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特許7222160電子部品、パッチアンテナ及びそのパッチアンテナを備えるアンテナ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】電子部品、パッチアンテナ及びそのパッチアンテナを備えるアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20230208BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H01Q13/08
H05K1/02 J
H05K1/02 N
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020047889
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021150770
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/013508(WO,A1)
【文献】特開2013-078027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、を有する誘電体素子と、
前記誘電体素子の前記第1の面に配置された放射電極と、
前記誘電体素子の前記第2の面の概ね全面を覆うように配置され、概ね矩形形状を有するグラウンド電極と、
前記第2の面に前記グラウンド電極とは離間して配置された信号電極と、を備えるパッチアンテナであって、
前記グラウンド電極は、その4つの頂点の各々の近傍に、矩形形状の頂点で交差する2つの辺のうち、一辺から内側へ向かって前記電極を切り欠くように延在するように設けられた1つのスリットと他辺から内側へ向かって前記電極を切り欠くように延在するように設けられた他のスリットと、を有し、
前記グラウンド電極のいずれか1つの辺は、当該辺から内側に向かって凹部を形成するように窪ませた切り欠き部を有し、前記切り欠き部に前記信号電極が配置される、パッチアンテナ。
【請求項2】
前記1つのスリットは、前記一辺から前記一辺と概ね直交する方向に延在し、前記他のスリットは、前記他辺から前記他辺と概ね直交する方向に延在する、請求項に記載のパッチアンテナ。
【請求項3】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、を有する誘電体素子と、
前記誘電体素子の前記第1の面に配置された放射電極と、
前記誘電体素子の前記第2の面に配置され、概ね矩形形状を有するグラウンド電極と、
前記第2の面に前記グラウンド電極とは離間して配置された信号電極と、を備えるパッチアンテナであって、
前記グラウンド電極は、その4つの頂点の各々の近傍に、矩形形状の頂点で交差する2つの辺のうち、一辺に設けられた1つのスリットと他辺に設けられた他のスリットと、を有する、パッチアンテナと、
一表面を有し、それぞれが概ね矩形形状である4つのランドが前記一表面に配置されたプリント基板と、を備え、
前記誘電体素子の前記第2の面と前記プリント基板の前記一表面とが互いに対向し、前記パッチアンテナの前記グラウンド電極の前記4つの頂点の近傍が、前記プリント基板の前記4つのランドに、それぞれ接続され、
前記1つのスリットは、前記4つのランドのうちの対応する1つのランドの1つの辺に隣接して平行に延在し、前記他のスリットは、前記4つのランドの内の対応する1つのランドの前記1つの辺と直交する他の辺に隣接して平行に延在し、
前記4つの頂点の各々の近傍において、
前記1つのスリットの長さは、前記1つのスリットが隣接するランドの前記1つの辺の長さよりも短く、前記他のスリットの長さは、前記他のスリットが隣接するランドの前記他の辺の長さよりも短い、アンテナ装置
【請求項4】
前記1つのスリットは、前記一辺から前記一辺と概ね直交する方向に延在し、前記他のスリットは、前記他辺から前記他辺と概ね直交する方向に延在する、請求項3に記載のパッチアンテナ。
【請求項5】
前記グラウンド電極のいずれか1つの辺に切り欠き部を有し、前記切り欠き部に前記信号電極が配置される、請求項3又は4に記載のパッチアンテナ。
【請求項6】
前記4つの頂点の各々の近傍において、
前記1つのスリットの長さは、前記1つのスリットが隣接するランドの前記1つの辺の長さの2分の1よりも長く、前記他のスリットの長さは、前記他のスリットが隣接するランドの前記他の辺の長さの2分の1よりも長い、請求項3から5までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記グラウンド電極は、前記プリント基板の前記4つのランドに、それぞれ半田を介して接続されている、請求項3から6までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記4つのランドは、前記プリント基板の前記一表面の1つの導電層上に配置されたソルダーレジストの4つの開口により画定される、請求項3から7までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記4つのランドのそれぞれは、正方形からなる、請求項3から8までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記グラウンド電極の外形は、正方形からなる、請求項3から9までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記プリント基板は、前記4つのランドの内の互いに隣接する2つのランドの間に、前記2つのランドと一直線上に配置された矩形形状の更なるランドを含み、
前記グラウンド電極は、前記更なるランドの1つの辺に隣接して平行に延在する更なる1つのスリットと、前記更なるランドの前記1つの辺と互いに対向する他の辺に隣接して平行に延在する更なる他のスリットと、を有する、請求項3から10までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記プリント基板の前記一表面に配置され、前記4つのランドのいずれとも電気的に分離されている信号用ランドを、更に有し、
前記信号電極は、前記信号用ランドと接続されている、請求項3から11までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品、パッチアンテナ及びそのパッチアンテナを備えるアンテナ装置に関し、特に、表面実装される電子部品、パッチアンテナ及びそのパッチアンテナがプリント基板上に表面実装されたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信を通じて他の電子機器との間で情報を送受信する小型の電子機器が広範な分野で採用されている。このような電子機器には電波を受信する小型のアンテナ装置が搭載され、この種のアンテナ装置として、誘電体パッチアンテナが実用化されている。
【0003】
誘電体パッチアンテナは、アンテナが内蔵されている誘電体素子の一表面の概ね全面に金属薄膜からなるグラウンド電極を備える。この誘電体パッチアンテナは、そのグラウンド電極をプリント基板のランド上に半田付けすることで表面実装され、小型のアンテナ装置を構成する。
【0004】
このような表面実装技術では、まず、プリント基板のランドに予めペースト半田を印刷し、そのペースト半田とグラウンド電極が接するように誘電体パッチアンテナをプリント基板のランド上に載置する。そして、リフロー処理により、半田を一旦溶融させた後、再度固化することにより、プリント基板のランドと誘電体パッチアンテナのグラウンド電極とを機械的に固定すると共に電気的に接続する。
【0005】
一般に、電子部品を表面実装するときには、電子部品を、ランド上で溶融した半田の表面張力により一旦保持させることで、そのセルフアライメント効果により、ランドの位置に対する電子部品の搭載位置を精度よく制御することができることが期待できる。
【0006】
ところが、金属材料からなるグラウンド電極は、誘電体素子の一表面の概ね全面に形成されている。このような金属材料は半田に対する濡れ性が高く、溶融された半田がグラウンド電極表面の全体に広がることから、表面張力による保持力が低下する。それゆえ、半田を溶融させた後、再度固化するまでの間に、誘電体パッチアンテナがプリント基板上で平行移動及び回転移動して、所定の搭載位置からずれる虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大面積の電極を有する電子部品、すなわち、大面積のグラウンド電極を有する誘電体パッチアンテナを、高い位置精度をもってプリント基板に表面実装する技術を、低い製造コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の本発明の第1の態様の電子部品によれば、実装面を有する基体と、その基体の実装面に配置され、概ね矩形形状を有する電極と、を備え、電極は、その4つの頂点の各々の近傍に、矩形形状の頂点で交差する2つの辺のうち、一辺に設けられた1つのスリットと他辺に設けられた他のスリットと、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、上記第1の態様において、1つのスリットは、一辺から内側へ、一辺と概ね直交する方向に延在し、他のスリットは、他辺から内側へ、他辺と概ね直交する方向に延在する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の態様のパッチアンテナによれば、第1の面と、第1の面と対向する第2の面と、を有する誘電体素子と、誘電体素子の第1の面に配置された放射電極と、誘電体素子の第2の面に配置され、概ね矩形形状を有するグラウンド電極と、第2の面にグラウンド電極とは離間して配置された信号電極と、を備えるパッチアンテナであって、グラウンド電極は、その4つの頂点の各々の近傍に、矩形形状の頂点で交差する2つの辺のうち、一辺に設けられた1つのスリットと他辺に設けられた他のスリットと、を有する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の態様によれば、上記第3の態様において、1つのスリットは、一辺からその一辺と概ね直交する方向に延在し、他のスリットは、他辺からその他辺と概ね直交する方向に延在する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の態様のアンテナ装置によれば、上記第3の態様又は第4の態様において、グラウンド電極のいずれか1つの辺に切り欠き部を有し、切り欠き部に信号電極が配置される、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の態様によれば、上記第3の態様から上記第5の態様までのいずれか1つの態様のパッチアンテナと、一表面を有し、それぞれが概ね矩形形状である4つのランドが一表面に配置されたプリント基板と、を備え、誘電体素子の第2の面とプリント基板の一表面とが互いに対向し、パッチアンテナのグラウンド電極の4つの頂点の近傍が、プリント基板の4つのランドに、それぞれ接続され、1つのスリットは、4つのランドのうちの対応する1つのランドの1つの辺に隣接して平行に延在し、他のスリットは、4つのランドの内の対応する1つのランドの1つの辺と直交する他の辺に隣接して平行に延在する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第7の態様によれば、上記第6の態様において、4つの頂点の各々の近傍において、1つのスリットの長さは、1つのスリットが隣接するランドの1つの辺の長さよりも短く、他のスリットの長さは、他のスリットが隣接するランドの他の辺の長さよりも短い、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第8の態様によれば、上記第7の態様において、4つの頂点の各々の近傍において、1つのスリットの長さは、1つのスリットが隣接するランドの1つの辺の長さの2分の1よりも長く、他のスリットの長さは、他のスリットが隣接するランドの他の辺の長さの2分の1よりも長い、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第9の態様によれば、上記第6の態様から上記第8の態様までのいずれか1つの態様において、グラウンド電極は、プリント基板の4つのランドに、それぞれ半田を介して接続されている、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第10の態様によれば、上記第6の態様から上記第9の態様までのいずれか1つの態様において、4つのランドは、プリント基板の一表面の1つの導電層上に配置されたソルダーレジストの4つの開口により画定される、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第11の態様によれば、上記第6の態様から上記第10の態様までのいずれか1つの態様において、4つのランドのそれぞれは、正方形からなる、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第12の態様によれば、上記第6の態様から上記第11の態様までのいずれか1つの態様において、グラウンド電極の外形は、正方形からなる、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の第13の態様によれば、上記第6の態様から上記第12の態様までのいずれか1つの態様において、プリント基板は、4つのランドの内の互いに隣接する2つのランドの間に、2つのランドと一直線上に配置された矩形形状の更なるランドを含み、グラウンド電極は、更なるランドの1つの辺に隣接して平行に延在する更なる1つのスリットと、更なるランドの1つの辺と互いに対向する他の辺に隣接して平行に延在する更なる他のスリットと、を有する、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の第14の態様によれば、上記第6の態様から上記第13の態様までのいずれか1つの態様において、プリント基板の一表面に配置され、4つのランドのいずれとも電気的に分離されている信号用ランドを、更に有し、信号電極は、信号用ランドと接続されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電子部品、パッチアンテナ及びそのパッチアンテナを備えるアンテナ装置によれば、溶融した半田が、グラウンド電極に沿って広範囲に広がることを防止することにより、表面張力による保持力を維持し、セルフアライメント効果が得られる。
【0023】
従って、大面積の電極を有する電子部品、すなわち、大面積のグラウンド電極を有する誘電体パッチアンテナを、高い位置精度をもってプリント基板に表面実装する技術を、低い製造コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、一実施形態のパッチアンテナを透視した斜視図である。
図2図2は、一実施形態のパッチアンテナのグラウンド電極の平面図である。
図3図3は、一実施形態のアンテナ装置の分解図である。
図4図4は、一実施形態のパッチアンテナを透視したアンテナ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
【0026】
図1は、一実施形態のパッチアンテナ1を透視した斜視図である。パッチアンテナ1は、概ね扁平な直方体形状からなる誘電体素子2を備え、その内部に電波を受信するアンテナパターン(図では省略)を有する。
【0027】
このパッチアンテナ1は、例えば、表面実装用の電子部品であり、その基体を成す誘電体素子2は、扁平な直方体形状の互いに対向する上面と下面とをなす、第1の面2aと第2の面2bとを有する。この第1の面2aには放射電極3が配置され、第2の面にはグラウンド電極6及び信号電極4が配置されている。グラウンド電極6及び信号電極4は互いに離間しており、グラウンド電極6は、信号電極4とその近傍を除いて、第2の面2bの概ね全面を覆っている。
【0028】
図2は、一実施形態のパッチアンテナ1のグラウンド電極6の平面図である。グラウンド電極6は概ね矩形形状を呈する外形を有する。その外形は、例えば、正方形であってよい。グラウンド電極6の外形の1つの頂点6cの近傍には、当該頂点6cで交差する2つの辺のうち、一辺に設けられた1つのスリット6aと他辺に設けられた他のスリット6aとが設けられている。
【0029】
1つのスリット6aは、グラウンド電極6の外形の一辺から内側へ向かって、当該一辺と概ね直交する方向で、グラウンド電極6を切り欠くように延在する。又、他のスリット6aは、グラウンド電極6の外形の他辺から内側へ向かって、当該他辺と概ね直交する方向で、グラウンド電極6を切り欠くように延在する。
【0030】
他の3つの頂点6cの各々の近傍にも同様に、1つのスリット6a及び他のスリット6aが、それぞれの対応する辺から内側へ向かって、当該それぞれの辺と概ね直交する方向で、グラウンド電極6を切り欠くように延在する。
【0031】
又、互いに隣接する2つの頂点6cを結ぶ1つの辺に設けられた2つのスリット6aの間には、グラウンド電極6の外形の当該1つの辺から内側へ向かって、当該1つの辺と概ね直交する方向で、グラウンド電極6を切り欠くように延在する、更なるスリット6bが設けられてよい。
【0032】
更に、互いに隣接する他の2つの頂点6cを結ぶ他の辺に設けられた2つのスリット6aの間には、グラウンド電極6の外形の他の辺から内側へ向かって、グラウンド電極6に凹部を形成するように窪ませた切り欠き部5が設けられ、その切り欠き部5の内部に信号電極4が配置されている。
【0033】
なお、グラウンド電極6は導電材料からなり、例えば、銀を主成分とする薄膜であってよい。この銀を主成分とする薄膜は、銀ペーストを誘電体素子2の第2の面2bに所定のパターンでスクリーン印刷し、印刷された銀ペーストを高温の熱処理により焼結して得ることができる。
【0034】
スクリーン印刷は、印刷に不要な位置を乳剤などで固めて銀ペーストが透過しないように作製されたスクリーンを用いて行うことができる。例えば、誘電体素子2の第2の面2bにグラウンド電極6のパターンを転写するスクリーンを載置し、スクリーン上に銀ペーストを載せる。そして、スクリーン上でスキージを摺動されることで、銀ペーストがスクリーンを透過し、あらかじめスクリーンに描かれたパターンで、誘電体素子2の第2の面2bに印刷される。
【0035】
スクリーンの材料としては、ナイロン等の繊維、あるいはステンテレス等の細い金属からなる針金を織ったものを使用することができる。スクリーンは、印刷に不要な位置を乳剤などで固めるだけで容易に作製できるので、スリット6a及び切り欠き部5を有するグラウンド電極6並びに切り欠き部5の内部に配置された信号電極4、のパターン全体を1枚のスクリーン上に描画し得る。
【0036】
次に、パッチアンテナ1をプリント基板10に搭載して構成されるアンテナ装置20について説明する。図3に、パッチアンテナ1とプリント基板10とからなるアンテナ装置20の分解図を示した。
【0037】
プリント基板10の一表面11には、パッチアンテナ1の信号電極4と接続する信号用ランド12及びグラウンド電極6の4つの頂点の近傍に接続される4つのランド14が配置されている。プリント基板10は絶縁材料からなる基板と導電層とを交互に複数層積層した多層配線構造であってよい。信号用ランド12及び4つのランドのそれぞれは、その多層配線の最上層の配線層で形成することが好ましい。
【0038】
信号用ランド12は、プリント基板10の内部で、パッチアンテナ1から出力される信号を伝送する配線に電気的に接続されている。4つのランド14の各々は、プリント基板10の内部で接地電位を画定するグラウンド配線層に電気的に接続されている。信号用ランド12及び4つのランドのそれぞれは、電気的に互いに分離されている。
【0039】
グラウンド電極6に接続されるランド14は原理的には1つでもよいが、パッチアンテナ1の接地電位をより安定なものするためには、グラウンド電極6とプリント基板10のグラウンド配線層との間の直列抵抗を極力低減すると共に、グラウンド電極6の平面方向に分布する直列抵抗の影響を最小化することが求められる。そのためには、少なくとも4つのランド14を設けて、それぞれをグラウンド電極6の4つの頂点6cの近傍に接続することが好適である。
【0040】
又、プリント基板10の最上層の配線層に、4つのランド14を配置する領域の全体を覆う大面積の導電層を設置しておいて、その大面積の導電層の表面をソルダーレジストで覆い、導電層上の所定の位置に4つの開口を設けることで4つのランド14としてもよい。
【0041】
更に、プリント基板10は、更なるランド14b及び中央ランド14cを含み得る。例えば、更なるランド14bは、4つのランド14のうち、互いに隣接する2つのランドの間に配置されてよい。又、中央ランド14cは、グラウンド電極6の中央付近と接続可能な位置に配置されてよい。これらの追加された更なるランド14b及び中央ランド14cは、上述のパッチアンテナ1の接地電位の更なる安定化に貢献する。
【0042】
図4に、一実施形態のパッチアンテナ1をプリント基板10に搭載して構成されるアンテナ装置20を示す。パッチアンテナ1の誘電体素子2の実装面である第2の面2bとプリント基板10の一表面11が、互いに対向するように載置されている。
【0043】
パッチアンテナ1のグラウンド電極6とランド14、更なるランド14b、中央ランド14cのそれぞれとが、ペースト半田をリフロー処理により溶融させた後、再度固化させることで、半田を介して機械的に固定すると共に電気的に接続する表面実装技術により載置される。信号電極4及び信号用ランド12も、グラウンド電極6と同一工程で同時に接続される。
【0044】
パッチアンテナ1がプリント基板10に載置された状態では、グラウンド電極6の4つ頂点6cの内の1つ頂点6cの近傍において、1つのスリット6aはランド14の1つの辺に隣接して平行に延在し、他のスリット6aは、このランド14の1つの辺と直交する他の辺に隣接して平行に延在する。
【0045】
パッチアンテナ1をプリント基板10に表面実装する手順の一工程であるリフロー処理において、ランド14に印刷されたペースト半田が溶融される。溶融された半田は、プリント基板10側では各ランド14の領域内で保持され、パッチアンテナ1側ではグラウンド電極6の表面に沿って移動しようとする。しかし、グラウンド電極6の表面に沿う半田の移動は、1つのスリット6a及び他のスリット6aにより停止され、半田が広がる範囲は、それらのスリット6aの位置により画定される。
【0046】
その結果、グラウンド電極6とランド14との位置関係は、1つのスリット6aがランド14の1つの辺に対して平行な状態で隣接し、他のスリット6aがランド14の1つの辺と直交する他の辺に平行な状態で隣接するように、溶融された半田の表面張力により生じるセルフアライメント効果により位置合わせがなされる。
【0047】
このセルフアライメント効果は、グラウンド電極6の4つの頂点6cの近傍の各々に、1つのスリット6a及び他のスリット6aを配置することでより顕在化する。又、グラウンド電極6の矩形形状の外形が、概ね正方形であるとき、前後左右及び回転方向の各方向に対して均等なセルフアライメント効果が得られ、より好適である。
【0048】
セルフアライメント効果は、1つのスリット6a及び他のスリット6aのそれぞれの長さがランド14の各辺の長さと一致しているときに最も大きくなる。しかしながら、ランド14の各辺の長さと一致するまでスリット6aを延在させてしまうと、グラウンド電極6の頂点6cの近傍の部分が、グラウンド電極6の中央部分と切り離されて、グラウンド電極6としての本来の機能が損なわれる。
【0049】
従って、頂点6cの近傍の部分が切り離されない程度に、すなわち、グラウンド電極6の頂点6cの近傍の部分と中央部分との間の電気抵抗の増大による悪影響が顕在化しない程度に、頂点6cの近傍の部分と中央部分とを接続するグラウンド電極6の幅を確保する必要がある。そのゆえ、1つのスリット6a及び他のスリット6aのそれぞれの長さは、ランド14の各辺の長さよりも短くすることが必須である。
【0050】
一方、矩形形状のランド14上に溶融された半田が保持された状態では、ランド14の各辺の中点付近で、半田が横方向に拡がろうとする力が強くなる。従って、溶融した半田がグラウンド電極6の表面に沿って横方向の広がることを抑制してセルフアライメント効果を得るためには、1つのスリット6a及び他のスリット6aのそれぞれの長さは、少なくともランド14の各辺の長さの2分の1以上とすることが必要である。
【0051】
又、ランド14の形状が正方形であるとき、表面張力によるセルフアライメント効果がランド14の4辺の方向に対して均等となり、より好適である。
【0052】
プリント基板10に、互いに隣接する2つのランド14の間に、更なるランド14bが2つのランド14と一直線上に並ぶように配置されているとき、グラウンド電極6に、更なるランド14bの1つの辺に隣接して平行に延在する1つの更なるスリット6bと、更なるランド14bの1つの辺と互いに対向する他の辺に隣接して平行に延在する他の更なるスリット6bが配置されてよい。
【0053】
ここで、パッチアンテナ1の信号電極4と信号用ランド12との接続も、グラウンド電極6とランド14とを半田リフローにより接続する実装工程において、同時に行われることが好ましい。同時に行われることで、グラウンド電極6とランド14とのセルフアライメント効果により、信号電極4と信号用ランド12との位置合わせ精度も向上する。
【0054】
以上説明したとおり、本発明の電子部品、パッチアンテナ及びそのパッチアンテナを備えるアンテナ装置によれば、溶融した半田が、グラウンド電極に沿って広範囲に広がることを防止することにより、表面張力による保持力を維持し、セルフアライメント効果が得られる。
【0055】
従って、大面積の電極を有する電子部品、すなわち、大面積のグラウンド電極を有する誘電体パッチアンテナを、高い位置精度をもってプリント基板に表面実装する技術を、低い製造コストで提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 パッチアンテナ
2 誘電体素子
2a 第1の面
2b 第2の面
3 放射電極
4 信号電極
5 切り欠き部
6 グラウンド電極
6a スリット
6b 更なるスリット
6c 頂点
10 プリント基板
11 一表面
12 信号用ランド
14 ランド
14b 更なるランド
15 ランドの辺
20 アンテナ装置
図1
図2
図3
図4