は、体積の大きい低周波数の牽引変圧器を取り換える。SSTは、例えば、再生可能エネルギー源、EV充電インフラストラクチャ、データセンタ、または船舶上の電力グリッドのグリッド一体化のためにさらに応用されると考えられる。SSTは、今後ますます重要な役割を果たすと予想される。
【0003】
一方では各MFTの動作電圧が高く(10kV~50kVの範囲)、他方では従来の低周波数配電器および電力変圧器に比べて各MFTの出力がかなり低い(数百kVAの範囲)ため、MFTの電気絶縁は、大きな課題である。したがって、電気絶縁によって占有された空間は、MFTの全体のサイズに比べて比較的に大きい。特に、コア窓の充填率、すなわち、巻線導体で充填されたコア窓領域の割合は、比較的に小さい。絶縁距離を最小化し、充填率を最適化するためのスマートな解決策が必要である。充填率を最適化するために、高圧巻線および低圧巻線を一体に鋳造することによって、空気の場合よりも小さい絶縁距離を形成することができる。それにもかかわらず、部分的な放電を作り出し、絶縁の寿命を短くする電場ピークを回避するために、電場勾配を慎重にする必要がある。
【0004】
MFTの動作周波数が高く、例えば10kHzであるため、巻線は、通常、リッツ線から作られる。したがって、表皮効果および近接効果による損失を許容限度内に維持する必要である。
【0005】
したがって、最先端技術に比べて、特に最適な電場勾配を形成するように、変圧器を引き続き改善する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
上記に鑑みて、独立請求項に記載の変圧器および変圧器の製造方法が提供される。さらなる態様、利点および特徴は、従属請求項、明細書および添付の図面から明らかである。
【0007】
本開示の一態様によれば、変圧器が提供される。この変圧器は、軸方向を規定する軸の周りに配置された第1の巻線と、軸の周りに配置された第2の巻線とを備え、第2の巻線は、第2の巻線の軸方向端部位置に配置された端部と、第2の巻線の軸方向中央位置に配置された中央部とを有するリッツ線を含み、リッツ線は、端部で第1の断面を有し、中央部で第2の断面を有する。第1の断面および第2の断面の各々は、軸外向き方向と第1の巻線に向かう方向との間の象限において、軸外向き方向と第1の巻線に向かう方向との間に延びる湾曲を含み、第1の断面の湾曲は、第2の断面の湾曲よりも小さい。
【0008】
一態様によれば、本開示に記載された変圧器は、第1の断面の湾曲が第2の断面の湾曲に本質的に等しい変圧器に比べて、第2の巻線の端部と第1の巻線との間の電場のピーク強度が低減される。
【0009】
したがって、従来の変圧器に比べて、本開示の変圧器の設計は、改善される。具体的に、本開示に記載された変圧器は、電場勾配を最適化し、巻線端部の電場のピーク強度を低減することによって、コンパクトで経済的な変圧器の設計を可能にする。電場のピーク強度の低減は、中央部の断面および端部の断面が等しい変圧器と比較するものである。
【0010】
変圧器は、同一軸の周りに配置された第1の巻線と第2の巻線とを備える。第1の巻線および/または第2の巻線は、軸に沿って、渦巻状または螺旋状に配置されてもよい。典型的には、第1の巻線は、内側巻線であり、第2の巻線は、外側巻線である。
【0011】
第2の巻線は、複数のリッツ撚り糸からなるリッツ線を含む。これは、表皮効果および近接効果による損失を著しく低減する。絶縁層で各リッツ撚り糸を封入することによって、複数のリッツ撚り糸を隔離することができる。同様に、第1の巻線は、リッツ線を含んでもよい。
【0012】
第2の巻線は、第2の巻線の軸方向端部位置に配置された端部と、第2の巻線の軸方向中央位置に配置された中央部とを有するリッツ線を含む。また、第2の巻線は、例えば、2列の径方向のリッツ線を含むことができる。リッツ線の端部は、リッツ線自体が第2の巻線の端部で終端することを含まない。リッツ線は、例えば、外部接点まで延在することができ、または別の径方向列を形成するために第2の巻線内で延在することができる。リッツ線の端部は、第2の巻線の軸方向端部位置に配置される。したがって、第2の巻線は、さらに軸方向で終端する。
【0013】
本開示の一態様によれば、軸方向中央位置から軸方向端部位置に向かう方向は、軸外向き方向を規定し、第2の巻線から第1の巻線に向かう方向は、第1の巻線に向かう方向を規定している。
【0014】
本開示のさらなる態様によれば、変圧器の製造方法が提供される。この方法は、軸の方向に沿って第1の巻線を配置することと、中央部および端部を含む連続リッツ線を準備することと、連続リッツ線から、第2の巻線を軸の周りに形成することとを含み、端部は、第2の巻線の軸方向端部位置に配置され、中央部は、第2の巻線の軸方向中央位置に配置される。リッツ線は、端部で第1の断面を有し、中央部で第2の断面を有する。第1の断面および第2の断面の各々は、軸外向き方向と第1の巻線に向かう方向との間の象限において、軸外向き方向と第1の巻線に向かう方向との間に延びる湾曲を含み、第1の断面の湾曲は、第2の断面の湾曲よりも小さい。
【0015】
一態様によれば、本開示に従って製造された変圧器は、第2の巻線の端部と第1の巻線との間の電場勾配のピーク強度を低減するように構成される。
【0016】
上述した本開示の特徴を詳細に理解できるように、実施形態を参照して、上記で要約した本開示をより具体的に説明する。添付の図面は、本開示の実施形態に関連しており、以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示に記載の実施形態に係る変圧器を示す概略断面図である。
図2】本開示に記載の実施形態に係る第2の巻線の端部および中央部の異なる断面を示す概略断面図である。
図3】本開示に記載の実施形態に係る第2の巻線の端部および中央部の異なる断面を示す概略断面図である。
図4】本開示に記載の実施形態に係る第2の巻線の端部および中央部の異なる断面を示す概略断面図である。
図5】本開示に記載の実施形態に係る第2の巻線の端部および中央部の異なる断面を示す概略断面図である。
図6】本開示の変圧器の製造方法の実施形態に従って、リッツ線を形成する工程を示す図である。
図7】本開示の変圧器の製造方法の実施形態に従って、リッツ線を形成する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態の詳細な説明
以下、様々な実施形態を詳細に説明する。実施形態の1つ以上の例は、図面に示される。各例は、説明のために提供され、限定を意味するものではない。例えば、一実施形態の一部として図示または記載された特徴を任意の他の実施形態に使用することまたは任意の他の実施形態と併用することによって、別の実施形態を構成することができる。本開示は、これらの修正例および変形例を含むことを意図している。
【0019】
以下の図面の説明において、同様の参照番号は、同様または類似の要素を示す。通常、個々の実施形態の相違点のみを説明する。特に明記しない限り、一実施形態の一部または局面に関する説明は、別の実施形態の対応する部分または局面に適用することができる。
【0020】
図1を例示的に参照して、本開示の変圧器1を説明する。本開示に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、変圧器1は、軸方向を規定する軸2の周りに配置された第1の巻線10と、軸2の周りに配置された第2の巻線20とを備える。第2の巻線20は、第2の巻線20の軸方向端部位置に配置された端部21と、第2の巻線20の軸方向中央位置に配置された中央部22とを有するリッツ線23を含む。リッツ線23は、端部21で第1の断面を有し、中央部22で第2の断面を有する。第1の断面および第2の断面の各々は、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間の象限40において、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間に延びる湾曲を含む。湾曲は、少なくとも部分的にまたは完全に90°の扇形に延びることができる。第1の断面の湾曲は、第2の断面の湾曲よりも小さい。これによって、第2の巻線20の端部21と第1の巻線10との間の電場のピーク強度を低減することができる。リッツ線23の中央部21および端部22の断面は、図2~5においてより詳細に示されている。
【0021】
軸2は、軸方向を規定する。軸外向き方向は、第2の巻線20の中央部22から端部21に向かう方向である。この方向は、図1の上下方向であってもよい。図1に示すように、断面は、リッツ線23に直交する平面として記載されてもよく、または変圧器1の軸2を含む平面として記載されてもよい。
【0022】
軸方向中央位置から軸方向端部位置に向かう方向は、軸外向き方向を規定し、第2の巻線(20)から第1の巻線(10)に向かう方向は、第1の巻線(10)に向かう方向を規定する。
【0023】
第1の巻線(10)から第2の巻線(20)に向かう方向は、第1の巻線(10)から離れる方向を規定する。
【0024】
軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間の象限における湾曲は、リッツ線またはリッツ線群の幾何学的湾曲として理解すべきである。湾曲は、一定である必要がない。湾曲は、第1の巻線10と第2の巻線20との間の電場勾配を有意に規定する象限における湾曲として定義することができる。典型的には、第1の断面の湾曲の最大値は、第2の断面の湾曲の最大値よりも小さい。これによって、第2の巻線20の端部21と第1の巻線10との間の電場のピーク強度を低減することができる。
【0025】
象限における端部21の湾曲は、中央部22の湾曲よりも小さい。換言すると、上述した象限において、端部21の湾曲半径は、中央部23の湾曲半径よりも大きい。例えば、中央部が鋭いエッジを有する場合、エッジの湾曲は、最大である。局部的な湾曲半径が小さいほど、湾曲が大きくなる。鋭いエッジは、無限小の湾曲半径を有するため、最大の湾曲を有する。この例における小さい湾曲は、鋭いエッジよりも小さい湾曲を有する4分の1の円(部分楕円または部分円)であってもよい。
【0026】
中央部21および端部22は、急に分離されない。中央部22と端部21との間に連続的な移行部が存在している。したがって、中央部22と端部21とを半田付けまたはろう付けで接合する必要がない。一実施形態によれば、第2の巻線20の端部21は、軸2の周りに少なくとも300°のターン、特に少なくとも360°のターンを含む。これによって、特定の長さにわたって、第2の巻線20の端部21と第1の巻線10との間の電場のピーク強度の低減を保証する。好ましくは、第2の巻線20の全体および最後のターンは、軸の周りに配置される。
【0027】
一実施形態によれば、第1の巻線10は、軸方向に沿って第1の長さL1で延在し、第2の巻線20は、軸方向に沿って第2の長さL2で延在し、第2の長さL2は、第1の長さL1よりも短い。例えば、絶縁のために、第2の巻線20は、第1の巻線10と長手軸2との間の距離よりも大きい軸2からの径方向距離で配置される。絶縁距離は、図1に概略的に示されている。これによって、第1の巻線10の高さに比べて、第2の巻線の高さを低減することができる。
【0028】
一実施形態によれば、変圧器は、絶縁のために、第1の巻線10および第2の巻線20を埋め込む鋳型24をさらに備える。
【0029】
一態様によれば、第2の巻線20のリッツ線23は、中央部22で本質的に矩形の形状を有する。矩形または正方形のリッツ線は、一般的には、同等の変圧器に利用可能である。第2の断面は、本質的に矩形の形状を有することができ、第1の断面は、楕円部分と本質的に矩形部分との形状を有することができ、楕円部分は、少なくとも、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間の象限に配置される。これは、図2~5に示されている。
【0030】
図2~5の全てにおいて、リッツ線23の中央部22の断面は、本質的に矩形である。端部21は、図面の上方に示されている。しかしながら、本開示によれば、端部は、頂部または底部に配置されてもよく、または2つの端部を設けてもよい。図面を簡潔にするために、リッツ線に参照符号を与えない。好ましくは、リッツ線23の密接な堆積を提供するために、リッツ線23の中央部22の形状は、本質的に矩形である。
【0031】
一実施形態によれば、端部21は、第1の端部21であり、リッツ線23は、第2の巻線20の反対側の軸方向端部位置に配置された第2の端部26を含み、中央部22は、第1の端部21と第2の端部26との間に位置する。リッツ線23は、第2の端部26で第3の断面を有し、第3の断面および第2の断面の各々は、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間の象限において、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間に延びる湾曲を含み、第1の断面の湾曲は、第2の断面の湾曲よりも小さい。これによって、第2の巻線20の第2の端部26と第1の巻線10との間の電場勾配を低減することができる。
【0032】
典型的には、第2の巻線20は、高圧巻線であり、第1の巻線10は、低圧巻線である。さらに、高圧巻線は、典型的には外側巻線である。一態様によれば、変圧器は、10~50kVの高圧巻線の電圧および0.7~2kVの低圧巻線の電圧に対応するように構成される。したがって、変圧器は、中周波変圧器、特に乾式注型(dry-cast)中周波変圧器であってもよい。
【0033】
一実施形態によれば、変圧器は、強磁性コア30をさらに備え、第1の巻線10は、強磁性コア30の周りに配置される。
【0034】
一実施形態によれば、第1の巻線10は、変圧器の動作中に接地するように構成される。
【0035】
第2の巻線20は、第2の巻線20の軸方向端部位置に配置された端部21と第2の巻線20の軸方向中央位置に配置された中央部22とを有するリッツ線23を含む。一態様によれば、リッツ線23は、中央部22と端部21とを含む連続導体であり、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間の象限に位置する端部21の第1の断面の湾曲は、リッツ線23をプレス成形することによって形成される。
【0036】
第1の断面の断面積と第2の断面の断面積とは、本質的に等しくてよい。したがって、第1の断面および第2の断面は、形状のみで異なる。
【0037】
第2の巻線は、第2の巻線20を外部に接続するための外部接続部25をさらに含むことができる。端部21は、接続部25と中央部22との間に位置しており、リッツ線23は、外部接続部25、端部21および中央部22に連続的に広がる。したがって、第2の端部26を第2の外部接続部27に接続することができ、リッツ線23は、第1の外部接続部25、第1の端部21、中央部22、第2の端部26、および第2の外部接続部27に連続的に広がる。
【0038】
図2は、実施形態に係る変圧器の一部を示す。リッツ線23は、図の上方に位置する端部21と、中央部22とを有する。図面を簡潔にするために、リッツ線23の中央部22の残りおよび下端を図示していない。軸2は、軸方向を規定する。径方向は、軸方向に対して垂直である。軸外向き方向は、図2図5の上方に指向する。図示のように、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間の象限40において、リッツ線23の端部21の断面の湾曲は、リッツ線23の中央部22の断面の湾曲よりも小さい。換言すると、リッツ線23の端部21の形状は、中央部22に比べて、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間でより丸くなる、または、端部21のコーナ半径は、中央部22に比べてより大きい。これによって、端部21近傍の電場勾配を低減することができる。象限40は、図2~5の全てにおいて、第2の巻線20の端部21および中央部22に示されている。図示のように、象限40は、リッツ線23の中心または複数列のリッツ線23の中心を原点とするデカルト座標系の第1の象限である。
【0039】
特に、端部21で電場勾配を形成するリッツ線23を切断し、ケーブルシュー(cable shoe)を用いて、中央部22で異なる断面のリッツ線23を接続する必要がない。このような接続は、コスト、製造労力、空間および損失を著しく増大させる。リッツ線23の断面のみを変更することによって、端部21と中央部とその間の移行部とを単一の部品に形成することができる。
【0040】
図3は、図2に類似する実施形態を示す。この実施形態において、第2の巻線20は、軸2の周りに配置された第2のターンのリッツ線23を含む。第2の巻線20は、2列の径方向のリッツ線23を含む。2列の径方向のリッツ線は、二重螺旋に配置されてもよい。また、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間の象限40において、リッツ線23の端部21の断面の湾曲は、リッツ線23の中央部22の断面の湾曲よりも小さい。例えば、リッツ線が二重螺旋に配置される場合、図3および5に示すように、デカルト座標系の原点は、2列のリッツ線23の中間に位置し、象限40は、この座標系の第1の象限である。象限40を含むデカルト座標系は、2つがある。1つは、端部21にあり、もう1つは、中央部22にある。
【0041】
図4の実施形態によれば、第1の断面および第2の断面の各々は、軸外向き方向と第1の巻線10から離れる方向との間の第2の象限41において、第2の湾曲を含み、第1の断面の第2の湾曲は、第2の断面の湾曲よりも小さい。これによって、リッツ線23の端部21の周りの電場のピーク強度をさらに低減することができる。第1の湾曲と同様に、第2の湾曲は、第2の象限41において少なくとも部分的にまたは完全に90°の扇形に広がることができる。リッツ線23または複数のリッツ線23の中心を原点とするデカルト座標系において、象限40および象限41は、デカルト座標系の第1の象限および第2の象限である。
【0042】
図5は、図3および4の組み合わせである別の実施形態を示す。第2の巻線20は、2列の径方向のリッツ線23を含む。径方向外側列の外側コーナの形状および径方向内側列の内側コーナの形状は、上述した形状と同様である。湾曲は、象限において90°の扇形に広がる。具体的に、第1の湾曲は、第1の象限40において90°の扇形に広がり、第2の湾曲は、第2の象限41において90°の扇形に広がる。
【0043】
図6および7は、本開示によって提案された変圧器の製造方法の一部として、リッツ線23を形成する工程を示す。この方法は、上述した変圧器の各実施形態に組み合わせることができる。この方法は、軸2の方向に沿って第1の巻線10を配置することと、中央部22および端部21を含む連続リッツ線23を準備することと、連続リッツ線23から、第2の巻線20を軸2の周りに形成することとを含む。端部21は、第2の巻線20の軸方向端部位置に配置され、中央部22は、第2の巻線20の軸方向中央位置に配置される。リッツ線23は、端部21で第1の断面を有し、中央部22で第2の断面を有する。第1の断面および第2の断面の各々は、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間の象限40において、軸外向き方向と第1の巻線10に向かう方向との間に延びる湾曲を含み、第1の断面の湾曲は、第2の断面の湾曲よりも小さい。これによって、第2の巻線20の端部21と第1の巻線10との間の電場勾配のピーク強度を減少することができる。
【0044】
図6は、提案された方法の一実施形態を示す。この場合、リッツ線23は、第2の巻線20の長さにわたって本質的に一定の断面を有する。通常のリール200からリッツ線23を供給することができる。プレスまたは押し込み装置100を通過するように、リールからの連続リッツ線23を引っ張る。プレスまたは押し込み装置100は、軸102の周りを回転するホイールまたはロール101を含む。ホイールまたはロール101は、第1の端部21に応じて、リッツ線23に押圧することによって、リッツ線23の特定の長さにわたってリッツ線23を変形させる。その結果、上述したような第1の断面の湾曲を形成する。
【0045】
一実施形態によれば、連続リッツ線23は、第2の巻線20の長さにわたって本質的に一定の断面を有し、第2の巻線20の形成は、第1の端部21に応じて、リッツ線23の特定の長さにわたって、リッツ線を第1のホイールまたはロール101と第2のホイールまたはロール103との間に押し込むことを含む。
【0046】
図7に示す実施形態によれば、プレスまたは押し込み装置100は、軸102および104の周りをそれぞれ回転する2つのホイールまたはロール101および103を含む。リッツ線は、ホイール101および103の間に押し込まれ、変形させられる。
【0047】
一実施形態によれば、第1の断面の断面積と第2の断面の断面積とは、本質的に等しい。特に、図6および7に示すプレスまたは押し込み装置100を使用する場合、断面のみを変形するため、断面積は、本質的に変わらない。
【符号の説明】
【0048】
参照番号
1 変圧器
2 巻線の軸
10 第1の巻線
20 第2の巻線
21 リッツ線の端部
22 リッツ線の中央部
23 リッツ線
24 鋳型
25 外部接続部
26 リッツ線の第2の端部
27 第2の外部接続部
30 強磁性コア
40 軸外向き方向と第1の巻線に向かう方向との間の象限
41 軸外向き方向と第1の巻線から離れる方向との間の象限
L1 第1の巻線の第1の長さ
L2 第2の巻線の第2の長さ
100 プレスまたは押し込み装置
101 ホイールまたはロール
102 第1のホイールまたはロールの軸
103 第2のホイールまたはロール
104 第2のホイールまたはロールの軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7