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特許7222152圧延装置の制御装置及び圧延設備並びに圧延装置の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】圧延装置の制御装置及び圧延設備並びに圧延装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/00 20060101AFI20230207BHJP
   B21B 37/48 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
B21B37/00 300
B21B37/48 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022542537
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 JP2020030695
(87)【国際公開番号】W WO2022034654
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 陽一
(72)【発明者】
【氏名】小田原 優太
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-200904(JP,A)
【文献】特開2006-224119(JP,A)
【文献】特開2000-171411(JP,A)
【文献】特開2019-111571(JP,A)
【文献】特表2009-512559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00-37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を圧延するための少なくとも1つの圧延スタンドを備えた圧延装置の制御装置であって、
前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れの検出信号をエッジ割れセンサから受け取るための検出信号取得部と、
前記圧延装置の圧延条件を決定するための圧延条件決定部と、
を備え、
前記圧延条件決定部は、前記検出信号取得部において前記エッジ割れの検出信号を受け取ったとき、前記圧延装置の圧延条件を、前記エッジ割れが検出される直前の第1圧延条件から、前記第1圧延条件よりも前記エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更するように構成され
前記圧延条件決定部は、前記検出信号取得部において前記エッジ割れの検出信号を受け取った後、少なくとも、前記金属板のうち前記エッジ割れを含む部位が前記圧延装置の巻取機で巻取られるまでの間、前記圧延装置の圧延条件を前記第2圧延条件に維持するように構成され、
前記圧延条件決定部は、前記金属板のうち前記エッジ割れを含む前記部位が前記巻取機で巻取られたら、前記圧延装置での圧延条件を前記第1圧延条件に戻すように構成された
圧延装置の制御装置。
【請求項2】
前記圧延条件決定部は、前記第2圧延条件での前記圧延装置の運転中、前記金属板の進行速度を、前記第1圧延条件での前記金属板の進行速度よりも小さくするように構成された
請求項1に記載の圧延装置の制御装置。
【請求項3】
前記圧延条件決定部は、前記第2圧延条件での前記圧延装置の運転中、前記金属板の板幅方向端部における張力を、前記第1圧延条件での前記張力よりも小さくするように構成された
請求項1又は2に記載の圧延装置の制御装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの圧延スタンドは、前記金属板の進行方向において前記エッジ割れの検出位置よりも上流側に設けられる上流側スタンドを含む
請求項1乃至の何れか一項に記載の圧延装置の制御装置。
【請求項5】
金属板を圧延するための少なくとも1つの圧延スタンドを備えた圧延装置の制御装置であって、
前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れの検出信号をエッジ割れセンサから受け取るための検出信号取得部と、
前記圧延装置の圧延条件を決定するための圧延条件決定部と、
を備え、
前記圧延条件決定部は、前記検出信号取得部において前記エッジ割れの検出信号を受け取ったとき、前記圧延装置の圧延条件を、前記エッジ割れが検出される直前の第1圧延条件から、前記第1圧延条件よりも前記エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更するように構成され、
前記少なくとも1つの圧延スタンドは、前記金属板の進行方向において前記エッジ割れの検出位置よりも上流側に設けられる上流側スタンドを含み、
前記少なくとも1つの圧延スタンドは、前記進行方向において前記エッジ割れの前記検出位置よりも下流側に設けられる下流側スタンドを含み、
前記圧延条件決定部は、前記第2圧延条件での前記圧延装置の運転中、
前記エッジ割れが前記下流側スタンドを通過するまでは、前記上流側スタンドと前記下流側スタンドの間の領域における前記金属板の板幅方向端部の張力を前記第1圧延条件での前記張力よりも小さくし、
前記エッジ割れが前記下流側スタンドを通過したら、前記領域における前記張力を前記第1圧延条件での前記張力に戻す
ように構成され
延装置の制御装置。
【請求項6】
前記圧延装置は、前記金属板の圧延を複数パス行うように構成され、
前記圧延条件決定部は、前記圧延装置での圧延中に前記エッジ割れセンサから受け取った検出結果に基づいて、前記金属板の前記圧延装置による次パス以降の圧延条件を決定するように構成された
請求項1乃至の何れか一項に記載の圧延装置の制御装置。
【請求項7】
前記圧延条件決定部は、前記エッジ割れセンサにより検出される前記金属板のエッジ割れのサイズに基づいて、前記金属板の前記圧延装置による次パスの圧延を行うか否かを決定するように構成された
請求項に記載の圧延装置の制御装置。
【請求項8】
前記圧延条件決定部は、前記エッジ割れセンサにより検出される前記金属板のエッジ割れの前記金属板の長手方向における位置に基づいて、前記金属板の前記圧延装置による次パスの圧延中における圧延条件変更のタイミングを決定するように構成された
請求項に記載の圧延装置の制御装置。
【請求項9】
金属板を圧延するための少なくとも1つの圧延スタンドを含む圧延装置と、
前記圧延装置での圧延中に前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れを検出するように構成されたエッジ割れセンサと、
前記エッジ割れセンサからの検出信号に基づいて、前記圧延装置を制御するように構成された請求項1乃至の何れか一項に記載の制御装置と、
を備える圧延設備。
【請求項10】
前記エッジ割れセンサは、
前記金属板の端部に向けて放射線を発生するように構成された放射線発生部と、
前記金属板を挟んで前記放射線発生部とは反対側に設けられ、前記放射線発生部からの前記放射線を受けるように構成された放射線検出部と、を含む
請求項に記載の圧延設備。
【請求項11】
少なくとも1つの圧延スタンドを含む圧延装置の運転方法であって、
前記圧延装置により金属板を圧延するステップと、
前記圧延装置での圧延中に前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れを検出するステップと、
前記金属板のエッジ割れが検出されたとき、前記圧延装置の圧延条件を、前記エッジ割れが検出される直前の第1圧延条件から、前記第1圧延条件よりも前記エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更するステップと、
前記エッジ割れが検出された後、少なくとも、前記金属板のうち前記エッジ割れを含む部位が前記圧延装置の巻取機で巻取られるまでの間、前記圧延装置の圧延条件を前記第2圧延条件に維持するステップと、
前記金属板のうち前記エッジ割れを含む前記部位が前記巻取機で巻取られたら、前記圧延装置での圧延条件を前記第1圧延条件に戻すステップと、
を備える
圧延装置の運転方法。
【請求項12】
少なくとも1つの圧延スタンドを含む圧延装置の運転方法であって、
前記圧延装置により金属板を圧延するステップと、
前記圧延装置での圧延中に前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れを検出するステップと、
前記金属板のエッジ割れが検出されたとき、前記圧延装置の圧延条件を、前記エッジ割れが検出される直前の第1圧延条件から、前記第1圧延条件よりも前記エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更するステップと、
を備え、
前記少なくとも1つの圧延スタンドは、前記金属板の進行方向において前記エッジ割れの検出位置よりも上流側に設けられる上流側スタンドを含み、
前記少なくとも1つの圧延スタンドは、前記進行方向において前記エッジ割れの前記検出位置よりも下流側に設けられる下流側スタンドを含み、
前記第2圧延条件での前記圧延装置の運転中、
前記エッジ割れが前記下流側スタンドを通過するまでは、前記上流側スタンドと前記下流側スタンドの間の領域における前記金属板の板幅方向端部の張力を前記第1圧延条件での前記張力よりも小さくし、
前記エッジ割れが前記下流側スタンドを通過したら、前記領域における前記張力を前記第1圧延条件での前記張力に戻す
ステップを備える
圧延装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧延装置の制御装置及び圧延設備並びに圧延装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板の製造プロセスにおいて、金属板の板幅方向端部にエッジ割れが生じることがある。エッジ割れが拡大すると板破断に至る可能性があるため、エッジ割れを適切に検出する必要がある。
【0003】
特許文献1には、圧延プロセスラインの出側に設置したエッジプロフィール計を用いて鋼板のエッジ割れを検出する方法が開示されている。これにより、圧延プロセスラインよりも下流の加工処理工程(例えば連続焼鈍工程)での板破断を防ぐようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-89809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属板の圧延中にもエッジ割れは拡大し、板破断が生じやすい状態になり得る。この点、特許文献1に記載される方法では、圧延ラインでエッジ割れを検出するのみであり、したがって、圧延中におけるエッジ割れの拡大やこれに起因する板破断を抑制することはできない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、圧延中のエッジ割れの拡大を抑制可能な圧延装置の制御装置及び圧延設備並びに圧延装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延装置の制御装置は、
金属板を圧延するための少なくとも1つの圧延スタンドを備えた圧延装置の制御装置であって、
前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れの検出信号をエッジ割れセンサから受け取るための検出信号取得部と、
前記圧延装置の圧延条件を決定するための圧延条件決定部と、
を備え、
前記圧延条件決定部は、前記検出信号取得部において前記エッジ割れの検出信号を受け取ったとき、前記圧延装置の圧延条件を、前記エッジ割れが検出される直前の第1圧延条件から、前記第1圧延条件よりも前記エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更するように構成される。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延設備は、
金属板を圧延するための少なくとも1つの圧延スタンドを含む圧延装置と、
前記圧延装置での圧延中に前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れを検出するように構成されたエッジ割れセンサと、
前記エッジ割れセンサからの検出信号に基づいて、前記圧延装置を制御するように構成された上述の制御装置と、
を備える。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延装置の運転方法は、
少なくとも1つの圧延スタンドを含む圧延装置の運転方法であって、
前記圧延装置により金属板を圧延するステップと、
前記圧延装置での圧延中に前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れを検出するステップと、
前記金属板のエッジ割れが検出されたとき、前記圧延装置の圧延条件を、前記エッジ割れが検出される直前の第1圧延条件から、前記第1圧延条件よりも前記エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、圧延中のエッジ割れの拡大を抑制可能な圧延装置の制御装置及び圧延設備並びに圧延装置の運転方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る制御装置を備えた圧延設備の概略構成図である。
図2】一実施形態に係る制御装置を備えた圧延設備の概略構成図である。
図3】一実施形態に係る制御装置を備えた圧延設備の概略構成図である。
図4】金属板に生じるエッジ割れを模式的に示す図である。
図5】一実施形態に係る制御装置の概略構成図である。
図6】一実施形態に係る圧延装置の運転方法のフローチャートである。
図7図6に示すステップS200~S300のフローの一例である。
図8】一実施形態に係る圧延装置の運転方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
(圧延設備の構成)
まず、幾つかの実施形態に係る制御装置を含む圧延設備の全体構成について説明する。 図1図3は、それぞれ、一実施形態に係る制御装置を備えた圧延設備の概略構成図である。図1図3に示すように、圧延設備1は、金属板Sを圧延するように構成された圧延装置2と、金属板Sのエッジ割れを検出するためのエッジ割れセンサ30と、エッジ割れセンサ30からの検出信号に基づいて圧延装置2を制御するための制御装置50と、を備えている。
【0014】
圧延装置2は、金属板Sを圧延するための少なくとも1つの圧延スタンド10を含む。圧延装置2は、例えば図1に示すように1台の圧延スタンド10を含んでいてもよく、あるいは、例えば図2又は図3に示すように、複数の圧延スタンド10を含んでいてもよい。なお、図2に示す例示的な実施形態では、圧延装置2は、圧延スタンド10A,10Bを含む2台の圧延スタンド10を含む。また、図3に示す例示的な実施形態では、圧延装置2は、圧延スタンド10A~10Dを含む4台の圧延スタンド10を含む。
【0015】
圧延スタンド10の各々は、圧延材料である金属板Sを挟むように設けられる一対の圧延ロール(ワークロール)15,16と、一対の圧延ロール15,16をそれぞれ挟んで、金属板Sとはそれぞれ反対側に設けられる一対の中間ロール17,18及び一対のバックアップロール19,20と、を含む。中間ロール17,18及びバックアップロール19,20は、圧延ロール15,16を支持するように構成されている。また、圧延スタンド10は、一対の圧延ロール15,16に荷重を加えて金属板Sを圧下するための圧下装置22(22A~22D)を備えている。圧下装置22は、油圧シリンダを含んでいてもよい。
【0016】
圧延ロール15,16には、スピンドル(不図示)等を介してモータ11(11A~11D)が接続されており、圧延ロール15,16は、モータ11によって回転駆動されるようになっている。金属板Sの圧延時には、圧下装置22で金属板Sを圧下しながらモータにより圧延ロール15,16を回転させることで、圧延ロール15,16と金属板Sとの間に摩擦力が生じ、この摩擦力によって金属板Sが圧延ロール15,16の出側へと送られる。
【0017】
圧延装置2は、圧延スタンド10に向けて金属板Sのコイルを巻き出すための巻出し機4と、圧延スタンド10からの金属板Sを巻き取るための巻取機14と、を含む。巻出し機4及び巻取機14は、それぞれモータ(不図示)により駆動されるようになっている。圧延スタンド10と巻出し機4との間には、巻出し機4から圧延スタンド10に導入される金属板Sをガイドするための入側ピンチロール6が設けられていてもよい。圧延スタンド10と巻取機との間には、圧延スタンド10から巻取機に向かう金属板Sをガイドするための出側ピンチロール12が設けられていてもよい。なお、図3において、巻出し機4、巻取機14、入側ピンチロール6及び出側ピンチロール12の図示は省略されている。
【0018】
圧延装置2は、一対の圧延ロール15,16間に通された金属板Sを往復させて圧延させる圧延装置(リバースミル)であってもよい。すなわち、リバースミルとしての圧延装置2は、金属板Sの圧延を複数パス行うように構成される。リバースミルを用いる場合、奇数回目(1パス目等)の圧延では、巻出し機4から金属板Sを巻出すとともに、巻取機14で金属板Sを巻取りながら圧延を行う。そして、巻出し機4から巻き出される金属板Sの尾端直前で圧延を止め、金属板Sが圧延ロール15,16に圧下された状態で奇数回目(1パス目等)の圧延を完了する。次に、巻取機14から金属板Sを圧延スタンド10に向けて巻き出すとともに、巻出し機4で金属板Sを巻き取りながら、先ほどとは逆の進行方向に金属板Sを進行させて偶数回目(2パス目等)の圧延を行う。すなわち、金属板Sの進行方向に応じて、巻出し機4の役割と巻取機14の役割とが入れ替わるようになっている。なお、図1及び図2に示す圧延装置2はリバースミルである。
【0019】
あるいは、圧延装置2は、一対の圧延ロール15,16間に通された金属板Sを一方向に進行させながら圧延を行うように構成されていてもよい。なお、図3に示す圧延装置は、金属板Sを一方向に進行させながら圧延を行うように構成されたタンデム型圧延装置である。
【0020】
エッジ割れセンサ30は、金属板Sの板幅方向(進行方向に略直交する方向)の端部(以下、単に端部という。)におけるエッジ割れを検出するように構成される。エッジ割れセンサは30による検出信号(エッジ割れの有無を示す信号)は、制御装置50に送られるようになっている。
【0021】
ここで、図4は、金属板Sに生じるエッジ割れ(図4中の斜線部)を模式的に示す図である。図4に示すように、エッジ割れ90は、金属板S板幅方向の端部に生じる欠陥である。エッジ割れ90は、通常、金属板Sの板端Eから板幅方向の内側に向かって凹む形状を有する。
【0022】
幾つかの実施形態では、エッジ割れセンサ30は、金属板Sの進行方向において、圧延スタンド10のうちいずれかの下流側に設けられる。図1図3に示す例示的な実施形態では、圧延装置2に含まれる圧延スタンド10(10A~10D)のうち、最も上流側に位置する圧延スタンド10(図2図3では圧延スタンド10A)の下流側にエッジ割れセンサ30が設けられる。ここで、エッジ割れセンサ30の上流側に位置する圧延スタンド10(図1の圧延スタンド10、図2図3の圧延スタンド10A)は上流側スタンド7である。
【0023】
幾つかの実施形態では、エッジ割れセンサ30は、金属板Sの進行方向において、一対の圧延スタンド10の間に設けられる。例えば図2及び図3に示す例示的な実施形態では、金属板Sの進行方向において、最も上流側に位置する圧延スタンド10Aと、その隣の圧延スタンド10Bとの間にエッジ割れセンサ30が設けられている。ここで、エッジ割れセンサ30の下流側に位置する圧延スタンド10(図2図3の圧延スタンド10B)は下流側スタンド9である。
【0024】
なお、エッジ割れセンサ30を設ける位置やエッジ割れセンサ30の個数は、図1図3に示すものに限定されない。例えば、幾つかの実施形態では、エッジ割れセンサ30は、金属板Sの進行方向において、圧延スタンド10のうちいずれかの上流側に設けられていてもよい。また、幾つかの実施形態では、圧延装置2に対してエッジ割れセンサ30を複数設けてもよい。
【0025】
例えば、図1に示す圧延装置2において、図示するエッジ割れセンサ30に加え、圧延スタンド10の上流側に別のエッジ割れセンサ30を設けてもよい。また、図2に示す圧延装置2において、図示するエッジ割れセンサ30に加え、圧延スタンド10Aの上流側及び/又は圧延スタンド10Bの下流側にエッジ割れセンサ30を設けてもよい。また、図3に示す圧延装置2において、圧延スタンド10Bと圧延スタンド10Cとの間、及び/又は圧延スタンド10Cと圧延スタンド10Dとの間にエッジ割れセンサ30を設けてもよい。
【0026】
幾つかの実施形態では、エッジ割れセンサ30は、放射線(X線等)を用いてエッジ割れを検出するように構成される。図1~3に示す例示的な実施形態では、エッジ割れセンサ30は、金属板Sの板幅方向の端部に向けて放射線を発生するように構成された放射線発生部32と、金属板Sを挟んで放射線発生部32とは反対側に設けられ、放射線発生部32からの放射線を受けるように構成された放射線検出部34と、を含む。このエッジ割れセンサ30は、放射線検出部34が放射線を受ける板幅方向の範囲に基づいて、エッジ割れを検出するように構成される。
【0027】
一実施形態では、放射線検出部34は、放射線を受光すると信号を出力する半導体素子を含む。この場合、半導体素子は小型化が容易であるため、例えばガスチャンバを構成要素とする放射線検出器等に比べ、エッジ割れセンサ30を小型化することができるとともに、比較的小さなエッジ割れであっても検出することができる。
【0028】
上述の半導体素子は、CdTe(カドミウムテルライド)系半導体素子であってもよい。CdTe系半導体素子は高い分解能を有するため、比較的小さなエッジ割れであっても適切に検出しやすい。
【0029】
図5は、一実施形態に係る制御装置50の概略構成図である。制御装置50は、エッジ割れセンサ30からの検出信号を受け取り、該検出信号に基づいて、圧延装置2の運転を制御するように構成される。図5に示すように、制御装置50は、検出信号取得部52と、圧延条件決定部54と、制御部56と、を含む。
【0030】
制御装置50は、プロセッサ(CPU等)、記憶装置(メモリデバイス;RAM等)、補助記憶部及びインターフェース等を備えた計算機を含む。制御装置50は、インターフェースを介して、エッジ割れセンサ30からの検出信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、記憶装置に展開されるプログラムを処理するように構成される。これにより、上述の各機能部(圧延条件決定部54等)の機能が実現される。
【0031】
制御装置50での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装される。プログラムは、補助記憶部に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムは記憶装置に展開される。プロセッサは、記憶装置からプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0032】
検出信号取得部52は、エッジ割れセンサ30からの検出信号(エッジ割れの有無を示す信号)を受け取るように構成される。
【0033】
圧延条件決定部54は、検出信号取得部52が受け取った検出信号に基づいて、圧延装置2の圧延条件を決定するように構成される。ここで、圧延条件とは、金属板Sの進行速度又は金属板Sの張力を含んでいてもよい。
【0034】
制御部56は、圧延条件決定部54により決定された圧延条件が実現されるように、圧延装置2の運転を制御するように構成される。制御部56は、上述の圧延条件が実現されるように、圧延スタンド10(10A~10D)に対応して設けられるモータ11(11A~11D)、ロールベンダ23(23A~23D)(図1図3において不図示)、ヒータ24(24A~24D)又はシフトシリンダ26(26A~26D)(図1図3において不図示)の動作を制御するように構成されていてもよい。
【0035】
なお、ロールベンダ23は、圧延ロール15,16の軸方向の端部を上下方向に押して、圧延ロール15,16を曲げ変形させるように構成される。このように圧延ロール15,16を変形させて圧延中の金属板Sの端部を圧縮すると、材料が伸び、金属板Sの端部の張力が低減する。ロールベンダ23は、圧延ロール15,16の端部を上下方向に押すことが可能な油圧シリンダを含んでいてもよい。
【0036】
ヒータ24は、圧延中の金属板Sの端部を加熱するように構成される。このように金属板Sの端部を加熱すると、金属板Sの端部の温度が上がって材料が伸び、金属板Sの端部の張力が低減する。ヒータ24は、金属板Sの端部の近傍に設けられ、金属板Sの端部を加熱するように構成されていてもよい。あるいは、ヒータ24は、圧延ロール15,16の端部の近傍に設けられ、圧延ロール15,16の端部を加熱することで、圧延ロール15,16により圧延される金属板Sの端部を間接的に加熱するように構成されていてもよい。ヒータ24は、電磁誘導コイル、熱媒体又はレーザビームを用いて金属板Sの端部を加熱するように構成されていてもよい。
【0037】
シフトシリンダ26は、圧延ロール15,16を軸方向にシフトさせるように構成される。この場合、圧延ロール15,16は、軸方向の端部において、軸方向端に近づくに従い先細る形状のテーパ部を有する。このようにテーパ部を有する圧延ロール15,16を軸方向の外側に向けてシフトさせることにより、金属板Sの端部における張力を緩和させることができる。シフトシリンダ26は、圧延ロール15,16を軸方向に動かすことが可能な油圧シリンダを含んでいてもよい。
【0038】
(圧延装置の運転方法のフロー)
以下、幾つかの実施形態に係る圧延装置の運転方法について説明する。なお、以下において、上述の制御装置50を用いて一実施形態に係る圧延装置の運転を制御する場合について説明するが、幾つかの実施形態では、他の装置を用いて圧延装置を運転してもよい。あるいは、幾つかの実施形態では、以下に説明する運転方法の一部又は全部をオペレータの操作によって行ってもよい。
【0039】
図6は、一実施形態に係る圧延装置の運転方法のフローチャートである。図6のフローチャートに係る実施形態では、まず、第1圧延条件で圧延装置2を運転して、金属板Sの圧延を行う(S100)。第1圧延条件での運転中、進行方向における金属板Sの速度(進行速度)、及び、金属板Sの端部における張力は、それぞれ、所定の範囲内である。すなわち、ステップS100では、圧延条件決定部54は、圧延装置2の圧延条件を第1圧延条件に設定し、制御部56は、第1圧延条件(金属板Sの速度及び端部の張力)での運転が実現されるように、圧延装置2のモータ11等の動作を制御する。
【0040】
次に、エッジ割れセンサ30を用いて、金属板Sのエッジ割れを検出する(S200)。ステップS200では、図1図3に示すように、何れかの圧延スタンド10(図1の圧延スタンド10、図2及び図3の圧延スタンド10A;すなわち上流側スタンド7)の下流側に設けられるエッジ割れセンサ30を用いてエッジ割れを検出してもよい。この場合、上流側スタンド7を通過することによりある程度拡大したエッジ割れを検出するので、エッジ割れをより確実に検出することができる。
【0041】
エッジ割れセンサ30によってエッジ割れが検出されない間は(S200でNo)、第1圧延条件での運転(S100)を継続する。ステップS200でエッジ割れが検出されたら(すなわち、検出信号取得部52が検出信号を受け取ったら;S200でYes)、圧延装置2の運転条件を、第1圧延条件から、エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更する(S300)。
【0042】
すなわち、ステップS300では、圧延条件決定部54は、圧延装置2の圧延条件を第2圧延条件に設定する。そして、制御部56は、第2圧延条件(金属板Sの速度及び端部の張力)での運転が実現されるように、圧延装置2の動作を制御する。このように、金属板Sの板幅方向端部におけるエッジ割れが検出されたとき、圧延装置2の圧延条件を、エッジ割れの拡大を抑制可能な圧延条件(第2圧延条件)に変更することで、圧延中のエッジ割れの拡大や、これに起因する板破断を抑制することができる。
【0043】
一実施形態では、ステップS300における第2圧延条件での圧延装置2の運転中、金属板Sの端部における張力が、第1圧延条件での金属板Sの端部における張力(ステップS100での張力)よりも小さくなるように圧延装置2を制御する。具体的には、制御部56により、圧延スタンド10に対応して設けられるロールベンダ23、ヒータ24又はシフトシリンダ26を、所望の張力が得られるように操作する。このように、ステップS300にて、第1圧延条件での運転中よりも金属板Sの板幅方向端部における張力を小さくすることにより、圧延中におけるエッジ割れの拡大を効果的に抑制することができる。
【0044】
あるいは、一実施形態では、ステップS300における第2圧延条件での圧延装置2の運転中、金属板の進行速度が、第1圧延条件での金属板Sの進行速度(ステップS100での進行速度)よりも小さくなるように圧延装置2を制御する。具体的には、制御部56により、所望の進行速度となるように、圧延スタンド10のモータ11を制御する。このように、ステップS300にて、第1圧延条件での運転中よりも、金属板Sの進行速度を小さくすることにより、仮に、圧延中にエッジ割れに起因した板破断が起きた場合であっても、周囲の機器等へのダメージを軽減することができる。
【0045】
次に、エッジ割れ部が巻取機14で巻き取られたか否かを判定する(S400)。ここで、エッジ割れ部が巻取機14で巻き取られるとは、エッジ割れ部が巻取機14で1周巻かれることを意味する。
【0046】
ステップS400では、エッジ割れ部の位置を計算で求め、この計算結果に基づいて、エッジ割れ部が巻取機14で巻き取られたか否かを判定してもよい。エッジ割れ部の位置は、例えば、検出信号取得部52がエッジ割れセンサ30からの検出信号(エッジ割れの存在を示す検出信号)を受け取った時刻からの時間の長さ、金属板Sの速度、エッジ割れセンサ30と巻取機14との間の距離、及び、巻取機14のマンドレル直径等に基づいて算出してもよい。あるいは、ステップS400では、巻取機14の近傍に設けられるカメラ等の撮像装置を用いて、巻取機14に巻き取られる金属板Sを撮像することで、エッジ割れ部が巻取機14で巻き取られたか否かを判定してもよい。
【0047】
ステップS400で、エッジ割れ部が巻取機で巻き取られたと判定されない間は(S400でNo)、第2圧延条件での運転(S300)を継続する。ステップS400でエッジ割れ部が巻取機で巻き取られたと判定されたら(S400でYes)、圧延装置2の運転条件を第2圧延条件から第1圧延条件に戻して、圧延装置2の運転を行う(S100)。
【0048】
このように、エッジ割れが検出されたら、金属板Sのエッジ割れ部が巻取機14で巻き取られるまでの間は第2圧延条件での運転を維持することにより、検出されたエッジ割れが圧延中に拡大するのを効果的に抑制することができる。
【0049】
また、上述のように、エッジ割れ部が巻取機で巻き取られたら、圧延条件を第2圧延条件から第1圧延条件に戻すようにすることで、生産効率の低下を抑制しながら、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、複数の圧延スタンド10を含む圧延装置2の場合、ステップS200(図6参照)では、上流側スタンド7(図2及び図3の圧延スタンド10A)の下流側に位置するエッジ割れセンサ30を用いて、エッジ割れの検出を行う。エッジ割れセンサ30によりエッジ割れが検出されたら(S200でYes)、上述したように、圧延装置2の運転条件を、第1圧延条件から、エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更する(S300)。ステップS300での第2圧延条件での運転中、エッジ割れが下流側スタンド9(図2及び図3の圧延スタンド10B)を通過するまでは、上流側スタンド7と下流側スタンド9の間の領域における金属板Sの端部の張力を第1圧延条件での張力よりも小さくする。また、エッジ割れが下流側スタンド9を通過したら、上流側スタンド7と下流側スタンド9の間の領域における金属板Sの端部の張力を第1圧延条件での張力(ステップS100での張力)に戻す。
【0051】
上述の実施形態では、エッジ割れが検出されたら、エッジ割れ部が下流側スタンド9を通過するまでは、上流側スタンド7と下流側スタンド9との間の領域における板幅方向端部の張力を第1圧延条件での張力よりも小さくするようにしたので、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。また、エッジ割れ部が下流側スタンド9を通過したら、上流側スタンド7と下流側スタンド9との間の領域における板幅方向端部の張力を第1圧延条件での張力に戻すようにしたので、生産効率の低下を抑制しながら、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。
【0052】
図7は、複数の圧延スタンド10を含む圧延装置2(図2又は図3参照)についての、上述のステップS200~S300のフローの一例である。図7に示す実施形態では、ステップS200において、上流側スタンド7(図2及び図3の圧延スタンド10A)の下流側に位置するエッジ割れセンサ30によりエッジ割れが検出されたら(S202)、以下の手順でステップS300を行う。
【0053】
まず、上流側スタンド7(図2及び図3の圧延スタンド10A)よりも下流側の領域における金属板Sの端部の張力を下げる(S304)。具体的には、制御部56により、上流側スタンド7(圧延スタンド10A)、及び、これよりも下流側に位置する各圧延スタンド10(10B~10D)に対応して設けられるロールベンダ23、ヒータ24又はシフトシリンダ26を、隣り合う一対の圧延スタンド10間の各領域(例えば、圧延スタンド10Aと10Bの間の領域、または、圧延スタンド10Bと10Cの間の領域等)で、第1圧延条件での張力よりも小さい張力が得られるように操作する。
【0054】
次に、エッジ割れ部が、エッジ割れセンサ30の下流側の直後の圧延スタンド10(図2及び図3の圧延スタンド10B)を通過したら(S306でYes)、当該圧延スタンド10(圧延スタンド10B)と、その上流側に位置する圧延スタンド(圧延スタンド10A)との間の領域における金属板Sの端部の張力を、第1圧延条件と同じ張力に戻す(S308)。このように、エッジ割れ部が通過した圧延スタンド10と、その上流側の隣の圧延スタンド10との間の領域における金属板Sの端部の張力を元に戻す操作を、エッジ割れ部が最下流側の圧延スタンド10(最終スタンド;図2の圧延スタンド10B、図3の圧延スタンド10D)を通過するまで繰り返す(S310でNo、S312)。エッジ割れ部が最終スタンドを通過したら(S310でYes)、ステップS300を終了し、ステップS400(図6参照)に進む。
【0055】
上述の実施形態では、検出されたエッジ割れ部が下流側の圧延スタンド10を通過するまでは、当該圧延スタンド10と、その上流側の隣の圧延スタンド10との間の領域における金属板Sの端部の張力を第1圧延条件での張力よりも小さくするようにしたので、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。また、エッジ割れ部が下流側の圧延スタンド10を通過したら、該圧延スタンド10と、その上流側の隣の圧延スタンド10との間の領域における金属板Sの端部の張力を第1圧延条件での張力に戻すようにしたので、生産効率の低下を抑制しながら、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。
【0056】
圧延装置2が金属板Sの圧延を複数パス行うように構成されたリバースミル(図1及び図2参照)である場合、圧延条件決定部54は、圧延装置2での圧延中にエッジ割れセンサ30から受け取った検出結果に基づいて、金属板Sの圧延装置2による次パス以降の圧延条件を決定するようにしてもよい。
【0057】
このように、圧延中におけるエッジ割れセンサ30の検出結果に基づいて、次パス以降の圧延条件決定するようにすることで、次パス以降の圧延中におけるエッジ割れの拡大や板破断を抑制することができる。
【0058】
一実施形態では、圧延条件決定部54は、エッジ割れセンサ30により検出される金属板Sのエッジ割れのサイズに基づいて、金属板Sの圧延装置2による次パスの圧延を行うか否かを決定するように構成される。ここで、エッジ割れのサイズとは、金属板Sの板幅方向におけるエッジ割れ90の長さW(図4参照)、又は、金属板Sの長手方向(進行方向)におけるエッジ割れ90の長さL(図4参照)であってもよい。
【0059】
上述の実施形態では、検出されたエッジ割れのサイズに基づいて、次パスの圧延を行うか否かを決定するようにしたので、次パス以降の圧延中におけるエッジ割れの拡大や板破断を効果的に抑制することができる。
【0060】
一実施形態では、圧延条件決定部54は、エッジ割れセンサ30により検出される金属板Sの長手方向におけるエッジ割れの位置に基づいて、金属板Sの圧延装置2による次パスの圧延中における圧延条件変更のタイミングを決定するように構成される。
【0061】
上述の実施形態では、検出されたエッジ割れの金属板長手方向における位置に基づいて、次パスの圧延中における圧延条件変更のタイミングを決定するようにしたので、生産効率の低下を抑制しながら、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。
【0062】
図8は、一実施形態に係る圧延装置2の運転方法のフローチャートである。図8に示すフローチャートは、リバースミル(図1及び図2参照)を対象とするものである。この実施形態では、Mパス目の圧延中に、エッジ割れセンサ30によりエッジ割れが検出されたら(S502)、圧延条件決定部54は、検出されたエッジ割れのサイズに基づいて、次パス((M+1)パス目)の圧延が可能か否かを判定する(S504)。
【0063】
ステップS504において、例えばエッジ割れのサイズが規定値よりも大きければ、次パスの圧延は可能ではないと判断し(S504でNo)、金属板Sの圧延を停止する(S505)。一方、ステップS504において、例えばエッジ割れのサイズが規定値以下であれば、次パスの圧延は可能であると判断する(S504でYes)。
【0064】
次に、圧延条件決定部54は、次パス((M+1)パス目)の圧延においてパススケジュールを変更する(すなわち、目標板厚を変更する)必要があるか否かを判断する(S506)。ステップS506では、ステップS502で検出されたエッジ割れのサイズに基づいて上述の判断を行ってもよい。例えば、エッジ割れのサイズが規定値より大きい場合に、目標板厚を当初の予定よりも大きく設定する必要があると判断してもよい。あるいは、ステップS506では、エッジ割れに係る応力、又は、エッジ割れの形状に基づいて、パススケジュールの変更の要否を判断してもよい。ステップS506でパススケジュールを変更する必要があると判断された場合(S506でYes)、パススケジュールを変更する(すなわち、圧延装置2の目標板厚を変更する;ステップS508)。
【0065】
次に、圧延装置2によって、エッジ割れ部の位置をトラッキングしながら金属板Sの次パス((M+1)パス目)の圧延を行う(S510)。ステップS510では、例えば、ステップS502でのエッジ割れセンサ30での検出結果に基づいて、金属板Sの長手方向におけるエッジ割れの位置を算出する。そして、このように算出したエッジ割れの位置に基づいて、エッジ割れ部が巻出し機4から出発する時点の前後で圧延条件を変更するようにしてもよい。例えば、(M+1)パス目の圧延を開始する第1時点から、エッジ割れ部が巻出し機4から出発する第2時点までの期間に比べ、当該第2時点からエッジ割れ部が巻取機で巻き取られる第3時点までの期間では、金属板Sの端部の張力が小さくなるように、又は、金属板Sの進行速度が小さくなるようにしてもよい。
【0066】
このように、圧延装置2がリバースミルである場合に、圧延中におけるエッジ割れセンサ30の検出結果に基づいて次パス以降の圧延条件を決定することにより、次パス以降の圧延中におけるエッジ割れの拡大や板破断を効果的に抑制することができる。
【0067】
以下、幾つかの実施形態に係る圧延装置の制御装置及び圧延設備並びに圧延装置の運転方法について概要を記載する。
【0068】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延装置の制御装置は、
金属板を圧延するための少なくとも1つの圧延スタンドを備えた圧延装置の制御装置であって、
前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れの検出信号をエッジ割れセンサから受け取るための検出信号取得部と、
前記圧延装置の圧延条件を決定するための圧延条件決定部と、
を備え、
前記圧延条件決定部は、前記検出信号取得部において前記エッジ割れの検出信号を受け取ったとき、前記圧延装置の圧延条件を、前記エッジ割れが検出される直前の第1圧延条件から、前記第1圧延条件よりも前記エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更するように構成される。
【0069】
上記(1)の構成によれば、金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れが検出されたとき、圧延装置の圧延条件を、エッジ割れの拡大を抑制可能な圧延条件(第2圧延条件)に変更するようにしたので、圧延中のエッジ割れの拡大や、これに起因する板破断を抑制することができる。
【0070】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記圧延条件決定部は、前記検出信号取得部において前記エッジ割れの検出信号を受け取った後、少なくとも、前記金属板のうち前記エッジ割れを含む部位が前記圧延装置の巻取機で巻取られるまでの間、前記圧延装置の圧延条件を前記第2圧延条件に維持するように構成される。
【0071】
上記(2)の構成によれば、エッジ割れが検出されたら、金属板のうちエッジ割れを含む部位(以下、エッジ割れ部という。)が巻取機で巻き取られるまでの間は第2圧延条件での運転が維持される。したがって、検出されたエッジ割れが圧延中に拡大するのを効果的に抑制することができる。
【0072】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記圧延条件決定部は、前記金属板のうち前記エッジ割れを含む前記部位が前記巻取機で巻取られたら、前記圧延装置での圧延条件を前記第1圧延条件に戻すように構成される。
【0073】
上記(3)の構成によれば、エッジ割れ部が巻取機で巻き取られたら、圧延条件を第2圧延条件から第1圧延条件に戻すようにしたので、生産効率の低下を抑制しながら、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。
【0074】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記圧延条件決定部は、前記第2圧延条件での前記圧延装置の運転中、前記金属板の進行速度を、前記第1圧延条件での前記金属板の進行速度よりも小さくするように構成される。
【0075】
上記(4)の構成によれば、第2圧延条件での圧延装置の運転中、第1圧延条件での運転中よりも金属板の進行速度を小さくするようにしたので、仮に、圧延中にエッジ割れに起因した板破断が起きた場合であっても、周囲の機器等へのダメージを軽減することができる。
【0076】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記圧延条件決定部は、前記第2圧延条件での前記圧延装置の運転中、前記金属板の板幅方向端部における張力を、前記第1圧延条件での前記張力よりも小さくするように構成される。
【0077】
上記(5)の構成によれば、、第2圧延条件での圧延装置の運転中、第1圧延条件での運転中よりも金属板の板幅方向端部における張力を小さくするようにしたので、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。
【0078】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記少なくとも1つの圧延スタンドは、前記金属板の進行方向において前記エッジ割れの検出位置よりも上流側に設けられる上流側スタンドを含む。
【0079】
金属板に生じたエッジ割れのサイズが小さい場合、検出器でエッジ割れを検出するのが難しい場合がある。この点、上記(6)の構成によれば、上流側スタンドを通過することによりある程度拡大したエッジ割れを検出するようにしたので、エッジ割れをより確実に検出することができる。
【0080】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記少なくとも1つの圧延スタンドは、前記進行方向において前記エッジ割れの前記検出位置よりも下流側に設けられる下流側スタンドを含み、
前記圧延条件決定部は、前記第2圧延条件での前記圧延装置の運転中、
前記エッジ割れが前記下流側スタンドを通過するまでは、前記上流側スタンドと前記下流側スタンドの間の領域における前記金属板の板幅方向端部の張力を前記第1圧延条件での前記張力よりも小さくし、
前記エッジ割れが前記下流側スタンドを通過したら、前記領域における前記張力を前記第1圧延条件での前記張力に戻すように構成される。
【0081】
上記(7)の構成によれば、エッジ割れが検出されたら、エッジ割れ部が下流側スタンドを通過するまでは、上流側スタンドと下流側スタンドとの間の領域における板幅方向端部の張力を第1圧延条件での張力よりも小さくするようにしたので、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。また、エッジ割れ部が下流側スタンドを通過したら、上流側スタンドと下流側スタンドとの間の領域における板幅方向端部の張力を第1圧延条件での張力に戻すようにしたので、生産効率の低下を抑制しながら、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。
【0082】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記圧延装置は、前記金属板の圧延を複数パス行うように構成され、
前記圧延条件決定部は、前記圧延装置での圧延中に前記エッジ割れセンサから受け取った検出結果に基づいて、前記金属板の前記圧延装置による次パス以降の圧延条件を決定するように構成される。
【0083】
上記(8)の構成によれば、金属板の圧延を複数パス行うように構成された圧延装置において、圧延中におけるエッジ割れセンサの検出結果に基づいて、次パス以降の圧延条件を決定するようにしたので、次パス以降の圧延中におけるエッジ割れの拡大や板破断を抑制することができる。
【0084】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記圧延条件決定部は、前記エッジ割れセンサにより検出される前記金属板のエッジ割れのサイズに基づいて、前記金属板の前記圧延装置による次パスの圧延を行うか否かを決定するように構成される。
【0085】
上記(9)の構成によれば、検出されたエッジ割れのサイズに基づいて、次パスの圧延を行うか否かを決定するようにしたので、次パス以降の圧延中におけるエッジ割れの拡大や板破断を効果的に抑制することができる。
【0086】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記圧延条件決定部は、前記エッジ割れセンサにより検出される前記金属板のエッジ割れの前記金属板の長手方向における位置に基づいて、前記金属板の前記圧延装置による次パスの圧延中における圧延条件変更のタイミングを決定するように構成される。
【0087】
上記(10)の構成によれば、検出されたエッジ割れの金属板長手方向における位置に基づいて、次パスの圧延中における圧延条件変更のタイミングを決定するようにしたので、生産効率の低下を抑制しながら、圧延中におけるエッジ割れの拡大を抑制することができる。
【0088】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延設備は、
金属板を圧延するための少なくとも1つの圧延スタンドを含む圧延装置と、
前記圧延装置での圧延中に前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れを検出するように構成されたエッジ割れセンサと、
前記エッジ割れセンサからの検出信号に基づいて、前記圧延装置を制御するように構成された上記(1)乃至(10)の何れか一項に記載の制御装置と、
を備える。
【0089】
上記(11)の構成によれば、金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れが検出されたとき、圧延装置の圧延条件を、エッジ割れの拡大を抑制可能な圧延条件(第2圧延条件)に変更するようにしたので、圧延中のエッジ割れの拡大や、これに起因する板破断を抑制することができる。
【0090】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記エッジ割れセンサは、
前記金属板の端部に向けて放射線を発生するように構成された放射線発生部と、
前記金属板を挟んで前記放射線発生部とは反対側に設けられ、前記放射線発生部からの前記放射線を受けるように構成された放射線検出部と、を含む。
【0091】
圧延スタンドの圧延ロールの近傍は、圧延油やヒュームが多量に飛散し、圧延ロールの振動があり、暗い等、過酷な環境であることが多い。この点、上記(12)の構成によれば、放射線発生部及び放射線検出部を含み、放射線を用いてエッジ割れを検出するエッジ割れセンサを用いるようにしたので、過酷な環境下の圧延ロールの近傍でのエッジ割れの検出が可能である。
【0092】
(13)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延装置の運転方法は、
少なくとも1つの圧延スタンドを含む圧延装置の運転方法であって、
前記圧延装置により金属板を圧延するステップと、
前記圧延装置での圧延中に前記金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れを検出するステップと、
前記金属板のエッジ割れが検出されたとき、前記圧延装置の圧延条件を、前記エッジ割れが検出される直前の第1圧延条件から、前記第1圧延条件よりも前記エッジ割れの拡大を抑制可能な第2圧延条件に変更するステップと、
を備える。
【0093】
上記(13)の方法によれば、金属板の板幅方向端部におけるエッジ割れが検出されたとき、圧延装置の圧延条件を、エッジ割れの拡大を抑制可能な圧延条件(第2圧延条件)に変更するようにしたので、圧延中のエッジ割れの拡大や、これに起因する板破断を抑制することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0095】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0096】
1 圧延設備
2 圧延装置
4 巻出し機
6 入側ピンチロール
7 上流側スタンド
9 下流側スタンド
10 圧延スタンド
10A 圧延スタンド
10B 圧延スタンド
10C 圧延スタンド
10D 圧延スタンド
11 モータ
12 出側ピンチロール
14 巻取機
15 圧延ロール
16 圧延ロール
17 中間ロール
18 中間ロール
19 バックアップロール
20 バックアップロール
22 圧下装置
23 ロールベンダ
24 ヒータ
26 シフトシリンダ
30 エッジ割れセンサ
32 放射線発生部
34 放射線検出部
50 制御装置
52 検出信号取得部
54 圧延条件決定部
56 制御部
E 板端
S 金属板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8