(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】補強繊維回収用反応装置および再生補強繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20230207BHJP
C08J 11/08 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C08J11/08
(21)【出願番号】P 2022566889
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043454
(87)【国際公開番号】W WO2022118756
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020200195
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520474783
【氏名又は名称】株式会社ミライ化成
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【氏名又は名称】東田 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100168572
【氏名又は名称】後藤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】円子 春菜
(72)【発明者】
【氏名】古荘 健次
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0165876(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013200482(DE,A1)
【文献】特開2019-084785(JP,A)
【文献】特開2019-189674(JP,A)
【文献】特開2007-246831(JP,A)
【文献】特開2013-203826(JP,A)
【文献】特開平07-026057(JP,A)
【文献】特開2020-029552(JP,A)
【文献】登録実用新案第3072696(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00
B09B 3/70
B09B 101/75
B09B 101/60
C08J 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒法により繊維強化樹脂材料から補強繊維を回収するために用いられる装置であって、
前記繊維強化樹脂材料と溶媒とを収容する反応槽と、
前記繊維強化樹脂材料を押圧可能な押圧部材
および前記繊維強化樹脂材料を前記押圧部材と反対側から支持する支持部材を含み、収容された前記繊維強化樹脂材料を前記押圧部材により押圧することにより固定可能な固定機構と、を有
し、
前記押圧部材は、前記繊維強化樹脂材料を押圧する押圧面を有し、押圧面と垂直な方向に往復可能である、補強繊維回収用反応装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、板状をなしている、請求項1に記載の補強繊維回収用反応装置。
【請求項3】
前記支持部材は、板状をなしている、請求項
1または2に記載の補強繊維回収用反応装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記押圧部材へ向けた方向に往復可能である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
【請求項5】
さらに、前記支持部材を支持する弾性部材を有する、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、圧縮コイルばねである、請求項
5に記載の補強繊維回収用反応装置。
【請求項7】
さらに、前記支持部材の移動位置を規制する規制部材を有する、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
【請求項8】
前記反応槽は、前記繊維強化樹脂材料を投入するための開口部を有し、かつ、前記開口部が下方へ向けて傾くように、傾斜可能に構成されている、請求項1~
7のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
【請求項9】
前記補強繊維が炭素繊維である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置を用いて、補強繊維と樹脂成分とを含む繊維強化樹脂材料を溶媒を含む処理液により処理し、前記樹脂成分の少なくとも一部を前記処理液に溶解させる工程を有し、
前記工程において、前記繊維強化樹脂材料は、前記固定機構により固定された状態で、前記処理液により処理される、再生補強繊維の製造方法。
【請求項11】
前記工程において、前記繊維強化樹脂材料を固定した状態で、前記溶媒の攪拌を行う、請求項1
0に記載の再生補強繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年12月2日に日本国において出願された日本国特許出願:特願2020-200195に基づく優先権を主張し、その全内容を参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、補強繊維回収用反応装置および再生補強繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス繊維等の繊維を強化材として用いた繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics;FRP)は、軽量、高強度、かつ高弾性の材料であり、小型船舶、自動車、鉄道車両等の部材に幅広く使用されている。また、更なる軽量化、高強度化、及び高弾性化を目的として、炭素繊維を強化材として用いた炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics;CFRP)が開発されており、航空機、自動車等の部材に使用されている。
【0004】
近年、使用済みの繊維強化プラスチックの廃棄量が増大傾向にあり、その再生利用技術の開発が検討されている。繊維強化プラスチックの補強繊維を回収する方法としては、主に、熱処理により樹脂成分を熱分解して除去し補強繊維を回収する熱分解法と、溶媒を用いて樹脂成分を溶解させて除去し補強繊維を回収する溶媒法とが挙げられる。このうち、溶媒法は、樹脂成分の回収が容易であり、資源リサイクルの観点から有利である。
【0005】
溶媒法としては、例えば、特許文献1において提案される方法が挙げられる。特許文献1には、無機材料と有機材料とを含む塊状の複合材料を裁断して裁断片を得る工程と、前記裁断片を破砕して破砕片を得る方法が開示されている。そして、同文献においては、破砕片の無機材料と有機材料とを分離する方法として、破砕片に含まれる有機材料を分解しうる処理液を用いて有機材料を分解し、無機材料を回収する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、溶媒法においては、繊維強化樹脂材料中の樹脂成分を効率よく溶解させるためには、溶媒と繊維強化樹脂材料との混合液を攪拌する必要があった。混合液を攪拌すると、繊維強化樹脂材料中に存在する補強繊維の繊維束の形状および配向を保つことが困難である。補強繊維の繊維束の形状および配向を保つことができない場合、回収される補強繊維の繊維方向が揃わず、回収される補強繊維の用途が、限定されてしまう。
【0008】
したがって、本発明の目的は、溶媒法において繊維強化樹脂材料から補強繊維を分離する際に、補強繊維の形状および配向を維持することのできる、補強繊維回収用反応装置および再生補強繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、溶媒法を用いた際に繊維強化樹脂材料中の補強繊維の形状および配向をいかにして維持するかを検討する中で、繊維強化樹脂材料自体を一定の位置に固定することができれば、補強繊維の形状および配向を維持することを見出した。そして、以上の知見に基づき、本発明者らはさらに検討を行い、本発明に至った。
【0010】
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 溶媒法により繊維強化樹脂材料から補強繊維を回収するために用いられる装置であって、
前記繊維強化樹脂材料と溶媒とを収容する反応槽と、
前記繊維強化樹脂材料を押圧可能な押圧部材を含み、収容された前記繊維強化樹脂材料を前記押圧部材により押圧することにより固定可能な固定機構と、を有する、補強繊維回収用反応装置。
(2) 前記押圧部材は、板状をなしている、(1)に記載の補強繊維回収用反応装置。
(3) 前記押圧部材は、前記繊維強化樹脂材料を押圧する押圧面を有し、押圧面と垂直な方向に往復可能である、(1)または(2)に記載の補強繊維回収用反応装置。
(4) 前記固定機構は、前記繊維強化樹脂材料を前記押圧部材と反対側から支持する支持部材を有する、(1)~(3)のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
(5) 前記支持部材は、板状をなしている、(4)に記載の補強繊維回収用反応装置。
(6) 前記支持部材は、前記押圧部材へ向けた方向に往復可能である、(4)または(5)記載の補強繊維回収用反応装置。
(7) さらに、前記支持部材を支持する弾性部材を有する、(4)~(6)のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
(8) 前記弾性部材は、圧縮コイルばねである、(7)に記載の補強繊維回収用反応装置。
(9) さらに、前記支持部材の移動位置を規制する規制部材を有する、(4)~(8)のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
(10) 前記反応槽は、前記繊維強化樹脂材料を投入するための開口部を有し、かつ、前記開口部が下方へ向けて傾くように、傾斜可能に構成されている、(1)~(9)のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
(11) 前記補強繊維が炭素繊維である、(1)~(10)のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置。
(12) (1)~(11)のいずれか一項に記載の補強繊維回収用反応装置を用いて、補強繊維と樹脂成分とを含む繊維強化樹脂材料を溶媒を含む処理液により処理し、前記樹脂成分の少なくとも一部を前記処理液に溶解させる工程を有し、
前記工程において、前記繊維強化樹脂材料は、前記固定機構により固定された状態で、前記処理液により処理される、再生補強繊維の製造方法。
(13) 補強繊維と樹脂成分とを含む繊維強化樹脂材料を溶媒を含む処理液により処理し、前記樹脂成分の少なくとも一部を前記処理液に溶解させる工程を有し、
前記工程において、前記繊維強化樹脂材料は、押圧されることにより固定された状態で、前記処理液により処理される、再生補強繊維の製造方法。
(14) 前記工程において、前記繊維強化樹脂材料を固定した状態で、前記溶媒の攪拌を行う、(12)または(13)に記載の再生補強繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成により溶媒法において繊維強化樹脂材料から補強繊維を分離する際に、補強繊維の形状および配向を維持することのできる、補強繊維回収用反応装置および再生補強繊維の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る補強繊維回収用反応装置の概要を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す補強繊維回収用反応装置の部分断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す補強繊維回収用反応装置の動作を説明するための部分断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す補強繊維回収用反応装置の動作を説明するための部分断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す補強繊維回収用反応装置の動作を説明するための部分断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す補強繊維回収用反応装置の動作を説明するための部分断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施形態に係る補強繊維回収用反応装置の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、説明の容易化のため、適宜説明の必要のない部材を省略した。また、図示の各部材の寸法は、説明の容易化のため適宜拡大、縮小されており、実際の各部材の大きさを示すものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る補強繊維回収用反応装置の概要を示す斜視図、
図2は、
図1に示す補強繊維回収用反応装置の部分断面図である。
【0015】
図1に示す補強繊維回収用反応装置1は、溶媒法により繊維強化樹脂材料から補強繊維を回収するために用いられる。繊維強化樹脂材料は、炭素繊維等の補強繊維が埋設されることにより強化された樹脂材料である。なお、繊維強化樹脂材料については、後に詳述する。
【0016】
補強繊維回収用反応装置1は、反応槽10と、蓋20と、固定機構30と、支持台40とを有している。以下、補強繊維回収用反応装置1が備える各構成について順に詳述する。
【0017】
反応槽10は、繊維強化樹脂材料と溶媒とを収容可能な容器である。
図2に示すように、反応槽10は、反応槽本体11と、温度調整ジャケット13と、排液口15と、バルブ17と、フランジ19とを備えている。
【0018】
反応槽本体11は、下部に底部113、上部に開口部115を備える有底筒状の容器である。反応槽本体11は、繊維強化樹脂材料と溶媒とを収容可能な収容空間111を有する。反応槽本体11の収容空間111に対し、開口部115を介して繊維強化樹脂材料および溶媒等の反応に必要な材料が収容される。
【0019】
温度調整ジャケット13は、反応槽本体11の外周側面を囲うようにして配置されている。温度調整ジャケット13は、反応槽本体11に収容された内容物を加熱および/または冷却し、内容物の温度を調節することができる。温度調整ジャケット13は、例えば水等の熱媒体をその内部に通過させ、熱交換を行うことにより、内容物の温度を調節する。あるいは、温度調整ジャケット13は、電熱ヒータ等の加熱手段であってもよい。
【0020】
排液口15は、反応槽本体11の底部113に設けられており、排液口15を通じて反応槽本体11の収容空間111に存在する処理液等の液体を排出することができる。また、排液口15の途中には、バルブ17が取り付けられており、バルブ17を操作することにより、排液口15の開閉を制御することができる。
【0021】
フランジ19は、反応槽本体11の開口部115付近の外周縁部より突出した円盤状の部材である。フランジ19は、反応時において後述する蓋20のフランジ27と当接して、フランジ27とともに反応槽本体11中の内容物の漏出を防止する。また、フランジ19とフランジ27とを固定することにより、反応槽本体11に対し蓋20を固定することができる。
【0022】
蓋20は、反応槽10の開閉のための脱着可能な蓋であり、開口部115を覆うように配置することにより反応槽10を閉じることができる。蓋20は、蓋本体21と、注液口23と、排気口25と、フランジ27とを有している。
【0023】
蓋本体21は、蓋20の主要部であり、椀を逆さまにした形状をなしている。そして、蓋本体21の中央部には貫通孔が設けられ、後述する固定機構30の制御部材33が貫通している。また、蓋本体21には、注液口23と、排気口25と、が取り付けられている。
【0024】
注液口23は、溶媒等の処理液を注入するための配管である。また、排気口25は、反応槽10使用時において生じた蒸気等の余剰の気体を除去するための配管である。なお、本実施形態においては、注液口23および排気口25は蓋本体21の上面に設けられているが、本発明は図示の態様に限定されず、蓋本体21の任意の位置または反応槽10の任意の位置に取り付けることができる。また、注液口23および排気口25は、それらの用途に応じて複数取り付けられていてもよい。
【0025】
フランジ27は、蓋本体21において反応槽10の開口部115側の外周縁部より突出した円盤状の部材である。フランジ27は、反応時において反応槽10のフランジ19と当接して、フランジ19とともに反応槽本体11中の内容物の漏出を防止する。
【0026】
固定機構30は、補強繊維回収用反応装置1の使用時において繊維強化樹脂材料を押圧することにより固定する。固定機構30は、押圧部材31と、制御部材33と、支持部材35と、弾性部材37と、規制部材39とを有している。
【0027】
押圧部材31は、補強繊維回収用反応装置1の使用時において反応槽10の収容空間111内に配置される。押圧部材31は、板状をなし、繊維強化樹脂材料を押圧するための押圧面311を有している。また、本実施形態においては押圧面311が水平にかつ支持部材35の支持面351と略平行になるように、押圧部材31が配置されている。以上の構成を有する押圧部材31は、制御部材33により位置が制御されて、押圧面311により繊維強化樹脂材料を押圧することができる。
【0028】
なお、押圧部材31の押圧面311の面積は、特に限定されないが、例えば、収容空間111における押圧面311に平行な断面の面積の10%以上90%以下、好ましくは30%以上50%以下であることができる。これにより、押圧部材31を用いて繊維強化樹脂材料を固定している場合においても、収容空間111における処理液の流動が容易となり、繊維強化樹脂材料への処理液の浸透が容易となる。
【0029】
制御部材33は、棒状の部材であり、一端が押圧部材31に接続されている。また、制御部材33の他端側は蓋本体21を貫通して、図示せぬ駆動装置に接続されている。そして、制御部材33が押圧面311と垂直な方向(すなわち図中上下)に、移動することにより、押圧部材31が押圧面311と垂直な方向に移動可能となる。
【0030】
支持部材35は、収容空間111において制御部材33よりも下方に配置される。支持部材35は、板状をなし、一方の支持面351が押圧面311と対向するように配置される。押圧部材31が繊維強化樹脂材料を押圧した場合において、支持部材35は、支持面351において押圧部材31と反対側から繊維強化樹脂材料を支持する。これにより、押圧部材31により繊維強化樹脂材料が押圧された際に、押圧部材31と支持部材35との間で繊維強化樹脂材料を固定することができる。
【0031】
なお、支持部材35の支持面351の面積は、特に限定されないが、例えば、収容空間111における支持面351に平行な断面の面積の10%以上90%以下、好ましくは30%以上50%以下であることができる。これにより、支持部材35を用いて繊維強化樹脂材料を固定している場合においても、収容空間111における処理液の流動が容易となり、繊維強化樹脂材料への処理液の浸透が容易となる。
【0032】
弾性部材37は、支持部材35と反応槽本体11の底部113との間に配置されることにより、支持部材35を支持する。弾性部材37は、いわゆる圧縮コイルばねである。このような弾性部材37を用いて支持部材35を支持することにより、支持部材35は押圧部材31の押圧力に応じて下方へ移動することが可能となる。この結果、繊維強化樹脂材料に過度の圧力が付加されることが防止され、繊維強化樹脂材料中の補強繊維の損傷が抑制される。また、押圧部材31が往復している場合には、弾性部材37の存在により支持部材35が対応して往復することが可能となる。押圧部材31および支持部材35が往復することにより、収容空間111中の処理液が攪拌される。
【0033】
規制部材39は、規制板391とこれを反応槽本体11の底部113と接続する接続部材とを有する。規制板391は、支持部材35よりも反応槽本体11の底部113側に、かつ支持部材35と略平行に固定されている。そして、支持部材35が下方に移動した際に規制部材39の規制板391と当接して、支持部材35の下方への移動位置を規制する。すなわち、規制部材39は、支持部材35の下方への移動可能な位置を決定している。固定機構30は、このような規制部材39を有することにより、押圧部材31を下方に移動させて、押圧部材31と支持部材35との間で、繊維強化樹脂材料を圧搾することが可能となる。
【0034】
図1に示す支持台40は、反応槽10を支持する台である。支持台40は、支持台本体41と、回転軸43とを有している。支持台本体41は、地面から立設される柱である。回転軸43は、支持台本体41の上方および反応槽10に回転可能に接続されている。これにより、反応槽10を傾けることが可能となる。これにより、反応槽10の開口部115が下方へ向けて傾斜することができ、繊維強化樹脂材料の投入や反応後の補強繊維の取り出しが容易となる。
【0035】
以上、本実施形態に係る補強繊維回収用反応装置1においては、固定機構30により繊維強化樹脂材料を押圧して固定しつつ、反応を行うことが可能である。これにより、溶媒を含む処理液で繊維強化樹脂材料を処理する際に、繊維強化樹脂材料中の補強繊維の形状が変形しにくくなる。特に、処理中に繊維強化樹脂材料中の樹脂成分が溶解して補強繊維が露出した後であっても、補強繊維は固定機構30により固定されているため、補強繊維の絡まりが起こりづらい。これにより、得られる再生補強繊維の形状、繊維方向を維持することが可能となり、例えば、得られる再生補強繊維の繊維方向を一方向に維持することが可能となり、再生補強繊維を用いて製造される繊維強化樹脂材料の物理的性質、例えば物理的強度も向上する。
【0036】
また、処理中において繊維強化樹脂材料中の樹脂成分が溶解して補強繊維束が露出した後に補強繊維同士が絡まりづらいことから、処理液が均一に繊維強化樹脂材料中の補強繊維に浸透することができ、樹脂成分の溶解反応が均一に進行することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る補強繊維回収用反応装置1においては、固定機構30により繊維強化樹脂材料を押圧して固定しつつ、反応を行うことが可能である。したがって、大きさ、形状に関わりなく多種多様な繊維強化樹脂材料を処理することが可能である。例えば、細かく裁断された繊維強化樹脂材料や大型のプリプレグシートについても処理を行い、再生補強繊維を回収することができる。
【0038】
本実施形態に係る補強繊維回収用反応装置1を用いて、回収した再生補強繊維の洗浄、脱液も可能である。したがって、装置を変更することなく再生補強繊維を回収するための複数の工程を補強繊維回収用反応装置1を用いて行うことができる。
【0039】
さらに、本実施形態に係る補強繊維回収用反応装置1においては、押圧部材31が往復可能に構成されていることにより、押圧部材31の往復に伴い処理液の攪拌が可能となる。ここで、本実施形態においては支持部材35も押圧部材31の往復に伴って往復可能であるため、繊維強化樹脂材料自体は固定されつつ、攪拌が行われることが可能である。
【0040】
2.再生補強繊維の製造方法
次に、本発明の一実施形態に係る再生補強繊維の製造方法について説明する。本発明に係る再生補強繊維の製造方法は、補強繊維と樹脂成分とを含む繊維強化樹脂材料を溶媒を含む処理液により処理し、前記樹脂成分の少なくとも一部を処理液に溶解させる溶解工程を有し、前記溶解工程において、前記繊維強化樹脂材料は、押圧されることにより固定された状態で、前記処理液により処理される。
【0041】
なお、本発明に係る再生補強繊維の製造方法はいかなる装置で実施されてもよいが、以下の説明においては、代表的に、上述した本実施形態に係る補強繊維回収用反応装置を用いた例について詳細に説明する。
図3~
図6は、本実施形態に係る再生補強繊維の製造方法における補強繊維回収用反応装置の動作の一例説明するための部分断面図である。以下、本実施形態に係る再生補強繊維の製造方法の各工程について順に説明する。
【0042】
2.1. 準備工程
まず、溶解工程に先立ち、溶解工程に供する繊維強化樹脂材料100を準備する。繊維強化樹脂材料は、上述したように、補強繊維が埋設されることにより強化された樹脂材料である。このような、繊維強化樹脂材料100としては、特に限定されず、例えば、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics;CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(Glass Fiber Reinforced Plastics;GFRP)、ガラス長繊維マット強化熱可塑性プラスチック(Glass-Mat reinforced Thermoplastics;GMT)、アラミド繊維強化プラスチック(Aramid-Fiber-Reinforced Plastics;AFRP)、ケブラー繊維強化プラスチック(Kevlar Fiber Reinforced Plastics;KFRP)、ダイニーマ繊維強化プラスチック(Dyneema Fiber-Reinforced Plastics;DFRP)、バサルト繊維強化プラスチック、ボロン繊維強化プラスチック、およびこれらのプリプレグ等が挙げられる。上述した中でも、炭素繊維強化プラスチックは、使用量が比較的多く、また炭素繊維の製造時における消費エネルギー量が多大であるため、使用済みの炭素繊維強化プラスチックおよび/またはこのプリプレグ中の炭素繊維を回収し、再利用することが望ましい。
【0043】
また、繊維強化樹脂材料100中の補強繊維は、複数の補強繊維を一方向に引き揃えた繊維束(トウ)、補強繊維の繊維束を経糸および緯糸に用いた織物または不織布の状態で存在してもよいし、各補強繊維がランダムな位置および方向に配置された状態で存在していてもよい。特に、繊維束または織物状の補強繊維を溶媒法により取り出す場合には、処理液の浸透が進行しにくく、また補強繊維の形状および配向が崩れやすい傾向にあった。したがって、本実施形態に係る方法は、繊維束または織物状の補強繊維を含む繊維強化樹脂材料からの補強繊維の回収に適している。
【0044】
また、補強繊維はチップ状であってもよく、この場合、例えば、繊維束を切断したチョップド繊維、チップ状の織物等が挙げられる。
【0045】
繊維強化樹脂材料100に含まれる樹脂成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれであってもよい。また、熱硬化性樹脂は、未硬化のものであってもよいし、硬化物であってもよい。
【0046】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて樹脂成分に用いることができる。
【0047】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて樹脂成分に用いることができる。
【0048】
また、繊維強化樹脂材料100は、それ自身がシート状をなしていてもよいし、裁断されたチップ状をなしていてもよい。特に、本実施形態に係る方法は、従来補強繊維の回収が困難であったシート状の繊維強化樹脂材料100についても好適に適用できる。
【0049】
また、繊維強化樹脂材料100の大きさも、反応槽10の収容空間111に収納可能であれば特に限定されない。しかしながら、繊維強化樹脂材料100中の補強繊維の方向を保持することを考慮すると、繊維強化樹脂材料100の一片の長さは、例えば、100mm以上、好ましくは500mm以上3000mm以下であることができる。より具体的には、繊維強化樹脂材料100として、例えば1000mm×500mmの広さの積層された厚さ300mm程度の繊維強化樹脂材料シートを利用することもできる。
【0050】
2.2. 溶解工程
本工程においては、準備した繊維強化樹脂材料100を溶媒を含む処理液200により処理し、樹脂成分の少なくとも一部を処理液200に溶解させる。本実施形態においては具体的には、
図3、
図4に示すように、繊維強化樹脂材料100と処理液200とを補強繊維回収用反応装置1の反応槽10の収容空間111に投入し、反応槽10中で処理する。以下、まず処理液200について説明し、その後具体的な手順について説明する。
【0051】
(i)処理液
本工程における処理液200は、少なくとも溶媒を含み、繊維強化樹脂材料100中の樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる。ここで、本明細書において、「樹脂成分が溶解する」とは、樹脂成分自体が直接処理液200に溶解することのみならず、樹脂成分が分解して反応物を生成し、当該生成物が処理液200に溶解することをも含む。
【0052】
溶媒は、処理液200の主成分である。溶媒としては、繊維強化樹脂材料100の樹脂成分またはその本工程における反応物を溶解可能であれば、特に限定されず、例えば、水および/または各種有機溶媒を用いることができる。
【0053】
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
アルコール系溶媒としては、脂肪族アルコール系溶媒、芳香族アルコール系溶媒、グリコール系溶媒等や、グリセリン等のその他多価アルコールが挙げられる。
脂肪族アルコール系としては、例えば、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、ドデカノール、メタノール、エタノール等の非環式脂肪族アルコールや、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール等の脂環式アルコールが挙げられる。
【0055】
芳香族アルコール系溶媒としては、例えば、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
グリコール系溶媒としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200~400)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0056】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル等の脂肪族エーテル、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、フラン等の環式エーテル、アニソール、フェネトール、ジフェニルエーテル、ベンゾフラン等の芳香族含有エーテル等が挙げられる。
【0057】
エステル系溶媒としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3-メトキシブチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、イソ酪酸イソブチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソペンチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ-ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジエチル、サリチル酸メチル、エチレングリコールジアセタート、ホウ酸トリブチル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。
【0058】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-プタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ホロン、イソホロン、アセチルアセトン、アセトフェノン、ジエチルケトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0059】
アミド系溶媒としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、カプロラクタム、カルバミド酸エステル等が挙げられる。
【0060】
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
ハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば、オルトクロロフェノール、オルトジクロロベンゼン等が挙げられる。
ハロゲン化脂肪族炭化水素としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等が挙げられる。
【0061】
処理液200中に含まれる溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上100質量%以下、また、40質量%以上60質量%以下、80質量%以上100質量%以下であることができる。
【0062】
また、処理液200は、触媒を含んでいてもよい。触媒としては、繊維強化樹脂材料100中の樹脂成分の溶解を触媒する作用を有する限り特に限定されないが、例えば、酸性物質および塩基性物質が挙げられる。これらの物質は、例えば、水素イオンまたは水酸化物イオン等を樹脂成分の官能基に付加して、あるいは、樹脂成分を分解することにより、樹脂成分の溶媒への溶解性を向上させることができる。特に、溶媒が、プロトン性溶媒を含む場合、とりわけ水を含む場合、酸性物質や塩基性物質の触媒作用がより一層向上する。
【0063】
酸性物質としては、無機酸、有機酸もしくはこれらの塩またはこれらの混合物を用いることができる。無機酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸等を挙げることができ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。リン酸塩としては、例えば、正リン酸塩、メタリン酸塩、次リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ピロリン酸塩、トリメタリン酸塩、テトラメタリン酸塩、ピロ亜リン酸塩等が挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸等が挙げられる。
【0064】
また、無機酸または有機酸の塩としては、上述した無機酸または有機酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム等)および/またはアルカリ土類金属(例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等)の塩が挙げられる。
【0065】
上述した中でも、無機酸、特に硝酸、硫酸、塩酸およびリン酸は、入手しやすく、かつ樹脂成分の溶解の促進に寄与しやすい点で好ましい。
【0066】
また、触媒として酸性物質が処理液200に含まれる場合、酸性物質の含有量は、用いる酸性物質の種類、処理液200中の溶媒の種類および対象となる繊維強化樹脂材料100中の樹脂成分によって適宜選択できるが、処理液200中の酸性物質の含有量は、例えば0.01質量%以上100質量%以下、特に、10質量%以上50質量%以下であることができる。
【0067】
塩基性物質としては、例えば、リチウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩等の無機塩基性物質や、ジメチルアミン、ジエチルアミン等のアミン化合物が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム等を挙げることができる。アルカリ土類金属としては、例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0068】
上述した中でも、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩は、入手しやすく、かつ樹脂成分の溶解の促進に寄与しやすい点で好ましい。より具体的には、塩基性物質が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0069】
また、触媒として塩基性物質が処理液200に含まれる場合、塩基性物質の含有量は、用いる塩基性物質の種類、処理液200中の溶媒の種類および対象となる繊維強化樹脂材料100中の樹脂成分によって適宜選択できるが、処理液200中の塩基性物質の含有量は、例えば0.01質量%以上100質量%以下、特に、10質量%以上50質量%以下であることができる。
【0070】
(ii)手順
まず、
図3に示すように、繊維強化樹脂材料100を反応槽10の収容空間111に投入する。本実施形態においては、繊維強化樹脂材料100は、固定機構30の押圧部材31と支持部材35との間に配置される。
【0071】
次いで、注液口23より、処理液200と収容空間111に注液する。なお、処理液200を一括して収容空間111に注液してもよいし、処理液200を構成する成分を分割して収容空間111に注液してもよい。また、処理液200の注液時において、固定機構30は、繊維強化樹脂材料100を固定していなくてもよい。
【0072】
次いで、繊維強化樹脂材料100を処理液で処理する。この場合において、
図4に示すように、固定機構30の押圧部材31により繊維強化樹脂材料100を押圧して固定しつつ、処理液200による処理を行う。
【0073】
押圧部材31によって繊維強化樹脂材料100を押圧する際の押圧面311の圧力は、特に限定されず、例えば8.5×10-5Pa以上8.5Pa以下、好ましくは8.5×10-4Pa以上8.5-1Pa以下であることができる。
【0074】
また、処理液200による処理中において、押圧部材31を上下に往復させて、処理液200の攪拌を行うことが好ましい。押圧部材31を往復させた場合、弾性部材37に支持された支持部材35は、押圧部材31の往復運動と連動して往復する。したがって、押圧部材31を往復させても繊維強化樹脂材料100は、固定機構30の押圧部材31と支持部材35との間に固定される。以上により、繊維強化樹脂材料100の固定を行いつつ、処理液200の攪拌を行うことができる。
【0075】
従来、一般的な攪拌翼等を用いて処理液を攪拌していたが、この場合においては、繊維強化樹脂材料から露出した補強繊維が攪拌翼によって損傷したり、攪拌翼に補強繊維が絡みつく問題があった。このため、従来は、補強繊維の形状や配向を維持したまま補強繊維を回収することは困難であった。これに対し、本実施形態においては、固定機構30により繊維強化樹脂材料100を固定しつつ、攪拌を行うことにより、上記の問題を抑制し、補強繊維の形状や配向を維持したまま補強繊維を回収することが可能である。
【0076】
また、固定機構30を用いて処理液200の攪拌を行う際の往復する押圧部材31の移動距離(片道の距離)は、特に限定されないが、例えば5mm以上1000mm以下、好ましくは50mm以上300mm以下である。
【0077】
また、処理中における処理液200の温度は、特に限定されず、処理液200の種類によって異なるが、例えば30℃以上300℃以下、好ましくは50℃以上100℃以下である。処理液200の温度の調整は、温度調整ジャケット13を作動させることにより行われる。
【0078】
処理液200による処理の時間は、特に限定されず、目的とする温度に達してから1分以上1440分以下、好ましくは10分以上60分以下である。
【0079】
また、処理液200による処理は、常圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよいし、または加圧下で行ってもよい。処理液200による処理を加圧下で行う場合、例えば、0.11MPa以上7.0MPa以下、特に0.11MPa以上2.0MPa以下の雰囲気下で処理を行うことができる。なお、安全性および経済性を考慮すると、処理液200による処理は、常圧下で行うことが好ましい。
【0080】
処理液200による処理により、繊維強化樹脂材料100から樹脂成分の少なくとも一部が処理液に溶出し、補強繊維が回収可能となる。
【0081】
2.3. 脱液工程
処理液200による処理後には、
図5に示すように、バルブ17を操作して排液口15を開放し、排液口15より処理液200を排出する。
【0082】
この場合において、押圧部材31により繊維強化樹脂材料100を押圧し、繊維強化樹脂材料100を圧搾することが好ましい。これにより効率的な脱液が可能となる。具体的には、押圧部材31を下に移動させることにより、これに伴って移動する支持部材35を規制部材39に当接する位置まで移動させる。そして、さらに適切な圧力で押圧部材31により繊維強化樹脂材料100を押圧することにより、脱液が可能となる。
【0083】
2.4. 洗浄工程
次に、必要に応じて洗浄を行う。洗浄は、洗浄液を繊維強化樹脂材料100と接触させることにより行うことができる。具体的には、上記の溶解工程および脱液工程において、処理液200を洗浄液に置き換えることにより実施できる。ただし、洗浄時における洗浄液の温度や洗浄時間は、適宜設定できる。
【0084】
ここで、洗浄時においては、固定機構30により繊維強化樹脂材料100を固定しつつ洗浄を行うことができる。このため、繊維強化樹脂材料100に含まれる補強繊維の形状や配向を維持したまま補強繊維を洗浄・回収することが可能である。
【0085】
洗浄液としては、上述した処理液200の溶媒に挙げられた水や各種有機溶媒を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
また、洗浄液には、酸性物質や塩基性物質が含まれていてもよい。これらの物質により液性を調節することにより、繊維強化樹脂材料100中の残存する樹脂成分やその反応物を除去することができる。
【0087】
以上の溶解工程、脱液工程および洗浄工程は、必要に応じてそれぞれ複数回行うことができる。例えば、溶解工程および脱液工程を複数回繰り返したのちに洗浄工程を行ってもよい。また例えば、溶解工程を複数回行った後、脱液工程を行い、その後洗浄工程を必要な回数行ってもよい。あるいは、例えば、溶解工程、脱液工程、および洗浄工程をこの順に必要な回数行ってもよい。
【0088】
2.5. 乾燥工程
以上のようにして繊維強化樹脂材料100から樹脂成分を溶解、除去した状態で、繊維強化樹脂材料100を乾燥してもよい。乾燥は、例えば、反応槽10の収容空間111内部に図示せぬ送気手段により気体を流通させることにより行うことができる。流通させる気体としては、特に限定されないが、安全面から、空気または窒素等の不活性ガスが好ましい。
【0089】
また、乾燥時において、繊維強化樹脂材料100を加温してもよい。これにより、乾燥が促進される。加温は、例えば、温度調整ジャケット13により行ってもよいし、加温した気体を反応槽10に導入することにより行ってもよい。加温時における気体の温度は、例えば0℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上110℃以下である。
【0090】
ここで、繊維強化樹脂材料100を固定機構30により固定しつつ乾燥を行ってもよい。これにより、繊維強化樹脂材料100に含まれる補強繊維の形状や配向を維持したまま補強繊維を乾燥させることが可能である。
【0091】
2.6. 回収工程
以上の工程を経て、繊維強化樹脂材料100から補強繊維を回収し、再生補強繊維を得る。本工程においては、
図6に示すように、支持台40の回転軸43を起点に反応槽10の開口部115を下方へ向けて傾けることで、再生補強繊維を用意に取り出すことができる。
【0092】
以上により、再生補強繊維を得ることができる。本実施形態に係る再生補強繊維の製造方法では、繊維強化樹脂材料100を固定機構30により押圧して固定しつつ、繊維強化樹脂材料100中の樹脂成分を溶媒を含む処理液200に溶解させる。これにより、溶媒を含む処理液200で繊維強化樹脂材料100を処理する際に、繊維強化樹脂材料100中の補強繊維の形状が変形しにくくなる。特に、処理中に繊維強化樹脂材料100中の樹脂成分が溶解して補強繊維が露出した後であっても、固定されているため、補強繊維の絡まりが起こりづらい。これにより、得られる再生補強繊維の形状、繊維方向を維持することが可能となり、例えば、得られる再生補強繊維の繊維方向を一方向に維持することが可能となり、再生補強繊維を用いて製造される繊維強化樹脂材料の物理的性質、例えば物理的強度も向上する。
【0093】
また、処理中において繊維強化樹脂材料100中の樹脂成分が溶解して補強繊維束が露出した後に補強繊維同士が絡まりづらいことから、処理液が均一に繊維強化樹脂材料100中の補強繊維に浸透することができ、樹脂成分の溶解反応が均一に進行することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る方法においては、固定機構30により繊維強化樹脂材料を押圧して固定しつつ、反応を行うことが可能である。したがって、大きさ、形状に関わりなく多種多様な繊維強化樹脂材料100を処理することが可能である。例えば、細かく裁断された繊維強化樹脂材料や大型のプリプレグシートについても処理を行い、再生補強繊維を回収することができる。
【0095】
3.変形例
次に、上述した本発明の実施形態のいくつかの変形例について説明する。以下、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0096】
上述した実施形態においては、支持部材35を弾性部材37に支持させて配置したが、本発明はこれに限定されず、例えば、
図7に示す補強繊維回収用反応装置1Aのように支持部材35を省略してもよい。この場合において、反応槽本体11の底部113は、支持部材として機能し、押圧部材31、制御部材33および底部113により固定機構30Aが構成される。
【0097】
また、上述した実施形態においては、固定機構30は、押圧部材31および支持部材35が上下方向から繊維強化樹脂材料100を押圧、固定するように構成されていたが、本発明はこれに限定されず、固定機構は任意の方向で繊維強化樹脂材料を押圧・固定してもよい。例えば、水平方向に繊維強化樹脂材料を押圧・固定するように、押圧部材および支持部材が配置されてもよい。
【0098】
また、上述した実施形態においては、押圧部材31および支持部材35が板状であるように構成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、押圧部材および支持部材には穴が設けられていてもよい。これにより、攪拌時の流体抵抗が低減される。あるいは、押圧部材および支持部材は、網状のシートであってもよい。
【0099】
また、上述した実施形態においては、押圧部材31および支持部材35を上下することにより処理液200の攪拌を行ったが、本発明はこれに限定されない。例えば、反応槽には、繊維強化樹脂材料と接触しない部位に攪拌装置が設けられていてもよい。あるいは、固定機構の位置を固定した状態とし、一方で反応槽が運動することにより、攪拌が行われてもよい。反応槽の運動の態様は、特に限定されず、例えば、垂直方向および/または水平方向における往復運動、回転運動であることができる。
【0100】
また、例えば、上述した実施形態においては、弾性部材37が圧縮コイルばねであるとして説明したが、本発明はこれに限定されず、弾性部材は、任意の弾性部材で構成することができる。このような弾性部材としては、重ね板ばね、薄板ばね等の板ばね、トーションばね、竹の子ばね、ゴム、エラストマー等の高分子弾性体等が挙げられる。
【0101】
また、例えば、上述した実施形態においては、反応槽10および反応槽本体11が円筒状をなしているものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、反応槽本体11は、その収容空間が略直方体をなすように、その形状を変更してもよい。
【0102】
また、例えば、上述した実施形態に係る再生補強繊維の製造方法においては、本実施形態に係る補強繊維回収用反応装置を用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明に係る再生補強繊維の製造方法は、上述した本発明に係る補強繊維回収用反応装置を用いなくてもよい。
【0103】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0104】
1 補強繊維回収用反応装置
10 反応槽
11 反応槽本体
13 温度調整ジャケット
15 排液口
17 バルブ
19 フランジ
20 蓋
21 蓋本体
23 注液口
25 排気口
27 フランジ
30 固定機構
31 押圧部材
33 制御部材
35 支持部材
37 弾性部材
39 規制部材
40 支持台
41 支持台本体
43 回転軸
100 繊維強化樹脂材料
200 処理液