(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】制御されたスイッチングアプリケーションのための、スイッチング装置の動作をモニタリングするための方法および装置
(51)【国際特許分類】
H01H 9/54 20060101AFI20230207BHJP
H01H 33/59 20060101ALI20230207BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20230207BHJP
H02H 7/20 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
H01H9/54 C
H01H33/59 H
H02H7/00 L
H02H7/20 A
(21)【出願番号】P 2021537897
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 IB2019061266
(87)【国際公開番号】W WO2020136545
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】201841049259
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カンタ,ソウミャ
(72)【発明者】
【氏名】パリーク,ウルミル
(72)【発明者】
【氏名】シュタネク,ミヒャエル
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120666(JP,A)
【文献】国際公開第2012/095942(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/086671(WO,A1)
【文献】特開2013-62196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54 - 9/56
H01H 33/59
H02H 7/00 - 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力システムにおいてスイッチング装置の動作をモニタリングするための方法であって、前記スイッチング装置を介して負荷が電源に接続されており
、前記方法は、
装置(402)によって、前記装置(402)に結合された第1の測定機器からソース側における電圧の測定値を得るとともに、前記装置(402)に結合された第2の測定機器から負荷側における電圧の測定値を得るステップ(502)を備え、
前記負荷は、複数の巻線を備え、前記複数の巻線の2つ以上の位相または前記複数の巻線のうちの2つ以上の巻線の間には結合があり、前記方法はさらに、
前記ソース側
における電圧の前記測定値および前記負荷側における電圧の前記測定値
に基づいた、前記スイッチング装置の複数の極のうちの少なくとも1つの極の電気的スイッチングに関連付けられたギャップ電圧、および
前記負荷の前
記複数の巻線のうちの少なくとも1つの巻線に関連付けられた線路測定値
に基づいた、前記スイッチング装置の複数の極のうちの少なくとも1つの極の線間電圧のうちの1つを求めるステップ(504)と、
前記少なくとも1つの極の前記ギャップ電圧が閾値を満たすか否か、および、前記少なくとも1つの極の前記線間電圧が閾値を満たすか否かをモニタリングするステップ(506)と、
前記少なくとも1つの極の前記ギャップ電圧が前記閾値を満たす場合、または、前記少なくとも1つの極の前記線間電圧が前記閾値を満たす場合に前記少なくとも1つの極の電気的スイッチングの瞬間を判断するステップ(508)と、
前記電気的スイッチングの瞬間に基づいて
前記少なくとも1つの極の機械的動作時間ずれを求めるステップ(510)とを備え、前記機械的動作時間ずれは、
前記電気的スイッチングの瞬間に前記スイッチング装置の前記
少なくとも1つの極を動作させるための
前記スイッチング装置への出力コマンドのリリースの瞬間の評価に使用される、方法。
【請求項2】
前記
少なくとも1つの極の前記ギャップ電圧は、前記
少なくとも1つの極に関連付けられた位相について、前記ソース側における電圧の前記測定値と前記負荷側における電圧の前記測定値との間の差に基づいて求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前
記線間電
圧は、前記負荷側における電圧の前記線路測定値に基づいて求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記線路測定値は、前記負荷側における前記線間電圧および線路-接地間電圧のうちの少なくとも1つを提供し、前記負荷側における前記線路測定値は、前記負荷の一次側および二次側のうちの1つにおけるものであり、前記一次側および前記二次側のうちの少なくとも1つは、スター非接地巻線およびデルタ接続巻線のうちの少なくとも1つを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記線間電圧は、前記負荷側における前記線路測定値の差および前記線路測定値の変換のうちの少なくとも1つに基づいて推定され、前記線路測定値の前記変換は、巻線電圧を求めるのに使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
電力システムにおいてスイッチング装置の動作をモニタリングするための装置(402)であって
、前記装置は、
前記装置(402)に接続された第1の測定機器からソース側における電圧の測定値を得るとともに前記装置(402)に接続された第2の測定機器から負荷側における電圧の測定値を得るための入力インターフェイス(802)を備え、
前記負荷は、複数の巻線を備え、前記複数の巻線の2つ以上の位相または前記複数の巻線のうちの2つ以上の巻線の間には結合があり、前記装置はさらに、
計算部(804)であって、
前記ソース側における電圧の前記測定値および前記負荷側における電圧の前記測定値に基づいて前記スイッチング装置の複数の極のうちの少なくとも1つの極の電気的スイッチングに関連付けられたギャップ電圧を求めるとともに、
前記負荷の前
記複数の巻線のうちの少なくとも1つの巻線に関連付けられた線路測定値
に基づいて前記スイッチング装置の複数の極のうちの少なくとも1つの極の線間電圧を求めるための計算部(804)
と、
前記少なくとも1つの極の前記ギャップ電圧が閾値を満たすか否か、および、前記少なくとも1つの極の前記線間電圧が閾値を満たすか否かをモニタリングするためのモニタ(806)
とを備え、前記モニタ(806)は、
前記少なくとも1つの極の前記ギャップ電圧が前記閾値を満たす場合、または、前記少なくとも1つの極の前記線間電圧が前記閾値を満たす場合に前記スイッチング装置の
前記少なくとも1つの極の電気的スイッチングの瞬間を判断し、
前記電気的スイッチングの瞬間に基づいて
前記少なくとも1つの極の機械的動作時間ずれを求め、前記機械的動作時間ずれは、
前記電気的スイッチングの瞬間に前記スイッチング装置の前記
少なくとも1つの極を動作させるための出力コマンドのリリースの瞬間の評価に使用され、前記装置はさらに、
前記電気的スイッチングの瞬間において前記スイッチング装置の
前記少なくとも1つの極を動作させるため
の出力コマンドを
前記スイッチング装置に提供するための出力インターフェイス(808)を備える、装置。
【請求項7】
前記装置
(402)は、リレーであり、各測定機器は、計器用変圧器(406)であり、前記リレーは、前記計器用変圧器から電圧測定値を受信する、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、電力システムにおける制御されたスイッチングアプリケーションに関する。より具体的には、本発明は、このような電力システムにおける制御されたスイッチングアプリケーションのための、スイッチング装置のモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
制御されたスイッチング技術の適用は、電力システムにおいて周知である。これは、たとえば、電圧または電流サージを制限すること、機器を保護することなどであり得る。回路遮断器、断路器などのスイッチング装置は、制御されたスイッチング機能を実行するために使用される。遮断器のスイッチングをモニタリングすることが重要である。現在の技術は、制御されたスイッチングを支援するための遮断器モニタリングの所望の精度を実現するために、高精度の機械的フィードバック、負荷電流および負荷電圧を使用したモニタリングに頼っている。
【0003】
結合負荷の場合、遮断器電流のモニタリングは、機械的または電気的スイッチングの瞬間を判断することに依存する。これは、たとえば、電圧または補助接点のモニタリング(たとえば、機械的スイッチング)に基づいているであろう。なぜなら、電流のモニタリングが適していない可能性があるからである。あるいは、これは、遮断器電流のモニタリング(たとえば、電気的スイッチング)に基づいているであろう。
【0004】
遮断器電流の開始および中断の瞬間から遮断器の通電および通電解除を正確に検出することができる。しかし、負荷電圧の場合、このモニタリングは、負荷の影響により不正確になる可能性がある。接続された負荷は、電気的または磁気的に結合され得るので、負荷電圧の挙動を変化させる可能性がある。それぞれの遮断器極が通電されたときだけ現れる遮断器電流とは異なって、負荷電圧は、遮断器極が通電されなくても現れる可能性がある。これは、負荷の位相間または負荷の巻線間の結合に起因するものである。
【0005】
したがって、後続の位相が閉じる通電の瞬間または最初の位相が開く通電解除の瞬間を負荷電圧のみから検出することは非常に困難である。このような状況下では、制御されたスイッチングを支援するための負荷電圧のモニタリングならびにその後の遮断器のモニタリングおよび関連する動作時間の修正は、不正確になるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の一局面は、電力システムにおいてスイッチング装置の動作をモニタリングするための方法に関する。上記電力システムでは、上記スイッチング装置を介して負荷が電源に接続されている。さまざまな実施形態によれば、上記負荷は、1つまたは複数の巻線を有している。ここでは、上記負荷は、結合負荷である。したがって、上記負荷の巻線の2つ以上の位相の間には結合があり得る。あるいはまたはさらに、上記負荷の2つ以上の巻線の間には結合があり得る。
【0007】
上記方法は、電圧および電流のうちの少なくとも1つの測定値を1つまたは複数の測定機器から得るステップを含む。ここでは、上記測定値は、ソース側および負荷側のうちの1つまたは複数において得られる。
【0008】
上記方法は、上記スイッチング装置の1つまたは複数の極の電気的スイッチングに関連付けられた電気的パラメータの値を求めるステップも含む。上記1つまたは複数の極の各極の上記電気的パラメータの上記値は、上記ソース側および上記負荷側における電圧の上記測定値、および上記負荷の上記1つまたは複数の巻線のうちの少なくとも1つの巻線に関連付けられた線路測定値、のうちの少なくとも1つに基づいて求められる。上記線路測定値は、上記負荷の一次側または二次側におけるものであり得る。さらに、上記線路測定値は、線路-接地間測定値または線間測定値であり得る。
【0009】
一実施形態によれば、上記電気的パラメータは、ギャップ電圧である。ここでは、上記極の上記ギャップ電圧の上記値は、上記極に関連付けられた位相について、上記ソース側における電圧の上記測定値と上記負荷側における電圧の上記測定値との間の差に基づいて求められる。
【0010】
別の実施形態によれば、上記電気的パラメータは、線間電圧である。ここでは、上記電気的パラメータの上記値は、上記負荷側における電圧の上記線路測定値に基づいて求められる。上記線路測定値は、上記負荷側における上記線間電圧を提供し得る。あるいは、上記線間電圧は、上記負荷側における上記線路測定値の差、および上記線間電圧を得るための上記線路測定値の変換のうちの1つまたは複数に基づいて推定される。ここでは、上記変換は、上記二次側における上記線路測定値を上記一次側における上記線間電圧に変換する1つまたは複数のステップを含み得る。上記変換の目的は、上記求められた測定値からコイル電圧(スター/デルタ接続巻線のもの)を求めることであり、上記変換は、1つまたは複数のステップを有し得る。
【0011】
上記方法はさらに、上記電気的パラメータの上記値をモニタリングするステップと、上記電気的パラメータの上記値の上記モニタリングから、上記スイッチング装置の上記対応する極の電気的スイッチングの瞬間を判断するステップとを備える。したがって、上記方法は、各極の上記電気的スイッチングの瞬間を判断するステップを備える。
【0012】
上記電気的パラメータの上記モニタリングから判断される上記電気的スイッチングの瞬間は、個々の極の機械的動作時間ずれを求めるのに使用される。上記電気的スイッチングの瞬間は、機械的散乱および誘電性散乱を含むがこれらに限定されない上記スイッチング装置の機械的特性および誘電特性とともに、上記機械的動作時間ずれを求めるのに使用される。
【0013】
各極の上記機械的動作時間ずれは、所望の電気的スイッチングの瞬間に上記スイッチング装置の上記対応する極を動作させるための出力コマンドのリリースの瞬間の評価に使用される。
【0014】
上記方法は、上記1つまたは複数の測定機器によって得られる上記測定値を有する上記電力システムの装置で実現されてもよい。一実施形態によれば、上記装置は、リレーである。また、上記測定機器は、計器用変圧器であり得て、上記リレーは、上記計器用変圧器から電圧測定値を受信する。
【0015】
一局面によれば、上記装置は、入力インターフェイスと、計算部と、モニタと、出力インターフェイスとを備え、これらは、上記方法の1つまたは複数のステップ、またはそれらの一部を実行する。上記装置は、上記スイッチング装置のモニタリングに使用され得て、上記負荷は、結合負荷である。
【0016】
上記負荷は、誘導性、容量性および/もしくは抵抗性、またはそれらの組み合わせであって、さまざまな設計および/または接続構成を有し得る。一実施形態によれば、上記負荷は、キャパシタであり、上記電気的パラメータは、ギャップ電圧である。別の実施形態によれば、上記負荷は、変圧器であり、上記電気的パラメータは、上記変圧器のスター側およびデルタ側のうちの1つにおける線間電圧である。
【0017】
添付の図面に示される例示的な実施形態を参照して、以下の本文で本発明の主題をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のさまざまな実施形態に係る電力システムの単線結線図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電力システムの単線結線図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る電力システムの単線結線図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るソース電圧および負荷電圧の測定を示す図である。
【
図5】本発明の別の実施形態に係るソース電圧および負荷電圧の測定を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るスイッチング装置の動作をモニタリングするための方法のフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る変圧器のデルタ側における測定値を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る変圧器のスター側における測定値を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るスイッチング装置の動作をモニタリングするための装置の簡略図である。
【
図11】上記方法の実現に関連するさまざまなグラフィカルな結果を示す図である。
【
図12】上記方法の実現に関連するさまざまなグラフィカルな結果を示す図である。
【
図13】上記方法の実現に関連するさまざまなグラフィカルな結果を示す図である。
【
図14】上記方法の実現に関連するさまざまなグラフィカルな結果を示す図である。
【
図15】上記方法の実現に関連するさまざまなグラフィカルな結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本発明は、送電または配電システムなどの電力システムに関し、これらの電力システムでは、制御されたスイッチングなどの電力システムアプリケーションに関与するスイッチング装置がある。一般に知られているように、制御されたスイッチングは、負荷(キャパシタ、リアクトル、電力変圧器、または容量特性と誘導特性との組み合わせを有する他の電力システム機器など)の計画的なスイッチングを実行することによって、有害な電気的過渡事象を排除または最小化するのに使用される。このようなアプリケーションにおいては、電源と負荷とを接続するために回路遮断器などのスイッチング装置が一般に使用される。回路遮断器の動作および負荷のスイッチングを制御するために、コントローラ、リレーまたはインテリジェント電子装置(IED)が使用され得る。
【0020】
遮断器などのスイッチング装置の制御されたスイッチングアプリケーションにおいては、モニタリング機能が、スイッチングにおけるその後の適合および修正を実施するのにかなり重要である。たとえば、負荷の最適なスイッチングのために、後続の瞬間においてポイントオンウェーブ(point on wave)で極の開放または閉鎖を制御する目的で、各極の閉鎖がモニタリングされてもよい。
【0021】
モニタリング機能は、基本的には、遮断器または負荷のいずれかからの機械的および/または電気的フィードバックに依存する。たとえば、遮断器電流または負荷電圧を測定するために、電流または電圧変圧器などの測定機器が適切な場所に存在し得る。一般に、遮断器電流および負荷電圧は、制御されたスイッチングのためにモニタリングされる。変圧器、キャパシタ、リアクトル、または誘導特性と容量特性との組み合わせを有する機器などの負荷の場合には、負荷電圧は、デルタ接続を有する二次または三次巻線のものであってもよい。反対側には、変圧器またはリアクトルの磁気回路に起因して結合も存在し得る。したがって、巻線の異なる位相間または異なる巻線間には結合が存在し得る。これにより、後続の位相の通電または通電解除(または、スイッチング)の瞬間を正確に特定することが困難になり、それによって、制御されたスイッチングのための後続の動作に影響を及ぼす。
【0022】
本発明は、負荷が接続されているさまざまな位相のうちのいずれか1つの通電または通電解除後にこれらのさまざまな位相のスイッチングの瞬間を正確に判断することを提供する。
図1に示される電力システム(100)を例にとって本発明を説明する。
【0023】
図1に示される電力システムは、電力を負荷(104)に提供するための電源(102)を含む。電源は、負荷の通電または充電に使用される。電源は、三相交流電源であり得て、負荷は、結合負荷である。ここでは、負荷は、磁気的および/または電気的に結合されていてもよい。たとえば、負荷は、誘導性、容量性、抵抗性、またはそれらの組み合わせであって、さまざまな設計および/または接続構成を有し得る。たとえば、電源は、ACグリッドであり得て、負荷は、キャパシタバンク、分路リアクトル、電力変圧器、三脚リアクトル、またはそれらの組み合わせを含み得て、一例としては変圧器に接続されたケーブルである。
【0024】
電源は、スイッチング装置(106)を介して負荷に接続されている。スイッチング装置は、パワーエレクトロニクス技術に基づく断路回路遮断器または他の同様のスイッチング装置のような、遮断器、断路器、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0025】
スイッチング装置は、1つまたは複数の極を有しており、それらの各々は、負荷が接続されている対応する位相を通電または通電解除するように動作される(すなわち、接続または切断される)。
【0026】
さまざまな実施形態によれば、負荷は、結合負荷である。言い換えれば、負荷は、1つまたは複数の巻線を有しており、巻線上の異なる位相間に結合がある。さらにまたはあるいは、異なる巻線間に結合がある。負荷が電力変圧器である
図2または
図3に示される例を検討する。これらの例においては、電力変圧器は、スターデルタまたはデルタスター接続を有する。したがって、巻線または位相間に結合があり得る。たとえば、負荷がデルタ側(たとえば、202)に接続されている場合、一次側の巻線間に結合がある。別の例として、負荷がスター側(たとえば、302)に接続されている場合、デルタ接続を介して二次側の位相間に結合がある。別の例においては、負荷104は、
図6に示されるように、三脚リアクトルであり得て、磁気回路に起因して結合がある。
【0027】
電圧および/または電流の測定は、ソース側および/または負荷側で行うことができる。これらの測定は、さまざまな線路場所で測定を行うために設けられた測定機器を用いて行われる。たとえば、測定機器は、電流変圧器、計器用変圧器、センサベースの測定機器(たとえば、ロゴスキーコイル、非従来型の計器用変成器など)などを含み得て、線路から検知された電圧または電流に対応する信号を提供する。たとえば、電圧変圧器は、単相/多相電圧信号を提供する。負荷側における線路測定値は、一次側または二次側におけるものであり得る。また、線路測定値は、線間測定値または線路-接地間測定値であり得る。
【0028】
2つの計器用変圧器(404,406)がある
図4および
図5に示される実施形態を検討する。計器用変圧器(たとえば、第1の計器用変圧器(404))は、ソース側において電圧を測定するのに対して、他の計器用変圧器(たとえば、第2の計器用変圧器(406))は、負荷側において電圧を測定する。ここでは、負荷側測定値は、一次側(
図4を参照)または二次側(
図5)におけるものであり得る。なお、対応する線路/位相に関連付けられた測定を行うために、各線路/位相に対して測定機器が設けられてもよい。したがって、負荷側で電力を提供する3つの線路には3つの計器用変圧器があるであろう。また、
図4および
図5には電圧変圧器のみが示されているが、電流測定値または電圧測定値および電流測定値の両方を有するために、電圧変圧器の代わりにまたは電圧変圧器に加えて、電流変圧器(または、他の好適な機器)が使用されてもよい、ということに注目すべきである。また、負荷側電圧測定の位置は、多巻線負荷では任意の巻線上であり得る。一例として、二巻線変圧器では、負荷側電圧測定装置406は、
図4および
図5に示されるように一次または二次巻線上に設置され得る。
【0029】
測定機器によって得られる測定値は、装置(402)に提供される。たとえば、リレーまたはインテリジェント電子装置(IED)は、測定機器から信号を受信して、そこから測定値を得る。あるいは、測定機器は、バス(たとえば、プロセスバス)を介して測定値を発行し、IED(たとえば、このようなバスからデータを受信するように契約されている)が測定値を受信する。なお、リレーは、測定機器によって得られた測定値を内部で処理してもよく、または、測定値は、リレーに提供される前に処理されてもよい。たとえば、線路測定値を有するためにパワーエレクトロニック回路または専用の測定ユニットがあってもよい。
【0030】
106などのスイッチング装置の動作のモニタリングは、ソース側および負荷側測定値を有する402などの装置を使用して行うことができる。ここで
図7を参照して、
図7は、本発明の一実施形態に係るスイッチング装置の動作をモニタリングするための方法のフローチャートである。
【0031】
502において、電圧および電流のうちの少なくとも1つの測定値を1つまたは複数の測定機器から得る。ここでは、測定値は、ソース側および負荷側のうちの1つまたは複数において得られる。
図4および
図5の実施形態においては、ソース側および負荷側における電圧測定値は、計器用変圧器(404,406)から得られる。別の実施形態(図示せず)においては、負荷側のみにおける電圧測定値が得られる。負荷側測定値は、線間測定値または線路-接地間測定値であり得る。
【0032】
504において、1つまたは複数の極の各極の電気的パラメータの値を求める。電気的パラメータの値は、ソース側および負荷側における電圧の測定値、および、1つまたは複数の巻線のうちの少なくとも1つの巻線に関連付けられた線路測定値、のうちの少なくとも1つに基づいて求められる。
【0033】
一実施形態によれば、電気的パラメータは、ギャップ電圧である。ここでは、各極のギャップ電圧の値が求められる。極のこれらの値は、対応する極について、ソース側における電圧の測定値と負荷側における電圧の測定値との間の差に基づいて求められる。したがって、当該極に関連付けられた位相では、ソース側電圧と負荷側電圧との間の差がギャップ電圧値と見なされる。数学的に、それは以下のように表すことができる。
【0034】
ギャップ電圧=ソース電圧-負荷電圧
ギャップ電圧の評価の前に、個々の極の負荷電圧は、加算または減算のように内部で後処理もされて、正しい電気的パラメータ推定を得ることができる。これは、線間電圧を得るための線路測定値の変換も含み得る。この変換は、二次側における線路測定値を一次側における線間電圧に変換する1つまたは複数のステップを含み得る。変換の目的は、得られた測定値からコイル電圧(スター/デルタ接続巻線のもの)を求めることであり、変換は、1つまたは複数のステップを有し得る。
【0035】
別の実施形態によれば、電気的パラメータは、線間電圧である。ここでは、電気的パラメータの値は、負荷側における電圧の線路測定値に基づいて求められる。あるいは、電気的パラメータは、線路測定値から得られる巻線電圧(コイル電圧)から導き出すことができる。
図2に示される実施形態を検討する。ここでは、負荷(すなわち、電力変圧器)は、デルタ側に接続されている。したがって、計器用変圧器は、線間電圧を既に提供している。
【0036】
図8に示される実施形態を検討する。ここでは、Vaは、スター側のV1とV2との間の差(
図9を参照)であると考えられ、Vbは、V2とV3との間の差であると考えられ、Vcは、V3とV1との間の差であると考えられる。したがって、デルタ側線路の線路/位相(線路測定値)において測定が行われると、測定は線間電圧を提供する。
【0037】
図3に示される実施形態のように測定がスター側で行われる場合、線路測定値は、個々の線路/位相値を提供する。これらは、巻線がスター接地であるかスター非接地であるかによって、線路-接地間または線間であり得る。したがって、負荷の線間電圧を得るためには2つの線路測定値の間の差が必要である(たとえば、V1-V2、V2-V3、V3-V1)。
【0038】
506において、1つまたは複数の極の電気的スイッチングに関連付けられた電気的パラメータの値をモニタリングする。これは、いつ特定の極の値がおよそ所望の値(たとえば、閾値未満)になるかを検出するための連続モニタリングであり得る。
【0039】
このような閾値は、外部または内部パラメータに起因するノイズに基づいて事前に求められて、スイッチングの瞬間を判断するのに使用され得る。たとえば、ギャップ電圧がゼロになる(または、ゼロに近くなる)瞬間は、極が電気的に開いていると解釈することができる。別の例として、線間電圧が特定の値(ゼロに近い)を横切る瞬間は、極が電気的に閉じられていると解釈することができる。
【0040】
508において、電気的パラメータの値のモニタリングから、スイッチング装置の対応する極の電気的スイッチングの瞬間を判断する。したがって、たとえば、電気的パラメータの値が閾値よりも小さくなったときまたは大きくなったときに、スイッチングの瞬間が検出される。
【0041】
電気的パラメータのモニタリングから判断される電気的スイッチングの瞬間は、510における個々の極の機械的動作時間ずれを求めるのに使用される。電気的スイッチングの瞬間は、機械的散乱および誘電性散乱を含むがこれらに限定されないスイッチング装置の機械的特性および誘電特性とともに、機械的動作時間ずれを求めるのに使用される。電気的スイッチングの瞬間に基づいて機械的動作時間を求めることは、一般に知られているため、本明細書ではさらに詳細に説明することはしない。
【0042】
各極の機械的動作時間ずれは、所望の電気的スイッチングの瞬間にスイッチング装置の対応する極を動作させるための出力コマンドのリリースの瞬間の評価に使用される。したがって、機械的動作時間ずれに基づいて、リレーまたは他の装置は、遮断器極スイッチングのための出力コマンドのリリースの瞬間を評価することができる。
【0043】
さまざまな極についての開放および/または閉鎖動作中の出力コマンドの瞬間は、出力として提供され得る。たとえば、スイッチングの瞬間/ずれは、ディスプレイ上で提供されるか、または後続のスイッチングにおいて使用され得る。したがって、任意に、この方法は、後続のスイッチング動作のための電気的スイッチングの瞬間の情報に利用されることもできる。
【0044】
この方法は、1つまたは複数の測定機器によって得られた測定値を有する402などの電力システムの装置で実現されてもよい。一実施形態によれば、この装置は、リレーである。また、測定機器は、電流変圧器および/または計器用変圧器であり得て、リレーは、電流変圧器および/または計器用変圧器から電流および/または電圧測定値を受信する。
【0045】
一実施形態によれば、この装置は、方法またはそのステップを実行するための複数のコンポーネントを備える。この装置のコンポーネントまたはモジュールは、プロセッサで実現され得る。たとえば、この装置は、電圧信号を受信するように構成され得るI/Oポートを有し得て、計算部は、信号を処理して電気的パラメータの値を求めることができる。
【0046】
図10に示される実施形態においては、この装置は、入力インターフェイス(802)と、計算部(804)と、モニタ(806)と、出力インターフェイス(808)とを備える。入力インターフェイスは、測定機器から測定値を得るように構成される。計算部は、電気的パラメータの値を求めるように構成される。モニタは、値をモニタリングしてスイッチングの瞬間を判断し、それによって開放および/または閉鎖動作中にスイッチング装置のための出力コマンドの瞬間を判断するように構成される。出力インターフェイスは、これらの値を出力として、たとえば出力コマンドとしてスイッチング装置に提供するように、または、情報をディスプレイ上に提供するかもしくは情報を後続のスイッチングに利用するように構成される。任意のメモリ(810)は、以前の動作の必要情報およびさまざまなステップを実行するのに必要な情報を格納することができる。たとえば、メモリは、閾値またはスイッチングの瞬間の情報などを格納することができる。
【0047】
したがって、いくつかの実施形態によれば、本発明は、スイッチ接点の抵抗が非常に低いと仮定した場合に、スイッチを流れる電流があるときはいつも、スイッチ接点の両端の電圧が最小であるという電気スイッチの概念に依拠している。この概念がスイッチング装置にも拡大されており、各極は、導通(電気アークを含む)中には最小の抵抗を有し、開放状態中には事実上無限の抵抗を有する。負荷電圧測定値のみが使用されるいくつかの実施形態においては、線間電圧は、開放または閉鎖状態中に最小になるであろう。
【0048】
測定されたソース電圧と負荷電圧との間の差は、遮断器接点の両端の電圧またはギャップ電圧を提供する。ギャップ電圧は、遮断器電流の逆鏡面反射である。したがって、遮断器電流が存在していないときはいつも、ギャップ電圧は高くなり、逆の場合も同様である。さらに、ギャップ電圧は無くなるがソース電圧または負荷電圧のいずれかが依然として存在しているときはいつも、遮断器が導通していると推測され得て、逆の場合も同様である。
【0049】
負荷電圧測定値からスイッチングの瞬間を判断する場合、位相間/巻線間結合により、動作していない極の負荷電圧は、1つまたは複数の他の極に対して実行されるスイッチオン動作中にゼロ以外になり、スイッチオフ動作中にゼロになるであろう。本明細書に開示されている方法を利用することによって、個々の相電圧が、それぞれの極に対してのみ実行されるスイッチオン動作中にゼロ以外になり、それぞれの極に対してのみ実行されるスイッチオフ動作中にゼロになるように、負荷電圧がさらに処理され得る。したがって、負荷電圧に基づいてスイッチオンまたはスイッチオフをモニタリングすることによって、位相間/巻線間結合の影響を排除することができる。
【0050】
以下の説明は、さまざまな負荷およびその構成に対するこの方法の実施結果を提供する。
【0051】
スター非接地またはデルタ接続(電気的に結合された)キャパシタ
スター非接地またはデルタ接続キャパシタを例にとった場合の負荷電圧(904など)および遮断器電流(902など)が
図11の上のグラフに示されている。
図11の下のグラフは、ギャップ電圧(906など)および遮断器電流(908など)を示している。分かるように、遮断器電流は、遮断器の通電および通電解除の瞬間を正確に定義している。一方、負荷電圧は、負荷の通電および通電解除の正確な瞬間を示していない。その代わりに、ギャップ電圧(906を参照)を使用して、電流と同様に厳密な瞬間を示すことができる。
図11から分かるように、電流が流れ始めると、ギャップ電圧は、ゼロまたは最小値になり、電流がゼロになるとすぐに、遮断器接点の両端に相当な量のギャップ電圧が見られるようになる。
【0052】
スター非接地またはデルタ(電気的に結合された)インダクタ
スター非接地またはデルタ構成を有するインダクタの特徴は、挙動が、
図12に示されるように結合負荷としてのキャパシタの挙動と同様であることである。結合負荷としてのリアクトルも、
図12に示されるようにギャップ電圧の点で同様の挙動を示す。
【0053】
(磁気的に結合された)三脚インダクタ
電気的スイッチングの瞬間を判断するためのギャップ電圧の使用は、三脚コアインダクタの場合であっても有効である。一方の位相における電流が他方の位相における電圧を生じさせるとしても、
図13の負荷電圧波形に見られるように、ギャップ電圧波形は、電流が遮断器の各位相を流れ始める実際の瞬間(1102,1104を参照)を示す。
【0054】
変圧器
変圧器の場合、二次または三次巻線における電圧は、コイルと接続された測定機器(たとえば、(C)VT)との接続を理解することによってコイル電圧に変換されることができる。たとえば、デルタ接続巻線が測定された電圧をスターVTから受信している場合、相電圧を減算することによってコイル電圧を導き出すことができる。巻数比をコイル電圧に乗算することによって、一次コイル電圧を評価することができる。一次電圧(または、負荷電圧)の評価後、以下の通りにギャップ電圧を導き出すことができる。
【0055】
ギャップ電圧=ソース電圧-負荷電圧
このギャップ電圧をその他の負荷と同様に使用して、
図14に示されるように通電および通電解除の瞬間をモニタリングすることができる。
【0056】
ギャップ電圧が評価された後、ギャップ電圧の開始および中断を検出するために閾値が実施され得る。この閾値は、ギャップ電圧の大きさに対して、またはギャップ電圧の勾配に対して使用されて、個々の極に関する閾値を調整する際に個々の極に関する外部ノイズを補償することによって通電および通電解除の瞬間を検出することができる。
【0057】
上記の例は、電気的スイッチングの瞬間を判断するためにギャップ電圧を電気的パラメータとして使用することに関連している。以下の説明は、電気的スイッチングの瞬間を判断するための電圧伝達または線間電圧の使用の実施結果を提供する。
【0058】
この手法は、結合リアクトルまたは変圧器で検討され得る。上記のように、結合負荷においては、個々の位相のスイッチングは、他の位相における負荷電圧測定値に影響を及ぼす。負荷電圧の適切な明示によって、結合の影響を排除することができる。
【0059】
この影響を説明するために、三脚変圧器スイッチングの一例を示す。
図15に示されるように、一番上の波形(VS1,VS2,VS3を参照)は、三脚変圧器における変圧器のソース電圧を示す。R相における負荷電圧の開始にともなって、他の2つの位相には逆向きの半電圧がある。これは、相巻線の結合の影響に起因するものである。しかし、この結合の影響は、この電圧を線間電圧に変換することによって排除することができる。
図15の下の波形(VL1およびVL3を参照)に示されるように、線間電圧を導き出すことによって、通電の瞬間をはっきりと検出することができる。個々の極に関する閾値ベースの検出は、本実施形態の外部または内部ノイズを補償するための線間電圧に適用可能であり、それによって、スイッチング装置の個々の極の通電または通電解除の正確な瞬間が評価される。
【0060】
したがって、本発明は、遮断器などのスイッチング装置のモニタリングのための適切な信号として、負荷電圧をソース電圧とともに利用する。本発明の評価された出力は、さまざまな制御されたスイッチングアプリケーションに使用することができる。これらのアプリケーションの例としては、個々の極に関する機械的動作時間ずれ、出力コマンドのリリースおよび遮断器の電気的動作の瞬間を評価すること、遮断器の状態を判断すること、後続の瞬間におけるまさに次のスイッチング動作に遮断器を適合させることなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。