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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】可搬式動力駆動システム
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/74 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
B66D1/74 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021559632
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 SE2020050373
(87)【国際公開番号】W WO2020209783
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】1950443-0
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】321009203
【氏名又は名称】スカイロテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボウリアット,クラウド
(72)【発明者】
【氏名】エイタージョード,ジミー
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0107086(US,A1)
【文献】特開昭57-090394(JP,A)
【文献】実開昭50-085967(JP,U)
【文献】特開昭48-082556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0123058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主方向に延びるロープを上昇させるための可搬式動力駆動システムであって、
駆動軸を備えるモータと、
前記駆動軸に連結されたロープグラブと、
前記モータを取り付けるための本体部と、
ロープ固定構成と、
停止構成と、
を具備し、
前記ロープグラブは、作動状態にあるときに、前記ロープグラブの円周の第1の部分に沿って前記ロープと係合するように適合されたロープ係合面を備え、
前記本体部は、固定力を受けるように構成されたアンカーポイントをさらに備え、第2の方向に延びる前記固定力は、前記第1の主方向と実質的に反対方向であり、
前記ロープ固定構成は、前記本体部にヒンジ接続された第1の端部と、前記作動状態にあるときに前記ロープと係合するように構成された第1のローラを受け入れるように構成された第2の端部とを有する長形レバーを備え、
前記ロープ固定構成は、前記長形レバーと共に設けられる第2のローラによって、前記作動状態にあるときに、前記ロープが前記ロープグラブと係合している前記第1の部分の一部分において前記ロープを前記ロープグラブに押しつけるために、前記ロープに圧力を加えるように構成され
前記停止構成は、
前記ロープグラブに隣接する位置で前記本体部に連結され、
前記作動状態にあるときに、前記駆動軸と平行な方向における前記長形レバーの動きを最小限に抑えるため、前記長形レバーを前記本体部にロックするように構成され、
前記ロープグラブの前記ロープ係合面内へと部分的に延びていることにより、前記ロープが、前記作動状態にあるときに前記ロープグラブの円周の前記第1の部分に留まることを確保するヒール部分を含む、
システム。
【請求項2】
請求項に記載のシステムであって、
前記停止構成は、前記作動状態にあるときに、前記第2のローラが前記ロープグラブから少なくとも所定の距離だけ離れたままであるようになるように配置されている
システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシステムであって、
前記停止構成は、前記作動状態にあるときに、前記長形レバーに備えられた凹部と係合するように適合されている
システム。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のシステムであって、
1つの状態すなわち開閉状態に構成されるように適合された蓋をさらに備え、前記蓋は、閉状態で前記ロープグラブを覆うように適合される
システム。
【請求項5】
請求項に記載のシステムであって、
前記蓋は、前記本体部にヒンジ接続されている
システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のシステムであって、
前記蓋は、前記閉状態にあるときに前記停止構成と係合するように構成された制御スタッドを備える
システム。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のシステムであって、
前記停止構成は、前記ロープグラブに直接隣接して配置される
システム。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のシステムであって、
前記ロープ係合面には、前記作動状態にあるときに、前記ロープと係合する前記ロープグラブの円周の一部分に沿って前記ロープと接触するように構成された複数のピンが備えられている
システム。
【請求項9】
請求項に記載のシステムであって、
前記ピンは、前記ロープグラブの円周に沿って一対になって平行に配置される
システム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のシステムであって、
前記ロープグラブおよび前記ピンは、金属材料から製造される
システム。
【請求項11】
請求項10のいずれか1項に記載のシステムであって、
前記ロープグラブおよび前記ピンは、単一のユニットとして製造される
システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のシステムであって、
前記ロープ固定構成は、前記第2のローラを前記ロープに向かって押しつけるためのバネ機構をさらに含む
システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、
前記バネ機構は、前記作動状態にあるときに、前記第2のローラが、前記ロープに対して少なくとも所定の最小ベース圧力で、一貫して押し付けられるように配置されている
システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のシステムであって、
前記モータは、内燃機関、または、充電式バッテリをさらに備える電気モータである
システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のシステムであって、
第1の方向および第2の方向における前記ロープグラブの回転を可能にするために、前記モータを動作させるためのユーザインターフェースをさらに備える
システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のシステムであって、
前記アンカーポイントに連結される安全スリングをさらに備え、前記安全スリングは、マイロン、カラビナ、またはリギングプレートのうちの少なくとも1つを受け入れるように構成される
システム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のシステムであって、
前記ロープ固定構成は、非作動状態にあるときに、前記ロープを前記ロープグラブに係合するときに、前記ロープのループを前記第1のローラと前記第2のローラとの間に挿入できるようにすることができるように適合されている
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上昇/下降装置構成のような可搬式動力駆動システムに関するものであり、特に、可搬式動力駆動システムに関連して使用されるロープが作動状態にあるときに確実に取り操作されるようにする手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動パーソナルつり上げ装置は、鉛直面のスケーリング(山登り)作業者を支援する。電動ウインチは、高台上の人員またはロープに取り付けられたハーネスを装着した人員を昇降させるために使用される。
この荷重の上方にある堅固な高台にウインチを固定するか、または、高台に連結されたプーリを使用して荷重を巻き上げる必要がある。さらに、ウインチは、使用できるロープの長さおよび重量を制限するスプールにロープまたはケーブルを巻く。
通常、複合プーリまたは減速ギア付きのホイストは、個人または作業台を昇降させるために使用され、三脚、ビームまたは橋形クレーンなどの固定支持点から吊るされなければならない。
典型的には、ウインチまたはホイストは、第1の人がロープを安全に登るために、少なくとも第2の人が装置を操作または制御することを必要とする。
【0003】
しかしながら、ロープを上昇または下降させる人によって操作することができる可搬式ウインチに対して、可搬式ウインチへのアクセスを有することが好ましい多くの例が存在する。
このようなシナリオには、例えば、山登り、洞穴掘り、樹木刈り、救助作業および軍事作戦が含まれる。登山装置の産業上の使用は、サービス、クリーニング、窓クリーニング、塗装等のために、高層構造物、タワー、ポール、鉱山の立坑または橋梁工事を、登るまたは行うことを含んでもよい。
【0004】
このような可搬式ウインチの一例がUS6412602に開示されている。US6412602では、登山装置として示される、可搬式登山者用作動ウインチへの有望なアプローチが提供されており、このウインチは、例えば内燃機関モータまたは電気バッテリ駆動モータのようなモータに接続された回転可能なローププーリを備えている。
登山装置が作動状態にあるときには、ローププーリにロープが導入され、一旦、モータが係合されて回転を開始すると、ローププーリは、通常、ロープに沿って鉛直方向に登山者を上昇させることができる。
【0005】
上述の従来技術は、高所へのロープアクセスのための非常に有用な解決策を示しているにもかかわらず、装置を利用する要員のために、さらなる改善を導入する努力が常に存在する。具体的には、高所作業時のリスクを最小限に抑え、これにより当該装置のユーザ環境を改善してほしいという要望がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、上記は、第1の主方向に延びるロープを上昇させるための可搬式動力駆動システムによって少なくとも部分的に緩和され、この可搬式動力駆動システムは、駆動軸を備えるモータと、上記駆動軸に連結されたロープグラブと、上記モータを取り付けるための本体部と、を具備し、
上記ロープグラブは、作動状態にあるときに、上記ロープグラブの円周の第1の部分に沿って上記ロープと係合するように適合されたロープ係合面を備え、
上記本体部は、固定力を受けるように構成されたアンカーポイントをさらに備え、第2の方向に延びる上記固定力は、上記第1の主方向と実質的に反対方向であり、
上記動力駆動システムは、ロープ固定構成をさらに備え、上記固定構成は、上記本体部にヒンジ接続された第1の端部と、上記作動状態にあるときに上記ロープと係合するように構成された第1のローラを受け入れるように構成された第2の端部とを有する長形レバーを備え、
上記ロープ固定構成は、上記長形レバーと共に設けられる第2のローラによって、上記作動状態にあるときに、上記ロープが上記ロープグラブと係合している上記第1の部分の一部分において上記ロープを上記ロープグラブに押しつけるために、上記ロープに圧力を加えるように構成される。
【0007】
本発明は、先行技術の装置と比較して、可搬式動力駆動システムの動作を単純化することができるという理解に基づいている。というのは、上述のような解決策は、増大された多数の異なる種類のロープ、および、異なる直径のそのようなロープがシステムと併用されることを可能にするからである。
これは、本開示によると、ロープ固定構成を設けることによって達成される。ここで、ロープ固定構成は、長形レバーと共に設けられるように配置された第1および第2のローラを備え、長形レバーは、システムの本体部でヒンジ止めされる。
【0008】
システムが作動状態にあるとき、ロープは、ヒンジ付きの第1の長形レバーが、例えば、システムの運搬荷重に比例する力で、ロープグラブに向かって「移動」するように、第1のローラと係合する。
第2のローラは、第1のローラと比較して、このヒンジ付き連結部により近く配置され、結果として、ロープグラブの一部におけるロープに向かって「押」され、ロープは、ロープグラブに係合する。
【0009】
第2のローラの位置決めは、長形レバーの長さによって決まるが、いくつかの実施態様において、例えば、ヒンジ付き連結部から本体部までの距離の10~60%に位置決めされてもよい。
また、長形レバーの全長は、第2のローラがロープグラブに向かってロープを強制的に接近させるために提供される所望の圧力に応じて選択されてもよい。
【0010】
本出願のコンテクスト内では、ローラという用語は、広く解釈されるべきであり、ロープとロープグラブとの間に圧力が提供されると同時に「ロープとともに」回転することができる任意のタイプの装置を備えてもよい。
従って、第2のローラは、ロープグラブが作動(回転)状態にあるときに、第2のローラが依然として回転することを可能にする圧力を提供するように構成されることが好ましい。また、システムが作動状態にあるときに、第1のローラが回転可能であることが望ましい。一実施形態では、ローラは、ベアリングおよび/またはブッシングを含む。
【0011】
一実施形態では、ローブグラブは、ロープを受け入れるためにローラの「内側」に形成されたロープ係合面であるv形またはu形のロープ係合面のような凹形状によってロープを可能な限り挟み込むように形成されたローラ(ロープププーリとも呼ばれる)を備えることができる。
ローラの内側は、ロープとローラとの間の摩擦をさらに増加させるための複数のリッジをさらに備えてもよい。
【0012】
前述のように、モータは駆動軸を使用してロープグラブに連結されている。「駆動軸」という表現は、モータからロープグラブに回転力を伝達するための任意の機械的実装を含むことができる。そのように、駆動軸は、例えば、ロープグラブの回転速度に適合するように回転力を適合させるためのギアボックスまたは同様のものをさらに含んでもよい。
ロープという用語は、ここでは、そのより広い意味で使用され、ロープグラブと係合するのに適した性質またはサイズの何らかのロープ、ワイヤ、ベルト、ウェビング、およびコードを含むことを意図している。この定義によって理解されるように、ロープは、円形、楕円形、または、本質的に平坦な(例えば、長方形の)形状を有し得る。
【0013】
さらに、用語「本体部」は、例えば、可搬式動力駆動システムのための筐体、システムの要素部品のための支持部、および、長形レバーの取り付け等を提供することを指すものと理解されるべきである。
【0014】
好ましい実施形態において、システムは、作動状態にあるときに、長形レバーを本体部にロックして、駆動軸と平行な方向における長形レバーの動作を最小限に抑えるように構成された停止構成をさらに備える。
いくつかの実装形態では、これは、停止構成が、長形レバーに備えられた凹部と係合することを可能にすることによって達成され得、この凹部は、長形レバーの第2の端部の近傍に配置される。
すなわち、一旦、長形レバーの凹部が停止構成に係合すると、長形レバーは、所与の第2の「連結点」として見ることができ、それによって、長形レバーは、駆動軸と平行な方向における任意の動作からロックされることができる。従って、長形レバーのヒンジが、長形レバーを第1の方向において移動させることを可能にする場合、停止構成は、長形レバーが第1の方向と垂直な方向に移動しないようにする。
【0015】
本開示の可能な実施形態において、停止構成は、ロープグラブに隣接する位置で本体部に連結され、停止構成は、作動状態にあるときに、ロープがロープグラブの円周の第1の部分に留まるようにするために、ロープグラブのロープ係合面内に部分的に延びるヒール部分を含む。
ヒール部分の導入における続いての利点は、ヒール部分が所定の位置でロープグラブから移動するので、安全性を高めることができることである。したがって、ヒール部分は、ロープが、ロープの望ましくない絡み合いをもたらすことになるロープグラブ周りでの2巻き目の「再導入すなわち再周回」されないようにする。停止構成は、ロープグラブに直接隣接して配置されることが好ましい。
【0016】
本開示の可能な実施形態では、停止構成は、ロープをロープグラブに向かって圧力を制限するように適合されている。従って、停止構成は、停止構成が長形レバーと係合してロープグラブに向かう方向への動作を制限するように、ロープグラブに対して取り付けられてもよい。
従って、結果として、長形レバーと共に設けられる第2のローラは、(特定の位置で)ロープに向かって動かないように停止されることになり、その結果、ロープグラブに向かう方向にロープに向かって加えられる圧力が制御されることになる。
一実施形態では、第2のローラがロープグラブから少なくとも所定の距離だけ離れたままである位置に停止構成を取り付けることによって、これを達成することができる。
【0017】
好ましくは、システムは、システムが作動状態にあるときに、ロープグラブを覆うように閉状態で配置され、かつ、ローブグラブへのロープの導入を可能にするために開状態で配置されるように構成されたヒンジ付き蓋をさらに備える。
このような蓋は、例えば、手または類似のものを導入するユーザのいかなるリスクも最小化し、システムの作動安全性を効率的に高める。蓋は、好ましくは、本体部にヒンジ接続される。
【0018】
可能な実施形態では、蓋は、閉状態にあるときに停止構成と係合するように構成された制御スタッドを備える。この制御スタッドは、上記説明と同様に、蓋と本体部との間のヒンジ接続に加えて、閉状態において、蓋と本体部との間にさらに連結点が設けられるようにするものである。
従って、蓋と本体部との間のヒンジ接続における任意の望ましくない動作(例えば、蓋を開閉するための方向に対して垂直な動作)は、減少され得る。
【0019】
可能な実施形態では、ロープ係合面は、ロープグラブ構成が作動状態にあるときに、ロープと係合するロープグラブの円周の一部分に沿ってロープと接触するように構成された複数のピンを備えている。
好ましくは、ピンの長さは、ロープを完全に貫通しないように選択される。好ましくは、この長さは、しかしながら、ロープの「コア」の最小の貫通部で、ロープ、ベルト、帯状またはハンガーの完全に織られた部分にそれら自体が係合するように構成される。
上述のような可搬式動力駆動システムと共に使用するのに適したロープの一般的な構造は、当業者には容易に理解されるであろう。
【0020】
好ましくは、一実施形態では、ピンは、ロープグラブの円周に沿って一対になって平行に配置される。このような実施形態は、大型の複数の異なるロープをシステムと共にうまく使用することができるようにするために有益であることを示している。
【0021】
一実施形態によると、ロープグラブおよびピンは、金属材料から製造され、動力駆動システムの全体的な重量を軽くするために、できるだけ軽く保つことが好ましい。しかしながら、本発明の概念内では、例えばポリオキシメチレン材料から製造されるような耐性プラスチック材料からロープグラブおよび/またはピンを製造することも可能である。
当然、高抵抗を有する他の適切なプラスチック材料は、本発明のコンテクスト内で使用可能であり得ることが理解される。
【0022】
ピンおよびロープグラブは、単一のユニットとして製造されることが好ましい。これは、製造コストのために、いくつかの実装形態において好ましい場合がある。一つの可能性は、例えば、コンピュータ数値制御(CNC)フライス処理のようなフライス処理を用いて単一ユニットロープグラブを製造することであろう。
あるいは、ロープグラブは1つのユニットとして形成され、複数のピンは、例えばロープグラブの係合面に形成された穴に挿入することによって、ロープグラブと一体化されてもよい。
【0023】
本発明のコンテクスト内では、少なくともロープグラブの係合面にゴム材料または同等物を設けてもよく、ロープグラブとロープとの間の摩擦をさらに改善することができる。材料の選択は、可搬式動力駆動システムを作動させたときの付加的な材料(例えばゴム)の使用に関連して起こり得る温度上昇によって決まる。
【0024】
本開示の可能な実施形態では、ロープ固定構成は、第2のローラをロープに向かって押しつけるためのバネ機構をさらに含む。このバネ機構は、作動状態にあるときに、一貫して、ロープをロープグラブのほうへ押す/押し込むための第2のローラによって「ベース圧力」が提供されるようにすることができる。
このようなベース圧力は、システムに固定力が提供されない状況においても、ロープグラブがロープを前方/後方に駆動するようにすることができる。典型的には、ベース圧力が提供されず、かつ/または、ベース圧力が低く選択されすぎた場合には、ロープ固定構成の機能が、所望のレベルの摩擦でロープグラブと係合するように機能するまで、ユーザが短い距離だけ下方に「落下」する危険性がある。
【0025】
上述したように、システムは、ロープグラブを回転させるためのモータを備える。モータは、例えば、内燃機関、または、充電式バッテリをさらに備える電気モータであってもよい。
モータのタイプは、手元のアプリケーションに基づいて選択されてもよく、ここで、内燃機関と電気モータの両方が、異なる実装に対して利点を提供する。
【0026】
有利には、システムは、第1の方向および第2の方向におけるロープグラブの回転を可能にするために、モータを動作させるためのユーザインターフェースをさらに備える。
ユーザインターフェースは、例えば、ロープグラブの回転方向を制御するための一対のボタンを使用して実現されてもよい(したがって、システムが「上または下に」移動すべきである場合)。
しかしながら、例えば、ローブグラブの回転方向および回転速度の両方(従って、速度を上下させること)を制御するために使用され得る回転可能なハンドルを使用することによる、より高度な解決策が好ましい。
【0027】
本発明の一実施形態では、アンカーポイントに連結される長形の安全スリングがさらに提供され、この安全スリングは、マイロン、カラビナ、またはリギングプレートのうちの少なくとも1つを受け入れるように構成される。
スリングは、例えば、繊維材料であってもよい。長形スリングは、好ましくは、アンカーポイントに接続され、かつ、その他端において、マイロン、カラビナ、またはリギングプレートの少なくとも1つを受け入れるように構成されたその端部のうちの1つにあるものである。
次いで、マイロン、カラビナ、またはリギングプレートの少なくとも1つを、ユーザのための可搬式システムとの接続(例えばハーネスへの接続)を可能にするために、または、例えば、さらなる登山/仕上げ装置を用いてシステムを固定構造物にアンカー止めするために使用してもよい。
一般的な用語「長形スリング」は、一般的な登山用具に関連したものとして概して言及される。また、「繊維」という用語は、非常に広く解釈されるべきである。例えば、スリングを形成するために使用される繊維材料は、任意の種類、例えば、織物または不織材料、天然および/または合成繊維等であってよい。
【0028】
可搬式動力駆動システムが作動状態にあるときに、ユーザは、通常、例えばスリングおよびカラビナによって、上述したアンカーポイントにしっかりと接続される。
【0029】
さらに、好ましくは、可搬式動力駆動システムが非作動状態にあるときに、ロープをロープグラブに係合するときに、ロープのループ(輪)を第1のローラと第2のローラとの間に挿入できるようにすることができるように、ロープ固定構成を適合させることが望ましい。
これにより、ロープグラブを取り囲み、「負荷をかけた」ときにロープ端部を利用できなければならない従来技術の解決策と比較して、例えばロープの、ロープ長さの中間部分に負荷をかけることができる。
【0030】
従って、このように、可搬式動力駆動システムと共に使用するロープのループによって設定された少なくとも一定の距離で、第1のローラと第2のローラとを確実に離すことが望ましい。
さらに、ヒンジ付きの第1の長形レバーを、ロープグラブから離して「持ち上げ」て、ループを長形レバーの側部の間で延ばして通し、その後ロープグラブと係合できるようにすることが好ましい。
【0031】
本発明のさらなる特徴および利点は、特許請求の範囲及び以下の説明を研究する際に明らかになるであろう。熟練した当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に記載するもの以外の実施形態を作成してもよいことを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の特定の特徴および利点を含む様々な態様が、以下の詳細な説明および添付の図面から容易に理解されるであろう。
図1】本開示の好ましい実施形態による可搬式電力駆動システムの一部分を示す図である。
図2】ロープ装着時の動力駆動システムの詳細を示す図である。
図3】ロープ装着時の動力駆動システムの詳細を示す図である。
図4】ロープ装着時の動力駆動システムの詳細を示す図である。
図5A図1図4に示すような動力駆動システムの水平方向の動作を示す図である。
図5B図1図4に示すような動力駆動システムの鉛直方向の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を、本発明の現在好ましい実施形態が示されている添付図面を参照して、より完全に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、徹底性および完全性のために提供され、本発明の範囲を熟練した当業者に完全に伝えるものである。同様の参照番号は、全体を通して同様の構成要素を参照する。
【0034】
ここで、図面ならびに特に図1および2を参照すると、本発明の可能な実施形態による可搬式動力駆動システム100が描写されている。
動力駆動システム100は、モータ(図示せず)およびロープグラブ(把持部)202を備え、モータおよびロープグラブ202は、例えば駆動軸(場合によってはギアボックスまたは同様のものも含む)によって互いに連結されている。
モータは、図示の実施形態では、再充電式バッテリ(図示せず)をさらに備える電気モータであり、この再充電式バッテリは、システム100に取り外し可能に取り付けられてもよい。図示の実施形態では、モータ、バッテリ、および駆動軸は、システム100の本体部102に封入されている。
【0035】
システム100は、作動状態にあるとき、ロープグラブ202を覆う蓋104をさらに備え、ロープグラブ202は、駆動軸によってモータがロープグラブ202を回転させると、ロープ106を受け入れて巻き上げるように構成される。ロープ106は、第1の主方向108に延びるように配置される。
【0036】
好ましくは、可搬式動力駆動システム100は、防水性があるように構成される。
【0037】
可搬式動力駆動システム100がその後の動作のために準備される非作動状態にあるとき、図3をさらに参照すると、ロープ106のループ(輪)が挿入されてロープグラブ202の一部と係合し、典型的にはロープグラブ202の円周の約半分と接触する。
図3に例示するように、長形レバー210は、好ましくは、ロープ106が長形レバー210内を通って、第1のローラ208と第2のローラ214との間を通過することを可能にする2つの側部を備える。図3において、ロープグラブ202は、凹形状を有するロープ係合面を備え、この凹形状は、いくつかの例としてキャプスタン(巻き上げ機)の凹形状に対応する。
しかしながら、ロープ係合面は、例えば、本質的に平坦であるか、または、本質的に平坦でありかつロープ106と係合するための突出部を備えているなど、手元の実施形態に応じて他の形態を有していてもよい。
【0038】
ロープ106は、第1のローラ208の一部に係合して通過する。第1のローラ208は、長形レバー210に配置されている。長形レバー210は、長形レバー210の第1の端部のヒンジ212を使用して本体部102に回転可能に連結されている。第1のローラ208は、長形レバー210の第1の端部に対向する第2の端部に配置されている。
【0039】
また、長形レバー210には、第1のローラ208とヒンジ212との間に配置された第2のローラ214が設けられている。第2のローラの機能については、後述する。
【0040】
さらに、荷重は、蓋104のヒンジ112と一致する図において、可搬式動力駆動システム100のアンカー(固定)ポイント110に接続されることになる。アンカーポイント110には、例えば、ユーザのハーネスに接続するためのマイルロン(リンク)116に接続されたスリング114が設けられてもよい。
それに応じて、ユーザは、可搬式動力駆動システム100に負荷力118をかけることになり、この場合、負荷力118は、ロープ106の主方向108と比較して、本質的に逆方向に延びることになる。ロープ106は、付加的に、第2のローラ214の近傍に延びる無負荷端部120を有することになる。
【0041】
可搬式動力駆動システム100に負荷力118を加えると、ロープ106は、長形レバー210をロープグラブ202に向かって(ヒンジ212で)方向Dに回転させる。その結果、図4にさらに示されるように、第2のローラ214は、ロープ106の一部をロープグラブ202に向かって押し、ロープ106が第2のローラ214とロープグラブ202との間で少なくとも部分的に「クランプ」されるようになる。
ロープ106を、第2のローラ214とロープグラブ202との間にクランプすると、ロープ106とロープグラブ202との間の摩擦が増大する。これは、結果として、可搬式動力駆動システム100と共に使用される多種多様の異なる種類のロープの使用を可能にするであろう。一実施形態によると、第2のローラ214は、例えば凹部、凸部または平坦状のいずれかを有する対応するロープ係合面を備えてもよい。
【0042】
典型的には、第2のローラ214によって推測される圧力は、負荷力118に比例するものとして見ることができる。実施形態によっては、この圧力を制御する必要がある場合があるが、これがすべてではない。
図示において、システム100では、これは、停止構成216をさらに含むことによって達成され、この停止構成216は、ロープグラブ202に隣接する位置で本体部に連結される。好ましくは、停止構成216とロープグラブ202との間の距離は、ロープ106が第2のローラ214とロープグラブ202のロープ係合面との間で押しつぶされないように選択される。
【0043】
好ましくは、停止構成216は、ロープグラブ202のロープ係合面内に部分的に延びるヒール部分218をさらに含み、作動状態にあるとき、ロープがロープグラブ202を再周回することが許されないときに、ロープグラブ202においてロープ106の望ましくない絡み合いをもたらすプロセスがないようにする。
【0044】
さらに、停止構成216は、システム100が作動状態にあるときに、長形レバー210に備えられる凹部220と係合し、この凹部220は、長形レバー220の第2の端部の近傍に配置されるように適合されてもよい。
すなわち、長形レバー210の凹部220が停止構成216と係合すると、長形レバーは、ヒンジ212に加えて、所与の第2の連結点として見ることができ、それによって、長形レバー210は、駆動軸と平行な方向における任意の動作からロックされることができる。
従って、停止構成216と長形レバー210の凹部220との間の連結は、長形レバー210が、ヒンジ212で長形レバー210を動かす規則的な方向Dと垂直な方向に動作しないようにする。長形レバー210を停止構成216に固定するための手段は、例えばディスク222を使用して実施されてもよい。
【0045】
蓋104は、蓋104が閉状態にあるときに、停止構成216の開口部226と係合するように構成された制御スタッド224を備えることが好ましい。これにより、制御スタッド224は、蓋104のヒンジ112に加えて、蓋104と本体部102との間に、閉状態でさらなる連結点が設けられることを確実にする。従って、ヒンジ112における任意の望ましくない動き(例えば、蓋104を開閉するための方向に垂直な方向の動き)は、減少され得る。
【0046】
また、システム100は、モータの方向および回転速度を制御するために、回転可能なハンドル122によって実施される図示の実施形態では、ユーザインターフェースをさらに備えてもよい。また、蓋104は、蓋104を開閉するためのロック/アンロック機構124をさらに備えてもよい。
【0047】
またさらに、システム100は、例えば、回転可能ハンドル122によって提供される入力に基づいて、モータの動作を制御するための制御部(図示せず)を備えてもよい。この制御部は、いくつかの実施形態において、蓋104が閉状態か開状態かを判定するために設けられたセンサ(図示せず)に接続されてもよい。
このようなセンサは、例えば、磁気センサであってもよい。いくつかの実施形態では、蓋104が開状態であれば、システム100を作動させることができない。
【0048】
次に、電力駆動システム100の例示的な水平および鉛直動作をそれぞれ示す図5Aおよび図5Bを参照する。
図5Aの実施形態では、システム100は、スタンドアロン・ウインチモードとして、すなわち、ユーザが安全ハーネスをアンカーポイント110に直接連結する代わりに、システム100を使用してロープ106に沿って上昇/下降させるように構成され、システム100は、壁のような固定構造体502に連結されるか、または、同様に動作部位で利用可能な物体に連結されるこのモードにある。
【0049】
図示の例では、ロープ106は、ユーザ506がシステム100を自分自身で制御する必要なく鉛直方向の方法で運搬されることを可能にする目的で、例えばローラ504の上を通過するように構成されている。
その代わりに(またはさらに)、システムは、ユーザインターフェース120を用いてオペレータ508によって制御されてもよく、オペレータ508は、典型的にはシステム100に隣接して配置される。
しかしながら、システム100を、例えば遠隔制御装置(図示しない有線または無線)によって遠隔から制御される手段を付加的に備えるように構成することが可能である。好ましくは、この制御は無線であり、このような実装では、システム100は無線接続手段を備えて、遠隔制御装置と無線通信する。
【0050】
図5Bには、動力駆動システム100に対する典型的な鉛直方向動作シナリオが示されている。このシナリオでは、安全ハーネスを有するユーザ506は、通常、スリング114に連結される。この場合、ロープ106は、典型的には、ユーザ506の上方の位置に配置されることになる(時には、クライミングに関連して「トップロープ」と表記される)。
システム100の動作のいくつかの可能なシナリオでは、ユーザ506の上方の固定トップロープ位置は、例えば、ロープ発射装置、ポールまたは任意のタイプの戦術フックによって、幾分柔軟に配置されてもよい。
【0051】
要約すれば、本発明は、第1の主方向に延びるロープを上昇させるための可搬式動力駆動システムに関し、この可搬式動力駆動システムは、駆動軸を備えるモータと、上記駆動軸に連結されたロープグラブと、上記モータを取り付けるための本体部と、を具備し、
上記ロープグラブは、作動状態にあるときに、上記ロープグラブの円周の第1の部分に沿って上記ロープと係合するように適合された凹形状を有するロープ係合面を備え、
上記本体部は、固定力を受けるように構成されたアンカーポイントをさらに備え、第2の方向に延びる上記固定力は、上記第1の主方向と実質的に反対方向であり、
上記動力駆動システムは、ロープ固定構成をさらに備え、上記固定構成は、上記本体部にヒンジ接続された第1の端部と、上記作動状態にあるときに上記ロープと係合するように構成された第1のローラを受け入れるように構成された第2の端部とを有する長形レバーを備え、
上記ロープ固定構成は、上記長形レバーと共に設けられる第2のローラによって、上記作動状態にあるときに、上記ロープが上記ロープグラブと係合している上記第1の部分の一部分において上記ロープを上記ロープグラブに押しつけるために、上記ロープに圧力を加えるように構成される。
【0052】
本発明は、先行技術の装置と比較して、可搬式動力駆動システムの動作を単純化することができるという理解に基づいている。というのは、上述のような解決策は、増大された多数の異なる種類のロープ、および、異なる直径のそのようなロープがシステムと併用されることを可能にするからである。
これは、本開示によると、ロープ固定構成を設けることによって達成される。ここで、ロープ固定構成は、長形レバーと共に設けられるように配置された第1および第2のローラを備え、長形レバーは、システムの本体部でヒンジ止めされる。
【0053】
図は、方法ステップの特定の順序を示してもよいが、ステップの順序は、記載されているものとは異なってもよい。また、2つ以上のステップを同時または部分的に同時実行してもよい。このようなバリエーションは、選択されたソフトウェアとハードウェアシステム、および設計者の選択に依存する。
そのようなバリエーションはすべて、開示の範囲内にある。同様に、ソフトウェア実装は、様々な接続ステップ、処理工程、比較ステップおよび決定ステップを達成するために、ルールベースロジックおよび他のロジックを備える標準プログラミング技術によって達成することができる。
加えて、本発明が、その具体的な例示的な実施形態を参照して説明されたとしても、多くの異なる変更、修正等が、当業者にとって明らかになるであろう。開示された本実施形態に対する変形は、図面、本開示、および添付の請求の範囲の検討から、クレームされた発明を実施する熟練した当業者によって理解され、実施されることができる。
さらに、請求項において、「含む、備える、具備する」という語は、他の構成要素またはステップを除外せず、不定冠詞「1つの~」は、複数を除外しない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B