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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】多重通信装置、及び作業機
(51)【国際特許分類】
   H04L 69/24 20220101AFI20230207BHJP
【FI】
H04L69/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021555627
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2019044096
(87)【国際公開番号】W WO2021095088
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】長坂 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 憲司
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152585(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082334(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/186635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-13/18,41/00-49/9057,61/00-65/80,69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信先の装置との間で多重通信を実行する多重通信インタフェースと、
セーフモード、第1ユーザモード、前記第1ユーザモードとは異なる第2ユーザモードの3つのモードのプログラムを記憶する記憶装置と、
前記セーフモードのプログラムを前記記憶装置から読み出して実行し、前記セーフモードにおいて前記多重通信インタフェースを介して前記通信先の装置から前記通信先の装置に係わる機種情報を受信し、前記機種情報に基づいて前記第1ユーザモード又は前記第2ユーザモードのプログラムを選択して前記記憶装置から読み出して実行し前記多重通信インタフェースを介した多重通信を、読み出して実行した前記第1ユーザモード又は前記第2ユーザモードの前記プログラムに基づいて前記通信先の装置との間で実行する処理部と、
を備え、
前記第1ユーザモードは、
第1通信速度で多重通信を実行するモードであり、
前記第2ユーザモードは、
前記第1通信速度に比べて高速な第2通信速度で多重通信を実行するモードである、多重通信装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記第1ユーザモード又は前記第2ユーザモードのプログラムを前記記憶装置から読み出して実行し前記多重通信インタフェースを介した多重通信を実行し、前記通信先の装置から前記機種情報を再度受信し、前記セーフモードにおいて受信した前記機種情報と一致するか確認する、請求項1に記載の多重通信装置。
【請求項3】
前記処理部は、
コンフィグレーション情報に基づいて論理回路を構築するプログラマブル論理デバイスであり、
前記記憶装置は、
前記セーフモード、前記第1ユーザモード、及び前記第2ユーザモードの各々に対応する前記コンフィグレーション情報を、前記プログラムとして記憶し、
前記処理部は、
前記通信先の装置から前記機種情報を受信した後、前記機種情報に基づいて前記第1ユーザモード又は前記第2ユーザモードのプログラムを前記記憶装置から読み出して実行し、前記論理回路の再構築を実行し、前記多重通信インタフェースを介した多重通信の確立を実行する、請求項1又は請求項2に記載の多重通信装置。
【請求項4】
前記通信先の装置は、
データ出力装置及び前記データ出力装置の出力データを処理するデータ処理装置のうち一方の装置が接続され、前記一方の装置との間で第1通信プロトコルにより前記出力データを伝送し、
前記多重通信装置は、
前記データ出力装置及び前記データ処理装置のうち他方の装置が接続され、前記他方の装置との間で前記第1通信プロトコルより高速の第2通信プロトコルで前記出力データを伝送し、
前記処理部は、
前記第1ユーザモードのプログラムを前記記憶装置から読み出して実行し前記第1通信速度の多重通信を実行する場合、前記第1通信速度の多重通信で前記一方の装置から受信した前記出力データについて、前記第1通信プロトコルから前記第2通信プロトコルに変換して前記他方の装置へ出力するプロトコル変換処理部を備える、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の多重通信装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の多重通信装置を備え、前記多重通信装置により作業に係わるデータを伝送する作業機。
【請求項6】
前記多重通信装置を備える固定部と、
前記通信先の装置を備え、前記固定部に対して相対的に移動し、前記多重通信により送受信されるデータに基づいて作業を実行する可動部と、
を備える、請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記可動部は、
前記固定部に対して着脱可能に構成され、
前記処理部は、
前記可動部が交換された後の前記作業機のシステムの起動時において、前記セーフモードの前記プログラムを実行して前記セーフモードへ移行し、前記セーフモードにおいて前記第1ユーザモード又は前記第2ユーザモードの前記プログラムを選択して実行することで前記セーフモードから選択したユーザモードへ移行する、請求項6に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2つのユーザモードを備える多重通信装置、及びその多重通信装置を備える作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、装置本体部と、可動部の間の通信を、有線ケーブルの多重通信で実行する作業用ロボットがある(例えば、特許文献1など)。特許文献1に記載された作業用ロボットは、装置本体部に設けられた多重通信装置と、可動部に設けられた多重通信装置とをGigabit Etherenet(登録商標)の通信規格に準拠したLANケーブルで接続している。作業用ロボットは、可動部に設けられたリニアスケールやエンコーダの位置信号を多重化して装置本体部へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第WO2018/150544号(図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した作業用ロボットは、装置を非稼動状態とし可動部の交換が行なわれる。ここで、技術の進歩にともなって可動部は、新しいものが開発される。可動部が備える多重通信装置も、機能の改善や新しい機能の追加が行なわれる。古い多重通信装置と新しい多重通信装置とでは、サポートしている機能、例えば、通信速度が異なる虞がある。また、装置本体部側の多重通信装置も同様に、サポートしている機能が、可動部の多重通信装置と異なる可能性がある。その結果、可動部を交換しても新旧の多重通信装置が混在することで、多重通信装置間の通信のうまく実行できない可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、通信先の装置の種類に応じてシステムを起動できる多重通信装置、及び作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書は、通信先の装置との間で多重通信を実行する多重通信インタフェースと、セーフモード、第1ユーザモード、前記第1ユーザモードとは異なる第2ユーザモードの3つのモードのプログラムを記憶する記憶装置と、前記セーフモードのプログラムを前記記憶装置から読み出して実行し、前記セーフモードにおいて前記多重通信インタフェースを介して前記通信先の装置から前記通信先の装置に係わる機種情報を受信し、前記機種情報に基づいて前記第1ユーザモード又は前記第2ユーザモードのプログラムを選択して前記記憶装置から読み出して実行し前記多重通信インタフェースを介した多重通信を、読み出して実行した前記第1ユーザモード又は前記第2ユーザモードの前記プログラムに基づいて前記通信先の装置との間で実行する処理部と、を備え、前記第1ユーザモードは、第1通信速度で多重通信を実行するモードであり、前記第2ユーザモードは、前記第1通信速度に比べて高速な第2通信速度で多重通信を実行するモードである、多重通信装置を開示する。
【0007】
また、本開示の内容は、多重通信装置の実施に限定されることなく、多重通信装置を備える作業機として実施しても有益である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の多重通信装置は、第1ユーザモードと第2ユーザモードとの2つのユーザモードで起動が可能となっている。多重通信装置は、セーフモードにおいて通信先の装置から機種情報を受信し、受信した機種情報に基づいて第1ユーザモード又は第2ユーザモードを起動し多重通信を実行する。これにより、通信先の装置に合ったユーザモードを機種情報に基づいて選択して起動できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の部品装着システムの概略構成を示す平面図である。
図2】部品装着機及びローダの概略構成を示す斜視図である。
図3】多重通信システムのブロック図である。
図4】記憶装置に記憶されたコンフィグレーション情報を示す図である。
図5】旧型のFPGAの起動時の処理手順を示すフローチャートである。
図6】FPGAの起動時の処理手順を示すフローチャートである。
図7】機種情報の一例を示す図である。
図8】新旧装置用基板のモード種を示す図である。
図9】固定部基板を旧型とした場合の各組み合わせと、組み合わせた場合のモード及び通信速度を示す図である。
図10】固定部基板を新型とした場合の各組み合わせと、組み合わせた場合のモード及び通信速度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の部品装着システム10の概略構成を示す平面図である。図2は、部品装着機20及びローダ13の概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、図1の左右方向をX方向と称し、図1の上下方向を前後方向(Y方向)と称し、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向(上下方向)と称して説明する。
【0011】
図1に示すように、部品装着システム10は、生産ライン11と、ローダ13と、ホストコンピュータ15とを備えている。生産ライン11は、X方向に並べられた複数の部品装着機20を有し、基板17に対する電子部品(図視略)の装着等を行う。基板17は、例えば、図1に示す左側の部品装着機20から右側の部品装着機20へと搬出され、搬送中に電子部品の装着等を実行される。
【0012】
図2に示すように、部品装着機20は、ベース21と、モジュール22とを備えている。ベース21は、Y方向に略直方体形状をなし、部品装着機20を設置する工場の床等に載置される。ベース21は、例えば、隣り合うモジュール22同士の基板搬送装置23の位置を合わせるように、上下方向の位置を調整される。ベース21は、隣の部品装着機20のベース21と互いに固定されている。モジュール22は、基板17に対する電子部品の装着等を行う装置であり、ベース21の上に載置されている。モジュール22は、ベース21に対して前後方向の前方側へ引き出し可能となっており、他のモジュール22と交換可能となっている。
【0013】
モジュール22は、基板搬送装置23と、フィーダ台24と、装着ヘッド25と、ヘッド移動機構27とを備える。基板搬送装置23は、モジュール22内に設けられ、基板17をX方向に搬送する。フィーダ台24は、モジュール22の前面に設けられ、側面視がL字状の台である。フィーダ台24は、X方向に複数配列されたスロット(図示略)を備える。フィーダ台24の各スロットには、電子部品を供給するフィーダ29が装着される。フィーダ29は、例えば、電子部品を所定のピッチで収容するテープから電子部品を供給するテープフィーダである。なお、図1に示すように、モジュール22の上部カバーの上には、部品装着機20に対する操作入力を行うタッチパネル26が設けられている。図2は、上部カバーやタッチパネル26を取り外した状態を示している。
【0014】
装着ヘッド25は、フィーダ29から供給された電子部品を保持する保持部材(図示略)を有する。保持部材としては、例えば、負圧を供給されて電子部品を保持する吸着ノズルや、電子部品を把持して保持するチャックなどを採用できる。装着ヘッド25は、例えば、複数の保持部材の全体の位置や、個々の保持部材の位置を変更する駆動源として複数のサーボモータ75(図3参照)を有する。保持部材は、例えば、サーボモータ75の駆動に基づいて、Z方向に沿った軸を中心に回転する。装着ヘッド25は、保持部材で保持した電子部品を基板17に装着する。
【0015】
また、ヘッド移動機構27は、モジュール22の上部部分において、X方向及びY方向の任意の位置に装着ヘッド25を移動させる。詳述すると、ヘッド移動機構27は、装着ヘッド25をX方向に移動させるX軸スライド機構27Aと、装着ヘッド25をY方向に移動させるY軸スライド機構27Bとを備える。X軸スライド機構27Aは、Y軸スライド機構27Bに取り付けられている。
【0016】
また、X軸スライド機構27Aは、例えば、産業用ネットワークに接続されるスレーブ61(図3参照)を備える。ここでいう産業用ネットワークとは、例えば、EtherCAT(登録商標)である。なお、本開示の産業用ネットワークとしては、EtherCAT(登録商標)に限らず、例えば、MECHATROLINK(登録商標)-IIIやProfinet(登録商標)等の他のネットワーク(通信規格)を採用できる。スレーブ61は、X軸スライド機構27Aに設けられたリレーやセンサなどの各種素子と接続され、装置本体部41(図3参照)から受信した制御データに基づいて、各種素子の入出力する信号を処理する。
【0017】
Y軸スライド機構27Bは、駆動源としてリニアモータ(図示略)を有している。X軸スライド機構27Aは、Y軸スライド機構27Bのリニアモータの駆動に基づいてY方向の任意の位置に移動する。また、X軸スライド機構27Aは、駆動源としてリニアモータ77(図3参照)を有している。装着ヘッド25は、X軸スライド機構27Aに取り付けられ、X軸スライド機構27Aのリニアモータ77の駆動に基づいてX方向の任意の位置に移動する。従って、装着ヘッド25は、X軸スライド機構27A及びY軸スライド機構27Bの駆動にともなってモジュール22内でX方向及びY方向の任意の位置に移動する。
【0018】
また、装着ヘッド25は、X軸スライド機構27Aにコネクタを介して取り付けられ、ワンタッチで着脱可能であり、性能や機能の異なる装着ヘッド25に変更できる。従って、本実施形態の装着ヘッド25は、部品装着機20(作業機の一例)に対して着脱可能となっている。また、X軸スライド機構27Aには、基板17を撮影するためのマークカメラ69(図3参照)が下方を向いた状態で固定されている。マークカメラ69は、ヘッド移動機構27の移動に伴って、基板17の任意の位置を上方から撮像可能となっている。マークカメラ69が撮像した画像データは、後述する多重通信によってX軸スライド機構27Aから装置本体部41へ送信され、装置本体部41の画像処理基板87(図3参照)において画像処理される。画像処理基板87は、画像処理によって、基板17に関する情報(マークなど)、装着位置の誤差等を取得する。
【0019】
また、装着ヘッド25は、上記した産業用ネットワークに接続されるスレーブ62(図3参照)を備える。スレーブ62には、装着ヘッド25に設けられたリレーやセンサなどの各種素子が接続されている。スレーブ62は、装置本体部41(図3参照)から受信した制御データに基づいて、各種素子の入出力する信号を処理する。また、装着ヘッド25には、保持部材に保持された電子部品を撮像するパーツカメラ71が設けられている。パーツカメラ71が撮像した画像データは、多重通信によって装着ヘッド25から装置本体部41へ送信され、装置本体部41の画像処理基板87(図3参照)において画像処理される。画像処理基板87は、画像処理によって、保持部材における電子部品の保持位置の誤差等を取得する。
【0020】
また、図2に示すように、ベース21の前面には、上部ガイドレール31と、下部ガイドレール33と、ラックギヤ35と、非接触給電コイル37とが設けられている。上部ガイドレール31は、X方向に延びる断面U字状のレールであり、開口部が下を向いている。下部ガイドレール33は、X方向に延びる断面L字状のレールであり、垂直面がベース21の前面に取り付けられ、水平面が前方に伸び出している。ラックギヤ35は、下部ガイドレール33の下部に設けられ、X方向に延び、前面に複数の縦溝が刻まれたギヤである。ベース21の上部ガイドレール31、下部ガイドレール33及びラックギヤ35は、隣接するベース21の上部ガイドレール31、下部ガイドレール33及びラックギヤ35と着脱可能に連結することができる。このため、部品装着システム10は、生産ライン11に並んだ部品装着機20の数を増減することができる。非接触給電コイル37は、上部ガイドレール31の上部に設けられ、X方向に沿って配置されたコイルであり、ローダ13への電力の供給を行う。
【0021】
ローダ13は、部品装着機20に対するフィーダ29の補充及び回収を自動で行う装置であり、フィーダ29をクランプする把持部(図示略)を備える。ローダ13には、上部ガイドレール31に挿入される上部ローラ(図示略)と、下部ガイドレール33に挿入される下部ローラ(図示略)とが設けられている。また、ローダ13には、駆動源としてモータが設けられている。モータの出力軸には、ラックギヤ35と噛み合うギヤが取り付けられている。ローダ13は、部品装着機20の非接触給電コイル37から電力の供給を受ける受電コイルを備えている。ローダ13は、非接触給電コイル37から受電した電力をモータに供給する。これにより、ローダ13は、モータによってギヤを回転させることで、X方向(左右方向)へ移動することができる。また、ローダ13は、上部ガイドレール31及び下部ガイドレール33内でローラを回転させ、上下方向や前後方向の位置を保持しながらX方向へ移動することができる。
【0022】
図1に示すホストコンピュータ15は、部品装着システム10を統括的に管理する装置である。例えば、生産ライン11の部品装着機20は、ホストコンピュータ15の管理に基づいて、電子部品の装着作業を開始する。部品装着機20は、基板17を搬送しながら装着ヘッド25によって電子部品の装着作業を行う。また、ホストコンピュータ15は、フィーダ29の残りの電子部品の数を監視する。ホストコンピュータ15は、例えば、フィーダ29の補給が必要であると判断すると、補給が必要な部品種を収容したフィーダ29をローダ13にセットする指示を画面に表示する。ユーザは、画面を確認して、フィーダ29をローダ13にセットする。ホストコンピュータ15は、所望のフィーダ29がローダ13にセットされたことを検出すると、ローダ13に対して補給作業の開始を指示する。ローダ13は、指示を受けた部品装着機20の前方まで移動し、ユーザによってセットされたフィーダ29を把持部で挟持してフィーダ台24のスロットに装着する。これにより、新たなフィーダ29が部品装着機20に補給される。また、ローダ13は、部品切れになったフィーダ29を把持部で挟持してフィーダ台24から引き出して回収する。このようにして、新たなフィーダ29の補給及び部品切れとなったフィーダ29の回収を、ローダ13によって自動的行うことができる。
【0023】
次に、部品装着機20が備える多重通信システムについて説明する。図3は、部品装着機20に適用される多重通信システムの構成を示すブロック図である。図2に示すように、部品装着機20は、装置本体部41と、固定部基板45をモジュール22内に備えている。装置本体部41及び固定部基板45は、基板搬送装置23の下方におけるモジュール22内に設けられている。図3に示すように、本実施形態の部品装着機20では、モジュール22内に固定された固定部基板45と、モジュール22内で移動する可動部(X軸スライド機構27A及び装着ヘッド25)との間のデータ伝送を、光ファイバケーブル81,82を介した光通信(多重通信)により行う。
【0024】
装置本体部41は、サーボアンプ83、装置制御メイン基板85、及び画像処理基板87を有している。また、固定部基板45は、FPGA(Field Programmable Gate Array)91、記憶装置92、送信側光電変換器93A,94A、受信側光電変換器93B,94Bを有している。また、X軸スライド機構27Aは、X軸基板95、スレーブ61、マークカメラ69、リニアモータ77、リニアスケール78を有している。また、装着ヘッド25は、ヘッド基板97、スレーブ62、パーツカメラ71、サーボモータ75、エンコーダ76を有している。
【0025】
本実施形態の部品装着機20では、装着ヘッド25やX軸スライド機構27Aが有する装置の各種データを多重の光通信により送受信する。ここでいう各種データとは、例えば、X軸スライド機構27Aが有するリニアスケール78のリニアスケール信号、装着ヘッド25が有するエンコーダ76のエンコーダ信号である。また、各種データとは、例えば、マークカメラ69やパーツカメラ71の画像データである。また、各種データとは、X軸スライド機構27Aのスレーブ61や装着ヘッド25のスレーブ62の制御データである。なお、多重化するデータについては、これらのデータに限らず、部品装着機20で送受信される様々なデータを採用できる。
【0026】
固定部基板45のFPGA91は、装置本体部41のサーボアンプ83、装置制御メイン基板85、画像処理基板87から入力したデータを多重化する。FPGA91は、例えば、起動時において、記憶装置92からコンフィグレーション情報を読み込んで多重化処理を行う論理回路を構築する。FPGA91は、例えば、時分割多重化方式(TDM:Time Division Multiplexing)により、入力したデータの多重化を行う。FPGA91は、例えば、サーボアンプ83等から入力した各種データを、入力ポートに対して割り当てた一定時間(タイムスロット)に応じて多重化し、多重化した多重化データを送信側光電変換器93A,94Aを介して、X軸スライド機構27Aや装着ヘッド25へ送信する。
【0027】
図4に示すように、記憶装置92には、コンフィグレーション情報として、セーフモードプログラムSPと、第1ユーザモードプログラムUP1と、及び第2ユーザモードプログラムUP2が記憶されている。後述するように、X軸スライド機構27Aの記憶装置105と、装着ヘッド25の記憶装置115にも同様に、セーフモードプログラムSP、第1ユーザモードプログラムUP1、及び第2ユーザモードプログラムUP2が記憶されている。このため、以下の説明では、各装置のコンフィグレーション情報を区別して説明する場合は、図3に示すように、セーフモードプログラムSPa(固定部基板45)、SPb(X軸スライド機構27A)、SPc(装着ヘッド25)と、小文字のアルファベットを付して区別して説明する。また、各コンフィグレーション情報を総称する場合は、セーフモードプログラムSPと、最後の小文字のアルファベットを省略して記載する。
【0028】
FPGA91は、記憶装置92からセーフモードプログラムSPaを読み込んで、論理回路を構築するセーフモードと、第1ユーザモードプログラムUP1a又は第2ユーザモードプログラムUP2aを読み込んで論理回路を構築するユーザモードとを備えている。FPGA91は、例えば、部品装着機20の電源を投入され起動した後の初期段階ではセーフモードに移行する。次に、FPGA91は、セーフモードからユーザモードへと移行し、ユーザモードにおいて各装置(サーボアンプ83など)から入力したデータの多重化や、X軸スライド機構27A等から受信した多重化データの分離等を実行する。また、本実施形態のFPGA91は、セーフモードにおいて、対向する通信先の装置(例えば、X軸スライド機構27AのX軸基板95)から機種情報を受信し、受信した機種情報に基づいて第1ユーザモードプログラムUP1a又は第2ユーザモードプログラムUP2aの実行を選択する。尚、機種情報の受信等の処理の詳細については、後述する。
【0029】
また、X軸スライド機構27AのX軸基板95は、送信側光電変換器101A、受信側光電変換器101B、FPGA103、記憶装置105を有している。図3に示すように、X軸スライド機構27AのX軸基板95及び装着ヘッド25のヘッド基板97は、固定部基板45と同様の構成となっている。このため、X軸基板95及びヘッド基板97の説明において、固定部基板45と同様の構成については、その説明を適宜省略する。固定部基板45の送信側光電変換器93A及び受信側光電変換器93Bは、光ファイバケーブル81を介してX軸スライド機構27Aの送信側光電変換器101A及び受信側光電変換器101Bに接続されている。FPGA103は、マークカメラ69の画像データ、リニアスケール78のリニアスケール信号、スレーブ61の制御データなどを多重化する。X軸基板95の記憶装置105には、上記した固定部基板45の記憶装置92と同様に、セーフモードプログラムSPb、第1ユーザモードプログラムUP1b、及び第2ユーザモードプログラムUP2bが記憶されている。FPGA103は、記憶装置92に記憶されたコンフィグレーション情報に基づいて論理回路を構築する。
【0030】
同様に、装着ヘッド25のヘッド基板97は、送信側光電変換器111A、受信側光電変換器111B、FPGA113、記憶装置115を有している。固定部基板45の送信側光電変換器94A及び受信側光電変換器94Bは、光ファイバケーブル82を介して装着ヘッド25の送信側光電変換器111A及び受信側光電変換器111Bに接続されている。FPGA113は、装着ヘッド25のパーツカメラ71の画像データ、エンコーダ76のエンコーダ信号、スレーブ62の制御データなどを多重化する。装着ヘッド25の記憶装置115には、上記した固定部基板45の記憶装置92と同様に、セーフモードプログラムSPc、第1ユーザモードプログラムUP1c、及び第2ユーザモードプログラムUP2cが記憶されている。FPGA113は、記憶装置115に記憶されたコンフィグレーション情報に基づいて論理回路を構築する。
【0031】
尚、FPGA91,103,113は、本開示の処理部の一例である。本開示の処理部は、FPGAに限らず、例えば、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、複合プログラマブルロジックデバイス(CPLD)といった他のプログラマブル論理デバイスでも良い。また、処理部は、プログラマブル論理デバイスに限らず、例えば、通信データの処理に特化した特定用途向け集積回路(ASIC)でも良い。また、処理部は、CPUでプログラムを実行しソフトウェア処理により多重化処理等を実行しても良い。また、処理部は、プログラマブル論理デバイス、ASIC、ソフトウェア処理を組み合わせた構成でもよい。
【0032】
また、記憶装置92,105,115は、例えば、EEPROMなどの不揮発性メモリである。尚、記憶装置92,105,115は、不揮発性メモリに限らず、SRAMなどの揮発性メモリでもよい。また、本開示における記憶装置は、メモリに限らず、ハードディスクなどの他の記憶装置、あるいは、RAM、ROM、ハードディスクを組み合わせたものでも良い。
【0033】
光ファイバケーブル81,82は、例えば、ケーブル内の光ファイバ線の配置や太さを調整して、耐屈曲性を高めたものである。これにより、装着ヘッド25やX軸スライド機構27Aの移動にともなって光ファイバケーブル81,82が屈曲した場合であっても、光ファイバ線を損傷させることなく、安定してデータを伝送できる。なお、固定部基板45、装着ヘッド25、X軸スライド機構27Aを接続する通信は、光ファイバケーブル81,82を用いた光通信に限らず、例えば、Gigabit Etherenet(登録商標)の通信規格に準拠したLANケーブルを用いた通信でも良い。また、固定部基板45、装着ヘッド25等を接続する通信は、有線通信に限らず、レーザ等を用いた光無線通信でも良い。
【0034】
固定部基板45の送信側光電変換器93Aは、FPGA91によって多重化された多重化データを光信号に変換し、光ファイバケーブル81を介してX軸基板95の受信側光電変換器101Bへ送信する。受信側光電変換器101Bは、送信側光電変換器93Aから受信した光信号を電気信号の光電流に変換してFPGA103へ出力する。本実施形態のFPGA103は、AD変換回路等を有し、アナログの光電流をデジタル信号に変換して処理する。
【0035】
また、FPGA103は、変換したデジタル信号、即ち、多重化データの非多重化を実行し、多重化データに多重化されたデータを分離する。FPGA103は、分離した各種のデータを、対応する装置へ出力する。これにより、固定部基板45とX軸スライド機構27Aとの間において、各種のデータを多重化した多重通信(光通信)が実行される。同様に、FPGA103は、マークカメラ69の画像データ等を多重化して送信側光電変換器101Aを介して固定部基板45の受信側光電変換器93Bへ送信する。FPGA91は、多重化データの非多重化を行い、分離した各種データを、装置本体部41の画像処理基板87などへ出力する。
【0036】
また、固定部基板45は、X軸スライド機構27Aと同様に、装着ヘッド25との間でも多重の光通信を行う。固定部基板45の送信側光電変換器94A及び受信側光電変換器94Bは、光ファイバケーブル82を介してヘッド基板97の送信側光電変換器111A及び受信側光電変換器111Bと接続されている。固定部基板45のFPGA91は、光ファイバケーブル82を介して、ヘッド基板97のFPGA113と多重通信を行う。光ファイバケーブル81,82の多重通信回線は、例えば、5Gbpsや10Gbpsの全2重通信である。
【0037】
本実施形態の装置本体部41は、上記した多重の光通信により、X軸スライド機構27Aと装着ヘッド25に対する制御を実行する。装置本体部41のサーボアンプ83は、X軸スライド機構27Aのリニアスケール78に対する初期化処理、リニアスケール信号の取得処理などを実行する。リニアスケール78は、X軸スライド機構27Aのスライド位置を示すリニアスケール信号を、多重通信を介してサーボアンプ83へ送信する。サーボアンプ83は、X軸スライド機構27Aのリニアモータ77と電源線(図示略)を介して接続されており、リニアスケール78のリニアスケール信号に基づいてリニアモータ77へ供給する電力を変更することで、リニアモータ77に対するフィードバック制御を実行する。装置制御メイン基板85は、ホストコンピュータ15から受信した生産プログラムなどに基づいてサーボアンプ83を制御する。これにより、X軸スライド機構27Aは、生産プログラムに基づいたX方向の位置へ移動する。
【0038】
同様に、サーボアンプ83は、装着ヘッド25のエンコーダ76に対する初期化処理、エンコーダ信号の取得処理などを実行する。エンコーダ76は、サーボモータ75の回転位置などを示すエンコーダ信号を、多重通信を介してサーボアンプ83へ送信する。このサーボモータ75は、上記したように、装着ヘッド25が有する保持部材を駆動する駆動源等として機能する。サーボアンプ83は、装着ヘッド25のサーボモータ75と電源線(図示略)を介して接続されており、エンコーダ76のエンコーダ信号に基づいて、サーボモータ75に対するフィードバック制御を実行する。これにより、装着ヘッド25は、生産プログラムに基づいて、保持部材を回転や上下動させる。
【0039】
また、装置本体部41の装置制御メイン基板85は、上記した産業用ネットワークを介してX軸スライド機構27Aや装着ヘッド25が備えるリレーやセンサ等を制御可能となっている。装置制御メイン基板85は、産業用ネットワークにおけるマスターとして機能し、多重通信を介してX軸スライド機構27Aのスレーブ61や装着ヘッド25のスレーブ62へ制御データを送信する。スレーブ61,62は、装置制御メイン基板85から受信した制御データに基づいて、リレーやセンサを駆動する。また、スレーブ61,62は、リレーやセンサから取得した信号の値を制御データに書き込んで、多重通信を介して装置制御メイン基板85へ送信する。これにより、装置制御メイン基板85は、各装置のリレー等を制御することができる。
【0040】
尚、図3に示す多重通信システムの構成は、一例であり適宜変更可能である。例えば、Y軸スライド機構27B(図2参照)のリニアモータ(図示略)に取り付けたリニアスケール信号を、多重通信により伝送しても良い。また、Y軸スライド機構27Bのリレー等の信号を、多重通信により伝送しても良い。また、ホストコンピュータ15とローダ13との間で送受信するデータを多重通信により伝送しても良い。また、固定部基板45は、装置制御メイン基板85によって制御されるスレーブを備えても良い。また、スレーブ61は、FPGA103の回路ブロック(IPコアなど)、即ち、FPGA103の一部でも良い。また、部品装着機20は、産業用ネットワークに関わる機器(装置制御メイン基板85のマスターとして機能する回路、スレーブ61,62など)を備えなくとも良い。
【0041】
上記した構成により、装置制御メイン基板85は、ホストコンピュータ15から受信した生産プログラムに基づいて部品装着機20を制御する。装置制御メイン基板85は、例えば、CPUを主体として構成される処理回路であり、生産プログラムに基づいた処理を実行する。装置制御メイン基板85は、産業用ネットワークによって収集したデータ、リニアスケール78のリニアスケール信号、エンコーダ76のエンコーダ信号等を、多重通信を介して受信する。また、装置制御メイン基板85は、マークカメラ69やパーツカメラ71で撮像した画像データを画像処理基板87で処理した結果(保持位置の誤差など)を入力する。装置制御メイン基板85は、これらのデータ等に基づいて、次の制御内容(装着する電子部品の種類や装着位置など)を決定する。装置制御メイン基板85は、決定した制御内容に応じて各種装置を制御する。
【0042】
(起動時の処理)
次に、FPGA91,103,113の起動時の処理内容について説明する。ここで、本実施形態の部品装着機20は、固定部基板45、X軸基板95、及びヘッド基板97のそれぞれに多重化を行うFPGA91,103,113を備えている。このような多重通信を行う装置では、通信の高速化、送受信するデータ量の増加などの様々な理由から通信速度がより速い装置が開発される。
【0043】
例えば、図8に示すように、一つの製造現場に、新旧の基板(FPGA)が混在した場合を想定する。図8に示す例では、旧型(低速:low)と新型(高速:high)の2種類の基板が存在する場合を想定している。図8に示すように、例えば、新型の固定部基板45、X軸基板95、及びヘッド基板97(以下、新型の基板という場合がある)は、本実施形態の部品装着機20が備える各基板に相当する。図8のNO4~6に示すように、新型の基板は、セーフモード(図8の起動モード1)において、5Gbpsの多重通信が可能となっている。また、新型の基板は、第1ユーザモード(図8の起動モード2a)において、5Gbpsの多重通信が可能となっている。また、新型の基板は、第2ユーザモード(図8の起動モード2b)において、第1ユーザモードに比べて高速な10Gbpsの多重通信が可能となっている。
【0044】
一方で、図8のNO1~3に示すように、例えば、旧型の固定部基板45、X軸基板95、及びヘッド基板97(以下、旧型の基板という場合がある)は、セーフモード(図8の起動モード1)において、5Gbpsの多重通信が可能となっている。また、旧型の基板は、例えば、1つのユーザモード(以下、旧ユーザモードという場合がある)しか備えておらず、旧ユーザモードにおいて、5Gbspの多重通信が可能となっている。旧ユーザモードは、第1ユーザモードに相当するモードである。例えば、旧型の基板の記憶装置(記憶装置92に想到する装置)には、セーフモードプログラムSP及び第1ユーザモードプログラムUP1に相当するコンフィグレーション情報のみが記憶され、第2ユーザモードプログラムUP2が記憶されていない。旧型の基板は、起動時にセーフモードプログラムSPを実行してセーフモードに移行した後、第1ユーザモードプログラムUP1でリコンフィグを実行して旧ユーザモードに移行する。換言すれば、本実施形態の新型の基板は、旧型の基板でサポートされている旧ユーザモード(第1ユーザモード)に加え、より高速な第2ユーザモードを備えている。従って、図8のNO1~3の起動モード2aに示すように、旧型の基板は、第2ユーザモードに想到するモードを備えていない。
【0045】
例えば、ユーザは、装着ヘッド25のような、部品装着機20に対して着脱可能な装置がある場合、通信速度の遅い旧型の装着ヘッド25や通信速度の早い新型の装着ヘッド25を、旧型の部品装着機20と新型の部品装着機20との両方で使用したい場合がある。新旧の装着ヘッド25を、新旧の部品装着機20で使用することで、互いの通信先の装置(例えば、装着ヘッド25に対する固定部基板45)が、旧型の基板となる、あるいは新型の基板となる。そこで、本実施形態のFPGA91,103,113は、起動時のセーフモードにおいて、通信先の装置の新旧を機種情報で判定して、第1ユーザモード(低速モード)又は第2ユーザモード(高速モード)の切り替えを実行する。
【0046】
尚、部品装着機20は、装着ヘッド25の他に、X軸基板95、固定部基板45、あるいはそれらを備える装置(X軸スライド機構27A、モジュール22)が着脱可能(交換可能)な構成でも良い。即ち、ヘッド基板97の他に、X軸基板95や固定部基板45の新旧が入れ替わる構成でも良い。また、部品装着機20は、固定部基板45、X軸基板95、ヘッド基板97を、他の部品装着機20の固定部基板45、X軸基板95、ヘッド基板97と接続可能な構成でも良い。即ち、新型の部品装着機20と旧型の部品装着機20を接続することで、通信先の基板の新旧が入れ替わる構成でも良い。また、部品装着機20は、モジュール22(固定部基板45)、X軸基板95(X軸スライド機構27A)、及び装着ヘッド25(ヘッド基板97)のうち、少なくとも一つの装置だけが着脱可能な構成でも良く、全ての装置が着脱できない構成でも良い。全ての装置がユーザレベルで着脱できない構成であっても、部品装着機20の製造時や修理時に新旧の装置を組み付ける場合がある。後述するユーザモードの切り替えが実行できれば、組み立ての際に新旧を気にせずに組み立てることができる。即ち、組み立て作業が容易となる。また、FPGA91,103,113は、3以上のユーザモードを備えても良い。例えば、FPGA91,103,113は、通信の高速化に合わせて、低速(5Gbps)、中速(10Gbps)、高速(20Gbps)の3つのモードを備えても良い。
【0047】
図5は、旧型の基板のFPGA91,103,113、即ち、5Gbpsの低速なユーザモードのみを備えるFPGA91,103,113が起動時に実行する処理の内容を示している。旧型のFPGA91,103,113の起動時の処理内容は、同様の処理となっている。このため、以下の説明では、一例として固定部基板45のFPGA91について主に説明し、他のFPGA103,113についての説明を省略する。
【0048】
まず、図5のS11において、旧型のFPGA91は、例えば、部品装着機20の電源が投入され、固定部基板45に電力を供給されると、記憶装置92からセーフモードプログラムSPaを読み込んで実行し、論理回路を構築してセーフモードを起動する。FPGA91は、セーフモードプログラムSPaに基づいて、多重処理の論理回路等を構築する。FPGA91は、通信先の装置との間で、5Gbpsの多重通信を実行する。
【0049】
次に、FPGA91は、通信先の装置との間で、多重通信を介して機種情報の交換を実行する(S13)。図7は、機種情報の一例を示している。図8に示す例では、固定部基板45に対する通信先の装置として、旧型のX軸基板95、新型のX軸基板95、旧型のヘッド基板97、新型のヘッド基板97の4種類が存在する。このため、図7に示すように、例えば、4種類の基板を識別するため、機種情報として2ビットの情報を設定することができる。
【0050】
また、旧型のFPGA91は、後述する新型のFPGA91とは異なり、1つのユーザモード(旧ユーザモード)のみしか備えていない。換言すれば、機種情報に基づいてユーザモードを選択する必要がなく、機種情報が不要である。このため、旧型のFPGA91は、S13において、自身の機種情報を通信先の装置に送信する一方、通信先の装置から機種情報を受信しなくとも良い。
【0051】
また、FPGA91は、S13において、機種情報を受信して、機種情報に基づく制御を実行しても良い。図3に示すように、固定部基板45は、X軸スライド機構27Aの光ファイバケーブル81を接続する送信側光電変換器93A及び受信側光電変換器93Bと、装着ヘッド25の光ファイバケーブル82を接続する送信側光電変換器94A及び受信側光電変換器94Bを備えている。このため、ユーザは、固定部基板45に光ファイバケーブル81,82を接続する際に、接続する光電変換器を間違える可能性がある。
【0052】
そこで、FPGA91は、S13において、通信先の装置から機種情報を受信し、受信した機種情報と、受信したインタフェース(光電変換器)との関係が正しいか判定しても良い。例えば、FPGA91は、送信側光電変換器93Aに光ファイバケーブル82(装着ヘッド25)が接続された場合、S13において警告を報知しても良い。これにより、接続の誤りをユーザに報知することができる。
【0053】
尚、FPGA91は、セーフモードにおいて、多重通信を実行せずに、光ファイバケーブル81,82を介した非多重通信により機種情報を交換しても良く、光ファイバケーブル81,82とは別回線で機種情報を交換しても良い。
【0054】
FPGA91は、S13で機種情報を交換すると、旧ユーザモードを起動する処理を実行する(S15)。FPGA91は、例えば、記憶装置92から第1ユーザモードプログラムUP1aを読み出して、論理回路の再構築(リコンフィグ)を実行し、旧ユーザモードの起動を行う。FPGA91は、通信先の装置との間で、5Gbpsの多重通信を実行する。
【0055】
次に、FPGA91は、通信先の装置との間で、機種情報の交換を再度実行する(S17)。これにより、セーフモードだけでなく、ユーザモードにおいても再度、機種情報を確認することができる。FPGA91は、S13と同様に、機種情報の送信のみをS17で実行しても良く、機種情報を受信して光ファイバケーブル81,82の接続を判定しても良い。尚、FPGA91は、S13又はS15の一方のみを実行しても良く、S13又はS15の一方のみで接続の判定を実行しても良い。
【0056】
FPGA91は、S17を実行すると、図5に示す処理を終了する。これにより、FPGA91は、旧ユーザモードを起動し、5Gpsによる多重通信を実行し、装着作業に係わるデータを送受信することができる。
【0057】
尚、FPGA91は、セーフモードにおいて、ユーザモードのコンフィグレーション情報の検証を行っても良い。例えば、旧型の記憶装置92には、ユーザモードのコンフィグレーション情報として第1ユーザモードプログラムUP1aのみが記憶されている。FPGA91は、S11において、セーフモードプログラムSPaを実行して論理回路等を構築した後、第1ユーザモードプログラムUP1aに基づいて旧ユーザモードの論理回路(多重処理の論理回路など)を構築した場合に、論理回路の構築を正常に行えるか否かを判定しても良い。FPGA91は、第1ユーザモードプログラムUP1aのデータに誤りがないか、第1ユーザモードプログラムUP1aで構築された場合の論理回路の接続や処理結果に誤りがないかなどを検査し、論理回路の構築を正常に行えるか否かを判定する。FPGA91は、正常に構築できると判断した場合、S13以降を実行し、セーフモードから旧ユーザモードへ移行しても良い。また、FPGA91は、検証でエラー等を見つけた場合に、警告を報知しても良い。これにより、第1ユーザモードプログラムUP1aの確認をユーザに促すことができる。また、後述する新型のFPGA91が実行するセーフモード(図6のS21)において、第1ユーザモードプログラムUP1aや第2ユーザモードプログラムUP2aの検証を実行しても良い。
【0058】
また、FPGA91は、セーフモードから第1ユーザモードへ移行する場合に、論理回路を全て再構築しなくとも良い。FPGA91は、例えば、リニアスケール信号やエンコーダ信号等を処理する論理回路(ユーザモードで必要となる論理回路)に係わる部分のみをリコンフィグしても良い。
【0059】
次に、新型の基板のFPGA、即ち、本実施形態のFPGA91,103,113について説明する。新型のFPGA91,103,113の起動時の処理内容は、同様の処理となっている。このため、以下の説明では、一例としてFPGA91について説明する。また、図5で説明した内容は、適宜省略する。図6は、新型のFPGA91の起動時の処理内容を示している。
【0060】
まず、図6のS21において、新型のFPGA91は、固定部基板45に電力を供給されると、記憶装置92からセーフモードプログラムSPaを読み込んで実行し、論理回路を構築してセーフモードに移行する。FPGA91は、通信先の装置との間で、5Gbpsの多重通信を実行する。
【0061】
次に、FPGA91は、通信先の装置との間で機種情報の交換を実行する(S23)。尚、FPGA91は、S23において、図5のS13と同様に、受信した機種情報に基づいて、光ファイバケーブル81,82の接続を判定しても良い。また、FPGA91は、通信先の装置から機種情報を要求されない場合、S23において機種情報を送信しなくとも良い。例えば、FPGA91は、通信先の装置が旧型であるため、機種情報を要求してこない場合、機種情報を送信しなくとも良い。
【0062】
次に、FPGA91は、S23で受信した機種情報に基づいて、通信先の装置が旧型であるか否かを判定する(S25)。図7に示すように、例えば、FPGA91は、受信した機種情報が旧型の装置であることを示すビット値(00や10)であった場合、S25において肯定判定し(S25:YES)、S27を実行する。一方で、FPGA91は、受信した機種情報が新型の装置であることを示すビット値(01や11)であった場合、S25において否定判定し(S25:NO)、S29を実行する。
【0063】
S27において、FPGA91は、第1ユーザモードを起動する処理を実行する。FPGA91は、記憶装置92から第1ユーザモードプログラムUP1aを読み出して、論理回路の再構築を実行し、第1ユーザモードの起動を行う。FPGA91は、通信先の装置との間で、5Gbpsの多重通信を実行する。
【0064】
一方で、S29において、FPGA91は、第2ユーザモードを起動する処理を実行する。FPGA91は、記憶装置92から第2ユーザモードプログラムUP2aを読み出して、論理回路の再構築を実行し、第2ユーザモードの起動を行う。この場合、通信先の装置(例えば、装着ヘッド25のヘッド基板97)は、新型であり、FPGA91から受信した機種情報に基づいて、第2ユーザモードへ移行する。そして、FPGA91は、通信先の装置との間で、10Gbpsの多重通信を実行する。これにより、通信先の装置に応じて(装置の新旧に応じて)ユーザモードを選択し、新旧に応じた通信速度の多重通信を実行できる。
【0065】
従って、本実施形態のFPGA91は、部品装着機20のシステムの起動時において、セーフモードプログラムSPaを実行してセーフモードへ移行する(S21)。FPGA91は、セーフモードにおいて第1ユーザモードプログラムUP1a又は第2ユーザモードプログラムUP2aを選択して実行することでセーフモードから選択したユーザモードへ移行する(S27,S29)。これによれば、部品装着機20の一部(装着ヘッド25など)が交換され、新しいFPGA113(ヘッド基板97)が接続された場合、FPGA91,113が、通信先の装置に合ったユーザモードで起動できる。
【0066】
FPGA91は、S27又はS29を実行した後、通信先の装置との間で、機種情報の交換を再度実行する(S31)。これにより、セーフモードだけでなく、ユーザモードにおいても再度、機種情報を確認することができる。FPGA91は、S23と同様に、受信した機種情報に基づいて光ファイバケーブル81,82の接続を判定しても良い。尚、FPGA91は、S23又はS25の一方のみを実行しても良く、S23又はS25の一方のみで接続の判定を実行しても良い。
【0067】
FPGA91は、S31を実行すると、図6に示す処理を終了する。これにより、FPGA91は、低速(5Gps)又は高速(10Gbps)の多重通信を実行し、装着作業に係わるデータを送受信することができる。
【0068】
図9は、固定部基板45を旧型とした場合の各組み合わせと、組み合わせた場合のモード及び通信速度を示している。図9のNO1~4は、セーフモードにおける各組み合わせを示している。この場合、旧型の基板は、図5のS11,S13を実行し、セーフモードで起動する。新型の基板は、図6のS21,S23を実行し、セーフモードで起動する。セーフモードにおいては、新型及び旧型ともに5Gbpsの多重通信を実行する。
【0069】
また、図9のNO5,6は、旧型の固定部基板45(図中の固定部)に、可動部として旧型のX軸基板95やヘッド基板97を接続した場合を示している。この場合、固定部及び可動部は、図5のS15を実行し、旧ユーザモードで起動する。固定部及び可動部は、ともに旧ユーザモードとなり、5Gbpsの多重通信を実行する。
【0070】
また、図9のNO7,8は、旧型の固定部基板45に、可動部として新型のX軸基板95やヘッド基板97を接続した場合を示している。この場合も、固定部基板45は、図5のS15を実行し、旧ユーザモードで起動する。一方、可動部は、図6のS25において、固定部基板45から受信した機種情報に基づいて、通信先の装置が旧型であると判定し(S25:YES)、S27を実行する。可動部は、第1ユーザモードプログラムUP1をFPGA103,113で実行し、第1ユーザモードで起動する。このため、ユーザモード(旧ユーザモード及び第1ユーザモード)において、5Gbpsの多重通信が実行される。
【0071】
図10は、固定部基板45を新型とした場合の各組み合わせと、組み合わせた場合のモード及び通信速度を示している。図10のNO1~4は、セーフモードにおける各組み合わせを示しており、図9の場合と同様に、セーフモードにおいては、新型及び旧型ともに5Gbpsの多重通信を実行する。
【0072】
また、図10のNO5,6は、新型の固定部基板45に、可動部として旧型のX軸基板95やヘッド基板97を接続した場合を示している。この場合、可動部の旧型のX軸基板95及びヘッド基板97は、図5のS15を実行し、旧ユーザモードで起動する。一方、固定部の固定部基板45は、図6のS25において、可動部(この場合はX軸基板95又はヘッド基板97)から受信した機種情報に基づいて、通信先の装置が旧型であると判定し(S25:YES)、S27を実行する。固定部基板45は、第1ユーザモードプログラムUP1aをFPGA91で実行し、第1ユーザモードで起動する。このため、ユーザモードにおいて、5Gbpsの多重通信が実行される。
【0073】
また、図10のNO7,8は、新型の固定部基板45に、新型の可動部を接続した場合を示している。この場合、固定部基板45は、図6のS25において通信先の装置(X軸基板95又はヘッド基板97)から受信した機種情報に基づいて、通信先の装置が新型であると判定し(S25:NO)、S29を実行する。同様に、可動部のX軸基板95及びヘッド基板97は、固定部基板45から受信した機種情報に基づいて図6のS25で否定判定し(S25:NO)、S29を実行する。固定部及び可動部は、ともに、第2ユーザモードプログラムUP2をFPGA91,103,113で実行し、第2ユーザモードで起動する。このため、固定部及び可動部がともに第2ユーザモードとなり、高速な10Gbpsの多重通信が実行される。このようにして、新旧の装置を組み合わせて接続した場合でも、機種情報に基づいて最適な通信速度で多重通信が実行できる。
【0074】
尚、図8及び図9の画像出力規格に示すように、新型の装置と、旧型の装置では、データの出力形式が異なる場合が想定される。例えば、図9に示すように、旧型の固定部基板45は、カメラリンク(登録商標)のBase構成のケーブルでマークカメラ69やパーツカメラ71(図3参照)の画像データを、画像処理基板87へ出力する。また、図10に示すように、新型の固定部基板45は、例えば、USB3.0-VISION(登録商標)規格の通信によりUSBケーブルでマークカメラ69やパーツカメラ71(図3参照)の画像データを、画像処理基板87へ出力する。
【0075】
例えば、図9のBase構成のカメラリンク(登録商標)規格の通信に比べ、図10のUSB3.0-VISION(登録商標)規格の通信が高速となる。これは、例えば、多重通信の高速化にともなって、より大容量の画像データの伝送が可能になったことを想定している。このように、画像データに限らず、多重通信の高速化によって、伝送するデータのデータ量やデータ形式が変更される可能性がある。そこで、例えば、固定部基板45のFPGA91は、通信プロトコルの変換を行なう処理部を備えても良い。
【0076】
具体的には、例えば、新型の記憶装置92に記憶された第1ユーザモードプログラムUP1aは、旧型の基板(X軸基板95やヘッド基板97)から多重通信を介して受信したカメラリンク(登録商標)規格の通信データを、USB3.0-VISION(登録商標)規格の通信データに変換するプロトコル変換処理部のコンフィグレーション情報を備えても良い。また、新型の記憶装置105,115に記憶された第1ユーザモードプログラムUP1b,UP1cは、マークカメラ69やパーツカメラ71から入力したUSB3.0-VISION(登録商標)規格の通信データを、カメラリンク(登録商標)規格の通信データに変換するプロトコル変換処理部のコンフィグレーション情報を備えても良い。
【0077】
これにより、新型のFPGA91,103,113は、旧型の装置に合わせて第1ユーザモードで起動した場合に、旧型の装置の通信規格(カメラリンク(登録商標)規格)に応じてプロトコル変換し、適切な送信処理や受信処理が可能となる。例えば、FPGA91は、プロトコル変換処理部により、旧型の基板から受信したカメラリンク(登録商標)規格のデータをUSB3.0-VISION(登録商標)規格のデータに変換し、USBケーブルで画像処理基板87に出力できる。
【0078】
尚、上記した例では、画像データの通信プロトコルが変更される場合について説明したが、他のデータの場合にも同様に、プロトコル変換処理部を構築しても良い。例えば、リニアスケール78のリニアスケール信号やエンコーダ76のエンコーダ信号などの通信規格が新旧で異なる場合、FPGA91は、プロトコル変換処理部を構築してプログラム変換してからサーボアンプ83等に出力しても良い。
【0079】
ここで、上記したように、本実施形態の第1ユーザモードは、5Gbps(第1通信速度の一例)で多重通信を実行するモードである。また、第2ユーザモードは、第1通信速度に比べて高速な10Gbps(第2通信速度の一例)で多重通信を実行するモードである。これによれば、通信速度が異なる2種類の装置が混在する場合に、通信先の装置に合せてユーザモードを切り替え、最適な通信速度で通信を実行できる。
【0080】
また、FPGA91,103,113は、コンフィグレーション情報に基づいて論理回路を構築するプログラマブル論理デバイスである。記憶装置92,105,115は、セーフモード、第1ユーザモード、及び第2ユーザモードの各々に対応するコンフィグレーション情報(セーフモードプログラムSP、第1ユーザモードプログラムUP1、第2ユーザモードプログラムUP2)を記憶している。固定部基板45等は、コンフィグレーション情報に基づいて、セーフモード、第1ユーザモード、及び第2ユーザモードの異なる3つのモードを切り替える。ここで、ユーザモードまで起動した後に通信先の装置に合ったモードの切り替えを実行する場合、1つのユーザモードのプログラム中に、切り替え用プログラム、第1ユーザモードのプログラム、第2ユーザモードのプログラムが含まれる可能性がある。その結果、第2ユーザモード(新しいコンフィグレーション情報など)のプログラムだけをアップデートしたい場合(古い第1ユーザモードのプログラムはそのままにしたい場合)でも、ユーザモードのプログラム全体をアップデートする必要が生じる。また、2つのモードを含むことでユーザモードのプログラムのデータ容量が増加する可能性がある。データ容量の増加により、プログラムの開発・検証工程の長期化、プログラマブル論理デバイスの容量の増加、製造コストの増加を招く虞がある。プログラマブル論理デバイスの容量の増加は、論理回路間を接続する接続線を長くし、信号の入出力におけるタイミングエラーの発生頻度を上昇させる虞がある。
【0081】
これに対し、記憶装置92,105,115の中に、図4に示すように、3つのプログラムを分けて記憶することで、プログラムを切り分けてアップデートできる。例えば、新しい第2ユーザモードプログラムUP2だけを個別にアップデートできる。また、プログラム全体のデータ容量を低減でき、プログラマブル論理デバイスの容量を低減してコストの低減を図ることができる。さらに、論理回路間の接続線を短くでき、タイミングエラーの発生を抑えることができる。
【0082】
また、部品装着機20は、固定部基板45を備えるモジュール22と、ヘッド基板97を備え、モジュール22に対して相対的に移動し、多重通信により送受信されるデータに基づいて作業を実行する装着ヘッド25等と、を備える。これによれば、固定部と可動部との間で多重通信によりデータを送受信する部品装着機20において、固定部が、可動部に合ったユーザモードで起動できる。部品装着機20のシステムを安定的に起動でき、装着ヘッド25やX軸スライド機構27A(可動部の一例)による作業を適切に実行できる。
【0083】
また、装着ヘッド25は、モジュール22に対して着脱可能に構成される。組み立て作業や装着作業を行なう装着ヘッド25は、作業対象のワーク(基板17など)に応じて変更される。このような装着ヘッド25は、高価な装置であるため、固定部側が新しくなっても使い回される可能性が高い。結果として、サポートしている機能の異なる装着ヘッド25が混在することとなる。このため、装着ヘッド25が着脱可能な部品装着機20に、機種情報に基づいてユーザモードを選択するFPGA113を設けることは極めて有効である。
【0084】
因みに、部品装着機20は、作業機の一例である。モジュール22は、固定部の一例である。装着ヘッド25、X軸スライド機構27Aは、可動部の一例である。固定部基板45、X軸基板95、ヘッド基板97は、多重通信装置、及び通信先の装置の一例である。送信側光電変換器93A,94A,101A,111A及び受信側光電変換器93B,94B,101B,111Bは、多重通信インタフェースの一例である。FPGA91,103,113は、処理部の一例である。
【0085】
以上、上記した本実施例によれば以下の効果を奏する。
本実施例の一態様では、記憶装置92,105,115には、セーフモード、第1ユーザモード、第2ユーザモードの3つのモードのコンフィグレーション情報が記憶されている。FPGA91,103,113は、セーフモードプログラムSPを実行し、セーフモードにおいて通信先の装置から機種情報を受信し、機種情報に基づいて第1ユーザモード又は第2ユーザモードの実行を判定する(図6のS25)。FPGA91,103,113は、ユーザモードの論理回路を構築し、送信側光電変換器93A等を介した多重通信を実行する。
【0086】
これによれば、固定部基板45等は、第1ユーザモードと第2ユーザモードとの2つのユーザモードで起動が可能となっている。固定部基板45等は、セーフモードにおいて通信先の装置から機種情報を受信し、受信した機種情報に基づいて第1ユーザモード又は第2ユーザモードを起動する。これにより、固定部基板45等は、通信先の装置に合ったユーザモードを機種情報に基づいて選択して起動できる。
【0087】
ここで、仮に、ユーザモードまで起動してから通信先の装置の機種情報を判定すると、ユーザモードまで起動した後で、通信先の装置に合ったユーザモードに切り替える処理が必要となり、起動時間が長くなる。これに対し、本実施形態の固定部基板45等では、セーフモードにおいて機種情報を受信しユーザモードを選択して実行することで、起動時間を短縮できる。
【0088】
尚、本開示は上記の実施例に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態では、第1ユーザモードと第2ユーザモードが、多重通信の速度が異なるモードである場合について説明したが、これに限らない。例えば、第1及び第2ユーザモードは、パーツカメラ71やマークカメラ69の通信規格が異なるユーザモード(図9及び図10参照)でも良い。この場合にも、機種情報に基づいて、カメラの通信規格に応じたユーザモードで起動できる。同様に、第1及び第2ユーザモードは、リニアスケール78のリニアスケール信号やエンコーダ76のエンコーダ信号の通信規格が異なるユーザモードや、各種のセンサなどのデータ形式、センサ数が異なるユーザモードでも良い。
【0089】
本開示の処理部は、FPGAなどの論理回路に限らず、CPUでプログラムを実行してソフトウェア処理によって多重処理を行なう構成でも良い。この場合にも、CPUで実行するプログラムを変更することで、ユーザモードを切り替えても良い。
FPGA91,103,113は、3以上のユーザモードを備えても良い。
装着ヘッド25は、部品装着機20に対して着脱できない構成でも良い。
また、多重通信の通信線路は、光ファイバケーブル81,82に限らず、例えば、Gigabit Etherenet(登録商標)の通信規格に準拠したLANケーブルでも良い。この場合、例えば、第1ユーザモードにおいて、2.5Gbpsの多重通信を実行し、第2ユーザモードにおいて5Gbpsの多重通信を実行し、さらに第3ユーザモードにおいて10Gbpsの多重通信を実行しても良い。
【0090】
上記実施形態では、部品装着機20内の多重通信システムにおいて、本開示の技術を適用したが、これに限らない。例えば、ホストコンピュータ15がローダ13を制御する通信を多重通信で行い、その多重通信を処理する処理部(FPGAなど)において、セーフモードで受信した機種情報に基づくユーザモードの切り替えを実行しても良い。これにより、例えば、ローダ13自体やローダ13の一部を入れ替えた場合に、機種情報に応じたユーザモードで起動できる。
また、上記実施形態では、本開示の作業機として、基板17に電子部品を装着する部品装着機20を採用したが、これに限らない。例えば、作業機としては、基板17にはんだを塗布するはんだ塗布装置、工作機械、介護用ロボットなど様々な作業機を採用することができる。
【符号の説明】
【0091】
20 部品装着機(作業機)、22 モジュール(固定部)、25 装着ヘッド(可動部)、27A X軸スライド機構(可動部)、45 固定部基板(多重通信装置)91,103,113 FPGA(処理部)、92,105,115 記憶装置、93A,94A,101A,111A 送信側光電変換器(多重通信インタフェース)、93B,94B,101B,111B 受信側光電変換器(多重通信インタフェース)、95 X軸基板(多重通信装置)、97 ヘッド基板(多重通信装置)、SP セーフモードプログラム、UP1 第1ユーザモードプログラム、UP2 第2ユーザモードプログラム。
図1
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