(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】廃硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 34/22 20060101AFI20230207BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20230207BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20230207BHJP
C22B 3/26 20060101ALI20230207BHJP
C22B 3/32 20060101ALI20230207BHJP
C22B 3/38 20060101ALI20230207BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20230207BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20230207BHJP
C22B 26/10 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C22B34/22
C22B3/04
C22B3/22
C22B3/26
C22B3/32
C22B3/38
C22B3/44
C22B3/44 101Z
C22B7/00 B
C22B26/10
(21)【出願番号】P 2022159182
(22)【出願日】2022-10-03
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0145223
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506081530
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ ジオサイエンス アンド ミネラル リソースズ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】チョン ホソク
(72)【発明者】
【氏名】シン シュンミュン
(72)【発明者】
【氏名】シン ドンジュ
(72)【発明者】
【氏名】リ ドンソク
(72)【発明者】
【氏名】ジュー サンホ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520846(JP,A)
【文献】特表2008-528422(JP,A)
【文献】特開2011-168835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナジウム、セシウム、鉄、シリカ、アルミニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びチタンを含む廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法によりバナジウムとセシウムを選択的に回収する方法であって、
(a-1)廃硫酸バナジウム触媒を破砕粉砕するステップ;
(a-2)前記破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を水浸出した後、固液分離して、カチオン状態のバナジウムとセシウムを含む廃硫酸バナジウム水浸出液を製造するステップ;
(a-3)前記廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップ;
(a-4)前記バナジウム有機抽出液にアルカリ水溶液を投入して、バナジウムを選択的に脱去し、バナジウム水溶液を製造するステップ;及び、
(a-5)前記バナジウム溶媒抽出後、獲得したラフィネート水溶液にアルミニウム化合物を投入して反応させ、冷却して沈殿されたセシウムミョウバンに選択的にセシウムを回収するステップ;を含む、
硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項2】
前記(a-1)廃硫酸バナジウム触媒を破砕粉砕するステップにおいて、
前記廃硫酸バナジウム触媒を
ジョークラッシャ(Jaw Crusher
)、旋回粉砕機(Gyratory Crusher
)、
ロールクラッシャ(Roller Crusher
)、
コーンクラッシャー(Cone Crusher
)、
ハンマーミル粉砕機(Hammermil Crusher
)、
転動ミル(Tumbling Mill
)、
振動ミル(Vibration Mill
)、
アトリッションミル(Attrition Mill
)、
ボールミル(Ball Mill
)、
ロッドミル(Rod Mill
)、
ペブルミル(Pebble Mill
)、及び
自生粉砕機(Autogeneous Mill
)からなる群より選択された1つ以上の装備で破砕粉砕して、破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を製造し、
前記破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒の粒子サイズは、10~500メッシュ(mesh)であることを特徴とする、
請求項1に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項3】
前記(a-2)破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を水浸出した後、固液分離して、廃硫酸バナジウム水浸出液と浸出残渣を製造するステップにおいて、
前記水浸出の条件は、水に破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を投入して、反応温度25~80℃、固液比1/10、攪拌速度50~500rpmの条件で、10分~12時間であることを特徴とする、
請求項1に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項4】
前記廃硫酸バナジウム水浸出液のバナジウム浸出率は、10~99.9%であることを特徴とする、
請求項3に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項5】
前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、
前記有機溶媒は、2-ethyl hexyl phosphonic aci
d、di-2-ethylhexyl phosphoric acid、mono-2-ethyl hexyl este
r、bis-(2,4,4-trimethylpentyl)phosphinic aci
d、alkyl monocarboxylic aci
d、tributyl phosphat
e、及びtrialkylphosphine oxid
eからなる群より1つ以上選択されることを特徴とする、
請求項1に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項6】
前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、
前記有機溶媒は、1~15%のケン化度を有する有機溶媒であって、
前記有機溶媒は、2-ethyl hexyl phosphonic aci
d、di-2-ethylhexyl phosphoric acid
、mono-2-ethyl hexyl este
r、bis-(2,4,4-trimethylpentyl)phosphinic aci
d、alkyl monocarboxylic aci
d、tributyl phosphat
e、及びtrialkylphosphine oxid
eからなる群より1つ以上選択されることを特徴とする、
請求項1に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項7】
前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、
前記有機溶媒でバナジウムを抽出した実験の条件は、
前記廃硫酸バナジウム水浸出液に前記有機溶媒を投入して、反応温度15~40℃、O(有機相)/A(水相)=1~4、攪拌速度50~500rpmの条件で、2分~30分であることを特徴とする、
請求項5に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項8】
前記有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、pH1~6で25~95%であることを特徴とする、
請求項5に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項9】
前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、
前記有機溶媒でバナジウムを抽出した実験の条件は、
前記廃硫酸バナジウム水浸出液に前記1~15%のケン化度を有する有機溶媒を投入して、反応温度15~40℃、O(有機相)/A(水相)=1~4、攪拌速度50~500rpmの条件で、2分~30分であることを特徴とする、
請求項6に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項10】
前記1~15%のケン化度を有する有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、65~99.5%であることを特徴とする、
請求項6に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項11】
前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、
前記ラフィネート(Raffinate)水溶液は、Na、Cs又はKが含有されたことを特徴とする、
請求項1に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項12】
前記(a-4)バナジウム有機抽出液にアルカリ水溶液を投入して、バナジウムを選択的に脱去し、バナジウム水溶液を製造するステップにおいて、
前記アルカリ水溶液は、濃度0.05~5M範囲の(NH
4)
2CO
3、NaOH、及びNa
2CO
3からなる群より選択された1つ以上のアルカリ水溶液であることを特徴とする、
請求項1に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項13】
前記バナジウム水溶液のバナジウム脱去率は、70~99.99%であることを特徴とする、
請求項12に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項14】
前記(a-5)バナジウム溶媒抽出後、獲得したラフィネート水溶液からアルミニウム化合物を投入して、セシウムミョウバンに選択的にセシウムを回収するステップにおいて、
前記アルミニウム化合物は、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミニウム粉末、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、及びアルミナからなる群より選択された1つ以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項15】
前記(a-5)ラフィネート(Raffinate)水溶液で前記セシウムミョウバンを形成したとき、セシウム沈殿率は、60~98%であることを特徴とする、
請求項14に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【請求項16】
前記セシウムミョウバンの純度は、90~99.1%であることを特徴とする、
請求項15に記載の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法であって、より詳細には、廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法によりバナジウムとセシウムを選択的に回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にバナジウムは、高い引張強度と硬度及び耐疲労性の特性を有しており、全体バナジウム生産量の85%以上が鉄又は非鉄金属の合金原料として消費され、石油化学及び様々な産業群の触媒原料として活用されている。
【0003】
特に、硫酸バナジウム触媒は、SO2ガスをSO3ガスに酸化させる際に用いられる触媒として活用される。
【0004】
硫酸触媒は、SiO2を支持体として使用し、硫酸触媒の製造時、工程温度を低くするための目的でV2O5と、Na、K、Cs等の酸化物を一定比率で混合する。特に、Csが硫酸触媒に添加される場合、工程温度を約30~40℃程低くすることができる。これに基づいて商用化した硫酸バナジウム触媒内には、概ね4~10%のV2O5、15~20%のK2SO4又はK2S2O7、2~5%のNa2SO4又はNa2S2O7、5~15%のCs2SO4又はCs2S2O7、55~70%のSiO2が含有されている。
【0005】
一般に知られたように、使用後、硫酸バナジウム触媒は、再生して使用するものの、触媒の寿命が尽きるか、工程中に破損及び摩耗する場合には全量廃棄する。
【0006】
また、セシウムは、人体に致命的な放射性元素と知られているが、それは放射性同位元素である137Csの場合であって、自然界に存在するセシウムは、ほとんど安全な133Csとして存在する。
【0007】
セシウムは、その化合物によって原子時計、太陽電池、赤外線検出機、分光光度計、燃料電池、特殊ガラス、蛍光体、水処里など、様々な産業に応用されている。
【0008】
よって、本出願人は、たいへんな努力の末、様々な産業に活用されるバナジウムとセシウムを廃硫酸触媒から回収するため種々の研究を行い、廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法によりバナジウムとセシウムを選択的に回収する方法を獲得して、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
(特許文献1)中国登録特許第105,986,123号(特許登録日:2019年1月8日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、本発明の目的は、鉄又は非鉄金属の合金原料として消費され、石油化学及び様々な産業群の触媒原料として活用されているバナジウムを廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、及びバナジウムの選択的脱去を含む湿式製錬法により回収する方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、産業界に適用できるように、前記バナジウムの回収方法により回収したバナジウムで製造したバナジウム水溶液を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、原子時計、太陽電池、赤外線検出機、分光光度計、燃料電池、特殊ガラス、蛍光体、水処里など、様々な産業に応用されているセシウムを廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法により回収する方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、産業界に適用できるように、前記セシウムの回収方法により回収したセシウムで製造したセシウムミョウバンを提供することにある。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、以上に言及した課題に制限されず、言及していないさらに他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明の一側面によれば、廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法によりバナジウムとセシウムを選択的に回収する方法であって、(a-1)廃硫酸バナジウム触媒を破砕粉砕するステップ;(a-2)前記破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を水浸出した後、固液分離して、廃硫酸バナジウム水浸出液を製造するステップ;(a-3)前記廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップ;(a-4)前記バナジウム有機抽出液にアルカリ水溶液を投入して、バナジウムを選択的に脱去し、バナジウム水溶液を製造するステップ;及び(a-5)前記バナジウム溶媒抽出後、獲得したラフィネート水溶液からアルミニウム化合物を投入して、セシウムミョウバンに選択的にセシウムを回収するステップ;を含む硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記(a-1)廃硫酸バナジウム触媒を破砕粉砕するステップにおいて、前記廃硫酸バナジウム触媒をジョークラッシャ(Jaw Crusher)、旋回粉砕機(Gyratory Crusher)、ロールクラッシャ(Roller Crusher)、コーンクラッシャー(Cone Crusher)、ハンマーミル粉砕機Hammermil Crusher)、転動ミル(Tumbling Mill)、振動ミル(Vibration Mill)、アトリッションミル(Attrition Mill)、ボールミル(Ball Mill)、ロッドミル(Rod Mill)、ペブルミル(Pebble Mill)、及び自生粉砕機(Autogeneous Mill)からなる群より選択された1つ以上の装備で破砕粉砕して、破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を製造し、前記破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒の粒子サイズは、10~500メッシュ(mesh)であってもよい。
【0017】
本発明の一実施例によれば、前記(a-2)破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を水浸出した後、固液分離して、廃硫酸バナジウム水浸出液と浸出残渣を製造するステップにおいて、前記水浸出の条件は、水に破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を投入して、反応温度25~80℃、固液比1/10、攪拌速度50~500rpmの条件で、10分~12時間であってもよい。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記廃硫酸バナジウム水浸出液のバナジウム浸出率は、10~99.9%であってもよい。
【0019】
本発明の一実施例によれば、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記有機溶媒は、2-ethyl hexyl phosphonic acid、di-2-ethylhexyl phosphoric acid、mono-2-ethyl hexyl ester、bis-(2,4,4-trimethylpentyl)phosphinic acid、alkyl monocarboxylic acid、tributyl phosphate、及びtrialkylphosphine oxideからなる群より1つ以上選択されてもよい。
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記有機溶媒は、1~15%のケン化度を有する有機溶媒であって、前記有機溶媒は、2-ethyl hexyl phosphonic acid、di-2-ethylhexyl phosphoric acid、mono-2-ethyl hexyl ester、bis-(2,4,4-trimethylpentyl)phosphinic acid、alkyl monocarboxylic acid、tributyl phosphate、及びtrialkylphosphine oxideからなる群より1つ以上選択されてもよい。
【0021】
本発明の一実施例によれば、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記有機溶媒でバナジウムを抽出した実験の条件は、前記廃硫酸バナジウム水浸出液に前記有機溶媒を投入して、反応温度15~40℃、O(有機相)/A(水相)=1~4、攪拌速度50~500rpmの条件で、2分~30分であってもよい。
【0022】
本発明の一実施例によれば、前記有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、pH1~6で25~95%であってもよい。
【0023】
本発明の一実施例によれば、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記有機溶媒でバナジウムを抽出した実験の条件は、前記廃硫酸バナジウム水浸出液に前記1~15%のケン化度を有する有機溶媒を投入して、反応温度15~40℃、O(有機相)/A(水相)=1~4、攪拌速度50~500rpmの条件で、2分~30分であってもよい。
【0024】
本発明の一実施例によれば、前記1~15%のケン化度を有する有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、65~99.5%であってもよい。
【0025】
本発明の一実施例によれば、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記ラフィネート(Raffinate)水溶液は、Na、Cs又はKが含有されてもよい。
【0026】
本発明の一実施例によれば、前記(a-4)バナジウム有機抽出液にアルカリ水溶液を投入して、バナジウムを選択的に脱去し、バナジウム水溶液を製造するステップにおいて、前記アルカリ水溶液は、濃度0.05~5M範囲の(NH4)2CO3、NaOH、及びNa2CO3からなる群より選択された1つ以上のアルカリ水溶液であってもよい。
【0027】
本発明の一実施例によれば、前記バナジウム水溶液のバナジウム脱去率は、70~99.99%であってもよい。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記(a-5)バナジウム溶媒抽出後、獲得したラフィネート水溶液からアルミニウム化合物を投入して、セシウムミョウバンに選択的にセシウムを回収するステップにおいて、前記アルミニウム化合物は、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミニウム粉末、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、及びアルミナからなる群より選択された1つ以上であってもよい。
【0029】
本発明の一実施例によれば、前記(a-5)ラフィネート(Raffinate)水溶液で前記セシウムミョウバンを形成したとき、セシウム沈殿率は、60~98%であってもよい。
【0030】
本発明の一実施例によれば、前記セシウムミョウバンの純度は、90~99.1%であってもよい。
【0031】
また、本発明の他の一側面によれば、前記硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法により製造したバナジウム水溶液を提供する。
【0032】
また、本発明の他の一側面によれば、前記硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法により製造したセシウムミョウバンを提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、鉄又は非鉄金属の合金原料として消費され、石油化学及び様々な産業群の触媒原料として活用されているバナジウムを廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、及びバナジウムの選択的脱去を含む湿式製錬法により回収する方法を提供するため、廃棄物処理コストが節減され、バナジウムの回収コストも節減される。
【0034】
また、本発明は、産業界に適用できるように、前記バナジウムの回収方法により回収したバナジウムで製造したバナジウム水溶液を提供するため、適用範囲が広い。
【0035】
また、本発明は、原子時計、太陽電池、赤外線検出機、分光光度計、燃料電池、特殊ガラス、蛍光体、水処里など、様々な産業に応用されているセシウムを廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法により回収する方法を提供するため、環境にやさしい、かつ経済的である。
【0036】
また、本発明は、産業界に適用できるように、前記セシウムの回収方法により回収したセシウムで製造したセシウムミョウバンを提供するため、適用範囲が広い。
【0037】
本発明の効果は、上記の効果に限定されるものではなく、本発明の詳説又は特許請求の範囲に記載した発明の構成から推論できるすべての効果を含むものと理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施例による廃硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの回収方法の工程流れ図。
【
図2】本発明の一実施例による廃硫酸バナジウム触媒のXRD結晶構造分析グラフ。
【
図3a】本発明の一実施例による有機溶媒抽出工程における有価金属のMass Balanceデータ。
【
図3b】本発明の一実施例による有機溶媒抽出工程における有価金属のMass Balanceデータ。
【
図3c】本発明の一実施例による有機溶媒抽出工程における有価金属のMass Balanceデータ。
【
図3d】本発明の一実施例による有機溶媒抽出工程における有価金属のMass Balanceデータ。
【
図3e】本発明の一実施例による有機溶媒抽出工程における有価金属のMass Balanceデータ。
【
図4】本発明の一実施例によるセシウムミョウバンのXRD結晶構造分析グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、添付の図面を参照しつつ本発明による好ましい実施例を詳説することとする。
【0040】
本発明の利点及び特徴、そしてそれを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になる。
【0041】
しかしながら、本発明は、以下に開示の実施例によって限定されるものではなく、相異する様々な形態に具現されるものである。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にして、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0042】
また、本発明を説明することにおいて、関連する公知技術などが、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、それに関する詳説を省略することとする。
【0043】
以下では、本発明を詳説する。
【0044】
〔廃硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法〕
本発明は、鉄又は非鉄金属の合金原料として消費され、石油化学及び様々な産業群の触媒原料として活用されているバナジウムを廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、及びバナジウムの選択的脱去を含む湿式製錬法により回収する方法を提供する。
【0045】
また、本発明は、原子時計、太陽電池、赤外線検出機、分光光度計、燃料電池、特殊ガラス、蛍光体、水処里など、様々な産業に応用されているセシウムを廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法により回収する方法を提供する。
【0046】
本発明の硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法は、廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法によりバナジウムとセシウムを選択的に回収する方法であって、(a-1)廃硫酸バナジウム触媒を破砕粉砕するステップ;(a-2)前記破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を水浸出した後、固液分離して、廃硫酸バナジウム水浸出液を製造するステップ;(a-3)前記廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップ;(a-4)前記バナジウム有機抽出液にアルカリ水溶液を投入して、バナジウムを選択的に脱去し、バナジウム水溶液を製造するステップ;及び(a-5)前記バナジウム溶媒抽出後、獲得したラフィネート水溶液からアルミニウム化合物を投入して、セシウムミョウバンに選択的にセシウムを回収するステップ;を含む。
【0047】
本発明は、鉄又は非鉄金属の合金原料として消費され、石油化学及び様々な産業群の触媒原料として活用されているバナジウムを廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、及びバナジウムの選択的脱去を含む湿式製錬法により回収する方法を提供するため、廃棄物処理コストが節減され、バナジウムの回収コストも節減される。
【0048】
また、本発明は、原子時計、太陽電池、赤外線検出機、分光光度計、燃料電池、特殊ガラス、蛍光体、水処里など、様々な産業に応用されているセシウムを廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法により回収する方法を提供するため、環境にやさしい、かつ経済的である。
【0049】
ここで、前記廃硫酸バナジウム触媒は、一例として、3.51%のV、0.5%のFe、0.42%のCa、22.8%のSi、0.75%のAl、0.04%のTi、5.8%のK、1.5%のNa、2.2%のCsが含有されていてもよく、XRD結晶構造分析におけるSiO2がmain peakで存在しており、V2O5、KAl(SO4)2等、様々な結晶相からなっている。
【0050】
そして、前記(a-1)廃硫酸バナジウム触媒を破砕粉砕するステップにおいて、前記廃硫酸バナジウム触媒をジョークラッシャ(Jaw Crusher)、旋回粉砕機(Gyratory Crusher)、ロールクラッシャ(Roller Crusher)、コーンクラッシャー(Cone Crusher)、ハンマーミル粉砕機(Hammermil Crusher)、転動ミル(Tumbling Mill)、振動ミル(Vibration Mill)、アトリッションミル(Attrition Mill)、ボールミル(Ball Mill)、ロッドミル(Rod Mill)、ペブルミル(Pebble Mill)、及び自生粉砕機(Autogeneous Mill)からなる群より選択された1つ以上の装備で破砕粉砕して、破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を製造し、前記破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒の粒子サイズは、10~500メッシュ(mesh)であってもよい。
【0051】
このとき、前記破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒の粒子サイズは、好ましくは、20~400メッシュ(mesh)であってよく、より好ましくは、30~300メッシュ(mesh)であってもよい。
【0052】
また、前記(a-2)破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を水浸出した後、固液分離して、廃硫酸バナジウム水浸出液と浸出残渣を製造するステップにおいて、前記水浸出の条件は、水に破砕粉砕された廃硫酸バナジウム触媒を投入して、反応温度25~80℃、固液比1/10、攪拌速度50~500rpmの条件で、10分~12時間であってもよい。
【0053】
ここで、前記水浸出の条件が前記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0054】
そして、前記廃硫酸バナジウム水浸出液のバナジウム浸出率は、10~99.9%であってもよい。
【0055】
このとき、前記廃硫酸バナジウム水浸出液のバナジウム浸出率は、反応温度が25~50℃である場合が、反応温度が50~80℃である場合よりも増加し得る。
【0056】
また、前記廃硫酸バナジウム水浸出液のバナジウム浸出率は、反応時間が5~90分である場合が、反応時間が90~360分である場合よりも増加し得る。
【0057】
そして、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記有機溶媒は、2-ethyl hexyl phosphonic acid、di-2-ethylhexyl phosphoric acid、mono-2-ethyl hexyl ester、bis-(2,4,4-trimethylpentyl)phosphinic acid、alkyl monocarboxylic acid、tributyl phosphate、及びtrialkylphosphine oxideからなる群より1つ以上選択されてもよい。
【0058】
ここで、前記有機溶媒抽出における希釈剤としてケロシンを用いることができる。
【0059】
また、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記有機溶媒は、1~15%のケン化度を有する有機溶媒であって、前記有機溶媒は、2-ethyl hexyl phosphonic acid、di-2-ethylhexyl phosphoric acid、mono-2-ethyl hexyl ester、bis-(2,4,4-trimethylpentyl)phosphinic acid、alkyl monocarboxylic acid、tributyl phosphate、及びtrialkylphosphine oxideからなる群より1つ以上選択されてもよい。
【0060】
そして、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記有機溶媒でバナジウムを抽出した実験の条件は、前記廃硫酸バナジウム水浸出液に前記有機溶媒を投入して、反応温度15~40℃、O(有機相)/A(水相)=1~4、攪拌速度50~500rpmの条件で、2分~30分であってもよい。
【0061】
ここで、前記有機溶媒抽出実験の条件が前記範囲を外れる場合、バナジウム抽出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0062】
また、前記有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、pH1~6で25~95%であってもよい。
【0063】
このとき、前記有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、pHが1~3である場合が、pHが3~6である場合よりも増加し得る。
【0064】
そして、前記有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、前記有機溶媒の濃度が0.01Mから5Mに増加するほど、バナジウム抽出率が増加し得る。
【0065】
また、前記有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、O(有機相)/A(水相)割合が、0.05から10に増加するほど、バナジウム抽出率が増加し得る。
【0066】
そして、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記有機溶媒でバナジウムを抽出した実験の条件は、前記廃硫酸バナジウム水浸出液に前記1~15%のケン化度を有する有機溶媒を投入して、反応温度15~40℃、O(有機相)/A(水相)=1~4、攪拌速度50~500rpmの条件で、2分~30分であってもよい。
【0067】
ここで、前記1~15%のケン化度を有する有機溶媒抽出実験の条件が前記範囲を外れる場合、経済的でない短所があり得る。
【0068】
また、前記1~15%のケン化度を有する有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、65~99.5%であってもよい。
【0069】
このとき、前記1~15%のケン化度を有する有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、ケン化度が1%から15%に増加するほど、バナジウム抽出率が増加し得る。
【0070】
また、前記1~15%のケン化度を有する有機溶媒を用いて抽出したバナジウム有機抽出液のバナジウム抽出率は、向流抽出方式で抽出したとき、向流3段抽出方式が向流2段抽出方式よりもバナジウム抽出率が増加し得、向流2段抽出方式が向流1段抽出方式よりもバナジウム抽出率が増加し得る。
【0071】
そして、向流抽出方式は、逆方向(count current)抽出方法である。すなわち、2つの流体の流れ方向が逆である抽出方法である。
【0072】
ここで、前記向流3段抽出方式は、フィード溶液が1段で投入されると、抽出剤は、3段で投入される方法であってもよい。このとき、前記向流3段抽出方式は、選択的に金属イオンをより濃縮かつ精製させることができる。
【0073】
そして、前記(a-3)廃硫酸バナジウム水浸出液にカチオン交換抽出剤である有機溶媒を投入して、バナジウムが溶媒抽出されたバナジウム有機抽出液及びバナジウムが溶媒抽出されて残ったラフィネート(Raffinate)水溶液を獲得するステップにおいて、前記ラフィネート(Raffinate)水溶液は、Na、Cs又はKが含有されてもよい。
【0074】
ここで、前記ラフィネート(Raffinate)水溶液は、バナジウムが溶媒抽出されて残った残留溶液であってもよい。
【0075】
また、前記(a-4)バナジウム有機抽出液にアルカリ水溶液を投入して、バナジウムを選択的に脱去し、バナジウム水溶液を製造するステップにおいて、前記アルカリ水溶液は、濃度0.05~5M範囲の(NH4)2CO3、NaOH、及びNa2CO3からなる群より選択された1つ以上のアルカリ水溶液であってもよい。
【0076】
このとき、前記アルカリ水溶液の濃度が0.05~0.7Mである場合よりも、アルカリ水溶液の濃度が0.7~5Mである場合が、バナジウムの脱去効率が増加し得る。
【0077】
また、前記アルカリ水溶液のO/A割合が1~2である場合が、アルカリ水溶液のO/A割合が2~3である場合よりも、バナジウムの脱去効率が増加し得る。
【0078】
そして、前記バナジウム水溶液のバナジウム脱去率は、70~99.99%であってもよい。
【0079】
また、前記(a-5)バナジウム溶媒抽出後、獲得したラフィネート水溶液からアルミニウム化合物を投入して、セシウムミョウバンに選択的にセシウムを回収するステップにおいて、前記アルミニウム化合物は、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミニウム粉末、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、及びアルミナからなる群より選択された1つ以上であってもよい。
【0080】
そして、前記(a-5)ラフィネート(Raffinate)水溶液で前記セシウムミョウバンを形成したとき、セシウム沈殿率は、60~98%であってもよい。
【0081】
ここで、前記アルミニウム化合物の含量が増加するほど、前記セシウム沈殿率は、増加し得る。
【0082】
また、前記セシウムミョウバンの純度は、90~99.1%であってもよい。
【0083】
図1は、本発明の一実施例による廃硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの回収方法の工程流れ図である。
【0084】
図1を参照すると、廃硫酸バナジウム触媒100を破砕粉砕装置で破砕粉砕110した後、水に入れて、バナジウムと金属イオンを水浸出120することができる。
【0085】
その後、前記バナジウムと金属イオンとが水浸出された水浸出液を固液分離130して、水浸出液140と浸出残渣150に分離することができる。
【0086】
その後、前記水浸出液140に有機溶媒を入れて、バナジウムを抽出160し、有機抽出液170を形成することができ、バナジウムを抽出して残ったラフィネート(Raffinate)水溶液210を獲得することができる。
【0087】
前記有機抽出液170にアルカリ水溶液を投入して、バナジウムを選択的に脱去180し、高品位のバナジウム水溶液190を製造して、バナジウムを廃硫酸バナジウム触媒から選択的に回収することができる。
【0088】
そして、前記ラフィネート(Raffinate)水溶液210に硫酸アルミニウム粉末を投入して反応させた後、固液分離して、セシウムミョウバン(CsAl(SO4)2)を製造し、セシウムを廃硫酸バナジウム触媒から選択的に回収することができる。
【0089】
〔廃硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法により製造された高品位のバナジウム水溶液とセシウムミョウバン〕
本発明は、産業界に適用できるように、前記バナジウムの回収方法により回収したバナジウムで製造したバナジウム水溶液を提供する。
【0090】
また、本発明は、産業界に適用できるように、前記バナジウムの回収方法により回収したバナジウムで製造したバナジウム水溶液を提供するため、適用範囲が広い。
【0091】
そして、本発明は、産業界に適用できるように、前記セシウムの回収方法により回収したセシウムで製造したセシウムミョウバンを提供する。
【0092】
また、本発明は、産業界に適用できるように、前記セシウムの回収方法により回収したセシウムで製造したセシウムミョウバンを提供するため、適用範囲が広い。
【0093】
具体的に本発明は、前記硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法により製造したバナジウム水溶液を提供する。
【0094】
また、本発明は、前記硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法により製造したセシウムミョウバンを提供する。
【0095】
以下では、実施例によって本発明をより詳説する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。下記の実施例は、本発明の範囲内で当業者にとって適宜修正、変更することができる。
【0096】
<準備例>
硫酸バナジウム触媒からバナジウム及びセシウムを選択的に回収するために、先ず、廃硫酸バナジウム触媒を準備した。
【0097】
前記廃硫酸バナジウム触媒の組成は、下記の表1のとおりである。
【0098】
下記の表1のように、廃硫酸バナジウム触媒は、3.51%のV、0.5%のFe、0.42%のCa、22.8%のSi、0.75%のAl、0.04%のTi、5.8%のK、1.5%のNa、2.2%のCsが含有されており、
図2から分かるように、SiO
2がmain peakで存在しており、V
2O
5、KAl(SO
4)
2等、多様な結晶相からなっている。
【0099】
図2は、前記準備例の廃硫酸バナジウム触媒のXRD結晶構造分析グラフである。
【0100】
【0101】
<実施例>
<実施例1>廃硫酸バナジウム触媒の水浸出
前記準備例の廃硫酸バナジウム触媒をボールミルを用いて粉砕した後、sieve shakerを用いて100メッシュ基準に粒度分離を実施した。100メッシュよりも小さい粒度を有する粉末を対象に水浸出実験を行っており、100メッシュよりも大きい粒子は、更にボールミルに投入して粉砕した。
【0102】
水浸出実験は、固液比1/10、攪拌速度200rpmの条件で、下記の表2~表4のように、25~80℃範囲の反応温度で6時間行った。
【0103】
〔廃硫酸バナジウム触媒を蒸留水、固液比1/10、攪拌速度200rpmと25℃で水浸出した際の浸出率〕
【0104】
【0105】
上記表2は、廃硫酸バナジウム触媒を蒸留水、固液比1/10、攪拌速度200rpmと25℃で水浸出した際の浸出率である。
【0106】
上記表2を参照すると、三次蒸留水を用いて、25℃でV廃触媒を浸出したとき、30分におけるVの浸出率は、99.6%であった。このとき、Feは28.7%、Caは67.4%、Siは0.01%、Alは20.8%、Tiは45.3%、Naは99.9%、Kは88.8%、Csは99.9%浸出された。30分後からVの浸出量が減少したが、これとは対照的に、Fe、Ca、Alのような不純物の場合、時間が経つほど、浸出液内濃度が増加した。
【0107】
〔廃硫酸バナジウム触媒を蒸留水、固液比1/10、攪拌速度200rpmと 50℃で水浸出した際の浸出率〕
【0108】
【0109】
上記表3は、廃硫酸バナジウム触媒を蒸留水、固液比1/10、攪拌速度200rpmと50℃で水浸出した際の浸出率である。
【0110】
上記表3を参照すると、50℃で浸出したとき、V浸出率が時間が経つほど、減少し、最終に23.2%の浸出率を示しており、Cs浸出率の場合、最大90%から71.9%までに減少した。その他、Fe、Ca、Al、Na、及びKの浸出率は、時間によって増加しつつあり、360分では、Feは62.8%、Caは63%、Alは56.3%、Naは98.8%、Kは96.6%浸出された。
【0111】
〔廃硫酸バナジウム触媒を蒸留水、固液比1/10、攪拌速度200rpmと 80℃で水浸出した際の浸出率〕
【0112】
【0113】
上記表4は、廃硫酸バナジウム触媒を蒸留水、固液比1/10、攪拌速度200rpmと80℃で水浸出した際の浸出率である。
【0114】
上記表4を参照すると、80℃の条件で水浸出したとき、Vの浸出率は、約10%と非常に低い水準を維持することが分かり、Csの場合、360分では、約71.7%の浸出率を示した。その他、Fe、Ca、Al、Na、及びKは、時間が経つほど、浸出率が増加し、360分では、Feは54.7%、Caは62.3%、Alは99.7%、Naは98.8%、Kは96.6%浸出された。
【0115】
反応温度による廃硫酸バナジウム触媒の水浸出実験の結果、反応温度が増加するほど、V浸出率が大きく減少することが分かり、Csも25℃における浸出率が99.9%以上と最も高く示されたことが分かった。
【0116】
そして、25℃の条件でも、30分後からV浸出率が減少したため、廃硫酸バナジウム触媒からV及びCsを回収するため水浸出実験における最適条件は、反応温度25℃、反応時間30分と確認された。
【0117】
<実施例2>廃硫酸バナジウム水浸出液の有機溶媒抽出
上記実施例1の廃硫酸バナジウム水浸出液に有機溶媒を投入して、バナジウムを有機溶媒抽出した。
【0118】
ここで、上記実施例1の廃硫酸バナジウム水浸出液の組成は、下記の表5に示した廃硫酸バナジウム触媒を蒸留水、固液比1/10、攪拌速度200rpm、25℃で、30分間水浸出した際の浸出液の組成である。
【0119】
【0120】
上記表5を参照すると、上記実施例1の廃硫酸バナジウム水浸出液内には、3518mg/LのV、130.9mg/LのFe、285.6mg/LのCa、12.4mg/LのSi、190.7mg/LのAl、16.8mg/LのTi、1600mg/LのNa、2600mg/LのCs、6490mg/LのKが含有されている。
【0121】
そして、平衡pHによる有価金属の抽出傾向を調べるための実験を行った。250mLビーカーに100mLの浸出液(Feed)と、100mLの1M(mol/L)のD2EHPA(di-2-ethylhexyl phosphoric acid)を添加(O/A=1)し、マグネチックバーを用いて、250~500rpmの速度で攪拌して、抽出反応が十分行われるようにした。
【0122】
水浸出液は、浸出の最適条件である反応温度25℃、反応時間30分後、獲得した溶液を用いた。平衡pHは、アンモニア水溶液を用いて調節しており、目標pHに到逹したとき、10分間抽出を行った後、分液漏斗により相分離を行った。
【0123】
この過程を各平衡pH別に連続して行った。下記の表6に平衡pHによる有価金属の抽出率を示した。
【0124】
〔廃硫酸バナジウム水浸出液をD2EHPA有機溶媒、O/A=1、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率〕
【0125】
【0126】
上記表6は、廃硫酸バナジウム水浸出液を1mol/LのD2EHPA、O/A=1、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0127】
上記表6から分かるように、1mol/LのD2EHPAを用いたとき、初期平衡pHは、1.28であり、このとき、75.4%のV、99%のFe、39.5%のCa、64.3%のSi、11.3%のAlが抽出され、Tiは、全量抽出されて、Na、Cs、Kの抽出は、発生していない。
【0128】
平衡pH別に有価金属の抽出率を比較したとき、TiとFeが最も先に抽出されて、V、Al、Caの抽出後、平衡pHが3以上になった時からアルカリ金属であるNa、Cs、Kの抽出が行われた。
【0129】
平衡pHが2.58であるとき、V抽出率が最も高く示された。それ以上のpH区間では、pHが増加するほど、V抽出率は減少した。これは有機相における水溶液でバナジウムが逆抽出されたからであり、平衡pHが5.51となったとき、有機相にあるVがいずれも逆抽出されて、フィード組成に類似に分析された。このとき、微量のSiが共に逆抽出されて、Fe、Ca、Al、及びTiは、依然として有機相に残っていた。
【0130】
〔廃硫酸バナジウム水浸出液をD2EHPA有機溶媒の濃度別、O/A=1、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率〕
0.35M、0.5M、0.7M、1M濃度のD2EHPAを用いて、O/A=1の条件で、溶媒抽出を行うことで、D2EHPAの濃度による有価金属の抽出挙動を考察した。溶媒抽出実験は、125mLの分液漏斗により10分間行われた。下記の表7にD2EHPAの濃度による有価金属の抽出率を示した。
【0131】
【0132】
上記表7は、廃硫酸バナジウム水浸出液を0.35、0.5、0.7、1M濃度のD2EHPA、O/A=1、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0133】
上記表7に示したように、Vの場合、0.35、0.5、0.7、及び1mol/LのD2EHPAにおける抽出率が、それぞれ54.9%、63.2%、69.7%、及び74.6%とD2EHPAの濃度が高いほど、抽出率は増加した。Feの場合、0.35mol/LのD2EHPAから97.5%が抽出されて、0.7mol/Lから全量抽出されることが確認できた。Ca、Alの場合も、D2EHPAの濃度が増加するほど、抽出率は増加し、1mol/Lから約41.3%及び20.1%が抽出されて、Tiは、全濃度範囲で全量抽出されることが分かる。そして、Na、Cs、Kのようなアルカリ金属は、あらゆるD2EHPA濃度範囲で1%未満と抽出された。
【0134】
〔廃硫酸バナジウム水浸出液をD2EHPA有機溶媒、O/A割合別、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率〕
下記の表8と表9にO/A割合(organic phase/aqueous phase ratio)による溶媒抽出実験の結果を示した。
【0135】
【0136】
上記表8は、廃硫酸バナジウム水浸出液を0.7M濃度のD2EHPA、O/A=0.5、1、1.5、2、4、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0137】
上記表8に示したように、Vは、O/A割合が増加するほど、その抽出率が増加し、最大85%まで到逹したことが確認できた。
【0138】
FeとTiは、あらゆるO/A割合において全量抽出されて、ラフィネートから分析されておらず、Ca、Si、Alの場合、最大44.5%、57.1%、47.9%の抽出率を示した。アルカリ金属であるNa、K、Csは、抽出がほとんど発生しないものと確認された。
【0139】
【0140】
上記表9は、廃硫酸バナジウム水浸出液を1M濃度のD2EHPA、O/A=0.5、1、1.5、2、4、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0141】
上記表9に示したように、1mol/LのD2EHPAを用いたとき、O/A割合が増加するほど、有価金属の抽出率は、共に増加した。O/A割合が4であるとき、V抽出率は、88.1%と最も高い抽出率を示した。Ti、Feは、あらゆるO/A割合において全量抽出されて、ラフィネートから分析されておらず、Siの場合、約63%の抽出率を維持することが分かった。CaとAlは、O/A=4において、それぞれ53.1%、42.7%と抽出されて、Na、K、Csの場合、1%未満と微量抽出されることが確認できた。
【0142】
各濃度別にO/A割合による溶媒抽出実験を行った結果、D2EHPAの濃度とO/A割合が増加するほど、有価金属の抽出率が増加することが確認できた。そのうち、TiとFeが最も先に抽出されて、V、Ca、Alの順に抽出されることが分かった。アルカリ金属の場合は、他の多価カチオンが先に抽出された後に抽出される傾向にあった。
【0143】
また、V抽出率が最も高かった条件は、1mol/LのD2EHPAを用いて、O/A割合を4に適用したときであって、約88%と確認され、0.7MのD2EHPAを用いては、Vを全量抽出することができなかった。
【0144】
よって、Csの抽出が発生しない条件で、V抽出率が最も高い0.7MのD2EHPAを最適濃度と決定した。
【0145】
<実施例3>廃硫酸バナジウム水浸出液のケン化した有機溶媒抽出
上記実施例1の廃硫酸バナジウム水浸出液にケン化した有機溶媒を投入して、バナジウムをケン化した有機溶媒抽出した。
【0146】
0.7MのD2EHPAのケン化による溶媒抽出実験を行った。D2EHPAのケン化は、5mol/LのNaOHを用いて行っており、ケン化度を3%、5%、7%に適用して、O/A=1の条件で、溶媒抽出実験を行った。
【0147】
フィード組成を基準に抽出率を計算して、下記の表10に示した。
【0148】
ここで、廃硫酸バナジウム水浸出液は、浸出の最適条件である反応温度25℃、反応時間30分後に獲得した溶液を用いた。
【0149】
〔廃硫酸バナジウム水浸出液を3%、5%、7%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、O/A=1、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率〕
【0150】
【0151】
上記表10は、廃硫酸バナジウム水浸出液を3%、5%、7%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、O/A=1、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0152】
上記表10を検討すると、ケン化度が増加するほど、平衡pHが増加することが分かり、上記表8に示したケン化していない0.7MのD2EHPAと比較したとき、Naを除くあらゆる有価金属の抽出率が増加したことが確認できた。
【0153】
Vの場合、適用したケン化度の範囲で、約75~76%の抽出率と類似に示された。これによって、0.7MのD2EHPAのケン化度を3%に適用して、向流多段謀議抽出実験を行った。
【0154】
3%にケン化した0.7MのD2EHPAを用いて、向流3段謀議抽出実験を行っており、その結果を表11に示した。
【0155】
〔廃硫酸バナジウム水浸出液を3%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率〕
【0156】
【0157】
*R9:抽出3段ラフィネート、R11:抽出2段ラフィネート、R12:抽出1段ラフィネート
【0158】
上記表11は、廃硫酸バナジウム水浸出液を3%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0159】
上記表11を検討すると、3%にケン化した0.7mol/LのD2EHPAを用いて、O/A割合は1.5の条件で、向流3段抽出を行ったとき、V抽出率は、約93.1%と示され、Caは58.2%、Siは39.7%、Alは80.3%、Kは9.8%抽出されて、FeとTiは、全量抽出された。
【0160】
〔廃硫酸バナジウム水浸出液を5%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率〕
5%にケン化した0.7MのD2EHPAを用いた向流3段謀議抽出実験の結果を下記の表12に示した。
【0161】
【0162】
*R9:抽出3段ラフィネート、R11:抽出2段ラフィネート、R12:抽出1段ラフィネート
【0163】
上記表12は、廃硫酸バナジウム水浸出液を5%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0164】
上記表12を検討すると、ケン化度を5%に増加させたとき、抽出3段における最終ラフィネートのpHが小幅上昇し、V抽出率も94.2%と小幅上昇した。
【0165】
〔廃硫酸バナジウム水浸出液を7%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率〕
7%にケン化した0.7MのD2EHPAを用いた向流3段謀議抽出実験の結果を下記の表13に示した。
【0166】
【0167】
*R9:抽出3段ラフィネート、R11:抽出2段ラフィネート、R12:抽出1段ラフィネート
【0168】
上記表13は、廃硫酸バナジウム水浸出液を7%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0169】
上記表13を検討すると、7%にケン化した0.7MのD2EHPAを用いて、向流3段抽出を行ったとき、抽出3段におけるV抽出率は、94.6%であり、Caは71.9%、Siは34.7%、Alは86.9%、Csは1.2%、そして、Kは12.2%抽出された。このとき、Fe、Tiは、全量抽出された。
【0170】
よって、V抽出率を増加させるために、0.7MのD2EHPAを10%、15%にケン化して、向流3段抽出実験を行った。
【0171】
〔廃硫酸バナジウム水浸出液を10%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率〕
10%にケン化した0.7MのD2EHPAを用いた向流3段謀議抽出実験の結果を下記の表14に示した。
【0172】
【0173】
*R9:抽出3段ラフィネート、R11:抽出2段ラフィネート、R12:抽出1段ラフィネート
【0174】
上記表14は、廃硫酸バナジウム水浸出液を10%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0175】
前記10%にケン化した0.7mol/LのD2EHPAを用いて、向流3段謀議抽出実験を行ったとき、向流3段で発生するラフィネート内には、118.7mg/LのV、41.6mg/LのCa、10.4mg/LのSi、15.3mg/LのAl、6600mg/LのNa、2595mg/LのCs、及び6480mg/LのKが含有されており、pHは1.73であった。このとき、フィード組成を基準に計算したV抽出率は、約96.6%と確認された。
【0176】
〔廃硫酸バナジウム水浸出液を15%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率〕
15%にケン化した0.7MのD2EHPAを用いた向流3段謀議抽出実験の結果を下記の表15に示した。
【0177】
【0178】
*R9:抽出3段ラフィネート、R11:抽出2段ラフィネート、R12:抽出1段ラフィネート
【0179】
上記表15は、廃硫酸バナジウム水浸出液を15%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の抽出率である。
【0180】
前記15%にケン化した0.7MのD2EHPAを用いて、向流3段謀議抽出実験を行ったとき、最終ラフィネートのpH2以上におけるV抽出率が99%以上に到逹することが確認できた。このとき、Vのみならず、Fe、Ca、Al、Tiも全量抽出された。その他、Siは1.6%、Kは0.1%抽出されて、Csは、全く抽出されていない。
【0181】
<実施例4>バナジウム有機抽出液におけるバナジウムの選択的回収
上記実施例2のバナジウム有機抽出液にアルカリ水溶液を投入して、バナジウムを選択的に回収した。
【0182】
ここで、廃硫酸バナジウム水浸出液を15%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒、向流3段謀議抽出実験、O/A=1.5、攪拌速度250~500rpmで、有機溶媒抽出した際の有機相の組成は、下記の表16に示した。
【0183】
【0184】
上記表16を参照すると、15%にケン化した0.7MのD2EHPA有機溶媒を用いて、向流3段抽出をO/A=1.5で行った後、獲得した有機相内には、2330mg/LのV、87mg/LのFe、220mg/LのCa、0.1mg/LのSi、127mg/LのAlが含有されていた。
【0185】
〔バナジウム有機抽出液に0.1M、0.3M、0.5M、0.7M、1Mの(NH4)2CO3アルカリ水溶液、O/A=1で、バナジウムを選択的に回収した際の金属イオンの脱去率〕
(NH4)2CO3アルカリ水溶液を用いて、上記実施例2のバナジウム有機抽出液からVを選択的に脱去するための実験を行った。
【0186】
(NH4)2CO3の濃度範囲は、0.1mol/L、0.3mol/L、0.5mol/L、0.7mol/L、1mol/Lに適用して行っており、O/A=1の条件で実験を行った。
【0187】
0.1mol/L、0.3mol/L、0.5mol/Lの(NH4)2CO3では、3相が形成されて、相分離が円滑に行われておらず、それよりも高い濃度である0.7mol/Lの(NH4)2CO3からは、更に相分離が生じることが確認できた。
【0188】
回収できる水溶液を得て分析した結果を下記の表17に示した。
【0189】
【0190】
上記表17は、上記実施例2のバナジウム有機抽出液に0.1M、0.3M、0.5M、0.7M、1Mの(NH4)2CO3アルカリ水溶液をO/A=1にそれぞれ投入して、バナジウムを選択的に回収した際の金属イオンの脱去率である。
【0191】
前記0.1mol/Lの(NH4)2CO3を用いて脱去したときは、12.9%のVが脱去され、0.7mol/Lの(NH4)2CO3を用いたときは、91.3%、そして、1mol/Lの(NH4)2CO3を用いたときは、99.9%のVが脱去された。このとき、他の不純物であるFe、Ca、Si、Alは分析されていない。すなわち、(NH4)2CO3を用いて、Vを選択的に脱去することができた。
【0192】
〔バナジウム有機抽出液に1Mの(NH4)2CO3アルカリ水溶液、O/A=1、1.5、2、3におけるバナジウムを選択的に回収した際の金属イオンの脱去率〕
【0193】
【0194】
上記表18は、上記実施例2のバナジウム有機抽出液に1Mの(NH4)2CO3アルカリ水溶液をO/A=1、1.5、2、3にそれぞれ投入して、バナジウムを選択的に回収した際の金属イオンの脱去率である。
【0195】
前記O/A割合が増加するほど、Vの脱去効率は低くなった。O/A割合が1、1.5、及び2であるとき、Vの脱去効率は、それぞれ99.9%、82%、及び73.3%であり、O/A割合が3であるときは、3相が形成された。これによって、バナジウム有機抽出液(loaded organic)からVを選択的に脱去するための条件として、1Mの(NH4)2CO3、O/A=1の条件を選択した。
【0196】
図3a~
図3eは、本発明の一実施例による有機溶媒抽出工程における有価金属のMass Balanceデータである。
【0197】
図3a~
図3eを参照すると、15%にケン化した0.7MのD2EHPA、O/A=1.5において、1Mの(NH
4)
2CO
3アルカリ水溶液をO/A=1に投入して脱去したとき、金属イオンの抽出量は、バナジウムが2,333mg/Lであり、鉄、カルシウム、アルミニウム、シリコン、チタニウム、ソジウム、セシウム、カリウムは、いずれも0mg/Lであって、バナジウムとその他有価金属とが分離して回収されることが確認できた。
【0198】
<実施例5>Csを含有したラフィネートからCsAl(SO4)2沈殿
上記実施例3の15%にケン化した0.7MのD2EHPAを用いて、廃硫酸バナジウム触媒の水浸出液から溶媒抽出によってバナジウムを99%以上抽出して残ったラフィネートの組成を下記の表19に示した。
【0199】
【0200】
上記表19は、実施例3の15%にケン化した0.7MのD2EHPAを用いて、廃硫酸バナジウム触媒の水浸出液から溶媒抽出によってバナジウムを99%以上抽出して残ったラフィネートの組成である。
【0201】
前記向流3段抽出後に発生したラフィネート内には、18.3mg/LのV、12.2mg/LのSi、5250mg/LのNa、2600mg/LのCs、6480mg/LのKが含有されている。このとき、V抽出率は、約99.5%であった。ここで獲得したラフィネートからCsをセシウムミョウバンであるCsAl(SO4)2形態に沈殿させるための実験を下記のように行った。
【0202】
セシウムミョウバン(cesium alum)は、低い温度で水に対する溶解度が非常に低い特性を有している。これによって、Csを含有しているラフィネートから放射性物質であるCsを沈殿させることができる。
【0203】
ラフィネート(raffinate)水溶液に含有されているCs+とAl2(SO4)3の反応式を下記に示した。
【0204】
Cs2SO4(aq)+Al2(SO4)3(aq)+24H2O(l)=2CsAl(SO4)2*12H2O(s)
(△G=-11.751kcal at 30℃) ----(反応式1)
【0205】
〔冷却温度8℃におけるAl2(SO4)3*13-14H2Oの添加による金属イオンの沈殿効率〕
セシウムミョウバン沈殿反応により、先ず、Csが含有されている前記ラフィネート(raffinate)水溶液100mLをウォータージャケット反応器に投入し、CsAl(SO4)2沈殿反応をより促進させるために、ラフィネート(raffinate)水溶液100mLに1gのAl2(SO4)3・13-14H2O試薬を添加した。
【0206】
そして、Cs+とAl2(SO4)3の活発な反応のため、80℃で、1時間、マグネチックバーを用いて、200rpmで攪拌した。80℃の条件で、1時間反応させた後、セシウムミョウバン(cesium alum)であるCsAl(SO4)2を沈殿させるために、恒温冷却装置を用いて水溶液を8℃に冷却した。ここで、マグネチックバーを用いて攪拌しており、攪拌速度を80rpmにして、5時間反応を実施し、その結果を下記の表20に示した。
【0207】
【0208】
上記表20は、冷却温度8℃におけるAl2(SO4)3*13-14H2Oの添加による金属イオンの沈殿効率である。
【0209】
上記表20を検討すると、Csが選択的に沈殿され、その効率は、約64%であった。ここで、Csの沈殿効率をより向上させるために、Al2(SO4)3*13-14H2Oの添加量を最大5gまでに増加し、セシウムミョウバン(cesium alum)の溶解度をより減少するために、冷却温度を5℃とより低くして、沈殿実験を行った。
【0210】
〔冷却温度5℃におけるAl2(SO4)3*13-14H2Oの添加量による金属イオンの沈殿効率〕
【0211】
【0212】
上記表21は、冷却温度5℃におけるAl2(SO4)3*13-14H2Oの添加量による金属イオンの沈殿効率である。
【0213】
上記表21を検討すると、冷却温度が5℃であるとき、Al2(SO4)3*13-14H2Oの添加量が1g/100mL、2g/100mL、3g/100mL、及び5g/100mLであるとき、Csの沈殿効率は、それぞれ63%、96.3%、98.5%、及び98.7%であった。Al2(SO4)3*13-14H2Oの添加量が増加しても、セシウムミョウバン(cesium alum)自体の溶解度によってそれ以上沈殿効率が増加しないことが確認された。
【0214】
図4は、上記実施例5によるセシウムミョウバンのXRD結晶構造分析グラフである。
【0215】
図4では、Al
2(SO
4)
3*13-14H
2Oを2g添加した際に発生した沈殿物のXRD分析の結果を示した。
【0216】
図4を参照すると、Csが含有されている前記ラフィネート水溶液にAl
2(SO
4)
3の添加によって形成された沈殿物は、セシウムミョウバンであるCsAl(SO
4)
2*12H
2Oであることが確認できた。
【0217】
該沈殿物0.5gを王水に溶解した後、50mL体積のフラスコに希釈しており、純度を調べるために、不純物を分析した結果を下記の表22に示した。
【0218】
【0219】
上記表22は、沈殿物0.5gを王水に溶解した後、不純物を分析してみた結果である。
【0220】
上記表22を検討すると、セシウムミョウバンであるCsAl(SO4)2*12H2Oを王水に溶解した後、水溶液内には34.5mg/LのNa、41.9mg/LのK、12mg/LのVが含有されていた。
【0221】
セシウムミョウバンの結晶構造を構成しているCs、Alを除く他の不純物の組成をwt%に換算して足すと、0.884%であり、セシウムミョウバンCsAl(SO4)2*12H2Oの純度は、約99.1%と言える。
【0222】
廃硫酸バナジウム触媒から回収したセシウムミョウバン(cesium alum;CsAl(SO4)2)を直接活用するか、これを水浸出を含む製錬工程によってCs2SO4形態に転換した後、目的によって様々な化合物に製造することができるため、様々な産業界分野に適用することができる。
【0223】
今まで本発明による廃硫酸バナジウム触媒からのバナジウム及びセシウムの選択的回収方法に関する具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から外れない限度内では、様々な実施変形が可能であることは自明である。
【0224】
よって、本発明の範囲は、説明した実施例に限って定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等なものなどによって定めらなければならない。
【0225】
すなわち、前述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から想到するあらゆる変更又は変形形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【要約】 (修正有)
【課題】廃棄物処理コストが節減され、回収コストも節減される、廃硫酸バナジウム触媒からバナジウムとセシウムを選択的に回収する方法と、これによって製造された高品位のバナジウム水溶液とセシウムミョウバンを提供する。
【解決手段】廃硫酸バナジウム触媒から水浸出、固液分離、バナジウム溶媒抽出、バナジウムの選択的脱去、及びセシウムミョウバンの製造を含む湿式製錬法によりバナジウムとセシウムを選択的に回収する方法と、これによって製造された高品位のバナジウム水溶液とセシウムミョウバンを提供する。
【選択図】
図1