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特許7222117TUBA1Cタンパク質を過発現するエクソソーム基盤の癌の診断又は予後予測用マーカー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】TUBA1Cタンパク質を過発現するエクソソーム基盤の癌の診断又は予後予測用マーカー組成物
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230207BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230207BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230207BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20230207BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230207BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20230207BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/574 A
G01N33/53 M
C12Q1/6886 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021559019
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2020004589
(87)【国際公開番号】W WO2020204665
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0039052
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0040887
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒュン クー
(72)【発明者】
【氏名】ホン スン ホイ
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ヨン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ビョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジ ホ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0093172(US,A1)
【文献】Stephanie N Hurwitz et al,Proteomic profiling of NCI-60 extracellular vesicles uncovers common protein cargo and cancer type-specific biomarkers,Oncotarget,2016年11月24日,vol.7, No.52,86999-87015
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
C12Q 1/00 - 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TUBA1C(Tubulin alpha-1C chain)タンパク質の過発現エクソソームを含み、
前記エクソソームは、GCC2(GRIP and coiled-coil domain-containing protein)タンパク質をさらに含む、癌の診断又は予後予測用マーカー組成物。
【請求項2】
前記癌は、肺癌、胸腺癌又は食道癌である、請求項1に記載の癌の診断又は予後予測用マーカー組成物。
【請求項3】
エクソソーム内のTUBA1C遺伝子に特異的に結合するプライマー又はプローブ、及びエクソソーム内のTUBA1Cタンパク質に特異的に結合する抗体のいずれか1つ以上、及び
エクソソーム内のGCC2遺伝子に特異的に結合するプライマー又はプローブ、及びエクソソーム内のGCC2タンパク質に特異的に結合する抗体のいずれか1つ以上を含む、癌の診断又は予後予測用組成物。
【請求項4】
前記癌は、肺癌、胸腺癌又は食道癌である、請求項に記載の癌の診断又は予後予測用組成物。
【請求項5】
請求項に記載の組成物を含む、癌の診断又は予後予測用キット。
【請求項6】
前記キットは、RT-PCRキット、マイクロアレイチップキット、DNAキット、及びタンパク質チップキットからなる群より選択される1つ以上である、請求項に記載の癌の診断又は予後予測用キット。
【請求項7】
生物学的試料から分離したエクソソーム内のTUBA1C遺伝子又はタンパク質の発現レベルを測定するステップ、及び
前記エクソソーム内のGCC2遺伝子又はタンパク質の発現レベルを測定するステップを含む、癌の診断又は予後予測に必要な情報を提供する方法。
【請求項8】
前記生物学的試料は、全血、血清、血漿、唾液、尿、喀痰、リンパ液、及び細胞からなる群より選択される1つ以上である、請求項に記載の癌の診断又は予後予測に必要な情報を提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TUBA1C(Tubulin alpha-1C chain)タンパク質の過発現エクソソームを含む、癌の診断又は予後予測用マーカー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍(tumor)は、異常な細胞過剰により発生する非制御的で無秩序な細胞増殖の産物であり、このような腫瘍が破壊的な増殖性、浸潤、転移性を有すれば、悪性腫瘍(malignant tumor)、即ち、癌として分類されることになる。
【0003】
現在の癌を診断するための検査手段は、X線撮影、内視鏡検査、組織検査などを用いる方法がある。しかし、このような方法は、検査過程が比較的に簡単である長所にもかかわらず、診断の成功率が高くないか、衛生上の問題及び検査が行われる過程で患者の苦痛が伴うという問題があり、これを代替するための癌の診断方法が求められている。
【0004】
癌を治療するためには、治療前の段階で高い敏感度及び特異度を有する癌の診断が重要であり、このような診断を通じて初期段階で癌を発見しなければ、高い完治率を示すことができない。
【0005】
従って、非侵襲性かつ高感度及び高い特異性で癌を早期に診断できる方法の開発が求めらえている実状であるが、現在まで癌の診断において初期に特異的に病巣を検出して発症の可否を判断する分子的診断技術は微々たるものであり、さらに特定の癌に特異的に適用される方法は全くない状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
大韓民国登録特許第10-2080887号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景下で、本発明者は、エクソソーム由来の新規の癌の診断又は予後予測用マーカーを開発するための研究を続けた結果、癌細胞由来のエクソソームで特異的に発現しているTUBA1C(Tubulin alpha-1C chain)タンパク質を用いる場合、正確かつ迅速に癌を診断したり予後を予測できることを確認することで、本発明の完成に至った。
【0008】
従って、本発明の目的は、非侵襲的な方法で利用可能でありながらも、癌の診断の正確度を向上したマーカー組成物として、TUBA1C(Tubulin alpha-1C chain)タンパク質の過発現エクソソームを含む組成物、及びこれを用いて癌の診断又は予後予測に必要な情報を提供する方法を提供することにある。
【0009】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及しない更なる課題は、下記の記載によって当技術分野の通常の知識を有する者にとって明確に理解できるものである。
【発明を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、TUBA1C(Tubulin alpha-1C chain)タンパク質の過発現エクソソームを含む、癌の診断又は予後予測用マーカー組成物が提供される。
【0011】
一側面によると、前記エクソソームは、GCC2(GRIP and coiled-coil domain-containing protein)タンパク質をさらに含んでもよい。
【0012】
一側面によると、前記癌は、肺癌、胸腺癌又は食道癌であってもよい。
【0013】
本発明の他の一実施形態によると、エクソソーム内のTUBA1C遺伝子に特異的に結合するプライマー又はプローブ、及びエクソソーム内のTUBA1Cタンパク質に特異的に結合する抗体のいずれか1つ以上を含む、癌の診断又は予後予測用組成物が提供される。
【0014】
一側面によると、前記組成物は、エクソソーム内のGCC2遺伝子に特異的に結合するプライマー又はプローブ、及びエクソソーム内のGCC2タンパク質に特異的に結合する抗体のいずれか1つ以上をさらに含んでもよい。
【0015】
一側面によると、前記癌は、肺癌、胸腺癌又は食道癌であってもよい。
【0016】
本発明の更なる一実施形態によると、前記組成物を含む、癌の診断又は予後予測用キットが提供される。
【0017】
一側面によると、前記キットは、RT-PCRキット、マイクロアレイチップキット、DNAキット、及びタンパク質チップキットからなる群より選択される1つ以上であってもよい。
【0018】
本発明の他の更なる一実施形態によると、生物学的試料から分離したエクソソーム内のTUBA1C遺伝子又はタンパク質の発現レベルを測定するステップを含む、癌の診断又は予後予測に必要な情報を提供する方法が提供される。
【0019】
一側面によると、前記エクソソーム内のGCC2遺伝子又はタンパク質の発現レベルを測定するステップをさらに含んでもよい。
【0020】
一側面によると、前記生物学的試料は、全血、血清、血漿、唾液、尿、喀痰、リンパ液、及び細胞からなる群より選択される1つ以上であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のマーカー組成物は、癌患者のエクソソームで特異的に高く発現するTUBA1Cタンパク質を含んでいるため、その発現レベルを測定することにより非侵襲的でありながらも、高い正確度で癌を診断したり予後を予測することができる。
【0022】
また、本発明のマーカー組成物は、エクソソームで過発現されるTUBA1C及びGCC2をニ重バイオマーカーとして利用することで、癌の診断の敏感度及び正確度をより向上させることができる。
【0023】
本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は権利要求に記載されている発明の構成から推論可能な全ての効果を含むものとして理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】肺癌患者と正常群の血液由来エクソソームからGCC2及びTUBA1Cタンパク質の発現レベルを比較したELISA結果である。
図2】食道癌患者の血漿由来エクソソーム内のTUBA1Cタンパク質の発現レベルを正常対照群と比較したELISA結果である。
図3】胸腺癌患者の血漿由来エクソソーム内のTUBA1Cタンパク質の発現レベルを正常対照群と比較したELISA結果である。
図4】肺癌患者の血液由来エクソソーム内のTUBA1C及びGCC2タンパク質の発現レベルを段階別に分類して測定したELISA結果である。
図5】TUBA1C及びGCC2を単独使用する場合に比べて2つのマーカーを併用したとき診断肺癌の診断の敏感度変化を確認するROCカーブである。
【発明の実施のためのベストモード】
【0025】
以下、添付する図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。各図面に提示された同一の参照符号は同一の部材を示す。
【0026】
以下で説明する実施形態には様々な変更が加えれてもよい。以下で説明する実施形態は、実施形態に対して制限しようとするものではなく、これに対するすべての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものとして理解されなければならない。
【0027】
本明細書で用いる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0028】
異なるように定義さがれない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0029】
また、図面を参照して説明する際に、図面符号に拘わらず同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。実施形態の説明において関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、TUBA1C(Tubulin alpha-1C chain)タンパク質の過発現エクソソームを含む、癌の診断又は予後予測用マーカー組成物が提供される。また、前記エクソソームは、GCC2(GRIP and coiled-coil domain-containing protein)タンパク質をさらに含んでもよい。
【0031】
本明細書で使用される用語「TUBA1Cタンパク質の過発現エクソソーム」及び「GCC2タンパク質の過発現エクソソーム」は、正常細胞内に存在するエクソソームに比べて、GCC2やTUBA1Cタンパク質を高レベルに発現するエクソソームを意味する。
【0032】
エクソソーム(exosome)は、多くの細胞で分泌されるナノサイズ(30~150nm)の小さい小胞体である。エクソソームの内部及びリン脂質の二重側膜には、細胞由来の様々な種類のタンパク質、遺伝物質(DNA、mRNA、miRNA)、脂質などが含まれていると知られている。また、組織由来のエクソソームは、これを分泌した組織の状態を反映するため、病気の診断に使用され得ることが報告されている。
【0033】
ここで、本発明者は、癌患者のエクソソーム内の特異的に発現するTUBA1C又はGCC2タンパク質を用いる場合、正確かつ迅速に癌を診断したり、予後予測できることを確認することで、本発明を完成させた。
【0034】
ここで、癌は、全ての癌を含むものとして、肺癌、食道癌、胸腺癌、乳癌、肝臓癌、胃癌、大腸癌、膵臓癌、子宮頸部癌、皮膚癌、前立腺癌、卵巣癌、甲状腺癌、膀胱癌、頭頸部癌、骨髄癌、胆道癌などが挙げられるが、これに限定されるものではなく、好ましくは、肺癌、食道癌、又は胸腺癌であってもよい。
【0035】
本明細書で使用される用語である「診断」は、病理状態の存在又は特徴、即ち癌の発症有無を確認することを意味する。また、「予後」は、癌治療後に該当個体の再発、転移、薬物反応性、耐性の有無を判断することを意味する。これは、個体の試料から分離したエクソソーム内のTUBA1C又はGCC2の発現レベルを測定することで、該当個体の癌発症の有無のみならず、今後該当個体の生存予後が良いか否かに対して予測する概念まで含む。
【0036】
このように、エクソソームに由来したTUBA1C又はGCC2タンパク質の発現レベルを測定することで、癌を診断したり予後を予測することができるため、この遺伝子に特異的に結合するプライマーやプローブ、又は、タンパク質に特異的に結合する抗体を癌の診断又は予後予測用組成物として利用することができる。
【0037】
それだけでなく、本発明は、TUBA1C又はGCC2遺伝子に特異的に結合するプライマー、プローブ、及びTUBA1C又はGCC2タンパク質に特異的に結合する抗体のいずれか1つ以上を適用した癌の診断又は予後予測用キットを提供することができる。
【0038】
前記キットは、RT-PCRキット、マイクロアレイチップキット、DNAキット、タンパク質チップキットなどを含むが、これに限定されることはない。前記キットは、マーカーに該当するTUBA1C、GCC2遺伝子又はタンパク質のエクソソーム内の発現レベルを確認し、これを検出することで肺癌の診断又は予後予測を行うことができる。
【0039】
前記キットには、癌の診断又は予後予測のために選択的にマーカーを認知するプライマー、プローブ、又は抗体の他にも、分析方法に適切な一種類又はそれ以上の他の構成要素組成物、溶液、又は装置を含んでもよい。
【0040】
例えば、前記キットは、抗体の免疫学的検出のために、基質、適切な緩衝溶液、発色酵素、又は蛍光物質で標識された2次抗体、及び発色基質などを含んでもよい。また、前記基質は、ニトロセルロース膜、ポリビニル樹脂で合成された96ウェルプレート、ポリスチレン樹脂で合成された96ウェルプレート、及びガラスからなるスライドグラスなどが用いられてもよく、発色酵素は、ペルオキシダーゼ(peroxidase)、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase)などが用いられ、蛍光物質はFITC、RITCなどが用いられてもよく、発色基質液は、ABTS(2、2´-アジノ-ビス-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))又はOPD(O-フェニレンジアミン)、TMB(テトラメチルベンジジン)が用いられてもよいが、これに限定されることはない。
【0041】
本発明の更なる一実施形態によれば、生物学的試料から分離したエクソソーム(exosome)内のTUBA1C遺伝子又はタンパク質の発現レベルを測定するステップを含む、癌の診断又は予後予測に必要な情報を提供する方法が提供される。
【0042】
本発明の方法は、癌の診断の敏感度及び正確度を向上させるために、エクソソーム内のGCC2遺伝子又はタンパク質の発現レベルを測定するステップをさらに含んでもよい。
【0043】
前記生物学的試料は、全血、血清、血漿、唾液、尿、喀痰、リンパ液、及び細胞からなる群より選択される1つ以上であってもよく、好ましくは、全血又は細胞であってもよいが、これに限定されることはない。
【0044】
前記遺伝子発現レベル測定は、癌の診断又は予後予測のために生物学的試料からTUBA1C、GCC2遺伝子のmRNA存在の有無及び発現程度を確認する過程であって、mRNA発現量を測定することを意味する。
【0045】
そのために、分析方法としては、逆転写重合酵素反応(RT-PCR)、競争的逆転写重合酵素反応(Competitive RT-PCR)、リアルタイム逆転写重合酵素反応(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)、DNAチップなどがあるが、これに限定されることはない。
【0046】
また、前記タンパク質発現レベル測定は、癌の診断又は予後予測のために生物学的試料からTUBA1C、GCC2タンパク質の存在の有無及び発現程度を確認する過程を意味する。
【0047】
前記タンパク質の発現レベル測定又は比較分析方法としては、タンパク質チップ分析、免疫測定法、リガンド結合アッセイ、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体結合分析法、2次元電気泳動分析、液相クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/ Mass Spectrometry)、ウェスタン ブロッティング及びELISA(enzyme-linked immunosorbentassay)などがあるが、これに限定されることはない。
【0048】
前記TUBA1C、GCC2遺伝子又はタンパク質発現レベルを測定してから正常対照群と比較し、その発現レベルが正常対照群よりも高い場合、癌を発症したり発症の可能性が高いものと判断される。
【0049】
また、本発明の一実施形態によれば、(a)癌患者から採取した生物学的試料に癌治療剤候補物質を処理するステップと、(b)前記生物学的試料からエクソソームを分離するステップと、(c)前記エクソソーム内のTUBA1C遺伝子又はタンパク質の発現レベルを測定するステップとを含む癌治療剤のスクリーニング方法が提供される。
【0050】
癌の診断又は予後予測に必要な情報を提供する方法の延長として、前記治療剤候補物質スクリーニングが適用されてもよい。即ち、癌治療剤候補物質を癌患者から分離した生物学的試料に処理した後、その内部に存在するエクソソームからTUBA1C遺伝子又はタンパク質の発現レベル減少を確認する場合、該当の候補物質が癌治療剤として効率よく機能することを確認することができる。
【0051】
以下、実施形態によって本発明をより詳細に説明する。下記の実施形態は、本発明を例示するための目的として記述されたものであり、本発明の範囲がこれに限定されることはない。
【0052】
実施形態1:エクソソーム分離及びタンパク体分析準備
5種の肺癌細胞株(H522、A549、H1650、PC9、H1299)、胸腺癌細胞株、及び食道癌細胞株をそれぞれ直径150mmのディッシュで培養した。ここで、超高速遠心分離機を用いて120、000gで4時間の間に遠心分離してエクソソームを除去したFBS(Fetal Bovine Serum)の上層液を培養液として使用した。前記培養液を用いて細胞が70~80%confluency状態になるよう2~3日間連続培養した。
【0053】
取得された培養液を10、000gで30分の間に遠心分離して細胞破片(cell debris)を除去し、0.45μm、0.22μmフィルタに順次通過させて相対的に体積の大きい物質を優先的に除去した。その後、濾過された細胞培養液は、Amicon tube 100K(Millipore、USA)を用いて所望する大きさの粒子のみを残して濃縮した。
【0054】
次に、濃縮された細胞培養液をカラム液体クロマトグラフィー(column liquid chromatography)方法を用いてエキソームサイズ(50~100))の粒子のみを分離し、Amicon tube 100Kを用いて再び濃縮した。
【0055】
濃縮されたエクソソームは、RIPA lysis buffer(Thermo Fisher Scientific、USA)を用いてタンパク質を取得し、韓国基礎科学支援研究員(KBSI)に依頼してタンパク体の分析結果を得た。
【0056】
これに基づいて癌細胞株のエクソソームで過発現されるTUBA1C(Tubulin alpha-1C chain)及びGCC2(GRIP and coiled-coil domain-containing protein 2)を最終選別した。
【0057】
実施形態2:肺癌患者のエクソソーム内のGCC2及びTUBA1C発現レベル測定
前記実施形態1で選別したGCC2及びTUBA1Cタンパク質を含むエクソソームが肺癌の診断又は予後予測用マーカーとして利用可能性があるか否かを確認するために、正常群(n=3)と肺癌患者群(n=5)の血液で抽出したエクソソームからGCC2及びTUBA1Cの発現レベルをELISA(Enzyme linked immunoassay)分析を通じて確認した。
【0058】
その結果、図1に示すように、正常群(control)に比べて肺癌患者群でGCC2及びTUBA1Cの発現が増加したことが確認された。
【0059】
次に、肺癌患者の血漿から分離したエクソソームの特性を確認するために、病院に来院する1~3期の肺癌患者20人から血液を採取し、Exoquick(Systembio、USA)を用いて血漿からエクソソームを分離した。分離した血液由来のエクソソームで由来したGCC2及びTUBA1Cの発現レベルは、ELISA分析を通じて確認した(GCC2:Mybiosource社のGRIP and coiled-coil domain containing proten 2 ELISA KIT(Cat No.MBS9330667)、2)TUBA1C:Mybiosource社のTUBA1C ELISA KIT(Cat No.MBS9336377))。その結果、図4に示すように、正常群に比べて全ての肺癌段階でGCC2及びTUBA1Cの発現量が有意に増加し、肺癌段階が増加することにより、GCC2及びTUBA1Cの発現量も共に増加したことが確認された。
【0060】
実施形態3:食道癌及び胸腺癌患者のエクソソーム内のTUBA1C発現レベル測定
まず、正常被験者5人、食道癌患者5人の血漿(plasma)試料からエクソソームを抽出した後、TUBA1C ELISA KIT(Mybiosource社のTUBA1C ELISA KIT(Cat No.MBS9336377))を用いて試料内のTUBA1Cタンパク質濃度を確認した。
【0061】
その結果、図2に示すように、正常被験者の場合、エクソソーム由来のTUBA1Cタンパク質の平均濃度が939.306ng/mlのように示された一方、食道癌患者では、エクソソーム由来のTUBA1Cタンパク質の平均濃度が1236.764ng/mlのように高く測定された。食道癌患者のエクソソーム由来のTUBA1Cタンパク質濃度は、正常被験者に比べて1.36倍増加し、p valueは0.021のように示され、統計的に有意であることが確認された。
【0062】
次に、正常被験者5人、胸腺癌患者5人の血漿試料からエクソソームを抽出した後、TUBA1C ELISA KIT(Mybiosource社のTUBA1C ELISA KIT(Cat No.MBS9336377))を用いて試料内のTUBA1Cタンパク質濃度を確認した。
【0063】
その結果、図3に示すように、正常被験者の場合、エクソソーム由来のTUBA1Cタンパク質の平均濃度が909.306ng/mlのように示された一方、食道癌患者では、エクソソーム由来のTUBA1Cタンパク質の平均濃度が3503.15ng/mlのように極めて高く測定された。食道癌患者のエクソソーム由来のTUBA1Cタンパク質濃度は、正常被験者に比べて3.85倍増加し、p valueは0.005のように示され、統計的に有意であることが確認された。
【0064】
実施形態4:TUBA1C及びGCC2のニ重バイオマーカーとしての診断的有用性評価
癌の診断のために、TUBA1C及びGCC2をニ重バイオマーカーとして用いる場合の有用性を評価するために、TUBA1C及びGCC2を単独に使用する場合と、2つのマーカーを併用する場合の診断敏感度変化をROCカーブで確認した。具体的に、正常被験者7名、肺癌患者21人の血漿からエクソソームを抽出した後、GCC2ELISA KIT、TUBA1C ELISA KITを用いてエクソソーム内のGCC2、TUBA1Cタンパク質の濃度を求めた後、統計的にROCカーブを用いてAUC値を確認し、これについて図5に示した。
【0065】
図5を参照すると、GCC2抗体単独使用する場合、AUCは0.905(p=0.002)であり、TUBA1C抗体を単独使用した場合のAUC値は、0.8787(p=0.003)であった。一方、GCC2及びTUBA1C抗体を同時に処理した場合、AUCは1(P0.0000963)に確認され、TUBA1CやGCC2を単独使用した時よりもTUBA1C及びGCC2をニ重バイオマーカーとして使用した場合、より精密な診断が可能であることが確認された。
【0066】
上述したように、実施形態がたとえ限定された実施形態及び図面によって説明されたが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記記載から様々な修正及び変形が可能である。例えば、説明された技術が説明された方法とは異なる順に実行されたり、及び/又は説明された構成要素が説明された方法とは異なる形態に組み合せられたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても適切な結果が達成されることができる。
【0067】
従って、他の実現、他の実施形態、及び権利要求と均等のものなども後述する権利要求の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5