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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】高さ測定装置および高さ測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/06 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
G01B5/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021553960
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2019042618
(87)【国際公開番号】W WO2021084655
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 正樹
(72)【発明者】
【氏名】菊川 祐一郎
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001186(JP,A)
【文献】特開平10-224088(JP,A)
【文献】特開2017-119322(JP,A)
【文献】特開2008-044047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に動作可能なエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタを駆動するアクチュエータと、
前記エンドエフェクタの高さ位置を取得しつつ、前記アクチュエータを制御する制御部と、
前記エンドエフェクタの下方に配置される測定対象物の上面に設けられ、前記エンドエフェクタと前記測定対象物の離間距離が所定距離以下になったときに出力信号を出力するセンサと、
オペレータの手動制御によって前記離間距離が前記所定距離よりも短くなるまで前記エンドエフェクタが下降するときに、前記センサが出力する前記出力信号を検出する第一工程、前記制御部からの制御により前記出力信号の消滅が検出されるまで前記エンドエフェクタを上昇させる第二工程、および前記制御部からの制御により前記出力信号が再検出されるまで前記エンドエフェクタを再下降させる第三工程を含む測定準備動作を実行する動作実行部と、
前記第三工程で前記出力信号が再検出された時点で、前記離間距離が前記所定距離に一致したとして、その時点において前記制御部が取得していた前記エンドエフェクタの前記高さ位置を前記測定対象物の高さに換算する測定処理を実行する高さ測定部と、
を備える高さ測定装置。
【請求項2】
前記動作実行部は、前記第三工程において、前記エンドエフェクタを再下降させる下降速度を一定に保つ、請求項1に記載の高さ測定装置。
【請求項3】
前記センサは、上下方向の厚さが前記所定距離に一致するとともに、上下方向の圧縮変形により前記出力信号を出力する感圧センサである、請求項1または2に記載の高さ測定装置。
【請求項4】
前記動作実行部による前記測定準備動作、および前記高さ測定部による前記測定処理を繰り返し実行させて、前記測定対象物の前記高さを複数回取得し、前記高さの平均値を求める平均化処理部をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の高さ測定装置。
【請求項5】
上下方向に動作可能なエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタを駆動するアクチュエータと、
前記エンドエフェクタの高さ位置を取得しつつ、前記アクチュエータを制御する制御部と、
前記エンドエフェクタの下方に配置される測定対象物の上面に設けられ、前記エンドエフェクタと前記測定対象物の離間距離が所定距離以下になったときに出力信号を出力するセンサと、を備える構成を用いて、前記測定対象物の高さを測定する高さ測定方法であって、
オペレータの手動制御によって前記離間距離が前記所定距離よりも短くなるまで前記エンドエフェクタが下降するときに、前記センサが出力する前記出力信号を検出する第一工程と、
前記制御部からの制御により前記出力信号の消滅が検出されるまで前記エンドエフェクタを上昇させる第二工程と、
前記制御部からの制御により前記出力信号が再検出されるまで前記エンドエフェクタを再下降させる第三工程と、
前記第三工程で前記出力信号が再検出された時点で、前記離間距離が前記所定距離に一致したとして、その時点において前記制御部が取得していた前記エンドエフェクタの前記高さ位置を前記測定対象物の高さに換算する高さ測定工程と、
を備える高さ測定方法。
【請求項6】
記第三工程において、前記エンドエフェクタを再下降させる下降速度を一定に保つ、請求項に記載の高さ測定方法
【請求項7】
前記センサは、上下方向の厚さが前記所定距離に一致するとともに、上下方向の圧縮変形により前記出力信号を出力する感圧センサである、請求項5または6に記載の高さ測定方法
【請求項8】
前記第一工程、前記第二工程、前記第三工程、および前記高さ測定工程を繰り返し実行させて、前記測定対象物の前記高さを複数回取得し、前記高さの平均値を求める平均化処理工程をさらに備える、請求項5~7のいずれか一項に記載の高さ測定方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、上下方向に動作可能なエンドエフェクタを用いて測定対象物の高さを測定する高さ測定装置、および高さ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や事業所などの自動化、省力化を推進するために、作業ロボットが広く用いられている。多くの作業ロボットは、作業対象物に部品を取り付けたり、作業対象物を加工したりするエンドエフェクタを備える。作業ロボットにおいて、作業に関連する測定対象物の高さを測定したい場合がある。測定対象物の高さを予め正確に測定しておくことにより、作業の信頼性が向上する等の効果が発生する。この種の高さ測定に関する一技術例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の部品実装機は、ウエハ部品供給装置の高さを測定する接触式高さセンサを備える。接触式高さセンサは、測定子を下降させてゆき、測定対象物に当接させて停止させ、測定子の下降駆動量を測定対象物の高さに換算する。これによれば、ウエハ部品供給装置の高さの誤差に基づいて、ウエハ部品を吸着する吸着ノズルの吸着高さを精度よく調整できるので、吸着動作が安定する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-98287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1を始めとする高さ測定技術において、測定子が下降して測定対象物に当接したことを自動で検出する必要がある。ここで、センサの出力信号線が未配線や誤配線であったり、センサが故障していたりすると、検出が行われない。その結果、測定子が下降し続けて、主機器等を破損させてしまうおそれが生じる。また、測定子の水平方向の位置が誤って制御され、測定子の下方に測定対象物が無い場合に、同様の破損のおそれが生じる。
【0006】
このため、オペレータの手動制御によって測定子を下降させ、オペレータの目視および判断により主機器等の破損のおそれを解消する方法が行われている。しかしながら、手動制御による方法では、測定対象物に当接した瞬間に測定子を停止させても、測定子の下降位置が毎回変化してしまったり、当接する瞬間の測定子の下降速度が一定でなかったりする。換言すると、毎回の測定条件を安定化することが難しい。このため、正確な高さ測定を行えないおそれが生じる。
【0007】
本明細書では、主機器等の破損のおそれを解消しつつ、正確な高さ測定を行うことができる高さ測定装置、および高さ測定方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、上下方向に動作可能なエンドエフェクタと、前記エンドエフェクタを駆動するアクチュエータと、前記エンドエフェクタの高さ位置を取得しつつ、前記アクチュエータを制御する制御部と、前記エンドエフェクタの下方に配置される測定対象物の上面に設けられ、前記エンドエフェクタと前記測定対象物の離間距離が所定距離以下になったときに出力信号を出力するセンサと、オペレータの手動制御によって前記離間距離が前記所定距離よりも短くなるまで前記エンドエフェクタが下降するときに、前記センサが出力する前記出力信号を検出する第一工程、前記制御部からの制御により前記出力信号の消滅が検出されるまで前記エンドエフェクタを上昇させる第二工程、および前記制御部からの制御により前記出力信号が再検出されるまで前記エンドエフェクタを再下降させる第三工程を含む測定準備動作を実行する動作実行部と、前記第三工程で前記出力信号が再検出された時点で、前記離間距離が前記所定距離に一致したとして、その時点において前記制御部が取得していた前記エンドエフェクタの前記高さ位置を前記測定対象物の高さに換算する測定処理を実行する高さ測定部と、を備える高さ測定装置を開示する。
【0009】
また、本明細書は、上下方向に動作可能なエンドエフェクタと、前記エンドエフェクタを駆動するアクチュエータと、前記エンドエフェクタの高さ位置を取得しつつ、前記アクチュエータを制御する制御部と、前記エンドエフェクタの下方に配置される測定対象物の上面に設けられ、前記エンドエフェクタと前記測定対象物の離間距離が所定距離以下になったときに出力信号を出力するセンサと、を備える構成を用いて、前記測定対象物の高さを測定する高さ測定方法であって、オペレータの手動制御によって前記離間距離が前記所定距離よりも短くなるまで前記エンドエフェクタが下降するときに、前記センサが出力する前記出力信号を検出する第一工程と、前記制御部からの制御により前記出力信号の消滅が検出されるまで前記エンドエフェクタを上昇させる第二工程と、前記制御部からの制御により前記出力信号が再検出されるまで前記エンドエフェクタを再下降させる第三工程と、前記第三工程で前記出力信号が再検出された時点で、前記離間距離が前記所定距離に一致したとして、その時点において前記制御部が取得していた前記エンドエフェクタの前記高さ位置を前記測定対象物の高さに換算する高さ測定工程と、を備える高さ測定方法を開示する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示する高さ測定装置や高さ測定方法では、オペレータの手動制御によって離間距離が所定距離よりも短くなるまでエンドエフェクタが下降する。それゆえ、オペレータが手動制御に注意を払うことで、エンドエフェクタが下降し過ぎることが生じないため、主機器等の破損のおそれは生じない。さらに、センサが正常と確認された後に、制御部からの制御により出力信号が再検出されるまでエンドエフェクタを再下降させる第三工程が実行される。したがって、再現性のある制御により測定条件が安定化され、正確な高さ測定が行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の高さ測定装置の構成を模式的に示した構成図である。
図2】実施形態の高さ測定装置を用いる第1実施形態の高さ測定方法の工程図である。
図3】第1実施形態の高さ測定方法の第一工程および第二工程を模式的に説明する図である。
図4】第1実施形態の高さ測定方法の第三工程を模式的に説明する図である。
図5】実施形態の高さ測定装置を用いる第2実施形態の高さ測定方法の工程図である。
図6】応用形態の高さ測定装置の構成を模式的に示した構成図である。
図7】応用形態の高さ測定装置を用いる第3実施形態の高さ測定方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態の高さ測定装置1の構成
実施形態の高さ測定装置1の構成について、図1を参考にして説明する。高さ測定装置1は、上下方向に動作可能なエンドエフェクタ2を用いて、測定対象物9の高さを測定する。高さ測定装置1は、エンドエフェクタ2を備える機器、例えば作業ロボットに組み込み可能に構成される。高さ測定装置1は、エンドエフェクタ2、アクチュエータ3、制御部4、センサ5、動作実行部61、および高さ測定部62で構成されている。以降では、作業対象物に部品の取り付け作業を行う作業ロボットに組み込まれた高さ測定装置1を例にして、詳細に説明する。
【0013】
作業ロボットは、図略のロボット本体部、アーム、作業テーブル、部品供給装置、およびカメラ装置を備える。アームは、例えば多関節形に構成され、その基端がロボット本体部に結合され、その先端が動作する。作業テーブルは、ロボット本体部に近接して配置され、作業対象物が搬入および搬出される。部品供給装置は、ロボット本体部に近接して配置され、順番に部品を供給する。カメラ装置は、ロボット本体部に近接して配置され、部品を保持したエンドエフェクタ2を下方から撮像する。
【0014】
エンドエフェクタ2は、アームの先端に設けられる。エンドエフェクタ2は、アームに固定されていてもよく、複数種類あって交換して使用されてもよい。エンドエフェクタ2は、アームの動作に追従して少なくとも上下方向に動作する。エンドエフェクタ2は、部品供給装置から部品を取り出して保持し、作業テーブル上の作業対象物に取り付ける。図1において、エンドエフェクタ2は、上下に長い棒形状に描かれており、この形状に限定されない。
【0015】
アクチュエータ3は、アームを介してエンドエフェクタ2を間接的に駆動し、または、エンドエフェクタ2を直接的に駆動する。アクチュエータ3は、複数の組み合わせによって構成されてもよい。例えば、アクチュエータ3は、多関節形のアームを駆動する複数のモータ、および、エンドエフェクタ2を開閉駆動して部品を挟持させる電磁駆動機構(電磁ソレノイドや電磁石など)によって構成される。
【0016】
制御部4は、エンドエフェクタ2の高さ位置および水平方向の位置を取得しつつ、アクチュエータ3を制御する。制御部4は、アクチュエータ3に動作指令を送るとともに、アクチュエータ3から動作状況情報を受け取る。制御部4は、受け取った動作状況情報に基づいて、エンドエフェクタ2の位置および動作状態を取得する。したがって、制御部4は、フィードバック制御を行い、エンドエフェクタ2を所望する位置に移動させ、所定の作業を行わせることができる。なお、制御部4は、エンドエフェクタ2の位置を検出する専用の位置センサを有してもよい。
【0017】
制御部4は、操作部41および表示部45を有する。操作部41は、例えば、押下形や回転形の複数の操作スイッチによって形成される。表示部45は、例えば、液晶表示装置によって形成される。操作部41および表示部45は、これらに限定されず、両者が一体化されたタッチパネルであってもよい。
【0018】
操作部41は、少なくともモード設定スイッチ42、下降スイッチ43、および上昇スイッチ44を有する。モード設定スイッチ42は、稼働モード、測定モード、およびメンテナンスモードを三者択一して設定する。稼働モードにおいて、作業ロボットは、自動で動作し、部品の取り付け作業を繰り返して行う。測定モードにおいて、作業ロボットは、部品の取り付け作業を行わず、高さ測定装置1が動作する。メンテナンスモードにおいて、作業ロボットのメンテナンスや各種の調整が行われる。
【0019】
下降スイッチ43および上昇スイッチ44は、測定モードおよびメンテナンスモードで機能し、稼働モードで機能しない。下降スイッチ43が押下されている間、アクチュエータ3はエンドエフェクタ2を下降駆動する。上昇スイッチ44が押下されている間、アクチュエータ3はエンドエフェクタ2を上昇駆動する。これに限定されず、下降スイッチ43の押下によりエンドエフェクタ2の下降が開始され、上昇スイッチ44の押下によりエンドエフェクタ2の上昇が開始され、図略の停止スイッチの押下によりエンドエフェクタ2が停止してもよい。
【0020】
表示部45は、少なくともモード表示部46およびセンサ出力表示部47を有する。モード表示部46は、三者択一で設定されているモードを表示する。センサ出力表示部47は、センサ5の出力信号Sd(詳細後述)の有無を表示する。
【0021】
センサ5は、エンドエフェクタ2の下方に配置される測定対象物9の上面に設けられる。センサ5の出力信号線51は、制御部4に接続される。センサ5は、常設されていてもよく、測定モードが設定されるたびに着脱されてもよい。測定対象物9として、前述したカメラ装置、部品供給装置、および作業テーブルの少なくとも一つを例示できる。測定対象物9の高さを予め正確に測定しておくことにより、部品の取り付け作業の信頼性が向上する等の効果が発生する。測定対象物9の上面は、最も高い位置である必要はなく、高さの基準となり得る水平面であればよい。
【0022】
センサ5は、エンドエフェクタ2と測定対象物9の離間距離Dxが所定距離D0以下になったときに出力信号Sdを出力する。本実施形態において、センサ5は、上下方向の厚さが所定距離D0に一致するとともに、上下方向の圧縮変形により出力信号Sdを出力する感圧センサとされている。出力信号Sdは、圧縮変形の有無を示す二値量でも、圧縮変形の大きさを表す非ゼロの変化量でもよい。
【0023】
なお、エンドエフェクタ2の下端が水平面である場合に、センサ5は、エンドエフェクタ2の下端に設けられてもよい。また、センサ5は、感圧センサ以外の接触検出形センサであって、測定対象物9の上面およびエンドエフェクタ2の下端の少なくとも一方に設けられてもよい。接触検出形センサとして、接触による導通を検出する一対の電極および検出回路の組み合わせを例示できる。
【0024】
動作実行部61および高さ測定部62は、制御部4のソフトウェアによって実現されている。動作実行部61および高さ測定部62は、測定モードが設定されたときに動作する。動作実行部61および高さ測定部62の機能は、第1~第3実施形態の高さ測定方法で相違するので、個別に後述する。
【0025】
2.第1実施形態の高さ測定方法
次に、実施形態の高さ測定装置1を用いる第1実施形態の高さ測定方法について、図2図4を参考にして説明する。第1実施形態の高さ測定方法は、日常的に行われるのでなく、作業ロボットが設置された当初や、作業ロボットの構成部品の交換などのメンテナンスの後に行われる。その理由は、測定対象物9の正確な高さが不明であり、または、測定対象物9の高さが変化している可能性があることに因る。第1実施形態において、動作実行部61は、第一工程P3、第二工程P5、および第三工程P6を含む測定準備動作を実行する。また、高さ測定部62は、第三工程P6の後に高さ測定工程P7を実行する。
【0026】
図2の工程P1で、オペレータは、モード設定スイッチ42によりメンテナンスモードを設定して、センサ5の取り付け作業、および出力信号線51の配線作業を行う。センサ5が常設されている場合、当然ながら工程P1は省略される。次の工程P2で、オペレータは、モード設定スイッチ42により測定モードを設定して測定を開始する。これにより、動作実行部61および高さ測定部62は、動作を開始する。
【0027】
次の第一工程P3で、動作実行部61は、センサ5の出力信号Sdを待つ。オペレータは、下降スイッチ43の押下による手動制御により、離間距離Dxが所定距離D0よりも短くなるまでエンドエフェクタ2を下降させる(図3の矢印M1参照)。すると、センサ5(感圧センサ)は、所定距離D0の厚さから離間距離Dxの厚さまで圧縮変形して、出力信号Sdを出力する。
【0028】
このとき、オペレータは、手動制御に注意を払う必要がある。具体的に、オペレータは、エンドエフェクタ2がセンサ5に当接したことを目視確認した後、迅速にエンドエフェクタ2を停止させる。加えて、オペレータは、エンドエフェクタ2の下方にセンサ5が位置していない場合に、エンドエフェクタ2の下降を中止する。これらのオペレータの操作により、エンドエフェクタ2が下降し過ぎることが無くなり、主機器等の破損のおそれは生じない。
【0029】
次の工程P4で、オペレータは、センサ出力表示部47を見て、出力信号Sdが有るか否かを確認する。換言すると、オペレータは、動作実行部61が出力信号Sdを検出している正常時か、そうでない異常時かを判定する。異常時の場合の工程P11で、オペレータは、異常の原因を調査する。さらに、次の工程P12で、オペレータは、異常を解消する対策を実施する。異常の原因および対策として、次の1)~4)が考えられる。
【0030】
1)エンドエフェクタ2の下降量の不足
オペレータの目視確認の誤りであり、実際には、エンドエフェクタ2が未だセンサ5に当接していない。この場合、オペレータは、エンドエフェクタ2をさらに下降させる手動制御を行えばよい。
【0031】
2)エンドエフェクタ2の水平方向位置の誤り
エンドエフェクタ2の水平方向位置に誤りがあり、エンドエフェクタ2の下方にセンサ5が位置していない。この場合、オペレータは、まず、エンドエフェクタ2を上昇させる。次に、オペレータは、モード設定スイッチ42によりメンテナンスモードを設定して、エンドエフェクタ2の水平方向位置を矯正し、再度モード設定スイッチ42により測定モードを設定する。
【0032】
3)出力信号線51の未配線や誤配線
出力信号線51が制御部4に正しく接続されておらず、動作実行部61は、出力されている出力信号Sdを検出できない。この場合、オペレータは、まず、エンドエフェクタ2を上昇させる。次に、オペレータは、出力信号線51を制御部4に正しく接続する。
【0033】
4)センサ5の故障
センサ5が故障しており、出力信号Sdを出力していない。この場合、オペレータは、まず、エンドエフェクタ2を上昇させる。次に、オペレータは、センサ5の交換または修理を行う。
【0034】
1)~4)のいずれの場合も、工程P2、第一工程P3、および工程P4が再度行われる。工程P4で正常時と判定されたときに、第二工程P5が実行される。換言すると、動作実行部61は、出力信号Sdを検出したとき、自動的に第二工程P5を実行する。第二工程P5で、動作実行部61は、制御部4からの制御により出力信号Sdの消滅が検出されるまでエンドエフェクタ2を上昇させる(図3の矢印M2参照)。
【0035】
次の第三工程P6で、動作実行部61は、制御部4からの制御により出力信号Sdが再検出されるまでエンドエフェクタ2を再下降させる(図4の矢印M3参照)。このとき、動作実行部61は、エンドエフェクタ2を再下降させる下降速度を一定に保つ。これにより、エンドエフェクタ2がセンサ5に当接する瞬間の下降速度が安定化する。
【0036】
次の高さ測定工程P7で、高さ測定部62は、第三工程P6で出力信号Sdが再検出された時点で、離間距離Dxが所定距離D0に一致したとする。さらに、高さ測定部62は、その時点において制御部4が取得していたエンドエフェクタ2の高さ位置を測定対象物9の高さに換算する測定処理を実行する。これで、高さ測定が終了する。
【0037】
実施形態の高さ測定装置1や第1実施形態の高さ測定方法では、オペレータの手動制御によって離間距離Dxが所定距離D0よりも短くなるまでエンドエフェクタ2が下降する。それゆえ、オペレータが手動制御に注意を払うことで、エンドエフェクタ2が下降し過ぎることが生じないため、主機器等の破損のおそれは生じない。さらに、センサ5が正常と確認された後に、制御部4からの制御により出力信号Sdが再検出されるまでエンドエフェクタ2を再下降させる第三工程が実行される。したがって、再現性のある制御により測定条件が安定化され、正確な高さ測定が行なわれる。
【0038】
補足説明すると、オペレータの手動制御によるエンドエフェクタ2の下降(第一工程P3)では、測定条件が必ずしも安定せず、正確な高さ測定が担保されない。例えば、オペレータの手動制御では、センサ5に当接する直前にエンドエフェクタ2を停止させてしまう場合が生じ得る。この場合、エンドエフェクタ2を再下降させても、下降速度が通常時よりも小さく、センサ5の出力信号Sdの出力タイミングにずれが生じて、正確な高さが得られない。これに対して、制御部4からの制御によるエンドエフェクタ2の再下降(第三工程P6)では、再現性のある制御により下降速度を始めとする測定条件が安定化されるので、正確な高さ測定が担保される。
【0039】
3.第2実施形態の高さ測定方法
次に、実施形態の高さ測定装置1を用いる第2実施形態の高さ測定方法について、図5を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態において、動作実行部61は、第一工程P3および第二工程P5を含む測定準備動作を実行し、第三工程P6を省略する。また、高さ測定部62は、第二工程P5の後に高さ測定工程P8を実行する。
【0040】
図5の工程P1、工程P2、第一工程P3、工程P4、工程P11、および工程P12の内容は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。第二工程P5で、動作実行部61は、制御部4からの制御により出力信号Sdの消滅が検出されるまでエンドエフェクタ2を上昇させる。このとき、動作実行部61は、エンドエフェクタ2を上昇させる上昇速度を一定に保つ。これにより、エンドエフェクタ2がセンサ5から離れる瞬間の上昇速度が安定化する。
【0041】
次の高さ測定工程P8で、高さ測定部62は、第二工程P5で出力信号Sdの消滅が検出された時点で、離間距離Dxが所定距離D0に一致したとする。さらに、高さ測定部62は、その時点において制御部4が取得していたエンドエフェクタ2の高さ位置を測定対象物9の高さに換算する測定処理を実行する。これで、高さ測定が終了する。
【0042】
第2実施形態の高さ測定方法では、第三工程P6を省略した簡略な測定準備動作が実行される。それでも、エンドエフェクタ2が上昇してセンサ5から離れるときの出力信号Sdの消滅に基づいて、正確な高さ測定が行なわれる。ただし、第1実施形態と比較して、エンドエフェクタ2の上昇と下降の測定条件が相違する。この相違点が測定の正確度を低下させる場合、第2実施形態は好適でなく、第1実施形態の高さ測定方法のほうが好適となる。例えば、エンドエフェクタ2を昇降させるアームの機構に相当量のバックラッシュがある場合や、センサ5の圧縮変形と復元変形とで検出信号Sdにヒステリシス特性がある場合に、第2実施形態は好適でない。
【0043】
4.第3実施形態の高さ測定方法
次に、応用形態の高さ測定装置11を用いる第3実施形態の高さ測定方法について、図6および図7を参考にして、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。応用形態の高さ測定装置11は、図6に示されるように、平均化処理部63が追加されている。
【0044】
平均化処理部63は、制御部4のソフトウェアによって実現されている。また、平均化処理部63は、測定モードが設定されたときに動作する。平均化処理部63は 動作実行部61による測定準備動作、および高さ測定部62による測定処理を繰り返し実行させて、測定対象物9の高さを複数回取得し、高さの平均値を求める。平均化処理の母数Nは、予め設定される。
【0045】
第3実施形態において、動作実行部61は、第一工程P3を含む測定準備動作を実行し、第二工程P5および第三工程P6を省略する。また、高さ測定部62は、第一工程P3が終了して工程P4で正常時と判定されたときに、高さ測定工程P9を実行する。
【0046】
図7の工程P1、工程P2、第一工程P3、工程P4、工程P11、および工程P12の内容は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。図7の高さ測定工程P9で、高さ測定部62は、第一工程P3で出力信号Sdが検出された時点で、離間距離Dxが所定距離D0に一致したとする。さらに、高さ測定部62は、その時点において制御部4が取得していたエンドエフェクタ2の高さ位置を測定対象物9の高さに換算する測定処理を実行する。
【0047】
次の工程P21で、平均化処理部63は、測定処理の実行回数(測定回数)が母数Nに到達したか否かを判定する。到達していない場合、平均化処理部63は、第一工程P3~工程P21を再度実行させる。2回目以降の第一工程P3で、オペレータは、まず、上昇スイッチ44の押下による手動制御により、センサ5から離れるまでエンドエフェクタ2を上昇させる。次に、オペレータは、第1実施形態と同様、下降スイッチ43の押下による手動制御により、エンドエフェクタ2を下降させる。
【0048】
工程P21で測定回数が母数Nに到達していると、平均化処理工程P22が実行される。すなわち、平均化処理部63は、取得されたN回の高さを平均化して、測定対象物9の高さの平均値を求める。これで、高さ測定が終了する。
【0049】
第3実施形態の高さ測定方法では、第二工程P5および第三工程P6を省略した簡略な測定準備動作が実行される。ただし、オペレータの手動制御によるエンドエフェクタ2の下降(第一工程P3)では、測定条件が必ずしも安定しない。それでも、平均化処理部63の作用により、1回のみの測定処理を実行する場合と比較して、高さ測定の正確度が向上する。
【0050】
5.実施形態の応用および変形
なお、第1実施形態の高さ測定方法の第三工程P6で、動作実行部61は、エンドエフェクタ2を再下降させ、出力信号Sdが再検出された瞬間にエンドエフェクタ2を停止させてもよい。この態様では、高さ測定部62は、停止しているエンドエフェクタ2の高さ位置を測定対象物9の高さに換算する。さらに、第2実施形態の高さ測定方法の第二工程P5で、動作実行部61は、エンドエフェクタ2を上昇させ、出力信号Sdが消滅した瞬間にエンドエフェクタ2を停止させてもよい。この態様では、高さ測定部62は、停止しているエンドエフェクタ2の高さ位置を測定対象物9の高さに換算する。
【0051】
また、第1および第2実施形態の高さ測定方法に、平均化処理を付加することができる。これによれば、高さ測定の正確度がさらに向上する。また、第3実施形態の高さ測定方法において、平均化処理を省略して、測定を簡略化することができる。さらに、出力信号Sdが検出されていることをセンサ出力表示部47以外の通知部、例えばブザーによりオペレータに通知してもよい。その他にも、上述した各実施形態は、様々な応用や変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
各実施形態は、部品の取り付け作業を行う作業ロボットへの利用に限定されず、エンドエフェクタ2に代わる昇降部材を備えた各種の産業用ロボットや組立機、加工機に組み込んで利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、11:高さ測定装置 2:エンドエフェクタ 3:アクチュエータ 4:制御部 5:センサ 51:出力信号線 61:動作実行部 62:高さ測定部 63:平均化処理部 9:測定対象物 D0:所定距離 Dx:離間距離 Sd:出力信号 P3:第一工程 P5:第二工程 P6:第三工程 P7~P9:高さ測定工程
図1
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図7